第30回基礎問題小委員会 議事録
平成15年5月20日開催
〇委員
それでは、時間になりましたので、基礎問題小委員会、30回目になりますが、開催いたします。
起草会合までの間にもう基礎問題小委員会はやりませんので、今日は最後になります。そういう意味では、今からお出しいたします幾つかの項目につきましては、かねてのご意見もあろうと思いますし、思いもあろうと思いますので、積極的にとりまとめのほうにご協力ください。
その前に、幾つかご報告事項があります。
一つは、先ほど、社会保障審議会の5名の委員の方と税調側の5名の委員の方が相集まりまして、双方の審議状況、それから、今後どう進めていくかということにつきましての意見交換がございました。
そこで、俗に言われます基礎年金の国庫負担割合を3分の1から2分の1へ増やす等の話があります。そのこともありまして、今回、そこにダイレクトに入らないにしても、お互い何をやっているかということを議論しておこうという形で議論を行いました。二、三、重要な点をご紹介して、今後の我々の議論に役立てたいと思います。
一つは、長期的に見て年金のサステイナビリティーというのは非常に重要ではないか。一体どのくらいの負担が耐え得るか、それをベースにしておそらく制度設計ができるのでしょうけれども、そういった問題として、今後、いろいろな推計が出ておりますし、それからマクロの動向を踏まえて、この間も議論のありました社会保障の負担と受給といった話も踏まえて、この辺が一番重要であるという問題意識を持ちました。
そこで、何といっても今の制度は、高齢者に過度にシフトした形で、少子化の子育てのほうにどうも関心がいっていない。年金、医療、介護、すべからく老後のほうの設計になっておりまして、これをどうしたらいいかという議論があるというあたりで、ワーキングの世代について、どういう形で対応するかという問題意識を持ちました。ということは逆に言えば、ライフサイクルの点で高齢者に視点を合わせるのでは困るので、全世帯、あるいは全世代、これに対して公平という視点から見直す必要があるだろうという感じの議論が非常に有力でありました。
キーワードとしては、20世紀型の社会保障というのではなくて、「21世紀型」を念頭に置く必要があるだろうと。具体的中身は、まさに世帯にしても家計にしても、あるいは雇用形態にしても、21世紀に考えられないような形になっている。そういう意味では、個人に力点を置いた形の社会保障なり税制をこれから考えなければいけないのだろうという議論が、一番根っこにあったわけであります。
そうなりますと、この間も厚労省の人も言ってましたけれども、過度に高齢者のほうに給付がシフトし、負担が若い世代に来ている、そういう形で年金の権利化、これをどう考えるかという議論もございました。今、賦課方式でありますから、本当にその権利というのが残っているのかどうか。つまり賦課方式というのは、人口の動態、経済成長率、景気動向にさまざま影響されるわけです。したがって、当然の既得権益として、そういうマクロのベースを前提にしたような計算を、そのまま自分の世代の受給に当てはめていいかどうかについてはどうも問題ではないかという議論も出ましたし、それから個人をベースにするならば、確定拠出、この世界の範囲をもう少し広げて、1階建て、2階建て、これを少し見直しつつ、そっちのほうに個人の努力によってという点の拡大があってもいいではないかという議論です。
それから、3分の1から2分の1というのは法律の附則であります。これを前提にして社保審の年金部会等々は考えているし、考えざるを得ないだろうという前提に立っておりますので、したがって、そもそも安定した財源が云々だとか、歳入、歳出のバランスがないとどうだとかいうのではなくて、社会保障審議会のほうは、2分の1を早晩考えなければいけないだろうという前提でいろいろ議論し制度設計をしている。6月の段階で、社会保障全体の全体像を明らかにする意味での中間報告を出す、こう言っておりました。
我々のほうは現状を説明し、それに対して共通の基盤としては、税でも、公的年金等控除等はやはり見直してもらわなければいけないだろうし、それから、今言った働く姿も昔と違うし、家計も亭主が働いて奥さんが専業主婦というスタイルもないのだから、これから税自体も大いに変え、その負担のあり方も広く・薄く行かざるを得ないだろうと。暗黙の前提としては、消費税というものが最後は社会保障全体を支える有力な武器というか、財源になるだろうという点については、意見が大体一致しているということです。
以上が概略、今1時間半ほどやってきました議論のご紹介であります。
これにつきまして、何かご質問ございますか。
では、まとめて、この間、遺族年金についての資料請求が事務局にありました。請求した人がまだ来ていないのですけれども、いいでしょう。ちょっとご説明ください。
〇事務局
お手元に横長の「資料」というのがございます。前回、二人の委員から、遺族年金についてご質問がございましたので、整理をしてみました。
おめくりいただきまして、まず、制度でございます。1階部分の基礎年金に対応する遺族基礎年金と、2階の報酬比例部分に対応する遺族厚生年金と二つございます。遺族基礎年金のほうは、左側でございますが、国民年金の被保険者等が死亡したときに支給されるということで、支給される遺族は、次の箱にございますように、「死亡当時、その被保険者によって生計を維持されていたその者の子のある妻、又は子」ということでございまして、母子世帯に遺族基礎年金は支給されるということでございます。年金額が79万7,000円。これは老齢基礎年金と同額でありますが、これに子供に応じて加算があるということでございます。受給者が平成13年度末で約15万人おられるということのようでございます。
右側の遺族厚生年金のほうであります。これも、被保険者の死亡等がありましたときに支給されるわけですが、遺族の範囲が少し広くなっておりまして、「その者の配偶者、子、孫、父母、祖父母」という順位で支給されていくようでありますけれども、配偶者ということで、子供がなくても妻に支給される。それから、妻のほうが死んだ場合には、下の三つ目のポツでありますが、夫にこの遺族厚生年金が支給されるのは、妻が死亡したときに55歳以上である夫の場合でありまして、その場合でも実際に支給があるのは60歳からということのようでございまして、妻が死んだときに55歳よりも前でありますと、夫には遺族厚生年金は支給されないという制度のようであります。
年金額は死んだ人の報酬比例部分の4分の3ということで、妻に対しては加算措置が65歳に至るまであるようです。それから、遺族自身が老齢厚生年金の受給者である場合には、一定の併給調整措置があるということで、これは後ほどご説明いたします。受給者が344万人おられるということでございます。
2ページ、3ページは受給者の過去のデータでありますので、飛ばしていただきまして、4ページでありますが、母子世帯の状況を総務省の「家計調査年報」からとってあります。子供が1人おられる母子世帯の場合には、年間の消費支出が282万9,000円ということのようでございますが、これに対して遺族年金としては、遺族基礎年金79万7,000円、本人分と子供1人について加算が23万円ほど。それから老齢厚生年金として、夫の被保険者期間に対応する給付の4分の3が出る。
そのほかに、児童手当等の社会保障給付や、お母さんが働いた分で生計を立てておられるということで、注の1で見ていただきますと、子供1人の母子世帯の実収入は約300万円というのが実態でございます。この300万円の中には、遺族年金をもらっておられれば当然遺族年金が入っているということのようでございます。
それから、5ページでございます。夫婦がともにモデル年金で年金を受給しておられる高齢者の場合で、夫が死亡された場合の遺族年金であります。これは、奥さんはモデル年金、二つ目の箱でご覧いただきますように基礎年金だけでございまして、妻が専業主婦で妻自身に報酬比例部分がないケースでありますが、このときには夫が亡くなると、遺族である妻が奥さんご自身の老齢基礎年金に加えて、旦那さんがもらっていた分の4分の3が遺族厚生年金として出るということで、モデル年金をベースとしますと、172万5,000円、遺族年金がもらえる。このうち遺族厚生年金の部分は、前からご説明いたしておりますように、非課税という扱いになっております。
6ページでございます。併給調整措置について書いてございますが、これは、旦那さんだけではなくて、奥さんも共働きで、妻にも報酬比例部分があるケースでございます。この場合には、旦那さんが亡くなられますと、遺族である妻は(1)、(2)、(3)、三つの中から得なものを選べるということで、まず(1)は、従来どおり妻本人の年金をもらい続けるケースであります。(2)は、本人の老齢基礎年金に加えて、報酬比例部分については遺族厚生年金として夫の厚生年金の4分の3をもらえるということであります。もう一つ、平成6年から三つ目の併給調整措置が加わっておりまして、本人の老齢基礎年金に加えまして、本人の2階部分の厚生年金の半分相当額と(2)の遺族厚生年金の3分の2相当額を組み合わせでもらえるということであります。
いずれの場合も、遺族厚生年金、2階部分については、右に書いてございますように、非課税ということでございまして、3通りのうちからいずれか得な給付を選べるわけでありますが、得なものを選んだ上で、遺族厚生年金については非課税ということで課税ベースから落ちているというのが遺族年金の現状でございます。
簡単ですが、以上でございます。
〇委員
それでは、私から先ほど申し上げたこと、あるいは、今の事務局の遺族年金に関するご説明の資料等々について、何かご質問ございますか。委員のご質問に対して来られる前に説明してしまったものですから、追っつけフォローしてください。
何かご質問ございますか。
どうぞ。
〇委員
前回の質問に対しては、今、事務局は(1)、(2)、(3)のうちどれか選べると。そのとおりなんですけれども、逆に言えば、6ページ、2番目、3番目の、夫の遺族年金をもらったほうが得なときにはむしろ妻は自分の年金がなくなってしまう、その言い方のほうが前回の話ではわかりいいと思いますけれども。それは夫だろうと妻だろうと、どっちが先に死のうとこれには変わりない。だから、(1)、(2)、(3)のどれかもらえるというよりは、遺族年金が得なときには自分の年金はなくなるというイメージなんだと思います。
〇委員
えらく不満の声も高まっているようですね。といっても、やはり余計もらったほうがいいということでしょうな。
〇委員
はい。
〇委員
どうぞ。
〇委員
先ほどの会長のご説明の中で、国庫負担分を3分の1から2分の1にするのは大前提であって、それは変えようがないというお話でしたけれども、引き上げても全体の歳入・歳出ギャップが解消しないという問題についてはどういう態度なのですか。
〇委員
ひとえに法律附則で、そういう枠がはめられている中で、今おっしゃったのは経済的な意味ですよね。受け皿の国民側から言えば全体で変わらないだろうという話は、そこに絡ませてませんよ。だから、あるフレームワークを使われた中で議論しましょう、こういうことのようですから。
〇委員
しかし、絡ませるべきなんじゃないですか。
〇委員
「べき」というのは、どっちをですか。
〇委員
やはり……。
〇委員
今言ったやつね。
〇委員
はい。
〇委員
いや、それは、うちで議論するときにはそういう議論をしても結構ですし。
〇委員
