第35回基礎問題小委員会 議事録
平成17年5月17日開催
〇委員
時間になりました。第35回基礎問題小委員会でございます。
今日は、個人所得課税の抜本的見直しの第2回目という形で、内容に深く立ち入りたいと思っています。これは、6月末の論点整理に向けてご議論いただきたいと思います。今日は特に執行面の議論もいたしたいと思いまして、国税庁からヒアリングを受けたい、このように考えています。
それでは、税制第一課長からまず最初に、個人所得課税の抜本的見直しの幾つかの項目につきまして、ご説明ください。お願いします。
〇事務局
お手元に総会でお配りいたしました「論点メモ」1枚紙がございます。1~7となっておりますが、本日、ご審議をお願いしようと思っておりますのは「3.所得の種類と税負担のあり方」、「7.納税環境の整備」、この2つをご審議いただきたいと思います。4、5、そして6の個人住民税、諸控除のあり方、税率の問題、それは次回にお願いしたいと考えております。
さらにお手元に、「主要論点メモ」という横紙、全体で7ページのものがございます。さらに、「基礎小35-1 資料(個人所得課税)」、これも横紙でございます。本日は「主要論点メモ」をメインに見ていただきながら、折に触れこの資料のほうに目を通していただければと考えております。
最初、主な論点、所得の種類と税負担のあり方というところ、1ページでございます。最初の3行は基本的な問題意識でございますが、経済社会の構造変化が進展、さらには、制度改正も行われてきた。その中で、所得区分というものはずっと基本的には変わらない状態で来ているということでございます。現行の制度をそのままにしておくことによって、税負担のバランスが損なわれている面があるのではないかという基本的な問題意識でございます。
資料の1ページをご覧いただきたいと思います。本日は技術的なお話もございまして、ややとっつきにくいかと思いますが、大切なお話なものですから、よろしくお願いいたします。そのとっつきにくさの第一でございますが、所得税計算の仕組み、これは何回かご覧いただいておりますけれども、おさらいしたいと思います。
所得税を計算する第一段階は、いわゆるグロスの収入をそれぞれの収入の種類に応じてまず捕捉をするわけでございます。それから左の2つ目の欄ですが、必要経費等を差し引きます。それによってネットのインカム、収入から必要経費を引いて所得というものを出す。この所得が所得税法で申しますと、23条以降、利子所得、配当所得、これは実は条文の順番でございます。このように所得分類が行われております。基本的にはそれぞれの所得を足しあげる。ここでは損益通算と書いておりますが、まずは合計いたします。それから所得控除を行う。その上で超過累進課税ということで税率を掛けて税額を出す。ここには出ておりませんが、もう一つ最後に税額控除。出された算出税額から税額自体を引くということで、税額控除という制度もこの欄外にある。これが所得税計算の基本でございます。
基本的には総合課税がベースにあるわけですが、所得の性質やさまざまな政策的要請なども踏まえまして、所得の種類によって分離課税を組み合わせているというのが日本の現行制度の基本的な姿になっているわけでございます。本日は、この真ん中の所得分類、利子所得から始まって並んでおりますが、それぞれにつきましてどのような制度になっているのか、さらにはどういう論点が残されているのか、これをご紹介いたしたいと思います。
まず1つ目、論点メモに戻りまして、(1)の給与所得でございます。サラリーマンの実像につきましては、いわゆる「実像把握」の作業の中でいろいろご審議賜りましたし、さらに、今まで基本方針や中期答申等々の場で、給与所得に対する課税のあり方は縷々ご審議願っております。ここの1つ目のマルに書いてございますのは、そのラップアップ的なことでございます。近年において雇用形態の多様化が進展し、給与所得者において自らの市場価値を高めるべく様々な自己啓発努力が行われている中、雇用関係の有無だけをもって給与所得者と個人事業者を比較し、その置かれた立場の強弱を一律に論ずることは難しくなりつつあるのではないか。
たまたま昨日の公示で1位になられた方がサラリーマンであった。あの方はおそらく極端な例だと思いますが、ここに書いてございますように、私的な契約でございますが、雇用関係があるかないかという一事をもって給与所得者と事業所得者をわけ隔てすることができにくくなるのではないか、こういう問題意識でございます。給与所得も事業所得も、勤労を通じた経常的な所得であるという点では差異はございません。給与所得者であることを理由として所得の計算にあたって特別の斟酌を行うというよりもむしろ、給与所得者についても経費が適切に反映されるような柔軟な仕組みを構築していくことが望ましいのではないか。
こうした考え方に照らせば、給与所得控除について、画一的にとらえ一律の控除を行うという現行の仕組みを見直しまして、より勤務の実態に即したものに変えていく。特定支出控除の対象範囲についても見直すと。これも従来ご議論いただいているところでございます。
先ほどの資料2ページ目をご覧いただきたいと思います。給与所得控除をグラフ化したものでございます。横軸がグロスのインカム、給与収入です。そこから給与所得控除を行うわけでございます。マクロ的に見ますと、17年度予算ベース、予算の積算では、給与総額は日本全国で約210兆円支払われる。そこから、3割弱でございますが、60兆円余の給与所得控除が行われているということでございます。
そのシステムとしては、右の箱の中、これが現行でございますが、定率が基本になっております。一定の額まで40%、超えた分について、30%、20%、10%、5%、このようになっております。その上で最低保障。低いところは40%でございますが、最低保障65万円というのがあるわけです。
実は大きな改正が行われたその直前の姿、昭和48年は定額が16万円、それに定率控除を足す、頭打ちが76万円、こういう制度であったわけです。これは雇用関係の有無というか、雇われているという意味において、給与所得者に対して全員に適用がある給与所得控除があるわけです。ご覧いただきますように、どんなに所得が高くなりましても青天井の控除が認められるというのも一つの論点になっているわけでございます。
この給与所得控除につきましては会社離れ云々ということがございます。これは納税の現場でも出てくるわけです。源泉徴収、年末調整、この点につきましては後ほど出てまいりますので、そこで申し上げます。
論点メモ、2ページでございます。資料5ページ、退職所得、退職金でございますが、グロスの収入から、計算としましては退職所得控除というものを行います。この中身ですが、20年までは1年につき40万円、それを超えた分については1年につき70万円を差し引く、このようになっております。
この控除によりまして、モデル退職金、平均的な退職金のベースで言いますと、15年くらい働いた方は非課税になる、税金がかからないという姿になっているわけです。この控除を引いたあと2分の1課税をいたします。基本的には退職金というのは、今まで働いてきた、ある意味では後払い給与でもあり、さらに老後の備えである。こういったところから特別な配慮が行われているわけでございます。
この制度につきまして、論点メモの2ページでございますが、近年においては退職金の支給実態が多様化している。中途退職や転職の増加など変化が見られる。こういった中、イ、それからロ、先ほど申し上げた制度がございます。こういう退職金課税が、負担の公平性、雇用や給与支給のあり方に与える歪みといった観点からどのように考えればよいか。例えば外資系の企業等で日本の子会社に3、4年勤めてもらう。給料は、日本人、こっち側の社員並みに出して、退職金ということでその子会社を辞めるときに巨額の退職金が支払われる。こういった場合におきましても2分の1課税を行っているわけです。こういった点からニュートラリティがないのではないかという指摘でございます。
ただ、2つ目のマルでございます。制度の見直しにあたりましても、所得税の累進緩和が進んでいるとはいえ、多年にわたって支給されるべきものが一時に集中するという本所得の性格もございますし、個々のサラリーマンにとりましては、人生設計上の「期待権」もあるでしょう。実際見直すにしても、経過措置等々一定の配慮が必要ではなかろうか、こういうことでございます。
論点メモ、3つ目の事業所得、資料では6ページでございます。そもそも事業というのはどういうことか。これは租税法の教科書等に書かれていることですが、「自己の危険(リスク)と計算において、営利を目的とし対価を得て継続的に行う経済活動」、こういう定義が行われています。オウンリスク、それから継続性、こういったことが事業所得のキーフレーズになっているわけでございます。
事業所得につきましては、売上げ及び必要経費にかかる適切な記帳がぜひとも必要になるわけでございます。1つ目のマルですが、情報技術の進展など事業所得者を取り巻く状況が大きく変化している。今はパソコンでその日の売上げ等を打ち込めば経理が簡単にできる、こういう実情もございます。事業所得についていろいろな指摘がある中、売上げ、必要経費の正確な記帳に基づいて行う申告納税の趣旨の重要性を再認識する必要があるのではないか。例えば、仮に正確な記帳が存在しない場合にどうすればいいのだろう、こういう問題提起を我々として行いたいと思います。これは、先ほど会長からお話がございましたように、執行面での問題というのも大きうございます。後ほど国税庁から税務の現場を取り巻く諸課題、さらには事業所得の問題、ご報告していただきたいと思います。
さらに、記帳、納番を事業所得に使えまいか、こういう議論もございます。これは後ほどその場所でご説明いたしたいと思います。
次のページ、3ページでございます。事業所得、もう1つマルを置いております。事業所得だけではないのですが、最近、組合形態を用いるなど--「など」というのは、例えば事業信託というようなものを使って行う事業活動もございます。多様な事業形態によって所得を稼得する場合、こういうことがよく見られますが、適切な課税をどうすればいいのか。例えば非居住者、外人にその組合を通じて利益が分配されるとき、これは、今年の年度改正で組合段階での源泉徴収をすることにしたわけでございます。非居住者(外人)のみならず組合形態等を使う場合の適切な課税、こういった問題も別途あるわけでございます。
次の(4)、金融所得でございます。これは資料7ページ、8ページに、昨年の金融小委の報告の抜粋というか、サマリーをつけてございます。金融所得の間での課税方式の均衡化、損益通算の範囲の拡大、こういったことを柱とする金融所得課税の一体化を進めているところでございます。
(5)の譲渡所得、資料で言うと9ページでございます。譲渡所得の課税の概要ということで、株式、土地・建物、その他の資産、このように3分類してございます。株、土地については分離課税になっております。それにはそれぞれの理由があるわけですが、譲渡所得一般をとらえまして、論点メモのマル、譲渡所得は経常的な所得とは異なり、その実現のタイミングを選択することが可能であるということで、損益通算による租税回避に用いられやすい。また長期譲渡所得、これは譲渡益を2分の1課税いたします。
