第15回総会・第18回基礎問題小委員会合同会議 議事録

平成16年9月21日開催

石会長

それでは、時間になりました。6月以来の再開でございますが、今日は、総会と基礎問題小委員会、一緒にした形の合同会議を開催いたします。お忙しいところ、どうもありがとうございました。

今日は、久しぶりということもございまして、谷垣財務大臣、石井財務副大臣、山口総務副大臣、お三方においでいただいておりまして、後ほどご挨拶をいただく予定でございます。

今日の議題でございますが、6月22日に、例の「実像把握」と称しておりました、構造変化の報告書をまとめましたが、それ以来、前回の総会でも申し上げましたように、つい3週間ほど前、ヨーロッパのほうへ2チーム使節団を出しまして、いろいろ調査してまいりました。今日のメインはその報告に充て、皆さんのいろいろなご感触を伺いたいと思います。

それから、今日は久し振りの再開だし、秋以降さまざまな問題があるのは皆さん重々ご承知と思いますが、今後、どういう形で審議を進めるかということに対しまして、事務局から粗々のご報告を受けまして、また、皆さんからも忌憚のないご意見をいただきまして、今後の審議の内容を固めていきたい、このように考えています。

早速でございますが、最初に、谷垣財務大臣よりご挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

谷垣財務大臣

税制調査会の開催に当たりまして、一言ご挨拶申し上げたいと存じます。

わが国は、今、少子高齢化をはじめといたします大きな構造変化に直面しているわけでございますが、こういった中で、21世紀に持続可能な公的部門をどうやってつくっていくか、そして、それを公正で活力ある経済社会の実現のためにどう結びつけていくか。これには、国・地方の三位一体の改革、社会保障制度改革、財政構造改革、さらには税制改革、こういった諸改革を着実に進めていく必要があると存じます。こういった諸改革はいわば連立方程式のように密接に関連しておりまして、これをどのように解いていくかが、これからの税財政をめぐる非常に大事なポイントではないかと考えております。

このうち、国と地方のいわゆる三位一体の改革につきましては、今年の秋にその全体像を示すことが課題になっております。そしてこの全体像の中には、補助金改革の工程表、交付税改革の方向、それとともに、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲の内容を盛り込む、このようにされております。このため、補助金、交付税の改革と併せまして、個人所得課税について国・地方を通じた抜本的見直しの姿を検討することが必要となるものと考えております。

また、社会保障制度改革につきましては、先般、設置されました「社会保障の在り方に関する懇談会」におきまして、石会長にもご参加いただいて議論を進めておりますが、今後、基礎年金の国庫負担割合を引き上げるための安定した税財源、これをどう確保していくかという問題をはじめとしまして、持続可能な社会保障制度をつくっていく上で、税制改革が重要な課題となっているわけでございます。

一方、わが国財政の現状を見ますと、税収は歳出の5割をかろうじて上回る程度となっておりまして、その分、巨額の公債発行を続けている状況でございます。こういう財政状況が続きますと、中長期的に経済成長の阻害要因となりかねない、ご指摘もいただいております。財政規律の確立が、持続的な経済成長を実現していく上できわめて有効であることは国際的な認識となってきているのではないかと思います。

例えばアメリカにおきましても、90年代初頭に財政収支が大幅に悪化いたしましたが、その後、歳出の抑制と歳入の確保によりまして財政健全化が実現され、長期金利の低下などを通じまして、経済の持続的成長につながった、こういうふうに承知いたしております。今後、わが国におきましても、歳出・歳入の両面からバランスのとれた財政再建を進めていくことが必要であると考えております。

以上の諸課題に対応しまして、昨年末の与党税制改正大綱や、今年6月の「基本方針2004」で示されました道筋に沿って税制改革を実現していくために、これまで行っていただいた経済社会の実像把握のための審議の成果も踏まえまして、個人所得課税、消費税を中心に、税制改革の具体化に向けた審議を開始していただきたいと考えております。

税制調査会におかれましては、先日、欧州、北欧諸国におきまして、税制、社会保障制度の改革の動向や、付加価値税制度の現状について調査を行われたと伺っております。総理も、消費税については大いに議論を行ってほしいとおっしゃっていますので、この海外調査の成果も踏まえまして、抜本的税制改革を視野に入れて、精力的なご審議を進めていただくようお願いする次第でございます。

以上、大変簡単でございますが、私の挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。

石会長

どうもありがとうございました。

引き続きまして、山口総務副大臣から、地方の側を代表いたしまして、ご挨拶いただきます。

山口財務副大臣

ただいまご紹介いただきました、総務副大臣の山口俊一でございます。

今日は、財務省は大臣、副大臣お揃いでございますが、総務省は副大臣ということで、何となく肩身の狭い思いがいたすわけでありますが、麻生大臣、やむを得ず海外出張ということでご無礼をさせていただいておりますが、決して税制改正にかける思いが劣っておるということではございませんので、まさにそこら辺はご了解を賜りたいと思っております。

石会長はじめ、委員の皆様方におかれましては、日頃から大変ご熱心にご議論をいただきまして、今年の6月ですか、金融小委員会報告では、「金融所得課税一本化についての基本的な考え方」、及び基礎問題小委員会報告では、「わが国経済社会の構造変化の『実像』について」、これらをおとりまとめいただいたところでございます。皆様方の多大なるご尽力に対しまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。

当税制調査会におかれましては、本日から、あるべき税制の構築に向けまして具体的なご審議を再開していただくわけであります。地方税につきましては、これも大臣からお話がございましたが、少子高齢化への対応、あるいは地方分権の推進などの重要課題に対応すべく、これまでも答申等でご指摘をいただいておりますように、偏在性の少ない、そして税収の安定性を備えた地方税体系、これを構築することが急務になってきているという認識を私どもも持っているわけでございます。

また、地方公共団体や国民が大変大きな関心を寄せております、いわゆる三位一体の改革でありますが、これも、6月4日に閣議決定されました、いわゆる「骨太方針2004」におきまして税源移譲の規模が明記されました。それを受けまして、地方からもそういった声が大変強いわけでありますが、政府としても改革の全体像のとりまとめに向けた取り組みを進めているところでございます。

委員の皆様方におかれましては、地方公共団体が担うべき役割は本当に増大してきておりますし、地方分権を支えるための地方税の充実・確保がますます重要となってきています。そういったことについて十分ご理解を賜りながら、ご審議を進めていただきますように、心よりお願い申し上げる次第でございます。

以上、簡単でございますけれども、ご挨拶とさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

石会長

どうもありがとうございました。お忙しい中、わざわざお越しいただきまして、御礼申し上げます。

それでは、谷垣大臣、山口副大臣、次のご予定がございますので、ご退席になります。どうもありがとうございました。

(谷垣財務大臣・山口総務副大臣退席)

石会長

それでは、本日の議事に入りたいと思いますが、その前に、委員と事務局に異動がございましたので、ご紹介いたします。

7月15日付で、榊原長一委員がご退任になりまして、同日付で、草野忠義委員が任命されましたので、ご紹介申し上げます。

草野委員

出戻りでありますが、よろしくお願いします。

石会長

よろしくお願いします。

それでは、事務局にも人事異動がございましたので、福田さんと板倉さん、両局長からおのおのの部署の異動についてご紹介いただきます。

福田さんから、よろしくお願いします。

福田主税局長

私のほうからご紹介させていただきます。まず私でございますが、このたび主税局長を拝命いたしました福田でございます。よろしくお願いいたします。なお、前任の大武は国税庁長官に転出いたしております。

それから、審議官をしておりました石井が、大臣官房の総括審議官に転出いたしまして、その後任に加藤が着任いたしました。加藤の後任には主計局次長をしておりました佐々木が就任いたしました。

税制二課長をしておりました道盛が、大臣官房信用機構課長に転出いたしまして、その後任に、調査課長をしておりました佐藤が就任いたしました。調査課長には、主計局で内閣、司法・警察、財務担当主計官をしておりました羽深が就任いたしました。

国際租税課長をしておりました浅川が国際局の為替市場課長に転出いたしまして、その後任に、大臣官房総合政策課の調査企画官をしておりました武内が就任いたしました。

税制一課の資産税担当の企画官をしておりました川上が、金融庁の総務企画局特定金融情報室長に転出いたしまして、その後任に、大臣官房信用機構課の機構業務室長をしておりました長谷川が就任いたしました。

税制二課の法人税担当の企画官に、国税庁で人事課の企画官をしておりました小原が就任いたしました。

調査課の広報担当の企画官をしておりました藤城が、総務省行政管理局管理官に転出いたしまして、その後任に、大臣官房文書課広報室長をしておりました渡部が就任いたしました。

いずれも、前任者同様よろしくお願いいたします。

石会長

ありがとうございました。

それでは、板倉さん、お願いします。

板倉自治税務局長

総務省関係は1人でございます。固定資産税課長の佐々木が省内の公務員部福利課長に転出いたしまして、後任の固定資産税課長に、米田耕一郎が就任しております。よろしくお願いいたします。

石会長

それでは、今日の議事に入りたいと思います。

最初に、欧州並びに北欧の調査の結果をご報告させていただきます。

実は、8月29日から9月5日まで、まる1週間、調査は月から金の間でございましたが、2チーム出しまして、ヨーロッパが奥野さんと田近さん、北欧が私と井堀さん、それに2人ずつ事務官をつけていただきまして回ってまいりました。

最初は、ヨーロッパのほうからご報告いただきます。一緒に行かれた田近さんにもご意見を聞きたいと思いますが、公務で中途退出ということでございますので、最初に5分ぐらい、何かご感想がありましたら。そのあと、奥野さんから順を追ってご説明いただくという組み合わせにしたいと思います。

どうぞ。

田近委員

すみません。大学院の入試とかいろいろ始まっていまして、飛んで帰らなければいけませんので、一言報告させていただきます。

あとで奥野さんからご説明があると思いますけれども、今言った日程で、最初にブラッセルのEU本部、そしてドイツ、フランスと回ってきました。5分程度、どのようなことを調査して示唆を得たかということをお話しさせていただきたいと思います。

