第26回基礎問題小委員会 議事録
平成16年11月9日開催
〇委員
では、始めさせていただきます。
今日は特に、主要な税が終わったあと、再度、個人所得課税と法人課税を取り上げたいと思っています。一つには、三位一体関係の問題もあるし、定率減税の話ももう一つまとめておいたほうがいいだろうということでございます。そこで、まず個人所得課税をひとわたりやったあとで法人課税に移りたい、このように考えております。
それでは最初に、国と地方の個人所得課税、総務省と財務省が一体化してまとめてくれた資料がございますので、これについて税制一課長から、三位一体もあわせてご説明いただいて、それから、住基番号、住基ネットの活用状況につきまして、この間、質問も出ましたので、総務省の市町村税課長から、それを改めて討議に取り上げていただく。これが終わったあとで議論をしたい、このように考えております。
では、税制第一課長、お願いします。
〇事務局
「基礎小26-1」という資料でございます。「個人所得課税(国・地方) の課題」、総務省と手に手を取ってつくった資料でございます。内容的には定率減税と税源移譲でございます。
まず、前半の定率減税、1ページでございます。これは、何回かご覧いただいている資料ですが、「小渕内閣による恒久的減税の一環として」ということで、切り口としては景気対策。これは後ほど見ていただきますが、法律の文言を借りれば、現下の著しく停滞した経済活動--日本が世界恐慌の引き金になるのではないかという認識のもとに導入した制度でございます。また、そのときの議論として、個人所得課税の抜本的見直しまでの間の特例であると。具体的には、いろいろ課税計算をした最後の段階で、所得税であれば税額の20%、頭打ちを25万円、個人住民税であれば所得割額の15%、頭打ちを4万円、それぞれ差し引く。その減収額が右上に出ておりますが、所得税で2.5兆円、個人住民税で8,000億円、このようになっているわけです。
次の2ページでございます。具体的にどのような減税になっているかということで、これも前回見ていただきましたが、給与収入ごとに、年額ベースで、かつ国と地方、所得税・個人住民税を足した額、(a)-(b)の欄が定率減税による減税額でございます。前々回、委員の先生から、どれくらいの減税額が、どれくらいのかたまりの人数の納税者に回っているのかというご質問がございました。国税庁の統計から粗っぽく推計いたしますと、給与所得者の場合ですが、所得税ベースで申しまして、年額2万円の減税を受けている人--これは非納税者、税金を収めていないので定率減税がないという方ですが、そういった方も含めますと、全体の40数%。約二千数百万の方が年額2万円まででございます。年額4万円といたしますと、全体の70%、4,000万人弱の方が4万円まで。ざくっと申しますと、月額2,000円とか3,000円とか、そういった可処分所得の増加になっているということでございます。
減税を行いましたときの法律、3ページが国税分、4ページが地方税ですが、先ほど言及いたしました、法律上、「現下の著しく停滞した経済活動の回復に資するため」、おしりから3行目、「抜本的な見直しを行うまでの間」、このように規定されております。
4ページ、同文で、地方税についても記されてございます。
これにつきましては累々政府税調でもご議論賜っておりまして、5ページでございます。平成14年の「基本方針」の中で恒久的な減税についての記載がございます。アンダーラインの下のところ、「経済情勢を見極めつつ、廃止していく必要があろう」、このように書いてございます。また、その下の、昨年、15年の中期答申におきましても、中ほどでございますが、「継続している定率減税についても、経済情勢を見極めつつ、廃止していく必要があることを示した」ということで、一貫した立場を政府税調としてはとっていただいているわけでございます。
次の6ページです。これは、昨年末にとりまとめられました、平成16年度税制改正の与党の大綱でございます。今後数年間の税制改革についての道筋を記載した文章でございます。アンダーライン部分、2のところで申しますと、「平成17年度及び18年度において、わが国経済社会の動向を踏まえつつ、いわゆる恒久的減税(定率減税)の縮減、廃止とあわせ、三位一体改革の中で、国・地方を通じた個人所得課税の抜本的見直しを行う」。さらに3のところで言うと、「国と地方のいわゆる三位一体改革の一環として、平成18年度までに所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施する」、このように書いてございます。
この大綱の文章、定率減税、三位一体、税源移譲、さらには、抜本的見直し、年金財源、いろいろな要素が書き込まれておりまして、谷垣大臣の言葉をかりれば連立方程式ということになるわけですが、そのあたりを我々なりに若干整理いたしますと、次のようになると思います。
まず、後ほどご説明する三位一体でございます。今月、その全体像をまとめなければということで、現在、補助金改革等につきまして、関係各方面で、文字どおり活発なというか、精力的なご議論が現在行われているところでございます。簡単に言えば、これまでもやっているわけですが、17年度と18年度で現在議論している三位一体を完成したいということで頑張っているわけです。
そこで、税のほうはと申しますと、個人所得課税の抜本的見直しと併せまして、言いかえれば、所得税から個人住民税への税源の移譲を行うということになるわけですが、毎年毎年、立て続けてちょこちょこと抜本的見直しを行うわけにもなかなかいきませんので、この抜本的見直し、すなわち本格的な税源移譲自体は、18年度税制改正において一度にすっきりと実施するというのが自然な流れになるのかもしれません。
他方、目を定率減税のほうに向けていただきますと、先ほど申しましたように「抜本的見直しまでの間の措置」というふうになっております。さらに税源移譲、これを、所得税・個人住民税の本来的な姿、恒久措置として行う必要があるということもございまして、現行の定率減税は18年度までに廃止をする必要があるという考え方が出てきております。しからば、その前段階、18年度の前の段階としての17年度、今、ご審議いただいているわけですが、これがどうなるかということになりますと、18年度に一度に定率減税を廃止してしまうことが経済全体にどのような影響を与えるのか。経済との関係はすぐあとにご説明いたしますが、経済との関係でむしろ段階的な取組みが適当ではないか。党大綱の言葉をかりれば、縮減。これが17年度の課題になっているわけでございます。小泉総理も国会等の答弁で、段階的な取組みも考えられるのではないか、という答弁をされております。
定率減税の縮減・廃止、この結果として出てくる増収額、これをどう使うか。これは税のあり方の問題というよりは、予算の問題ということになるわけですが、党大綱では、先ほどさっと見ていただきましたが、年金財源のことに言及されているということでございます。
これが、我々なりの連立方程式の若干の整理でございます。
次の7ページでございます。経済との関係ですが、その論点を大まかに整理いたしますと、3つにできるかと。1つ目が、7ページの上半分でございますが、定率減税が導入された平成11年の状況との比較。2つ目が、足元ないし当面の経済状況。3つ目が、中期的な経済運営のあり方、大まかに分けるとこの3つになろうかと思います。
最初の論点ですが、7ページの上半分を見ていただきます。平成11年当時、世界恐慌の引き金になるのではないかとさえ言われた状況、少なくともそういう状況と比べれば、かなり好転しているということが言える。このこと自体にはあまり異を唱える方はいらっしゃらないようでございます。
次に、2つ目でございます。足元、当面の経済でございます。7ページの下に、「その他考慮すべき今後の諸状況」と書いてございますが、例えば、今後の経済状況、経済の先行き、こういうこともございます。これにつきましては、例えばアメリカの経済とか、中国、原油、こういったことで懸念を示す方もかなりおられます。確かに一般的に申しまして、今年の後半から来年の前半にかけまして、IT関係をはじめとしていわゆる生産サイドで在庫調整が行われる、こういったことを要素として、調整期というか、踊り場、これを予測する向きが一般的ではないかと思います。近々、7-9のQEが出ますが、今年の後半から来年の前半、この辺が踊り場。
その先ということになるわけですが、一方、税制でございます。減税の場合は、機動的な対応が必要であるということで、場合によっては、法律が通ったあとに遡及的に適用ということもあるわけですが、負担増となる場合は、普通、法律が通ったあとに始まる暦年から--所得課税は暦年課税ですので、17年度改正で措置いたしましても、暦年18年、18年1月からの適用、こういうことになるわけでございます。このあたりの時系列的な関係をどのように考えるかという問題が、当面の経済状況との関係では言えるかと思います。
3つ目、中長期的な話でございます。現在、家計消費は300兆円オーダーになっております。可処分所得、これを左右するのは税だけではございませんで、ほかの要素も大きくかかっております。7ページの下半分の諸項目で申しますと、雇用・所得、こういった点がございます。労働分配率、これはここ数年、ずっと調整過程、いわゆる下がってきたわけですが、それもようやく一段落したかなと。マクロ的に申しますと、給料の減少の一部を減税で補ってきた、こういうことも言えるかもしれません。
さらに、社会保障の関係ですが、保険料の引上げが行われまして、当面、家計への負担としては3,000億、4,000億円オーダー。これが毎年毎年、負担増が見込まれます。ただ、給付のほうは受給者が増えるということもございまして、毎年1兆円を超えるスピードで増加していく。これはこれとして、制度として由々しき問題ではあるわけですが、マクロ経済的には全体として可処分所得の増加に寄与しているということでございます。300兆円規模の個人消費に対しまして、伝統的、コンベンショナルないわゆるケインズ政策、2兆、3兆といった減税、これがどのような意味を持ち得るのか。
他方で、財政赤字と長期金利といった問題も今や重要になってきているというご指摘もございます。この辺につきましては、専門の先生方にもご論議いただければと思っております。
ちなみに、次の8ページでございますが、所得課税減税が政策ターゲットとしております消費の動向です。平成11年からプロットしたものですが、大まかに申し上げれば、企業の設備投資とは異なりまして、大きくバーンとブーストもしなければ、大きなドカッというブランジもない、こういう傾向が伺えるわけでございます。
こうした経済の関係につきましては、経済財政諮問会議など、それを専門とするというか、責任を持つところで、今後、17年度の経済見通し、さらにはそれ以降の展望、これを分析する際に検討が行われることになります。
以上が定率減税でございます。
