第24回基礎問題小委員会 議事録
平成16年10月22日開催
〇委員
それでは、時間になりました。今日の基礎問題小委員会を開催いたします。
今日は議題が二つありまして、資産課税と金融所得課税、各々分けて議論をいたしたいと思います。
最初に、資産課税につきましては、主税局の主税企画官と自治税務局の固定資産税課長、各々20~30分ずつ時間を取ってご説明ください。今日は大部な資料が出ております。
では、よろしく、企画官。
〇事務局
主税企画官でございます。お手元の「基礎小24-1」「資料(相続税・贈与税関係)」と題しました資料に沿ってご説明いたしたいと思います。表紙と目次をめくっていただきまして、まず、相続税の現状からおさらいをしたいと思います。
1ページでございますが、相続税の意義ないし課税根拠であります。平成12年7月の当調査会の答申によりますと、下線部2行目からですけれども、「基本的には、遺産の取得(無償の財産取得)に担税力を見出して課税するもので、所得の稼得に対して課される個人所得課税を補完するもの」と位置づけられております。また、「その際、累進税率を適用することにより、富の再分配を図るという役割」ですとか、また、下のほうですけれども、最近の議論として、「老後扶養が社会化されることによって次世代に引き継がれる資産が従来ほど減少しない分、資産の引継ぎの社会化を図っていくことが適当であるとの観点から、相続課税の役割が一層重要になってきている」といった議論が紹介されております。
2ページをご覧いただきたいと思います。相続税の課税方式には、遺産課税方式と遺産取得課税方式の二通りございます。アメリカやイギリスで採用されていますのが遺産課税方式でございまして、これは遺産全体に担税力を見出して課税するというもので、いわば被相続人の所得税を補完するもの、所得の精算を行うものという位置づけでございます。具体的には、相続財産を管理する遺産管理人なり遺言執行者等が、まずは相続財産から相続税を納付して、その残りを各相続人に分配するという方式でございます。
もう一つは、日本やドイツ、フランスで採用されております遺産取得課税方式でございますが、これは相続財産をまず相続人に分割した後、それぞれの相続人が取得した財産に見合った相続税を納付するというもので、いわば相続人の無償の財産取得に担税力を見出して課税するという考え方でございます。また、これは富の集中を抑制するという考え方も背景にはあるのだろうと思われます。
3ページをご覧いただきたいと思いますが、この二つの方式はそれぞれ長所、短所がございます。下の特色のところを見ていただきたいと思いますが、例えば遺産課税方式の場合ですと、[1]にありますように、遺産全体に課税いたしますので、遺産分割の仕方による税負担の変動がない。したがって、税務執行が容易であるとか、あるいは仮装分割による租税回避が行われにくいといった長所がございます。他方で、例えば[3]にありますように、財産取得者の個人的担税力に則した合理的な課税を行うという点でやや劣るといった短所がございます。
それとは裏腹に遺産取得課税方式の場合には、[1]にありますが、財産取得者の個人的担税力に則した合理的な課税をすることができるという長所がございますが、短所としては、[2]にありますように、遺産分割の仕方によって税負担に差異を生ずることから、事実と異なる申告が行われやすいといった短所がございます。
わが国の場合は、遺産取得課税方式を基本としておりますけれども、いわゆる法定相続分課税方式というものを導入しておりまして、実際の遺産分割の如何にかかわらず、まずは民法の法定相続で相続したと仮定しまして、相続税の総額を計算いたしますので、相続税の総額は遺産分割の仕方にかかわらず一定ということで、遺産取得課税方式の欠点を回避して遺産課税の長所を取り入れている。いわば両方式の長所を兼ね備えているという特色がございます。ただ、短所としては、やや制度が複雑になってしまっているという点が指摘できるかと思います。
具体的に4ページですけれども、わが国の相続税の仕組みについておさらいしたいと思います。左から見ていただきますけれども、まず遺産総額がございます。そこから非課税財産とか債務を控除いたしまして、残りの正味課税遺産に対しまして、さらにその相続開始前3年以内の贈与財産等一定の贈与を加えまして、合計課税価格が算出されます。そこから基礎控除を控除した残りの課税遺産総額について、実際の遺産分割の如何にかかわらず、まずは法定相続分で按分いたしまして、それぞれの相続人にごとに超過累進税率を適用して税額を計算し、それを合計いたしまして、相続税の総額というものを計算いたします。したがって、ここまでは実際の遺産分割如何にかかわらず一定ということになるわけですけれども、この相続税の総額を実際の相続割合で按分いたしまして、個々人の算出税額を計算し、その個々人の状況に応じた税額控除を適用いたしまして、個々人の最終的な納付税額が計算されるという、やや、ややこしい計算方式になっております。
5ページをご覧いただきたいと思いますが、国税収入に占める相続税収の割合の推移であります。この場合の相続税収は贈与税収を含んだ概念でございますけれども、バブル崩壊後の地価の下落ですとか、累次の減税によりまして、相続税収は連年減少しております。平成16年度の当初予算で見ますと、約1.1兆円、国税収入に占める割合は2.6%まで減少しております。
ちなみに、ピークは平成5年度の約2兆9,000億円ということですので、その差は約1.8兆円の減収になっております。このうち減税要因が概ね0.7兆円程度、残りの1.1兆円程度が地価の下落、その他経済的要因によるものということだと思われます。
6ページに最近の相続税の主な改正を掲げております。昭和63年12月の改正は、消費税導入を含みます税制の抜本改革でございますが、それを含みまして平成4年度、6年度、15年度と最近4回ほど大きな改正がございます。63年12月の改正前から比較しますと、最高税率は75%から50%まで引き下げられております。また、税率の刻みは14段階から6段階ということで、簡素化、フラット化しております。また、基礎控除につきましては、63年12月以前に比べまして、2倍以上引き上げられておりまして、現在では5,000万円に1,000万円掛ける法定相続人を加えた金額、例えば配偶者と子供3人で相続した場合には、9,000万円ということになります。そのほか配偶者に対します最低保証額ですとか、小規模宅地の課税の特例の減額割合、それぞれ年々引き上げられております。
次に、7ページでございますが、こうした連年の減税あるいは地価の下落等によりまして、相続税の課税割合がだんだん縮小しております。例えば昭和62年のところで見ていただきますと、死亡者100人に対します課税割合は、100人中7.9人でございましたが、これが平成14年度では100人中4.5人まで縮少しております。
また、合計課税価格のところを見ていただきますと、課税対象となる遺産額ということですけれども、被相続人1人当たりの合計課税価格は、かつてバブルの時は3億円を超えておりましたけれども、現在では14年度で約2.4億円というレベルになっております。
また、相続税額を被相続人1人当たりで見ますと、バブルのころは6,000万円、7,000万円を超えておりましたが、現在では3,000万円を下回って、約2,900万円弱ということになっております。
また、合計課税価格に対する相続税額のいわば負担割合で見ますと、かつて2割を超えておりましたが、現在では12.1%という割合になっております。
次に、8ページですけれども、さらに課税価格を階級別で具体的に課税状況を見ていただきますと、先ほど言いましたように、平成14年度で1人当たりの課税価格は約2.4億円弱ということですが、2億円から3億円のところで見ていただきますと、件数の累積比は81%、納付税額は20.6%ということですので、課税される方を下から数えて8割ぐらいの方で相続税収全体の2割ぐらい。裏返して言いますと、上から数えて2割ぐらいの方々が相続税収の8割を出していただいているということになります。
また、全体の平均は、右隅、先ほど申しましたように、12.1%の負担率でありますけれども、2億円から3億円の欄でいいますと、大体8.2%の負担率、1億円から2億円ですと4.0%、1億円以下ですと1.5%といった負担率になっております。逆に20億円を超えるところでは、32%を超える負担率になっております。
9ページは地価の下落を示したものでございますが、上から三大圏の商業地、三大圏の住宅地、全国・全用途となっておりますけれども、いずれも平成3年をピークに、現在ではバブル発生前のレベルに落ち着いております。特に三大圏商業地につきましては、昭和58年に比べましても7割ぐらいのレベル、さらに平成3年のピーク時、336.8というところから見ますと、大体2割程度のレベルまで落ちているという状況にございます。
10ページは東京都区部のケースでございますけれども、東京都区部の場合は、特にピーク時からの地価の下落が大きくなっておりまして、例えば商業地の例でいいますと、これは千代田区の外神田三丁目、事業用土地200平米、その他の財産が約1億5,000万円といったケースで試算をしておりますけれども、その他の財産の価格は一定としまして、土地の値段だけ下がったという仮定で相続税を試算しておりますが、路線価が平成3年から平成16年で8分の1に下落しております。これに減税の要因を加えますと、相続税額は平成16年では平成3年の24分の1にまで縮減されているという形になっております。
また、住宅地、これは世田谷区成城六丁目でございますが、同じように試算いたしますと、路線価が3分の1に減って、さらに減税要因を加えて、相続税額は14分の1に縮減されているという姿になっております。
11ページ以降は国際比較でございますけれども、相続税収・贈与税収の対国民所得比でございます。まずは下の参考のところで、個人所得課税なり消費課税で比較してみますと、わが国は諸外国に比べまして半分ぐらいの負担率になっておりますが、相続税・贈与税で見ますと、フランスはやや高い割合ですけれども、日本は概ね諸外国と同じぐらいの負担率かなということがわかるかと思います。
12ページは、さらに具体的に各国の課税方式等、税率や課税最低限を掲げておりますけれども、諸外国、それぞれ課税方式が異なることもありまして、なかなか単純な比較は難しいわけですが、1点申し上げるとしますと、課税割合で見ますと、フランスは27.1%ということです。また課税最低限もかなり低いということで、かなり下のほうまで広く課税しているのかなという感じがいたします。
また、1点留意点でございますが、ドイツは課税割合が12.5%になっております。ドイツは相続税は州税でございますが、全国レベルの統計が手に入らなかったものですから、これは下の(備考)の6に書いておりますが、ノルトライン・ヴェストファーレン州の計数でございます。この州は比較的裕福な州でございますので、若干全国平均よりは高めに出ているかなという気がいたしますので、ご留意いただきたいと思います。
そこで、13ページは相続税の実際の負担率を比較してみた表でございます。配偶者、子供3人ということで計算いたしておりますが、日本でいう平均よりちょっと高い3億円のレベルでご覧いただきますと、日本の現行のレベルというのは、諸外国の中ではほぼ真ん中ぐらいの水準かなという感じがいたします。また、先ほど申しましたように、フランスはかなり下のほうまで課税されているという状況にございます。
14ページ、15ページは、相続税に係る諸控除ということで、所得控除、税額控除、あるいは非課税制度等、特例措置などを掲げております。詳細な説明は省略いたしますけれども、1点、事業承継の関係で申しますと、上から三つ目の箱に小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例が掲げておりまして、例えば事業用の宅地でいいますと、事業継続を条件としまして、400平米まで8割課税価格が減額されるという特例になっております。
