第32回基礎問題小委員会 議事録

平成17年4月12日開催

委員

それでは、時間になりましたので、今年度最初の基礎問題小委員会を開催いたします。

久しぶりの開催でありまして、26人中20人と、今日は非常に出席率がいいので、今後もこの精神を忘れずに、頻繁に開かれても集まってください。これからはかなり頻度が増えるかもしれません。

6月までは、この基礎問題小委員会と、もう一つ、基礎問題小委員会と公益法人課税のワーキングと合体した2種類の会合でやります。基礎問題小委員会の先生方は両方出ていただくことになりますが、主な論点は、個人所得課税のあり方、あるいは改革の問題と、公益法人どうするかという問題、2本立てでいこうかと思っています。今週15日にも基礎小と公益法人課税ワーキングの合同会議がございますから、テークノートしておいてください。

そこで、個人所得課税全般にわたって、これから6月までにかけて議論したいと思いますが、実はもうすでに大分前から、一応論点は整理されつつ、ある方向は固まったような気もいたしますが、ただ、これから本格的な抜本見直しというのを例の税源移譲とひっかけてやらなければいけないわけですね。それは18年度税制改革において。そういう意味で、これから従来やってきたものをもう一度整理し直し、抜本的見直しという視点からその論点を整理していく中で、多分落ちていることもあると思いますので、それを拾いつつ、一応6月の後半になると思いますが、主要な論点整理を文書にしたいと。これはある意味では、2006年度以降の税制改正の核になるような、ある指針になるようなものに多分なると思いますので、そういう意味で、この4、5、6月とかけて、言うなれば報告書みたいなものになると思いますが、その整理メモをまとめるべく皆さんのお力をいただきたいと考えております。

議論の始まる前に、総務省のほうで人事異動がございましたので、ご紹介いただけますか。

事務局

それでは、ご紹介申し上げます。

4月1日付で、河野俊嗣、前の税務企画官でございますけれども、宮崎県の総務部長に転勤いたしまして、前の税務局企画課理事官でした川窪俊広が新しい税務企画官になりましたので、ご紹介いたします。

委員

彼は出戻りでありますが、大いに戦力になりますから、期待しましょう。

それでは、本日の議題に入ります。最初に、財務省のほうから、個人所得課税の抜本見直しについての論点を整理してもらおうと思います。その後、税源移譲につきまして、総務省のほうから、総務省のお立場から、事務局のご説明をいただくことにしたいと思います。

では、どうぞ、お願いします。

事務局

まず最初に、お手元の資料のご確認からお願いしたいと思います。1つは、主な論点のメモが1枚ございます。これは先ほど会長お話しの、6月に報告書的なものをおまとめいただく際の柱立てのようになるのかもしれません。全体的な、今、個人所得課税の抱えておる諸課題を列記したものでございます。

そのほか、資料1と2、個人所得課税、税源移譲というもの、さらにお手元に「個人所得課税関係参考資料集」と多少分厚めのもの、これは机上に置いておいていただくと、備えつけという趣旨でございます。それぞれの会においてあまり分厚い資料を説明してもという気もいたしまして、必要に応じてこの分厚い資料に戻るという形にさせていただければと思います。

さて、この主な論点のメモに順次沿いまして、全体的な姿、ご紹介したいと思います。

まず1.「個人所得課税の抜本的見直し」ということで、先ほど会長からお話しございましたように、平成18年度、2006年度税制改正においては、税源移譲を行うこととされております。中身につきましては、おさらいが後ほど総務省からございますが、この税源移譲に当たっては、税率構造など抜本的な所得課税の見直しが必要となってくるわけでございます。18年度に、この税源移譲、抜本的見直しを行う、こういうことを念頭に、今年度、定率減税の縮減を行ったわけでございます。この定率減税というのは、小渕内閣において、抜本的見直しまでの間、いわゆる緊急的経済対策として打ったものでございます。

お手元に、色刷りの「平成17年の税制改正」というパンフレットがございます。これは年度内に、国会、衆参両方通していただきました。例年の倍近く、衆参合わせて三十数時間のご審議をちょうだいして通ったわけでございます。

せっかくの機会でございますので、若干この国会審議の論点をご紹介しておきますと、1つは、定率減税の縮減のタイミング、経済との関係というものがやはり一番大きな論点でありました。そのほか、後ほど出てまいります、定率減税だけでなくて、所得税の最高税率や法人税率、これも見直す、むしろこれから先に見直すべきではないかというご論議もございました。さらに、いわゆる抜本的見直しの姿、これをもっとはっきりした上でこの定率減税を処理するべきではないかと、このような議論が行われておったわけでございます。

いずれにしましても、この税法、日切れ法案の一環といたしまして、年度末までに通していただきまして、4月1日に施行されておるわけでございます。

税源移譲の中身につきましては、後ほど、先ほど申しましたように、総務省からお話しがございますが、補助金の改革、現時点では、仮おきの姿になっておりますが、義務教、トータルで8,500億ございますが、これを含めまして2兆4,000億円の補助金改革、税源移譲分について決まっておるわけでございます。あと残り、いわゆる3兆円を目指してというのが政府の方針でございまして、これにつきましては、現在も例えば、今、込みになっていると申しましたが、中教審等でいろいろな議論が行われており、また秋以降、本格的な税源移譲の全体的な姿の確定に向けての議論が行われる、そういった段階にございます。

次に2.の「個人所得課税の本来機能の回復」というところでございます。これはもう何度もご覧いただいてますので、基礎小32-1という資料をさーっと見ていただきますと、まず1ページ目の税収でございます。ピーク時、平成2年、3年あたり、26兆円オーダーあったのが、バブル税収が剥げ落ちて、例えば平成9年には19.2兆円になっております。そこからいろいろな減税等々も行われておるわけでございますが、17年度予算、これは所得譲与税ということで地方に回る1.1兆円を込みにしまして14.3兆円、その1.1兆円を除き、いわゆる国の取り分という意味では13.2兆円でございますが、譲与税分含めて14.3兆円となっているわけでございます。

その差、約5兆円、平成9年度の19.2兆円から比べますと5兆円弱の税収が減少しているわけでございますが、税制改正、減税等々、その時点における増減収を単純に足したり引いたりいたしますと、税制改正分という意味では2.2兆円でございます。残り2.7兆円が、いわゆる経済状況、例えば譲渡所得が上がってこないとか、そういった事情があるわけでございます。4.9兆円のうち2.2兆円、これが税制改正分、残り2.7兆円がその他の要素ということでございます。このように、所得税収が経済状況に応じて落ちるという意味におきまして、自動的な、ある種負担減になる、ビルトイン・スタビライザー機能があるということでございます。

実は税収全体が縮んでおるというのは、所得再分配機能の点においても問題が生じると。所得税はいわゆる所得再分配機能を背負っておる大切な税でありますが、そのボリュームが減るということから、この所得再分配機能も落っこちてきているというご指摘もあるわけでございます。

さらに、個人所得課税、議論する際には、これも累々税調でご審議賜っておりますけれども、社会構造の変化に対応し切れているのかどうか、この3.以下でいろいろご論議ございます。こういった諸点において社会構造の変化に対応しなければいけないという観点があるわけでございます。

あと、基礎小32-1の資料の7ページ、「あるべき税制の具体化の方向」ということで、これまでの間、政府税制調査会におきましてご指摘いただいておるいろいろなポイントをまとめたものでございます。それぞれ、中ポツがあって、文章があって、最後にかぎ括弧のようなところで書かれてあるところ、基本方針、中期答申、それから年度答申と、このように整理しております。これをちょっと傍らに置きながら、論点のメモ、一枚紙に戻っていただきたいと思います。

3.でございますが、「所得区分及び所得の種類に応じた税負担のバランス」ということで、ご案内のように、所得税におきましては、各種の所得の分類が行われておりまして、それに応じた課税が行われておるわけでございますが、例えば給与所得については、これまでも給与所得控除のあり方でありますとか、いわゆる特定支出控除、年間数人しか出されてない、こういう実額控除のあり方。

退職所得、これは雇用形態が多様化しておる、また退職金に関する企業慣行もかなり変わってきておる。さらに、例えば外資系などが、短期間の勤務の人に対して支払う退職金、これもひっくるめて2分の1課税になっていると。退職金、2分の1課税いたしますので、それをよしとして、退職金に片寄せして給料が支払われるという実例もあるやに聞いております。こういった点につきましては従来ご指摘をちょうだいしております。

事業所得でございます。これも累々議論があるわけでございますが、1つには収入の把握の問題がございます。実はむしろもやもやした感じがあるのは2つ目かもしれませんが、いわゆる経費の算入の適正性の確保の問題。例えば家事関連費との仕切りの問題がどうなっているのか、こういったご指摘、これも今までちょうだいしているわけでございます。さらに収入の把握、経費の適正化、これを支える記帳の実態、いわゆる帳簿の実態、こういったことについて少し整理いたしまして、次回には、税務当局のほうからも彼らの抱えている課題等々についての説明を相まちましてご論議いただければと考えております。給与所得控除の見直し、給与所得課税についての見直しを行う際には、この事業所得という問題が必ず片や出てくるということでございます。

金融所得でございます。これにつきましては、金融小委におきましてお取りまとめいただきました報告書に沿いまして、現在とっかかり中であるという現状がございます。

所得分類・損益通算ということで、これもちょっと目新しいところでございますが、所得の分類、特にその間の損益通算という問題もございます。一時所得課税、これは50万引いて2分の1課税するというようになっているわけですが、宝くじは非課税なのですが、そのほかの懸賞金で一発で当てたと、こういったものは一時所得ということで処理しております。これも2分の1課税になっている。この2分の1課税、最高税率75%時代からあったものでございますが、こういったものについてどのように考えればいいのか。

さらに譲渡所得、これは土地とか株については分離課税になっているわけですが、それ以外の資産については総合課税になっている。これは金融小でもご論議をちょうだいしました。給与とか事業所得といったものとキャピタルゲインの性格の違いというものをどのように考えればよいのかと。

さらに、不動産所得。これも今回の税制改正で一部手当ていたしましたが、いわゆる節税に使われる所得でもあると、この辺、どのように考えればいいのか。そもそも不動産所得という分類があっていいのかどうか、こういった問題が各方面から寄せられております。

さらに雑所得。この雑というのは、要するにその他所得ということでございます。その他所得であるがゆえに、いろんな所得がここに入ってきています。一番ポピュラーなのが、原稿を書いた原稿料みたいなのがこれに入ってきます。しかし、そのほかに金融関係の雑所得、例えば先物でもうけた分の所得、これがほかにはまりようがないので雑所得に入っている。さらに年金所得、こういったものも雑所得の中に入っているわけです。さらに、これは個別の先生方のものですが、政治資金、こういったものも雑所得という中にほうり込まれてしまっているわけでございます。この雑所得にいろいろな種類のものがぽんと入ってしまってますので、この辺をどのように考えるかという問題があるわけでございます。