EUのほうは総括的な話なので割愛しますけれども、連日、文字どおり朝から晩まで、夜は飛行機の中でご飯を食べるという日程で、目いっぱい調査をしてきたと思います。

ドイツでは、財務省のヒアリング以外にも、ドイツの五賢人の一人と言われる、社会保障改革の第一人者のリュールップ先生に大使館に来ていただいてお話しいただきました。

私の印象を申し上げますと、ドイツは、あるいはフランスも同じですけれども、社会保障の負担を社会保険料で賄うことはもうできない、それが社会保障の改革の大前提にある、それは強く感じました。ドイツでは、保険料はこれから上げられない、雇用問題はどうするんだ、特に東ドイツの併合という問題もあって、雇用に影響を及ぼすような保険料の負担はもうあり得ないと。その中でドイツなりに--少しずつですけれども、改革は進んでいる。付加価値税を少し上げたり、環境税も上げていますけれども、それらがどうして上げられたかというと、その部分を社会保障に充てるんだと。もっと具体的に言うと、保険料を下げるというバーターでやっています。だから、社会保険料を財源にするというのではなくて、保険料を下げるという引きかえでやらないと通らないという感じです。

税に関して私が興味深かったのは、社会保険全体の改革はどうかということは、税調の場であまり議論すべきではないかもしれませんけれども、年金では、保険料はこれで頭打ちになる、それに見合った給付にすべく給付は引き下げだという形で改革は進んでいるわけです。その絡みで個人年金をどうするかという議論もしています。

私が税に関してドイツで一番申し上げたいのは、年金課税をどうするかという議論をしていました。引き金は、ドイツはある意味でまだ遅れているというか、公務員の年金は恩給の形でやっていて、公務員は年金を受け取るときに税金がかかっている。ところが、普通のサラリーマンは年金をもらうときに税金がかからないというようなことがあって、何か問題があると、憲法裁判所というところに持っていくらしいのですけれども、そこで判決が出て、イコールフッティングにしなければいけないということで、今、どういうことを改革しているかというと、公的年金については、拠出時にかけない、給付時にかける。日本的なものにする。これがドイツで受け入れられたのは、さっき言ったことと同じで、若いときの保険料は上げられない、年金に関しても、負担を税制でも拠出時非課税で手当して、その代わりもらったときにはかける。つまり高齢になったときに応分の負担をしてもらう。そういうことで改革が進んでいると思います。

それがフランスではどういうふうな形になるか。同じような経済状況、そして経済問題の中で、フランス流にどういうふうに社会保険負担を考えているかということですけれども、我々、今回の訪問で一番関心があったことの一つは、フランスにおける一般社会税というものです。91年に導入されたのですけれども、これは非常に幅広い。フランスは個人所得税はほとんど取れてなくて、しかも天引きではない。それに対して一般社会税というのは、賃金にもかかる、利子にもかかる。そういう意味で一般社会税なのですけれども、その使途は社会保障負担になっている。

実は、一般社会税が個人所得税よりも収入が多いということです。保健・社会保障省の説明を伺っていますと、便益を受けている人はいっぱいいるわけだから、その人たちに払ってもらおうと。「資産課税じゃないですか」と言ったら、「うちの国で資産を持っているのは高齢者だから、そこにかけるんだ」と言ってましたけれども、要するに、さっきのドイツの話と非常に似ていて、負担というのをすべての階層で担ってもらうという形です。

最後に申し上げたいのは、日本の税制改革との関係です。一般社会税的な税をどう考えるかということですけれども、経済財政産業省に行くと、一般社会税というと、「ん?」という感じでまともに議論したくない。保健・社会保障省のほうは、俺たちがこれをつくったんだと言っているのですけれども、実は大きな問題があると思います。

社会保障の財源として大きな税をつくったわけですけれども、それがフランスでは個人所得税を浸食している。個人所得税改革をこれからしていくときに、もう一般社会税があるではないかという形で、個人所得税の改革が非常に難しくなっていると感じました。それを日本に翻訳すれば、定率減税等々を直していくときに、より自由な使途の税源にかえていく等々、取るだけではなくて使い方との関係もあるだろうということです。

短い時間で話して舌足らずですけれども、印象としては、保険料はもう上げられない、社会保障もぎりぎり見直していくけれども、その中で負担をどうやって広げていくのか。そういうところでドイツはドイツなりに、フランスはフランスなりのことをやっているのかなと。両方の国とも付加価値税を上げるのは、ここまで上がっているから非常に難しいという形で、それぞれ国の工夫をしているということを実感しました。以上です。

石会長

ありがとうございました。田近さんには、10月に入りましてから、社会保障全般についてのご意見を伺う機会がありますので、そこで、今のご体験も含めてお話しいただけたらと思います。

それでは、奥野さん、体系的に順を追ってご説明ください。

奥野委員

会長からご紹介ありましたように、8月29日から9月5日まで、私と田近委員、総務省の須藤課長補佐、財務省の細田課長補佐、4人で、今、田近さんからご紹介ありましたように、ベルギー・ブラッセルの欧州委員会、ドイツ・べルリンの連邦財務省、連邦社会保健省、リュールップ教授。フランスで、経済財政産業省、保健・社会保障省、ブービエ教授(税制調査会委員)、MEDEF(フランス企業運動)、国民議会財務委員会、こういうところを回ってまいりました。

非常にハードスケジュールでしたが、一つだけ訪問先をつけ加えますと、フランスは、経済財政産業省というのが本来は税制・財政を担当するところだと思うのですが、先ほどご紹介のあった一般社会税というのは、保健・社会保障省の担当になっていて、大使館の方に言わせると、フランスは事実上2つの予算があるんだ、一般社会税は基本的に社会保障の特定財源になっているというお話でございます。これはあとでご説明いたします。

順序が前後しますが、ドイツからお話ししますと、ドイツは、少子高齢化が日本と同様進んでおりまして、これから、日本同様もっとひどくなるのだというようなことたくさんの人がおっしゃっております。90年代に、ベルリンの壁の崩壊とともに東ドイツとの統合、欧州市場の統合、通貨同盟の参加等で大きな変化があって、公的サービスの負担のあり方について非常に大きな見直しを迫られています。その背景には、ご承知のとおり、ヨーロッパ全体ですが、特にドイツの経済の状況悪化と、それに関連する財政収支の問題、持続的な社会保障制度を少子化のもとでつくるための問題などがあって、さまざまな改革が行われてきました。

具体的には、90年代後半にかけて失業率が非常に高くなって、フランス、ドイツ両方を象徴するような話なのですが、雇用を阻害する、あるいは労働コストを上げる、つまり負担強化をとるのが非常に困難であるというのが仏独共通の認識でございます。他方では、少子高齢化が進展して社会保障費用が増加する。また、90年代初めの景気後退時から財政赤字が拡大しましたけれども、例のマーストリヒト条約の経済基準を満たす必要があったので、財政赤字のGDP比率を3%以内に抑える必要があった。

そういう状況のもとで社会保障費用の財源として、社会保険料のように、企業側も含めて労働にかかわるコストをこれ以上引き上げることは、雇用に悪影響を与えるために困難である。しかも国際競争力維持の面からも所得税、法人税に負担を求めることも困難であるという状況であったわけです。その間、何をやってきたかというと、税制面では98年に付加価値税を1%引き上げた。その前にマーストリヒト関連でも少し上げていますが。それから、99年の環境関連税制の拡充によって社会保障予算に充てたということでございます。

そういうことを背景に、今、リュールップ先生を中心に年金改革を推し進めているところでございます。具体的には、ドイツの公的年金制度は日本と同じ社会保険方式なので、ドイツには、税財源を直入する、財源保障をするのは、根本的な財源不足の解決にはならないという認識がある。それが表面的な説明ですが、いずれにしても、給付を引き下げる、高齢者から若者まで全員が協力して負担を引き受ける、そういうことで年金を解決しようという方向に動きつつあるようでございます。

具体的には2004年度に、持続可能性要素(人口変動要素を反映)によって給付の調整--簡単に言えば、日本のマクロ経済スライドみたいなものですが、そういう形で給付の調整を行って、所得代替率、所得の何%を基本的に給付するかという比率は、現状は約53%ですが、それを2030年度までに43%程度に引き下げることを考えている。また給付開始年齢についても、65歳から67歳に引き上げることを検討中であるということでございました。

そういう形で公的年金に関しては給付を引き下げるという方向で解決しつつ、給付水準が下がる部分については、リースター年金という私的年金、これに政府から公的なインセンティブを与える。リースター年金という枠の中で投資をすれば、その投資に対して政府が補助金を与えたり税額控除をするという形のインセンティブを与えて、自助努力で公的年金を補完することを目指しているということでございます。田近先生からもお話がありましたが、公的年金への課税については、現状は逆になっていますけれども、時間をかけて、拠出時非課税、給付時課税にして、高齢者から負担を求める制度へ改革を進めることになっているということです。

ドイツの付加価値税については、現在、標準税率は16%とあまり高くない、物価も安い、そういう意味で国民の負担感は高くないという説明がございました。またドイツでは、付加価値税を創設したときから複数税率を導入していて、現在では特段の問題はないけれども、軽減税率は執行に伴うコストが大きいとか、税率構造の簡素化、その他の施策を検討すべきという意見もありました。これに関しては、もう少しまとめてあとでお話をします。

フランスも同じような状況です。経済構造が大きく変化していて、社会保障制度の改革や財政赤字の削減などの取組みを行っています。90年代に財政赤字が拡大して、ドイツと大体同じような状況ですが、失業率、経済の悪化、国内企業の競争力確保等が問題になって、社会保障財政が厳しい状況になってきていた。

