総会(第26回)・基礎問題小委員会(第30回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成17年3月8日(火)16:05~16:19

石会長

それでは、総会と基礎問題小委員会合同会議を終わりましたので、二、三、今日何を受けとめて、今後どうするかという点につきましてお話ししたいと思います。

お聞きの方はお分かりのように、今日改めて何か方向性なり結論が出たわけではございません。三人の委員の方の論点指摘があり、改めて問題の困難さを確認したということに尽きると思いますよね。現行制度のままで放っておきますと、まあ介護も年金も、あるいは地方でやっておりますさまざまな社会福祉サービスもですね、このままでは持続不可能になるという点は、やっぱり押さえられたし、今後それについてどういう格好で詰めていかなきゃいけないかということであります。

そこで、特に年金について思考停止、皆しているというご発言もございましたように、どうしてもですね、受益と負担、別々にやっておりますと、片方だけウエイトが大きすぎますと嫌になっちゃうような議論になるわけですよね。まあ特に基礎年金の給付の額を今後税でやるなんていうことを本格的にやりますと、消費税に換算して7%から12%上げなきゃいけないなんてことになった途端にですね、じゃあ給付額を下げるかというと、下げることにするとまた抵抗があるという形で、どうしてもその辺が本格的にメスを入れる前にダウンしちゃうなという感じだと思います。

大体それが総論的な印象でありますが、やはり個々の制度改革、特に、例えば介護保険で言うならば、やはり5年たった後ですね、介護制度の中身で議論する、それから外身でやるといろいろあると思いますよね。特に認知度の問題、認定度のハードルの問題というのは、制度をこれからどう持続させるかということについて決定的に重要な要素になるなということを感じとりました。それから何でもかんでも公のルートでサービスするかということに対して、田近さんのご説明のように、だんだん民間の方にシフトする、そして民間保険の活用をする、これは一つのいき方かと思っております。これは私自身、発言しましたけど、北欧のやり方とは大分違ってくる。しかし、介護という制度を一つだけ独立に作った以上は、放っておきますと、高齢社会の進捗に合わせて、この介護保険制度というのはにっちもさっちもいかなくなる可能性があると思いますので、そこにさまざまな歯止めといいますか、制度的歯止め、あるいはマーケットの原理の歯止め、あるいは保険機能の歯止め、いろんなことをやっていかなければいけないのじゃないか。

まあ結局、経済学者の発言が多かったんですけれども、本当に必要で負担ができないような人のために政府があるんであって、政府がそこに集中的にやって、何でもかんでも一絡げにしてサービスを提供するんじゃなくて、おそらくセレクションが行われるべきであるという、そのセレクションの程度のところが一番問題になると思いますね。これは、年金のところでも同じ問題でありまして、今、基礎年金が3分の1を2分の1にしていこうというところで大騒ぎをしておりますけれども、あれで制度が完備したわけじゃないですよね。そもそも2分の1にするという論拠が分からないって翁さんも言ってたように、私もそう思いますよね。そうなりますと、スウェーデン型でいくのか、あるいは一番右端に書いてあったのは、おそらくデンマークが想定されて、あるいはカナダがやっているような話でありますが、基礎年金型で一階建てを極端に強化して税金でやっていく方法でいくのか。その辺のところまで議論がいかないと、逆に言って、現行制度をセカンド・ベストであれ守ろうというようなロジックは多分出てこないのではないかと。

要は、スウェーデン型でも基礎年金型でも、税金でどこの部分を面倒見なきゃいけないのか。これは、ある意味では負担なくして、言うなれば国が責任を持つ範囲ですよね、これの決め方が決定的に重要になってくる。おそらくスウェーデン型が日本でなかなかとりにくいのは、そこのディマケーションといいますか仕切りですね、そこがなかなか引きにくいのではないか、引けないのではないかと、このように考えますね。

まあそういう意味で、今後、介護、年金について、本当に政府がやるべき範囲、そして無駄を廃するという意味で、その限定的な範囲をやって、残りは極力自助努力なり、あるいはマーケットの原理を活用して効率的にやるという視点がどうしても必要になってくる、このように思いますね。

それから、地方財政がやっております現行の福祉サービスも、住民サービスと言い替えるべきであるというのは、まさに当を得ていると思います。このままでは、言うなれば高齢化あるいは少子化にぶちあたったときに、おそらく生活支援型で福祉が今でき上がりつつあります。そういう中で貧困、防貧的にやっていたような制度というのは、おそらく持ちこたえられないと思います。特に公共サービスとして行われる福祉サービスの相対価格ですね、民間と比べてほとんど高まる。それでアウトソーシングでどういうふうに調整するか。まあその辺のような話ですね、財源調達問題にしましても、おそらくは国からくる補助金でおしいただいてやらせてもらうというのじゃなくて、自らの判断で地方自治体が財源を集め、集めるような条件を作ってやって、そこでやるものとやらないものの仕切りをつけるというようなことにならざるを得ないのではないかと、このように考えてます。

最後に、猪瀬さんが仰ってくれましたように、「出」と「入り」を絶えず両方チェックしませんと、おそらく受益あるいは負担のあるべき、あっていい水準というものの議論はできにくいですよね。まあそういう意味で財務省も主税・主計、一体化して、あるいは諮問会議のように歳出・歳入一体化して見直しということを言ってますように、税調も、税の水準をどこに決めるか、あるいはそれが保険等の絡みでどのぐらいにするかなんていうときには、絶えず「出」の方の、サービスの方の質なり量なり、これを念頭におきながら議論しないと議論はできないという風に考えております。

