第21回基礎問題小委員会 議事録
平成16年10月8日開催
〇委員
それでは、時間になりましたので、基礎問題小委員会、21回目になりますが、開催いたしましょう。
今日は、個人所得課税を集中的に議論するというテーマでございますから、事務局から、国と地方に分けて、まず前半ご説明いただいて、あと残った時間で自由に、かなり時間がとれますので、皆さんのご意見を聞きながら今後の方向を探っていきたいと思います。
最初に、国税のほうの個人所得課税は税制一課長のほうから、それから後段で、地方税の特に住民税関係を市町村税課長にお願いするという段取りにいたしましょう。
では税制一課長からどうぞ。
〇事務局
税制一課長でございます。よろしくお願いいたします。
資料、基礎小21-1という横になっている資料をご覧いただきたいと思います。個人所得課税につきましては、前々回ご説明申し上げましたように、平成18年度、税源移譲を行う、こういう日程がございまして、その際にいわゆる抜本的見直しがどうしても必要になってくると。税率でありますとか控除、この辺を見直す格好になるわけでございます。この税源移譲に当たりまして、我々、今まで政府税制調査会でご議論していただきましたあるべき姿、この方向性に沿ったものでなければいかんと、このようにも考えております。
早速でございますが、目次を飛ばしていただきまして、1ページでございます。これは現在の個人所得課税の現状を大ざっぱにご説明するパートでございます。まずは税収ということでございますが、これは何度もご覧いただいております。多言を弄しませんが、平成2~3年、このあたりがピークでございまして、現在、13.8兆円ということでございます。前回、調査課のほうからご説明いたしました税収の分析、例えば平成2年から平成9年まで、個人所得課税で申しますと約9兆円ぐらい減っているわけでございますが、これがバブル税収がはがれた分と仮にいたします。この平成9年の19.2兆から現在の13.8兆、約5兆4,000億ほど減少してございます。減税による部分、これが約3兆円強、残りの2.3兆ぐらいが、例えば土地、株、この辺がなかなか上がってこない。さらには、後ほど出てまいりますが、給与所得の総額、この辺が構造的な変化もあってなかなか総額としては大きくなってこないというような事情も、この2.3兆円の中には入っておるのかなあと考えております。
ちなみに、平成12年にポコッと税収が上がっております。これも何度もご紹介いたしますが、3兆余、この数字は郵貯の大量償還がございます。12、13年度、ちょうど10年前、金利が高かったものですから、定額貯金が爆発的に売れた、それの大量償還が一気に出て、国の懐にも税収が入ってきたというわけでございます。現在そういったものがはがれてきて、13.8兆ということでございます。
次のページ、これも何度もご覧いただいておりますので割愛いたします。うち国税というところを見ていただきますと、個人所得課税の負担率、これが6.2%だったのが3.9%になっているということでございます。
空洞化と申すわけでございますが、次の3、4ページに、具体的に、例えば給与収入700万円ないしは500万円の方の税負担がここ十数年どのように動いているかということを示したものでございます。抜本前、消費税が入る前の姿が一番左、それから平成6年、これは消費税を上げたとき、上げる前の姿、3つ目が恒久的減税前で、現行、この恒久的減税、すなわち定率減税プラス37%、最高税率を下げる。700万のところにはこの辺は効いてきませんが、定率減税が効いている姿でございます。89万、53万、45万7,000円、37万7,000円と、このように下がってきているわけでございます。同様に、夫婦子2人の場合で500万円。39万4,000円から、現在、16万円ということでございます。
次のページに独身の場合、700万、500万、同じように、どのように税負担が動いているかということを書いてございます。これは独身と書いておりますが、所得税上の独身でございます。奥さんが働いている場合、これはだんなさんにとっては独身という格好になるわけでございます。121万9,000円から、現在、64万6,000円、500万の場合が65万から、現在、34万5,000円と、このように下がってきておるわけでございます。
こういった現状を踏まえまして、次の5ページでございます。これは一昨年の「あるべき税制の構築に向けた基本方針」におきましてご指摘いただいていることでございます。「空洞化の状況を是正し、その基幹税としての機能を回復する必要がある」。さらに、抜粋で言うと一番最後の行でございます。「負担増が急激なものにならぬよう、段階的に実施していくことが考えられる」ということでございます。
先ほど申しましたように、18年度という段階で、税源移譲に伴います抜本的見直しというのは必要なわけでございますが、こういったものも含めまして、段階的に実施ということがここにも書いておるわけでございます。
以下、中身に入るわけでございますが、6ページでございます。これは皆様よくご存じのことでございますが、あくまでおさらいということで、所得税の計算、これをどのようにしておるのかということを説明したものでございます。サラリーマンを例にとりましてご紹介したいと思います。
まず、一番左側の給与収入がございます。これはいわゆるグロスの収入でございます。今年度予算ベースで、実は216兆のサラリーが支払われるという試算を我々立てております。そこから給与所得控除、ご商売されている方の場合には、一番左が売り上げ、そこから経費を引いて所得が出る。商売の場合だと利益が出る。この給与所得控除、日本全国で61兆円差っ引きをすると、約3割の給与収入から約3割の経費等の控除を行っておると。残りが154兆ぐらいになるわけでございますが、これが収入に対して所得という概念を使っております。
その所得計算が終わった後、控除を行う。所得控除を行う。これも日本国全体で、基礎控除、配偶者控除、扶養控除等々、全部足しまして60兆ほどの控除をサラリーマンの場合行う。この差っ引きをしまして、ようやく課税所得というものが計算される。これも日本全国で約95兆円ほどの課税所得が出てくるということで、216兆からスタートして、約半分以下の課税所得という格好になるわけでございます。その次の段階として、税額計算、税率を掛けていく。超過累進課税ということで、10%、20%、30%、37%、どんなお金持ちの場合でも、330万円までは10%で課税する。それを超えた分について、順次20、30、37と、このように掛けていくということでございます。
こうして計算されました算出税額、そこに税額控除、大きなものとしては住宅ローン減税、こういったものがございます。さらには、現在、定率減税ということで、計算された最後の段階で20%のスライスカットをするという計算をするわけでございます。こうして、一番最後の右下、納付税額という計算になるわけでございます。
今日のご説明は、この計算の順番に沿いまして、まず1つ目は、先ほど申し上げた一番左側のほう、所得計算、収入から所得を計算する。それから2つ目として人的控除、所得控除の問題。その次に税額計算、主に税率についての今までのご論議を、今年の前半ご審議いただきました「実像」把握、これに沿いましてご議論願いたいと思います。
さて、所得計算、次の7ページでございます。先ほど申しましたように、給与収入から給与所得控除という経費等の控除を行っておるわけでございます。
むしろ次のページをご覧いただきたいと思いますが、8ページでございます。横軸に、先ほど申し上げたグロスの給与収入、縦軸に給与所得控除額が示されております。現行は、いわゆる率という意味で、180万円以下の分については40%、順次、30、20、10、5とだんだん勾配は下がっていく格好になっております。
さらに、このままの計算ですとゼロということがあるわけでございますが、最低保障ということで65万円。よく配偶者、パートの問題があるわけでございますが、この最低保障額65万円を引いた後、たまたま基礎控除と同じ数字ですが、38万円、これを超えたら配偶者控除の対象ではないという話になるわけでございます。この65万足す38万、いわゆる103万というのはこの65万から出てくる数字でございます。
実は昭和48年、これは累々のサラリーマン減税が行われる原初的な、原始的な姿でございます。当時は定額控除が16万。20%、10%、5%の定率控除がございまして、控除限度額、頭打ちが76万ということであった。ここからいわゆるサラリーマンに対する減税ということで、この給与所得控除を順次順次上げてきた。この結果、先ほど申し上げましたように、200兆のうち60兆、この控除で差し引かれる、約3割が引かれる格好になっているということでございます。
次のページに、これは家計調査から。なかなかピックアップするのは難しゅうございます。いわゆるサラリーマンにとっての経費っぽいものを家計調査からピックアップしたものでございます。年間収入5分位でそれぞれの計数、衣料品から始まり、こういったものが経費かなということをピックアップしたものでございます。
トータルのところ、さらに一番右の欄がこの収入に対する割合ということでございます。大体6~7%、このほかにもあるだろうということを考えましても、約1割ぐらいがいわゆる経費という意味で認識し得るものかなあと。それに対して3割を引いておるという状況があるわけでございます。
10ページには諸外国のケースがございますが、日本のサラリーマン課税は、諸外国に対しましてはやはりかなりジェネラスな格好になっておると。
こういう認識のもと、11ページでございます。平成14年の「基本方針」におきましては、この給与所得控除について、下線部、2行目あたりでございますが、「給与所得者の必要経費に関する概算的な控除としては説明しきれない」、さらにはその次の行で、「控除額の上限がない点も問題」だと、このように指摘されているわけでございます。
さらに次の12ページ、これは昨年の中期答申でございますが、経費の概算控除として明確化せいと。負担水準を調整する観点から、基礎控除を初め人的控除の水準の引上げを検討すると。ただ、同時に、その下の行でございます。給与所得者の間には、事業所得者と比較して所得捕捉に関する不公平感が依然として根強いと。一層の執行面での努力が求められておると。俗に言ういわゆるクロヨン的な問題もここに指摘がされておるわけでございます。
実は事業者から見ますと、この経費を上回る数字、これが控除されておるということで、事業者サイドから逆の見方もされておる事実もございます。
ちなみに13ページ、サラリーマンという意味で、退職金についても資料をつけてございます。退職金の課税、簡単に申しますと、グロスで退職金をもらう。そこから退職所得控除という特別の控除を差っ引く格好になっております。勤続年数20年までについては、1年について40万円、それを超えた20年超については70万円にかさ上げをする。それに2分の1をポンと掛ける。課税ベースを半分にすると。これは一遍にたくさんの額をもらうということでブラケットクリープが生じるであろうということで、平準化措置ということで2分の1というものが入っているわけでございます。その上で、実はこれはほかの所得とは別に分離累進課税が行われるとなっております。
ちなみに、勤続年数30年の場合、例えば2,000万円、退職一時金をもらわれた場合、この退職所得控除で1,500万が引かれ、その残りの500万、ポンと2分の1になり、この250万に対する税金として25万円がかかると、このようになっているわけでございます。