同じ問題です。3分の1、2分の1ですけれども、「安定した財源を確保して」という意味ですが、これは、ひも付き財源的、目的財源的なものが何となく頭にあるのかどうか。安定したといえば、今の日本の財政全体がものすごい不安定。45%を国債に依存しているというこんなに不安定な財政というのは、戦後、昭和21年がそうだったと思いますけれども、それ以後ない。そういう中で安定した財源というのは、その部分だけが安定すればいいのか。そういうことはあり得ない。そういう全体の安定した財政状況の中でという意味ではなくて、ひも付き財源的に安定していればいいやと、そういう前提なのでしょうか。そこは何かニュアンスはありますでしょうか。
〇委員
そこは我々はまだ全然議論していませんから、解釈をめぐっては実は財政制度等審議会も始めているんですよ、今、二人の委員がおっしゃった話ね。したがって、この3分の1、2分の1問題を本当にギブンとして議論するか、そもそも前提自体を議論の対象にするかというチョイスはあるわけです。
それは、おそらく外側のほうでいろいろな議論も絡んできますから、我々として、いつこういう議論をし、いつ具体的に税調としての態度を明らかにするか、それはいずれ決めなければいけない。いずれといっても、中期答申をもう書く時期ですから、中期答申の中でどのような形で書くかということも含めて、起草に入った段階で……。今日からもう議論していただいて結構ですから、それは後ほど具体的にご提示ください。よろしゅうございますか。
それでは、そういう話をもう一回議論する場もございますから、今日の本題に入りましょうか。先ほど申し上げましたように、今日で一応基礎問題小委員会は幕を引いて、これから本格的に議論を積み上げて中期答申にもっていくという段取りでございます。
お手元に、会議終了後にご返却いただきたいという表紙が付いた資料がいっていると思います。おめくりいただきますと、「これまでの審議を踏まえた主な論点」という形で4ページほどのペーパーがついております。中期答申の見出し、あるいはサブタイトルになるような項目が並んでいるわけですが、といってこれが決まっているわけではございません。
そこで、今日はこれに従いましてどんどんご発言をいただきまして、その発言を踏まえて、俗に言われますボキボキという感じのものがおそらく起草会合に出てくるのだと思います。そういう意味で基本的な粗ごなしをする前の最後の論点整理であるというふうにお考えください。
ざっと見ていただきまして、「中期答申の基本的考え方」、これはいうなればイントロダクションです。そのあとに「少子高齢化と税制」という大きな囲みがございまして、ここに、総論のほかに四つの個別の税が並んでいる。所得税、消費税、法人税、相続税・贈与税、これがメインのパーツになると思います。それに、今非常に話題を呼んでおります国と地方の関係が入り、4枚目に、金融・証券税制、納税環境整備等。これが空白になっておりますのは、今度の金曜日に金融小がございますので、そこの議論を踏まえて書き込む段取りでございます。しかし、今日はここもご発言いただきたいと思います。最後に、環境税も含めての環境問題への対応。こういう六つか七つの項目で柱を立ててもらいましたので、これに従いまして、今日、順次区切って議論をしていただこうかと考えております。
最初に、二つほどくくりを作りまして、中期答申の基本的考え方と、少子高齢化の最初の個人所得税のパーツにつきまして、まず、概略どんなことを私が考えているかということをご説明したあとで自由にご議論いただきたいと考えております。
基本的な考え方というのは、これまでの経過説明、それから、どういうことを前提に議論しなければいけないかといういうなればウォーミングアップ、あるいは、発射台のところの議論でございます。昨年、すでに「あるべき税制の構築」というもので基本方針を出しております。そして、この4月からスタートしております平成15年度の税制改革、これもやっておりまして、この議論は暮れにやったわけです。したがって、昨年6月と昨年の11月にやりました議論を前提にして、これから引き続き、10年、15年先を見据えた形の「あるべき税制」論をやりたいというのが出発点であります。
そこで、昨年の6月よりちょっとトーンを高めて言いたいのが、この「少子高齢化」ということでございます。この少子高齢化は既定のごとく来るわけでありますが、これを活力ある少子高齢化にしたい、そういうねらいを込めております。
具体的にどういうことかといいますと、厳しい財政事情、急速な少子高齢化の中で非常に不透明感が漂っておりまして、これを何とか厳しいのは厳しいなりに将来の設計を描きたい。それから、やはり民間で頑張ってもらわなければいけない。そして、国、地方の政府のほうは、引き続き、行革、歳出カット等々を含め、「小さな政府」を目指すというのが結果的にあるのでしょうが、効率的なパブリックセクターの構築をしてもらいたい。
それから、何といっても個人金融資産1,400兆円と言われる世界でストック化が進んでおりますから、これをどう活用するか。その一環が生前贈与みたいな発想になったわけでありますが、それ以外にまだ何かあるだろう。
言わずもがなでありますが、国民負担増はこれから避けて通れない。その中で行革をどう進めるかの決意表明をそこの中でする必要があるだろう、こういうことでございます。
それから、「少子高齢化と税制」というのは今回の中期答申のサブタイトルにつくようなテーマ設計になると思います。この中で三つほど主要な税を挙げるわけでありますが、それを全部くくる意味で、最初、総論的に少子高齢化の発展のありさまとか、それを支える税制の基本的な哲学としては、世代間の公平。世代戦争というものを激化させるようなことは好ましくないと思っておりますから、そういう意味で、高齢者中心の給付体系になっている、若者に拠出がいく、そういったものをどういうふうにならしていきたいかという平準化の問題があります。
それから、「活力ある」という意味においては、個人とか企業が力を出してくれなければ困る。今、将来に対する不安、あるいは消費が縮こまっている等々というのは、安心の確保がないのだろうと思いますから、それは、セーフティネットを含めて、社会保障制度、そういうものでしっかりセーフティネットをつくる。あるいは、これだけの財政赤字で、財政そのものの持続可能性が疑われているわけでありますから、それに対してどう対応するかというあたり、これは総論としてしかと書き込まないと、あるべき税制の姿、まして少子高齢化の中でということになると描き切れませんから、これをしっかり最初書きたいと思います。
個人所得税は、基本方針であらかた方向が決まっておりますから、これはそれなりの論点整理でいいと思いますが、あえて言えば、再度議論を整理する、あるいは年金課税というものをかなり力点を置いて書くといった形になってこようかと思います。
現状認識は、さまざまな歪みがあるよ、と。それから、非課税や特定収入と結びついたいうなれば租特みたいなものによって、かなり不公平感、非中立、歪みがある、個人の選択を歪めている。したがって課税ベースを広くして世代間の公平を確保しようという基本的な考え方と、さまざまな世帯がいるわけでありますから、世帯というものの中での負担の公平、それから、個人がさまざまな活動をするわけですね、働く、活動する等々。それの中で税は中立的なものがよかろうと。
それから、財源調達機能と所得再分配。所得再分配機能はそもそも所得税の持っている本来の役割でありますが、これをどこまで考えるか。かつ、税の空洞化という中でどうやって財源調達機能を持たせるかという話ですね。
それから、少子高齢化のすぐさま直に効いてくるのは年金課税でございまして、入り口、出口ともに実質的に非課税に近い状態をどう改めるか。それから、先ほど来申し上げているように、世代間の負担をどういうふうにして維持したらいいか。高齢者を一括りではなくて、リッチでウェルシーな高齢者もいる場合に、給付サイド、あるいは課税のサイドで特に適切な負担の求め方があるのではないか、そういう問題認識があります。
人的控除につきましては、あまりにも多くあり過ぎる控除を整理する過程で基本的な構造を見直したい。そうなると、当面、社会保障制度にまつわっておりますさまざまな控除が対象になりますね。例の公的年金等控除、老年者控除等いろいろな控除、あるいは退職所得に対する控除とか勤労学生控除、いろいろありますけれども、こういうものを少しならしていって、児童扶養への配慮というようなことも片や念頭に置く。
それから、給与所得控除というのが一つ大きな問題であると我々は関心を持っておりますので、これは、実額控除の幅を広げるといった形でここら辺に少し改革のメスを入れるか。
それから、非課税所得というのが、いろいろリストアップされておりましたが、これについて課税ベースの拡大をどう考えるか。
それから、個人住民税、均等割云々がこの税調でも議論になっておりますが、広く負担を分かち合う。つまり、地方自治の担い手として自主、自立、責任を果してもらうという意味においては、住民税というのは一番性格に合っているわけでありますから、そういう観点でどう見直すか。
こんなところが、個人所得税の主要なテーマかなとは思っております。
そこで、まず最初のブロックとして、総論部分と、それから、個人所得税の中で落ちている部分もありますから、項目に対する追加、あるいは、項目に対して要らないというご発言もあろうと思いますし、あるいは、項目がよければ、その中身についてこういう点を強調していただきたい、強調したいという意見をどんどん言っていただきたいと思います。再三申し上げますが、今日はこの項目等々についてのラストチャンスでありますので、具体的にご発言をいただきたいと思います。
最初に、私の考えていますことはこれでございますので、以上のテーマにつきまして、とりあえずご発言ください。
〇委員
今のお話はよくわかりましたけれども、全体の印象が、ちょっと漠然として申し訳ないのですけれども、「少子高齢化社会」というのがサブタイトルで、まことに時宜を得たテーマでいいと思います。前にもちょっと触れましたように、高齢者から税金を取るというイメージが全体の中で非常に強いだけで、少子のほうをどうするのか。例えば子育て支援とか、そういう問題をもう少し入れるべきではないかと思います。ちょっと抽象的で申し訳ないのですが、そういうような印象を今持っています。
〇委員
具体的に、税の世界で議論というより、もっと幅を広げて歳出面まで入れてというご発想ですか。
〇委員
いや、それはやっぱり税の世界でしょうね、ここは税調だから。
〇委員
そうすると、扶養手当を拡大しろとか、児童手当を新設しろとか、そういうほうに持っていきますか。
〇委員
私もよく具体的なイメージはわかないけれども、そういうことを入れないと、少子高齢化というか、高齢化だけが中心のような気がするんですね。とりあえず今回はそういう発言です。
〇委員
わかりました。
〇委員
その点で、2ページ目の「人的控除の基本構造の見直し」というところ、点の2で、「社会保障制度との関連と児童扶養への配慮」と。これも意味するところがよくわからないのですけど。
〇委員
わからないって、まだ具体的な制度設計をしていませんから。
〇委員
タックスだけから言えば控除ですよね。だけど、税調としてここを、どこまで、何を言うのか。要するにタックスクレジットまで言うとか、言わないとか、そういう議論はあると思うんですけど。
〇委員
