基礎問題小委員会(第23回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成16年10月19日(火)15:57~16:17

石会長

今日も分厚い資料が出ておりますが、法人課税と国際課税、2つを重点的に取り上げました。主要な税は、所得税、消費税等々取り上げておりますが、残るはあと資産課税と金融所得課税で、これは今度の金曜日にやります。それでほぼ主要な税の問題点ということはさらえると思っています。それで、今日は法人課税で、これはかなり大部の資料になっておりますが、これまで何をやってきたかというところの、かなり具体的な論点整理、それから地方税も同じような角度でやります。

そこで、正直に言って、来年の税制改正に法人課税で盛り込むもの、国も地方も合わせてあるかといえば、来年は主役を演じないであろうと思います。というのは、この数年、法人税はかなりいろんなことをやってまいりました。それでそのレビューとか総点検をしなきゃいかんという話題がございました。何が最初話題になったかといいますと、今、現に行われております例の試験研究費、つまり研究開発投資の減税と、それから設備投資減税、これはITを中心にやっておりますが、これがかなりのオーダーでずっと続いております。これがいわゆる日本経済を支えている投資の刺激につながっているのではないかという評価もある一方で、定率減税を所得税で見直すと同じように、この設備投資減税のほうも、これ時限でありますから、いずれある期限が来ますけれども、その時に再度議論すればいいんですけれども、延長すべきか見直すべきかの議論をしなきゃいかんのではないかという問題提起がございました。ただ、一般的には、この設備投資減税と研究開発投資減税は、基本税率引き下げと比較して所定の税源を使ったという意味においてはかなり効果があったのではないかという評価をしております。ただ、数字的にもう少し欲しいと。つまり、単にアンケートでやると必ず効果があったというほうが多いんですよね。しかし、数字的な中であればそれを踏まえてという形でありますけれども、一定の評価はしつつ、いずれ時期が来た時にこれをさらに延長するのかどうか。とりわけ試験研究費の3%分、上乗せになっている部分が来年来ますから、時限が。そのあたりでこれをもう一回見直さなきゃいけないと。18年度税制改正にはこの問題が、今やっている所得税の定率減税と同じような形で議論が出てくる可能性はありますが、そういう問題意識を一つ持ったということですね。

それから、法人税の基本税率のほうは、表が出ておりますように、日本はかなり国際的なレベルまで落としております。それをどう評価するかというあたりが一つのポイントなんですけれども、13ページですね、これはよく見慣れた図です。この表自体については国と地方とをコンバインする、合わせて国際比較するのは問題ではないかという指摘が出ております。というのは、地方法人税というのは、各地域において、日本もそもそも超過税率があったり等々あって違うし、まして外国の場合にはアメリカなどは、カリフォルニア州、一番高いところを挙げていますけれども、各地域ごとでばらばらなものをいかにも均一でやっているがごとき想定で上に乗せて、高い低いというのはちょっと問題だろう。そもそもがこういう国際比較というのは、グローバル化された中での企業の負担というのを表す意味で、法人税の中でも地方は、地方分権で示される国内のそもそも税負担が主として関心がある。やっぱり目的が違う、国と地方の地方税関係を乗せるのは問題ではないかというような指摘があり、といって、これをどう改めるべきだというところまでの問題はないんですけれども、税率の見方としては少し考えるべきではないかという指摘がございました。

それから、小さい問題としては、欠損法人の割合がどんどん増えているわけですね。トータルで8割近い、それから大企業でも半分近くが納めていないという意味において、やはり今度出てきた西武ですね、あのようにずっと大企業でありながら法人税を払い続けてないという実態が、今ある欠損法人の中にも紛れ込んでいるのではないかといったようなことを問題指摘される方もございました。それについて少し整理をしなきゃいかんかという議論にはなっております。

それから、公益法人等々は年が明けてからの議論になると思いますけれども、それとの関連において寄附金税制というのをそろそろ検討しなきゃいけない、そういう時期が来るかもしれないという議論でございます。

そういう意味で、一番のポイントは、過去にありました研究開発投資減税と設備投資減税の評価と、それがまだ時期が来ておりませんので、今それを継続するか等々の議論は起きませんが、問題意識としてはその辺に焦点が将来来るであろうという意識です。

