基礎問題小委員会(第17回)・総会(第14回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成16年6月22日(火)14:52~15:09

石会長

30分刻みでありましたが、基礎小と総会を終えましたのでご報告します。総会のほうは参加された方、いらっしゃったと思います。今日は、長い間やってきました例の構造変化の「実像」把握の報告書をまとめまして、ご承認をいただくということを基礎小と総会でやり、総会のほうでもう一つ、税務の電子化の問題につきましてご説明いただいたという形になっております。そこで、この基礎問題小委員会の報告書のほうは、既に内容的にはもうご説明を受けていると思いますので、あと何がご質問がありましたら受けたいと思います。基本的な書き振りのスタンスについて二、三、補足をしておきたいと思います。

これをやった結果として何をくみ取るか、あるいは何を目指してやってきたかということでご質問あろうかと思いますが、今回は、今日も申し上げたんですが、かなり自己抑制的にこのペーパーをまとめたつもりであります。したがいまして、内容に細かく立ち入った、つまり入り口から入って奥までずかずか入り込んだという形のものではなくて、とりあえずこれまでのファクトファインディングスに基づいた重要な論点を整理して、そこから何をくみ上げるかというのは、ある意味ではまだ各人のいわゆるジャッジメントに任せているという面があるかもしれません。具体的には、秋以降の議論にこれを使いたいと思っていますし、そういう形でいいじゃないかという議論が今日、大半の方のご意見でございましたので、そういう形で秋以降の、言うなればわれわれの共通の財産にしたいと、このように考えております。したがいまして、その点につきましては今日は内容の修文等々はございませんで、まあこれでよかろうという形になったわけであります。

もう一つ、前回、ちょっとあまりにも平凡すぎてサプライズがないじゃないかという話がありました。なんか表現等々をサプライズ的な要素かあってもいいんじゃないかというご意見もあったんですが、まあ税調はそういう柄じゃないですからね、やめました。地味に淡々と書くというところがわれわれの餅は餅屋でありまして、内容で勝負というところですね。そういうわけで、表現はあえてそういうサプライズを起こさないような書き方で一応まとめたつもりでありますので、そういう視点で見ていただけたらと思います。

それから1点だけ、内容的に今後の課題として押さえたのは、人口減少社会の価値なんですが、これはたしか4ページだったかな…中位推計というのはあくまで寄りかかっているけれども、もう人口のこれまでの経過を見ると低位推計がメインになっているんじゃないか。したがって、低位推計でとりあえず一番厳しい状況で人口問題を考えて、それをベースにして議論したほうがいいんじゃないかというご提案がありまして、別に修文云々を言う気ではなかったんですが、まあそういう視点も今後あり得るかなとは考えております。厚いほうの参考資料のなかには、上・中・低の推計がみんな並んでいるところもございまして、われわれとしても十分に低位推計も頭に入れているということは、この資料に出ております。ただ、それをどう使うか、どっちがどこだという議論はしてなかったということであります。まあ国全体が中位推計でやってますから中位推計に寄りかかりましたけれども、今後の課題として、そういう問題がでてくるときには再度検討はしたいと、このように考えております。

それから、8月末から9月にかけて一応2チーム、海外調査ということで出張し、行き先は奥野、田近両委員でドイツ、フランス、ベルギー。ベルギーはEUがありますから、そこへ行ってもらう。それから私と井堀特別委員で、北欧のデンマーク、スウェーデン、ノルウェーと3か国を回ってくるということを考えております。そこで、この2チームとも共通の問題意識があるんですが、いわゆるわれわれがやってきましたさまざまな構造変化みたいなのが各国で起こっているのか、それから公的部門としてどういう役割があって、その財源として、まあ税なのか保険料なのかという問題が、たしかどこの国もあるだろうと思うし、なにぶんにもヨーロッパ諸国は非常に高い率の付加価値税でやっているわけですよ。もう20%を超えている国がいっぱいある。特に北欧なんぞは22%とか24%、25%となっているような世界で、一体福祉・財源とのリンケージですね、これをどうするかとかいう議論もございます。そういう意味で、しばらくその辺の視点からヨーロッパ諸国のことをよく調べてませんので、調べて、まあ言うなればわれわれ、現に秋以降、議論の俎上に乗せなきゃいけないようなテーマも外国でどうなっているかということを調査してきたいと、このように考えております。

そういうわけで、この海外調査の報告をまずまとめ、報告した段階で、秋以降の議論を始めたいと考えております。秋以降、いろんな議論があるということは皆さんも先刻ご承知と思いますし、われわれもそれなりの大きな問題がありそうだと思います。まあいつ、どういう段階で、どういう仕組みでやるかということにつきましては、まだまったく読みきれておりません。おそらく選挙以降のいろんな体制如何によるんだろうと思いますので、そこはこれから議論していきたいと、このように考えています。

そんなところかな、なんかご質問があればお受けいたしますが。

記者

さはさりながら、税制改革のところで具体的にどういうイメージで…。

石会長

構造変化のところ?

