第26回総会・第30回基礎問題小委員会合同会議 議事録

平成17年3月8日開催

石会長

それでは、カメラも退席したようでございますから、今日の総会と基礎問題小委員会、合同の会議を開催いたします。

今日は勉強会、それもお三方、委員の方からご説明いただくという意味では、身内の勉強会という意味で気楽にやりましょう。田近、翁、林、お三方の委員から逐次ご説明いただきまして、そのたびごとに質疑を繰り返すという形で3ラウンドやりたいと思っています。

では最初、田近さんから、「介護保険からみた社会保障」という形でお話をいただくことにします。よろしく。

田近委員

それでは、報告させていただきます。一橋大学の田近です。

お手元に資料が配付されていると思いますけれども、「介護保険の現状と持続可能性」ということで、20分ぐらい報告させていただきたい。

今日は、介護保険を一つのケースとして、社会保障と財政、そしてその中で新しくできた介護保険財政がどういう形で変化していったか、もっとはっきり言えば、どういう形でだんだん困難になってきているかという、その辺の理由を議論したいと思います。

まず、仕組みについて多少お話ししないといけないと思いますけれども、「保険としての仕組み」ということで、2000年度から開始と。そして市町村の、これは高齢者福祉事業を社会保険である介護保険に変えていったということです。

そして、被保険者は1号、2号。1号が65歳以上、2号が40以上65歳未満。給付は、基本的には加齢に伴う身体介護ということで、2号も給付をもらうことがありますけれども、初老のアルツハイマーとか脳血管障害ですけれども、ほとんどは、圧倒的に多くの給付は1号です。

その保険者というのは市町村ですけれども、この辺から財政とのかかわりですけれども、市町村が第1号被保険者、というのは65歳以上の人たちから、地域住民から保険料をとっているという形で、これは後で申します。

厚生労働省というのは、全体を設計し、見直すのですけれども、昨年度見直しして、今年度、改正法が出ていると。非常に、その意味ではホットな話題が今出ているわけです。

そして、負担と給付ですけれども、財政負担は利用者の自己負担が10%、残り90%を社会保障の用語で給付費と言っています。この90%を、全体100として、全体を50、50に分けて、半分を保険料で賄っているという仕組みです。50の内訳は、18対32で、これは第1号、第2号。第1号というのは、繰り返しですけれども、65歳以上、第2号は40以上65歳未満ということですけれども、これは人口比です。当初、たしか17対33だったと思いますけれども、これが今18対32。残りの50が国と都道府県と市町村。都道府県が最初から入っています。数字はこれからご覧に入れますけれども、そういう形で、公費、あるいは地方自治体の負担になっているというわけです。

それで、第1号の話はこれからしますから、第2号部分が、これは地域保険であるのですけれども、多少その本則にはそぐわないというか、第2号は、我々含めてそうですけれども、みんな医療保険に上乗せしてとられて、そして各市町村に必要な部分が自動的に配られるというわけで、その意味では、第2号被保険者と地域との関連というのは断ち切れているという、それは重要な点ですけれども、ポイントです。

次は、保険者というのは、市町村は第1号被保険者の保険料徴収、これが最大の仕事の一つになっています。年金からの天引きが多いのですけれども、そうなっていると。都道府県と市町村は、今言ったように、交付税対象の地方財政措置がある。これは後で説明します。

給付は、ざっと見ていただければいいですけれども、介護認定してということから5段階の認定があって、各段階で月額上限これだけ払われますということです。多少見ていただくと、要支援から要介護度1が、このギャップがちょっと大きいのですけれども、まあこんな形になっている。

そして、この分野の用語としては、施設介護というのが特別養護老人ホーム、老人健康保健施設、療養型医療施設、これを施設といいます。在宅のほうは、訪問系のサービス、よく言う訪問介護とか、通所系というのは通所のリハビリ、デイサービス、デイケアとか。

勘違いされるといけないのは、居住系で短期入所とかグループホームとか有料老人ホームは施設ではないかと思われますけれども、これは仕分け上在宅サービスという形になっております。

さて、いよいよここからですけれども、2004年度の予算で示すと、給付合計、先ほどの10%自己負担を除いたものが、2000年度が大体3兆円でしたから、これが5兆5,000億円ということは、総額6兆円に育ったというか、急速に拡大した保険です。

ざっと見ていくと、第1号被保険者というのが、保険料が18%、第2号が32%。先ほど言ったとおりで、この中で国に関係した部分はどれだけなのだと。つまり、5兆5,000億円のうち、まず公費負担で国が20%は払うと。それから国の調整交付金、20%足して5%というのは、時間がないのではしょりますけれども、貧しい、所得が低い市町村、あるいは後期高齢者が、非常に高齢化の進んでいるところには手厚く配りましょうというのがあります。したがって、国は最初から25%をサポートする。都道府県、市町村の残りは、これは地方交付税措置されてますから、財政力のないところはこの幾らかが地方交付税で入っている。

そして、これは知らなかった方も多いかもしれませんけれども、第2号の保険料のうち、国保加入者、国民健康保険の加入者の保険料の半分は国が払うと。よくわからない理由なのですが、サラリーマンの保険料の半分は会社が払うのだから、自営業者の保険料の半分は国が払うという、何かそういう昔からの理由があって、払うと。

ざくっと言うと、5兆5,000億円のうち、ここで見た25%はストレートにいくと。それから4,000億円もストレートに払う。それから地方交付税措置をして、迂回した形で入っていくという形です。

ここから、3以降は、じゃこの制度で2000年から2004年ぐらい、何が起きたのかということです。当初思っていた以上のことが実は起きたわけですけれども、まず最初は、認定者と受給者ということでこのようにつくったのですけれども、2000年の4月を100とする。それに対して認定者等々がどのぐらい増えたのだろうと。

そうすると、一番下のほうに、第1号被保険者、65歳以上の人たちの人口が11%増えたと。ざっと見ていくと、要介護認定者というのがその3番目ぐらいで、70%増えたと。人口が11%に対して要介護認定者ががっと増えた。そして、サービス利用者の中では、受給者はさらに増えた。その中でも、ご覧になっていただくとわかるように、居宅サービスの受給者が圧倒的に増えた。これが目を見張る問題だったわけです。

さらに次を見ていただきたいのですけれども、もう少しこれを見ていくと一体どういう状態の人が増えていったのだろうと。要介護認定されたと言うけれども、一体どういう人なのだろうということですけれども、この辺は、制度がどのぐらい厳しく適用されたかというのはそのようなところとかかわるのですけれども、すべて増えたというのが答えです。

一番下の要介護度4という人たちも34%増えてますから、みんな増えたけれども、特に目を見張るほど増えたのは要支援、要介護度1のところが増えたということです。だけど、そればかり強調するのは僕は間違いだと思って、要介護度5の非常に重いところもかなり増えているということです。したがって、すべて右上がり、右上がりという形に来た。

次です。増えた、何のサービスを今度は利用したのだろうということですけれども、「介護費用の推移」ということです。一番右側の2003年度をご覧になっていただくといいと思いますが、これは対12年度ですから、2000年度の対応で、一番右端ですが、どのぐらい伸びたのだろうということです。今言ったように、認定者が増えた。それ以上に受給者が増えた。受給者の中では施設よりも居宅のほうが伸びたということですけれども、居宅が1.99ですから、これはなぜかというのはこれからなぞ解きは申し上げますけれども、特に内訳で居宅の中で何が増えたのだろうというと、最初に非常に小さいものは捨象したほうがいいですけれども、痴呆対応型共同生活介護というのはグループホームというものですけれども、これが増えた。

要するに何が起きたかというと、施設のほうはベッドの数が限られたりしているので、ある意味では、満たされない需要というのがものすごく出てきたわけですよね。それが居宅介護サービスの中で、いわゆる居宅の中の居住系サービスというようなものに姿を変えてあらわれてきた。またあらわれてきているということです。

それで、次のページ、一応状況説明しておきますと、4で、財政的にどうなったのだと。まだ2000年から、今2005年ですから4~5年たったところではないかと思われますけれども、第1期というのが、1期間が3年で、2000年~2002年度です。制度発足のときに財政安定化基金というのをつくりました。国、都道府県と市町村が3分の1ずつ積み立てて、原則として次の事業運営年度で返還すると、償還すると。短期的に資金ショートになったときには貸しますということですけれども、たかが3年ですけれども、非常に注目すべきことが起きています。

貸付を受けたところが全体の25.7%。特に、例えば沖縄ですと、86.7%の保険者、市町村が貸付を受けて、積立金の88%も、もう借りていると。青森県というのも非常に特色があって、これもこのような数字になっている。そのような類似なところもあります。類似なところがあるだけでなくて、第1期にお金がもうすでに返せなくてロールオーバーしているというか、返済を延ばしているところもあります。これが今後どうなるかですけれども、それが次のページ、9/11です。

これは私たちの計算ですけれども、厚生労働省が介護保険の財政の推計を出しています。これは厚生労働省基本推計というものです。厚生労働省の推計よりもいいのをつくりたいとかそういう気は別になくて、これをまず再現してみたと。そして、再現して、厚生労働省はこれしかというケースしかないですから、多少のシミュレーションをしてみたということです。

お示ししているのは、1号保険料、2003年度の価格で、65歳以上の人たちの保険料が一体どうなるかというのを計算したものです。厚生労働省の基本推計というのは、パラメータのところはちょっと無視していただいて、2013年に5,000円を超えるという話です。仮に5,000円を超える年がいつなのでしょうねということを計算していっているわけですけれども、田近・菊池ケース1、ケース2からずっとあるのは、介護保険のどこがセンシティブなパラメータかというと、65歳以上の高齢者のうちどのぐらいが認定者になるのだろう。それから在宅で利用している人たちの目いっぱいの利用額、上限に対してどのぐらい使っていくのだろうというのがセンシティブなところで、それ以上今日はお話しできませんけれども、センシティブなところをパラメータをさわっていくと、2000年の頭ぐらいに5,000円を超えると。これは全国平均です。

ということは、1号の保険料が6,000円、あるいは7,000円ぐらい超えるところがもう出てくると。第1期が2000年~2002年、第2期が2002~2005年です。3期が2006年からですから、おそらく今のままのシステムで第3期に入ると、市町村によっては、さっき言った借金部分を返したりしなければいけませんから、これが6,000円、7,000円のケースがもう出てくるということです。正直言うと、このままの仕組みだと立ち行かなくなるところがもはや射程として出てきたということです。

それから10/11というところで、にもかかわらずというか、介護保険で昨年あたりから非常に大きく議論された問題として、障害者介護をどうするか。つまり、高齢者の介護はわかったよと。いろいろ問題ありますけれども、障害者をどうするのかということで、障害者施策ということでは、支援費制度というのがあります。これはシステムとしては社会福祉としてやっているわけですけれども、市町村や行政からの一方的な措置でなくて、障害者が事業者や施設と直接契約できますよねと。させますよねと。できるようにしますよねと。それでよりよいサービスを受けられるようにしましょうというのが支援費制度ですけれども、これはできたと。これはまだ適用していないところがありますけれども、適用しているところは予想どおりものすごく伸びています。

