基礎問題小委員会(第24回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成16年10月22日(金)12:07~12:29
〇石会長
それでは、基礎問題小委員会を報告いたします。今日は資産課税、金融所得課税という二つの大きなテーマを取り扱いました。お手元に資料が行っていると思いますが、最初に相続税・贈与税の話、それから固定資産税もやったわけであります。
幾つか論点がございましたけれども、例の相続税の相続時精算課税制度の初めてというか、この7月かな、15年度分が収納されてきました。その結果が資料の後半に出ておりまして、20ページ以降でありますが、1.2兆円贈与税が出てきたということで、予想よりはかなり使われているんじゃないかという判断を我々はいたしております。そこで、いろいろ問題点はあるんですけれども、これの意味ですよね。確かに、高齢者の持っている資産が若者へ移ったという意味において、当初の目的はある程度達せられたかもしれません。これがどういうところでインパクトを持っているかというのは、その次のところに書いてあると思いますが、20ページの評価として三つほど出ておりますが、その中でもよく言われる中小企業の承継ですね。事業承継の方にもこれがかなり寄与しているのではないか、とりわけ未上場の株式あたりがかなり対象になっているということです。ただ、絶対的な水準で税負担が変わるというわけではないので、承継税制の不満も、そういう方の不満が全部解消されたわけではないでしょうが、ただ、生前贈与というのはタイミングを図れますから、評価の時点を選べるということであります。それが資産価値のいいとき悪いときを選んでできるという意味において自由度が増したという評価はあるようであります。
それに対して、やはり相続時と渡したときとかなり時間がありますから、そのときのインフレであるとか、資産の価値の変動とかというのを認めないと、そっちの方で税が使われて、ディストーションを起こすんじゃないかという批判もありました。それについてはとりあえずこういう形で出発したので、もう少しそれに立って、結果を見てというふうにならざるを得ないだろうという形で判断をするということにいたしました。
そういう意味で、一通りの相続税、贈与税の説明を受けた後で、今既に行っております、言うなれば精算時課税制度についてのデータを出してもらって、評価を幾つかしたということです。全体的にこの課税の執行状況というのは、ほぼ満足の行くことではないかという、そういう議論でこの話は終わったように思います。ただ、今申し上げたように、価格修正みたいなことが長い間にわたって行われたときにどうするかという問題は、発足の当時からあったんですが、再度出てきた段階で、その問題意識を検討しようではないかということであります。
待ちに待った相続時精算課税、初年度どっと出て、2年度以降、これが先細りになるんじゃないかという、そういう危惧をお持ちの方がいらっしゃいました。事務局の説明では、そういうことは多分なくて、安定的にコンスタントにこの利用の程度は続くんじゃないかというお話でございまして、私の方もそういうふうに考えております。
それから、相続税、贈与税、今言った大きな改革をやって、やっと実施に向けて成果ができたところでありますので、来年度の税制改正でこれが入り込むという大きなテーマはないというふうに理解しております。
それから、固定資産税の評価替えが18年度にありまして、来年度には関係ないということもございます。これまでの経過を幾つか聞きましたが、さまざまな課税ベースの調整をやってきたわけですよね。それは固定資産税の資料を見ていただくとわかりますが、いろいろなことをやってきた。
それで、以下、幾つかの問題点が出されているんですが、要するに、地価公示の7割に固定資産税の評価額を合わせようという大きなテーマ、これが均衡化と言っているんです。その結果が現在ですね、どれにあらわれているかというと、最後の方の表で、固定資産税関係の15ページに出ておりまして、全国で見て、横並びにして、仮にこの比率が6割5分とか7割になっていれば均衡化が達成されたという、そういう目的達成から見ての判断ができる図です。まだかなりでこぼこがあると。そういう意味では、均衡化・適正化はまだだというご説明がありましたが、よく見ると、どうも富裕県ではない、所得の低い、発展がまだ滞っているようなところが非常に低いと。この評価の額がですね。これはどうもおかしいんじゃないかと。もう少し、そういうところこそ課税ベースを引き上げて、税収を生む努力が必要だと。地方分権というのは、まさにそれをすべきではないかという批判に対して、とりあえず全国的な縛りがいろいろ効いていて、評価額修正のところの物差しが、後で見ていただくとわかりますが、そう勝手にできないという状態になっておりまして、沖縄、鳥取等々ではまだまだ評価の課税標準額のタックスベースが上げられない仕組みになっていて、これは問題ではないかという問題意識を出された人もいました。
