第38回総会・第47回基礎問題小委員会合同会議 議事録

平成18年2月17日開催

石会長

それでは、時間になりました。お忙しいところご出席いただきまして、ありがとうございました。総会と基礎問題小委員会の合同会議を行いたいと思います。

今日は二つテーマがございまして、一つは先週まで行ってまいりましたアメリカの税制の実態調査のご報告と、それから、前回にメンバーの方からいろいろご質問をいただきました。その回答を事務局のほうにお願いしてありますので、それを後半に充てたいと考えております。

それでは、前半の話でございますが、1月29日から2月5日、ちょうど1週間になりますが、私と中里さん二人と、財務省から坂本さん、総務省から羽生さん、お二人元気のいい人をつけてもらいまして、4人でさっと見てまいりました。その報告をしたいと思いますが、それに先立ちまして、現在、アメリカがどんな財政状況にあるのか、どんな税制を持っているのか、そういう話を前もってご説明を受けたほうが、我々の海外調査報告をよりわかっていただけるのではないかと思いまして、調査課長の宮内さんから簡単にアメリカの財政・税制の現状をご説明いただきたいと思います。

宮内調査課長

お手元の資料、「総38-1」に沿いまして、米国の財政・税制の現状を概観しまして、あと税制改革諮問委員会の報告のポイントをご説明したいと思います。

まず2ページ、米国財政の現状でございます。1990年代、史上最長の景気拡大を達成しまして、財政面ではブッシュのお父さんの政権やクリントン政権下における財政再建努力が行われ、1998年度以降、財政黒字を達成しました。しかしながら、その後ITバブルの崩壊ですとか、同時多発テロなどもありまして、景気が悪化、大型の減税も実施しました。2002年度には再び財政赤字に転落し、2004年度には4,000億ドルを超える史上最大の財政赤字を計上しております。2006年度には、イラク関係やハリケーンの対応もありまして、2004年度を上回る財政赤字が予想されております。予算教書では2009年度に向けて財政赤字を半減させるとの方針を再確認しているところでございます。

なお、今回の税制の改革案の検討におきましては、歳入中立を前提としておりますので、そこで財政赤字の削減に道筋を示すというものではございません。

それから、資料にはございませんけれども、米国の債務残高の対GDP比は65%ほどでございまして、日本の債務残高GDP比約160%に比べると、はるかに低い額であります。フランスやドイツやカナダなども60~70%台と、アメリカとほぼ同水準でありますので、この点はむしろ日本が異常に高い数字となっていると言うべきだと思います。

3ページをご覧ください。米国の税制の概要でございます。米国の連邦税の税収構造は、直接税、特に個人所得税の占める割合が非常に大きいのが特徴でございます。左下の表をご覧いただきたいのですが、2005年の個人所得税収は約9,300億ドル、105兆円程度でございます。法人税収は約2,800億ドル、約31兆円。税収の9割以上を直接税が占めております。特に個人所得税収は米国のGDPが我が国の約2倍ですのに、我が国の所得税収の7倍近くとなっております。

他方、我が国やヨーロッパ各国のように、消費一般に広く負担を求める税は存在しません。今回の検討では、付加価値税等の導入についてもかなり議論が行われたところと聞いております。

なお、州レベルでは小売売上税や財産税が中心となっております。

4ページでございますが、租税負担率等の国際比較でございます。米国の国民負担率、それから潜在国民負担率は、主要国の中で最も低いわけですが、租税負担率に限ってみれば、わずかに日本のほうが低くなっております。また、米国では社会保障負担率が極めて低いわけですが、米国には我が国のような医療保険制度がないということや、米国の高齢化率は約12%でございまして、我が国の約20%よりもずっと低いということに注意を要します。逆に申しますと、我が国は国民皆保険の医療制度を持ち、また、世界トップクラスの高齢化率でありながら、租税負担率は米国と同じレベルの先進国中最低水準であるということでございます。

5ページをご覧いただきたいのですが、個別税目の概要です。個人所得税ですが、まず個人所得税の計算では、給与、報酬、事業収入、利子・配当など、原則としてあらゆる収入を総所得に算入し、そこから事業経費等や人的控除を引いて、さらに概算控除または実際の支出額を踏まえた項目別控除の選択制ということになっております。

それから、政策税制が様々ございまして、所得控除、税額控除もたくさんございまして、複雑でございます。今回は基礎的な控除の統合が議論されたところでございます。

さらに、全納税者に申告をしてもらうことになっていて、年末調整はございません。

また、高額所得者による節税行為を規制するという目的で、代替ミニマム税(Alternative minimum tax)というのですが、そういう制度が存在します。この制度は通常の所得税の計算とは別に、各種控除や租税特別措置などにつきまして、別の計算をもう一つ行って、二通り計算した結果のいずれか高いほうの税額を納税額とするものでございます。現在、代替ミニマム税は高額所得者の節税を規制するという当初の目的を離れて、むしろ納税者に無用の負担をしいるものとして批判の的となっているところです。

6ページをご覧ください。米国の法人税率は35%と、主要国の国税の中で比較的高い水準でございます。その一方で様々な租税特別措置がございます。また、一定の事業体では、事業体段階で法人課税の形で課税を受けるか、あるいは持ち分を保有する人に個人所得課税等を行う構成員課税をするか、そのいずれかを納税者自らが選択できるという仕組みがございます。このため日本に比べて法人課税の対象となる事業体の割合が低くて、税収に占める法人課税の割合が低い理由の一つとなっているところでございます。

7ページをご覧ください。最近の税制改革ですが、今のブッシュ政権下におきまして、2001年と2003年の二度、大規模な減税が行われました。個人所得税率あるいは子女税額控除、配当、長期キャピタルゲインへの課税、遺産税などをいずれも減税しております。いずれも時限措置としてつくられてございます。

8ページをご覧ください。以上を踏まえまして、2001年度以降、税収の対GDP比が大幅に落ち込んでいるということが見てとれるところでございます。

9ページ以下で改革案についてご説明をさせていただきたいと思います。ブッシュ政権は、2期目の政策課題の一つとして、歳入中立を前提として、「簡素・公平・経済成長の促進」のための税制改革というものを掲げました。そして、昨年の1月7日に税制改革諮問委員会(パネル)を設置いたしました。10ページにそのメンバーが出ております。元政治家、学者、市場関係者など9名の有識者から構成されました。マック元共和党上院議員が議長、それから前の民主党の上院議員のブローさんという方が副議長を務めました。学者の中で税の専門家は下から3番目のMITのポターバ教授でございます。

11ページをご覧いただきたいのですが、検討作業でございます。初めに参考人からのヒアリング等を行い、問題点を抽出し、5月ごろから具体的なオプションを検討する段階に移行して検討を重ね、最終的に11月1日に報告書が提出されたところでございます。

12ページで報告書の内容をごく簡単にご紹介いたしますと、まず基本理念として、簡素と公平と経済成長の促進等を挙げてございます。

まず、簡素につきましては、報告書の冒頭部分の記述で、「租税法規の複雑さは不公平感を生み、租税を軽減するためにルールを操作する機会を与えてしまう」、あるいは、「皆が公正に負担を分かち合っていることに自信が持てない」などと米国の税制の複雑さの問題点を鋭く指摘してございます。現行税制の複雑さの結果、米国の家計、企業、政府はいずれも多額のコストをしいられていることや、税制の複雑さによる歪みがもたらす巨額の経済的なロスの試算も紹介されているところでございます。

報告書におきましては、税制の複雑さが重大な問題であるとして、税制の簡素化に一番のプライオリティーを置いております。

次に公平な税制の重要性が指摘されてございます。例えば、租税特別措置や税制の複雑さによって生ずる抜け穴を利用して、租税回避スキームを生み出して顧客に売るというような行為が発生しております。こうしたことによる不公平感が税制への信頼をも揺るがしかねない状況であることが指摘されております。各種控除や租税特別措置の廃止、整理、統合が重要であると指摘されているところでございます。

最後に、経済成長の促進に関しましては、現行の税制がもたらす歪みの是正と貯蓄の促進が大きな柱になっています。歪みの是正につきましては、租税特別措置など経済に中立的ではない税制は、資源の非効率な使用を助長することになるので、経済成長の阻害要因となりかねないことが指摘されています。また、アメリカは非常に貯蓄率が低いのですが、低貯蓄率は資本の蓄積を妨げることから、複雑すぎる貯蓄優遇税制を整理して、使いやすくすることが指摘されているところでございます。

13ページでございますが、具体的な提案として報告書では二つの案を示してございます。第1の案は、現行の所得課税の原則を維持しながら大幅な簡素化を行う「簡素な所得税制案」、二つ目の案は、消費課税的な考え方を取り入れた「成長及び投資税制案」であります。いずれも税制全体を簡素化して、各家庭と企業の双方にメリットがあるというふうにしております。

両案の詳細は後ほど説明いたしますが、ここではポイントのみ申し上げます。まず、個人所得税の分野では、2案にほとんど相違点はございませんので、一括して解説いたします。税率構造については簡素化をする。焦点の代替ミニマム税については廃止を提案する。そして、これに伴う減収分を補てんするため、各種の政策税制を縮減・廃止していく。さらに、複雑多岐にわたる各種控除を2種類の制度に統合するというものであります。

なお、利子・配当所得については、両案で相違がありますが、後ほど述べさせていただきます。

14ページは法人の改正案ですが、二つの案には大きな相違があります。まず第1の「簡素な所得税制案」では、企業の売上高に応じて3分類をいたしまして、大企業については、あらゆる事業体について法人課税とする方式に改めまして、企業の組織形態の選択に与える歪みを排除するとしております。

一方で小企業については、現金主義会計の考え方を取り入れまして、土地・建物を除いて即時償却、在庫品についても資産計上しないといった改正案となっております。法人税率を31.5%に引き下げて、企業関係の租特約40種類を原則全廃するとしております。受取配当は原則非課税としております。

一方で第2案、「成長及び投資税制案」でございますが、こちらでは消費課税的な考え方を取り入れまして、あらゆる資産について即時償却、費用化を認める。それから、支払利子は損金不算入。受取利子等は非課税とする一方で、給与については個人段階で課税。形式は異なりますけれども、課税ベースがヨーロッパ的なVATと近くなります。ただ、個人段階で利子・配当等に15%の分離課税を行いますので、必ずしもヨーロッパ的な多段階累積排除型付加価値税と課税ベースが等しくはなっておりません。

なお、租税特別措置については、こちらもやはり原則として全廃としております。

15ページでございますが、もう一つ、我が国の消費税のような付加価値税の導入についても検討が行われました。さらに議論を深めるに値する選択肢であると位置づけられたところでございます。

主な指摘といたしましては、まず付加価値税は経済効率的であるとして、経済に与える負荷が小さいこと、貯蓄を促進し、投資を促進し、労働意欲や技術革新を阻害せずに、国際競争力にも資する。あるいは執行コストが低いと評価をしております。さらに、複数税率等の採用は租税回避を招きやすいこと、付加価値税の導入には州の小売売上税との調整が大きな問題であること、一部に税負担増につながるとの懸念があったことに言及をしております。