障害者を一体どうやって扱うのかということで、厚生労働省のほうは介護保険に入れろと。ゼロ歳からの介護保険とすべきだと。それに伴ってポイントは、被保険者の年齢を20歳からにしなさいよという議論をさんざんしました。こうしたグループの人たちを介護保険に入れる入れないという問題と、20歳から保険料払う問題とは違うでしょうというのが私の答えです。

で、何を申し上げたいかというと、最後の7の改革の問題について言いたいのですけれども、2000年にできたときには、正直言って、これほど財政がすぐに厳しくなるとは思わなかった。それは単に市町村にとって厳しくなるだけではなくて、国全体にとってもそれが効いてくるわけです。そうすると、復習すると、介護保険というのが財政的に、あるいは介護保険を保険として見たときに、どこで保険が働いているのだろうということですけれども、先ほど見たように、10%は自己負担です。残りの90%が給付ですけれども、給付の半分は国、市町村、都道府県が払うから、半分が利用している第1号、65歳以上の方の対応になるわけですけれども、その50のうち32%は第2号ですから、現役サラリーマンが払うと。

そうすると、わかりやすく言うと、ある高齢者が例えば国分寺市で20万円のサービスを受けたと。そうすると、2万円は自分で払う、18万円のうち9万円はどこかから払ってくれる。もう少し本当は計算の違いがありますけれども、ざくっと言えばそういうことです。残りの9万の半分の4万5,000円はだれが払うかというと、全国のサラリーマンが国分寺市に払ってくれる。サラリーマンというか、第2号保険者が払ってくれるという仕組みです。そうすると、18万円の18%、まあ20%で3万6,000円ぐらいが実は国分寺市の負担、保険料という形で入ってくる。そういう仕組みです。

したがって、それでもですけれども、それでも介護保険は保険なわけです。国民健康保険と比べれば。その国民健康保険というのは老人健康保健の高齢者医療ですけれども、その場合には、高齢者は例えば国民健康保険のほうに保険料を払うと。給付は半分が国から来て、残りの半分はいろんな保険者の拠出金で来ますから、高齢者の医療といっても、独自の医療保険にはなっていない。単にベネフィットを受けるグループを指定しているだけです。

介護保険は、日本で画期的だ。どこが画期的なのかと意外かもしれませんけれども、10%の自己負担は老人健康保健で払うのですけれども、給付の18%はサービスを受ける第1号被保険者自身が払う。第2は、それはそれぞれの市町村でコストが閉じられているということです。国分寺で、例えば10億円給付費がかかれば、その18%である1.8億円は国分寺市の高齢者が払う。そこが保険になっているわけです。

そういうことを復習した上で、まず何が起きたかということを今説明してきて、やはり今や、そういった保険ですけれども、すべての給付に対して10%の自己負担というのが結局は過剰な利用を誘発したのだと思います。サービスの中にはいろんなサービスがあるわけですよね。ベッドを借りるものから、訪問介護から、リハビリテーションから、施設、居住的なサービスに入る等々。それではおかしいだろうと。自己負担の調整というのがサービスごとに必要だ。適用除外もあり得るだろうと。一応施設に入ったときのホテルコスト、食費代とかはこれから徴収するということですけれども、そうでなくて、サービスごとの自己負担の調整をしなければ過剰な利用はとまらないだろうと思います。

それから第2は、実態と改革を絡めて申し上げているのですけれども、公的保険の縮小と民間保険や民間サービスの代替、民間市場を生み出す環境の整備ということで、結局、公的介護保険でどこまでのサービスをするのかと。1人当たり月30万超えるサービスを公的保険でやっていくのかと。結局、そういうサービスが施設という形で混雑現象が起きて、そしてほとんど施設と同じようなところで在宅という形で入ってくる。それを1カ月30万、36万というような形で公的なサービスとして提供し続けるのかというのが次の問題だと思います。

そうすると、サービス内容が高い、結局それが負担になってくるわけで、公的なサービスだけではなくて、もっと言いたかったのは、それが民間のサービスというのを誘発してこない。なかなか、ベッドも自分で買おうかと、リースしようかというようなこともできてこない。だから、公的サービスの守備範囲というのを限定して、あるいは精査して、そしてできるだけ払える人には民間サービスを利用させる。

何かこれは厳しいことを言っているようですけれども、民間サービスで、例えば福祉ベッドでもいいのですけれども、そういうマーケットができてきて、競争が厳しくなる。そうすれば、そこで価格もわかるし、一体、ミニマムな価格で買える、あるいは我慢できるものは何なのかというのもできてくる。今それがなくて、何でも介護保険だということでマーケットができないということです。そういう意味では、混合保険の適用というのはここでこそ使えると思います。

それから保険者改革ということでは、非常に大きな問題ですけれども、全国の市町村が保険者であることが可能なのか。もちろん規模の問題もある。何人か、特別養護老人ホームに入るともう保険料がはね上がってしまうとかありますけれども、私がここで言いたいのは、市町村というのは一方でいろんな施設を抱えているわけですよね。それは多くの場合、例えば地方の若い人の雇用先にもなっているわけで、一方で使うと。住民に対していいサービスをするのですよと。それは若い人の雇用先にもなりますよと。一方、保険者としてこれを支払う側に立っていて、一人の人間がサービスを使う側と払う側にいるわけですから、これでは保険者としてのガバナンスのバネが効かないと思います。これは遅かれ早かれ、医療保険と同じように、抜本的な見直しをしないことには成り立たないと思います。

ただ、これは今成り立たない市町村をほかのところとくっつけてうまくするというネガティブな意味でなくて、市町村が保険者であるということが大きな壁になっている。非常に日本の医療保険も含めて深い、難しい問題ですけれども、そういう問題が起きてきている。

それから財政では、国庫依存からの脱却ということで、これは多くの問題と同じですけれども、第1号被保険者の、先ほど申し上げた給付の半分、それから国民健康保険加入者の保険料の半分が一律国庫負担だと。これはやはりおかしいだろうと。どういう人であれ、一律に国庫からこういう負担をしている限りは、介護保険が大きくなれば、それと連動して国庫負担が大きくなっていってしまうというわけで、少し早くしゃべってしまいましたけれども、2000年から生まれた制度が、この数年の間にどう展開してきたのか。その中で見られる問題というのは、やはり私は、だから保険のバネをもう少し効かせる。それから公的なものを自然に民間のところが代替して、そしてそこを払える人たちがそういうのをどんどん利用していく。そういうマーケットができて、今度公的なものに対するサービスが見直されていく。そういう補完的な動きの中でよりよいサービスが提供されていくべきだ。

それから財政的には、これは医療、年金、みんな同じですけれども、要するに国庫負担というのが第三の支払い者という理解では、それはまずいだろうと。だれに一体国から負担してあげるのかということは必要ですということで、最近の動き、以上です。

石会長

大変最近の問題点を整理していただきまして、ありがとうございました。特に最後のページに「改革の道」という形でご提案が出ておりますから、これも踏まえ、前のほうの現状認識等々でご質問なりご意見なり、しばらく時間割いて議論いたしましょう。これは全員、皆さんに関心のある話になってくるでしょう。もう現になっている人もいますけれども。

どうぞ、川北さん。

川北委員

先ほど、改革のうちいろいろなメニューが提示されましたけれども、その中で保険のバネを効かせるとおっしゃいましたけれども、これは例えばどういうことなのでしょうか。その後におっしゃった民間のとかいう、そういうことを指していらっしゃるわけですか。

田近委員

それももちろんありますけれども、要するに民間のほうにうまく自然につながる、その形にならないか。今の形だと、やはり介護保険でサービスを受けるのは非常に得なわけですよね。要介護度状態で上限ありますけれども、上限に行くまで10%の負担でいいと。それで、じゃ10%を20%に、30%にと。それを単に、全然、財務省的なというか、マクロで財政預かるほうとしては自己負担率上げなければいけない。それはNI比に対して何とか抑えなければ、10%にしなければいけないとかでしょうけれども、もっと個別の中で見ると、そうではなくて、やはり自己負担で本来やるべきサービス、訪問介護等はもっと自己負担率上げてもいいだろうと。例えば5割とか6割とか。そして、そうではなくて、もう寝たきりというか、自立の力が弱くなっているようなところはその負担率変えるとかして。

バネというのは、したがって、自分で払ってマーケットで買っていく、そういう出ていくようなもの、そして保険として逆に守らなければならないものは何なのかと、そこをきちんと直していかなければいけないと。一律の10%というのはおかしいだろうと。例えばです。

石会長

上乗せ部分は民間から買ってこいということですか。

田近委員

そういうことです。

石会長

そうすると、全部持ち出しだよね。持ち出しというか、保険の外で、自己負担でやれということですね。

田近委員

だから、そこの部分、だから、ここが混合診療の問題で、混合診療の問題というのは、ガンの治療である治療をすると、それはいいけれども、根っこからもう全部民間の保険に行ってくださいと。介護保険はオーバーフローした部分はどんどん民間で買ってくださいという仕組みになっているわけですよね。したがって、支払える人に対しては、そのオーバーフローした、自然にそれがオーバーフローと言うとおかしいですけれども、よりよいサービスが欲しいならば、それは自分で買う。そこの自分で買う部分に対して民間の保険がまた出てくるとか、そういう形になってくればいいと。もちろん、もっといけば、そういう人たちを最初から保険に入れなくて、民間保険に最初からしてしまうとか、そういうのはあるでしょうけれども、そこまで今、制度改革としては議論できないので、混合保険、混合診療が可能だということを活用するというようなことです。

石会長

ほかにいかがでしょう。

どうぞ、本間さん。

本間委員

今の田近さんの混合診療の定義が幾分、将来の、我々が、我々というのは諮問会議が提案している混合診療でやるという話ですね、今のは。プラスアルファの部分のところは民間に任せて、ベイシックな部分……それは混合診療ではないのです。今の定義では。今の定義というのは根っこから全部民間でやれというのが今の混合診療の定義なわけで。

田近委員

今のね。

本間委員

今の。だから、それは混合診療の改革も含めてやれというぐあいに理解すればいいわけですね。

田近委員

そこまで大きなことは言ってなくて、ちょっと理解が違う。介護保険の場合には、公的な部分で足りなければ自分で幾ら買い足しても構わないわけですよね。でも、公的な部分は使わしてくれる。

本間委員

この世界における混合診療の定義を新たにしているということですね。

田近委員

そういうことです。

本間委員

わかりました。まず要介護度別の認定者の推移と、それから政策提言のところで、10%が少し甘いのではないかということに関係するのですけれども、認定度の適正さというか、それがかかわってくるわけですね。どういう状況であれば要認定なのかという部分のところのハードルの高さ低さと、この保険料の設定の問題というのはあり得るわけで、その前者の問題についてはいかがかということです。