この結果、フランスでは何をしたかというと、一般社会税という税金を1991年に低率で導入し、それを徐々に拡大してきています。フランスには所得税がもちろんあるわけですけれども、これは、2分2乗方式というよりもn分n乗。子供がいると、所得を、家族数よりちょっと少ない数でまず割ってしまって、それを課税ベースにして税金をかけるという形になります。したがって国民の半分ぐらいしか所得税は払っていないということでございます。

それに対して一般社会税というのは、まず第一に課税ベースが非常に広い。労働賃金だけではなくて、金融所得とか、年金所得とか、ほとんどすべてのものが課税ベースに入ってくる。それに加えて、これは、所得税というイメージで皆さんが思う税金とはかなり違っておりまして、所得が非常に低い人に関しては控除はあるようですが、それ以外に関しては事実上ほとんど比例税であって、所得と消費という課税ベースの違いはもちろんありますけれども、端的に言えば、付加価値税の所得税版みたいなものだというのが私の印象でございます。

そういう税金を保健・社会保障省がつくって、これを社会保障財源として直に入れている。これが一般社会税でございまして、徐々に増えてきて、先ほど田近先生のご説明もあったかと思いますが、今や所得税の税収よりもこちらの税収のほうが大きいという状況になっています。そのほかに、マーストリヒト条約等もあって付加価値税を2%程度引き上げたという状況でございます。

その後、社会保障関係で一般社会税が引き上げられてきましたけれども、国民からの反発はあまり見られない。それは、社会保障制度を支えていくためには仕方がないねというふうにみんな思っているのでしょう、という説明でございました。しかし、ここがある意味で大事だと思うのですが、現在では、国民にこれ以上の一般社会税の負担を求めることは困難だという認識であって、今後はむしろ給付の削減に本格的に取り組んでいくという意図だそうです。

これは個人的な感想ですが、さめた目で言えば、一般社会税という目的税による税収があったがために社会保障の給付の改革が進まなかった。取るだけ取って取れなくなったので、いよいよやむを得なく、ドイツなんかよりは遅れながらだけれども、給付削減に踏み込まなくてはいけないのかなと。

付加価値税は、ご承知のようにフランスでできた税ですから、国税に占める割合が最も大きく、複数税率制をとりつつ、今、20%前後、ドイツよりは4~5%高い税率でございます。軽減税率について問題はないけれども、軽減税率の対象品目については常に議論がある、具体的な適用税率の判断について紛争が生じることがある、税率水準はEUの平均だけれども、これ以上の税率上げは困難と考えている、ということのようでございます。

欧州委員会は、全体を見る立場なので、概論を聞いたのですが、欧州委員会は各国の社会保障制度に責任を持つ立場にはないけれども、通貨の問題、市場統合の問題等との関連で、各加盟国の動向に関心を持っているということです。要するに、グローバル化に伴って社会保障システムが、労働移動のインセンティブ、資本移動のインセンティブ、そういうさまざまなインセンティブを与えるので、国際的な整合性が社会保障制度についても大事になりつつあるという認識を欧州委員会は持っている、というのが私の個人的な印象です。

それから、欧州に特徴的な社会保障制度とか負担構造というモデルがあるわけではないけれども、歳出の増加に伴って税財源の割合が増加しているということで、特定の税をそれに充てるということでもないようです。付加価値税については、EU全体の制度の調和とか、インボイス制度についての制度整備、執行の確保のための国際協力体制も行われているということです。

最後に簡単に個人的な印象をまとめますと、社会保障に関しては、ドイツ、フランスは、年金だけではなくて、支出サイドは、健康保険、介護などもまとめて社会保障一般という形で考えながら税源の話を考えているという姿勢がある程度見られる。そこは日本よりは少しあるのかなという感がしました。

それから、フランスでは一般社会税、ドイツでは環境税とかいろいろなことを言いますけれども、社会保障というのは、そういう意味では付加価値税も一般社会税も同じものですけれども、課税ベースが広くて比例的な税と給付の見直しとの組み合わせでもって考えていくということなのかなというのが私の印象です。

付加価値税に関しては、軽減税率というものに我々関心があっていろいろ聞いたわけです。もちろん軽減税率が悪いというわけではないと思いますけれども、軽減税率というのは一遍認めてしまうと、既得権益化して、見直しをするのが非常に困難であるから気をつけて考えなさいよ、というニュアンスの発言が独仏両方から聞かれました。

それから、インボイスのことを聞いたのですが、ドイツでは「インボイス制とは何か」という初歩の初歩から説明されまして、日本でインボイスを使っていないのはなぜだろう、インボイスは当然使いなさいよというニュアンスの--裏を見過ぎているのかもしれませんが、むしろ向こうは不思議がっているような印象も個人的には受けました。

以上です。

石会長

ありがとうございました。ここで、奥野さんに対していろいろ質問を出していただくのが筋かと思いますが、次の北欧も似たような問題が展開されておりますので、私のほうから北欧の話をいたしまして、海外の調査についてのご質疑、ご議論を一括していただきたいと考えております。

北欧グループは、私と井堀さん、総務省の河野さん、財務省の藤井さんに来ていただきまして、4人で、8月29日から9月5日までひと回りしてまいりました。

訪問先はかなり多様でございまして、国によってアポイントメント先が取れないこともございましたが、総じて言えば、主務官庁の税務省とか財務省、社会保障関係者、それから、商工会議所とか経済人等々にぜひ会いたい、消費税を議論するに当たって、小売業をやっております商業協会、労働組合、そういうところも国によって入れてもらいましたし、中立的な立場からいろいろご批判、ご意見をお持ちと思いまして、各大学の先生方にもお目にかかることができたということであります。

お手元に資料ができていると思いますが、調査概要ということで、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、3つを総括した形で、モデルとまでは言いませんが、北欧の一般的なケースをまとめ、デンマーク以下、各国別に特色を抽出したという段取りになっております。私は個人的には、北欧というのは高福祉・高負担のえらい国で、あんな高い負担をどうやって払っているのか、どういうお国柄かを見てきたいと思っておりました。そういう点から言いまして、いうならば北欧モデルというものが実際にどう動いているかということにつきましては、短期間でありましたが、それなりの感触というか、理解を得たように思います。

調査概要の北欧モデルのところですが、高福祉・高負担を支える2つの条件があるんですね。一つは、政府に対する信頼、もう一つは、各世代間を通じた社会に対する連帯感です。政府に対する信頼感、社会に対する連帯感、わが国はどうかとなると、ちょっと心配な面もないことはないですよね。つまり年金などは、40年も50年も拠出したあともらうわけですから、信頼してないとできませんよね。当然のこと、拠出制ということをやれば、自分が一生懸命拠出して、面倒見て、自分が老後になったときの若い世代が本当に面倒を見てくれるかなという連帯感、これがなければとてもできない。人口が小国ということもございますが、その前提はきちっと満たされているというのが私の印象であります。

それから、「受益」と「負担」という対になった概念が必ず成立しています。したがって、今、負担が大変大きい、しかし、受益が目に見えて来るからという形で負担に耐えている。日本の場合の受益は、どちらかというと高齢者に対して発生する受益ですが、北欧は現に若い人に発生するんですよ。子育てであるとか、教育であるとか、住宅であるとか。対で事柄がはっきりしているから、十分耐え得るのだということを申しておりました。それが我々非常に感心したことであります。

それから、何やかにや言っても、これだけ高い水準の福祉、負担をつくった国では、これ以上は無理だろうという印象は当然のことありますよね。つまり、付加価値税をもう一回上げるとか、給付水準をもっと上げるということはない。どちらかといえば、現状の中で非効率な部分をどうやって整備していくか、いうならばマイナーチェンジのほうに視点は移っているという感触を受けました。同時に、経済界から言いますと、国際競争力を著しく損なうぐらいの高い負担は困るという話が別な視点でございました。

それから、年金について特に言えるのですが、拠出側の支え手を増やすという意味では、労働参加率を向上させなければいけないということがこの3カ国で共通しておりまして、いかに早期退職をやめさせてもっと働いてもらうか、女性あるいは外国人に入ってもらうかという点に非常に関心があります。日本は早期退職なんてあまりハッピーじゃないけど、向こうは所得代替率がいいからハッピーなんですよ。だから早く辞めてしまうのです。それをいかに辞めさせないで働かせて拠出側に回させるかというところが、国の施策として重要であるという印象を強く受けました。

それから、私的年金は、3階建てになっているところが多いのですが、これをこれから発展させて、公的年金の肩がわりをさせようということを公言しております。これも一つの方法だなというふうに感じておりました。

さて、付加価値税は、3ページ目に書いておきましたが、デンマーク、スウェーデン、25%、ノルウェー、24%ですから、一番高い国ですよね。ドイツ、フランスが高いといってもこの比ではないです。あちらは16%とか20%程度でありますが、これについても、税金の見返りがあるからここぐらいまでは耐えようかなという形で存在を認めております。経済界あたりは20%に下げてくれという声もあるようですが、私の印象では、必ずしもこれが国民全体のコンセンサスと思えませんし、付加価値税を下げるということは、福祉を下げるということに直結して考えられがちなので、選挙スローガンとしても付加価値税下げのほうには回らないだろうと。もっとも、これは財務省の意見ですから何ともわかりませんが、そういう意見もあったということです。

それから総じて言えますことは、軽減税率は、デンマークが入れてなくて、あとの2つが入っているのですが、できれば入れないほうがいいだろうと。財務省でいろいろ聞いていまして、税収減になるし、税率負担の公平感を損なうから、これは極力やめて、逆進性の緩和ということを消費税について言うなら別な方法がいいだろうと。インボイスは、EUの中で電子化が進んでいますから、インボイスを国際的に使うという今後の発展性から言うと、新しい局面になったという説明がございましたし、まさにそうだと思います。