報告書のポイントは以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

それでは、今の宮内さんの話を受けまして、我々の調査グループがどういうことをやってきたかを、「総38-2 税制調査会海外視察報告」というものに従いましてご説明をしたいと思います。私のほうから大体総論的なことをあらまし申し上げまして、そのあと少し技術的な話も含めて、同行していただきました坂本さんのほうから後段のほうは説明いただくという手分けをしたいと考えております。

1ページ目をお開きください。ここでどういうスケジュールで、どういうことをやってきたかをご説明してあります。今、宮内さんのお話がありましたように、昨年の1月にブッシュ大統領が諮問して、この11月に報告を出しました。我々が行ったのが1月の末でありますから、ちょうど報告書が出たあと2か月たったあとです。そういう意味で、この報告書に対して各シンクタンク、あるいは国際機関等々のところでいろいろな議論が行われておりまして、それなりに我々が行った時期はよかったのかなと思っています。出た直後ですと、コメントとか評価が来るというよりは、どちらかというと中身だけの検討になっていると思いますが、今回の時期はそれなりに少し距離を置いて、この報告書に対していくつかコメントがあったと思います。

大きく言いますと、民主党系と共和党系、支持者によって違うのですが、やはり民主党系のほうは、この報告書はこんなものか、これがどういうふうに今後発展するかわからない、というような態度ですし、共和党系は、これぞこれからの指針になる、10年ぐらいかけてこの中身が付加価値税を含めて次第に実現するのではないか、という評価をいたしておりました。

1ページ目の訪問先を見ていただきますと、米国の政府・議会関係で財務省、内国歳入庁、あるいは大統領経済諮問会議、両院合同租税委員会、こういう議会・政府関係と、それから、現にパネルのメンバーでありました関係、事務局の人も含めてフレンツェルさんとカプファーさんという人と、それから外部の有識者として、ブルッキングス、アーバンインスティチュート、それからジョージタウンのパールマンさん。パールマンさんは2年前か3年前に、この税調でもご報告いただいている方であります。それから国際機関としてIMFのタックスのエクスパートと議論してまいりました。以上がワシントンの領域であります。

それからボストンのほうに移りまして、例のポターバさん、パネルのメンバーでありまして、一番今回の主役を演じたと言われる方でございますが、ポターバさんと会い、それからハーバードのロースクールのお3人、主としてタックスローの専門家と議論をしたという形であります。5日間しかなかったのでありますが、毎日二つか三つのアポをこなしまして、それなりに成果はあったと自負いたしております。

そこで、2ページ目に我々の問題意識をいくつか書いてございますが、まず最初に、歳入中立でやるということの意義です。アメリカも財政赤字を抱えています。社会保障の増大がこれから不可避とされている中で、こういう歳入中立で税収確保のほうはどうなるのかというので、この心配事。それから、歳入中立でどうやって成長を促進するのかといったような疑問。それから、例のレーガンの税制改正のとき以来、簡素簡素といっておるのですが、もう20年前から簡素と言って、まだ言っているわけで、一体どういうことが今回の狙い目なのか。それから、個人所得税、法人所得税、あるいは消費課税と言われるものの中身が一体どういうふうな形で今回提言されているかという話です。

それから、行く前から話題になっていたのですが、アメリカもやっと付加価値税というのを議論し出しました。これが今後どういう形でアメリカの税制改革論議の中で位置づけられるか、あるいは市民権を得るのか、この辺非常に興味があったわけであります。

3ページ目以下、訪問先でいくつか受けた印象のコメントを重要な点だけ六つ、七つにまとめておきましたので、これも簡単に触れたいと思います。

今、確かにアメリカは財政赤字に悩んでいますが、当局の説明によると、短期的なイラク戦費だとか、ハリケーンが来たとか、そういう臨時的なもので膨らんでいるので、これから本格的に歳出カットすれば、増税がなくても何とかなるのではないかという発想でしたが、これは財務省なり公のところの話でありまして、学者グループ等々になりますと、将来の赤字はやはり避けられないのではないか。それに対して今から議論したほうがいいだろうということであります。

それに対してブッシュは、自分の減税を2010年で終わらせるべく提案したのを恒久化したいと言っているわけでありまして、したがって、現行の税収の見積もりより将来さらに下げるわけです。したがって、それで下がったものとの税収中立でありますから、おそらくこれが財政赤字の将来の拡大要因になるのではないかというのが、もっぱらシンクタンクのエコノミストたちの意見でありました。

そういう意味で、将来、この財政赤字もさることながら、医療費等を含めて福祉の拡張は避けられない。そうなると、やはり付加価値税というのが早急に議論する背景が出てくるのではないかというような話が総論的な話でありました。

簡素は、2番目の項目でありますが、何が今問題かといいますと、申告用のソフトというのはすごく発展しています。IRSへ行って現にその話を聞きましたけど、全員が申告しなければいけないので、記帳義務が大変だと。それから、税制が複雑なだけに様々なテクニックをようして、タックスループホールですか、あるいは節税・脱税、その辺が温床になっているので、この辺をぜひ直したいと。と同時に、節税のために様々無駄をしているというのが識者の意見でございました。

それから、経済成長は先ほど申し上げましたように、絶えずアメリカの税制改正のタイトルには、「エコノミックグロース」とか「プログロース」とかという言葉を使うのですが、今回は減税を含んでいない歳入中立でどうやって成長を目指すのか。これは我が国でも問題になるのですが、要は課税ベースを拡大して、その財源で限界税率を下げて、投資、貯蓄、これに対して政府が支援しようという形で成長をなし遂げたいと。したがって、ロットの上では減税ができませんから、それほどパンチのきいた話ではないと思いますが、一つ限界税率を下げることによって、投資家あるいは企業家のマインドを上げたいということです。

ただし、レーガンが言っていたときのように、課税ベースを広げて税率を下げるといったことは、課税ベースを広げる幅はまだいっぱいあるのです。さっき言ったように、日本で言います租特は原則廃止と言っていますから。ただ、税率は所得税も法人税もかなり下げてきていますから、その下げ幅の程度は昔に比べて圧倒的に少ないので、昔ほどこのルートで経済成長ができるかどうかは疑問であろうと思います。

4ページ目、個人所得税をさっと書いてございますが、個人所得税は我々が学ぶとすれば、やはり課税ベースを広げたいということと、それから、雑多な所得控除を整理して、二つの税額控除という形で整理したいということだろうと思います。

それから、概算控除と項目別控除、アイテマイズの控除、これは従来選択肢になっていたのですが、そうではなくなりまして、片一方は家族控除というほうに吸収され、片一方だけ残るというような格好になりますし、そもそも我が国でも所得控除か税額控除かと議論になっているのですが、元来は冒頭に書いておきましたように、所得控除というのはそもそも担税力の減殺を救うため、税額控除はどちらかというとインセンティブだと分けて議論されていたようでありますが、最近それはごちゃごちゃになりまして、あまり区別はないのだという説明を受けました。

それから、我が国でもこれから税額控除をした場合、リファンダブルという言葉がしょっちゅう出ていたのですが、リファンダビリティーという意味で、要するに、税額控除を超えてしまった部分、その残りを給付面で見てやるかというあたりが、やはり向こうでもかなり議論になっているようであります。

5番目の法人所得税ですが、かなり優遇措置があって、補助金と化している。これを整理しない限り、さっき言ったシンプルという視点に合わないので、ぜひやりたいと。原則、租税特別的なところは廃止したいと言っていますが、そう具体的な話を盛り込んでいませんので、これがどこまで成果が上がるかどうかはよくわからないということだと思います。

それから、アメリカは、S法人、C法人、パートナーシップとさまざまな業態に分かれて、選択ができるとか何とかがあって、法人税が歪みを生んでいるという意味で、これを整理・統合したいというのも大きな狙いのようであります。

それから、5ページ目ですが、向こうは消費課税ということをしょっちゅう言います。英語はコンサンプション・タックスです。コンサンプション・タックスの意味合いがどうも大分議論の中で変わってきたと思いますが、ご存じのように、エクスペンディチャー・タックスで支出税的に、直接税として所得税から貯蓄を引いて消費だけかけるというような典型的な消費課税なのですが、初めは多分それを少し目指していたのでしょうね。ところが、貯蓄を完全にタックスフリーにするに対しては、かなり疑問が出されてきたようでありまして、したがって、コンサンプション・タックスベースにしていくと、これは成長とか投資とかにつながるのですが、さはさりながら、利子とか配当とかキャピタルゲインを完全タックスフリーでいいかという議論があって、最後に15%ずつ税をかけるといったような、成長の第2案のほうですが、そうなったりいろいろしてしまったという形で、この辺はずいぶん妥協があったのだと思います。

つまり、私の受けた印象では、総合課税というのを旗印にアメリカはずっと来たわけでありますが、その中に金融所得、あるいは資本所得を全部入れて総合課税というのは、そもそも限界に達した。そういう意味で、今、配当とかキャピタルゲインのほうはそれなりの分離課税的に扱われているわけでありまして、今回の二つの案も、やはり金融所得に対して、本来税率ゼロまでしたかったのでしょうけれども、そこまで行かず、ほかの所得と比べて大いに軽減するけれどもという形で、ちょうど日本が今やっているような形の二元的所得税的色彩が出てきたかなと思っています。つまり、資本所得、金融所得を一つのグループにして、もう一つは勤労性所得を別にしてという形でありまして、「デュアル・インカム・タックス」という言葉を使っておりませんが、消費課税という意味は、貯蓄を優遇するということだと理解できると思います。

それから、付加価値税ですが、しょっちゅう例のOECDとかEUを中心とした付加価値税率の表を見せられますが、そこにアメリカは入っていません。ああいうのを外で説明するときに、なぜアメリカがということをしょっちゅう言われるのですが、ご存じのように、アメリカというのは州段階で小売売上税があって、小売売上税と付加価値税というのはタックスベースが同じということで、なかなか二つを両立させるのは難しい。カナダだけ今入れていますけれども、カナダ並みにやっていくかどうかということが一つ議論の対象になったようであります。

そこで、パネルでもVATの導入は真剣に検討されており、パネルの最終報告でも1章を割いてかなり議論の成果が紹介されております。そこで、パールマンさんが言っていたことは、この方はレーガンのときの税制改正の関係者であったのですが、あのときは付加価値税なんて言っても相手にされなかった。しかし、今になって次第に付加価値税というのに対して、いうなれば学者を中心として関心が高まった。そういう意味で、これから本格的な議論というのは次第に巻き起こるのではないかと片や言っております。しかし、CEAとか、あるいは財務省の側からいうと、ブッシュがどうもこれを嫌いなのでしょうね。ブッシュさんは増税は大反対ですから。したがって付加価値税というのは問題だという立場になっているのでしょう。そういう意味で、財政当局、政府当局は、今からすぐ議論を始めてということにならないということは言っておりました。さはさりながら、今回のこの報告を受けて、様々なところで付加価値税も議論されるであろうということを言っておりました。

一番積極的だったのはパールマンさんなのですが、付加価値税のところの上から四つ目に書いてありますが、社会保障給付を賄うための増税が必要だとなれば、おそらくVAT、付加価値税に踏み切るということも将来あり得るのではないかと。