次に、三位一体、税源移譲でございます。9ページです。先ほど申し上げましたように、18年度までに今議論している三位一体を完成させるということで、現在、各方面での議論が行われている。税のほうは、本格的な税源移譲の具体化。これは18年度改正でということになるのであれば、現在ご論議いただいております17年度改正との関係では、時間的な余裕があるということも言えます。これは来年、年が明けてから、個人所得課税の抜本的見直しのご論議の中でじっくりご論議いただくことになろうかと思います。逆に申しますと、税源移譲のあり方については、基本的な考え方はすでに政府税調でもご議論いただいている。
9ページは昨年の年度答申でございますが、下線部のところをさっと目で追っていただきたいと思います。「個人住民税が応益性や自主性の要請に最も合致している。今後、所得割の税率のフラット化、均等割の充実といった改革を進めていく。一方、個人所得課税に求められる所得再分配機能、これは国の所得税が担うべきである」と、役割分担という指摘がございます。
それを受けて、中略の下、「税源移譲を進めるにあたっては」ということで、「あるべき個人所得課税改革の姿について抜本的な検討を加え、成案を得た上で、納税者・源泉徴収義務者の理解も得ながら改革を進めていかねばならない」。このように書いてあるわけでございます。
今申しましたように、時間的余裕がある、さらに、基本的な考え方をすでにお示しいただいているということで、あとは我々税制当局による具体的な制度設計ということになるわけです。繰り返しになりますが、来年、年が明けてからじっくりご論議いただけるかと思います。
今日はその予告編だけになるわけですが、10ページ、これは先ほども申し上げた、フラット化の議論等が閣議決定でもされている。これは「骨太2004」でございます。
11ページ、現行の税率構造。それぞれにどれぐらいの人数がおられるか。国税ベースで書いてございますが、10%に約8割、3,000万人以上が10%ブラケット、その上に600万人弱の20%、30%に100万人弱。一番下のところ、課税最低限が個人住民税のほうが低いものですから、所得税を払っておられず住民税だけを払っておられる方が300万人ほどいらっしゃる、こういう現況にあるわけです。
その上で、次の12ページでございます。税源移譲にあたっての基本的考え方ということで、3つ書いてございます。所得税法及び地方税法本則の改正によりまして、所得税から個人住民税へ恒久措置として〇兆円--「骨太」では「3兆円を目指す」となっているわけですが、この本格的な税源移譲を実施する。その際、役割分担を明確化する、所得税は所得再分配、個人住民税は応益性・偏在度の縮小といったところからフラット化を目指す。個々の納税者の負担の変動、これは、個人住民税が増えて所得税が減るという方がおられるわけですが、個々の納税者の負担につきましても、できるだけあまり変わらないようにしたほうがいいであろうと。さらに3つ目、全体として「あるべき税制」、これは累々政府税制調査会でもご議論いただいております、この方向性と整合的な姿を確保しなければいけないというふうに考えているわけです。
具体的には、下の税率の段階図がございますが、現在、国税は10、20、30、37の4段階に、黒い実線で書いてございます。個人住民税は5、10、13の3段階。これがフラット化ということで、3兆円を目指すということを前提にいたしますと、10%のフラットという姿になるわけでございます。低所得部分については、5から10に個人住民税の税率が上がる、負担増になる。所得税のほうはそれに合わせて負担減をしなければいけない。高所得部分、これは個人住民税が13%から10%に下がる。ここについては所得税は負担増の改正をする、このような姿になるわけでございます。
具体的には13ページに羅列してございますが、例えば所得税、先ほどの低所得者部分で言いますと、現在、最低税率が10%になるわけですが、税源移譲のために特別にそれよりも低い税率ブラケットを設定することも検討しなければいけないかなと、このように考えているわけでございます。具体的な制度設計というのはこれから議論を深めていただく、このようなことであろうかと思います。
以上でございます。
〇委員
市町村税課長、住基番号をご説明ください。
〇事務局
それでは、お手元の資料、縦長の「三位一体改革の経緯」、こちらから説明させていただきます。
1ページをめくっていただきまして、そもそも三位一体改革というのはどこから来ているかということでございます。実は平成5年あたりから、地方分権をどうやって進めるかということで国会で議論がございまして、地方分権推進法あるいは地方分権一括法といった法律の中で、国と地方の役割分担、地方分権というものが進められてきた経緯がございます。分権の結果として、権限の問題を整理したあと、では財源の問題をどうするかということで現在の三位一体改革になっているという経緯でございます。
次に、3ページをご覧いただきますと、「骨太2004」でございます。その真ん中あたりに、「そのため、税源移譲は概ね3兆円規模を目指す。その前提として地方公共団体に対して、国庫補助負担金改革の具体案を取りまとめるよう要請し、これを踏まえ検討する」ということが閣議決定されております。
4ページが、その後の状況でございます。閣議決定を受けまして、地方6団体が補助金の改革案をまとめております。これを総理に提出するということでございました。しかしながら、この案につきまして、中央省庁のほうではいろいろな意見があるということで、国と地方の協議の場を4回にわたり開催した。その後、各省の意見が提出されておりますが、報道等されていますように、規模についても内容についても、地方6団体の意見とはまだ差があるということで、現在、閣僚レベル等で議論が行われているのが三位一体の改革に関する現状です。
引き続きまして、住基の関係です。「基礎小26-3」。いただきました宿題は、住基がどの程度浸透しているのか、利用のメリットは何か。それから会長から、これを金融番号に使う場合にどの程度難しい問題なのかという宿題をいただいております。
1ページをご覧いただきますと、住民基本台帳ネットワークシステムということで、このシステムは、各種行政の基礎である居住関係を公証する、住民基本台帳をネットワーク化するという趣旨で、14年8月からスタートしたシステムでございます。
2ページをご覧いただきますと、システムのイメージが書いておりまして、これは、もともと市町村が持っていた住基システムをコミュニケーションサーバを通じてネットワーク化するものです。よく、このネットワークでいろいろな個人情報が流れているのではないかという誤解もございますが、流れているのは原則として、いわゆる本人確認情報で、氏名・住所等の4情報と住民票コード、こういった情報のみでございます。
3ページをご覧いただきますと、これが現在どのような状況にあるかということです。15年4月から、住民票の写しを、従来、いろいろな手続きで要求しておりましたが、これが不要となっております。例えばパスポートの交付申請については、住民票の写しなしでネット上で確認するということになっておりますし、恩給の受給に関しては、従来、市町村長の認印が要ったのがこれも不要になっております。
さらに進んだ使われ方として、16年1月からは、公的個人認証という、例えばインターネットでいろいろな行政手続ができることの証明にも活用されておりまして、右下の四角ですが、例えば婚姻届までできる、あるいは所得税の確定申告にも使われるといったような状況で、相当いろいろな手続きに活用することが可能となっています。
4ページは、最近のトピックでございます。いわゆる行政監察と昔言っておりましたが、行政評価と今は言っております。これで年金の関係の行政評価を行いまして、住基ネットに関連した勧告が行われております。
5ページをご覧いただきますと、現在、年金については、年金番号という番号を使ってデータベースが構築されているわけですが、住民基本台帳ネットワークを活用することによって、非常に合理化が図れるというのが勧告の趣旨です。現在、1号被保険者について、未加入の人をどうやって把握するかということが課題となっておりましたが、例えば住民基本台帳ネットワーク、これはすべての国民が登録されているわけですので、これと年金のシステムとを照合することにより第1号未加入者が把握できるということでございます。
それから年金受給者、年金をもらっている方。これは、仮に死亡されてもそれが把握できなければ年金を払い続ける、あとから返してもらうということが多く発生していたわけですが、それを防ぐために郵便で生存確認をやっていた。これについても、住基ネットから本人確認情報の提供を受けることによって、こういった手続きをすべて廃止できるのではないかといったような行政勧告が出まして、18年度を目途に実施する方向で検討されております。
それから、総会で、兵庫県の事例について言及がありましたが、実は住基ネットのシステムは、法律とは別に条例でいろいろなことに活用できる制度になっております。ある委員がおっしゃっていたのが7ページでございます。兵庫県では、今年の7月から税務に住基ネットを活用しておりまして、この網かけの部分でございます。個人事業税その他の住所確認につきまして、住基ネットのシステムを使っている。従来は納税義務者の住所を市役所で確認していた、これを住基ネットを利用することによって瞬時に確認できるようになった。従来は、納入通知書を送っても宛先で数万通返ってきた。こういうことが住基を活用することによってなくなったということで、合理化が図られているということでございます。
9ページをご覧いただきたいと思います。それでは、こういった住基を金融番号とどういうふうに考えるのかということです。まずは、金融番号制度に住基ネットを活用した場合に考えられる効果としまして、例えば、確実な本人確認で二重付番が防止できる。付番したあと、住所等の異動情報の把握が確実かつ簡便にできるということです。ここで、活用するということに2通りあるということです。
1つ目は、住基ネットを本人確認や住所異動の確認に利用する。これは、先ほど申しました一般の行政手続と同じような活用の仕方をする。これにつきましては、住基法の別表にいろいろな手続きが列挙してございますので、そこに追加するという改正でございます。
2つ目は、住民票コードをそのまま金融番号として使う場合です。この場合は、1の別表の改正だけではなくて、住民票コードの民間利用を制限している規定というのがございまして、例えば金融機関が番号の告知を求めることは現在の住基法では禁止されています。したがいまして、1のケースと2のケースでは法律改正の中身が性格的に相当違ってくるということです。いずれにしても法律改正ですので、法律改正をやればできるではないかというご議論もあろうかと思いますが、最後、10ページでございます。