これは、長年にわたって生じたキャピタルゲインが一遍に実現する、こういうことを踏まえまして、ある意味では簡便に2分の1を掛けるというやり方をしているわけですが、益は2分の1課税、譲渡損はその全額を、一般的な累進課税を行う総合課税、それに足して総合課税をする、その他の所得から差し引くことができる点で不均衡になっているわけです。土地、株につきましては既に分離課税とされていますが、そのほかの資産の譲渡益についてどのように考えるかということでございます。そもそも暦年ごとに課税する、それも全部足しあげて総合累進課税する、これが基本ではありますが、譲渡所得という所得の性質上、そういった暦年累進総合課税がそもそもなじむのだろうか、こういう問題意識でございます。
さらに不動産所得。この辺からちょっと技術的になりますが、資料で言うと10ページでございます。まず事業所得、先ほど出てまいりました。法律の書きぶりはこのようになっています。「農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業(不動産の貸付業又は船舶・航空機の貸付業を除く。)から生じる所得」、こういう定義に法令上なっております。わざわざ不動産の貸付業等を除くと書いてあるわけです。除かれた先はどっちに行くのかというと、その受け皿として不動産所得というものがあるわけです。ただ、先ほど申し上げたように、オウンリスク、継続性、こういった事業の概念に入りきらない不動産の貸付所得もあるということで、その下に雑所得、いわゆるその他所得、それにまたがる格好でこの不動産所得というものが定義されているわけでございます。
この事業所得と雑所得に性格上またがっているがゆえに2つに区分する。1つの独立の所得区分なのですが、ここに「5棟10室」と。耳慣れない言葉かもしれませんが、事業性があるかないかを客観的な基準でということで、独立の家屋の場合は5棟、アパート等の場合は10室、それを超えるか超えないかで事業性があるかないかと。ある場合には、事業所得並みの資産損失とか貸倒損失、青色の専従者給与が差し引ける。こういった事業所得並の適用がある。それに満たない場合は雑所得。雑所得並びで課税で行われる。
何ゆえこういうことをしてあるかというと、参考のところを見ていただきたいと思います。実は昭和25年に資産所得の合算課税制度の導入、このようになっております。利子・配当、不動産所得、いわゆる資産については家族の持っているものを全部足しあげて計算するという制度がございました。資産合算課税制度というものです。その対象に不動産所得を入れておったものですから、この合算所得をするためのツールとして不動産所得というものがあったわけでございます。
しかし、最後の注ですが、この合算課税制度は平成元年から廃止されております。目的とする制度が廃止されたにもかかわらず不動産所得がある種居残りをしている、こういう状態が現在あるわけでございます。
論点メモ、(6)不動産所得のマルをご覧いただきますと、本所得区分は、資産所得合算課税制度の対象となる所得を明確化する観点から設けられたとの経緯がありますが、資産所得合算課税制度が既に廃止されている中、事業所得、雑所得と区分して独立の所得分類として存置する必要性についてどのように考えるかという問題がございます。
次に一時所得、資料で言うと11ページです。これも先に資料をご覧いただきますと、条文の書き方で恐縮ですが、34条1項というのがございまして、「一時所得とは」ということで、利子所得等々以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務、役務、資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。基本的には一時のものである、偶発的なものであるということと、それから、労務その他の対価ではないと。これが一時所得の定義でございます。
対価でないものですから、ある意味では棚ぼたのようなものでございます。一時所得の例ということで懸賞の賞金品等々が書いてございます。ちなみに宝くじは法律で非課税にしております。さらに遺失物拾得者が受ける報労金、こういったものも一時所得にしております。課税の仕方は、50万円を引いたあと2分の1課税するということになっております。
便宜的に次の12ページもご覧いただきたいと思います。今、縷々申し上げてきた各所得分類に属さないものを雑所得、その他所得と呼んでおります。所得税法35条1項・2項。要するに、いずれにも該当しない所得というふうになっているわけでございます。その中には、今、大きなかたまりといたしまして公的年金が雑所得に入っている。それから、金融関係、資産運用関係で利子・配当、譲渡益に入らないもの、これも雑所得に入っている。その他もろもろ、例えば一般の人が物を書いた場合に得る原稿料、講演料、こういったものも雑所得の中に入っているわけです。
先ほどの一時所得とどこが違うかということですが、例えば原稿料等々、これは対価性があるわけです。一時的なものではあり得るわけですが、例えば普通の仕事をしている人がたまたま趣味で書いたもので原稿料をもらった。これはある種一時的ではあるのですが、対価性があれば雑所得になる、なければ一時所得、先ほど申し上げた定義上、そのようになる。
いま申し上げましたように、一時所得と雑所得というのはある種兄弟みたいなものでございます。主要論点メモ、3ページの一番下、(7)をご覧いただきたいと思いますが、他の所得類型に該当しない所得のうち、その発生が一時的・偶発的なものについては、一時所得に分類し特別な取扱い--先ほど申し上げたように、控除して2分の1、こうなっているわけでございますが、一時所得は、雑所得と同様、個々の納税者にとって主たる所得となるいわば経常的な所得でない所得であるという意味においては、兄弟のようなものであるということでございます。雑所得とは別の独立の所得区分を設けておく必要があるであろうか、こういう問題意識でございます。
論点メモ、4ページをご覧いただきたいと思いますが、今申し上げた雑所得でございます。(8)雑所得、1つ目のマル、公的年金等、先物や私的年金、資産運用が入っている。公的年金等については公的年金等控除の適用があり、他の雑所得とは所得計算方式が全く異なる。さらに、いわゆる雑、その他の所得というふうに取り扱っておいていいかどうかと思われるくらい、これからどんどん膨らんでいく所得であるということです。雑所得の中に留めておくことについてどのように考えるか。なお、年金課税の論点が引き続き見直しが必要である。さらに資産運用関連の雑所得、これは先ほどの金融所得のところで申し述べました。分離課税に一本化する方向で検討を行うべきと考えられるがどうか、こういう整理をしております。
以上が所得分類でございます。
論点メモ、5ページ、納税環境の整備です。資料は13ページをご覧いただきたいと思いますが、納税環境の整備とか、納税者の信頼確保とか、いろいろ言い方はあるわけですが、コンプライアンス(法令遵守)をバックアップする、コンプライアンスの問題であるということでございます。論点メモに書いてございますように、個人所得課税は「所得」を対象として課税する税である、その執行にあたっては必然的に一定の困難を伴います。適正な執行に対して国民が寄せる期待は大きくなっている。広く公平に負担を分かち合う「あるべき税制」の構築にあたっては、個人所得課税の納税を支える諸制度を、適切な執行にいかに役立つものとするかという視点がますます重要になる。
コンプライアンスにつきましては、資料の13ページにポンチ絵がございます。ある一つの施策が万能薬のように効くかというと、そうではございません。マルの中にいろいろ書いてございます。こういったものが総合的に機能してコンプライアンスが向上するというふうに考えるわけです。ここには直接書いておりませんが、当然、質問、調査、さらには罰則、こういったものもコンプライアンスのために必要になってくるということでございます。
コンプライアンスの1つ目ですが、納税者番号でございます。資料で言うと14ページでございます。論点メモの文章に入る前に、14ページ、一番基本的な納番のイメージをご覧いただきたいと思います。納番を入れると、魔法の杖のように自動的に所得が捕捉されるかのような幻想も世の中にあるわけですが、実は、これから申し述べますシステムが当然必要になる。
納税者がおります。取引の相手方から金銭を受け取る。取引の相手方からすれば金銭を支払うわけです。その際に納税者は自分の納番は何番ですということを告知する。これが初動動作です。その上で、納税者は受けた支払い金銭をもとに、経費等を差し引いて申告をする。取引の相手方も、納税者にはこれだけのお金を払いましたよということを税務当局に情報として渡す。このように取引当事者間で利益相反するわけですが、その両当事者から2つのドキュメントを出してもらって、それを税務当局でマッチング(突合)する。納税者にお金を支払った人が税務当局にその情報を伝える、これが制度の根幹になっているわけでございます。
あちこち行って恐縮でございますが、論点メモの5ページに行っていただきたいと思います。納税者番号制度の1つ目のマル、近年におけるIT化の著しい進展、所得把握の正確性を求める声の高まりの中で、納番についても従来以上に積極的な議論を行う必要があるのではないか。国民の利便性といった観点からは、税務行政のみに活用される番号制度というよりもむしろ、税務を含め、広く行政全般に利用される番号制度として考えるべきではないか。それから、番号が税務行政に活用される以上、法律上の根拠を持ち、全国一連の番号によって、大多数の国民を二重付番なく生涯にわたってカバーし、番号を付与した後の住所・氏名等の異動を管理できる体制、テクニカルですが、これがどうしても必要になる。
今まで付番方式でいろいろな議論があるわけですが、現時点においては、例えば年金番号は法律上の根拠がございません。さらには住基番号のほうは、今申し上げたような取引相手方等々、いわゆる民間人が使えない制度に今はなっている、こういったことがございます。
さらに4つ目のマルです。税務当局が、個々の個人事業者の事業所得を正確に把握するためには、個々の事業者の収入云々と書いてございますが、これはむしろポンチ絵のほうでご覧いただきたいと思います。15ページです。ちょっとごちゃごちゃになって恐縮ですが、基本的には1ページ前の14ページの、お金を払った人が情報を渡す、もらった側が申告をする、それを税務当局がマッチングする、それがいろいろ組み合わされているということでございます。
まず主要登場人物としては、事業者Bというところをご覧いただきたいと思います。これは、例えば普通の小売りさん、サービス業、一般の消費者を相手にしている事業者です。その事業者はサラリーマン、主婦、一般消費者に売上げを行う。この場合、代金、金銭はサラリーマン、主婦から事業者に支払われるわけです。先ほどの基本パターンからいたしますと、事業者の売上についてマッチングしようといたしますれば、消費者が売上bの情報、Bの番号付きで税務当局に情報提供をする。それから事業者が行う申告をマッチングする、こういったことが必要になるわけです。このこと自体は現実論としてはなかなか難しいかなと思われます。
もう一つの場面としましては、今度、事業者Bの仕入aというのをご覧いただきたいと思います。事業者Aというのは卸です。事業者Aから事業者Bに物が渡される、仕入が行われる。当然、仕入代金は事業者Bから事業者Aに支払われるわけです。この事業者Bはお金を払ったわけですから、事業者Aの番号付きで情報を税務当局に渡す(点々で書いてございます)。これを踏まえて事業者Aは申告を行う。事業者Aが出す申告書と事業者Bの出す情報、これを税務当局でマッチングする。
