基礎問題小委員会(第1回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成15年10月7日(火)16:09~16:23

石会長

今日、新しく税調が始まりまして、第1回目の基礎問題小委員会を開催いたしました。お手元にかなり部厚い参考資料と、1枚紙で、何をこれから主として取り上げるかといったような意味での項目が拾われております。この参考資料は、今の日本の経済社会、これは家族の問題、雇用・就業の問題、あるいは離婚、あるいは結婚等々を含めた人生設計の問題から、グローバル化された中でどう変わってきたか、情報化がどうだとか、さまざまな税制を考えるもとになる、いわゆる税制のファンダメンタルズあるいはインフラを今日はここで整理してみました。これは、人口の数字一つをとっても大変参考になると思いますので、今日の記者レク以外にも利用価値があるのではないかと、こう思っております。後でご覧いただければと思いますが、やはり数字を詰めていきますと、非常に身につまされるいろんな議論がありました。例えば平均寿命が延びたとか、あるいは離婚率が高まったとか、平均結婚年齢が大いに上がったとか、国際結婚が非常に増えているとか、それから夫婦2人という標準世帯というのではなくて、世帯もいろいろ類型化されているかと、フリーターがこんなに増えてしまったとか、さまざまなことが実は所得税、消費税と関係する、あるいは企業べったりの帰属意識がもうなくなって、そう企業に対してロイヤリティを尽くさないといったような、そういう意識変革とかいっぱい出てまして、それらを見まして随分議論いたしました。そういう意味で今日は、今後どういうテーマを取り上げるかということも含めて、忌憚のない意見の交換ができたと思っています。

二、三、あるいは三つ四つ、重要な点がございますので、ご披露したいと思います。根っこにある議論として、今、経済社会は随分変わったというお話をしましたが、その変わった例としては少子高齢化、少子化が一番いい例かもしれませんが、少子化を直すように税を使うという議論もあるでしょう。逆に言って、税というのはあくまで中立的であるべきで、あるべき税の姿から見て、そう構造変化に対して干渉しないほうがいいだろうという議論もありますよね。つまり、世直しに税を使うかという議論と、要は変わっている中で税は毅然たる態度で、言うなれば中立的な、そういう議論を守るべきだと。そういう意味で税の中立か、それとも税を社会全体のある方向に誘導すると言うと語弊がありますけれども、そういうふうに刺激を与える、あるいは是正するのに使うかということについては、意見が幾つか分かれましたが、恐らくは程度問題で、原則は中立的な立場で置きつつ、できる範囲でいろんな社会的な変革の対応に備えるべきであろうということだろうと思います。

実は、この種の構造変化の議論というのは、税調では昭和60年の中曾根税制改革の時にも大分議論したんですよね。その時には、言うなればソフト化だかとサービス化だとか、そういう社会に非常に歪みが出てきていると、そういう認識から世の中は変わったよ、税制も変えなきゃいけないよという議論をしたと思います。まあ似たような論調が今日もあったかもしれませんが、いずれにいたしましても、中立ということをどれだけ守るかということについて、最初大きな議論がございました。例えばパラサイトが多すぎるのはけしからんとか、離婚が多すぎるのはけしからんから、まあパラサイト税をかけようとか、離婚税をかけようなんていうのは…例えですよ、そういう発想をとるのか。それは税としては関知しないととるか。その辺の議論ですよね。

第2点は、やっぱり家族なり就業形態なり、それから今申し上げましたような人口変化とか見まして、家族単位あるいは企業にべったりのやり方等々の社会が変わってきた以上は、所得税の体系も随分変わらざるを得ないのではないかと、こういうことですよね。したがって議論としては、個人ベース。個に置き換えるということがこれからの大きな議論になる。そういう意味で税制も、家族とかなんか、世帯とかということをベースにするのではなくて、すべからく個人に置き換えた形でいろいろ考えるべきではないかと、それが一つ。例えば、人口が減りますよね。人口が減ればGDPも減るでしょう。その中でやっぱり重要なのはパーヘッドの、つまり一人当たりのGDPの伸びのほうが社会全体の指標にはなるじゃないかと、こういう議論ですね。これはどうしても必要なことだろうし、少子化一つとりましても、税でやるという限界もあれば、育児というものの社会化を考えて、そこで少子化を少しでも食い止めるような、そういう発想をとれないかといった議論がありました。結局は所得税の見直し、つまり諸控除の、従来型の専業主婦がいて、子どもが2人いて、亭主が一生勤めて、終身雇用でなんていうことをベースにした所得税というものでは、多分対応し切れないだろうという問題意識を改めて持ったということです。これは、中期答申にも基本答申にも書いていますけれども、それを今日、このデータを背景にして再度確認をしたという点がございます。

それから第3点は、これだけ人口が変動してきた時に、税だけの議論というよりは、やはり社会保障制度全体を考えて議論しなければいけないのじゃないかという意味で、前から私も言っておりますが、今日新たに来られた委員の中からも出ましたけれども、他省庁の、あるいは他の審議会の領分を侵すかもしれないけれども、積極的に社会保障、こういう点も含めて議論しなきゃいけないだろうという点ですね。とりわけ社会保障というのは、かなり長い目で議論しなきゃいけないんですが、50年先に3割以上の高齢化率になるからと言っても、50年先を見据えた形で社会保障制度とか税制の議論はできないので、せいぜい10年というタイムスパンで議論しなければいけないのじゃないかという議論ですね。これが大きな問題として出てきますし、高齢化した先の社会保障制度の維持可能性については、高齢者にも応分の負担をしてもらうという、そういう議論がどうしてもないと、多分というか、絶対に持続可能な社会保障制度というのはできないんじゃないかという議論もございました。

