第26回基礎問題小委員会 議事録
平成15年4月8日開催
〇委員
それでは、時間になりました。26回目になります、基礎問題小委員会を開催いたします。
今日は、すでにご案内のように、大きなテーマが二つございます。
一つが、「国と地方」の課税自主権の問題。国と地方で、かつ課税自主権というのが大きなテーマです。
それから、「少子高齢化と税制」という形で、お話を伺うことになっております。
早速始めたいのですが、最初に、総務省の事務局に人事異動がございました。そこで、局長、ご紹介ください。
〇事務局
それでは、紹介をさせていただきます。
前の資産評価室長の兵谷芳康が、財政局の公営企業経営企画室長にかわりまして、その後任が、都道府県税課の税務管理官をしておりました石橋茂になりましたので、ご紹介いたします。
前任者に引き続きまして、よろしくお願い申し上げます。
〇委員
よろしくお願いします。
それでは、早速、議題に入りたいと思います。
最初は、「国と地方」でございますが、今日は、地方税の課税自主権という形で話を進めたいと思います。先週だったか、新聞紙上でいろいろ諮問会議の議論をめぐって紛糾したところもございましたが、いずれにいたしましても、6月には諮問会議が三位一体としての案、つまり、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲というものをまとめたいと言っております。それから、地方分権改革推進会議、ここも議論を始めております。そういう意味で、税調としてもかねがねこの問題に関心を持っておりますし、ほかから幾つか問題提起も出てきそうでありますので、我々も独自にこれから議論を進めたい、このように考えております。
今日は、本格的な議論の第一弾といたしまして、課税自主権の話、これをまず総務省のほうから論点を整理していただきまして、あとで自由に議論ということで考えております。
では、事務局、よろしくお願いします。
〇事務局
それでは、資料の「基礎小26-1 国・地方関係資料(課税自主権等)」ということでまとめておりますので、これに沿ってご説明申し上げます。
今、会長からもお話がありましたように、国と地方の問題、いろいろございますけれども、1月の総会で総理からこの課税自主権関連のお話もございましたし、ここ最近、こうしたテーマについて当調査会であまり説明をしていないものですから、その辺を中心に資料をまとめてみた次第でございます。
それでは、1ページからご覧いただきます。これは、ご承知のように地方税の体系でございます。県税、市町村税に分かれておりますと同時に、それぞれ、普通税、目的税に分かれておりますが、自主権の絡みでは、この中にそれぞれ四つ、都道府県の法定外普通税・目的税、市町村の法定外普通税・目的税というのが法律には定められております。
2ページでございますけれども、全体的な現在の都道府県税、市町村税の姿を参考までにここに掲載させていただきました。13年度決算で15兆円と20兆円という額でして、それぞれの構成はこの図で示しているとおりでございます。
最初に、課税自主権のうち、大きく言って超過課税と法定外税とあると思いますが、超過課税のご説明をいたしたいと思います。
まず、3ページでございます。地方税法上の税率というのを講学上の分類をいたしますと、四つになるのではなかろうかと考えております。
一つは、標準税率という税率がございまして、ここに書いてあるのはほぼ法律上の文言そのものでございまして、「地方団体が課税する場合に通常よるべき税率として法定されている税率であって、地方団体は財政上の特別の必要があると認める場合には、これと異なる税率を定めることができる」、こういうことでございます。また、地方交付税の算定上の税率というものでもございます。
これについては、後ほど申し上げますけれども、「地方団体は財政上の特別な必要があると認める場合には、これと異なる税率を定めることができる」というあたりが、ある意味ではかなり強い規範性を持っているということで、単に交付税算定用の税率ではなくて、通常はこれによるべきものだという内容になっております。かつては、こういうところを強調いたしまして、超過課税、あるいは法定外税等について、自粛といいましょうか、するような通知を自治省から発したこともございます。これは後ほど説明いたします。
次に、制限税率とありますけれども、これはまさに上限の税率でありまして、地方団体が課税する場合にこれを越えてはいけないという税率でございます。
一定税率というのは、地方団体が課税する場合には、この税率によるしかないという税率でございます。
任意税率というのは、特に税率の定めをしていないものでありまして、課税する場合には地方団体が自由に設定できるという区別になっております。
これを、どんな税目でどんな仕組みになっているかをご説明するのが4ページ以降でございます。4ページの主なところだけを説明いたしますが、都道府県民税の摘要のところに、「平成9年度までは届出制」とございます。かつては、超過課税をする場合に自治大臣の届出制という制度があったわけでありますが、これは平成10年の税制改正によってなくなっております。ほかの税目でも同様でございます。
それから、ちょっと下がったところに、道府県民税、法人の法人税割というのがありますが、標準税率が5%、制限税率は6%になっております。これは、いわゆる1.2 倍という考え方でございます。それから、法人は大体1.2 倍という考え方の制限税率が多いのですけれども、都道府県税の法人均等割だけは制限税率がないということになっております。ここの部分を使いましてといいますか、昨年、大阪府は法人の均等割を基本的に2倍まで引き上げております。
その下の事業税でありますけれども、法人のところを見ていただきますと、制限税率は「有」とありまして、1.1 倍になっております。これは、昭和49年に東京都が、当時12%の税率を14%にするという超過課税を実施いたしまして、ちょうど今の銀行税のように国会を巻き込んだかなりの騒動になりまして、その結果として50年度に1.1 倍ということにいたしました。その結果、東京都は14%を1.1 倍の13.2%に下げたという経緯がございます。
なお、平成16年度、外形課税導入に合わせまして、課税自主権を拡大するという趣旨で、1.1 倍をさらに1.2 倍まで引き上げたということになっておりますが、現在、超過課税、7団体ございますけれども、すべて1.05倍以下ということで、1.1 倍の旧制限税率までいっているところも今はないということでございます。
それから都道府県税はほかに、一定税率は地方消費税等ございますし、任意税率というのは一番下の水利地益税というようなものがございます。
市町村税が次のページでございます。5ページで、個人でございますが、都道府県はもともと制限税率が個人住民税にはなかったのですけれども、市町村民税については平成9年度までございまして、10年度改正におきまして、この摘要欄にありますように制限税率を撤廃いたしております。
それから、法人は12.3%の法人税割が14.7%で、これは1.2 倍の考えでございます。
固定資産税は、1.5倍の2.1%までという制限税率になっておりますが、摘要にありますように、「1.7%を超える一定の場合は議会の手続が必要」と。これは地方税法で規定しておりますけれども、その市町村の固定資産税の課税標準の3分の2以上を1人の納税義務者が持っているときに、1.7%を超える条例を制定しようとする場合には、当該その1人の者の意見を事前に議会で聞かなければいけない、こういう規定がございます。
以上でございますが、したがいまして今の傾向はおおむね、県の均等割を除きますと、法人関係税の場合は標準税率プラス1.2 倍くらいの制限税率があるという設定。個人については、基本的に制限税率がないというような形になっております。