このこと自体は事業者Aの売上をマッチングしたことになるわけですが、事業者Bからすれば、仕入aについての確認ができる面があるわけです。主要登場人物が事業者Bと申しましたが、このBさんから見れば、仕入額のチェックは事業者間の取引を番号化すればできる、こういうことでございます。仕入がわかりますと、比較的売上もわかりやすいという面があるかもしれません。
3つ目の場面としましては、一番左の銀行です。それぞれAさん、Bさん、Cさん、Dさん、銀行に口座があるであろう、儲かったお金はそこに預けるであろう、そこから利子をちょうだいする。銀行が利子を支払う。先ほどの基本パターンですが、お金を支払う、その際に銀行からこれだけ払いましたよということで税務当局に申告をするということが考えられるわけでございます。日本の金融課税、利子課税で見ますと、実は利子についての申告というのは必要ない。源泉分離なものですから、利子自体の課税にこの番号を使う必要はございません。しかし、利子課税のためというところから離れまして、口座情報という意味において、AからDの番号付き、一番下の点線でございますが、口座情報という形でAさん、Bさん、Cさん、Dさんの情報が税務当局に来る。儲かったお金をどこかの銀行に預けるであろうという前提です。納番を事業所得に適用してみた場合に、こういう各場面--Bさんからすれば、bの売上、それから仕入、Bさんの持っている口座情報、こういう場面が納番では関連してくるということでございます。
論点メモの5ページ、今申し上げたことが納番4つ目のマルに書いてございます。
ただ、あくまで念のためですが、6ページの1つ目のマルです。ある納税者の売上げの額が把握できたとしても、その売上げが取引相手方にとって仕入れであるのかどうか、こういったところまではチェックできない。例えば、さっきのポンチ絵で見ていただきますと、事業者Aが事業者Bに売ったということはわかる。金額はわかっても、その中身は、家事費なのか、必要経費なのか、こういったものまでわかるというものではない。納番につきましては、大きな働きをするであろうという面と、それでも限界があるという面、両面があるということでございます。
論点メモの6ページ、記録及び記帳でございます。資料では16ページです。先ほど事業所得で申し上げました。売上げ、必要経費、こういったものをちゃんと記帳していなければいけない、こういうことでございます。商売をする以上、帳簿をつけるというのは当たり前ではありますが、そこは実務の問題もあるということで、零細事業者の事務負担に配慮しまして、現行制度では300万円以下の所得の人には記帳義務が課せられていない。逆に言うと300万円超の人は、青色であれ白色であれ義務が課せられているわけです。
論点メモでございますが、今申し上げた記帳義務300万円ということになっているわけですが、記録及び帳簿、その他の客観的資料に基づく申告は、納税者の当然の責務として申告納税制度に内在するものであり、申告納税制度の定着、記帳水準の向上、情報技術の進展といった状況を踏まえれば、記帳義務について、何らかの見直しを行うべきと考えるがどうか。
実は若干古文書的になりますが、資料の17ページをご覧いただきたいと思います。シャウプ博士の勧告です。非常に時代的なものもあるわけですが、1つ目のカギ括弧、納税者の自発的協力に全くかかっている。納税者は、自分の課税されるべき事情、また自分の所得額を最もよく知っている。自発的に申告することが重要なんだということです。ある意味で当たり前でございます。
3つ目のカギ括弧ですが、真ん中あたり、「今日、日本における記帳は慨嘆すべき状態にある。多くの営利事業者では帳簿記録を全然持たない。他の会社は有り余る程沢山もっていて、その納税者のみがどれが本当のものでどれが仮面にすぎないものかを知っている」、こういったような記述がございます。
こういった中で青色申告制度というものが導入されて申告水準が上がってきたわけですが、先ほど申し上げた300万円の記帳義務、これをかけましたときの年度答申が3つ目の昭和58年11月の答申です。記帳義務を課す場合に、3行目です、当たり前のことですがということで、申告納税制度に内在している納税者の責務を明確化しようとするものであり、これを確認する制度であると。ある意味、当たり前のことを当たり前のように書く、そういう制度であるというふうに書いてあるわけです。それからはや20年くらいたっているという状況が、今、あるわけでございます。
論点メモ、立証責任でございます。立証責任というのは、特に法律で決まっているものではございません。判例の積み重ねであるものですが、資料で言うと18ページ、諸外国との比較がございます。アメリカ、イギリス、ドイツでは、一定の場合、さらには一般的に納税者側に挙証責任がある。日本におきましても、最近、訴訟において、例えば貸倒損失の事実認定とか、居住用財産の特例がいろいろございます。本当に住んでいるかどうか、こういったことを証明するのは納税者側がせよという判例も最近出てきてございます。
論点メモ6ページ、立証責任の2つ目のマル、アンダーラインですが、納税者が自ら説明責任を果たすことが相応しいと思われる項目について、個別に制度的枠組みを整えていくことについてどのように考えるか。税務当局にとっては、立証責任が一般的にこっちにあるというのが実は一番しんどいところでございます。なぜかというと、自分自体には資料、証拠がないわけです。それを支えるのがいわゆる調査権ですが、むしろ制度的に一定の場合、挙証責任を納税者側に振ってもいい場合があるのではないか、こういう問題意識でございます。
さらに、源泉徴収、年末調整でございます。資料で申しますと、19ページです。「年末調整とは」と書いてございます。とかく源泉徴収と年末調整がごっちゃになっているケースもありますが、お金が支払われるときに、その支払われる段階で天引きが行われるものが源泉徴収です。年末調整は、普通の会社は12月に行っていますが、要するにそれぞれのサラリーマンの確定申告を会社が代わってやる、こういう制度です。源泉徴収は諸外国でもほとんどのケースでやっているわけですが、年末調整、会社が肩代わりをして申告をするという制度は多くない、そういう面もございます。
ただ諸外国から見ますと、年末調整というのは大変うまくできている制度だと評価されております。6ページ、一番下ですが、給与の源泉徴収は必要でしょうというふうに書いてございます。さらに次の7ページ、「一方」ということで、給与所得者が自ら確定申告を行うことは、社会共通の費用を分かち合うとの意識を向上する観点からは重要である。こうした観点からは、税務執行面にも配慮しつつ、給与所得控除の見直しとあわせた、特定支出控除の範囲の見直し、そもそもの年末調整のあり方の見直しについて検討を行っていく必要があるのではないか、こういう問題意識でございます。
最後に、公示制度でございます。たまたま昨日、公示が行われました。資料は20ページです。前の年の所得税として、1,000万円を超える所得税額を納めていただいた方を公示するという制度です。この制度趣旨は、いわゆる第三者のチェックがあるよ、ほかの人も見てますよということ、ある種牽制的な効果を狙ったものでございます。
さらに、従前は所得金額で出していたのですが、昭和59年からは所得税額、税額ベースで行いました。そのときの考え方としましては、高額納税者に対して、どうもありがとうございましたという顕彰の気持ち、こういったものを込めようということで、現在の制度としては、1,000万円を超える所得税額を納めてくださっている方が公示されるわけでございます。
論点メモに書いてございますが、犯罪や嫌がらせの誘発の原因となっている、そういった指摘もある。また、本年4月に個人情報保護法が施行されました、今後、国の行政機関が保有する個人情報については、その適正な取扱い確保に向けた要請が高まるものと想定される。個人のプライバシーへの配慮の観点からは問題が多い同制度について、どのように考えるか。これは従前から、廃止を含めた検討をせよというご指摘を税調からちょうだいしているわけでございます。
ちょっと長くなりましたが、以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。適切にご説明いただいたと思います。
それでは、次に国税庁の税務執行面のお話を伺ってから、今、税制第一課長もだいぶ税務行政に触れられましたので、あわせて議論したいと思います。
今日は、お忙しいところを国税庁次長においでいただいておりますので、次長から、別の資料につきまして税務行政面、ご説明ください。
〇事務局
国税庁次長でございます。座って説明させていただきます。
今、税制第一課長から論点についてご説明があったわけですが、せっかく機会を与えていただきましたので、国税庁のほうから、主として申告所得税の現状と、大変僣越でございますが、若干のお願いを申し上げたいと思います。
最初に、資料をお配りしておりますが、ポンチ絵といいますか、チャートといいますか、図表みたいな表をお配りしておりますが、これですべて説明するつもりはございません。こういう資料をなぜお配りしているかといいますと、昨年、基礎問題小委で、わが国の経済社会の構造変化の実情を取りまとめいただいたわけですが、そういった構造変化を受けて、税務行政を取り巻く環境、それが、はっきり言いまして一段と厳しくなる状況にある。その中にあって国税庁としては何をやっていくのか、あるいは国民の皆様方に何をお願いしていくのか。我々は万能ではありませんし、定員も限られておりますので、最大限合理化努力はいたしますが、そこにはやや限界があると思います。したがって、そういうことをPRするためにつくらせていただいている資料であります。
一言だけ申し上げますが、わが国の構造変化を受けて財政事情は当然厳しいわけです。国税庁というのは事務を処理する役所でありますから、定員というのは非常に重要なキーになるわけですが、定員がなかなか増える状況にはございません。一方、申告件数は逐年増加傾向、あるいは今後そういう方向に向かうであろうと思われます。既に年金課税の見直し、配偶者特別控除の見直し等々、それから、消費税の免税点の引下げ等がなされているわけであります。そういった制度改正のみならず、わが国の構造変化に関係いたしますが、今、わが国は共働きが圧倒的に多いわけです。片働きですと申告は1人ですが、単純に言いまして、共働きですと2人になります。フリーターが増加すれば、年末調整で完結しないわけですから申告件数が増える。制度のみならず、そういった社会構造変化からも申告が増えてくるという問題がございます。
さらに加えまして、ここに書いてありますが、世の中がグローバル化の進展。それ自体は大変いいことですが、税務の執行面から言いますと、国際化が進展するということは、それだけ納税者の把握とか税務調査に困難性がつきまとってまいります。したがいまして単に件数が1件増えるだけではなくて、事務量としては1.5 とか増えてくるということを書いてあるわけです。