「配慮」でありますから、児童手当的なところもあるでしょうし、あるいは、扶養手当、あるいは扶養控除、基礎控除をあたりをどうするかという配慮もあるでしょうし、その点はこれからの議論だと思いますが、何か具体的にご提案はございますか。
〇委員
控除でやる限りは、手を届かせたいところに届かないところがありますよね。所得も低くて子育てで大変だというところに届かせようとすれば、世界的な流れは税額控除ですから。
〇委員
どうぞ。
〇委員
今のお話、今のような方向でよろしいのではないかと思います。2ページ目3行目の、様々な要因による収入をできるだけ課税ベースに取り込んで、あとは人的控除で配慮する、それを基本とする、これが基本的な考え方でよろしいのではないか。そしてその中で、社会保障制度との関連と児童扶養とか、おそらく全体としては本人1人の基礎控除だけで対処していく。しかし、児童、未成年者については税額控除か所得控除かわかりませんが、何らかの方法で配慮していくということで、少子高齢化、決して削るだけではないという方向がそこらで出てくればいいのかなという気がするわけでございます。
それから一つ、基本的な考え方に関連するわけですけれども、これから国民負担増は不可避だということです。それは、今の福祉の水準なり何なりをさらに高めていく、そういった趣旨から負担増が不可避なのか、現在の財政状況をもっと安定的、サステイナビリティーがあるものにするために負担増が不可避ということであるか。そこのあたりはどう考えて、どうやって書いていくか。先ほど申し上げた現在の不安定な財政状況というのは、後世代のためにも安定化しておく必要があると思うわけでございます。
2010年代の早い機会にプライマリーバランスを回復するということが漠然と言われておりますけれども、プライマリーバランスとか、そういう高尚なことを言っている段階ではなくて、とにかく税金で大宗は賄うのだと、これは2010年を待たなくても考えていくべき方向ではないか。
しかし、それは財政状況全体の中での話であって、税制のあり方としてはそこは任せておいていいというスタンスか、税としては、そこは積極的に対処していく方向で考えるべきではないかという考え方で行くのかでございますが、やはり税制としては何らかそこは付言しておく必要があるのではないか。なかなか難しいと思いますが、感じがします。
〇委員
確認ですが、前段は、アメリカ型のパーソナルエグゼンプションをご主張ですね、いつものとおり。一人ずつ。
〇委員
それと北欧のとも組み合わせて、児童は税額控除だと。そういう方向も考えられると思いますが、基本は一人一つ。ですから、アメリカ型かもしれません。
〇委員
わかりました。
どうぞ。
〇委員
アトランダムに言わせていただきますが、基本的考え方の中に「ストック化が進む中での資産の効率的な活用」と書いてあるわけですが、果たしてストック化というのはこれから進んでいくのかねと。その前提について少し吟味したほうがいいような気もします。貯蓄率を見てもどんどん低下しているわけで、企業のストックはどんどん海外にシフトしている、目につくのは社会資本ストックだけというのが現実ではないか。そういうことからすると、税調の文章として「ストック化が進みますよ」という大前提ですべてを考えていくことには慎重であるべきではないか。
それと、少子高齢化と税制ということですが、これまでの議論を聞いてみると、個人の所得課税、なかんずく高齢者向けの控除、あるいは非課税所得あたりに議論がちょっと偏っている。それも一つの論点ではあるのでしょうけれども、そればかりに引きずられていると何か矮小な感じになってしまうという危惧を抱いています。
少子高齢化と税制、今度の中期答申で書く場合、やはり一つ踏まえておかなければいけないのは、社会保障との関係をこれまで以上に強く出して関連づけて記述していくということではないか。社会保障のほうはあちらのほうの審議会、税調は税金のみという一種のすみ分けみたいなことでやってきたわけですが、ここまで来ると、もう社会保障と税は一体で考えないとどうしようもない。
この前も厚生労働省の方が来たときに資料を要求したのですが、その中で、社会保険料の負担がもう60兆円になっている。税金は70兆円少し超したぐらい。しかも、その60兆円というのはほとんど収入、所得から取っているという状況に来て、これまでどおりの社会保障の負担がいいのかどうか。それは、社会保障という別の世界の話ではなくて、即座に税の負担の問題にもかかわってくる話でありますから、これは一体として……。もちろん、あくまでも税の答申ですから、そこら辺のウエートはあるのでしょうけれども、税だけで最初から最後までということになってしまうと薄い話になってしまう。
ちょっと個別の話で、少子の話が出ています。この問題についてよく言われるのですが、少子化というのは何がいけないんだと。とにかく子供を増やさなければ大変だということで、これもまたそういう前提で議論されて、いろいろな施設ができたり、いろいろな手当ができたりしているわけですが、少子化がもたらす問題、あるいは、その問題のとらえ方が今のままでいいのかどうか。少し冷静に振り返ったほうがいいと思います。
もう一つ、具体的に控除と社会保険料の話で言いますと、先ほども会長が、年金の負担給付が賦課方式になっている。おそらくこれからの人口構成の急激な変動を考えると、賦課方式をもっと進めていかざるを得ないだろうという基本認識のようで、これで私も異論はないわけでありますが、そうなると、保険料と税、所得税、住民税、保険料と税という関係で私はかねがね思っているのですが、社会保険料、厚生年金あるいは基礎年金の掛け金というのが家族構成というのを全く斟酌していない。
極端な例を言うと、子供を育てないで高齢者になる。高齢者になった場合の給付というのは賦課方式でありますから、人の育てた子供からいただく。こういうことになってきて、これは少子高齢化とか、子供を産めとか、そういうことではなくて、負担と給付のありようとして果たしてこのままでいいのだろうかということを前から思っている。実際そういうコラム記事を書いたことがあるのですが、女性から相当の攻撃を受けましてね(笑)。
ただ、これはそういう感情の問題ではなくて、社会数理の問題なので、そうなってくると、厚生年金の掛金に家族構成を反映させたものにするか、それが無理だとすれば、扶養控除というもので、税で配慮していくしかないのかなということで、人的控除を会長なんかはあまりお好きじゃないようだけれども、賦課方式における年金の制度運営ということを考えると、子供を持っている人、つまり次世代の保険料を負担する子供を育てている人と育てていない人と、この違い、これを負担に反映させる方向としてはとりあえず扶養控除しかないのかなということで、私は扶養控除擁護論者でございます。
〇委員
私も、扶養控除、別にふっ飛ばせとは言ってませんよ。僕も子供持ってるし。
どうぞ。
〇委員
年金と給与ですけれども、この間に退職所得の問題も少し検討を加えたらどうかと思います。一つにはリストラの問題がありますが、他方で、退職一時金として受け取る場合があります。これも相当優遇されてきていますけれども、10年、15年先、一時金はなくなっていくような気もいたしますけれども、検討していただけたらと思います。
〇委員
はい、わかりました。
どうぞ。
〇委員
所得税については1ページに書かれてはいます。これがたぶんその意味ですから、それでいいと思うのですが、例の4分の1という議論がありますよね。あれが本当かどうかという……。
〇委員
何ですか、4分の1というのは。
〇委員
4分の1の人が払っていないと。それはきちっと統計的に確定して、その論が正しいということであれば、それを前提にしなければいけないし、それから、最低税率の適用者が8割に達しているということもここではきちっと問題にしていく必要がある。
それから、高齢者ですけれども、高齢者に税金がかかってしまうというのはやむを得ないことだと思うのですが、問題は、高齢者かどうかを年齢を基準にすることはもうやめるほうがいいのではないか。年齢が高いから非課税にしてやるというような考え方をやめていく。その中で年金課税の問題とか、そういうものも入ってくるということだと思うのです。
個人住民税については、均等割にしても常識外の低さですからね、3,000円とか4,000円とかいう。個人住民税については、均等割も所得割も引き上げるというのを明確に出したらいいのではないかというふうに思います。
〇委員
どうぞ。
〇委員
先ほど別の委員がお触れになった総論部分ですけれども、高齢化社会の進展で主要財源がどんどん増加するわけですね。それに対応するためにも、一番重要なのは財政バランスの回復なのだということをどうしても強調しなければいかんと思うわけです。そうしないと経済の活性化はできないんだということであるわけですから、どこまで踏み込むかですけれども、国債をはっきり減額して、毎年、毎年、ターゲットを絞って減らしていくというはっきりしたそういったスケジュールを立てて、そのためには増税も必要だし、歳出削減も必要であるということだろうと思うのです。
この場合には、国民負担増不可避とありまして、もちろんそうですけれども、まずは行財政改革であって、その上、国民に対して増税もお願いせざるを得ない、そういう状況なのだということは繰り返し強調する必要があると思うわけです。
それと社会保障との関連でいきますと、結局、今の状況では破綻してしまうという状況ですよね。改革もしないで税金だけ入れればいいというものではないのだから、そこをはっきりさせないと税金を入れるわけにいかないんだと。やはり財政の役割としては必要なところに重点的に配分するということですから、そこを大いに強調しておく必要があるだろうと思います。
〇委員
どうぞ。
〇委員
少子高齢化対策というのは膨大なる政策体系があるようですね、僕は専門家じゃないからわからないけどね。ここはたまたま税調だから、税金の話をしているだけなんですよね。これから少子高齢化について、活力という言葉を使っても、趣味の問題だから構わないと思うけれども、それにしても一体税制上の負担はどの程度のものなんだと。ほかにたくさんあるわけですよ、厚労省のやる仕事から、文科省から、個人の自覚の問題から、男女間の問題から、いろいろなことがあるわけだ。全部ひっかぶって税制が全部やりますなんてことを言ったって、ドン・キホーテみたいなものじゃないかと僕は思うんですね、責任を軽くするという意味ではないけどね。少子高齢化対策という膨大なものがしかるべくあるとするならば、税制というのは一体主役なのか、わき役のなのか。わき役でも、ナンバーワンなのか、末っ子のほうなのか、お互い確認しないことには、一人で張り切っても滑稽千万だと思うんですね。
そのことをもうちょっと議論する必要がある、位置づけを言う必要があると思うのですが、といって逃げるという意味じゃないんですよ。2番目に、そういうことを一応頭として固めた上で、「少子高齢化」ってワンフレーズになってるわけだ。高齢化のほうは、僕も高齢者だからわかるけれども、ある意味ではデータもあるし、いろいろなことがあるわけだ。問題は、この社会で一番あれなのは、この前誰か言ってたけど、少子ということに対してどういう政策をとるのか。それは自然だから、こんなことはどうにもならん、言っても始まらないというふうに腹を決めた上でリップサービスで何とかやるか、税制面で洗いざらい本気になってやってみるかということか、どっちかなんですよね。