また、その下、特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例とありますが、例えば一定の中小同族法人の株式等につきましても、一定の要件のもとで課税価格が1割減額されるといった特例がございます。
次に、贈与税の現状についてご説明したいと思いますが、16ページでございます。贈与税は基本的に暦年課税という方式をとっておりまして、1年間の間に贈与により取得した財産を合計いたしまして、基礎控除等を控除いたしまして、残りの課税財産額について超過累進税率を適用して、税額を計算いたします。この税率は比較的高い税率になっておりますが、これは一つには第三者からの無償の財産取得には重い負担を求めるという考え方からだと思います。さらに、親子間の贈与については、相続税の課税回避を防止する観点から、やはり同様に比較的重い負担を求めるというような考え方で設けられているものでございます。
17ページは贈与税の課税状況でございますけれども、平成14年分のところを見ていただきますと、取得財産価額の合計額のところで、大体1.2兆円の贈与があったと。1件当たりで見ますと、350万円程度。また、納付税額は692億円で、1件当たりの納付税額は19万円強というような状況になっております。
18ページをご覧いただきたいと思いますが、先ほど申しましたように、わが国の贈与税におきましては、相続税の課税回避を防止する観点から、税負担を比較的高い水準に設定されております。この点につきまして、平成14年の6月の当調査会の答申におきましては、むしろ高齢化の進展に伴って、相続による次世代への資産移転の時期がより後半にシフトしていることから、資産移転の時期の選択に対する中立性を確保することが重要となってきているのではないか。また、高齢者の保有する資産が現在より早い時期に次世代に移転するようになれば、その有効活用を通じて、経済社会の活性化に資するのではないか。こういった観点から、相続税・贈与税の調整のあり方、すなわち生前贈与の円滑化を検討すべきであると、こういったご提言をいただきまして、これを踏まえまして、平成15年度の税制改正におきまして、相続税・贈与税の一体化措置、すなわち相続時精算課税制度が創設されたところでございます。
19ページは本制度の概要を書いておりますが、簡単におさらいとして申し上げますと、満65歳以上の親から満20歳以上の子供への贈与ということで、本制度を適用いたしますと、2,500万円の非課税枠まで何回でも多年にわたって非課税で贈与を行うことができる。また、非課税枠を超えた贈与についても、税率は一律20%。また、住宅取得等資金の贈与の場合には、親の65歳以上の年齢要件が外されまして、さらに非課税枠が1,000万円上乗せになりまして、3,500万円になるということになります。そして、最後、相続時に相続税の精算をするという制度になっております。
下に3,000万円の生前贈与を受けた場合の例がございますので、この例に即しましてご説明いたしますと、非課税枠を超えた部分500万円について20%の税率を掛けまして、贈与時に贈与税として100万円を納付していただきます。そして、相続時に当該贈与財産3,000万円を相続財産に加えまして、基礎控除を引いて、税率を掛けて、相続税額を計算いたします。それが税額αでありますが、このαが100万円を下回った場合、これについては下回った部分について相続時に還付、またαが100万円を上回った場合には、上回った部分について納付していただく。こういう制度でございます。
次に、20ページ、この相続時精算課税制度は平成15年分から適用されたものでありますが、本年2月に初めての申告が到来いたしまして、主税局におきまして、その活用状況について実態調査をいたしました。その結果の概要につきましては、別途「基礎小24-2」「参考資料(平成15年分相続時精算課税制度の活用状況)」ということでまとめておりますので、適宜こちらの資料も参照しながらご説明したいと思います。
まず、相続時精算課税の適用者数は、7万8,000人ということで、贈与税申告人員全体の18.2%、2割弱ということでありました。全体で1.2兆円に上る贈与、新たな資産移転効果がございました。
この参考資料のほうの4ページをご覧いただければと思いますが、この1.2兆円の財産の内訳を掲げてございます。大体右端のほうにありますが、土地が全体の3分の1、残りが現金預貯金や有価証券等でございますが、この現金預貯金等のうちで住宅取得等資金ということで、これがまた全体の3分の1。したがって、土地と住宅取得等資金を合わせまして、全体の3分の2ぐらいが占められております。
次に、住宅取得資金に係る特例適用者でございますが、これは制度全体の3分の1程度、金額でも適用者数でも3分の1程度となっております。
参考資料の5ページをご覧いただきたいと思います。住宅取得等資金、非課税枠3,500万円ということでございますけれども、実際見ていただきますと、1,000万円まで、あるいは2,000万円、2,500万円、3,500万円と、特に偏ることなく、非課税枠の中で余裕をもってそれぞれの資力に応じて活用していただいているのかなということが見て取れるかと存じます。
また、参考資料の8ページをご覧いただきたいと思います。住宅取得資金に係る特定適用者の受ける側の年齢構成でございますけれども、下のほう、30代で52.5%、20代を加えますと、大体全体の65%を占めておりまして、このことから若年層を中心として住宅取得促進にも本制度が寄与したのかなと思っております。
また、最後に非上場株でございますが、これについては、1人当たりの平均受贈額が前年の16.5倍、3,882万円に上っております。この点は9ページに前年との比較を掲げております。14年は通常の暦年課税、基礎控除110万円という暦年課税との比較ではございますけれども、非上場株式でいうと、16.5倍といった形で使っていただいておりますし、その他、全体的に見ても、相当な活用をしていただいているのかなというふうに見ております。
さらに、7ページをご覧いただきたいと思いますが、先ほど申しましたように、非上場株式は平均で3,880万円ということでございますが、実際の内訳を見ていただきますと、1億円を超えるような贈与もけっこう使っていただいておりまして、いわば非課税枠を超えて積極的に活用していただいている。これは、事業承継について相続時の時に慌てるのではなくて、生前から計画的に事業承継を本制度を使って準備されているといったことが、ここである程度判明しているという感じがいたします。
最後に、その下の箱にございますけれども、本制度は初年分から、高齢層の資産を早期に次世代に移転させて、資産の有効活用を通じて経済社会の活性化に資する、こういった所期の効果を十分発揮し得たのではないかと考えております。
21ページ以下は今後の課題ということでございますが、21ページでは、税制調査会の答申を二つ掲げております。特に下のほうの15年6月の答申の下線部を見ていただきますと、個人所得課税の累進構造のフラット化の進展ですとか、将来の消費税率の引上げを考慮に入れると、相続税の持つ再分配機能が一層重要となっている。また、高齢者を取り巻く状況を見ると、より社会全体で老後扶養の負担を支えるようになってきている。こうした老後扶養の社会化の進展に伴い、相続時に残された個人資産に負担を求める必要性が高まっていると考えられる。こうした点を踏まえ、相続税について、従来より広い範囲に適切な税負担を求めるねらいから、課税ベースの拡大に引き続き取り組む必要があると、こういったご指摘をいただいております。
22ページは同じ税制調査会の答申でありますけれども、事業承継関連の特例措置ですとか、死亡保険金・死亡退職金の非課税措置、こういった特例制度について、そのあり方を見直していく必要がある、等のご指摘もいただいております。
23ページからは、「実像」との関係でございますけれども、相続税に関連する部分を抜粋しております。例えば、所得の不平等を表す「ジニ係数」、これは徐々に上昇する傾向が見られる。こうした中で次第に社会的流動化のトレンドが鈍化してきているように見られる。すなわち、社会階層がやや固定化する方向にあるのではないか。こういったことだと思います。また、それとあわせて機会の平等を比較的強く志向する傾向が一般に見られる。こういったご指摘をいただいております。
24ページですけれども、資産保有の状況を見ると、高齢者層ほど保有額が大きくなる中で、高齢者世代内においては、その経済的状況は多様な姿を呈している。右下のほうを見ていただきますと、上が勤労者世帯、下が60歳以上の高齢世帯ということで、貯蓄現在高の階級別世帯分布を掲げておりますが、全体の平均値で見ても、高齢世帯は勤労者世帯の2倍程度、また、そのバラツキで見ても、高齢世帯のほうが下位から上位まで比較的ばらけているということが見て取れるかと思います。
また、25ページをご覧いただきますと、これはネットの金融資産の残高の推移でありますけれども、89年、94年、99年と年がたつにつれまして、高齢層は金融資産はむしろ増加しておりますけれども、若年層はむしろ減少して、その格差が広がっている。30代、40代は住宅ローンも抱えておりまして、これは負債を控除したネットの資産ですので、ネットの金融資産は本当にわずかになっている。それに対して高齢層は比較的資産が増えている。こういった状況になっております。
26ページでございますが、金融資産、実物資産、それぞれ目盛りは左側でございますが、金融資産がいわゆる1,400兆円、それに実物資産を加えまして、大体2,500兆円の家計の資産がございます。雇用者所得の伸びとネットの家計資産の伸びを見ていただきますと、雇用者所得、フローの所得の伸び以上に、これは負債を控除したものですけれども、ネットの家計資産の指数はそれを上回るような伸びを示しておりまして、いわばストック化が進んでいるといったことを示していると言えるかと思います。
また、27ページを見ていただきますと、それぞれの貯蓄でございますけれども、全体で1,400兆円あるという金融資産でありますが、平成15年を見ていただきますと、半分以上が60歳以上の高齢世帯がお持ちになっているという姿になっております。
28ページですが、これはちょっと古い、平成12年のものではありますけれども、小渕内閣、森内閣の時の官邸で開かれました「社会保障構造の在り方について考える有識者会議」の報告でございます。ここでは高齢者の資産の点につきまして、以下のように言っております。
「高齢者は、若い世代と比較すると、資産を多く保有しているが、主に若年の世代の負担で担われている社会保障給付が充実し、老後扶養をより社会的に支えることにより高齢者の資産の維持に寄与する一方、最終的な相続の時点では、ほとんどの場合社会的な負担を求められることがなく、その資産は私的に移転している現状にある。この点に着目すれば…(中略)…資産の保有や相続に着目してより広く税負担を求めることは、給付と負担のバランスをとる方策の一つとなり得ると考えられる。」というふうに指摘されております。
また、29ページ、最後ですけれども、「実像」におきましては、「結びにかえて」というところでございますけれども、現役世代及び高齢者世代を通じ、世代内の公平だけでなく、世代間の公平にも留意する必要がある。また、わが国では、少子・高齢化が進行して、家族やカイシャが果たすケア機能の低下が懸念されている。その裏腹として扶養の社会化ということが言われているわけですけれども、その負担については、国民の受益と負担のあり方が問われなければならない。
そして、税負担につきましては、一番最後ですけれども、所得・消費・資産等多様な課税ベースに適切な税負担を求めていくことが課題となる。こういったご指摘をいただいております。
私からの説明は以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。
では、固定資産税につきまして、固定資産税課長、お願いします。
〇事務局
固定資産税課長でございます。「基礎小24-3」という資料に基づきまして、地方税関係についてご説明させていただきます。
