基礎問題小委員会(第19回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成16年9月28日(火)17:01~17:17

石会長

それでは第19回目になりますが、基礎問題小委員会を開催しました。秋の陣のキッフオフですね、今日は。そういう意味で今日から本格的な議論を始めます。それで所得税、消費税云々の話に入る前にですね、やっぱり国と地方の財政状況、あるいは税収動向等、調べなきゃいかんという形で、お手元に二つ資料がいっていると思いますが、それについて事務局から説明をいただき、それから井堀委員のほうから、財政赤字解消の、あるいは財政再建の進め方についていろいろシナリオを出していただいたという資料がございます。その3点につきましてご説明いただいた後、フリーディスカッションをしたというのが今日のやりとりであります。それで、井堀さんのシナリオはいろいろ面白くてですね、後でご覧いただければと思いますが、財政再建というのは所詮歳出カットか増税かという形でやりますから、それをいつどういう時期でやるか、例えば景気がいいときにやったほうがいいのか、あるいはある程度コンスタントに、景気としばらく距離を置いてやったほうがいいのか、あるいは決めた後、せっかく決めてもラグの問題があります。これはまさに私が前回申し上げたように、定率減税を廃止するといっても、1年数カ月後というのはラグですからね、これは景気の問題と絡みます。そういう話を今日はしていただきまして、それがきっかけになったと思いますが、いくつかの、今度我々がやるときの施策と景気の問題について、最初いくつか議論が出されました。つまり、これからなにやかにや言っても、財政再建に向けて第一歩を踏み出すとすると、定率減税の廃止・縮減が一番いい例でありますが、今決めて議論するに当たって、景気はどうなるかと。それは議論する段階と実施の段階と二通りありますけれどもね、それについて議論がなされた中で、まあいくつかに議論は分かれました。アナウンスメント効果というのもあるから、今、景気が落ちだしたら、将来そういう形で、言うなれば税負担増になるようなことをやると、やっぱり景気の足を引っ張るという議論から、そうは言っても1年数カ月先のことは分からないから議論だけはしておくべきだろうという議論とか、いろいろありました。これを巡りましてかなり活発な議論があったと思います。いろんな議論はあったんですけど、やっぱり定率減税廃止・縮減というのはやらざるを得ない政策とすれば、議論だけはしっかりしておかなきゃいけないじゃないかという形で、この間申し上げたように、実施の段階でその実施に当たってのいろんな、まあ延期も含めて議論するという形のことはありうべしという形で議論はしっかりしようと、このように思ってます。

これはいろんな税にすべて絡む話でありますが、景気と増税のタイミングということにつきまして、議論は議論とし、実施の段階は実施の段階でという使い分けはどうしてもしなきゃいけないだろうというのが第1点ですね。第2点は、やはり歳出の無駄を省くという趣旨の具体的なイメージがないと、今後議論はしにくいというかできないんじゃないかと。そこで、歳出構造の見直しというのは財制審等々でやってた話なんですが、我々としても、それに大きな関心をもたなきゃいけない。まだ無駄なところがあるというような議論でいったら、おそらく歳出削減というのはまだまだ進んでいないという証拠ですからね、そういう意味で、どこが無駄で、どこが切れて、どこが切れないかと。つまり、端的に言えば、義務的経費と裁量的経費と、それから比較的切りやすい公共事業関係とかですね、そういう仕分けをしっかりしてもらって、歳出カットの展望を示さないと今後この種の議論というのはできないんじゃないかという話が二つ目ですね。これは税調としても、他の審議会と連絡を結びながらやろうということにならざるを得ないと思います。その辺にも、我々としては新しい守備範囲の拡張ということもあり得るかもしれません。それから三つ目は、やっぱり国の国民に対する説明という形で、しっかりしたシナリオを書かなきゃいかんじゃないかと。例えばプライマリーバランスというのを回復するということと、今19兆円ありますよね、この資料にありますけども。その19兆円の中身をどういう形でやるか。つまり歳出のほうでやるのか、歳入のほうでやるのかも含めて、しっかり国民に対する説明責任が我々としてもあるので、それをしない以上は、どうも国民はのってこないんじゃないかという議論ですね。それから井堀さんのシナリオにもあったんですけど、非ケインズ的効果というのがあるんですね、非ケインズ的効果というのはどういうことかといいますと、財政再建をしっかりし、国の借金をなくしていくという過程で、国民に安心と安全を与えるだろうし、その結果として、年金であるとか社会保障制度がそれほど削られないであろうということがあれば消費を控えない。財政再建というのもまさにケインズ効果と逆ですよね。非ケインズ効果というのはそういった質的な話としてプラスに転じる場合もある、これは相当大きいとは思われないというふうに井堀さんもおっしゃっていましたが、ある意味では、言葉は別といたしまして、財政再建というのをしっかり国民に訴えるということをやるということにおいて、何が何でも可処分所得を減らしてマイナスだという面ばかりではないんじゃないかという議論を今日も少しやってきたということであります。