記者

ええ、そのあたりで先生のお考えなんですが。

石会長

つまり、例えば、家族、就労、グローバル化、価値観、ライフサイクルとやってきて、これをどういう形で税制改革のマップに落としていこうかということで、どう考えているかということですね。

これはまだ税調自体で議論しておりませんから、あくまで私なりの考えですけど、ただ、私とて、やってる最中にですね、ここでの構造変化、これはまさに所得税改革のここに結びつくかですね、ここだからこうだというそういうリンケージはしておりません。が、ご承知のように、シャウプ税制以降、戦後の税制はずっと進んできたわけですが、やはり自ずとですね、あるイメージがあったと思いますよね。まあそれは、端的に言えば、家族構成というのは夫婦と子どもがいるというのが標準世帯だけれど、それが大きく崩れてるし、片稼ぎというのが前提だったけれども、もう共稼ぎのほうが多いとか、そういうことから言えばですね、所得税に絡むいろんな控除について、それなりに見直すロジックはあるだろうと思う。それからグローバル化という世界で議論するならば、やはり今の税制というのは高齢者の方に対して非常にあったかいですよね。私自身も高齢者になったから続けてもらいたいんだけども、まあそうも多分いかないんでしょう。要するに、いろんな形で控除が高齢者向けにある。つまり、社会的弱者としての地位を与えてきたわけだけれども、これはある意味では基本的に見直さなければならない方向なのかもしれないし、それからよく年金改革あるいは社会保障改革で、オールジャパンで負担せいというようなことを大分言う人から言えばですね、まあ消費税というような話が当然でてきて、それに対してのしかるべき担い手という地位は多分あるんでしょう。

だから、まあ「機会の平等」というあたりが「結果の平等」より喜ばれているということならば、それはある意味での資産の再分配の話があるのかなと思ったり、まあそれなりの芽が出てるんじゃないかなと思いますけどね。それをまあこれからどうやって、秋以降、税制改革のなかに溶け込ませていくかというあたりを議論しなきゃいけない。そういう意味では所得税、資産税、消費税、それからグローバル化云々の形から言えば法人税あたりも絡んできますかね。まあそういうわけで、十分にタネをまき、エサをまいてますから、どういう作物ができ、どういう魚が引っかかってくるかは、これからのわれわれの議論だと思いますけどね。

というような抽象的な話でも、何となく言っていることはわかるでしょう。

記者

時間軸のイメージとしてはどういう感じですか。

石会長

時間軸のイメージはですね、まあ端的に言えば、金融所得課税の一元化のところは何となくできるものかなという意味で順番が少しついてきたなと思いますが、この構造変化の「実像」把握についてはですね、今申し上げた所得税、消費税、法人税、すべての税に絡む話ですから、そこでどうかということになると、つまり端的に言えば、年末の税制改革に引っかけて、来年の税制改革で実現するものがあるかどうかですね。まあこれは所得税のなかに一部あるのか、なんかほかのところであるのか、分かりませんけど、ちょっと時間軸はまだ定かでないですねえ、はっきり言って。

まあその前にいろんな議論もしなきゃならないことがありますからね。例えば定率減税なんていう議論もあるかもしれないしね。それから、まあそのほかに税源移譲の問題があったり、それから年金の財源確保の問題と、あとさまざま転がってますから、これと今までやってきた基礎研究とがうまくドッキングするような方向でなんか議論ができればとは思ってますけどね。

記者

働き方の多様化、フリーター問題なんですけど、これについて今回いろいろまとめられているなどありまして、これは税でどう対応していったらいいという、現時点でお考えですか。

石会長

いやあ、難しいですね。フリーターと税というのは、なんか一つのある現代の世相を切るような一つの視点かなあとは思いますけどねえ…。どっちかというと社会保険料の負担みたいには絡んでくる可能性は十分あるんですよね。フリーターの問題というのは、そういう問題ありますよね。税になるとどうでしょうかね…、ちょっとまだそこに思い至ってませんが、ただ、フリーターの人の所属というのは非常に不安定で、短期で変動が激しくて、元来、正規雇用者のもとで安定した所得が、右肩上がりの世界でどんどん出てきてですね、それを源泉徴収義務者である雇い主が払ってなんていうような、きわめて安定した所得税の徴税機構が壊れてるのは事実ですよね。そこからおそらく空洞化みたいな問題も出てきてるんだと思いますが、それはちょっともう少し実体的に把握する必要が多分あるんでしょう。まあ、それはこれからの議論と思いますが、非正規雇用者と所得税の関係というのはやはりこれからは大きなテーマでしょうね。

