第23回基礎問題小委員会 議事録
平成16年10月19日開催
〇委員
まだ数人の委員がお見えでございませんけれども、ちょうど時間になりましたから、始めましょうか。始めているうちにお見えになると思いますし。
今日は法人課税と国際課税、2つでございますから、説明もこの2つの領域に分かれるということになります。前半で法人課税、やや多めに時間を使いたいと思いますが、ここから議事に入りたいと思います。
それでは、税制第二課長と、自治税務局の都道府県税課長、お二人からご説明を願います。では税制第二課長、どうぞ。
〇事務局
それでは、基礎小23-1「資料(法人税関係)」という資料をお開きいただきたいと思います。
目次をご覧いただきますと、今日の整理といたしましては、法人税の現状、それからこれまでの改正の動向、それから、それを踏まえまして今後の課題というあたりを整理した形の資料でございます。
それでは、1ページ目をお開きいただきたいと思います。「法人税収の推移」ということでございます。ご覧いただきますと、15年度予算の決算が10兆1,000億円、それから16年度、9兆4,000億円という予算額でございますが、大体10兆円前後という法人税の税収規模でございまして、一般会計税収に占めます割合が23%前後ということで、前回ご説明しました消費税税収規模であるということでございます。80兆円の予算に対しまして、税収全体が40兆円という、その中での10兆円規模ということでございますので、重要な税収の柱の一つということかなと思います。
この水準でございますが、平成元年ないしは2年のピーク時と比べていただきますと、約9兆ほど税収が落ちておるわけでございます。その要因といたしましては、大きく分けて2つほどございます。1つは、90年代からのバブルの崩壊、経済の低迷といったような影響で企業収益が悪化するとか欠損が累積するとかいうようなことでございまして、例えば平成2年から9年、18兆4,000億円から13.5兆円というこの落ち方、約4兆9,000億円、5兆円ぐらいございますが、この部分にそういった要因が顕著にあらわれているのではないかと思われます。
それから税収の下落の2つ目の要因といたしましては、法人税の減税という話がございます。上に吹き出しで3つほどボックスを掲げてございます。平成10年度の法人税制改革、それから11年度の税率の引下げ、それから15年度におきます研究開発減税ということ、合わせまして約3回、3兆4,000億円~5,000億円という減税が行われておりまして、こういうものが先ほどの平成9年から16年までの税収の減、約4兆ほどございますが、そのうちの3兆4,000億円~5,000億円という形になっているということでございます。
足元をご覧いただきますと、14年の決算、9兆5,000億円から、15年度、10兆1,000億円ということで、ここ6,000億円ほど税収が増えてございますけれども、これは企業収益の改善が背景にあることではございますけれども、ようやく10兆円台の回復というレベルになっていると、こんな状況でございます。
次の2ページ目でございます。欠損法人割合ということでございます。先ほど申し上げました、税収のいわば背景にあります企業収益の悪化のある種一面を見たものでございます。平成14年分の一番足元でご覧いただきますと、欠損法人割合が約7割ということでございます。実数ベースで見ますと、その欄外、全体255万社のうち175万社ということで、約7割。裏返しますと、利益計上法人が80万社、約3割と、こんな形でございます。この数字は、平成2年、元年のあたり、48%、約5割前後という数字から、経済の低迷等々の影響で、これが急激に上がってきている姿が見てとれるかと思います。
3ページはその業種別でございますので、省略いたします。
4ページ、法人税収との関係で重要なデータでございます。「所得金額と繰越欠損金額の推移」を示したグラフでございます。14年、足元のところでございますが、32兆5,000億円という所得金額が見えますけれども、これは先ほど申し上げました利益計上法人80万社分の所得に当たるところでございまして、法人税収のいわばベースとなるところでございます。この数字、平成2年あたりの50兆円というあたりから14~15兆円ほど落ちているという流れでございます。
一方、その下に突き出しているほうでございますが、累積欠損金額ということで、14年分におきましては70兆4,000億円という巨額の累積欠損がございます。この数字も、平成2年あたりと比べていただきますと、大幅な増加、特に12年まで急増いたしまして、ボトムでは92兆円オーダーになったわけですが、最近ではやや回復ということで、減少傾向にあるということでございますが、依然、70兆円規模の累積欠損があるということで、景気の回復がございましても、税収にはね返るということについてはなかなかままならないという状況もこのあたりにあるのかなということでございます。
5ページは飛ばしまして、6ページにまいりたいと思います。ここからは法人税制に係ります最近の改正の流れというものを鳥瞰していただくということで作った資料でございます。この表は、上の段が法人税の改正の概要ということで、税率、課税ベース、企業組織関連という3本柱で書いてございます。下が備考ということでございます。
それから次のページは、「実像」把握ということでやりましたときに、グローバル化で提出されました資料でございまして、そのときのバックにあるさまざまな動きをあらわしたものでございますが、これなぞを見ておりますと、90年代に大きな世界的な環境変化があったということは言うまでもないところでございまして、冷戦構造の終結とかIT化、それからグローバル化が進む、それからマーケットが世界市場化していくという流れで、企業の経営環境が大きく変わったと。
それから国内的には、バブル崩壊によります経済低迷の中で、企業自体の再生等々が問われる状況になったということで、この下の備考のところでございますが、商法、あるいは企業会計というあたりの世界でも大きな変革があったということがございます。企業グループの一体的経営であるとか、組織再編を柔軟にしたいということで、一番下の欄にございますような会社分割法制の創設であるとか、連結に関するいろいろな見直しとか、そういうことが行われたという状況にあったわけでございます。
法人税におきましても、こうした変化を背景といたしまして、90年代の後半からかなり大きな改革をしてきたということでございます。上の段に主なものを並べてございます。この際の全体的なアングルでございますけれども、やはり企業の競争力の強化、それから産業の構造改革の促進というものをベースに置きながら、かなり総合的な改革になっているのではないかと思われます。
例えば税率でございますけれども、平成10年、98年に37.5%という税率から3%下げまして34.5%、引き続きまして11年度に30%まで下げまして、そういう意味では、2年で約2割カットしたということで、先進国並みの水準を目指したということでございます。
それから課税ベースにつきましては、法人税率の引下げといわばセットという形で、その適正化、拡大という形の流れがございます。
それから企業組織関連という欄がございます。ここには、企業組織再編に係る税制の創設とか連結納税制度の創設といったものが代表的なものでございますが、商法等の改正に伴いまして、いわばインフラ整備を行ったという部分がございます。
このようなことで、税率の引下げのみならず、こういう仕組み、インフラの整備によりまして国際競争力への強化というものに資していく整備も行われたということでございます。
ちなみに、これによりまして、法人税制の法規の条文数が、その前、当初880あったものが約1,400になったということで、税法が倍になったというぐらいの大改正が行われてきたということを申し添えたいと思います。
それからもう一つ、平成15年のところに研究開発減税等々掲げてございます。これは「あるべき税制」という流れの中でかなり集中的に行われたものでございます。全体として見ますと、98年、あるいは90年代後半以降現在まで、この税率の引下げ、課税ベースの適正化、それから今申し上げました研究開発を中心とする選択と集中的な方向性、それからインフラ整備という、いわば4点セットでここまで大きな改革を行ってきたというのが全体の鳥瞰図でございます。
7、8、9、10ページは、今申し上げたようなあたりにつきましての関係の答申を掲げたものでございますけれども、これは省略いたします。
11ページでございます。もう少し各論に入ってまいりたいと思います。税率の動き等々、まずご覧いただきたいと思います。先ほど申しましたように、平成10年のあたりに、37.5%から34.5%、それから30%に引き下げたということでございます。
12ページ、諸外国の法人税率との比較でございます。一番右側の2004年のところをご覧いただきますと、日本は30%ということで、イギリスとそろっております。主要先進国並みというイメージの数字でございます。
ちなみに、アメリカが35%、フランスが33 1/3%というようなこと。ドイツにつきましては25%ということでございますが、ドイツは個人事業者が中心の国ということで若干異質ではございますが、25%というような数字になっております。
全体のこのグラフの階段状の傾向でございますけれども、諸外国とも、1980年代から90年代半ばにかけまして、おそらく課税ベースの拡大とセットという形で引下げのトレンドがあったという流れでございます。90年代半ばになりまして落ちついた動きを示して、現在に至っているということでございます。
13ページでございます。これは国税と地方税を合わせた全体としての税率のレベルといったものを図示したグラフでございます。濃いめの部分が法人税、国税部分、薄めの部分が地方税等々の部分でございます。日本の場合はトータルで39.54%という数字でございます。これは横に見ていただきますと、アメリカ、ドイツというあたりにおよそそろっているかなあということでございますが、イギリスとフランスにつきましては、地方税がないということもございましてちょっと違う水準になってございますが、国税という面につきましては、先ほど表面税率で30%と申したようなレベルで、ドイツに次いで低いレベルという形になっているわけでございます。
次が課税ベースの適正化という流れでございます。ここは、お時間の関係がございますので詳細は省きますけれども、平成10年から12年、14年とかけまして、かなり詳細な課税ベースの洗い直しが行われました。これは先ほど申し上げた税率の引下げといわばセットという形で行われて、いわば中立性というものをどういう形で確保していくかということが見直しの基本的なアングルであったということでございます。
次の15ページには、15年度と16年度の改正がございますが、この辺の詳細は後の資料で申し上げたいと思います。
次に16ページでございますが、課税ベースということの関連で申し上げると、企業関係の租特というのが1つポイントになるわけでございますが、その全体の流れを示したグラフでございます。企業関係租特につきましては、もちろん租税原則の例外ということで、整理合理化するというのが一つのポイントではございますが、もう一つは、真に必要なものについては選択と集中という考え方もあるということでございまして、その二本立てで取り組みが行なわれてきておりますが、このグラフの真ん中あたり、整理合理化項目という項目数の変化をご覧いただきますと、廃止項目、それから縮減合理化で中身をかなり精査したものの数がこのような数字に及んでおります。
一方、創設というものもございます。特に15年度あたりになりますと、先ほど申し上げました研究開発減税のような大きな創設項目があるということでございますが、そこは選択と集中、重点化という流れで出てきたものでございます。
項目数そのものは、ネットで見ますと微減ということでございますが、減収額のほうは、いわゆる選択と集中の大どころがあるということで、額的にはこのような大きな額になっておりますが、内訳的には、1兆2,000億円という数字は研究開発減税を中心としたものだということでございます。
