第19回基礎問題小委員会 議事録
平成16年9月28日開催
〇委員
それでは、時間になりましたので、19回目になりますが、基礎問題小委員会、開催いたしたいと思います。
冒頭に、財務省と総務省、大臣官房の審議官、これは人事交流でおのおの、もとの分掌ではなくて、他のほうに行っているようでありますが、ご出席いただいております。三位一体を含め、国と地方の財政を一応相互から見ていこうという形でご出席いただいておりますので、お時間があれば、ぜひ続けてご出席ください。よろしくお願いいたします。
それでは、先日申し上げましたように、これから秋、それから暮れにかけまして本格的に議論したいと思いますが、個別の税制、つまり、所得税、消費税等々に入る前に、やはり一般の財政、これも国と地方に分けまして、財政の現状と課題を整理していただく作業と、それから委員の方から折に触れて問題提起をしていただきたいということもありまして、今日は委員のほうから、財政再建の進め方につきまして後ほど問題を提起していただくという2つのテーマでいきたいと思っています。
では、最初、国の税、財政の現状と課題につきまして、調査課長のほうからまずご説明をください。
〇事務局
主税局の調査課長でございます。
最初に、国のほうの財政、それから税制の状況につきまして、お手元の資料19-1という冊子に基づきまして簡単にお話をさせていただきます。多少基礎的な資料も入っておりまして恐縮ですけれども、一応今の状況を確認するということでございます。
まず、ページをおめくりいただいて、7月末に15年度の一般会計の税収の決算が出ましたので、これを最初にご報告いたします。1ページをご覧いただきますと、平成15年度の決算額、43兆2,824億円ということで、前年に比べて5,500億の減ということでございます。
この税収の推移をご覧いただきますと、平成12年、これは郵便貯金の満期が集中して来たという特殊要因がありまして、50兆ということで少し増えたのですけれども、以降ずうっと減ってきておりまして、ただ、対前年の増減額をご覧いただきますと、2兆7,000億、4兆1,000億と減ってきたのが、15年度は5,500億の減にとどまっていまして、少しこのまま、今度マイナスからプラスに転じていってくれればいいなと思っております。ただ、当初の予算との比較では約1兆5,000億増えているということでございます。
1ページおめくりいただいて2ページですが、税目別の決算額の状況ですけれども、一番プラスになったのが法人税でございまして、対前年で5,900億のプラス、予算に比べて約1兆円増えておりまして、これは企業収益の改善を反映したものと。それに絡んで配当所得が増えたということがありまして、上の所得税が予算に比べて1,000億の増となっております。ただ、前年度の比較ではまだ約9,000億弱のマイナスということです。それから消費税が前年よりちょっと下回る額で、予算に対しては2,200億のプラスと、そんな状況でございます。
それから3ページはそれぞれの個別の細かい資料ですが、省略をさせていただきます。
ということで、税収はずうっと下がってきたのですが、少し下げどまりになってきているかなということでございます。
続きまして、「わが国財政の現状と課題」ということで、予算全体の話を少しさせていただきます。4ページをご覧いただきますと、おなじみの一般会計の歳出、歳入の内訳ですけれども、82兆1,000億、16年度でございますが、歳出をご覧いただきますと、社会保障が19兆8,000億、国債費が17兆6,000億、地方交付税交付金等が16兆5,000億ということで、この3つの経費で全体の約3分の2を占めているという格好になっております。
一方で一般会計の歳入のほうですが、租税及び印紙収入は、「わずかに」と書かせていただいたのですが、半分。残りのうち37兆円程度が公債金収入ということで、万が一、公債金収入が半分を超えるということになりますと、我々、公債依存度ではなく、むしろ公債が主な収入になって、税収依存度と言わなければいけなくなるのではないかということも言っているわけですが、そうならないようにきちんと公債を減らしていかなければいけないということだと思います。
それから5ページをおめくりいただきますと、俗に我々、ワニグラフと呼んでおりますけれども、歳出総額と一般会計税収の推移でございます。平成2年に税収が60兆でピークの後、徐々に減ってきております。税収の推移については、後ほど少し詳しくご説明させていただきます。この平成2年が、歳出に占める税収の割合、一番下の細長い表ですが、86.8%と約9割あったわけですけれども、それが歳出のほうがだんだん増え、特に平成9年、1997年ですが、アジア通貨危機ですとか、それから山一、北拓の破綻などの金融危機をきっかけとして景気が非常に悪化してきまして、そのために景気対策を打ったと。当初予算では15兆だった国債が、補正で増発して34兆円。下の公債発行額、上段が借換で、下段の黒い部分が新規債ですが、平成10年に34兆円ということで30兆円を突破して、その後ずっと30兆円台で推移しているというような状況でございます。それに伴って、歳出と税収のギャップが広がってきているという状況でございます。それで、16年度は50.8%ということで、税収の占める割合が約半分ということになっている。
6ページでございますけれども、「財政赤字の問題点」を簡単に整理してあります。財政赤字が累増しますと財政の硬直化を招いて、それが効率的な資源配分を阻害する、あるいは制度の維持可能性への疑問が出てきて、将来不安から消費が減少する、非ケインズ効果と言われていますけれども、あるいは将来、クラウディングアウト、金利上昇のおそれもあるということで、経済へも影響が懸念されるということでございます。
7ページは国際比較ですが、左側が財政収支、右側が債務残高で、いずれもGDP比でございまして、90年代、欧米諸国はずっと財政を立て直してきて、財政収支は減少し、債務残高も横ばいですけれども、日本のみが悪化してきているという状況でございます。
8ページをご覧いただきますと、諸外国で財政再建へ向けてどんなことをしてきたかを整理してあります。歳出面、歳入面、両方あるわけですけれども、歳出面での取り組みにつきましては、大きく2つあると思います。
1つは、例えばアメリカのキャップ制のように、歳出に一定の枠をはめる、伸び率に上限を設けるというやり方で、イギリスでは向こう3年間の公共支出の伸び率上限の設定、これは93年、メージャーのときにトータルコントロールという手法として設けられておりますし、あるいはフランスでも、94年に財政5カ年計画法というのを作りまして、歳出伸び率を物価上昇率以下に抑制するというような、歳出の伸びに枠をはめるというやり方が1つ。
それからもう一つが、アメリカで言えばpay-as-you-go、財源なくして増額措置なしということで、新たな施策をやるには財源を持ってこいというようなやり方を入れております。これは例えばドイツではモラトリアム原則ということで、新規措置は同等の既存措置の削減を条件とする。あるいはイタリアで新規の要求に当たっての財源確保義務。オブリコ・コペルツーラとイタリア語で言うそうですけれども、そういうものを入れている。あるいはカナダでもその優先度の低いプログラムを廃止して、高いほうに向けるということをやっております。
日本でも、例えばキャップみたいな話としては、公共投資について概算要求基準段階から前年度何%減というような枠をはめたり、あるいは裁量的経費も上限を作ったり、あるいはもう一方のpay-as-you-goのようなものとしては、義務的経費を削減したときには、それを公共投資や裁量に回して要望ができるということを今年から、17年度からやっておりますけれども、そのようにしてスクラップ&ビルドを図るということで、各国共通して歳出面ではいろいろそのような工夫をして取り組んできている。
一方、歳入面では、税収について増税をやってきているわけですけれども、アメリカでは所得税、法人税、遺産税等の増税を、これは90年代にクリントン政権、あるいは前のブッシュ政権のもとでやってきております。それからヨーロッパ諸国、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアは、一般的には付加価値税の税率を引き上げたり、あるいはそのほかにも、イギリスですと、個別間接税、炭化水素油税ですとかたばこ税、あるいはドイツですと連帯付加税をドイツ統一のときに作ったり、環境関連税制として電気税を創設したりというような措置、あるいはフランスも一般社会税を作ったりということで、いろいろ税制面でも手当てしてきているということであります。
9ページですが、その中でアメリカの取り組みを少し書いてあります。アメリカは1990年ごろ、前のブッシュ、ブッシュ父の時代に財政が大分悪化してきまして、1992年に財政赤字が2,900億ドルという状況だったのですが、93年からクリントン政権になりまして、OBRA93という包括財政調整法というのを作りまして、ずっと削減をしてきております。それで長期金利が下がっていき、経済成長率も回復するというような流れになっておるわけでございます。
それから10ページですけれども、これももうご存じのとおり、EU、ヨーロッパ諸国では、通貨統合のためにマーストリヒト条約ができまして、原則として財政赤字やGDPの3%、総債務残高は60%を超えないこと、ということが決められて、ご覧のように、大体そこに収斂するような形で推移してきているということでございます。イタリアだけちょっとまだ債務残高が高いのですけれども、大体そこに収斂してきている。
それから11ページ、日本の取り組みですけれども、日本は2010年代初頭における基礎的財政収支(プライマリー・バランス)黒字化を目指すということで、「改革と展望」で閣議決定をされておりまして、ご覧いただきますと、そこにありますように、基礎的財政収支は、14年が△5.6%だったのが△5.4%、△4.6%と、ここ2年ほど回復をしてきておりまして、このまま、今後ともこの取り組みが必要だということでございます。
12ページが一般会計について基礎的財政収支を見たものでございまして、一般会計は、16年度ですと19兆円の赤字ということになっております。この規模はかなり大きなものでございまして、例えば社会保障費が全体で19兆円ですし、あるいは公共事業、文教、防衛足してもやはり19兆円ということで、これをゼロにするというのは、歳出と比べてみると相当の大きさかなということだと思います。
13ページですが、しからば歳出面でこれまでどんな取り組みをしてきたのかということで、昭和40年以降、10年ごとにそれぞれの歳出の推移を追っているものでございます。平成7年度以降の16年度までの9年間を見ますと、国債費、それから社会保障費、交付税等は増えているのですけれども、その他のものは、特に公共事業などは大幅に減らしてきております。そういうことで取り組みはしているのですが、まだなかなか前途多難ということであります。
それで特に今後の要素として、14ページをご覧いただきますと、社会保障費の増大ということがありまして、これもご覧のように、高齢化人口が現在大体、2000年が17%程度ですけれども、2025年には28%、2050年には35%ぐらいに達する。それに伴いまして、現行制度を前提としますと、社会保障給付費が、2000年度、78兆円の給付が、2025年には152兆円に膨らむという厚生労働省の試算、推計が出ております。この状態ですと、(注)2に書いてありますけれども、その場合の国民負担率が約56%程度ということで5割を超えるような形になっていくので、これに対して何らかの対応が必要だなということがございます。