それでは4ページ目、デンマーク以下、国別の特色をかいつまんで申し上げることにいたします。デンマークの特色は、ここは保険より税でやったんですね。したがって税負担も高くて、国民負担率が74.7%、恐らくスウェーデンととんとんであり、年金も1階、2階、3階とございますが、基礎年金は全部税でやります。2階建ての年金のところは、日本で言う厚生年金ですが、これは労働市場年金等と言われまして、運用するところが民間に任せている。日本のように財投で使うことをしませんから、一応民間なんですね。そういう大きな特色があると思います。

それから、最初に財務省に行ったら、「2010プラン」というのをとうとうとご説明いただきました。財務省の若手のスタッフが、今後の見通しという形でマクロモデルを動かしまして、財政赤字が増えないような形でやりたいんだと。そういうプロポーザルを受けたという意味で4ページの最初に書きました。

5ページ以降は年金を中心とした社会保障制度ですが、大きな変革を求めてはいないけれども、非効率な部分は極力直していかなければいけないのではないかというのが基本的なスタンスでありますので、基本的な方向は今のままで行こうということです。それプラスアルファで、できるところを何とかしていきたいということで、労働参加率を高めたいというのがそれに加わってくるわけであります。

年金でございますが、3階建てで、基礎年金は全部税、2階建てのところは積立式の拠出金で、これは民間が束ねているという感じでやっています。3階建ては、私的年金、個人年金でございまして、これについては応分の税制の助けがあるということです。

基礎年金を全部税でやっていますから、なぜ税なのか、6ページ目に理由が書いてございますが、これは歴史的な背景があるようでございます。そもそも19世紀に社会保障を考えたときに、貧困者に保険料を納めさせるだけの余裕がないから税でやったということ。それから、労働組合が活発になってきたときに、保険料だとどうも労働組合の自由になって、活動資金になる可能性があるので、税でやったほうがいいだろうと。中央集権的な労働市場なので、地方分権的な社会保険でやるよりは税で中央的にやったほうがいいではないか、そういう発想であって、日本のように、未納者がいっぱいいるから税だ、そういうことはないんですね。あとでまとめて申し上げますが。そういう点は日本固有の特色であります。

それから、目的税というのはデンマーク人は好まないと税務省の方が言ってました。特定の税を特定の使途に充てるのはよくない、という発想が伝統的にあるようです。

付加価値税ですが、今申し上げたように、例外的に新聞に対してのみゼロ税率が適用されていますが、標準税率は25%一本というのがデンマークの特色ではないかと思います。これも、当初10%で入れて、福祉国家建設という目的でだんだん引き上げてきたというのが一般的な説明でございます。高過ぎるということに対しては、例の「cross-border trade(国境を越えた取引)」で不利になるという点で、経済人は「できれば下げたい」と強く言っておりました。

軽減税率は原則として入れていませんが、新聞のみゼロ税率というのは、デンマーク語の普及ということが大義名分であったようですが、これは政治的にかなりプレッシャーがあって入ったのだと。現にホテル業界とかレストラン業界は隣国と競争関係にありますから、ぜひ軽減税率を入れてくれというプレッシャーは非常に高いんだという主張をしておりました。それから、付加価値税の逆進性というのを何も軽減税率でやる必要はないので、所得税の累進課税等でやったほうがいいのではないかと、そういう点に力点を置いていました。

ノルウェーは9ページ目以降に書いてございますが、非常にラッキーな点は、北海油田で石油の金がばかばか上がるんですね。したがって、年金で拠出しようとか、医療費をどうしようなんていう必要はなくて、積み上がった石油基金でかなり福祉を賄える。日本海にそんなのが出てこないかと思ったのですが、そういう非常にハッピーなところで、道路工事など、しょっちゅう穴をほじくり返していましたが、これは全部石油基金だと言っていましたし、非常に恵まれた国かなと思っておりました。

ここも年金は、基礎年金と2階建てになっている所得比例年金の2本立てで、基本的に税でやっているようであります。そのほかに、賦課方式の所得比例年金で拠出させていますけれども、それで賄い切れないところには、minimum pension という最低保証年金を入れて組み合わせてやるという格好のものです。3階建てには、民間の被用者の中で個人年金的なものを認めてやる。えらく公務員が優遇されているなという印象を受けましたが、それが一般財源でやられていていいのかねという議論があるようですが、今のところはそれがまだもっているようであります。

労働制度に課税する、social security tax という形でやっておりまして、ここもデンマークと同じように、早期退職制度を少し見直さなければいけないという問題意識を強く持っているようであります。

それから、付加価値税。10ページ目の囲みに書いてございますが、1970年、ここも標準税率20%を入れたんですね。それ以降だんだん上げてきて、現在のようになっておりますが、2つの軽減税率がございまして、12%、6%というもので食料品等々の軽減をやっています。これも、入れたときのさまざまな事情によって、入れざるを得なかった。できれば入れたくなかったんだけど、上げるときにパッケージでそういう形がされたのだ、というのが財務省のスタッフの説明でありました。

軽減税率については、クリスティアンセンというオスロ大学の教授が盛んに言っておりました。11、12ページの[1]、[2]、[3]、[4]に書いてございますが、軽減税率を入れても、有利になるのは高額所得者であって、所得再分配、低所得者保護から言うならば、これはちょっと筋が違うのではないか、あるいは、必ずしも食料品の価格は軽減税率でも下がらないよと。これはノルウェーの経験から言っているようです。それから、同じ金を使うなら、歳出面で使ったほうがいいじゃないのといった議論が盛んにあったようです。ここも新聞、書籍はゼロ税率が適用されているということであります。

当然のことインボイス等はがっちり入っているという形で、これも、今後、国際的なレベルでEUの中で使っていこうということのようであります。

日本では、スウェーデン・モデルという形でかなり情報も集まっておりますし、それなりのご理解をいただいていると思いますが、私どもも自分たちの目でスウェーデンの実態を確かめたいという形で、スウェーデンでは集中的にいろいろな人に会いまして、13ページ以降、スウェーデンにはかなりのスペースを割いて書いているかと思います。

スウェーデンは、年金にも社会保険料を使っているのです。基礎年金に当たるところですね。そこがノルウェー、デンマークと違うのでありまして、この違いは、保険料というもののメリットを認めろと盛んに言ってました。保険料でやるとインセンティブがある、つまり払ったものが返ってくるという意味でちゃんと納めるだろうとか、その種の話ですね。税でやると、日本でしばしば言われる、生活保護のようになって、もらいっ放しで制度に対して責任を持たないという点が問題ではないかと。

それから、スウェーデンは国・地方の関係がはっきりしておりまして、年金、生活保護のような現金給付は中央政府、医療は県、その他もろもろの社会保障サービスは市町村というふうにはっきりしておりまして、ここも国民負担率約74%ですから、デンマークと同じように、非常に高いものを持っているということです。

今、一つ問題になっているのは休業手当制度(sickness leave) というのがあるのですが、年休以外に、病気だという診断書を書いてもらうと、病欠になって手当がもらえるらしいのです。これがやたらと増えて困るということを、それこそ経営者側も政府側も言っておりましたので、これは制度の悪用という点が多々あるのではないかという感じがしております。

スウェーデンは、労働組合とか小売業界等へ行って、納税者の側あるいは制度を受ける側からいろいろな議論もしてまいりました。スウェーデン方式で年金を変えたことはそれなりに評価もしておりますし、今後のやり方としても、いい方向に行っているのではないかという議論でございますが、現金給付の社会福祉サービスのほうはやや行き過ぎた面もあるので、これは、今後少し整理していかなければいけないのではないかという議論を盛んにしておりまして、現にそういう問題について着手するということのようであります。

やはりここでも労働参加を高めるという意識が強かったし、それから、14ページ以降の公的年金制度改革、これは日本でもさまざまなことが言われていますから細かく申し上げませんが、賦課方式で、概念上の拠出建てということで、「オレンジレター」が来ることによって、拠出制であっても将来幾らもらえるよという情報を提供して、若い世代、今後もらえる人に対しての信頼をつなぎとめているということのようであります。

当初申し上げた、目に見える受益が若い頃から来るというのはまさにスウェーデンで聞いた話でございまして、これが、高い負担を支える一つの大きなインセンティブになっているのではないかと考えております。

それから、16ページ以降に書いてございますが、社会福祉制度は地方所得税で基本的に充てているんですね。子育てであれ、高齢者に対する手当であれ、住宅に対する手当であれ。そういう意味で地方所得税のほうが高いという格好になっておりまして、所得税のほうが透明度が高くてビジブルだ、付加価値税は何かわけがわからないで持っていかれるから、福祉の財源としてはやはり所得税のほうがいいのではないかということを、ターチー教授もおっしゃっておられました。

付加価値税の概要は、ここに書いてございますように、25%の標準税率、2つの軽減税率、12%と6%がくっついていて、食料品が12%、その他6%というのがまたくっついてるんですね。これは非常に複雑でコストが大きいと税務当局の人がおっしゃっていましたし、高い付加価値税になると、必ず付加価値税逃れが出てくる。レストラン、カフェなどは、レシート等を使わないでやってしまうという点がどうも問題ではないかということと、軽減税率をつくっておくと、どうしてもそれを増やしてくれという政治的な圧迫が非常にあるという感じですね。

インタヴューというのは非常に難しくて、向こうが考えていることと、こちらが考えていることがうまくマッチしないと話が転がらないのですが、日本的感覚から言って、「免税点は幾らか?」なんて聞くと、スウェーデンの当局者はわからないわけです。大体、免税点というのはないんですよ。すべての業者が払うということでありますから、そもそも非課税水準が3,000万とか1,000万なんていう概念はないんですね。だから、向こうもけげんな顔してるし、しばらく議論してこっちもわかったのですが、そういう話。

それから、転嫁が100%できるかなんていう議論も向こうとしては成立しない。というのは、100%転嫁になるのは当たり前なのです。したがって、日本みたいに、小売店あたりがここが非常に問題だとか言っても、よくわからないのですね。お国柄といえども、そういう点が随分違っているなという感じを持ちました。消費税に関する幾つかの感触の中で、それが議論として一番鮮明に頭に残っています。