田近委員

そこがさっき言ったガバナンスのところだと僕は思うのですけれども、認定率というのはどうやって決まってくるかというと、いろんな道があるのでしょうけれども、在宅介護支援センターとかに相談して、市町村の認定会で認定されると。そこでモラルハザードという部分とそうでない部分を分けるのは難しいでしょうけれども、だから、市町村自身がどこまでそれを厳しく、厳しいというか、厳正に適用できるかという問題があると思います。

市町村は、先ほど申し上げたように、一方で保険者でありながら、一方でサービス供給者であったり、サービス供給者と非常に近い、またもう一つは、当然ですけれども、住民に近いということで、認定率というのが、これを証明するのは難しいですけれども、上がってきたという理由はそういうところにある。特に要支援とか要介護度1のところが上がってきているのはおそらくそういう理由なのだろうなと。

本間委員

非常に興味深い「要介護度別認定者の推移」ですけれども、これは年齢が非常に大きく作用していて、例えば要介護1と要介護5というのはかなり年齢構成が違うわけですね。しかもそれは年齢が、加齢化が進めば進むほど要介護度は高くなっていくという傾向が、トレーサビリティ的な考え方の中であるわけですね。これ全体が一体どういうぐあいに、定常状態になっていったときにどういう状況になっていくかというのは、このシミュレーションの中ではなさっておられますか。それが全体の動向を理解する上で非常に重要なポイントなのだろうと思いますけれども。

田近委員

質問、ちょっと全部は理解してないですが、これが、要するに高齢化が進んで、どの辺で、わかりやすく言うと頭打ちになるかということですよね。

本間委員

高齢化がどんどん進むわけですね。それの一定のプロポーションが、要介護1から要介護5ぐらいまで、早く悪くなる人とか遅くなる人とかいろいろあるわけですね。それが人口構成で言いますとステイブルになっていったときに一体どう……

田近委員

人口構成的に言えばもちろんおっしゃったとおりでしょうけれども、あと男、女があるのですね。これを言ったら、保健衛生学科の人に怒られたのですけれども、圧倒的に女性のほうが、ある具体的な市で、個票でやったのですけれども、同じ介護度でも利用度が大きいし、また、おっしゃったように高齢化になるので利用度も大きいと。と言ったら怒られて、それは男は奥さんに面倒見てもらっているからそうなのだと言われましたけれども、おっしゃられたことはよくわかっていて、だから、これが年齢要件にどのぐらい影響を受けていて、それがどう変わってくるか。

年齢要件のところはちょっと難しいのですけれども、実は介護保険財政というのはまさにそこで、結局は、認定率からダーッと枝分かれしてシミュレートしていくわけですよね。この認定率のシミュレーションで、さっき言った田近・菊池のケース1からケース5がほとんど説明される感じで、だから、これをもっときちんとしないとだめだという形。

石会長

奥野さん、どうぞ。

奥野委員

正直、介護の話は、私、素人でございまして、だから、田近さんに対する質問というよりも、これは年金、医療すべて含めてですけれども、こういう種類の問題にアプローチするスタンスに、大きく言って2つあると思うのですね。今日の田近さんのお話は、言ってみればサービスの種類を狭めて、それで財政をよくしましょうというお話なわけですよね。これは認定の問題も含めてそうですし、負担をもっと増やしましょうという話もそうなのですね。

そういうことをやると、もちろんお金持ちはいいのですが、所得のない人、資産のない人は、負担も増えるし、サービスも限定されるということで非常に大きな問題が出てくるわけですよね。だから、本来やるべきことは、要介護度とか、そういう需要が、本当に必要な人がだれなのかということをきちんと認定することで、それは介護とか医療の必要度ということだけではなくて、それに対する支払い能力をその人が持っているかどうかということにもかかわるわけですね。

だから本来は医療サービス、介護サービスが必要であって、しかし、支払い能力がない人に限定して、国がこういうサービスを払うべきだと。問題は、そういう制度ができているかということが多分非常に大きな問題であって、今後の財政を考える上でその2つのどちらを、あるいはその割合をどういう形で制度設計していくのかということをきちんと考えないと、単なる財政問題という形では考えるべきではないのではないかと思います。

田近委員

たまたま僕もこれに大分ハマってしまって、全国、施設を歩いたりしているもので、わかったようなことを言っているのですけれども、だから結局、それをやるのは国はできないし、じゃ分権で市町村なのか。でもないと思うのです。市町村がやるのではなくて、それはやはり保険者、エキスパタイズがある人たちが、もちろん市町村の情報とかとリンケージしてやっていくべきだと。

もっとわかりやすく言うと、じゃ介護保険と老人健康保健のデータが同時に動くようなシステムというのは日本にあるのか。ないですよね。一方で、だから老人健康保健でどのぐらいこの人が使っているか。もちろんインカムとか、そのデータ以外にも、もっと供給のところで重要なのは、医療で使ったコストとこっちがどう連動しているかというシステムもないという形で、僕のその点に対する答えは、だから、それを分権、分権という形で市町村におろすというのではなくて、保険者という形でくくらないとだめだと。

奥野委員

私の申し上げようとしていたのはちょっと逆のことで、要するに支払い能力があるかないかということをどうやって認定するかという仕組みを考えるべきではないかということを言いたかったのですね。大ざっぱに言ってこれは2つやり方がありまして、1つがミーンズテストと言って、資産とか所得がどれだけあるかということが国なり地方団体なり、あるいは保険者なりがきちんと把握できる仕組みをつくること。これは、典型的に言えば納税者番号とかそういう仕組みをきちんとつくっていくというのが1つあるわけですね。

ただ、これではきちんと把握できない可能性があるので、もう一つは、自分で、いわばどちらですよということをシグナルを発するような仕組みというものをつくるというのが経済学的には考えられています。セルフ・セレクション・システムというやつですが、典型的に言えば、国とかそういう公的なサービスが提供する、例えば医療であれば民間で得られる医療よりも少し質が悪いというようなものであれば、支払い能力のある人は多分いいサービスのほうを買う。支払い能力のない人はどうしてもしようがないので質の悪いほうを買う。その質の悪いほうだけをちゃんと国がやっておけば、それである程度分離できるというやり方があるわけですね。この2つの、多分両方を使う必要があるのでしょうけれども、そのためにはさまざまな制度設計が、納税者番号的な制度から、今度は医療とか介護保険の仕組みですね。

少し気になりましたのは、例えば混合診療というのは、ひょっとしたらセルフ・セレクション・システムとして使える可能性があって、つまり、諮問会議型の混合診療を認めないで、しかし、国が提供する医療サービスで質が悪いものであるというふうにしてしまえば、お金持ちはいいやつを全部使わざるを得なくなってくるというような形で、言いかえると、少しそこを切り分けて議論していくことによって、少し効率的な形で、本当に必要な人にだけ必要なサービスを国が提供できる可能性がある。そこをもうちょっときちんと考えるべきではないかということを申し上げたかった。

石会長

今の関連ですか。

本間委員

関連で。

石会長

どうぞ。

本間委員

今の制度は、介護の場合には年金と連動してまして、あそこから差っ引くことができる形になっているわけですね。それが欠けたときに一体どうするかとかいうような問題と、その他の所得が一体どれだけあるかということが、この問題をデザインしていくときに非常に重要な問題だと思いますので、そういう意味でのグローバルな、現物給付なのか現金給付なのか、医療も含めて私はそれと一緒にしたらいいと思うのですが、それはなかなか今抵抗があってできてないのですけれども、そういうことだと思います。

石会長

島田さん、どうぞ。

島田委員

簡単に今の関連ですけれども、奥野さんのポイントをサポートしたい感じなのですけどね。今施設介護が、今、奥野さんが第2番目におっしゃった、経済セレクションと言うのですけれども、公的なほうがやはりとてもいいのですよね。安くてサービスの中身がいいので、そこで自己負担というのは大変難しい状況にあるわけですね。

問題は、その公的な特養のような例をとると、非常に自己負担少なくて、最大5万円ぐらいのレベルで三十何万円のサービスを享受できるようになってますから、そこのところで、年金をもらいながらサービスを享受するという人が事実上はすごく残っているわけですね。そういう支払い能力とニーズのギャップみたいのをやはり整理しないと、今の形をそのまま延長するといたずらに財政負担が大きくなってしまう。どこの時点で、支払い能力がなくて緊急度高い人が公的なサービスを受けるので、そうでない人は、基本的に年金をフルに使いながら民間のサービスを使うという形に誘導するような仕掛けを工夫しないとちょっと大変なことになるなと。

年金で十分に負担すれば民間ベースの施設介護というのは可能なのですよね。ですから、今の制度をそのまま延長するという議論だけではなくて、少しそういう観点で立ち入った議論をどこかの段階ではっきりしなければいけない。ミーンズテスト、インカムテストを本気で考えなければいけない時が来ているのではないかと思いますね。

石会長

ありがとうございます。ほかにございますか。

どうぞ。

井上委員

今、島田委員の言われたこと、本当にそうだと思うのですけれども、あと訪問介護、これについて、今10%負担ということですけれども、やはりこういうものは自己負担をもっと高くすべきだろうと思うのですよね。確かに、所得の低い階層、この場合にはまあやむを得ないのかもしれないですけれども、そうでない方が非常にあるのではないのか。訪問介護を受けながら自分はゴルフに行ったり遊びに行くだとか、そういう連中もいっぱいいるわけですよね。そういう点ももっともっと考えないといけないのではないかと思います。だから、負担のできる人には負担させるということをはっきりしなければいけない。そのためには納番制というものも絶対に出てこなければいかん。だから、仕組み自身を全体的にいじくらないと、この一部だけをいじくってもだめだろうと思います。

石会長

ぼつぼつ次のテーマに行きたいのですが、どうぞ、何かあれば。

じゃ村上さん、最後に。

村上委員

給付費がすごい勢いで伸びているというご説明をいただいたわけですけれども、これはまだ5年ですよね。この4月で5年ということですから、本来この制度についての評価をする場合は、やはり10年とかそういう期間がないと実態はわからない。ここから先伸びるのか伸びないのかも、先ほどのやりとりだとわからない。検証されてない、想定されていないということなので、こういう問題についてはどこかで専門的にほかにやっていらっしゃるところがあるわけでしょう。この介護保険というのは10年後にどうなるかとか、20年後にどうなるかと、そういう姿を想定して多分始めたものだと思いますから、それとどう違っているのかということについてもついでにお聞き……。今日でなくてもいいですが。そうでないと、財政、あるいは税制としてこの問題を取り上げていくというにはちょっと材料不足ではないかという気がするのですけどね。

田近委員

もちろんそれがポイントで、こういう仕事をするときに、だから年金とも全く同じで、ある意味で幅のあるというか、推計というか、が欲しいし、その推計方法というのはみんなが使えるもの、それをバージョンアップしていくようなものがあればいい。今の具体的な、答えはだから、そういう研究者も政策担当者もシェアするものがなくて、厚生労働省の推計だと。