次のページに諸外国のケースも載っておりますが、15ページに、この退職金に関するご指摘でございます。これは平成14年の「基本方針」でございますが、勤務年数が短期間での所得の2分の1だけに課税される。さらには、20年を境に控除額が増えると。これが就労や退職金支給の実態に合ったものかどうか、税負担の公平・中立を確保するように見直す必要があると。
昨年の中期答申においても書かれてございまして、「最近の企業年金の普及の状況等を踏まえ、過度な優遇を是正するとともに、給与、退職一時金、年金の間で課税の中立性を確保していくべきである」と。
この給与、月給と完全に中立化させるためには、例えば退職一時金、これは勤続年数がn年であったとすればnで割って、各年の給与収入に加算をして普通の計算をやり直して、それを全部足し上げる、このような3段が必要になるわけでございますが、いずれにしましても、先ごろ新聞記事に出ました、この2分の1課税というのを使いまして、課税ベースがエロージョンしていると。
例えば3年しか働いていない外資系の企業の子会社への出向、それで給与は比較的抑えておく。最後、その子会社をやめるときに、退職金という名目でボンとお金が支払われる、こういった場合に2分の1というふうに自動的になってしまうものですから、これは本当に退職金かと、事実認定も必要になってくる。これは単なるボーナスなのではないのという場合もあるというようないろいろな実情もございます。
現在、各企業、今までどおりの退職金が企業経営にとっても負担であると。確定給付型から確定拠出型へといった大きな流れもございます。一遍にもらう額ないしは年々もらうペンションスタイルの場合、今後、サラリーマンの老後を支えるお金のあり方というのは、年金の問題、企業年金の問題、こういったものと絡めまして議論が必要かと存じます。
次のページに、これは今年の1月から6月までご議論いただきました「実像」。我々なりに、このサラリーマンについてのご議論について関連するかなというのを幾つかピックアップいたしました。この10のキー・ファクトのうち、日本型雇用慣行のゆらぎと働き方の多様化ということが書いてございます。せんじ詰めれば、雇用形態が多様化していると。カイシャに依存した経済社会の諸制度の再点検も必要であろうと。
グラフとしては、「雇用形態別の雇用者数の推移」と書いてございまして、だんだん右肩下がりで下がってきているのが正規の雇用者割合、下のライン、非正規の雇用者割合となってございます。この非正規の雇用者割合、だんだん上がってきているわけでございます。特に平成9年以降、加速されておるわけでございますが、実はもっと以前からこの傾向というのは続いてきておるというのが見てとれると思います。ここ最近の労働分配率を下げるための企業サイドの取り組み、そういったものだけでは説明し切れないものがございます。逆に申しますと、この動きというのはそう簡単には逆転、反転するとはなかなか言えないのかなあと。この数字、我々、所得税を担当する者としては極めて深刻でございます。
今まで、カイシャのあり方を当てにして、所得税の制度、さらには執行を考えてきておりまして、それについての見直しが必要になってくると。従前、カイシャに従属しているということで経費以上の損金算入をサラリーマンは受けていた。交際費、その他のフリンジベネフィット、こういったものもありました。自分自身が独立した経済主体として、自分自身がコスト管理するという必要も全然なかった。また、申告納税、こういった手間も要するにカイシャ任せであった。こういうカイシャに依存した経済社会、いわゆるサラリーマンのあり方、これをベースに所得税制を議論しておったわけでございますが、今後は自立した経済主体としての勤労者というものがクローズアップされるのかなと。
次の17ページでございます。「結びにかえて」ということで、「実像」で整理しておりますが、個人による自由で多様な選択をなるべく阻害しないという観点から、これまで以上に柔軟な発想が求められると。どのようにこれを所得税制に受けとめれば、特に給与課税について受けとめればいいか、なかなか難しいわけでございますが、例えば自立心であるとか、やる気のある勤労者、これが自分自身の可能性を高めて多様な仕事にチャレンジする、そういったことに邪魔にならないと申しますか、それを応援していく、そういう税制を目指さなければいかんかなあと考えておるわけでございます。
次の18ページ、ここから第2段階のいわゆる所得控除の問題でございます。先ほど最初に整理しましたうち第2段階の人的控除を初めとする所得控除でございます。ここに基礎的な人的控除、それから特別な人的控除と現在の人的控除が整理されております。基礎的な人的控除については、基礎控除、配偶者控除、扶養控除というものがあるということでございます。
次のページ以降、これまで政府税制調査会でご議論いただきました控除のあり方についての論議をピックアップ、抜粋をしております。
19ページでは、できる限り、簡素化・集約化することが必要ではないかと。さらにはロのところでは、税負担に歪みが生じないような、経済社会の中で行われる個々人の自由な選択に介入しないような中立性が必要だという議論があります。
20ページに、人的控除の簡素化・集約化の話があった後、21ページに、基本構造のさらなる見直しというご議論を頂戴しております。
ポンチ絵的に22ページでございます。先ほど申し上げた基礎控除、配偶者控除、扶養控除、これをどのように見直すべきかということで、オプションが14年6月の「基本方針」では示されました。
1つ目の考え方として、配偶者を家族控除に統合するという考え方が示されました。
この考え方に対しては、これではまだまだ手ぬるいと、男女共同参画の観点からはまだ手ぬるいという考え方もあると記述がございまして、考え方2ということで、配偶者控除はやめてしまうと。扶養控除、これは児童及び老齢の親族、働けない親族についてのみ認める。そのかわり個々人の所得について重点を置いた配慮ということで、基礎控除を拡充すると。
考え方3は考え方2をさらに進めまして、子育ての支援というのに力点を置いた案でございます。児童の扶養について税額控除方式、所得控除ではなくて税額控除。どの所得階層にも平等の金額で対応ができるようにということで、税額控除ということも考え方として示されたわけでございます。
次の23ページ、これは昨年の中期答申でございます。キーワードといたしましては、[1]の一番最後のところ、「今後、家族の就労に対して中立的な仕組みとしていくことが重要である」。[3]として、2行目、「税制面で片稼ぎを一方的に優遇する措置を講じることは適当でない」。「また、扶養に対する配慮については」ということで、真に社会として支えなければいけない扶養控除の対象、これを集中させた上で少子・高齢社会における子育ての重要性をよくよく考えろというご指摘をいただいております。
次のページ、これも「実像」で関連するところをピックアップいたしました。何度もご覧いただいておりますので割愛いたしますが、要するに少子・高齢化が進んできておるというのが24ページでございます。
それから25ページ、家族のあり方、形というのも多様化してきておると。「家族類型別世帯数の推移」というグラフ、ちょっと字が小さくて恐縮でございますが、それぞれ真ん中あたりに夫婦と子供のみの世帯。我々が所得税制を論ずる際に、夫婦子2人ということで標準世帯と、勝手に標準という言葉をつけておったわけでございますが、それが標準ではなくなりつつあると。一番左側、ちょうど私が生まれたあたりですが、昭和30年のころには、夫婦と子供、これが40%ちょっと。実はこの数字というのはそう変わっておりませんで、昭和55年あたり、これはちょうど私が入省したころでございますが、これも四十数%。あまり構造は変わってない。
ところが、最近になりまして、夫婦と子供のみという世帯は全体の4分の1、二十数%に落っこちてきているということがございます。「戦後家族モデルを前提とした既存の諸制度が揺さぶられ、家族のあり方が改めて問われている」ということでございます。
次のページでございますが、「結びにかえて-将来に向けての示唆」ということで、社会の新しいダイナミズム、「活力」「豊かさ」、さらには「選択の自由」と「責任」「複線型」のライフコース。まさに少子・高齢化が進む中で、女性、高齢者の労働力というのは大変大切になってきておるということが言えます。そういった家族の労働、就労に対してバイアスをかけてはいかんという考え方。さらには、少子・高齢化の問題がございますが、夫婦の共働きであれ、片働きであれ、場合によってはシングルパパさん、ママさんの場合でも、子供を育てる苦労をしている人にはできる限りの支援をしたいと。こういったことがこの「実像」から出てくるのかなあと考えているわけでございます。
次の27ページ、先ほどの整理で言うと第3段階、いわゆる課税所得に対して税率を掛ける、その税額計算の段階の議論でございます。「所得税率の推移」ということで、一番左側、昭和61年以前から、15段階から始まりまして、現在、10、20、30、37の4段階になっておるわけでございます。
ちなみに、この4段階になっているわけですが、所得税本法は実はその1個手前の50%最高税率、こういう形になっております。平成11年以降となっているわけですが、例の定率減税と同じ法律、恒久的減税法、負担軽減法の中で、最高税率37というのが規定されております。18年度の税源移譲時にこの税率控除についてもレビューが必要になってくるわけでございますが、現在は10、20、30、37の姿になっております。
これを個人住民税、地方税の限界税率、これとオーバーラップしたものが下のグラフでございます。10、20、30、37の国税に対しまして、よりフラットな形で、5、10、13の個人住民税という税率構造になっているわけでございます。
次のページに、この限界税率のブラケットにどれほどの納税者の方々が入っているかという国際比較でございます。日本の場合、10%、最低税率のブラケットが比較的長いものですから、そこに納税者の数が実は約8割が入っておる。イギリスも10%が最低税率ですが、イギリスの場合はここには1割程度しか入ってない。すぐ22%のほうにブラケットが上がる格好になっている。アメリカ、フランス、これは申告書の枚数での割合でございますが、それぞれ、15%に対して7割、フランスの場合は、最低税率は日本より低うございます。7.5ですが、そこに4割、そこから21に上がると、このような姿になっております。
次のページに、この税率構造とも関連いたします。それぞれのブラケット的な、これは給与収入ベースで書いてありますのでブラケットごとにはなってないわけでございますが、人数がどれほどいて、その方々がどれほどの税金を合計で払っていただいておるかと。このグラフ、下側が頭数、上側が払っておられる所得税額ということになっております。
こういった税率構造を踏まえまして、30ページでございます。これもよくご覧いただきます実効税率ということで国際比較をしております。日本が一番太いラインでございます。フランスが下を走っておりますが、フランスの場合、実は一般社会税というものがございまして、これを足しますと、一点破線と申すべきか、日本よりちょっと上のところを走っているものがフランスの数字ということでございます。日本の場合は、先ほど申し上げたように、最低税率の構造等がございまして、発射台からすうっと真っすぐ、ほとんどリニアに上がっていくという税負担構造にこの税率構造の結果なっておるということでございます。