それから、複数税率で、小売店が納税でいろいろコストがあるのではないかというのは、あそこは、8割ぐらいが日本で言う大手の小売業チェーン店でつながれていますから、バーコードが完全に発達している。バーコードでパッパッパッとやれば、25%ゾーン、12%ゾーン、6%ゾーンがすぐわかって、レシートもそれで打ち出されてきますから、資料としてつけ加えていますが、あっという間にはっきりしてきます。

よく言われている話としては、食料品を軽減税率にすると、スウェーデンの場合、25%が標準で、12%が軽減ですから、レストランで食べると25%かかるけれども、テイクアウトは12%である。だから、向こうのマクドナルドは、日本的に言うと、「ここでお食べになりますか、外にお持ちしますか」という質問はしないわけです。全部ボックスに入れてくれて外で食べるという前提で、12%。勝手に部屋に戻ってきて食べるのは構わないというわけで、部屋にもちゃんとテーブルがあるんです。そこは割り切っておりました。お盆に出してくれるというマクドナルドはストックホルムにもなかったですね。

そういうふうに税の対応の仕方はかなりはっきりしている、このような印象です。

最後に、二、三、個人的な印象です。これだけ高い負担になりますと、日本で言うとオールジャパン、オールスウェーデンか、オールデンマークか知りませんが、例外なくすべての人が負担するという税制度なり、社会保険負担制度にしないと成り立たないですね、見ていると。したがって、民主党が提案した年金の改定、自営業者。所得捕捉が北欧でできてなぜ日本でできないかという議論がありましたけれども、当たり前なんですよ。日本は所得税の空洞化と言われるように、20~25%の所得稼得者は非課税ですから、税務署と関係ないのです。ところが、北欧の国は、自営業者を含めてほとんど100%が税務署とつき合っていますから、パーソナルナンバーも含めて完全に捕捉されている上に、社会福祉のサービスのほうでさまざまもらっていますから、もらう過程において、自分の家庭の状況や何かを言ってるわけですからね。

そういう意味で状況が全く違う。スウェーデンで900万、デンマークで500何十万ですか、そういう小さな国と1億2,000万人の国とは違うんですよ。だから、スウェーデンが何だかんだと言っても、話にはならんという感じがいたしました。

もう一つは、先ほど来申し上げておりました、受益と負担の関係がきわめて明確であるという点で、今後、おそらく日本でも、消費税も含めて社会保険料を高めていくときには、負担が実感できるというところの、受益サイドの目に見えたものが必要でしょうね。それも今みたいに高齢者集中型ではなくて、全世代に広がっている受益も必要です。受益と負担のギャップをなくすというのが一つの命題で、負担が嫌なら受益のほうはそんなになくていいだろうし、受益がこれから高くなるなら、負担を高めていかなくてはいけないという議論のほうが、単に増税オンパレードですなんていう議論よりは生産的ではないか、このように考えました。

ちょうど時間もだいぶ使いまして、あとご自由に、ヨーロッパと北欧、北欧もヨーロッパに入っているかもしれませんが、大陸のほうについて我々が調査したことにつきまして、さらに詳細についてご疑問なりご質問があればという形で、しばらく時間を割きたいと思います。

では、私と奥野さん。それから、井堀さんは今日はやはり公務の関係で来られておりませんので、彼からもひとこと話を聞きたいと思いましたが、井堀さんもいずれまた個別に報告してもらう機会を設けておりますので、そのときに今回の調査旅行の結果も踏まえてやってもらおうかと思っています。

それでは、今回の税調の調査の結果につきまして、いろいろご質問があろうと思いますので、お出しいただきたいと思います。どなたからでも結構です。

林さん、どうぞ。

林委員

北欧の「信頼感」と「連帯感」ということです。先ほど最後に会長がお話しになられたことと関連すると思うのですが、連帯感とか信頼感をどのようにしてつくり出していくことが可能なのかという問題です。つまり、これは国民性の問題なのか、あるいは、「オレンジレター」のように仕組みを工夫することによって日本でも信頼感とか連帯感をつくり出すことも可能だと私は思うのですが、ただ一つ大きいのは、北欧の場合には誰でも高福祉を受ける機会がある、だからこそ負担をするのだと。いわゆる受益と負担の関係ですね。これは、受益しているかどうかということではなくて、失業したときには手厚い給付をもらえるといったような、高福祉という給付があるがゆえに信頼感とか連帯感というのが出てくるという具合には考えられないのでしょうか。つまり、受益と負担が一致しても低給付だと、果たして連帯感というのができるのかどうか、そのあたりをお伺いしたいと思います。

石会長

一番いい例は、今、日本は基礎年金6万6,000円でしょう。それで消費税は5%だよね。デンマークは10~14万、基礎年金でもらって、そのかわり25%ですよ。そういうチョイスなんですね。端的にあるものをつまみ出して言うと。それはたしかに高い、年金も含めて。大体、教育費ゼロ、医療費ゼロ等々、全部ゼロですから、やはり負担しなければいけないという気にはなるでしょう。

そこで、連帯感について、実は労働組合に行ってエコノミストの女性に聞いたのですけれども、おっしゃるとおりそれは難しくて答えられない、たしかに伝統的・文化的な背景もあるだろう、と。しかし、林さんが最後におっしゃった、受益が高いから払えるということとか、みんな相互に払っているから私も払うのだという相互チェック、その関係が厳しい。したがってああいうところは、脱税したり、いろいろな形でイリーガルに動いたら非常に罰則が強いでしょう、社会的連帯感の裏返しでね。

そうなると、500万の国か、1億幾らの国かになってくると思うんだな、コンセンサスを得るのは。でも、おっしゃるとおり、福祉の目的、プログラムをちゃんとつくれば、それから、「オレンジレター」みたいなものがあれば、それなりの反応は自然に出てくると思いますけれども、これからですよ、それは。

ほかに何かございませんか。

どうぞ、川北さん。

川北委員

奥野先生にお聞きしたいのですが、フランスの一般社会税についてです。これは一種の目的税的なものだということで、保健・社会保障省が担当しているということですが、こういった大型税を目的税的なものとして導入した場合に、省庁間の争いというのはなかったのでしょうか。フランスは日本と違って、かなり省庁間で流動的ではあると思いますが、それでも、こういったものを導入しようとすると相当軋轢があったのではないかと思うのですが、その点はどうなのですか。

奥野委員

単刀直入に、省庁間の軋轢がありましたかということは聞かなかったのですが、導入したときには、実は、いろいろな政権争いの中で最終的に「こういうものを設けたら」というような形で出てきて、しかも、きわめて低率だったので、比較的抵抗がなかったのかもしれません。

ただ、我々が最初にインタヴューに行ったのは、保健・社会保障省ではなくて経済財政産業省のほうなんですね。ここで付加価値税の話を聞くはずが、我々のほうが一般社会税の話に関心があったので、いろいろ聞くと、向こうはものすごくいやーな顔をして答えるわけですね。他方、保健・社会保障省に行って一般社会税の話をすると、実は彼が導入した本人らしいんですけれども、非常に嬉しそうな顔をして、「いや、これはうまくいってるんだ」と、一生懸命こうやる。そういう意味ではたしかにおっしゃるとおり、省庁間の争いのタネになっているなというのは率直な印象です。

ただ、先ほど申しましたようにきわめて低率から入れ始めていて、長い時間をかけてこれだけの税になってきているので、そういう関係なのかなというのが私の印象です。細かい経緯は、申し訳ないのですけれども、直接にははっきり聞く機会がございませんでした。

石会長

私も7、8年前に同じような調査をしたことがあるのですけれども、経済財政産業省のほうから言うと、付加価値税は一生懸命だったけれども、所得税のほうの改革は怠っていたのでしょうね。それはしようがないですよ、間接税の国なんだから。経済財政産業省側から言うと、そこにつけ込まれたのかなあ。一般社会税みたいなものがごくごく小さい形で入りましたから、これほど大きくなると思わなかったのではないですか、よくある話だけど。

それが今の結果で、今後どうなるかわかりませんけれども、所得税を補うという大義名分があったということでしょうね。あと、社会保険料を上げるのはいやだという側から言うと、意外に、広く薄い一般消費税みたいなものが受け入れられた可能性はありますね。

ほかにどうでしょうか。

どうぞ、宮島さん。

宮島委員

付加価値税の話で、特に税率を引き上げるときに軽減税率をどう考えるかという話が今そろって出てきて、おおむね皆さんのご感触は、税収減であるとか、税務行政上のコストの問題であるとか、やや中立性を欠くとか、そういう観点からあまり好ましくないという印象が一方で言われている。しかし、それを埋めるためには、社会保障給付を非常に手厚くして逆進性をカバーしなければいけない。そうなると、相当大きな政府なり負担率を同時に考えないといけないだろうということになると思うのです。

日本の今までのいろいろな議論から言うと、負担率なり、政府の規模をコントロールしながら、なおかつ逆進対策をどうするかというような議論になってくると、もちろんカナダのタックス・クレジットのような仕組みがないわけではありませんけれども、二者択一的な選択になるのか、もう少し工夫の仕方があるのか、少しご意見なりを伺えればと思いますが。

石会長

税率如何だと思いますね。今後、我々がこれからどういう議論になるかわかりませんが、仮に8%か10%くらいの話をしたときに、なおかつまだ軽減税率をするかどうかですね。本格的に2ケタの真ん中上ぐらいになったときにはその議論はあるとして、10%というのは、スウェーデンの軽減税率より低いわけです。だから、一本化でタックス・ディストーションをなくすという議論が、たぶん8%とか10%の世界ではまだ通用するのだと思います。つまり25%にもなれば、給付がしっかりしているから、そこで面倒を見られるよというけれども、10%くらいでは給付の面倒もそうまともに見られないということになれば、税収減になるのはよろしくないとか、食料品・非食料品の区別が難しいという話のほうが勢いを得るかもしれません。ただ、これはこれから議論したいと思います。