今後どうなるかというところは、厚生労働省の推計のあれで、1号被保険者の数に占める認定者がどのぐらい伸びるのか、それがまず1つのポイントで、それからどうしてこう増えたのかというと、施設のほうはもう頭打ちですから、居宅のほうでほとんど施設と同じようなものに姿を変えて、だっと流れている。もちろんほかにもありますけれども、そうすると、在宅、居宅サービスの利用上限に対して一体どのぐらい利用額が進むのか、そこの推計が、さっきこの推計の問題の中では起きている。そうすると、もし認定率がまだ上がる、それから利用上限に対しての利用額がまだ上がるとなると、我々がやったかなり厳しい推計にも近づき得るという感じです。

石会長

いずれにしても、このままほうっておいた日には持続可能ではないから、さまざまな要素で抑制を強めるような方向の制度、例えば民間のほうに行けとか、自己負担高めろとか、居宅のほうをもう少し整理しろとかいう話でしょう。言いたいことはね。要するにこのままだったら、村上さんの話を言えば、厚労省の資料を見る限り、どんどんいって、我々の負担も広がって、モラルハザードも起きてアウトになるということを正味言っているわけですね。

じゃ宮島さん、最後。そこら辺やられているでしょうから、まとめてください。

宮島委員

すみません。簡単に。

介護保険ができたときの一つの一番大きな背景というのは、少子高齢化が生み出したものでありますけれども、家族規模が縮小して、要するに在宅というか、居宅での介護能力が非常に落ちてしまったということがまずベースにあったということと、もう一つは、当時、措置制度というのを国費でやっていたわけですけれども、ただ、国費を投入するために、先ほどの奥野さんの意見ともしかしたら違うのかもしれませんが、かなり所得調査であるとか資格調査をきちんとやってきたというそのことをもって、一種の制約的な条件というのを、2つをどう外すかというようなことが一つの理由だったと思いますね。

ですから、そういう中でこういう増え方をしてきたということになりますと、先ほどご指摘がありましたように、1つは、自己負担が低いから保険で需要を誘発したという側面と、もう一つは、介護の場合には認定という作業があって、認定といういわば供給側が需要をつくり出すという側面で、ここのところの問題、田近さんがあまり触れていなかった。

つまり、私が聞いた話では、ケアマネージャーが多い地域とかなんかではどうしても多くなるということがあるので。ただ、医療と違って介護というのは、医療ほど情報の非対称性というか、サービスについての評価が専門家と供給側と需要側とでものすごく食い違うということがあるかどうかというあたりが、実は今後、介護保険の将来、特に考えるときに一つのポイントになるのかなと私は思っております。

石会長

いろいろな点、ありがとうございました。民間のほうで大いにやってもらえというのは日本側の制度設計のようだけれども、スウェーデンに行って僕の見聞した範囲だと、あれだけ公的な制度をつくってしまうと、民間に行くのを嫌がりますね。どんどん民間に行くのはけしからんというほうの発想の意見のほうが強いから。だから、公と民間の間の制度設計のどこまで成熟度を高めるかによって随分変わってくると思いますね。この議論は。我々はまだ公でしっかりつくってないから、少し民活だと言ってますけれども、つくり過ぎてしまうと、民活がかえって公の制度をつぶすという意味で不満を持つ人がいるという、ちょっと聞いていてそういう印象を持ちました。

では次、年金に行きましょう。介護はいつまでたっても終わらないといけませんから。じゃ翁さん、年金制度のご説明、ご意見、言ってください。

翁委員

今日は特に基礎年金の体系と財源のあり方ということで、ちょっと今までの議論を整理させていただきまして、さまざまな論点から、2ページ目にございます現行制度とスウェーデン型と、それから基礎年金税型ということで、論点をちょっとご説明していきたいと思っております。

それで、まず一番左側の現行制度、これは我が国の社会保険方式と呼ばれる年金のやり方でございまして、この下にあります基礎年金に厚生年金とか共済年金といった年金が乗っている形になっていますが、この基礎年金、今は給付費は社会保険料の負担をしていまして、今までは3分の1の国庫負担ということでやってきたわけでございますが、2分の1までの引上げが決まっているということでございます。

この図表では黒く塗ったシャドウの部分が国庫負担にいずれこれからなっていくということでございまして、ご承知のとおり、今後いろいろな税制改革も行った上で平成21年度までに2分の1に完全に引き上げるということに法律上なっているということです。

下のほう、ちょっと細かくて見にくいですけれども、ご承知のとおりですけれども、昨年度は年金課税強化と、それから平成17年度に関しては定率減税の見直しから生み出される増収分から、この3分の1から2分の1に引上げの一部を充当するということになっていますけれども、まだ2分の1には未達の状況になって、ここの議論が必要になっているということでございます。

それから右側のスウェーデン型といいますのは、スウェーデンで行われました最近の改革の理念系を示したものでございます。スウェーデンでは、ご承知のとおり、1990年代にいろいろ議論が重ねられて、99年から年金改革が実施に移されているわけでございますが、一部、今回の年金の改正で、例えば保険料に上限を設けるというところにつきましては、スウェーデンに近いような改革も行われたわけでございまして、特徴としては、確定拠出型賦課方式といったような特徴を持っている年金制度です。

特にもう一つここで取り上げておりますのは、所得比例年金に一元化して、そして国庫からはこのようにくさび型の国庫負担ということで、最低保障年金という形で国庫の負担というのを位置づけているということでございます。次のところで申し上げますけれども、所得の低い人のためのセーフティネットという位置づけで、国庫の負担ということを位置づけているというのが大体のイメージでございます。

それから一番右側は基礎年金税型ということで、これは図表にもありますように、グレイの部分、全国民に一律共通の基礎年金を税源で給付するということで、その上に所得比例の年金を乗せていくというイメージでございます。これはかなり近年議論されていて、例えば経済団体とか労働組合とか、そういったところの提言も出ていますけれども、実はいろいろひもといてみると、昭和50年代に、まだ基礎年金がなかったころ、昭和52年の当時の総理府で社会保障制度審議会というのがありまして、そこでも基礎年金について議論されたときに、全額国庫負担ということを理想として提言しているというものもありまして、こういった議論自体は決して新しいものではなくて、以前、基礎年金をどうするかというような議論をしていたときにもあった話だと思います。

幾つかの論点を[1]から[9]まで書き出しておりますが、これにあわせて少しずつお話を進めてまいりたいと思います。

まず、今もお話ししましたけれども、国庫負担、税金を投入する意義というものをどのようにそれぞれの制度がとらえているかということです。まず一番左は、もともと基礎年金なかったところにこういった新しい制度を導入したということで、それは国民皆年金ということを目指すべきだという議論で、昭和60年に基礎年金が導入されたということもあって、いろいろな言い方がされていますけれども、一つの考え方としては、皆年金を実現するためのコストであるという考え方が1つできるかと思います。

ただ、もちろん、それならなぜそれが3分の1だったり2分の1だったりするのかということは不明確であるという批判もございますし、皆年金実現のためのコストというのはどういう意味かということですけれども、これは、今申し上げたように、昭和60年に基礎年金が導入されたときには、当時まだ農業の従事者とか第一次産業に従事しておられる方も多かったですし、そういった方々とか自営業者、それから短時間の就労者、それから失業者とか、こういった社会保険料支払い能力の低い人々を強制加入にするためのコストであるという考え方ができるだろうという考え方が1つあったと思います。

ただ、2分の1の意味が不明確だという批判がございますし、また、やはり先ほど田近先生のお話もありましたけれども、保険料負担はもうできないと。だから国庫負担が必要なのだという議論もあったりして、そういった意味でちょっといろいろな議論がされているなという印象は持っておりますが、1つはそういったところですが、これに対しての批判もあるということでございます。

それから次のところのスウェーデン型というのは、まさに、先ほど申し上げたように、所得の低い高齢者を対象とした最低保障年金という、老後保障のセーフティネットという位置づけであるということかと思います。

それから一番右側は、まさに全国民一律に老後生活を保障するためのものとして税金を投入するのだという考え方であるかと思います。

次に理念ということですけれども、これは所得再分配政策というものをどのように考えるかということだと思いますが、一番左の現在の年金というのは、世代間の所得再分配も行っておりますし、実は今申し上げたように、基礎年金というところや、厚生年金というところの複雑な制度によって、サラリーマンの年金である厚生年金や、または共済年金などから、いわばこういった自営業者に対して所得再分配が行われているという観点で、例えば空洞化がどんどん進んでいきますと、これはどんどんサラリーマンなどの厚生年金から財源が拠出されるというような仕組みになっていて、これが結構アンフェアなのではないかという批判が出てきているということだと思います。

これは先ほど申し上げたように、皆年金ということを実現するためのいわばコストとしてビルトインされ、かつ、最終的には国庫の特別国庫負担という形で国民負担も想定している制度ですので、こういった所得再分配を年金でも実施している制度であるというところが特徴かと思います。

真ん中のスウェーデン型というのと右側の基礎年金型というのは、そこのところが少しクリアな感じがしていて、これは税によって所得再分配はするけれども、年金は完全に所得比例であると。ですから、例えば自営業者も所得比例の年金に加わっていくということにすれば、稼いだ分だけ将来年金はもらえると、余り稼がなければ年金はもらえないというような制度設計で、年金は所得比例にして、ただ、所得再分配は税によって行うというのが特徴である、これが明確に切り離されているというところが特徴かと思います。

基礎年金税型も、そういった所得比例の年金と、それから所得再分配政策としての全国民共通の基礎年金という形ですが、ただ、これに関しては、やはり大きな政府になると。全国民一律に基礎年金を税でやれば非常に大きな負担になっていくという議論がございます。

仮に2025年の基礎年金を現在価値に割り戻して、大体16兆円ぐらいですが、現在の消費税ということで考えますと、大体7%、地方交付税を勘案すると12%程度ぐらいまで消費税を上げざるを得ないというイメージになるということでございます。

次に年金維持の徴収コスト、それから所得捕捉体制の整備ということからこの3つの制度を比較いたしますと、ご承知のとおり、現行制度に関しましては未納者がどんどん増えていると。2003年度末ではまたさらに445万人ということになっていますし、その意味で、今社会保険庁でどんどん強化しているわけですけれども、非常に保険料を徴収するということについてのコストがどんどん高まる。そういった制度になってしまっていて、非常にコストの高い形になってきているということが言えるかと思います。

真ん中のスウェーデン方式については、やはり技術的な問題点が多く指摘されているところです。低所得者の認定については非常にコストが高いと言われております。下に書いてございます(注5)、先ほどご紹介ありましたミーンズテスト、所得や財産保有の状況を調査するという制度が特に低所得者ということをきちんと明確にするために重要になっていくということで、今生活保護などでも行われていますが、これが規模が大きくなれば非常に重要なことになってきますし、それからスウェーデンなんかではすでに長い間、個人の所得のデータが蓄積されていて、その上で初めてこういった制度が可能になっているわけですけれども、そういったデータの蓄積は今のところ日本にはないということで、フィージビリティが非常に問題だとされております。