まず、1ページをご覧ください。固定資産税と都市計画税の概要につきまして、おさらいをさせていただきます。固定資産税につきましては、全市町村が課税をしておりまして、土地、家屋、償却資産に課税をしているということで、土地につきましては、全部で1億7,700万筆、家屋については6,000万棟を毎年課税しているということでございます。
課税標準ですが、固定資産税は価格ということになっておりまして、適正な時価を課税標準ということに原則としてしております。
なお、土地及び家屋につきましては、3年ごとに評価替えをしておりまして、次回の評価替えは平成18年度でございます。税率は1.4%で課税をしておりますが、下の注の3番に書いてありますとおり、従来、制限税率2.1%が定められておりましたけれども、今年度の改正によりまして、この制限税率が廃止されております。
税収は、平成15年度で8兆6,786億円ということになっております。
なお、都市計画税が右のほうに書いてございますが、これは課税主体は都市計画区域を有する市町村ということでございまして、課税市町村数は現在767団体になっております。これは課税客体は市街化区域内の土地及び家屋でございます。制限税率0.3%で、15年度の税収が1兆2,300億円ということになっております。
続きまして、2ページをお願いいたします。これは市町村税収全体に占める固定資産税の割合でございまして、平成15年度の数字でございます。全市町村、一番上をご覧いただきますと、固定資産税が46%、さらに都市計画税の7%を合わせまして、5割を超える水準になっております。一方で、個人市町村民税30%、法人市町村民税11%ということで、こちらのほうが合計で41%ということで、かなり対照的な数字になっております。
続きまして、3ページをお願いいたしたいと思います。最近の固定資産税収の動向でございます。下のほうから土地、真ん中が家屋、一番上が償却資産の税収になっております。割合安定的な税収動向でございますけれども、平成11年度にピークになっておりまして、トータルで9兆2,000億円になっております。この年に、資産別でいいますと、土地と償却資産も同じくピークになっております。一方で家屋につきましては、平成14年度の3兆7,600億円というところがピークの数字でございます。平成11年度を境にいたしまして、トータルの数字では、毎年漸減をしておるというのが今の現状でございます。
続きまして、4ページをご覧いただきたいと思います。ここでは一番上の波線のグラフは、市町村の歳出でございまして、これは右目盛りでございます。縦の棒グラフは、左目盛りの税収を表しております。各年度、一番左が個人と法人を合わせました市町村民税、真ん中が固定資産税、一番右が市町村税収全体を表しております。市町村の二大税目といいまして、市町村民税と固定資産税が挙げられるわけでございますけれども、この二大税目の動きをご覧いただきたいということでございます。
これをご覧いただきますと、市町村民税、個人と法人を合わせたものでございますけれども、平成4年がピークになっております。その後若干の変動がございますけれども、平成4年がピーク。一方で固定資産税収は、先ほど申し上げましたとおり、平成11年がピークということになっておりまして、従来は市町村民税が固定資産税収を大幅に上回る時代が長く続いておりましたけれども、平成10年にこれが逆転をいたしまして、さらにこの差が現在広がっているというような現状でございますが、この差はどちらかといいますと、市町村民税の税収の減り方がかなり激しいというところに原因があろうかと思います。
引き続きまして、5ページでございます。ちょっと古い平成13年度の資料でございますけれども、国民所得に対する税収総額と不動産税の国際的な比較ということで、5ヵ国挙げさせていただいております。日本の一番下の不動産税の税収の国民所得に対する割合でございますけれども、フランスの2.4%と同水準、アメリカ、イギリスの3.2%、4.3%よりは低い水準になっているということが見て取れるわけでございます。
なお、いずれもこの諸外国におきまして、不動産税は大半は地方税であるということでございます。
引き続きまして、6ページをお願いいたしたいと存じます。ここから具体的な固定資産税の求め方でございますけれども、バブルの前後を通じまして、急激な地価の上昇、下落を経験してまいりました宅地を例にとりまして、税額算定の流れをご説明したいと思います。
まず、左のほうから一番上の欄のところをご覧いただきますと、評価額から出発いたしまして、課税標準額を求め、それに税率を掛けたものが税額になるということでございますが、一番左の評価額の求めるところ、これは財産税でございますので、資産の価値を金銭表示しなければ課税標準が求まらないということで、どうしても評価の問題が出てまいります。
そこで、現在の宅地の評価でございますけれども、固定資産評価基準に従いまして、地価公示価格等の7割を目途として評価をすることになっております。この結果、評価基準によりすべての土地について算出を行いますので、市町村間のバラツキがないというふうになっております。ここで求まりました評価額をそのまま税率に掛けるということには現在なっておりませんで、次の課税標準の箱のところをご覧いただきますと、大きく二つの特例がございます。
まず、課税標準の特例でございます。多様なものがございますけれども、最も主要なものとして住宅用地の特例がございます。小規模住宅用地はその価格を6分の1に圧縮いたします。一般住宅用地については、これを3分の1に圧縮するという措置がここでかかります。ここの課税標準の特例の後、さらに負担調整措置というのがかかる仕組みになっておりまして、まず左のほうに上下に伸ばしておりますが、負担水準という概念が出てまいります。これは前の年度の課税標準額がその年度の評価額に比べてどのような水準にあるかというのを見る指標でございまして、これが高いもの、低いものが実はあるということでございます。この負担水準に非常にバラツキがありますので、これを均衡化する必要があるということで、まず一番下のほうの低いところをご覧いただきますと、「ゆるやかに上昇」と書いてございますけれども、これはその負担水準が低い土地につきましては、その年度の課税標準をゆるやかに上昇させる措置をとっているものでございまして、具体的に申し上げますと、前年度の課税標準に2.5%から15%を掛けまして、その年度の課税標準にするというものでございます。その次に一番上のほうをご覧いただきますと、一方で負担水準が高い土地、具体的には70%以上の土地でございますけれども、このような土地につきましては、その年度の課税標準を評価額の70%の水準まで引き下げるというような措置をとっております。
最後に真ん中のところでございますけれども、負担水準が60%から70%の土地につきましては、前年度の課税標準をそのままその年度の課税標準に使うという、据え置く措置をとっております。このような負担水準の均衡化措置を講じております。
以上のような措置を経て求められた課税標準額に、税率1.4%を掛けて税額を求める。このようなシステムでございます。
かなり複雑な仕組みになってございますけれども、それは歴史的な経過がございまして、次の7ページにそれをまとめておりますが、さらに、8ページの地価の動向と非常に密接に関係がございますので、この模式図でご説明をしたいと思います。
まず、最初の左のほうの地価をご覧いただきますと、主に昭和61年度あたりからかなり急激なバブルの上昇がございました。それ以前、平成5年度以前、どのような評価をやっていたかということでございます。下のほうに三角の点で結んでおります線グラフでございますけれども、各市町村間で評価水準に格差があったということがございまして、さらに、一般的にいえば、評価額が地価に比べまして低く抑えられているような傾向にございました。このような評価を3年に一度の評価替えでやっておりましたけれども、評価額は3年間据え置くというようなことでやっておりました。
しかしながら、先ほど申し上げましたように、バブルにより地価が急上昇いたしましたので、その地価と評価額にかなり大幅な乖離が出てきたというのが事実でございます。そこで、平成6年度の評価替えからこの評価の仕組みが大幅に変わったわけでございます。俗に言われておりますように、公示地価の7割を目途とした評価、7割評価を平成6年から入れたということでございます。この結果、評価額がかなり大幅な増加をいたしました。一方で、7割という具体的な目標ができましたので、評価は全国的に均衡化、統一化されたという結果が生じたわけでございます。この時はこの評価を3年間さらに据え置いておりますので、6、7、8と同じ水準で評価があるということでございます。
しかしながら、この大幅な評価の上昇に伴って、税負担まで引き上げることは困難であるということでございますので、ここで、先ほど申し上げましたように、課税標準額を低く抑える措置がとられております。一つが住宅用地の特例でございます。もう一つが先ほど申し上げました負担調整措置というもののうちの下のほう、負担水準が低いものでございますけれども、この下のほうの措置がここで導入をされております。従来、平成5年度までにつきましては、評価額はいわば次回の評価替えまでにはその評価替えと課税標準額が同じになるという形で負担調整が行われておりましたけれども、この平成6年の時に、3年後にも追いつかない、最大で5%しか毎年税額が伸びないように調整がされたと、こういうわけでございます。そういう意味で、課税標準額がかなりゆるやかに上がっていくという現象が見られたわけでございます。
一方で地価でございますけれども、平成3年あたりをピークにいたしまして、以後急激な地価下落が起こってまいりました。一方で評価のほうにつきましては、3年間据え置く等々の措置が行われましたので、次回の平成9年度におきまして、まず評価額が大幅に下がってきたということでございますけれども、一方でそれ以後もかなり大幅な地価の下落が生じたということがございますので、この3年に一度の評価替えという原則はそのままなのですけれども、簡易な方法によりまして、評価額自体の修正を可能にするという措置を平成10年度から入れるようになっております。そういう意味で、この評価額のところがそれ以後毎年下がっているということは、この措置を入れたおかげでございます。
一方で負担水準につきましては、評価額がかなり大幅に下がった土地につきましては、課税標準額との開きがかなり縮まってまいった土地もございます。ある意味では負担水準がかなり高くなったというような現象でございます。そこで、負担水準がかなり高い土地につきまして、先ほど申し上げました負担水準の上のほうの措置、負担水準の高い措置について、引き下げるという措置をこの平成9年度から入れたわけでございます。ちょっと複雑でございますが、負担調整のあり方等々についての経過をご説明申し上げました。
続きまして9ページ、これは今申し上げました住宅の特例につきましての概要と経緯を書いてございます。下のほうに経緯がございますとおり、もともと昭和48年度に固定資産税のみの住宅用地の特例として創設されたものでございまして、49年度には小規模住宅用地ができたということでございますが、これを平成6年度、大幅に拡充をいたしまして、固定資産税につきましては、従来、小規模住宅用地について4分の1に圧縮する措置を6分の1に圧縮する。それから、一般の住宅用地については、2分の1まで圧縮というところを3分の1まで圧縮するという措置が入りました。さらに、都市計画税についても同様、新しく小規模、一般住宅用地について、3分の1、3分の2とする特例が入ったところでございます。
続きまして、10ページをお願いいたしたいと存じます。先ほど申し上げましたとおりの負担水準の均衡化の仕組み、商業地でございますけれども、その仕組みを再掲させていただいております。下のほうで、先ほど負担水準の引き上げの率を申し上げましたが、負担水準につきましては、10%、20%、30%、40%の刻みごとに前年度の課税標準額に上げる率が変わっているということでございます。