そういう中にあって我々は、現在、「電子政府構築計画」を政府全体で取り組んでおります。それは主としてコンピュータシステムの見直しですが、そのコンピュータシステムの見直しに合わせ、仕事の仕方自体を見直すべき抜本的な改正のプランを持っております。それは、今までの税務というのはどちらかというと税目別に仕事を処理している。所得税なら所得税、法人税なら法人税として処理しているわけですが、そういう税目別処理から機能別処理、例えば申告書の管理なら申告書を横に見まして、そういった仕事の仕方。あるいは集中化と言っておりますが、税務署でやっている仕事を一部取り出して、どこかのセンターで集中してスケールメリットを享受する、そういった全般的な見直し作業をやっております。
それは基本的には平成22年を目標。なぜ22年かと申しますと、我々のコンピュータシステムは5年ごとにリースをしていますが、5年ごとにリプレイスいたします。そのリプレイスに合わせてプログラムの開発を行いますので、直近で一番早くても22年になるということですが、そういうのに向けて、現在、最大限の努力をしているところであります。
本論、申告所得税の話に入らせていただきたいと思います。2ページに簡単な折れ線グラフをつけておりますが、現在、所得税の確定申告は2,000万件出ております。先ほど申しましたように、平成17年分、来年の確定申告は年金課税の見直しと消費税の免税点の引下げに伴い、約300万件増えると言われています。2,000万件が300万件増えるわけですから相当なアップです。
したがって現在、来年の確定申告をどう乗り切るかということで全力を挙げて取り組んでいるところでありますが、そもそも、ちょっと時代をさかのぼりますが、かつて確定申告というのは一対一の納税相談という、やや労働集約的な仕事の仕方をしておったわけでありますが、基本的には平成10年ぐらいから自主申告体制。とても一対一では対処し切れませんので、できるだけ納税者の皆様には自分でも申告書を書いていただく、そのためのサービスをいろいろ提供していく、そういうシステムに切りかえております。そのために申告書も改訂いたしましたし、各種IT、現在、国税庁のホームページには確定申告書の計算コーナーというのがございまして、今年は1,000万件のアクセス件数がございました。それから、銀行のATMみたいなものですが、タッチパネルとか、そういった各種ITによって合理化努力をしているわけです。
そういった自主申告を進めていけば、正直言いまして、我々職員の手数が若干は省けるというか、パンクすることは少しは防げるということになってくるのでありますが、その場合、納税者の皆様が自主申告される場合に、税制が複雑であるとなかなかそれが難しいということがございます。従来から税制の簡素化をお願いしておりますが、税制自体が各種政策的要請からつくられたものでありますから、いろいろ複雑な制度があるのは理解できるところであります。今も税制第一課長からいろいろお話があったと思いますが、執行面からすれば、簡素化という要請。
ちょっと話は飛びますが、前回、去年の秋でしょうか、国税庁の審理室長から航空機リースの説明をさせていただいたかと思います。あれも一種の税制から来るもの、損益通算のスキームを使うわけです。それがいいとか悪いとか申し上げているわけではないのですが、いろいろ税制の複雑性の中で、それが租税回避スキームに利用されるケースもございます。ここで申し上げたのは、一般的に国民の皆様方が自分で申告できるためにはできるだけ簡素化をお願いしたい、ということを申し上げているわけであります。
次に調査。先ほど税制第一課長から、資料の13ページで、納税環境の整備に特効薬はないという話があったと思います。挙証責任、我々が税務調査をして誤りがあれば更正を打つわけですが、そういった行政処分を行う場合には挙証責任は基本的に当方にございます。しかし、その場合にあって何も情報がないと、推計課税という方法はございますが、正直言って更正を打ちづらいわけです。したがって万能薬はないわけですが、先ほどの税制第一課長の説明を若干補足させていただければ、いろいろな側面で、若干なりともそういう制度的設置をお願いできればと考えております。
一つは、法定資料。どういう法定資料がいいかいろいろご議論があるところですが、正直言いまして、あまりたくさんあってもコンピュータで処理していきますから、コスト、ベネフィットの問題もあります。やはり的確な税制改正を行っていただく場合にも、的確な法定資料を付加していただければ幸いかと思っております。
次に、先ほど税制第一課長の説明があったわけですが、そういった法定資料が入ってきたとしても、すべての収入金額や、一つの納税者の必要経費がわかるわけではありません。1年間すべての取引ということを何らかの形で法定資料化することは不可能ですから、そういうことは永遠の課題であります。したがって、先ほどもちょっとお話がありましたが、帳面を記帳しておられるか、保存していただいていれば、我々としてはだいぶ助かるわけであります。何もないと、推計課税になるしかないわけで非常に困難です。現在、制度的には消費税、仕入税額控除という制度がございます。帳簿とか請求書を保存していない場合には税額控除を否認できるという規定がございます。そういうのをヒントにして、記帳も記録も十分でない場合には、何か説明責任を納税者に転換するような話かと思いますが、何らかの制度的な工夫をお願いできればと思っております。
さらに調査の関係で、今のは一般的な調査ということですが、近年、国際的な租税回避スキームが増えてまいりました。国際スキームもさまざまな形態がございますので、一概にパターン化することは難しいのでありますが、本年の税制改正におきましても、組合課税の問題であるとか各種の税制改正をしていただいたわけでありますが、現行の税制、法解釈でなかなか対応できないスキーム、次から次へと出てくると思います。そういった場合には、税制改正を国税庁からもいろいろお願いいたしておりますので、できる限り早期に改正をお願いできればと思っております。
もう1点、最後のお願いであります。現在、必ずしもわが国のコンプライアンスが著しく低下しているとは思っておりませんが、税務行政の最後の砦は査察制度でありますが、査察制度の罰則であります。現在、刑罰、最高刑は5年になっていますが、国際的には詐欺罪と若干似ているところがありまして、ほぼ連動した形の刑罰になっています。わが国の場合、そこに若干ギャップがございますので、刑罰の引上げも検討していただければ、それが抑止効果になります。税務行政、コンプライアンスを高めるという方策につきましてはなかなか特効薬はないと、そのとおりでございますので、さまざまなポリシーミックスではありませんが、いろいろな手段を講じていただければ幸いと思っております。
以上、ご説明を終わらせていただきます。
〇委員
ありがとうございました。
税制改正、我々は執行面のことを絶えず念頭に置かなければできないわけでありますが、今日はせっかくの機会であります、確認したいこともいろいろあろうと思いますので、国税庁のほうにご質問があればと思います。
それでは、今ご説明いただきました2つの資料、個人所得課税プラス税務行政面のさまざまな事柄につきまして、ご質問並びに、これを6月の我々の主要論点メモにも盛り込んでいきたいわけでありますので、どういう形で話を進めたらいいか、積極的なご意見をいただきたいと思います。
論点は、所得の分類のところで幾つか問題点を提起しておられまして、それを受けてどうするか。例えば不動産所得、利子所得、雑所得の取扱い、あるいは納税環境の整備を、国税庁次長のご説明と併せて、特に納番の扱い方等々につきましては、新しい問題提起もあったように思いますし、この辺を踏まえまして少しご議論いただきたいと思います。
どこからでも結構でございますから、ご発言ください。まだ1時間ございますから、今日はたっぷり議論できると思います。
それではどうぞ、皮切りに。
〇委員
退職金の話であります。おっしゃられている外国のというケースは確かにあるのだろうと思いますけれども、特例があるので全般を見直すということについては、ご説明にもありましたとおり、将来の備え、あるいは所得の事後という意味からすると、かなり抵抗があるのではなかろうかと思います。そういう意味で特例のケースを封じ込めるような手立てができないものかどうかということを、全般の見直しというよりはそちらのことをやっていただきたい。
〇委員
具体的におっしゃっているのは2分の1あたりですか。
〇委員
そうではなくて、説明のときに外資系企業のという話がありましたよね。
〇委員
そういう意味ですか。
〇委員
はい。もう一つは、私などはもうもらってしまったので、ほとんど何も払ってないくらいのわずかなあれでございましたけれども、地方税の翌年の負担の話。たくさんもらう人ばかりとは限りませんけれども、払うことに関して言えば、所得税も地方の税金も一緒なわけですから、翌年度ということがまたここで引っかかってくるのではなかろうか。所得がないのに翌年ガポッとかかってくる。これはあちこちで引っかかってくることですので、早急に何とかしなければいけないと思っております。
〇委員
抵抗はすべてあるわけでありまして、退職金課税だけではありませんが、とりわけ、長い間かけて稼いだという意識があるでしょうからね。どうぞ。
〇委員
話が多岐にわたるので、そのごく一部だけ言うと、ちょっと馬鹿かなと言われる気もしないでもないですが。納税者番号というのは、そういうのをやると、手間も省けて税収も上がるのかなと漠然と思っていたのですが、さっきの説明を受けて、15ページの表みたいなこと、これを1億人にやったらとんでもない手間ひま食うだけで何の効果もないのではないか。国税庁的に見れば、金持ちにだけ番号をつけてくれというのが本音かなという感じするのですが、どうですか。
〇委員
番号は全部つけるのでしょう、やるなら。
〇委員
そういう意味でわざわざ大多数につける。貧しい人は要らないと。
〇事務局
制度についてコメントしづらいのですが、15ページの表でいきますと、お一人の納税者の方で資料情報はものすごい枚数になると思います。現在、国税庁が扱っている資料情報は個数にしますと1億数千万ですが、それがおそらく数十億になってくると思いますから、それなりのコストはかかるのだと思います。国税の立場で制度のいい悪いはちょっと申し上げにくいと思いますが。
それから、お金持ちというお話がありましたが、そういう制度の設計はなかなか難しいかと思います。
〇委員
よろしいですか。
〇委員
全然よろしくないですけど、そういうものなんですね。
〇事務局
お金持ちだけというのは難しかろうということです。
〇委員
やりたくないということですか。
〇委員
要らないと言っている。
〇委員
今、納番は大変だから要らないということをおっしゃっているのですか。そうではないでしょう。
〇事務局
そういうことを申し上げたのではなくて、コストがかかりますということを申し上げたわけです。
〇委員
そうでしょう。コストをかけてもやるのでしょう、当然。ここでブツブツ言っているのは、「要らないと聞こえたけれども」と。確認しますけれども、そういう意味でおっしゃってるわけじゃないのね。
〇委員
「要らない」ではなくて、こんなに大変で、こんなにお金もかかるんだけど、やるのかい、というふうに私は聞こえたのです。本当はやりたくない。
〇事務局
そうではなくて、制度についてご議論申し上げたのではなくて、今、委員から、仕入れについての情報のお話がありましたから、仕入れについての個々の取引。一人の納税者でもおそらく取引というのは年間ものすごい数に達するわけですから、一人の納税者を名寄せするだけでも相当の事務量がかかるということを申し上げたわけであります。