結局、大きな反対は、州の小売売上税との調和の問題と、それから、共和党系の議員を中心として、マネーマシンというものです。要するに、どんどん消費税率を上げて、税収確保のためのマネーをつくる機械と化すのではないかと。これはヨーロッパでもしょっちゅう言われた話でありますし、たしか日本でも言われていたのですが、マネーマシンと言われるなら、大体5%でとまっていないのです。やるならもっと上がるはずでありますが、やはり入れるときには心配があるということですね。これがおそらく二つの大きな理由で、今の段階ではだめだと。

私の個人的印象では、日本で1979年に大平さんが一般消費税を最初に言ってつぶれましたよね。あの時期に該当するのではないかと思います。それから日本は10年かけて、中曽根さんの売上税の問題もありましたけれども、入れました。アメリカも10年から15年たつと、様子が変わってきているのかなという印象を持ちますけれども、わかりません。時の政権が決めることだし、財政赤字なり福祉の財源でというときになると、一つの候補にはなり得るぐらいの感じかなとは思っています。

付加価値税のあと項目が立っておりませんでしたが、実は8番目に国際課税の問題があるのです。これはあとで坂本さんも触れてもらうかもしれませんが、アメリカは国際課税は今まで全世界所得という意味で、全世界の所得を対象に、いうなればレジデンスベースでやっていたわけです。今回これをソースアプローチに変えて、国外所得免税にしようというわけで、かなり変えたのです。この辺はアメリカが資本輸出国になるか、資本輸入国になるか等々を含めて、ここが非常に重要であったということを言う政府当局者の人、学者の人もおりまして、国際課税に対しても一石を投じたということかもしれません。

私のほうから5ページまでの内容を使いましてご説明しましたので、あとちょっとテクニカルな点にわたりまして6ページ以降、坂本さん、お願いします。そのあとで中里さん、あとで何かコメントがあったらしてください。

では、坂本さん、どうぞ。

坂本調査課課長補佐

それでは、補足的な説明といたしまして、ただいま石会長から出張報告にございましたけれども、関連する今回のアメリカの財政改革諮問委員会の報告書の議論の中のポイントとなります部分でありますとか、あるいは関連するアメリカの制度の若干細かい点、あるいは出張において若干補足的な事項として聞いてきた話などを簡単にご紹介させていただきたいと思います。

資料の続きのページの6ページのところでございます。まず第1のところで、歳入中立ということで、先ほどいろいろと歳入中立でいいのか、よくないのか、あるいはそもそも歳入中立というのがどうなのかという議論がございましたが、もともと諮問委員会の設置のときには、ブッシュ大統領から歳入中立ということで指示があって、諮問委員会で歳入中立という言葉をどう定義したかですけれども、米国の政府、財務省ですが、そこが公表している今後10年間の歳入見積りとほぼ同一の歳入が見込まれる、こういう税制改革案をつくりましたという説明でございます。そこに対して先ほどいろいろ議論があって、これが本当に十分かどうかという議論があったということは、この(参考)のところでございますが、政府が公表している歳入見積りというのは、今まだ法律上は時限措置になっているブッシュ減税が、今後2010年で本来終わるはずのものが10年間も続く、恒久化しているということを前提としている。こういう点でございます。

もう一つは、今後10年間の歳入見積りしか見ていない。したがって、それ以降の中長期的な歳入に対してこの提案がどういう影響を与えるかというところは見ていないという2点につきまして、若干批判的な見解もあったということでございます。

続きまして、2のところにまいります。現行税制の複雑さということで、今回、税制の簡素化が非常に大きなポイントとされておりますので、今のアメリカの税制がどういうふうに複雑なのかということを、諮問委員会ではどういうふうに議論していたのかということを簡単にご説明したいと思います。

第1のところでございますが、先ほど調査課長からご説明がございました代替ミニマム税でございます。これは非常に不評な制度だということでございますが、この代替ミニマム税につきましては図がございます。資料の9ページの図をご覧いただければと思います。この図の中の上のほうがまず通常の計算でございまして、納税者は1年たって申告をする際に、普通の所得税を計算いたします。これは上のラインでございまして、日本であれば、いろいろな控除を引いて、税率を掛けて金額を計算する。ここで終わるはずなのですが、アメリカの場合は、所得をもう一度再計算する。代替ミニマム税の図の下のほうに移ってまいります。代替ミニマム税の課税所得というのをもう一度再計算いたしまして、それに今度は26%または28%の別の税率を掛けて、もう一つの代替ミニマム税の金額を計算する。その代替ミニマム税と通常の所得税とどちらが高いかを比べて、より大きなほう、これが税額になる。こういう制度でございます。

これはもともと高額所得者がいろいろな控除をうまく操作して、通常の所得税だとほとんど払わなくて済む。今回の出張でもそういう話を聞いたのですが、昔、非常に高い高額所得者なのに、所得税を全く払っていない人がそれなりにいたということが問題視されてできた制度だということでございまして、一つの計算方法だと、どうしてもそれをうまく使ってしまうので、別な計算方法でもう一度再計算して税額を出そうという趣旨だったわけですが、2回計算しなければいけない、複雑だということで、非常に納税者にとって手間がかかるという問題になっている。こういうことでございます。

先ほどのページ、6ページに戻っていただきたいと思います。現行税制の複雑さの(2)と(3)のところでございますけれども、現行税制の複雑さとして、代替ミニマム税が最大の問題と言われているのですが、それ以外にも二つほど紹介されております。一つはフェーズアウト措置と書いてありますが、アメリカの場合には、税額控除とか所得控除の控除額が所得に応じて変化するものがたくさんありまして、それがいろいろ組み合わされているということになっておりまして、非常に複雑な構造となっているという点が指摘されてございます。もう一つはいろいろな租税特別措置があるということで、先ほどご説明があったかと思います。

次の7ページにまいります。個人所得課税でございます。個人所得課税に関する諮問委員会の提案でございますけれども、基本的な考え方としては、現行の制度は、個人所得課税については、いろいろな控除があるのだけれども、同じような政策目的の控除がいくつかある。そういうものを統合して、より簡素な制度にしようということが一つの大きな流れとなってございます。

(参考)のところでございますが、例えば子どものための控除であっても、所得控除である人的控除もあるし、それから、子女税額控除、これは1,000ドルの税額控除ですが、こういうものもある。あるいは教育費にかかる税額控除もあるということで、いろいろな制度が混在していまして、単に複雑になっているだけであると。とすれば一本化したほうがいいのではないかと、こういう提案がなされてございます。

それから、一つ飛ばしまして(3)のところでございますが、代替ミニマム税の廃止。これは非常に批判があるということで廃止をいたしまして、その財源として、代替ミニマム税自体が、これを廃止しますとかなり高所得者に対する減税となりますので、それを相殺するような形で、高所得者を主たる対象とした租税優遇措置を廃止する、あるいは規模の縮小をするということを提案しております。

一例を挙げますと、二つ目でございますけれども、現在、住宅ローン控除が所得控除で、上限は100万ドルのローンまで所得控除される。高所得者が非常に豪華な家を建てるということで、控除を受けられるという現状があるのを、税額控除化して低所得者に有利なようにするといったような制度を提案してございます。

続きまして、法人所得課税、4番のほうにまいります。まず一つ目は、租税特別措置がいろいろあり、廃止を提案ということで、先ほどご説明がございました。

二つ目の事業体のところでございますけれども、こちらにつきましては、11ページに現行のアメリカの事業体について資料がついてございますので、こちらをご参照ください。アメリカでは、法人とパートナーシップ、その中でも細かくあるのですけれども、大きく分けて法人とパートナーシップがありまして、法人の中でもC法人とS法人ということで、それぞれ税制上の取り扱いが異なります。C法人の約200万、これだけが法人課税で、それ以外は構成員課税となっているわけでございますが、今回の報告書では、こういう制度がいろいろあることで、そのすき間みたいなものを利用した租税回避行為といったようなものを防ぐような観点、あるいはいろいろな課税形態があることによる歪みを正すべきだというような観点から、提言がなされているということでございます。

資料のほう、戻りまして8ページでございます。先ほど石会長からもご説明がありました消費を課税ベースとする提案、アメリカでは今回の出張でもコンサンプション・タックスということが言われておりまして、これは何を意味して諮問委員会はそういうことを提案しているのだろうということを、図を使ってご説明させていただきたいと思います。

資料の14ページに付加価値税と第[2]案の課税対象のイメージとを書いた図がございますので、こちらをご参照ください。この図の左側が付加価値税でございまして、これはヨーロッパなどの消費税、付加価値税でございます。この中で黒く網掛けをしてある部分が課税対象でございます。つまり、消費税を納付するときには法人、法人に限らず事業者ですけれども、まず全体が売上でございまして、下の設備投資と原材料、この部分が仕入れに当たるということで、売上から仕入を引いたものが消費税の課税ベースであるというのが付加価値税でございます。

右側の成長及び投資税制案というのが今回のアメリカの諮問委員会の提案でございます。これは何をやるかと申しますと、非常にラフな言い方を申しますと、法人税と所得税をうまく組み合わせて、消費税と同じものに課税しましょうと、そういう発想でございます。これは具体的には法人税の世界では、法人の中で法人の売上から原料費、あるいは設備投資、それに加えて従業員の給与というものを控除してやる。この課税対象として残った黒い部分に課税をする。

一方で、右側でございますけれども、個人については、黒いところ、濃い色のところですが、給与に課税するということを足しますと、左側の付加価値税と同じ課税ベースになるということで、消費税だとアメリカでは議論されているようでございます。

ただ、先ほど会長の報告にありましたように、斜線の部分、個人の利子あるいは配当、キャピタルゲインにつきましては、消費税と全く同じにするのであれば、これが白い部分になるはずなのですが、そこは今回15%の分離課税とするというような提案になってございます。

資料のほう、戻りまして8ページ、最後に付加価値税について、報告書の内容が書いてございますけれども、こちらにつきましては、先ほど調査課長から説明がございましたので、説明は省略させていただきます。

それでは、資料の最後のページ、15ページでございます。これは最近出ております大統領の予算教書、あるいはそれに対する財務省の公式な説明の中で、今回の税制改革がどのように扱われているかというものを訳したものでございます。

大統領の予算教書の中では、「大統領は、連邦税制をより簡素・公平・成長促進的なものとするための改革の必要性を強調してきた。」と言及されてございまして、この財務省発表の予算教書演説では、ここの2行目でございますが、「税制は、納税者が、税制がもたらす歪みを離れ、経済的便益に基づいて判断できるものであるべきである。二大政党が団結して取り組んだ税制改革諮問委員会の報告書は、現代経済の必要性に対応した税制を確立する方法に係る議論のための強固な土台を提供した。」と、こういうふうに今回の報告書が評価されてございます。

一番最後のところでございますが、今回の報告書を受けて、財務省でいろいろと税制改革を検討している。今そういう段階にあると思いますけれども、「財務省は、今後数ヶ月間、税制改革の研究を続け、一般国民との意見交換を行っていくだろう。」と、こういうふうに記述されております。