それから、国際課税のほうは、これはかなりテクニカルな領域でございまして、見ていただくとお分かりのように、国際租税条約関係のことと、それから国際課税のそもそも根っこにある例えば外国税額控除みたいな問題で幾つか議論が…、これは紹介をいただいたんですけれども、差し当たって来年度税制改正に盛り込むという意味において、国際課税は緊急を要するものはないということであります。ただ、昨年日米租税条約の締結が結ばれまして、これを他の国にも少し広げていきたいと。これ14ページにございますけれども、限度税率という意味で、利子とか配当とか、あるいは使用料、これを免税にしたり、あるいは税率を軽減したりということが昨年日米租税条約で日本とアメリカの間でやられたわけですね。これについて、事務当局のほうは将来的にはイギリスとかオランダとかカナダとか、現に対内投資、対外投資と密に関係ある国同士でやって、より促進をさせるという方向では問題意識を持っていると。まあ、時間の問題もございましたけれども、これに対してどれだけの効果が既に現れたかという質問が出ましたけれども、限度税率が実際発動されたのはこの7月であって、まだ具体的に数字が集まっていない。実態面の効果の論証は難しいかろう、もう少し時間をおかしてもらいたいという話と、それから、実際にこの租税条約の結果、どのぐらいのロットでね、規模でその金、資金が動くかということに対してはまあ数千億円程度であろうというような返事がございました。いずれにいたしましても、技術的に見て幾つか直さなきゃいけない点、例えば外国税額控除の限度額の流用はどうだとか、あるいは今ある租税条約のちょっと不備な点で、ともに払うべき所得が漏れているとか、問題があるので、そういう修正はこれから技術的にやっていくのであります。税調の問題として大きな流れとして、昨年やりました日米租税条約ほど大きな問題はなくて、来年はこれらの国際課税制度上の問題を洗い流しながら、将来的にどう結び付けていくかという程度の議論になると思います。というわけで、今日は平穏無事なテーマでありますので、したがってあまり皆さんも、これは勉強しないと分からない税ですから、特に国際租税条約のあたりは。まあ、勉強していただきたいと思います。

そういう意味で、来週は最後のビッグ・イシューになります資産課税、これは相続・贈与の話と、それと金融所得課税、これは来年度の税制改正に今のところ乗っかるだろうという項目でございますので、少し本腰を入れて議論せにゃいかんと思いますが、金融所得の課税の一体化を考えております。以上であります。

記者

法人税の部分ですが、来年の税制改正では主役を演じないということでしたけれど、経済界等から例えば企業年金や何らかの特別法人税の見直しとか、そういう要望が出ていますがそこらの議論というのは今日はなかったんでしょうか。

石会長

今日はなかったですね。そういう説明はなかったということもあり、大きな流れが主たる議論だったものですから、その細かい点につきましてはございませんでした。ただ、いずれはそれがぐっと具体化すればと思いますけれども、今日の段階ではそういう議論のやり取りはなかったというのは事実であります。

記者

会長も先程言及されましたけれども、西武というかコクドというか、いわゆる課税逃れではないかと思われるような企業が多いのではないかということですが、ちょっと税調を離れるかもしれませんが、今回のコクドと西武の一連の動きは、そういう租税回避の動きとみなしていらっしゃるのかどうか。

石会長

いや、一体どういうふうに実態がなっているかということを事務局に、これを機会に少し情報を整理してもらおうかと思いましてお願いしておきましたけど、どういうからくりであれだけ大きな会社がずっと法人税を払っていないか。借金をして、それを引くという単純な話なんでしょうけど、それが簡単に、どうなっているのか。これを事務当局で少し、徴税のほうも含めて研究してもらうという形で今日は終わりました。他にどういう手口、どういう会社が候補にあり得るかというのは、あるのかどうか分かりませんけど、ちょっとこれは、税調として本格的に取り上げられるだけの情報が集まってくるかどうか分かりません。そういう問題意識をみんな何となく持ったということだけですね、今日は。

記者

あと、公益法人の課税の関係は、今日はどうでしたか。

石会長

公益法人につきましては皆さんかなり関心がありまして、これまでの経緯から見て、今内閣官房の有識者会議でやっておるのが、今年中ぐらいに出てくるんでしょうかね、税を抜いたところで。それを受けて、中間法人を含めたり等々でどういう議論をしようかという議論をしておりますが、今日あった中で、大上段で原則課税だ、原則非課税だとかという形で一刀両断的に整理しちゃうというのについては、ちょっと今度は慎重にやらなきゃいけない。昨年、たしか一時議論になった、非営利法人は原則課税であるというような話があって、かなりの反響というか、かなりの抵抗を受けたということもあって、そこら辺は慎重にやりたいと思いますが、とりあえず公益法人の枠自体がはっきりしないと、その中で税というものがどういうふうに位置付けられるか分からないので、それを待っている状況です。いずれにしてもわれわれのところに来るのが目に見えておりますから、それは本格的に、来年以降になると思いますけれども、議論したいと思っています。今日の法人税関係の資料が付いていますから、あとでご覧下さい。

記者

今の確認ですけど、やはり公益法人の部分も来年度税制改正でやるのですか。

石会長

これは、年明けてからと思っているんですよ。税の問題が起きるのは。そういう意味では来年の税制改正には特別入らないけど、ただ、引き続き公益法人というものについては議論しなきゃいけないという問題意識等々は、ちゃんと中長期的視点から整理して、答申案には書き込みたいと思います。