さらに4番目、「世帯構成に応じた税負担のバランス」「人的控除のあり方」でございますが、これも累々ご議論を賜っております。家族の就労に対する中立性であるとか、子育ての支援の重要性であるとか、こういった議論があるわけでございます。いずれにしましても、この問題は家族のあり方についての各方面での国民的な論議がどうしても必要になってくる、そういった分野でもあろうかと思います。

5番目、「所得再分配機能」ということで整理しておりますが、1つ目が課税最低限。諸外国が所得控除から税額控除に切りかえるという流れが実はございます。当税調におきましても、扶養控除について、所得控除から税額控除に変えると、これも選択肢の一つではないかというご議論、賜っておりますが、諸外国は税額控除に切りかえていっていると。

その結果何が生じるかというと、低所得者に厚めの税額控除に、税負担減になるものですから、課税最低限が諸外国はずっと上がっていると。後日ご覧いただきますが、日本の課税最低限というのは今そんなに高くない、こういう状況でございます。この税額控除することで、ある種、税金の形で手当を渡していると。これを課税最低限という物差しにどのように反映させればいいのかと。実はちょっと悩ましい問題があるわけでございます。

さらに税率構造でございます。これは先ほど申しました税源移譲におきましては、どうしても抜本的に見直しが必要になってくるわけでございます。個人住民税のほうがいわゆる税率のフラット化、それに応じて国税の、所得税のほうは所得再分配機能を発揮すると、このようになっておりまして、この税率構造を見直さなければいかんと。

先ほどちょっと申し述べましたが、この国会でも、最高税率についての議論というのは結構行われました。我がほうの大臣からは、より定率減税というのは純粋な景気対策であったけれども、負担軽減法において50%を37%に落っことしている、この最高税率というのは社会経済状況の変化に応じて国際化の中で考えられた抜本見直しの先取りなのですと、このような説明をしてあるわけでございます。

いずれにしましても、現在の37%という最高税率、この適用になっているのは1,000人のうち1桁台です。ほんの一握りの人たちなわけでございます。最高税率だけを見て、この所得再分配機能を考えると、これはマクロ的にいえばあまり意味がない。むしろもう少し塊で考えないと、この所得再分配機能というのを十分発揮できないという現状にあるわけでございます。

個人住民税は後ほど総務省からお願いいたします。

7.の「納税環境の整備」でございます。納税者番号制度でございます。これは前々から、総合課税なのかそうでないのかと、こういう金融所得課税のあり方の問題との関係を中心にご議論、これはもう何十年といただいているわけでございます。これのある種応用形と申しますか、金融番号というのをつくって、金融所得間の損益通算に役に立てようという議論を金融小委で行っていただいております。

ただ、例えば納税者番号を使って、アメリカの場合は金融所得と給与、これの総合課税に使っておるわけですが、給与についても何カ所からか給料をもらっているという人が増えてきております。1カ所からの源泉徴収義務者の適正申告だけでは実は足らなくなっている現状もあるのかもしれません。さらには、実は年金関係のご論議の関連で、事業所得にこれを使えないかなあという問題意識もいろいろなところから行われております。納税者番号制度についても、我々なりにいろいろなハードルがあるわけでございますが、一歩でも半歩でもご論議を進めていただければと考えております。

記帳制度、これは納税環境整備の中では最大の眼目であろうかと思います。先ほど申し上げた事業所得、収入の把握、それから損金算入の経費の適正化、これを支える記帳制度。現在は一定水準以上の記帳をした人には青色申告制度というものがございまして優遇措置がとられているわけでございますが、いわゆるシャウプ税制ができてから何十年とたっている、こういう現状において、この記帳制度というのをどのように考えればいいのかと。

立証責任というのも若干プロっぽい話でございますが、いわゆる判例の積み重ねで、日本においては納税者側ではなくて課税庁側においていろんな立証をしなければいかんと、立証責任が課せられております。ただ、最近、下級審を初めとしまして、一部の部分についてはむしろこれは納税者のほうが立証しなければいかんのではないかという論議もございます。アメリカ流で申し上げますと、立証責任というのは証拠に近いほうが持つべきであるという議論もあるわけでございます。

源泉徴収・年末調整。これは主に給与所得についてかかわる話でございますが、納税環境の整備という観点からいたしますと、社会全体のコストというものも考えますと、基本的には現行制度、これは合理的であろうかと考えるわけでございますが、いわゆる会社頼みの納税というものに何らかの見直しが必要ではないかと。現時点におきましては、2,000万円以上の給料の方にとっては、年末調整ではなく、確定申告をしてくださいと、このようになっておるわけでございますが、先ほど申し述べました特定支出控除のあり方等々も含めまして、もう少し一般のサラリーマンが確定申告をするようにしていいのではないかという問題意識もあるわけでございます。

最後、公示制度。これは納めた所得税額、1,000万以上、こうした方が公示されておりますが、昨今、個人情報の保護という法律も施行されました。そんな中、犯罪の端緒になっているという指摘も片やございます。かねてから廃止の方向ということで税調でもご審議賜っておりますが、これについて、個人情報保護法の施行というものを受けまして何らかの対応が必要ではないかと我々なりに考えているところでございます。

以上でございます。

委員

随分盛りだくさんな内容ですね。残った時間で議論しましょう。

それでは、その前に、個人所得税を中心といたしまして、総務省のほうから、税源移譲も含めてお願いします。

事務局

企画課長でございます。

今の論点のメモの6番目に「個人住民税」がございます。個人住民税につきましても、これまで当税制調査会でたびたびご議論をちょうだいしております。最初に個人住民税の性格・役割とありますが、言うまでもなく、個人住民税は地域社会の費用を住民が広く負担を分かち合うという性格、役割を持っています。そうした性格を踏まえて、基幹税としての充実確保を図る必要があると考えておりますが、均等割、所得割と見てまいりますと、まず均等割につきましては、ここ何年かの中で、答申いただき、幾つか改正もしております。

市町村の人口段階でこれまでは税率が違っておりましたものを同じ税率に統一する、あるいは生計同一の妻という、やや古めかしい部分について、課税の公平の観点からこれを直していくという改正を行っておりますが、都道府県、市町村合わせて年額4,000円という水準、これについて果たして妥当かどうかというご議論が残っているところです。

所得割につきましては、所得税と比較いたしますと、個人住民税の場合は課税最低限が低い、それだけ広く薄くということではありますが、さらに課税ベースを拡大していくことについて努力すべきではないかという答申もちょうだいしております。

その他として、徴収面等の努力ということにも我々としてまたお願いしなければいけないのではないかと考えております。

続きまして、もう一つの資料、基礎小32-2のほうで、先ほど財務省のほうから少し話がありました税源移譲について、おさらいということでざっとご覧いただければと思います。

目次の次に1ページ、「最近の税源移譲に関する動き」をまとめてございます。広くいえば三位一体の中の動きではあるわけですが、特に税源移譲関係のところの資料を2ページ以降につけさせていただいております。

ざっとご覧いただきますと、昨年の6月、いわゆる「骨太方針2004」で閣議決定がなされたところでございまして、その中で、「18年度までの三位一体の改革の全体像を平成16年秋に明らかにし年内に決定する」と決定されてございます。その際、税源移譲についてはおおむね3兆円規模を目指すということで、さらにその前提として、補助金の改革、これを地方公共団体に対して具体案を取りまとめるように要請する。地方団体の具体案を踏まえて検討するという閣議決定がございました。

その後すぐに内閣府から地方六団体に要請がございまして、夏休みを返上する形で、地方六団体が総理に改革案を提出されたというのが8月24日の経済財政諮問会議の場であったわけでございます。

その後、この改革案を踏まえて国と地方の協議が継続し、あるいは関係する4大臣がたびたび会議を行うという形で全体像の取りまとめの努力がなされていったわけでございます。

税源移譲に関しましては、当調査会におきまして、11月25日に年度答申が決定されまして、その中でも触れられておりますし、その直後の政府与党合意、これが全体像の取りまとめということになるわけでございますが、三位一体の改革についての中でも方向性が示されたところでございます。その後、12月に入りましての与党の大綱、さらに閣議決定というふうにつながっていくわけでございます。

なお、17年度につきましては、本格的な所得税から個人住民税への税源移譲に向かう暫定的なものですが、今通常国会に地方税法等の一部を改正する法律案の内容といたしまして、所得譲与税法の改正案を提出し、去る3月に可決成立したという流れになってございます。

2ページ以降、ただいまのページのいわばバックデータとなるようなところが続いてございます。詳細は省略させていただきたいと存じます。

9ページに飛ばせていただきます。先ほども少し触れましたけれども、本格的な税源移譲を実施するまでの間の暫定的措置として、所得譲与税が平成16年度に創設されたところです。17年度の分については今回すでに法改正がなされています。所得税の収入額のうち1兆1,000億円余を都道府県、市町村にそれぞれ譲与、人口で譲与するという内容になっています。18年度もこのつなぎとしての所得譲与税をもう一年活用するということです。

10ページ以降が、これも何度もご覧いただいた資料ですが、どういう形で所得税から個人住民税に税源移譲していくかということの資料です。

10ページには現行の税率構造、この総体の負担構造が大きくは変わらないようにするという配慮が必要であると思っています。

11ページに「税源移譲にあたっての基本的考え方」の整理をさせていただいております。ポンチ絵のような格好になっていますが、所得税のほうは現状の10%から37%までの階段、個人住民税につきましては、現行の制度と方向性がすでに閣議決定等で出ております、いわゆるフラット化した後の形を両方示すポンチ絵になっています。言葉で申し上げますと左の上のようになりますが、恒久措置として本格的な税源移譲を実施するということで、その際には、[1]所得税・個人住民税の役割分担を明確化する、[2]としまして、個々の納税者の負担の変動を極力抑制する。そして[3]全体として「あるべき税制」の方向性と整合的な姿を確保するということです。

12ページに主な検討項目のまとめをしています。個人住民税では、下にありますように、税率のフラット化をする、それから個人住民税しか負担していない、そういう低所得部分に係ります負担調整措置を住民税でするという対応とともに、所得税におきましても、「あるべき税制」の方向と整合的な見直しによる対応検討ということで、4点、最低税率よりも低い税率ブラケットの設定、最高税率の引上げ、ブラケットの見直し、人的控除の見直し、こういう項目を中心に制度設計、主税局と自治税務局と共同・協力して進めてまいりたいと考えているところです。

なお、17年度の税制改正自体にはこの内容は含まれておらないわけですが、国会においてたびたび、18年度のこの税源移譲についてどのように進めるのかという質疑があったわけでして、ただいまご覧いただきました閣議決定、あるいは政府税調の答申の趣旨に沿って、これから粛々とやってまいるという趣旨でご答弁しているところです。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