なお、ここでご注意いただきたいのは、左のほうからご覧いただきますとわかりますとおり、地価公示価格を100%の水準といたしますと、まず評価のところでそれを70%の水準ということで評価をする。その70%を100%としたところがこの負担水準の出発点だという形でございますので、再度確認のため申し上げたいと存じます。
続きまして、11ページでございますけれども、これは今年度の税制改正で新たな措置ができました。先ほど私は負担水準の高い措置につきましては、70%の水準までその負担水準を引き下げると申し上げましたけれども、これを市町村が条例を定めた場合には、70%を60%まで事実上引き下げることを可能とする措置を、今年度、16年度と17年度の特例として入れたというものでございます。
続きまして、12ページでございますけれども、これは今まで申し上げました商業地と住宅用地の負担調整が具体的にどのようにかかるかということを示したものでございまして、例えば一番左の商業地等でご覧いただきますと、この黒く塗ったところまでは、実際の評価の額ではなくて、さらに引き下がっているというもの、さらに45%から70%のところでは、一部据え置きのところがあるということでございます。
なお、右の小規模住宅用地等々につきましては、最初に6分の1に圧縮する等々の課税標準の特例がございますので、かなり大幅な引下げが現実に起こっているということがわかるものでございます。
次、13ページでございますけれども、具体的な土地が今どのあたりにあるかということを示したものでございまして、全国の平成9年度、左上をご覧いただきますと、税負担が引き下げられている、いわば負担水準の高い土地は12%程度に対しまして、負担水準が低い、そのためになだらかに税負担が引き上げられております土地は54.6%あった。ところが、平成15年度でご覧いただきますと、税負担が引き下げられている土地、これが38.7%、さらに据置きが37%あるということでございまして、税負担が引き上げられている土地は24%で、4分の1になってきたということでございます。
下のほう、大都市と比べますと、大都市はいわば負担水準が高い土地が多いものですから、具体的に税負担が引下げもしくは据置きになっている土地がかなり多く出てきているということがわかるものでございます。
なお、引下げもしくは据置きということになりますと、まさに評価が下がれば税額が下がるというところになっておりますので、大都市におきましては、最近かなり大幅な減収になっております。
次の14ページでございますけれども、土地分の税収、全体でございます。かなり大幅な減収がもうすでに立っている。大都市の計では、最高年度から21%の減収になっておるというものでございます。
しかし、一方で次の15ページをご覧いただきますと、各土地におきましては、負担水準のバラツキは依然あるというものでございまして、各県別に平均化されたものでございますが、ご覧いただきますと、かなり平均化されてまいりましたけれども、最高の大阪府68.8%に対しまして、最低の沖縄42%というような水準で、バラツキがあるというものでございます。
そういう意味で、16ページをご覧いただきますと、従来から税調でご指摘いただいておりますとおり、負担水準の均衡化という課題は現時点でも残っているものでございまして、右のほうに文章を書いてございますけれども、現在でも同じ評価額の土地でありましても、税負担が異なっているものが現実にあるということでございまして、課税の公平の観点からは、負担水準の均衡化を早期に達成する必要がある。そういう課題があるものでございます。
17ページをご覧いただきますと、ちょっと違う観点でございます。これは従来から情報開示を推進する、透明化を推進するということが重要であるというようなご指摘を踏まえまして、最近、この情報開示の推進に係る措置をとってございますので、その紹介をさせていただいているものでございます。
二つご紹介させていただきますと、縦覧制度につきましては、個別の土地・家屋の評価額を記載した縦覧帳簿でございますが、これはその市町村の納税者でございますと、ほかの方のものにつきましても見られるというものでございます。もう一つ、一番下でございますが、固定資産税の路線価等の公開でございます。固定資産税の評価におきまして、この路線価を使っているわけでございますが、これはいつ行きましても市町村の備え付けの図面により公開をしておるわけでございまして、そういう意味で、他の方の評価等々を見ることができるような措置が入ってまいったということでございます。
最後に、18ページでございますけれども、当税制調査会におきましてご指摘をいただいた答申をつけさせていただいております。3年前の答申及び平成14年度の答申をつけさせていただいておりますけれども、下線部のとおり、「税源の偏りも小さく市町村税としてふさわしい基幹税目であり、今後も本税の安定的な確保が重要である」ということとか、「負担の均衡化・適正化を更に一層促進する措置を採る必要がある」というようなご指摘をいただいているところでございます。
以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。お二人の課長、あるいは企画官から三つの税についてお話をいただきました。来年度税制改正にすぐさま取り入れるという箇所は少ないかと思いますが、ただ、今後長い目で見ますと、この資産課税は非常に重要でありますので、とりわけ相続税・贈与税をどうするか、それから固定資産税のほうもさらにどういうふうに見たらいいか、いろいろご意見があろうと思いますので、どうぞご自由に、しばらく時間を取りましょう。どなたからでもけっこうです。
〇委員
一番最初の、相続税・贈与税関係のご説明をいただいたのですが、特に12ページの主要諸外国における相続税の概要、これは興味深く拝見しました。
わが国の相続税というのは、シャウプ勧告の時に、アメリカのような遺産課税は見習うべきではないということで、かなり強烈な強い贈与税の負担を課することによって、相続税逃れを防止するということになっていたわけですが、よその先進国を見ると、むしろ贈与税が相続税の負担に近づいてくる、あるいは相続税の課税の対象の中に生前贈与を含める、こういうことで相続税と贈与税の負担のバランスをとるようにということで、基本的には贈与税のほうが安かったので、生前贈与がどんどん行われていたという認識があるのですけれども、それは今日ではどうなっているのか、ちょっとお教えいただきたいと思います。
こちらの統計などを見たのですが、やはり贈与税のところがはっきり出てこないのです。結局、相続税というのは贈与税のあり方によっていくらでも意味のない制度になっていきますし、贈与税のほうを重くすれば相続税が生きてくるのですけれども、それはわが国の相続時精算課税制度にも見られますように、資産を有効に利用していくということを考えると、必ずしも贈与税というのは高いだけでいいわけでもないということになるのですが、世界的にはどういう状況にあるのかをちょっとお教えいただきたいと思います。
〇委員
日本のことではなくて、主要先進国の相続税の動向ですか。すぐに出ますか。あればお答えください。
〇事務局
もし必要でしたらまた資料としてお出しいたしたいと思いますけれども、とりあえず申し上げますと、まさにおっしゃるように、諸外国では贈与税を一定累積しまして、相続税に組み込んで課税をしております。例えばアメリカの場合ですと、過去すべての贈与税を累積して、その都度課税をして、最後に相続税で精算するというやり方をとっておりますし、また、イギリスやドイツ、フランスでは、過去一定期間、例えばイギリスですと過去7年間、ドイツやフランスですと過去10年間の贈与税を累積して課税しまして、最後の相続税のところで精算する。
これに対しましてわが国におきましては、従来は過去3年分の贈与税を組み込んでおりました。さらに今回、相続時精算課税制度をとりまして、この制度を選択される場合には、その贈与については、最後の相続時に精算するということにいたしまして、その意味ではかなり各国のレベルと近づいてきているのかなと思っております。
〇委員
贈与税の非課税枠というような資料はありますか。110万円に当たるところ。今でなくてもいいですけれども。
〇事務局
ちょっと整理しまして、また提出させていただきたいと思います。
〇委員
それはおそらく関心事だと思いますので。
〇委員
贈与税のことでちょっとお聞きしたいのですが、例えば土地だとか株などの場合だと、わりと把握しやすいのでしょうけれども、これがお金などだと、なかなかしにくいのではないかと思うのです。預金口座から相手の口座に振り込んだりすれば把握しやすいのでしょうけれども、引き出しておいて現金化しておくとか、あるいは割引金融債にしておいてこっそり渡せば、かなり難しいだろうと思うのです。その辺の調査などはどうなっているのでしょうか。もちろん、所得税などでも把握はしにくいのでしょうけれども、それ以上にこういう贈与税などについては、不公平感の強いところではないかと思うので、その辺どうなっているのか、ちょっとお聞きしたいと思います。
〇委員
絶えず関心のあるテーマで、永遠の課題です。どうぞ、何かあれば。
〇事務局
執行の話ですので、お答えできる立場ではございませんが、国税庁に確認いたしまして、もし何かご説明できるような資料があれば、また後日ご説明したいと思います。
〇委員
どうぞ。
〇委員
日本の相続税、あるいは贈与税も含めてですけれども、取得税方式をとっているのは私は望ましいことだと思っております。ただし、これは両方まざっているやり方で、非常に複雑であって、民法が変わることはないだろうけれども、そういう影響を受けたりすることもある。取得税を基本的にとっているのは私は望ましいことだと思っています。
そうしますと、これは先ほどご説明がありましたように、所得税の補完税という意味合いが非常に強いということになりますと、贈与税と相続税だけで見ると、国際比較で税収のウエイトだけを比較してみると、正直言って、めちゃくちゃ低いわけでもないし、高いわけでもないということだと思いますけれども、やはり所得税とあわせてウエイトなども考えてみる必要があるのかという気がしております。
それと、今、先ほどの委員からちょっとありましたように、私も本当に課税がちゃんとチェックされているのかどうか、そうなると先ほどの負担率なども本当にそうかなと。それと、これは徴収率が悪いのではなくて、翌年度に繰り越されていくような面もあったりして、徴収面が非常に難しかったりすることがどうしてもあるので、その辺の執行面がよほどきっちりしないと、これはなかなか実効性のある税として機能しない、ということも言われてしまいかねないことを、大事な税であるだけにやや懸念しております。
それから、これはちょっとお聞きしたいことですが、従来の相続税を議論していると、必ず事業者の承継税制という話が出て、それが非常に大きな一つのネックとは言いませんけれども、難しいところがあります。先ほどのご説明で、精算課税にかわって、承継税制という問題については、ほぼそこで吸収できそうだというような、若干そういう説明を伺いました。そういう趣旨だったかどうかわかりませんが、その点ご説明いただきたいと思います。
〇事務局
これはやはり二つあると思います。精算課税を入れることによって、相当この問題について解消した部分もあります。ただ、絶対的な税負担の問題は、この精算課税制度ではニュートラルですから、その分野において問題を抱えておられる方については、少しまだ問題は残っています。
ただ、この精算課税制度のいいところは、贈与のタイミングが選べるということで、要するに事業用資産も価格の変動というのはかなりあるわけです。ですから、実際には事業の小さいレベルの段階で贈与してしまえば、将来、亡くなるまでの間の成長部分は全部税負担がカットできるとか、それから、非常に株価が安い時に、要するに資産状況が悪い、収益状況が悪い時に贈与すれば評価が低いということで、これは使い方によって相当問題の解決方法になるという評価は受けています。そこは完全にこれですべてが解消というわけにはいきませんけれども、使い方によっては相当程度今までの問題が解消できていると、そういう評価をいたしております。
〇委員
全部解消してしまったら、逆に問題が出てくるでしょう。
〇事務局