高齢化の中で、年寄り同士の間の負担をより公平にするとか、所得再分配をするとか、それは私は大賛成。それから世代間の負担の不公平、これも直すのは当たり前だと思いますね、もたないから。しかし、少子という現象は、税金なんかちょろちょろいじくったところが、今、男女が大体結婚しないし、結婚したって、男もだらしないけど、女のほうもわがままで、どうもならんことは山ほどあるわけだ。分析は山ほどある。これを税制で割り切ろうなんておこがましいな話なんだ、実はね。
せめて我々は、謙虚にこういうことを考えますよ、一助にしてください、と言うぐらいが関の山ですよ。会長が全部背負って、少子高齢化、活性化を税金でやるなんて冗談じゃない、そんなことは。できもせんことは言わないほうがいいんですよ。というのが一般論。
〇委員
はい。そういう一般論も重要でありますから、総論のほうで、今の委員のご発言を極力生かすような方向で。
税制のみでできないのは誰もわかっていますけれども、ただ、税制もコスト負担、要するに負担のほうの主役であることは間違いありませんからね。その両方を書くということでしょうね。どうぞ、ほかに。
〇委員
さんざん議論になっている少子高齢化で、私自身も、皆さんがおっしゃるとおり、やはり少子が抜けている、欠落している、これは事実だろうと思うんですね。これをどうしたらいいかというのも、税制だけではないという話ももちろんわかるんですけど、62年度答申では2分2乗とかそういう話が出ていますね。今回はそういうことをやはり盛り込むべきではないかと思うんですね。
〇委員
少子化と2分2乗とどう関係するんですか。
〇委員
アメリカのような選択制にしたらどうか。個人と夫婦と合算の。そうすると、税金というのは子供とその個人と違ってくるんじゃないですか。あと、フランスのような5分5乗だか、子供によって……。
〇委員
それはわかりますけれども、2分2乗は夫婦間の所得の分割ですよね……。わかりました。そういう配慮もしろということですね。そうなると、家族単位の問題ですね。
〇委員
家族単位と個人と選択制はどうかと、そういう話です。
〇委員
ほかにございますか。
どうぞ。
〇委員
今の少子高齢化の少子問題ですけれども、税制で少しぐらいいじったからといって、私も思うのですが、少子化は止まらないと思います。例えば扶養控除を増やしても、子供を生むかどうかそれはわからないと思います。ただし、税制というのは、一つの国の望むべき、目指す社会のあり方のシンボルということもあるので、やはり一つの潜在的な効果があると思うし、それは大切なことであり、入れるべきものは入れる必要があると思います。
それから、税金を子供を生んだからまけてやるということがここの根本にあるのではなく、どうも女性たちの話を聞くと、働くことと子を育てることが難しいということが根本にあるわけですね。子供を育てるか働くか、どっちかといったら、子供を育てるほうを選択することはできないわけです、自分が生きていかなければいけないわけだから。どうしたって子供を捨てて働くほうに回る。とすれば、働くということを前提に、そこに一つ焦点を当てる必要もあるのではないかという気がします。要するに、子供を育てながら働く女性に企業の職場がやさしくないという不安が非常に強いわけです。ちょっと法律の名前を忘れてしまいましたが、子育てに一つの枠をはめる、そういう法律があるようですが、それは訓示規定のようなもので、ほとんどの企業は守っておらない。
ですから、この前もちょっとだけ触れた気もしますけれども、例えば、子育ての一定の尺度を持ったやさしい企業には法人税をまけてやるとか、そういう考え方もあっていいのではないか。また租税特別措置が増えていやだけど、考え方としてはそういうことも可能ではないか。そっちのほうが本質ではないかなという気が私はしております。
〇委員
ありがとうございました。
どうぞ。
〇委員
前からそう思っているのですが、少子高齢化というのは、少子と高齢化は別々に起きている現象なわけですから、これをくっつけて四文字熟語のようにしてあるのはきわめて厚生労働省的考え方で、これをくっつけると自動的に保険料を上げるのが楽になるということだと思ってずっと見ているのですが、それに税調も乗るのは僕はいやな感じがしています。税調としては、少子だろうが高齢化だろうが、そんなことは現実であって知ったことじゃないのであって、どれだけ税金を集めるかというのが考え方だと思います。
それで、今さら切り離すのは難しいですけれども、高齢化と税制、あるいは、少子化と税制というのは別々の見出しにするのが理想的だとは思いますが、それができないとすれば、間に丸ポツを入れるとか、多少の抵抗は示しておいたほうが先々のためにいいのではないかと思います。
あとは、基本的考え方の中ですけれども、「将来への不透明感がある」と言ってしまったのでは、何のためにやっているかわからないわけで、その不透明感を透明にするのがこの答申の役割ではないかと思います。大きな絵で、負担増にする、それに見合う部分、行財政改革などという生やさしいことでなくて、行財政を削減する、使うほうを減らさなければ取るほうも増やしてやらない、こういう代替関係をそろそろ示していいのではないかなと思います。
もう一つは、社会保険のさっきの話でもわかりやすいのではないかと思うんですけど、2分の1、3分の1でも、要するに払うほうは同じなわけですから、社会保険料と税は代替関係にあると。社会保険料控除を考えても、向こうが増えればこっちが減るという関係にあるということをもうちょっと明確に言って、どっちで取っても同じなのか違うのかは、いろいろ難しいでしょうけれども、トータルで、税金で補てんすればいいと思うのは間違っていますよということは、言ってもいいのではないかなというふうに思います。
〇委員
ということは、3分の1、2分の1問題はそう重要でないということですな。
〇委員
いや、重要でないのではないのであって……。
〇委員
いいんです、重要でないと言っていただいても。
〇委員
でも、使う人が変わってしまう。
〇委員
その点を強調しろということですね。
少子高齢化の言葉使いはちょっと我々も考えなければいけないけれども、これはある意味で好みの問題もありますし、定着しているということもありまして、ちょっと引き取らせてください。議論させてもらいます。
どうぞ。
〇委員
先ほど他の委員がおっしゃったこととも関連するのですけれども、基本的考え方で「活性化」ということを強調しているわりには、所得課税のお話になったときに、控除の話とか課税ベースの話に力点というか、そこにしか力点がないように聞こえて、税率の問題、10%の限界税率のブラケットのほうですが、そういうことについて、フラット化といいますか、それに近い論点をもう少し出して活性化を図るということを強調されたほうがいいのではないかというふうに私は思います。
ただ、それとの関連で、課税ベースも拡大する、フラット化をするということになったときに、景気の問題という、足元のそこの問題は大事なんだよということを基本的考え方のところで逆に強調されて、これは中期のあるべき税制なんだということを少し強調していただきたいというふうにも思います。
〇委員
委員の言うフラット化というのは、もっと累進税率構造を緩和しろという意味のフラット化ですか。
〇委員
むしろ最低ブラケットのところの限界税率を上げて、特別減税は廃止して、必要ならば最高税率のところは少し下げることも検討してもいいのではないかということです。別に下げろということではなくて、フラット化を検討することが、活性化と言われると普通イメージするのではないかと、そういう趣旨です。
〇委員
ぼつぼつ次のテーマにいきたいのですけれども。
では、どうぞ。最後にして、次に行きます。
〇委員
より総合的な形で議論しなければならない立場、あるいは、より具体的に議論をしなければならない立場にある者として、各審議会でご議論をされている中身が、それとどういう形で整合化をしていくかということはいつも私どもは頭を悩ませているわけであります。具体的に例を挙げますと、少子高齢化、これは中グロを入れるかどうかはともかくとして、年金課税の見直しのときに、我々、マクロ的な姿形から入っていって、そのときに給付レベルが一体どういう具合になるかというときに、給付水準を下げるのか、税金で徴収をして、実質的に課税後の年金水準をどう考えるかという問題が別々に出てくるわけですね、厚生労働省の側からと、この税調という形で。
そういうことでありますと、大きな政府になるのか、小さな政府になるのか、たくさん払っておいて税金で取るのか、水準を引き下げて税金をかけないのか、こういうようなオルターナティブな考え方があります。それが国民負担率、あるいは潜在国民負担率にはね返ってくる。ここら辺の共通のイメージを固めていただいた上でご議論をしていただかないと、ばらばらに挙げられますと、我々はきわめて困ってしまうという部分があるわけです。
例えば三位一体の問題もそういうところがございます。つまり、それぞれがそれぞれのお立場から反対して、まとまらないという事態に陥る危険性がきわめて高いということでございます。イメージとして、今後10年間ぐらいどういう経済状況を前提にしながら、トータルでどのような姿を描きながらこれを議論するのだということを、中期答申の場合にはより具体的にお書きいただきながら、それを整合化していただきたいというのが実は我々の要請であります。
〇委員
わかります。それは個別の審議会に対するご注文と思いますが、逆に言えば我々からは、その辺の個別の審議会で広がっているところは、そちらのほうで、国と地方の関係もそうだし、社会保障と税制の話もそうだし、おのおののところでパーツ、パーツごとにやっては限界がある。それを大くくりで見ていただいて、具体的な案、マクロ的ベースをベースにしてやっていただくというのが、僕は経済財政諮問会議の第一義的な役割ではないかと思います。それと我々は整合性をとる意味で、あるパーツに特化するということになると思います。
ちょっとついででご質問したいのだけれども、今、骨太を検討中だと思いますが、例の3分の1、2分の1問題とか、この辺はどう処理されますか。
〇委員
これは、前々回の経済財政諮問会議で実はマクロ的な試算を出しました。国庫の繰り入れの率を3分の1から2分の1に引き上げるかどうかと。
〇委員
この間もらいました。
〇委員
結果的に国民負担率、あるいは潜在国民負担率はかなり違ってくるということ。あるいは代替率といいまして、現役のときに比べてどのくらいの年金になるかということもだいぶ違っているわけですが、我々はそれを、具体にどちらだというような形では議論をしておりません。将来的に判断するときに、そのシミュレーションを見ながら最終的には検討していかざるを得ないと思っているのですが、時系列的な推移からすると、2分の1に引き上げないときわめて厳しいなということ、あるいは、負担率そのものを上げていかざるを得ないという状況が出てくると思いますので、その辺のマクロの状況をどのようにここで結びつけていくかということは、ぜひ具体的に詰めさせていただきたいと思います。
〇委員
ぜひお願いします。
では、消費税と、法人税に入りましょう。また戻っていただいても結構でございますから。
またお手元の「論点整理」にお戻りいただきたいのですけれども、2ページの下のほうから消費税、そして法人課税が書いてございますが、書きたいことは以下のようなことでございます。
15年度税制改革で我々は、事業者免税点の3,000万円を1,000万円に下げたり、簡易課税制度の適用範囲を5,000万円にしたり、さまざまな形で信頼性、透明性を確保した。いうなれば消費税の構造的な問題についてはメスを入れたと、そういうふうに考えております。