それから、ここに関して納番制のことが議論されることがあるのですが、確かに課税の適正化と効率化のために納番制というのを導入することは今後の検討課題だと思っているのですけれども、ただ、年金のために納番制を導入するということに関しては、必ずしもそうではないのではないかと思っています。

つまり、納番制は相互課税のもとで、例えば金融所得とか給与所得を合算するといったときには非常に効果があると思うのですけれども、年金に係る事業者の所得把握というのは、この納番制では事業者の売り上げというものは一つ一つの消費者が小売店から発行された領収書を全部提出して、それを突き合わせるという作業が必要で、そういうことは事実上できませんし、それから売り上げから所得を出すためにはいろいろな控除とか繰延を計算しなければならないわけですけれども、それは納番制によってできるものではないというような意味で、納番制をやることによって、この事業者の所得が全部把握できるというものではないという理解だと思っております。

いずれにしましても、自営業者も含めて最低保障年金というところに、後ほどもお話ししますが、モラルハザードが起きないように所得をきちんと捕捉することが必要ですが、その整備のためには、これは数年でできるような話ではなかなかないということであるかと思います。

それから一番右ですけれども、これは仮に例えば消費税とかで基礎年金を賄うということにすれば、消費税自体も決してこれは完全な徴収ができているということではないわけですけれども、比較的コストというのが今の保険料なんかに比べて少ないのではないかとか、徴収の確実性が高いのではないかということが指摘されているということでございます。

4番目ですが、負担の帰着ということについてはどう考えるかということですが、現行制度につきましては社会保険料というもので賄っているということで、やはり現役世代、それから企業もそれを負担しておりますから、年金に関してはそういった企業や現役世代の負担が大きいということになっています。

もちろんこれはもう着手しておりますけれども、年金課税の強化ということによって、高齢世帯内の受給の公平さを高めていくということはこの制度でも可能ではあるかと思います。ただ、そういった問題、そういった不満があるというところでございます。

それからスウェーデン方式については、これは所得比例年金にしていくということで、さらに、例えばこの年金の税の部分を消費税にしていくというようなことになりますと、ここの部分に関しては高齢者の方も消費をすれば払う、専業主婦の方でも消費をすれば払う、低所得者の方も消費すれば払うということで、全体としてはその保険料とか負担というのはやや小さくなるということであるかと思います。

右側の基礎年金税型に関しても、もちろんこれは相続税とかいろいろな可能性があると思いますが、仮にこれを消費税とした場合には、今の現役世代とか企業だけに負担が大きくなるということが指摘されていますけれども、そういったことはやや変わってくる可能性がございます。

それから5番目に自営業者の年金からのドロップアウトということでございますが、先ほど申し上げましたように、現行制度では未納、未加入の問題が非常に深刻になっていると。未納というのは2年間連続で払っておられない方が445万人、それから未加入の方、少し減っていますけれども、そういう問題もありますし、それから所得が非常に低い方は保険料が半額とか全額とか免除されている。そういった方が非常に増えているということで、これは先ほど申し上げたように、1対1ということではなくて、その方々の問題だけではなくて、サラリーマンとかそういった年金にも響く問題となっているということであるかと思います。

それからスウェーデン方式に関しましては、所得比例年金ということになりますので、さっき申し上げたように、所得が少ないほどもらえる年金が減るというインセンティブが働く年金にしていけば、自営業者の方も払う。今は日本の自営業者の方は定額でございますけれども、そういうインセンティブが働くような年金制度にしていけば、それは少なくなっていく可能性があると思います。

それから基礎年金のところに関しては、きっちりもう全員とっていくということにしていくのであれば、これは最もドロップアウトは少なくなってくる可能性があるかと思います。

それから6番目の第3号問題。年金で第1号というのは自営業者の方、第2号が普通のサラリーマン、第3号が専業主婦の方でございますが、この第1号とか第2号の方から見ると、夫は払っているわけですけれども、個人単位で見ると、専業主婦の方は所得がないということで負担が免除されているのではないかということで、ずっとこの問題が年金の中では批判されてきたわけでございます。この問題というのは、現行制度のままでは、年金分割とかそういうやり方はございますけれども、社会保険料という形でやろうとすると、所得がないというところがネックになるので、その点において解決が難しいということが言えると思います。

それからスウェーデン型に関しては、年金分割というのを行って、夫が稼いだものを夫と妻それぞれ稼いだようにするという形にすれば、主婦の方も低所得者にならないで済みますので、そういうことをすると最低保障年金にならないということがあって、年金分割も伴って、そして消費税ということにしていきますと、比較的解決しやすい可能性があるかと思います。

それから基礎年金税型にしますと、これはよく一橋の高山先生なんかおっしゃっているのですけれども、消費税にすることによって、この第3号問題というのはかなり解決するのではないかというような議論がされていて、結局そういう方も一定の負担をすることによってこの問題を解決するという考え方があるということだと思います。

それから低所得者のモラルハザードということですが、社会保険方式というのはまさに払わなければもらえないということでございますので、一応受益と負担が結びつくということになっていまして、理念的に完全な社会保険方式であれば、これはかなりはっきりとしたモラルハザード防止策になるということが言えるかと思います。

ただ、現在の制度というのは、さっき申し上げたように、国庫負担というのが3分の1、これから2分の1に引き上げようとしていて、その関係は必ずしも不明確で、1対1の関係にその受益と負担がなっているわけではないという批判がございます。

それから(注4)のところにも書いてございますけれども、生活保護の支給水準と基礎年金の給付額を比べますと、基礎年金の給付額というのは6万6,000円、月もらえるのですけれども、例えば60~69歳の単身の方の生活扶助というのは月7万9,600円で、しかも住宅扶助がつきますと5万3,700円、これを足すと13万円を超える額がもらえてしまうということで、この点から、保険料を支払うインセンティブに欠けてしまうのではないかということも言われているということでございます。

それからスウェーデン方式というのは、これは低所得者のモラルハザードがさらに大きくなってしまう可能性があるということだと思います。つまり、所得を過小申告してしまう。そして一方で最低保障金は満額受給してしまうというような形をとれますので、一層このモラルハザードの問題というのは注意しないと大きくなってしまう可能性がある。

一方、ただ、財源を消費税にしていくということであれば、こういった方々も一たん最低保障の部分の財源を払うことになりますので、その部分は多少問題クリアするという可能性もあると思います。

それから基礎年金税型というのは、現行制度に比べれば低所得者のモラルハザードの問題はやや大きくなるという可能性はあるのかなと思います。

それから財政赤字への影響ということですが、これは2分の1までに仮にとどめられるのであれば、もちろん高齢化の問題とかそういうのはありますけれども、大きくないという可能性はありますけれども、ただ、空洞化が進展していきますと、特別にまた国庫負担していかなければならないという部分が出てきますね。ここは留意をする必要があると思います。

それからスウェーデン型というのは、このくさび型がどのぐらい大きくなるのかということによって、相当綿密な検討をしていかないといけないと思います。実はスウェーデンの場合も、このくさび型の部分だけでなくて、所得比例年金に対しても一般財源を投入しているようでございます。例えば従前所得を保障するために、失業時とか、出産時とか、介護時とか、こういった部分の所得を保障するために一般財源を投入しているという例もありますし、また女性の就業率がすごく低いと、これは先ほどの年金分割との関係もありますけれども、最低保障年金というのが女性の方で増えてしまうという可能性もございまして、これは一概に本当に小さくなるのかどうなのかということについては検討する必要があると思います。

それから一番右の基礎年金税型ということに関しましては、この財政赤字というのは大きくなると考えられるわけです。先ほど申し上げたように、全部消費税とすれば、2025年、16兆円で7~12%と申し上げました。ただ、これは1つ解決策として、高額所得者への課税強化というのをもっと大きくしていくという可能性があるのではないかと思います。

(注7)でカナダのクローバック制度というのを書いておりますけれども、高額所得者に関して、年金も含めて所得が年金5万ドルを超える場合、1階部分の基礎年金につきまして、これは全部国庫負担ですけれども、この年金給付分の一部または全額をクローバックする、取り戻すというような制度にしております。これはカナダで、1989年に財政赤字の克服のために導入された制度でございます。このような形で、クローバックの部分を大きくしていけば、少しスウェーデン型に似た形のくさび型というのもつくっていくことが民営でできるのではないかという感じを持っております。

それから最後に逆進性の問題ですが、この間、宮島先生も社会保険料と消費税と似ているというようなことをおっしゃっていたのですけれども、保険料というのは定額保険料でございますので、そもそも逆進性があるという批判もございますし、それから消費税にしていった場合には、例えば一番右側の基礎年金税型というものにした場合には、消費税を財源にしてしまうと、これは逆進性の問題は当然出てくるということだと思います。

次のページの、この間宮島先生もご紹介された、いわゆる理念系で整理すると、一番左の現行制度というのは共助というアクティベーション、社会保険方式に近い、それからスウェーデン方式というのは自助というワークフェアに近い、それで一番右の基礎年金というのはいわゆるベイシックインカム、公助というものに近い発想だと思います。

それぞれ一長一短あって、ではどう考えるかということですけれども、私は、やはり真ん中のスウェーデンというのは理念としてはすぐれているのですけれども、現実にこれを入れようとするとなかなか難しいということだと思っています。本来は2つに1つで、純粋な社会保険方式にしていくという考え方は一つの方式だと思います。ただ、現在のやり方は必ずしも純粋な社会保険方式ではないと思っていますので、これをやっていくという考え方はあると思っています。ただ、これはなかなか難しいのではないか。

そう考えると、やはり私は、例えば一番右の基礎年金税方式で、例えばクローバックを入れるという形をしていって、そしてスウェーデンの理念系に近いような形でやっていくという考え方が1つ検討に値するのではないかと考えています。

石会長

ありがとうございました。大変参考になりました。いろいろな類型がありますけれども、この3つぐらいに整理していただきますと議論がしやすいと思いますね。どうぞ、いろいろご意見なりご質問あろうかと思いますが。

翁さんね、この基礎年金税型で、高さでどのぐらいもらえるのですか。今6万6,000円だよね。そうすると、これ、デンマークなんて17~18万もらっているわけですね。そのぐらい払うつもり? 日本で基礎年金6万6,000円しかもらえないわけよ。それをまさに基礎年金で本当にベイシックにやるのだったら、3倍ぐらいやらないと。ただ、もたないよなあ。どのぐらいのことをお考えかと思って。

翁委員

いや、そこはまだいろいろ議論がありますし、多分、その6万6,000円でもたないということは確かだということだと思います。

石会長

どうぞ、島田さん。

島田委員

今会長の言われたことですけれども、高くしていけば多くの国民が、財布のことは関係なく満足するかもしれませんが、安くしていくと、財布はもつけれども国民は納得しない。その合意形成というのはどういうふうにやるのですかね。

石会長

いや、島田さんに聞きたいのだよ。何かアイデアないですか(笑)。

島田委員

そこがとまってますよ、この年金の議論はね。途中まで行くのだけれども。

石会長

みんな触れたくないのだよ、そこ。タブーなのだな。

島田委員

いざ具体的な姿が出てくると思考がとまって、ハワイへゴルフへ行っちゃおうみたいなことになってしまっているのですね。だから、ちょっと民族思考停止ですよ、これ。本当に困る。

石会長

じゃ島田さんもとまっているのだな。

島田委員

頑張ってとめないように(笑)。

石会長

ほかにどうでしょうか。

奥野さん、どうぞ。

奥野委員

今の島田さんと会長がおっしゃったことですけれども、年金の基礎年金部分をどうするかという議論だけをしても、多分、思考停止になってしまう。まさに介護と医療と、つまり社会保障全体をどうするのかというその最低保障水準をどこにセットするのかという議論をしないと、多分、議論はできないのではないかなあと思いますけれども。

石会長

宮島さん、例の社会保障の在り方に関する懇談会でしょっちゅう一体化、一体化と言っているではないですか。今の奥野さんの言った話ね。何かブレークスルーありますか。一体化という言葉はいいのだけれども、難しいよね。どう進めます?