〇委員
先ほどの委員はその先を聞いてるんだよ。大変だからやめろと言っているのか、万難排してやると言っているのか、方向性を気にしているということです。今お答えできないなら結構ですけれども、要するに慎重に検討するということでしょう。違うのですか。
〇事務局
今のコンピュータシステムでは容量等々不足しますので、新しい追加的な費用がかかるということだと思います。そういう予算措置があればできないことはない。コンピュータの性能ももちろんどんどん上がっておりますから。
〇委員
今のテーマにちょっと参加したいんだけれども、20年前にこういうものを入れたらいいよという議論が延々とあって、今日もこのことを議論しているわけだ。20年の間に国税庁の徴税システムというのはいろいろなことが整ってきて、20年前だったらばこれは絶対だと思ったものが、まあ何とかできるか、というのはちょっとアバウト過ぎるけれども、今でも相当程度やっているよというのが現実にあると思うんだね。だから、これがえらい万能で、これさえあれば正義の味方で、立派な学者なりジャーナリストの評価もあるけれども、歴史の流れから見ればそう単純な話でもないような気もします。答えは要らないんだけどね。
〇委員
ご感想ですね。
〇委員
はい。
〇委員
すみません、途中で切ってしまったけれども、よろしいですか。
〇委員
所得分類のあれで、労働の対価ではなくて、ラッキーに得たものという所得の区別の仕方というのは、今どき古いのではないかと思います。そういう区分は要らないから、そういう意味では一時と雑。雑という名前がどうかと思うのですが、私は雑だけで食ってる身ですから(笑)。それは一緒にして。
不動産所得というのは、当然、そんなもの要らないと思いますし、公的年金というのは、それは別にして、そこから税金をちょっともらおうという話なわけですから、別建て、一本建てで特別つくったらいいのではないかなと思います。
〇委員
どうぞ。
〇委員
今の国税庁の話、いいですか。
〇委員
どうぞ。
〇委員
おそらく言いにくくて言えないのだと思いますけれども、言いたいのは、やりますけれども、ちゃんと人員と予算とつけてくださいねということなんですよ。
〇委員
まあ、そうでしょうね。どうぞ。
〇委員
納番の話ですけれども、要するに問題はマッチングでしょう。納番をやっているところはちゃんとマッチングできているのかどうかということと、もしマッチングできない場合でも、抑止力というか、抑止効果がどの程度あるのだろうかということ。
それと、消費税の免税点がかなり下がったということで、そこの部分でかなり捕捉--個人のあれはできないけれども、事業者の場合、そこの部分で代替捕捉というか、そういうものに効果がかなりあるのかなと思うのですが、その辺どういうふうにお考えなのか。
〇委員
アメリカに関して言えば、マッチングは9割以上やっていると言ってました。特に金融所得については。
それから、抑止効果というのはまさに一般の人は皆持ってますから。ただ、ほかの国のマッチングのレベルはわかりません。もし情報があればいただきたいと思いますけれども、マッチングに関してはそういう理解でよろしいのではないですか。やる以上はマッチングしないと意味ないでしょうし、アメリカの人口、日本の人口を比べたら、はるかに多いほうがやっているわけですから、たぶんできると思います。その辺、追加的に情報があったらまた出してもらいましょう。どうぞ。
〇委員
所得課税について根本的な検討ということなので、我々の視点みたいなものを踏まえて議論したほうがいいのかなと思います。税調はこの2年くらい、社会の構造が全く変わっていますよという勉強を随分したわけです。一つは家族構成が変わってきている。標準世帯の比重がどんどん少なくなっていて、さまざまな世帯あるいは個人が増えてきているということです。それから、雇用形態が全く変わってきて、戦後、高度成長時代は、企業に一回勤めると終身雇用というのが基本形態で、中小企業だとか何だとかいうのはむしろ少数派みたいな扱いをされたわけですけれども、その時代はどんどん変わってきて雇用が流動化している。あるいは勤労期間が非常に長くなったものですから、標準的な雇用関係というのはむしろ人生の中で半分ぐらいだったりして、若い頃フラフラしていたり、年とってまた再雇用したりというのがたくさん出てきた。
そういうことで雇用が長期化している、流動化している、雇用の中身が変わってきている、家族形態が変わってきているというのを踏まえてどういう税制がいいのかということですね。そうすると、大きなポイントが3つ4つあると思います。
一つは退職金課税です。退職所得というのは長期雇用を前提にしているわけですから、後払いの所得をあげますからしっかり企業の中にいてくださいよということで、優遇してきているわけです。今、税制よりも、一般の企業のほうが、退職金で払うよりはむしろ現金給与にしてしまいましょうという動きをしているくらいですから、これは早急に見直さなければいけない。それから、そもそも退職金を払えない企業もたくさんあるわけで、それはそれで、みんな同じような状況に置いたほうがいいということだと私は思います。ですから、それは論点として踏まえていったほうがいい。
もう一つは、給与所得と事業所得の間で経費の扱いが全然違うわけです。給与所得というのは経費は基礎控除して、しかも、わずかしか認めない。ところが、事業所得は相当認めるわけです。本来は、仕事の中身が流動化していますし、長期ということでいくと、サラリーマンの方でも後半からは事業所得的なものになってみたり、雑所得と組み合わせてみたり、いろいろなことをするわけですから、むしろシンプルにしてしまったほうがいいということですが、これをやるのは実はすごく大変な問題がある。例の源泉徴収の制度を戦争中に入れて、そこへ基本的に依存している。諸外国も源泉徴収型のものはあるわけですけれども、日本はサラリーマンの源泉徴収への依存が非常に大きかったわけです。これは大変効率的だし、いいわけですけれども、この問題をちゃんとやるからには、自己申告をきちっとして、事業者の情報開示をもっと徹底的に行わなければならないような環境条件をつくって、その上で、先ほどの委員がおっしゃるような情報の確認のためのインフラも整える。そうしないと不公平が起きますから。
そういう大きな転換点を過ぎようとしているのかどうかという大議論を一回したほうがいいと思います。納番のこともありますけれども、情報開示と、それをちゃんと担保できるか。その上で公平な競争を担保できるかということは、大きなポイントとしてあるべきだと思います。
もう一つ、年金の問題がかかわってくるんですよね。専業主婦の年金はどう見てもおかしい。しかし、どういうふうに変えたらいいのかというのが大問題で、まだ決着がついていないわけです。社会保障との関連というのはどうしても出ざるを得ない。
私は3つのポイントを言ってますけれども、これについては、男も女もとりあえず独立の個体だ、みんな稼ぐ機会はあるんだ。そういう大前提で、家族というのはたまたま結びついているだけだというくらいの発想で、家族になっていることが基本なのではなくて、個人個人が基本というふうに考えると、専業主婦の年金の扱いというのはあり得ないことですよね。あれは20年ぐらい前に、徴収ができないので、無理してああいうことをやったから全体がおかしくなってしまったので、この際、わがほうはちょっと越権かもしれませんけれども、あれは徹底的に戻す必要があると。そうすると、実際、現金収入は得ていないわけですけれども、夫の所得のどのくらいが彼女たちに帰するのかということについての考え方も整理しなければいけないと思いますが、そんなことで3つぐらい大きなところがあると思います。我々はその辺の大改革を考えなければならないくらい社会構造が変わってきているのではないか。この2年間、随分やりましたよね。ですから、ぜひ踏まえて骨太の議論でいってもらいたいと思います。
〇委員
おまとめいただいたとおり、昨年来、その問題と引っかけてやっていますから、今度の6月にはそういう点が表に出るような書き方になると思います。ただ、税調は元来、一定の給与所得の控除は必要経費もあの中に入っていると。それから、クロヨンの所得捕捉の不公平はあそこで見るといった2点ぐらい言ってるんですね。だから、事業所得の中で給与所得から必要経費が全然引かれないという話ではないだろうと。必要経費という意味ではなくて、給与所得控除で引いているということですね。
どうぞ。
〇委員
今の話の続きですけれども、雇用形態が変わってきているのにかかわらず退職金の問題が古いままになっているわけです。だんだん年功序列とか終身雇用ではないわけですから、そうなってきているわけですね。私は雑所得で退職金をもらっていない立場ですから、ちょっと厳しい言い方になるかもしれませんけれども。
もう一つ、日本の退職金制度を利用して、外資系の人たちがすごい退職金をもらうという話をよく聞きます。では、外国の退職金の税制というのはどうなっているんですかと。日本に来て稼いでカモにしているのかということになるわけですけれども、そのあたりを説明してもらいたいと思います。実際に外資系が退職金をすごいたくさんもらうんですね、ふだん給料を安くしておいて。ふだんも高いけれども、さらに退職金でうまく逃げていくという。
〇委員
税制を活用してますよね。
〇委員
外国には退職金という制度はないでしょう。どうですか。
〇委員
その辺を聞きたい。
〇委員
情報があればどうぞ。
〇事務局
日本の退職金課税のような制度は少なくとも主要外国にはない。退職金という慣行があるかないかということもありますが、こういう器はございません。
〇委員
大体、退職金というのはのれん分けから始まっているわけで、これは年金のかわりだったんです。だから退職金と年金と二重年金なんです。それで年金が足りないと文句言ってるのはおかしいんだけどね。それはともかく、ここは普通じゃないんですよ。だから、普通にしたらいいということです。
聞いてないでしょう、みんな。私は少数派だから。皆さんはもらうと思ってるから、既得権益者なんですよ。私は既得権益者ではないから、そこのところをよく聞いていってくださいよ。これ、異常なんですから。
〇委員
はい。そういう意見があったということを……。
〇委員
今の委員の言うことをサポートする格好になるけれども、実際、日本で外国の企業に働いている人たちが、10年か何かいて、退職金の税が所得税より低いですから、それを意図的に利用しているという例はずいぶん聞きます。意図的に利用されるくらい世界的には異常な税だと言っていいのではないですか。
〇委員
カモにされている。
〇委員
今やね。
〇委員
それでは、どうぞ。お待たせしました。
〇委員
必ずしも整理されているわけではありませんが、一つは給与についてご議論がありましたように、雇用関係が短期であったり長期であったり、場合によっては従来の雇用契約を請負契約に変えたり、いろいろな形で変わってきているということがありますから、全体としては所得分類を集約化していかないといろいろな問題が起こるのではないか。
典型はストックオプションでありまして、ストックオプションが雇用契約に基づくから給与所得認定という基本的な論理でいくわけです。裁判でその辺が問題になって、一時所得にするかという議論があったのはそういうことですけれども、雇用契約のあり方がいろいろ変わってくる中で、これはお聞きしたいけれども、労働基準法で賃金と言っている場合とストックオプションを給与所得扱いにする場合と、食い違ってしまっていたりするものですから、むろんなるべく広げるほうがいいだろうと私は思っております。