補足説明は以上でございます。

石会長

それでは、中里さん、もし補足があれば。特に国際課税あたりでお気づきの点があれば、ちょっとご説明ください。

中里委員

詳しいことは石先生と坂本補佐のご説明で全部入っていますが、印象に残ったことは二つです。

一つは、簡素化のところで、帳簿記録の作成があまりにも納税者にとって大きな負担になりすぎているということに対して、けっこうきつい指摘がございました。公平な課税を達成するためには、正確な帳簿記録を持つということが必要になりますが、あまりそれもきちっといいますと、納税者のほうに大きな負担になる。場合によっては、一定程度の給与所得控除のような低い標準率のようなものが必要かなという感じを持ちました。

もう一つは、先ほども指摘がありましたけれども、帳簿自体が複雑なことは、それはそれでいいのだと。問題は課税逃れの可能性があるということが、結局資源配分に歪みを生じて、不必要な投資を促進し、デッドウエイトロスを生ずるということで、経済的に非常に望ましくない。それがアメリカでは顕著であったということに関する指摘です。

国際課税につきましては、先ほど坂本補佐の説明でございましたけれども、これは実質は付加価値税ではないのですが、何とか課税ベースが消費と共通するというようなところがあるので、消費型であると。そうすると、付加価値税と実質が一緒なのだから、付加価値税であれば、輸出免税・輸入課税という国際的な二重課税の排除措置が理論的には自然である。したがって、そういう所得税、法人税のもとにおいては、国外所得免税というやり方で、今のような全世界所得に課税して、外国税額控除を認めるというのではなくて、国外所得を免税にするということで、国際的な二重課税の調整をするというのが比較的自然なのだと、そういう説明でしたけれども、我々の議論では、直接税ですから、課税ベースがいくら共通でも、直接税でそれをやったら、GATT・WTOに違反するのではないかという意識でしたけれども、あまりそういうことは向こうではおっしゃっていなかったので、ちょっと驚きました。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

それでは、今の我々の説明につきまして、皆さんからいろいろご質問あるいはご意見があろうかと思いますので、少し時間を取りたいと思います。アメリカの税制改革案につきまして、どうぞご発言ください。宮島さんか奥野さんあたりないですか。学者グループとして。

宮島特別委員

ありがとうございました。大変おもしろかったです。今、最後の中里さんのお話を含めて、コンサンプション・タックスというときに、シャウプの有名な古典的な議論があって、資本所得免除型のものと即時償却型の仕入控除型は同じものであると。ただ、税の外見は非常に違う。そうすると、今日の議論は、先ほどお話のあったアメリカ型のコンサンプション・タックスの理解というのは、資本所得控除型のものを考えているわけですが、それは法人税と所得税をそういうふうに変えるわけですね。そのことと、間接税型の仕入控除型の消費課税の話は、相互に排除するものですか。へたをすると、あとで間接税型のを入れて、法人税と所得税のほうもコンサンプション・タックスだという話になってしまうのか。

石会長

後段のほうです。つまり、付加価値税をアド・オン・VATと言葉で言っているように、あるものに変えてという話ではないのです。つけ加えるのです。したがって、付加価値税は難しかろうという議論をしていましたよ。

それから、コンサンプション・タックスの説明のときに、今、坂本さんが書いてくれた図が一番わかりいいので使いましたけれども、やはり法人税は法人税で残すし、所得は所得で残すのです。全面的にAとBの税をスイッチして何だかんだというよりは、やはり既存の税目はそのままにしておいて、そこで部分的に修正していく。ただ、説明の要因として、資本所得を軽減したいから、外したいから、コンサンプション・タックスを言っているだけだと理解しましたけれども、そこはあまり整合的でなくて、最後は利子・配当・キャピタルゲインに15%という話も持ってきて、まあ、この辺は妥協ですね。そういう意味では、日本によくある話です。そんな感じを持ちました。

宮島特別委員

もう一つ、今回のヒアリングの範囲ではなかったかもしれませんが、ポターバは、僕の知っている限りにおいては、彼が主宰している雑誌で非常に環境税のことを積極的に議論している学者なのです。アメリカが一体その問題をどう考えているのかということを何か聞かれたかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。

石会長

私もポターバを個人的に知っていて、いろいろ議論しましたけれども、今回はこれには一切触れていないですね。したがって、触れていないのにまたほじくり返してということをしてはと思いまして、私もあえて聞かなかったという形で、環境税の話は、そもそも京都議定書の話もあって、アメリカの税制には表立って登場してこないなという印象で、ポターバはポターバで個人的に言っているのだろうと思います。

川北さん、どうぞ。

川北専門委員

付加価値税に関連してちょっとお聞きしたいのですが、先ほど州の小売売上税は課税ベースが同じだとおっしゃいました。ただし税の性格はどういうものなのですか。つまり、昔の取引高税みたいに多段階で累積していくものなのか、それとも付加価値税なのか、それとも最後の段階だけにかかるものなのか。

石会長

今度の付加価値の構想ですか。

川北専門委員

いや、そうではなくて、今ある小売売上税。

石会長

これはもう完全に最終的な小売段階でまとめてかける。ご存じのように、メーカーから卸、小売、最終消費者まで来る付加価値税の合計は、小売売上税に全部集約できるので、面倒くさいことを除けば、課税ベースは全く同じなのです。現在は小売段階でごそっと8か9かけているわけです。今回、連邦が考えているのは、日本と同じように、売上マイナス仕入れという形で順繰りに送っていってという話ですから、パールマンさんあたりに言わせると、5%ぐらいの連邦の付加価値税なら可能だろうと。例えばニューヨークぐらいで8%ぐらいの小売売上税にしておいて、12~13%小売段階で我々が払うということですよね。ただ、連邦の段階だけ、今言った順送りで来る付加価値税を残すという議論をしていました。カナダがそうなんですよ。

川北専門委員

しかし、仕組みが違ってもそういうふうに並存できるものなのですか。

石会長

できるのではないですか。かえってノウハウがあっていいのではないかと思いますけれども、わかりません。この辺、州は当然のことながら大反対ですよ。何となく自分たちのテリトリーが脅かされるのではないかという話があって、おそらくその辺があったのではないでしょうか。その辺はこれからの議論だろうと思っています。

ほかにいかがでしょう。岩崎さん。

岩専門委員

代替ミニマム税のとらえ方ですが、要するに複雑だという批判があるということで、確かに聞いていてもわからない。複雑ですよね。だけど、一定のかなりの高所得者であれば、複雑なものであっても、さして問題ではないのではないのかということが一つ。

ひるがえって日本でそれを当てはめてみれば、マネーゲームでがっぽり稼いでおる連中に対する批判というか、それはずいぶんありますよね。その辺のところにひょっとしてこういうものを適用してやっても、つまり別枠の税体系、別枠の税体系と言っては変かな。つまり簡素化と矛盾はしない形で、むしろやってもいいのかなというふうな議論はないのですか。

石会長

僕が聞いた話では岩さんの発言が初めてです。日本版代替ミニマム税をつくろうということですね。それがあってもいいではないかと。

岩専門委員

あってもいいという議論はないのかということです。

石会長

これから大いに巻き起こすことはあるのかもしれないけど、ただ、これが今だめになったのは、ひとえに数がどんどん増えてきてしまったからです。そこで、並みの人まで2通り計算しなければいけないということで、耐えられないという形なのです。

坂本さん、この辺の代替ミニマム税の数がどこかに書いてありましたか。6ページですか。その辺の背景をちょっと説明してください。

坂本調査課課長補佐

資料の6ページ、(参考)のところの上から6行目に書いてございますけれども、報告書を公表したときには、代替ミニマム税の基礎控除の額が4万5,000ドルから5万8,000ドルということで、時限措置として引上げを行っておりました。これはなぜかといいますと、代替ミニマム税の適用者が増えて問題になるということで、基礎控除額を引き上げたわけですけれども、それは時限措置ですので、2006年現在ではなくなっているということで、昨年の報告書公表段階では500万人程度の高額納税者だったのが、2006年、今年は2,000万人が対象となる。さらに対象者は増えていくだろうと言われております。

ただ、この引上げの時限措置については、現在ブッシュ政権のほうから延長の提案がなされているのが現状でございます。

石会長

というわけで、あまりにも対象者が広がってしまって、対応しきれないということですね。最初の狙いどおりであったらよかったのでしょうけど。

出口さん、お手が挙がっていましたね。どうぞ。

出口特別委員

二つほどあるのですが、一つは、以前この場で石会長が、酒税について海外の事例もちょっと見ておきたいというお話がありましたし、今回、羽生さんがいらっしゃっていて、税調全体としては国から地方へということで、地方税に関心があります。今回の説明は大体連邦税中心だったのですが、酒税とか地方税において、何か今回聞いてきたことであったのかどうかが1点。

もう一つは、おそらく私の理解が悪いのだと思うのですけれども、歳入中立という話ではあったのですが、聞いていましたら、何となく増税に聞こえたのです。具体例を言いますと、例えば7ページで、法人所得課税などで40種類の租税優遇措置を廃止する。これはまことに結構な話ですけれども、この話をすれば当然税の増収になりますし、その上の1%の所得の足切りも入れるというのだったら、それはそれでいいのですけれども、これも税の増収になって、歳入中立ということであれば、何か両方のバランスがあって説明が出てきて当然かと思うのです。私の理解不足ならそれはそれでいいのですけれども、ざっと聞いた限りにおいては、何か税金が増えるような話が聞こえてしまったのです。その点について。

石会長

第2番目からお答えしますが、個別に所得税は所得税、法人税は法人税で歳入中立ではないのです。まとめて一括して、ラフな伸ばし方をしたあとでやるというわけで、細かい出入りは計算していないのです。したがって、法人税で40種類租特を廃止した増税と、法人税率を35から31.5に下げたもののあれはやっていません。おそらく40種類全廃といっても、できっこないと思っているんですよ。私もそう思いますね。その辺はこの9人のメンバーの方は、細かい歳入中立の個別でやっていないというので、その辺はいかようにも解釈で、そういう意味では出口さんの解釈は正しいですよ。

それから、酒税、たばこ税云々の個別消費税については、今回一切触れていません。例のパネルの最終報告は、今言った二つの案と、それから、連邦付加価値税と連邦小売税(Federal Retail Tax)というのをやっておりまして、細かく読めば、酒とかたばこかという話があるけど、さっきの宮内さんの説明は、酒とかたばこの税収が数%です。そういうわけで、アメリカはどうもエクサイス・タックスというのは連邦段階ではあまりかけない。おそらくこれは州でしょう。

それから、今回は地方税の改革は一切関心を持っておりませんから、地方税の話はあまり議論になりませんでした。唯一あったのは、付加価値税を入れたときに州の小売売上税とどうバッティングするか。それから、地方税の控除をなくしてしまうといっているので、一体どういうポイントがあるかといったぐらいの2点です。

これは羽生さんがしつこく聞いていたけど、羽生さん、あなたが行った印象で、地方のほうに及ぶ影響等々で何かご意見があれば。

羽生都道府県税課課長補佐

小売売上税と連邦付加価値税の調整というのは、やはり気になるところでありましたので、そこはいくつかのところで質問もしてきました。やはり小売売上税をどうするかということについては、州なり地方政府の心配というのは当然あるだろうと。それはレジティメートなコンサーンである。もっともな心配ですよねというような話もありました。

