基礎問題小委員会(第11回)・ 総会(第11回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成16年4月27日(火)16:33~17:02

石会長

11回目になりますが、基礎問題小委員会が終わりましたので、ご報告申し上げます。

今日は、グローバル化という形で、例の経済社会構造の「実像」把握ということをやりました。3人、スピーカーに来ていただきましたが、各々の話はきわめておもしろかったんですが、全体をつなげるという点になりますと、前回までのようには、なんか共通の基盤がなかったかなという感じはいたします。まあグローバル化でありますから、ヒトとモノとカネの移動等の話が出てくるかと思ったんですが。最初の東京大学の藤本先生、自動車産業のご研究のご専門でございまして、資料が手元に回っていると思いますけれども、もっぱら日本の自動車を中心とした産業構造の強さと弱さといったあたりの実証研究を踏まえてご説明をいただきました。一つおもしろかったのは、「失われた10年」と言われて、えらい自信喪失したときの話として、まあスタートのところは1990年、そのときはまさに日本はすべての人が自信過剰で、トヨタ型の企業を想像したと。ところが2000年になって、一躍今度はドカドカッと日本の経済が崩れたときには、一番弱い…まあ差し障りあるかもしれないとおっしゃってましたけど、金融みたいなのを代表的な産業構造の代表にしたものですから、したがって、一番自信過剰のときから自信喪失のときのギャップが、通常よりはるかに増えてしまって、そこに大きな自虐的な、まあ自信喪失論ができたと。まあこのあたり、非常におもしろかったと思います。モジュラー型とインテグラル型という形で、これは組み合わせ型と擦り合わせ型とおっしゃってましたが、日本の産業構造のアーキテクチャの実際の中身について、さまざまな事例を出してご説明いただいて、質問のなかでは、現場は強いけど本部が悪いと、まあ日本の昔の陸軍みたいじゃないかという話もあったんですが、工場でえらく頑張っててもですね、それを束ねる本部のほうの司令、本社の機能、これが非常に弱い企業はやっぱりだめなんだといったような話が、一応印象として聞きましたし、産業政策を護送船団方式でやっていたのはもう昔の話で、これから「フロントランナー方式」。つまり、ある業界、ある産業界で一番トップを走っている、そういう業態に目をつけて、それにフォロアー、後をおっかける人を募って、そこで産業構造の活性化を図らない限り、そういう業態の成長はないだろうという話をしていただきました。グローバル化と直接関係するというよりは、グローバル化されたなかでの日本の産業構造の特殊性、これについていろいろな視点からご検討いただいたという形であります。

2番目は、一橋大学の梶田先生、国際社会学の専門でございまして、今日は移民政策とか国際間の労働移動といったようなことにつきましてご説明をいただきました。欧米あるいはアジアあたりのさまざまな豊富な事例を引かれまして、日本のこれまでの移民政策、あるいは外国人労働者に頼る政策についてのさまざまな特色を拾い出していただきました。まあアメリカみたいな移民国家と違って、日本は表面的には受け入れないと。限られたヒトをそっと後ろからバックドアから入れたという、そういう特色があって、この伝統は今後引き続くかどうかということですね。まあ外国人受け入れも、定住に結びつくような労働者は入れなかったと、ここが外国と違うんだという点ですね。その点で、本格的に移民を入れたフランスとかドイツとか、あるいは現に入れ続けているアメリカ、そういう国との比較において、日本の外国人移住者はリピーターにすぎないと。永住ビザを持っても永住しないで、まあちょっと来てちょっとで帰る。これはブラジルのほうから来られた労働者あたりが念頭にあるようでありますが、そういう形のお話がございました。そこで、梶田先生のお話のなかでわれわれの問題意識としてくっつけたとき、やっぱり公共サービス、ある意味で社会保障、年金、医療も含めての話だと思いますが、その負担ですね。この負担をそういう外国人労働者の移住なり、またその移動なりということで引っかけますと、本当にプラスになるのかマイナスになるのか分からないという面があるということですね。つまり、若い労働者を日本に来てもらった場合にはおそらく社会福祉のほうへのコントリビューション、つまり拠出金のほうの担い手になってくれるだろうけれども、逆にいって、今、現にやられてますように、中国の帰国者とかインドシナ難民等々の方は、どちらかといいますと、多くが生活保護の対象になっているという形でありまして、負担の担い手を期待しても、今度、給付のほうに回ってしまうといったケースも多々あって、これからどうなるか分からない。日本の場合の特色は、全国津々浦々、外国人の方が散らばるというよりは、やはりある一定の箇所にいると。典型的なのが豊田市の保見団地というところらしいんですが、そこは4割、5割が外国人であると。つまり「外国人集住都市」がどんどん出てきて、その地方自治体が、今言った年金であるとか医療であるとかということに対して、非常に問題を抱え出しているといったような点が大きな問題ではないかという、そういうご見解を述べられました。