全部解消というのは、さっき申し上げましたように、税負担の絶対額を、要するに相続税の機能をなくすことを希望されるような方にとっては、それはやはりこれで解消はできない。やはり相続税と贈与税を中立にしたというだけですから。
〇委員
総会で一番これに関心のある委員の評価も聞いてみたいと思っているのですけれども、中小企業の立場から。
それから、先ほどの委員が最初におっしゃった執行面で、特に相続税が心配だというのは、ほかの税だって執行面はいろいろ問題があるでしょう。でも特に相続税なんですね。そんな気がします。
ほかに、どうぞ。
〇委員
この相続時精算課税制度、参考資料のほうで見ると、極端に導入によって増えていますけれども、これは今年で「待ってました」という人はみんなやってしまって、来年はもうなしになるということなのか、どんどん増えていく感じなのか、事前に予想したのと比べて多いのか、少ないのかというようなところはどうなんですか。
〇事務局
制度としては、さっき申しましたように、非常に高い贈与税をかけて、贈与をしにくくしていたのを解消するということで、必ず理解されると思っていたのですけれども、制度の本質を使う側がどの程度理解するかということについて、我々ちょっとどうかなと。最初のうちはすぐ理解されなくて、なかなか使われない可能性もあるのかなと心配していましたが、そういう意味では、最初の初年度から非常に利用が多かったという意味では、我々としては、絶対的な利用者の数が何年かかけて増えるということは予想していたのですが、初年度からこれだけ多くの方が積極的に利用し、特に住宅などはかなりこういうニーズが強くて、間に入っていろいろPRもしましたけれども、そこのところは非常によかったなと思っています。
これは、今年全部使ったから来年以降はということではない。むしろこれから安定的に、さらにもっと利用が盛んになっていく可能性のほうが高いのではないかと予想はしております。
〇委員
予想だからわからないけど。
どうぞ。
〇委員
ちょっとぼやっとした話で、別に年度改正がどうのこうのという話ではないのですけれども、ちょっと引っかかっているというか、疑問というか、文化と税制という視点、つまり戦後パートナーシップみたいなものがなくなって、文化財が散失してしまったとか言われますね。その議論はその原因を資産課税、特に相続税に求める議論が多いですよね。しかし、今説明を聞くと、ヨーロッパに比べても別に厳しいわけでもないし、もちろん、社会システム全体の問題があるのでしょうけれども、税制でその辺のところの違いというのはあるのかどうか。
そういう意味では、戦後、文化継承というか、それを担ってきたのは企業メセナが非常に強かった。しかし、企業メセナもサラリーマンがやっていて、メセナオタクみたいなのがいっぱいいますから、その連中がやってきているわけですよね。だから、これからNPO税制とかその辺の絡みというのは非常に重要になってくるのかなということを非常に感じています。
特に、この前、基本的ないろいろな社会構造の変化みたいなものをやってきましたよね。やはり経済の豊かさだけではなくて、文化の豊かさというのか、その辺に生きがいとかアイデンティティとか、そういったものを求める傾向が強い。外交的にもソフトパワーとして非常に重要になってくるので、文化税制といっていいかどうかわからないけれども、そういった視点も要るのかなという気がしています。
〇委員
その問題は、税調でも古くして新しいんです。絶えず問題になってきまして、特に経済界の人がいらっしゃると提案されるのですけど、それに対してそれなりの手は打ってきたとは思いますが、何か現状においてご説明いただくことはありますか。全然冷淡に扱っていたわけでもなくて、何らかの、便宜まではいかないけれども、何らかの措置はやってきたのではないですか。
〇事務局
文化財については、例えば国宝とかきちっとしたものについては、それなりの制約も法的にかかってくる。それは当然評価の段階で譲渡が制限されたりすれば、非常に低くなるわけです。結局、最後は文化財というもののいろいろなレベルがあって、そこのところは財産価値がどれぐらいあるかというところの議論もあります。それから、所有とそういう問題を分離して考えて、外国なども信託とかいろいろな制度を使ったりしていますから、そういう面で何か特別な方法ができないかということで、文化庁なども、例えば美術館に寄贈している場合と、それから、一定の制約をかけて寄託するような制度ができないかとか、そちらサイドもいろいろ勉強はされています。
ですから、相続税はどうしても個別の財産の問題に入り込みますといろいろ議論がありますので、全体の相続税はわりとシンプルにしておいて、個別の政策的目的で本当にきちっとしなければいけないのは、その段階で考えていかざるを得ないなと思っています。そこは各関係の政策としてどこまで担げるか。それから、最後は財産制約だと思うのです。財産価値が完全な私有財産として所有権があって、かつ、処分可能性があるとすると、それはやはりほかの財産との区別がなかなかできないので、そこをどういうふうに差別化していくかとか、そういう議論が必要だと思います。
〇委員
おそらく個人が所蔵する書画・骨董のたぐいが重要なんでしょうね。
どうぞ。
〇委員
今日初めて相続税の精算課税のデータを見たのですけれども、今日見ただけで、まだよくわからないことがいっぱいあります。さっき事務局がおっしゃったことで、大まかにざっと見て、初年度で1兆円も出てきたというのは大きいなと私も思いました。
それで、この読み方ですが、例えば非上場株式で精算課税制度を利用する人が出てきたというので、どういう理由なのだろうと。一つは自分の目の黒いうちに株を渡しておきたい、そういうのがこの税で促進された。それは別に株だけではなくて、ほかの財産に関してもそうだろうと。
もう一つ気になるのは、財産の評価というのがこれとどうかかわっているのだろうと。贈与時の時価、例えば平成15年なら15年に、5億円の資産を贈与した。それが死んだ時も5億円になるわけですよね。だから、その時の土地の価格が高い安いもあるし、それから、死ぬ間のインフレの問題もありますよね。だから、ある意味でいつ贈与するかというタイミングで、前から議論したのですが、贈与財産の評価にかかわるならば、ある意味でディストーションというか、余計な選択をさせるわけですよね。いつ渡したら一番財産額が安くなるのだろうと。それは現時点で土地が高い安いもあるし、インフレの問題もある。非上場株式で1億円以上やっている人も贈与しているので、どういう理由でこれをやったのかというのを、もっと調べる必要があると思うのです。
言いたいのは、我々はある意味でタイミングは自由に決めさせたいけれども、それに対して評価のあり方に歪みを与えるべきではない。ただ、今の制度は、作った時から同じことを言っているのですが、歪みを与える可能性があると思います。だから、どういう理由でこれをやったのかというのは、今後もっと調べる必要があるのではないですか。
〇委員
理由を聞いてどうするんですか。
〇委員
贈与をなめらかにするのが目的で、価格とかを利用してある意味で裁定させることに目的があったわけではないですよね。そうしたら時価評価というのを直さなければいけない。死んだ時の評価にもう一回洗い直して評価替えしないといけない。本来は評価替えしないといけないと思うのです。
〇委員
時価のほうまでね。それは一回議論したけど、そこは今回見切り発車したわけだよね。そこまで問題意識を持っていますか。
〇事務局
ご議論いただいた時もその議論があって、インデクセーションを導入すべきではないかというご議論もあったと思います。ただ、今回、外国も一生累積をやっているところも、基本的にはそれをしていないほうが多いわけで、問題意識はありますけれども、今回はこういう整理をしました。
委員のご指摘の問題点は、逆に言うと、円滑な贈与、特にこの制度を使おうとされる方にとっての逆のメリットというか、それを消すことにもなるので、そこはこの制度の導入の経緯とか、いろいろ総合的に考えて、今回はこういう制度を導入することが政府としても望ましいのではないかということに至ったわけだと思います。問題意識は前からご指摘もいただいていますので、その問題が残っている、存在していること自体は、我々も受けとめております。
〇委員
もうちょっと見なければわからないね、あと数年。その結果でいろいろ調査してということでしょう。
どうぞ。
〇委員
おそらく私が不勉強だからというだけだと思うのですけれども、ちょっと「おや」と思ったのが二つあります。
一つは、少子・高齢化社会における税制のあり方として、今後老後の扶養が社会化していく。したがって、相続の段階で税金を重くすべきだと、こう言っているわけですね。一方、年金課税のところで、保険料を払い込む時に税金をまけて、今度年金を受け取る時にも税金をまけているのはおかしいという議論がありますね。ここでは重くすると言っているのですが、一方、今度は社会的な老後の扶養である年金では、高額所得者に対する支払いについて制限を加えようとしているのではないかと思うのです。私、年金のことをよく知らないのですが、もしそうだとすると、所得税の場合と違って、往復ビンタになりそうな感じですね。所得税の場合は両方まけてやるという話、この年金の老後扶養の社会化の問題では、豊かな人は往復ビンタというような感じがして、ちょっと「おや」と思ったのですが。
もう一つは、固定資産税です。これもただ「おや」と思っただけなのですが、15ページ、評価額に対する課税標準額の水準が書いてあるわけですけれども、これを見ますと、どうも豊かではない地方のほうが課税標準額の水準が低いんですよね。これはやはりちょっと妙な感じがします。財政的に豊かではないから、住民にお願いして、高い課税標準額でいただくというのならわかるのですが、逆になっています。
それで、次のページをめくりますと、負担水準の均衡化が大切だと書いてあるわけですけれども、むしろこれは逆になっていると思うし、どうしても辛いところは、固定資産税の課税標準の水準を上げて、何とか財政的にやっていけるようにしようとするのがあるべき姿ではないかと思うので、均衡化なんかを本当にやる必要があるのかなということ、それも一つ「おや」と思ったのですが、教えてください。
〇委員
教える等の話では多分ないと思いますけれども、前段のダブルパンチというのは、結果的にそうならざるを得ない。つまり、高齢者は過度に年金で保護されていたから、給付のほうを削ってもいいだろう。それから社会化だと。結果的に委員みたいなご発言があって、リンクして議論が出てきたなという印象を僕も持ちますけれども、結果的には、これから少子・高齢化といった時には、高齢者はもう少し負担してもらおうという発想からいえば、ストックの段階とフローの段階でダブルパンチが結果的に起こっているということです。それがいいとか悪いとかとおっしゃっているわけではないですね。
〇委員
そうではないです。
〇委員
我々これから老人は少し負担を求められると思いますよ。ここはみんな高齢社会になりつつあるけど。
それから、均衡化とおっしゃっている時には、全部6割か5割5分でさっと並ぶことを目標としているのですか。
〇事務局
ちょっとご説明させていただきます。現在、土地の評価につきましては、先ほど申し上げましたように、公示地価の7割で全国的にやっておりますので、それを大都市部を高くしたり、地方部で低くしたりということにはなっておりません。これは一定でございます。
それで、15ページの表の下のところに※印がついてございまして、ここの分母・分子でございますけれども、分母のほうに平成16年度の評価の見込額がいっておるわけでございます。こちらのほうが大きくなりますと、全体の数値は低くなるということでございまして、むしろ評価額はそういう意味で全国同じでございますので、課税標準額のほうで、先ほど申し上げましたように、負担調整の仕組みで上げられない、前年度の課税標準に引きずられているような仕組みがございますので、そういうことで沖縄等々、比較的地方部のほうでここの数値が上がっていかない。分子のほうで上がっていかない。こういうことでございます。