17ページをご覧いただきますと、その1兆7,300億円の減収額の大どころ、試験研究関係の税制、それからIT関係ということで、合わせまして約1兆2,000億円、約7割がこの大口で占めているというのが現状でございます。
今申し上げました研究開発減税のところをもうちょっと掘り下げてご説明したいと思います。2~3枚用意してございます。18ページでございますが、研究開発減税につきましては、15年度の税制改正の際に、国際競争力をどう考えるかということで、ソフトパワーといいますか、知的財産戦略ということで、そういう発想に基づきましてとられたということでございまして、非常に大胆な措置だったということだろうと思います。
具体的に申し上げますと、増加試験研究費制度という当初の制度とのいわば選択適用ということで新たな制度が作られたということで、右側の四角の中でございますが、全体、総額の8%から10%を税額控除、いわば根っこから税額控除するという大きな改正がなされました。
次の19ページをご覧いただきますと、それをもう少しわかりやすく図示したものでございますが、左側のグラフでございます。横棒が売り上げ総額に占めます試験研究費の割合、試験研究費割合をとったもので、縦が税額控除率というものでございます。
シャドウを打った部分、8~10%ということで、インセンティブ化で傾斜をつけてございますけれども、ここはいわば恒久的な措置という形になっておるわけでございます。恒久的な措置といいますのは、景気という配慮よりも、むしろこの研究開発費というものが21世紀をリードする戦略的な分野を育てるという発想に基づくものだということでございます。その上に2%上乗せということで、3年間の時限措置ということでございまして、18年、再来年の3月末まで、これは経済への対応ということで上乗せをしたものでございます。恒久的な部分がございますので、企業にとりましては、中長期的な研究開発が立てやすいという話等々がございまして、いろんな形で評価されているということでございます。
ちなみに、この税制を最大限利用いたしますと、限界が、法人税率は2割までという上限を限っておりますので、上の枠にございますように、法人税率30%がいわば丸々使えるという企業であれば24%ということで、実質的な大幅な税率引下げ効果が出てくるということでございます。
これに加えましてもう一つ、設備投資減税が行われたということで、ここにもこのような制度改正が行われているわけですが、これは時限的な措置、18年3月までの措置として講じられたということでございます。
これらの減税措置に伴いますいわば効果といいますか、そういうものの関連データをお示しいたします。上にございますように、15年度、16年度と研究開発投資額が増えていく。あるいは下にございますアンケート調査でございますけれども、どういう点がよかったかという問いかけに対しまして、増加型では税額控除を受けられないけれども、新しい措置ではインセンティブとして機能していく、いわば根っこからだという話とか、中長期的な研究開発計画に加味しやすいということで、恒久的な措置が根っこからなされているというあたりの評価が出ているわけでございます。
それから次のページはIT関連の投資でございます。比較的好調な流れになってございますが、このような減税の効果があったという感じかなと思っています。
それで、資料としては用意してございませんが、私どももこういう措置のいろんな効果というものもいろいろな形で情報収集しておりますが、最近では、企業の立地政策にもかなり影響を与えているのではないかという声も聞こえてまいります。
特に研究開発減税を行うことをいわば機会といたしまして、研究開発部門を国内に置いて、これは知財対策ということもあるでしょうが、これに関連しますハイテク部門などを国内に立地させるといういわば国内回帰という動きも、またこれを機に出てきているというあたりも一つの効果かなと思っておる次第でございます。
次の23ページでございますが、これは今申し上げました研究開発減税等々行いましたときの税調答申でございます。基本的には、こういう措置につきましては、1つ、中立性との関係はどうかというご議論があるわけでございますが、このときの判断のもとになったものとしてご覧いただきたいと思います。上のアンダーライン、国の法人税率については、現在は引き下げるような環境にはないけれども、他方として、わが国企業の競争力強化や産業構造の改革を進めるためには、集中的な、あるいは重点的な政策減税を講ずるのが適当だということで行われたわけでございまして、そのときに意識された事柄というのが、24ページをご覧いただきますと、企業部門におきますキャッシュフローの状況なども1つあったわけでございます。
限られた、例えば1兆円なら1兆円、1兆5,000億円なら1兆5,000億円という財政資金を使った場合に、どういう形がいいか、一般的な法人税率減税による手元流動性の増大よりも、こうした集中投下方式のほうがいいのではないだろうかということも、このような企業におきます資金フローの状況というものも背景にあったかなあということでございます。
次の25ページでございます。今までは税率及び課税ベースでございましたが、ここからは企業組織関連の改正でございます。大きく分けて2つございます。企業組織再編に係る税制ということで、企業が非常にメガコンペティションの時代に柔軟に組織を再編成していきたいということで、商法等におきます制度改正が行われたことに対応いたしまして、税制におきましても対応した整備を行ったということでございます。
枠の中、書いてございますが、合併等によりまして資産が移転いたしますときには、基本的には、移転資産に係ります譲渡益には課税するという原則でございますけれども、下に挙げました絵のような、企業内グループの再編だとか共同事業を営むための再編といった場合には、「事業を営んできた当事者が引き続き事業を営む」という実態が継続いたしますので、課税を繰り延べしていくということで、スムーズな企業再編を進めるような制度を税制上も担保したということでございます。
次の27ページ、これは14年度改正でございますが、連結納税制度というのを整備いたしました。企業グループが一体的に経営するという動きが出てきたのを背景としたものでございまして、実質的に一つの法人と見れる企業グループを、納税としても一つの単位とするという形で整備したものでございまして、先ほど申し上げた企業の組織再編というものをこういう面からも柔軟にできるような形にしたということでございます。
28ページ、連結納税に関します申告件数といいますのは、15年3月という部分でございますが、134件あり、申告所得が325億円という数字になっているということでございます。
29ページ以下は今後の課題ということで整理いたしました。14年度及び15年度の税調におきます答申が今後の課題を整理してございますので、これをちょっとご覧いただきながら整理させていただきたいと思います。
まず法人税につきましてはということで、上のアンダーラインでございますけれども、「法人税は、経済がグローバル化する中で、国際的に整合性がとれ、企業活動に対し歪みの少ない中立的な税制であることを基本とすべき」ということを基本としまして、「しかしながら」というところですが、「累次の税率引下げにより、国の法人税率はすでに先進国並みの水準となっており、開発途上国の水準を念頭に置いて、これ以上の税率引下げを行うことは適当ではない。今後の法人税率の水準については、わが国の租税負担全体の水準や税体系全体のあり方との関連、さらには先進国との税率のバランスを踏まえて検討していくべきである」と、このような税率に関する記述がございます。
次の30ページでございますが、15年におきます中期答申でございますが、(2)に中期的な課題が整理してあります。[1]は今申し上げたような税率に関連する課題でございますが、そのほか、[2]、[3]、[4]とございます。
[2]につきましては、経済のグローバル化とかそういうものを背景として、多様な事業活動、投資活動が行われるということで、それに応じた適正な課税のあり方を検討していくというような話。
それから[3]でございますけれども、透明性を確保しながら民間非営利活動が円滑に行われるよう、寄附金税制も含めたこうした適正な課税のあり方を検討していくと、民間非営利活動に関する課税のあり方を検討ということでございます。
それから[4]といたしまして、「公益法人に対する課税のあり方については現在行われている公益法人制度改革の検討を踏まえ――これは後でちょっとご紹介いたしますが――適正な課税を確保する必要がある」ということで、[3]、[4]はいわば公益法人絡みのテーマという形でございます。そういう意味で3つテーマが掲げられているということでございます。
31、32ページには、「実像」把握で行われました関連部分を少し書いてございます。アンダーラインのところをご覧いただきますと、例えば「『量的拡大』志向の限界」というところで、社会の活力をどう維持、確保していくかが重要な課題だと。技術革新による生産性の向上とか、人的資本の質の充実といったようなものが鍵になっていくという記述がございます。
それから下のほうでございますけれども、グローバル化の動きをどのように生かすかが重要な鍵となるので、ソフトパワーに見られる日本の強みとか、「日本らしさ」を伸ばしていくということの重要性というのが指摘されておるわけでございます。
それから32ページでございますが、こちらは公益法人の絡みでございます。ここに、いわゆる「公私二元論」が今まで支配的であったけれども、これからは、市民活動から企業の社会的責任に至るまでの「民間が担う公共」という領域があるので、そういった領域についての重要性というものが指摘されているということもリマインドさせていただきたいと思います。
33ページでございます。これは再掲させていただいておりますが、税率に関連する部分につきましては、先ほど見ましたような国際的水準になっているということの確認。
それから34ページ、最近さまざまなところで、税率につきましてはアジアとの比較等々がよく言われますものですから、比較表を用意いたしました。例えば中国などは法人税率33%、韓国27%、あるいはフィリピン、タイは32%とか30%とかいうことで、30%前後にそれぞれ散らばっている状況である。
それから一つの指標でございますが、法人所得課税としての負担率というもので見ると、日本が、対GDP比でございますが、1.9%に対しまして、アジア圏におきましてはそれよりも大きな数字が見れるかなあということ。消費課税の負担率というものはそれとはまた別の話でございますが、途上国において大きいという、さまざまな角度から法人税の負担というものを見ていくことができるかと思います。
それから35ページでございますが、アジアとの関係ということで、投資関連コストの比較を便宜用意いたしました。投資先の選択という面で、企業はおそらく、法人税率のみならず、ここに掲示されましたようなさまざまなインフラコスト、あるいは労働コストというものを判断して選択していくのかなということでございますが、先ほど申し上げましたように、研究開発減税を機といたしまして、工場のいわば国内回帰が行われるという動きも、こうしたさまざまなものが総合的に判断された結果行われているものかなと思うわけでございます。
いずれにしましても、税率につきましては、先ほど答申に書いてありましたような全体の税負担、財政事情、あるいは税体系のあり方、それから先進国とのバランスということがポイントになってまいりますけれども、先ほどから申し上げておりますような15年度におきます研究開発減税のいわば選択と集中というやり方、政策的方向性をとりましたので、そういったものの有効性の検証も今後必要になってくるのかなと。その中では特に、企業の資金バランスの状況とかいった話も含めて総合的に見ていく必要があるのかなと思う次第でございます。