この法律を導入するときに、将来の利用の仕方についてやはり国会でいろいろなご議論がございました。上は総理答弁でございますが、「法改正の際には慎重かつ適切に」、ごく当然のことですが、そのような答え方。自治大臣答弁では、ずばり納番との関係を聞かれております。その答弁は、アンダーラインが引いてあります、「いわば全くその可能性をゼロだと言い切ってしまうのはいかがなものかとは思いますが、しかし、断定的に納番への第一歩であるという位置づけにはならない」。最後、「納番制度導入をぜひというところをきちんと踏まえた議論がまず行われて、それから後の話になるのではないか」ということでして、前のページのIのような改正とIIのような改正、実際の改正のハードルはIIのほうが相当高いということでございますので、我々としても、Iのような一般の行政手続きの活用の仕方が望ましいのではないかというふうに思っております。
以上です。
〇委員
ありがとうございました。
今、お二人の課長から、3つの大きなテーマについてのご説明を受けました。定率減税、三位一体による税源移譲、住基番号。今から50~60分、時間をとりましてこれについて質疑をして、基礎小として、あるいは税調としてどういう方向で答申を書くか。ただ、定率は今年の問題ですが、住基とか番号はもう少し時間があるかもしれません。そういうことを頭に入れていろいろご議論いただけたらと思います。
3つ一緒でいいと思います。一つひとつというのも煩瑣でございますから、どこの問題でもいい。ただ、一つ問題が出たらそれをフォローしていただくほうが議論の仕方としてはやりいいかなと思っていますので、ご留意いただけたらと思います。ひと段落つけば、また新しいテーマでもいいかと思いますが、そうはいってもこだわらずやりましょう。
どうぞ、どなたからでも結構ですから、ご発言ください。
〇委員
定率減税の縮小・廃止の問題について今ご説明があったのは、一つは、定率減税を見直す場合の要件として、景気の問題と所得税の抜本改革、この2つがあるわけですけれども、その景気について今まで基礎小でも議論があったように思います。今の税制一課長のお話では非常に明るい見通しが示されたわけですけれども、もうちょっと専門的な方もいらっしゃるわけですから、その辺をクリアにしておくのが必要なのではないか。
もう一つは、今のご説明では17年度に関しては縮小だということですから、18年1-3月分ですよね。その分がどのくらいの規模になるのかということ。それは質問ですが、この2点をお願いします。
〇委員
後半はまだわからないでしょう、先のことですから。
ただ、税制一課長、先の見通しで何か。決め打ち的なことは言えないにしても。
〇事務局
これは、専門の先生方がおられるのでお任せ申し上げたいと思いますが、先ほど申し上げたのは、今、足元16年の後半から17年前半にかけて、一定の調整時期がある。そのあとのことは、統一した見解を政府としてまだ示しておりません。
それから、増収額ですが、今、委員がおっしゃったように、17年度改正で仮に措置をする。例えば半分にすると。国の場合、2.5兆円ですから、その半分の1.2 ~1.3兆円ですが、これが始まるのが18年の1月から、1、2、3カ月分。実はボーナス月は6月と12月ですから、1-3月にはこれが入ってないということもございます。全体の6分の1くらいしか--期間で言えば4分の1ですが--効かない。ざっと言うと、17年度自体への影響は2,000億円という格好になります。個人住民税は18年の6月の賦課決定からスタートする、さらにそのあとについていく、こういう格好になっております。
〇委員
まだ1年数カ月後の話ですから、踊り場があることくらいまでは大体のエコノミストは読んでいるかもしれませんが、そのあと、踊り場で下におりるのか、もうちょっと上に行くのか、わからんですね。それはそれでこれから我々はどういう対応をしていくか。
どうぞ。
〇委員
その関連でお聞きしたいのですが、踊り場か、あるいはこのまま下へ行ってしまうのかということですが、景気を見る指標というのはいろいろありまして、一番参考になる指標というのは、内閣府で出している景気動向指数の特に「一致」ですね。先行、一致、遅行とありますけれども、一致が足元の景気を見るのに一番適した指標だと思うのですが、これが8月、9月と2カ月連続で50%を割っているわけです。50%割れが3カ月続くと、景気後退が起きる可能性が極めて強いというのが過去のこれまでの見方なわけですが、この辺を税制一課長はどういうふうにご覧になっているのか、ちょっとご意見をお聞かせ願いたいと思います。
〇委員
企画庁ではないから、いろいろあれだと思いますけど。今、景気の先行きを議論しても私はあまり生産的ではないと思っているのです、先の話ですから。それをできる体制にしておいて、いざというときに……。まさに来年の今ごろになると、今、委員がおっしゃったように、ディフュージョンインデックスあたりがもっと確定してくる、あるいは、数カ月前のGDPの四半期が出てくるとか、いろいろ出てきます。そこの議論だし、そこでどうこうと書き込まなくても、一たん法律にしておいてもすぐ廃案なんて昔あった話だから、そのときにやればいいのだろうと思いますけれども、それも含めて、どうぞ。何か異論ありますか。
〇委員
今の会長のお話とだぶると思うのですが、増税とか特別の減税をやめるとかいう話は、必ず常に景気に悪い影響を与えるわけです。それによって景気にいい影響が及ぶことはないわけですから、どの段階でも景気に対してマイナスなわけです。もし、増税とか減税をやめるということが本当にその国家・国民のために必要な状況にあれば、明らかに景気に悪い影響を与える場合にはやめる、右か左かわからないときにはやる、ということではないかと思うのです。少しでも景気の足を引っ張ったらいけないということであれば、これは永遠にできないと思います。
だから、景気の問題は非常に大切な要素だと思いますけれども、年に1回しか税制改正の機会はないわけですから、そのときの議論として、あまり短期の話を考えて、やる、やらないを判断するのは誤りであって、場合によっては、増税と言っていても、緊急にやめればいいという会長のようなお考えで進んだほうがよろしいのではないかと私は思います。
〇委員
ご参考までに、今、財政制度等審議会も同じような議論をしております。まさに今の委員が言ったような方向で、歳出カット、増税をやるときにはマイナスになるけれども、ケインズ的効果で腰がくだけるのではなくて、特別委員がよく説明してくれましたが、非ケインズ的効果、つまり財政破綻を回避するとか、国民の財政に対する不安を除くことによって、かえっていい効果も財政の再建に出てくるという点に重きを置いて、思い切ってやろうというような形で、財政出動等にはもうウエートを置かなくてもいいのではないか、くらいまで議論が進んでいるように思いましたけれども。財政審でいろいろやられた方もいらっしゃいますから、そういうことで歩調を合わせるかどうか、その専門家の方から、その辺を整理して。
〇委員
景気に対しては今指摘されたように、たしかに通常であれば、税負担が増えれば可処分所得は減りますから、消費にはマイナスの影響が出てくるわけですけれども、問題はその程度ですよね。2.5兆円規模の増税がどのくらい消費を抑制して、それがスパイラル的に景気の底割れを招くほどの危険な状況にマクロ経済を陥れる可能性があるのか、そこだと思うんですね。
90年代以降の日本のマクロの消費動向と、減税とか増税を統計的にいろいろと見ていきますと、例えば、90年代後半に商品券3万円を一時的にばらまいたときもありました。あれがどのくらい消費を刺激したかというのも、いろいろ計量的な効果はあるのですけれども、結果としてはほとんど消費を刺激しなかったというのが計量的には出ているわけです。一時的に減税したからといって必ずしも単純に消費が増えるわけではない。逆に言うと、一時的に増税してもそう簡単に消費は減らない。その大きな理由は、先ほど会長が言われたように、将来の財政不安なり社会保障不安が同時に起きているときには、一時的にお金が手元にあったからといって単純に家計が反応するわけではない。
その一つのデータが、今日出てきた資料ですと、8ページのところですが、消費が時間を通じてほぼ安定的に推移していますので……。これは、いろいろなショックが起きたときに、家計レベルで言うと、そう簡単に毎年毎年、あるいは毎期毎期の消費をそんなに変更させないように調整するほうがより合理的だと考えている。そういう具合に見えるわけです。逆に言うと、今、多少増税をしても、いずれ財政赤字を考えれば将来増税があるわけですから、今増税することは将来の増税要因が少なくなるという意味で、恒常的なレベルで見るとそれほど増税になっていないと考えると、家計の消費はそんなに冷えないということだろうと思います。
それは、相当合理的な家計なり、財政赤字を心配している家計が前提になっているわけですけれども、そうでない人ももちろんいるわけですが、マクロ全体で見ると、それほど極端に増税したからといって消費が減るということは、普通の経済状況では考えられない。今の経済状況というのは、7ページに出ているように、90年代の後半に比べるとはるかに普通の経済状況に近づいている。あるいは普通以上に景気はいいかもしれませんが、とにかく、それほど民間家計が心配してせっせと貯蓄をしているという状況ではないわけです。その意味では、景気対策ということを考え過ぎて、必要な税制上の対応をあまりやらないのはまずいのではないかと思います。
ついでに言いますと、景気対策に関しては、あまり裁量的に税制自体を動かしてそれで手当するというよりは、いわゆる税のビルトインスタビライザー、累進的な税制自体が持つ安定的な効果のほうを活用する形にとどめるほうが、景気対策としてもすぐ効きますし、意味がある。景気が悪くなってから税制を動かして何とかしますと、それから2、3年のラグもありますから、本当に景気が悪いときにちゃんと税制でも手当ができるかどうか。これは、昔から裁量的な政策の大きな問題点として指摘されているところですから、そういうところも考え合わせますと、裁量的な税率を動かすこと自体の問題を景気と絡めて議論しないで、必要な税制上の改革はきちんと、あるいは粛々とやるというスタンスのほうがいいのではないかと思います。
〇委員
ここを集中的に審議したほうがいいと思いますので、定率減税と景気動向をどう判断するか、ご意見ございますか。どうぞ。
〇委員
増税論議をやるときに、大小取り混ぜていろいろなケースがあり得るけれども、いつも出てくる、それをブロックするというか、警戒するというか、利用条件をつけるというのは2つなんですよね。1つは、景気。今度のことについては皆さんほとんど合意ができ上がっているのであって、そのことを二人の先生方が確認されたので、私もそうだと思うんですね。
もう一つは、所得税のことに直接結びつけるのはどうかと思うけれども、歳出を何とかしないうちにこういうことを急いでやるのはけしからんという話が必ず出てくるんですよ。我々はここのところ数年間、税調答申で、税調としては、財制審、財務省、しっかり歳出を削減せいよ、でなければこんな話はできないよ、ということを終始一貫言ってきた。それは一つの言い訳でもあったけれども、事実でもあったんですね。