ただ、一つ気になるのは、ご存じかと思いますけれども、スウェーデンで資本所得と労働所得に分けたときに、よくわからないけれども、事業所得だけは、資本所得に区分すべきものと労働所得に区分すべきものに分割しています。理論的にはそうなんですけれども、そうなってくると、仮に金融所得と労働所得に大括りにしたときに問題になるのは事業所得と年金だと思います。年金も積立の部分と後払いの部分に分けたときに、そんなことをしなければいけないかどうか。要するに、あんまり細かく分けるといろいろな問題が起こるけれども、大括りにすると、その両方にまたがるような問題が出てくるので、その辺のところは大きく集約しながらも、どこかで割り切らなければいけないけれども、やや細かい問題としてはそういう点があるということは指摘しておく必要があると思います。
退職金については、今の委員がおっしゃったとおり、もともと退職一時金という一時金形態というのがわが国独特だと言われておりまして、退職金を企業年金のほうに移しているわけで、どちらかというと一時金で取ることを奨励するような税制になっているとすれば、果たしてそれが現状で望ましいかどうかという判断も入ってくると思っております。
それと、公示制度について最後にご説明がありました。税調のこれまでの議論からも廃止の方向が出ていると思いますが、同時に相続税の公示制度をどうするのか、法人税の公示制度をどうするのか。所得税だけに限られる問題ではないと思います。申告納税という仕組みでどうやってうまくコンプライアンスを高めるかということについて、今いろいろお話がありましたように、外側の整備がちゃんと進んでこないと一概に公示制度を廃止していいのかなという気がしないでもない。
最後に、住民税に所得税を移譲していくときに、今の税務行政の話は地方にとっても非常に重要なことになってくるので、地方の税務行政のあり方についても我々は関心を持ってないといけないのではないかと思っています。
〇委員
どうぞ。
〇委員
退職所得の件です。ファンドマネージャーとか、ストックオプションとか、そういう新しい所得との関係の中でご議論がありましたけれども、実は松下電器のように、日本の若い人というのは、退職金でもらうよりも給与で早いこともらおうというのがかなり定着しつつあるわけで、一般の問題としても非常に重要なテーマになってきつつあるわけです。本来であれば、退職所得というのは勤続年数に応じて分けて、各所得年度に対して適正な所得税制をかけた上での積分値としての税の負担の問題と、一時的な形で繰延べしておいて退職所得でやったときに、どっちの税負担が重いか、これが実は中立性という、職業選択の問題あるいは給与の受け取りの問題に非常に影響を及ぼすわけで、そこら辺はモデルケースをちゃんとやってみたら、今の制度でどっちが有利なのかということがはっきりするわけです。ですから、そこら辺はもう少し突っ込んだご議論があったほうがいいのではないか。つまり、租税回避的あるいは中立的ではないケースというのは、一体どういう定性的な形が起こるかということをぜひお願いいたしたいと思います。
もう一つ、事業所得の捕捉の問題で番号制度でご説明がありましたけれども、これが消費税の問題とどう連結するんですかねと。この頃下火になっていますけれども、インボイスというものがあって、もともと入れるときに、インボイスでやると事業所得が捕捉されるから嫌だというご議論があったわけですから、消費税との関係も念頭に置きながら、これをどうするかということだろうと思います。
その上で、これは国税庁にご質問させていただいたほうがいいのかもわかりませんが、景気変動を除去した上での所得税、あるいは法人税もそれに関連するだろうと思いますが、徴税コストあるいは徴税効率という観点で、今の複雑多岐にわたる所得の源泉等が一体効率が上がっているのかどうか。そしてその関連で、IT化というものが徴収コスト構造に関してどの程度影響を与えているのか。そこは、ゴーイングコンサーンとしての国税庁の効率性にもかかわってくる問題だろうと思います。つまり、人でやるのか、機械でやるのかという、まさに生産関数といいますか、費用関数といいますか、そういうあたりをどういう具合に考えるかということは検討していく必要性があるのではないかと思います。
それから、今、単年度課税主義で、総合課税を原則にして所得分類していることの無理さというか、論理的な問題と関連して、こじつけて課税をしなければいけないという部分がある。複数年度にわたる譲渡所得もその関係にあるわけですけれども、金融課税というのは二重課税だという議論が根底にあり、貯蓄から所得へというときにどうしてもこの問題は避けることができない状況がある。したがってこの問題に対して、勤労所得税と資本所得の関係をどのように見ていくかということは、究極的に見ると二元性所得税論にも関連してくる問題になるわけです。あくまでも総合所得税の範疇でこの分類でやっていくかどうか、そろそろきちんと議論を整理した上で、わかった上でこのことを継続するか否かということもしっかりと議論を整理しておいたほうがいい。「貯蓄から投資」が政策課題なのだから一時的な--こういうような整理のされ方だけでは、今の租税論の潮流から言うとちょっと無理かなというのが理論的なポイントです。
それから、挙げていないポイントとして、フリンジ・ベネフィット課税です。私、ちょっと言いづらいのですけれども、大阪市役所とバトルをしております。大阪国税局がフリンジ・ベネフィット課税ということで、それに対して大阪市の監査委員が「これを返せ」と。そうなると課税がどうなるかという議論があるわけですけれども、このフリンジ・ベネフィット課税をもう一度議論をしていく必要性はないでしょうか。今の議論の中で整理がされておりませんので、いくぶん気になったということです。
〇委員
いずれ、フリンジ・ベネフィットはやられる予定ですよね。
〇事務局
先ほど時間の関係で割愛いたしましたが、横長の資料、「基礎小35-1」、3ページでございます。「フリンジ・ベネフィット課税の概要」と書いてございます。実は所得税法は、金銭だけではなくて、いわゆる経済的利益と呼んでおりますが、物や権利、その他の場合も収入ですよというふうになっております。給与というのは、労働法の関係もございまして、金銭で支給されるのが原則でございますが、それに付加する形で、雇用関係等に基づいて受けた経済的利益、これは基本的には、当然、いわゆる収入金額になるわけでございます。しかし、ということで3つ目のマル、法令や通達で例外扱い、非課税や課税しなくて差し支えない、こういうふうにしているものがある。法令で非課税にしているものは、例えば月額10万円までの通勤手当、これは所得税法9条5号で非課税にしております。
今の委員がおっしゃった制服、これは法律の9条第6号で、いわゆる経済的利益で、職務の性質上欠くことのできないもの、これは支給されても課税しないでいいと。これを政令で受けまして、「制服を着用しなければならない人に支給される制服その他の身回品」、こういうふうになっているわけでございます。ポケットの裏側に何たらシティと書いて制服という位置づけでやられたように伺っておりますが、職務の性質上、その制服を着用しなければならないのかどうかというところでございます。
さらに、法律だけではかゆいところに手が届かないものですから、通達で、課税しなくても差し支えないということでやっているものがございます。例えばお祝金、永年勤務者表彰記念品、一番下のレクリーション費用の負担、これは福利厚生費関係ですが、社員全員が行く社員旅行、かつ4泊5日内であれば社会通念上仕方ない、課税しなくて差し支えないと。一時、実はこれは1日少なくて3泊4日だったのですが、景気対策の観点から4泊5日までオーケーとしたこともございます。
次のページは、平成12年の税調答申でフリンジについてご議論いただいたところでございます。2つ目のパラグラフ、「『会社人間』とも言われるような個人の企業依存体質に変化が見られる中で、経済的利益の供与の仕方などが異なることによって税負担の公平を失することがないように」、ちゃんとしろというご指摘をちょうだいしております。
〇委員
社会通念がだいぶ変わってきたんだよね。だから、このフリンジ・ベネフィット一覧表について我々としてしかるべき意見を物申すことは十分あり得ることで、皆さん、身の回りのことも考えて、あとでご意見……。
〇委員
今、フリンジ・ベネフィットの問題、わりと限定的にお話しなさったのですけれども、地方自治という名のもとに不法がまかり通っているような感じも私はしておりまして、大変多様に、かつ巧妙にフリンジ・ベネフィット化がされている。これは総務省にお伺いする話なのかどうかわかりませんけれども、国税庁の動きとの関係の中で、地方税をどうするかという問題と、もともと地方税の徴収義務者である市役所等が勝手にフリンジ・ベネフィット化をして、それを職員に分配している。そういう問題は非常に大きな不信感を生み出すわけで、こういうお話ではなくて、実態に基づいたフリンジ・ベネフィットの徹底的な公正さ、透明化というものをこの機会にやるべきだと思います。
〇委員
コストパフォーマンスについて、ご質問がございましたから、お答えいただける範囲で結構ですから。
〇事務局
なかなかお答えしづらいのですけれども、徴税コストについては、国税の収入と、単純に国税のコスト、徴税費を足しただけの数値を公表いたしております。それしかございません。したがいまして、残念ながら経済的な分析はなかなかできていないのですが、別途、実績評価というのを各省庁が求められております。当税調のある委員にも入っていただいて、在り方懇というのがあります。そういうところからもご注文をいただいておりまして、どういう分析ができるかというのは、現在、研究中であります。
ただ、大企業に着目した場合、徴税コストは非常に安いわけです。一方、所得税は徴税コストが比較的高い税金でありますが、経済的な分析だけでは難しい面がございます。そういった面もありますのでなかなか難しいのですが、税目にわたってどういう分析ができるか、今、研究はいたしております。
それから、ITの話でございます。ITがなければ税務行政は立ち行かないということで、定員事情がなかなか厳しいわけでありますが、国税庁、今5万6,000人おりまして、基本的にずっと変わっておりません。戦後一時期はもっといたわけですが、その間、事務量増大は機械化でかなり泳いできた部分があると思います。KSK(国税総合管理)システムといって、年間400億ぐらいのランニングコストがかかるのですが、それで何とか泳がしていただいているということだと思います。KSKのみならず全職員にパソコンを配置しておりますので、そういったものを活用して事務の合理化に取り組んでいるところであります。
〇委員
どうぞ。
〇委員
皆さんのおっしゃったこととある意味では重複しますけれども、所得税の抜本見直しをするときに、国民の理解がどの程度得られるのかというのはやはり不安なわけです。国民は、これだけ財源がなくなってきているから財政調達のために必要なのだろうと思っている。他方、いわゆる所得再分配を考えたときに、いろいろな控除がなくなったり税率が上がったりしたときに、大丈夫かなというふうに思っているというのが私の印象です。