それやこれやで、この資料の説明で大体1時間ぐらいかけて、じっくり見たということもありましたので、新しい委員を含めて大半の方にご議論いただきましたが、そんな点の議論が非常にあったということですね。

そこで、実は今日こういう大きな構造変化の問題を深めて、それからどういう形で今後の議論を進めていくか。今日随分議論したものを一応整理してもらって、かつ今月中に、とりわけこの3年間の1年目に入っているわけですから、どういうところに優先度をつけてテーマを選ぶかという点につきまして議論を高める意味の宿題を出しまして、各委員の問題意識を整理してもらおうという格好のことをやりたいと考えております。恐らく所得税、消費税が軸になって、これから議論ができると思いますけれども、昨日も申し上げましたように、消費税はある程度、われわれの基本的なスタンスも出しておりまして、しかるべき時に備えて議論も十分いたしました。所得税というものをもう一回修復して、基幹的な税に復活させなきゃいけないという問題意識がありまして、その受け皿としての、今言ったさまざまな、人口も含め、就業も含め、あるいは家族のあり方も含めて議論したというところが今日の議論の出発点ではないかなと、このように考えています。

選挙がこれから行われる予定のようでございますが、次回は11月中旬、昨日も申し上げましたが、なるかと思いますので、しばらくこのデータ等を見て、じっくり個別に勉強というか、思案をめぐらしたいと、こう考えております。

そういうわけで、今日は極めて一般的な、抽象的な総論的な話でございますので、税にすぐさま特化して、具体的なことを探り出すという作業ではございませんでした。そういう意味では基礎的な議論をしたというふうに考えられます。

以上です。

それからすみません、この1枚紙がついておりますが、審議事項として考えられる項目例と考えておりまして、ここに個人とか企業等とかコミュニティ、あるいは情報化とか環境とか、そういう項目が幾つか並んでおりますが、この中での項目と税の問題をどうくっつけるかといったあたりがこれからの議論です。

それから一つ忘れましたけど、やっぱり環境税というのがこれまであらゆる…従来取り上げてきた税とは全く別個の視点からやらなければいけないので、これをいつ、どういう時点でやるかということが大きな問題ではないかというご提言もありました。つまり、全く新しい角度から新税として議論する税というのはもうないんですよね、我が国の税制の中において。そういう意味で、これは全く新しい発想と新しい取り組みが必要ではないかと、こういうことです。

記者

11月の半ばに再開して、再開後の議論というのは、まず基礎小では、ここにこういう基本的なことがありますけれど、それぞれもう当面は、04年度答申に向けた専門的な税制を維持するという…

石会長

いずれにいたしましても、年度改正をやるためには、また起草会合みたいのをつくらざるを得ないのだろうと思うんですよね。これは恐らく、基礎問題小委員会が根っこになって年度内にやると思いますが、選挙後の最初の基礎小というのは、恐らく11月中旬でしょう。それを引き受けて、総会を開いて、総会を開かないと起草会合の開催というのが是認されませんから、その中で、何よりどういう問題があるか。昨日もちょっと言って新聞にも書いていただいていたけれども、住宅ローン減税の存廃、あるいは拡張・縮小を含めてぐらいが具体的なテーマですが、あと何が出るかは分からないんで、年内この基本的な問題ばかりやっているわけにいかないと思いますから、その段階で少し問題をセットしようと思いますが、すぐさま問題領域が狭いにしても、年度改正に飛び込むという公算は大きいと思います。まあ年明けになって、また首相から何か、恐らく新しい注文が出てくる可能性もありますので、その段階で今言ったこの基本的な問題とかみ合わせて、社会保障制度の財源のあり方とか、あるいは国・地方の関係だとか、具体的に出てくるのかなと思っています。

記者

今日の議論の中で、少子化に少しでも歯どめをかけるようなことをやるべきではないかということをおっしゃいましたけれども、6月の中期答申の中で、子育てをする世代に対しての税額控除をすべきではないかという、あの案を軸にこれから各論を検討するということですかね。

石会長

全体的に税でもって少子化がどれだけ阻止できるかとか、あるいは少子化対策で税がどのぐらい効力を発揮するかということについては、恐らく税だけではなかろうということで意見は一致してるんですけれども、ただ、その限られた中でやるなら、言うなれば扶養控除というのを、所得控除ではなくて税額控除という意見も結構あって、それも一つの検討材料になってこようかと思っています。それから、しょせん税金を払っていない人に対しては税額控除であれ所得控除であれ、恩恵がないわけですからね。したがって、それ以下の課税最低限以下の人をどうするかとか、やっぱり社会全体として子育てというものを考える仕組みをつくらなきゃいけないんじゃないかという問題意識が随分強いんですね。今日も大分、女性からそういう意見も出ましたけれども、そういうものを踏まえて、われわれとして税に特化しないで少子化の問題を少し議論するという場は作りたいと思っています。

今日はちょっとこの資料を説明しないでやにわに飛び込んじゃったから、分かりにくいところですが、これは見れば非常におもしろいことがいっぱい並んでいますから、ぜひご検討下さい。

(以上)