しかし、今の財務省、財制審の雰囲気を見ていると、やっと本音が全部表に出て議論ができるような状況になったからああいう議論をやっていると思うけれども、当たり前のことを当たり前に言えるような世の中にやっとなったんですよ。結構だと思いますけどね。ただ、問題は、交付金、交付税の問題が絡んでいる。当然のことながら、やらなきゃいかんことはやらなきゃいかんのですよ、程度問題はあるけどね。
今度のことについては、来年の今ごろになって景気が急降下して、円高になって何だかんだがあって、とてもじゃないということになったらば、放り出してやめればいいんだ、しようがないから。それを共通理解としておけば、景気論の議論は、今、少なくともこの段階でやっても生産的ではない、意味があまりないのではないかという気がします。
もう一つ、先ほど財制審のことを申し上げましたが、財制審の議論を見ていると、相当腹を決めてショック療法でものを言っている、そういう時期が来たから言えるようになった、だからそろそろ言うよという覚悟が見えて、私もそう思うんですね。それだったら、前回の基礎問題小委員会である委員が、税調答申の冒頭に、何も財制審と平仄を合わせるという意味ではないけれども、これは車の両輪だから、これからは増税の時代だからしっかりせいよと。そういうふうに言葉をすぐ使うことはないけれども、気持ちとしてはそういうメッセージが伝わるようなことをきっちりイッシューを入れていく。これは、10年たってあとで考えてみると、あのときの答申のあの冒頭のせりふが、ものの考え方の転機になったんだということになりゃせんかと思うので、そういう文をつくるときにはよくよく配慮する。あとはいろいろなことを書いても何を書いても構わないけれども、そのイッシューだけは問題になるわけだから、後世。そういうことにしてもらいたいという気がするんですね。
〇委員
財制審は、歳出・歳入双方からやろうといって、歳出カット、きわめて意欲的に今議論していますが、実は歳入の増のほうは税調にお任せするというスタンスなんですね、あれは。書き込んでないんですよ。あるいは人の庭先を荒らしてはいけないという遠慮があるのかもしれませんが、私がたまたま出ていたこともあって、「これは税調にぜひお願いしたい」と、そこでまとめて言われました。そういう意味で歳入・歳出双方ということは、一種の分業体制になるのかもしれませんが、我々としてもそれなりの覚悟で議論する必要があるでしょう。
今、一つの流れが出てきておりますが、どうぞ。
〇委員
今、景気がいいといっても、いい人はいいけれども、悪い人は悪いのであって、例えば地方は景気はよくなっていない。だけど、いい人の言い分が昔と比べるとずいぶんよくなったので、平均して上にあがっているという状況だと思うのです。そうだとすると、景気のいい部分に住んでいる人は、定率減税程度の、収入が減るというか、増税があっても、何ら影響はない。景気の悪い部分に住んでいる人、景気の悪い企業に勤めている人は、もともと大した定率減税をしてもらっていないということで関係ないと思うのですが、とはいえ増税という言葉と世の中のムード、それが「おっ、増税か」という部分だけ出るのが最悪なのであって、それをどういうふうに引っ繰り返すか。
増税の裏側は安心感というものだと思うのですが、その安心感を、税調で出す必要があるのか、出せるのかというと、なかなか出せないとは思うのですが、そこのところで何がいいのか。実質的には、国債発行の実額が減る--同じ数字でなくてもいいのですけれども--ということが一つ大きいと思うのと、あと、勝手に心配している年金というのが、多少大丈夫かなと思わせることかと思います。
とはいえ、定率減税と2分の1にしたのが金額が何となく似ているもので、ちょうどあちらに補てんするということを書き込むのは非常にまずいと思うんですよ。なぜかというと、相続税・贈与税を改正して、高齢者の持っている財産を若いほうに持ってくるということをやったわけです。しかし、定率減税をやめてそれを年金に回すというのは、せっかく戻ってきた金をまた向こうに回すという理屈になるわけですから、おまえら、何をやっとるのか、ということになると思うのです。あれとこれをくっつけるというのは、実際、一緒になった金をどこで使うかということですから、同じは同じなのですが、税調のものの考え方としては、これは財政削減に充てる金ですよということを言ったほうがいいと思うのですが。
〇委員
どうぞ。
〇委員
定率減税を実施した時期と今を比べますと、構造的に日本の経済は相当変わってきていると思います。いろいろな法人企業統計とかを見ましても、日本の経済の回復を妨げる大きな重しであった過剰債務の問題が、ここ1、2年で、ミクロに見るとそれぞれ濃淡ありますけれども、マクロ的に見れば、明らかに改善してきておりますし、そういった構造問題の解消の道筋が見えてきているということではないかと思います。その意味では、導入した時期と現在では相当状況は変わってきているのではないかと思います。
歳出歳入の面で見ますと、大きなトレンドで見ると、ここ数年は、まだいろいろ批判もありますけれども、歳出の伸びのテンポがやや横ばいになってきている一方で、プライマリーバランスを回復するためには、歳入の上げがどうしても効いていないという状況で、プライマリーバランスの回復を達成していくためには、ここを考えていく時期に来ているというように思います。
それから長期金利の関係で言えば、長期的に財政規律に対する信認が確保されていることが長期金利の安定に寄与すると思いますし、そういう意味でも定率減税見直しへの道筋をつけていくことがきわめて重要だと思います。
〇委員
どうぞ。
〇委員
今、会長から、財審のほうから税の問題を投げられたという話でしたけれども、たまたま昨日、私も財審にいて、どういう議論をしていたかというと、今日、一課長から説明があった最近の経済の運営ですけれども、絵を見れば寄与率で一目瞭然で、民需が伸びてきた。これからの経済回復、あるいは景気と財政をどう考えるかという意味では、特別委員がさっき言ったことを繰り返さないとすると、根っこにあるのは、国民の不安を解消していくことに財政はウエートを置くべきだ。つまり、これ以上の財政赤字がむしろ不安材料のほうに振れていくだろう。それから、そういう財政赤字が資金の流れというのは、これから景気がよくなっていくわけですから、ここでもいろいろ議論がありましたように、どこで長期金利の上昇にはね返るかわからない。そういう意味で、国民の不安の解消、それから資金の流れ、それが思わぬところで金利の上昇にならないようにしたい、するべきだ。そういうわけで、国民やマーケットの信認--キーワードとしては、信認を高めることが景気回復に役立つのだ。そういう議論だったと思います。
では、それと税調とどう絡むのかということですけれども、そこで税を上げる、歳入を上げたら、やはりその分はきちんと財政赤字の解消に向かうんだと、逆に税調から向こうに思い切って玉を投げ返すというか、いずれにしても歳出歳入両方を改革しなければいけないわけですけれども、ここでたがを緩めてはいけない。基本的に国民に訴えるメッセージとしては、やはり今言ったようなことから、2010年初頭、2013年、14年くらいまでに一般政府でプライマリーバランスを黒字にしていく。長期的に見て、国民所得比で50%くらいの政府で抑えていく。そこをきっちり政府は守っていくということで国民をリードしていって、それが経済を最終的には支えていくのだろう。そういう意味で税調としても、歳出のほうは、今言った2つのゴールに向けてきっちり管理しろという形で投げ返せばいいし、投げ返すべきだと思います。
〇委員
まだほかにテーマがあるので行きたいのですけれども、どうぞ。
〇委員
今までご発言された方々の意見と変わらない、大体皆さん同じご意見だというふうに私は承りましたが、10年くらいの間にプライマリーバランスを回復しなければならないという方針を立てるのであるとすれば、財制審のお話にもございましたように、歳出カットだけでこれを賄うのはなかなか難しいというのはわかりますし、歳入の増加を図ることが必要だというふうに思います。状況から言っても、税制のひずみとも言うべき定率減税を、これからいろいろな策を講じていく前に第一歩としてやることが必要なのではないかというふうに思います。
ただ、これから景気との関係として、1年、法案を出して議論していただくのには半年ちょっとということかもしれませんが、そういう段階で情勢を見て、旋回することができないわけではないではないかというのは、個人的にはそれはなかなか難しいだろうなというふうに思います。お二人の委員からもお話がございましたように、日本の経済の状況は、一番悪かった時点から見れば相当よくなってきているという感じがするわけでして、方針を決めたらそういうことでやっていくことがいいのではないかというふうに思います。
ただ一点だけ、金融の世界に身を置く者といたしまして、また、私は日銀の参与もやっているものですから、金融政策との関係がおそらく議論になってくるのではないか。日銀は、低金利政策を物価が安定的にゼロを上回るようになるまで続けるんだ、こういうことでやっておられるわけですけれども、財政と日銀の金融政策との関係、バランスとでも言いますか、この問題はたぶんあるのではないかというふうに思います。
〇委員
どうぞ。
〇委員
先ほどの委員が言われたことに私も全面的に賛成ですけれども、経済が回復してきたのであれば、定率減税はそのためにやったのですから、それはもとに戻しますというのは一つ理屈はあると思うのですが、国民から言うと定率減税というのあまり実感がないと思うんですよ、年末調整でもやられていますから。申告している人は別ですけれども。それが実際にここで税金が上がってくると、それは増税としかとらえられないと思うので、その国民に与える感覚というのは非常に重要だと思うのです。
この10月からですか、国民年金が上がりました。私も、1,000円未満かな、ちょっと上がりましたけれども、要するにそれだけ所得が減るわけです。先ほど一課長さんから、月々平均3,000円くらいですというお話がありました。それは500万円の人はそうかもしれないけれども、平均の人は600万円近いのではないかと思うんですよ。そうすると6、7万円ですから、5,000円とかそういう金額になるわけで、それは相当なあれですから、やはりそこのところは注意してやらなければいけないと思います。これ、2年でやると書いてありますけれども、なぜ2年でなければいけないのか。私は、もうちょっと長く見られないのか、3年とか、4年とか、5年とか、なるたけ国民が大きなダメージを受けずにもとに復するという方向性があってもいいのではないかと思います。
〇委員
ただ、抜本見直し、税源移譲と絡めて議論しているわけですよ。それまでにやめなければいけないと言ってるわけだから、導入のときに。それをまた無視してやってもいいとは思いますけどね。