そこで31ページでございますが、「基本方針」におきまして、一番最後の行だけご覧いただきますと、「むしろ、現在の最低税率のブラケットの幅を縮小することが今後の選択肢として考えられる」、こういうご指摘を頂戴しております。いずれにいたしましても、税率構造につきましては、税源移譲においてご議論を頂戴せねばならんと考えております。
32ページ、これも「実像」関係をピックアップしております。税率構造、すなわち、所得再分配機能をどのように持たせるかという議論でございますが、「分配面での変化の兆し」という中で、ジニ係数のご議論を頂戴いたしました。高齢者世帯の増加等によりまして、ジニ係数というのが上昇する、いわゆるばらつきが大きくなっていく傾向が見られるということでございます。「また」ということで書いてございますが、「行き過ぎた『結果の不平等』に対して懐疑的である」。これはわかるのですが、一方、「行き過ぎた『結果の平等』に対しても否定的に捉える意識を観察することができる」。
次のページに、「『機会の平等』に対する意識の日米比較」であるとか、そういったところから、いわゆる富の再配分についての日本人の今の考え方。一直線にどんどん再分配をしていくべきだというわけでもなさそうですし、ここはどちらかというとアンビバレントな感じもあるのかなあと考えております。
以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。
それでは、引き続きまして、市町村税課長、お願いします。
〇事務局
市町村税課長でございます。
お手元の資料、基礎小21-2「個人住民税関係」に沿って説明させていただきます。
まず1ページをご覧ください。「個人住民税の概要」とございます。まず、個人住民税、一言で申しますが、市町村民税と道府県民税がございます。これは「住所を有し、かつ一定の所得を有する個人に、その者が住む市町村(都道府県)が負担を求めるもの」でございます。2種類ございます。均等割と申しまして、定額の負担を求めるもの、それから所得割と申しまして、所得金額に応じた税額の負担を求めるものがございます。
なお、個人に課される住民税といたしましては、(注)にございますが、金融関係がございます。これについては別の機会がございますので、本日は割愛させていただきます。
2ページをご覧いただきますと、税収の推移が示してございます。ピーク時は、平成4年、11.5兆ございましたが、先ほど説明ございましたように、累次の減税、あるいは経済情勢の変化に伴いまして、現在、8.1兆円と税収が減っているという状況にございます。
3ページをご覧いただきたいと思います。これは住民税がどういったウェイトで都道府県なり市町村の税収に占めておるかという図でございます。一言で申しますと、道府県につきましては約2割、市町村につきましては約3割をこの個人住民税で賄っておるということでございます。
4ページをご覧いただきたいと思います。まず、住民税の「納税義務者の範囲」ということでございます。まず1つは、市町村、あるいは道府県内に住所を有する個人ということで、住所をもとに課税しているということでございます。もう一つ、細かな話としまして、事務所や事業所、家屋敷を有する個人という者にも均等割を課税しております。
それから住民税独自の制度としまして人的非課税というものがございます。これは3種類ございまして、まずアというのがすべて非課税というものでございます。これはまず1つは生活保護を受けていらっしゃるような方、それから2つ目が障害者、未成年者、65歳以上の者、その他。これにつきましては、125万円以下の方については非課税となっております。今年の改正で老年者控除等を廃止いたしましたが、ここの制度の中では65歳以上の者はまだ残っております。
それからイといたしまして、均等割が非課税ということでございまして、ある一定所得以下の方、これにつきましては均等割を課さないということにいたしております。実は昨年まで、このイの中に生計同一の妻というものがございまして、これについては非課税ということになっておりましたが、(注)を見ていただければ、これについては今年の改正で廃止するということで、段階的に課税していくという扱いになっております。
それからウとしまして、所得割が非課税。これもやはり均等割と同様に、ある一定所得以下の方については所得割を課さないという制度でございます。
5ページ、まず均等割の標準税率、税収額の推移ということで、1点目は、従来、市町村民税の標準税率が人口の大きさによって分かれておりました。平成14年を見ていただきますと、3,000円、2,500円、2,000円と3段階に分かれておりましたが、本年の改正におきまして、これを3,000円に統一するということを行っております。
この均等割につきましては、かつては非常に大きなウェイトを占めておりまして、昭和25年を見ていただきますと、一番下の住民税収額に占める割合、18.3%ということでございましたが、徐々にウェイトを落としてまいりまして、一時は1.5とか2.0とか、そういった状況にございます。
6ページが均等割の平均税率の推移をほかの指標と比べたグラフでございます。昭和30年を100といたしまして、1人当たりの国民所得であるとか消費支出、こういったものと比較しますと、均等割の税率というものが適当であるかという議論がございます。
7ページをご覧いただきたいと思います。これは昨年の本税制調査会の答申でございまして、個人住民税に関して、何点かご指摘をいただいております。
1点目が、生計同一の妻に対する非課税措置を廃止すべきである。2点目が、税率を引き上げる必要がある。3点目が、人口段階に応じた税率区分を廃止すべきである。3点ご指摘をいただいておりますが、1点目と3点目につきましては、今申し上げましたように、実現しているわけですが、税率の引上げに関しましては、与党の大綱におきまして検討事項という扱いになっております。
8ページをご覧いただきたいと思います。ここから所得割でございます。先ほど所得税に関しまして計算のフローチャートが、同じような絵が出ておりました。まず左から2つの帯につきましては、これは所得税と全く同一の計算を行います。その後、地方税法に基づきまして、個人住民税独自の計算を行うという制度になっております。
まず、課税所得の金額に関しましては、一定の所得控除を経て課税所得の金額を決める。その後、税率が、今3段階の超過累進ということでございます。ここに5、10、13と税率が書いてありますが、これは県と市を合わせた税率でございます。それぞれの内訳は、その右上に四角で囲っておりますが、県と市の税率というものが定められておりまして、徴収は市が一括して原則としては行うということになっております。こうして税額を算出した後に、さらに税額控除と。現在、定率減税というものが行われて、最終的な納付税額が決まるという仕組みになっております。
9ページをご覧いただきますと、個人住民税の税率構造の推移という図を示しております。個人住民税につきましても、累次、税率構造が見直されてまいりまして、徐々にフラットな方向に来ておりますが、税源移譲に際しては、フラット化の方向という方向が決まっておりまして、これをどうしていくかというのが今後の課題になっております。
10ページをご覧いただきたいと思います。先ほど所得税に関しまして、退職所得の課税につきまして説明があったと思いますが、住民税に関して、多少違うところもございますので、説明させていただきます。
まず、退職所得につきましては、他の所得と区分して、現年で分離課税しております。住民税につきましては、ご承知のとおり、翌年課税しているということですが、退職所得に限っては現年で分離課税をしているということでございます。
それ以外の構造はほぼ同様でございますが、ただし、退職所得の金額を計算する際に、当分の間、計算した金額から10分の1相当額を控除するという仕組みになっております。
最後、11ページでございますが、「あるべき税制の構築に向けた基本方針」ということで、ここに住民税の特徴といったものが集約されていると考えております。「個人住民税のあり方」の「基本的考え方」というところで、「個人住民税は、地域社会の費用を住民がその能力に応じ広く負担を分任するという独自の性格を有するとともに、地方公共団体が少子・高齢化に伴い提供する福祉等の対人サービスなどの受益に対する負担として、対応関係が明確に認識できる」。負担分任とか応益性といったことでございます。「また、税収入の面で見れば、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えている」ということで、「地方税の基幹税として充実確保を図る必要がある」ということが基本的な考え方として示されております。
所得割につきましては、所得割の所得控除、課税最低限については、負担分任の性格ということで、所得税より現在でも低い水準で設定されておりますが、低い水準で設定すべきであるということを再度指摘していただいております。
均等割については、すでに説明いたしましたので、省略させていただきます。
以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。
手際よくご説明いただきましたので、今日は時間がたっぷりございますので、たっぷり議論したいと思ってます。冒頭、税制一課長から、平成18年度、抜本的に所得税を見直さなければいかんという問題提起があり、それに備えての、言うならばキックオフみたいな話で、課税ベースから、控除から、税率等々、少し時間をかけて議論しなければいけないと思います。そういう意味で、今日はどんな角度でも結構ですからご議論をいただきたいと思います。それから、今年の1~6月にやりました「実像」把握を一応念頭に置きつつ、さまざまな構造変化をどのように所得税構造改革に反映させるかという視点も、今までにない視点なのですね。そういう意味では、新しい切り口から、この所得税の構造改革、どのようにやるかという点もぜひお考えおきいただきたい。
今日は別にどこがどうだというふうに問題を限定しないで、幅広い視点からいろいろな点をご議論いただきたいと思います。と同時に、また事務局にも、今日は冒頭でありますから当然ですが、どこが一番事務当局として問題として考えているか、どこを税調として議論してほしいかという本音の話もあればいずれお聞きしたいと思ってますので、突然話がいくかもしれませんから考えておいてください。
それでは、議論を始めましょう。別に所得税、住民税、分けてやることもございませんし、相互に関係しておりますので、どこからでも結構でありますから、自由にご議論いただきたいと思います。
〇委員
ちょっと議論に入る前で大変恐縮ですが、18年度の抜本改正というときに、まことに不勉強で申しわけないですけれども、考えられる取り組むべきポイントといいますか、それの大まかなところでいいですが、ちょっと教えていただければ。
〇委員
前提条件ですね。
〇委員
そういうことです。
〇委員
つまり、何兆円やるかとか、何月までどうするか。つまり、今18年とおっしゃったのは、来年17年度は、まず所得譲与税でやるというのは暗黙の了解なのですね、きっと。一回りしたところの18年からやると。ただ、おそらく、どのぐらい額があるとか等々の条件があると思いますから、どうぞ、何か事務局のほうから。
〇事務局
税源移譲が18年度に行われるということでございます。税源移譲というのは、所得税を〇兆円減税する、その同額を個人住民税で増税するということになります。当方の所得税のほうは、この〇兆円の減税ということになるわけでございますが、減税の仕方としては、この税率を下げるやり方、それから控除を引き上げる、課税最低限を上げるやり方、こういったもののアジェンダが出てくるかと。