宮島委員

それはもちろんわかりませんが、奥野さん、後でまた敷衍していただくことになると思いますけれども、例えば先ほどの介護の自己負担、それから医療の自己負担、それから今の介護の特別保険料で年金からとっている保険料、こういうものまで考慮して、例えば基礎的に給付水準を考えるべきかどうかとか、その辺はまさに、個別にやっていくと一つ一つはベストの解かもしれないけれども、合わせて見ると全然整合性がとれないというようなことが起こり得ると思います。

だから、給付と、特に現金給付の全体のレベルの話と、それから負担の、全体をまとめた負担のレベルの話はどこまでカバーすべきかというのは、ちょっと田近さんにも、どこまでカバーすべきかというのはわかりませんが、いずれにしても、もし一体的に考えるとなると、一つのポイントは、今言ったように、そういうふうになってきて、だから、その給付水準のことをなかなかうまく触れられないというのは、おそらく僕はそこにあると思うのですね。

石会長

悩みは尽きないですね。ほかに何かございませんか。よろしゅうございますか。

じゃ最後にまとめてください。

田近委員

いや、まとめられないですが、税か保険料か、ベイシックインカムというふうに割り切れるとある意味ですっきり、つまり、ベイシックな部分は要するにタックスというか、社会保険ではないのだと。次は、だから一律に上げるか上げないかだと思うのですよね。

それで、スウェーデンの図で、これはどうかわからないけれども、所得全部を考えるとして、低いほうにはげたをはかせてあげるけれども、要するに、この斜めの線のゼロのところから出発するとして、そうすると三角形の部分で済むのですよね。だから、どこかでベイシックインカムを上げるけれども、所得が増えてくれば次第に減っていくというのができれば、しかも全体の給付を考えて、少しは済むのかなと。だから、そこまで割り切れるかということで、何か、基礎年金の部分の1階部分を全部消費税で上げるというのは、さっきから出ているように、頭の中の酸素がなくなってしまったような気がするのですけどね。仕組みとして。

石会長

この翁さんの図、スウェーデン型のところの黒いところは結構大きく書かれているけれども、これが意外に小さい図もあるのですよ(笑)。だから、トリッキーなのだよな、これ。これがかなりあれですよ。税金で負担してやろうというイメージが出てますけれども、民主党なんかから見たら、ほんのちょこっとついているぐらいですからね。これはこれから議論しなければいけない。

じゃどうぞ、猪瀬さん。

猪瀬委員

今の話で、生活保護というのは大体幾らぐらいもらっているのですかね。つまり、何を根拠にして生活保護というのは幾らくれるということになっているのですかね。

石会長

それはいろいろやっているでしょう。どなたかご説明……じゃどうぞ、宮島さん、専門だから。

宮島委員

いや、専門ではないのですが、生活保護というのは、もちろん生活扶助とか住宅扶助とか医療扶助とかいろいろありますけれども、基本的なのは生活扶助と住宅扶助ですけれども、今全国の地域で3等級2段階だったかな、全部で6段階ありまして、東京なんか、一番高いところだと18万ぐらいですかね、普通の、高齢者だけでなくて、標準家族で。一番低いところは12万ぐらいでしょうか。そのぐらいのあれになってます。

ただ、先ほどちょっと説明でやや誤解があったと思いますけれども、生活保護を受ける場合には、基本的に言うと、まず家族がいて仕送りができるかどうかという審査があり、それから資産を持っているかどうかという審査があって、例えば自動車持ってはいけないとか、カラーテレビはだめだとか、場合によっては乾燥機がくっついたり、それから所得が、働いているかどうか、そういう審査がついた上での配賦される金額ですから、年金は別に、どんな家庭であろうと、どんな所得持とうと、それは権利として授受できますので、だから、そこをちょっと比べて大きい小さいという議論は、私は少し違うのかなという印象は持っています。

すみません。お答えになったか……。それはむしろ矢野さんが詳しいかもしれないです。

猪瀬委員

でも、関係あるでしょう、それは。つまり、最低の生活って何かということを基準に、生活保護を出すのだって、クーラー要るか要らないかとかいう問題と、高齢化して、じゃ6万6,000円でいいのかという問題と関係があるはずですよ。論理的に。それを分けて、単に行政が違うという言い方では、これは全然話にならないですよ。

石会長

矢野さん、何かある? あなた、専門家のようだから。

矢野主計局企画官

地域によって支給単価が若干違うとか、あるいは家族構成、世帯構成員数によって違いますけれども、大体高齢者の方1人当たり、生活扶助につきましては6万ないし8万ぐらいとお考えいただければいいと思います。したがって、大ざっぱに言いますと、基礎年金の支給額と大体どっこいどっこいぐらいの金額。

で、今、猪瀬先生がおっしゃったように、何じゃそれはと。最低生活保障という、憲法25条に端を発する生活保護の支給額と老後の生活保障と、どっちも生活保障なのですけれども、最低というのと老後のという、わかったようなわからないような説明があって、生活保障のためのお金が同じような金額になっていて、片や税金を納めていなくても生活困窮者に対しては支給される、片や保険料を納めていないと支給されないというこの違い、何なのだというご論議はよくあって、特にその金額が近似しているために、保険料を納めなくても、結局、基礎年金相当額ぐらいもらえてしまうではないかというモラルハザードが起こっているというご指摘があることは事実であります。

ちょっと、それ以上は控えますが。

石会長

次に行きましょうか。この問題も今後また検討しなければいけないでしょう。

最後に、林さんのほうから地方財政と社会保障の関係を整理していただきましょうか。では25分ぐらいで。

林委員

少し内容盛りだくさんの分を用意してきましたので、絞り込んでご説明を申し上げます。

社会保障、年金、医療、その他というぐあいに分けますと、地方財政は生活保護、福祉サービス等を中心としましたその他の社会保障となろうかと思います。今日は福祉サービスに限りまして、膨張してきた実態とその要因と、そして今後の福祉政策のあり方についてお話を申し上げたいと思います。

図1をご覧いただきたいと思いますが、2002年度の決算額で、民生費が市町村と都道府県の歳出純計、14兆円ということになっています。この中にはもちろん生活保護等が含まれています。歳出総額の15.1%ということで、90年代に入ってから徐々にこの比率が高くなってきているという実態がございます。それから途中、70~76年のところでこの比率が急激に上がっているというのは、これはまた後ほど申し上げますけれども、要するに福祉国家の建設の中でさまざまな制度ができ上がってきたということであります。

図2を見ていただきますと、民生費の対GDP比率、民生費は当然増えるわけでありますけれども、それを支えるGDPとの相対的な関係がどのようになっているのかということが非常に重要で、2002年度でいきますと、対GDP比率が2.89%、2.9%になっているということでございます。

実はこの比率というのは、1ページのところに少し、EXP/GDP=ということで算数の式を書かせていただいておりますが、右辺のEXP/Pというのは人口1人当たりの民生費。それ にP/GDPですから、人口1人当たりGDPの逆数を掛けたものに分解することが可能だということで、70年代に、このグラフでいきますと、かなり民生費の対GDP比率が伸びております。

これは1つは、経済成長が安定成長期に移ったことによって、右辺の右側、第2項の部分が大きく伸びなくなったということがあります。しかしながら重要なことは 、EXP/P、人口1人当たりの民生費がこの70年代に非常に大きく伸びているということであろうかと思います。これは先ほど言いましたように、いわゆる福祉国家の建設と、それからその中でさまざまナショナルミニマムの考え方が確立していくといったようなこと、あるいは基本的人権という考え方が生存権から生活権に移っていくといったようなことの中で、福祉関係の経費が非常に大きく伸びてきたということであろうかと思います。

そこで、もう少しこのあたりの要因を細かく分解して見てみようということで、2ページの図の下のところをご覧いただきたいと思いますが、福祉支出の対GDP比率の分解ということで、Οwこれを福祉関連のアウトプットといたします。pwをアウトプット1単位当たりの価格、これを掛け算しますと、インプットの金額=アウトプットの金額ということになります。その次のOyですが、これは福祉サービス以外のアウトプット、つまり、これは民間財とお考えいただければいいかと思います。それからpyを民間財1単位当たりの価格といたします。そうすると、第4式のような形に書くことが可能であります。

EXP/GDE=ということで、分解しますとpw/py、これは民間財の価格と福祉サービスの価格の相対価格、相対比です。そしてOw/Pwというのは福祉サービスを受ける人、実際に福祉サービスの対象になっている人1人当たりのアウトプットの量でございます。そして次はPw/Pですから、人口に対して実際に福祉サービスを受ける人の割合。そして最後がP/Oyということで、これは経済成長1人当たりのGDPとお考えいただければと思います。このように分解しますと、福祉の給付の対GDP比率がなぜ上がってきているのかということが明確になります。

まず1つ目のpw/py、つまり、福祉サービスと他の生産物の相対価格の変化でありますが、これは1つは、民間財の場合には、いわゆる人件費の増加というのを労働生産性の上昇で吸収することが可能だということと、そして一方、福祉サービスは労働集約的でありますし、人的サービスそのものがサービスだということがありますので、そういう意味では、労働生産性を上げることが非常に難しいということで、経済成長とともに人件費が、労働コストが上がっていくにつれて、pw/pyが上がっていくということは福祉の一つの宿命であろうかと思います。

ただ、pw/py、つまり、福祉サービスの相対価格が上昇していきますと、当然、この福祉サービスがマーケットで供給されているということでありましたら相対価格が上がりますから、需要が減っていくはずだと。ところが、実際には福祉サービスというのはマーケットメカニズムの中で供給されているわけではなくて、かなりの部分が公費で負担されているということがありますので、相対価格が上がったからといって、アウトプット、あるいは需要の量が落ちないということがございます。