そういう意味で、今日は具体的なポリシーの選択にあたってどういう条件が満ちたらどうだというあたりで大分時間をとったし、それから資料の説明と井堀さんの説明で小一時間とりましたので、それ以上の議論は進みませんでしたけど、もうこれは繰り返しになりますから申し上げませんが、国の財政事情、それから税収が少しは回復しましたけど、相変わらず落ち込みが激しい。それから、減収になっている要因として税制改革によるのか、あるいは景気後退によるのか等々の具体的な数字、それを巡っての議論とか、いろいろいたしましたが、まあ最初でありますので、本格的にこれからどういう形で突っ込んでいくかという、まあ前哨戦みたいな議論で終わったということだろうと思います。

次回は、この金曜日に同じような趣旨から、トータルな議論をしなければいけないという意味で、みずほ証券の方から国債発行の問題と、それから財政、経済の関係、その後、田近委員のほうから社会保障を巡る財源の問題、これを中核にして少し大きな視点から議論をしたいと考えております。

言い忘れましたが、金融というのは今、少なくとも名目のCPI、消費者物価がプラスにならないとゼロ金利という現行のスタンスをとり続けるというふうな目標を立ててます。まあこれから日本の景気と絡めて本格的な財政再建になるときに、金融でやってるような一つのある具体的な指標ですね、そんなものができるかどうかというのも、これは議論になるかもしれません。しかし、これはなかなか難しい話ですよね。さっき言ったタイミングの問題がありますからね。あとタイムラグの問題がありますからね。そういう意味で、今日は難しい問題を幾つか出した結果、今後どういう形の議論があるかという形で、委員各自がおのおの考えを巡らせたんだろうと思います。

そういうわけで具体的な中身にはまだ入りませんでしたけれども、以上のような結果で一応最初の本格的な議論の話は終わったということですね。以上です。

記者

今のお話で出ました景気と増税のタイミングの話ですが、そういった何か具体的な指標というのは、まさに具体的にこういうものが考えられるとかという議論はありましたか。

石会長

例えば、名目成長率が何%になるとか、失業率が何%とか、そういう話でしょう。これは、金融と違って難しいですよ。というのは、先程から言ってるように、政策の発動のラグがありますからね。つまり、租税法定主義だから国会で税法案が通らないとどうしようもないんで、これは僕はそもそも無理だと思います。例えば、元来言ってるように、4月から定率減税廃止とかなんか決めても、実施するのはその8カ月以降ですからね。そういう意味では、そのときの景気の指標がどうだったらどうするという事は事前に決めておくのは難しいから、仮に実施の段階で問題があるとみたら、その段階で議論するしかないんじゃないでしょうかね。と同時に、増税のタイミングといったって、どんな税を使うかによりますよ、また。まあそういう意味で金利一本の話じゃありませんから、これはちょっと金融とはかなり違うという要素があると思ってます。

記者

次に、歳出の無駄を省くという面で、もっと他の審議会とも連携というお話がありましたが、それらの具体的なお考えを…。

石会長

この歳出のほうの見直しにつきましては、財制審でかなり、これまできめ細かくやってた話ですよ。例えば一般歳出の中の40数兆円の中身を義務的経費に分けたり、あるいは裁量的経費に分けたりしておりますが、まあできたら、どういうところに力点を置いて歳出カットのポイントがあるか。ただ、これはある意味で我々の守備範囲外ですからね。そう突っ込んだ中身で議論はしにくいと思いますけれども、少なくともプライマリーバランスを回復するときの19兆円の中身をどういう割合でやるかぐらいのことは言えるんじゃないかと思いますけど、これは私の個人的な見解ですけど、それぐらいまで議論がいかないと、どれだけ税負担増でやるかというところについても、国民的な支持はなかなか得にくいと思いますね。相変わらず無駄が非常に山積みになってて、それを削れば税負担増は必要ないという声もやっぱりありますからね。それに対してある明確な、一応こっちのスタンスもだす必要があろうと考えてますので、少しそれを努力してみたいと思います。