今日はあと1時間半ほど時間がございます。今、事務局からご説明いただきました所得税、住民税、どこにどういう問題があって、どういう方向で一応解決を図ろうか、粗々の方向は出ていると思いますが、ただ、税調としてこれに本格的に改革のメスを入れるわけでございますから、さまざまな論点があろうし、今の説明以外にも、所得税、住民税で論点が落ちているところもあるかもしれない。そういうところも踏まえましてご議論いただきたいと思います。

「論点メモ」、1から7までございますが、これを2つに区切ってといっても、相互に全部関連しておりますので、所得税、住民税、全般にわたって、どこからでもいいという議論にしましょうか。そのほうがやりいいと思いますし、途中でご退室の方もいらっしゃると思いますので、区切らず、論点をお出しいただきたいと思います。なるべくこの論点全部にわたってのご意見をいただきたいと思いますし、かつ、今日ご出席の委員の方全員からまたいろいろご意見も聞きたいと思います。土俵が決まって、これからどう相撲をとろうかという段階ではないかと、このように考えています。

どなたでも結構ですから、ご発言ください。どうぞ。

委員

ちょっと単純な質問で恐縮ですが、課税最低限、日本は昔から高い高いと言われていて、今のご説明だと、諸外国、このごろ課税最低限がどんどん上がってきているというふうなお話をちょっと聞いたのですけれども、確かに最近資料を見るとそんなようなことがあったような気がしていて、それはどういうことでそのようになったのでしょうか。ちょっとその辺をご説明いただきたいと思います。

委員

それでは、事務局、最近の例の配偶者特別控除等々の関連も、この資料には何か国際比較ありましたっけ。

事務局

備えつけの資料の5―8ページ、所得税の課税最低限の国際比較、例えば夫婦子2人で申しますと、現時点で325万円、これが日本でございますが、アメリカ、357万5,000円等々となっておるわけでございます。これにつきましては、例えばイギリス等々におきまして、先ほどちょっと申しましたが、所得控除から税額控除に切りかえるということをやっております。

その際に何が生じるかと申しますと、先ほど申しましたように、税額控除はある種、お金の塊をポンと最後に返すという効果があるわけでございますが、低所得部分に手厚い、同じ財源で処理ができるということで、その結果、諸外国の課税最低限が上がるという格好になるわけでございます。

日本において今後どう考えるか、これはこれからのご審議次第でございますが、日本がだんだん下げてきた中で、諸外国はそのシステムの変更によって、課税最低限、単純にこの税金を払わない所得の水準というのを計算した場合には高くなってきたと、こういう経緯があるわけでございます。それとあと、もちろんエクスチェンジレートの問題もあるということでございます。

委員

そうなると、一応諸外国は税額控除を入れだしたけれども、それも加味した形でこの計算をしているわけですね、当然。だから、厳密な意味での比較は難しいのだよね。

事務局

そのちょっと前の4―11ページというところをご覧いただきたいと思います。ここに諸外国のいわゆる控除の概要ということで、先ほど申しましたように、アメリカで子女税額控除というのが導入された、イギリスも児童税額控除というものが入っていると、こういうことでございます。こういったものを込みにして先ほどの計算をしたということでございます。

委員

そうすると、厳密な比較、難しいですね。

事務局

ちょっと補足させていただきます。我々、課税最低限というのは、給料幾らもらっていると、それ以下は課税されないという意味でよく使っているわけですけれども、税額控除の場合は、1回税金を計算して、税金は出るわけですね。出るけれども、例えば子供が1人いると10万円税額を引きますという形になって、結果的には、税をまず1回計算して、それを引いていると。だけど、実際の給与収入でこれぐらいの人は、引いた結果、税金がゼロになってしまうものだから課税されないので、課税最低限ということでこれは横並びで比較しているので、厳密に課税最低限ってどういうものかという議論をちょっとさておいて、とにかく給料幾らだったら一定の同じ家族構成で課税になるのか、税金を払うのか払わないのかというようなばくっとした比較になっているわけですね。

だから、児童手当なんか、逆に言えば、税の世界ではもう何も面倒見ないから課税最低限は低いけれども、児童手当でどかっと出せば、それはある意味では同じような効果もあるので、その辺のところを税だけで議論するというのもまた非常に不十分だという指摘も出てくると。

これから、次週以降、またその辺も少し議論をしていただきまして、そういう、やや国際比較の制約みたいな議論もあるということをちょっと補足させていただきます。

委員

前は収入でやっていたわけでしょう。いや、おっしゃることはわかるのだけれども、統計のやり方を変えたわけですか。つまり、前のやり方とこのやり方と違うやり方をしているということなのですか。

委員

いや、外国が変わってしまったから、それに整合的に……。

委員

前は控除は控除で……。

事務局

それはむしろ逆にずっと同じやり方、つまり、外国と日本はとにかく収入に対してどういう課税が行われるかというのはずうっと同じように、とにかく税金の世界、税という名がつく以上は全部同じように考えてますから、やり方はずうっと同じだということなのですね。同じだから、外国がどんどん仕組みを変えて、税金を、税額控除を増やしてきたものですから、向こうの従来のやり方を継続しているものですから、課税最低限が上がってきたということになります。

委員

外国がね。

事務局

外国が。

委員

日本はある種の控除を減らしているから下がったのだよね。

事務局

配偶者特別控除を減らしたというのが一番。

委員

だから、今の段階では要するに国際比較等は要注意だということですよ。同じ300万の意味が違うだろうということを頭に置く。

委員

そのイギリスなどは所得控除から税額控除に切りかえたというのはここ2~3年のことですか。

それはともかくとして、ここ2~3年、とにかく日本は諸外国に比べて課税最低限が高いというふうに聞かされてきたわけですね。ところが、今日になって急に、実は低いのだというふうに聞かされて、これまでは高いから引き下げるべきだということが言われてきたのですが、そうすると今後どういうふうな方向に議論は持っていかれるのかなと。

委員

イギリスなんかはここ1~2年急に変わったから、その状況が変わったという説明だと受けやすいけれども、前からイギリスは税額控除でやっていたということになるとちょっと混乱しますね。

事務局

イギリスは、私の記憶では、2001年にたしか児童税額控除を入れて、それをしかも膨らませてきている。この何年かで。アメリカも子女税額控除というのは膨らませてます。だから、決してずっと前からというのではなくて。

委員

最近ですね。

事務局

ええ。それから、これはさっき事務局から説明しましたけれども、為替レートも相当、ユーロの高騰は効いてます。ですから、それはもう最近の話と。その辺も今度、次回以降、少し詳しくご説明したいと思いますが、今日は論点ということで。

委員

何か混乱しているような気がするのですけれども、課税最低限ということで、だから税を払い始める所得という意味ですよね。ただ問題は課税ベースが問題なので、課税ベースというのはやはり所得控除ですよね。だから、所得控除の額をまず一たん計算して、そこをまず比べる。それから税額控除のほうは、どこの国も、一律に与える国も、たしかオランダとかあったと思うけれども、かなり条件ついてますよね。子供がいるとか。ということは、だんだん世界の所得税が変わって、個人所得税は変わってきたということだと思うのですけれども、だから課税最低限という概念はあまり適切ではなくて、課税ベース、所得控除をまず計算して、それに適用される税額控除というのはどういう要件で加わると。おそらくそれが、やはり働いていることを条件にとか入れることがあると思うので、そういう形で書けば、課税ベースでは議論はそんなにおそらく変わってなくて、税額控除が変わってきた。同時に、だから世界の所得税の動きというのがわかるというイメージだと思いますけれども。

委員

ただ、税額控除を比較するの、難しいね。条件が各国別々だしさ。だから、必ずしもA国、B国でどうこうとは簡単に言えないよね。ちょっとこの辺、問題意識持ってください。非常に比較が難しくなってきたという事情が入ってきたということです。

委員

今までの流れの続きということで考えますと、来年度というか、18年度、定率減税の残りが執行されるということですよね。その結果がどうなるかというのが資料32―1の4ページの図を見ると、定率減税前という破線の図がありますよね。こういう姿になるということだと思うのですが、定率減税を戻すということだけ考えればね。これでいいかということが1つ問題だと思うのですけれども、よく今までいろんな人が、私も言いましたけれども、左の側から見て、日本が非常に低いところからずうっとなだらかに上がっていっていると。イギリスなんかの場合は左が急激に上がるテンポが非常に早いと。そこのところですよね。それをどの辺が理想的なのかというのを、言ってみれば概念的に一度やって、その上で、じゃどの控除が多過ぎるからどうだとかいうふうに修正していくという話ではないかと思うのですけれども、そういう議論が必要なのではないか。

私はイギリス型のほうが、今までいろんな問題だ問題だと言ってきたことの、例えば4分の1の人が払っていないとか、最低税率に8割の人が集まってしまっているとか、そのようなことが問題だということであれば、この定率減税のときにそういうものも加味してきれいな姿にすると、整合性のある姿にするということが必要なのではないのかなと思います。

委員

ただ難しいのは、税源移譲する、3兆円やると、これ、もっとひしゃげるでしょう、おそらく。イメージ。

事務局

これは変わりません。

委員

これは足したやつですか。そうすると、先ほどの委員がおっしゃったような、イギリス型と日本型と両極端、言うならばひしゃげているのがいいか、急に上がるのがいいかというあたりの議論が残るだろうということですね。

ほかに何か論点ございますか。

委員

先ほど所得区分のお話をいただいたのですが、所得の種類、これは1つには技術的な観点からどうやってそれぞれの所得を区分するかという問題ありますが、もう一つ、所得の種類として重要なのに年金所得ですね。これは税制調査会でも随分取り上げられたことがあったと思いますけれども、今の公的年金では入口でも出口でも課税されないと。それから真ん中のほうも停止になっている。それから確定拠出型年金と確定給付型年金といったもの、企業年金としても幾つか類型がありますけれども、この年金所得の課税をどうするのだろうと。これも一つの大きな問題ではなかったかなと思います。

委員

それで、11番目の所得にしようというご提案があるのですか。

委員

提案ではございませんが、提案していいものでしたら、この一時所得を何とかしたいなというのは。何で一時の所得に……。ちょっと話がずれますけれども、今ストックオプション、随分騒がれましたけれども、いわゆる大企業の役員をやっている人がもらう所得が半額課税になるという、これはどう見てもおかしいですので、このあたりにもちょっと検討を加えていただきたいと思います。

委員

そうすると、年金所得が雑所得に入っているということはまあしゃあないというご意見ですか。

委員

それも含めてですね。

委員

何か問題があるというご指摘で、どっちのほうがというのはこれからの議論に任せるということですね。

委員

はい。

委員

わかりました。

委員

今のお話に関連してですが、雑所得に年金所得入ってますね。そうすると、これは雑所得のほかの経費のほうが収入よりか多くなりますと、年金所得から引けるのですよね。雑所得だから。その雑所得という一つの区分の中での経費だから相互に引けるのだと、こういう説明ですけれども、私はこれは変だと思うのですよね。ちょっとやはり検討してみる必要のあることではないかと。