そういうことでありますので、標準税率を超える課税は十分可能でございます。6ページをご覧いただきますと、現在、それを標準税率超過課税と言っておりますけれども、超過課税の実施状況をまとめてございます。都道府県につきましては、延べ54団体、1,881 億円ということであります。均等割につきましては先ほどの大阪府、法人税割については、静岡県を除く46団体、法人事業税は東京都をはじめ主として都市部の7団体ということでございます。
それから、市町村でございますが、個人の均等割18団体、額的には0億円でございます。個人はここで若干出ている。それから、法人均等割が574団体、法人税割が1,428団体ということで、額的にもここは多うございます。
固定資産税が276 団体ほどございまして、415 億円ほどある。
諸々入れまして、延べ2,379 団体、2,830億円。合わせまして、4,712 億円の超過課税税収があるということであります。
下の「参考」でありますけれども、高知県が、県の個人の均等割1,000円、法人の場合には2万円から80万円ということになっておりますが、それぞれ500円ずつ超過課税をしようという条例を成立させております。「森林環境税」と称して、森林整備等に使うということで超過課税を実施することになったわけであります。
この場合、森林関係で私が聞いている限りでは、一定の整備のための財源を必要とするということで、超過課税による方式、あるいは、水道料金に上乗せして徴収する方式というようなものを考えたようです。そういう案を並べて県民に提示しまして、1年以上いろいろ議論をした上で条例化をしたということで、そういう意味では相当説明には時間をかけたということでございます。
7ページでございますけれども、超過課税団体数の推移。先ほど申し上げましたように、現在は法人関係税にかなり偏った状況になっておりますけれども、推移をご覧いただきますと、ちょっと古いですが、昭和40年の頃には個人住民税の所得割で1,200市町村ほどが超過課税をしておりまして、最大は標準税率の1.5 倍くらいまで超過課税をしていた時代がございます。ただ、昭和44年に当時の自治省が通知を出しまして、住民税の負担軽減が求められている折から、超過課税についてある程度整理をしましょうというふうな通知を出しております。そういうこともありまして、45年以降急激に減りまして、50年には1団体になったということでございまして、その傾向が今でも続いております。
一方で、49年に東京都が法人事業税に超過課税をいたしますが、49年に法人住民税のほうも兵庫県が最初に始めたりいたしまして、このころから産業関係の事業等も増えてきたこともございまして、都道府県による超過課税がかなり始まってきたということでございます。
それから次のページからは、法定外税でございます。法定外税につきましてはご承知のように、平成12年4月1日に分権一括法が施行の際に大幅な制度改正がなされました。それまで自治大臣の許可制であったものを、大臣の協議制、同意を要する協議という仕組みにいたしまして、かつ、それまでは財政需要とか、税源があるかないかということも許可の判断基準に入っていたのですけれども、それは地方の議会なりの判断に任せるということで、ここにあります三つの要件に該当しない限りは、総務大臣は協議に対して同意をしなければならないという法律になっております。
三つの要件は、国税又は他の地方税と課税標準が同じで、かつ住民負担が著しく過重であること。二番目は、地方団体間の物の流通に重大な障害を与えること。三番目としまして、国の経済施策に照らして適当でないこと。こういう三つの要件でございます。
下の図にありますように、地方団体は基本的に条例を可決したあとに大臣に協議いたしまして、大臣が同意または不同意を出す。今まで、横浜市のいわゆる馬券税、「勝馬投票券発売税」というものに不同意をいたしましたが、そういう不同意の場合に、さらに不満があれば審査の申出を国地方係争処理委員会にする。係争処理委員会は審議の上で、勧告を大臣に出すということになっております。
横浜の勝馬投票券発売税の場合にはこの勧告がなされましたが、さらに協議を継続すべきだというようなことでございまして、現在、横浜市当局とは協議を継続いたしております。
そういう仕組みがあったわけでございまして、9ページ以降は、今ある法定外税の状況でございます。
まず、都道府県の普通税。普通税は従来からございましたので、なかなか歴史のある税もあるのですけれども、石油価格調整税の下にございます核燃料税、現在11道県でかけておりまして、合わせて139 億円ほど。
核燃料物質等取扱税というのが青森県で124 億円。これが比較的大きなものでございます。
それ以外では、平成13年8月から神奈川県が実施しております臨時特例企業税、これが40億円程度ございます。これは、繰越欠損金によって消されてしまった当該年度の利益に対してかける、簡単に言うとそういうことですけれども、その年、利益を上げているのだから、一定の負担をしていただきたいという税を--これは、外形標準課税までのつなぎだという説明をしているようですけれども--作っておりまして、これで40億円ほどのものができております。
それから、市町村では、従来からあります砂利採取税、別荘等所有税、これは熱海市であります。新しいものとして、太宰府市の、これは名前がすごいですけれども、歴史と文化の環境税とありますが、太宰府の駐車場を使う際に税をかけよう、こういうものでございます。
それから10ページ、法定外目的税。これは、目的税の制度自体が12年4月1日改正でできておりますので、すべて新しいものでございますけれども、最近目立っておりますのが、三重県を出発点とした産廃税関係、産業廃棄物の関係でございます。その後、岡山、広島、鳥取は三つで一緒に企画をして持ってきたというようなことで、同時に同意をされております。
乗鞍は、有料道路を上がっていった上にある駐車場のところで、環境保全関係の財源として目的税を取るということでございます。
それから、市町村でも幾つかございまして、一番最初に法定外目的税を導入されましたのが、遊漁税ということで、河口湖への遊漁に来る方から、1日200円でしたか、いただくというものでございます。
それから、一般廃棄物税が多治見市。
環境未来税、北九州市とありますが、これは産業廃棄物の一種でございまして、15億円ほどのものがあるということであります。
言い忘れましたが、上の都道府県税の中でいわゆるホテル税、宿泊税というのが東京都でありまして、これも15億円ほどでございます。従来、核燃料税以外は非常に小さな税が多かったのですが、かなりいろいろなものができてきているというのが事実でございます。
11ページ以降は、細かい内容でございます。ちなみに11ページの上から二つ目に核燃料税がございまして、その中の上から2番目、福井県の次に福島県がございますが、ここの税率で従価割、核燃料税の値段の100分の10に加えまして、重量割、核燃料の重さのキロ当たり6,000円という税をつくりまして、これでだいぶ世間を賑わせたといいますか、電力会社となかなか意見が一致せずに議論が相当あったところでございます。その結果、最終的には両者お互いに話し合って円満に解決しているということでございます。
若干飛ばしまして、15ページをご覧いただきます。法定外税の過去の推移を15~16ページに挙げておりまして、道府県については、古いですが、昭和29年ころには家畜税とか牛馬税を幾つかの県でかけていた。犬税というのも1県だけかけていたというようなことで、13件ほどありますが、その後は一遍ほとんどなくなりました上で、50年度以降--51年から核燃料税も始まりましたので、55年あたりからは核燃料関係が主流になってきている、こういうことでございます。
それから、16ページ。これは市町村ですが、同じ昭和30年を見ますと、大変たくさんの税がございまして、犬税がなんと2,686市町村で課税をされていたということでございまして、これはしかも、55年までかけていた町村があるということでございます。