〇委員
しかし、それは変えればいいのではないでしょうか。もう縛られているわけですか。
〇委員
今日の情報を見れば、縛られているんじゃないですか。
どうぞ、続けてください。
〇委員
もう一つは、財政のほうの努力というのをしないと、定率減税もそうですけれども、プライマリーバランスの回復といっても相当大きな影響を与えると思います。この間お聞きしたら、政策経費40兆円の中で裁量経費が7兆円もあるという話です。そういう話を国民が聞いたら、なぜその部分は切れないのかという話に必ずなると思いますね。それは非常に重要なことだと思います。
〇委員
どうぞ。
〇委員
今の国民年金が1,000円上がったとかいう話というのは、それで負担が大きくなるという言い方というのは、メディアが、不安をあおるときに、時間がないときにそういう言い方をするんですね。時間がないというのは、わりと短絡的に大変だ、大変だというときにそういう言い方をする。私は、このくらいの減税の問題というか、負担の問題というのは、メディアはむしろあおりすぎると思います。ですから、先ほどの委員が言われたように、国債の発行を減らすんだとか、そういう話し方と一緒につなげてきちんと説明するということを本当はメディア自身がやるべきなんです。そういうことだけです。
〇委員
事務局で、3回か4回に分けてもというときに、最初の縛りですね。平成11年、定率減税を入れたときの第一条が絡んでくるのか絡んでこないのか、ちょっとご説明いただけますか。
〇事務局
定率減税が景気対策として導入された。今、定率減税だけの議論というよりは、三位一体の税源移譲、時代に合わせた所得税の抜本見直し、この3つを同時にやるということになっています。したがって、すでにご説明したように、税源移譲も恒久的な税制でやらざるを得ませんし、抜本改革もその一環でやるということですので、18というのは与えられたゴールだと思います。
もし、経済対策、景気の問題でいろいろ議論があるとすれば、それはまた別に経済運営の中で、その段階で必要な問題を改めて議論していただくということで、今回、我々としては、そこのところは2年間でこの問題をクリアするというのが与えられた命題だと思っております。
〇委員
今日は、大体同じ方向の議論で整理がついたと思いますので、景気を制約条件にしないで、とりあえず定率減税に踏み出す方向で議論しようというような整理で、よろしゅうございますね。
それでは、あと2つ残っているので、1つずつ片づけていきましょう。三位一体、税源移譲は、今日、決め打ち的に何か決めなければいけないというのではなくて、今後の議論のために幾つか案も出ておりますので、税制一課長の説明、あるいは市町村税課長の説明につきまして、三位一体、税源移譲に関しまして何か積極的にご議論があれば、お出しください。
〇委員
三位一体論というのは、今、我々が表面で見ているのは、中央官庁が補助金をなかなか離さない、それは理屈があってのことだけれども、そこで行き悩んでいて、総理が言うようになかなか行われない状況が目の前にあるわけですよね。ところが、事務当局のお話を聞いてみると、それが終わったあと、来年、三位一体のツケは相当部分が税源移譲に回ってくるわけで、そこについては総務省と財務省、事務当局の間では、どういうふうに裁くかということについては基本的に大きな合意ができ上がってるんですね。来年、どういう結果になるかわからないけれども、ある程度の税源移譲が行われるとして、そのときには、細部にわたる議論はあるかもしれないけれども、ルールはお互い合意されているわけだから、あんなみっともない、今、補助金でガタガタやってるようなことは起こらないのではないかと思ってるんですよね。そういうふうに考えるのは楽観的にすぎるんですかね。私が聞いてると、そう思うんだけど。
〇委員
どうですか、局長あたり、楽観的に考えていますか。
〇事務局
所得税あるいは個人住民税を含めた、いわゆる個人所得課税についてのあり方、それはすでにこの税調でも方針をお示ししていただいているわけですから、少なくとも私と自治税務局長とで醜い争いをすることは、私は、ないというふうに信じております。
〇委員
信じておりますので、よろしく。
ほかにいかがでしょうか。
〇委員
三位一体の資料を見ると、よく読めばそういうことではあるのですが、要するに、地方分権を進めるためにこれをやりますよということですが、根本的なところはそうではなくて、財政赤字縮小というか、財政再建のために何をやったらいいかということを考えたら、地方に任せたほうがいい、国は余計な金ばかり使っている自覚があるというところではないかと思うのです。効率的な小さな政府を実現するというのがポイントであって、そのためには地方分権が非常にいいんじゃないのということだとずっと思っていたのですが、そっちのほうが何となくなくなって、地方分権すればいいんだというイメージになってきているのはいけないと私は思っているんです。
税調がそこでどう絡むのかというのは難しいところはあるのですが、基本的にむだ遣いをやめるために税源移譲したり何かするということを忘れがちなので、そこのところを忘れないようにしないといけないなと思います。
〇委員
どうぞ。
〇委員
今のご意見とちょっと別な、反対ではないのですけれども。私は、地方分権の本旨というんですか、あれだけ議論してきた地方分権の議論というのを忘れてはいけないと思うんですね。お金の問題になると、ついつい、もとにある哲学のことを忘れがちであるので、私は、本当は地方分権基本法みたいなものをつくって、それのもとで三位一体のような議論をしたらよかったと思うのですけれども、だんだんだんだんお金の話になってきてしまって本来の目的が忘れられるのではないか、それがむしろ心配なのです。むだ遣いを省くという意味からいっても、地方団体が自分で税で取れば、これは、今までのように国の官庁に対してお金をくださいと言うのではなくて、住民に増税をお願いしなくてはいけないことになるわけですから、住民の監視の目も厳しくなるし、行政当局の心がけといいますか、気構えも変わってくると思うのです。
そういう意味で、地方分権の本来の趣旨を生かしながら、補助金の問題とか、地方交付税の問題とか、その他の問題を議論していくことが大切なのではないかと思うわけで、三位一体が単なる金目を合わせるという話になってしまわないように、そこを気をつけていかなくてはいけないのではないかと思っております。
〇委員
基本に戻れということですね。賛成ですね。
移譲後の住民税、所得税の姿、これは、税制一課長にお示しいただいた資料の12、13ページあたりにありますが、これについて積極的なご意見はございますか。これは今日出され、前からちょっと顔は出しておりましたけれども。
どうぞ。
〇委員
12ページの図のところで、2番目に「個々の納税者の負担を極力抑制」という制約条件が入っています。これを文字どおり制約条件として課してしまうと、住民税10%フラットにしてしまえば国税のところの調整はテクニカルの問題になってしまうわけですね。そうすると、抜本的な所得税なり住民税の改正の話とは別の次元の技術的な問題で議論せざるを得ないという形になると思うのです。
問題は、ミクロベースの納税者の負担をどの程度税源移譲の段階でその中立性を制約条件として置くのか。あまり現状を前提としますと、既得権益ですから、そこで何も変えてはいけないという形になるわけですけれども、例えば住民税の税源移譲にしても、均等割の部分をもう少しちゃんと取る、そういう形の考え方もあり得るわけで、住民税を払ってない人からもたくさん取るというのもフラット化の一つの方向になり得るわけで、住民税と所得税の個々の納税者の税負担額は、現状のままでその制約でしか考えられないという、その条件がどのくらいきついのかということをお伺いしたいと思います。
〇委員
誰もわからないと思いますが、あまり重く見てないんじゃないの。
どうぞ。
〇事務局
資料のつくり方の問題にも絡むのですが、実はこの資料は「税源移譲にあたっての基本的考え方」です。ある意味では所得税の抜本改革を同時にやりますから、所得税の抜本改革によって理論的に個々の納税者の税負担が変わってくることは当然あるわけです。それを同時にやるものですから、ここは資料のつくり方で、一応税源移譲はこういう考え方でというふうに……。逆に言うと、税源移譲の問題を純粋に考えると、これは国と地方のやりとりですから、ここは、個人の個別の納税者が税源移譲によって極端に、というのは極力避けるべきではないか。あとは、あくまでも抜本的な所得課税のあり方のほうで整理していただく。そういう意味でここは表題に「税源移譲にあたって」というふうにやや制約をつけた。そこはちょっとわかりにくかったかもしれません。
〇委員
ただ現実面において、個人ベースまで出入りが全くニュートラルというのは難しいよね。
どうぞ。
〇委員
個人ベースはそうで、考え方はこれでわかるのですが、逆に言うと、市町村なり都道府県なりが税率を自ら上下する、そういう意味での権限を持つことは前提だというふうに思いますが、それでよろしいのでしょうか。
〇事務局
税率につきましては、現在でも、標準税率は決めておりますが、上下できますので、税源移譲後にそれを禁止するということは考えておりません。
〇委員
どうぞ。
〇委員
今言われて思ったのですが、ものに書くときはしようがないかもしれませんけれども、結果としては、個々の納税者の負担の変動は極力拡大するというのは、要するに世の中変わったんだぞということを知らしめるのにいいのではないか。どこが変わったかわからないようなのではやってもしようがないというところが、日本はこの頃マイルドになってしまって、何かタラタラした日々を過ごしているというのはよくないから、結果として、ものすごくエッとびっくりするような変動を私は期待したいと思いますが。
〇委員
委員のショック療法をときどきお話を伺いますが、そういうご意見だったということですね。拝聴しておきます。
どうぞ。
〇委員
12ページのこれは、税源移譲に限った想定図ということになりますけれども、所得税の抜本改革、特に10%の最低税率のところに8割の人が入っている、それをこの際少し改善することが必要だと思うのですけれども、それと定率減税の縮小。最終的なところ、17年度に決めて18年度にしようとしている定率減税の廃止の姿と、かねて問題の抜本改革の姿、少なくともこのくらいはやりたいというものを重ね合わせたものを、ざっくりとしたものでいいのですが、どういう姿になるのかなというのを事務当局でつくっていただけると、理解が早いかなと思うのですが。
〇委員
いろいろ仮定を置けばと思いますが、税制一課長、今の宿題できますか。
〇事務局
先ほど冒頭申し上げましたように、来年まさにじっくりとやっていただかなければいけないお仕事でございまして、10通りくらいバーッと並べろと言われればいたしますけれども、今ご指摘の11ページをご覧いただきますと、現行の定率減税を取り除いたあとの姿、すなわち本体ベース、本来の姿のベースで税率構造が書いてございます。10%ブラケットに約8割いる。先ほどご指摘のとおりでございます。