そのことが次の第2項のOw/Pwに効いてまいります。つまり、受給者1人当たりのアウトプットの量。この式は福祉サービスの受給両面からの影響を受けることになります。所得水準が上がりますと、私たちの消費生活というのは非常に高度化、多様化してまいります。それと同じように、福祉サービスについてもこの同じ現象が起こっていると。

先ほど申し上げましたように、基本的人権の考え方も変わっておりますし、それから貧困の絶対水準、これが先ほどの生活保護の基準もそうですけれども、絶対的なものではなくて、経済成長とともに貧困の水準も上がっていくのだという、いわゆる相対的なものとして貧困水準をとらえるといったようなことの中で、かなり福祉サービスの質が変わってきている。

それから住民が生きていく上で必要不可欠な、いわゆる救貧対策的、あるいは防貧対策的な福祉サービスであった時代から、その場合には所得水準等でいわゆる選別をして、福祉サービスを受けることができるかどうかは選別主義的な福祉であったということになりますが、それが最近では便利で快適な生活の達成を目的とするような生活支援型の福祉に守備範囲を広げてきていると。つまり、所得水準に関係なく受給することのできるようないわゆる普遍主義的なもの、こういうものに変わってきた。

このようになりますと、例えば救貧対策的な福祉サービスの場合でしたら、例えば経済成長が上がったとしても、もちろん相対的にはその水準は上がっていきますけれども、いわゆるミニマムという制約がありますから、供給面での縛りがかかります。したがって、経済成長とともに救貧的な福祉サービスの水準が上がっていくということはそれほど大きく目立たないわけでありますが、しかしながら、福祉サービスが普遍主義的、生活支援型のところにまで移ってまいりますと、当然、所得水準が上がればさらに需要が増えるといったような、そういう意味で、Ow/Pwが、いわゆる弾性値が大きくなって増えていくというようなことが起こってくるのだろうと思います。

それからその次に、人口に占めるPwの割合であります。これは高齢化が進めば当然高齢者給付の対象になるわけですから、このPw/Pが増えていくということになります。しかしながら、それとともに、福祉の守備範囲が選別主義的なものから普遍主義的なものへというように質が変わっていくことによってこのPw/Pが大きくなっているということも実際に起こっていることであろうかと思います。

ちょっと順序が前後いたしますが、図4を見ていただければと思います。これは保育所入所児童世帯の課税区分別構成比の推移を示したものでございまして、データが随分古くて、直近のものが見つかりません。94年が一番新しいものになっておりますが、1960年度のときの所得階層区分を見ていただきますと、5.6%の家庭が生活保護世帯、それから74.7%が所得税の非課税世帯でございます。つまり、8割はいわゆる救貧対策、あるいは防貧対策という本来の福祉、社会保障としての福祉を目的にして子供を保育所に預けているという時代でございました。

ところが、94年ということになりますと、これは年々、生活保護世帯及び所得税非課税世帯が減っておりまして、約4分の3は所得税の課税世帯ということになっております。ということは、現在の児童福祉のサービスがいわゆる救貧、防貧対策というところから、生活支援、あるいは女性の社会進出を支援するといったようなところに大きく踏み出してきているということになるのだろうと思います。

つまり、これは財政の役割から言いますと、従来の福祉というのはいわゆる社会保障で所得再分配機能だと言われていたものが、現在の福祉というのは、もちろんその部分はありますけれども、いわゆる資源配分機能の割合を非常に大きくしてきているということになるのだろうと思います。

ということになりますと、現在の福祉サービスについては、例えば住民、国民が利用するかしないかということの選択が可能になっていると。そして、それを個人がサービスを受けることによって出てくる、ああ、助かってよかったとか、そういう外部性ですね。いわゆるパレート最適、再分配というような言葉がありますけれども、そういう外部性はどんどん小さくなってきているのではないかということ。

それから住民選好も非常に多様になってきている。救貧対策の場合には、受けるか受けないかという選択の余地がありません。しかも、ニーズはおそらく画一的だと。ところが、現在の福祉サービスというのは、そういう意味でかなり領域を広げてきておりますから、利用者のニーズが非常に多様になってきているということが言えるのではないかと思います。

このように、福祉の領域が随分拡大して、しかも中身も大きく変化してきているということを考えますと、財源調達のあり方だとか、あるいは福祉サービスの供給のあり方だとかいうことが随分大きく変化して当然ではないかという気がいたします。

このような実態を踏まえて、福祉政策の財源調達というところに少し移りたいと思いますが、表1は民生費の財源構成を示したものでございます。老人保健だとか、あるいは介護保険が入っておりますので、少し財源の内訳が変わっておりますけれども、30年たってもそれほど大きく変化しているわけではないということを申し上げたいと思います。

それから表2でございますが、厚生労働省所管の対地方団体補助金・負担金、これは実は2001年度予算に計上された補助金・負担金でございます。その予算に計上されたものがいつの時点で創設されたのかを集計したものでございまして、交付対象とかいったような属性が違う場合にはそれをそれぞれ1件とカウントしております。

この負担金をご覧いただきますと、50~59年のときに、金額ベースでいきますと22%がそのときにでき上がっている。それから件数はそのときに15件、35.7%ということになります。

次、補助金でありますが、これは40年代、50年代、60年代、70年代、このように金額ベースでいきますと10%台、あるいは20%台の創設が行われてきている。これは地方公共団体がさまざま単独事業で福祉政策をやり出したときに、1つは機関委任事務として、国の事務として国が責任を持ってやるという方法と、地方の福祉事業、単独事業でやっていたものに対して補助金を交付することによって補助事業化する、そのようなことがこの50~70年代に多く行われてきたと。90~99年の、件数でいきますと16.9%、それから2000年からも15.3%というように、財政が悪くなってからもまだ補助金が創設されているということがおわかりいただけるかと思います。

このように、先ほど、福祉サービスの中身、質が非常に大きく変わったと申し上げましたけれども、従来の救貧型、防貧型の福祉政策のときには、責任は、やはり再分配ですから国の責任だということで国が財源を面倒見ると。そしてサービスの水準だとか、あるいは内容は画一的であった。これはそれなりに意味があったわけでありますけれども、現在の福祉サービスを考えたときに、果たして救貧対策、防貧対策の当時の財源調達方式でいいのだろうかということをやはりもう一度考えてみなければいけない。

これは補助金・負担金の問題というよりはむしろ、いわゆる福祉サービスそのものの財源のあり方をもう一度抜本的に考えなければならない、そういう時代に来ているのではないかということを申し上げたいと思います。

それから図6をご覧いただきたいと思いますが、これは負担金カット前とカット後のグラフでございます。この負担金カット後というのは、実は義務づけの部分が変わらないままに、負担金だけを、つまり国庫負担率を下げて財源補填をしなければどういうことになるかということを示したものでございます。

つまり、一般財源をその部分、負担金のカットの部分だけ増やさなければいけないということになりますから、その部分、財源補填しなければ福祉全体の事業費が少なくなるということになります。したがいまして、義務づけをそのままにして事業量が変わらないのであれば、この負担金のカットの部分は、やはり交付税なり一般財源で補填しないことには、福祉サービスが低下するということになります。

ただ、この場合に、こういうぐあいにすることによって地方の単独事業が減るから、それはそれでいいではないかという意見があるかもしれませんが、それはちょっと私はまた別の次元で考えなければいけないことではないかと思っております。それはそういう図でございます。

それから負担の問題と同時に、福祉サービスの供給のあり方、つまり、福祉サービスをどのように生産していくかという問題が残っているのではないかと思います。レジュメでいきますと、「福祉政策の効率化」ということでございます。まず第1に、仮に救貧、防貧対策的な福祉サービスであったからといって、これを公が直営でサービスを提供しなければならないということではありません。保育児童1人当たりの児童福祉費につきまして、大阪府下の自治体を使って計算してみました。そうしますと、児童1人当たりの福祉費が、保育所の公立比率の高いところほど明らかに児童1人当たりの福祉費が高くなっている。それからCは財政力指数でございます。つまり、財政力指数が高いところほど1人当たりの児童福祉費が多くなっているということ。それからDは保育料の収入。これは厚生労働省基準がありますけれども、実はそれに従って保育料を徴収しているところもあれば、おくれて保育料を徴収するというところもございます。児童福祉費に占める保育料の収入の比率が低いところほど児童福祉費が高くなっている。これはちょっと分母に児童福祉費が入っていますので、計算上ちょっと問題がありますけれども、傾向としては、要するに保育料収入を抑えているところほど児童福祉費が逆に高くなっているということが政策的に言えるのではないかと思います。

このように考えますと、同じ福祉サービスだとしても、民間でやれるところは民間が提供するというような、いわゆるアウトソーシングを進めていくことによって福祉のコストを引き下げていくということがやはり必要なのではないかと思います。

それから第2番目はターゲット効率性の追求ということでございます。先ほど申し上げましたように、福祉政策が救貧、防貧対策から生活支援に変わっている。ということになりますと、私は、その救貧、防貧対策の部分に適用していたものをそのまま生活支援の部分にまで適用するということが実は現在行われているのではないかと思います。したがいまして、社会保障の部分としての福祉政策、これについては、やはり本当に必要なところに重点的にその資源を投入するということが必要なのではないかと思います。

これはどういうことかといいますと、例えば所得制限をきちっと導入するとか、あるいは審査を厳格にするとか、あるいはとりあえずは実費を払った上で、あるいはクーポン券を個人給付という形で提供するといったようなことが必要なのではないかと思います。

それから生活支援の部分にいわゆる市場原理を極力導入することによって、利用者のニーズにこたえられるような多様なサービスを提供する。ただし、その場合には、救貧、防貧対策的な財源構成ではなくて、いわゆる利用者にかかるコストについてはきちっと徴収するといったようなことも考えてしかるべきではないかと思います。

福祉サービスにつきましては、救貧、防貧対策的なものから始まっておりますから、そういう意味では料金が無償で提供するというところから始まって、そして所得水準が高ければ払ってもらいましょうという考え方で料金体系ができ上がっているように思います。しかしながら、現在の福祉サービスを考えますと、むしろ利用者負担をきちっと徴収した上で、逆に所得水準に応じて軽減していくと。これは結果的に同じことになったとしても、その考え方というのは全く違うわけでありますから、そのあたりの料金のとり方を考えていかなければいけない。これが受益者負担をもっと活用すべきではないかということでございます。

少し早口でお話を申し上げました。以上です。

石会長

ありがとうございました。綿密な分析をしていただきました。いろいろなことがわかったと思います。

あと15分ほど時間ございますので、今のご説明、今の意見発表につきまして、どうぞ質疑、あるいはコメントいただきたいと思います。どなたでも結構です。いかがでしょうか。