今後、この消費税をどう位置づけるか。3分の1、2分の1の問題も実は絡んでいるのですが、今の段階でいつの時点でどのくらい上げるという書き方はまだできないにしても、きわめて重要な税であって、今後、役割を高めていく、これは税全体の体系の中で考えていこうと、そういう基本姿勢は強調する必要があるでしょう。
それから、具体的に2ケタの税率になったときには軽減税率が必要だろうというような将来への含み、あるいは、その場合にはインボイスを入れたほうがいいではないかとか、そういう話。それから、地方消費税の話をどう絡めるかといったような議論が、おそらく消費税の世界の議論であろうと思います。私、かなりのことはやったと思いますので、今後どう使うか。ここには、目的税的なことをどうするかというような話を入れなければいけないでしょうね。その検討をどうするか。「する」という意味ではなくて、問題意識としては福祉目的化というのはこの間だいぶ議論になりましたから。
法人税のほうは、いろいろ議論があり、今回、設備投資と研究開発投資に向けました。そういう意味で外部経済の対応というのを、そういう形で3枚目の一番上に書いてございますが、法人税の世界で政策税制という形の使い方として対応したと。しかし、あくまで基本は「中立」を原則にしたいということも片やございますので、この辺のバランスをどうするか。
それから、法人税率の引下げというのはすでにいろいろな問題提起を昨年来やられております。これを将来をどうするかというのはまさに将来の問題ですが、各国の税率がどうなっていくかということにもこれから絡むでしょう。そういう意味で、これは目配り、気配りをして将来考えたい。
実はもう一つ、法人税の世界では例のNPO法人を含めての議論、公益法人等の議論があるので、それを含めたらその辺の書き方をしたいし、それから、不良債権処理に関する税制につきましてこの間からだいぶ議論しておりますが、それにつきましても、繰延税金資産の検討を含めてここでちょっと書いておく必要があるだろうと。
それから、外形はこの間入ったわけですが、今後、定着に際して幾つかの論点もあろうと思いますので、この辺も地方税の世界で議論はしなければいけないだろう、このように考えております。
そういう意味でここは少子高齢化にダイレクトに結びつく話ではありませんが、活力という点で何か議論ができるのではないか。ただ消費税につきましては、先ほど来申し上げております、世代間の公平を確保するとか、そういう点から重要な役割を演じると思いますので、これは我々としては腰を据えて書き込まなければいけないと考えております。
以上であります。
しばらく時間をとりまして……。どうぞ。
〇委員
まず、消費税の「基本的考え方」の1番目のポツ、これは事実関係の標記なので、去年こういうことをやったよ、ずいぶん透明性が高まったよということなので、裏読みしてしまうと、今年はあまりやることないよ、と。眼光紙背に徹するとそういうふうにも読めるので、これは基本的考え方としてはなじまないのではないか。要するに表現形態としてはどうかなと思います。
2つ目のポツは、今後引き上げ、役割を高める、税体系全体の見直しの基本である、このとおりだと思います。これに加えて、先ほど会長が社保審との協議の内容を報告されたときに、ちょうどキーワードでおっしゃいましたが、少子・高齢化社会の社会保障制度を支える重要な柱であると。少子・高齢化社会「の」--「における」でも何でもいいけれども、「社会保障制度を支える重要な柱である」という考えを打ち出されたらどうかなと。それで、先ほどちょっと抜けているとおっしゃる、厳格な意味の目的税化するかしないかの議論は、僕は緩やかなほうですが、「主たる社会保障制度に充てる」とかいうような標記が必要なら、書いていくと。
2つ目の「今後の課題」はまさにイフの話ですが、上げたらこうなるよ、2ケタになったら軽減税率だよ、その場合はインボイスだよ、と。イフ、イフ、イフが重なっていくのですが、ここは前回の小委員会で会長代理がおっしゃったように、スパンを3年ぐらいとしてものを見たときはこれはやはりあったほうがいいねと。基本的考え方だけだと、ややお経の文句になってしまうの、これは国民へのメッセージというか、今後の議論を活性化させるためにもやはりあったほうがいい、そう思います。おおむねこれで大体いいのかなと個人的に思っています。
以上です。
〇委員
税率以外でまだやることは、今年度、短期的な視点でありますか。ちょっとないでしょう?
〇委員
ちょっとないんです。
〇委員
だから事実を書いたんですけどね。まあ、書き振りは十分注意しましょう。
どうぞ。
〇委員
消費税ですが、前回の3年前の答申がありますね。そのときは、諸外国に比べて5%は低すぎるという話と、それからもう一点は、公的サービスを含めてそういう観点から国民的合意が必要だという話が書いてあったのですが、やはりそれより後退する表現ではいけない、そういうふうに私は思います。
それから法人税ですが、多国籍企業を見ると、最近、自動車メーカーにしろ、6割、7割が外国で売上をやっているんですよね。例えばGMなんか4年後ぐらいには日本市場を中国が追い抜くだろうと、それで戦略を立てるような時代になっているのだから、これはあくまで私の意見ですが、やはり法人税というのは下げていく方向ではないか。これは税調の意見ではなく、私の意見です。
〇委員
グローバル化だから、競争なんて言葉がどこかにあったほうがいいということがおっしゃられる内容ですよね。
〇委員
はい。
〇委員
どうぞ。
〇委員
消費税ですけれども、今年初め頃から財界で消費税引上げ論が出てきているわけですね。それは一つの変化ですから、それは大いに踏まえて議論する必要はあると思います。それで、先ほど会長がおっしゃった、今の段階でどれくらい上げるかは書けないと。それはそうなんですけれども、いずれ時が来たら具体的に税調としてイニシアチブをとって出すんだと、それくらいの決意を出しておいたほうがいいように思います。
それから、今や消費税は基幹税で、そういう重要な税であると、そういう認識をはっきりさせておく必要があります。その際、生活必需品に対する軽減税率、2ケタになった場合そうだということですが、本当にそうなんでしょうかね。軽減税率でない方法だってあるのではないかなと思うわけです。一律還付するという方法もありますから、できるなら軽減税率の採用は避けるべきであるというふうに私は思います。
それと、福祉目的化についてですが、諸外国で基幹税を目的税にしている国はないわけです。だから、これはあまり甘い顔を見せないほうがいいと思うんですよ。いずれ社会保障関係はいっぱい金が要るわけですから、そこで何も縛る必要はないのであって、僕は福祉目的をにおわせるような表現には反対であるということを言っておきます。
〇委員
ほかにいかがでしょうか。
どうぞ。
〇委員
法人税ですけれども、ここに書かれているのは、引下げを意図して書かれているというふうに考えてよろしいのですか。チャンスがあれば引き下げると。
それは質問ですが、それから、バブルの影響を受けて法人税そのものが今や基幹税としての機能をだんだん失いつつあるのではないかと。企業はどこでもそうですが、特損、特損でみんなやりますよね。株が下がったりしたら法人税はあがってこないというのが現状ですから、それがしばらく続くと見たほうがいいだろうと思いますけれども、その場合、どう考えるのか。法人税の位置づけをどうするのか。
もし基幹税として必要だということであれば、法人事業税でやった外形標準的なものの考え方、最低これだけはいただきますよというようなことをやるとか、何かしないと、利益課税だけでやっていますと、しまいになくなってしまうのではないですかね。というふうに思います。何かそういう法人税の位置づけをもうちょっと書いたほうがいいのではないかと思います。
〇委員
わかりました。おそらく最大公約数は、基幹税としての地位は、個人所得税、消費税に比べると今後落ちるだろうということ。それから、グローバル化された世界で引上げは難しかろうと。そういう意味では引下げはあり得るというのは、今後の税率引下げですよね。ここで見直しなんて言葉を使うよりは、はっきり「引下げ」で方向が示せるのではないかと思っています、今後のタイムスパンの問題が残っていますけれども。おっしゃるとおり、法人税の今後のあるべき税制の中での位置づけ、これを書く必要はあるでしょうね。
どうぞ。
〇委員
今のお話とも関連するわけですけれども、法人税の位置づけ方が、おそらく当税調と諮問会議の側で一番分かれるところだろうと思っております。活力ということで、去年もこの問題、だいぶご議論させていただいたわけです。さらには資金の流れという観点で、民間の株式市場の問題等における税引き後のプレゼントバリューという観点からも法人税が当然問題にされますし、今ご指摘のとおり、理屈の問題として、法人課税、キャッシュフロー税的な意味じゃないと、国際的なグローバル化の中で非常に大きな限界に突き当たってくるという観点で言えば、キャッシュフロー税の代替物としての消費税とどういう具合に関連づけるか、こういう問題も必ず出てくる問題でありますから、法人税をきちんと税調として位置づけていただきたいというのが第1点であります。
それから、2ページの最後から3ページの冒頭にかけて、これは、去年の活力、中立の議論が尾を引いた形で記述されていると理解しておりますけれども、この「外部経済」という言葉は、経済学的にはおかしな使い方をしているので、ここはぜひ改めていただきたい。ご承知のとおり、市場を経由しない形でダイレクトに影響を及ぼすというのが外部経済であって、政策税制的にそれが影響を及ぼすというのとは意味が違うわけでありますから、ぜひそこの部分は直していただきたいと考えております。
もう一つ、事実認識として、「先進国並みないしそれを下回る水準」という具合に言い切ってしまう、これはお気持ちはわかりますけれども、客観的なデータ等でやった場合に果たしてこれでいいかどうかということは、もう一段、考えてみる必要性があるだろうと。法人税については以上であります。
消費税については、中核的な税収担保策としてきわめて重要な位置づけが与えられると思いますし、シミュレーションをやりましても、ここの部分のところで税収的な面での位置づけを与えていきませんと、我々がやっておりますマクロ的なシミュレーションでも、現実的なシナリオの中では、10%を上回ることは想定せざるを得ない状況になっております。そういう意味で、消費税のもう一段の国民的な制度としての不合理性の問題、これをどういう具合に解決していくかということは私は宿題になるのではないかと思います。
もちろん、特別措置としての部分にかなり前進があったということは、去年、相当やっていただいたということでありますけれども、複数税率というのは、先ほどの委員と私はちょっと違っておりまして、やはりこれは考慮せざるを得ないのではないか。そうすると、インボイスという形での作業はきちんとやりませんとなかなか国民的な合意が得られないのではないかということで、ぜひ消費税の問題には、姿形の問題を税率の問題と組み合わせてご提案をいただければという具合に思っております。
以上です。
〇委員
仲間内だからダイレクトに聞きますけれども、総理大臣は消費税を否定してるよね。我々、ふたをされたという意識を持っているんですけど、経済財政諮問会議は、10%--どういうふうに処理されます?