奥野さん、今の宮島さんの意見はどうですか。要するに、軽減税率を入れて歳出面で面倒を見たほうがいいではないかという議論と必ず結びつくから、大きな政府になるよという議論ですよ。

奥野委員

私どもが聞いた中では、複数税率に関しては賛成側と反対側と両方あったように思うのです。EU委員会なんていうのは、歪みが複数税率は出てくるから、その分あまりよくないので、まさに効率性という趣旨からだと思うのですが、大きな政府というよりは、むしろ支出でカバーしたほうがいいですよという議論ですね。

それから、先ほど申しましたけれども、一遍認めてしまうとなかなかやめにくい。しかも範囲がかなりグレーで、食料品といっても、まさかキャビアを軽減するのですかとか、いろいろなところが出てくるわけです。そこをどう切るかというのが難しくて、一遍認めたものを撤回するのは非常に難しいというようなこともある。軽減税率をやめて、大きな政府になってしまって困るというのは、ある意味で政治・経済学的な問題という面もあると思うのですが、軽減税率の場合でもそういう問題は一方ではあるのではないかというふうに思います。ただ、所得再分配とかそういうことを考えればある程度そういうことを考えるのはやむを得ないよねと、そういう発言をした人も何人かいたように記憶しております。

石会長

まだ方向性が定かでないということでしょうね。

どうぞ、神津さん。

神津委員

ちょっと軽減税率にもかかわり合いがあるのですけれども、付加価値税の逆進性を緩和するために導入せざるを得なかった。だけど、それは失敗であったというような政府関係者とか経済団体の意見があるということですけれども、これは、政府とかそういう団体のところへの調査ですから、当然だと思うのですけれども、国民的にはそのことについてどういうふうに思っているのかということが、お耳に入っただろうかということ。

なぜこのことを取り上げるかというと、信頼感、連帯感というのが当然あるからこそこれが成り立っているだろうとは思うのですが、その中で、クロスボーダー取引であるとか、闇のお仕事(ムーンライト・ワーク)というようなものがある。それから、休業手当の受給者が増えるというようなことが起こっていることは、温度差はないのだろうか。連帯感、信頼感があると思っている部分と、実際に国民との間に何かが起きていないのかというところが多少気になるところですが、その辺はご印象はありましたでしょうか。

石会長

多少どころか、大いに気になっていたのですが、一般の納税者に直に聞くとか、消費者団体に直接聞くというのが一番いい方法だったと思いますが、時間的に余裕がなくて、スウェーデンだけ、商業連合という、小売業界の5~6割を束ねているところに行って聞いてきましたけれども、小売業ですから、表面的には軽減税率を主張している。ただ、それほど強く政治的に動くというほどではなかったですね、その商業連盟のほうは。彼らにしたら、例えば日本で言うと、コンビニを経営したり等々、いろいろ複雑な小売業界が入っている中で、複数税率は面倒だと思っているわけですよ、手間暇の点で。それを考えると、逆進性云々の解消と関係してどこまで言えるかということは、本音とタテマエの違いといえば違いかもしれませんね。

それから、当然のことは、公の機関ばかり行きましたから、ムーンライト・ワークがどうだとか、脱税がどうだということについては、そういう事実はあるという指摘はございましたが、どの程度あるか、どうやって苦労しているかというところまでは、残念ながら、捕捉はできませんでしたが、私はどこの社会でもそれはあると思います。アングラマネーがどうだなんて議論もないことはない議論なのですが、それは残念ながら今回の調査ではできませんでした。だからこそ、みんなで払わなければいけないというスクラム的な国民的結束を訴えているんでしょうね。そういう悪いやつらを見逃すと崩壊してしまいますからね。そういう点は、制度的には厳しいけれども、現に避けられない面ではあると思います。そこはちょっと不備でしたね。

では、河野さん。

河野委員

今日、たまたま質問が、消費税を上げたときにどういうふうな上げ方をするかということに集中しているんですよね。福祉関連の話はお国によって事情がずいぶん違うし、その国でうまくいっているものが日本にストレートに来てうまくいくかどうか全くわかりません。だから、みんなあまり質問しないのだと思うけれども、総理は、石さんが最初に言われたみたいに、俺の任期中は上げないけれども議論は結構だよと、ぬえ的なことを言ってるわけだ。それが一番不愉快なんだけど、とにかくそれは言ってるから、どうせあの人は2年間やらないと思ってるから、それはあきらめているんだけどね。

ただ、消費税を上げるときに、どういう税率か、どういう内容にするかということはそれこそ自由に討論してくれと言われたから、討論することになっているし、今日はその初めだと思っています。あとで年内のスケジュールというのが出るそうで、今日はその走りみたいなことをやっているのではないかと思ったんですよ。ここに労働者から消費者からたくさんいらっしゃる、外部団体もあるしね。上げるという仮定のもとで、一体この軽減税率をどう考えるかということについて、1日くらいは集中的にやる必要があると思います。今日は散発的な議論しか出ていないし、石さんもアバウトなお答えしかしていないと思うけれども、それはどこかで用意されているんでしょうね。それをやらないと、本日は、上げたときの条件をこれだけ税調は詰めましたよということを世間にアピールすることにならないと思います、散発的議論をやっていたのでは。

石会長

わかりました。テイクノートしておきます。

吉岡さん、どうぞ。

吉岡委員

私も今日の会議というのは、河野さんがおっしゃるように、これから来年以降の税制をどう考えるのかということで非常に重要な位置づけになっていると考えております。先ほどのご説明の中で、政府に対する信頼性ということをおっしゃられて、本当に重要なことだと思っているのですけれども、消費税の導入に際しまして、福祉問題、福祉にお金が必要だ、だから消費税を導入する、そういうことが言われていたと思います。それに対して、疑わしいという消費者サイドの意見があって、反対の意見が非常に強かった。ご承知のようにありました。導入されてみると、一般会計に入ってしまって、本当に福祉に使われたのか、高齢社会の中でどう消費税が使われているのか、この辺のところが見えないというのが実態だと思っております。逆進性の問題も、今までもずいぶん意見が出ておりますけれども、そういう意見に対しては十分に納得がされていないというのが現状です。

現在に至りますと、少子・高齢化ということが言われまして、若い所得の低い層も含めて不満がたくさんある。そういう中で本当に政府を信頼することができるのかという問題があります。その辺のところを考えて、信頼できる政府にならなければ税の問題の根本の議論ができないのではないか。ヨーロッパではこうだということを言う場合に、では、どうやって信頼を得ているのか、もう少ししっかりとした報告が必要だと思いますし、そういう考え方から申しますと、あちらの消費者団体、それから、一人ひとりの消費者がなぜ信頼しているのかという、その辺を調査していただきたかったと思います。社会に対する連帯感についても、本当に連帯感を持つことができる、連帯感の形成のためにどういう政策がとられているのか、そういうことが重要ではないかと思います。

それと同時に、税の捕捉の面においても本当に公平・透明な捕捉ができているのか、使われ方についても十分な説明がされているのか。そういうことをもう少し十分に税調の中で議論がされて、それが広く世の中に公開されていく、そういうことがされなければいけないのではないか。特に11月に向けて、だいぶ混んだスケジュールをお考えのようですけれども、公開性、わかりやすさの面も含めてお考えいただきたいということを申し上げたいと思いました。

石会長

ありがとうございました。河野さんがおっしゃっていただいた軽減税率と併せて、今の吉岡さんは、おそらく福祉目的税の是非か、福祉財源との絡みで十分ここで議論しなければいけないテーマでありますので、集中審議ということはおっしゃるとおり必要だと思います。いずれ将来、できるだけ早い時期にこれを一回受けとめてここで議論したいと思っています。

どうぞ。

草野委員

間接税の話が中心だったと思いますけれども、先ほど直接税と社会保険料の問題について奥野先生も石会長も言及されたのですが、北欧とドイツ、フランス等のヨーロッパでは少し違うと思います。所得捕捉に対する信頼性といいますか、その辺について、ご印象でもいいのですけれども、感じられたことがあったら、ちょっと教えていただきたいと思います。

石会長

源泉徴収制度が発達した日本なるがゆえに、源泉でないところの所得についてはきわめて疑わしい目で見ておりますよね。先ほど申し上げたように、ほとんどすべての人が納税者であるという世界においては、おそらく税務署との関係はかなり密だと思います、個人的には。具体的に例のクロヨンとか、トーゴーサンみたいな数字があるかどうか聞いてきませんでしたが、少なくとも税務当局としては、すべての税務に関して、税務署についての情報は持っているという話でありましょう、そういう話も現にしていましたから。

所得漏れについては、日本ほど大きな社会的な批判はないのではないかと北欧に関しては思っています。それと、何せパーソナル番号というのでしっかり捕捉されていますから、資産内容も含め、今度福祉をもらうときには、そっちのほうのミーンズ・テストも入ってきますから、歳入・歳出一体化して個人個人の所得を捕捉する手段ははるかに発達していると思います。それが息苦しいというのか、それがいいというのか、これからの議論だと思いますが、奥野さん、どうですか。

奥野委員

我々も実は関心があって、ずいぶんいろいろ聞いたことは聞いたのですが、非常に複雑というか、視野の広い話なので、完全に理解するほど情報を持っているわけではありません。ただ、2つのことは言えて、1つは、今まさに石会長がおっしゃったことですが、源泉徴収というのはやはり日本なので、サラリーマンの所得に関しては、一般社会税は給与から天引きということらしいのでややそれに近いのかもしれませんが、一般論としては、サラリーマンの捕捉率は日本で高いということがあるだろうと思います。

