基礎問題小委員会(第12回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成16年5月14日(金)16:03~16:27

石会長

それでは、第12回目でございますが、基礎問題小委員会が終わりましたので、ご報告申し上げます。

経済社会の「実像」把握ということで、今日は環境を取り上げました。環境といっても、すぐさま狭い意味で環境税云々というよりは、今、社会システム全体として環境の問題を抱えておりますので、その大きな視点から環境をとりあえず取り上げてみようという形で、今日はお二人の先生に来ていただきました。お一人は、千葉大学の倉阪先生、もともと環境省ですね、昔の環境庁で勤務され、行政面で環境基本法等々の立ち上げにご苦労があって、今、千葉大学で特に経済とか法とかという視点から環境を議論されているという方であります。2番目が、東大の生産技術研究所の安岡先生でありまして、この方は地球観測といった点から、現に国際的な側面で京都議定書以降のさまざまな地球観測を、日本を代表して携わっている先生でございます。お手元に二つ資料が出ておりますので、そちらを後程見ていただければ、大体何をやったかというのがお分かりいただけると思います。

その前に、恒例の如く、事務局で作っていただきました参考資料が出ておりまして、これは、これまでの環境問題がどのような形で日本で経緯してきたかということが一目で分かるという形の資料でございます。特にわれわれ、目次のところで7.でございますが、国民の意識とか企業の取組み、つまり環境に対してですね、そういうデータも集めてもらいまして、こういうものを踏まえて、環境問題というのをこれからどういうような形でわれわれとして考えるかという資料を、幾つか意図をここからくみ取ることができると思います。それ以外に、環境一般の問題が公害、廃棄物、地球観測、自然環境等とすべてこの資料に盛り込まれておりますので、また後程ご覧いただけたらと思っております。

そこで、まずお二人のスピーカーのことにつきましては、パワーポイントで使いました資料が載っておりますので、それをちょっと見ていただきます。どういうことが議論になったかということでございますが、倉阪先生のほうは、環境に関する基本的論点でございまして、まあ言うなれば、環境とは何だ、環境問題とは何だ等々の、特に社会科学的な視点からの論点の整理をしていただきました。後に第二のスピーカーの安岡先生は、どちらかというと理科的な、自然科学的な側面でございますが、倉阪先生にはどうやって一体、経済学の中ではこの環境問題を取り扱ったらいいか、どういう対応をしたらいいかといったようなところを、幾つかの視点から議論をしてもらいました。最後に、環境税の問題にもちょっと触れられておりますし、政府の役割とは何とかという点につきましても、そういう環境問題の取り上げ方を経済学的に分析した後で、最後に政策論のほうにも話を言及していただきましたが、倉阪先生の最後の結論は、税というのはいわゆるグッズですよね。財サービスでいいもの、グッズ(goods)というのは善なるものですからね。それをうんと産み出している人から税を徴収するというそういう視点の裏返しとして、環境税はバッズ(bads)課税なんですね。バッズというのは良くない、グッズの反対ですからね。財ではなくてマイナスの財ですね。言うなれば環境汚染ということですね。そういう環境汚染なり、マイナスのグッズを出しているものにうんと税を負担してもらわなきゃいけないだろうと。まあ言うなれば、環境汚染、あるいは環境に対する負荷ですね。それに着目して、税の負担をしてもらう、こういうことだということであります。

これに対して、また幾つか質問が出たんですが、京都議定書ということがベースになって今、さまざまな環境問題が議論され、特にマイナス6%というものを1990年レベルで、2008年からもう既にスタートする中でやらなきゃいけないわけです。まあこういうことから、京都議定書というのは極めて不公平な国際的な約束をしちゃったんじゃないかという点で、このマイナス6%というのを是が非でも達成するべく税制を活用するのか、それについてはどういうお考えかというような質問と、中国が今後、資源浪費あるいはエネルギーの多消費なんか、世界中のそういう問題を抱えてくるような中国が隣にいて、一体この環境問題はどうなるのかねというような議論、これをどう考えるかという質問が出ました。

これに対して、まあある側面からのお答えでございますが、言うなれば、次世代の自動車を開発するよいきっかけに京都議定書はなったんじゃないかと。つまり、地球の中というのは炭素ですよね。CO2 でありますから、炭素が発生することが元凶になっているのが、水素というようなものが次の次世代の自動車の、いわゆる燃料でありますから、そういうところに話がどんどんいっているのは、京都議定書のおかげであろう、地球温暖化に対する警鐘の結果であろうと。そういうものを中国に技術移転として出すことによって、日本の環境問題なり、あるいは地球全体の地球環境問題として大分対応できるんじゃないかというような、そういうお答えがございました。