それに対してフロアから出た質問は、どうも、正面切って移民というのを認めてないで、言うなれば、バックドアから入れたというようなあたりが今の犯罪を多発させているような体質になるので、これからは正面切って、そういう移民政策というのを考え直す時期ではないかといったような質問も出されました。

3人目は、東亜大学の山崎正和先生。今日、来られた飛行機がだいぶ荒天で遅れてしまって、残りの時間がわずかで来られましたので、あんまり本質的なお話をいただくことができませんでした。言うなれば、21世紀のグローバル化における矛盾といった点でお話しいただいて、まあいろいろな形で対立が深まる。つまり、「グローバル化」と「ポスト工業化」の問題であるとか、今言った知的財産権、知的所有権の問題と、それがどういうふうに波及していくかの過程でいろいろコンフリクトがあるということをお話しいただきましたが、ちょっとほかのお二人とも絡みつかず、またお急ぎになってお話しになったんで、ちょっとこちらも完全にキャッチできない面があったということかもしれません。

そういうわけで、今日はグローバル化という視点からいろいろお話しいただきましたが、直接われわれの税制改革に結びつくというような話にまでは高めることはできなかったという意味においては、若干残念な気はいたします。

そして、後の基本問題小委員会の予定でございますが、これはいろいろと残り、環境の問題と公共セクター等の問題で3回ほど、言うなれば従来どおり、事務局が資料をつくりヒアリングを受けるという格好のことを考えております。今のところ、5月14日、25日、6月1日、この三つを予定しておりまして、それを踏まえて、一応この「実像」把握についての報告書をまとめたいと考えております。

最後になってしまいましたが、今日、事務局は膨大な資料を作ってくれました。グローバル化についてのさまざまな視点からのデータ、まさに、ヒト・モノ・カネの移動の状況とか、歴史的な背景も踏まえて作ってくれまして、ちょっと時間がなくて全部話を聞けなかったんですが、後程、皆さんのお手元にある資料をぜひ、さまざまなところでご参照いただきたいと思います。

総会のほう、これはご出席になった記者の方も多いので、あえてあまり詳しく申しません。どちらかといいますと、税制改革の視点から言いますと、今後の作業として、この金融課税の一体化の問題、これがより大きな問題になってくるかと思います。奥野金融小委員長から15分ぐらいご説明いただきまして、今後、連休明けから具体的に報告書の取りまとめに入る予定という形で書類をいただいたということでございます。これは、既に奥野さんがこれまで、小委員会が終わった後にいろんなことをおっしゃってると思いますので、あえて私の口から細かいことは申し上げません。これからまとめていくポイントはどこにあるかといいますと、おそらく問題は、「貯蓄から投資へ」という流れのなかで、一体投資家にとっての魅力をどういう形で出すかという点ですね。これは、ある意味ではリスク資産の管理という問題とも絡みまして、損益通算の範囲ですね。これが具体的にどうなるかと。これは資料のなかで、たしか8ページに出ておりますけれども、この辺で、まだ損益通算のなかに全部入っていない、そういう問題の項目もございますし、それから4ページ目で一応図が出ておりますが、まだ、これとこれとの結びつきで本当にいいのかねという疑問、あるわけですよね。まあ、特にキャピタルゲイン、キャピタルロスの世界で投資等々に関連するところと、あるいは経常的な給与所得等々あたりとの損益通算問題がどうなるかというような話もあったり、今後この辺の守備範囲の問題。それから、資産滅失の問題。典型的に言えば、ペイオフですよね。ペイオフでロスしたような所得を一体このなかに取り入れるのか、取り入れないのか。本来的に言いますとね、あれは所得の、ある意味で獲得した後の処分ですから、所得税では、一旦生活費等々で入ってしまった、あるいは所得として稼得した後の、要するに価値が減耗したとかゼロになったということについては、全然面倒をみる必要はないというのが筋かと思いますが、やはり「貯蓄から投資」というあたりのルートをより魅力的にするためには、その辺の配慮もあるのか、ないのか。これも議論になると思っております。つまり、8ページの表の一番下の三つのあたり…、四つか。要するに株式が無価値化したということ、ありますよね。買ってた株が、会社が倒産して株が紙っぺらになるとか、さっき言ったペイオフとかですね、等々の話までここに入れるのかどうか。これが大きな問題になってくると思います。