それから15ページをご覧いただきますと、もう一つの要因として国債費がありまして、国債費の内訳、今16年度末が、普通国債の残高が483兆円ですけれども、左の四角のところですが、ちょうど半分だったのが平成8年でございまして、245兆円の国債残高でございました。
ところが、利子及割引料のところをご覧いただきますと、むしろ16年度のほうが減っておるわけです。8年度10兆だったのが今8兆7,000億でございまして、これは右にありますような低金利が幸いしまして、非常に利払費が安く済んでいるということですが、逆に言うと、これが増え出すと、長期金利が上がり出すと国債費に非常なプレッシャーがかかってまいりまして、その下に書いてありますように、1%上昇しますと、翌年に、これは来年増えたとしてということですが、1兆2,000億、2年後に2兆3,000億、3年後に3兆7,000億。今、国債の平均償還年限が約5年ですので、1%1回上がると、それが順繰りに5年ぐらいかけてじわじわと効いてくるというような状況でございまして、国債費の圧力というのがあると。
16ページはその参考で、今金融機関が、先ほどの平成9年の金融危機以降10年から経済が少し低迷してきまして、貸し渋りという事態も起こってきて、ご覧いただきますように、貸付残高がどんどん減る一方で、国債の保有額を銀行がどんどん増やしているということで、これが逆に振れたときに国債マーケットへの影響ということも懸念されるということでございます。
その次に税制ですけれども、17ページをご覧いただきますと、「一般会計税収の推移」ですが、平成2年の60兆をピークに少しずつ下がってきております。特に今は消費税と法人税が大体同じぐらいという状況でございます。
18ページをご覧いただきますと、これは所得・消費・資産ということで分けてみたものであります。ここに絶対額で表示してありますけれども、割合で見ますと、平成2年は、法人所得課税と個人所得課税合わせて65兆7,000億で全体の約7割を占めていたのですが、今は法人税と所得税を合わせて38兆円程度で約半分ということで、むしろ消費課税のウェイトが高まってきている。これは消費税の導入及びその引上げの税率が上がってきた効果だということでございます。
それから19ページで少し税収の動きをご説明させていただきますと、過去、1994年、平成6年から特別減税というのを行いまして、ご覧いただきますと、93年に54兆だった税収が94年に51兆に減っておりまして、これは経済の景気の影響もあると思いますが、この減税というのがある程度効いているのかなという気もいたします。
その後、それぞれの減税が制度減税と特別減税に分割されて続いておりまして、平成9年にこの特別減税が廃止されて消費税の税率が引き上がったということで、53.9兆円ということでちょっと税収が増えまして、その後、ちょうどこの年に山一、北拓の破綻で経済が悪化して、98年は49兆円ということで税収が落ち込みましたが、一方で特別減税も行ってきているということで、これはなかなかぴったりはいきませんけれども、この経済の動きと、それから制度改正の動きが少しリンクしながら見てとれるのかなという資料でございます。
20ページでございますが、そこでこれをもう少し試算的に、中期的な税収源とその主な要因というのを分析してみました。
ちょっと21ページをご覧いただきますと、やはり平成9年というのが経済の一つの屈折点というか、ターニングポイントと見られるのではないか。と申しますのは、名目GDPですとか、あるいは利子、土地、株といったもの、特に利子、土地、株といったバブル的なものが大体平成9年までにほぼ下がって、落ちついて、平成9年以降は大体横ばいになっているということも見ますと、それからもう一つは、平成9年、先ほどの19ページをご覧いただきますと、税制改正の影響も、ちょうど平成9年は消費税の引上げによる増収の2.6兆円と、それから制度減税の2.4兆円がチャラになるということで、平成9年の税収というのは税制改正の影響もあまりなくてと考えますと、20ページですけれども、平成2年から9年までの6兆2,000億の減というのが主にバブルに起因した一時的な増収の剥落と言えるのではないか。
ちなみに、利子に係る所得税とかが約4兆円、この2年から9年の間に落ちておりますし、それから土地に係る所得税も、平成2年から平成9年の間に約2兆円落ちている。そういうことから見ても、大体6兆円というのがバブル的なものだったのかなあと。
それで、平成9年から16年までの減収12兆を分析してみますと、税制改正によるものが7.6兆円、経済要因による減収が4.6兆円と試算されます。この7.6というのは、(注)にありますように、単純に税制改正による増減収額を合計したものでございます。したがって、これは一つの試算としてざっくり見ますと、平成2年から平成16年まで、6.2と12.2で約18兆円、税収が落ちたわけですけれども、バブル的なもののはげたものがそのうちの約3分の1、それから税制改正によるものが3分の1強、それから経済要因による景気の停滞による分が約3分の1弱と要因分析できるのかなということでございます。
それから22ページですけれども、国民負担率と財政赤字ということで、これも少しロングタームでとっております。1955年、昭和30年から1975年、昭和50年ぐらいまでをご覧いただきますと、国民負担率のうち租税負担率は大体18~19%で、若干でこぼこありますが、平均するとそういう水準で推移しておりまして、この時代は国民負担率は社会保障負担率が徐々に上がる分少しずつ上がっていったりということで、この時代は減税を行いまして、大体租税負担が18~19%になるような、結果的にはそういう水準で推移してきておりました。
ところが、昭和50年から1990年までの期間を見ますと、この期間は、ちょうど昭和50年前後にオイルショックがあり、あるいは世界から、機関車論ということで、財政出動を日本も求められたり、そういう時期と重なっておりまして、積極財政、社会保障もやろう、公共事業もやろうということで少し拡張的な財政になってきまして、自然増収を取り込みながら租税負担率も上がっていったという時期に当たると思われます。
それから1990年から現在に至るプロセスが、今度は景気の低迷とか、あるいは税収、減税の効果ということで租税負担率が徐々に低下してきておりまして、一方で社会保障負担率は高齢化の進展に伴って上昇してきて、財政赤字がその後拡大しているという流れでございまして、今現在、租税負担率が35.5%、財政赤字も入れますと45%という水準でございます。
23ページをご覧いただきますと、今度は租税負担を資産税、消費課税、法人、個人と分けております。租税負担率が今日本は21%ですけれども、まず個人所得課税をご覧いただきますと、大体どこの国も10~15%のゾーンですけれども、日本は6%ということで、個人所得課税が半分ぐらいと言えるのかなと。それから消費課税については、アメリカは消費課税は低いのですけれども、ヨーロッパ諸国が大体15%程度に対して日本が7%で、これも約半分ぐらいということで、個人所得課税、消費課税が諸外国に比べると低いのかなということでございます。
それから24ページですが、これはOECD諸国で少したくさんの国と比べてみたのですけれども、これで見ても、国民負担率が日本は下から3番目ということでございます。
大体これが客観的ないろいろなデータですが、25ページ、26ページに、今まで政府税調でいただいている答申の整理をしておりまして、25ページが平成15年の「少子・高齢社会における税制のあり方」ということで、「あるべき税制の基本的視点」として3つ、将来にわたる安心をもたらす税制、それから若者から高齢者までがともに支える税制、個人や企業の活力を引き出す税制という3つの視点が大事であると。「税制改革の方向性」としては、個人所得課税の基幹税としての機能を回復する、それから消費税の役割を高めていくことが基本であるということをいただいております。
それから26ページが今年の6月にまとめていただいた「わが国経済社会の構造変化の『実像』について」でございまして、これもこの10のキーファクトを眺めてみますと、先ほどの税制改革の3つの視点があったわけですけれども、例えば人口減少社会とか、右肩上がり経済の終焉、あるいは一番下の財政状況というようなことを考えると、やはり将来にわたる安心というのが大事なのかなあと見えてきたり、あるいは高齢化とか右肩上がりの終焉、あるいは家族の形の多様化というところをとらまえると、若者から高齢者までともに支える税制というのが見えてきたり、あるいは日本的な雇用環境のゆらぎですとか、価値観・ライフスタイルの多様化、あるいはグローバル化ということを見ますと、活力のある税制が大事だなということが見えてきたり、やはりこのあたりがつながってくるのかなと思います。これから税制改正の議論をしていく際にも、こういう現在の「実像」の内容というのも踏まえながらやっていくことが必要だと考えております。
以上です。
〇委員
懐かしい図がまた出てきましたけれども、もう一回おさらいも含めて勉強し直しましょう。
では、企画課長、地方のほうをお願いします。
〇事務局
それでは、基礎小19-2の資料で、地方の税財政関係の説明を申し上げます。
最初に、この資料の3枚ほどめくっていただきまして、1ページでございます。まずは地方税収の見通し、推移でございますけれども、決算見通しがほぼ固まりましたのでご説明いたします。上の図で推移がありますが、下の表のほうで申し上げますと、15年度は32兆1,725億円という地方財政計画に対して決算が、何というか、36億円の誤差でございまして、32億1,761億円ということで、結果として非常に正確な見通しだったというわけでありますが、右から2番目にありますように、前年対比では7,600億の減ということでありますので、あまり自慢にもならない数字ではあります。
次の2ページに主な税目別の内訳がございます。これをご覧いただきますと、地方財政計画に対しましても、住民税、その他が落ちている分を法人二税でちょっとカバーしたという感じでございますし、一番右の欄の14年度との増減率を見ましても、やはり法人だけが若干伸びておりますが、ほかが伸び切らないといいますか、トータルでは2.3%の前年対比の減という状況になっております。
3ページは税目別の内訳ですので省略いたします。
それから4ページをご覧いただきます。これから地方財政の概況を申し上げます。4ページの表は、地方財政の現状ということで総括表でありますが、大幅な財源不足が続くということと公債依存度も非常に高くなっているということでありまして、財源不足、16年度ですと14兆1,498億円という不足であります。内訳は、通常収支の不足が10兆円余り、そのほかにいわゆる減税の影響が2つ合わせまして約4兆円ほどの影響になっております。公債依存度は、国と違いまして、収入による国庫補助金とか、交付税とか、分母がいろいろあるものですから、単純に比較しますと低そうに見えますが、一応の財政の状況としては非常に高い、16.7%を公債に依存しているという状況でございます。
5ページでございますけれども、これは平成5年度の地方財政計画の数値をもとに一般財源ベースの数字で構成してあります。この折れ線グラフが財源不足ですので、平成5年度に、計画上約0.2兆円の不足であり、一度ここでほぼ収支均衡したというときがございました。このときから今ずうっとこの折れ線が拡大してまいりまして、財源不足が毎年毎年増えてきたのですが、その増えた、増やした要因と減らした要因は何であろうかということを分析してグラフにした図でございます。