そのときに、それだけではないということをはっきり言うのも一つの手だろうと思います。国民の理解を得るためには、中立・公平・簡素のうちの簡素というのはどういう意味なのかということを、国民に対してもう少し強調してもいいのではないかという気はするんですね。ある意味でこれは公平の裏返しであって、一つは、徴税コストとかコンプライアンス・コストでもありますし、所得区分がいろいろ違ったり、さっきの退職金の特例もそうですし、フリンジもそうですし、もっと言えば、限界税率が累進になっている。専従者控除などは典型的にそうですが、所得を二分割して税率を下げようということが極端に使えるという面もあって、そういう意味では税制を簡素化してフラット化することは、租税回避をやらせないために非常にいいんだよということをもう少し強調するのは一つの戦略だろうと思います。
今日の話はその話だろうと思うので、ある意味では大変いいことだと思ってはいますが、他方では少し不安なところがあって、アメリカでは、こういうことがさんざん使われているという話はよく聞くところで、さっきの話もそうでしたが、退職金を使っているのは誰か、外資系であると。日本人は本当に使っているのかね、というのがある意味でちょっと怖いところがある。建前としては、私がさっきから言っていることは正しいと思うので、国民の理解を得るためには非常にいいだろうと思うのですが、具体的な事例とか具体的な数値をもう少し出していただかないと国民を説得しにくいというのが、今日の話を聞いていて私が思っていることです。
国税庁としては、そういう例を出すと悪用されるかもしないとご心配かもしれませんが、こういう世の中で、情報はどんどん、知ってる人は知っているという状況になっているわけですから、ぜひそこはオープンに、こういう問題がたくさんあるんです、そういうことを避けるために簡素化しましょうということがもし言えるのであれば、ぜひ出していただきたいと思います。
〇委員
おっしゃっているのは租税回避の実例という意味ですか。
〇委員
そうです。それから、できればその数値も。推定だけれども、このくらい租税回避のために税収が下がっているとか不公平が起きているということを、もう少し出していただいてもいいのではないかと思います。
関連して、もう一つだけ。納番とか源徴とか、さっきの質問に対して、納番は非常に難しいですというお答えがあった。そういうのも国税庁のいつものパターンであって、建前が少し気になり過ぎている。私の印象では、納番なんて、100%つかまえるなんてそもそも無理である、捕捉だって100%は無理である。それは建前であって、本音をもうちょっと表に出して、だめなものはだめと。だめなのだから、極端な話を言えば、給与所得控除というのは場合によっては5%ぐらい認めてもいいかもしれない、なぜならば捕捉が違うのだから。そのかわり事業所得についてはもっときちんとやります、捕捉率が上がってくればその差を直してもいいと。そういうことをもう少し本音ベースでやられてもいいのではないか。
納番とか源徴とかみんなそうですけれども、もう少しみなしを入れて、完全ではないけれども、いろいろなものを組み合わせてやっているうちに、そこそこみんな同じくらいに得だったり損だったりというぐらいの……。情報も複雑化していてグローバル化している社会ですから、国税庁さんも全力は無理ですというくらい少し腰を引いていただいて、もうちょっと楽な……。
もう一言だけ言わせていただければ、先ほどの委員のご意見は私も気持ちはわかるのですが、フリンジ・ベネフィットを、3泊4日、全員しなくてはいけないということではなくて、人の生活も職業もバラエティが増えているわけですから、ある場合には2泊3日、ある場合には4泊5日ということになると思うんですね。だから、一括してこうです、100%しますということよりも、人それぞれ、ケース・バイ・ケースで対応を変えていただいて、みなしでやるということも少しお考えいただきたいと思います。
〇委員
温情あふれるご意見ですな。承っておきましょう。
どうぞ。
〇委員
なかなか細かい議論にはなりにくいのですけれども、社会経済の変化に応じて税制が変わっていくべきだという点はまさにそのとおりで、今までおっしゃったいろいろな点について考慮していくことは当然だと思っています。
それから、退職所得の課税の問題で、どうもおかしいのではないかというケースがあるという話はよくわかるのでございますけれども、最近の状況から、事業会社の対応ということで言えば、ひと頃のリストラの時代が終わって、大事な人材は抱えていかなければいけないという考え方もかなりあるように思います。ですから退職金課税というのは、税制がこうだから俺はこっちをとろうという話ではなくて、企業なり働く人の側から見て、自分の将来を考えることが税制にあまり左右されないという中立的な制度というのができないのかなと。確かに外資系の労働者がそういう格好でうまく逃げていってるというのは問題だと思いますけれども、一方で退職所得が非常に不利に扱われるということになると、問題もあるのではないかという気がするので、できるかできないかというのは非常に難しい議論だと思いますけれども、ニュートラルというのも考えておくべきことではないかという気がします。
もう一つは徴税、納番や何かの問題です。今日のお話を聞いていまして、税は公平・公正であるべきだという理念は私はよくわかるけれども、現実には先ほどの委員が言われたこともそうではないかと思うのですが、なかなかそうは言いきれない面があり、コスト・ベネフィットという考え方で律せざるを得ないところがどうもあるらしいなというのが、お話を聞いていての私の印象でございます。コスト・ベネフィットで抜けていくやつはやむを得ないということは言いにくい。それはよくわかりますけれども、制度を考えるときには、ある程度そういう考え方で括ってやっていくということなのかなというのが印象でございます。
以上です。
〇委員
特に納番がそうでしょうね。
では、どうぞ。
〇委員
今までずっと議論があって、ちょっと一言、途中でまとめておきたいのですけれども、これまでの所得税制のあり方というのは、右肩上がりの成長が続く中で企業社会というものがしっかりしていて、その中で長期雇用があって所得があって、そこを基本に置いて税が組まれていたわけです。いろいろな構造的な調整は、控除をたくさん入れることでパッチワークでやってきている。それから、源泉徴収をやることで効率的なやり方ができた。その前提はほとんど全部崩れているというのが基本認識だと思うんですね。
そうだとすると、今日、皆さんにご議論いただいたような議論は全部必要ですけれども、例えば主婦の3号年金というのは本当に見直さなければいけないのではないか、退職金についての特別な扱いはなくしたほうがいいのではないか、それから経費の問題を考えていくと、源泉徴収の問題にもかかわりますが、さっき会長がおっしゃった、サラリーマンの基礎控除の中にそういうものが入っているだろうと。もちろん入ってるんですけど、十把ひとからげで入っているわけです。本当は中身はもっとバラエティーがあるわけで、特に事業所得との関係を考えるとそういうことがあるし、ファンドマネージャーの問題はだいぶ離れているかもしれませんが、ストックオプションの問題もあるし、発明への報酬の問題もある。ああいうものは労働の対価ですからね。そうすると、これまでとは全然違った形の所得の広がりがある中でインセンティブを持ってもらわなければいけないという問題があって、経費については、ちゃんと情報を集めて調べなければいけないという問題があるので、結局、事業所得のインボイスの問題とか、3号年金の問題とか、源泉徴収の問題とか、所得と税の外側にある基本的な制度を根底から理論的に一度見直すということがあるわけですね。
理論的に見直しても、本当に見直せるかどうかわかりません。先ほどの委員ではないけれども、最後はちょっと妥協しなければならないかもしれないけれども、税調としては徹底的に議論して、見直したらこういう形があり得る、しかし現実的にはこのぐらいの調整があるかもしれない、というような書き方じゃないと。先に妥協はしないほうがいい。そうすると、ぐちゃぐちゃになってしまいますから。
ということで、会長にお願いですが、踏み込むところはタブーのところまで徹底的に踏み込んでいただいて、一度理想論をつくって、そこから妥協するならするということでやっていただきたいと思います。
〇委員
では、どうぞ。
〇委員
退職所得のことです。中立性ということを考える際に、先ほど、最近の企業の人事労務面での変化ということをご指摘になっておられましたけれども、一方、財務面でも、年金との関係で退職金の扱いをもう一回見直そうという動きが、最近、企業にもかなり出てきている。ご承知のとおりの国際会計基準の導入とか、年金債務が、格付けとかそういったことで非常に大きく企業に影響を与えたり、一時の代行返上は少しやんできましたけれども、どういうふうに退職金を位置づけるかということを、今、企業がいろいろ模索しているところだと思います。そういう意味でも、そういったことを念頭に置いた改革をしていくことが重要ではないかと思います。
もう一つは、コンプライアンスのことでございます。先ほど国税庁の方からもご指摘がありましたけれども、脱税とか租税の回避に対するペナルティーを思い切って引き上げていくことは非常に重要なことではないかと思います。一方で公示制度は、ご指摘がありますけれども、ある人にとってはペナルティーになってしまって、せっかく稼いでも、それがディスクローズされることによって個人の生活が大きな影響を受けるということで、個人情報保護の問題もありますし、今、見直すべき時が来ているのではないかと思いますので、ぜひここで思い切った……。
〇委員
見直しというのは廃止というほうの見直しですね。
〇委員
もちろんそうです。廃止せよということで。
〇委員
わかりました。
では、どうぞ。
〇委員
今朝の朝刊で高額所得者が華やかに出たわけだ。あれで清原という人は2人いるんだということがわかった。ジャイアンツだけではなくて、すごいのが一人いるなあと。あれは公示制度の掉尾を飾る大ヒットだと思っています。もう一つ、芸能人、作家、我々と違ったグループの人たち。この人たちは、作家はこの中にもいるからちょっとあれだけど、芸能人その他は、あそこに名前が出ることが勲章ではないかという気がする。
だけども、どういう議論の流れから言ってもあれはやめるべきです、この際スパッと。今日、会見をやれば、今朝の朝刊の話はどうするのか新聞社は聞くから。言わなくても、廃止の方向だというふうにテレビの解説者はみんなしゃべっている。みんなやはり勉強している。それで、そのとおりになると思うんだ、今の議論の流れ、プライバシー論からいけば。だから、中途半端なことを言わないで、これはきちんと会長にズバッと言ってもらって、まだ頑張れよということを言う必要は全くないと思っています。
〇委員
頑張れよという人はいらっしゃいますか。
〇委員
頑張れよ、ではないけど。
〇委員
公示制度を残せという意味でね。
〇委員
残せとまでは言わないけれども、やるのなら、皆さんのおかげでありがとうございますといってみんなで手を合わせるということをやらないと、1億も払っている人に……。
〇委員
誰がどこで手を合わせるような制度にするのか。
〇委員
今のは明らかにペナルティーというか。
〇委員
そうですよ。
〇委員
戦前は貴族院議員になれたんですよ。
〇委員
勲章ではないけれども、何かメリットがなければいけない。