先ほどご説明いたしました、例えば所得控除の世界では、今までのご論議、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、こういったことについてのご論議を頂戴しております。さらには、税率については、今までは税源移譲を前提でのご議論というものはあまりなかったわけでございまして、特に低所得者部分、低所得部分、個人住民税が5%から10%なら10%に上がるようなところについての対応をどうするのか等々、この税率についても議論が出てくると。主たる状況としましては、先ほど申し上げたような所得控除のあり方、それから税率のあり方、この辺が18年度ではご議論いただくのかなあと、このように考えております。
〇委員
受け皿のほうの住民税のほうも当然しかるべきお考えがあると思いますが、税率だけでなくて、やはり控除等々にも絡む話なのかね。今5%を10%にし、13%を10%に下げなんていうフラット化だけが話題にされておりますが、もっといろいろな要素が入ってくるのではないかと思いますが、今の段階で結構ですから、お考えがあれば。
〇事務局
まず税源移譲に関してですけれども、今年の骨太方針の中では、税源移譲をやると。あわせて個人所得課税の抜本的な見直しを行うということになっております。我々としては、フラット化の方向で個人住民税と所得課税の役割分担というのを分けていくということが望ましいと考えておりまして、例えば比例税率化なども選択肢の一つかなあと思っております。その際、所得課税の抜本的見直しということで、今、給与とかそういった話もございましたが、あわせていろいろな控除も含めた全体の見直しというのをご検討いただければと考えております。
〇委員
いずれにしても、〇兆円の○が決まらないと話はスタートしないですよね、おそらく。つまり、補助金は3.3兆円切ると言っているけれども、あれは全部税源移譲の財源ではないでしょうからね。あのうち8割なのか7割なのか、それが決まってからの話でしょうね。
〇委員
ちょっと教えていただきたいのですが、所得税関係の資料の1ページに、所得税と、下のほうに住民税の税収状況が書いてあるのですが、所得税で言うと、ピークが平成3年の26兆7,000億ですよね。それが平成15年には13兆9,000億となってますが、ほぼ半分になってしまっているのですが、これに対応する住民税は、平成4年だと思いますが、ピークが11兆5,000億で、平成16年が8.1兆円ですから、4分の3ぐらいでおさまっているのですよね。
おそらく減税の影響というのは相当あると思いますが、減税額を決めるときには、所得税も住民税も同じぐらいの影響があるということでやってきたのではないかと私は記憶しているのですが、どうしてこんなに違っているのか。平成3年のときは、バブルかなんかの影響で土地の譲渡所得がボカッとものすごく多かったということがあったのか、そういうことを教えていただければと思うのです。
逆に、これは非常に興味深いのですが、昭和62年は17.4兆円あるわけですね。これが平成3年に27.6兆円にいったのです。個人住民税のときには、これに見合うのが昭和63年で、これは8.4兆円ですから、平成16年とほぼ同じぐらい。そうすると、所得税のほうは昭和62年の17兆が14兆に3兆も減ってしまったというのも、途中何かいろいろあったのでしょうけれども、何でこういうことになるのかということを教えていただきたい。
〇委員
おそらく弾力性の問題でしょう。どうぞ。
〇事務局
今手元につまびらかな分析はございませんけれども、平成2~3年においては、今おっしゃったように、バブル税収、それは資産関係で言えば土地、それからこの当時は株も大きかったですし、金利も6%台という金利、すなわち、利子税収も結構あったと。それがはげ落ちて、平成9年、これを一つのピポットとすれば、19.2兆。この数兆円がやはりそういうバブル税収、資産関係のバブル税収というのがそれなりに大きかったかなあと、このように思われます。
税収、そこからさらに5.4兆円ほど落っこちておるわけでございますが、先ほど申しましたように、いわゆる政策的な減税が3兆余あると。残りが2兆余のそのほかの要因、例えば9年以降からもまだ土地がじわじわ下がっている、金利も下がっている、株もそれほど上がってないと、こういう構造的な要因が入っているわけでございます。
ちなみに、この3兆余の数字、減税を仮にやってなかったとすれば約17兆、こういう格好になるわけでございますが、仮に昭和62年がビフォーバブルというふうにすれば、そういう意味では何となく数字としては合っているかなあと、このように考えます。
〇事務局
今、一課長のほうからご説明あった話のほかに、税率構造の影響もあろうかと思います。所得税と住民税では、住民税のほうがフラットであると。逆に言うと累進度が低いために、所得が変化したときの変化分が少ないと。所得の下降局面ではそれほどはへこまない、そういった理由もあろうかと思います。
〇委員
よろしゅうございますか。どうぞ。
〇委員
すみません。私、欠席がちなものですので、ちょっと頓珍漢なことになるかもしれませんし、また、今後やるべき検討課題に踏み込んでしまうのかもしれません。
〇委員
それをお願いしているのですよ。踏み込んでください。
〇委員
あともう一つ、学者やめてますので。
〇委員
何でもいいから、言い訳ばかりしないで(笑)。
〇委員
1つは、所得税の税源移譲については、私、現在の所得税制を前提にした上で、税源移譲のやり方や何かについては、フラット化、その他を提案しておりますが、所得税そのものについて非常に心配しているのは、もうやせ細って、ここの言葉を使えば基幹税の体を成していなくなっていると。
幾つかの原因が考えられるかと思いますが、税率を見ても、先ほど見ても、フランスなどとそれほど変わらないのにもかかわらず、負担率の取り方はいろいろありますけれども、おそらく、負担率で言うとフランスの半分。間違っていたら直していただきたいと思いますが、半分ぐらいではないかと思います。そういう基幹税の問題とか、それから財政状況を考えていくと、これは基幹税としてかなり危機的な状況に立っていて、これをどうにかしなければならないという問題が1つです。
それからもう一つは、ここ最近の状況の変化というのをかなり考えておかなければならない。それは最後にご説明されたことにも関係しますけれども、所得間格差がかなり拡大しているということです。これは拡大していないとか、いろいろ議論はありましたけれども、もうすでに明らかで、あまり詳細は言いませんが、今回の選挙結果などにも、所得間格差の大きい地域などと結果との関連性というのは明確に出ておりますので、かなり国民の間にうっせきした不満みたいなものがはびこっているのではないか。そういう意味で、応能的な公平性、私たち、いつも公平性と効率性という2つをどうやってバランスするかということを議論していたのですけれども、どうも効率性という軸を税制の中で軽視しがちになってきたという問題点が出てきているのではないかと思います。
今日の具体的な問題でいきますと、控除については、日本の所得税の特色というのは、個人単位なのだけれども、控除がものすごく多いということですよね。
〇委員
数がね。
〇委員
ええ、数が。額もですね。この特色というのは、給付主義、社会保障、国民の生活の安全保障を給付、支出でやらずに控除でやっていると大きく議論できるのではないかと思います。幾つかの控除についての廃止が議論されていますが、私は、ここは思い切ってかなりの控除を切って、そして支出にかえるべきだと思います。このことはともすると、支出を増やすのであれば財政再建上全然役に立たないのではないかとおっしゃるかもしれませんが、租税負担率が高くて、現在、赤字幅が幾つでしょうか、大きな赤字幅を抱えているのと、租税負担率は低くて大きな赤字幅を抱えているのとでは全然コントロールできる可能性というのは違うと思いますので。かつ、国民に対しても、増税はするけれども、それは財政再建であなたに対するサービスは全然ありませんよという説得の仕方と、それから増税はするけれども、しかし、それはサービスでちゃんと手当てしますよと。これは所得階層別にもちゃんと出してあげたほうがいいと思うのですね。サービスがどうなるかということを。そういう、所得税だけではなくて、総合的に考えていくべきことが重要で、控除の見直し、しかし、それは給付にかえるということを考えるべき……。
〇委員
そこを具体的に言ってよ。どんな控除が問題になるの?
〇委員
先ほど言いました基礎控除以外は全面的に検討していいのではないかと。逆に言えば基礎控除はかなり高くしてもいいかもしれない。ドイツは多分80万円ぐらい、日本は三十何万ですから。それ以外、今検討の項目に入っているのかいないのか、扶養控除とか、すべてそれは構わない。手当でそのかわりいきましょうということにしてしまったほうがいいと思います。
それからもう一つですが、給与所得控除、これも、私は古い財政学ですので、給与所得控除というのはあくまでも同じ所得、例えば1,000万の所得を給与所得で上げている人と、それから資産所得で上げている人では明らかに、どちらがお金持ちかといえば資産所得のほうで1,000万上げている人のほうがお金持ちだと考えるわけですよね。だから、応能的な公平性というのは、国民だれもが漠然として描いているお金持ちという概念に近づけてあげることで考えれば、差別課税、ディフェレンシエーションでバランスさせるという要素があるわけで、我々の知識でいくと、控除でやるやり方とネットウェルス・タックスでやるというやり方、2つあるわけですね。ですから、基礎控除については、廃止、その他を検討するけれども、逆に、先ほど言いました格差が非常に拡大していますので、別途、ネットウェルス・タックスみたいなものを考えてもいいのではないかと。
言いかえれば、地価税を地価だけに限っていると話がややこしくなるので、拡大したほうがいいのではないかと。これは税務技術上、金融のような足の速いものにはどうしたこうしたという議論がありますが、しかし、これはいつでも徴税と、それから課税回避とのイタチごっこですから、これはどこかで手を下さなくてはいけないわけで、そのときには、税制を組み合わせて、どちらかで逃れられないようにしてしまうということが重要だと思いますので、所得税だけではなくて、その所得税を補完する税金を含めて考えて、今の格差のような問題をやっていくべきだと思います。
あとは課税ベースも検討していただかないと、先ほど言いました、つまり、フランスの税率と比べるとちょっとおかしいと思うのですね。
〇委員
所得税が基幹税としてやせ細っていると言うけれども、これからまだ3兆円譲ろうとしているわけだからね。もうガラになってしまう。どうするのですか。どのようにして基幹税として復活させる?
〇委員
会長ね、今の点についてですが、さっきポイントになる話を聞いたのですけれども、今のまさに議論で、やせ細っている状態で譲る話をするのか、一たん17年度で見直しをして、そこから議論するのか。要するに、税源移譲と言った場合のスタートラインというのはどこなのだというのはどうなのですかね。
〇委員
いやいや、それはこれからの問題でしょうけれども、移譲すると同時に太らせる方法も考えなければいけないということは、多分、時間の差は、時差はあるけれども、当然議論として、先程の委員もそこは否定しないのだろう?