委員

先物で損した、キャピタルロスが出たら年金で引けるということですか、今やっているのは。

事務局

先物云々は実は雑所得の中で分離課税というのをやっております。今、委員がおっしゃったのは、それ以外のいわゆる総合課税になっておる雑所得の世界。雑所得から外には今ストップかけてます。これは損益通算ができないのですが、雑所得の中であれば、例えば原稿料収入が少なくて、取材経費がドカッとかかりましたと。これ自体は赤。たまたま年金所得があるとそこから引けてしまうということに、同じ所得分類の中なものですから、それは可能になっております。

委員

そんなことあるの? 原稿料安くて、取材費が上いってしまうなんてありますか。

委員

ありますよ。

委員

委員ならありそうかもしれないな。我々の世界ではないな、そんなのは。わかりました。いろいろ今日は新しい知識が入ってきた。

ほかにどうですか。

委員

先ほどの課税最低限の話にかかわるのですけれども、課税所得を計算するときに、所得プールでやるのか、あるいは税額控除でやるのかというのは、所与の所得と払っている税金を縦軸にとりますと、課税所得の所得控除で動かすというのは、要するに水平的に動かす。それに対して税額控除というのは垂直的にこうやって動かす。それでダイレクトな効果はどちらが大きいかというと、垂直的にげたを動かしたときに右のほうに移る程度が非常に大きくなると。それは資源配分上の中立性という、これは専門の委員の話にもなりますけれども、資源配分上中立的な効果の上でどちらがいいかと、労働意欲の問題であるとか、出生率の問題等々にどのようにそれが効くかと、こういう選択の中で出てきている考え方で、どちらかというと資源配分の中立的な形でやったほうがいいということによって税額控除というのを操作する、こういうのが理論的な整理の仕方です。

それを全体に置いて、実は諮問会議等で非常に意識してますのは少子化の問題。あるいはフリーター、ニートの問題。この国の活性化、人間力の問題の中で、この向上のための制度のあり方をどういうぐあいに考えるかというのは、これは中長期の課題ではありますけれども、我々にとって非常に大きなテーマにおそらくなってくるのだろうと思うのですね。その辺のところをどこかで問題意識に入れ込んでいただいて、人口がこれから絶対値で減少していく形になってまいりますので、ぜひその辺のところも検討項目になるのかなということが第1点であります。

それからもう一つの問題、金融所得の部分のところ、各国とも、これはドイツなんかもそうですけれども、損失相殺をどういうぐあいにするかというような議論、あるいは二元性所得との関係の中でどのように位置づけるかというような問題。これは今仕掛品で、財務省の審議官を中心にしてご議論いただいているのですけれども、もう一段少し各国の状況を、ドイツのシュレーダー首相のこの間の国会における説明なんかを見ていても、そういうところを意識して触れているような部分がございますので、ぜひその辺の部分のところも、足の速い所得、遅い所得との関係の中で、今までのラインの中できちんと国民にわかりやすい税制改革論議もしていく必要性があるのではないかと。

以上、2点であります。

委員

第1点は、税調も扶養控除の税額控除化、前から言っているのですよね。それ以外に、まだ税額控除、諮問会議あたり、ご議論ですか。やはり扶養控除が念頭ですか。

委員

我々としては、課税単位の問題も含めて、あるいはn分n乗、2分2乗的な考えも含めて、所得税のもともと論、原則論についてもう一度整理をしていただければというのが私の趣旨であります。

委員

わかりました。ほかにいかがですか。

委員

今、委員が触れられた税額控除、所得控除の観点ですけれども、課税最低限ということを、経済的意味をもう少し明確にするとすれば、税額控除に加えて社会保障、児童手当なんかその典型ですけれども、歳出も同時に考慮して、ネットでその人がどのぐらい政府に税金を払っているかと。これは社会保険に関する負担と、それから給付も絡みますけれども、そういった話と理論的には関係してくるわけですね。

そうすると、社会保障制度自体が非常に複雑ですので、課税最低限の水準を議論することがかなり不透明といいますか、いろいろな形で出てきますが、単に所得税だけでどれだけネットでプラスかマイナスかだけでは、特に所得格差を是正するというような、公平性の観点から課税最低限がいいかどうかということを議論するときには、社会保障を通じた給付も同時に考えて議論しないと、そこまで要するに課税最低限というものを議論すればそういったことも必要になってくると。

そうでなくて、一番最初に委員が言われたように、給付のところはさしあたって押さえておいて、必要経費で見てネットの所得がどうなるかというところだけで課税最低限を議論するとすれば、それは所得税の世界で議論できると思うのですけれども、どちらがいいのかというのはもちろん政策的なことに絡んでくると思います。

それからついでに、課税最低限と絡むかどうかわかりませんけれども、これからの日本で所得税で大きな問題になるのは、いわゆる人的資本形成のリターンとして所得が、勤労所得が入ってくると。要するに、努力して、その人のスキルを高めることによってその人の人的資本が増えて、結果としてリターンとしての給与所得が増えてくるというぐあいに考えたときに、単にフローで働いたから所得が入ってくるということでなくてですね。

そう考えますと、必要経費として、努力したことのものをどれだけ控除できるのかというものになってきて、今まで、要するに、単にお金を支出したからその分は、仕事と関係する分は引けるという形で議論できると思うのですけれども、努力の場合にはお金だけでなくて、お金の形をとらないで、労働、時間を投入する形での努力って結構違ってきて、その場合に必ずしもお金は使ってないわけですね。そういった意味で、人的資本へのリターンということで考えますと、努力に関する代理指標としての経費をどう考えるのかというのは結構難しいかもしれません。

委員

給与所得控除というのは、その概念、一部入っているのではないかね。難しいよ。マネーの単位までしない要素もあるなんて言われるとちょっと。

委員

ついでにもうちょっと、全然関係ないのですけれども、この論点メモでつけ加えるとすれば、やはり消費税と所得税のメリット、デメリットがどうなのかと。つまり、これから直近の話を伺いましても、どうしてもネットで増税の話が出てくるわけですけれども、そのとき、所得税と消費税が大きな、当然有力な増税財源になってきたときに、どちらにどのぐらいウェイトを置くのが国民全体から見て望ましいのかという議論に当然なると思うので、単に所得税の個々の論点をどうするかというのも重要だと思いますけれども、それと、消費税で増税した場合に比べて所得税の相対的なメリット、デメリットがどこにあるのかというのはもう少し明確にするような形で所得税の議論もしたほうがいいのではないかと思います。

委員

この場合、消費税とおっしゃっているのは付加価値税的意味の消費税ですね。

委員

ええ。もちろん直接税型の支出では無理だと。

委員

無理だとしてね。そういうことですね。ただ、所得税も消費税も両方上げなければいかんということになったら、相対的比較といったって程度の問題になるからね。

委員

ただ、どちらにウェイトを置くかというのは。

委員

ウェイトを置くかという意味ね。それは専門の委員に一回整理してもらおうか。

委員

今の努力の問題ですけれども、おっしゃるとおりだという気もするのですが、努力をして自分の能力をみがき上げた人というのは収入で報いられるのではないでしょうかね。税で考える話ではないような気がいたしますが。

委員

この論点で言いますと財源調達機能というのをどのようにこれから考えるかというのは、ある意味では非常に厄介な問題でもあると思うのですが、例えば2002年度のレベニュー・スタティスティックスからざっと所得税を拾ってみますと、一番高いのがデンマークで26.0%、日本は4.7%なのですね。もちろんそういう非常にマクロな数字というのはどういう意味を持つのかというのはありますけれども、やはりかなり異常な状態ということが考えられるわけで、それは先ほどお話あったように、ずうっと減税をやってきたとか、いろんな要因があったにしても、所得税というものに対して、減税するためにあるという存在でしかなくなったのではないかという気がしてならないのですね。

もちろん、今後、消費税であれ、ほかの税なりを使うにしても、今の財政赤字のことにしても、あるいはよく一般に言われる社会保障という点から考えても、さて、それを前提にした上でほかの税で考えるのかというのは、先ほどの委員がおっしゃったように、これは質的な議論は当然あるにしても、ややマクロ的な数字を見て、やはりちょっとおかしいという、どうしてもそういう感じはしてしまって、ある意味ではそこにいろんな問題が集約されているというふうに考えた上で、例えば所得種類ですとか、損益通算の範囲をどう考えるかとか、所得分離をどう考えるかということもおそらく考えざるを得ないし、今度は住民税のほうでもどうするかということを同時に、これから、分権である程度財源が譲与されて、いろんな行政の責任が地方に行ったときに、地方がそれをできるのかどうかということも含めて、この問題はどうしても、私はもう避けて通れない問題だろうと思っておりますが。

委員

財源調達機能を高めるというのが前提のお話ですね。

委員

そうです。

委員

そうすると、考えないといけないというときに、損益通算なんて減収のほうに作用してしまうよね。だから、損益通算なんてやたらに認めないということか。

委員

やり方によっては、ですから、一種のウィンブルドン効果みたいに、そうやって経済の活性化を図ることによって税収が増えるという側面もあるでしょうけれども、損益通算というのはさしあたりは場合によっては税収減をもたらす可能性があるということもありますし、それから例えば消費税を引き上げていったときに、カナダのような形でのタックス・クレジットのようなものを所得税でやってしまえば、また所得税のほうの課税ベースを削減してしまう。だから、少しほかの税との関連も当然あるわけでありまして、私が一番気になっているのは実はそういう点ということになります。

それから先ほどの課税最低限の比較も、確かにおっしゃるとおり、私もこれは大変変な話だと思ってまして、例えば税額控除でいろんなことをやってしまうのと、手当でやって、手当を非課税にすると、形式的に見ますと、日本の課税点、うんと下がってしまう。しかし、児童手当、非課税であるとか、非課税所得をいわば乗っけていくとそれが課税最低限の中に入ってこないことになりますので、この両者の比較は、先ほどの委員がおっしゃったり別の委員が指摘されたように、税額控除という仕組みの中で行われる一種の隠れた手当みたいなものと、それから手当というか、非課税にして乗っけた場合と、その辺の比較がありまして、私は前から、失業保険金も含め家族手当も含め、まず原則課税にすると。そこから人的控除のような形で1つは考えるか税額控除で考えるかという少し原則的な立場をはっきりしないと、こういう比較をする場合にも非常にかんげきが出てきてしまうと思っておりますので、この辺は仕組みをどうするかということにかかわることですが、特に比較の際は確かにちょっと注意しなければいけない点だと。