左上にありますように、財政計画のいわゆる要素、減税分、減収分、影響分、それから歳出のほうで公債費、社会保障費、それからそれ以外はすべてその他と大きな区分をしております。中間は省略いたしまして、5年度と16年度を比較いたしますと、税収が7.7兆円減っております。そのうち4兆円が減税の分、それから3.7兆円はそれ以外の減収分ということで、7.7兆円がこの財源不足を膨らます方向に要因としてございます。それから相当景気対策の仕事をしたせいもありますし、赤字地方債等の発行もございますけれども、公債費がやはり相当伸びてまいりまして、5年度に比べますと7兆円増加しているということであります。それからその上の社会保障とかは、国も増えておりますけれども、地方の負担分も当然増えているということ。給与費は、やはりベア、あるいは職員の高齢化に伴う増等が計画上増えてきているわけであります。
一方で、下のほうでありますけれども、例えば9、10年度は税収が増えたことによる地方税、交付税の、交付税は法定率分ですけれども、そういうものが増えて下に要因になってますが、最近のマイナス要因はその他でございまして、その他が、特に14年度以降は相当歳出を見直して地方財政計画を絞ってきているということもありまして、相当大幅に見直しをしてきているということで、平成5年度よりも、この5つの要因以外のその他経費、あるいは歳入要因も含めてですが、その他の要因が4.3兆円もいわゆる財源不足を縮小する方向に見直しているわけですが、それでも追いつかないで、上と下の差といいますか、14.1兆円がどうしても16年度の財源不足として出てしまうという状況でございます。
それから次に6ページですが、これは借金の推移でよく見る表でありますけれども、単純に言いますと、平成4年度あたりからまた急増いたしまして、16年度には204兆円と200兆円を超えたということであります。これはもちろん、交付税特会の借入金の地方の負担分、公営企業の普通会計負担分等を含んでおりますけれども、合わせて204兆円で、GDP対比で、地方だけで40.7%というような借金残高になっております。
それから7ページ、こういう状況下でもいろいろ努力はしてきているということで申し上げますが、公務員総数というのは311万人ほどですが、9年連続減、特に15年度は実績として2万7,000人減っていると。300万人で2万7,000人と一見あまり多くないように見えますけれども、右下のグラフをご覧いただきますと、311万人のうち、実は教育が117万人ほど、警察や消防で42万人おりまして、ここはなかなか自由に減らせるところではないということがありまして、主として左側の一般管理的な職員、あるいは福祉関係の職員等は相当見直ししてきております。
公益企業が若干増えてますのは、いろいろな事業で相当減らしているのですが、介護保険というのが新設されまして、2万6,000人純増しているというのがここに入っておりますので、ちょっと増えて見えるということでございます。それぞれ相当、減らせるものは純減という形で努力しているということであります。
8ページは給与水準ですが、ラスパイレスもいろいろとご批判ある中で是正が大分されてまいりまして、全体として100.1という状況になっております。団体別に見ますと100を切る、つまり、国の水準以下の団体が8割ほどになっております。
次、9ページからは地方税制でありますが、調査課長のほうから、国・地方を通じた問題点が相当ご説明ありましたので、私のほうからは基本的には省略いたしますが、9、10ページは主な税の内訳でございますので省略して、11ページ、最後でございます。「地方税収入の推移と主な税制の動き」ということでありますが、地方税収、上がったり下がったりしておりまして、今32兆円ほどになっておりますが、16年度は少し持ち直すかなという見通しを立てております。
大きな項目としまして、6年の抜本改正、あるいは地方消費税、外形標準課税等がトピックでありますが、下のほうに、国のご説明でもありましたが、7年度の制度減税で1兆円、あるいは11年度の恒久的減税で1.9兆円、個人1.1兆円と、この中に定率減税も入っているわけですけれども、こういうものが今でもずっと効いてきているということでございます。
私からは以上でございます。よろしくお願いします。
〇委員
ここでご質問をということでもいいのですが、特別委員のお話も財政赤字等々絡むと思いますから、特別委員のお話を聞いて一括自由に審議したほうがいいと思いますので、引き続きまして、特別委員のほうから問題提起をお願いします。
〇委員
それでは簡単にレジュメに従ってお話しさせていただきます。レジュメ自体、非常に抽象的な話ですけれども、あまり細かいところに立ち入らないようにしてお話しします。
最初のトピックは、財政再建をする場合に、どういう状況で増税なり財政再建をすることが現実的な状況になり得るかというのを少し理論的に考えたものですけれども、財政状況が悪いときに財政再建しないとすると、最悪の場合は国債がデフォルトを起こすという状況になるわけですが、一番極端なケースとして、財政再建ができなかったとして、公債を持っている人がその公債が紙切れになってしまう状況と、それからそういった事態を避けるために、歳出削減なり増税、両方あり得るわけですけれども、単純化のために増税で対応する場合の2つのケースを比較して、どういう状況で、どちらが起こりやすいかということを少し整理してみたというのが最初です。
国債を持っている投資家というのは基本的には3種類に分かれるわけで、国内で持っている人と、それから外国で日本の国債を持っている人、それから国債を持たない日本の人というのが3番目に来るわけです。デフォルトを起こす場合は当然、その限りでは、国債を持っていない人にとっては何の損失も直接こうむらないわけで、もちろん、国債が一旦デフォルトを起こしますと、その後、債券市場で発行しづらくなりますので、それから後の予算編成が大変だという面はありますけれども、その時点で考えれば、国債を持ってない人には、デフォルトが起きて国債が紙切れになったとしても、特にその限りではコストは感じない。国債を持っている人は当然投資の対象として持つわけですから、そうした事態は困る。
それに対して増税する場合は、当然、国内の納税者が増税するわけで、それは国債を持っていても持ってなくても、国内の国民、これは基本的に納税者と考えれば、国民にその負担がいく。そうすると、その負担を比較しますと、外国の投資家にとって一番状況が悪いのは、国債をちゃんと償還しないでデフォルトが起きるということですから、国債を外国の人がたくさん持っている場合には、当然、その持っている先の国の財政状況に対して非常にシビアになって、格付け等が非常に気になる。デフォルトを起こされると一番困るのは外国の投資家。
問題は国内の投資家ですが、国内の投資家は、確かにデフォルトを起こされると大変ですけれども、起こさない場合も、どっちみち増税はそこで起きるとすれば、将来先送りが仮にできないとしますと、そこでも多少のコストは感じるわけですけれども、相対的に言えば、増税してくれたほうがありがたい。それはなぜかというと、国債を持っていない人たちにも増税が及ぶわけですね。逆に言うと、国債を持ってない人にとってみれば、増税されるのだったらデフォルトを起こしたほうが得だという側面がありますので、そうすると何が起きるかというと、国債を持たない人がたくさんいる場合に、民主主義のプロセスだとどうしても、財政再建のための増税と言っても、国民的な支持を得るのはその限りではなかなか難しいということになります。
日本の場合は、ご存じのように、国債の保有がまだ家計ベースでそれほど進んでませんので、金融機関に相当偏った形。あるいは年金資金等を通して、郵貯もそうですけれども、間接的に持っている形になっておりますので、一般の国民から見ると、国債の金利を、あるいは元利償還のために増税するのだったら、むしろデフォルトを起こされて増税しないほうが得だという面もありますので、そういう意味では、国債の保有が非常に偏った場合にはなかなか増税するのは難しい。
逆に言えば、増税に対する一つの環境整備、要するに財政再建のために増税が必要だということをある程度政治的に環境整備するためには、なるべく個人が国債を保有するというポートフォリオ上の選択がどんどん進むことが望ましいということになります。個人向け国債とか、いろいろな形で最近工夫された国債が出てますけれども、そういった形で国債の個人保有が進んでいけば、デフォルトをされるよりは、ちゃんと国債投資を対象として、それなりの資産的な意味がありますので、その意味では納税者の理解はより得やすくなる。
それからもう一つは、財政再建で増税する場合に、その課税ベースがどのぐらい一般的に広がっているか、あるいは一つの課税ベースに極端に偏っているかというのも当然問題になります。課税ベースが極端に狭い場合には、その課税ベースに入ってない人から見ると、増税されても何のコストもないわけですから、そういった増税に賛成しやすいわけですけれども、逆に言うと、その課税ベースが低いところである程度まとまった税収を上げようとしますと、税率を高くせざるを得ませんし、そうすると課税ベースが狭いところに入っている企業なり家計は、当然、税金を節税、脱税する、あるいは外国に経済拠点を移すとか、いろいろな形のディストーションが起きる形になりますので、結果として経済全体にもそれほどいい影響は出てこない。
ただ、政治的には課税ベースが偏っていればいるほどなかなか増税に対しては難しいと。自分の懐は痛まない形での増税という方向にいきやすいわけですから、その意味でも、課税ベースの観点から言えば、広く薄くかけられるような税体系が整備されているときほど、あまり極端に税率を上げなくても、そこそこの税収が上がりますから、デフォルトをするよりは増税で対応する方向にいきやすい。
そうすると、国債の保有と課税ベースと両方の観点から考えますと、多くの人が国債を持って、多くの人が広く薄く課税するような税構造で、その国債の元利償還が最終的に行われている経済であればあるほど、国債はきちんと償還され、そのための増税に関してそれほど困難がない。逆に言うと、その国債の保有が偏っていて、課税ベースが非常に偏っている、あるいは消費税であっても、免税点が高過ぎるとか、あるいは非課税の消費部分があるとか、いろいろな形で課税ベースが小さくなってしまいますと、増税しようとしても、税率が上がりますのでなかなか大変になると。それが最初にちょっと整理した点です。
それから2枚目の点は、ではどのぐらいの増税が必要になるのかという話、あるいはどのぐらいの財政の引き締めが必要になるかという話ですけれども、これは先ほど事務局から紹介した基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の関係になりますが、一応現在の政府の目標は2010年代初頭にプライマリー・バランスの均衡を図るということですけれども、ただ、プライマリー・バランスの均衡というのは、新しく借金を発生させないという条件ではあるのですが、過去に発行した国債に関してはすべて借換債でつないでいくということを同時に意味しますので、借換債の残高の伸び率は金利で、対GDP比で見ますと、分母のGDPの成長率は経済成長率ですから、金利と経済成長率が等しい限りにおいては、プライマリー・バランスが均衡すれば、対GDP比で見た借金残高は増加しないという形になります。
現状ですと、今日の資料ですと、OECDの資料で170%ぐらいまで対GDP比で見た公債残高費が増えてますが、これがある時点で横ばいになるのは、金利と経済成長率が等しければプライマリー・バランスが均衡するということですけれども、ただ問題は、金利も経済成長率も高くなれば、プライマリー・バランスが均衡していても、新しく借金は出ませんが、過去の借金の分に関しては依然としてGDP以上の比率で増えることになりますので、公債残高の対GDP比は依然として上昇し続けるということになります。
そこをどういうぐあいに考えるかということですけれども、2ページの真ん中のあたりの式のところは飛ばしていただいて、結果として重要になるのは、要するに金利と成長率との間にどのぐらいギャップがあるのかということと、それからどのレベルで対GDP比で見た公債残高を安定化させるかという、この2つがターゲットになります。