〇委員
そうです。
〇委員
だから、要するに、譲るけれども、ガラのままでは困るから肉をつけていきましょうという議論はこれからおそらく必要でしょうね。それはどっが先になる……。
〇委員
譲った後で……。
〇委員
だから、それはどっちが先でどっちが後か知らないけれども、4~5年のタイムスパンで見たら両方やらなければいかんのでしょうね。多分ね。それはこれから英知を絞ってください。どうぞ。
〇委員
先程の委員のお考えというのは一つの大きな選択肢だと思うのですが、1つはやはり負の所得税のような考え方を取り入れるのかどうか。これはいわゆる社会保障と所得税を一体化して今後考えていくかどうかということも含めて考えていかないといけない問題かもしれない。というのは、1つ、所得税というのは、社会保障の給付と切り離して考えられてきましたから、最低生活費には課税しないのだという考え方がわりと日本の国民の間には広く普及しているのではないかという気がするわけですね。
ですから、今後課税最低限を見直していくときに、これをもっと低くする場合に、そのあたりの考え方をどうするのだということで、その場合は、社会保障給付でいくのだという話であったとしたら、これはもう完全に、いわゆる課税最低限よりも下のところは、そこまでは給付で補てんしますよという負の所得税の考え方になってくるのではないかという気もするのですね。
ですから、そのあたりは、例えば給与所得控除を下げるとかといったような議論で、児童手当にすべてその分振りかえるのだという場合は、どういう形の給付になるのか。つまり、今の児童手当と、そして、すべての人に対して税額控除という形で給付して、ただ、相殺して税の負担になるのか、そのあたりがちょっと負の所得税との関係が出てくるのではないかなあという気がしますので、最低生活費との関係でどのように考えればいいのかと。
〇委員
しかし、懐かしいね。負の所得税なんていうやや昔議論したやつが出てくるというのは。また新しい装いを凝らしてやるのもいいかもしれませんけれども、問題は、負の所得税の世界で今ある現行の福祉もろもろをどう束ねるかだよな。どれをどう入れるかで。まあそれも議論しましょう。これは大いに。また問題提起してください。
〇委員
支出を含めて負の所得税というのはいずれ考えなくてはいけないことだと思うのですが、所得税の側だけで考えた場合、やはり所得税というのは基幹税であると同時に、税の中で所得再分配の機能というのを一番大きく持っている税であるわけですね。そこの視点から考えて、他方、今、財政状況が非常に悪いということを考えると、やはり考えるべきことは、所得再分配をどうしても必要なところに、しかし、ミニマム必要なところに集中していくという考え方ではないかと思うのですね。
例えば、いただいた資料の30ページに日本の税率表というのがあるわけですけれども、これなんか見ていると、次の税調答申なんかの文章を見ていると、これが右上がりなのでフラット化ですと、そのように見えなくはないのですが、本当のフラットだったらば、実はフランスの一般社会税というのはフラットなので、フランスの所得税と一般社会税込みとの間をとった部分が本当に比例税になっているわけですね。これがフラットというやつなのですね。そうだと水平になるはずなのですね。ところが、ほかの国は全然水平になってないと。
なぜかというと、やはり低所得者のほうにいろんな意味で、例えば税額控除を入れたり、課税最低限を入れたり、そういうことをした上で、税率は比例にするということをするとこういう、双曲線と言うのですが、急にバーンと上がっていって、上だけ大体なだらかになるという直線になるはずなのですね。だから、こういうことをもう少し日本が、平均税率だけでなくて、限界実効税率みたいなものを含めて考えて、もうちょっと下の方にターゲットとして入れるのだと。そのためにはどういうやり方があるのか。例えば所得控除でなくて税額控除にかえるとか、もちろん、人的控除を切り詰めるとか、給与所得についても考える、そういうことが必要なのでしょうけれども、そういうことをもうちょっと目に見える形で提示する必要があるのではないかというのが1点です。
もう一点だけちょっと簡単に言いますが、給与所得控除は非常に大きな問題だと思います。これも見直したほうがいいと思うのですが、ただ、私いつも気になるのは、給与所得以外の所得とのバランスの問題ですね。事業所得。特に捕捉率が、サラリーマンの場合は非常に高いと。今はいろいろとフリーターとか変わりつつありますが、そういうアンバランスな問題があって、それは常にこの税調の答申でも、捕捉の問題で不公平感が強いとか、そういう意味で、より一層の執行面での努力が求められるということが書いてあるわけですが、書いてきた以上何かしてきたのというふうに普通の人は言うと思うのですよ。
この問題をやるならば、給与所得控除をもし直すならば、おそらく国民が聞くことは、主税局、国税庁に、この問題で何をしてきたのですかということを多分聞かれるし、我々も言わない限りはちょっとやりにくいという気がするので、ぜひ、何かやっていらっしゃると思うので、そこら辺の今までの努力といいますか、今までのわかってきたことについて何かあれば教えていただきたい。
〇委員
そうだね。クロヨンとかトーゴーサンとか言うけれども、農業というのは、あるいは自営業というのについて、大分一とき、20年前ぐらい、我々が大いに測定をして議論したときに比べると変わった状況が出てきているのではないですか。例えば農業所得自体がえらい規模大きくなって、本来の零細でどうしようもないやつが法人化したりとか、自営業については数が減ってきたかもしれないし、何かその辺で情報ありますか。クロヨンに関して最近の動向。
〇事務局
その実態、数字がわかっていれば、ということはちゃんと課税できるということなのです。ここはなかなか定量的に言うのは難しいのですが、内閣のほうで、いわゆるこのモデル、マクロで見た、例えば農業所得と課税ベースに乗っかっている農業所得、これを比較したような分析がございますので、折改めましてご紹介したいと思います。
〇委員
所得税から住民税に税源移譲で3兆円というお話なのですが、気になるのは、その3兆円がそのまま、住民税になったときに3兆円になるのかどうか。何となく懸念されますのは、3兆円に届かないケースが出てくるのではないかということなのですね。といいますのは、いわゆる納税環境の問題で、所得税はもう7割前後は給与所得に対する源泉所得税で賄って、あとは税務署の職員で所得税を担当する人が必死に税務調査その他、一生懸命足を使って、それでいわゆる修正申告なり、たまには、場合によっては更正などで対応しているわけですね。
そういうことで、給与所得者、今問題になりますけれども、サラリーマンなどの所得者に対する税金だけではやはり所得税、もたないので、割合としたら非常に少なくなりますけれども、個人の事業所得者に対する調査などを充実させると。そのためには定期的に研修などのシステムが置かれているということですが、さて、住民税はどうかといいますと、大体、所得税の申告書をコピーしてもらってきて、それを計算して納税通知書を毎年送るということですが、これだけやっていたのでは、やはりいずれ3兆円からだんだん落ちてくることは目に見えてますので、その辺の体制ですね。これは前にもお話ししましたけれども、住民税でも調査、それから納税協力を得られるような体制というものを組んでいただきたいと思いますが、この点も検討していただければと思います。
〇委員
ちょうどいい機会ですから、住民税の徴収の仕方、時間を追ってちょっと簡単に復習を含めて言っていただけますか。今フリーターの問題が出てきて、住民税が特別な、何か納付の仕方が問題になるということもありますから。
〇事務局
まず住民税の徴収の方法ということでございまして、所得税はその所得が発生したその年にとっております。これに対して、住民税は翌年に課税しているということでございます。給与所得者についてお話ししますと、毎月、源泉徴収をしていただいていると。その源泉徴収をして、12月に年末調整をする。その年末調整の結果を、複写式になっておりまして、それをすべて市町村のほうで見せていただきまして、それに基づいて税額を計算しまして、給与支払者に特別徴収税額通知書を送りまして、これに記載された税額を給与支払者が毎月の給料から天引きするということで、1年ずれた課税方式をとっております。
給与支払者以外の所得につきましては、所得税のほうは予定納税をした上で確定申告ということですが、住民税は、その確定申告の資料に基づいて賦課決定をするという仕組みでございます。
したがいまして、課税資料の面では、所得税のほうで所得を、先ほど所得税法上の所得計算というところまではできておりますので、住民税のほうでもそれをもとに課税しておると。これは1つは、それぞれ税務署と市町村に申告する手間を軽くするということで始まったやり方でございます。
それで、税源移譲が起きたときに、3兆円になるものが、市町村になったら3兆円とれるのかというご指摘だと思いますが、現在でも、住民税だけ支払っている方もいらっしゃいますので、制度としては整っていると思っておりますが、最近、なかなか所得捕捉の仕方が今のような仕組みの中でできない部分があるのでないかということで、幾つか徴税の効率を上げるための制度というものを内部で検討しておるところでございます。
そのうちの1つが、新聞にはフリーターに新たに課税するような記事になっていましたが、今は1月1日の時点で働いてない方、例えば2月から11月まで働いているような方、この方については課税資料が出てこないものですから、例えばこれは給与支払報告書の提出を義務づけるとか、あるいはほかの徴収関係の規定の見直しということを検討しておる最中でございます。
〇委員
住民税だけしか払ってない人をどうやって課税所得を捕捉しているのですか。
〇事務局
まず給与所得者につきましては、普通のサラリーマンで考えますと、給与支払者が給与支払報告書というもので、この人に例えば1年間幾ら給与を支払いましたというものを市町村に提出するように義務づけております。その報告書に基づきまして課税するということなので、ここは住民税だけ払っている人も所得税を払っている人も同じでございます。
〇委員
事業所得は?