続きまして36ページ、公益法人関連でございます。ここは公益法人課税というよりも、公益法人制度改革の動きとしてご紹介させていただきます。公益法人制度改革といいますのは行革の一環でもともと出てまいった話でございますが、この制度改革そのものは、上から2つ目でございますが、平成14年3月の閣議決定に基づきまして、公益法人制度そのものの抜本的見直しをしたいということで閣議決定がなされまして、それがスタートラインで、内閣官房のもとで懇談会などを開きまして議論がなされたということでございます。ここは民法34条法人を中心といたします公益法人を広く見直そうという流れであったわけですが、議論がまとまらず、いわば打ちかけというか、頓挫したというのが結末でございました。
当調査会といたしましても、これにあわせまして非営利法人課税ワーキンググループというものを設置いたしまして、並行してご審議をいただいたわけですが、この懇談会の上のほうの議論が頓挫したということもございまして、現在、様子見の状態になっているわけでございます。
そこで、平成15年6月27日と書いてございますが、ここでいわば仕切り直しが行われました。閣議決定がなされたということでございまして、それが38ページ以下の2枚紙でございます。
今の論点は、下の2の「新たな非営利法人」と書いているところですが、一般的な非営利法人制度を創設していくということ、それから(2)と書いておりますが、その非営利法人の中において公益性の高いものをどのように判定していくかという、そういう大きな流れになっておりますが、現在の民法34条法人の制度を見直しのベースとすることといたしまして、そこの組みかえを基本的に行うと。
それから、その公益性の判定をどこがするかということについては、(2)の[1]に「独立した判断主体の在り方」と書いてございますが、これをいわば八条委員会という、審議会のようなものですが、そういう形で設置してはどうかというご議論が行われているわけですが、このあたりが議論のポイントになっているわけでございます。
いずれにいたしましても、一番下にスケジュールと書いてございますが、この閣議決定におきましては、内閣官房において上記の新たな非営利法人制度の検討を進めて、平成16年末までを目途に枠組みを具体化した上で、所管省、総務省なり財務省、あるいは当調査会ということになりますが、税制上の措置に係る専門的検討を進めることとして、平成17年度末までに法制上の措置等を講ずることを目指すと、こういうスケジュールが引かれたわけでございます。ここで、内閣官房におきましては法人制度を、制度そのものを作るというミッション、それを具体化された上で、こちらにおいて税制上の検討を行うというミッションを明確化するという形になって、今、この内閣官房の作業が行われているということでございます。
それが次の40ページでございますが、公益法人制度に関する有識者会議というものが内閣官房に設置されまして、ここで公益法人制度に関する具体的な検討がなされておるということで、メンバーを見ていただきますと、当調査会の委員もメンバーとしてご苦労いただいているということでございます。
この審議は平成15年11月28日からスタートいたしまして、現在、21回行われてございます。これは大体11月の中下旬にレポートが出されるということでございまして、今後は、内閣官房でそのレポートを踏まえまして新法人制度のスキームの骨格を作っていくと聞いております。法案そのものは再来年の通常国会になるだろうという見通しでございます。
当税調といたしましては、一度、先ほど申しました流れが頓挫いたしたこともございますし、新たな閣議決定のスケジュールもございます。改めて検討し直すということになるのかなあと思っております。民間非営利活動の円滑化ということとか、あるいは課税の公平という視点、あるいは民間の活動の実態とかいうものを含めながら、全体としてバランスのとれた議論を今後行っていくということだろうと思いますが、タイムスケジュール的には、今年のご議論というよりも、18年度税制改正のマターになるものだという位置づけでございますので、まずは有識者会議のご議論を見守るというポジションだろうと思っております。
41、42ページはその先方のご議論の参考資料でございますので、割愛いたします。
最後でございますが、46ページ、これはちょっと毛色の違う話でございますが、会社法制の現代化という話でございます。現在、先ほど申しましたような商法の世界におきまして企業再編とか連結に関するさまざまな手当てがなされておりますが、いわばその最後の局面にございまして、このアンダーラインに書いておりますような、そうした改正の集大成として、会社法制上のさまざまな制度のあり方についての体系的、抜本的な見直しを行うという流れがございまして、現在、法制審で審議されているということで、その審議の項目の主なものを2といたしまして項目だけ並べておりますけれども、その中身が今まさに専門家の中で鋭意詰められている状況でございます。
11月中旬ごろまでにいわば現代化要綱ということでまとめられまして、骨格が出、これの関連します改正法案、これは新しい会社法でございますが、それが次期通常国会に提出されていくという流れがございます。
改正の中身、これからコンクリートになってまいりますけれども、内容によりましては法人税制にはね返ってくる部分がございます。内容を見ながら、必要に応じまして当調査会でもご議論いただくことになろうかと思いますが、このテーマにつきましても、今年というよりも、18年度税制改正の中で行っていただくことになるのかなと、そういう見通しになっているということでございます。
以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。
では、地方税関係、都道府県税課長、お願いします。
〇事務局
都道府県税課長でございます。
それでは、お手元の基礎小23-2、「地方税関係資料(地方法人課税関係)」をご覧いただきたいと思います。法人税と重複するものは除きまして、やや基本的な資料も入ってございますけれども、ご説明させていただきたいと思います。
1ページ目でございます。「地方法人課税の概要」とさせていただいておりますが、法人二税という言い方をする場合もございます。地方税で法人課税という場合に、法人住民税と法人事業税、2種類ございます。それぞれ事務所等を有する法人に対しまして、事業税の場合は都道府県が、法人住民税の場合は市町村もあわせまして課税するものです。
2ページに地方税の税収を帯グラフで示させていただいております。地方税合計で、地方法人課税は18.1%。道府県税と書いていますが、真ん中の欄は都の分も入っています。この中では30.3%。市町村税の中では9.6%になっております。特に都道府県の税収の中では、かつては法人関係の税が4割以上を占める状況もございまして、その結果都道府県の税収が非常に変動するという面もあったわけです。
3ページに「地方法人課税の税収の推移」を上げています。平成元年度から3年度がピークです。10兆円を超えていたわけですが、現状では6兆円前後という水準です。地方法人課税につきましても、法人の所得に課税する部分がかなり多いことがございまして、法人税の傾向と似ておるわけですが、税収は低迷しています。
4ページをご覧いただきたいと思います。もちろん、税収変動の理由には、景気なり経済動向の状況もあるわけですが、税率の引下げがなされてきているということも関連します。折れ線の上が地方法人課税を合わせた実効税率の推移です。法人税の税率も影響して、こういう形で推移してきております。法人住民税は法人税額が課税標準ですので、この図の中では省略していますが、法人事業税につきましても、最近は引下げしてきています。
5ページを省略させていただきまして、6ページに「法人住民税の概要」を簡単にまとめてございます。法人住民税につきましては、地域社会の費用について、構成員である法人にも、個人と同様幅広く負担を求めるということで、個人住民税という所得課税同様、法人についても住民税の負担を求めています。
この内訳としましては、均等割と法人税割があります。均等割は、資本等の金額などに応じまして定額の負担を求める、法人税割は法人税額に税率をかけて負担を求めるということになっています。
7ページの税収は省略させていただきます。
8ページの「法人事業税の概要」をご覧いただきたいと思います。この資料ではお示ししてございませんが、税法上は事業税として名称を持っていまして、個人が行います事業についても事業税課税をされております。法人事業税については、法人が行う事業についての部分をいわば分けてご説明しています。
事業そのものに課される税ですが、法人が事業活動を行うに当たりまして、地方団体の行政サービスの提供を受けるということで、いわゆる応益原則に基づいての課税です。そして、事業所等が所在します都道府県が課税することになっています。
図の下には、法人の類型に応じた課税標準を掲げておりますが、資本金1億円を超える普通法人につきまして、外形標準課税が導入されました。そのほかは、所得、あるいは収入金額で課税しているという類型でございます。
9ページの税収は省略させていただきまして、10ページ以降に、今申し上げました法人事業税への外形標準課税の導入についての資料を出させていただいています。ご案内のとおりですが、法人事業税を応益原則という性格に従った課税標準に変えていくという考え方で、その背景には、税収の安定化を図りたい、あるいは赤字法人であっても行政サービスに応じてご負担をいただくのが本来であるという考え方がございます。
この枠、改正前、改正後と書いていますが、そこにありますように、平成16年4月1日に開始いたします事業年度から外形標準課税の導入が始まっております。一番早いところで、外資系で3カ月の事業年度という法人もございますので、一部、外形標準課税での課税も始まっておりますが、ほとんどの場合は事業年度は1年間ですから、確定申告につきましては来年の5月以降、順次納税されていくということになります。
現状では、課税します都道府県側の準備等も含めまして、特段大きな問題はなく粛々と進んでいると考えておりますが、いずれにしても新しい課税の仕組みですので、ぜひともこれを順調に定着させていきたいと思っています。
11ページ、12ページは外形の課税標準の仕組みです。省略させていただければと思います。
13ページです。これは法人に限った資料ではございませんで、地方税全体で特別措置による減収額の主な内訳を出させていただいております。この中で、真ん中の事業税に社会保険診療報酬の所得計算の特例、1,110億円が入っています。
14ページに説明を入れています。1ですが、社会保険診療報酬に関しましては、収入の面でも算入しない、経費の面でも算入しないということにしております。現在、事業税では実質的に非課税という扱いになっておるわけです。個人の場合も、法人の場合も同じように実質的な非課税措置になっております。
なお、そのほかに自由診療報酬がありますから、当然、自由診療報酬には課税されるわけですが、法人関係では、医療法人につきまして税率も特例的に軽減されています。
15ページに、(参考)としまして経緯を書かせていただいております。昭和27年の段階ですが、議員提案で税法が改正され、その際に、医療法人を特別法人に加えて税率を軽減する。それから医業、歯科医業は保険医としての保険収入を課税標準から除外するという形になっておるわけです。減収額は個人、法人とも500億円以上ということになっています。
こういう内容ですので、これまでも当調査会でたびたび、改善を図るべくご指摘いただいておるわけです。また地方団体からも強く是正を求められてきておりますが、残念ながら、宿題についてきちっとした回答ができない状態ということです。
16ページ、17ページに最近の調査会のご指摘を挙げています。
18ページ以降、新たなご説明をさせていただきたいと思います。法人事業税につきまして、先ほどご覧いただきましたように、事業所が所在する都道府県が課税権を持っています。しかし、法人の活動が特定の都道府県の中で完結するということばかりではございませんので、複数の都道府県に事務所等があって、法人の活動がそれらにまたがるというケースが当然あるわけです。