もう1点は、固定資産税は課税ベースを全国的に調整して、その後1.4%税率、固定したものを掛けるという発想でこれまでやっていましたけれども、今後は、税率を変えることこそいいんじゃないかと。要するに、課税標準というのは個々の地方で独自にやっていて、そんな調整しないで、税率でそこを調整すればいいじゃないかという議論ですね。高いところは税率を低くすればいいし、低いところは高くすればいいということになると思いますが、そういうご議論も出ておりました。
あと一つ、「縦覧」という制度が、例の土地台帳ですか、情報開示を含めて縦覧制度があって、その制度はどのくらい利用しているのかと言う人も出ましたけれども、縦覧の具体的なケースは3万7,000程度であるというご報告があって、これは多いのか少ないのか、ちょっと判断に苦しむところですが、そういう結果が出されたということです。
第2の論点は金融所得課税でございまして、これはご関心の向きの方が多いかと思います。これまでの税調での議論を整理した後で、今後どうしようかという点、今後の言うなれば取り組み方ですね、9ページにまとまった表が出ておりますから、ここでごらんいただきたいんですが、「金融所得課税の一体化」への取組みとございます。ここに五つほど、課税方式の均衡化という形で、譲渡益とか配当とか利子とか等々出ておりまして、個々ばらばらにやっていたのを20%の申告分離課税にしようというのがここの中での狙いであります。つまり、損益を通算するときには、少なくとも税率は合わせなきゃいけない。それから、源泉か申告かありますが確定申告で結局やってもらわないと、損益通算はできないということであります。
括弧の中に※がついたところ、これは、これをやるに当たって考慮しなければいけない、配慮しなければいけないという、そういう論点であります。例えば、(1)公社債・公社債投信の譲渡益のときには、支払調書が必要だろうと。(2)上場株式(大口以外)の配当のところは、20%にすると、即出てくるのがよく言われる配当の二重課税の調整はどうするんだという議論が出ますよね。そのために、配当控除の取り扱いとか負債利子控除とか、従来からある総合課税のスタイルのところですが、これは選択制によって残す。二重課税の調整に対して非常に関心のある人は配当控除を受けるべく、この20%の申告分離を使わないと。これは利子についてもそうですね。利子についても、損益通算したいときには20%の申告分離に参加するけれども、そうでない人は分離課税の方でもいい等々がここに書かれております。
もう一つ、20%の分離のほかに、現行10%という例の株の譲渡益と配当のところ、この適用を受けているグループが現に残っているわけであります。したがって、トータルで議論するとなると、これは6ページに現行制度が出ておりまして、源泉徴収(税率)のところで(10)とついている、いわゆる配当所得のところと株式譲渡益のところが残っておりまして、20%グループと10%グループで分かれております。そういう意味で、最終的に全部一括というのは特例が継続するうちは無理ですから、分けざるを得ないということでしょう。
それから、今ある、いろいろ聞いていますと、税調でこれをやりましょうという形で出しまして、やることは決まっているんですが、実務家、特に金融機関等の方の、いろいろ実務面でのすり合わせというか、意見聴取というか、そういうことを今やっている。我々、言うなれば、理論的に机上のプランと言われるかもわからないけれども、そういう形で出したものですから、実際に執行面に移すときにさまざまな実務面とのやりとりをしなきゃいけない。それをやっていただいているわけでありまして、ちょっと時間がかかるだろうということで、それは私どもも了承いたしました。つまり、いろいろな形で、例えば10ページに出ております金融番号、これは金融番号という名前で呼ぶことにいたしまして、ここに書いてあるようなことを一応頭に描いております。そういうものを実際に定着させるのは時間がかかるだろうという形で、来年4月からすべてがヨーイ、ドンで入るということになるかどうかはわかりません。多分、私の判断では、まだ実務家とのいろいろな議論が続く。時間を設けなきゃいけないと思いますから、我々が起草し、答申を書く来年の税制改革答申で、4月からということが書けるかどうか、ちょっと難しい状態ではないかと思います。