〇事務局
事業所得についても、今の建前は、住民税と所得税それぞれ申告する必要があるけれども、所得税の申告をした人は住民税の申告は不要であると、こういう制度になっております。したがいまして、所得税の申告をしない人については住民税の申告義務があるということで、これは法的な担保措置も講じて、申告の義務があるということでございます。本当に申告しているかどうかというところについては、市町村の一般の税務調査で、もし申告してない場合は捕捉するという体制になっております。
〇委員
先程の委員、そこをしっかりやれということだね。おっしゃっている意味は。
〇委員
特に事業所得者ですね。給与所得、これはこれから源泉徴収やれば税収はある程度上がりますけれども、やはり今まで国が相当力を入れてやってきたこと、これを地方でもある程度分担するというのでしょうか。やはり実態の調査ということ、これはダブる危険はありますけれども、その意気込みがないと、自主財源だということは形だけになってしまいますので、検討いただきたいと思います。
〇委員
先ほどの委員から、議題の整理というか、何を議題にしているかということの質問があったのですけれども、私も、とにかく16年度に向かっては、「あるべき税制」でした議論を通じて、課税ベース、あるいは所得税自身のそのあり方、そして次に税源移譲を重ねるだろうなと思うのですけれども、そういう意味で、今まで議論したことをいよいよここで税制改革に生かすということでは、まずその負担についてですけれども、今日の資料の29ページを見ていただいて、先ほど委員から所得格差が広がって、もっと税金かければいいというお話もあったのですけれども、29ページは給与所得階級別の納税者と所得税のシェアで、個人的にも、この図、よく自分でも書いたりするのでなじみなので、これを見ていくと、給与所得で800万以上の人が上3つですよね。これを計算してあげると、納税者のシェアが、下のほうの6.4%、5.2%、0.5%、全部で12%ぐらいで、上12%の人が所得税を、これを足し合わせると50%と。だから、この辺の議論だと思うのですよね。
アメリカなんかはこれより高い。資産分布が非常に偏っているからだけど。どれが正しいとか正しくないとかではないでしょうけれども、何年かこういう図を作ったりして、個人的にいくと、上12%の人が52%払って、これをさらにスティープに負担を上げていくというポリシーがここでやるべき議論なのかというのは、個人的にはそうではないだろうと。
この図でむしろやはり問題は、なぜこのようになってくるのかといえば、すべての人が指摘するように、課税ベースが浸食されていて、下のほうの人が税金を払ってないということだと思います。だから、負担についてはやはりこういう図で考えていくのかなと。
あと、課税ベースが浸食されていることに対して、それを直すということも「あるべき税制」で議論したし、それをどうするかということも、3つぐらいのオプションとおっしゃってましたけれども、やってきた。
あと、会長は古い話が出てきたと。負の、負というのはマイナスの所得税ですけれども、これは大変に今リバイバルしていて、リバイバルの仕方が、保守的な人と非常に進歩的な人とが同時にこれを言い出しているところがまた非常におもしろくて、近ごろの言葉はこれをベイシック・インカムと言っているわけですよね。日本の改革でどこまで直せるかわかりませんけれども、課税ベースをどんどん広げていくと、それに対してやらなければなならないのは、やはり税額控除、所得控除ということで、上げるということだと思います。だから、その組み合わせは日本でも何らか避けられないだろうなと。
また、ここでも、先進各国の例を言えば、私の知る限り、先端的というか興味深いのは、オランダなんかだとほとんど控除を減らしてクレジットにしている。そういうことで、それがある意味で切り札というか、課税ベースを広げていく、そして真に補助の必要な人には手を差し伸べる税制上の一つのあり方だろうなと。
ただ、それはもうあらゆる問題があって、所得のない人に何かあげる、最終的には所得のない人にもあげるわけですから、それは社会保障と一体になってくる。そうなると、ただ、負の所得税のときとイメージ違うのは、ベイシック・インカムを上げると根っこからも税金とってしまうわけですよね。そういう所得を上げても、そこでも定率で例えば税金をとっていく。
〇委員
北欧がそうですね。
〇委員
ええ。だから、そういう発想になっていくような形でして、それが一つの解決だろうなと。でないと、この控除はいいとか悪いとか、配偶者特別控除は少し減らしましたけれども、非常に時代おくれになったものとかはできるでしょうけれども、思い切ったことはできない。だから、私が期待したいのは、そこまで税調の議論がいったら、それはおもしろいだろうなと。
それからあと次の段階で、いよいよ住民税とくっついたときの絵もやはり頭のトレーニングで出してもらいたいのですけれども、27ページです。27ページには、「所得税率の推移」で、下のほうが「所得税・住民税の限界税率の状況」で、課長はいろいろおっしゃいましたけれども、まだ相変わらず夫婦子2人が抜け切らないですけれども、単身のほうがあったほうがもっとストレートだと思うのですけれども、だから知りたいのは、要するに住民税の課税ベースのほうが広くて、左のほうから始まっていて、これに一体税源移譲の図をどうやって乗せるのだと。端的に言えば、住民税の下のほうの人は負担がバカッと上がってしまうわけですね。そうすると、大きな問題の一つは、住民税と所得税の課税ベースの違いというのは重要でしょうけれども、税源移譲していったときにもどうするのかとか。
だから、この辺はプラクティカルな問題であると同時に全部の姿に影響するので、「あるべき税制」を現実化して、その先が税源移譲ですけれども、同時にこれを考えておかないとデザインできないと私は思ってます。だから、どこかでぎくしゃくしてしまったりすることはあり得るだろうということです。
それからあと包括的なことですけれども、具体的に給与所得控除のことをおっしゃってましたけれども、現実問題として、皮肉なことに、給与所得控除で非常に利益を得ているのは法人成りした自営業者、法人成りした事業主等だと。現実にはね。だから、そういう意味でも、そこは直さないといけないわけですよね。本質的には。だから本質的には、自営業者に対するきちんとした税金をかけるには、そのためには給与所得控除を外さなければいけないのですけれども、そこまでサラリーマンが理解してくれるほど成熟した環境かどうかというのが問題で、その意味では、先程の委員のおっしゃるとおり、徴税努力はしていると。ただ、そんなに自営業者の所得に対してむちゃくちゃにいいかげんなことが行われているとも思わないので、個人的には、本当の問題は給与所得控除をやっていて法人成り等を通じて漏れている税収のところかなと。
ただそれは、だからといって捕捉は重要な問題ではないとは決して言えないわけで、だけど、そこまで理解した上で、本音としては給与所得控除というのはとりたい、とるべき、直すべきだと私は思います。
〇委員
今幾つかキーワードを出していただいたけれども、これからの議論で1つポイントになるのはやはり税額控除にするかどうかという議論ね。それからもう一つ、私など北欧で見てきた話としては、トランスファー・インカム、要するに福祉関係でいろいろ移転されているやつまでタックスベースに入れるかどうかですよ。端的に言えば生活保護みたいなやつね。住民税でいつも課税最低限と生活保護費か何かの位置づけがあったよね。あんなの全然、外国は気にしてないですよ。それを我々、今後も貫徹して気にするのかね。年金は払っておいても課税ベースに取り入れようという方法ですから、他のやつもどうするかとか、いろいろあると思います。
どうぞほかに。
〇委員
若干時間よろしいですか。もちろん簡潔にいたしますが。
〇委員
あまり長かったら2回に分けてください。今日はみんな学者がハッスルしているからね。これ、学会でないのだから(笑)。
〇委員
今日の例えば所得税、住民税に対する説明も実はほとんど給与所得を念頭に置いた説明に一貫しておりまして、控除にせよ、先ほどの階層別の負担についても。今後、金融所得が一体化してきたときにこれにどういう形で入っていくのか。それをここにあわせて見て初めて、本来我々議論しなければいけないので、給与所得だけで今少し議論するのは、特に階層別の負担でありますとか、そういうところは少し難しいのかなというのが私の率直なまず印象でございます。
それから、今の点を申しますと、実はこれは私の全く個人的な意見ですが、生活保護は、これは親族がちゃんと義務を負ったり、それから資産も徹底的に調べますし、働いていることを調べますから、これはそこまでやれば担税力なしということでいいのですが、ほかの現金給付は基本的に課税所得に算入して、そしてそれに対して、そのかわり所得控除、あるいは税額控除。もちろん、そこはいろいろ、所得、税額控除が場合によっては非課税だとか軽減税率がありますけれども、消費者主権がある程度確保されていて、しかもある程度きちんと調べて、もうこれは担税力なしというもの以外は、やはり基本的には私は課税ベースに現金給付なり現金支出というのは入れていったほうが、所得税の再分配効果をある程度考えれば、私はそのほうが望ましいと考えております。
それから給与所得控除に関して言いますと、おっしゃるとおり、実際積み上げてみると、勤務に関連した経費というのはそんなに積み上がるものではないということもそうでありますけれども、ただ、いろいろな役割がその中でということもあって、ここは、一番大事な点は、皆さん、あまり大したことないとおっしゃるかもしれないけれども、事業所得における家事関連費がどれだけきちんと、必要経費と家事関連費の間の控除できる、できないかちゃんとされているかどうかということがある程度証明されないと、これはちょっと難しいのかなという印象を私は持っております。
それからもう一つ、これは前にも申し上げたことがありましたけれども、今後もし、3兆円なり、どの程度の規模かわかりませんが、国税から地方税に税源移譲が行われれば、個人所得課税についてはむしろ地方と国の逆転も場合によっては起こり得るだろうと。そうなりますと、これは先ほどの委員の議論と関連いたしますけれども、やはり住民税の前年課税というのをこの機会に直してもらわないと。税源移譲されたかなり大きなところが、その年の所得ではなくて、前の年の所得にかけるというようなずれを伴えば、これは当然、公平感ですとか負担感というものが非常に不安定な状態になってしまうと私は思いますので、いい機会だと思います。私は、ぜひこの機会に地方税としての、独立税としての役割をきちんとされて、そして現年課税という形に移っていただくということをこの際あわせて、ぜひ税源移譲にあわせて考えてほしいと思います。これは強く希望しておきます。
〇委員
現年課税、税調でしょっちゅう出ている話ですよ。これ、できない最大の理由等々、ちょっと説明してくれますか。
〇事務局
会長ご指摘のとおり、過去の税調の答申でも、現年課税は基本的にやるべしと。ただし、いろいろな問題があるという答申だったと思います。なぜこれが実現しないかといいますと、まずは、先ほど申しましたように、所得税のほうで源泉徴収、年末徴収ということを例えば企業の方にやっていただいていると。これを住民税も現年で課税したときには同じ事務をやっていただくことになるわけですが、地方税の場合、それぞれの税率であるとか、非課税限度額とか、そういったものが地方ごとに異なることがあるということから、過去検討したけれども実現しなかったというのが事実でございます。