もう一つは、それ以外の事業者の所得に関しても含めてですが、例えば付加価値税のインボイス制度とかそういうものも含めて、ある程度税務当局が情報を握れる可能性もあるようでもあります。そういう意味では、ひょっとしたら付加価値税、あるいは消費税のインボイス方式というようなもの、あるいは納税者番号とか、給与所得者以外の人の所得の捕捉、資産の捕捉という仕組みをきちんと整備していくことが日本においても必要になってきているのではないかなということが私の印象でございます。

石会長

ほかに、この調査報告についてご発言ございますか。

では、上月さんを最後にして。

上月委員

今、インボイスのお話が出ましたので、ちょっとお伺いしたいのですが、我々実務家の間では、免税点が1,000万円に下がったことで現場では非常に大変な思いをしておりますけれども、こちらで、免税点というものは全くありませんと。そうすると、零細な本当に小さい業者も全部インボイスですよね。そこで何も混乱なく--この報告を拝見いたしますと、非常にスムースで何ら問題のないようにずっと書いてございますけれども、現実にやはりそういうことなのでしょうか。

石会長

インボイスは付加価値税を入れた当初から入ってますからね。ただ、スウェーデンの、北欧の最後の18ページに、零細事業者のほうが徴税コストは高くて、インボイスをつくるコストもかかっているという点についてははっきり申しておられますが、インボイスイコール付加価値税なんですよ。付加価値税があるということイコール、インボイスが入っているということですから、改めて30年前に入っている話をほじくり返すということはなさそうですね。日本みたいに、なくて入れる、それで零細企業がいっぱいいるよ、という世界とはだいぶ違うような感じがします。ただ、これからその議論も日本の中でしなければいけないでしょうね。そう思います。

それでは、次なる議論をどうしようかという形で、話がそちらに行っている点もございますので、残った時間を、今後の秋以降の議論、これをどういうふうに設定してやろうかということにつきまして、今日はキックオフの新しい会合でもございますから、議論をしていきたいと思います。

最初に、主税局の総務課長・古谷さんから、スケジュールとして考えております案をお示しいただきたいと思います。

どうぞ。

古谷総務課長

それでは、もう一つの資料で「税制改革に関連する今後のスケジュール」というのがございますので、お開きいただきたいと思います。

表紙をおめくりいただいて、広い「スケジュール」という紙がございます。それぞれ厳密には、2ページ目以降に付けてございますオリジナルな文章の抜粋にあたっていただければと思いますが、簡単に文章をスケジュール表のような形で整理してございますので、ご覧いただきたいと思います。

まず上のほうは、昨年暮れの与党の税制改正大綱に書かれていることでございます。こういう内容で政府与党合意ができているわけですが、まず年金改革に関連しまして、基礎年金の国庫負担割合を、右のほうですが、平成21年度までに、安定した税財源を確保し、1/2に引き上げるということになっております。その途中段階で、17年度及び18年度に、安定した税財源を確保して、段階的に引き上げるということでございまして、こういう内容の年金改革法が先般成立してございます。

それから、三位一体改革の関係の税源移譲につきましては、17年度、18年度のところですが、18年度までに所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実現することになっております。

これらとの関連で税制改革についても段取りのようなものが決められておりまして、17年度及び18年度のところでございますが、「わが国経済社会の動向を踏まえつつ、定率減税の縮減・廃止とあわせ、三位一体改革の中で、国・地方を通じた個人所得課税の抜本的見直し。これにより、17年度以降の基礎年金国庫負担割合の段階的な引上げに必要な安定した財源を確保する」ということになっております。

19年度のところでございますが、「19年度を目途に、年金、医療、介護等の社会保障給付全般に要する費用の見通し等を踏まえつつ、あらゆる世代が広く公平に負担を分かち合う観点から、消費税を含む抜本的改革を実現する」。

こういう内容が決められたわけですけれども、これらも踏まえまして、下の段ですが、今年6月に、これは政府の方針として閣議決定をされていますが、「基本方針2004」というのが決められております。4つ書いてございます。まず、三位一体改革であります。16年度のところですが、「全体像を秋までに明らかにし、年内に決定」するということで、この全体像につきましては、小泉総理からの指示で11月半ばを目途とすることになっております。

全体像には、国庫補助負担金改革の工程表、税源移譲の内容、交付税改革の方向、この3つを一体的に盛り込むことになっています。このうち税源移譲は、「概ね3兆円規模を目指す」とされておりまして、「その前提として地方公共団体に対して、国庫補助負担金改革の具体案を取りまとめるよう要請し、これを踏まえ検討」と、6月の文章ではなっておりましたが、この具体案が8月下旬に地方6団体から出ていまして、これを踏まえて大臣会合や国と地方の協議の場が動きつつあるということでございます。

それから4つ目のマルですが、「税源移譲については、18年度までに所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施。その際、個人住民税所得割の税率をフラット化する方向で検討。あわせて国・地方を通じた個人所得課税を抜本的に見直し」、こういったことが16年度中の作業として決められていまして、実施は18年度までにということになっております。

社会保障制度全般の一体的見直しという点につきましても、16年度に、そこにございますような中期的な観点から論点整理を行いまして、18年度末を目途に結論を出すというふうになっております。

基礎的財政収支の黒字化、いわゆるプライマリーバランスの黒字化を2010年代初頭に達成する点に関しましては、歳出改革路線を堅持することを前提に、18年度までに必要な税制上の措置を判断する、こうなっております。

税制改革については、三位一体、社会保障、基礎的財政収支の黒字化との関連で、一番下でございますが、与党大綱も踏まえ、相互に関連する税制改革案を包括的かつ抜本的に検討し、18年度末までを目途に結論を得るというふうになっております。今後、16年度、17年度、18年度、19年度と、こういった改革が同時並行的に進んでいくという状況にございまして、こういったスケジュールを踏まえて、当税調でもご議論を進めていただければというふうに考えているわけでございます。

なお、次の2ページをご覧いただきますと、昨年暮れの当税調の「平成16年度の税制改正に関する答申」におきましても、「基本的考え方」の中で、「『あるべき税制』の具体化に向けて」ということで、2つ目のパラグラフ、「『あるべき税制』に向けての抜本的改革は、持続可能な社会保障制度の構築、国・地方のいわゆる三位一体の改革と整合性をとって行う必要があり、2010年代初頭のプライマリーバランス黒字化に取り組む上でも避けて通れない課題である」と、同じようなご認識を示していただいているところでございます。

簡単ですが、以上でございます。

石会長

今、与党税制改正大綱とか、諮問会議の「基本方針2004」に沿ってご説明をいただいていますが、我々税調として、これをどういう形で、どういうスケジュールでやるかというのはまた違った視点から議論も可能なわけです。来年度税制改正が表に立ってくれば年度内の議論になるし、来年度以降であれば来年の今頃以降の議論になる場合もあるし、スケジュールから言いますと、短期の問題と、中長期的に視野を掲げた問題と、幾つか組み合わせはこれからたぶん出てくるだろうと思います。

ただ、来月以降、週2回くらいある週もあるというイメージで、11月いっぱいで短期的な問題のある論点は整理したいと思っています。1月以降の話はこれからまた議論ですけれども、そういう意味で少し長め、それから短めの問題も含めまして、河野さんから消費税を集中的にやれというご議論がございましたし、吉岡さんからもそういうご意見がございました。どういう論点で、どういう点をまず最初に、つまりプライオリティーをつけて議論しなければいけないので、それについて税調としてどう考えるか、いろいろご意見があろうと思いますので、お出しいただきたいと思います。どうぞ。

河野さん、重ねてありますか。消費税以外のところで。

河野委員

今度の税調が今日開かれたのですけれども、毎年、秋の総会の前には、クラブの記者諸君が、今年は税調でどういう議論をやるんだというのを書くんですよね。それは恒例のことになっていて、それに石さんのインタヴューがつく。前は加藤寛さんだったけれども、これがパターンになっているわけ。今年は、各紙が取材した結果の新聞を読めば、99%、ほとんど共通している。所得税の問題に焦点が当たっていて、1年でやるか、2年でやるかという話に大ざっぱに言えばなっている。それは税調の委員も全部了解している話で、そういうことだろうなと思っているんですよね。

これも景気論との絡みで、入れたときは景気がどうだからと、有無を言わさずこの大幅のときにやっちゃったわけだ。今、少し戻そうと思うと、また景気のところで、景気論だからだめよ、ゆっくりやれ、あわてるな、というふうな話がすぐ出てくる。この景気論というのが最大の足かせですよね。方向で、そんなことやっちゃいかんという議論はほとんどないわけだ、世の中には。どういうタイミングで、どういうふうにやったらいいかという議論しかないんですよ。その点は実に落ち着いた議論になっていると私は思っています。

だから、今年の秋の話は、細かい具体的な話は各省がそれぞれ持っているから、聞けば聞くほど面白くもあるし、興味もあるけれども、税調として与えられている大きな課題は、この問題に、いつ頃、どういう大胆なことが言えるかということの一点に尽きるのではないかという気がします。ほかにたくさんあるかもしれませんけどね。

石会長

おっしゃるとおりだと思いますが、仮に定率減税の廃止・縮減のある案を出したとしても、実施は2006年1月です。そうすると、景気の判断を今から1年3カ月後のことは誰もできませんよね。したがって景気については、ひとまず案を練る際の制約にはならない。案を練っておいて、いざ入れようというときに、しかるべき延長するとか何とかとすれば残ると思うんですよ。今の景気と、先の見通しが悪いから、今、議論してはいけないという話ではなかろうと思っています。そういう意味で景気の問題とは切り離して、廃止・縮減の中身を議論する余地は十分あろうと思っています。

河野委員

その意見、大賛成です。

石会長

ほかにいかがでしょうか。もっと全体像で。我々、あらゆる税目について議論しなければいけないというのはお分かりいただけていると思います。どこからやっていくかというのは時間との闘いですから、やり方によっては回り道をしたり、ダイレクトにいろいろなことができなくなったりもしますし、長い目でのビジョンも必要でしょうから。