記者

昨日、内閣改造で新しい小泉内閣が発足しましたけれど、改めて政府税調として今後の財政構造に向けての決意というのか…。

石会長

大臣も留任していただきました。谷垣大臣とは、これまでいろんな形で税調に対してご注文もいただいてますし、まあこれまでのスタンスを変える必要は全然ないと思ってますので、そういう意味で我々としては既定の路線をそのまま貫けばいいかなという意味では、歓迎しております。おそらくそういう形で今後の議論は従来どおりの方針で進められると思ってます。

記者

今の歳出カットのボリュームはどのぐらいかと、それによって税負担増が変わってくると。それはいつぐらいの時期までに、どのぐらいの具体性をもって…。

石会長

分からないですね、それは。おっしゃるとおり、すべて今後の政策立案というのは具体性が勝負になってくると思いますよね。今分かってるのは、2010年初頭までにプライマリーバランスを回復するというだけのところで、具体的な手順まで、まだコンセンサスが全然できてませんよね。だから、政府税調でもそれはコンセンサスを得るかは分からないけど、まあ歳入面、税制面も主役を担うことでしょう。したがって、主役の担い方として、ほかにもできる手段があれば、その手段との絡みで議論は少ししなきゃいけないと思ってます。この点について具体的に今後どうしようかというところまで、今日はまあ最初ですから、なかなか議論は難しいですね。まだいってません。いずれとは思ってますけれども。

記者

消費税と定率減税の関係なんですが、谷垣さんは先程インタビューのなかで、2005年、2006年の税制改正、定率減税を見直さない選択肢はあるかという問いに、「あり得る」という答えをしたのは、おそらく会長がおっしゃる直前での延期ということもあるという理解なのかなと思ったんですが、そういうふうに5年、6年でやらない、何も手をつけないという選択肢はあるかと会長がお考えになっているかどうかというのが1点。

それから、あともう一つは、大臣が昨日、就任の会見で、消費税の質問に対してはやっぱり所得税の課税の見直しが先だという趣旨の話を繰り返されてたんですが、あくまでも定率減税を含めた所得税、個人所得課税の見直しが先行して、消費税の引き上げに入るべきだというふうにお考えなんでしょうか。

石会長

1と2は連繋してますから一括してお答えいたしますが、そのとおりだと思います。というのは、あるべき税制ということを過去に何度も言って、やはり所得税の構造改革というのが一つの大きなテーマになってますよね。それで、定率減税というものがある限りにおいて、本格的な議論はできない、所得税の構造改革はね。と同時に、定率減税を導入した一つの条件として、抜本改革を所得税についてやるときには、もう「やめ」と言ってるわけですからね、そういう意味では、まず中高所得層に極めて有利な減税になっているのを直さずして、消費税の導入は僕は難しいと思いますね。消費税は逆進性だとか大衆課税だとか言われてますからね。まずおそらく、一般的の国民の感覚から言うと、まず定率減税という中高所得者向けの減税を、それも特に税の歪みを発生させていると、我々はかねがね思ってますんで、そこを直した後で、消費税にいくのが本来であろうと思います。それから小泉さんがいる限り、2006年9月までは消費税は実施はできないという前提が政治的にありますから、それを考えてやれば、まず所得税からやるべきでしょう。それから2005年、2006年ですか、例の自民党の税調ですか、与党の税調かな、とりあえず2年かけてやりましょうという政治的な一応の取り決めしてますよね。別にそれに乗ってるわけではありませんが、我々としても1年かけてやるか、2年かけてやるかという議論をこれからします。それで、先程来議論してますように、景気の問題がありますけど、議論はして一向構わないというふうに税調の中でも、またしなきゃいけないだろうというふうにコンセンサスができておりますから、その問題はこれから具体的にどうするかという議論をしたいと思います。おっしゃる今の…谷垣財務大臣がおっしゃってる意見と、我々税調は今の説明していただいたのとまったく軌は同じにしているとお答えしておいてもいいと思います。

(以上)