林さんもやはり現状のままではパンクしてしまうと思っているのね。多分。そうすると、国と地方のすみ分け、その辺は何か問題意識ありますか。

林委員

例えば福祉が、時間軸で考えますと、当初はいわゆる救貧、防貧対策だったのですね。だから国の役割だったのですね。それが生活支援型のウェイトが高くなってきていると。そうすると、やはりこれはもう国の役割ではなくて、むしろ地方の役割だと。そのためには、税でやるのか、あるいは利用者負担でやるのかということは、これは当然住民が考えればいいというようなことになりますから、むしろやはり、もちろんベースの再分配の部分は国がやるべきだと思いますが、かなりその地方の部分がウェイトが大きくなってきていると思うのですね。それをまだ国がどうも関与しているという感じがあるわけです。

ただ難しいのは、例えば児童福祉なんかの場合に、その次の段階として、いわゆる少子化対策というような、つまり、子供は公共財だみたいな考え方が出てくると、これはちょっとまた地方の役割ではなくて、ひょっとすると国の役割になるかもしれない。ですから、時間軸に応じて、福祉サービスの中身、あるいは国民のニーズが大きく変わってきているということをもう一回明確にしないと、最初にでき上がった制度をそのまま引きずって、だから救貧、防貧対策なのだというような形のシステムではもう全くだめだろうと思います。

石会長

なるほどね。

猪瀬委員

ちょっと質問ですけれども、先ほど5ページのところで、「厚生労働省所管の対地方団体補助金・負担金」、これ、一気に増えているところが特徴あるとおっしゃっていたのですけれども、具体例をちょっと1つ挙げていただくとわかりやすいのですが。時間ないところを申しわけないけれども。

林委員

80年は老人保健制度の関係だと思います。それから2000年は介護だと思うのですけれども、ちょっとどなたか補完していただければ。個別の負担金のリストを持ってこなかったものですから。

猪瀬委員

一遍に80年のところが増えてますよね。それから50~59年のところも極端に増えてますよね。比率的にはね。

林委員

これはおそらく、老人保健制度が83年ででき上がっているので、そこで、いわゆる国からの負担金の組みかえといいますか、名称の変更があったと思うのですね。だから、老人医療制度の改革の中で行われてきたものがそこで変わったために、この時点に新しく創設されたという形で出てきていると思います。

猪瀬委員

データはどこからとったのですか。

林委員

これは、実は補助金総覧というのがございます。この補助金総覧には一件一件、補助金の名称なり目的なり補助根拠、こういうものが書かれておりまして、それを手作業で拾うしかないのですね。というデータです。

猪瀬委員

厚生労働省はこれつくってないのですか。

林委員

厚生労働省の補助金のハンドブックというのがありますね。ですが、ちょっと私は補助金総覧からとりました。

石会長

また事務局で何か補足していただくデータがあれば後日出していただくようにしましょう。ほかにございますか。

どうぞ、岩さん。

岩委員

林先生のお話、なるほどなあと思いながら伺っていたのですけれども、これは福祉サービスと言うよりも、そういう言葉はやめて、住民サービスと言ったほうがもはや適当かなあという感じも受けたわけですけれども。

もう一つ伺いたいのは、この前、宮島先生、医療の話をされて、つまり、地域格差の医療費の問題、されましたね。ある程度の、つまり理由みたいなものをおっしゃったのですが、介護にもかなりの格差がありますよね。生活保護費もそうですね。これはどこに本当に原因があるのかというのがきっちりわからないなあという感じがするのですが、林先生はどんなふうにそれをお考えですか。

林委員

これも、要するに国の役割の部分と地方の役割の部分との違い、この部分の違いによって、格差があっていいものとあってはいけないものに分かれてくると思うのですね。例えば生活保護の格差というのは、これはもちろん受給率の格差、生活保護率の格差というのはありますが、支給額に関しては、もちろん地域差はあって、その部分は違いますが、基本的には画一的ですね。ただ、上乗せをするかどうか。

福祉の場合には、国の基準に対して上乗せしているところもあれば、していないところもある。そういう意味で、上乗せの部分の格差というのは存在いたします。ですから、その上乗せの部分は、これは単独事業だから、地方がそれなりの地方税でもってやるのであればそれはもう仕方のないことだと。ですから、やはり大切なことは、国の役割と地方の役割を明確にきちっと仕分けすると。

今おっしゃられたように、福祉という名前が本当に適当なのかどうか。つまり、社会保障という範疇の中に含めることが適当なのかどうかということを、ちょっと首を傾げざるを得ないようなものが社会保障だということで供給されている部分がありますから、そのあたりをやはりきちっと明確にしていくと。つまり、それは社会保障再分配ではないのだということを明確にしていくということが大事だろうなと思いますね。

石会長

今の点、何か実例ありますか。何か怪しげな社会保障サービスというのはある?(笑)何やら今地方自治体はいじめられているではないですか。いろいろと。

林委員

例えば、私は保育所を別に目の仇にしているわけではありませんけれども、保育所も、確かに料金、厚生労働省基準というのがあるわけですね。それに100%、受益者負担で徴収するということがあるわけですが、しかしながら、その前提にはもう公費が投入されていて、そしてそのうちの一部を料金でとりましょうという形になっているわけですね。ですから、そこが本当に、それは社会保障、だから、そこはいわゆる措置費というところから出発しているので、そのあたりもきちっと、社会保障ではないのだというところを明確にした上で、そしてサービスに公費を投入するのではなくて、いわゆるニーズというか、所得水準等に応じて個人給付に変えていくということがやはり私は重要だと思いますね。

石会長

ほかによろしゅうございますか。

尾崎さん、どうぞ。

尾崎委員

3ページの図4の見方ですが、これは生活保護世帯、あるいは所得税非課税世帯の子供が押し出されているという意味ではないのですね。これは、完全にそういう子供たちは入所を許して、なおかつ余裕があるものだから、これだけ所得税課税世帯の人が増えてきているというように読むのか、それとも押し出されているのか、これはどうなのでしょうか。

林委員

押し出されているということはないと思います。ただ、現実に保育所に子供を預けている家庭の所得階層ですから、そういう意味では、場合によっては入所待ちという部分はここの中には出ないわけですね。ただ、入所待ちの場合は、どちらかというとかなりニーズの高い、あるいは多様な、延長保育をするとか、あるいはゼロ歳児保育をするとかといったような、そういう多様なニーズにこたえることのできる保育所が少ないためにウェイティングしているという部分がかなり多いわけです。

その場合には、本来、救貧、防貧対策だったら、そんなウェイティングなんてできっこないわけですから、そういう意味では、このグラフから、救貧、防貧の目的で保育所に子供を預けるという人たちが除外されているということはないと思います。

尾崎委員

そうしたらやはり性格が変わってきたということですね。さっきからお話しになっているように。

林委員

はい。もちろん保育所の数が非常に多くなっています。その多くなった部分がいわゆる生活支援に入ってきているということだと思います。

石会長

草野さん、最後にどうぞ。

草野委員

林先生も触れられてましたけれども、福祉という考え方とは全く別に、今日本が最大の課題だと言われてます少子化対策の一環として、この前ある先生がフランスに合計特殊出生率が回復してきた調査に行かれたときに、保育所といいますか、場所といいますか、保育の補助ですね、これについては非常に大きな効果があったという話もありましたので、いわゆる福祉政策というよりも、また別の観点からこの保育所の問題というのはアプローチする必要があるのではないかなと、こんなふうに思いますけれども。

林委員

その場合は、保育所に限らず、いわゆる子供を産むということに対するインセンティブでなければならないので、保育所に子供を預けている方だけに恩恵を与えるというのではないだろうと思います。

ただ、その場合も果たして本当に効果があるのか。フランスの場合ではもう随分移民が増えてきておりますから、その人たちがかなり高い出生率を上げているので、マクロで見た出生率が上がっているというような意見もあります。

石会長

時間になりましたが、よろしゅうございますか。

じゃ最後に猪瀬さん、どうぞ。

猪瀬委員

介護保険にしろ年金にしろ、保険というのは、結局、入口と出口とそれぞれ両方がかかわるものですけれども、税調の場合は税収の入口のほうだけで、使い道のほうは結局やらないのだけれども、ただ、実際にこうやって年金に税金を入れていくというふうな形が、今すでにあるけれども、また増やしていくとなれば、今の林さんのお話も、出のほうの効率化の問題だということになるのですが、やはり出の問題をきちんと税調で、常に入りの問題ではなくて、出の問題と積極的に絡めて、つまり、多分これは、役所で言えば主計局と主税局は違うのだということになるだろうけれども、あるいは税調と財制審は違うのだとなるかもしれないけれども、これから、かなり出の効率、これは民営化とかそういうのを含めてそうなのですが、入口のほうだけ議論をやるときに、同時に保険と同じような議論の仕方をしないと、これからもっとそれを強めないといけないのではないかということをちょっと申し上げたかったのですが。

石会長

今日の議論のまとめとして実に適切だと思いますので、そのまま皆さんの共通認識として持っていきたいと思いますが、年が明けてから、歳入・歳出一体化で、財政再建とかプライマリーバランスの黒字化なんていうことを諮問会議も言っておりますし、私も財制審で発言したこともありまして、この財務省の中でも主計局と主税局が一体化していろいろなことをやろうという問題意識も芽生えてきたようでありますので、結果として、猪瀬さんが今お話しになったような方向で事は進むと思いますが、税調の個々のメンバーの意識として、やはり出と入、両方見ながらいろいろ議論するということはこれから必要だし、それをやってはいけないということでもないでしょうから、そういう意味で、税調もその辺まで枠を広げて議論すべきだと考えておりますので、ぜひよろしくその辺は頭に入れておいていただきたいと思います。

それでは、ちょうど時間になりましたので、次回のことをアナウンスいたしまして閉会したいと思いますが、次回は3月18日金曜日2時から4時、この時間帯で考えております。2月、3月の勉強会の3回目でございまして、一応これをもって勉強会を終わって、まだ具体的に考えておりませんが、4月以降の実際の審議を進める最後の段階だとお考えいただきたいと思います。

今日は年金、介護、福祉全般についてでございましたが、次回は医療改革の問題と少子化の問題。少子化の問題、いろんな形で今検討されておりますので、その専門家を呼んできましてご意見を聞きたい。つまり、この税調の委員の方ではないという意味ですね。それから納税者番号の話が国会でも大分議論になっておりますし、小泉首相みずから問題意識もお持ちであると思いますので、この税調では過去に3度ほど海外調査をしておりまして、一応の蓄積もございます。そういうのを踏まえまして、事務局のほうから、税調として、納番、どこに問題あるのか、あるいはこれをどういうふうに議論を進めていくかにつきまして議論したいと考えております。そういう意味で、医療と少子化と納番、ちょっと組み合わせがちぐはぐでありますが、それを最後に議論の対象にしたいと、このように考えております。

以上でございます。どうも長時間ありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。