〇委員
フォーマルには総理が消費税の問題については封印を解かれておりませんので、我々としてはそれを尊重する。しかし、中長期的なマクロバランスとの関係で言えば、そこを除いて整合的な形の絵は描けないこともまた事実でありますし、総理はそのことに関して議論を封殺するということはおっしゃっておりませんので、我々としてはそこは、当面3年ぐらいのスパンの問題とそれ以降の問題については、頭の中では仕切って区別をしているということだと思います。
〇委員
我々と同意見ですな。
どうぞ。
〇委員
消費税についてこの前もちょっと申し上げたけれども、今の話を聞いていて、委員から言われたことは、全体を見ればそのとおりだと思う。ただ、国民の意識が、消費税に対する抵抗感が変化しているんだということを、僕はこの前、付録か何かでこっそり書いておけよと言ったんだけど、なんか本文の中に書いたってかまわないんじゃないかと思う。総理はまだこだわっているけど、政治家だからかまわないけど、国民はほかとの選択論がありますよ。これは全体をどういじるかということと関係するから、簡単でないことはわかっているけれども、消費税に対するアレルギーというのは政治家のほうがよっぽど強いんじゃないかという気がするんです。
経団連なんかが言っている話は、あれで企業の負担も軽くなるし、法人税の減税の財源にもなるし、併せて財政再建にも役立つという大変な話になってるんだね。あれをまた15~16%まで上げるというのだから大胆極まる話で、政治論を抜きにした議論だと思うけれども、いずれにしても国民の意識……。まあ、経団連が意識の代表になるかどうかわからないけれども、いずれにしても多角的な、まさに総理が言うような活発な議論が行われているんだという事態を書いておいたほうがいいと思います。
ここで誰か言ったみたいに、消費税はいずれ上げるんですよということは書くわけだから。ただ、「いつか」ということは政治に任せているという姿勢をとるわけだけどね。政治家のアレルギーというのは、尊重しているといつになるかわからない、あの政権が続く限りは。そういうことも危惧するので、できれば付録か何かにちょろっと書くような手法をとらないで、堂々と書いてもどうかなと思っています。書き方はいろいろありますからね。思うとおりに書いたって読むやつは読むので、わかるわけだから。という気がします。
〇委員
どうぞ。
〇委員
まず一つは消費税の点でございますけれども、もう消費税は現実に法人税の税収を超えております。いずれ所得税も越すのではないか。またヨーロッパと比べても、税率はたしかに低いんですけれども、円換算しますと、金額としてはそれほどフランスやドイツと税収規模は変わらない税に成長してきている。これは日本の税の一番大きな基幹税になると思います。また、量的な問題とともに性質的にも、稼得時に税負担をお願いするか、消費、支出時にお願いをするかという選択の問題でございまして、これだけ豊かな社会になってきていれば、稼得段階よりはむしろ消費段階、支出段階で課税をする基幹税に移行していくのが大きな流れと見てもいいのではないか。
そういう意味におきましては、今後のわが国の最大の基幹税でございますから、あまり社会保障とか具体的な政策目的に結びつけて考えるのでなく、財政全体の安定性なり持続性を保つためにどうあるべきか、どう考えるべきか、当然それは避けて通れない。今の委員のお話のように、補論でもいいですけれども、やはり正面から、今後の日本の基幹税である、今後の財政を考える中で大いに検討していかなければいけない、というような論調で触れていったらいかがかと思うわけでございます。
福祉財源、これが消費税、すぐにそう考える必要はないので、所得税の最低税率を引き上げていくという話もあるでしょうし、住民税で5、10、13を10%一本に強化するという方向もある。均等割の問題もあると思いますから、社会保障財源、福祉財源だからといって消費税とすぐに結びつけていく必要はない。あるいは、適当ではないのではないかという気がいたします。
それから法人税ですけれども、所得に対する税率の水準、大体外国並みでございます。地方税につきましては、ここにありますように外形標準課税でいった。しかし、外形標準課税は赤字法人が圧倒的に多い中小法人こそまさにやるべき対象ではないか。それは大法人だけで、赤字法人の多い中小法人のほうは手つかずというのは、方向としては逆ではないかと思うわけであります。
国税サイドについて言えば、先般ここでも説明がございました、法人の付加価値配分というのは中小法人については圧倒的に役員給与に偏重されている。そこに圧倒的に向かっている。大法人ではむしろ役員給与のウエートは下がってきているけれども、中小法人は圧倒的に役員給与のほうに偏って、それが赤字の原因になっている。とすれば、国の法人税についても外形的な課税を行えばいいわけですが、それは法人税としていかがかとすれば、前にも申し上げたこともございますけれども、同族役員の給与の扱いにつきまして、これは損金に見ないとか、そういった方向で法人の負担水準を考えていく方向もあるのではないか。外形課税は、地方だけではなくて国としても考えていく点ではないかと思うわけでございます。
〇委員
同族会社云々というのは、また別に項を立てないと書きにくいですね、外形の中に入れて云々よりは。いずれそれは検討させていただきます。
〇委員
今の委員のご意見にちょっと対抗するようなことになると思うのですが、3年前の消費税をめぐる議論で私が一番印象に残っているのは、福祉財源として優先的に使うという意見が出始めていた。これに対して財政当局と税制当局を中心に、一般財源でいきたいんだという意見が強く出された。どちらかというと一般財源という意見のほうが強かった。あのときの中期答申を見ても、一般財源を中心にという書き方になっていたように思うわけです。
ただ、少子高齢化というお題目のもとで消費税を論じることになった場合、先ほど別の委員も言われているように、今後の社会、とりわけ社会保障、着実に財政需要が膨らんでいく。消費税なくしてやっていけるのか。少子高齢化社会というのは人々が老後の安定を求める社会でありまして、しかも、今の日本の社会保障制度は世界的に見てよくできている。医療保険にしろ年金制度にしろ、よくできている。このよくできた制度をできるだけ守っていきたい。それが、少子高齢化社会における国民の安心・安定に資するのではないか。そうなると財源はほかに何があるのかと考えれば、消費税しか現実的にないのではないか。
したがって今回の中期答申の書き方は、一般財源という税の基本論はあるにせよ、現実論、政治論、あるいは国民への説得として、高齢化社会における今の社会保障制度を守るんだという線を強く出したほうが国民の理解を得やすいというふうに思います。
〇委員
その辺はまだ議論が分かれておりますから、いずれ、起草段階を含めて少し集約させていきましょう。
どうぞ。
〇委員
ちょっと疑問に思っているので私の気持ちを述べたいのですが、法人税に関して繰延税金資産とか、不良債権処理にかかわる税制面での対応ということが書いてある。一般論としては、そういうことを検討することに税調はやぶさかであってはいけないともちろん思うのですけれども、これは中期答申だということが一つ。中長期に不良債権の問題を引きずることを前提としてそもそも答申を書くべきなのかどうかというので、やや疑問があります。
もう一つは、不良債権処理とか金融行政という言葉が出てきたときに、金融業とか不良債権問題に特化した措置という印象を受けて、中長期の制度的対応ということを考えた場合にちょっと何かそぐわないというのが、私の印象です。
〇委員
「その他」という項目をつくろうかなということも考えているんですよ。今、委員が言われた「その他」だよな。パソコンで「ごみ箱」というのがあるけど、ああいう類いのやつがあれば、たぶんそこでやればいいんだろうと思うけど、ちょっと考えましょう。みんなで知恵を絞って。
〇委員
この頃、国債をいっぱい出しても売れるから安心していますけれども、おそらくこのまま行くと、来年度は税金より借金のほうが多いという状態はあり得るわけで、国債がひどいことになるというのはいつ起きてもおかしくない。そういう中で考えると、消費税を上げていって税収全体を確保するという見通しを立てておかないと、状況として非常に危ないのではないか。来年はできないにしても、先々このくらいありますよというのを示しておくのは結構重要なことではないかと僕は思います。
それで、書き方ですけれども、例えば10年後は15%ぐらいになっているはずだとか、10年後、5年後は国際水準にいくらか近づかないといけないとか、何かそういう表現をとっておけばいいのではないだろうかと思うのですが。
〇委員
わかりました。いろいろ表現までいただいて。
どうぞ。
〇委員
申し訳ありません。途中で退席しなければなりませんので。
中期答申の中で、私も、増税的な、特に消費税の問題について触れていただいて強調していただくのはやぶさかではないし、その方向性は妥当だと思っています。我々、いろいろ具体的な問題を考えてまいりますときに、歳出の効率化に逆行する形での効果がそれに伴うことは、今、補助金等も含めて議論している段階の中で、マイナスになってくる危険性も一面ではあるわけでして、ぜひ中期答申の中でも歳出の合理化をきちんと書いていただきたいというのが第1点です。
それから、委員が先ほどおっしゃった問題、私もそのとおりだと思うのですが、中期答申というのは3年に一遍でリバイズされていくことになりますと、この3年間では、不良債権の問題、あるいは資金の流れという問題はきわめて重要なテーマであります。そういう意味で、先生はごみ箱とおっしゃいました、そこでも結構でございますけれども、全く触れないというのはちょっとあれかなという感じがいたします。申し訳ありませんが。
〇委員
ありがとうございました。
それでは、残った問題3つありますので、そちらに進ませていただきます。
税の問題で、相続税・贈与税が残っております。これは、消費税を少し浮き立たせるためにあえて切ったのですが、相続税・贈与税も、15年度税制改正では我々としては、生前贈与という形で一体化を図ってそこそこ新しい問題提起をしたと思っています。
ただ、税率を下げて課税ベースを広げたいという長年の主張のうちの片一方しかとられていなくて、課税ベースを広げるという議論がどうしてもうまくいかない。課税ベースを広げるということは基礎控除引下げですよね。今、社会保障がずいぶん充実してきて、老後の扶養を社会全体で面倒を見ようという形になっていますから、それに対して世代ごとで応分の社会的還元という意味で相続時にいろいろ資産を戻してもらう、そういう強調の仕方はあり得ようと思いますので、この辺は強調したいと思います。そういう意味で、残る相続税の--残るという意味は、中期答申でおそらく書き込むべきは「課税ベースの拡大」だと思います。