金利と成長率が高ければ高いほど、対GDP比から見た公債残高を安定化させるための引き締め幅は当然大きくなりますし、逆に金利と成長率が一定であるとしても、その差がプラスであるならば、公債残高の対GDP比が大きいところで安定化させると引き締め幅もより厳しくなるということです。
それで、例えば2ページの真ん中から下のところに簡単な数値例を書いたわけですけれども、仮に金利が経済成長率よりも2%ポイントぐらい高いとして、今から何年先になるかわかりませんが、対GDP比から見た公債残高はいずれ200%になると思いますけれども、200%ぐらいで、そこの時点で安定化させるということを考えますと、そうすると、この掛け算になるわけですけれども、4%ポイントぐらいのプライマリー・バランスの黒字がないと対GDP比で見た公債残高は安定化しないという、簡単な数式を書いてあります。
現状は、今日のレジュメでも紹介いただいたように、大体5%ポイントぐらいの赤になっておりますので、それを4%ぐらいの黒にするには、差し引きで9%ポイントぐらいの引き締め幅が必要になってくる。今の政府の目標は、ここは金利と経済成長率は今後もゼロの近傍でほとんど無視できるので、5%ぐらいの引き締めで何とか対応できるのではないかという一応のシナリオですけれども、常識的に考えると、金利のほうが経済成長率よりも高い状況のほうがよりもっともらしく起きそうだろうと思います。
これは過去のデータを見ても、あるいはある意味で経済成長に関する理論的な議論から言っても、金利のほうが経済成長率よりも高い状況のほうがノーマル、正常な状況だと考えますと、多少金利のほうが成長率より高くなる前提で、ある意味で少しきつめに財政再建目標というのを立てておかないと、現実がそちらの方向に大きく振れるときのショックというのは非常に大きくなりますので、その意味では、プライマリー・バランスの均衡というのはもちろん一つの目標ですけれども、それだけでは財政のサステナビリティ、維持可能性は達成できないという厳しい状況にあるのだろうと思います。
そのときに、3ページ目ですけれども、ではどういう形で引き締めるのかということですが、仮に9%ポイントぐらいの引き締めをこれから10年ぐらいでやるというのはかなり厳しい状況で、政府の当面の目標の5%ポイントぐらいの引き締めでも、これは自然体では達成することはかなり難しいわけですから、ある意味、その2倍程度の引き締めをやろうとすると、これは自然体ではほとんど達成可能ではないだろうと思います。
それで、一番望ましいシナリオは景気回復で、税収が自然に増えることによって財政収支が改善して、それで何とか対応するということですけれども、これは先ほどの事務局の資料にも多少出てきましたけれども、景気回復するともちろん多少の税収は期待できますが、それだけでは回復できない規模だろうと思います。
もう一つは、自然体のままでいくと、当然、特に社会保障を中心とした義務的経費はこれから増えざるを得ませんので、それも考えに入れますと、これは自然体ではほぼ不可能だと思います。
問題は、では裁量的に歳出の削減と税収の増加をどのぐらいやるのかということですけれども、仮に歳出の削減だけでこれをやろうとすると、かなり非現実的なシナリオにならざるを得ない。一番歳出の削減でターゲットになり得るのは、ご存じのように公共事業で、これは裁量的な景気対策で増やすこともできますし、逆に言うと景気がいいときには減らすこともできますので、公共事業費は量的に削減するのは当然可能です。ここ3年4年、公共事業費は削減されているわけですが、これからも量的削減は可能だと思いますが、ただ問題は、公共事業費自体がすでに大きな歳出の項目ではなくなっておりますので、これを今後削減して、極端な話、公共事業をゼロにしても、せいぜい対GDP比で3%か4%ぐらいの削減にしかなりませんので、10%弱の削減をすべて歳出でやろうとしても、それは公共事業だけでは、ゼロでも無理だという状況です。
それで、政府消費のほうですけれども、政府消費のほうはなかなか、もちろん、例えば少子化が進んでますから教育関係費を減らすことはできますが、ただ、子供の数は減っているわけですが、子供の質に関しては、昔と違って質も劣化しているという話も聞きますから、そうするとそれなりの対応が必要になるわけですね。つまり、数が減ればそれに応じて経費を減らせるかというと、これはなかなか難しい。むしろ人的な教育はよりきちんとつけて、数が減った分だけ質を高めないと、中国、韓国との競争に勝てないという側面もあると考えると、教育費も、多少減らすことはできると思いますけれども、極端に減らせるかというとこれもなかなか難しい。そう考えますと、政府消費は、公共投資以上に削減幅としては難しい。
そうすると、最後のターゲットとして残るのは社会保障費で、これをどのぐらいコントロールできるかということですが、次回、ある委員がこれについては触れられるということなので、時間の関係もありまして、私のほうでは、制度改正のところでどういう抜本的な改正、医療、介護、公的年金、何が必要かということは今日は省略させていただきますが、ただ常識的に考えると、高齢化で社会保障の受給対象者がどんどん増えるわけですから、制度改正しなければ自然増でどんどん増えざるを得ない経費なのですね。それを制度改正することによって総額で増えないぐらいに持っていくことはできると思いますが、さらにそれを5%から10%切り込むというのは、余程の大改正で、しかも相当な歳出の削減になりますので、そこまでやるのはなかなか難しいのではないかと思います。
そうすると、常識的に考えると、もちろんむだな経費、公共事業、政府消費、公務員の給料も含めて人件費、それから社会保障、いろいろな形で効率化は必要で、それで切り込む余地はあると思いますけれども、そうはいっても、それだけで財政再建がやれるほどのレベルをもうすでに日本の公債発行残高は超えてしまっているというのが私の認識です。
そうすると、裁量的に増税するしかないだろうと。要するに自然増収で賄える範囲と、それから歳出の削減で賄える範囲をすでに超えたレベルにあるとすれば、その差額は裁量的に増税するしかないだろうと思います。
裁量的に増税するとすれば、大きな課税ベースとすれば、消費税か所得税、あとは法人税ですけれども、法人税に関して、国際的ないろいろな環境の中で上げるのは無理だと思いますので、個人所得税と消費税をどこまで上げるかということになるわけです。
ある意味では、理論的に言えば、どちらも広い課税ベースですし、消費というのは使うときにかけるわけですが、所得というのは稼ぐときにかけるわけですけれども、稼いだものは必ず最終的には消費されるので、どちらでかけてもそんなに違いはないのですね。ただ、片方はフラットで間接税で、片方は累進的な直接税という差がありますけれども、そんなに大きな差はマクロ的にはないだろうと思います。
どちらをやるかということですけれども、順序としてはどちらでやってもいいのではないかと思いますが、さしあたって所得税の定率減税の廃止というのが話題になっているようですので、そこから入っていくというのが一つのシナリオとしては、要するに現在のある意味で特別な減税をもとに戻しただけですので、減税をやめるという意味で、それはそれで一つの増税になり得ると思いますが、それだけでは当然足りませんので、所得税でやるとすれば、課税最低限の引下げか、あるいは、プラス、最低税率の引上げを同時にセットで考えざるを得ない。それから消費税でやるとすれば、消費税だけでやろうとすると、15%ぐらいまでいくのは避けられないだろうと思います。財政赤字の状況等を考えると。
しかも、プライマリー・バランスの4%ぐらいの黒というのは、あくまでも公債残高の対GDP比が200%レベルで安定化させるという前提条件になっているわけですが、ほかの諸外国どこを見ても、公債残高の対GDP比が200%を超えた国はないわけですから、いずれ公債残高の対GDP比はもっと削減する必要があるわけですね。安定化させるというのは横ばいということを意味するわけですけれども、いずれは横ばいから下方に、つまり、公債残高自体は過去の借金を返済していくという作業をせざるを得ないと思います。
そうすると、そこのところでさらに税収増が必要になってくるわけで、サステナビリティの回復というのは、あくまでも最小限の増税で、過去の借金には手をつけなくて新しく借金を出さないというだけのための増税ですけれども、それを超えて、過去の借金自体を本格的に返していくとするとさらに増税が必要になってきますので、消費税だけでやると、15%でとどめるのは相当厳しいだろうと思います。所得税と組み合わせるか、あるいは歳出削減をより本格的にやるかというシナリオになると思います。
それから、時間の関係で地方分権の話は飛ばしますけれども、その上で、歳出・歳入両面で何らかの、国民的にはどっちにしても短期的には痛みですので、それをどういう形で国民に受け入れてもらうかというのはなかなか難しいと思いますが、むだな歳出を効率化して、あるいは公平で透明性の高い徴税手段をとるというのはもちろん当然な話ですけれども、それだけではなかなか納得するのは難しい。
一つの仕掛けとしては、やはり何らかの形で納税者が税金の使い道に関してきちんとある程度モニタリングできるシステムを、どういう形にしろ取り入れる方向が考えられる。その一つはご承知の地方分権ですし、一つは政治的な、納税者、有権者の意向がより予算編成に、民意をより反映されるような政治的なシステムを改革するという、より次元の広い話にもかかわる問題かと思います。
それから最後ですけれども、一つの点は、要するに、増税とか歳出削減というのは短期的には民間経済にとって負担ですので、それがマクロ経済との関係でどういうぐあいに考えるかというのは一つの大きな点だと思います。今年は、マクロの景気循環から言えば、景気が回復して好況期にあるわけですけれども、景気が悪いとき、いいとき、どちらのタイミングで増税なり歳出削減という、ある意味で量的な財政再建に踏み出すのかどうか、あるいは景気との関係で、そのスピードなり量的な大きさをどの程度までコントロールするのかというのは非常に重要な点ですけれども、そこで、2つの一応対立する考え方というのがあり得ると思います。
1つは、景気の本格的な回復を待って集中的に財政再建をする。景気がある程度低迷しているときには、財政再建のための痛みを国民に求めるよりは、景気が回復して、ある程度国民がその痛みに耐えられるようになってから集中的にやる。これも一つのもっともらしいシナリオですけれども、ただ問題は、そのときに、ではいつの時点で景気が回復したと判断するのか。これは非常に難しい問題で、つまり、回復したときに本格的にやるということは、回復したときにかなり大幅に歳出削減なり増税をしないと、トータルではいずれにしても大規模な増税なり歳出削減は避けられないわけですね。それを景気の悪いときにやらないということは、逆に言うと景気のいいときに集中的にやれるわけですから、景気のいいときに相当思い切った量的な負担を国民に求めるわけですけれども、国民から見ると、本格的に景気が回復しているという判断を先送りしたほうがいいという、そういうバイアスが当然出てきます。
つまり、今よりももっと将来のほうがよくなるのだから、もっと先まで待ってからやれと。そうしますと、いつまでたっても本格的な景気回復と認定しづらくなって、ずるずると先送りされると、こういう懸念が1つ出てきます。
