基礎問題小委員会(第25回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成16年11月2日(火)15:50~16:10
〇石会長
それでは基礎問題小委員会、今日やりましたことをご報告いたします。お手元に、これまで出された主な意見という、言うなれば、我々、「ボキボキ」と言っておりますが、主要な論点を整理した15枚ほどの資料がございます。これは例年ですね、答申を出す前に、それまでの議論を整理して、どこにポイントがあるか、どこに議論の基本的な方向をもっていくかということで、必ずこれは用意するものですが、今日、最初のまとめの段階に入りまして、このボキボキの議論をいたしました。項目をずっと見ていただきますと、総論部分から個人所得課税、消費税、それから環境税も含めた消費課税、法人課税、国際課税、それから資産課税、金融所得課税の一体化の議論と、全部入っておりまして、これを読み上げてもらって、その後、三つぐらいの部分に分けておのおの論点を整理して、大体税調としてまとめるべき重要な論点が浮かび上がってきたんじゃないかと、このように考えております。
どんな議論があったか、これのページをめくりながら、簡単にご紹介いたします。最初、総論というのがございまして、税負担のあり方とか財政再建の進め方とか、あるいは国債市場の現状等々がございます。これは幾つかヒアリングを受けた結果もこの中にまじっておりまして、それをベースに取り交わされた議論とか、あるいはそれ以外のときでも、この総論的なことについて議論されたものをまとめております。総論の分で二、三重要な点は、長期的、短期的にこれまで進めてきた税制改革の重要な論点は構造改革だったと。したがって、いかに歪みをなくし、いかに不公正をなくしという視点で議論は進めてきたのですが、今後は、やはり少子・高齢化等々をにらむと税負担の増というところに、構造改革をより一歩進めたというか、違った視点の論点が必要になろうかという形で、税収確保という点が改めて今後の税制改革の軸になるんじゃないかという議論がございました。それに絡めて、土光臨調のとき、これは1980年代の中程のときに、国民負担率35%と言っていたわけですが、それが実は今、税と社会保険料を含めた負担率を見ると35%なんだよね。ちっとも上がっていないということは、あのころ50%を超えてはいけないといったようなことが、現に何で35%のままでいるかということ自体がおかしいんじゃないかと。もとより土光臨調を進めるような形でいくならば50%になっていたはずですが、まあこれはひとえに財政赤字が増えた結果であるということだろうと思います。
そこで、あと国債市場を絡めての我々の基本的な方針、つまり今後どういう形で税制改革の基本的なスタンスを定めるかというときには、2ページの最初の「〇」、あるいは3番目の「○」あたりにも書いてございますが、やはり減税、公共事業、つまり財政出動で景気をよくして、その結果、税収を上げて財政再建だという路線ですね。これとはちょっと違ったというか、決別する必要があろうと。つまり、財政規律というものがやはり何よりもこれからは重要だし、今後、国債を出された後、市場の信任という点でも、財政規律がなければ財政の持続性は保てないと。財政を持続的に維持するということ自体がマクロのさまざまな政策のプラスに転じるだろうという判断をすべきであるというご意見が非常に強かった。これは、「○」の1とか3あたりに書いてございますが、要は、これはまだ決めてないんですけど、今言った最初の論点の増収に打って出るのも、ある時期を、景気を見ながら一挙にやるのか、それとも景気と無関係に徐々にやっていくほうが、かえって長い目で見るといいのかどうか。この辺、まとめますけど、いずれにいたしましてもやり方の方法はともあれ、財政規律ということこそが今後のマクロの財政、マクロの経済運営には重要であると。そういう意味で、歳出削減というのを大前提にして税負担引上げということをもう少し強調すべきであるということが、この総論部分の一番大きな論点ではなかったかと思います。