勉強会は今日2回目で、あと3回目を3月18日にやって終わりたいと思ってます。今日は介護、年金をやりまして、まだ医療が、外部者の方の都合もあって、まだ言われておりません。前回、宮島さんが医療にちょっと触れてくれましたけれど、医療に特化した形の医療保険財政みたいな話はまだしておりません。それから、少子化という視点から雇用問題をどう切るかという問題もまだ残っていると思いますので、そこを外部からお二人、専門家を呼んできます。それから、ちょっと毛色の違った議論になりますが、今やっておかなきゃいけないという意味で納番、これのこれまでの議論の整理と今後の納番のあり方、あるいは守備範囲の問題、それからプライバシー保護の問題とも絡みますけど、その辺の問題をどうするかという点を3回目、終わりにやっていきたいと思ってます。4月以降は、実はまだ税制改革法案が国会で議論しておりますので、まだ事務局とも相談しておりませんが、4月以降は月数回のペースで、本来の税調の個別のプロパーの問題に特化していかなければ、来年度は盛り沢山な税制改革項目がございますので、処理し切れないと思いますので、それに向けてやっていきたいと思います。個別の工程表つきなものは次回ですね、少し整理してお知らせできればなあというふうには考えております。以上です。

記者

年金のところの給付と負担の話、まあ消費税の話、消費税、じゃあどれぐらい引き上げようとか、そういう話になってくると途端に思考が停止してしまうというような部分がありましたけれども、今後、税調も含めて、そういうふうなことにならないようにするにはどうすべきかとお考えでしょうか。

石会長

これは、本当、難しいですねえ。やっぱり絶えず問題を積極的に提示して考えてもらおうという雰囲気をつくっていって、まあ皆さん、体系的でなくてもいいから、少しでもいいから意見を言ってもらうということを、まあ会長として皆に、ある意味で強制して議論を言ってもらわなくちゃいけないと思います。それから外部の人からいろんな論点整理、問題提起をしてもらってね、刺激を得てというふうにも考えております。まあこれといった知恵は今のところないんですが、ただ、外側の、税調の外の国会であれ、政治家の論議であれ、あるいは民間のシンクタンクの意見でも、僕はどんどんこれから出てくると思うんです、この問題。ですから、そういう意味での外部的刺激も高まってくると思いますから、議論は自ずから盛り上がる背景はあるなあというふうに考えております。

記者

国と地方の役割といいますか、さっきのところで出ていましたけれども、それについては、また地方のほうになんか押しつけになるんじゃないかとか、そういうふうになると思うんですけれども、その辺については、会長はどのように・・・。

石会長

いや、「押しつけ」という言葉もあるかもしれないけれども、地方固有でやりたいという意欲あるプロポーザーもあるわけですからね。これは時間軸で、ある時、国、ある時、地方というふうに、僕はいろいろ公共サービスは分れていくと思いますよ。まあそういう意味で、固定した普遍的な仕切りはないと思いますが、ただ、今日、林さんの整理でありますように、救貧的、防貧的ということになれば、ユニフォームの国として一律のサービスがあったほうがいいと思いますが、まさに今ある介護にしてもですね、一般の福祉サービスにしても、まあ地域に根ざした、あるいは住民と直面したところの自治体がやるというような思想になればですね、それはしっかりとした枠をつくってやる、財源も保障してね。そういうふうに今後ならざるを得ないんじゃないですかね。そういう意味で、三位一体改革で補助金を削減してですね、地方にやらせようというのは、ある意味のきっかけになってですね、その辺で地方が一番重きをおいてやるようなサービスはどこかというような議論はこれから深まっていくと思いますけどね。まあ押しつけになるとか、やりたいのをとられちゃったというような議論は、絶えず起こるかと思いますけど、そこは具体的な事実として、これから固めていけば自ずからある合意点はできると思いますけどね。

記者

納番の議論は、消費税論議でどういうふうに絡んでくるというふうに思われますか。

石会長

納番は、実は税調は過去3回、海外に調査団を派遣しておりまして、随分情報を集めていると思います。私も3回とも出てるんですけど。ただ、納番も、各国の使い方もその時々で変わってきて、かなり守備範囲が広がってきました。ただ、あくまで納番の基本的性格というのはマッチングなんですよね、マッチング。だから、出し手と受け手が異なる場所でないと、マッチングしても意味がない。まあそういう意味ではですね、消費税の問題に直に納番が絡むということはないと思いますね。ただ、消費税から出てくるさまざまな情報、それから金融所得のマッチングした結果で正しい情報が得られたとき、その辺の突き合わせみたいなのには間接的に影響するかと思いますが、とりあえず年金における自営業者の所得捕捉も含め、消費税も含め、納番がダイレクトにタッチするということは難しいと思いますね。ただ、所得税も含め、僕は最終的には資産課税になると思うけど、課税の効率なり適正化という視点からは、納番は非常に重要だと思いますよね。小泉さんもそういう問題意識もお持ちと思いますので、どこまで効用があって、どこまで過度の期待があって、というような論点はしっかり整理して、世の中に示したいと考えています。

(以上)