記者

今日の委員会のテーマではありませんが、昨日、予算委員会で首相が定率減税の縮小・廃止について、社会保障費の財源の一つとして、選択肢の一つだとおっしゃっていましたが、それは会長が以前からおっしゃっている、政治のほうの決断の熟度が高まっているというふうに受け止めていらっしゃるんでしょうか。

石会長

ただ、小泉さんと私が共通しているのは…共通しているのかどうか、私の言ったのを受けてくれるかどうか知りませんけど、まあ、部分的にやっていきましょうと。つまり、あまりにも規模が大きいのでね。それから、先行き不透明な、不透明という意味は予測がつかないという意味の不透明なんですけれども、景気の助成、把握するのに時期がかかりますから、ああいう話でいいんじゃないかと思いますけどね。そういう意味で、首相は定率減税をやると。一挙に全部やれという人にとっては不満が残るかもしれないけど、少なくとも部分的にやろうと。部分的という意味が半分なのか3分の1か4分の1か分かりませんけど、まあ常識的に考えれば、半分ずつやろうということでしょう。そういうことがある意味で政治的に方向が示されたというのは、私としては大いにウエルカムですね。ただ、それをもって、すぐさま年金や何かのほうに、目税税的に扱うということは、どだい特別会計を作ってやるわけじゃありませんから、観念的に結び付けておくということにおいて、ああいう説明でもいいんじゃないかとは思ってますけどね。

記者

今朝の閣議後の会見で、小池環境相が環境税05年度導入はあきらめていないという趣旨のことをおっしゃったようなんですけど、その見通しについて。

石会長

環境税の導入というのは申し上げるべきだったかもしれませんけれども、今、税制改正要望で環境税導入というのが環境省から出ておりまして、多分2行ぐらいの話で中身がないんですよね。したがって、中身がないなら僕らは議論できないという意味において、この時期になって中身がないのを議論して来年入れるわけにいかないから、そういう意味では来年度には難しいんじゃないですかということを、私が何回もここで繰り返して言って来たんですね。それを受けて、刺激を受けたか、今環境省はしゃかりきになって中身を作っています。中身がいつ出てくるかということは、まだ定かではないんですけども、向こうも中環審等ありますからね。いずれにしても、基礎問題小委員会が開催している間に何かしらの具体的な提案が出てくれば議論して、そして、そこの段階で一体いつごろどうなのかということを踏まえて、答申の中に書き込むことはやります。が、本当に出てくるのかどうかちょっと、待っているところですよ。もう恐らく、ぎりぎりは11月中旬以前でしょうね。われわれだって11月20何日かにはまとめたいと思っていますから。それに、やっぱり出てきたものを本格的に議論する場が税調としても欲しいですよね。大きな改革につながる話でありますから、本当を言えば小委員会でも作って、それこそ数カ月かけて議論すべきでありましょうが、この税は環境省がこれまで長い間かけて議論してきたものでありますから、あと、取りまとめというところで苦労していると思いますが、これが出てくればわれわれも受けて、少なくとも1回集中審議を基礎問題小委員会でやりたいと思っています。それを踏まえてというわけですから、10日前後の話になるなら間に合うかもしれません。そういう意味では、小池大臣があきらめてないというのなら、大いにあきらめてないで、頑張ってもらえればと思ってますけど。そういう状況です。

記者

特別法人税なんですけど、今日は議論になかったということなんですが、会長自身としてどのようにお考えですか。

石会長

いや、それはいろんな意味でね、過去の影を引きずっている問題でありますから、それはまだ本格的に税調として議論してないんですよ。私自身も中身についてもうちょっと考えないと分からないので、今日の段階でやめるとか入れるとかいうのは、ちょっと留保だな。

記者

またいずれかのタイミングではということでしょうか。

石会長

いや、法人税の段階で、これは年金とか社会保障の時にこの議論を本格的にやってなかったということもありまして、税調で資料等出ていませんが、今のような問題意識を持っている人もいると思いますから、そういうのをまとめる段階で、基礎問題小委員会の過去にやったやつを1回トータルでまとめてフリーディスカッションする時もありますから、そういうところにもう1回少し資料を出して議論する場はあるとは思いますから、ちょっとやれたらやってみたいと思いますが、現在の段階においてはまだフリーハンドですね。

記者

そうしますと、経済界はかなり強い姿勢で撤廃を要求していますけれども、なかなかその議論を受け止めてというふうには…。

石会長

それはあり得るでしょう、議論の場に乗っけるという意味においてね。だから、それはいずれか、後の基礎問題小委員会で議論をしたいと思っていますから、その時にまたと思っています。

(以上)