それから最後のレジュメですけれども、もう一つは、仮に財政再建が景気回復の足を引っ張ると、つまり、財政再建することによって量的に増税なり歳出削減すればマクロ経済が悪くなるということであれば、景気が回復したときも当然それを集中的にやるわけですから、景気回復自体が壊れてしまうという可能性がある。要するに、景気の悪いときにさらに景気を悪くする効果があるのだったら、景気のいいときにも足を引っ張る効果があるので、どっちみち足を引っ張る効果があるとすれば、集中的にやると、その時期に極端に悪くなる可能性があります。
ケインズ的な、裁量的な財政政策というのは、景気の悪いときに政府がてこ入れして、景気よくなるとそれを弱めるというのは、景気循環の一つのプロセスの中で財政収支が安定しているときにはそれでストーリーとしては成り立つわけですけれども、いずれにしても、中長期的に財政が破産するような状況で、トータルで中長期的にたくさんの負担を求めなければいけないときに、景気のいいときだからといって集中的にそこにお金を民間からとってしまうと、そこでの負担が非常に多くて、むしろマイナスになるのかなと思います。
それともう一つは、よく指摘される点ですけれども、裁量的に景気対策をやろうとすると、ラグの問題というのは当然発生しますから、景気回復が起きた後で財政再建をやろうとして、増税を景気回復時期に決めて、あるいは歳出削減を景気が悪いときに決めても、実際はそれが実行される段階になってしまいますと景気はすでに悪くなっているということがあり得るわけですね。
97年がそれかどうかというのは議論のあるところですけれども、景気がよくなったから増税の議論をして、実際には景気というのは循環ですから、ある程度たてば当然落ちるわけですけれども、落ちる時期に実際に増税が行われてしまうと、増税をするということが本来は景気にマイナスの影響がないにもかかわらず、時期として景気が悪いという時期に増税というのが両方一緒に行われれば、当然、国民から見ると、増税が景気の足を引っ張るというぐあいにとられかねないという、そういう問題もありますし、あるいは効果としてそれがもしもあれば、さらに足を引っ張るということもあります。
その意味で、裁量的な政策をきちんとやるというのはなかなか難しいということがありますし、それから裁量的な政策のもう一つのある意味で皮肉な点というのは、本当に景気対策の効果を持とうとすると、これは歳出が典型的ですけれども、短期的にはむだな政府支出のほうが効果が大きいのですね。なぜかというと、有益な政府支出というのは民間も競合しますから、政府支出が増えるときに、政府が有益な、要するに民間の企業なり家計にとって評価されるような政府支出を政府がやれば、やらない場合には当然民間がある程度やっているはずなので、民間の消費なり投資を押しのける効果がある程度発生し得るわけですね。
ところが、全くむだな政府支出であれば、これは民間はそもそもやりませんから、そういった政府支出を増やしても、民間の消費とか投資はほとんど反応しないので、確実に乗数は1だけ増えるという形になります。その意味で、短期的な需要拡大効果を考えると、あまり民間と競合しない政府支出のほうがむしろ効果は大きいわけですけれども、それは中長期的に見ますとむだなものなので、例えば公共事業であれば維持費がかかって、将来的には大変だということもあります。
その意味では、2枚目のマクロ経済動向とある程度無関係に進めるほうが中長期的には望ましいという議論もあり得る。この場合、要するに税金をいずれとらなければいけないと、あるいは歳出はいずれ減らさなければいけないとすると、負担を平準化し、課税を平準化するとすれば、今から少しずつやったほうがいい。これが1つ。
ただし、今と将来とどっちが苦しいかという問題、これはもう一つの判断基準になるのですね。現在よりも将来のほうが苦しいとすれば、将来に先送りするのはむしろよくない。今のほうが大変で将来はよくなるということであれば、今負担を求めるのはよくない。これはいろいろな見方があると思いますが、むしろ社会保障等を考えると、現在よりは将来の人のほうが大変だという形で、若い人の消費がその分で冷え込んでいるということが仮に起きているとすれば、あまり負担は将来に送らないほうがいいだろうと思います。
これは先ほど出てきた非ケインズ効果と絡むわけですけれども、非ケインズ効果というのは、逆に考えると、財政再建のために増税をするとか、あるいは歳出の削減をするということが、むしろ場合によっては、景気の足を引っ張るのではなくて、景気を刺激する効果があるかもしれないという。
これはどういうことかというと、財政再建に本格的に政府はコミットするというシグナルで、将来の財政不安が解消されると、それで家計なり企業は安心して消費なり投資行動をむしろ増やす。いずれ将来、財政再建されるということは、将来、増税なり歳出削減が起きるということを予想すれば、それを先送りすればするほど将来大変なわけですから、それに備えて今から貯蓄なりをして、あまり消費とか投資をしないというのが非ケインズ効果ですけれども、それが起きれば、むしろ財政再建が本格的に動き出すというシグナル自体が意味あるという話。
ただ、これはどの程度の平均的な家計なり企業が将来の財政状況なり将来の財政再建のコストを今から織り込んで行動しているかということに絡みますので、非ケインズ効果というのは理論的には考えられますけれども、実際問題としてはそれほど大きくは効かないと思いますが、多少こういう効果があれば、今から本格的に財政再建に踏み出すというのは多少の意味はあるかと思います。
それから、その意味で最適なタイミングですが、これは非常に難しいと思いますけれども、基本的には、一時期に集中的にやると、その時期に非常に大きな負担が発生するので、そうであるよりはなるべく徐々に、どっちみちやらなければならないのであれば徐々にやるのがいいのではないか。例えば消費税を徐々に引き上げるとか、公共事業は徐々に削減してますけれども、社会保障にしても、むだな歳出はどんどん削減していくという方向を示す。
それと同時に、財政というのは制度の話と絡んでいますので、制度がどういうぐあいに将来変わるのか。例えば三位一体の話であれば、地方分権ができた後の国と地方の税負担も含めた配分の仕方、あるいは交付税を通じた再分配制度がどういうぐあいに将来変わるのかということに関する将来像を明示するとともに、量的な引き締めに関してはあまり一時期に集中しないで、なるべく平準化して、できれば、私の考えでは、あまり景気動向に左右されずに、粛々と増税と歳出削減を少しずつやるのが、景気動向を見て、いつやろうということを裁量的に考えて、結果として何もできないというよりはよりいいのではないかと思います。
以上です。
〇委員
ありがとうございました。
最後のサゼッションは何やら、定率減税をどうするかなんていう話にも効きそうな話ですけれども、これから議論しましょう。事務局から2つ、国と地方の財政の現状、それから特別委員から、モデルを使いました財政再建の具体的なご提案がございましたので、今日はまだ1時間近く時間がございますので、まず、これについて。それから、これに絡む周辺部分の話でも結構ですし、具体的なご提案でも結構でありますから、本格的な議論の最初のキックオフといたしまして議論いたしましょう。
どうぞ、どなたでも結構ですから。
〇委員
今、特別委員からも話があって、景気との関係、前回、会長、やや関係なくやりたいようなことをおっしゃって、完全に無視というわけではないと思いますが、そのようなことをおっしゃっていたわけですが、大変難しいということはよくわかるわけですね。見通しが立たないということはよくわかるわけですけれども、そもそもこの減税をやった理由というのは、景気ということが眼目だったわけですから、それが逆に戻るということになれば、当然、景気との関係はどうだということが議論にならざるを得ない。判断をどうするかということはともかくとして、その判断を、景気は検討したと。検討したけれども、しかしこういうことになったと。万一そういうことになった場合にもですね。そういう透明性というか、説明責任というのを果たさざるを得ないので、全くパスしてしまうというわけには当然いかないだろうと思います。
さっきも特別委員がおっしゃったように、97年の問題をどう考えるかという、その景気との、減税をやめるかやめないかということではなくて、今度は増税という話になるのですけれども、9兆円吸い上げた、それが一番大きな原因だということをおっしゃる方もいれば、いや、そうではなくて、山一、拓銀などを中心とした金融パニックというので、消費者、あるいは国民が浮き足立って非常に冷え込んだ、心理的に冷え込んだと。アジアの通貨危機というようなこともあってということが言われているわけで、そこはよくわかりません。
ただ、97年問題の1つ教訓というか、を引き出すとすれば、それは私が勝手にということですが、あまりやり過ぎると必ず政治的な逆流が起きて、今までやってきたことがふいになってしまう、あるいはもっと悪化してしまうというリスクがあるのではないか。今度は97年と違いますから果たしてあるかどうかわかりませんけれども、そこはかなりの程度慎重に見極める必要があるのではないかという気がしております。
それから3つ目は、これも先ほどの話に出たわけですけれども、国民全体の合意があって、将来に対するイマジネーションというか、将来どうなるのだということを非常に強く意識をして、将来の姿が、国民一人一人と言うとあれですが、大方の人たち、多くの人たちに想像ができるようになれば、そういうことになっていればもともとこんなことになってないということかもしれませんけれども、そういう将来の姿に対するイマジネーションみたいなことを、異空間というか、時間のコマ落としはできないわけですので、将来どうなるかということの姿を少し前広にする必要があるのではないか。
注意しなければいけないのは、いっとき、キャンペーンで、将来暗い暗い暗いと、こういうふうにやっていると、とんでもないことが起きて、もう将来真っ暗だと、そういうキャンペーンはやらない方がいい。あれも逆効果だったと思います。やるのならもうちょっと前向きに、明るい財政再建というシナリオに沿った、国民に将来のイメージをくっきりとなるべく与えるようなものを提出できればいいのかなと。やや中長期的な話ですけれども、そんなことを思います。
〇委員
ありがとうございました。その明るい税制再建のイメージというのはどういうことをイメージしたらいいですか。
〇委員
要するに、このまま放っておくと財政がこんなになって、真っ暗になって、もう暗いよ暗いよと。みんな野たれ死ぬことになるよと、社会保障はメタメタになってと。そんなことばかり言っているのではだめだというだけの…….。
〇委員
非ケインズ効果が生み出せるような格好の説明ですな。あえて言えば。それから、ちょっとすみません。政治からの逆流って、2番目の1997年の関係でおっしゃいましたけれども、これをもうちょっと具体的に言うとどういう心配があるのですか。政治との何ですか。
〇委員
政治というか、要するに、景気があのときは9兆円吸い上げたのか、金融パニックだったのか、原因はわかりませんけれども、あれから日本の、97年がターニングポイントだということを何度かこの資料でも言っておられますよね。それのことを言っているわけで、あれがもし9兆円を吸い上げなかったらどうなったかというシミュレーションはできないわけですけれども、しかし、あれをやったことによって、あれがよくなかったのだと。それから、あのときに橋本内閣が財政構造改革という法律を通して、最後、結局投げ出してしまう結果になってしまったわけで、そういうリスクをどのように考えるかということも十分に検討したほうがいいのではないかと、そういうことです。
〇委員
ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
〇委員