それから、ミシン税とか、扇風機税とか、今思うとよくかけられたなというような税がたくさんございまして、都合あわせまして延べ3,470 市町村で、こういう法定外税がかけられていたということでございます。
これにつきましても、実は、その後昭和33年に当時の自治庁が通知を出しております。基本的には33年の改正で、法定税でありました自転車荷車税というのを廃止いたしまして、そういう流れの中で、法定外税についても、個々のものについて画一的に廃止を求める措置は考えていない、最終判断は地方団体の常識に任せるけれども、例えば情勢の変化があったにもかかわらず、再検討せず、そのまま課税を継続しているようなものについては、再検討を願いたいというふうな通知を出しております。
その中で例示として、ミシンなんかよりよほど高額な物件が日常使われているのに、ミシン税をかけている、あるいは、扇風機税をかけているのはおかしいではないかというような例示を出したこともありまして、それらの税はその後ほとんどなくなってしまったということです。当時、当然ながら許可制の時代でありますので、自治庁からのこういう通知が出ると、基本的にかなりなくなってしまうというようなことでございました。
その後ずっと減りまして、若干、商品切手発行税とか砂利採取税等は生き長らえてきたわけですけれども、平成12年には4団体になった。それが、その後の改正を受けまして、昔に比べるとわずかですが、また増えつつある状況になっております。
17ページは、これに関連してのシャウプの報告書の抜粋を掲げております。第3パラグラフあたりにありますが、「地方自治のために、われわれは、地方行政単位がこれらの租税を、その賦課しようとするかもしれない他の法定外独立税とともに、法定外独立税として課することを許されるように勧告するものであるが、地方当局に対して法定外独立税の数はこれを制限するように忠告したい。しかし、われわれは、地方団体は一般にこのことを自ら自由に決定すべきものであると信ずる」というようなことが書かれております。
一番下のパラグラフのちょっと上ですが、「(地方財政)委員会には国の利益が明らかに害される例外的な場合にのみ地方当局の財政的独立を制限することを許すべきである」。最後の2行あたりは、「地方当局が実質的で依存できる税源に接するならば、独立税の問題は大いに減少するだろう」というふうな認識でまとめられているようであります。
それから、18ページでございます。ただ今申し上げた二つの税の税収でございますが、平成13年度決算で4,712 億円の超過課税と法定外税288億円。合わせますとちょうど5,000億円になります。この5,000億円というのは1.3~1.4%にすぎませんので、例えば、法人並みに個人に対して1割程度の超過課税をしても4,000億ないし5,000億程度ではなかろうかと思いますので、なかなかロットの関係でも、これが地方税制の中で大きなウエートを占めて、例えば今議論になっておりますような、税源移譲を含む税源配分のあり方等に代わり得るようなものにはなり得ないと我々は思っております。拡充の検討は必要でありますし、我々としても十分いたしたいと思いますが、そこはそういう点ではなかなか無理があると思います。
それからもう一つ、考え方としても、標準的な行政経費についてはやはり基幹税等できちんと手当てをすべきであります。課税自主権を発揮しないと例えば教育費用が賄えないという仕組みであるのは、やはりおかしいだろうと考えておりますので、そうした財源保障なりの問題とはまた別の問題として、これは拡充なりを図っていきたいと思っております。
そういうことで19ページ以降には、分権推進計画等の課税自主権の部分を挙げておりますが、20ページ、「地方分権推進委員会最終報告」のアンダーラインを引いた部分で、今のような認識が書かれておりますけれども、自主課税については、幅広く検討していくべきだということ。ただ、主要な財源は、国・地方を通じて法定税目とされておりまして、課税自主権の発揮のみで地方税源を量的に拡充することには限界もある、というふうな認識がございます。
それから(2)、下のほうでありますけれども、「対象を法人等に限定して負担を求めるという傾向には留意が必要」ということと、最後のほうに、「納税義務者に対する十分な説明を行い、理解を得るように努める必要があることは言うまでもない」ということで、超過課税、法定外税については十分な説明責任を果たすべきであるというのは、我々もこの報告のとおりの認識をいたしております。
21ページは当調査会の答申でありまして、そういうことで課税自主権は自主権として検討いたしますが、下の三番にあるような大きな問題、いわゆる三位一体と言われておりますけれども、こういう問題をこれから解決していく必要があると思っております。
最後に、24ページ。そのような議論をいろいろ踏まえまして、これは、6月、国と地方の関係を取りまとめた、昨年6月のいわゆる「骨太2002」というものでありますけれども、(1)で、補助金についてまず結論を出す。国庫補助負担金の結論を踏まえて、(2)でありますが、国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方を三位一体で検討して、望ましい姿と改革工程をまとめる、こういうふうな段取りになっているわけであります。かつ、その改革案で、国庫補助負担金は数兆円規模の削減を目指すということが書かれておりまして、この辺の議論は、これからまた状況を見ながらお願いいたしたいと思っております。
以上、今日は、課税自主権の問題を中心に資料を取りまとめ、ご説明いたしましたので、よろしくご議論のほどお願い申し上げます。
〇委員
ありがとうございました。
それでは、少し時間をとりまして、課税自主権を中心といたしました国と地方の税の問題を議論したいと思います。
ご意見、どうぞ。
〇委員
僕は、この19ページと20ページをベースにしてちょっと議論したいのですけれども、一つは、今ご説明の方に質問する形をとりたいのですが、地方税財源の充実について、平成13年6月、「地方分権推進委員会最終報告」、僕はこのメンバーになっていたので、思い出すんだけど、ここでは課税自主権についていろいろ言及していて、こういうことを書いてあるんですね。「国・地方を通じ主要な税源は法定税目とされており、課税自主権の発揮のみで地方税源を量的に拡充することには限界がある」、これはそのとおりなんですね。しかし同時に、「独自課税については、制度立案の過程で、納税者を含めた関係者の意見を聞き、受益と負担の関係をより意識する議論が行われるという意義も評価すべきである」。
僕は、当時の議論を顧みてみると、あとのほうが意味があったと思うんです。終始一貫この議論をやったんだから、僕らは、6年間。特に、住民税について過去の歴史をここにちょっと書いてあるけれども、昔はかなりの負担を求めたにもかかわらず、その後、法人にシフトし、交付税にシフトし、それが軽くなった。つまり、選挙権を持った納税者には目配りが行き届いていて--知事も市町村長も全部選挙で選ばれるから--それが現実なんだけれども、しかし、ちょっと行き過ぎではないかという議論がしょっちゅうあったんですよ、この過程では。同じことをここでもずいぶん議論したことがあるように思いますけどね。
課税自主権議論というのは、量的には、たしかに核燃料税を除けば知れてるんですよ、この話は。だけども、受益と負担論というのを住民にわかってもらう、ある程度これだけやれという要請があるならば負担はこうですよということを。今、部分的に知事の中でも言い出している人がいるけれども、おっかなびっくりでやっているんですね。だけど、ここのところを踏み込まないとね。いいですか。これは三位一体論の入り口みたいな議論なんです、僕に言わせれば。この議論を吹っ飛ばしちゃって、三位一体でやろうではないかという議論が流行しているけれども、プロセスはここから始まってるわけだ、実は。ということを確認しておく必要があると僕は思っているんです。それについて見解を聞きたいのです。