実際の税源移譲にあたりましても、20%ブラケット、30%ブラケット、この踊り場の広さを若干調整いたしませんと、個人住民税の13%から10%に下がる部分、これの負担減に対応する所得税の負担増、これを出すわけにいかないということもございます。いずれにいたしましても、税源移譲の姿を書く際には、税率構造のあり方についても累々ご審議いただいておりますので、その方向の中でやってまいりたいと思います。具体案につきましてはもう少しお時間をいただければと、このように思います。
〇委員
いずれにしても、年明けから別途、この問題については集中的に議論する場があろうと思いますので、その場で、今言ったような幾つかの資料を踏まえつつ議論しましょう。2つ、定率減税減と税源移譲を組み合わせた姿形をうまくあらわしたいとは思いますけれども。
どうぞ、ほかに。関連ですか。
〇委員
初歩的なことを聞きたいのですが、所得税の税源移譲という話ですけれども、実質的に対象になっているのは、税率の刻みなどから言いますと、総合所得の対象になっている給与とかそういうものを念頭に置かれていると思うのですが、金融所得関係のものが税源移譲の中でどういう位置づけになるのか。それを私、あまりよく承知してなかったので、できればそれを。
〇事務局
もともと税源移譲の基本的な考え方が、地方の税源を充実するというのと、地方自治の本旨に従って各自治体が最終的には裁量を持つ税が望ましいということですので、やはり今の基本は、総合課税の対象である事業所得、勤労所得、市町村が個人単位で賦課決定をする分野。金融所得というのは、今、完全に分離されております。地方が勝手にやっても執行できませんので、今のところは中心はこっちに考えておりますけれども。
〇委員
どうぞ。
〇委員
税源移譲ということですから、国税の減と地方税の増とは額としてはパラレルだと思うんですね。その中で納税者個々でできるだけ公平に総負担額が変わらないようにするためには、どうしたらいいかということを考えるのだろうと思うのですが、3番目に書いてある「全体として『あるべき税制』の方向性と整合的な姿を確保」というのは、ちょっと抽象的な言い方ですけれども増税を考えているのではないかと思います。そういう理解でいいのか、どのくらいの額を考えているのか。
〇委員
でも、これは税源移譲のことのみ言ってる話ですから。
〇事務局
これは「税源移譲にあたっての考え方」ですから。税源移譲というのは、国民との間では増減税はないという世界なんですね。抜本改革で、どうしても増税するとかそういう議論は別途ありますけれども、ここでは少なくとも増減税はない。
「あるべき税制」との整合性の確保という意味は、課税最低限をどうするかという議論がありまして、これからもっと広く・薄くで下げようという流れが来ていて、「あるべき税制」もそうだというのに、逆に所得税を減税する方法として課税最低限を上げるやり方をすれば、それはあるべき方向に反していて、それはおかしいのではないか。だったら税率をやったらどうかとか、私どもとしてはそういうレベルの考えだと思っております。
〇委員
そうすると、このブラケット、段階というのは、地方税が10%になれば相当細分化されるわけですよね。それをある程度整理するとか、そういうこともこの中には含まれてくるわけですか。
〇事務局
おっしゃるとおり、次のページに書いてありますけれども、今、所得税の最低税率は10%です。仮に住民税が5%から10%になって、今の10のまま行くとすれば、10と10で20になってしまうのは、そこは考えなければいけないというのは我々も頭にあります。そこはこれから総務省と調整しながら、スムーズに税源移譲をし、かつ「あるべき税制」の流れと逆行しない形で何とか案をつくっていこうというのが、この2枚の資料で私どもがお示ししたい考え方でございます。
〇委員
まだ具体的なイメージがわきにくいけれども、3年前に我々が「あるべき税制」を打ち出して、10年、15年先にはこういう姿だと言った。その流れの中に、突然、三位一体の税源移譲と定率減税がボカッと入ってきたから、やや混乱気味なんですけれども、長い目で見て、課税ベースを広くして、雑多かつ多額な所得控除を次第に減らしていこうというのが「あるべき税制」の具体的例ですよね。
〇委員
平たい言葉で言うと、例えば3兆円なら3兆円の税源移譲があれば、今の所得税の体系で3兆円減税するために姿をどうしたらいいか、ということだということでいいですか。
〇委員
それでいいと思います。いずれにしても、「あるべき税制」のときに課税ベースを広げるときは増収になりますから、それはそれでまた別途の視点から、これに上積みしていくような格好のスキームができるのだと思いますがね。
どうぞ。
〇委員
質問というか、確認というか、いいですか。これは3兆円を前提にしていますが、今されている議論を見ていると、到底税源移譲は3兆円いかないのではないかというふうに……。
〇委員
いえ、3兆円を前提にしてませんよ。「〇兆円」です。
〇委員
ただ、これは3兆円を前提にして。
〇委員
3兆円でも、2兆8,000億円でも、2兆5,000億円でも、それはいかようにもできますよ。
〇委員
要するに、10%、フラット化をどうするかとか……。
〇委員
それはできると思います。
あと法人税が残っているので、あまりここにこだわっているわけにはいかないのですが、大体12ページのようなイメージで、かつ、もう少しいろいろな要素を入れたことは、来年度以降、議論しようということでよろしゅうございますか。
では、最後に。
〇委員
申し訳ございません。もう一点だけ質問でもあるのですけれども、「税源移譲にあたっての基本的考え方」、ここはわかりましたが、今、補助金や何かを削減して税源移譲をしようと、こういう話になっています。これは、同じ金額でいくのかどうかもわからないということのようですが、補助金をカットされて困る地方と、税源が移譲されてそれが穴埋めされるところは必ずしも一致しない。仮に同じ金額を出し入れしてもおそらく一致しないと思うのですが、ここの資源の賦存状態の変化をならすとか何とかいう議論というのは、これは出てくるのですか。これは税調の課題でも何でも……。
〇委員
それは税調の課題ではないでしょう。
どうぞ。
〇事務局
税のほうの議論としては、10%比例税率化というのは、高額所得者の部分はむしろ国のほうに返す形ですので、都市と田舎については均衡を図りながら移譲できるという、工夫がされる案ではないかというのが一つあります。
ただ、おっしゃるように、補助金の切れる額と税源移譲で増える額というのは、団体別にでこぼこがあるのは当然です。そこのところは税のほうの工夫として言えば、他の税目になりますが、例えば法人課税の分割基準などを見直すことによって、結果としてそういう縮小に寄与できないかというのが税ではありますし、あとは基本的には交付税の機能で、歳入があまり増えずに需要が増えるところというのは交付税が増えますし、その逆は交付税が減るという、交付税の基本的な機能で団体間のでこぼこが調整されるというのが基本だろうと思っています。
〇委員
トータルに誰がどこでこれをやるんですか。今おっしゃったような三位一体の最終的なでき上がりの最終調整、これは難しいと思いますよね。どこでやるんだろう……。
〇事務局
今、補助金の姿がある意味では混沌としていてわからないものですから、どういう補助金が実際にどういう形で縮減なり廃止されるのかということによって、補助金のほうの影響が全く違ってきます。あと、税のほうの議論も進むと、両方を比べて今のでこぼこがどのくらいあるかというのはいずれ見えてまいりますけれども、その段階では……。
〇委員
つまり、どこで誰がそういうことを最終的に判断するのか。
〇事務局
その段階では、当然、主計、主税なり、財政なり、我々なりで相談をして、一つの姿をきちんと示さなければいけないと思っています。
〇委員
そうですか。責任持ちますか。
では、番号のほうに移しましょう。例の住基番号の金融番号への転用移換、あるいは住基番号そのものの利用移換等について、事務局のご説明に対して、ご意見なりご質問はございますか。これももう少し時間のある話だろうとは思っていますけれども。
では、よろしゅうございますか。総会で議論すると、また問題提起があって、そこでまた議論が白熱する可能性もあるんですけど。ただ、今ご説明いただいた中で、ダイレクトに住基番号で金融課税の一元化を図ろうというご趣旨ではなくて、バックアップに使おうというような趣旨だろうと思いますので、我々の考えの方向とも合っているのではないかと思います。これは時間もございませんから、総会で一回出して、また問題提起者が出てきたところで議論を詰めていくことにいたしましょう。
では、法人税いきましょう。少し時間がなくなりましたけれども、お待たせしました。法人税の関係、ご説明ください。
〇事務局
「基礎小26-4」の資料をご覧いただきたいと思います。法人税関係につきまして、追加的、補足的なトピック、それから宿題等いただきましたので、それをまとめてご報告させていただきたいということでございます。
1ページ目、年金税制関係でございます。委員の中から、これからあるべき税制を議論する中で、取り上げられていなかったテーマとしての年金税制があるではないかと、こういうこともございまして、特に企業年金課税のことも問題意識があるというお申し越しがあったものですから、ここで資料として再整理させていただくということで取りそろえました。ご案内のとおり年金制度ですが、1階、2階の部分、公的年金で強制加入という形で基礎年金、厚生年金等ございますが、企業年金につきましては、この3階建ての部分に、いわばその上乗せという形で任意加入があるということです。
それに関します課税関係が、次の2ページでございます。真ん中あたりに企業年金、右側に確定拠出年金がございます。その欄に目を通していただきますと、まず、掛金の入口段階ですけれども、雇用主負担分、企業の負担については従業員の給与とされないということで、所得課税はされない。企業については損金に算入される形になります。本人が掛けている場合には、社会保険料控除等によりまして引き算ができるということで、入口が非課税という形に概ねなっていという形でございます。
それから、給付段階、出口段階ですけれども、年金方式という場合には、企業年金の欄について、公的年金等控除の適用があるということで控除対象になっています。一番右側の、個人年金保険と比較しますと、いずれも任意加入であるというものの、個人年金につきましては公的年金等控除のような特別な控除がないという形、ここが異なっているということでございます。いわゆる入口非課税、出口が一部課税という形でして、そこで、3、退職年金等積立金に対する1%課税という、いわゆる特別法人税を補完する形で課税を求めているのが現在の姿です。