〇委員
要するに顕彰しなければいけないという意味でしょう。勲章とひっかける、これもまた……。
どうぞ。
〇委員
あまり下のほうまではいいんですけれども、上から百人くらいは公表したほうがいい。どうしてかというと、今度のでもわかったのですけれども、清原さんは特別ですが、それ自体、「おっ、やればできるんだな」というのがわかったということが一つ。
あとは、公表することで、日本では今、要するにまともなことをやっては儲からないよというのが歴然としているわけですから、それは一つの重要な情報でございます。
〇委員
なかなか一本化は無理だということはわかりましたけれども、両方お伺いしておきます。
〇委員
今の委員が最後におっしゃったことですが、税金を誰がどういう職業の人がどういう形で負担しているのかということがもう少しオープンになると、そういうものを計算することによって、租税回避も全部計算できるようになるわけです。だから、租税統計の生のデータをスクリーニングして固有名詞を外して、それでみんなに流してほしいということは、もう少し税調としてはっきり国税庁に言うべきだと思います。
〇委員
これは、前から言ってますけれども、難しいんですよ。申告所得の情報開示でしょう。アメリカではやっていますよ。私はこれは前から言ってますけれども、難しいのです。
では、どうぞ。
〇委員
一つお願いですけれども、国税庁で申告書に1欄設けて、自分の収入で自分の税額を割って、私の負担している税率は何%ですというのを書かせることをやったらいいと思います。これは収入に対して意外に低いんですよ。それを納税者の方々に知っていただくことが大切ではないかという気がします。
私は先週、中国で税金の講義をやってきましたけれども、彼らと話をしていると、日本の所得税のインフラというのは相当なものだと思います。税理士制度であり青色申告であり、法人会や何かも含めて。やはりコンプライアンスの点から言っても、正直者が馬鹿を見ない点から言ってもインフラを整えるというのは非常に大切で、今の中国では絶対できないですね。だから、そういう目で番号の問題も考えていくべきではないかと思います。
それから、給与所得の概算控除の話ですが、これを本当にやろうとしたら、例えば交際費をどうするのか。サラリーマンにとって交際費というのは結構大変なものです。でも、帰りに上司と一杯飲んでいるなどという話は認めてくれないのでしょうね。それから高額所得者の場合、5%は多過ぎないかというけれども、高額所得者というのは寄附が多いです。だから、寄附金の制度に絡んでくる話ではないかと思います。
もう一つ、私が一番大きいと思うのは、事業所得者にとっては自分の経費を計算するのは仕事のうちなのです。勤務時間でやっているわけです。給与所得者にそれをやれと言うと、勤務時間外に家へ帰ってからやらなくてはいけないという話になってくるわけでして、そういうことを考えてやらなくてはいけないのではないかなという気がします。
むしろ給与所得との関係で考えなくてはいけないのは、何かほかのマイナスと通算できるという道を、前に不動産所得で、あれは封じたのか、まだ残っているのか知りませんけれども……。
〇委員
封じてないんですよ。
〇委員
何かそういうことを考えていかなくてはいけないのではないかと思います。
それから、退職所得ですけれども、これは、制度を変えるにしても時間を置いて考えないと今の人がかわいそうだと思います。私はある政府系金融機関にいたのですが、ここは夫婦でやっているようなところにお金を貸しているのです。だから、絶対天下りというのがないんです。しようがないわけです。結局、彼らは退職金をもらって故郷に帰って家を建てて、あとは年金で暮らす。そういうサラリーマンがこの世にたくさんいるわけです。そういう人たちに、外国の何とかがどうだとか、証券関係の何とかがどうだとかいうことで急に制度を変えられたら、あまりにかわいそうだと思います。
〇委員
申告を開示せよという先ほどの委員の話の腰を折ってしまったけれども、国税庁は何かお考えがありますか。どのくらいできるかどうか、あるいはやるべきでないか。その辺、お考えがあれば。
〇事務局
基本的には国税庁の執行のためにつくられた制度でありますから、なかなか表現しづらいのですが、基本的には公示することによって、別途、情報をいただくということだと思います。そのために設けられた制度だと思いますが、公示があるから情報が来るのか、なければ来ないのかということですが、必ずしも公示でなくても情報は集まると思います、その限りにおいては。そこはもちろん税制の話ですから、国税庁としてはニュートラルに申し上げたいと思いますが、必ずしもそれがなければ執行が困難ということはないと思います。
いろいろお話があったかと思いますが、どういう職業の人がどうだというデータの問題ですね。会長のお話はおそらくマイクロデータの分析というご指摘だと思いますが、国税庁は従来から、守秘義務とか個人情報保護という問題がありますから、そういう状況を説明することに非常に消極的な役所だと思います。
それはふた通りあると思いますが、一つは、マクロ的な分析。例えばクロヨン論議でも、これはまさに会長、最近では大田政策統括官がおやりになっておられると思いますが、あれはマクロ的な推計です。マイクロデータで推計することも可能だと思いますが、そういった部分の問題。それについては、うちは税務大学校というところに研究部というのを持っていますので、学者の先生にもご協力をいただいておりますが、この7月以降から若干そういう勉強もしていきたいと思っています。
もう一点は、そういうマクロ的な話ではなくて、昨年の税調の場でも航空機リースを説明させていただいたかと思います。航空機リースはレディメイドの商品でありますから、比較的守秘義務の問題が緩和されるのです。例えば不良債権ビジネスみたいな国際的租税スキームを言いますと、やや個別の話になってまいりますので、若干疑問があって、なかなかそういうのを説明しづらい。そういう問題はあるわけですが、我々がいろいろ苦労していることをもう少し国民の皆さんに理解していただきたいと思っております。また、それが税制に反映することによって我々の執行も担保されるわけですので、できるだけ機会を見てそういう努力をしていきたいと思っています。
〇委員
どうぞ。
〇委員
先ほどの委員が言われましたが、退職金の日本の制度というのは終身雇用制度と一体になってずっとやってきて、年収との関係もあると思われますので、そこのところはやはり慎重に考えたほうがいいと思います。
公示制度のところは、これはプライバシー保護法の関係があるので、その精神を考えると、国が住所氏名を一緒に発表するということはやはり慎重に考えるべきで、やるべきではないと思います。
それと、一時所得のところですけれども、ここのところのシステムをきちっとして徴税対応をしていくことは非常に重要です。その中で、競馬の馬券の払戻しとか競輪、ここは確実に捕捉しているとは思えないので、こういうところをきちっと整理して、宝くじとの関係とかを考えれば、あまりやるべきではないと思います。ここで実態として徴税できていないので、そういうところをどういうふうに考えるかというのはきちっと整理しておくべきだろうと思います。
〇委員
どうぞ。
〇委員
いくら議論しても、背中に控えている財政赤字、これで一体どれくらい税を取るのかというのが聞かれてしまうのでしょうけれども、ただ、この場としては、この議論を説得はできないまでも、どうやって国民にわかりやすく説明するかですけれども、いつもこの10の所得分類があって、一つずつつぶしていくというのがどれだけ理解を得られるかということです。今日やった議論は所得税の課税ベースで、基本的には公示のあり方ということで、何かもう少し問題を整理できないのかなと思います。
一つは、控除の額の大きさです。給与所得控除が高過ぎるのかとか、あるいは退職所得の控除の仕方を2分の1にして云々というのが適切なのか。公示の額自身のことがある。もう一つは、そもそも公的年金等控除は仕組みとして必要なのかというでかい問題があると思います。必要だけれども、額の問題。
第2点は、仕組みとして正当なのか。つまり、公的年金の場合には社会保険料は全額非課税になっている。したがってもらうときには、理屈で言えばこれは消費税に、支出税構造になっているわけですから、全額課税ベースにぶち込めばいいわけで、その他、必要な経費で引けばいいということですから、仕組みとして適切かどうか。そういう意味では生命保険料控除も適切なのかとか、個人年金は、議論が分かれてくるところはもっとはっきりさせればいい。
3番目が今までの議論の目玉だと思いますけれども、3番目の柱として金融一元化課税を我々は所得の括りの中でどう入れるか。金融一元化というのは、税法の先生たちは頭がしびれるというか、嫌悪すべきものかもしれないのは、10の所得分類とどう関係するのかというのとがっちり真っ正面から行くわけです。というのは、現実的に今日の議論の中でも、譲渡所得の通算をどうするかまだ残っているわけです。これなどは金融一元化の問題と金融のほうで括って、そうでないのは認めないというような形にするわけですから、何か提案というか、わかりやすくするには、控除のあり方ではなくて、額が問題になっているのか、そもそも公的年金等控除で認める必要がないものを、何らかの高齢者の理屈で認めているのか。そして、我々の新しい仕事として金融一元化課税を3番目の柱で並べるようなものなのか、もうちょっと小さなものなのかというのは、議論はあると思います。説得かどうかわからないけれども、もう少し論点を整理できるような気がします。
〇委員
いずれにしても、控除等は次回にやることになっておりますので、そのときに再度問題提起をしたいと思っています。
もう時間になりましたから、まとめて終わりたいと思います。今日は個人所得課税をやりましたけれども、ちょっと疑問は、自治税務局長がお見えになったから聞きたいのですが、地方のほうはどうされるのですか。今日は個人所得課税の抜本見直しを国税中心にやりました。これにのっかってくるのか、それとも別にやる必要がないと考えられているのか、今後、この辺はどう扱ったらいいですか。
〇事務局
同じ問題を抱えている部分と独自の部分というのがあると思いますので、別途、個人住民税の関係でいろいろご意見をいただく機会をつくっていただくというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。
〇委員
ぜひお願いします。両輪でありますから、合わせて1本にやられるとまずいと思いますから。
それでは、先ほど税制第一課長からご説明がありましたように、次回は、このメモに出ておりますが、税率なり控除なり住民税なり、そういう形でこの残ったところを処理したいと考えております。次は5月27日、第3回目の個人所得課税の議論をしたいと思っています。
実は、その前に公益法人のほうが残っておりますので、これを今週の金曜日2時からやります。それから、来週の24日に総会をやりまして、これまで行いました議論を整理したい。今週、来週と週2回ございますので、お忙しいところ申し訳ありませんが、予定に組み込んでいただけたらと思います。
若干時間が過ぎましたけれども、今日は大変活発なご議論をいただきまして、ありがとうございました。これにて散会いたしたいと思います。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。