金融番号のイメージですが、ある意味では目下のところ、他の住基番号等と接続は考えておりません。納税者が自分の番号を申請して、二重に使われていないということをチェックして、税務当局が付番をすると。それから、本人確認を取引時にせなきゃいかんということが2番目。あとは[3]、[4]等々でマッチングをすると。おのおの出してもらってマッチングすると。11ページにそのポンチ絵が出ておりますから、それをぜひごらんいただきたい。これは従来どおりの番号を使って、損益通算を申し出る方は、結局、申告書を出してもらい、かつ、番号を使った情報資料が金融機関から出て、税務当局が番号を使ってマッチングする、これは通常アメリカでやられているような、そういう形を考えております。
したがって、番号は今申し上げたように、選択制で、かつ損益通算を希望する者だけが申し出て使うと。ただ、これも民間が使ったり、あるいはパブリックセクターでもいろいろな形で、これは漏れてはまずいので、個人情報保護制度にのっとって守秘義務は厳にかけなければいけないだろうと考えております。
問題は、この限度額、10ページの一番下に書いてございます。損益通算の限度額を無限、無制限というわけにはいかないでしょうから、諸外国の例をにらみつつという額が、この〇円の中に入ってくると思います。それから、使い残したときには、まだ何年か決めておりませんが、繰り越すということも多分議論の中には入ってくるんじゃないかと、このように考えております。
あと、地方関係の金融所得課税でございますが、これは現状の説明でございますから、改めてここでご説明するほどのことではないと、このように考えております。
基礎問題小委員会を2度やりましたので、来週の火曜日に総会を開きまして、これまでやりました法人課税、国際課税、それから今日やりました資産課税と金融所得課税の一体化等々について、総会でいろいろなご意見を賜って、議論を積み上げていきたいと思います。11月2日には、次の基礎問題小委員会を開きまして、そこで一応これまでの主要な税も議論いたしましたので、論点整理を含めてフリーディスカッションし、答申案に向けた議論の整理を行いたいと、このように考えております。
もう1点、来年4月まで仮に金融所得の一体化が難しいということならば、非常に期待感も高まっていて、いつできるかという、そういうスタンスのご意見もあろうかと思うので、建前上できるだけ早く、ただ、今後どういうスケジュールになるかぐらいを示せたら示すべきではないかというご意見もあり、それについては税調としてもそうだろうなあということです。
〇記者
今おっしゃった金融所得の一体課税なんですけれども、内容については答申には書くけれども、時期については盛り込めるかどうかわからないと、こういう理解でよろしいんでしょうか。
〇石会長
でしょうね。つまり、まだ1カ月近くあるんですよ、最終的にまとめるまでに。その間に、実務家との間のいろいろな問題がクリアされて、書けるという状態になれば、るる踏み込んだ書き方ができると思います、時期的に。ただ、そこができないと思います。これは新しい制度ですから、やはり影響を受ける側の意見も十分聞かなきゃいけないし、執行不可能では困ります。それは慎重にやりたいと思います。
〇記者
つまり、来年度実施というのは無理だけれども、この先いつごろまでには入れたいという意思を示すつもりでしょうか。
〇石会長
それはその時になってみなきゃわかりませんけれどもね。どれぐらいのハードルを越えなきゃいけないかにもよりますから。
〇記者
今の金融の関連ですが、「金融番号」という名前にした理由というか…。
〇石会長
内容をよくあらわすというところで、短いですよね。わかり易いじゃないかと。ダイレクトに、ごちゃごちゃ言わないで、これが一番いいんじゃないかという話になったということですね、私の感じでは。損益通算番号は長いし、番号と言うからには、いろいろな内容をあらわす方がいいと思う。これは、まさに金融所得の一体化のための番号ですから、金融番号でいいんじゃないかと思います。ただ、ほかにありましたら、まだまだ受け入れる余地はありますから、どうぞアイデアを出してください。