ただし、昨今、非常にIT技術が発達してきたので、そこは何とかなるのではないかというようなご意見もありまして、我々も、部内的にはいろいろな方から意見を伺ったりして検討は進めております。ただし、今でも本当に手書きでやっている方が少しはいらっしゃるようでございまして、そこをどうするかとか、なかなか結論がすぐには出せないと。ただ、おっしゃいましたように、住民税のほうが所得税と同じような基幹的な税になってくるときには、そういったものもどうするかというのは考えていくべき課題だと思っております。
〇委員
少しずつは話を進めているということだね。
〇委員
地方税事務所の人数ってどのぐらいで、国税庁とどのぐらいの差があるのですか。
〇委員
5万5,000人と8万人とか言ってますが、どうですか。
〇事務局
概数ですけれども、今おっしゃったように、都道府県で3万人弱、市町村は5万人強です。数字はまた確認しますけれども。ただ、特に資産課税のような評価とか、そういう特殊な仕事で相当人数とられているのは事実です。
〇委員
質問の趣旨は、多過ぎるとか少な過ぎるという感覚ですか。
〇委員
どのぐらいの効率性で仕事をやっているのかね。当たり前のことですけれども、今5万と3万で8万でしょう。
〇事務局
一応14年度の数字で申し上げますと、県の税務関係職員2万709人という調査結果になってますね。市町村では6万253人、合わせて8万962人。ちなみに国は、私の聞いている限りでは、5万6,466人と伺っております。
〇委員
徴税効率とかそういうのはどうなっているのか、総務省でそういうことをどういう形でチェックしていて、監督していると言ったら言い方変かもしれませんけれども、見ているのかというのは知りたいですね。
〇事務局
何で見るかということですけれども、普通よく言われますのは、100円の税金を集めるのに幾らかかっているかという話で比較するのですけれども、単純に比較しますと、確かに国のほうが…。例えば100円当たりで言いますと、県が1.98円で、市町村が3.06円、地方税平均で2.63円。国税は、これは私ども聞いている数字ですが、1.66円ということですので、金目で言うとあれですが、例えば同じような課税客体からとれる額というのは、例えば法人税と法人住民税を見ても、法人税のほうが大きいわけですね。1件当たり非常に小ぶりな、自動車税にしても、税額が小さい税が地方に多いということとか、それから、さっき申しましたように、1億8,000万筆の土地を全部評価して課税しているとか、そのような内容の違いがあるので、必ずしも単純に比較できない。
ただ1点だけ申し上げれば、この過去の推移といいますか、地方税、昔と比べますと、今の徴税コストはかなり下がってきているのは事実です。
〇委員
主税局長、何かある? 昔の経験から。
〇事務局
新たな数字は新たなデータで国税庁からまた報告していただきたいと思います。ただ一般的に言えますのは、今徴税コストの話が出ましたけれども、税収がどのように振れるかによって、つまり、かかっているコストを税収で割っているものですから、それだけの絶対額で見ますと、非常にわかりやすく言いますと、60兆の税収を国税として稼げたときと、今40兆のときと、これは3分の2になっているわけですから、国税の職員の頭数はほとんど変わってませんので、割り算しますと非常に大きく出てくると。だから、私は一つの目安として見ていただければいいと思いますけれども。
〇委員
わかりました。どうぞ。
〇委員
一わたり学者の先生方のお話が終わったのでね。あれ、聞いていると、とっても我々太刀打ちできないからね。包括的な議論をお聞きして、大筋そんなに食い違った話があったとは思わん程度の印象だったのですよ。私は、個別具体的な所得税改革をやる場合の目玉になるようなことはどういうことかという戦術論を言いたいのです。
どういうことかというと、ここにたまたま用意されている、22ページ、「家族に関する控除の構造の見直し(3つの考え方)」とあるでしょう。ここは、どうせ急激なことを全般的にはできないけれども、ここで圧倒的に、第3の考え方なのだ、ここは。我々、1月以来、大勉強会をやって、いろいろな印象を我々持っているし、自分の経験も持っているけれども、何が何といったって、高齢者に我々手厚くいろいろな手当をやったと。私もその高齢者の一人だから大体わかるけどね。ところが、若い、子育てをやっている、本当に苦労している夫婦に対する配分というのは、それに比べれば相対的に全く少ないと一般的に言われている。そういうことをおっしゃる学者もいらっしゃるから、そうなのでしょう、統計的にも。
これは大逆転するぐらいの決意を示して、そのために、この税額控除というのを、手当論もあるからいろいろ議論は分かれていいのですよ。あるけれども、ここに、高齢者中心の手厚い福祉から、子育てに集中的に金を回すと。どこからひねり出すか、これはいろいろな知恵があるわけで、例えば控除の話だって、どれをやったって、いろいろ抵抗あるのですよ。各論やれば。
しかし、いろいろ言うけれども、集中的に、浮いた金は全部児童にいくのだよと、ちっとは我慢してくれよということだったら、かなり反対論も、そうか、それじゃやっぱりということになってくれないかと。ちょっと甘いかもしれないけどね。つまり、ここに相当の力を注ぐと。そのかわり、ほか全部ぶった切ると。それで初めて、みんながこれは納得できるなと。財務省と税調はむやみやたらと金をとるだけのことをやっているのではないということを感覚的にわかってもらうのに一番いい材料ではないかという気がするのですよね。
ただ、福祉政策論でいろんな考え方があると思うし、この点についての専門家のコメントを聞きたいのだけれども、とにかく何かそういうキラッとした、乱暴なことをやって、そのかわりそれに見合うだけの乱暴な改正もやってしまうと。だけど、できないところはしようがないから少しずつやると。現実にはね。という考え方、いかがでしょうかということを言いたい。
〇委員
何かメンションされたよ。
〇委員
ですから、そこのところは、もし今委員がおっしゃったように、そこを非常に手厚くする、場合によっては第1子38万、第2子、増やすとかなんか、そういうアイデアも実はあるのはあるのですよ。だけど、さっき言ったように、一方で給付で、児童手当なんかでそちらの面倒を主として見ようということになってしまうと、じゃ2つ合わせ技でものすごく重視しているというメッセージを送るのか。それとも、仕組みとしては給付としてやって、逆に税制のほうは、そこのところはまさに最低生活費みたいなものでしか考えないという発想。取り方としてはそのように分けないと、あちこちでみんなやり出して、それがいいかというと、どうもそれはお互いに調整があまりとれないような気がするのですけどね。
〇委員
この三位一体も税源移譲もそうですが、基本的目的というのは財政再建だと僕は思ってまして、ですから、所得税から個人住民税に税源を移譲するなんていう余裕が所得税のほうにあるのかというとないわけで、だから、それはそれで、所得税は所得税で残して、個人住民税は個人住民税で必要な分だけどんどん上げていくというのが僕は方向性だと思うのですよ。だから、この2つの中でこっちをこっちに移すということに限定して考えるというのは非常に、前も言いましたけれども、貧乏人のやりとりであって、全然生産性のない話ではないかと思います。
それで、人的控除をずうっと眺めていくと、所得税と個人住民税、みんな同じ項目で、ちょっとずつ住民税のほうが目減りしているというか、全く根拠が、何で2万円こっちが少ないのかというのはよくわからないのですが、例えば個人住民税のほうは、あらゆる控除をなくしてしまうとどのぐらいの税収になるのかというのをちょっと知りたいのと、あとは29ページの所得税、これに見合う個人住民税はどの表というのを見てみたいなあと思います。
〇委員
これはいずれ出していただいて、また議論しましょう。
〇事務局
どこまでできるか含めて、ちょっとお時間いただいて。
〇委員
お願いします。
〇委員
あとついでにもう一つ、28ページのブラケットのあれですけれども、もし日本をイギリス並みにして、税率違いますけれども、10%を1割ぐらいにして、20%というのを8割ぐらいにすると、どのぐらい税収増えるのかというのを知りたいなあと。というのは、上のほうのあれはやらなくていいですけれども、イギリスと日本、まあ似たようなものですから、日本だけぜいたくしているのはいけないと思うのです。
〇委員
一課長、頭の体操も含めて、今の質問の、計算してみてよ。僕はすごい数字が出てくると思うけどね。
〇事務局
おそらく数兆以上の増税になろうと思います。計算いたしますが、この委員会の資料としてお出しするとプレスにも出す格好になりますので、計算をして、次回ご報告いたします。
〇委員
こそっとみんなにということで(笑)。
〇委員
それから今の委員の話にちょっと私は個人的感想を乗っけると、住民税というのは所得税のミニ版なのだよね。だから、異なる性格と言いつつも、何やらみんな同じ控除で何で配特まで作るか、何で寡婦控除まで作るか、等々、全部乗っけてますけどね。僕は、基本的にもう基礎控除ぐらいにして、全部なくして広くしたほうが、住民税としてのまさに地方自治を語るにふさわしいと彼は思ったのではないでしょうか。そういう問題意識はありますか。
〇事務局
住民税に関しては、まずは、同じ控除をやるときは必ず金額を少なくして、負担する人の割合を増やしているというのがあります。それから所得税でやっているすべての控除をやっているかというと、できるだけ政策的な控除は入れないようにと。例えば寄附金控除なんかも、相当要件が違ってきたりしてます。我々としても、人的控除は今そろってますが、これも違えるということはあり得るし、その他の生保控除とか損保控除とか、そんなのは何で住民税でやらなければいけないのだという問題意識は持っております。
〇委員
違えるよりもなくしてしまえと言っているのだよ、僕の意見は。
〇事務局
我々がなくしたいからと言ってすぐになくせるようなものでないことは事実ですけれども、方向としては、今後もしというか、今度の税源移譲等を通じまして、住民税のほうが、例えば10%なり何なりの一定の税率になるということになりますと、所得があれば、1割、地方団体に払うというような感覚で税を納めていただくという意味では、いろんなそういう各種おっしゃったような控除がないということも考え得るのではないだろうかと私などは実は個人的には考えておりますので、そのようなことも含めていろいろとご議論いただければよろしいのではないだろうかと思っております。
〇委員
関連する点ですけれども、90年代から今までというのはかなり経済の大きな変化の時期でありまして、1ページ目のところを見ましても、構造的にいろいろな大きな変化が起こって、税収が減ってきている面というのがあると思うので、特に利子所得とか、それからそのほかの金融所得に関しても、おそらく相当、ここ、低金利政策が続いて大きな影響があったと思うのですね。この辺のインパクトというのは一回さらっておいて、どのぐらいそれが大きくまた環境が変化してきたときに変わっていくのかという見通しというか、それをちょっとつけておきたいなという感じが1ついたします。やはり財政再建ということを考えた場合に、2010年初頭ということを考えた場合に、この大きな構造変化というのがまた少し今変わっていったときに、どのように所得環境が変わっていくのかということが1つ。