法人に、それぞれの県ごとに、例えば県ごとの所得等課税標準を分けるために経理も分けてしてくださいとお願いするというふうにはまいりませんので、現状では、一定の基準に従って、事務所等の所在する都道府県ごとの課税標準を分けるということになっています。
その際の基準を分割基準といいます。これまで、この分割基準をどのように決定していくかということにつきましては、事業税は応益課税ですので、[1]にございますけれども、各都道府県内の事業の規模なり活動なりを的確にあらわすものを使うという考え方が1つです。もう一点は、納税者の側に申告していただくということですから、課税庁側の実務も含めてですが、できるだけ単純明快な基準にするというものです。こういう2点で整理してきています。
19ページに現状の分割基準を掲げています。事業により分割基準は必ずしも同じというわけではございません。多くの事業におきましては、19ページの表の一番上ですが、各県ごとの従業者数というものを基本としています。
ただ、単純な従業者数ではなくて、本社管理部門の従業者は半分にいわば割り落としをするような調整をする。製造業の場合は、工場の従業者につきましては1.5倍に換算する、こういうルールを入れています。
そのほか金融関係ですと、半分は従業者数で、半分は事務所数を用いる。さらに、固定資産といいましょうか、資本投下が非常に大きな業種については、主としてそういうものの側面に着目した形で基準を設けてきています。
20ページに、これまでの主な改正経緯を出してございます。基本的には社会経済の情勢変化を踏まえまして、先ほど申し上げましたような応益原則に基づく税の性格にふさわしい基準にするために改正してきているわけです。
主なものだけ触れさせていただきますと、26年度に最初に法律で規定がなされた、多くの業種について従業者数を基準にしました。その後29年度に、金融関係についての原則が新たに入ってきています。また、資産の大きな事業については資産だけで分割基準を見ていく。37年度に、製造業に限ってですが、本社管理部門の従業者数については割り落としするというのが入りました。45年度には、本社管理部門の改正の範囲を広げる。最近では、平成元年度ですが、工場の従業者についての1.5倍とする改正等が行われました。その後十数年たっていますが、現在まで改正されてきておらないということです。
21ページに直近の都道府県の税収のシェアを上に掲げてございます。分割基準の結果としまして、都道府県別の法人事業税のシェアが決まってくるわけですが、大都市部の都道府県にシェアが大きくて、特に一極集中に見えるのではないかと思っています。
下のほうに、あくまで参考ですが、各県が算定しております各県の県内総生産の直近のシェアも出しています。県内総生産の範囲というのは、加算型の付加価値と必ずしも一致しているわけではありません。しかし、付加価値の創出規模の参考になろうかという趣旨です。上下を比較いたしましても、やや税収面では集中しすぎているのではないかと思います。
それから最近の税収の傾向といたしまして、数年前と比べましても、一極集中の度合いが高まってきている状況ではないかということがあります。こういうことも踏まえまして、今後の課題として、法人事業税の分割基準について、直近の状況なども考えながら、よりあるべきといいましょうか、実態に近づけるようなことを考えていかなければいけないのではないかということでございます。
22ページは先ほどの国税の資料に対応したもので、省略させていただきたいと思います。
以上です。
〇委員
ありがとうございました。
法人税関係、国・地方合わせてご説明いただきました。来年度税制改正に盛り込むといった大きなイシューはないようにも見受けますが、ただ、今後、この企業課税を中心にいろいろな議論を進めなければいけませんので、おさらいということも踏まえていろいろご意見を賜ればと思いますが、しばらく時間をとりましょう。どうぞ、今後どういう形で、法人税、改革を進めていったらいいか、国・地方合わせてご検討いただきたいと思います。
〇委員
法人税、大企業では2分の1が支払ってない、中小企業は3分の2が支払ってないと。これを我々、当たり前過ぎるようにだれてきてしまっているのですね。とんでもない話だとは思うのですが、だから、最近のトピックスでちょっと申し上げれば、西武鉄道の問題がありました。西武鉄道というのは、要するにコクドという会社がほとんど株を握っている。コクドという会社の株を堤義明氏がほとんど握っていると。こういう構造で、創業者が皇族からいろいろ安く買い取った土地が簿価としてものすごく低い形で載っているわけですが、そこで含み益が膨大にあるから、銀行から借金をして、その借金の金利で利益が出ないような構造になっているということで、僕は20年前に堤義明氏に会ったことがあるのだけれども、未亡人のアパート経営だと言っていたのですが、つまり、創業者のものをずうっと大事に失われないようにしながら、それで家賃収入をもらっているという言い方ですが、未亡人のアパート経営という言い方をしていたのです。要するに、相続の問題も、ものすごく簿価が低いのでうまくクリアしただろうし、僕は20年前に会っていますけれども、30年、40年、おそらく法人税をほとんど払ってこなかったにもかかわらず大企業であるという現実がずうっと、今回これはちょっと事件になりましたから全部見直されるかもしれませんが、これはたまたま西武の例ですけれども、こういう会社、いっぱいあるのではないかと思うのですね。こういう会社がいっぱいありながら、まじめに働いた小さな会社が一生懸命納税しているということがあるわけで、これは非常に不公平であるということになると思います。
こういうことをずうっと放置してきたのではないかなあということがあるのですが、もちろん、先ほどの、これは法人税を払わなければ住民税も払わないのですけれども、法人事業税というのは外形標準である程度、不十分でありながらできたわけだから、そういう外形標準の部分で多少西武からお金をとれるだろうと思いますし、あるいは固定資産税はとれることはとれるだろうけれども、それにしても、にもかかわらず、大企業の2分の1が払ってない、中小企業の3分の2が法人税払ってなくて、基幹税と言えるかどうかと、そういう問題がまだ依然として釈然としない形で残っているのですね。
〇委員
ありがとうございました。西武って一体どういうカラクリをしたか、一回事務局はちゃんと押さえてあるの? 我々個人的に関心があるので、もし調べがついていればちょっと教えてもらいたいのだけれども。つまり、イリーガルではないのでしょう。合法的なのでしょう、多分あれは。
〇事務局
個別事案でございますのでちょっと即答しかねますが。どういう形になるか、今はちょっと、申しわけありませんが。
〇委員
ここで議論するような種が、今、委員がお話しになったように、ほかの、7割ぐらい払ってないやつにも何かあるのではないかという疑いを持っている人が多いから、なければないで結構ですけれども、皆さん関心があるので、私が代表してちょっと質問したという感じです。
どうぞ、ほかに。
〇委員
法人税の資料の13ページですけれども、これはおなじみの、我々も何回も見てきた表ですが、日本の場合、地方税である法人住民税や事業税が各地方団体で一律の税率で一律に課税されているということから、国の法人税の上にその分を乗っけるということにはあまり違和感がないのですけれども、そういう地方税がない国もあるような状況ですから、ちょっと妙な感じがするのですね。
それで、特にこれから例の地方分権で、地方の自主自立、自己責任ということが尊重されてきますと、法人事業税や法人住民税について、地方団体によっては、自分のところは優遇しますと、安くしますから、企業に来てくださいというところもあっていいし、自分のところはあまり事業が集まってきても困るので、高めにしてブロックするというところもあっていいはずなのですね。
そういうふうに考えてみますと、法人事業税、法人住民税のこの上乗せしている地方の分は実はグローバルではないのですね。日本国内で動き得る変化がある、それから事業税の部分を見ながら日本国内で立地をいろいろ変える、そういう要素があるわけですから、法人税率はグローバルな見地から考えていかなくてはいけないということは私はそのとおりだと思いますけれども、地方税を乗っけて考えるというのは今度の地方分権以前の話であって、今後本当に地方分権を進めていくのであればちょっと考え直してみたほうがいいような気がいたしますが、いかがでしょうか。
〇委員
何か具体的にご提案ありますか。どう考え直したらいいか、どういう指標を作ったらいいか。
〇事務局
ここの図の11.56%とありますのは標準税率で機械的に乗せているわけでして、法人関係、いろいろご意見はありますけれども、実際には、法人住民税で46都道府県が、法人事業税でも、7都府県が超過課税してますので、その税率が県によっては違う、また市町村も超過課税をしており、税率が違いますので、これは最低ここでそろっているのですが、実際は、日本の場合でも団体別に違うというのが実態です。それをこういう表にどうあらわすかというのはまたちょっと別の問題だろうと思いますけれども。
〇委員
難しいですね。外国はまた、アメリカ、カリフォルニアはとっているとか、州によって大分違うでしょうからね。ちょっと何か工夫があってしかるべき。
〇委員
今会長のお話に出たように、アメリカなんかは各州が日本に来て、我が州に投資してくれというのは言ってますよね。本当に地方分権ということを考えるのであればそのようなことが起きなくてはいけないと思うのですね。そうすると、法人税率をグローバルに考えるという考え方をとるのであれば、地方の部分を入れて考えるのはおかしいので、むしろ地方の部分は国内でどこに立地するかという話ではないかと思うわけですね。
今のお話にありましたように、若干すでに高くしたり低くしたりしているところがあるのかもしれませんけれども、本当に地方の自主自立、自己責任ということを考えるのであれば、各地域によっては、自分たちは少し住民税を高く負担してもいいから企業を誘致して失業者を少なくしたいというようなところが出るかもしれませんね。そういうのにできるだけ干渉しないということが地方分権の意味であるとすれば、何となくみんな一律なのだということを前提にしているようなこういう表は今後は使わないほうがいいのではないかと思うわけです。
〇委員
作ると、かえってミスリードになるというわけですな。そういうご意見ですね。
どうぞ、ほかに。
〇委員
税率の話もまた議論というか、あるでしょうけれども、その前に、議題として、租税特別措置による減収額というか、イシューとしては税率の話、それから租税特別措置による減収額、それから地方法人課税、その3つぐらいだと思うのですけれども、まず17ページに、非常に参考になるというか、減収額が載っていて、15年の改革で、私もいろいろこのプロセスを聞いていましたけれども、非常に大きな改革をした。具体的には研究開発減税、それからあのとき、IT投資促進減税、それをやったわけです。それで、今我々がやらなければならない一つの仕事は、個人所得税で定率減税を今どうするかという見直しと同時に、法人税ではこの種の、大分整理をしてきた。しかし、どれが意味ある特別措置なのだろうか。個人所得税における定率減税に対応するような議論を法人税でもするべきだと。
それで、個人的な意見を言わせていただくと、さっき、税制第二課長から説明があったように、ある意味で研究開発減税は根っこから、研究開発費の増額でなくて、根っこの部分から投資減税してあげたと。そしてそれが非常にうまいぐあいに追い風に乗って、15年、16年ぐらいの景気がよくなったところで活用されてきた。まさに効いたというか、政策の意図は非常に効いたわけで、幾つかサンプル企業とかを通じてどのぐらいの効果があったのかというのをぜひ検証すべきだと。