もう一つは、さっき冒頭に会長が、三位一体論で、この前の経済財政諮問会議での議論について言及された。政治部記者は、農林大臣の後任の選考を見ても、このあれを見ても、いよいよ内閣は末期現象だというふうに揶揄したのか、評論したのか、知らないけれども、そういう視点もあった。しかし、私なんかは、それはそれでそうかもしれないと思うけれども、同時に、「三位一体とは一体何だ?」ということに関心があるんですよ。
去年の6月に、このテーマに関する閣議決定というのが行われてるわけだ。それに基づいて、今、動いてるわけ。動いてるんですよ、去年の6月だから。そのときには三位一体論を書いてあって、ここにもどこかに提言があったと思うけれども、まず三位一体で、国庫補助金の問題、交付税の問題、税源移譲の問題という順序で書いてあって、それをやるんだけれども、とりあえずは……とりあえずということか何か、言葉は難しいけれども、「国庫補助負担金を数兆円削減する」と。数兆円ですよ。ずいぶん思い切ったことを書いたと思うけどね、今になってみれば。「削減する。同時に交付税の問題も改革する」と書いてある。
これ、今流行の切り口論で言えば、ここに切り口があったんですよ。やはり補助金の問題にはいろんな問題がまとわりついているんです。これ、中央官庁に行って言いなさいよ。中央官庁の次官でも役所でも全部。自分のやってる補助金というのは、天下に十分説明できるように重要な政策を実行しているので、よほど古くなったって下げないんだから。農林省なんか行ってみなさいよ。こんな膨大な補助金のリストがあるんだから。どこに使ったって構わないんだから。これはね、何とかしなくちゃならんのですよ。意味がないものをたくさんやってるんだから。だから、そっちの削減というのは結構だと思いますよ。だけども、それは同時に交付税の問題とセットでやらなければいけないというふうに閣議決定しているわけだ。
ところが、この前、財務大臣の記者会見の発言がずいぶん波紋を呼んだ。あとあとでよく聞いてみれば、あの人はそういう発言をたまたまするので、別に珍しいことではないから、それはそれとして、あのときに総理は、補助金を切り口ではなくて、税源移譲を切り口にしたらどうだという趣旨のことを言われたというんですよね。これは、1年前の閣議決定に比べてちょっと軽はずみな発言ではないかと思うけれども、しかし、総理の言ったことは事実なんでしょう。そこに問題があるんだけど、それを別にすれば、そこでわが財務大臣は食いついたんですよね、あの経過を全部聞けば。それで、地方分権の分権が行き届かないうちに税源移譲をやるのは順序が逆だ、という趣旨のことを発言された。それはそれで一応わからんじゃないんですわ。ただ、いずれにしても1年前の閣議決定で、国庫補助負担金をまず数兆円削減して、同時に交付税の問題、大問題を抱えてますから、やるんだというのに比べれば、この前の経済財政諮問会議の議長である総理の発言というのは違ったことを言ったように見えるんです。そこで解釈が出て、経済財政政策担当大臣がとばっちり食らって、実はあれは総務大臣と財務大臣との喧嘩なんだから。
それで、さっき会長が、これから税調としてもこの問題に首を突っ込んでいくと言われたでしょう。これはえらいデリケートな話で、今度は両省次官プラスある先生がメンバーになって取り仕切ると。それはそれで結構だと思うけれども、いずれにしても、一体どこでどの程度この議論をやるのかということについて、会長の見解を聞いておきたいんだ。
これは、どうにもならないような対立概念ですから、簡単にいい答えが出ると思わないんだ、僕は正直言って。従来の経過から見れば。そこに税調が首を突っ込んでいってどの程度の意味があるのか。とりあえずは両省次官がやるというのだから、プラスある先生も加わるというのだから、どう整理してくるかわからないけど、それを見ても遅くはないのではないかという気がしないでもない。ちょっと無責任かもしれないけども。ついては、この問題の経過について財務省の話を聞きたいんだ。
〇委員
事務局に質問があって、かつ、私に次の質問があって、それから事務局ですから、その順番でいきましょう。
最初に、三位一体論の入り口と課税自主権の関係。
〇事務局
課税自主権の関係、先ほど20ページで、今まさに委員のご指摘のところ、私、若干読まない部分もあったんですけれども、認識は全く一緒でございます。この独自課税というものが、「納税者を含めた関係者の意見を聞き、受益と負担の関係をより意識する議論が行われるという意義」があるというのは、全く同感でございます。
ただ、先ほど申し上げましたのは、ここにも書いてあります、量的な限界もございますし、三位一体論は三位一体論として議論をしなければいけませんが、課税自主権は当然こうした意義を我々も認識しておりますので、この拡充方について、さらに、地方公共団体が現実に活用できる方策についていろいろ検討する必要があろうということで、どちらも我々としては並行して検討していきたいというふうに思っている次第であります。
〇委員
それでは、今、委員から私のほうに、直接税調としてこれをどう取り上げるつもりでおるかというご質問が出ました。
やり方は二つあると思います。一つは、委員からの状況説明がありましたように、外側のほうがまだ曖昧模糊として不確定である、それに首を突っ込むのはどうかねと。こういうのは一つ考え方としてあると思いますし、特に諮問会議は6月を目指して三位一体論の「骨太2003年」を出したいと。この間、経済財政政策担当大臣にも会いましたらそういうことを言っておりましたから、おそらく向こうがある種のイニシアチブを取ってやる、これは当然だと思います。というのは、諮問会議というのは、そういうふうに各審議会でできないものをやってもらうし、何よりも総理が議長ですから、総指揮権を持ってもらうのは当然だと思います。
同時に、財務大臣、総務大臣の間でも、内々、いろいろ激突しているようだし、あるいは財務省と総務省のあたりでも、かつまた主計畑と主税畑、あるいは財務畑と財政畑でも、おのおの意見が違うようにも聞いております。委員からまさに的確にご指摘あったように、我々、火中の栗を拾わないで少し見たほうがいいと、これは一つの考え方だと思います。
それからもう一つは、どこかでこれまでの議論を正々堂々と議論して、論点を整理しておく必要はあるだろうと。従来、分権会議のところでもかなり権限移譲を中心としてやられてましたよね。それをベースにして、三位一体論という話が出てきたと思いますけれども、いつまでもたっても三位一体、三位一体、どこからやったらいいかねということで、駆け引きしていてもしようがないんですよね。
そういう意味で私なんぞは、こういう条件を置いてこういう議論ができるというような論点設定はある。ただ、まさに気をつけなければいけないのは、政治的なコミット。何か税調が言ったから責任を取れとか、こうなっては困るんですよね。だから、その辺は審議会として、ニュートラルな意味でどういう問題が過去あって、どういうところに今後突破口があるかどうかという議論は整理できると思います。ましてやこれは首相の諮問機関でありますから、地方と国の関係においていろいろ関係者がいますよ、特に総会に出れば。だから、そういう形の論点整理的な、これまでの議論を総括するような議論というのはあり得ると思う。ただ、おっしゃるとおり、ある意味では税調がもみくちゃにされる可能性もある。そこで今日は、前段の議論は、どう進めどういう形でやるかということを踏まえて国と地方の議論をやっていきたい。
ただ、私は、諮問会議、あるいは地方分権改革推進会議が出るまで、じっと待っているのがいいとは個人的には思っていません。やはり諮問機関でありますから、税調としてしかとそういう議論をしたほうがいいと思っていますし、それだけの議論をするベース、あるいは、知見はあると思っていますから、やってみたいと思います。ただ、これはまさに皆さんのご意向を聞いてからというふうな感じは持っております。
それでは、事務局のほうから、取扱い方を。