それからもう一つ、これは前にここで発言して、皆さんからあまりサポートなかったのですが、所得税の税務行政と徴収問題、住民税も含めて、これを少し、すみません、まじめになんて言うと怒られますが、みんなまじめにやっていて、なおかつ、先ほどすでに納税者番号制度の話とかありましたけれども、要するに制度が幾らよくできても、かつて、例えばクロヨンということで人々の不公平感を非常に強めて、その結果として、税制の設計にいろいろ影響が及んだということがありまして、やはり徴税体制とか執行の的確性とか、そういうことに相当注意を払っていかないと、本当の意味での公平性とか信頼性が得られなくて、また文句ばかり出るということになりかねないので、私は特に、住民税を地方に大きく移譲して、むしろ所得税よりも住民税のウェイトが高くなったときに、地方における住民税の徴税と執行がどのぐらい的確に行われるかということに最大の関心を持っておりますので……。

委員

何か住民税でその辺問題点、具体的に……。

委員

いや、私が前から申し上げたのは現年課税を何とかする工夫をすべきだと。公平というのは、その年の所得から払うという意味での公平性であって、マイナスの所得に対して今年の税を払うことって、時間がずれているというのは、ある程度、生涯とってみれば同じだと言うかもしれませんが、しかし、これから就業形態が非常に多様化したり高齢者が増えてくるという中で、やはりそれは対応させるべきだと思っておりますので。

委員

事業所得の中で、記帳義務を入れてしっかり必要経費等々というのは事務局からご説明あったけれども、それは委員の意見をくみ上げている要素だよな。当然、問題意識として彼は受けとめてちゃんとしてくれたわけだよ。多分、サポートあるのだよ。

委員

この間ある地方で税務署長と話していたら、総務省の人に聞いてもらいたいけれども、地方税の事務所は徴税能力は全くないと言ってましたね。つまり、ぐるぐる、これはよくある話だけれども、僕は本書くからあれだけれども、図書館の館長が元体育館の館長だったりするのと同じように、ぐるぐる回していくから、地方税のほうの事務所の所長というのは全然専門家ではなくて、ぐるぐる、ただ役所を回っている、市役所とか県庁とか回っている、そういう人たちですよね。一応国税庁はずうっと国税庁やってきているわけで。1本でね。全然その能力が違うわけですね。

そういう人たちがこれから、つまり、国税庁のデータを使って、結局、あと徴収するわけだけれども、自分たちのデータ持ってないし、専門知識も全くないという話をさんざん聞かされましたけどね。そういうのは総務省のほうでどうなっているのか、そういう指導とか、まあ、してもしようがないだろうけれども、どういうふうになっているのかよくわかりませんけどね。

委員

何かその辺のお答えがあれば。同じようなことを思っている人もいるかもしれないけれども。つまり、専門家が育ってないと。地方税の世界では。よく言われる話だけれども、何かあります? 急に今言われても困るとは思うけれども。

事務局

必ずしも私ども、そういうふうには思っておらないのですが、ちょっと今の委員のご意見を踏まえて、どういう形でご説明できるかというのをお時間いただきたいと思います。

委員

地方税も含めて、地方で苦労している立場からもう一つ指摘しなければいけないのはフリンジベネフィット。これはもう大変な問題で、もちろん背広がどうのこうのなんていう問題だけでなくて、保険料の上増しの負担の問題、これはきちんと国税庁が大阪市役所等入ってきつつ、今、背広のところでは入っているのですけれども、そういう根幹的な問題でやらないと、全部そういう形ですりかえられてしまうのですね。課税所得がもう完全に操作されてしまう話になっているわけで。私は地方分権論者なのですけれども、最近は地方自治に対して非常に不信を持っているというのが第一点です。

それから第二点は、先ほどの委員の話にもあったのですけれども、あるいは別の委員の話にもあったのですけれども、所得税を、ほかの税制との絡みをどういうぐあいに整理するかというのは今後非常に重要な論点だと思うのですね。我々、ライフステージで考えると、いわゆるピュアな付加価値税、これはミードの報告の中におけるピュアなあれですけれども、それはコンシュームド・インカムタックスで、レーバータックスとインカムタックスは同じなのだと、所得税と消費税は同じなのだという議論が一方にあるわけですね。それはタイミングの問題で、過渡期においては違うわけですけれども、一生涯続いてみると同じなのだと。

そうすると、税の中における公正を考えるときに、消費税と勤労所得税、どう考えるかという問題と、金融性所得をどういうぐあいに考えるかという問題ですね。実は非常に論理的には密接不可分の問題になっているわけですから、ぜひそこら辺の部分のところで表層的に、ここは所得税、ここは消費税、ここは法人税という議論のやり方だけでなく、例えば法人税は金融性所得に対してダブルタクセーションになっているのだというような部分のところも調整しなければそういう話になるわけでして、実効税率、実効の負担が一体、個人のベースでどのように究極的にシェアするのか、ここら辺のもう少し、制度論として、私はこの論点のメモは伝統的な手法の中で適切だと思うのですが、現実とのかかわり合いで言うとどうもイメージがわきにくい。そこをどういうぐあいに説明していくかというところをぜひ工夫していく必要性がこの税調でも必要になってくるのではないかという気がいたしますけれども。

委員

おっしゃるとおりですね。今まさに研究者のレベルで話をまとめてくれたけれども、税調のレベルになると、果たしてそれがうまく生かされるかどうかちょっとわからない面もあって、ただ、おっしゃる論点は背後に秘めて、あるいは表に出してもいいのだけれども、こういう議論をしないとだめだということだけはやはり言えるでしょうね。

フリンジベネフィットは、累年、税調でも問題意識持って、過去、結構書き込んでいるよね。ただ、それが大阪市で活かされないということがあるのかもしれないけれども、今後、事務局はフリンジベネフィット、どういう問題意識持っているの?

事務局

まさに給与所得なら給与所得課税の議論として出てくると思います。いろんな形のものがいろんな形で出てくるという。それに税務当局ないし税制がキャッチアップし切れているかどうか、これはやはり一定期間ごとにチェックはしなければいかんと。現状のフリンジベネフィット課税についてはこの給与所得のときにご議論いただきたいと思います。

委員

大阪市の問題というのは別にほかのところまで広がっているのですか。あそこだけ特異なあれなの? 総務省あたりから見ていると。大阪市ってまさに特色ある市で、ほかはあんなことやってないと言えるのか、見ていると、なんかほかもやっているんじゃねえかなんて気がするけれども、その辺どう判断しているのですかね。

事務局

全部を承知しているわけではないですが、やはり特殊な事例ではないかと思ってます。ただ程度の問題で、要するに、あそこまで極端なところはないけれども、周辺の市でも福利厚生等でやや調査を受けている例もあるようですし、非常に極端な例でありますけれども、程度の問題で、いろんなところでそれなりに見直すべきものはあるのではないかと我々は思っています。ある意味では、民間でもいろんな福利厚生がある中で、どの辺までが納税者として許容されるのかというレベルの話だろうと思いますけれども。

委員

政令指定都市の中で大阪市が6割強であるということは事実なのです。ですから、突出した水準。

委員

6割強って何?

委員

全体の?

委員

全体の中で。ですから、相当な水準、半分以上が大阪市がやっていると。

委員

委員は大阪のほうだけれども、何か意見ある?

委員

ちょっと違うところで。

1つは個人所得課税の本来機能の回復というところで、所得再分配機能を回復するということの意味ですね。これが私よくわからなくて、例えば最高税率37%というのが低過ぎるということなのか、あるいは、今まで、現行のいわゆる税率構造というのは、中高所得層の負担の累増感をなくそうということで、ブラケットと税率を両方いじりながら現在に至っているわけですね。そうすると、37%でとまっているという問題で、さらに上のところではもっと高い税率を適用すべきだという話なのか、あるいは、何を目的にしているか、あるいはどうしたことで再分配効果が強まったと考えるのかということですね。

一方で課税最低限を下げるという議論があって、これは当然、分配効果を弱めるわけですから、このあたり、もうちょっと科学的に、何を目的にした税率、あるいはブラケットの改正が必要なのかということをちょっと議論しないと、ちょっと常識的になってしまっている感じがいたします。

委員

ただ、国会では最高税率上げろという視点で議論しているのでしょう。野党の先生あたりの議論は。何かその辺……。

事務局

いろんなご論議あるわけでございますが、今、所得税本法では50%になっているのですが、それを負担軽減法で暫定的な形で37%に下げている。定率減税を見直すというのはそっちも見直すべきではないか、何しろそっちを先に見直す、すなわち50%に上げるというようなご議論があったわけでございます。今委員おっしゃったように、先ほどちょっと申しましたが、1,000人いて、本当に片手ぐらいいるかいないかの適用対象者でございます。マクロとしての所得再分配機能という点においては、最高税率だけを議論するのはあまり意味がないのではないかなあと。むしろ、例えば現在で言うと、30%、それから20%のブラケット、この幅の問題、こっちのほうが大きいかなと。

委員

当然、所得再分配機能の回復と言っているのは、トップレートはいじらないにしても、税率全体を見直す中でやはり再分配の機能を持たせるように変えたいという趣旨でご説明あったよね。そういう理解でいいのですね。

事務局

これはご論議次第でございますが、少なくとも、今20%、30%のブラケットが狭くなっているということで、これはこれとしていい税制ではあるのですが、所得再分配機能という観点から見ますと、そもそも所得税収のボリュームの問題も当然あるわけでございますが、我々の気持ち、お察しいただきたいと思います。

委員

最高税率にどの程度の割合が適用されているかということは私はあまり意味がないような気がするのですね。つまり、よく言われる、いわゆる所得の格差が非常に平準化してきているから、所得税率構造をもっとフラットにして再分配機能は持たせなくてもいいのではないかという議論がありますが、これは別にそのままにしておいても、なければ適用される人がないわけだから、別にそこが適用されるかされないかという問題でなくて、もしそこに所得が大きくなったときに税金をとれるかとれないかという、その仕組みを備えておくかどうかという問題ではないかなと私は個人的に思っているのですね。

それはどういうことかというと、要するに景気の問題で再分配効果が弱まったという部分と、税制そのものが変わったことによって分配効果が弱まった部分をきちっとやはり切り分けないといけないのですね。ですから、そこの部分をきちっと把握しなければいけないということと、それからもう一つは、国税の所得税と地方の個人住民税の本来機能のあり方というのはやはりちょっと違うような気がいたします。

海外の調査で、会長もおっしゃったように、外国では最低生活費に課税しないなんていうような考え方はないのだと。それがどうも日本の場合にはまだ存在している。それが地方の住民税にそれを適用することが果たして妥当かどうかということも、ちょっと国税と地方税、切り分けて考えなければいけない。

先ほどの委員がおっしゃったように、一たん、とにかくタックスベースに入れて、課税して、また給付すればどうか。地方税だったら、ひょっとするとそれはふさわしいかもしれない。そのあたりも、ちょっと国税と地方税を分けて考える必要があるのかなという気がいたします。