そして第2は、ある意味で、ここでも非常に集中した議論があって、試験研究税制に関しては好意的な議論が多かった。私もそういう議論をしたのですけれども、IT投資減税というのはどれだけ意味があったのか。あのとき、景気が悪い中で、とりあえず、言葉は悪いですけれども、何らか理由つけて減税するものとして出てきたものの一つなのかなあとあのときも思っていたのですけれども、つまりどういうことかというと、なぜIT絡みの投資に関してはそれを控除というか、投資減税するのかと。ほかの投資ではどうしていけないのかという議論もあるし、したがって、IT投資減税というのはこれから絞っていってもいい。だけど、試験研究税制に関しては、その効果を見極めて、さらに直すべきものがあれば直していくというような前向きなというか、あるいはきちんと刈り込むのは刈り込んで見直していくべきだと思います。
あと税率等についてはまた別のところで。
〇委員
まとめておくと、試験研究のほうは精査して残すものは残すけれども、ITのほうは要らないのではないか、つまり、定率減税と同じ発想ではないかということですか。
〇委員
はい。
〇委員
というのは、十分効果がもう出尽くしたではないかと、こういう意味ですか。
〇委員
出尽くすというか、最初から、効果というよりも、これはいろいろあのときからもう、あのとき景気悪くて、試験研究費以外に僕はつけてしまった制度なのかなあと思ってますけれども。
〇委員
わかりました。――どうぞ。
〇委員
今の研究開発投資ですけれども、税金として1兆2,000億円減ったということになっている。そのわりには、研究開発投資、その半分としても、増えた分が大したことないわけですよね。15年で1,000億円で、16年で3,000億円ですから、減った税金というか、優遇した税金のほうが4倍も多いというのは、あるいは2倍でもいいですが、もうちょっと、この3倍ぐらい研究開発投資が増えるということを見込んでやったつもりのような気はしているので、だれがどういうふうに言えばいいのか知りませんけれども、企業はもっと頑張ってもらわなければ制度の効果が小さいというふうに1つ思います。
あとは、24ページの部門別資金過不足、これを見ていてずうっとこのごろ思っていたのですが、普通は企業は下のほうにいて、家計が上のほうにいるというのが正常な姿ですが、これが減税してからずうっと企業が上のほうにいってしまった。で、家計は間もなく、ひょっとしたらマイナスになる。これは相当異常な状態だと思いますが、しばらくはそれが続いても、また長期的には戻るのかなとは思いますけれども、ということは、これはダイレクトになかなか結びつきませんけれども、企業は減税を享受して、世の中のシステムが、銀行が悪いのですが、将来に対して安心感がないというか安定的でないというので、資金いっぱい持ったままになっているという状況だと思います。
ここのところだけ見ると、法人税を上げなければならないなと。それで家計に金戻さなければならないなという表だとは思うのですが、だからそうしろという話ではなくて。基本的にはだから、月給払わなくなったということと、設備投資がちょっと、思ったより実は少な過ぎるということを物語っているのではないかなと思います。
ではどうすればいいかというのはなかなか難しいですが、にもかかわらず定率減税はやめればいいとは思うのですが、昨日、国会眺めていたら、志位さん、なかなかいいことを言ってまして、マクロ的にはあれでいいのですけれども、我々庶民ってだれが庶民だかいつもわからないところがあって、我々庶民がそれほど税金払っているのかというところもちょっと知りたいので、定率減税やめると、どこのところの層の人がどのぐらい負担になるかという、ちょっと所得税のほうの話ですが……
〇委員
もう出てますよ、その資料は。
〇委員
いや、減った分ですよ。
〇委員
だから、今どれだけ恩恵をこうむっているか、したがって、はげ落としたらどれだけ増税になるかというのは階層別に出てますよ。あなたなんて一番得しているところですよ(笑)。
〇委員
この前出てましたっけ?
〇委員
出てる出てる。
〇委員
そうでないのではなかったかなあ。はげ分が出てないような気がした。
〇委員
じゃもう一回見てください。なかったらまた請求しましょう。
〇事務局
先ほど委員から、21ページのことかと思いますが、研究開発投資の増加額の話がございましたが、これはさしあたり取り急ぎやったサンプルでございまして、どの程度本当に増えるかというのは改めて計算したいと思っておりますので、ここで差し引きしますと、1,000とか、小さいなというお話がございましたけれども、そのあたりはもう少し調べてみたいと思います。
〇委員
とりあえず、この前のアンケート結果等々によるとかなり効果があるよという話で聞いてきたのですよ。したがって、それを数字に落としたとき、本当にどれだけ増えているか、ちょっとこれからまた精査してください。
〇事務局
はい。傾向だけを見ていただくというのが今日のです。
〇委員
お願いします。
〇委員
13年度ぐらいから、いわゆる法人税率の基本税率の引下げというのをやめたというか、もう大体国際水準まで来たなということで、それで、先ほども出ましたけれども、資金過不足状況なんかを見ても、結局、法人税を下げても、借金を返すとか、そういうほうへ使われていて、国民経済的にプラスになっているのかどうかわからないということなので、税率の引下げというのはもうこの辺で打ちどめにしてという判断はよかったのではないかと。そのかわりいわゆる政策減税のほうに切りかえたわけですね。
これは国家戦略というか、そんなものがあるかどうか、またなければいけないのですけれども、そういう意味でいくと、やはりIT絡みであるとか、研究開発とかそういうものを、例えば中国が出てきてもこの日本が国内で研究開発して、新しい基礎になるもの、基礎的になるものを生んでいくということが非常に大事なのでね。そういう意味で、先ほどから出ているお話はちょっとまだ気が早過ぎる。
この表を見ても、10%とか6%というぐらいの、これ本当かどうか知りませんが、増えていますよね。研究開発、税制が変わったからじゃ明日からやろうかというものでなくて、相当の懐妊期間があった上でやるわけですね。それでどっちが効果的かということをやるわけですから、まだしばらくは、この路線は決して間違っていないと思うので、こういう政策減税を続けていくべきだろうと思います。
〇委員
いつかははげ落ちてくるのですよね。これは時限ですからね。そのときもう一回考えようということですね。
〇委員
また3%の見直しのときが来ますから、そのとき議論になると思いますけれども、今はまだ少し成り行きを見るべきではないかと。
ちょっともう一ついいですか。
〇委員
どうぞ。
〇委員
説明があったのですけれども、公益法人に絡む課税の問題とか、それから、いわゆる公の公共に対して民の公共という説明がありましたけれども、民の公共というのを追求していくのであれば、やはり行き着くところは1つは寄附金課税の問題だと思うので、これはなかなか議論が多いと思いますが、寄附金課税についてはいわゆる公益法人の活動とかボランティア活動ですよね。そういうものを、よく実態を見た上でないといけませんけれども、寄附金がもっと有効に働くように税の面でも考える必要があるのではないかと思います。
〇委員
地方税でもいいですか。
〇委員
どうぞ。
〇委員
1つは質問ですが、法人事業税の超過課税の話がさっき出てましたけれども、今、超過課税分が幾らになっているのかというのをちょっと教えていただきたいのが1つと、それからそれに関連して、私の理解では、法人事業税というのは法人にとって経費になるだろうと思うのです。それで、法人事業税の超過課税をしているところ、都県を見ると、ほとんど財政力の豊かなところが数県やっていたのではないかと、私、現役のときもそういう認識でいたわけですけれども、ということは、法人住民税の上前を財政力の豊かなところがはねているということになるわけです。
法人住民税であれば、もう所得が決まってますから、それを分割基準によって分割するということであれですけれども、その法人住民税の分割する前に、経費性のある事業税を超過課税してやると。しかも、財政力の豊かな県がそれをやるというのは、これから分権の時代になって、各地方団体が税収入というものを確保したいときに、できるところがそれを先にやってしまうと、大きなところが先に法人税の超過課税をやるというのは、私はちょっと問題ではないかなと思うのです。
したがって、これは地方の課税自主権の話から言って、超過課税をしてはいけないということを制度的に作れるかどうかというのは非常に疑問だと思いますけれども、それはやはり考える必要があるのではないかなと思います。
それからもう一つは、経費の面から言うと、法人は固定資産税を払っているわけですから、固定資産税も経費になっているわけです。しかも財政力のある大きな県の固定資産税というのは地価が高いわけですから、当然、本社、その他の部分は相当な固定資産税を払っているわけで、固定資産税と法人事業税の超過分ですね。要するに所得を小さくして、それを法人住民税で案分というか、分割基準に基づいて分割すると、弱小の地方団体というのは、その分、税収入が少なくなってしまうと。もしそれが間違いだったら間違いと言っていただきたいのですけれども、そういうのは、分割という制度がある場合にあまり公平ではないのではないかと思います。もしお答えがあればお答えいただきたいし、意見として承っておくというのなら、それはそれで結構です。
〇委員
超過税率の実態というご質問が出ましたし、今のご意見について何か反応があれば。
〇委員
それで、結論を忘れてましたが、したがって結論は、分割基準をもっとやはり見直して、要するに弱小団体にもいくような分割基準というのを作ったらいいのではないかなと。
〇委員
難しいのではないですか、それは。
〇委員
だから意見です。
〇事務局
ちょっと数字だけ申し上げますと、まず、都道府県のほうでの法人関係の超過ですけれども、法人住民税につきまして、特に法人税割はほとんどの団体がやっておりまして、合わせて830億円程度です。それから法人事業税、これはご指摘のように、東京都など、どちらかというと大都市部のところが多いのですが、これは14年度の決算額ですが、7団体で775億円です。市町村のほうでも、法人住民税、これは法人住民税しかございませんけれども、均等割と合わせまして2,000億円程度の超過課税が行われています。ちょっと数字だけですが。
〇委員
数字だけ以上に課税自主権云々の話もありましたが、そのうちまた反応してください。
〇委員
税率のことを少し意見を述べさせてもらいたいのですけれども、税率のところと、今、地方法人税というのが密接不可分というか、同時の問題だと思います。それで、今の委員の議論と逆のようなことをこれから言いたいと思っているのですけれども、33ページ、結局、「法人所得課税の実効税率の国際比較」というところを見ると、黒が国税で、白が結果的な地方ですけれども、アメリカの場合というのは、先ほどあったように、まさにたまたまカリフォルニアを持ってきて、一番高いところ、しかも法定税率でやられていると。ドイツの場合、法人というのは非常に少ないわけで、どうするかというのはこれからの問題でしょうけれども、だから事実として日本の法人所得税というのは高い。ましてや、次のページの各国、アジアの国と比べれば高い。
それは事実で、そして日本の法人所得税が高いという事実はどうしてかといえば、それは地方分が高い。どうして地方分が高いかといえば、それは法人二税があるわけですけれども、今言ったのと逆で、やはり標準税率があって、どの地方もその税まではかけるというのがあるわけで、アメリカは連邦ですけれども、地方が本来競争し合えばこの税は低くなるはずだ。申し上げたいのは、だから事実として、日本の法人所得税をもし直していくとすれば、手をつけるとすれば地方のところをやらざるを得ない。
それから僕のほうからの質問ですけれども、今、事業税、超過課税しているところはどこかというのがあったのですけれども、同時に、前から気になっているのですが、不均一課税しているところはどこなのかと。つまり、逆に法人事業税をまけているところもあるわけですよね。いろんな意味で。それは一般会計からやっているところもあれば交付税の補てんされた形でまけているところもあるので、ぜひ事業税の超過課税しているところと同時に、不均一課税して、どのぐらい税収ロスが起きているのかというのも見せていただきたい。
〇委員
不均一課税、わかります?
