総会(第27回)・基礎問題小委員会(第31回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成17年3月18日(火)16:16~16:31

石会長

今日も勉強会でありまして、傍聴された方はすべてご承知のことばかりであります。改めて私のほうから論点を整理してですね、なにか特にどうだということはないのですが、一応座長としてやったので、どう今後利用していくかというような点から、もう一つはスケジュールで、最後に税調でまとめた話以外に何かあるかどうかというあたりを、少し整理したいと思います。

西村さん、ご存じのように医療経済学の大家でありまして、さまざまな論点を整理してくれまして参考になりました。ただ、歳出の見直しという視点から幾つか論点があって、税そのものじゃなかったと思いますが、やはり総枠で医療費を抑制しないとどんどん膨らんでしまうという、そのなかで人件費、とりわけお医者さんの所得の問題あたりが、言いにくいことであったとは思いますが、ダイレクトに切り込んでくれて、論点としてはクリアカットになったと思います。まあ、言うなれば診療報酬の問題だと思いますが、これからおそらく医療制度改革において一つの争点になるというふうな感じを持っておりました。

それから樋口さんのほうは、我々が議論している方向と軌を一にするような、いろんなファクトファインディングスと、それから政策提言がございまして、大変参考になったと思っています。少子化対策として税額控除を入れたらどうかなんていう問題意識、我々持っておりまして、ただ、課税最低限以下でマイナスの税額控除、つまり補助金を与えるようなところまでは考えていなかったんですが、ああいう話ができるのかどうかも踏まえてですね、これから議論しなきゃいけないと、このように考えております。

それから納番、最後、大分議論が熱を帯びてきましたけれども、まさに行きつ戻りつで十何年、もう20年近くやってますねえ、この問題は。ただ、二つの番号制度ができたということによってですね、やる気ならばできる話になってきたんだけど、ただ、それなりのちゃんとした目標と理由とですね、正当化し得るだけの根拠がないと、この問題は先に進まないと思います。ただ、社会保障というものが改めて税との結びつきも持ちつつですね、番号制度、力を借りてやらなきゃいけないというような側面が出たとか、国際化であるとか情報化であるとかという、十数年前には考えられないような事態がどんどん出てきたということによってですね、納番も幾つか変遷を経ましたけど、新しい局面をまた迎えたかなと思います。ただ、これを受けて、税調としてどういう形で論点を整理していくかというのは、非常に難しいなという感じを持っております。相変わらずプライバシー保護の問題は残っておりますし、これは個人情報の今度の新しい制度によってどれだけカバーできるかもまだわかりません。そういう意味で今日だけで終わらずですね、これからさまざまな形で、この番号制度は取り扱わなきゃいけないと考えております。

それから、スケジュール表をお渡しいたしました。かなり4、5、6月とインテンシブに税調を運営していきたいと考えております。ただ、あくまで位置付けはですね、夏までは広く網を広げて、あるいは風呂敷を広げてと言うべきかな、主要な論点、今後長い目で見たとき、これはやらなきゃいけないという論点を整理して、その方向性を明確にしたい。で、その土俵を決めたなかで秋以降ですね、その中から平成18年度税制改正に向けて、できるもの、できないもの、仕分けしてですね、まあ短期的な処理、中長期的な視点からの整理、あわせながらやっていくという議論になると思います。とりあえず夏までは所得税、そして非営利法人に関する話の、大きなフレームの中での論点整理をしたいと考えております。できましたら、最後は6月の21日を考えてますけど、この締めのあたりで、論点整理といった形で、まあそんな大部なものにならないと思いますが、この二つのテーマにつきまして、主要な論点を世に訴えるだけ整理してですね、出したいと考えてます。これもまあ今後の議論の成り行き次第であろうかと思います。まあ言うなれば税源移譲を踏まえて、所得税、住民税、構造的にかなり変えなきゃいけない。そのなかで、アドホックに短期的な視点から、また二つの税の本体を歪めてもしようがない。まあできるだけ中長期的な所得税、住民税のあり方を整理しながら、今回の税源移譲の問題をどう処理するか。その辺がきわめて難しいなと考えております。これはこれからの議論の成り行きで、幾つか論点は整理できようかというふうにも考えております。