〇記者
限度額なんですけれども、ほかの国を参考にということでしたけれども、これはこれからまだ詰めていくんですか。
〇石会長
そういうことでしょうね。ですから、それが実施の段階で、まだ時間があると思っているんです、これに関しては。今決めなきゃいけないという話でもないし、いつスタートするかもまだ決めていない段階だし、先ほど五つか六つの申告分離20%のグループを示しましたが、これとて、すべて入れてしまっていいかどうかという議論もまだやっていないんですよ。特に税調の段階では、確定した利子所得というのが実現するのと、株の譲渡益みたいにかなり操作できる分と一体化していいかという議論が残っているんですよね。そういうものを踏まえて、5種類だっけ、これもどことどこを組み合わせると。ただ、私などは、やはり広い意味で損益通算を認めてやった方がいいんじゃないかと思っていますけれどもね。
〇記者
番号による通算の対象は、さっき会長が6ページの図を説明されていましたけれども、番号を入れる段階で、ここの5種類の部分を新たに広げた形で入れるというイメージなんですか。それとも、今のままでとりあえず番号だけ先行するというお考えなんでしょうか。
〇石会長
当然、一体化という、つまり損益通算という制度が入ったときですよ。番号だけ先行しても意味ないでしょう。
〇記者
公社債の課税の仕方とか、そういったものをやったときに合わせて番号を入れていく……。
〇石会長
要するに、これは自己申告するわけですよ。俺は損益通算してもらいたいと、損が出たから利益と相殺してもらいたいときに、申告する。そのときにこの番号を使って申告してもらわないと困るから、そのときに番号を利用する人が出てくるという話です。この番号を、具体的に各々の人が選択する訳ですからその番号はその人ごとで違うでしょう。そういう理解でいいと思います。だから、住基番号とか何とか番号みたいに、ヨーイ、ドンで4月1日からやるとか、そういう番号ではない。
あと一つは、本人確認のときに、非常に難しいんですよね。その点、住基番号等々が既にそういう仕組みもできているから、これとも将来的にはつないで等々の議論もあると思いますが、まだ最初、スタートの段階ではこういう自主申告制でいこうと、こういうことです。
〇記者
そのスタート時期についてなんですが、来年4月から難しいということなのか、それとも来年度中は難しいということなのか、そこら辺の会長のお考えと、その難しいというのは、やりやすいものから入れていきたいといつぞやの会見でおっしゃって……。
〇石会長
難しいのは実務畑で、いろいろ予想される問題がどうもクリアされていないということが一つと、したがって、それが4月なのか、来年10月なのかわからないけれども、税調がこれだけシグナルを発してやろうという意気込みは、みんな持っています。そのハードルを越えればいいので、それ次第なんですけれども、何年も何年も待つという話では多分ないでしょう。要は、精力的に金融機関等々で担当者は議論していて、いろいろな問題も整理されつつあるようですから。ただ、4月は難しかろうというだけは言えますが、それが8月、10月、12月なのかと言われても困るね、今の段階では。だから、なるべく早くということぐらいですね。
〇記者
環境税なんですけれども、一応「巻き」が入って出たようですけれども、会長の「巻き」が入った翌々日、要は早めろという話をされたら、翌々日ぐらいに中環審に出ているんですが、集中論議などの可能性についてですね……。
〇石会長
今しゃかりきになってやっていると思いますが、今日、昨日の段階で各紙が扱っておりますのは、多分まだ正式に機関決定された環境省の案の最終バージョンで当然ないでしょう。当然だと思いますよ。それから、中環審の案でもない。今、素案の段階をめぐっているわけで、我々としては、そちらの態度が固まって持ってきてくれと言っていますから、もう2週間ぐらいかかるんじゃないですか。11月の1週目か10日ぐらい前になって、それが出てきた段階で、我々正式に受けとめて。つまり素案の段階でいろいろ話を聞いていますから、皆さんの書いてあることはそう間違っていないとは思うけれども、それはまだ確定していないわけだから、確定した段階で税調としては取り扱いたいと思います。
いずれにしても、向こうもしかるべき時期まで間に合わせると言っていますから、集中審議をする予定ですよ、それは。そう思っています。
(以上)