〇事務局
すみません。ちょっと直ちには。
〇委員
わかりました。じゃまた調べて。
〇委員
2つあって、1つは法人税で、今ここでは、それからまたほかの産業界でも、あるいは学界でも、政治家の世界でも、来年度、法人税の基本税率下げろという議論は、こそこそはあるかもしれないけれども、堂々とは出てこない。まじめに来年できるとだれも思ってない。そこまではいいのですね。当たり前のことだから。
それを、この15年度の税制改正について、途上国の水準を並べることによって、もっと下げろと、でなければ海外へ出ていくぞという、半分脅しで、半分真っ当な話、海外投資やるにはほかにもたくさん要素があるからね、はそろそろやめにしてもらいたいと。それで15年度のこの答申の、途上国との比較において、先進国は別ですよ、議論するのは当分の間適切でないと言ったのは、今でも有効だと思っているのですね。
さっきの委員がおっしゃったけれども、一般的に税率をベタで下げて、膨大な財源をそこに投入するなんてあほらしい話でね。だから我々は、試験研究費で熱心なトップ企業がしっかり金使って研究やって、それで企業が伸びていけば一番いいわけで、それがリードするわけですから。それに相当集中的に、1兆円を超すような減税を今実行中であると。これは極めて有効に効いていると思うのです。総理が言うだけでなくてね。経産省や民間の企業、みんなわかっているわけだ、こんな話は。どれだけ効いているかということは。ありがたい話なのですよ。
しかし、これはそういう優良企業にとっては法人税負担を相当実質的に下げるという効果を持っているわけだ。そうでないところにはあまり影響が及ばないですね。これはしかし、しようがない、こんなことは。一生懸命勉強する人間に多少のメリットがあるのは当たり前なのですね。それが日本経済を引っ張っているのだから。ベタで何かやるという議論は、来年度の問題として出てくるはずもないし、出てきても話にならないし、しかし、この試験研究の税制は時限立法で、ちょっと今上積みされているのですね。基本的なあれを。これがなくなる時期が来るから、それに関連してまた議論を蒸し返されるということはあるかもしれない。しかし、それはそのとき議論やればいいと思う。
2番目は公益法人の話。これは言いたいこと山ほどあるのだけれども、一般的に見て、閣議決定でこういう新しい制度を作ってくださいね、しかし、その制度について税制上どういう措置をとるかということは税調でやりなさいと、こう2つ書いてある。現実に有識者会議に参加してみて思うのは、とにかく我々は立派なことをやるわけだから、公益法人というのは公と私の真ん中の分野でね、だから税法上まけるのは当たり前と。そんなことは。我々の答申には「適切な課税」と書いてある。適正なんてだめだ。冗談じゃない。全く、特別優遇措置をとるの当たり前ということが1つ終始一貫言われているのですよ。それを答申に書きませんよ、我々は。だって閣議決定はそのことを決めるのが税調と書いてあるわけだから。議論あっても書くわけないのだけどね。
ただ、これに関連して、NPO、これはまた別建てあるわけだ。存在が。ここの関連の税制を勉強している人は何人もいる。税理士から学者から何からね。これはしきりと今球投げているわけ。ここのところについて税法上優遇措置をしっかりやらなければ大問題だと言っているわけですよ。それは半分誤解、半分原則論。
僕は現実的に、11月下旬にレポートをここへ持ってくるけれども、そのときのアプローチの仕方が一番重要だと思っているのは、神学論争みたいに、立派なことやるのだから税金全部まけろというのからスタートするか、しかし、それは原則、法人税はこうですよというこれからスタートするかといったら、いつまでたってもこうなのですよ。原則論だから、神学論争だから。こんなことやったって全く生産的でないのだ。僕の意見ではね。
できれば、もう原則課税だとかなんとかいう言葉、お互いにちょっと棚に上げておいてもらって、現実にこういう有効な仕事をやるのですけれども何ですかという個別のアイテムについて議論やるのなら、これは幾らでも議論できますよ。妥協もできる。原則課税、非課税かなんていう議論を始めてしまったら、全くつまらない非生産的な議論だと思いますけどね。いずれ税調で、来年のいつごろやるか知りませんけれども、やることになると思いますから、そのときはそういうふうにアプローチしたほうがいいと思います。
〇委員
ありがとうございました。それでよろしいですか。
それでは、国際租税課長、お待たせしました。国際課税のほうに移りましょう。ご説明ください。
〇事務局
国際租税課長でございます。
お手元の資料の基礎小23-3に基づいてご説明させていただきたいと思います。国際課税の関係も、まずは今年の6月の「実像」に立ち返って、どういうことをご指摘いただいているかということから始めたいと思います。
資料の1ページ目から「実像」の抜粋を掲げてございますけれども、その2ページ目をご覧いただきますと、内外直接投資の増大等を指摘された上で、2ページ目の3行目でございますけれども、「わが国は、モノ・資本・ノウハウなど多面的に国際的な相互依存関係を深化・拡大させつつある。とりわけ、アジア地域との間でその傾向が著しい」とした上で、「税制などの制度設計に当たっての視点」というところで、グローバル化を生かすべきということで、「グローバル化の動きをどのように生かすかが重要な鍵となる。その際、特にアジアとの相互依存関係を踏まえ、海外の人材や資本の活用などを含む戦略的な対応が不可欠となろう」というふうにご指摘いただいてます。こういったことを念頭に、今後の国際課税のあり方というものは考えていかなければならないかと思っております。
それから実際にグローバル化というものが数字でどのようにあらわれているかというのを2つほどご紹介したいと思います。1つ目は3ページでございますけれども、「わが国の経常収支の推移」でございます。ご案内のように、わが国の経常収支は、諸外国から批判をいただいたように、過去20年来ずっと大幅な黒字でございますけれども、その内訳を見てみますと、大分変化が出てきてございます。
すなわち、かつては貿易・サービス収支が黒字の大半を占めておったわけですけれども、それがだんだん投資収益を反映するところの所得収支の黒字も増えてまいりまして、今では、貿易・サービス収支の黒字と所得収支の黒字がほぼ8.3兆円、8.4兆円で並ぶぐらいになってございます。そういう意味でも、投資をどう生かしていくかということが一つのキーポイントになろうかと思います。
投資に関連しましては、4ページ目、5ページ目で、わが国から外への投資、外からわが国への投資というものも資料では掲げてございますけれども、特に5ページ目をご覧いただきますと、今や日本への対内直接投資も着実に積み上がってきているということもご覧いただけようかと思います。
それからもう一つ、わが国の最近のグローバル化の中で新しい点と申しますと、特許等の使用料の対外的受け払いの推移というものがございます。これは6ページに資料を掲げておりますが、支払いが白棒、受け取りが黒棒でございます。特許等の使用料、ノウハウでございましたので、従来ずうっと日本が支払う額が日本が受け取る額よりも多かったわけでございますけれども、2003年に初めて黒字になってございます。1,492億円でございますけれども、黒字ということで、初めて日本は知的財産の純輸出国になれたという意味では一つの記念すべき節目の年だったのかなあと思っております。
それでは、そのようなグローバル化の中で国際課税はどう考えていくのかというのを2つに分けてご説明させていただきたいと思います。1つは、租税条約の関係、租税条約ネットワークをどう拡充していくのか。それから後半では、国内法の国際課税の現代化ということで、そちらの観点からの説明をさせていただきたいと思います。
まず租税条約ネットワークの拡充でございますけれども、8ページをご覧いただけたらと思います。キーワードの「グローバル化の進行」ということで、1つには、わが国の課題として、グローバル化の動きを生かした経済社会の活性化というものがあろうかと思います。これに見合う形で租税条約の見直しを進めますと、国際的な投資促進の交流ということが行われると思います。これは、少子高齢化に伴い貯蓄率が低下する傾向にある中で対内投資を促進することに役立ちましょうし、また、成長力のあるアジアなどに対する投資などを促進することも可能となろうかと思います。
あわせて、グローバル化が進む中で、わが国の課税権の確保、あるいは国際的な二重課税、あるいは二重非課税、エアポケットの排除をどうしたらいいのかということも国際租税の中では大事でございますので、租税条約の見直しの中で租税回避行為の防止に努めてまいりたいと思います。
そういったことを踏まえますと、わが国の租税条約をどのように見直していくかでございますけれども、まず現状のネットワークは10ページに掲げてございます。現在、日本は45の租税条約を結んでございます。適用される国の数は55カ国でございまして、条約数と国の数が一致しませんのは、旧ソ連邦と結んだ条約が、ソ連のいろいろな国が独立した際にそのまま継続して適用されている国があるからでございます。
そもそも租税条約というのは、投資の促進、課税権の配分、先ほど申し上げました二重課税、二重非課税の排除、さらには情報交換だとか執行協調だとか相互協議だとかを通じた国際協力、そういったもののお膳立てをするための枠組みでございますけれども、これだけある条約の数の中から、今後どういった国を先に優先順位をつけて租税条約を見直していくのか、あるいは、まだ条約を結んでない国のうちのどのような国と条約を結んでいくのかということを考えるに当たっての切り口というものを幾つか整理させていただいております。
それが12ページに掲げているものでございますけれども、「租税条約の見直しにあたり考慮すべき事項」、相手国の選択基準でございます。この項目に従いまして、以下、順次簡単に説明させていただきたいと思います。