それからやっぱり最後は、納番ですよね。納番の問題はいろいろあります。もちろんプライバシーを含めての問題点があると思います。しかし、さまざまな金融資産、現在行われておりますやり方として総合課税、そして源泉分離、申告分離、この3通りの方法でやっておりますものから出てくるさまざまな金融所得を一元化していったとき、おそらく損益通算するんだったら、申告でやるしかないでしょう。そのときに、無手勝流でできるわけではなくてですね、自ずから制度的な担保が必要なわけですよね。それはどこかの図に書いてありましたけれども、資料は6ページですか。損益通算の場合に、要するにキャピタルロスとなんかプラスの所得、例えば利子とどうこうしようとするマッチングが必要ですよね。マッチングという意味は、申告者から出てくるいわゆる申告と、それから金融機関から出てくる支払調書を番号をつけてマッチングしないと、損益通算をそれで担保しないとですね、おそらくプラスが出てくる、マイナスのほうばっかり出てきて収拾がつかなくなるんじゃないかということもありですね、この問題、これから大きな問題になると思います。

そういう意味で、金融小の話がこれから、税調としては一応取りまとめのほうに入り、ホットな問題になろうかと思っておりますので、夏休み前に一応論点は整理いたしますが、その後のいろんな展開があろうかと思っております。まあそういうわけで、金融小は連休明けから具体的な作業に入ろうと思ってます。

以上であります。

記者

今、会長、最後に、今日の基礎小では直接税に結びつく話ではない、絡めることができなかったと総括されたんですが、そのなかでも、あえて今後の税制改正に参考にするとしたら、どうすべきなのか。何らかのイメージ的なものは…。

石会長

今日やったテーマについてですか。

記者

はい。

石会長

今日やったテーマで言えばですね、おそらく、梶田さんがおやりになった、国境を越えてのヒトの移動。これは、ヨーロッパ等々、地続きの国はかなり心配されてるようでありますが、日本みたいに、まあ言うなれば、海で隔てられてますとね、その問題はあんまりないとは思いますけども、ただ、今日、「野茂現象」と梶田さんは言ってますが、ああいう一流の稼ぎ手が海外に行くとですね、あとをどんどん追っ掛けるわけですね。今、日本のプロ野球の選手って、10人ぐらい行ってるんじゃないですか。野茂が開拓したマーケットにみんな従ったわけですね。Jリーガーもそうですよね。まあそういう格好のヒトの移動、それから、あるいは入ってくるでしょう。そういう意味で、ヒトの移動についてひとつ税の問題がどうなるか。それから、さっき申し上げた外国人労働者を安易に入れたときの、やっぱり国、地方自治体としてのプラス・マイナスの面、これは結構大きいんですよね、おそらく。ある団地で4割、5割、外国人が入ってしまったと。そこで、仮にですよ、高齢化がどんどん先にいくとかですね、それからどんどん家族を呼ぶとかしてまた増えるとかですね、こういった問題というのは、おそらく所得税の世界できわめて大きな問題になり得ると思いますね。それから藤本さんにやっていただきました産業構造の変化、もう彼なんかは、空洞化した10年というのはないんでね、その目のつけどころが悪かったんで、製造業はモノ作りは昔から強くてね、アジアにいかないで頑張ってる企業に目を向けたらですね、決して失われた10年ではなくて、着々とですね、まあモノ作りの成果をあげておって、またそれが明らかになってきたという視点でとらえられておりますから、今日のグローバル化に直接関係ないんですが、アジアからだいぶまた日本に帰ってきてですね、モノ作りという拠点を作りだしたという点からいいますとね、法人税の世界においても、まあ言うなれば、産業空洞化のみで、法人税を考えなくてもいい時代がくるのかもしれませんし、それはよく分かりません。ただ、国際競争力という視点からみて、法人税の世界で企業が日本で頑張るということは非常にいいことだなというふうに考えてます。

そういう意味で、直接はないにしても、その根っこにありますグローバル化という切り口から、いろんな日本の税制が垣間見えたと思います。つまり、シャウプ税制以降、日本の税制、税規範というのは、あんまりグローバル化という視点からそれほど全体像をつかんでなかった。部分的にはね、まあ国際課税の世界であるとか、それから法人税がどんどんいったりきたりしちゃうとか、まあヒト・モノ・カネの移動についての税の問題はありましたけれども、今日、直にそこで整理するところまでいきませんでしたけど、傍証というか、随分データが一応、事務局の努力にもよって集まったという意味です。まあ成果はあったと思います、そういう意味では。