次の3ページですが、これをイメージとした図でございます。企業が拠出いたしましたその分は損金算入、従業員に対しては非課税と今申しましたが、従業員にかかります所得税分は課税が繰り延べられていく形になっているわけです。したがいまして、年金積立金というところに拠出金がたまってまいりますが、所得税の非課税のたまりも一部入ってくるという形で運用されているわけですが、それが給付になりますと、年金という形で個々の方に給付されます。その場合には公的年金等控除の対象。こういうことでして、ちょうど真ん中あたりのたまりの部分に着目いたしまして、いわば所得税の遅延利子という考え方で1%相当の課税を求めるということで、入口、出口、運用時というところで、全体として形をつくっているというのが現状でございます。
考え方として、任意拠出という性質の企業年金でございますので、例えば、企業年金の恩恵が受けられる企業の従業員の方の場合と、そうでない場合の方とのバランスとか、そのようなものを考えながらこの制度が仕組まれてきているという経緯がございます。ただ、(注)に書いてございますように、金利の状況等、運用状況が大変悪うございますので、現在のところ、この制度は停止されています。
次のページですが、税制調査会におきまして年金税制についての整理がされた、まとまった指摘でございます。特に企業年金にかかる税制の関連で申し上げると、「企業年金等に係る税制のあり方について」ということで、「拠出・運用・給付を通じた負担の適正化に向けた検討」を中期的に求めているという形になっているわけです。公的年金等にかかる制度見直しというのはこれからなお見込まれるわけですので、特別法人税を含めて、こうした企業年金のあり方について全体としてどう適正課税をするかということが、恐らく中期的な課題になっているというような事柄であろうと思われます。これが1つ目のトピックでございます。
その次が、「組合関係」という異色のトピックをお出ししてございます。総会で、ある委員から、組合というスキームを利用した租税回避行為があるというご指摘がございまして、それに伴った具体的な事例といいますか、モデルケースといいますか、そのようなものもお示しできればということで、参考という形でご紹介させていただきたいということでございます。具体的なモデルにつきましては、国税庁の担当者から説明させていただきますけれども、その前提としての、「組合」というのはどういうことかということだけ簡単に見ていただきたいということでございます。
5ページの図ですが、民法上の組合というのはどういうものかといいますと、組合となる当事者が出資をいたしまして、ジョイント・ベンチャーみたいなものですが、それぞれ共同事業を行うことを契約することで設立されるものだということですので、組合という、一つのボディといいますか、エンティティーといいますか、そういうものがあるわけではなくて、契約があるということがまずスタートです。したがいましてそれぞれの事業といいましても、組合として事業をするというよりも、それぞれの組合員自身が事業になりますし、対外的な債権・債務の関係については組合員が直接的にその責任を負うということで、ここでは無限責任という形になっております。自分が組合に対して出している出資額を越えて責任を負っていく、という形になっているということです。
そのほかこの組合関係には、それに伴う特例が7ページ、あるいは、匿名組合というものが商法で示されてございますが、この辺はお時間ございませんので省略させていただきます。
10ページでございます。このような組合という形といいますか、契約をベースに、課税関係はどうなっているかということを示したのが10ページの表です。「事業体」というところに「民法上の組合」というふうに入れていただければよろしいわけですけれども、組合というのは単なる契約でございますので、法人としての法人課税がなされるということではなくて、出資という形でかかわっております構成員それぞれに損益が帰属する形で、それぞれ課税されていく形になりますので、納税義務者はそれぞれの構成員ということになります。
たまたま構成員が、個人であれば所得税法の適用になりますし、法人であれば法人税法の適用になるということで、それぞれが持っている自分のさまざまな事業に通じる所得、損益にプラス、この事業を通じて入ってくる損益を足し算する、入れ込む形で課税がなされるという形です。こういうメンバーに直接帰属するということですので、国内にいる居住者であれば、比較的その把握はわかりやすいわけですが、海外にそのメンバーがいるという場合には、直接に帰属するということで、なかなか課税の確保が難しいことも問題としてございまして、これをどのような形でとらえていくかということも一つ問題になる話だろうと思います。
以上を前提といたしまして、次の11ページ、12ページにつきまして、国税庁の担当者から、組合というものをベースにしたある事例をご紹介させていただきたいと思います。
〇委員
国税庁審理室長、お願いします。
〇事務局
それでは国税庁より、組合に関して執行上問題になった事案について、モデルケースを使ってご説明申し上げたいと思います。これは、航空機リースを行う組合に対し課税処分を行った事例でございます。
左側にポンチ絵がございますが、その右上に「アレンジャー」がございます。アレンジャーがこの全体のスキームを構成しているわけですけれども、アレンジャーが投資家に対して勧誘を行って出資を募る。さらに、組合に対して金融機関から借入れを行う。そして組合はその出資金及び借入金をもって航空機の購入を行う。その航空機を航空会社に対してリースを行う。そして、リース料を受け取ることになるわけです。リース期間につきましては、通常5~6年間リースを行う。そして最終的に航空機を売却する。
これに伴いまして何が起こるかと申し上げますと、右のほうに出ていますが、リース期間中については、リース料に対して金利の支払いと減価償却費がコストとしてかかってきますので、それに関して損失が生じてまいります。それが構成員課税ということで各投資家に対してつけられる。そして、5年以上たった後に航空機を売却したときに、その売却益に対しては、長期譲渡所得に当たるので2分の1の課税を行います。
これに対して国税当局としては、この組合については実体がない、契約内容等から見て、民法上の組合の成立要件である共同事業性、共同所有性を欠くということで、これは民法上の組合ではなく、利益配当契約であるということで、先ほど税制二課長から説明がございました、構成員に対して帰属させることを否認したケースでございます。現在、裁判が行われているものでございます。
具体的にどういう経済効果を生むかというのを、次のページでご説明したいと思います。12ページを見てまいりますと、前提としまして、出資で10億円、借入れ30億円により資金調達を行う。そしてある投資家が、持分10%、つまり出資を1億円行うということです。この投資家はリース事業以外に毎年1億円程度の所得がある。したがって、国・地方を合わせて限界税率50%の税率が適用されている投資家です。そしてリース期間は6年。リース料率を12.5%として、組合全体では5億円、投資家1人当たり5,000万円入る形になる。そして、借入れについてはノンリコースローン、つまり非遡及型でございますので、一定の範囲しか、組合さらに投資家に対しては責任が生じないローン。通常の場合は、借入れ分ではなくて概ね出資分に限られる責任しかないというケースがほとんどでございます。そして減価償却が定額法で、この場合、中古飛行機ですので、耐用年数6年と仮定する。そして最終的に機体が25億円で売却できた。40億円で買ったものが5年たったところで25億円で売却できた、そういう想定でございます。
リース事業の収益計算の表を見ていただきますと、大体5年間にわたりまして、リース料収入として5,000万円、組合全体では5億、投資家1人当たり5,000万円が入ってくる。一方、満期に元本を全部返すと仮定しまして、支払い利息は毎年1,500万円、アレンジャーに対する手数料を100万円払うということになりますと、キャッシュベースでは毎期3,400万円儲かるわけですけれども、減価償却費が毎期6,000万円出てくるものですので、課税上の損益としては、不動産所得として毎期2,600万円のマイナスが生ずるわけです。
2番目としまして、リース事業からの合計収入、これをキャッシュフローベースだけで見てまいりますと、毎年、キャッシュフローベースでは3,400万円入るわけですので、5年間で1億7,000万円入る。さらに売却収入について、25億円から1億円手数料を引いて24億円、さらに10分の1ですので、2億4,000万円の収入がある。出資額を回収して、さらに借入金を返済するということになりますと、1億を投資したのに対して、1,000万円だけ、利益がキャッシュフローベースで生ずることになるわけです。
一方、税効果で見てまいりますと、毎年2,600万円マイナスが立つものでございますので、5年間でこのマイナスが1億3,000万円になると、限界税率の50%を掛けますと、税の軽減効果が6,500万円生ずる。一方、最終的に航空機を売却しますと、譲渡所得が、2億4,000万円引く1億円でございますので、約1億4,000万円。さらにそれが2分の1課税ということになりますので、収入が7,000万円となる。それに対して限界税率で50%ですと、3,500万円税額がかかる。そうしますと、軽減された税額が6,500万円、最終的に3,500万円、売却時に払いますので、税効果は全体で約3,000万円の軽減効果があるわけです。つまり、1億円投資を行って実際の金目としては1,000万円しか入ってこない。一方、税額ベースで3,000万円、税の軽減効果が生まれるということで、これは、税の軽減効果がほとんどであるというような投資です。
我々が問題として持っておりますのは、本スキームは、実際のキャッシュフローベースでは投資として十分な利益が生まれないようなものであって、税効果により初めてある意味で合理性が出てくるものですので、いわば他の納税者、国家財政の犠牲のもとに、本スキームへの投資家、あるいはリース料が軽減される航空会社、本件の場合は外国の航空会社でございますし、あるいは手数料を得るアレンジャー等が裨益するようなスキームでございます。
また、契約関係等、事実関係から見て、投資家が事業に実体として参加していないものですから、そうしますと、例えば投資法人投資口、不動産でREITというのもございますけれども、そういった商品を買うのと感覚的にはほとんど変わらない。しかし、税制上の取扱いは全く異なってまいりますので、そういった他の商品との公平という意味で問題があるのではないか。
さらに、これは借入れを30億円を起こしておりますけれども、ノンリコースローンですので、これはさまざまな組み方がございますが、本件ですと、アレンジャーが交渉契約等を結んでいまして、投資家の責任を一定のところに絞るわけですけれども、借入れを行うことによってレバレッジ効果が働いて、より大きなものが買える。したがって、より大きな減価償却が生まれてくる。そういう意味で、実質的な自分のリスクが投資の範囲内に限られているにもかかわらず、投資を越えたような損失をつけられる。今回の計算例で見ますと、毎期2,600万円、損失が出ておりますので、4年目には出資額の1億円を超えるような損失が実は生まれてくるわけです。そういった意味で問題があると考えております。