ただ、一方で、例えば先ほども出ていましたパールマン先生などがおっしゃっていましたのは、アメリカ人は今、小売売上税を払うのに非常に慣れているので、そのときに例えば州と市町村を分けて何パーセントずつとかとあまり気にしていないところもありますので、現実に今所得税は連邦に払っていて、小売売上税は地方政府に払っているというイメージはみんな持たれているけれども、では実際に上乗せしたときに反発が強いかというと、意外とそうでもないのではないか、という話もありました。

もう一つ、所得税に関して地方の所得税を控除する仕組みがあります。これは我が国は今、税源移譲の中で所得税と個人住民税の配分ということを調整して、まさに今法案を出しているわけで、それと比べますとかなり仕組みが違うわけですけれども、そのときに所得税の地方税控除というものを外すということは、地方から相当反発があるだろうという話を関係者から聞きました。

また意外なところで、学会の一部からは、例えばそういった地方税の控除を廃止してしまいますと、地方に今、実質的な補助金として控除された分が回っているような形になっていますので、控除が廃止された場合に、例えば地方が教育にかかる歳出を減らしたりということになると、いろいろ問題もあるという指摘を受けたというようなことを、起草委員の一人であるポターバ先生がおっしゃっていたというのが印象に残っております。

石会長

ありがとうございました。ほかによろしゅうございますか。どうぞ、菊池さん。

菊池委員

単純な質問ですけれども、アメリカの連邦税と地方税の割合は、日本は6・4程度ですけれども、どうなっていますか。

もう一つ、あちらは宗教法人とか学校法人等は、何か組合とかで税率を下げるというのはあるのですか。

石会長

国と地方の比率はわかりますか。おそらく日本が6対4ぐらいですけど、もっと連邦のほうが取っていたのではないかな。なければまたあとで出していただくとして……。

それから、おっしゃる宗教法人、公益法人云々の話は、多分あるのだろうと思います。寄附関係もありますから。ただ、今回はそういう特別な法人についての考察は全くと言っていいほどなかったです。細かく読めばあるのかもしれないけれども、読んでいませんので、また何かありましたら、事務局に調べてもらってご報告してもらいましょう。

株丹企画課長

お手元に分厚い資料がありまして、その下に地方税の関係の資料がございます。そこの45ページに日本を含めた各国の国税と地方税の額が入ってございます。数字だけ申し上げますと、アメリカの場合について、国税135兆円、地方税、これには州税が入ってございますけれども、114兆円という数字、135と114という数字が入ってございます。詳しい内訳は手元にございませんが、白い表紙のハンドブックの中の45ページです。

石会長

では、奥野さん、どうぞ。

奥野委員

答えにくい質問ではないかと思うのですが、今、日本は抜本税制改革ということを言われています。今回のご報告を聞いていて、我々がそれなりに対処した部分と、ややアメリカに特殊な部分、それがほとんどですが、私が一つだけ非常に気になって、これをやれるのだったら日本も対処しなければいけないのではないかというのが、法人税の減価償却の即時償却と支払利子非課税です。もしアメリカが動けば、これはかなり国際標準になりかねないので、そうすると日本はどうするのだと言われそうな気がするのです。非常にしにくい質問ですが、どのぐらい可能性がある話なのでしょうか。

石会長

それより今2案出ているんです。プラン1とプラン2が出ていまして、これをどっちか取るかという質問をしても、必ずしも回答が返ってこないし、9人いるパネルメンバーは2つに分かれて、各々案を独自にやって、最後すり合わせというよりは、2つポンと出してしまったという意味で、内容的には相互に検討していないのです。

おっしゃった法人税絡みの話で、どこまで即時償却と利子非課税が、一つのアイデアですが、これが実現するかどうか、全くパネルの人たちも考えていないのではないですか。したがって、これから要は政治的プロセスに乗っかっていくわけです。政治的プロセスに乗っかっていく段階で今のような話が実現性を帯びてくるのか、あるいは無視されてしまうのか、その辺が出てくるのだと思います。

いずれにいたしましても、レーガン税制改正だって、時間的にずいぶんかかっていました。したがって、今回のブッシュのパネルの報告書がすぐ取り上げられなくても不思議はないよと、大体、財務省もCEAも考えていますから、今の恐れはあるとも言えるし、ないとも言えるけれども、そうドラスティックにやってこないような気もします。それよりきっと基本税率が下がる可能性はあるのでしょう。減税が好きな国だから。そうなると、日本の基本税率とのギャップがあって、日本の法人税を引き下げろという圧力にはなるかもしれませんね。

よろしゅうございますか。ほかにもまだあろうかと思いますが、今日、主計局の方のご説明を受ける意味で、今お見えいただいていますので、とりあえず時間があったらまた戻る形にいたしまして、次の取り残した宿題についてのご説明をいただくことにしたいと思います。

前回の会合で、税収に関していくつか質問がございました。それから、歳出、改革と展望、後年度影響試算等々につきましてもご質問がございました。これを各々主税局、主計局からご説明いただきたいと思います。

最初に、永長総務課長のほうから、税収に関しましていくつかの質問にお答えいただけますか。

永長総務課長

お手元の「総38-3 補足説明資料[1]」という横の資料をお願いいたします。11ページをご覧いただきまして、17年度、18年度の税収がどういうふうに動いているのか、数字だけ見るとちょっとわかりにくいというご指摘がございました。1ページがそのポンチ絵でございますが、我々、税収の見積りをする際には、予算編成時点のいわゆる進行年度、去年の年末の予算編成であれば、17年度の税収の見込みをまず立てます。その上で、それを発射台と申しますか、それにいろいろな計数を掛ける。こういうことで翌年度の税収を見通す。こういう作業をしておるわけでございます。

ここでご覧いただきますと、左から2列目の柱でございますが、17年度の補正後予算です。これは44兆円という当初予算に対しまして、トータルでは一番上のところにあります47兆円、3兆円の補正増をしております。その中身でございますが、土台増というのが1.5兆円ございます。これは実は17年度当初予算をつくっていた段階で見込んでおった16年度の補正後予算、それよりも実は16年度決算で1.5兆円ほど上ぶれしましたので、そういう意味では17年度の積算の発射台が1.5兆円上乗せされる。そこでこの土台増1.5兆円というのがあるわけです。逆に申しますと、この1.5兆円というのは、17年度において生じた増収というよりは、前年、16年度中に生じていた税収増、これのはね返り分がここに入っているということでございます。

それに加えまして年度中の経済動向等による増収が約8,000億円あるだろうと。この辺は実は大法人ヒアリングでありますとか、いろいろな方面からの聞き取り等々をいたしまして、そういう意味では、積上げによって見積りをしておるということでございます。

その結果、46.4兆円という若干薄めになっている数字がございます。四捨五入の関係でちょっと違ってきますが、それに0.7兆円の特殊要因というのを足して47兆円になります。この特殊要因というのは、下の(注1)にございますが、金融機関の公的資金の返済。これは公的資金を出す際に優先株式を預保が受け付けるわけですが、それを金融機関側が買い戻すという形で公的資金を返済する。これは実は金融機関側からすると、自社株の買取りということになりまして、細かな説明は割愛しますが、その際にみなし配当課税として自動的に源泉徴収されるということになります。実はそれなりに公的資金の返済等が塊であったものですから、それが7,000億円ほどあります。それを足して補正予算書に出てまいります47兆円という数字があるわけです。

実はこの7,000億円というのは、ある種、一旦お預かりしているだけの税金でございまして、その預保等の金融機関が18年度に納税がない場合、還付をするというものでございます。そういう意味では、土台に入れられない、一旦お預かりしているだけの税収であるという意味で、真の土台はこの46.4兆円になります。

これを出発点にいたしまして左から三つ目の柱ですが、過去の税制改正、これは17年度以前の税制改正のはね返り、これが約6,000億円プラス、さらに18年度の経済動向等で約1兆円の増収を見込むということで48兆円、このようになっております。そこから先ほど申し上げた一旦お預かりした税金、これを7,000億円返す。これは還付△になります。その上で47.4兆円になり、それに普通の税制改正で初年度約4,000億円、さらにこれは三位一体の絡みですが、所得譲与税で前年に比べまして1.9兆円の減になるということで、45.9兆円という数字が出てまいります。

このように入れ繰りがあり、かつ、特殊要因というものがあるということで、税収の流れと比較すると、ややわかりにくい姿になっているわけでございます。

ちなみに、18年度の経済動向等で約1兆円の増収を見込んでおると、左から三つ目の柱で申しました。

次のページ、「平成18年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」ということで、先月の20日に閣議決定したいわゆる経済見通しでございます。税収の自然増収といったことについて、いろいろなご議論もあるわけでございますが、表で申しますと、国内総生産、それの一番右上ですが、名目値で2.0、実質値で1.9ですが、全税収にこの名目GDPの伸び、それにいわゆる弾性値をぽこっと掛ける。こういうことで計算をしているわけでは実はございません。例えば下から3分の1ぐらいのところで、鉱工業生産指数、18年度の見通しとしては+2.9となっています。法人税の製造業からの税収というのは、この伸びで入ってくるのではないかとか、例えば小売とかサービス関係からの法人税、これについては一番上のほうの民間最終消費支出の伸び、さらに消費税でいえば、同じように民間最終消費支出、所得税についていえば、ちょうど真ん中あたりですが、雇用者報酬といったものがございます。あくまで名目GDPの最後の数字をぽこっと掛けるのではなくて、それをブレイクダウンした指標を我々それぞれの税収に当てはめて、その結果、先ほど申し上げた1.1兆円といった自然増収が見込まれる。経済成長に応じて自然増収が出るというのは、我々としても大変期待をしているところですが、後ほど主計局からもお話がありますが、反面、歳出のほうでも伸びる要素もあるということでございます。

税収関係の二つ目の話で、繰越欠損額の様子について教えてくれというご指摘がございました。ページでは3ページでございますが、一番下の黒い棒グラフが繰越欠損、いわゆるストックベースでございます。その上にやや灰色になっておりますが、課税所得、所得金額で、この差引き、例えば15年でご覧いただきますと、43.2兆円から10.4兆円、これは今既に持っていた繰欠を差し引くということで、43.2兆円から10兆円ほど引かれて、課税所得としては32.8兆円になる。それに雑駁に申しますと3割を掛けて10兆円となるわけでございます。ご覧になりますように、平成12年あたり、この辺が繰欠のピークと申しますか、ボトムと申しますか、90兆円を上回る繰欠がございました。それが現在は70兆円のほうに向かってきているという姿でございます。

16年の資料が来月か再来月あたりに出てくるわけでございます。この繰越欠損額の様子を見ると、そんなにドラスティックに減っているわけではないと思っておりますが、また数字が出ればご説明をいたしたいと思います。