それから、グッズタックスからバッズタックスへいったときには、バッズタックスで環境汚染をしているのは、特に流通であり家計なんですが、企業は大分、今頑張ってるんですよね。企業は自主努力によってバッズを出さないようにしてるから、バッズタックスといったら家計にかかるんじゃないかというようなことに対してどう考えるかという質問が出ましたけど、これはまあ、企業が幾ら頑張ってそこを抑えたといっても、根っこにはやっぱりバッズを出しているわけですから、当然のこと、バッズタックスの場合には企業も対象になる。ただ、出方が少ないという意味においては減税をしてもいいんじゃないかというような、そういうお話でございました。

次に安岡先生です。私なんぞはまったく、地球観測の面からみた地球温暖化のさまざまな資料というのについては、衛星まで使って、世界的な規模で国際的な連携をとりつつやっている仕事の一端を今日ご説明いただきまして、地球環境サミットというのが今どういう形で動いているかということがよく分かりました。

問題の関心事は、地球の温暖化というものがさまざまな形で出てきている。例えば春が早く来過ぎたとか、雪が融けるとか、それから気温が高まってきたとか、したがって火災が世界中で増えてるとか、いろんな事実は片やあるわけですね。と同時に、1ページに書いてございますように、ハワイ・マウナロア島で観察されたCO2 の濃度、これが経年すごく上がってるということが事実でありまして、まあこういう二つのことから、要するに地球温暖化の元凶というのは、まさにCO2がどんどんどんどん高まっていることじゃないかと。これはさまざまな形で観測して積みあげているということがよく分かりました。ここに出ておりますデータはすべてその領域なんですが、ただ、ポイントを12ほど挙げられまして、何が問題で、どこをどうしたらいいかという点について、きわめて明快にご説明いただきました。

16ページに最初のポイントが出てきておりますが、例えば、今どうなっているかという視点からいいますと、温暖化は確実に起こっているんだというのがポイントなんですよね。でももっとここで重要なのは、温暖化の、あるいは環境変動の主たる原因は人間活動であると。つまり、火山が噴火したり、まあさまざま、温暖化は火災が起こったりということもあるのかもしれないけど、まさに人間が企業活動、あるいは日常生活等々でさまざまな形で、化石性燃料を使ったりそういう経済行動をしていることによって起こっているんだという点を強調されまして、まあすべからく原因、加害者は人間の活動にあると、これはいろんな形で出ております。

地球温暖化のいろんなデータを出されましたが、例えば北半球のほうがはるかにCO2 の発生量が多いですね、南半球に比べると。これは、やっぱり陸地が多いということのようですね。つまり、それだけ人間の活動がその上でやられてるということでしょう。それから、夏と冬と比べると、当然のこと冬のほうが多くなるよということかな…そういう季節の変動等々もあるというような、さまざまな視点から議論をいただきました。

今、三つのポイントが出てたんですが、例えば、これを見ていただきますと分かりますように、あと何が問題かという意味で、ポイント4以降が26ページ、それからポイント7以降が32ページに並んでおりますので、そういう点でみていただきますと、非常に深刻な温暖化とCO2 の濃度の上昇が刻々と起きてるなあという気がいたします。

そこで、最後にどういう形で自然科学者として議論をすべきかということですが、最後のページに、要するに人間の体温で言うと、地球温暖化というのは地球の体温が上がっていることなんですね。そうすると、人間は37度を超えるとお医者さんに行ったり安静にするわけですよね。それと同じように、やっぱり節制が重要であって、廃棄物を出さない。あるいは余分な資源は使わない。それから、地球をがたがた、いろいろな形に変えない。まあそういうような人間の、言うなれば養生と同じように地球の養生も必要だという点で話をくくられておりました。

それに対して幾つか質問が出たんですが、全体として眺めてみると、森林の効果、吸収源としての森林の効果というのを非常に強調されてるんじゃないかという質問が出まして、それに対しては、そのようだというお答えでございました。したがって、自然科学者の目からみると、CO2 の発生を止めるためにいろんな手段がある、その中でわれわれ以上に自然のなかでその問題の解決を図りたいという意味において、森林というものの役割が非常にクローズアップされてるのかなという感想を持ちました。ちょっと時間もなかったので、あまり議論がすべてにいかなかったし、われわれは社会科学系の人間が多いので、自然科学のなかに入った議論というのはなかなかできなかったのですが、一同非常に感銘を受けたということだけつけ加えておきたいと思います。