そういうわけで、本格的な議論は4月12日から開始したいということで、今日は勉強会が終わったという形だけのご報告をいたしておきたいと思います。以上です。

記者

社会保障の勉強会3回で、今回でひとまず終わりですけれども、この社会保障のことについては、ひとまず何か取りまとめというか、考え方の整理とか、そういうのは特には…。

石会長

いつも税調というのは、資料集をある期間ごとにまとめております。そのなかに当然のこと入りますね、それから議事録等々まとめておりますので、われわれの勉強の成果は跡に残すと思いますが、それはまとめて、この間の「実像」把握みたいにですね、本格的な報告書みたいのを出すということは目下考えておりません。それだけ内容的に、3回であって、十分ではありませんので、その必要はないと考えてます。

記者

それから、今日は少子化対策のところなんかも議論になりましたけれども、樋口先生は、女性の働きやすい環境の整備というふうに訴えられましたが、こういう主張については、先生は個人的にはどういうふうに…。

石会長

樋口さんとは前々からいろんな議論をしておりますが、全く彼の言っている「二つの神話、一つの事実」、これは説得性に富む話だと思いますし、今後こういうことをベースにして政策論議って盛り上がっていくと思いますね。まあそういう意味で、男女共同参画会議なんていうのをベースにして、女性の積極的な社会進出が結果として出生率を高めるという議論につながっていくと思います。ただ、宮島さんが最後に言ったように、少子化対策の意味ね。少子化、人口減少でけしからん、それを直したいというほうと、それから、それはそれで受けとめて、その対策をマクロ的に構造的にどう考えるか、二つの論点をどう整理するかというのは、これからの大きな問題だと思いました。

記者

納税者番号のところなんですけれども、先ほど先生も、これから税調でどういうふうな論点整理をしていくのか、非常に難しいと…。

石会長

はい、難しいですねえ。

記者

その辺は今、昔とは違う、まあ社会情勢の変化のなかで、今こういう議論をするとしたら、さっきおっしゃっていた理由とか根拠については、どういうことが、どういうものが必要だと先生はお考えでしょうか。

石会長

ごくごく一般的にながめていて、一体、番号を何のために入れるのというのに対してね、ごく素朴な疑問に対してやっぱり答えられないとまずいと思うんですよね。何でこんな面倒なことするのと、今とどう変わるのというようなことをしっかり解答を出さなきゃいけないし、昔と違ってるのは、金融所得だけのマッチングだけではなくてですね、もうちょっと課税全体の適正化等との関連が出てきたし、それから、まあ今日、田近さんも言っていたように、やっぱり社会保障ということで税額控除云々の話にも絡めてくる話であります。まあ新しい視点からどうだという点もちゃんと整理して、だからメリットがあるよというような方向にもっていかないとまずいでしょうね。ただ、もう一つ、これはね、私自身も簡明に、説得性に富んだ形で国民の皆さんにも説明できるかということになると、もうちょっと検討は必要だと考えてます。

記者

その社会保障の観点からですね、納税者番号はどうなんだというところを国民にわかりやすく説明すると、どういうふうになるでしょうか。

石会長

例の年金一元化の事業所得捕捉という問題は、我々はかなり否定的に言っているわけですよ。だから問題は、給付としてもらうときにね、番号を使って重複がないようにする、ちゃんとその辺は不正がないように給付するといったあたりが、そもそもソーシャル・セキュリティ・ナンバーだよね、アメリカで。これがたまたまというか、それが発展して納番になったわけですから、歳入・歳出両方ともですね、この番号を使って制度、あるいは政策の執行を適正化しようという視点ですね、これは日本でも、私は生きてくると思いますよ。で、番号制度にはまあネガティブのほうとポジティブのほうと両方ある。どっちかというと、納税者番号というのはネガティブのほうになりますけどね。それをこれからどう理屈を構築していくかというあたりで、我々税調ではもっと議論が深まる必要があると思ってます。