こうした航空機リースを用いたスキームが特に個人向けに利用される背景としては、個人所得課税においては、ご承知のとおり、所得分類がなされておりますので、通算ができる部分がものによって限られてくると、航空機の貸付けが含まれる不動産所得は他の所得との通算が認められていること。さらに、先ほど5~6年のリース期間と申し上げましたけれども、5年以上の所有になりますと、長期譲渡所得になりますので2分の1課税という形になってくる。こうしたものを利用したスキームということでございます。
なお、本件と同様の事例につきましては、現在、11件訴訟が行われておりまして、先月28日に、6件について名古屋で地裁レベルで判決が出たわけですけれども、残念ながら国側の主張が退けられまして、納税者が勝訴しております。現在、上訴について法務当局と協議中でございます。
以上です。
〇事務局
今申し上げましたように、組合という一つのスキームを使いながらの租税回避的な行為をどう考えるか、今後の問題意識という形で持っておくべきかなという感じもいたすところでございます。
最後に、「その他」。宿題をいただいておりました法人税率の国際比較、北欧はどうかということで、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドというあたり、ここに掲げさせていただいております。
次の14ページですが、WTOの規則と内国税の関係というお話もございました。WTOにかかる規則はこの1、2、3でございまして、内国税についても適用されるという事実関係でございます。
以上でございます。
〇委員
このあと総会がございまして、あまり延長できません。お待ちの方もいらっしゃいますので、あと10分くらい、法人税関係でいろいろご議論を賜りたいと思います。
いかがでしょうか。どうぞ。
〇委員
最初の年金課税のところで一つ意見を言いたいのですけれども、特別法人税というのが17年3月31日で課税停止で、それをどうするかというのが問題の発端でしょうが、今日、ここに説明があるように、厚生年金も含めていろいろな年金があって、それが特別課税されていないのに企業年金はおかしいではないかと。それは合理的だと思うのですけれども、特別法人税を企業年金にかけるのをやめたときに、その次が最大のイッシューだと思うのですけれども、公的年金等控除をどうするか。そもそも、なぜ特別法人税をかけたかというと、課税の繰延べというか、利息に税金をかけないで、もらったときまでかけないから、その間を法人税で取るということをやってきたわけです。ある意味で、もらったときにはかけるぞということが本則になっているわけですから、そこで特別法人税だけ取って、公的年金等控除はそのまま適用というのは理が合わない。
そのかわり根っこはものすごくでかい問題で、単なる企業課税だけに負わないし、理屈から言えば、基礎年金を除くような厚生年金基金等全部に波及する問題。私の言いたいのは、これは頭を相当冷やして考えて、特別法人税を取るということは、1%というのは非現実的だし、おそらくそれを変える。公的年金等控除をここでいよいよ、中から組みかえていく一つのきっかけになるのかなという意味で、年金課税としては非常に重要な改革の要素が入っていると私は思います。
〇委員
おっしゃるとおりですよ。入口、真ん中、出口、トータルで年金課税を議論するときに、全く議論しないとこの問題も解決しないと思いますから。
〇委員
それの重要なきっかけになるものだと思います。
〇委員
そういう問題意識でいいんじゃないですか。
事務局のほうで今のコメントについて何かございますか。
〇事務局
全くそのとおりだと思っております。いずれにしましても、全体として入口、出口、真ん中の運用を含めまして、全体として適正な形をどうとらえるか。委員のご指摘にあったような形の回答も一つだと思いますが、いずれにしても、公的年金と私的年金の関係とかいろいろなものがこれから出てまいりますので、その大きな流れの中できちっと今後の問題としてご議論いただければというふうに思っております。
〇委員
どうぞ。
〇委員
今の特別法人税のお話で、年金課税全体のシステムの話が一つですが、もう一つ、日本の企業年金は退職金から移行したケースが多くて、一時金で取得できるとか、受給年齢が公的年金のようにきちんと定められていないとか、終身ではないとか、要するに公的年金をきちんと補完する年金システムになっているかどうかということも、こういう課税の関係を議論するときに一つ判断になると思います。実体の議論を少しする必要があるのではないか、これについてはそう思っております。
それから組合については、今、詳しいお話を聞いてもよくわからないというのもありましたけれども、私、アメリカにいた頃にパートナーシップというのがあって、こういう形のものをやったんですね。ところが、その当時からずいぶん租税回避ということが起こって、これはある委員が非常に詳しいけれども、税法上の租税回避を防ぐような措置をいろいろとってきた経緯があると思うのですが、日本については、何か税法上の手当がなかったのかどうかということをお聞きしたいのですが。
〇委員
なぜこれを取り上げたか。どうぞ。
〇事務局
アメリカの例がございましたけれども、手元にある資料だけで申し上げますと、やはり同じような問題があるということの中で、アット・リスク・ルール--控除可能な損失の額は納税者のリスクを負っている範囲にするんだというふうなルールだとか、パッシブ・アクティビティ・ロス・ルールといいまして、実質的に参加していないパートナーシップに対しては一定の制限を加えるとか、そういうふうな試行錯誤の中でさまざまな歯止めをかけてきた例がございます。
日本の場合には、必ずしもそこのところが議論されているわけではございませんので、このような事例を見ながら、どういうふうに考えたらいいかということも取り組んでまいる課題だと思っております。
〇委員
どうぞ。
〇委員
このことですけれども、具体的には航空機リースの税効果資産というのは、例示でわかりやすいのですが、まさにこれが示しているのは、高い限界税率はいろいろ問題を起こすということの典型だと思うのです。つまり、何やかやいろいろな理屈をつけて膨大な損害や損失を出した、その損失の50%は要するに税金で戻ってくるんだという仕組みで、高い限界税率がどういう悪さをするのかという典型と、それから、損益通算の範囲をどうするかという問題と両方入ってくる。本当は所得一元化というのは、ある意味で資本所得の一元化にして、そしてそこまでの範囲にして、ここの損を他の事業所得から引かせないというわけです。
何を言っているかというと、金融所得一元化が全部一つの方向と思いますけれども、これを防ごうとすると、最終的には資本所得に対して一元的にかけて、そこからのオーバーフローを他の所得に及ぼさないということで、2つのレッスン、つまり、高い限界税率というのはこういう資本所得に対してどういう悪さをするのか。日本で悪さをしているという実例と、それから、これをパッシブ、アクティブとかいろいろなことで所得税では防いでいく。だけど、これは長い目で見れば、それに対する対抗としてやはり二元的な所得税があったのだろうなと。二元的な所得税が資本所得に甘いとかいうのではなくて、まさにこの事例を見ればわかるように、むしろその意味では合理的に効いているところも、2つ指摘すべきだと思います。
〇委員
いいコメントだと思いますが、審理室長、要は巧みに賢い納税者にやられたわけね、現行制度をうまく悪用されて。だから、敗けるのは当たり前のような気もするけれども、どうですか、私の感想は。
〇事務局
賢い納税者にやられたというよりも、賢いアレンジャーにやられたというのが正確でありまして、例えば今回の事案ですと、航空機を購入する前に、もうその航空機はリースする航空会社に使われてしまっているわけです。あらかじめすべて仕組み終わった後に、ある意味で形式的に出資者を求める。そういう意味ですべてを管理しているのはまさにアレンジャーの方々であって、その周りに、今、会長がおっしゃったように税の効果が生ずるものですから、そこでうま味が生ずる人たちを集めてくるというのが実態なのではないかというふうに思っております。
〇委員
よろしいですか。また総会で同じような問題の提起がありますので、ここの場の空気を伝える意味で、同じテーマでも結構です、同じご意見でも結構ですから、ご披露ください。
今後のスケジュールにつきまして、少し変更もございましたので、ご説明します。お手元に「起草作業スケジュール(案)」という紙が「委員限」として入っていると思います。急遽、日程・時間をまた変更いたしましたので、これを見て確認をとってください。
次回の基礎問題小委員会は、総会と一緒になって、環境税を2時間議論したいと思っています。金曜日の午後ですが、13時から15時まで。初め1時間半と思いましたが、問題の重要性にかんがみまして、30分延長して2時間、集中審議をしようと思います。
そこで、そのあと起草会合と考えていたのですが、起草会合は来週16日(火曜日)の14時-16時に移したいと思っております。起草会合のメンバーは即この基礎問題小委員会の委員の方々ですので、起草会合と書いてあるのは基礎小と同義と見てください。それが1回目。2回目は木曜日の14時-15時とやって、この[1]、[2]の結果を総会にという形で、15時-17時。ここはダブルヘッダーになります。それから、総会でいろいろご議論いただいたあと、それを受けて3回目の起草会合を19日(金曜日)の14時-16時にしております。
そこで、一番おしりをどうしようかということですが、一応25日(木曜日)1時-2時の総会でまとめたいと思っていますので、その前日の24日にやりくりをしなければいけないのですが、4回目の起草が必要ならば、つまり3回目の2時間で決着がつかなければ、総会の前に1時間ほどとりまして第4回目の起草会合をやって、総会でご議論いただいて、それを受けて、修文等がこの段階でかなり議論になると思いますので、第5回目の起草会合をやって、それを25日の13時からの総会でお認めいただいて、官邸の総理に手交する、こういう段取りで考えております。かなり日程が混み合っていまして、全部ご出席いただけるのは難しいかもしれませんが、ぜひテイクノートしていただいて、ご出席いただきたいと思います。
4回目の起草会合はポチがついていますが、これは、3回目でうまくいけばなくなるというふうにお考えいただきたいと思います。
日程について、何かご質問ございますか。よろしゅうございますか。
では、5分ほど休みをとりまして、15時過ぎから総会に移りたいと考えます。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。