記者

納番についてなんですけれども、奥野小委員長が、納番を広く導入するというんじゃなくて選択的に、金融商品で損益通算したい人はということで入れたらどうかという方向という話だったと思うんですけども、こういう方向で意見を取りまとめるということについての、会長としてのお考えと、あともう1点は、それでもいろいろ議論はあると思うんですけれども、どういう点に留意しつつ、まあ目処はどんな感じなのか。

石会長

おっしゃるとおり、納番については、全国民的にネットを広げてしまい、言うなれば住基番号みたいのを使ってやるという話と、それから社会保障番号、年金番号を使って、それをアメリカ、カナダみたいに納番に使えるという話と、それから三つ目として、まあ部分的であれ、プラスイメージをもつような形での税務番号と、まあ三つあるわけでありまして、3番目に日本型の納番の性格をくっつけてはという、そういう意見が金融小の委員の方は共有してますね。まあそういう意味でね、例えば先程も申し上げたように、損益通算をやるために申告すると、総合課税するという世界において、納番がなきゃできませんから、番号をですね、言うなればそういう人に限って番号をつけて申告してもらうと。それがなければ、なんか高い源泉徴収、バックアップみたいな形でとっておいて、それっきりよというような方法も、一部の国でとっております。これとは別にまあプラスになるというイメージで納番を入れてですね、協力を求めるという話が、とりあえずスタートとしては順応しやすいんじゃないかという意識を持っておりますから、奥野さんの言われたような方向は有力であり、そういう書きっぷりになるかもしれません。

それから、そうは言ってもですね、民間の金融機関にこの番号を渡すわけですよね。つまり、利子を払った、キャピタルゲインを払った、配当を払ったという、個々の投資家の、言うなればレコード、記録が当然渡るわけですからね、それについては厳格なる個人情報保護みたいなのの網をかぶせてですね、ペナルティをきつくというような方法は厳に必要だと思います。これはもう、納番を入れた国はどこでもやってます。はっきり納番の使途、これは政府内でもそうだし、対民間でもそうなんですが、はっきり、これとこれを使っていいというのを決めるべきでしょうね。それをやらないと安心感がもてないし、今いろんな意味で流れてますよね、情報が。ああいうことが納番絡みで起きるということになると、納番に対する権威が失墜いたしますから、それは厳に慎まなければいけませんから、それについての対応は十分考えたいと思います。そういう線でたぶんいくという方向が有力だと思います。

記者

そうすると、先生がお考えになる時期とか、あと、まあ先のことを言ってもあれなんですけれども…。

石会長

いや、それはひとえに金融所得の一元化が、課税がいつ行われるかというときにセットになるでしょう。それは来年度の税制改正までに間に合うのか、あるいは2006年のときに入れられるのかどうか。今申し上げたような、仮にですよ、小規模の税務番号でいくんだったら、別に住基番号の転用の許可とか、年金番号を使うとかっていう話は除外できますから、フィジビリティは高くなるんでしょうな、そういうことで言えば。まあ二、三年中にそういう話が起きるかな、と。つまり、金融所得の一元化、せっかく今始めたわけでありますから、やっぱり実際の税制のなかに絵を描くと言わないと改革の効果はあがりませんからね、それは一応の目処になるだろうと思います。

記者

あともう1点だけ、将来もっと広い意味での全般的な所得税を把握するするという納番のところまで、やっぱりこれはその…。

石会長

それは、ひとえに私は国民の方々の協力と理解だと思いますよね。つまり、税務番号じゃなくて、アメリカなんかをみますとね、かなり歳出面等々にもこの番号は使われている面もあるわけですよ。そもそも社会保障番号というのは、社会保障給付をするときに使ったわけですよね。この番号がないともらえないわけですよ、生活保護費等々ね。いろいろダブッてもらわないとかですね、まあそういう点も含めて。したがって、もっと広く使って、かつ一種の身分証明書番号みたいにしてもいいよというふうになれば、広げる余地は十分あるんだろうと思います。今、番号というのはあれですよね、一つ作って…初めから普及することを目標にしていけば、ある番号を作って、それをどんどん対象を広げていくということは、比較的、コンピュータ時代は楽ですからね。まあそれはこれからの議論だと思いますね。まあアレルギーをもつのか、それとも番号を使ってしっかり不正をなくすとか、脱税をなくすほうにいくのかといったような話が、どういうふうに結びついていくかということですね。まあ年金の改革で番号なんて言ってますが、ああいう話とどう結びついていくか、われわれも注目してみていきたいと思います。

記者

直接関係ないんですけど、諮問会議で…。

石会長

三位一体?