それから税額控除にするという話は、社会保障制度と税制が一体になっていけるかどうかという問題だと思うのですね。ですから、これは以前ある委員がご報告なさったと思いますが、いわゆるネガティブ・インカムタックスのようなものが果たして適用できるのかどうかというところで随分違ってくると思うのですね。ですから、手当は手当で考え、こちらはこちらで税金の問題として税額控除にするということが果たしてどの程度意味があるのか。もちろん、低所得層に重くという意味では税制改正の一つの大きな目的かもしれませんけれども、そこの部分をきちっと押さえないと、ちょっと税だけでは議論できないと思いますね。

委員

いろいろ出てきたのですけれども、今、委員は所得再分配機能を指摘されたのですけれども、全体的に見て、それぞれが関係し合っているにもかかわらず何かばらばらに出ているなという印象が多いのですけれども、金融小委員会でずうっと金融所得やってきたわけですが、そこでしかけていた議論というのは金融所得と、それから譲渡所得というのは不動産で出たり金融取引で出たりするのですけれども、金融取引で出る譲渡所得は金融所得に入れて、不動産等で出るものは不動産に入れるとすると、おそらく議論してきたことは、その金融所得と不動産所得とその他という議論をしてきたと思うのですよね。何かそこを戻ったというわけではなくて、せっかくあれだけ大きな議論をしてきて、だから、この種類というか、形式的に10の所得の区分があるというのではなくて、課税ベースと考えたときに、これをもっと大きく見直すことはできないのか。

ということは何を意味するかというと、その大きな問題は、給与所得と公的年金とをどうイコール・フッティングに課税していくかというような問題になると思うのです。だから、このチャレンジというか、大きな問題は、金融所得の議論を延長していけば、おそらく金融所得、不動産所得、その他と稼得所得という形になってきて、そしてそれは、具体的な問題では、公的年金というのをその他の所得に対して優遇して課税する必要はないわけで、どうするかということで、ここは組みかえられるだろうな。

それから所得分配機能というのはさっきの議論でいくと、課税最低限という言葉がもはや通用しない言葉で、これは所得控除、それから税額控除――税額控除は、先ほどの委員がおっしゃったように、広い意味でいえば、単に税だけではなくて社会保障の給付も入ってくる、そういうことになると思います。

それから個人住民税で僕がよくわからないのは、個人住民税でここで課税ベースをどうするかという問題はどう考えるのか。これは個人住民税の性格、役割なのでしょうけれども、実際は所得税に比べて個人住民税のほうが控除等が少ないわけですけれども、それはいろんな理由があるにしても、不思議なのは、我々、確定申告して、所得税に関してはわかっているわけですよね。幾ら自分が払って、どうなったか。その次に地方税になったときに、自分で計算したことがないというか、できない仕組みになっているわけですから、そのとき自分の課税ベースがどうなって、幾ら税金払ったかというのがわからない。

これから大きな問題なのでしょうけれども、税源移譲するときに、この個人住民税と所得税の課税ベースを、先進的な議論としては、個人住民税の課税ベースを広くする、つまり控除を小さくするということはわかるような気はするのですけれども、でも、これからその議論をまだやるのか、あるいは税源移譲するときにもうそろえてしまうのかという問題もあると思います。

幾つか言いましたけれども、もう少し論点のメモというのは見直すことはできるのではないかという気がします。

委員

わかりました。

委員

私はほぼこのままでいいのではないかと思うのですが、個別の論点、例えば所得税でいけば3、4、5というあたりが、議論していく際に相互に関連があるということを意識しながら、つまり全体像を意識しながら議論していけば、一まずこれで議論していいのではないかと思います。

相互に関連するというのは、例えば4のところでいけば、ここで、先ほどの委員がおっしゃったようなご発言をとれば、課税単位の問題がちょっと意識されてないわけですね。課税単位の議論をここで入れてくると、日本の場合には課税単位は個人単位なのだけれども、ギリシャとともに、家族を配慮した控除が非常に多い国というふうに分類されているわけですよね。その結果として、課税最低限の議論でいけば、多分、基礎控除は、これは、私、最近勉強してないであれですが、基本的には、ドイツなんかに比べると低いのだけれども、しかし、他の所得控除が非常に多くて高く上げているということだろうと思いますので、この4と5というのは、家族的な配慮とか社会保障のあり方とかさまざまなことを媒介にして、課税単位、その他を考慮すると深く関連づけるので、引き離して議論できないような気がします。

それからもう一つ、日本の場合に、先ほどの統計で、課税最低限が、個人の場合、ちょっと高めに出ている一つの、つまり、基礎控除が低いにもかかわらず高めに出ている原因は、給与所得の控除が非常に大きいということですよね。それは、私どもの財政学の議論でいけば、3のほうの所得の種類に応じた税負担のバランスの中の差別課税、ディファレンシエーションの問題で、給与所得を他の所得とどう扱うかという問題にかかわってくると思うのですね。

例えば単純にそこのところをどういう形でいくのかといったときに、ほかの課税ともかなり関連してくる場合がある。つまり、ドイツや北欧のように、ネット・ウェルス・タックスみたいなものがある国、そこで調整しようとしている国と、日本のように、それがない国との問題もありますので、いずれにしても、この3つに一応分けた上で、相互の関連性を意識し、かつ他の租税も意識した上で全体的なバランスを考えて議論すれば、一まずこれでいいのではないかという気がします。

委員

ギリシャと同じで、個人単位のくせして家族面倒見るといったら、扶養控除とかそれに類するのは要らないという発言? 多過ぎると。

委員

私は極端にいえば要らないけれども、ただし給付主義でいくかどうかという問題ですよね。

委員

給付で面倒見ると、そういうことですか。

委員

はい。

委員

今度の税調というのは、世評、消費税の将来、それから所得税のことを含めても、基本的に増税路線でやるということに、定評になっているのですね。僕はそれ、非常にありがたい定評だと思うのですよね。当たり前のことを当たり前に議論できるようにやっとなったというだけの話でね。今までの歴史をずっと書いたものを読めば、これは社会党の要求、これは自民党のしかるべき筋の要求、何だかんだ全部押さえ込んでしまって、当時、しかし、それでも給与所得どんどん増えていたから一向に構わなかったということもあるのだけれども、ちょうど大阪市のあれと同じようで、過去にいろんなことを、つじつま合わせをやっていった結果、今日こういう姿になっているところもあるのですね。何も学者が、これは合理的だと何ぼ言っても、それはもっとはっきりした理由があってやっているわけだから。

この際は、細かい理屈はどうでもいいから、所得税の復権というのが基本的に大命題だと思うから、そのためにしかも増税だというのが当たり前だと思われているならもっけの幸いだから、どんどんやったらいいと思うのですよ。そこのところの腹さえ決まっていけば、個別のことについて技術論始めると容易でないから、それはそれでまたお任せしてもいいのだけれどもね。

ただ、それについて1つだけ、どなたかおっしゃっていたけれども、すべてが増税項目で、とにかくみんなからいただくよということだけ言うのは得策でないということと同時に、時代の要請にこたえてないところもあると思うのですね。少子化ということについて、これまた今まであった要求に全部こたえてきたことのまた延長線で僕は言っているところがあるからじくじたるものがあるけれども、それにしても、この少子化の大議論の中で、企業も何かやらないかん、個人もやらないかん、いろいろあるのですよ。税制だってやってないわけではないけれども、この際、ほかの項目なんか全部落としても構わないから、それで1,000億か2,000億増税になるならば、そのうちの3割ぐらいは少子・高齢化の役に立つと説明ができる。効果はわからない。そんなことはね。もっと深い深い理由がありそうだから。実は少子のほうには。しかし、説明ができる程度のことはやったらどうだと。そこだけやると、また減税かと言われるから、冗談じゃない、そんなことは。基本的に大増税でいくのだけれども、ここはちゃんとメリハリつけますよと。

1つだけ、おそらくこんな項目で議論するのは少子化だけだと思うよ。ほかは、何言ったって、それは古い時代の議論だとかなんかで大抵蹴飛ばすことは可能なのですよ。しかし、少子化はなかなかそういかない。ただ、たくさんの本を読んで、人の話聞いてみると、税制をちょっといじくったぐらいで少子なんていうことはどうにもならないと。もっともっと大きな、でかい話なのだと言われれば、そうですかと引っ込むしかない。しかし、それはうちはやりませんと、企業も個人もいろいろやってちょうだいねと、厚労省も、と言うだけでは済まないような気がするのですよ。だからせめて、大増税やるけれども、増税の一部はそういうことで返しますよというぐらいのことはメッセージとして会長が言うべきなのだね。

2番目に、僕はこの前一番最初に大阪市の話をここで唐突に持ち出したのだけれども、だけど、ある委員がえらい苦労されて、今、えらいことになっているけれども、しかし、それは別にして、さっきの総務省の説明、僕は半信半疑なのだ、あの説明は。秋田の市長、彼は委員だから、よく話を聞く、あんなことはどこでもあると。ただ程度問題だと言うのですよ。大阪市が特段悪かったということをおっしゃっている。事実、そうだと思うのだ。あれはひど過ぎるからね、どう考えたってあんなものは。あれで労働組合抵抗しているなんて、もう最低の組織だから。今の労働組合はね。話にならない。

だけど、あそこの点はもうちょっとこちらのサイドで整理しないと、住民に近いところに金持っていったら金の使い方が合理的になるというのは一応の説明なのですよ。これはかつての話だからね。今そんなことやらないよということだと思うけれども、ほうっておくとああいうことがあり得るかもしれない。起こっているのは市の職員だけの話でなくて、市の議会の諸君のやっていること、これまた聞いてみるとひどい話。特段あそこだけがひどいとは思わないけれども、あれは、職員を市議会議員は責められないよ。あんなことやっていて。いいかげんな話ですよ。だから、一点突破全面展開ではないけれども、左翼用語ではないけれども、総務省は本当に腹据えて、この際、三位一体でやるということが決まっているので、それはそれでやるわけで、だれも文句言わないけれども、ここのところはきれいにしていかないと、必ず食いつかれますよと。単純な議論ばかりやっているのでは。

委員

マスコミによれば、その辺は一応指導やなんかで情報集めているのでしょう。

委員

やってる。ここは指導すべきなのだ。

委員

だから、何かデータでも集まったら……。何かご説明いただくような、ございますか。

事務局

今すべての資料を集めているわけではないですけれども、非常に大阪市の例は極端な例だと思いますが、だからといって、そこに限らずすべての団体に対して、新しい地方行革指針というのを先月末に出しまして、1年以内に、国等の状況、あるいは民間と比較等もした上で、福利厚生費も含めて徹底的な見直しを行って、いわゆる行革のアクションプランというのをすべての団体で立てて、わかりやすく公表していただくというようなことを先月要請したというところでございまして、これを非常に今までの行政改革の運動以上に我々としては各団体に一生懸命やってもらおうということでこれから進めていこうということを今始めたところであります。その中でまたいろいろ事実がわかってまいると思いますので、ある程度そういうことをわかった段階でまたご報告はしたいと思いますけれども。