したがって、16ページで書いてある均衡化と申しますのは、課税標準額の特に負担水準が低いほうでございます。こちらのところがなかなか目標にしております7割程度のところに近づいていかない。毎年度のアップ率というのが一番低いところで15%程度でございますので、そこのところで上がっていきませんものですから、負担水準というのがバラツキが出ているということでございまして、均衡化が必要だということは、下のほうのアップ率というのをもう少し考える必要があるのではないかと、そのような問題意識でございます。
〇委員
何かわかったような、わからないような話なのだけど、沖縄とか鳥取とか、委員の発想は、こういうところこそ課税標準を上げて税収を上げるべく努力せよと言っているわけです。今の説明だと、それに負担がかかっているわけですね。そうなると、多分その負担のかけ方が悪いということだな。上げられないようないろいろな調整をしてしまっているということですね。
〇事務局
そういうことです。
〇委員
それについては直す気はあるんですか。
〇事務局
そこにつきましては従来からご指摘いただいておりまして、我々のほうも非常に大きな課題だという認識を持っております。
〇委員
どうぞ。
〇委員
私も昔1年間だけ税務局にいたことがあるものですから。当時はバブルの時で、土地の値段が上がるのは固定資産税が安いからだという議論があったのです。ただ、固定資産税というのは、そこから直接に所得が上がるわけではないものですから、納税者の感覚からすると、税負担が一遍に上がってくると、ものすごく抵抗があるんですよ。ですから、負担調整率を作っていますけれども、一遍に上がらないようにしているのは、徐々に上げて目標のところまでやるという制度を作っている。それでないと、大多数の人が固定資産税を納めていますから、ものすごい納税者の反乱というか声が大きくなるということを考えなければいけない。そういうことだろうと思いますが、間違っていたら言ってください。
〇委員
そのとおりだと思います。私も土地税制に絡んで大分議論したけど。ただ、あの時以来ずいぶんかかっていますよね。あとどのぐらいかかるかでしょうか。7割までいくのに。だってもう10年ぐらいかかっているでしょう。その辺はどうですか。
〇委員
今のお話、私いつも不思議に思うのですけれども、地方分権を進めようというわけですね。地方自治だというわけです。今のようなことは各地方団体が考えればいいのであって、国のベースで揃えるというのがよくわからないんですよ。住民が賛成すればいいので、どこかの市町村で高くして、住民は賛成しているのに、ほかの人が不揃いだからやめろというのはおかしいと思うのです。そこが何となく見方が変わってきてしまうところではないかと思います。
〇委員
最近までその要素は入っていなかったんです。これから入れる余地はあるかもしれないけれども。
どうぞ。
〇委員
固定資産税の歴史的な調整の経過を見ていると、よくも大工ではないけれども、あっちを叩いたり、こっちをいじくったりしてやったもんだ。苦心惨憺のあとが歴然としている、歴史的に見て。
それで、今の話にちょっと関連するのだけれども、17ページに「固定資産税における情報開示の推進」と書いてありますね。僕も固定資産税を若干払っているけれども、よその地域と、うちの前の連中のところはいくら違うのかなということは関心がもちろんあるわけです。調べたことはないけれども。だけど、地域によっては政治も絡んで、いろいろなことがあるでしょう。
それで、この情報開示の推進に従って、一体地域住民が縦覧制度を活用したり、路線価格の公開その他について、本当に見にきて、怒り心頭にして帰っていくのか、面倒くさいから来ない、最近落ち着いたから、というふうになっているのか。つまり住民の反乱ということを誰かおっしゃったけど、本当にそういうのがあるのか、今現実には。これに対するアプローチから見れば、不満の度合いというのは一応わかると思うのだけれども、これは実績はあるんですか。
〇委員
縦覧の割合はありますか。なければまた次回以降でけっこうですから。
〇委員
固定資産税ですが、そもそも課税標準というのを自治体間でばらばらにすることが適正かどうかという問題がありますね。つまり、地価公示価格の7割を目標に固定資産税の評価をしよう。一方で地方の努力というのは、むしろ税率のところで、今はもう制限税率も撤廃されましたので、そこで努力しているかどうかということを考えて、タックスベースそのものは、バブル前はタックスベースが自治体ごとでばらばらだったので、これを全国統一しようではないかという動きの中で動いていますから、むしろ税率の話ではないのかなという感じがします。
もう一つ、相続税ですが、今後、基本的にどう考えればいいのかという、例えば平成14年6月の「あるべき税制の構築に向けた基本方針」で、これは不勉強なので、もしかしたら議論があったのかもしれませんが……。
〇委員
何ページですか。
〇委員
資料の21ページです。基礎控除について、「『基本的考え方』及び地価の下落等を踏まえ、『広く薄く』の観点から」となっています。21ページの真ん中あたりです。「相続税の改革の方向性」のところです。
もちろん、扶養の社会化ということで、広く課税しようというのは、これはよくわかるのですが、「薄く」というのをどのようにとらえればいいのか。一般的に税制で今よく言われる「広く薄く」というのは、社会的な負担をもっと広く、そして例えば所得税だったら、もっと税率をフラットにしてという「広く薄く」、あるいは法人税でも「広く薄く」ですよね。税率を下げる。ここの場合の「広く薄く」の観点からというのが、これはどのようにとらえればいいのか。つまり税として一方で再分配効果は重要になってきているというようなことも言われておりますし、税制改正で税率を下げたというのは、所得税の税率が変わったので、それに合わせるということであったと理解できるわけですが、今後消費税のウエイトが高くなってきて、さらに所得再分配効果というか、そういう再分配の役割を強化していかなければならないということが一方であって、そして、「広く薄く」という、「広く」はわかるのですが、「薄く」というのが、これはどのように今後考えていけばいいのか。「薄く」というのはまさに税率の話なのか、あるいはここは控除ですから、このあたりをどのように考えればいいのか、ちょっとその辺をお教えいただければと思います。
〇委員
これは2年前の話でありまして、当時、「広く薄く」というのは、俄然流行っていた言葉なんですよね。あらゆる税に対して、見境なく「広く薄く」という字を入れた可能性はないことはないので……、冗談ですけど、おっしゃるとおり、課税最低限が9,000万、大きすぎて100人に5人しか払っていないではないか、これは問題だと。おっしゃる再分配効果を強化していこうということになると、まず課税ベースを広げて対象者を増やそうと。あの時税率をかなり下げていたんです。この「薄く」というのは、さっき言ったフラット化をもっともっとして、最低税率ももっとして、皆さんに負担してもらうというところまで、これ税率の発想はまだあまりないです。これは今言ったように、私の理解では、他の税、特に消費税の時使ったわけです。その類推で来ていまして、この「薄く」に対して何かはっきりした、事務局から説明してもらいますが、僕の個人的感覚では、「広く」はあったけど、「薄く」は、彼が言うほどはっきり税率に対応させてどうだこうだと言っていなかったと思います。
どうぞ、事務局から。
〇事務局
当時の議論をフォローする必要があるとは思いますけれども、当時、この時点で「広く薄く」というのは、単に相続税だけではなくて、やはり税制全体のコンセプトとしてよく使われていたというのは、まさに会長がおっしゃったとおりです。
それから、若干相続税の最高税率の問題はありました。したがいまして、ここは主語が「基礎控除については」となっているので、若干違和感があるかもしれませんけど、おそらくその当時の思いは、今は既に所得税の最高税率と合わせましたので、今となってはあれですが、この当時はまだその課題を抱えていたものですから、政府税調としてはそういう認識が強かったと私は理解しています。
〇委員
もう時間が来ていますので、手短にお願いします。
〇委員
さっきの固定資産税の課税標準の話で、地方分権とどうかかわるかということですが、基準財政収入額というのを考える時に、いつも自分でもいろいろ計算したりしていて、基準財政収入というのは、ある標準的な税をかけたらということで、その意味と、固定資産税の場合には、課税標準というのが公示価格の7割ということで決まっているわけですよね。そうすると、公示価格の7割に対して1.4%掛けたのが基準財政収入、そういうふうに考えていくというか、それが本来基準財政収入のあり方だと思うのですけれども、それに対してどういうお考えなのか聞きたい。
〇委員
何が問題なんですか。
〇委員
今どうなっているかということを含めて。
〇事務局
現在は、負担調整とか課税標準の特例等々、法律で定めているものですから、そこの課税標準の特例等々をやった後のものを使って基準財政収入額を算定しているというものでございます。
なお、先ほど委員のお尋ねのございました情報開示のところでございますけれども、昨年の数字では、縦覧の件数が3万7,000人余り、それから、閲覧と申しまして、自分の関係するところを見る制度でございますけれども、これの利用者が64万人弱ぐらいという数字がございます。
〇委員
それは予想より多いのですか、少ないのですか。大して多くないといえば多くないし。どうなんですかね。
〇事務局
従来から縦覧等々もございますけれども、それほど最近非常に広がっているという数字ではございません。
〇委員
いいですか。実態はわかったと。今度批判があればまとめておいてください。
では、どうぞ。
〇委員
先ほどの相続時精算課税制度のところですけれども、さっき27ページでご指摘があったように、60歳以上の方の貯蓄はものすごく多くて、株式の保有状況を見ても、おそらく高齢者は非常に高いと思います。その意味で、若年層にこの制度を活用して、より保有者の裾野を広げていって、かつ、若年層は長期のタームで株式を持つということにつながりますので、こういった制度がより活用される方向で、活性化の観点からも使われるべきだという感想を持ちました。
〇委員
サポートしてくれるご意見だよね。大いにけっこうだという評価ですね。
どうぞ、最後に。
〇委員
私も税制による世の中の活性化という面で、これだけ出てきたのはいいことだなと思うのです。
それで、すごく一般論ですけれども、例えば国でいうと、アイルランドがものすごく法人税を特別優遇措置をして、金融とか薬、医療、もう一つ何だか忘れましたが、いっぱい企業を誘致してあの国は元気になりましたよね。同じ規模のニュージーランドは全くだめなわけです。農業のままでいて。もう一つ、フロリダは所得税がないのだそうです。ゴルファーなんかですごく賞金を稼ぐ人は、みんなフロリダに住居を持っているわけです。日本でも各県が何か独自の税制で、お金持ちなり、元気な企業なりを集めてくるなんていうことができるのか、できないのか。今できるのにやらないのか、法律的にできないのか。ちょっとお伺いしたい。
〇委員
精算課税は、課税のニュートラル、公平を維持した中での制度ですから、ニュージーランドとかアイルランドと一緒にされては困るんです。法人税を下げるという。ただ、今の地方税は固定資産税をまけているところはあるでしょう。誘致するために。何かありますか。地方税で元気が出るような政策。
〇事務局
地方団体の場合、今、委員がおっしゃったように、税金でやるという発想と、補助金を出すという発想と両方あって、いろいろな組み合わせ、いくつか例はございます。
それから、固定資産税の話でありますと、今日ちょっとご紹介申し上げました、特に中心市街地が高いとか、そういった時に条例の減額、もちろん上のほうはいろいろ可能なわけですけれども、そういった制度があって、実際に条例減額制度というのも、手を挙げて動き出しています。4市町始まったりはしております。そういう意味では、幅のあることでございます。
〇委員
まだいろいろあるかもしれませんが、次に大きなビッグイシューがありますから。
〇委員
申しわけございません。
〇委員
最後にしてください。
〇委員