〇事務局
今、ご質問がございました諮問会議での議論、あるいは、そのあと大臣が分権会議の方々とお話をされた様子等につきまして、ご説明申し上げます。勝手に私どもで要約するのもあれなので、財務大臣ご自身が記者会見で、そのあと、まとめてご自身のお考えを述べておられますので、それをなるべく引用するような形でご説明申し上げたいと思います。
4月1日に諮問会議がございまして、そこで新聞に出ているようなやりとりがあって、その要旨はすでに公表されておりますけれども、その翌日、大臣が自分のお考えを記者会見の場で述べておられます。諮問会議で自分が言ったことといたしまして、財務省としても地方財政確立のために三位一体の解決を急いでいる。しかし、前提としてまず何を分権して--要するに権限の移譲の問題でございますが--地方でできることは地方に、あるいは国でできることは国で。その分権を、何をどう処理するのかということがわからないで財源論、税源論ばかり議論しているというのはおかしいのではないか。したがって自分としては、昨年12月に地方分権会議から閣議に「国と地方の基本方針」という文書が報告されているわけですけれども、そこで指摘されている項目が160 項目程度ある。そういう事務について、あるいは権限について、国から地方へ移譲していくものはどういうものなのか、これを明確に決めていくことが大事である。これに伴って財源をどうするかということに自動的になるし、財務省としても、それに対する財源の地方への移管は積極的に取り組んでいきたい、というようなことをご説明されておられます。
そのための具体的な手法として、総論を議論していてもしようがないので、具体的なものから入っていくべきであって、具体的には、分権会議が昨年12月に報告された「国と地方の基本方針」の中にある167項目、これを一挙に全部はできないけれども、部分的に区切って、社会保障なり教育なり建設なり、ある程度選別して、それを諮問会議で、これだけの権限は地方に移すという分権の中身を決めてもらいたい。分権できないのに財源だけ移すことはできない、というようなことを自分は諮問会議で主張したのだということを説明しておられます。
その後、このような考え方を4月4日の記者会見で改めてご説明しておられますけれども、総理に対しても、三位一体で解決することを急ぐべきである、これは非常に大きい行財政改革なのだけれども、これを進めるについて一番大事なことは、財源問題だけに終始してはだめで、権限の移譲を伴ってやっていかなければいけないということを総理にも申し上げたということをおっしゃった上で、そのための具体的な方法として、分権会議の167項目、この中のどれだけのものを具体的に移管するのかということを、分権推進会議から総理大臣に進言なり要請をしてほしい。これを受けて総理が諮問会議に諮り、そこで取りまとめをしたらどうだろうか、というようなことを申しておられます。
これを受けまして、4月3日に分権会議の議長と代理と大臣が会われまして、大臣から分権会議で167項目提案されたけれども、この中からせめてこれはという国民の関心の強い事項、地方にできることは地方でという趣旨から言って真っ当な行政事務であろうというものをピックアップして、総理にこれを早く移管しなさいということを要請してほしいということをお願いした。これに対して西室議長からは、これは非常に難しい、私たちにとって荷が負えぬほど重いけれども、フォローアップをしてみて、どれだけのことができるか考えてみましょうという答えをいただいた、ということでございます。
〇委員
ありがとうございました。
冒頭から、今日、本来やるべき核心部分がいろいろ出ておりますので、時間を多めに割いて議論したいと思いますが、どうぞ。
〇委員
今の議論で、昨年の閣議決定にもある三位一体、三位一体という点が合意されている、あるいは、三位一体の中で、総理のお言葉ですと、税源移譲はそれを先行するというご議論まであるわけです。それは、去年の閣議決定の線からずれるものだろうと思いますけれども、しかし、昨年の閣議決定の三位一体というのは、それで十分なのかどうかという心配が一つあるわけでございます。
といいますのは、補助金、負担金、それを見直す、地方分権を推進するといっても、そういったものを賄っている国の財政というのは、81兆円で、税収は41兆円しかない。半分は借入金、特例公債なり何なりで賄われているとすれば、その税源を地方に回すときには、その半分の借入金も一緒に持っていくのかどうか。そうでないと、国としては、その分をどこからどういうふうに調達するのかという問題が出てくるわけでございます。借入金を持っていくということであれば一つの方法ですけれども、それはなかなか難しいかもしれない。とすれば、国としては増収措置を図るということにもなる。しかし、現在の環境では増収措置というのはなかなか難しい環境にある。一方、増収は難しいとしても、現在、定率減税なり何なりの恒久的減税が行われている。では、その点を見直すか、ということもあり得るわけでございます。
現時点で三位一体で本当にできるのか。本腰を入れて議論して基本的な解決を目指していくというのであれば、三位一体でなくて、財政の背景、さらには、現在行われている増減税も含めた、四位一体、五位一体ぐらいの幅広い見地からでないと、なかなか基本的な問題の解決、処理は難しいのではないか。そこからの幅広い見地、幅広い覚悟でいく必要があるのではないかと思うわけでございます。
〇委員
具体的な答えが出ました。
どうぞ。
〇委員
三位一体か、四位一体か、五位一体か、いろいろあるようですけれども、いずれにしても、それが一番大事な点であると思いますし、特に地方交付税のところ、これは、財源保障機能の見直しということをはっきり税調としても言っているわけですから、先送りするようなことはしてはいけないと思います。これは絶対にやる必要があると思います。
それから、地方税自体の問題について触れたいのですけれども、地方税自体の問題は、先ほどご説明いただきましたが、資産課税を除きまして、ほとんどの課税ベースで国と重複しているものが非常に多い。これは何とかすべき時期に来ているのではないかと思います。
それと、先ほど超過課税の問題について、全体の1.3%だから大したことはないということでしたけれども、この資料で超過課税の実施状況を見ますと、道府県民税の法人税割、46団体。これはちょっと異常ではないかと思うんですね。市町村民税の法人税割も1,428団体ということで非常に多いですね。それと、道府県税、市町村税別で見ると、道府県税では法人道府県民税、法人事業税のシェアが非常に多い。市町村税でも法人市町村民税が10%を超えている。やはり法人に依存し過ぎているのではないか。法人税依存は安易であろうというふうに思うわけです。
それと東京都の場合、先ほどの説明ですと、宿泊税ですか、こういうのは一体どういうことなのだろうと思うんですね。銀行税も相当問題があると思いましたけれども、宿泊税というこの発想自体ちょっとおかしい。よそ者にかけるという発想だと思うんですね。地方税は住民が課税対象であるべきでしょう。そういう点から見て相当是正すべき点が多いと思います。やはり住民が課税対象であるべきである。住民のコスト意識をここできちっとしてもらう必要がある。そのために、地方税として個人住民税の均等割、所得割。特に均等割の充実、固定資産税の充実、これは非常に大事ですから、その具体案を一刻も早くつくるべきであるというふうに私は思います。以上です。
〇委員
ありがとうございました。
では、どうぞ。
〇委員
たしかに今言われるように、住民税が異常に低いというか、終戦直後の住民税の水準と今の水準と数倍くらいしか違わないわけです。ですから、これは充実を図る努力は必要だと思います。それから、法人への法定外普通税とか目的税とか、そういうものの充実も必要ですけれども、こういうものを積み上げても、約70兆円ぐらい足りないわけでしょう、国と地方で。その中で個別のこういうものだけを取り上げてみても、はっきり言って大した改革にはならないということだから、まず、収入のパイを国・地方を通じて大きくする。その中には所得税もあるし消費税もあると思いますが、そういうものを税調としてはきちっと言う必要がある。