というわけで、われわれの「実像」把握の研究も大分進みまして、あと残すは公共部門等の議論を踏まえるだけになりまして、これをあと2回程やって、この「実像」把握の話をまとめたいと考えてます。今のところ、2回というのが5月25日と6月1日でございます。そこで、要するに福祉とか税体系、これを考えるのにはやはり公共部門の役割が重要ですし、そもそも公共意識とか公共性とかいったような問題ですね。最近は「公共哲学」という言葉もあるようでありますが、そういった専門家をお呼びするとか、あるいは福祉といったものをもう一度見直すための社会的な位置づけ、あるいは福祉国家と個人化という関係をどうするかというようなことも最後に詰めてみたいと考えております。これのほうが、より税制の改革の話と結びつけやすいかもしれませんが、いずれにいたしましても、最後はこれで締めくくりたいと考えております。

予定しておりますことは以上でございまして、6月の後半には一応、報告書という形で、答申をまとめるということじゃございませんが、報告書という形でこの作業に一応終止符を打ちたいと、このように考えてます。それをベースにして、いかに秋以降の税制改革の論議につなげるかというのが夏休み以降の課題ではないかと、このように考えます。

以上です。

記者

環境税をめぐっては、昨日、連合が温暖化防止対策で検討が必要というようなことを表明したりとなっていますが、導入をめぐる論点ですね。今日の議論を踏まえて、先生どのように…。

石会長

これは今、直に環境税の議論をしようという形でこれは仕掛けたテーマではないんですよね。そもそも、一体、環境問題というのがどういうふうに進展してきたか、あるいは進捗しつつあるかというのをつかもうという形であります。非常に、今日の印象ではいろんな意味て環境問題は深刻化してきてると思ってまして、その対策について、われわれがやるとすると税制の活用とか排出権売買みたいな経済的視点があるんですが。そこまで今日は議論がいっておりませんが、いずれにいたしましても、これから京都議定書の運びがどうなるか、急転直下する可能性もありますし、なにぶんにも2008年の、言うなれば第一次の期間、つまり2008年から2012年までの間にマイナス6%と言われますけどね、刻々と迫ってるんですよね。2008年というのはあと4年後ですからね。そうのんびりもしてられないので、いずれ方々の機関でしかるべき問題が出ると思いますので、これから、税の対応あたりの基礎的な勉強が今終わりましたので、時期をみまして、議論は本格的にすることをせにゃあいかんとは思ってます。それがいつごろどうだというのは、ちょっと京都議定書の関係があるから分かんないんですね、まだ。ただ、問題意識は大いに持っているということだけつけ加えておきます。

記者

ちょっと話題変わりますが、三位一体改革をめぐって、自民党のプロジェクトチームが3兆円余りの移譲を先行する。いろいろ各自治体、知事からもいろんな案が出てきたりという動きがありますが、先生、このあたはどのように…。

石会長

三位一体、例の俗称「麻生プラン」が出て、とりあえず税源移譲というのも最初に約束せいというお話で、前回ここの、たしか記者レクでも質問が出てお答えしましたが、三位一体というのはまさに三位一体でありまして、補助金、地方交付税、それから税源移譲を一体化するなかで、なかなか税源移譲だけポンと出すことは難しかろと思う。と同時に、あの麻生プランというのは、なんかえらい詳細設計まで入ってるんですよね。税率まで入っておりましてね、まあそういうものを先に決めちゃって、あと議論をくっつけるかというより、やっぱり税源移譲なら税源移譲の具体的な中身なり仕組みなり、これはやっぱり税制を担当する部局で少し細かく詰めなきゃいけないと思ってます。税調としても、もしか本格的にそういう税源移譲が政治的日程に上り、あるいは俗にフィジビリティが高まるということになれば、ぜひわれわれのほうで、それに対しての議論をせにゃいかんと思ってます。で、時期なんですがね、今、麻生プランというのはたまたま出て、まあ一種の参議院議員選挙に対する一つの対応を示したということなのかもしれませんけれども、われわれとしては、例えば何兆円という規模が決まってないと、この間も言いましたが、やりにくいということもあって、どうも外枠がぐらぐらしてるなかで、あるいはどこかある関係者の一部が突出した格好で、ある方向を出したりしてもなかなか全体として受けとめにくい。それから今、経済財政諮問会議でも、たしか竹中大臣も言ってたと思いますが、夏から秋にかけ本格的に議論を詰めたらどうだと言ってるようでありますし、今のところ、財務大臣と総務大臣の間の議論のやりとりがあったようでありますが、まだその辺、関係者一同がこぞってたって議論しようという環境…まず環境ですね、ではないんで、われわれとしてもその環境は夏以降ではないかと思ってますんで、当然のこと、そのときには本格的議論をしたいと思ってます。ちょっとまだ時期尚早というイメージですね。

記者

今日のテーマとは関係ないんですけれども、年金の一元化、それで個人事業者の所得把握に流れて納税番号制度というのが、金融小委員会とまた違う角度から大分浮上してきてるんですが、その点についてお考えを。