その上のところ、課税所得、所得金額、これは足もとまでわかりますが、16年、17年の経常利益ということで、17年の補正ベースで我々見込んでおりますのが53.2兆円ということでございます。実はこれはバブル期の平成2年の水準に戻っているという姿でございます。18年度の我々の税収の見込み、これは13兆円余見込んでおりますが、税率30%を前提に、これは当然ですが、出している数字でございます。このバブル期、例えば平成2年以前は40%の税率でございました。単純に13兆円余を30%で割って、40%で掛ける。仮に40%の税率であったといたしますと17.5兆円。そういう意味では、法人税収はバブル期並みの水準に現在は戻っているということでございます。

それから、次の4ページでございますが、繰欠の動きを若干細かめに見たものでございます。ずっと下の欄をご覧いただきますと、その中でも黒く塗っている部分がございます。ちょうど真ん中に点々で囲んでいるものですが、当年分の繰欠の増加額ということでございます。すなわち、前年度末にストックとしてあった繰越欠損額、これはストックでございます。そのうちの一部を翌年度に控除をする。各企業で益が出たところは控除をするというものがあります。それは差し引きになるわけです。上をご覧いただきますと、累年数兆の控除が行われている。逆に言うと、その分は減ってなければいけないのですが、新規に増えている繰欠があるというわけでございます。もちろん、現在は現行法では7年ですが、期限切れで消えていく繰欠もございまして、この当年分の繰越欠損の増加額というのは、新規に増加した繰越欠損から期限切れで消えていった繰欠を除いた姿になっております。

実は平成15年、新規に当年分の繰越欠損が増加しておる。この辺は、いろいろなところがリストラ努力等々をいたしますと、むしろ損が出る、ないしは損を出す、そういうところがけっこうあったということではなかろうかと。

さらに5ページでございますが、業種で分類をいたしてみました。一番右のところ、主だったところで金融保険、サービス、小売、下のほうで不動産、卸売、機械工業、建設業。あまりに細かくなるのでその他残りを11業種としております。これをご覧いただきますと、90兆円余から現在70兆円まで20兆円ほど減ってきたということなのですが、実は減っているのは不動産業、ここに原因があります。逆に申しますと、ほかの業種の繰越欠損は増えたり減ったり、傾向的にどんどん減っているという状況にはございません。繰り返しになりますが、不動産業というのが大幅に減らしたということでございます。

ちなみに、その次の6ページでございますが、これは先ほどのグラフの上のほう、所得金額を業種別に割ったものでございます。ざっとご覧いただきますが、今申し上げた繰越欠損がどかっと減っている業種である不動産業というのは、これに大体30%を掛ければ税収になるわけですが、もともと税金をそんなに納めている業種ではないということでございます。

次の7ページでございますが、今度は繰欠の中小企業と大法人、これに分けたものでございます。これをご覧いただきますと、やはりピーク時からどかっと減っているのは、資本金1億円未満のいわゆる中小企業でございます。この1億円以上の大法人につきましては、実はそんなに減りもしないし、増えてもいない。こういう状況が見て取れるわけでございます。

先ほどと同じ作業でございますが、次の8ページ、これも払っていただける源泉である所得金額を、資本金1億円以上と1億円未満で割ったものでございます。下の黒い部分、繰欠がかなり目覚しく減っている分野、この1億円未満の中小企業は、実は所得金額は11兆円ちょっとで、ある種安定的に推移をしているということが見て取れるわけでございます。

最後に9ページでございますが、さて、法人税収は、今申し上げたように繰越欠損との関係も大切なのですが、基本的にはやはりその年度に生じる経常利益がどのように動いていくのかというのが、一番我々は気にしているところでございます。棒グラフが法人税収でございますが、それを伸び率に換算したものが真ん中の折れ線グラフでございます。-15.2、-7.0などとずっとマイナスが続いていたわけでございますが、平成15年度分から6.2、13.1と、税収の伸び率が16年度には2桁にもなったわけでございます。

その背景は経常利益の伸び率で、ストンと落ちたのが13年度ですが、それ以降、実は経常利益自体が+16.4、+14.4、+20.3というふうに回復してきてくれている。経常利益が最高水準を更新しておる、こういう新聞記事がよく出ます。大変喜ばしいことではございます。我々としてもどんどんそういう方向で行ってほしいのですが、実は史上最高を更新できなかったということになれば、法人税収はむしろ前年に比してマイナスになるということを意味するわけです。増収が見込めるというのは、やはり経常利益がどんどん伸びるということでございまして、最高水準を更新するということ自体は、ある種我々はむしろ当たり前として受けとめなければいけない。いくら伸びていくかというのが実は大切なのですが、足もとをご覧いただきますと、12月時点では5.4%、おそらくこれは3月、それから実績にかけて若干膨らむと思いますが、どんどん伸び率が増えていっているという状況にはございません。ある種ボトムからはい上がるときのオーバーシュート、それを超えまして巡航速度に戻りつつある。逆に言うと、自然増収の幅はどんどんこれから大きくなるというよりは、むしろ落ち着いたものになっていくのびはないかということが想定されるわけでございます。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

主計局のお三方、お待たせしました。申しわけありません。川嶋さん、岡本さん、向井さん、それでは、後年度影響試算以下のことをちょっとご説明いただけますか。よろしくお願いします。

川嶋主計企画官

主計局の川嶋でございます。よろしくお願いします。それでは、「補足説明資料[2]」というものに基づきまして、ご説明させていただきます。

1枚おめくりいただきまして1ページでございますが、これは「構造改革と経済財政の中期展望-2005年度改定」、いわゆる「改革と展望」のマクロ経済部分と財政の健全化部分を抜書きしたものでございます。これはご覧いただきましたら中身はわかりますから、簡単にポイントだけ申し上げますと、特に財政の健全化の部分につきましては、真ん中あたりに、「2006年の年央を目途に、『歳出・歳入一体改革』の選択肢及び改革工程を明らかにする」とされておりまして、以下、ローマ数字のからで原則が書いてあります。一番最後の行に、「2006年度中に『歳出・歳入一体改革』についての結論を得る」と今後の予定が書かれてございます。

それから、3ページをご覧いただけますでしょうか。これは今申しました「改革と展望」の参考資料といたしまして、内閣府が試算したものでございます。内閣府試算は席上に配付しております分厚いものであり、3ページは、その要点だけ、特に財政に関する要点だけを抜き出ししたものでございます。これに沿ってご説明いたします。

この試算は、あとで申します後年度影響試算とは異なりまして、国と地方について、計量モデルで試算しております。

まず、この試算の内容でございますけれども、左上にありますように、基本ケースとリスクケースという二つのケースについて試算してございます。基本ケースというのは、改革と展望に沿って経済が順調に発展するというケースでございまして、リスクケースといいますのは、種々の下方リスクが顕在化するといったケースでございます。

また、それぞれのケースにつきまして、右の箱にありますように、国と地方を合わせた基礎的財政収支を、2011年度(平成23年度)に黒字化するために追加的に必要となる財政収支改善努力をする場合と、そういった努力をしない場合の二通りについて試算してございます。

右上の箱の(1)の追加的改善努力をする場合の追加的改善努力の内容でございますけれども、この試算では便宜的に投資的経費、物件費などの裁量的経費のみを削減して黒字化を達成するという仮定での試算になってございます。

結論でございますけれども、右下の網掛け部分に書いてございます。(注)と書いているところですが、まず、追加的改善努力がない場合、いわば自然体のケースについて申し上げますと、これでいきますと、2011年度には基礎的財政収支は、基本ケース、経済が順調に発展するケースで14.9兆円程度の赤字、GDP比で2.4%程度の赤字、リスクケースでは15.8兆円程度の赤字、GDP比2.7%程度の赤字になるという試算結果が示されております。

また、2011年度に基礎的財政収支を黒字化するために追加的改善努力をする、裁量的経費のみを削減する、という計算で行いますと、2007年度(平成19年度)以降、この裁量的経費を基本ケースで年率5.5%ずつ削減していかなければいけないこととなり、5年間で25%程度削減することになります。リスクケースでは、年率7.5%、5年間で30%程度の削減が必要になるという大変厳しい削減をしなければならないという試算結果が示されているわけでございます。

次の4ページでございますけれども、ここには今申し上げましたものの各年ごとのバックデータが載っております。例えば黒字化を達成する2011年度には名目成長率が3.2%になっている、名目長期金利は3.9%になっている、といった経済の状況が試算されているということでございます。

それでは、次のページをご覧いただけますでしょうか。これは主計局で作成しております後年度影響試算でございます。この後年度影響試算の前提でございますけれども、18年度の予算の制度とか施策が改正されずに継続されると仮定した場合の19年度から21年度の3年間の歳出・歳入に与える影響を機械的に積み上げたものでございます。先ほど申し上げましたが、ここでは国の一般会計を対象にしております。これは予算委員会の審議の参考資料として予算委員会に提出しているものでございます。

まず、この試算方法でございますが、6ページをご覧いただきますと、前提が書いてございます。まず経済指標の前提でございますが、18年度の欄は政府経済見通しの数字が書いてありまして、19年度以降は、この(注)にありますように、改革と展望の中の「2006年度以降、実質成長率は1.5%程度あるいはそれ以上、名目成長率は2.0%程度あるいはそれ以上の成長経路をたどるものと見込まれる」という記述を踏まえ、名目経済成長率は2.0%で横置きいたしております。あと消費者物価上昇率は0.5%で横置きしているわけでございます。

それから、その他の前提につきましては、その下に算出要領というのが書いてございます。代表例だけ申し上げますと、例えば国債費を計算するに当たりまして、金利を設定しなければいけません。それで、金利を仮置きしておりまして、例えば10年国債の金利ですと2%というふうに置いております。また、歳出と税収等との差額が出てまいりますが、これはすべて公債金で賄われるということで計算してございます。

それぞれの試算結果のところで前提は申し上げますが、特に(注1)について申し上げたいと思います。これは基礎年金の国庫負担割合についてでございますけれども、19年度、20年度は平成18年度予算と同率としております。すなわち3分の1に1,000分の25を加えた率で置いておりますが、平成21年度に2分の1に一気に引き上げるというふうに仮置きしているわけでございます。これは16年の国民年金法の一部改正法に、「所要の安定した財源を確保する税制の抜本的な改革を行った上で、21年度までに2分の1に引き上げる」という規定があることを踏まえまして、こういった仮定を置かせていただいたわけでございます。

それでは、恐縮ですけれども5ページに戻っていただきまして、試算の内容を簡単に申し上げたいと思います。

まず、歳出の国債費でございますけれども、これは大まかに言ってしまいますと、毎年1兆円ずつ増えるという計算になるわけでございます。ただ、18年度から19年度は0.1兆円程度しか増えていません。これは、18年度予算に本四公団の債務償還費が4,000億円程度計上してございます。また、財政融資資金特別会計の金利変動準備金12兆円を取り崩し、それによる国債の買入消却を行い、オーバーパー分は一般会計で対応するという形になっております。18年度予算にはそういった特殊な要因がございますが、19年度はそういった要因がないものですから、その分19年度の増が抑制されているという姿になっております。

それから、20年度の増というのも0.7兆円程度でございますが、今申し上げました財政融資資金特別会計の12兆円を使った買入消却によって20年度の定率繰入が若干抑えられるといった要因があるためでございます。ただ、20年度から21年度はそういった特段の要因がございませんので、1兆円程度増えるというベーシックな姿になっているということでございます。