記者

それから、今後のスケジュールの話の中で、まあ柱は所得税の抜本改革と非営利法人の課税とか寄付金控除の問題という話がありましたけれども、消費税については国会なんかで、まあ結構、今、総理も大いに議論は結構ということで何回も繰り返してですね、徐々に自民党でも勉強会を始めたりしてますけれども、税調としては、この春に消費税の議論というのはどういうふうに考えているんでしょうか。

石会長

このスケジュール表のなかにどういうテーマを入れるかということを、まだはめ込んではいないんですね。実は、これ以外に環境税だって議論しなきゃいけないかもしれない。例のあの地球温暖化対策推進大綱でいろいろ京都議定書の中身が固まってくればね。まあそういう意味で、不確定な項目も当然あり得るんでね、メインは今二つ申し上げたけど、その登場するなかで消費税という話があるのかもしれませんが、今のところですね、消費税の本格的な検討は秋以降かなと思ってるんですよ。中身、構造的なことについてはかなりもういろいろやっておりますからね、あとはどういう選択肢、どういう方向でいくかということについては、ある方向さえ固まっていけば、それほど時間をとらなくていいと思う。今、時間をまさにとらなきゃいけないのが所得税とこの非営利法人課税の問題、喫緊の問題だと思ってますんで、とりあえずそっちにまず最初、ウエートを置いたということですね。ただ、納番の話も今日で終わっているわけでございませんから、そういう話も入ってこざるを得ない。で、この十何回のなかにですね、消費税がゼロ回かどうかわかりませんけど、とりあえず今のところ、この二つを中心にやりつつ、必要性が出てくれば、環境税等々とね、同じような形で拾い上げるということはあり得るかもしれません。

記者

春にもあり得るかもしれないけど、基本的には秋からということでしょうか。

石会長

だと思いますね、消費税の本格的議論は。というように、私は頭のなかで整理しています。

記者

納番は導入年度の目途ですとか、あと、提出を義務づける資料の範囲ですとか、どの辺まで年内に煮詰まるんでしょうか。

石会長

本格的に納番云々とやったら、まさにそれこそワーキングなり小委員会なり、そういうものでもう少し詰めていかなきゃいかんでしょうね。ただ、基礎問題小委員会で少し連続的に取り上げてと。ただ、今日の議論をお聞きになってお分かりのように、納番の守備範囲というか、狙い目というか、これ随分、やっぱり変遷がありますよね。だから、それを考えますとね、例えば2年後であるとか3年後であるとかというのは、まだまだ未成熟な段階の議論ですね。したがって、そういう方向に向かって議論はするけど、結果については今の段階で成果を表に出すことは難しいと思いますね。ただ、必要性は皆さん感じられたと。もっとも必要ないと言う人もいたけど。議論しなきゃいけないと思ってます。

記者

消費税についてなんですけれども、社会保障とはリンクするんでしょうけど、所得税の抜本改革、さらには納番、これと消費税と、これはどうリンクするんでしょうか。

石会長

今日、井戸さんから、例のインボイスとの絡みが云々というのが出ましたけどね、さて、インボイスと納番あたりの議論、それから事業者番号という話が、また片やあるんですね、消費税以外の話として事業所得を踏まえてね。だから番号といっても、個人と法人と二通りあるんですよ。で、アメリカも現に二つあるわけですね。だから、その辺もまだ全体像がはっきりしてなくて、私自身も頭の整理ついてないんですが、それが消費税絡みでどう絡めて議論するかというのは、今のところちょっと予想がしにくいですね。ただ、事業者にちゃんと売上・仕入、捕捉する。そして結果として所得が出てくるとか、付加価値が出てくるという話のなかで、なんかそれを積算するなかで、その番号というのが生きてくるのかどうか。ただ、これについてはまたアレルギーがあるでしょうしねえ、これ、非常に難しい問題です。したがって、今の段階で消費税議論と納番を直につなげると議論は難しかろうと思います。

(以上)