それから、分権会議とかそういうところでは、先ほど、167項目ですか、指摘がありましたけれども、それは、どこを分権するんだということをきっちり決めてもらわないと。財務大臣のおっしゃっているように、それで財源がついていくものだということでしょうから、並行的に歳出の面と歳入の面と両方から辻褄を合わせていく努力が必要だろう。そういう意味で税調の役割も大きいというふうに思います。
〇委員
どうぞ。
〇委員
審議の進め方に関連してですけれども、三位一体論というのが出たのが、例の地方分権推進委員会。これでは、「国・地方を通じて租税負担率に変更を加えない前提で国から地方への税源移譲を行う際には、国庫補助負担金や地方交付税を減額するなどにより歳入中立を原則とすべき」ということで、要するに増減税ゼロというのがかかってしまった場合には、そういうことでやる以外にないだろうという意見が出されたわけです。
同時に地方分権推進委員会は、最終の結論としては、「なお、国・地方を通ずる構造的財源不足の解消方策について、今後、財政構造改革の議論の中で検討していく必要があるが、今後、21世紀において地方公共団体の役割重視ということで地方税を充実すべし」ということで、当面のいき方と長期的な観点とを書いている。
それで、当審議会ですが、この6月に何らかの結論を出して私ども委員の任期が終わるという場合に、三位一体論というようなことは一種の当年度税制改正的な感覚になるのではないか。6月のほうは、委員会の総意によるわけですが、構造的財源不足解消というようなスタンスをとるならば、三位一体論に必ずしもとらわれないで議論をしていいのではないか、こういうふうに思います。現実論として、三位一体論はどうせ6月までごちゃごちゃ、そこら中でやりまくっているのでしょう。それを待ってどうのこうのというと、当調査会の今回の任期としては難しいのではないか、こういうふうに思います。これは、審議の進め方の参考としてお考えいただければと、こういうふうに思います。
〇委員
ありがとうございました。
どうぞ。
〇委員
この問題の最終的目的は、税金というか、公的な資金をどうやって効率的に使うのか、と。裏返せば、むだ遣いばかり多くてしようがないから、どうやってむだ遣いを減らすかということではないかと私は理解しています。そのためには、どういう税金を地方に移譲して、その見返りとして補助金とか交付金はやめてしまうということにおいて、トータルとして使わなければならない金の量を減らしていくということだと思います。
さっき他の委員もおっしゃってましたけど、税金の部分だけいじっていても、残り半分が借金で抜けているわけですから、この借金で抜けているところを減らしていかなければならないということを考えると、どの税金をどういうふうに地方に移譲することが、一番むだ遣いしにくくなるのかということを示してほしいという感じを一つ持っています。それでないと見えてこない。ただ、税金だけで世の中は動かないから、それに伴って交付金がどうなるのか、補助金を削ればと、結局は全部見ないといけなくなるような気はするのですが……。
もう一回トータルをながめてみますと、地方の税金を全部国のほうに移譲してもらって大体チャラになる、それの逆をやっても大体チャラになる。そうすると、どっちかは全部借金でやらなければいけなくなるという構造にあるわけですから、その中で、これをあっちに移してどうなるの? というのは非常にむなしい感じもします。
そうは言っても、何かやらなければいけないわけですから、どれをどうすれば最も効率的にお金を使わなくて済むのかというのを、実際配っているほうはわかっているわけですから、それを示してもらいたいなと、なかなか示すことはできないかもしれませんが。
あと一つ、質問ですが、交付税というのは税調なんですか。
〇委員
税調も一部絡んでいるでしょうし、すべてではないでしょうね。だって、あれは一種の歳出の問題でもありますからね。
〇委員
歳出ですよね。
〇委員
ただ、税調が全然口を出せないとも思いませんよ。
〇委員
そうですか。だとすると、三つのうち二つ持っているわけだから、なかなか強力ではないかというふうには思うのですが。
〇委員
時間がなくて、ぼつぼつ終わりにしたいのですが、この際ぜひというのは……。
〇委員
三位一体の議論の進め方ですが、できるのか、あるいは、税調でそれを議論するのがふさわしいのか、先走ってはまずいのではないか、しかし、待っていると何も言えなくなる、タイミングを逸する、いろいろ見方が分かれるところだと思います。そこはわかるのですが、今度の一連の議論というのは、小泉構造改革という旗のもとでの議論であるというのが第一点。
その中から出てきた税制改革というのは、いってみれば、税にとどまらない、あるいは、国税とかいう国の次元にとどまらない、全国的な視野で、しかも税プロパーの問題にとどまらない。つまり、この国の骨組みを変えていくのだ、その中で肉付けたる税源、その配分をどうするのだという骨太な議論が求められているのではないか。もともと私は、税制改革という言葉を聞いた瞬間に、今度の年度改正のような、控除をどうするんだああするんだという事柄もさることながら、国・地方を通じた、この国の骨組みをどうしていくんだという問題を税制改革とともに考えていく、そういう機会ではないかと思っていたわけであります。
そういう点からちょっと具体的なことを申し上げたいのですが、先ほどから出ている三位一体の議論です。単刀直入に申しまして、この三つのテーマの中では、国庫補助負担金の合理化、見直しというのがやはり最初に来るのではないか。はっきり言って、国の歳出構造、その歳出を受け持っている行政組織の構造、あるいは、権限等々、法制面を含めた構造、これがやや時代にそぐわなくなってきている。つまり、今の金の分配、あるいは流れというのが旧態依然としたものになっている。それに応じて中央省庁の組織ができて、地方の組織ができて、そして県庁、市役所等々の、国の組織がそのまま受け継いだような歳出構造、組織構造になっている。これを何とかしなければいけないのではないか、というのが焦眉のテーマではないか。
旧態依然のお金の使い方が、実は、もう時代に合わなくなってきている。地方財政などを見ますと、全体としてお金が足りないという問題と同時に、必要なところにお金が流れない。これが歳出不足という一つの無視できない点ではないか。新たに起きる財政需要の分野に金が流れない。旧態依然とした補助金の配分構造のほうにはそれなりの金が流れていく。しかし、新しい需要分野に金を流すというと、今の補助金の構造においてはなかなかできない。ここら辺をまず直して、骨組みを変えて、そして肉付けをどうしていくのかという話の進め方が、一番ふさわしいのではないかというふうに思います。
したがって、三位一体、四位一体の話が出ているわけですが、この議論で一つ欠けているのは、中央省庁の行政改革というものを、補助金と絡んで、歳出構造、その歳出構造を担っている行政の構造、これも検討のテーマに入れるべきではないかと思います。
それから、国・地方ということで議論が行われているわけですが、地方といってもいろいろあるわけでありまして、都道府県と市町村という区分がある。市町村の中にも、都市型というか、比較的財政力に余裕があるところ、過疎化で将来もないようなところ。そういう意味で、国・地方という二分法の中で地方というのをもう少しきめ細かく分けていったほうが、より実りある議論になるのではないか。