私もマスコミの一人ですから、どうしても定率減税ということが飛び出したような印象を与えているわけですけれども、もともとは、この定率減税をするときの理由というのは、今の景気の問題と、景気対策と、それから所得税の抜本的改革というものが念頭にあったわけですよね。その抜本改革が行われるまでの間、行われる情勢が来るまでの間ということになっていたわけですね。今その間にちょうど値するかどうかということだと思うのですけれども、したがって、定率減税の話だけでなくて、いわゆる所得税の抜本改革、そしてそれがなぜ必要か、やるとすればどういうものがあるのかということもあらかじめ明示をして、それで、こういうことのためにこれだけのことをする必要があると。それにまた地方分権との絡みも出てきますから、そのタイミングとあわせて、もう少し整理した形で一般に明示していくという必要があるのではないかと思います。
〇委員
そうですね。そう思いますね。ただ、我々は「あるべき税制」というのをここ2~3年かけて言っているし、それから三位一体がそれに絡んできてますから、もう所得税、構造改革待ったなしというイメージがあるのですけれども、説明の仕方としてもうちょっと丁寧な、総理がよく言われているけれども、丁寧な説明が必要かもしれないと思いますね。
ほかにいかがでしょうか。
〇委員
定率減税について、すでにお二方から意見出ましたけれども、私も、そもそも定率減税をやった理由がやはり景気のためということであるわけで、前回、会長は、一種、景気とは必ずしもかかわりなくこれを廃止または縮小すべきではないかというような……。
〇委員
現在の景気ですよ。あのときの景気ではないですよ。それは僕はっきり言ったのだけれども、マスコミはそこはぼかして書いているから。あのときは本当に気をつけなければいけませんけれども、今ですよ。関係ない話だ。関係ないというか、今そこはそんな大きな問題でないですから。
〇委員
ただ、今の景気も、これはたしか内閣のあれから、すでに回復して30カ月ということに一応なってますけれども、ただ、もうちょっと近いあれを見てみますと、昨年度後半の第2四半期と今年度の第1四半期を比べると相当成長率は下がってますね。これから先もいろんな、原油高その他、中国、アメリカの景気というリスクもあるわけですから、ここは必ずしもこれまでの回復一辺倒とは言い切れないわけで、ここでやはり定率減税を一気に廃止または縮小、半減ということを一部でおっしゃっているようですが、それは実際に実施するのは1年以上先のことかもしれませんが、今ここで縮小するということを言えば、そのアナウンスメント効果はかなり大きいのではないかと思うのですね。ですから、定率減税についてはやはり慎重でなければならないのではないかと私は思います。
〇委員
定率減税の話が出てますのでちょっとお聞きしたいのですけれども、1つは、やはり定率減税が景気浮揚というか景気対策としてやられたということであれば、景気が戻ったというか、定率減税はもう要らないのですよという状況を説明しなければいかんだろうと思うのです。財務省が出してくれた20ページの表を見ると、これ、どのように見たらいいのかあれですけれども、9年度の決算と16年度の予算ですけれども、比較すると、経済要因等による減収が4.6兆円ありますと現在出ているわけですが、ということは、9年度から見ていると、まだ経済要因等で4.6兆円凹んでますと、とても経済回復しているとは言えない状況ですという説明になるのではないかと思うのですが、それはそうでないならそうでないということを言っていただきたいと思うのです。というのは、4.6兆円が消えて、もうここまで消えたのだから定率減税の必要はないと、何か一つの指標にされたときにどういう説明をするかということをお伺いしたいのが1つ。
それから減税をやめるというときに、今、国民からすると、先ほどの特別委員は無駄な歳出とかいう表現を使っておられましたけれども、そういうものがまだあるのであればとんでもないという反応のほうが先になると思うのです。したがって、私の経験から言うと、地方団体の場合は完全に財政再建団体ですよ。財政再建団体というのは、要するに予算編成権を奪われて、徹底的に経費を削減させられるわけですね。そういうところまで国の歳出を落とし込んでいるかどうかという説明責任がやはり国のほうにあると思うのです。
その場合に、参考にもし資料が出たら出してもらいたいと思うのは、要するに法律で義務的に出さなければならない経費とそうでない経費とを分けて、どれだけずつありますかというようなことを主計局は明らかにしないといけないと思うのですね。できれば、ここにも出していただきたいと思います。
〇委員
それは一般会計から出る歳出の話ですね。
〇委員
そうです。だから、例えば国債費、これはもう削れませんよね。それから地方交付税交付金も削れませんよ。それから社会保障費でも、法律で何ぼ負担するというように書いてあるものについては削れないと思うのですよ。制度改正するなら別ですよ。その中身を。今はその中で制度改正をしようという努力をしていると思うのですけれども、それ以外の経費というのはどのぐらいあって、それはどうなっているのかというのを国民に説明しないと、今ものすごい不信があって、そういうところはいいかげんにしておいて、我々に負担だけ求めるのではないかということを言われると非常に困る。だから、そこのところははっきりしておかなければいけないのではないかと。
〇委員
でも、当然、国民の側からいうと、制度まで変更して削るものは削れと言っているのではないですか。多分。だから、地方交付税だって削れと言っているわけですよ。
〇委員
いや、だから、その前に、それ以外のところはちゃんと削っているのかという話です。金額的に多いか少ないかは別としてですよ。
〇委員
だから、そこの区別はあまりないのではないかなあ。
〇事務局
まず、最初のお尋ねの、税収の減のうち経済要因による減収があるということ。これもやはり、実はこの中を分析すると2つの要因があると思うのですね。構造的な変化、土地の価格がまだ依然として下がり続けている部分には、土地の価格のつき方というものがやはり収益還元に変わってきている。それから雇用形態が変わってきた。特に高齢の団塊の世代が卒業されつつあって、非常に雇用者報酬の全体の水準、それからフリーター的な雇用形態等々、そういうところも含めて全体を分析することが必要であって、必ずしもここの差がいわゆる経済の回復が遅れているすべてだというわけにいかないと思います。
いずれにしても、今日ご議論あるように、経済への影響ということは議論を尽くす必要があるし、その場合はこの税制面の影響だけでなくて、いわゆる歳出全体の中でいろんな国民負担の保険料の問題とかもあるので、やはりトータルで経済への影響というのは議論していただく必要があると、そういう感じだと思っております。
それから事務当局として、これから本格的な、いわゆる景気対策としての定率減税の取扱いと、それから本格的な、いわゆる財政構造改革としての財政再建のための負担増の問題というのは若干質的な面が異なっているわけですけれども、特に後者の本格的な増収、構造改革の増収ということになれば当然、歳出面と両方セットで議論せざるを得ないので、そこはもう、委員がおっしゃったところはいずれにしてもきちっとしていくという話になろうかと思います。
〇委員
調査課長、昔やっていたよなあ、主計局で。今の歳出の切れるやつと切れないやつを含めた話ね。何か昔の話も含めてちょっとご説明してくれる?
〇事務局
予算は、今ご指摘のあった国債費と交付税は除いて、あと一般歳出ですけれども、これは16年度で47兆円ぐらいあるのですけれども、これを今主計局のほうでは義務的経費と裁量的経費と公共投資関係費と3つを区分して管理をしてまして、その中で、今委員からご指摘のあった、法律で義務的に、この義務的経費の性格が、例えば人件費のようなものも義務的経費に入ってますので、すべて法律で支出するということになっているわけではありませんけれども、一方で雇用関係というのがあるので、一方的に政府のほうで削減することはできないという意味で、義務的というふうにカウントしている固まりとして、47兆のうち約32兆円が義務的経費であると。ここは制度改正なり、あるいは今の社会保障の部分で、法律上で就労指数定めているものが、大半がここに入っておりますし、そういうことで制度改正で減らしていかざるを得ないという部分であります。
そのほかに裁量的経費が約7兆円弱ありまして、これはまさに裁量ですので、いろんな工夫をして、不要不急のものというか、減らしていこうということで、ここは前年より17年度は2%基本的に減らすという方針が決まっております。それから公共投資は、これは特別委員の話もありましたように、最も、ある意味伸縮自在なところも、と言うと言い過ぎかもしれませんが、これも前年より3%減らすということで、この公共投資関係費と裁量的経費の部分は、全体がそういう意味では裁量的なものですけれども、これは減らすと、義務的経費は制度改革によって削減していくというのが今の歳出面での考え方でございます。
それからあとついでにちょっと、先ほど97年のお話がございましたが、これは一度政府税調の、12年の分厚い教科書のような答申の中で整理をしていただいておりまして、その中で、税制の消費税引上げの影響、消費税上げられたのですけれども、基本的には、消費の動向を見ると、例の山一とか北拓の後に非常に金融システムの危機が、信頼低下とか、アジア通貨危機が大きな影響を与えているということであります。もちろん消費税が全く影響ないということは書いてないのですけれども、お手元の平成12年の答申の中で235ページに記述がございますので、後ほどご覧いただければと思います。
〇委員
ありがとうございました。
今の関連ですか。どうぞ。
〇委員
トータルでやはり考えるべきだというお話がありましたけれども、トータルでもいいのですけれども、やはり具体的な、何か数字的なものがないと、みんなよくわからないと。うやむやのうちに増やされちゃったということでは、政府税調の中で検討が足りないではないかということではないかと心配しているわけです。
〇委員
マクロ的な経済運営と増税の問題、どう組み合わせるかというのは非常に頭が痛いポイントなわけですけれども、経済・財政にかかわっている者として、一つのポイントは金融政策との関係であります。これは日銀の出口政策との関係で我々はずうっと議論しているわけですけれども、物価が、CPIがプラスの領域に安定的になるまでには金融政策は今の現状を維持するのだと、こういう言い方をしているわけですね。これとの関係で増税のタイミングをどういうぐあいに考えていくのか、あるいは特別減税をどのような形で実現していくのか、ここはやはり政府の一体的な見方をマーケットに対して示すことになるわけで、その意味では、この問題はおそらく、歳出の問題と組み合わせるかはあるわけですけれども、微妙に絡んできていますので、タイミング的に、これはアナウンスとして、景気が安定的な局面に入ったのだということを明確に金融・財政の両面から宣言した上でやっていくという話にならざるを得ないだろうと思います。
これは中長期の問題にも実は絡んでくるわけですけれども、特別委員のお話の中で、財政赤字の問題、非常に、久方ぶりに大学に戻ったみたいな感じで聞いていたのですけれども、問題は、小泉構造改革は実は官から民へと、民にできるものは民へ、こういう形で議論している背景には、財政赤字の削減は、国民経済、日本経済にとってプラスになりますよということを実はインプライしているわけです。
ということは、資源配分の面で、公共的な分野で、あるいは政府の分野で使われるよりも、財政赤字を減らして、資金を民間に移動するほうが生産性が高く、かつ、これが中長期的な成長に期すると、貢献すると、こういう考え方がないと構造改革の正当性というのが主張できないわけでありまして、そういう意味では、この面における財政赤字の、先ほど、夢のある財政赤字削減策という、短期的な問題はともかく、中長期的にはそれを整合的にきちんと絵を描く必要性があるわけでありまして、郵貯の問題なんかもこの問題にもろにかかわってくる話なわけですね。ですから、短期的な問題と中長期的な問題を整理してこれから議論をしなければならないだろうと思います。