あともう一つ気にしているのは、さっき労働分配率の話がありましたけれども、90年代の労働分配率の推移と、また今ちょっと変わってきていると。一方で構造的にどんどん非正規化しているという動きもあって、そこの循環的な部分と構造的な部分でどのような見通しをとっておけばいいのか。この上で、別にプライマリー・バランスを回復するだけが個人所得税を回復すればいいという考え方ではないわけですけれども、あくまで参考として、そういったところについて少し念頭に置いて今後議論したいなと思います。
〇委員
ありがとうございました。貴重なご意見だと思います。
〇委員
ごく簡単な質問です。事務局のほうからもありましたが、給与所得控除がかなり比率が大きいのではないかという趣旨の、一部の委員の方からもそういう同じ内容の発言があったと思うのですが、今数字を聞かされれば、確かに、216兆円に対して61兆円ですか、かなり大きいような気はいたしますが、一方で、8ページのところに、昭和48年のケースとして当時の定額控除だとか定率控除、限度額という例が出てますが、この当時の給与収入の額と、それに対する所得控除額がどの程度だったのかですね。その違いをちょっと知りたいなと思ってね。高度成長期と現在では状況が違いますから、この辺の率が違っても当然かもしれませんが、一応参考として聞いておきたいと思います。
〇委員
じゃ後で用意していただけますか。これは当時非常に、重役減税だとか言われて評判悪かったときですよね。青天井で。そういう意味で下げたのでしょうけれども、今おっしゃるにようなバックグラウンドのデータが必要かもしれませんから、何かありましたら。
大分時間なくなってきましたけれども、どうぞ、まだご発言ない方。
〇委員
全く原則論で、学者さんの話と関係ないところで、ざっくりした話で恐縮ですけれども、私は、先ほどの話もありましたけれども、やはり高度成長期の時期というのは歳入が自然増収等で非常に増えてきて、その余裕の中でいろんな形の控除等ができ上がってきただろうと思うのですけれども、非常に歳入が難しくなって苦しい時期に入って欠陥が出てきているような時期と今現在考えると、さっき委員からのご意見もありましたけれども、あまり歳出の領域に入ったような控除の部分でどういう形にするか、少子・高齢化をどう手当てするかという形のほうはできるだけ歳出のほうに任せて、社会保障等の経費も非常に増えてますので、歳入のほうは現在の歳出・歳入構造、プライマリー・バランスのところをできるだけ戻していくというところを原則にして、簡素な税制ということを前提に置いて議論していくことがよろしいのではないだろうかと。あまり細かいところへ入っていくと非常に難しい議論になっていきますので、できるだけそういう前提で議論したいなと思っております。それだけです。
〇委員
ありがとうございました。先ほどもそのようなご意見が出てましたが。ほかにいかがでしょうか。――よろしゅうございますか。
今日はある意味で、所得税改革をやろうという、言うなれば決意表明も含めてさまざまな論点が出ましたので大分議論が進んだと思うし、これからやらなければいけない問題は非常に難しいなという印象をお持ちになったと思います。個人所得課税、どこまで年度改正に盛り込めるかはこれから議論になりますが、大きく論点を整理したという意味で、今日は非常に成果だったと思います。
あと、特にご意見がなければ、次回以降の考えております予定を申し上げて散会にしたいと思いますが、所得税の後は消費課税ですよね。これは今ある消費税プラス酒税であるとか、環境税も含め等々、個別消費税の世界で議論する仕事が残っております。これを12日、来週の火曜日にやりたいと思ってます。あとは法人税、企業課税、国際課税、それから資産課税等、そこには金融所得課税の一元化も入りますが、一わたり10月は週2回ペースで基本的に進んでおりますので、かなり主要な税目の検討は終えると思いますので、当然総会もはさみますけれども、11月に入りましたら、まとめる方向で議論は進めていきたいと考えております。
そこで、仮置き案という形で審議スケジュールの日程表を11月分について一応作っておきましたので、これをご参考にしていただきたいと思います。大体この時間帯とこのような組み合わせで議論は行われるし、それから11月の後半になりますと、おそらく起草会合というのを開かなければいけなくて、これは基礎問題小委員会の委員の方になってもらうというのが例年のことであります。そうなると思いますが、24日、25日は予備日ではなくて、おそらく開かれるだろうということでありますので、2時~4時を中心にしてテイクノートしておいてください。この日程表をご参考まで。できれば11月いっぱいで今年も年度改正の答申は税調としてまとめて、12月はゆっくりしたいと、こういう話ですね。
それでは、これで終わりますが、何かございますか。どうぞ、まだ時間ございますから。
〇委員
2~3分時間ください。来週の12日に、今会長おっしゃったみたいに、若干環境税も顔を出す程度の議論をやりたいとおっしゃったでしょう。僕はちょうどその日出られないものだから、ここでちょっと基本的に僕の考え方を、これからもやることがあると思うけれども、述べさせてもらいたいのです。
環境税論議というのは長い長い経過があって今日に至っているのだけれども、最近とにかく、ロシアが批准するということがほぼ確実になった。これはすべて全部計算づく。人類の温暖化、全然関係ない。あのロシアの判断はね。それは見事なもので、それで構わないけれども、とにかくそれで批准する。おそらく政府は、今の地球温暖化対策推進大綱というのを計画に練り直すために、来年3月末ぐらいまでにそれを決めて閣議決定すると思うのですね。そこで初めて具体的な行動の計画が全部並ぶわけだ。今それを全部関係各省見越していろんな政策を、これをやれば一番いいと思っていることを出しつつあるのですよ。ないしは練りつつあるわけだ。
そのうちで突出して出ているのが、環境省の諸君が言っている環境税というのが出ているわけ。これは全然切り札でも何でもない話だと僕は思ってますからね。それはそれでいいのだけれども、環境税だけが議論の対象になるのでは全くなくて、ほかにあった省エネからたくさんあるわけだ、実は。具体的に、役所の間の政策連携というのは今大流行の現象なのよ。国交省、これが車を差配しているのですよ。経産省は省エネ。車のほうは国交省。この国交省と経産省が組んで、あと10日ぐらいしたら、新聞に一斉に出ると思うけれども、こういうやり方がありますよと。つまり、ターゲットは民生、運輸なのですよ。ここだけオーバーしているのだ、実は。あの目標に対して。ほかは全部そこそこにいっているのです。ここをどうするかで、税金だとか出ているわけだ。
僕の感じでは、間もなくそういうことで、みんなの前で、なるほどこういう選択があるのかと。税金だけが本命でも何でもないなということはいずれすぐわかるのですよ。こんなことは議論すればね。そうなるので、来週12日がそうなりませんからね。絶対に。準備相整わないから、それを本格的に議論するのはまだ早い、とっても早いということがまず第一ですね。
それから今の図式は、皆さんだれが見てもわかると思うけれども、環境派の人たちが言っている環境税という旗頭が1つあって、ほかにそれに対抗する形で、あれでなくてこれだという形で対立する形で政策体系を今作ろうとしているわけだ。大まじめで。そこで、今それはまだ我々の目の前にないから比較検討できない、政策検討は、選択はできないという状況なのですね。今そういうことです。
それから2番目に、短く、私が環境税をどう考えているかということを申し上げると、去年の8月、環境省がたくさんの専門家に集まってもらって作った案があるのですよ。これが余りにもひどかったから、完全にぶったたかれたわけだ。ほとんど死んでしまったところを、ロシア批准というのでまたふっと、もう一回やってみるかという動きになっているだけなのです、今の状況は間違いなく。
それで、これは線香花火に近いのだけれども、今はしようがないから、あまり評判悪かったから、やり方少し変えようかとか、いろいろやってますよね。話、全部聞いてますよ。その意図もねらいも全部。しかし、これはまことに泥縄的で、本質的なことに全くならないの。とにかく地球温暖化防止という大義名分を掲げれば1兆円の金がたちどころに集まるなんてことは冗談でないと、そんなことは。しかも内容が、これが温暖化を抑制するための手段になり得るかといったら、ならないのだ。全部分析してみれば。だから困っているのだ、提案している環境省は。立ち往生しているのですよ、今実際は。それは本当にそうなんですよ。
それで、私は、おそらく今年中にこんな関連のことがここでまとまるわけないし、俎上に乗ることはないと思うけれども、来年、本当にロシアが批准して、京都議定書が発効して、どうするかという段取りになったときに、もう一度装いを新たにした議論が行わざるを得ないだろうと思っているのですね。
これはやり方2つしかないのですよ。1つは、めちゃくちゃな高い税率を設定する。ごくまじめな意味で。ものすごい税収になります。兆台のえらい金になるわけね。そういうことをやっても、しかし、これは全く現実味がない、この話は。もう一つは、薄く広くで構わないから、あれは目的税と言っているわけだ。環境省のお役人は、温暖化を機にして、膨大な補助金体系を持った巨大な官庁に生まれ変わろうとしているわけだ。これはもう役人はそう思っているわけ。音頭をとっている学者その他はまた別。これは良心的にやっているわけだから。この合体でやっているわけだ、実態は。
それで、僕は、もし環境省の諸君がまじめに考えるのだったら、薄く広くで構わないから、そのかわり集まった金は一般会計に全部入れてくれと。そのかわり1割2割はこっちによこせよという話をやるのなら、まだもうちょっと合理性があるかもしれない。どっちにしても、ああいう効果ないのだから。これは切り札でも何でもないのだから。ただ、全く除外することもどうかなという程度の話なのですよ。と思ってますのでね。
今日大体言いたいこと全部言ったから(笑)、チャンスがあればまた。
〇委員
そういうわけで、今の現状を分析いただきましたけれども、これまた違った方向からの現状分析も山ほどあるわけでありまして、とりあえず来週は事務局にお願いして、今どういう形でどんな話が出ているかというのをごく客観的に、イエス、ノーを含めて整理いただいて、最初の段階としての情報を提供いただこうと。委員のおっしゃるとおり、まだ日は高い、本格的議論というのはこれからだと思いますが、ただ、環境税とついて世の中いろいろ議論される中で、税調が完全に無視して何もしないというのはこれまたおかしな話でありますから、我々はそれはそれとしてまともに受けて、その内容を検討し、主要な論点を整理し判断するという義務はあろうかと思います。ここにもおそらく環境税支持と支持でないというのが分かれてくると思いますが、真っ向からいろいろ議論すると、歩み寄れるのかどうかわかりませんけれども、それなりに論点は明らかになってくると思いますから、そういうわけで、来週はまだそれほどいきませんから、どうぞゆっくり安心してお休みください。
ちょうど時間になりました。それでは、来週。今日は本当にありがとうございました。非常に有益な議論だったと思います。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。