それから国と地方。これは今、新聞でも報道されていますように、かなりぶつかり合っておりまして、どういう書き方ができようかと思っています。ただ、ほかの議論、つまり地方分権改革推進会議あたりの議論、地方制度調査会の議論、あるいは経済財政諮問会議、いろいろやっていると思いますが、我々としては三位一体論というのはここで言われていることで、その中での税源配分という問題も考えるということは、言ってもいいのではないかと思っておりますが、これについてもいろいろご意見をいただきたいと思います。
それから、課税自主権の問題。総理大臣がよく主張されていますように、自分の地元で税率とか何か決められるような自己責任、自主性を持った形がおそらく地方分権になじむのでしょうから、そういう意味で課税自主権というのをキーワードにして国と地方の議論は整理できようかと思っています。
時間があれば、金融・証券、納税環境等をご議論賜りたいと思いますが、その前に環境問題への対応ですね。これは最後の項目になっていますが、この議論は今回触れておかざるを得ないし、触れるべきだと思っています。つまり、京都議定書の問題もありますし、ロシアの問題もあるし、排出権売買の問題もあったりして、いろいろ多岐にわたってはおりますが、論点の整理としては経済的手法が出てこざるを得ないだろう。規制もあるし、自主的取り組みもあるけれども、その限界を踏まえれば、やはり税の活用を中心とした経済的手法があるだろうし、税以外の手法もあるかもしれない。これは総戦力でありますから、書くべきでしょう。
税制面での対応は、これはいろいろ議論しなければいけないのですけれども、目的税とか、特定財源にするか、一般財源にするかの問題、それから課徴金、チャージとかフィーとかいうのでやっていいのか、あるいは税でやるのか、やはり税の基本的な枠組みの問題があります。つまり環境税というのは、ある意味でこの税調で本来議論する財源調達能力を自ら放棄するような税でありますから、これをどういうふうに理解し、どういうふうに例外的な政策税制として書き込むかという議論があるでしょうね。
とはいっても、国民的な理解、協力を得てこれを今後深めていって、「できれば」という話で、環境税とか、地球温暖化対策税みたいな話は、税調がはっきりした意思表示をしない限り日の目を見ないと私は思っていますので、さっきの消費税率アップと同じですけれども、これをいつやるかということは、伝家の宝刀的ですぐできませんけれども、方向は指し示しておいてもいいのではないかと思います。
同時に、絶対重要なことが既存のエネルギー関係税制、特に揮発油税等々の絡みで、一体どうしたらいいか。これも悩ましいですね。悩ましいけれども、道路特会、道路特定財源については元来一般財源化と、前会長の頃から言い続けてきておりますので、その辺を含めた形で環境面の対応を書けるかどうかでしょうね。
以上、3点ございますので、残った時間でフルにご議論いただきたいと思います。
どうぞ。
〇委員
国と地方については、前にも申し上げたかと思いますが、三位一体ということにこだわらないで、四位一体、五位一体で考えていただければということでございます。国も地方も、今、その財政状況は全く不安定な状況にあります。国、地方それぞれどういうふうにして財政状況安定化を目指すか、その点も含めてひとつ検討していただきたい。
また地方の場合におきましては、その2番目にあります課税自主権の問題。例えば個人住民税について言えば、均等割でございましても、比例部分でございましても、本来自由に設定できるはずが、ほとんど活用されていない。そこは十分活用していくことも含めた--そうすると五位一体ぐらいの感じになるわけでございますけれども、そのくらいの幅広い観点からひとつご検討いただければと思うわけでございます。
環境問題については、今、会長からもお話がありました、税制としての役割というか、そういったものを放棄しているような感じがある。これは、現行税制ではあまりないわけですけれども、一つありますのは、自動車重量税。あれは道路損傷負担金であるというふうに説明がなされましたが、そういうことだけではおそらくできなかっただろう。やはり特定財源的に使うという--法律的には特定財源にしませんでしたけれども、そういう含みで、また現実にもそうされていますが、そういう背景ででき上がった。
そうしますと、この環境税も税収調達ということでなくていくとすれば、なかなかその推進力が出てこない。結局、推進力は目的税化、特定財源化のときに出てくるだけではないか。そういう悲観的な見方もあるわけでございまして、現時点での特定財源につきましては、今お話もございましたようにいろいろな問題点がある。そうしますと、環境税というのはなかなか難しい問題であるという気がしますので、これはじっくり時間をかけて検討するということでいかがかなという気がするわけでございます。
〇委員
国と地方のところですけれども、今、委員もお触れになりましたけれども、課税自主権のところで、今日のノートですと、「課税自主権がさらに活用しやすくなるような方策について検討」と。方策について検討を最終的にはするのでしょうけれども、現状としては、標準税率を越えて自由に税を設定すると。基準財政収入額のほうは標準税率ですよね。それを越えた収入は自分の税になるはずですから、方策という前に、課税自主権を有効に活用して地方が独自の財源を確保する努力を促すのも必要だと思います。
それから、三位一体というのは、税調で何をどこまで触れるのか難しいでしょうけれども、歳出面のさらに努力が必要とかあるんでしょうけど、ここは僕自身も、これ以上中身は何が書けるのかというのは難しい問題だなと思います。言いたかったのは、課税自主権の方策を考える前に現状をもう少し指摘すべきではないかと思います。
〇委員
要するに、使えということを言いたいわけね。
〇委員
はい。使えということです。
〇委員
どうぞ。
〇委員
国と地方ですけど、西室さんがやっているところの会議と、諸井さんが責任を負っているところと、総務大臣という大臣がいて、いろいろ言っていて、これ、ずいぶん血なまぐさい話ですよね。委員会のあれは血判同盟だとか、今どき、昭和初年みたいな話をやっている学者もいてね。それぞれ張り切っているからかまわないと思うけど、いささかイデオロギー的なんですよ、僕から見れば。僕は6年間やっていたから、分権委員会。
それで、今、会長もおっしゃっていたけど、このペーパーを我々は6月中・下旬頃に出すんでしょう。向こうでガタガタやっているときに割って入って偉そうな顔をするのもね(笑)。力もないわけだからね、タテマエを書いておけばいいんですよ。三位一体ということは神々しい話で、みんな思惑は全然違うんですよ。一人ひとり全部違うんだ、こんなことは。言っておけば、わがほうはそれでおさめるということにしておけばね、無責任だけども。割って入ってどうかということを言うのだったら、僕はこの前発言したけど、補助金から入るべきですよ。前にそう書いてあったんだから。それが正道ですよ、間違いなく。
それから、税源論を言うのだったら均等割をしっかりやるべきですよ。ここを全部逃げまくってるんだから。それが実態なんだから。それで、原子力とか何とか取りやすいところからガバッと金を取ってるだけの話ですよ、課税自主権といっても内容は。ここのところにもっと腹が入らなければ、その上の三位一体論まで行かないということですよ。そういう私の第一印象。
〇委員
そうすると、前回書いたやつよりも三位一体論の具体性が少し欠けますね。この間はたしか……。
〇委員
従来の答申のあれから言ったら、補助金論から入る。あそこにずいぶん書いてある。数兆円ぐらい浮かせようなんて書いてある。この前も読んでみてびっくりしたけど、あれが一つのアイデアですよ。
もう一つは、環境税。この前申し上げたからあまり言うことないんだけど、要するに、この前も申し上げたし、ロシアが批准するかどうかもわからないし、いずれにしてもマイナス6%を実現しようと、ペナルティーを払うことは一切やらないと日本政府はいずれ決めることになっているので、そうすると、マイナス6%の縛りというのはずいぶん変わってくるんですよ。マイナス6%ができなくても、日本人は良心的だから、オール人類のために、こんなちっこい貢献だけどもやるというのはそれも立派な覚悟ですよ。つまり、大義名分ありと言ってるの、私は。この環境税には。
ただ、今、関係各省でみんな腹の内で考えていることは財源論ですよ、間違いなく。大義名分を言うのだったら、税金を相当かけないと抑制効果は出てこない。焦点は民生・運輸なんだから。ここは実際は政府の力が及ばない領域に近いんですよ。いいですか。そこに影響を及ぼすのが税制でしょう。といって、そんなめちゃくちゃな税金を組めるわけないですよ、いろんな意味で。とすれば、大義名分を高く掲げて、誰も反対できないことを一緒になってるから、日本の国内では、珍しいんだけれども。それなら薄く広く、なにがしか1兆円近い金でも集めてみようかという話でしょう。「俺のところに」って地方も言ってるし、農林省も言ってるし、みんな言ってるんです。これは明らかにあくまでも大義名分であって、財源論ですよ。それがほとんど本質なんですよ、今の議論は。
だから、この前も申し上げたように、あんまり踏み込んで「やるべきだ」とか何とかいうことを書くことはない。事態の動きをしっかり見て、既存税制との調整問題なんて一言書いてあるけど、これはほんとに血の雨が降るような話に近づくかもしれないぐらいのデリケートな話ですよ。どこの官庁が中心になってこれをまとめるかといったら、僕は財務省はまとめることなんかできないと思いますよ、こんなもの。どこの官庁がやるんですか、この話は。内閣の彼のところでできるって、できませんよ、そんなことは。とするならば、問題があり過ぎるということを言ってるの。ただ、問題があり過ぎるということを言ったら何事も前に進まないから、あまりそれを強調したくはないけど、慎重にゆっくりやれという議論のほうが非常に現実的なものの言い方だと思います。
〇委員
どうぞ。
〇委員
この国と地方の問題、たしかに委員がおっしゃるように政治の問題ですよね。政治がきちっと決めるべき問題ですが、やはり税調として筋を通す、そういった議論が必要だと思いますし、これまで言ってきましたように、地方交付税の財源保証機能、これは見直しということをこれまではっきり言っているわけですから、これを繰り返し念を押しておくことが必要であろうと思います。
それから環境税ですけれども、どうも環境対策の財源確保という視点が先行しているようなんですね。この動きはどうも気に食わない。やはりブレーキをかける必要があると思うわけです。ただ、まともな議論をするとすれば、税金としてやるケースもあり得るでしょうから、その場合は全国統一の制度で行く必要があるだろうということと、本当に税制面で対応するとすれば、国民各層広く負担するということになるでしょうから、そこは国民の理解と協力を得ることが最も重要であるということを強調しておくべきではなかろうかと思います。