まず最初の、「わが国との間の投資交流の深度」でございますけれども、13ページをご覧いただけたらと思います。国・地域別対外直接投資額でございまして、日本が過去においてたくさん投資している国のトップ20を挙げてございますけれども、これをご覧いただきますと、アメリカだ、イギリスだ、オランダといった国が並んでおりますし、アジアの国々も幾つか散見されます。こういった国々相手の租税条約というものを常に見直しておくということは、そういう意味では過去の投資に対する影響も大きくなろうかと思いますので、有益かと思います。それが1つ目の切り口でございます。
2つ目の切り口でございますけれども、14ページをご覧いただきたいと思います。租税条約の一つの大きな役割に、いわゆる投資所得、配当、利子、使用料について、それぞれ源泉地国で何%の源泉徴収税率をかけるのかという限度税率を定めてございます。先般のこの税調の場でもご報告させていただきましたけれども、日本はこの間の日米租税条約の改定に際しまして、思い切ってこの限度税率を下げることを条約締結方針とさせていただきました。
一番上に掲げてございますけれども、配当は、親子会社間では免税ないし5%、一般で10%、利子につきましても、金融機関が受け取る利子については免税としようではないかと、使用料についても免税とするということを決めておりますので、こういったものを、その下に掲げてありますようなイギリス、カナダ、オランダ、イタリア、ドイツ、フランスといった先進国との間でもどれだけ合意できるかというのが今後の課題かと思っております。
それから15ページでございますけれども、ではアジアの国々との間ではどうかということでございます。日本といたしましては、もちろん、アメリカと同様に、この際ですから、限度税率をできるだけ低くした内容で結んでいきたいと思っているわけでございますけれども、ご案内のように、まだまだアジアの国々との間では、アジアの国々のほうが日本に比べて限度税率を下げると歳入減につながるものが多うございますものですから、比較的限度税率が高いまま残っている租税条約が多々ございます。限度税率が例えば20%を超えているような国々との間では、できるだけ早期に限度税率を引き下げる方向で働きかける必要があろうかと思っております。これが切り口の2つ目でございます。
それから3つ目の切り口でございますけれども、特に資料は添付してございませんが、日本が結ぶ租税条約のほかに、相手国が結んでいるほかの国々との租税条約というものも見てみる必要があろうかと思います。相手国が例えばある国とより低い限度税率で租税条約を結んでいた場合には、日本企業は、そのある国で活動するに際して、その第三国に比べてより不利な条件で競争を強いられることになりますので、日本企業が海外で活動しやすいようにするためにも、現地の日本企業の競争条件という観点から、相手国がほかの国とより低い限度税率で租税条約を結んでいるような場合には、積極的に働きかけを行っていく必要があろうかと考えております。
それから16ページでございますけれども、みなし外国税額控除制度というものがございます。後ほどまた出てまいりますけれども、わが国には、二重課税を排除するために外国税額控除制度というものがございます。16ページの一番左の欄でご覧いただきたいのでございますけれども、例えば日本の企業がA国で100の所得を得ていて、日本国内で60、合計、全世界で160、所得を得ていたと考えます。法人税の基本税率が30%でございますので、A国も30%とした場合に、この企業というのはA国で100の30%の30、税金を払っているわけでございますし、日本でも、100+60、全世界所得160の30%の48、税金をお納めいただくことになってございます。しかし、日本で48をそのままお納めいただきますと、A国でも30払っておりますので、30+48の合計78も税金をお納めいただくことになりますし、A国で稼いでいる所得に対して二重課税が発生することになります。
そのために、外国税額控除制度で、日本でお納めいただく48から、外国ですでにお納めいただいている30については引くということで、この外国税額控除制度を使った結果、A国では30、日本では18納付していただいて、合計48ということで調整しているわけでございます。
開発途上国の中には、投資を奨励するために特別措置により免税しているところがございます。これが真ん中の2.「A国で特別措置により免税」でございますけれども、例えばA国は、所得100あったのに対して、本来30課税すべきところを、ぜひ来てくださいということで免税していたとします。それをそのまま日本に当てはめてしまいますと、160掛ける30%の48を、A国で幾らも納めていらっしゃらないのだからお納めくださいということで丸々お納めいただくことになりますので、結局のところ、1.の場合と2.の場合とあわせての負担額は48と変わらないことになってしまいます。
このまま放置しておきますと、A国でせっかく認めた外国からの投資の奨励措置というものを日本側がそのままむだにしてしまいますものですから、みなし外国税額控除制度というものを設けまして、そのような制度があるのであれば、仮にA国で実際に30を納めていなくても、日本では30納めたことにして、日本での納税額は18にしましょうということで、外国の投資奨励措置を援助する視点から設けられた控除の仕組みでございます。これは開発途上国から見ればもっともな制度でございますけれども、どこまで認めるのか、いつまで認めるのかといった観点から冷静に議論する必要があろうかと思っております。
17ページをご覧ください。今わが国がみなし外国税額控除制度を条約上認めている国としましては、19カ国ございます。しかしながら、昨今、みなし外国税額控除制度を無期限に認めるのはどうかという反省の観点もありまして、供与期限というものを設けまして、2005年なら2005年、2003年なら2003年までは認めますというような仕組みを条文に入れているものもございます。
番号を黒く縁取りしてある国々がそういった条件が一切ございませんものですから、今後、租税条約を見直すに当たっては、こういった国々についてはみなし外国税額控除制度についてきちんと見直しをしていく必要があるのかなと考えてございます。
それからもう一つ、どの国と租税条約交渉するのかを考えるに当たって、今の租税条約で何か問題があるのかないのかということも一つの基準になろうかと思います。
18ページをご覧くださいませ。ここでは「匿名組合契約に係る課税関係」という絵がございます。匿名組合と申しますのは、営業者に匿名組合員というものが出資をして、営業者が営業を行いますと。その損益は投資家にパススルーしますと。そういう仕組みでございます。
日本の国内法では、営業者が組合員の方に利益を分配するに際しまして、その匿名組合員の方が外国の投資家の方であろうと国内の投資家の方であろうと、源泉徴収することになってございます。しかし、租税条約の一部には、匿名組合員に配る利益の分配というものについては、租税条約上、その他所得ということで、源泉地国ではなくて、居住地国でしか課税できないと定めているものがございます。
したがいまして、この図のように、日本に組合があって、外国に匿名組合員がいらっしゃる場合に、日本では源泉徴収ができなくなるわけです。それに加えて、当該外国の国内税制上、外国にとっての国外、この場合は日本での所得については課税しませんよという税制を持っているところがあるのですね。そうしますと、この場合には外国の匿名組合員というのは日本からも課税されず外国からも課税されないで、いわゆる二重非課税が生じている状態になります。そういった問題を抱えている条約国については直していく必要があろうかと思います。
さらに、こういったもろもろの点を勘案しながら、どこと租税条約交渉するのかを決めていく必要があるわけでございますけれども、もとより、これは相手国のある問題でございますので、例えばアジアの国々との間では、限度税率についてなかなか低くできないでしょうし、交渉妥結の可能性というものも十分加味しながら、投資環境に資するべく、租税条約の見直しを進めていくことがグローバル化の進展にこたえる一つの方策ではないかと考えております。
もう一つの分野でございますけれども、国内法関連、国際課税の現代化ということで、21ページをご覧いただけたらと思います。経済活動のグローバル化に伴いまして、わが国企業の経済活動も多様化してございます。そういった多様化した経済活動の実態に即して制度の見直しというものをきちんと行っていかなければなりませんし、また、内外の経済活動に対する課税の中立性・公平性、あるいは二重非課税を防止するために租税回避行為への対応も考えなければいけませんし、最後にご説明させていただきますけれども、多様な事業体への対応なども考えなければならないかと思います。
2つ3つ例を挙げて簡単にご説明させていただきたいと思います。25ページをご覧いただけたらと思います。いわゆる国内法で定められた国際課税の一つの制度としまして、外国子会社合算税制というものがございます。これは、税負担の著しく低い企業に著しく低く済むように海外に子会社を作りまして、そこに利益を留保してわが国の法人課税を免れようとすることに対して、一定の場合には、そのような租税回避行為に対処して、課税繰延べを防止するために、海外子会社に留保されている所得を親会社の所得に合算して課税する制度でございます。
ただし、実際ちゃんとした理由があって海外子会社を作っている場合、つまり、実体のある事業を行っている場合については合算課税の対象とはなりません。
では、外国子会社の税負担が著しく低い場合というのはどういう場合かということでございます。27ページをご覧いただきたいのですけれども、いわゆるトリガー税率というものがございます。子会社の税負担が何%以下であれば、そのような子会社については、その子会社の所得を親会社に合算して日本で課税することとするのかでございますけれども、米国、英国は31%、22%、それに対して日本は25%でございます。ドイツ、フランスにつきましては、子会社に着目しているのではなくて、所在している国に着目して、その出先の国、いわゆるタックスヘイブン的な国であるならばということで、25%、あるいは22%以下の国に所在しているならば、同様にこの合算課税制度を使うということをしてございます。では、25%なら25%を負担してない場合には必ず合算してしまうのかということにつきましては、先ほども申し上げましたけれども、実体がある場合には適用除外としてございます。