進行をおじゃまして申しわけないのですけれども、これまでの累次の税調の報告の中に書いてある話だから、今さら言わなくてもいいということなのかもしれませんが、要するに老後扶養の社会化が進展するのに伴って、相続時に残された個人資産の負担を考えて増加するということなのだろうと思うのですが、そういう方向性を打ち出しているわけですね。社会保障政策についての見直しや何かがいろいろなところで行われているわけですけれども、やはりそういうことと機を一にして、財政問題もあるわけです、財源問題もあるわけですから、やはりタイミングを見て、こういう方向に向かっての検討はする必要があるのではないかと思います。
〇委員
ありがとうございました。その辺も十分注意しましょう。
では、次のテーマ、金融所得課税、これは税制第一課長と市町村税課長から各々ご説明ください。お待たせしました。
〇事務局
「基礎小24-4」という資料、よろしいでしょうか。「資料(金融所得課税(国税))という資料でございます。
さっそくページをめくっていただきまして1ページ、いわゆる高齢化と貯蓄率の関係、貯蓄率がだんだん下がってきておるという数字でございます。
そんな中、次の2ページでございますが、個人金融資産の国際比較ということで、日本はどうしても現金・預金の割合が大変大きく、一番黒く網掛けをしております株式等、この割合が少ないということです。前回、金融小委でご議論賜りまして、この資産構成のままでは、新しい預金・貯蓄、こういったものが行われない中では、経済の成長に応じて資産が膨らんでいかない。こういうことをご指摘いただいたわけでございます。
そんな中でございますが、3ページ、ここ2、3年やってきました金融・証券税制の簡単なポンチ絵でございます。コンセプトといたしましては、預貯金並みの手軽さで株式投資ができるようにする。要するに、20%税金を源泉徴収で払って、それ以降の税務署とのお付き合いはなしで済ませようと、こういうお話でございます。
さらに、一番右のところ、当面の優遇ということで、5ヵ年間、株の配当、譲渡益、16年度改正では株投についての譲渡益、こういったものを20%を10%にするというふうにしております。
次のページ、株式の譲渡益について、申告が要らない、不要になる特定口座というものでございます。2003年の1月末からずっと数字をフォローしておりますが、特に16年、今年の1月、去年の年末からぐっと上がっておりまして、現在400万口座あるということでございます。
次のページに、マーケットにおきます個人の投資家のマーケット・プレゼンスでございます。もちろん、株価の動向といったものの影響もあるわけでございますが、これも昨年の春からずっと趨勢的に上がってきておりまして、売りもあれば買いもあるわけでございますが、現在、20%ちょっとというところを保っておるわけでございます。
次のページ、現行制度、特に課税方式でございます。これも多くを説明する必要はないと思いますが、配当については総合課税がベースになっております。ただ、源泉徴収を20%しておけば申告不要になっていますよというお話です。
それから、二つ目の譲渡益、これは申告分離課税になっております。特定口座に置いておきますと、申告不要が選択できるというようなことでございます。
預貯金の利子、公社債の利子については、源泉分離課税。これは後ほど次のページでご説明いたします。
それから、公社債については、譲渡益が非課税になっている。逆に損が出ても損とみなさない。こういう取扱いになっているわけでございます。
次の7ページに所得税計算の仕組みということで、ポンチ絵でございます。これは特に損益通算関係で出てきます。現在、下から四つ目のところ、株式等の譲渡収入というところがございます。これは損益通算は飛ばして、所得控除のところに入り、比例税率で税金がかかる。逆に申しますと、株で損が出ても、株の譲渡益の中でしかネットアウトができないという制度になっておるわけでございまして、この範囲を損益通算できる範囲、ほかの所得、特に利子とか配当、この金融所得と損益通算ができるようにしようというのが、次のページですが、今年の6月、金融小委の報告の骨子であったわけでございます。
簡単におさらいいたしますと、一体化の意義ということで、貯蓄から投資への政策的要請がある。これは先ほど一番最初に申し上げました、家計の金融資産の効率的活用が経済活力の維持の鍵になっているという問題意識でございます。
具体的な内容は、一つが課税方式の均衡化。いわゆる総合課税に足を突っ込んでいる配当の課税、こういったものも含めまして20%分離課税にしていこうかと。そういった上で損益通算の範囲を拡大する。株式で損が出た場合に、その損を差し引ける対象を極力広げたい。そういったことを行うために必要な納税環境の整備ということで、番号制度のご指摘もいただいたわけでございます。
次のページでございます。課税方式の均衡化ということで、公社債・公社債投資信託の譲渡益は、現行非課税になっているものでございますが、これを20%の申告分離課税にしていこうと考えております。
※印のところでございますが、支払調書発行まで含めた発行者・金融機関等のシステムの構築が必要になります。現時点、この方向で各方面とご相談させていただいております。損益通算は上場株のキャピタルゲインが現在10%でございます。この公社債の譲渡益課税を20%で考えておりまして、20%と10%の間ではまだできないという問題もございます。さらに、公社債の利子との通算も可能にしていかなければいけないということもございまして、システムの構築が二度手間にならないようにする必要があろうかと考えております。
(2)は配当でございます。これは現在、先ほど簡単にご説明しました原則総合課税となっておるわけでございますが、20%の申告分離課税にできればそろえていきたいと考えております。その際、今20%の申告分離にそろえるのはどういうことかというと、金融所得として純化させるということでございます。考え方といたしましては、事業所得性もあるだろうということで、負債利子控除、配当控除といったことが導入されておるわけでございますが、金融所得として純化させると仮にいたしますれば、こういった制度は適用がないというふうにするのが、考え方としては素直でございます。
ただ、どうしてもやはりこういったものも残すべきではないかという議論も片やございます。仮に、次に出てまいります損益通算を適用とする者について、この申告分離を選択できるというふうに選択制度を作った場合、実務上の問題がどういうものになるのか。これは配当を支払う会社も含めて、いろいろなシステムの構築が必要になってくるわけでございます。
また、実は現在、別途株につきましてはペーパーレス化、これは平成21年の夏に完成をすることで動いております。このペーパーレス化に対応するためのシステム構築、これも別途今徐々に進んでおるという状態でございます。
次の利子所得、先ほどポンチ絵でご覧いただきましたが、現行は20%の源泉分離課税となっております。損益通算をしていただくためには、申告が必要になるということで、損益通算を適用とする者について、20%の申告分離課税にしていこうかと。このためにその下の※印、支払調書制度の整備ということでございます。
これに関連しまして、例えばこれは「日経マネー」という雑誌ですが、「投資の超節税法」なんていう、担当者としてはドキドキしながら読むような特集が組まれております。こういった中でも、実はほかの申告課税の対象になっている金融所得・商品につきまして、例えば奥様の名義にしておくと基礎控除が効くので、38万円までは無税ですよという節税法が紹介されています。申告分離課税にした場合、こういった問題についても、さあ、どういうふうに対応すればいいのかと、このようなことを実務的に検討いたしております。
それから、外貨預金の為替差益。これも現在雑所得として総合課税ですが、これを20%の申告分離課税にいたしたいと思います。ただ、これにつきましてもインフラが必要でございまして、必要な支払調書、こういったものが要ります。預入時のレート、払出し時のレート、こういったものを明示した制度の整備が必要です。特に預入時は、例えば100ドルずつ月々入れていった場合、こういったものを累次に平均レートを計算してもらう。こういった銀行サイドの手間も必要になります。
また、払出し時の為替レートと書いてございますが、実は悩ましいのは、円転するまで課税を待つのかどうかという問題がございます。例えば、1万ドル引出しを受けます。引出しを受けたその人が円転するまで課税を待つとなると、実際、銀行はもうあずかり知らない話になりますので、課税はできなくなる。ということで、円転するのを待たずに課税をする。払出し時のレートで課税をするということになるわけですが、いわゆる未実現の利益に対する課税という問題が別途生じます。
最後飛ばしますが、保険は養老保険等々についての金融所得類似の保険収益については、20%申告分離にしたい。この辺はまさに業界との相談をしなければいけないところでございます。
次の10ページ、損益通算です。これは具体的なイメージは次のページにポンチ絵で用意しております。
まず最初に、番号をどうするかということですが、納税者の申請に応じて税務当局が付番したいと。これは納税者自身が番号自体も申請する。桁数だけ合わせておきまして、番号自体も納税者が申請する。当局のほうが、二重付番がないことだけチェックするということも検討の対象にしております。
あとは、いわゆる本人確認、番号告知、番号記載の情報資料といったもの、11ページのポンチ絵をご覧いただきたいと思います。
さらに、この番号につきましては、個人情報保護制度について検討せよと報告で頂戴いたしております。当局サイドの守秘義務、それから番号を知っている民間サイドの守秘義務、情報管理体制の充実、こういったものについて具体的な検討をしておるところでございます。
さらに10ページ、最後のところ、損益通算の限度額でございますが、年間〇万円ということで、まだ具体的な数字を入れておりません。所得の性質の差等々、諸外国の制度などを参考にしながら、この「○万円」というものを随時決めてまいりたい。もし引け切れない場合、これは繰越しを行うという姿になるわけでございます。
以上、ざっと申し述べましたが、制度改正の大きな流れ自体は、金融小委報告でしっかり書き込んでいただいております。あとはユーザーのニーズをも把握しながら、システムの構築、これは実際コストもかかるわけでございまして、実務的な検討が必要になっているわけでございます。全体の整合性も大切でございますが、できるものから制度化していきたいと考えておりまして、検討の進捗状況につきましては、適時ご報告をいたしたいと考えております。
補足資料ということで2ページ、前回宿題をちょうだいしているものをつけております。ご覧いただきたいと思います。
以上でございます。
〇事務局
それでは、金融の地方税の関係を説明させていただきます。
まず、1ページをお開きいただきたいと思います。金融関係の所得で所得割で課税されているもの以外のものということでございまして、これは道府県民税となっておりまして、一定割合が市町村に交付されるという仕組みでございます。三つございまして、利子にかかる利子割、株式の配当にかかる配当割、それから株式等譲渡所得割、この三つの種類がございます。
2ページを開いていただきますと、この三つにつきましては、若干の違いがございます。利子割につきましては金融機関の所在する都道府県、配当割と株式等譲渡所得割につきましては基本的には住所、これをベースに課税主体を決めています。どの県が課税するかということを決めています。
それから、納税義務者につきましても、利子割については支払いを受ける者ということで、個人以外も入りますが、配当割と株式等譲渡所得割については個人ということでございます。これらにつきまして、一定の税率を掛けて税額を計算するということでございます。
具体的に申しますと、3ページをご覧いただきたいと思います。これは利子割の仕組みということで、利子の支払い、預貯金の利子であるとか公社債の利子につきまして、所得税のほうで15%、住民税のほうで5%を徴収する。これについては利子の支払者、金融機関ですが、これの所在する都道府県に払われる。ここですべての課税関係を終了させる。これが利子割の仕組みでございます。