石会長

金融小委員会はレポートは一応6月頃に、ある基本的な方向は出せると思います。そこでですね、納番の必要性もうたうとは思います。で、その必要性というのはあくまで、さまざまある金融所得というものを一元的に管理するための番号制度でありまして、要するにカネの出し手と受け手をマッチングして、言うなれば制度的に不正確にならないようにチェックしようという仕組みですね。それと、その一元化は、言うなれば自営業者の所得を捕捉するということとは、大分次元が違う話なんですね。この間も、たしか一回ご説明したと思いますが、自営業者は自分で所得を払って自分で受け取る業種でありますから、金融所得みたいに、金融機関が出して預金者がもらうという話ではないんですね。したがって、納番を使って年金一元化のために所得捕捉をするということは、よほど別の仕掛けがないと難しいと思いますね。まあそういう意味で、納番ということを新しい角度からいろいろ言っていただくのは大いに結構だと思いますけれども、仕掛けは僕は大分変わってくると思いますよ、本格的にやる気なら。まあそれを今、ちょっとまだ具体的にどうしようというところまで詰めるのは難しいと思いますけども、まさに、もっともっと番号管理によって個人の所得の獲得、それから処分のほうまでいろいろ絡めてやるならネットワークしなきゃいけないと思うんで、そんなことやってる国はどこにもありませんから。納番というのは、どこの国も金融所得、典型的には利子ですよ。利子の出し手と受け手の間のマッチングをするところに使っているわけでありますから、当然、税調として年金の一元化に対してなにか具体的な、特段優れた番号のアイデアを出すということは難しかろうと思ってます。

記者

三位一体の関連でお伺いしたいんですけれども、税源移譲に伴う自治体間の税収格差について、税の世界で調整することは可能なのか、どういうふうにお考えですか。

石会長

所得税でやろうというときに、今の所得譲与税みたいに人口比でやれば差はつかないでしょう。ただ、これから本格的に、何兆円かというオーダーで所得税とそれから住民税に移ったら、当然のこと格差はつきますね。僕は、税源移譲する人の立場から言えば、格差は当然前提…格差が広がるのは前提としないと税源移譲できないですよ。だから、格差が広がったのを今度は地方交付税で全部面倒みようというのじゃああんまり意味がないでしょう。そういう意味で私は、税源移譲というのは格差がある程度つくのはやむなしということを前提にしないとできないと思いますね。そういう意味で、地方交付税財源保障と財源のバラツキを直すという二通りの機能がありますけどね、私は、税源移譲した以上はその辺のバラツキはある程度やむなしというほうで理論を構築しないと、税源移譲はできないと思う。

記者

それは、昔の発想ですと税収格差があるからそこの…。

石会長

そこをまたね…。

記者

補助金とかで。

石会長

いやいや、補助金じゃない、地方交付税で埋めるっていうでしょう。だって、地方交付税自体を見直して、それで単なる財源補てんというのはやめて、財源のバラツキを直すほうに使うというのをある程度残してもいいけどって言うけど、そういうの、地方交付税自体の規模を減らすということは、今言ったバラツキを減らす機能を前ほど強くするということじゃないでしょう。だから当然それは、税源移譲に伴う、より大きな格差を、また新しいパワフルな地方交付税制度を作ってという話は論議一貫しませんよ、議論が逆立ちしてる。

記者

いや、税の世界じゃなくて、予算の世界の配分で、なかで予算を、格差がある程度ならされるような公共事業…。

石会長

でも、公共事業自体減らすんですよ、今度は。

記者

そうです。

石会長

だから当然のこと…。

記者

もう格差が出てくるのはしようがないと。

石会長

しようがないですよ。それを当然是認のうえで税源移譲するんでしょ。

記者

いや、補助金交付するのかどうかについてはまだ、要するに政府内の議論がないではないですか。

石会長

程度の問題でしょう。税の世界で言えば、税源移譲すれば当然のこと、格差は広がりますよ。

記者

そこを、財務省なり政府、つまり中央側で、そこの措置まで含めて考えながら税源移譲するということはあり得ないということですね。

石会長

あり得ないか、あり得るか分からないけど、それの程度問題ですけどね、従来以上に格差の縮小ということに対して力を入れるということは制度上できないでしょうということは言えると思う、そこははっきり。だから、そこはもう、今の仕組みで言えば、税源移譲というのはそれは受けとめて、あと今度は仕事の量とかですね、やるべき仕事の量とか何か、その歳出面での話の兼ね合いとして議論が出てくるでしょうね。税源は確実にあれしますね。所得税を移せば、完全に開きますよ。それを、だって直すべく補助金も切ろう、あるいは地方交付税も減らそうって言ってるんだから、それをまた元に戻したら、何のためにやるか分からないじゃないですか。

(以上)