それから個人所得税は、ここに書いてございますように、一通り整理がついておりますので、あまり個別の所得控除がどうだとか、課税ベースがどうだとかという議論はございません。6ページに一応定率減税の項目が幾つか並んでおりまして、やはりここがしかと書き込めるかどうかが論点になるのではないかと。基礎問題小委員会においては定率減税の廃止あるいは縮減ということについては意見が一致しておりますので、問題はそのやり方、タイミングについてどう具体的に書き込むかなんです。三位一体というものの議論とこの定率減税の結びつきをどうするかという議論も、ないことはなかったんですが、一応所得税の抜本的改革という視点から、実は定率減税の廃止あるいは縮減というものが絡んでいるわけで。必ずしも三位一体も、要するに所得税から住民税という形で税源移譲で、これも所得税・住民税改革の一環なんですが、ただそれを無理につける必要はなくて、三位一体は三位一体で議論はこれから進むであろうし、定率減税は定率減税で例の景気の縛りがなくなったと理解してやめてもいいかもしれない。あるいは所得税の抜本的見直しというときにはなくすべきだという条項もございますから、それとの絡みで、一応我々としては三位一体の議論とは独立して議論を進めようという形にいたしました。今日の議論はそういう形になりました。
それから、7ページで個人住民税の議論が出ておりますが、やはり我々、基本的な方向というのは、住民税というのは地方税でございまして、これは応益原則で、所得税である国税のほうは応能原則というのがベースになっておりますから、両者は同じ性格の税と考える必要はない。したがって、住民税の課税最低限を引き下げて、やはり応益原則にのっとった形で広く負担してもらうのが筋ではないかという形であります。
それから消費税につきましては、まあここに整理してあるようなことでした。まあ二つ、意見が分かれてるのは、8ページの税率構造のところで、軽減税率をイエスと言うかノーと言うかという議論、総会になりますと、また軽減税率をぜひという方もいらっしゃると思いますから、これはそこでもう一回議論いたしますが、今日の段階では、やはり軽減税率というのは多々問題があるというご意見が強かったと思いますし、その方向で議論はいくと思います。
それから消費税率の引上げ云々は、よほどしっかりした説明がないと、いくら税率アップは不可欠だという判断があっても、国民の方々の受け入れについては難しい面も出てくるから十分に注意して行うべきだというご忠告がありました。
それから消費税の目的税化のところは9ページにございますが、ともすれば消費税イコール社会保障の財源にしようという議論が走りがちで、それが目的税化とか目的化ということになってるんですが、やっぱり消費税は一般財源として、税率アップの財源は使うべきだということを再確認すべきでないかという強いご主張がございました。
それから10ページの酒税のところで、例のビール風酒類ですか、それにつきまして、どういう形でこの議論を是正したらいいかと。まあこれがまずいか、うまいかなんていう議論も個人的なご意見の披露もあっていろいろ議論したんですが、とりあえずこういう税率格差をねらって、要するに新しい商品が開発されるということをどんどん放置しておくということは好ましくないだろうと。ただ、といって出たばかりの新しい商品を1品だけめがけて狙い撃ち的に税率格差をなくすような方向での議論も、これもまずかろうと。まあそういう意味でやっぱり将来的に酒税全体の改革とあわせて、もっと大くくりにした形で種類をまとめつつ、まあ同種同等というものに同じ負担というようなことを実質的に担保すべきであるという議論が主流ではなかったかと思います。
環境税は、12日に案が出たところで議論すべきという形で、今日は本格的な議論はあえて避けたという形で、まあ幾つか、議論はございましたけど、紹介するほどのこともないかなと思っています。
それから法人課税は、これはまだ議論をこれからやるんで、来年度の税制改正には直接関係ないと思っていますが、基本税率を下げるのか、あるいは設備投資・研究開発減税でいくのかという議論がございまして、たまたま一つ出た意見としては、基本的に税率を引き下げるよりは政策税制としての研究開発減税のほうが効率的ではないかという議論がございます。