〇委員
今の環境問題の対応で一言。昔、ちょっと公害問題を取材した経験からの印象によると、こういう環境関係の税は、たばこみたいに、悪いものだから高くしようと一律にかける、汚染源ないし汚染物質、あるいはガソリンとか、CO2のもとに一律にかけるということは、税収が上がって財政当局はうれしいかもしれないけれども、単にコストを上げるだけで、しまいには外国へ逃げたりということであまりうまくいかないと思うんですね。
結局、この決め手で強調したほうがいいと思うのは、あるところに税金をかけてほかに誘導するという、逃げ道のあるところにかける。そして、環境にいいほうに持っていくという誘導税制というのは非常に大事であって、ただ懲罰的にかけることはやめたほうがよろしいということを言いたいと思います。
〇委員
誘導税制というのは具体的なアイデアをお持ちですか。
〇委員
ガソリンに一律にかけるといっても、逃げ道がないわけですね、今の技術では。そういうことはやめたほうがいいと。
〇委員
そうすると、何にかけるんですか。
〇委員
かけるというか、政策的にそちらに動かすような税制です。ガソリンにかけたからといって減るとは思えないし、単にコスト高になるだけ。たばこと違う。たばこもコスト高ですがね。
〇委員
どうぞ。
〇委員
国と地方ですが、さらっと行こうやというのと、少し踏み込んでみてはどうかと、二つの意見、これはぎりぎりまでいろいろ議論があるところだと思います。利口なやり方としては、さらっと行く。ただ、それではちょっと情けないというか、さみしいというか、そういう気分も一方にあるということですが、私たちはどちらかというと、中身云々のことはともかくとして、国と地方という問題はこれからどうしても大きくなってくるし、それによって税だ、財政だ、仕組みだ、というのを見直そうという声は出てくる。悪いことではない。それは堂々たる課題だと思うわけです。
ただ、今、委員のおっしゃったように、何しろ船頭が多くて、いろんなところでいろんなことを言っている。ただ、このいろんなところでいろんなことを言っているので共通するのは、権限と金の奪い合いというか、きわめて生臭いというか、あまり近寄りたくないというか、そういう雰囲気がある。そういう議論が行われているように、こっちから見ているとそういう印象を受けるわけです。
税調としては、何ゆえにこの三位一体論が出てきたか、その三位一体論をどのような崇高な理想のもとにとらえていくか、ということだと思うのです。この税調の各種の答申でもよく地方分権という言葉がさっと出てくるわけですが、ではこの地方分権というのは何かということがいまだによくわからない。それぞれに解釈を持っている。各種のほかの委員会でも、地方分権というのは一体何だというあたりから、入り口論から口角泡を飛ばしているというところがある。
税調として、国と地方のありよう、その中における従来の財政システム、税制システムをどうするんだということを、高い次元でとらえる努力はしてもいいのではないか。特に少子高齢化という標記に照らしてみると、少子高齢化というのは個人も多様化するけれども、地域も多様化する社会だと思います。かつての列島改造のように、全国津々浦々同じようにわいているというのではなくて、それぞれに地域の変化、社会の変化これあり、それによって地域がどう対応していくかということが今後出てくるのではないか。そんな世の中を見通した場合に、それぞれの地域のありよう、地域の作り方ということからすると、やはりそれなりのシステムも必要ではないか。そんなところから国と地方の問題をとらえたいというふうにしたらどうか。
少なくともこの前、地方分権改革推進会議が出した、税金を分けてやるのは増税したときだけだぞ、増税なくして税源移譲なしみたいな、あそこまで言うのはどうか。それは、哲学ではなくて金の取り合いになってしまうようなことで、私は、しかるべき負担金、あるいは交付税という従来の改革が行われたらば、税源移譲というのも頭から否定するべき問題ではないという姿勢でこの問題をとらえております。
それから、環境税です。私はあまり詳しくはないのだけれども、一つわからないのは、どういう税金にするのかということです。それから、どういう税源にするにしても、それを緻密にやろうとした場合、徴税執行はどうなるのかということをかねがね疑問に思っている。
例えば、この設備からこれだけのガスが出る、この機械からこれだけのガスが出る、したがってこれだけの税を賦課する。それを、税務署の職員か何かが行ってメーターみたいなものを持ってやるのかね、そんな執行能力、今の国税庁にあるんですかね、と。従来とちょっと違うようなことが徴収面でも出てくる。そういうことをからすると、簡素というか、一般的というか、あまり込み入ったことはできないのではないかなというふうに思います。
〇委員
それについては、各国ですでにその意味の先進国としての例もございますから、参考になると思います。まさか、おっしゃるようなそんな込み入ったことはやりませんよ。化石燃料にかけるというだけの話ですから。まあ、知恵の絞り方はあると思います。
どうぞ。
〇委員
2点ですが、一つは地方と国との関係で、課税自主権を強調するというのは私は個人的にはもちろん賛成で、それは結構なのですが、他方では、課税対象をきちんと考えないと、課税自主権が地方自治体の間の課税競争に陥って、その結果、課税ベースが浸食されてしまうおそれもあるということは、もう少し詳しいことを書き出した段階で書いておいていただいたほうが、税調としては正しい対応ではないかというふうに思います。
それから環境の話ですが、皆さんがおっしゃったことは、正しいといいますか、それなりに意味のあることだと思うのですが、他方では、これは中期答申なので、政治的な問題とか、実際の細かい制度的な問題とかいろいろあるにしても、中長期的な観点から環境問題にきちんと対応を始める、あるいは対応を検討する、そういう時期にすでに来ているのではないかと私は思うので、今までよりはかなり積極的にお書きいただけないかなと思います。
その意味で特定財源に関しては、法律上の問題はともかくとして、私の法律に関する素人考えから言えば、できるだけ一般財源化したほうがいいのではないかというのが一点。
もう一点は、エネルギー関係諸税との関係で言えば、できるだけカーボンベースといいますか、各エネルギーが持っている炭素量に課税ベースを求めるのだと。したがって、同じ炭素量を持っているエネルギーには同額の課税をすることを一つの原則として--もちろんそれ以外に排出税とか、排出権取引とか、いろいろなものがありますから、それはまた別として、エネルギー関係との関係の限りではそのことを少しおっしゃられてもいいのではないかというふうに思います。
〇委員
そうですね。
では、最後にしましょうか。
〇委員
三位一体論ですけれども、先日も申し上げたように、三位一体論は、国・地方全体としての租税負担を上げない中で、要するに地方財源としての性格を補助金から受益と負担が明確な地方税に切りかえる、こういうことが一番のねらいだと思うわけです。それはまさしく私は結構だと思うし、補助金に頼るには、今新聞なんかに出ておりますように、保育所の給食施設をどうするんだなんて議論を霞が関でやっていること自体が馬鹿馬鹿しいので、ああいうものを一般財源にすれば、それぞれの地域で考えるということで、要するに地方財源としての性格の改善というところにねらいがあるわけですね。ですから、それは非常に意味がある。
ただ、全体の書き方として、歳出カットをしても増税必至だというようなトーンがどうしても中期答申に出てきた場合に、その位置づけが非常に曖昧になるものですから、その書き方は注意していただきたい、こういうふうに思うわけです。
それから、課税自主権というのも私は大賛成ですし、よく地方団体から相談を受けるのは、だいぶ言われているから、所得割の超過税率でもやるかと。では、実際定率減税をやっている部分を地方団体は勝手に上げて平気でしょうかねと、こう言われるんですね。税調としても、定率減税の考え方自身を、あれを増税と見るのか復元というふうに見るのか、そこによって書き方のトーンも変わるかと思うのですが、課税自主権に絡んで、具体論になりますと、そういう所得割の超過課税というのをどこまで書けるのかなと。抽象論で終わるのかなという気がしておるわけです。もちろん、これからの審議の状況によって考えなければいけないと思いますが。
〇委員
皆さん、それなりの感触をお持ちでありますので、書き振りにつきましてはこれから議論を進めていきたいと思います。
時間になりましたので、これで終わりにしたいと思います。金融・証券と納税環境整備は、金融小をやって、いずれにいたしましても皆さんに起草会合に入っていただきますから、具体的なこういうボキボキ的なものができてからのほうがいいと思いますから、これは次回まわしにさせていただきます。
今後の予定でありますが、今日で一応基礎問題小委員会は終わりにさせていただきまして、これから中期答申に向けて本格的な審議を重ねていくという意味において、その前に27日、総会を開きたいと思います。起草会合を開く前の論点整理も含め、かつ、基礎問題小委員会とか金融小でやっておりますことの報告もしなければいけない。それから、たしかまだ海外調査報告もしていないと思いますので、そういう報告もするという意味で、どうも3時間くらい予定しないとだめだと思いますから、2時から5時までぜひ時間をとっていただけたらと思います。
それから、この基礎問題小委員会のメンバーの方で起草会合に入っていただいて、例年どおり、これは会長代理に仕切ってもらおうと思っていますが、6月3日・火曜日と6月10日・火曜日を予定しております。これも時によっては3時間くらいになるかもしれませんが、いずれにいたしましても、論点が煮詰まっておりますから、2回でできたらと考えております。
いつ公表するかは、例の経済財政諮問会議の話もあったり、いろいろ対外的な問題もありますので、6月の中旬以降になるかなとは思っていますが、10日にやったとしても、総会で二度ぐらいもまなければいけないと思っていますから、後半にずれ込まざるを得ないと考えております。そういう段取りでございますので、6月に入りましてもお忙しいとは思いますが、ぜひ日程を調整いただけたらと思っています。
くどく申し上げておりますが、今日使いました資料は印刷されておりますように、お手元にお残しください。
それでは、今日はどうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。