それからもう一つは、シミュレーションの問題をやはり、今の委員のお話にもありますけれども、歳出と歳入をどのような形で切り込んでいったときに国民経済にどう影響を及ぼすかということと、財政赤字のサステナビリティというものはどういうぐあいになるかと。我々、「改革と展望」でこの問題を実はあいまいにしているわけです。政策的なスタンスも含めてあいまいにしているのです。そこを表立って議論するかどうかの問題ですね。ぜひこれは検討しなければならないテーマになってくるわけです。
ですから、シナリオの幾つかの中でこういうことだと、そういう複数の選択肢を出しながら、そこで起こり得る景気への影響、あるいは中長期的な生産性、あるいは成長力への問題をやはり国民に理解していただくためには、描きながら現状の政策を進めていくと、こういうことをやりませんと、おそらく皆さんが木を見て森を見るような議論になりかねない部分があるわけで、これは税の問題だけではなく、社会保障の問題も、三位一体の問題も全部ひっくるめて、マクロの問題とどのようにこれがリンクしていくかということを描きながら、完全に描くことはできませんけれども、少なくともシミュレーション的な範囲の中でイメージしながら議論していくということが必要になってくると思いますので、税調においてもそういう部分均衡的な議論ではなくて、全体とどのようにそれを絡めていくかという視点をぜひ持っていただきたいと思います。
〇委員
ありがとうございました。1つ教えて。そうすると、増税のタイミングのアナウンスのときの問題は、さっき言ったラグの問題ね。これは先ほどの委員もお話しいただいたけれども、我々悩んでいるわけだけれども、定率減税みたいに、2006年1月からという大体目途のつく話と、歳出カットとか何かわからないのもあるよね。仮に目途のつくものでも、この増税のタイミングというのは、仮にそのとき入れる段階で判断すればいいという言い方もあるだろうし、今から先を読んで、景気落ちそうだから、もうやめたほうがいいではないかと言うのか、それはどう考えますかねえ。
〇委員
それはやはりシミュレーションの確率にもよるわけですけれども、議論は当然しておかなければならないということだと思います。郵貯の民営化の問題でも、完全民営化の時点で株式をどうやって売却するかというときに、我々は実際に17年とか言っているわけですけれども、株価の状況、どうなるかわかりませんから、それを議論するなという話にはならないわけで、これはやはり私は十分事前に議論しながら進めて理解を求めていくということになるのだろうと思います。
〇委員
大分話が佳境に入ってきました。どうぞ。
〇委員
これからの財政再建、その中で税の役割を国民にどう説得的に訴えるかということですけれども、暗い、明るい、いろいろなあれはありますけれども、ミニマム、国がやらなければならないことは、財政再建という形でやらなければならないことは何なのか、それを国民にどこまでわかってもらう、あるいはわからせるのかということで、税制調査会の仕事と財政、歳出のほうの仕事と不即不離になっていて、税調で何をどこまでやるというその仕分けが難しいと思うのですけれども、私の個人的なというか、国民に対する訴えかけというか説得としては、少なくともプライマリー・バランスは改善しようと。
プライマリー・バランスというのは、わかりやすく言えば、出血しているのだと。国の実際の歳出に対して税収が少ない部分は借金しなければいけない。出血というのは、使っている、実際にやっている仕事に対して集めている税金が足りないから、その部分はさらに借金が増えていくのですよと。少なくとも借金が増えていくことだけは、最初の財政再建の目的として、それはやめましょうと。それが2010年の初頭におけるプライマリー・バランスの回復ということですけれども、第一のターゲットとしてこれは実現しなければいけない。今日の資料でも、16年予算でも、まだ19兆円、プライマリー・バランスの赤字があって、GDP比で5%ある。国民に説得する段階としては、まずそこだと。
それから、もちろんそれに当たっては税収だけではないだろうと。歳出の切り込みも、見直しも必要だと。ただ、そのとおりであるわけですけれども、ただ、そこをだからここでどのように議論するかというのはかなり難しいというか、公共投資はここで減らすべきだと私も思いますけれども、そういう指摘なのかな。来週、次に社会保障と、できればそれに関係して地方財政の、財政再建とのかかわりで報告させていただきますけれども、その最初のところをどう仕分けするかという問題がある。
本来、税調としてある意味訴えるべきことは、プライマリー・バランスは回復しなければいけない。これは国民に何としてもわからせなければいけない。そのために、こことしては、何回かの減税を通じて大分ほころんできた税制を、ここ数年やっているように、やはりあるべき税に戻すのだと。あるべき税に戻すときに、いきなり消費税、足りないものはみんな消費税というわけではなくて、一番重要な税である所得税を足元から直していきたいと、そういうことなのかなあと。
だから、いつまでも内輪同士でやっていてはいけず、国民にどう問題の深刻さというのかな、をわかってもらうか。私はやはり、プライマリー・バランスを黒字にすることはいかに切実な問題かと。それから歳出の削減についてはもう少し議論が要るでしょうけれども、それをあるべき税という形で、まずは所得税から改革せざるを得ないと。それ以外の選択肢というのは、我々にとっては今ないし、時間もないというような気がするのです。
〇委員
大分生産的な議論のような気がします。ただ、19兆円ある今のプライマリーの赤字の中身を税でやるのか歳出でやるのかというところぐらいまで僕は議論してもいいと思うのですけどね。おそらくここでね。別にそんな気使うことないですよ。ほかの、財政審がどうだとか、何だかんだ。そこで問題は、19兆円の中身を、今から10年、それをどういう格好で何でやるかぐらいまで議論したほうがいいというご提案でしょう。
〇委員
だから、歳出カットというのは、一時的に切れるものと構造改革を伴っていくものとがあるので、ある意味で、一時的にカットして、それだけカットすると、もうこれでゴール達成という形で息切れさせるのもむしろおかしいので、ここはあまり短期的な数合わせというのは危険だなと。歳出のほうはかなり構造的な問題を抱えているから。
〇委員
なんか国会答弁みたいでわからないな。何を言いたいのだよ(笑)。まあいいや。それは後で皆さんに考えてもらえば。
〇委員
一般的な印象として、会長をトップとする税調というのは、今年の秋はいろいろ難しい問題を抱えているけれども、所得税の改善の方向に向かっていくのだなというふうに報道されている。会長はそういうことをリーダーとして言っている。今聞いていれば、その方向について頭からノーだという委員は一人もいない。わかっているのだから、そんなことは。今の所得税がおかしくなっていることは。しかし、タイミングのことを言っている。それは財政論、景気論、どの新聞も書いている。主要な新聞全部。そこのところの議論を今くだくだくだくだやっているだけです。我々は本当にタイミングを問題にしているのだから。方向はノーだと言ってないわけだ。だれも。どう考えたって。
そうすると、この前会長がそういうことを言われて、簡単なやりとりだったから社会に誤解を与えたかもしれないけれども、議論だけは、所得税はこうこうこうだから本来はこうあるべきだねという議論をやることはノーだと言う人はだれもいないわけだ。それでもなおかつアナウンスメント効果があるから、そんなこと言っちゃだめだという話もある。どこだって、現行、新聞もそうだし、学者もそうだし、何かといえばとにかく足引っ張る方向の議論が一番楽なのだ、本当は。我々、それを20年間してきたのだから。もうそろそろやめないとね。お互いに矛盾したことばかり言っているのだから。
僕の言いたいことは、会長が言ったみたいに、今1カ月2カ月の間にこの議論をある程度進めなければならんでしょう。そのことはとにかく整々とやってみようと。ただ、今の政権、あと2年で、彼がそんな大胆なことをやると思わないから、次だれが座るか知らないけれども、座った瞬間から大増税を、会長から言われたとおりで、ツケが回ってきたから全部やりますという政治家も日本に生まれるとは思わない。つまり、時間かかるのですよ。
そのときの腹の決め方としては、国内で国債を消化している分には大方大きな間違いはないから、外国に売っているのではないから、まあそこは腹決めて、もうちょっとゆっくり考えていこうではないかというふうに考えれば、気がうんと楽になるのですね(笑)。
第2に、どう考えたって、やはり歳出を削減するほうが、今先生がそっちのほうが難しいとおっしゃったけれども、所得税とか消費税とか、ドーンと出して大議論やるに比べれば、誰にどうサービスが落ちるか知らないけれども、そちらのほう全般を削っていくほうが、今だったら、これはまたすぐ景気論との関係があるけれども、これからかなり制度論として議論できる話が、要素がこちらにはあるものだから、そちらを一生懸命やって、財政審に頑張ってもらうかなという気がしないでもないですよ。そのほうが……つまり、社会的、政治的、経済的抵抗がどこにあるかという話だから。みんな、一応わかっている人でも、その抵抗の問題があるから頭抱えているわけですね。
だから、僕は、この前も言ったけれども、会長が当面、景気がどうでこうでという議論よりも、とにかく議論だけは整理しましょうねと。だれがどう実行するか、それはもう政治任せだと。これはえらい、反面、責任ある、反面、無責任な言い方になるけれども、それしかない。
〇委員
それで、歳出のほうについて今おっしゃったし、それは新しいこの税調としての切り口だと思いますけれども、財政審やれよというだけで、あと、そこでほおかぶりしてしまうか、つまり、そっちがやってくれるまで待っているよと言うのかね。
〇委員
そこまでできない。
〇委員
いかないでしょう。それからあと一つは、やはりある程度歳出カットの具体的なイメージ、これは先ほどの委員もおっしゃっているけれども、が出てこないと、当然乗ってこないというのは事実は事実ですよね。そう思いますけれども、ただ、そこがうまく出てくるかどうかだなあ。調査課長、財政審のほうでそんなぐらいまでやる気あるかねえ。いや、私も財政審の委員ですから、皆さんも絡んでいる人いますけれども、いくかなあ、そこまで。いや、お答え難しければ結構ですよ。
〇委員
久しぶりで、まだ頭調子出ないのですけれども……(笑)
〇委員
いやいや、これから出してください。調子を。
〇委員
この資料の4ページのマル、どれだけ入ってどれだけ使うというのと、7ページの、日本だけとんでもない、この2つが非常に大好きなのですけれども、これを見ていると、ひでえ国だな、日本はというのがつくづく見えるわけで、特に7ページ。日本だけ世界に逆らい続けて15年という、ほかの国が減らした国債をかわりに全部一手引き受けで出してあげて世界をファイナンスしているというのはよくわかるなという気がするのですが、結局、この4ページを眺めていれば、この国はつぶれるわというのは歴然としているわけですから、この色ついたところ、どうして色つけてあるのかというと、減らすという意味だと思うのですが、色ついてないところは増やしたいという意向だと思うのですけれども、だから、基本的に歳出と歳入をあわせる方向で物事が動いていかなければいけないわけですから、こっちは歳入のほうだけ見ているのでもなくて、そのうちの半分しか見てない、京都議定書で日本だけちょっとCO2減らしても世界は変わらないということをやっているような感じがするのですが、そういうのを思うと、歳出減らした分だけ増税してあげるというルールというのを作ったらどうかなと思いますが。