それから先ほどから出ている、借金がたくさんあってしようがない、これをどうするのかと。これは重大な問題で、話が具体論に進めば進むほど必ずこの問題が出てくると思います。借金が膨大にふくらんでいて、この状況下ではなかなか税源移譲はできませんよという議論は、そのとおりかもしれませんけれども、別の考え方をすれば、放っておくと、この借金がどんどんふくらんでいくという現実も一方にあるわけで、借金があるから何もできないとか、やりにくいというのではなくて、むしろ、借金がすでにこれだけある、しかも、放っておくとこれがどんどんふくらんでいく、急いでやらなければいけない、というような見方も必要ではないかというふうに思うわけです。
〇委員
おっしゃるとおりですが、国庫支出金から手をつけるというのは、どうも我々の権限を若干超えているような気がするから、難しいとは思いますけど、いや、問題意識はわかりますよ。
はい。
〇委員
今日のご説明を聞きますと、結局、地方の税収力というのは落ちていまして、それを国の財政移転で穴埋めしてきた、これはもう限界だという話だろうと思うんですね。あと三位一体論というのは、堂々巡りしていてよくわからないのですが、私なりに解釈すると、地方交付税、税源移譲、市町村合併、その三つではないかと思うのですが、やはり交付税と補助金の一体処理というのは欠かせないだろうと思うんですね。
ただ、そういうときに、旧自治省なり地方自治体に処理能力があるのかどうかという話なんですね。これ、人員を増やしたら全然意味がなくて、人員を削減しなければいけない。その場合、昔言われていた道州制か何かにして、300くらいに自治体を分ける。そういうことをやれば、効率的な事務処理ができるのではないかという気がしているんです。私が今日持ってきた法定合併協議会の資料だと、市町村がすべて合併に踏み切った場合、年間1.7兆円の歳出削減効果が生まれるという資料もあるので、これは、まず合併を進めて、処理能力というのを上げて、それで交付税と補助金を一体処理して、税源移譲はその次の話ではないかというふうに思っています。
〇委員
わかりました。後半の議論に入る前に、今日の議論をまとめておく必要があると思います。
冒頭、ある委員から的確な議論の進め方のご提示がございまして、私がお答えして、それから、今日、何人ぐらいご発言いただいたかな、7、8人いただいたと思いますが、やはり基本的にある方向に収束しつつあるような感じがいたします。つまり、俗に言われる三位一体論そのものを、まともにここで所与としてその枠の中で議論するのはちょっと難しかろうし、やめたほうがいいだろうというご趣旨が圧倒的に多かったと思います。
つまり、これからやるべきことは、国と地方の歳入、歳出のギャップをどう埋めるか。もっと言えば、受益と負担の関係をどう見るかというところを、国税と地方税を踏まえて議論する必要があると思います。その中には、当然、歳出カットもあるし、国から地方に行く金の流れもあるので、そういう三位一体の外側にあるところに実は大きな問題があるだろうと。そういう議論も踏まえつつ、かつ、まず自分たちの個別の税、つまり国税なら国税、地方税なら地方税の中で、どれだけ努力して、今後、増収ということを仮に考える時代が来るときにはどうするかという議論、これは僕は税調としてはきわめて穏当なノーマルな物事の発想だと思います。
そういう意味で、歳入、歳出のギャップの解消ということを踏まえつつ、おのおのの税でとりあえず考えて、そのあと国から地方にいく可能性があるのかないのか、そういう議論は十分できると思うんですよね。そういう議論をしているという形において、外側のほうでいろいろシリアスな問題が起こったとしても、税調は税調らしい議論ができると私は思いますので、三位一体そのものでいいというふうに考えるよりは、そういう形でいけば私はかなりの議論はできようかと思っています。また、これから具体的に事務局とも相談して、資料を用意してもらい、かつ、誰かお話をお聞きしたい人がいれば呼んでくるといった形で、これで終わりというわけではなくて、これを議題としては進めていきたい、そう考えています。
それでは、まだほかにご異論があろうかと思いますが、後ほどお出しいただくとして、次の「少子高齢化と税制」、今日は、社会保障審議会年金部会の部会長からお話を伺う予定です。
その前に、事務局で用意してもらった、高齢者と老後不安に関する資料もございますので、まず、これを簡単に説明いただいてから部会長のお話を伺うという形にしたいと思います。
では、事務局、ご説明ください。
〇事務局
横紙でございます。お時間の関係がございます、若干はしょりますが、よろしくお願いします。
まず、1ページ目でございます。最初のほうは所得の状況ということで、世帯主年齢階級別に見た1世帯当たり・世帯人員1人当たり平均所得金額ということで、黒い棒グラフ、これが1世帯当たり、薄い棒グラフ、これが1人当たりということで年齢階層別に並んでおります。1人当たりというふうにいたしますと、大きな差はないということが見て取れます。
次のページでございます。厚生労働省が「所得再分配調査」というのを行っておりまして、当初所得、可処分所得という2種類ございまして、それを各年齢階層ごとに並べたものでございます。可処分所得から見ていただきますと、当初所得に現金給付額、それから税、社会保険料を引かれる、これが可処分所得というものでございます。その要素以外、これが当初所得ということでございます。
年齢階層ごとに見ますと、濃い黒のほうでございます、大きな山になっておりますが、税、現金給付、こういったものを加味した可処分所得で見ると、この山はなだらかになるということでございます。
次のページ、3ページでございます。1980年から2000年まで、20年間の所得の実質伸び率を年齢階層別に見たものでございます。世帯ベースで見ますと、全世帯平均が15.5%、やはり40歳から50歳代、所得が伸びる山が大きくなってあるわけでございますが、世帯員1人当たりと、先ほどと同じような議論でございますが、高齢世帯は世帯員が少なくなるという事情もございます。この山はなだらかになるということでございます。
次の4ページでございますが、高齢者世帯の所得階層別に見た世帯の分布でございます。今まで見たのはいわゆる世代間の問題でございますが、世代内で見た場合、どうなるかということでございます。いわゆるフローの所得というものは、高齢者世帯の場合は、少ないほう、低所得層に分布がかなり来ているということでございます。平均世帯人員は、1.54人と2.75人ということで1対2ぐらいの差がございます。
次のページ、5ページでございます。いわゆる所得の中身でございます。左の円グラフでございますが、年金等を受給している高齢者世帯--この高齢者世帯というのも厚生労働省の統計でよく出てくる定義でございますが、65歳以上の人のみ、ないしは、これに18歳未満の未婚の者が加わった、こういう家庭を想定したものでございます。高齢者世帯における総所得に占める割合ということで、公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯が6割以上ございます。80~100%未満の世帯が10%、こういうことでございまして、全体を通して見ますと、所得の多くを年金等に依存しているということでございます。
右の棒グラフでございます。今申し上げました、全体の高齢者世帯のうち約1割が雇用者、それから約1割弱が自営業者となっております。雇用者、いわゆる世帯主がサラリーマンである場合、人から雇われている場合、自営業者は自分でお仕事をしている。全体で見まして、1割を占める雇用者世帯、年金、この灰色でございますが、これが220万円、稼働所得が380万円弱、このようになっております。
次のページでございますが、年平均1カ月間--年を通じて見た場合の1カ月間の平均をとったものでございます。この右のほうを見ていただきたいと思いますが、支出の中身。これまでは収入の話でございますが、ここから2~3枚、支出の話でございます。高齢者世帯・無職ということで見ますと、収入は当然ほとんどが社会保障給付でございます。支出は、42.9%が基礎的支出、27.6%が余暇・交際関連、このようになっております。