委員

大増税なんて言われている中で、何か言うとすぐそっちのほうに話が飛び火して、我々、困ってしまうこともあるから、そういう意味では、特に大阪市を念頭に置くというわけではないけれども、地方行革のほうについても、あるいは地方の給料の水準についてもいろいろ情報をいただきたいと思います。

委員

今のお話でちょっと心配なのは、これだけ大変なエネルギーで地方分権ということを進めてきて、あるいは今度の憲法改正にも関連してくる話なのですね。何か1つ変なことが起きると、やはり地方に任せておけないと。国が監督する、監督を強めるという形でその問題の解決を図るということは、やはり今取り組んでいる大きな哲学から見ておかしいと思うのですね。気持ち、ものすごくわかりますよ。私なんか、国の役人だったから本当によくわかるのですけれども、でも、ああいう方向でいこうと、それがこれからの日本の進む道だと決めたわけですから。それは大阪市のようなところの住民がいけないのですよ。住民がしっかりしなくてはいけない話なのだというように話を持っていかないと、そこまで税制調査会に責任持てと言われたってだめだということだと思うのです(笑)。

委員

あれ、住民が悪いということは新聞が悪いのだわ。記者クラブ、何やっているのだ、今まで。50年間あそこで。どの新聞も全部そうだよ。外部で問題指摘されて、調べてみたらそうだったわけでしょう。新聞が悪いのよ。

事務局

いろいろ物議をかもしておりますけれども、確かにおっしゃるように、大阪市だけではなくてどこにもある問題かもわかりません。ずうっとここ何十年来、財政状況というのは全体としては右肩上がりでやってきたということで、それぞれの個別の団体で毎年毎年、労働組合とああでもないこうでもないと言ってやっているうちに、それがちょっとずつ積み上がってきて現状のようなことになってしまって、それを見直すというのはなかなか平常時には難しいというようなことがあって、特に大阪市の場合に、歴代ずうっと市長が市役所から上がっていってというような、内部、一つのグループ化してしまったような状況で、非常に悪い環境が整ってこのようになってきたということかとは思いますけれども、ほかもあるとは言いましても、あれほどひどいものはないのではないかとまず1つ思っております。

それと、やはりこれは1つは仕組みの問題でもあろうかなと私なんかは思ってまして、どこをどういうふうな、仕組みを変えていけばこういうのがうまくやっていけるようになるのかというのは1つ宿題としてあると思いますけれども、同時に、今の委員がおっしゃいましたように、分権化でいっている方向で、今回の行政改革の指針づくりというのも、それでもって国がどうこう、権限的にどうこうしようということではもちろんございません。我々としては、今回いろいろこれからご議論いただきますような税源移譲なんかを通じまして、例えば住民税が非常に負担が重くなるわけでございまして、毎月、給料の明細を見れば所得税よりも住民税が高いという人が圧倒的にたくさんになるという前提でございますので、そういう意味での監視といいましょうか、そういうのも強まっていくのではないかなということで、分権を進めることによって、より責任を持ってやっていただく、そういうシステムをやはりつくっていくべきなのだろうということで考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

委員

今の税金とフリンジベネフィットの話はだんだんいいところに結論みたいな話になってきたように思うのですけれども、やはり自主財源を増やして地方の住民の関心を高めていくという、それが方向なのだろうと、その点については私は思いますね。

1つご質問をさせていただいた上で意見を申し述べたいと思いますが、先ほどの委員が、個人が受け取る国からの各種の給付も全部収入に入れて課税するという、私、これは大変興味がある考え方のように思うのですけれども、言うなれば非常にわかりやすい話のような気がするのですね。それがなぜ現在そのような考え方がおよそとられていないのかということと、そういう考え方を取り入れた場合には、当然、社会福祉関係の個人負担の問題にもはね返る面があるだろうと思うのですけれども、それ以外に、税制の上でも、個人の贈与の関係やなんかはどのように考えるのかとか、いろいろはね返るところがあるような気がするのですが、単にそういう、国からのあれを入れればいいというだけで済む話なのかどうか、もしお考えがあれば教えていただきたいと思います。

委員

特に社会保障給付というのは、要するにほかに所得がないとか、貧困な人であるということを前提にして、最低とは言いませんが、そういうものを給付する趣旨であるから、それは本来担税力はないという趣旨でおそらくつくられてきたものだと思います。私が承知している限りにおいては、所得税法ですとか個別の年金法なんかで唯一課税の対象にしていいとしているのは老齢年金だけです。ほかはすべて非課税という規定が、所得税法なり、あるいは年金法などで定められているということになります。

私が先ほどそのように申し上げましたのは、もちろんその一つ一つとってみればそうかもしれないけれども、しかし、その人がどういう経済状況にあるのかということは必ずしもはっきりしないわけで、特に現金給付のように、消費者主権といいますか、それをどう処分するか自由だというものについてはとりあえず課税ベースに入れて、それがもちろんある程度の所得以下であればそれはもう課税しないということもあるけれども、これは課税して当然であろうという趣旨で先ほど申し上げたわけでありますが、ただ、もう一つ、私、同じような点を主張させていただきますと、今回、金融所得の一元化で変わってくることを私は大変期待しておりますが、従来、例えば利子について支払調書が出ない。あるいは、源泉分離課税に事実上なっているような資産所得について支払調書が出ない。

そうすると、何か公共サービスを給付するときに、所得制限をかけたときに、実は入ってくるのは給与所得ぐらいしか入らない。だから、ほかに幾ら利子とか株式の譲渡益のようなものを得ていても、その人は所得ゼロとみなさざるを得ない。だから、そういうことが、例えば所得制限がかかっている社会保障給付であるとか、それからいろんなサービス、奨学金もおそらくそうだと思いますけれども、そういうものの配分にやはり影響を及ぼしていて、それも非常にまずいなと思ったのですが、金融所得の場合、今回、少なくとも支払調書が出るような仕組みに変わるようでありますので、そういう意味で所得全体がある程度わかるようになるのかなあということを期待しているのですけれども、幾つか、実はそういうものが社会保障給付以外にもたくさんある。

委員

支払調書を活用するような制度にしておかないとまずいよね。特に奨学金の査定なんて、そういうことですよ。入ってないのだから、大体。重ねてございますか。

委員

今の金融所得の関係で言えば、金融小委員会で大変ご苦労されて、立派な考え方がまとまったと思うのですけれども、経済はよくなって、株の値段が少し上がってきたということが多分ベースになっているのだろうと思うのですが、どうもあの方向に向かってやれやれというような声があまり業界関係あたりからかつてほどには聞こえないような感じがしてまして、それが果たしてどういう理由によるのかなあと。

何となく推測の範囲を出ないのですけれども、やはり金融所得の課税はあの考え方でやるということになればかなり把握されるのではないかとか、あるいは業界の事務手続なんかが非常に煩雑になるのではないかとか、例の納税者番号ではないけれども、あの手のものをやるとすると大変金がかかるのだという話も聞いたことがあるのですが、要するにそういう問題がいろいろあるのかなとは思うのですけれども、これも何とかああいう方向で実行するようなことを考えるべきではないのかなと思います。

それからトータルの話で言えば、私はここに書いてあるような考え方で大いに検討を進めるということでよろしいかと思うのですけれども、要するに考える方向づけの話がいろいろ出ていたと私は思うのですね。そのときに、租税の三大原則の中立、公平、簡素ですか、というような考え方でものを考えるというのももちろんあるのだと思いますが、同時に、やはり2010年代初頭においてプライマリーバランスを確立するのだということを頭に置いた検討でなければならんだろうと。非常に抽象的で、先生方の議論にはついていけないのですけれども、私はそのように思います。

委員

全体はこんなことでしょうけれども、1つ非常に疑問に思うというか、消費税というのは当然、来年か再来年か3年後か、上がるものだと前提にして考えている節がありますけれども、できないのではないかなあという気が非常にありまして、結局のところだれがやるのだと、やる人いないわけだから、税調一人で頑張ってみたってどうにもならない話ですので、ひょっとしたら消費税というのは上がらないと。10年ぐらい。それを前提にものを考える必要もあるかなあというのが、財源調達機能ということを考えた場合あると思うのですよ。現実的には。

あともう一つ、三位一体と税源移譲の話ですが、おおむね3兆円と。その先はどうなっているのだというのが非常にわからない。見えない。おおむね3兆円程度のことで地方分権なんていうのは何も変わらないわけですよ、実際は。だから、おおむね10兆円とかそういう世界になって初めて地方分権というのがあり得るわけで、そうなれば、さっき言った大阪の問題なんていうのも、別に自分で集めた金、どう使おうが勝手ですから、どうぞおやりくださいと。関係ないわけですよ。

ところが、今は交付税というのが入っているから、もらう交付税、全部使わないと来年来ないぞというので、ああいうのをまいているわけですよ。だから、あんなひどいところはほかにないと、それは当たり前の話で、その逆で、あれほどひどくないのは全部だという話なのですよ、これはしょせん(笑)。だから、あんなの一つもやってないところは一つもないわけですよ。それは住んでいる人はみんな知っているよね。自分の息子、そこで勤めているのだから。でも、そういうのを知っていて、なおかつ、あんなひどいのはないというので逃れてしまうと。

あともう一つ、課税最低限で、確かにごちゃごちゃやっているうちに、あらら、うち、全然低いじゃんという。で、いろいろ説明するのですよ。財務省も上手に、何だかわけわからないような説明をして。というのは、いいのですよ、その説明で。でも、そこでどういう印象が残るかというと、やはり主税局というのはうそついていたという印象しか残らないのね。世間には。これは大阪の話と同じであって、こんなところで納得したって何の意味もないのですよ。

普通のレベルの人に納得してもらわないと物事というのは前に進まないから、この課税最低限も、本当はここのところうそついてましたというのがもしあれば、そこはちゃんと言わないと、もう永遠に信用してもらえない。信用してもらえなければ、税金上げますなんかとんでもない話で、僕もこのごろ、ずっと増税派だったのですけれども、ちょっと心が変わりつつある(笑)という感じすごくしますので、深く反省したほうがいいのではないかなという気がします。

委員

委員の心変わりは恐いですな、それは(笑)。

委員

それから、せっかく来ているから、経済財政諮問会議での三位一体の先の感想をちょっとだけでも。

委員

2つの点で今の委員のお話は非常に重要だと私は思っておりまして、1つは、プライマリーバランスの回復に向けて、これから歳出、歳入を一体的にどのようにこの改革の中で準備しながら、その割合を歳出と歳入、どういうぐあいに組み合わせていくかと。これは非常に重要なポイントだと思うのですね。ですから、今日の論点のメモは、所得税、次回はおそらく法人税とか、そういう話になってくるのだろうと思いますが、その前に、あるいはその後で、全体として歳出と歳入の関係、それで歳入の中で一体どういう組み合わせを考えていくかという大ぐくりの問題、これについてきちんと税調でご議論する必要性があるのではないかというのが第1点です。