ほかの国の財政再建を見ると、一見正しいみたいですけれども、理由のない勝手な原則を導入しているわけで、こういうことに決めたと。何でということは、うるさいと、こういうことで原則決めているわけですよね。そういうのをしないと無理だと思いますね。理屈だけで、これが正しいと。正しいと言ったら、景気よくするために税金全部やめてしまえばいいわけで、そのほうが楽のような気もしますけれども、そういうことをできないということを前提に例えば。
なおかつ、定率減税、たかだか2兆円。2兆円というと、今年何もしないのに間違って増えた、1兆5,000億増えているわけですから、景気に影響が出るような金額ではないと僕は思いますね。たかだか2兆円。ですから、それを民間に置いて、郵便局に預けるか、民間に置かないで公債減らすかという、それだけの話ですから、国の借金を減らしたほうがいいのじゃないのという方向で言えば、別に、もともと景気対策と言ってますけれども、実際は人気取り策だと僕は思ってまして、経済効果などは全くなかったのではないかなと思ってますから、気軽にやめてしまえばいいと思います(笑)。
〇委員
どうぞほかに。
〇委員
今の委員の話もおもしろいのですが、先ほど言われたけれども、例えば、たかだかこれは2兆円程度で、一人頭というか、年収700万で5万か6万ですかね。その程度で新聞は大重税だと書くんだねえ。重税って書きますよ、必ず。それでテレビも、ブランドものを着たお姉ちゃんのアナウンサーが大変だわとか言うわけですよ。どこが大変なんだ、おまえっておれ言いたいのだけどね。やはりそういうムードなのですよ。それはマスコミが作ってますね。マスコミのアナウンス効果ですよ。たかだか数万円ですよ、こんなもの。というか、そういうのが今までのメディアのパターンですけどね。そういうパターンは非常に安易ですよ。そうやれば楽ですから。書くのはね。それはそれとして、僕は、先ほどの委員が言ったように、2兆円程度、ただ、これは人気取りだと思うのですね。
それともう一つは、きちんとさっきのプライマリー・バランスの均衡を回復するためには、あんたの義務は何だということをやはり正攻法できちんと。税金を納めないやつが選挙に行ったってしようがないですよ。やはりね。僕はだから、昭和の初めか大正の終わりに、税金を納めなくても選挙権もらえるとなったのは間違いだと思っているのですけどね。普通選挙法がね。あそこから間違いが始まったのですね。あそこから間違いが始まったから、戦争になんかなってしまったのだと思いますよ。極端に言えば。責任のないやつが意見を言うからですよ。だからそういうことになって、日本は民主主義の成熟が少し遅いところでああいう普通選挙法なんていうのをやってしまったからいけないのでね。聞いている人に誤解招く、すごい反動的なやつだと思われるから、そうではないのだけれども、実際そうだと思うのですね。だから、今これだけの財政赤字があって、税金払わなくていいよなんていう政策をすること自体が考えられないことですよ。そこのところで、やはり新聞の意識の遅れですね。メディアのワンパターンの報道の仕方ですね。これがやはりつまらない雰囲気を作ってますね。
それともう一つ、先ほど財政審の問題が出ましたけれども、僕は、さっき歳出の義務的経費の問題とかいろいろありましたけれども、道路公団、民営化委員をずっとやってましたからね。今もやっているのです、実は。ある委員と一緒にやってますけどね。それで、先週の金曜日にやったのですけれども、無駄な金なんか幾らでも出てますよ。はっきり言って、皆さん、経過をあまりご存じないし、新聞もきちんとその経過を報道してくれないから今ここでちょっと言いますけれども、去年の12月だったか今年の3月の閣議決定で仕分けができて、残り2,000キロ部分についてのお金で1,300キロ部分について民営化会社が請け負うので、民営化会社が自分のお金で7.5兆円以内で借金しながらやっていくと。40兆の借金返しながら、料金収入をもとにしながら7.5兆円以内のお金は使って造るということですが、2,000キロのうち1,300キロですけれども、残りの700キロは、ご承知のとおり、税金でやるということになって、その700キロについての税金のあれは3兆円なのですね。年間2,000億円で15年間で3兆円で700キロ造ると、こうなっているのですが、実はついこの間の金曜日の委員会で僕が言ったのですけれども、毎年2,000億円かける必要ないのですね。これは全く。
造ること自体は、政治家がいろいろいるので認めるとして、700キロをね。規格が全然違うのですね。前は高速道路の東名高速のような規格でやって2,000キロという予定だったのだけれども、税金でやるとなったら、料金所も要らないし、サービスエリアも要らないし、無料になるわけですから、その道路は。そうすると、規格の質も、レベルも落とすわけですね。今そういう論争をしてまして、700キロ分の2,000億円に対しても規格を落とせば、本来の高速道路の規格は3割引きにしたわけですから、同じように3割引きにすれば、3兆円が2兆円になるのですね。というようなことで、例えばそこでも1兆円削れるのですね。これは年間にすると1,000億円いかないですけれども。そういう一つ一つの細かい見直しをしていくということがきちんと行われてないのですね。
これは皆さん耳に入れておいていただきたいのだけれども、とにかく無料の高速道路にしたら安い規格でできるわけですから、そうすると年間2,000億円も要らなくて、年間1,000億円で十分間に合うのですね。それで与党の人や野党の人の要望どおりの道路を造れるのですね。そういうことをきちんとね。ただ、財務省と国土交通省で一定の税金で造ると決めてしまっているからなのだけれども、きちんと細かく細かく見ていけば、毎年2,000億円の税金の使い道が1,000億円で済むのですね。そういうことの一つ一つがなぜもっと緻密に検討されないのか、これは主計局の問題かもしれないけれども、僕には理解できないですね。そういうことです。
〇委員
いろいろ情報ありがとうございました。
どうぞ。
〇委員
ほとんど今の委員と同じことを申し上げようと思っていたのですが、この間の、今度の初めての会合があった後のテレビとかを、私、車の中で音で聞いていたのですけれども、「またまた増税です」と言ってニュースに入るわけですね。またまた増税って、いつ増税したよと思って。減税のときは言わないわけよ。たかだか2兆円という見方もあるけれども、消費税で1%ぐらいのことですよね、やったのが。そのときにはほとんど、だから減税されたという意識はほとんど国民にないわけです。また増税ですというふうなプレゼンテーションをすれば、またとられるのねと、イージーにそういうふうに反応するようになってしまっている。
さっきの委員が、抵抗はどこにあるか、抵抗少ないところからやればいいと。だから、国民というのは抵抗があるもの、それはそうですけれども、いつまでも抵抗があるままにしておきたいのではないかと勘ぐりたくなるぐらいのことがあるのですよね。だから、国民にいかに説いてきたか。国民にるる説く努力ということをしてこなかった。多分この人たちはうるさいからという形で。でも、ずうっとさっきから我々が論じているのは、どうやったら国民に説得できるか、納得してもらえるかという話ですよね。そういうことを考えると、やはりメディアの責任の大きさというのはものすごくあると思います。
先ほどの委員が、道路のこともおっしゃったけれども、高速道路料金値下げがもう一部動き出してますし、それからお正月明けとか4月からとか、マイレージも入るしということが決まっているわけですが、ベタ記事にしかならないのですよね。だから、国民に対して値下げ……それでもう一つ悔しいのは、いつも、郵貯の改革というのがまた怪しいとか、「前の高速道路の改革がだめだったように」とまくら言葉のように使われるのですけれども、本当に分割が決まって、値下げもして、コスト削減もして、民営会社がちゃんと責任持ってやるということが着々と進んでいるにもかかわらず、そういうふうには書いてくださらないというのが……。
〇委員
悔しいのね。
〇委員
ええ。だから、メディアがいつまでたっても、何か文句だけ言っていればよくて、お上をたたいていれば国民に受けると思っているのではないかと。それがもうかなり勘違いだと私は思います。一円でもいいから払わせてくれ、そのかわり文句言いたいという女の人が増えていることは確かだと私は思ってます。
〇委員
さて、ここでメディア批判を展開するかどうかは難しい。私が今日の議論の主流としてやったという話をするとやぶへびになるかもしれないし、ちらっと触れるぐらいにしておきますけれども、お二人の苦労話がありますように、やはりメディアを通じてどうかという話は重要ですよね。ただ……。
〇委員
それともう一つね。委員会の後、会長、記者会見なさるではないですか。次の日、新聞見ると、私、えっとびっくりするわけよ。こんな話したっけというのが。
〇委員
僕はやったこと以外言わないよ。
〇委員
だけど、私見ですがとは書いてあるけれども、かなり……。
〇委員
どういうこと、例えば。具体的に言って。
〇委員
いや、忘れてしまったけど、ある新聞なんて一面トップだったのでひっくり返りそうになっちゃった。
〇委員
そんなことないと思うよ。
〇委員
そうかなあ。
〇委員
僕は個人的な見解を求められたことは多々ありますよ。それでも、個人的見解と言っても、今言っている定率減税の話とか、この中でやっているつもりですけどね。多分、ここでやってないことは言ってないよ。逆に、ここでやってないことをブリーフィングしない限り質問もあまり出てこないですよ。お気づきになったら、具体的に言っていただければ気をつけます。
ぼつぼつ時間がなくなってきましたが、ほかによろしゅうございますか。――今日は最初のキックオフでありますから、そんな細かいところまでいきません。今日非常に生産的だった議論は、特別委員の例の具体的なご提案、シナリオも含めて、やはり定率減税を含めて増税のタイミングと景気どうするかという話で、これからこの種の話で少しずつ詰めていく作業をしなければいけないかと思っておりますし、それから歳出カットのほうで、我々の直接の所管ではありませんけれども、積極的にいろいろ注文を出してやる方向に関心を向けるということも必要ですよね。そういうあたりをこれから詰めていくということをしなければいかんと思います。
それから国の国民に対する説明責任ということについて、今日いろいろご判断ありましたけれども、ただ、我々として、対話集会などを積み重ねた結果、例の免税点の引下げであるとか、あるいは配偶者特別控除を直すとかいう一応のベースにした議論はやってきたわけでありますから、今後どうするか、また対話集会やるかは別としまして、そういう努力は一応積み重ねてきていますので、その延長上で今後の議論の展開を考えたらいいではないかと思いますが、またいずれ具体的にご相談するということもしなければいけないかと思っています。
それでは、次回も今日の方向で少しトータルな議論をしたほうがいいと思ってますので、一応みずほ証券の方から国債発行と経済の関係、今日、特別委員にやっていただいたものを少し具体的に数字を入れていろいろなシミュレーション等々を聞けると思いますが、その話と、それから歳出カット、今日いろいろな形で社会保障、問題になりましたけれども、委員の一人から、財源の方向でやられると思いますけれども、そのお二人の方からプレゼンテーションいただきまして、今日みたいな議論をしたいと考えております。もうしばらくこれをやった後で個別の議論に入っていくという作業が必要かと思ってますので。
次回は10月1日、2時から開催いたしますので、ぜひご出席いただきたいと思います。
それでは、今日は本当にありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。