そういう意味で、具体的にどうしたらどうすべきだということは考えておりません。ただ、重要な論点であるということは言えようかと思ってます。

記者

先程と重なると思うんですけども、人口減少と、今回ずっと減少していくと21世紀はと思いますけど、これについてはどう対応すべきか。

石会長

つまり、税でかい?

記者

ええ、税のほうです。

石会長

これもおそらく、少子化にどう対応するか、高齢化にどう対応するかという、これはかつて問題にはされているんですけどね、これはまさに税だけで勝負できる、税だけで対応できる問題じゃないと考えております。税調もまさにそうだと思ってます。で、税が役割を演ずる領域は、ほかの手段に比べれば相対的に小さいのではないか。端的に言えば、税を払ってない人は関係ないわけですからね、税を使うというのは。ところが課税最低限以下の、要するに低所得者層の方に税でいくらやってもしようがない。例えば扶養控除を増やすという手も大したことない。やるなら、まあ歳出面で児童手当みたいな話を拡張などということあるんでしょう。これも意外なばらまきになりますからね、この財政需要のなかでできるかどうか。それより、やっぱり税調のなかでの基本的な流れというのは、まさに社会全体の仕組みのなかで、例えば子育ての社会化、つまり保育所をどうするとか、それから母親・父親の勤務体制をどうしようかとか、それから休業している間の保障をどうするかという、そういう制度の仕組み全体で議論すべきことではないかと考えておりますし、そっちのほうの効果が大きいのではないか。つまり、例えばフランスとかスウェーデンとか大分落ちたんだよね、一回出生率が。それがまた復活したというのは、そういうさまざまな雇用面まで含めた意味での制度改革をやってきたというところが大きな問題だと思いますから、まあ言うなれば、当然のこと、税でできる範囲のことをやるにしても、そっちの方向を加味した議論をせにゃいかんと思ってます。多分そういうことにならざるを得ないんじゃないかな。

なんか妙案はありますか。

記者

少子化が進んでいるところでは、扶養控除を税額控除にしたり、それで日本が実は負担率が高いと思ってたものが、向こうのほうがどんどん先にいっていたというような変化もあるのですか。

石会長

実は、扶養控除の税額控除化という議論はないことないんですよね、これまで税調のなかではね。まあそういう一つの検討材料、あるかもしれません。別に聖域なく議論するとすれば、今おっしゃったようなこともないことはないし、現に昨年かな、一昨年かな、対話集会でもですね、そういう案をちらっと出したこともあります。まあ、ちょっとそれも検討課題だとは思ってます。

記者

人口の今の話ですけれども、低位推計も相当念頭に置いてあるというお話を冒頭されましたけど…。

石会長

という意見があったんですよ。

記者

意見があったということですけど…。

石会長

つまり、過去の人口推計、例えば出生率にしても高齢化比率にしても、全部中位推計は裏切られて、低位推計を前提に全部のっかってるんですよね、ここずうっと。ということになるとね、まあ言うなれば、過去の経験からいうと低位推計が事実ではないかと。したがって、相も変わらず希望的観測を入れる中位推計でやってると、将来のいろんな制度設計を間違えるよと。それだったら、仮にですよ、中位推計が将来実現する確率が高いとしても、より厳しい低位推計でやっておいたほうがいいんじゃないのという意見ですよ。だから、そうやっておくと、何ていうんですかね、一番厳しい条件で設定した制度、まあ年金にしても医療にしてもね、そっちのほうが将来なんか起こったときには抵抗力ができるんじゃないのと、こういう意見ですね。

ただ、今すべからく中位推計でやってますよね。それを税調だけで低位推計的な議論がはめこめるかどうかはありますけど、まあ一つの考え方だと思いますけどね。せっかく低・中・高と出してるわけですからね、そのなかでどう利用するかというのは、それはある意味で利用者のほうの、ある価値観に基づいたチョイスだと思いますけどね。ただ、これはまあ、今日はお一人の人が意見が出たので、これもまだ議論するほどの時間的面もありませんでしたので、まあこれから秋以降の議論のなかで再度でてくれば、議論はしたいとは思ってます。

(以上)