それから第2点目の三位一体で、3兆円の仕上がりは、もうご承知のとおり、文部科学省の義務教がのむかのまないかの話になっているわけですね。今の委員ご指摘のとおり、それでは本当に地方分権の実は上がらない危険性が非常に高いわけです。したがって、三位一体の今年の仕上がり状況いかんにかかわらず、次のステージ、どういうぐあいに補助金を地方に税源移譲していくかという問題はあるわけです。

今回の三位一体は8兆円超の規模から3兆円という話になっているわけですけれども、20兆全体の中でもっとやれるのではないかという議論も諮問会議等で一部出ておりますので、そのセカンドステージをいつの段階から始めていくかということはおそらく、今年の仕上がりをどうしていくかという問題と絡めながら進んでいくのだろうと思っております。

その点で、この税制の中身を議論するときに規模を一体どういうぐあいにしていくかはそこにもかかわってくるわけでありますので、ぜひそのイメージをどのように抱きながら各論の部分のところを議論するかという工夫がおそらく税調にも求められるのではないかというのが私の感じであります。

委員

第1点にも絡みますけれども、第2段階の税源移譲というのはあるべしというのは確かにあるかもしれませんけれども、いずれにしたって、貧乏人同士が譲り合ってもしようがないから、ともに金持ちになる努力をすべきだということならば、国も地方も自分で少し税収を上げようというような話というのはこれから当然起こるのだよね。

委員

今、プライマリーバランスで、マクロ的に言うと20兆円分ぐらいの額があると。これを歳出の削減と歳入とをどういうぐあいに組み合わせていくのか、そしてそれを地方と国でどのようにシェアしていくのかと。こういう枠組みが必要になってくると思います。

委員

そうですね。財制審との連携もあって、いずれここでお出しすることもあろうかと思いますので、そのときにまた議論しましょう。

委員

所得の再分配という話ですが、私が一番最初に税調の委員になったときに、これ、どうしてやらなければいけないのですかと私質問したのですね。そうしたら、そのときの会長にぎょろっとにらまれて、そんなこと当たり前でしょうと言われたのですけれども、ずうっと私はそれを引きずってきているのですよ。今までもずうっと、所得税の最高税率を下げるたびに最低課税限度は上げるという形でやってきましたよね。金持ち優遇と言われることに対して、それはまずいだろうという。いつまでそういう思想でやり続けるのかというのが私にはよくわからないのです。

貧しい時代はわかりますよ。みんなが何もなかったときにどこかだけが大金持ちになるというのはそれは許せないというのがあったと思うのですけれども、もうここまで充足された時代に、まだ結果を同じにするというようなことでやらなくてはいけないのかというのが私にはわからない。もっともうけられる人たちがもっと稼いだらもっと税金払ってくれるかもしれないと私は思っているのですね。その人たちを足踏みさせるというのはものすごく全体から見てもったいないだろうと思うのですね。

で、増税というのは多分もうやらなければいけないことだろうと、国民もある程度覚悟はしているわけですけれども、そこで片方で、さっきからいろいろ出てますけれども、税金を本当に有効に使ってくれているのならいいけれど、有効に使ってないじゃないのという不満がものすごくあるわけですよね。いつも言っている、歳出コスト削減、今出てきた大阪市役所にしろ、私ともう一人の委員がやっている道路公団、いわゆる官に準ずるところの人たちというのは、「だれのお金だと思っているわけ?」というのが、もうそれしか言葉としては出ないのですよ。「人の金だと思って、そんないいかげんな使い方していいの?」、それはもう言い続けなければいけないと思っているのですが、それを変えるのはいと難しいというのが実感です。

私が思っているのは、今までみたいにすべて官に吸い上げられて、税金という形でそこからみんな分配するというのではなくて、ほかの方法はないのだろうかと思っているわけ。国民の間で分配する。で、お金のある人は自分の気に入ったところに寄附する。そこからとってもありがとうと喜ばれるという形のほうがずっと気持ちよく働けるしお金も出せるのではないか。税金だけで国を運営するという発想はもういいかげんにちょっと引っ込めたほうがいいのではないかと思っています。

委員

寄附税制も大分穴あいてきたし、住民税の1%なんていう話も地方税で起こり得るというのは今の委員の延長上かもしれませんが、ただ、本体はやはり税金なのでしょうね。端っこのほうでそういうことをやるという……。

委員

その税をもうちょっとやはり、そうだなと思って払いたいわけよ。

委員

わかりますよ。いずれその議論もしなければいかんでしょう。

委員

今の委員が言った話は、後で説明あるのかもしれないけれども、ワーキンググループつくって、公益法人というのを制度を変えるわけよ。NPOとは別ですよ。これは実はまた議論がごっちゃになっているのだけれども、そこで出てくる話の一つは、僕はここでもいつか局長に申し上げたことがあるけれども、寄附というものを、あまり細かく厳格に考え過ぎないで、悪いやつはどうせいるのだから、また便乗するやつがいるけれども、それを考えたら切りがないから、もうちょっと大胆にやったらどうだということを申し上げているのです。それを今度やるわけだからね。委員が言っていることはやるのだよ、間もなく。

委員

15日、今週の金曜日から始まりますから、またそういうところでこの議論かませてもらいましょう。

委員

この前ちょっと大阪に行ったら、先ほどの委員の話題も随分出てらしたから、大変だったなというふうにご同情申し上げますけれども、この問題、要するに、私、若いころ、地方行革、もうさんざん取材したのですよね。大阪周辺、衛星都市、それから東京、それから三多摩、これは同じ構造にあって、まさに首長と職員組合の癒着、これ以外何もないと。そこですべてが決まっていたという構造ですよ。これはまだ根っこが残っているのだなということですね。地方公務員の高い給料もそういうシステムが全国に波及していったわけですから、それで今もこのように残っているわけですね。

したがって、ここはちゃんとやってもらわないと、本当に増税なんておぼつかないと思うわけですが、あともう一つ、先ほどの委員がおっしゃったように、徴税の問題というのはこれから極めて重要になってくるのではないのかなあと。これは貧富の差の拡大とか所得格差の拡大というよりも、この税制の不公平というのは、これから増税局面に入る中で、極めて重要になってくると思うのですよ。だから、事業所得の問題、経費の不透明さとか、しかも事業所得の申告対象者はえらい増えているわけでしょう。これからも増えていきますよね。ここのところが所得の捕捉ができないとか、これはやはりどんどん納税意識をそいでくるだろうと思われますね。

片や、国税なんかに聞くと、税務相談の半分近くは税理士から来ていると。税理士ってこれでいいのと。この税調にも税理士のメンバーの方いらっしゃるでしょうけれども、これはちょっと考えてもらわないと、本来なら協力しない。徴税の財政に対する貢献というのは非常にばかにできないですよね。私、財制審のメンバーでもあって、ある委員なんかとイタリアなんかへ調査に行きましたけれども、財務警察、あれがちょっと本気になるとえらい税収が上がってくるわけですね。日本だって、アングラのマネーいっぱいあるわけですし、その辺のところもあるし、この7番の納税環境のところで立証責任の問題、これはえらい難しい話でしょうけれども、この辺のところまでやはり議論していかないといかんのかなあと。何も税務署にピストル持てとは言いませんよ。警察権限を与えろとか、そこまで言わないけれども、せめてこの辺のところまで議論していかないと、これからちょっと増税やるのでもなかなか難しいなという気がいたします。

委員

ぼつぼつ時間なくなってきましたけれども、まだご発言がなくて……どうぞ。

委員

今の委員の発言に関連ですけれども、税務処理の件数が急速に増えているということに制度上どのように対応するかという、つまり、簡素化をできるだけ図らないと、税務職員も、5万人ですか、足りなくて、税理士の言うとおりにやらないともう間に合わないということが言われてますよね。そうすると、今の委員が言ってますような、税理士も困ってしまっているというぐらいややこしい姿になっていると。そこをかなり思い切って簡素化することを考えていかないと、処理ができない。もうめちゃくちゃな姿に、年金の例の控除の関係の処理だけで170万ぐらい件数が増えるのだそうですね。それで消費税でもやろうものならもっと増えてしまうということで、それに備えた対策を立てるために簡素化というのをやはり本気で取り組まないといけないのではないかと思います。

委員

いずれにいたしましても、国税庁からご説明に来ていただくというコーナーを1回設けたいと思いますので、そこで現状を説明してもらいましょう。そこでいろいろご提言ください。

委員

先ほどの課税最低限、4―11と5―8とずうっとその間見ていたのだけれども、これは、僕ははっきり言って、もう一回、この前の課税最低限が380万で日本は世界一高いと言ったときのデータとここに入れたデータと、全部出していただきたいですね。インプットしたデータ、どう違うか。課税最低限、日本は世界一高いみたいなことを僕は財務省の資料であちこちでしゃべりましたからね。ちょっと問題ですよ、これ。

委員

簡単に、いわゆる論点として取り上げるのかどうかちょっと伺っておきたいのですけれども、最近では信託業法を改正されて、信託法も改正作業が進んでますけれども、平成17年度の改正には、組合の所得に対する課税、一部入りましたけれども、こういった新しいものに対する納税義務の主体ですが、これはいかがなのでしょうか。

委員

それは所得税でやるのですか、法人税でやるのですか。事業体課税の問題でしょう。

委員

法人税になるし、個人所得税になる場合もありますが、それを取り上げるのかどうかということをちょっと伺いたいのですが。

委員

何かその辺についてございますか。

事務局

重要な課題ではございますが、本体の現在の所得課税のあり方というのをまずは取り上げていただくというのも一つの考え方かなあと思います。

委員

いずれ、事業体課税重要ですから、法人税、公益法人と並んでやる時期が来ると思いますが。

初めは時間が余るかなと思ったけれども、ちょうどほどよく皆さんのご意見を伺って時間になりました。

次回以降の予定を申し上げて散会いたしたいと思いますけれども、4月15日、今週の金曜日は例の公益法人でワーキングと一体化してやる基礎小でありますから、どうぞそれはご出席ください。それから第2回目の所得課税の議論は5月17日、連休明けになりますが、これは3つ目の項目、所得区分及び所得水準に応じた税負担のバランスあたりを中心的にやってみたいと考えております。このとき、皆さんからもいろいろご議論出ましたように、国税庁のほうから執行面での実情を聞くというヒアリングをしたいと考えております。

いずれにいたしましても、この主要な論点のメモに沿いましてこれからいろいろな議論が闘わされていくと思いますが、よろしくお願いいたします。

では、5月17日、第2回目、ご予定ください。2時~4時と考えております。よろしゅうございますか。

じゃどうも今日は長時間ありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。