尾崎さん、何かございませんか。昔の経験から言われて。

尾崎委員

昔の経験からなんですけれども、先ほどどなたかのご質問、ご意見の中でちょっと気になったのですが、消費税を導入したときは本当に福祉のためという議論だったかなというのを、今、思い起こしていたのですが、会長、いかがですか。私の記憶では、まず直間比率の是正。あまりにも直接税に偏っていないか、所得税の税率があまりに高すぎないかという話ですね。もう一つは間接税制度。物品税というのがあまりにも遅れているのではないか、指名手配で課税するというのはおかしいのではないかという話。それからもう一つは、今問題になっている少子・高齢化。その頃はあまり問題なかったのですけれども、若い人の数が減るよ、高齢者が増えるよ、支えきれなくなるよ、それで高齢者も含めて負担する税制を考えたほうがいいのではないか。この3つだったと思うのです。たしかに福祉目的税の話もありましたけれども、間接税制度の改正、直間比率の是正、少子・高齢化に備える、この3つでスタートしたと思うのです。その後、福祉の問題といいますか、特に年金の問題なんかが大変なことになってきまして、頭がみんな福祉のほうに行っております。それから、3%から5%にしたときの議論はちょっと違うと思うんですね。

原点に戻ると、そういうことであったということでありますのと、もう一つ、所得の把握といいますか、課税にあたっての透明性というお話があったのですけれども、不透明なのは納税者側なんですよね、政府側ではなくて。政府側が納税者側の不透明なものを把握できないことが問題なのであって、そこをどうするかということなのです。税務署なり課税当局が不透明にしているわけではないということは、やはりはっきり認識してかからないと議論がおかしくなるような気がします。そういうようなことも含めて、私もやはり消費税の問題、河野さんおっしゃったように、ちょっと一遍やってみたほうがよろしいのではないかと思います。

石会長

竹下さんが導入し、橋本さんが3%から5%に上げたというあたりの改正、私もそのとおり思っています。入れた当時は直に福祉という発想はなかったと思います。村山内閣ができて、例の何か組み合わせがあったじゃないですか、先行税制とあとの増税が云々かんぬんというところで、橋本内閣のときに3%から5%と。あのあたりになってだいぶ福祉の問題が出てきたと思います。ただ、税調でそれを認識して、福祉目的税でやろうか何かという話はまだなかったですね。これからの話だと思います。

どうぞ。

尾崎委員

つまり、レベルとしての増税の話ではなかったんですよ。所得税を減税するということと、全体のレベルを上げるという話ではなかったわけです。これから必要なのは、レベルとしての増税をするかどうかということ。これ、みんな避けて通っている問題なのですが、この議論をどうしてもやらなくてはいけないという気がします。

石会長

それから、組み合わせで所得税減税、法人税減税はたぶんもうできないと思いますからね。昔はネット減税、税収の中立性とかいうことを高らかにうたっていましたけれども、そういうことでないときに、逆進性の問題とか、軽減税率の問題とか、福祉目的税の問題とか出てくるでしょうから、税調としてその辺は本格的に議論する場を設けて、今後、議論しなければいけないと思います。

後段おっしゃった、税務署ではなくて納税者というのはまさにそのとおりですけれども、それを我々として訴えたところで、あまり生産的な議論にならないのではないですか。まさに認識はそのとおりだと思いますよ。

尾崎委員

認識さえしていただければ。

石会長

はい、わかりました。

ほかにいかがでしょうか。まだ若干時間がございます。今後、いろいろご要望があると思いますので、あればどうぞ。

草野委員

先ほど定率減税の話がありましたけれども、石会長が、やるにしても2006年の1月からだとおっしゃったですね。そのとき景気がどうなっているかわからない。全くそのとおりだというふうに思いますけれども、ただ、入れた経過というのはあるわけですから、そこはしっかり押さえておいていただきたい。議論することは私も反対するつもりは全くありませんので、そこは押さえておいていただきたいというのが一つ。

それから、これは石会長が一番ご苦労されるのでしょうけれども、例の「社会保障の在り方懇」、石会長もメンバーですけれども、税全体と社会保障全体の整合性をどう取るかという議論が、当然、向こうで行われますよね。ただ、向こうは平成19年の3月までに結論を出して実現しようということになっています。こちら側の税調との時間的な関係も含めて、そこをどういうふうに整理されていくのか。もし石会長のお考えがあれば、お聞かせていただきたいと思います。

石会長

まず後段のほうからご説明します。今年中、12月までに、主要な論点を、年金、介護、医療、一般福祉等々をやりたいと言って、それが月1回の会合で、私はそんな大きなことまでできるわけないと思っていますので、年金財源を税でやるか保険料でやるかという本格的な議論はそのあとだと思っています。

今日、北欧型のモデルで出したのは、デンマーク・ノルウェー型で基礎年金を税でやるほうがいいのかという事実と、スウェーデンみたいに両方合わせてやるのがいいかという話と、いろいろケースも出ているわけで、そういうことを踏まえて、おっしゃるとおり、社会保障の懇談会とは別にここでやってもいいのではないかと思っているんですよ。税調としてはこういう意見がありますよという形のことを向こうに紹介してもいいし、その辺は、向こうがやるまで待ってようとか、こっちが遠慮するということは全くないので、どんどんやったほうがいいと思っているのですが、宮島さんの社保審でもその辺の議論はするのですか。

宮島委員

ある程度はするかもしれませんけれども、石さんがおっしゃったとおり、あの回数で詰めるのはちょっと……。

石会長

詰められないですよ。だから、各審議会がインディペンデントにどんどんやって、受け皿としてこの中で扱ってもいいと思いますが、いずれその辺は、ここでも議論していただきたいと思っています。

ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。

これから少しインテンシブに会合を開いて、議論しなければいけないという感じを持っております。先ほど古谷さんからご説明があった、横長のスケジュール表でわかりますように、社会保障改革、財政構造改革、三位一体、それはすべからく所得税、消費税に絡んできます。いずれにいたしましても我々としても、法人税の問題、資産課税の問題もしなければいけない時期が来ると思いますから、税制全般にわたって、今後、中期的に議論は展開あるべしというふうにお考えいただきたいと思います。

当面のスケジュールということで、9月から10月までかなり混み合ったスケジュール表が出ておりまして、基礎問題小委員会を2回やって総会を1回やるという、3つ組み合わせの表ができております。これですと、基礎問題小委員会である程度まとめたものを総会でご承認いただくという、総会が承認機関になってしまうという危惧をお持ちの、総会のみご出席のメンバーの方もいらっしゃるかと思いますが、総会からいろいろな問題を発していただいて、基礎問題小委員会で詳細を詰めるという逆のコースもあり得べしだと思っています。総会は単に基礎問題小委員会の報告を聞きおくだけではなくて、もう少しいろいろな形で問題を提起していただいて税調全体の議論を誘導していただきたい、あるいは指導していただきたい、このように考えています。

11月の日程はいろいろな事情があってまだ固まっておりませんが、できれば、昨年もそうでしたけれども、11月の最後の週ぐらいに、来年度税制改正に対する「答申」という格好になるのでしょうか、まとめて、土俵の枠組みをつくって、党税調等でご議論いただく場をつくりたい、このような考え方を持っています。11月の中・下旬までは混み合ったスケジュール表があるということをあらかじめご承認いただきたい、このように考えています。

三位一体は、たぶん、11月中頃を目途に諮問会議あたりで案がまとまってくる。そうなると、具体的な税目、いついつまでというような話が出てきた段階で、あるいは、どのくらいの規模でやるかということも決まってくると思いますから、そのときに受けとめたいと思っています。ただ、三位一体は、来年4月にすぐ所得税から住民税というふうに行くのかどうか。それより、今ある所得譲与税というので1年つなぐのではないかと私は個人的に思っていますけれども、そういう意味では、所得税、住民税のスイッチの具体的な基本設計はちょっと時間がかかるかと思っています。

一口に3兆円を所得税で減税して地方にというけれども、3兆円を現行所得税からどうやって減税させるか、これは難しい問題ですよ。税率でやるのか、課税最低限でやるのか、そう簡単ではない。そういう基礎工事こそは税調の役割ではないかと思っていますので、それは率先して引き受けてもいいのではないかと思います。また、そのときはそのときでお願いいたしたいと思っています。

あと、ご説明することは単なる報告事項でございますが、電子メールとか郵便で国民の皆さんからいろいろなご意見をいただいております。そこで今回、昨年の8月からちょうど1年くらいの間に寄せられましたものをまとめた冊子が、入り口にあると思いますので、ご関心をいただいてぜひご覧いただきたいと思います。約110件あるようで、各種所得控除の問題とか、住宅・土地税制の見直しについての問題、それから消費税についての問題、特に、消費税の総額表示の義務づけについてのいろいろなご意見等が来ているようでございますので、ぜひ見ていただきたいと思います。

最後に、今日、問題になるかと思ったのですけれども、豊島区で「放置自転車等対策推進税」という奇妙奇天烈な税金が入って、それをまた総務省が同意したとか同意しないという話があって、私、豊島区民なものですから、ときどきコメントを求められまして、いささか当惑しております。次回、特に総務省にお願いして、この辺の事のなりゆき、いやいや同意したのではないかという新聞もありましたけれども、その辺のいやいやなのか、積極的なのかも含めて、いろいろ情報を提供していただきたい。これは課税自主権にとって非常に大きな問題ですよ。今後、こういうのがどんどん出てくると、本来の課税自主権とまた違った方向に話が転がり出す可能性もありますので、税調としてもしかと情報を整理しておきたい、このように考えております。

次回の会合は、9月28日火曜日、申し訳ありませんが、2時ではなくて2時半という形で30分遅らせて開始させていただきます。それから、基礎問題小委員会は10月1日を予定し、その後、5日に総会がある。このスケジュール表に従ってご判断いただきたいと思います。

それでは、ほぼ時間にもなってきましたので、これで終わりにいたしたいと思います。どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。