実体がある場合とはどういう場合か、28ページに書かせていただいてございます。まず、事業がどんな事業ですかと。株式の保有だとか、債券の保有だとか、知的所有権の保有だとか、外国にわざわざ会社を作らなくたってやれるようなものについては、なぜわざわざ外国に作るのですかと。あるいは、実体基準ということで、ちゃんとした事務所を持ってますか。そこで管理、支配、運営をしてますか。遠隔操作はしてませんか。それから、例えば卸売業、あるいは金融などの場合には、身内だけで取引をしてませんかと。身内だけで取引をするならば、わざわざ海外に子会社を作る必要はないのではないでしょうかと。そのような基準でございます。
これらの基準をすべて満たしている場合には合算課税の対象とはならないわけでございますけれども、これにつきましても、るる変遷がございました。29ページにこの制度の変遷の簡単なまとめが書いてございます。もともとはわが国も、タックスヘイブン税制ということで、この国はいけない、あの国はマルというふうに国ごとに、あるいは地域ごとにマルだバツだをつけておったわけでございますけれども、ある国が税制改正をした場合にそれをどこまでフォローし切れるのか、あるいはその軽課税国に指定された国からは非常に抵抗感、不快感を表明される。そういったこともありまして、平成4年から、今のように、子会社ごとに税負担率を判定する方式に変えさせていただいたわけでございますけれども、これからもどんどん、新しい経済の動きに伴って、この子会社合算税制というものも見直していかなければならないと思います。
具体例を申し上げますと、子会社を置けば、子会社の所得は合算され得るわけでございますけれども、例えば子会社でなくて信託を置いた場合にはどうなのかとか、実体上の理由もあるのでしょうけれども、いろいろな工夫などもなされてきている中で、なかなか今の外国子会社合算課税制度というものが追いつき切れてないという点もございますので、こういった点も、今後、この場でもお諮りできればと思ってございます。
それからもう一つ、外国税額控除制度という制度に関連して、ある意味、問題意識をご披露させていただきたいのでございますけれども、33ページをご覧いただけますでしょうか。先ほど、みなし外国税額控除制度のところでご説明させていただきましたけれども、外国税額控除制度というのは、二重課税の排除のための措置でございますので、例えば左の欄で申しますと、100所得があって、外国で50、税額を納めている場合であっても、二重課税を排除するという観点からいけば、日本で納めていただく100掛ける30%の30だけを税額控除すればいいということで、控除限度額という制度が設けられてございます。この場合に外国法人というのは50払うわけでございますけれども、20、控除限度額を超過します。それは3年間繰り越せますし、逆の場合、余裕額ができた場合にはそれもまた3年間繰り越せると、そういう制度でございますけれども、これで果たしてどこまでいいのかというのを、次の34ページの事例でちょっとご紹介させていただきたいと思います。
この場合、所得というのはある会社にとりまして2種類ございます。所得の項目区分が違うこともありましょうし、稼いでいる国が違うこともありましょう。ある国、あるいはある所得につきましては、税額が所得の半分、50とられてますと。これだけを見た場合には、先ほども説明させていただきましたけれども、日本で本来30納める、その30いっぱいまでは外税控除を認められますけれども、超過額20については外税控除は認められません。
この所得だけであればそれで済むわけでございますけれども、仮に、あわせて税率が10のところの所得もある、あるいは10の国でも課せるという場合を考えますと、この場合、日本の税額30に対して外税控除10ということで、実際に納めている10だけを引けば済むはずですけれども、たまたま超過額20があるもので、今の制度のもとでは、この超過額をほかの所得の余裕額、今流用と言ってますけれども、持ち込むことができるのですね。そうしますと、相殺して、結局のところどういうことかというと、外国で50という高い税率で納めた50丸々分について、日本の税金が減ってしまっていると。果たして日本は二重課税の排除はしなければいけないけれども、この30%を超えているような分についてまでも日本の税金をまけてあげる必要があるのかと、こういう問題意識というものは引き続き持ち続けて、機会がありましたらまたお諮りしたいと思っております。
これが外国税額控除制度の問題意識でございます。
最後にもう一つ、先ほど来、グローバル化の中で、多様な形態での事業体の話がございました。36ページをご覧いただけたらと思いますけれども、国際課税の観点から申しましても、我々も、この多様な形態での事業体については関心を持っております。本来であれば、団体課税であれば、その収益の帰属する投資家が、居住者であろうと非居住者であろうと、事業体に課税するということできちんと捕捉ができたわけでございますけれども、仮に、今さまざまな議論が行われてますように、構成員課税にしましょうと。つまり、事業体レベルでは課税しなくて、収益が帰属する構成員の段階で課税しましょうということになった場合に、果たしてどこまできちんと追い切れるかという問題意識でございます。
国内に居住者がいらっしゃる場合には、税務署のほうでそれなりにトラックダウンできるかと思いますけれども、非居住者の構成員の場合に、収益が非居住者に渡る段階で何らかのきちんとした手当てができないと、果たして課税の確保ができるのか。そういったところはきちんと手当てしていく必要があるのではないかと、そういう問題意識で、国際租税課といたしましてはこの問題には取り組んでまいりたいと思います。
駆け足になりましたが、以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。
大変込み入った面倒くさいところをよくおまとめいただいたと思いますが、ただ、これはかなりプロフェッショナルな領域ですから、どれだけ議論が進められるかですけれども、しばらく時間をとりまして議論したいと思いますが、どうぞ。
〇委員
30年ぶりにやった日米租税条約の改正ということは、いろんな動機があってかなり思い切ったことをやったという当時の評価だったですよね。そのときに、大まかなものの言い方をして、少子高齢化で日本の国内の貯蓄率はだんだん下がっていくから、この際外国からの資本をいろんな角度で入れなければいかんと、それが一番日本にとっていいことなのだという説明があったのですね。この中にも書いてあるけれども。
実際、そんな効果がどれだけ出たかよくわからないとは思うのだけれども、この条約ができて、アメリカから日本に対する直接投資がどういう状況にあるのか。実績があるのか。あるいは、ないけれども動きがあるのか。ここから先はちょっとわからない話だから推測になるかもしれないけれども、つまり、この画期的な条約の効果がどの程度今確認できるのかということを教えてもらいたい。
〇事務局
私も、この機会にぜひご披露したいと思って用意しようと思ったのでございますけれども、実際問題、源泉徴収につきましては7月から限度税率が下がったのが適用されるようになってまして、今の段階ではちょっとまだ数字が整いません。それで、ご披露できる数字が整い次第、この場でご報告させていただけたらと思ってございます。
〇委員
それはいつごろですか。1年ぐらい後かな、そうなると。
〇事務局
あまり短期間でご披露してもちょっとあれなので、1年ぐらいかかるかもしれません。
〇委員
我々の任期中だな(笑)。
ほかにいかがでしょうか。
〇委員
しょうもない質問ですが、これって、やるとやらないで、要するに10億円の話なのか、1兆円の話なのか、どういうオーダーの話なのですか。
〇委員
かなり大きいのではないですか。出た暁には。どうでしょうか。
〇事務局
微々たるという話になるのかもしれませんけれども、外国法人の法人税額は、14年分でいけば大体1,200億円程度なのです。ただ、非居住者、あるいは外国法人にお納めいただいている源泉徴収税額は、14年分で4,000億円弱でございますので、それぐらいのオーダーでございます。
〇委員
数千億程度ということか。
〇事務局
そうですね。
〇委員
ちょっと質問です。18ページのところですけれども、これは具体的にはどんな状態を想定というか、指すのですか。匿名組合契約、二重非課税ということですね。
〇事務局
はい。匿名組合を日本に作りますと。それで、わざわざ外国なら外国に子会社を作って、その外国の子会社から日本にある匿名組合に出資させるのですね。そうしますと、匿名組合がもうけました。その外国の子会社にお金が、もうけがいきましたと。その場合に、日本でも課税できませんし、出先の外国でも課税されないという二重非課税の問題でございます。
〇委員
それは租税条約で一応阻止するべく努力するわけですな。
〇事務局
租税条約の中には結果的にそのようなものになっているものがあるのです。それで、その租税条約を早く見直す必要があろうと。
〇委員
つまり、具体的な業態としては投資ファンドみたいなものですか。
〇事務局
そういうものも典型例でございますね。
〇委員
ほかに何かございますか。――よろしゅうございますか。
当面、来年度税制改正に積極的に盛り込むというよりは、長い目で見ていろんな問題、芽が出ているよという問題意識ですね。わかりました。
それでは、ちょっと時間は早いのですけれども、ほぼ時間どおりになりますので、次回の予定等を申し上げて散会にしたいと思いますが、次は10月22日、これは午前中ですので、ぜひお間違えなきように。10時から開催いたしまして、残った主要な税の資産課税、あるいは給与所得課税、この議論を行いたいと思います。ご案内にも、午後ではなくて午前だよというメンションがあったと思いますので、ぜひお忘れなく。
それでは、今日はどうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。