記者

ええ。麻生プランが出まして、個人住民税の比例化とか、あと先行3兆円の移譲、ございましたけど、どう評価されるのかと、あと今後の政府税調の三位一体の論議についてどういう影響があるのかを。

石会長

今朝の新聞で見ましてですね、ある意味では、麻生大臣の「シアン」…シアンというのは試案というべきなんでしょうか、私案というべきかよく分からないけど、まあそういう形でお出しになった資料であってですね、まあ三位一体の議論のある方向性を加速する意味での効果はあったんだと思います。ただですね、まだ出てきたばっかですからねえ、これをどういう受けとめ方をするか。それから、おそらく諮問会議はですね、夏から秋にかけて本格的に議論すると言ってますよね。で、われわれとしてですね、お先棒をかついで、そこを先導的にやるかという議論はあるかもしれませんが、ただ、これ、まあ非常に選挙絡みの話であったり、微妙な国と地方間の関係もあったりしてですね、税制改革、税源移譲だけで事は済まないんですね。それで、なにぶんにも補助金をどれだけ削れるか、そのうちどれだけ税源で補填しなきゃいけないかと、これがポイントなんですね。補助金を削ってですね、すべからく補填しなきゃいけないということじゃなくて、公共事業でみられるように、国も地方ももうやらなくてもいいじゃないかという、そういう事業もあると思います。まあその、とりあえず規模が決まらないと困るし、それから交付金、この世界でまただいぶ削れたという形で地方が不満をもってると。したがって、どちらかといいますと、今出された麻生シアンというのは、地方交付税を中心として先行的に地方のほうにしわ寄せがいっちゃったものをですね、まあ税源移譲でカバーしたいというお気持ちのようであります。ただ、私はまあ三位一体でやってって、すべてセットされた後で2兆円とか3兆円とかという国税としての所得税から住民税に移すのが筋だと思ってますから、ちょっともう少し外界の状況が整備されないと議論しにくいし、できないと思ってます。

そういう意味でおそらく、詳細設計はまた諮問会議あたりからこっちに振ってくる可能性はあるんでしょうね。まあ方向性だけ出して、やってくれい、と。そのときもちゃんと税調で議論したことを尊重してもらわないとね…というような気もしております。これはこれからの話でありまして、まだちょっと、出たばっかで、どういうふうにころがっていくか分からないので、税調として、まだボールを正面から受けとめるというところまではいってないというのが正直な感想です。しかし、いずれボールを受けとめて投げ返すという作業は、早晩回ってくることと思ってますが、それが夏なのか秋なのか分かりませんが、そういう感じです。

記者

先生のお考えとして、最初に先行、いい、悪いというのは…。

石会長

おそらく、あれはプランだけやるという意味だと思いますけどね、ある程度の、何といううのかな、青写真はあってもいいと思いますけど、なにぶんにも、幾ら移すかという、そのはっきりした規模がね、少なくとも予算ベースでもいいからかたまってないとですね、税制の設計はできないですよ。あれは、何でもいいから一旦回しちゃって、また余ったら戻しましょうというような話でしょう。あそこがちょっと気になりますねえ。それは、予算ベースでやったって、それは決算の段階になると税収というのは狂いますからね。ある程度、出入りがあって不思議はないと思いますが、ただ、あらかじめ配っておいて、配り過ぎたらまた戻すよというようなスキームは若干、税源移譲の世界においてはちょっと問題だし、戻すとき、入れるときの、税制の組み合わせなんて複雑ですよ。まあそういう意味で、所得税改革というのを本格的に進めているわけですから、所得税改革の一環としてね、この税源移譲、これも議論の対象にする日は早晩くると思ってますから、そこでやりたいと思ってます。もうそのときは、はっきり国税と地方税の役割分担も考えつつですね、その規模も考え、それからやり方も考え、ということがしっかりまとめるのが筋で、一旦やって、また戻せばいいじゃないかというような話ではなかろうというふうに思ってます。

記者

さっき三位一体の件なんですけれども、地方の受け皿のほうなんですけれども、それについては基本的には地方住民税のことなので、税率一本化が軸になるというか…。

石会長

住民税を3段階10%にしろと、それはだいぶ前、私がここで申し上げたように、一応、私の念頭にあるのはあの発想ですね。やっぱりいろんな意味からいって、地方税は均一税率のフラット化でいいと思ってますから、そうなると、10%というのは一つの目処ではないかと思いますよね、簡素化も含めてね。これは麻生さんのおっしゃるのにも入ってますよね。そういう意味では、ある方向は軌を一にしてるとは思いますね。まあ問題は、どのぐらい移せるかというのは、ひとえに必要な移譲額がかたまらないと難しいですよねえ。課税最低限の問題もありますしね。

(以上)