それから、公益法人・NPO法人の課税、12ページに出てございますが、ポイントは四つ目の「〇」のところだろうと思っております、というご指摘もございました。まあ「原則課税」か「原則非課税」かというのを、入り口で仕分けをするということはかえって議論を混乱させるので、したがって、内容的に多角的な視点から議論したほうがいいだろうと。あまり結論を先取りするような議論というよりは、課税の公平とか適正化とかいう内容的な議論を踏まえて議論を行うべきではないかという議論が多々ございました。
法人事業税については、三つ目の「〇」ですね、12ページの一番下の「○」で、社会保険診療報酬の課税の特例、これはもう20年来、30年来と実現していないんですけど、もうそろそろやらなきゃいけないということと、仮にこれを廃止した後、どうしても特例を継続させたければ、地方の責任で地方分権の世界なのだからやればいいじゃないかという積極的なご意見もございました。
あとはですね、資産課税、贈与税等々はそれほど大きな論点はなかったんですが、ただ、所得税、資産課税、トータルで見て、税の中に年齢制限というのを持ち込むのはいかがなものかというのが結構、二、三の人から出まして、年齢ということを議論するのは歳出面ではしようがないけれども、担税力という視点で議論すれば、あえて年齢というのを表に出さないほうがいいんじゃないかと。例えば相続時精算課税制度も払うほうは65歳以上とか、あるいはもらうほうは20歳以上と決まっておりますけれども、まあこれはどういう効果があるかというようなところでご議論もございました。
それから14ページ以降の固定資産税でございますが、これはまあ、幾つかの問題が前から繰り返されてるんですが、課税標準の均衡化ということというよりは、この間も申し上げました。もうばらばらでやるしかないというよりは、ばらばらにしておいて、税率格差でその負担調整を図るのが筋じゃないかということが、今日のご意見の中では多かったように思います。
それから金融所得課税で一番問題になりましたのは、やはり住基番号を使うかどうかという形で、これにつきましては問題は二つありまして、本当に住基番号が使えるかどうかと。つまり、税務目的のために転用も含めて、本質的に可能かどうかも含めて、しかるべき時期に総務省のほうから、現状とその先行きについてのご説明を受けることにいたしました。それがないと、なんか強いご意見として、簡単であるというご意見をそのまま受けるわけに多分いかないと思います。もう一つは、住基番号を使うということで番号制に対する抵抗が強くなって、要するに金融番号なら通るべき金融所得課税の一体化が、住基番号が絡んだがゆえに通らなくなるということが心配だというご意見もあり、やはり住基番号の使用については慎重にならざるを得ないんじゃないかという議論のほうが、理論的、実務的、実際的に多かったような気がいたしております。
後の具体的な予定でございますが、今週は金曜日はございませんで、来週9日、12日、火、金と両方やることにしておりまして、両日ともダブルヘッダーを考えております。9日が1時から2時間、基礎小。3時から2時間、総会という形で議論したいと思ってます。テーマは基礎小のほうで個人所得課税、あるいは法人課税。これをもう一回再整理したいと思いますが、と同時に、おそらく三位一体…当初は三位一体について何らかのある方向が出されるんじゃないかと、それを受けて税源移譲等々で議論ができるかと思ったんですが、多分9日では難しかろうと。しかし、これまで到達した三位一体の中間報告を受けて、我々としてもいつまでも税源移譲の問題を放置できませんので、その議論をしたいと。そして3時からの総会では、今日の自由討論を踏まえ、かつ所得税、法人税の、その前にやりました基礎小の問題点を整理したいと考えています。