地方交付税でございますが、18年度は14.6兆円ですけれども、19年度以降、17兆円台で増えております。これは国税収入の増に伴います法定率分の増と、19年度以降、地方交付税特別会計の借入金の償還が法律上開始することになっており、それをオンした数字になっております関係でこういった増える姿になってございます。

それから、一般歳出でございますけれども、社会保障関係費でございますが、これは18年度の制度を前提に足もとの給付実績などを参考にして計算しているわけでございますが、高齢化の進展に伴いまして毎年1兆円程度増加する姿となってございます。

また、先ほど申し上げました基礎年金の国庫負担割合を21年度に一気に2分の1に上げるという前提で計算しております関係で、20年度から21年度の増が大体3.4兆円になってございます。このうち2.4兆円分がこの基礎年金の国庫負担割合の増分でございます。ここには厚生年金と国民年金の分だけ載っておりますけれども、あと国共済、私学共済分はその2行下のその他という18.7兆円の中に0.1兆円程度込まれているということでございます。

あと公共事業関係費でございますけれども、これは基本的には横置きとしております。ただ、若干減っておりますのは、住宅金融公庫補給金が減っていくからといった特殊要因があるからでございます。

その他というのは、諸々の経費が入っておりますが、横ばいということでございます。

NTT-B関係は17年度補正で処理しました関係で、18年度以降はバーになっているということでございます。

歳出の計でございますけれども、18年度予算では80兆円を若干切る水準に抑制したわけでございますが、21年度にはまた90兆円近い歳出規模になっていくという試算結果となっております。

次に、税収等について申し上げます。

まず、税収でございますけれども、税収は基本的には名目成長率掛ける弾性値1.1で計算しており、2%の成長率を前提としておりますから、ベースとしては大体年間1兆円程度の経済成長に伴う増がある計算になります。ただ、18年度から19年度にかけてかなり増加しておりますが、これは定率減税廃止の平年度化分があったり、先ほど18年度は特殊要因で0.7兆円還付があるというお話がございましたが、そういったものを埋め戻したりしているといった関係で、ここは大きく膨らんだ形になってございます。

それから、21年度の欄でございますが、2行書いてございます。上の欄は基礎年金の国庫負担割合の引上げの財源所要額2.5兆円を機械的に税収に乗せたものでございます。下の欄はそれを加算していない金額でございます。これは先ほど申しましたように、年金法では所要の安定した財源を確保する税制の抜本的改革を行った上で2分の1に引き上げるとなっておりますけれども、現行の税法では特段こういったことが書かれておりません関係で、両論併記という形にしてございます。

その他は細々したその他の収入がございますけれども、特に18年度は特会改革の中で、産投特会等の繰入れがあった関係で大きくなっておりますが、それらを19年度以降計上しておりませんので、18年度に比べへこんでいる姿になっているということでございます。

歳出と税収等との差額を見ますと、一番下の欄でございますが、18年度は30兆円と書いていますが、実際は30兆円を若干切った水準になっておりますけれども、19年度以降はまた30兆円を超えて差額が広がっていく姿になっているということでございます。

それから、次の6ページをもう一度見ていただきますと、下半分に参考として計数が書いてありまして、この参考は、先ほど申しました前提のうち金利だけ19年度以降3%に、1%引き上げるという仮定で計算したものです。計算結果の結論だけ申し上げますと、金利を上げますと国債費に大きく影響してまいりまして、例えば19年度で、先ほどの試算に比べて1.6兆円程度国債費が増え、差額のほうもさらに膨らんでいる姿になっているということでございます。

7ページでございますが、こちらのほうは今の延長線のような話でございますけれども、金利の上昇だけではなくて、名目成長率についても上昇した場合に、財政にどういうインパクトがあるか試算したものでございます。上の表が経済成長率が2%から3、4、5%に上昇した場合、税収にどれだけの増が発生するか、下は金利が2%から3、4、5%に上昇した場合に、国債費がどれだけ増加するかを試算したものでございます。

まず、3%の欄をご覧いただきますと、1%上昇した場合ですが、19年度で税収については、0.5兆円の増収になるわけでございますけれども、金利が1%同時に上昇したとなりますと、国債費は1.6兆円の増になるということで、税収と国債費だけ見れば1.1兆円収支が悪化する姿になっているわけでございます。

また、税収のほうの19年度の欄を見ていただきますと、経済成長率が5%になった段階で1.6兆円の増収となりますから、これで金利が3%の場合の国債費の増1.6兆円と、つり合うような計算結果になっているということでございます。これはいろいろな組み合わせによる見方が可能な資料かと思います。

次のページでございますが、これは試算とは直接関係ありませんけれども、最近、金利と名目成長率についてのご議論もございます関係で、過去のデータを日本と諸外国を含めて記したものでございます。

まず、8ページは日本の長期金利と成長率の差でございますが、長期金利マイナス成長率の数字が書いてあります。2004年から1966年とか1970年とか、かなり長い期間をさかのぼりますと、成長率のほうが高いという結果になっておりますが、1980年、1990年、2000年と割と近いところまでさかのぼりますと、逆に金利のほうが高くなっているという結果となってございます。

それから、9ページをご覧下さい。これは、他のG7諸国についての状況を記したものでございますが、例えばアメリカをご覧いただきますと、足もとのところで成長率のほうが若干高くなっていますが、さかのぼると、今度は金利のほうが高いという姿になっております。この足もとのところで成長率の方が高い国が、ほかにイギリス、カナダでございます。その他のドイツ、フランス、イタリアは、足もとでも金利のほうが高いという結果になってございます。

特にアメリカについて、90年以降、各年のデータを下の(参考)に記してございますけれども、先ほど足もとの2000年から2004年の平均について申し上げましたが、特に直近の2003、2004年で、成長率のほうが高くなっているという結果となっているわけでございます。過去のデータで見ますと、どちらかが常に高くなるといった明確な関係が必ずしもあるわけではないということが、うかがえるのではないかと思っております。

それから、最後のページでございますけれども、これは2015年度までについて、仮にGDPが3%成長あるいは4%成長をした場合に、どういった姿になるかを試算したものでございます。2015年の欄をご覧いただきますと、3%成長、4%成長した場合に、GDPはそれぞれ671兆円、731兆円と試算され、この1%の差で60兆円の差額が出てくる。税収は単純に弾性値1.1で計算してございますけれども、これでいくと、3%成長で116兆円、4%成長で127兆円で、1%の差で12兆円ぐらい税収増が出てくるということでございます。

それから、歳出でございますが、特に社会保障、これはマクロ経済と連動すると仮定し、GDP比7%で計算しておりますけれども、3%成長で47兆円、4%成長で51兆円で、4兆円の歳出増になっているということでございます。また、金利も同様に3%、4%に上がると仮定いたしまして利払費を計算しますと、それぞれ29兆円、42兆円となり、1%で13兆円の利払費の増という形になってまいります。右端の3%と4%の差の欄をご覧いただきますと、財政収支で大体6兆円のマイナスとなる結果になっているということでございます。

以上でございます。

岡本主計局調査課長

主計局調査課長の岡本でございます。私のほうからは、「補足説明資料[3]」という資料をご説明させていただきます。先般の会議で18年度予算のご説明をいたしました際に、義務的経費及び裁量的経費に分けたときにどのようになっているのかというお尋ねがございまして、それを整理したものでございます。

義務的経費、これは社会保障関係費及び人件費等でございますけれども、これが18年度で31兆7,162億円ということで、17年度に比べまして3,726億円のマイナスとなっております。

なお、ちなみに義務的経費は、このうち三位一体によります税源移譲の見合いの額が1兆円強ございます。ですから、それを戻しますと、実質的には7,000億円程度のプラスというふうになっているのが実質的な姿でございます。

その他でございますけれども、公共投資関係費は7兆8,785億円ということで、前年比3,935億円のマイナス。またそれ以外の裁量的経費というところでは、6兆7,714億円ということで、前年比1,508億円のマイナス。いずれにも三位一体に伴います税源移譲見合いのものがございますが、こちらはそれを戻してもやはりマイナスという姿でございます。

次のページですが、ご質問の中に義務教育費国庫負担金が三位一体の影響を表面上の数字だけでなくて外して考えると、実質的にどのようになっているのかというお尋ねがございました。平成18年度で、真ん中のあたりに参考を書いておりますが、これは平成17年度と18年度の予算額でございますけれども、三位一体の影響が入っておりますので、その上の※印にありますように、それぞれ三位一体の影響をもとに戻してみたものが上の(B)の欄でございます。平成18年度に2兆5,145億円、平成17年度が2兆5,400億円ということで、マイナス1%の減ということになっております。

ちなみに、児童生徒数で見た場合に、前年より若干の減になっております。そういったことで、1人頭で見た場合の金額というのがここに掲げているとおりでございます。

なお、教職員定数ですが、これが70.2万人ということで、前年より約1,000人の減ということになっております。これは17年、18年だけだとちょっとわかりにくいので、下にもう少し長いレンジで掲げております。

ご案内のように、少子化が続いている関係で、児童生徒数の数は非常に大きく減ってきております。ここで平成元年度と比べておりますけれども、先ほどの1,040万人というのは、平成元年から比べますと、400万人強減っておりまして、約30%のマイナスということになっております。これに対して義務教育費国庫負担金はプラス26%の増、1人頭で見ますと、先ほど平成18年度24.2万円でありましたが、これは平成元年度で見ると13.5万円であったということであります。

なお、児童生徒数の減に比しまして教職員定数でご覧いただきますと、減ってはおりますが、児童生徒数ほどは減っていないということであります。教職員定数の減がなぜこのようにとどまっているかということですが、これまでも児童生徒数の減少に伴いまして、教職員定数の自然減というものがございます。ただ、一方で教育の場での例えば少人数指導の徹底といったような形での教職員の定数増も一方で図ってまいりましたので、差引で見て減員になっている数がこの程度にとどまっているということであります。

ただ、この点につきまして、平成18年度の予算においては、実は定員の計画というものがちょうど切れたところでありましたけれども、新しい計画をつくらずに、自然減1,000人、これをそのまま減にするという形を行っております。

また、今回、これは財政審でもよく議論があったのですが、教職員の給与の問題がございまして、人材確保法という法律によりまして、一般の公務員よりも上乗せの給与になっている。これは制度を見直すべきではないかという議論がございまして、これにつきましては、今回、行革の議論の中でその見直しを検討して、18年度中に結論を得て、20年春に所要の制度改正を行うことになっているということがございます。

以上でございます。

向井主計局法規課長

主計局法規課長の向井でございます。私のほうからは「補足説明資料[4]」、特別会計の歳出ないし積立金の処理みたいなことをご説明させていただきたいと思います。

1ページに特別会計の歳出規模というのがございます。31特別会計の歳出総額を単純に足しますと、左側が17年度、右側が18年度で、460兆円でございますが、会計間の繰入れ等の重複を除きますと、いわゆる純計額が225兆円でございます。これは国から国の外に出て行く額というふうにお考えいただければと思います。その中身のうちの半分を占めておりますのが国債償還費と利払費が117兆円で、これは対前年度プラス28兆円でございます。それ以外に社会保険給付50兆円、財政融資資金への繰入27兆円、地方交付税等の交付金19兆円ございます。