4ページをご覧いただきますと、これに対しまして、配当割や株式等譲渡所得割の仕組みということで、これにつきましては、まずは最初の徴収の段階では、所得税15%、住民税5%、ここは一緒でございますが、この払われる先が住所地の都道府県ということになっております。もう一つの違いは、申告不要を選択することが可能でございまして、この場合は、課税関係は終了せず、一定の控除等を行って、所得割で課税をするという仕組みになっております。
このように一概に金融課税といっても、今、ものによって地方税の課税の仕組みが違っておりますので、先ほどの金融所得の一体化という制度を考える時には、このような仕組みをどうしていくかということを、あわせて検討する必要があるのではないかと考えております。
それから、補足のほうの資料でございますが、5ページはすでに所得税にも同様の資料がついております。
それから、6ページ、これは所得税に関しまして、給与収入段階別の人口と税収のシェアという資料が出ておりまして、これに相当するものを用意しております。この資料は課税標準段階別でございますが、ほぼ傾向としてはわかろうかなと思っておりまして、このような分布になっております。
それから、以前に、住民税における各種控除をすべてなくしたら、どのぐらい増収になるかというご質問がございました。現在、住民税の所得控除をそれぞれの減収額を単純に足し合わせますと、約4.3兆円になるということでございます。
最後は徴税費、税務職員数の推移というのを7ページにつけさせていただいております。
〇委員
税制第一課長、議論を始める前に確認ですが、説明が漏れていると思うけど、金融所得はこれから10%のグループと20%のグループに分かれますね、当面、特例が効いている間は。そうすると、グループごとで損益通算をしようということですか。
〇事務局
金融小委の報告で、税率の違うもの同士のあれはだめと、いただいています。そういう意味では、配当の10%、譲渡益の10%、10%10%でそろっている分について、その憲法は満たしておると、こういうことでございます。
〇委員
それから、今、これが通れば、申告分離を20%にしようというグループができましたよね。それは20%グループでまた損益通算をしたいという提案ですか。
〇事務局
まず第1の点は、税制第一課長が申しましたように、同じ税率同士しかだめだということで、そうすると、選択肢としては10%、10%同士を先行でやるという選択肢があるということです。ただし、それを実際にやるかどうかは、やはりトータル、実務関係者の理解とか協力もありますから、そこのところは今まだ議論をしておる途中です。
2つ目に、20%同士すべてやるかというと、それはまた別でして、20%になって課税が統一されても、金融所得の性格上、損益通算になじむものとなじまないものとありますから、そこはまた税率が同じだから全部すぐやるということでもない。例えば、先物取引も今税率20%で申告分離していますけれども、それと、いわゆる我々が言っている株式の譲渡損失を損益通算するというのは、まだそこまでは全然視野に入っていません。
〇委員
今の説明は、来年の税制改革の議論とどう引っかかってくるのですか。
〇事務局
ですから、来年度税制改正でどこまでできるかを今関係者と詰めております。理論的には、この間報告書をいただいたのをベースに、関係方面の要望について今整理をしているところです。
〇委員
関係者もいるけれども、税調としてもその辺の判断をしなければいけないわけですよね。
〇事務局
税制調査会には、今申しましたように、その実務的な検討状況を我々のほうから報告して、最終的にはご議論をいただくという形になろうかと思います。
〇委員
それは年度内に間に合うのですか。
〇事務局
そこのところは、今のところ、各省折衝みたいなことをやっていますので、その状況に応じて……。場合によっては、今年度は間に合わない可能性もあると思います。それはあくまでも理論だけの問題ではなくて、実務のウエイトがむしろ大きいので。
〇委員
それでは、「来年4月からやるよ」なんていう話をすると、勇み足になりますね。
〇事務局
来年の4月からは絶対できません。決めてもコンピュータのシステム対応などを考えたら、法律は仮にできても、実施がいつになるか、相当これまた、さっきも言いましたように、ペーパーレス化とか……。
〇委員
10%グループもそうですか。
〇事務局
全くそうです。10%グループの損益通算の条件も、ちゃんと金融番号を入れたりする仕組みが要りますから、それがどういうタイミングでできるかによって、全く変わってくると思います。これは全く実務的な対応の関係もありますので、ちょっと今のところ予断を持って申し上げることはできません。
〇委員
了解。
今のような縛りが効いているようでありますが、将来どうやるかという視点を踏まえて、ちょっと時間が押し迫っていますが、どうぞ、ご意見賜りたいと思います。
〇委員
「金融番号」というのは、定着させていく言葉なのですか。
〇事務局
こういう紙でお出しするのは初めてでございますが、ほかにいい名前があればあれですが、事柄の性格を一番よく表しているかなということ、かつ、短いというのがいいかなと思いまして、いわゆる「金融番号」としております。
〇委員
私はもう一つ衛星通信機構というのをやっているのですけれども、そこで公的個人認証というのをやっていまして、税務署でインターネットで申請する時の個人認証を、本人に間違いがないというのを、私のところで実はやっているものですから、「金融番号」というのは初めて見ましたけれども、非常に興味があるところなので、ちょっとお聞きしたいのですけれども、一つは、金融番号自体は税務当局が付番というから、新しい制度を作るということのように理解します。
それで、一番こういうものをやる時の問題は、本人であるかどうかということを確認するのがものすごく難しいんですよ。それをどういうようにやるのか。今のあれでいうと、住民基本台帳のシステムができておりますから、それとリンクするのではないかなという感じがするのですけれども、中身がわかりませんからあれですが、番号自体も本来は、今もう日本国民に番号が打ってありますから、今の状況では民間に対しては開示できないということになっていると思うのですけれども、総務省のほうがどう考えているか知りませんけれども、言ってみれば昔の納税者番号ですよね。その辺との調整をどうするのか。それから、もう一つは、本人確認を住基制度というのを使うのかどうか。私は使ったらいいのではないかと思いますけれども、その辺をちょっと……。
〇委員
私の理解では、金融番号は金融番号で一塊で、ほかの番号等々とはつなげない。あるいは将来も拡張しないような意味合いではないかと理解していますけれども、どうぞ、税制第一課長。
〇事務局
この金融番号自体は、今すでにある番号とは別の番号を想定しております。もちろん、先ほど申しましたように、ご本人がいろいろな番号は面倒だということで、申請する際に、桁数が合っていれば、例えば自分の年金番号なり住基番号を登録する。それで二重付番がないことだけチェックする。こういうことは物理的にはあり得るのですが、番号自体は別物と考えております。
それから、今おっしゃったように、実際、番号をつける際の本人確認については、いろいろな方法があろうと思います。これは実際ユーザーにとって使い勝手がいいような、例えばいろいろな選択肢がある、その一つの中に住基制度、こういったものを使うということも当然検討されてしかるべしと。いずれにしましても、この具体的な制度設計はまだ中途段階ではございますが、今のご指摘はそのように整理をいたしております。
〇委員
よくわかりませんけれども、1月1日現在の住所地というのが非常に重要になってくると思うのです。それは今、地方税の場合も含めて、場所の移動や何かを確認できるのは、住基台帳制度しかないと思うので、そういった点はよく検討されたらいいのではないかと思いますけれども。
〇委員
今の回答は、そういう趣旨でよろしいんですね。
ほかによろしいですね。では、どうぞ、最後に。
〇委員
今、検討をなさっているということでございますが、今回、「貯蓄から投資へ」ということと、それから、金融商品全体のニュートラリティということと、両方の政策目的をうまく実現するようにご努力いただきたいと思うのですけれども、実際10%に下がって、実証分析はできていないのですけれども、やはり株式市場の活性化というのは、いろいろな要素もあって、確かに相当この税制の影響というのも出ていると思います。その意味で、この流れをできるだけ維持しつつ、かつ、できるだけいろいろな金融商品のリスク・リターンにニュートラルな形での、資本市場にディストーションを与えないような税制改革にしていただきたいということが一つです。
もう一つは、番号制とかそういうことは、やはりできるだけ投資家の視点に立って、できるだけ簡素であってほしいと思いますし、また、実務負担の面でもできるだけ無理のない簡素な仕組みでできるようなことを、ぜひこの制度改革の趣旨にかんがみてお願いしたいと思います。
〇委員
今、提案の金融番号というのは、まあまあアクセプタブルということですね。
〇委員
私は実務についてそう詳しくはないので、その辺については、実務家の方にもお伺いしたいと思いますが。
〇委員
私は何かおどおどしすぎているのではないかと個人的に思っていますけれども、これから番号制、本格的議論がいずれ起こった時に、再度議論したほうがいいと思います。
それに僕の感じでは、実務家あるいは金融機関との話が全部クリアになって、あと半年以内にすべて物事が片付いてこれをやろうというふうにはなかなかならないと思いますので、今のお話を聞いていると、ちょっとこれは先になりそうですね。
〇委員
実務家としての資格は全然ないので、お答えはしにくいのですけれども、今のお話を聞いていて、確かに時間がかかるのだろうと思うのです。ただ、あの金融小委や何かで非常に熱っぽく議論をしていた時の話から考えると、そんなに遠い先の話ではないという気が私はしていました。ですけれども、時間がかかるのはおっしゃるとおりだろうと思います。
私は、世の中の人もそんなに先の話ではないと思っているのではないかと思うので、この辺は税務当局なのか、税調なのか、そこら辺の主体の話はあるのですけれども、やはり見通しをある程度明らかにしておく必要があると思うし、場合によっては、スケジュールをもう少し、いつの時点ではここまでのことをやるとか、最終的にいつごろからやれるのだというようなことを、世の中に言っておく必要があるのではないかなという気がします。
〇委員
我々が今度の答申の中で書き込めるかどうかでしょうね。少しぼやっとした形でもいいから。
〇事務局
税調としての姿勢、熱意については、金融小委の報告は非常に評価されていまして、税調の前向きな対応について、実は我々も非常に関係者から評価をいただいています。ですから、実際に今やるという前提で議論は進んでいるわけです。ですから、むしろ変な形で、今度はやる立場に立った時に、ごり押しで無理なことをやるということについて、関係者の不安があるので、そこは我々十分話をしていきたいと思っております。
〇委員
よくわかりました。そうなると、遅れても税調の責任ではないということですね。(笑)
〇事務局
バックアップはしていただきたいと思います。
〇委員
時間が過ぎましたから、終わりにしましょう。
次回以降の予定をお話ししておきますが、2回小委員会をやりましたので、次回、26日の火曜日は2時から総会を開催いたしたいと思います。これまで2回やったものを、総会のメンバーの方に議論の経過を説明して、ご議論賜りたいと思っています。
それから、次の基礎問題小委員会は、翌週、11月2日、火曜日、2時から。これは一応これまで主要な税が全部一通り終わりましたので、フリーディスカッションで、今後の起草を踏まえて答申というふうに結びつく時のコアな議論をしていただきたいと考えております。
では、どうも今日はありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。