それから12日の金曜日、前からアナウンスしておきましたように、環境税の議論を1時間半ほど集中的に取り上げてやりたいと思います。これは賛成派、反対派、両方から意見を聞く予定でありまして、中央環境審議会のほうと産業構造審議会などのほうと、両方の意見を整理いたしまして、そこで我々として議論したいと考えております。これは総会と合同でやって、皆さんのご意見を総会、基礎小、言うなれば税調の委員全員の形にご意見を伺う予定でおります。それで12日の第2ラウンドの2時半ですか、それから4時までは起草会合に充てたいと思っています。起草のほうに視点を移したいと考えております。つまり、文章化いたしましたものを検討して、そして最終的な答申に向けての仕事を始めたいと、このように考えておりますので、12日から起草会合に入ってというふうに考えております。その後は、その後の進捗状態で何ともわかりませんが、まあまとめの方向に入り、20日過ぎぐらいには何とかまとめたいと、このように考えています。
以上です。
〇記者
それでは二、三質問させていただきます。1点目は、所得税の中で定率減税に関して廃止・縮減では、まあ皆さん方向は一致してると。タイミングについていかに書き込むかという発言がありましたけれども、それについては今日どういうご議論があったのでしょうか。
〇石会長
いや、今日その議論はしてません。つまり、タイミングがいつ、あるいは全体でやるのか部分的にやるのか、これは詳細に入るほうではまだ具体的なご意見が出てきたわけじゃありません。
〇記者
以前、会長が個人的なご意見と断った上で、タイミングについて言及されたことがありましたけれども…。
〇石会長
ああ、あの例の2006年1月ということですか。
〇記者
はい。
〇石会長
2005年の4月からの税制改正に入れて、まあそんな感覚じゃないですか、皆さん。と思います。
〇記者
そういう方向で集約したいという意向なんでしょうか。
〇石会長
どうかなあ…、その意見が出るかどうかどうかわからなかったけど、あれ、あのとおり暗黙に受けとられてるのかもしれない、そこは。
〇記者
2点目ですけれども、消費税の税率構造について、軽減税率については問題ありという方向でいくと思うとおっしゃってましたけれども、それはやはり…。
〇石会長
つまりですね、税率アップのときには逆進性を緩和しろという意味で、まあ日常的に食べる食料品等々は安くていいじゃないかと、そういう感覚的な、まあ感情的な問題もあり、それはよくわかるんですよ。ところが実際には、税務の執行のほうに目を移すとですね、それはかえって税の混乱を多々招くという面もあるので、その辺の情報を皆さんが完全に共有しているわけじゃないので、総会でその実態も含めてご説明した上で、そういう困難があっても食料品を軽減に持っていくというご意見が強ければ、そっちのほうに話はもっていきたいと思ってます。
税調は基本的に両論併記しない方針ですから、どっちかで決着をつけるようにして、少数意見とされたほうは、参考意見という形で別の冊子にまとめたいと思ってます。
〇記者
酒税の見直しについてなんですけれども、ビール業界、酒造業界から、ビールの税率が諸外国に比べて高いんじゃないかという指摘があると思いますが。
〇石会長
年中あります。年中というか、毎年と言うべきか。
〇記者
会長ご自身はどうお考えですか。
〇石会長
高いと思いますよ、僕も。そう思いますよ。というのは、日本は特殊な事情ですからね。ただ、そう言ってあれを下げたら酒税が激減するでしょうからね。7割ぐらいはあれで集まってるんだから、それは難しいと思いますけど。まあ先程申し上げたような、酒という種類ですね、それをくくる中で、ビール本体のほうの税率の高いものを下げるかどうかという議論が行われるでしょうね、多分、そういう議論の中で。
確かにそれは事実だから、要するに高いと言われればそのとおりだと思いますよ。いや、これは毎回言われてますから、別に何ということはないんだけど。現実問題としては、その問題にどう対応するかというのはいろいろやり方があろうと思います。だから、高いからいろんな形の、隙間的と言うと怒られるかもしれませんけども、新しい商品が開発されるでしょうからね。それは必ずしも好ましくないという意見が多々あった、今日は。それと同時に、でもやっぱりいい、安くてそこそこ飲める酒を提供するのも結構じゃないかという議論もあった。まあこれはマーケットの原理でやっているわけですから、買い手がなくなればそんなのは開発しないんでしょうから、それはそれで一つのメーカーとしての役割を果しているのかもしれないしね。それは総合的にこれから議論したいと思ってます。
(以上)