私どもとしましては、これらはそれぞれの場面において改革をすべきものでございますので、特別会計という切り口から見ますと、12兆円かなというふうに思っております。

次のページにその12兆円の内訳がございます。17年度予算におきましては17.2兆円ございましたが、18年度予算においては12.3兆円、▲4.9兆円でございますが、17年度限りの特殊要因、これは年金から財政融資資金への繰上償還4.4兆円がございますので、実質的な減少額は0.5兆円でございます。

歳入を見ていただきますと、やはり最大のものは、手数料でありますとか、保険料でありますとか、地元負担金といった受益と負担の関係の明確なものが半分以上の6.4兆円を占めてございます。

一般会計の純粋の一般財源が2.2兆円、一般会計を経由いたします特定財源が2.6兆円、特会直入分の特定財源が1.1兆円でございます。

右の歳出を見ていただきますと、この12.3兆円のうちの半分近くは実質公共事業が占めてございます。さらに残りの半分は社会保険関係の保険事業、いわゆる社会保険の保険給付、年金の給付を除いた部分でございます。これが2.7兆円ございます。

それ以外につきましては、全部1兆円未満のものでございまして、それぞれ18年度予算におきましては、できる限り前年度削減をするという方針でやってございます。各特会等も少しずつ削減しているという格好でございます。

次のページでございますが、今まではフローでございますけれども、ストックの関係で積立金・剰余金の活用ということで、合計13.8兆円でございます。1番目が財政融資資金特別会計ですが、現在、平成17年度末の金利変動準備金23.7兆円の概ね2分の1を国債整理基金に繰り入れまして、国債残高を圧縮。12兆円でございます。

それから、外国為替資金特別会計は、外貨運用等に毎年度発生する剰余から1兆6,220億円を一般会計に繰り入れております。

産業投資特別会計につきましては、産業投資、開発投資等の重点化等を行いまして、必要額を確保した上で、一般会計に1,202億円繰り入れてございます。

電源開発促進対策特別会計は、歳出を厳しく見直しまして、必要額を確保した上で、その余りは一般会計に繰り入れることとしております。これは595億円でございます。ただし、電促税はご承知のとおりいわゆる目的税でございますので、一般会計に繰り入れた額を後日一般会計から繰り戻すという措置を講じてございます。

農業経営基盤強化措置特別会計につきましては、一般会計繰入れ等の停止により、剰余金の削減に努めておりますけれども、これはいわゆる農業改良資金でございまして、近年、貸出しが非常に減っております一方で、返還金が増えておりますので、それらの中から295億円を一般会計に繰り入れるというものでございます。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

まだ10分少々時間が残っておりますので、今の主税局あるいは主計局のご説明につきまして、何かご質問がありましたらどうぞ。遠藤さん。

遠藤特別委員

細かいご説明をいただきまして、大変ありがとうございました。よくわかりました。

主税局に「補足説明資料[1]」で二つお聞きしたいのですが、一つは、この資料の5ページによりますと、繰越欠損金額の推移というのがありまして、12年分から15年分までを比較しますと、落ちている原因は不動産で、これを見ますと、あとはちょぼちょぼであまり変化がないように見えるわけです。一方、前の4ページを見ると、15年度は黒い部分が12.9兆円あるわけです。この黒い部分が消えるとすれば、将来は全体的には繰越欠損は劇的に減少していくのかどうか、教えていただきたいと思います。

もう一つは、8ページで、所得金額が12年分と13年分を比べると伸びているわけですが、9ページの法人税収と比較すると、12年分から13年分が1兆数千億、法人税が落ちているわけですけれども、これは時期の違いか何かで説明ができるのか、その辺教えてください。

永長総務課長

まず一つ目の、繰欠がどんどんなくなっていくと見れるかどうかということでございます。実は我々もそれを期待しておるのですが、今でも法人税は利益を申告しているのは全体の3割とか4割、ほかは皆赤字法人なのです。新たな欠損金が生じなくなるかどうかというと、そこはやはり増えていくこともありますし、ないしはそれがゼロになるということはないのではないかなと思います。

問題は、例えば金融保険で申しますと、損を出すネタをどの程度まだ各銀行が持っているか。この辺が個々の積み上げになります。この辺のところ、将来にわたりまして、我々なかなか推察しがたいところがございまして、期待は持ちつつも、あまり大きな期待もできないなというのが正直なところでございます。

それから、8ページの12、13年分のところでございますが、実はこれはある種期ずれです。資料をご覧いただきますと、備考に「各年の2月1日から翌年の1月31日までの間に終了した事業年度を対象としている」とあります。実はこれは国税庁の統計の関係で3月期決算法人、全体の6割ぐらいを占める、それの年度所属がこの統計と実際の税収ではずれているという事情がございまして、これは統計上の一つの問題でございます。

石会長

川北さん、どうぞ。

川北専門委員

「補足説明資料[2]」の4ページの改革と展望の内閣府の参考試算の表ですが、これによると、黒字化を達成した場合ということで、2011年度にPBが国と地方の合計で0.0になっています。黒字といってもほとんどバランスだと思うのですが。

PBのバランスを問題にするのは、要するに政府債務残高を対名目GDP比で一定に維持できるかどうかということだと思うのですが、この時点でもこの表を見る限り、長期金利が3.9で、名目成長率が3.2ですから、金利のほうがかなり上回っていますね。そうすると、対GDP比はまだ拡大していくということになると思うのですが、一定に維持するためには、黒字をある程度大きくする、ないしは金利と成長率の差をなくすということが必要だろうと思うのですが、一定にできる時期はいつごろだと思われているのでしょうか。

岡本主計局調査課長

私のほうからお答えさせていただきます。

川北委員ご指摘のように、この状態では、プライマリーバランスの赤字は消えておりますけれども、おっしゃるとおり、債務残高のGDP比はおそらくこの状態が続くだけだと、まだ引き続き発散していくということだと思います。そういうことで、実は今、諮問会議で行われております歳出・歳入一体改革の議論の中で、今後目指すべきは、債務残高のGDP比を安定的にいかに引き下げていくかということを議論していると私も承知しておりまして、そのためにもこのプライマリーバランスの黒字化というのは、まず達成しなければいけないということなのですが、その先にどういったところを目指していくのか、これはまさにこれからの議論だと伺っております。ですから、そういった議論の中でどういったプライマリーバランスの黒字を目指すか、それによって債務残高のGDP比がどのように推移していくのかといったようなことが、おそらく今後の議論で示されてくるのだろうと思っております。

石会長

ぼつぼつ時間になりましたが、何かこの際という、では丹羽さん、どうぞ。

丹羽委員

時間がありませんので簡単に。

一つは、特会のご説明をいただきましたが、どうもまだはっきりよくわからないところがありまして、私の勉強不足もあるかもしれないけれども、特会の積立金・剰余金というのは、合計で一体いくらぐらいあるのかということがよくわからない。ここに書いてあります13.8兆円がすべての積立金・剰余金かということ。

もう一つ、せっかくアメリカへお行きになったので、ちょっとお聞きしたいのですけれども、ブッシュのステイト・オブ・ザ・ユニオン、1月末のを見ますと、リサーチといいますか、国際的な技術の競争力でリーダーシップをとるために、研究開発にかなりの資金を投入する、あるいはまた減税措置を講ずるということが書いてあるわけです。ニューヨーク・タイムズによれば、「リサーチ」という言葉を7回も使った。過去において2回ぐらいしか使っていないのに、「雇用」とか「年金」とか「医療」に比べて格段に多い回数を「リサーチ」というものに使っている。

一方、日本はどうかといいますと、研究開発経費は経済成長のエンジンと言われている部分で、むしろ減税を一部やめたというのが去年の税調であったわけですが、そういうことから考えると、アメリカは大変に経済の国際競争力に対して危機感を持ってやろうとしている。日本は全くその逆に行こうとしている。この辺で今回お行きになって、アメリカの経済成長のエンジンと言われる研究開発、技術革新というものに対する税の政策というものについて、何かお話はございましたでしょうか。

石会長

では、後段のほうを私からご説明しますけれども、研究開発費等々をいろいろ面倒を見るのは、例の租税特別措置に入るわけです。これは一応アメリカは、特定はしておりませんが、全廃すると言っています。ただ、おそらく科学研究費等々のほうは、最後のほうなのか、あるいは別にするのか、この辺がはっきりしておりませんのでわかりませんけれども、ただ、おっしゃるとおり、ユニオン・ステイトメントにおいては、ブッシュはいくつかそれに触れておりまして、その辺が予算の項目とどれだけ結びつくかというのは、これからのお話だと思います。

日本でも科学振興費あたりは、福祉と同じように別建てでやっていますよね。税のほうでは今のようにストップさせましたけれども。まあ十分精度が上がってきたと思いますけれども、税のほうでアメリカも日本と同じような形はまだいっておりません。そういうことでもう少し精査する必要はあるかもしれません。

それでは、準備金・剰余金の点で何かありますれば。

向井主計局法規課長

積立金でございますけれども、全特別会計合計で208.2兆円ございますが、年金を初めといたします保険事業の積立金が155.5兆円で大半でございます。

その次に大きいのが財政融資資金の積立金26.3兆円、これはいわゆる金利変動準備金でして、このうちの12兆円を今回国債償還財源に充てることとしたものでございます。

その次に大きいものが外為資金の特別会計の積立金15.1兆円で、これは介入資金の安定性ということから積み立てられているものでございます。

その次に大きいものが国債整理基金特別会計の21.1兆円で、これは国債の償還財源として積み立てられるものでございます。

その他は0.1兆円でございます。

剰余金につきましては、予算の段階では基本的に剰余金は生じないように予算を組みますので、決算段階におきましては、各年、ものによって年によって違いますが、特別会計を合計しますと1兆円程度出るのが大体普通でございます。

石会長

よろしゅうございますか。

それでは、ちょうど予定いたしました時間を若干過ぎましたので、今後の予定をご説明いたしまして、今日は終わりにしたいと思います。

次回は2月28日を考えておりまして、これは財政審との連携をとりつつ、同じテーマで同日開催したいと思っております。歳出面で財政審のほうの富田委員、歳入面で税調の田近委員が、双方に出向きまして説明をして、議論しようという形で、財政審のほうが先にやりますので、我々は3時半から5時までと、従来より少し時間帯が変わりますので、ぜひお気をつけいただきたいと思います。3時半から5時まで、財政の現状と、これまでなぜ財政が悪化したかという要因分析を歳出面と歳入面、財政審の委員と税調の委員に各々お願いいたしまして、それを材料にいたしまして議論したいと考えております。なにぶんにも歳出・歳入一体改革は今、経済財政諮問会議で議論が行われておりますので、それに対して我々としてもどういうふうな関与をするかという議論もあろうかと思います。

それから、これ以降は3月10日金曜日、3月24日金曜日。3月は二度ほど考えております。外部からのヒアリング等々を含めまして議論をしたいなと考えております。

以上でございますが、事務局のほうから何か日程等々について補足がございますか。よろしいですか。

では、今日は長時間ありがとうございました。これにて散会いたしたいと思います。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。