勤労者世帯全体との比較で見ますと、金額的には、基礎的支出、余暇・交際関連はそんなに違わないという格好になっております。もちろん、全体の収入は少なくなっているわけでございますので、基礎的支出、余暇・交際関連、このパーセンテージが高齢者世帯の場合には大きくなる。それから勤労者世代では、一番端っこにありますが、土地家屋借金の返済という項目がございます。こういったところが、当然のことでございますが、高齢者世帯にはあまりない。このような支出の姿になっております。
次のページでございます。先ほどは1980年から2000年までの所得の伸びを見ましたが、今度は消費の伸びでございます。一番太い折れ線グラフ、これが65歳以上の世帯でございます。例えば私が属します45~49歳というのは、バツを結んだ、中ごろをずっと走っている折れ線グラフでございます、伸びを見てまいりますと、65歳以上の世帯の1人当たりの消費支出は比較的伸びが大きいというのが見て取れます。
次の8ページでございますが、貯蓄でございます。これはよく出るものでございますので、駄弁を弄しませんが、当然のことでございますけれども、年齢が上にいけばいくほど貯蓄の額が増える、借金はやはり壮年層が一番多いというものでございます。ネットアウトした棒線のところはこのような姿になっているわけでございます。
次のページ、9ページでございますが、資産の中身ということで、先ほど申しましたのは金融資産でございます。そのほかにも、宅地とか住宅、こういったものも資産の分布が年齢別になってございます。
10ページでございます。これは、65歳以上の世帯の貯蓄額の分布を示したものでございます。2,500万円超、横しまの棒が65歳以上の世帯でございますが、かなりのパーセンテージ、シェアがある。逆に申しますと、かなりの資産を持っている方が相当いらっしゃるということで、我々は、平均値を出す場合には常にこういった点は注意しなければいけないなと。特に高齢者世帯の場合は、かなりばらつきが出てくるということがございますので、平均値だけの議論は我々自身も気をつけております。
最後のページでございますが、こういった状況を踏まえまして、13年12月に「高齢社会対策大綱」が出ております。あまり引用いたしませんが、要するに、旧来の画一的な高齢者像の見直しと、ひとくくりに論ずることはなかなかできないのではないかという論議が、今申し上げたようなデータを一つの根拠に行われているわけでございます。
もう一つ、クリップどめしてございますアンケートでございます。
最初に、先ごろ3月に出ました内閣府国民生活局のとったアンケートでございます。1978年から、「自分の老後に明るい見通しを持っているかどうか」ということに対する答えでございます。左から、「全くそうである」、すなわち明るい。「どちらかといえば明るい」、「どちらかといえば明るくない」、「全く明るくない」、こういう数字がございます。明るいと思っている人が、だんだん少なくなってきているということでございます。
次のページに、世代別にそのデータを整理したものがございます。「『自分の老後に明るい見通しを持っている』という意見についてどう思うか」ということで、「持っていない人」、「持っている人」、それぞれ世代ごとにどういう分布になっているかということでございます。これを見ますと、50歳代、60歳代、70歳代は、「明るい見通しを持っている」とされる人は、99年、それから2002年の数字でも大体増加する傾向としてあらわれる。若いほうは、「明るい見通しを持っている」人が少ないということでございます。これは、男女大体同じ姿になっております。
それから、金融資産に関する世論調査ということで、去年の数字で恐縮でございますが、金融広報中央委員会というところが取ったアンケートがございます。「老後の生活への心配」ということで、「非常に心配である」というのが、2年前、26%であったのが、今、平成14年度で31.5%に伸びているという数字が出ております。
これも、60歳未満と60歳以上に分けますと、37.5%、22.0%ということで、あくまで比較の議論でございますが、お年寄りよりも60歳未満のほうが心配をしているということでございます。
「老後の心配をしている理由」ということで、各年の状況をそれぞれの項目で記載してございます。
その次に、「年金に対する考え方」ということで、次のページでございますが、「日常生活費程度もまかなうのが難しい」というところから、「大体まかなえる」、「不自由なく暮らせる」というのを、全体、60歳未満、60歳以上に分けて書いてございます。
最後でございます。これも去年の数字で恐縮でございますが、「国民生活基礎調査」で同様のアンケートを取っております。「大変苦しい」、「やや苦しい」、「普通」というふうに、これは全種類の世帯でございますが、徐々に苦しめな感じが出てきている。
それを世帯の種類別に分けたのが下の図15でございます。全世帯で、「苦しい」、「やや苦しい」を足しますと5割ちょっと。高齢者世帯の場合ではそれよりは若干少ない。やはり一番大変そうなのは母子世帯かなと。
こういったところが、いわゆる感覚論でございますが、アンケートの数字でございます。
以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。
今のご説明に幾つかご質問もあろうかと思いますが、時間の関係もありますので、これはご自分で後ほどながめて、また、質問が出れば出していただくという形で、今日はこのままの形で受けとめさせていただきます。
それでは、年金部会長にお忙しいところをおいでいただきまして、これからご説明いただきます。部会長は、社会保障審議会年金部会の部会長であるとともに税調の専門委員でもあります。両方兼ねておりますが、ここでご説明いただくことにいたします。
それでは、別途資料が出ておりますけれども、社会保障との関連で高齢化と税制をご議論いただくという形になります。
では、よろしくお願いします。
〇委員
今、会長からご紹介がありましたように、やや股裂き状態になりかねない面もございますけれども、今日は年金部会長としての発言というよりは、税調のメンバーとしての発言ということでお聞きいただきたいと思います。
私に今日与えられた課題は、「少子高齢化と税制」の中で特に社会保障との関連で税制をどう考えるかということであると思います。おおむねレジュメに沿ってお話しいたしますが、資料の説明はちょっと難しいと思いますので、後ほどご覧いただきたいというふうに思います。
私は、社会保障と税制の関係を考える場合には、四つぐらいの視点を持って議論をしていただきたいと思っております。
一つは、社会保障の財源としての一般に公費という言われ方をいたします。この公費という言葉はくせものでございまして、公費という意味は、例えば国の社会保障関係費であったり、地方の民生費、あるいは労働費や衛生費の一部でございまして、国から言えば歳出を意味している。しかし、国なり地方の財政収入から出ているということで、そのもとをただせば税という形であります。ですから、公費というのは必ずしも税だけではなくて、当然税外収入や公債収入も入っているという意味でございますので、それを税と言い切っていいのかどうか、やや問題がありますが、財源としての公費と税の関係が一つある。これがおそらく今、一番念頭にあるのかと思います。
二番目は、むしろ税調マターとして一番議論されてまいりましたのは、例えば拠出、給付、あるいは、年金でありますと積立金の運用益、こういったものをどういう税制で整合的に課税をするかという議論が当然あるわけで、所得税の考え方、支出への考え方等の中で議論されている。この問題が二番目でございます。
三番目の問題は、前に一度ここでお話しさせていただきましたけれども、税というのは、所得税であれ間接税であれ、社会保障給付の実質的な調整手段になり得るわけでございまして、日本では、税込みの社会保障給付と税抜きの社会保障給付ということはほとんど考えません。というのは、わが国では公的年金のうちの老齢年金だけが原則課税で、ほかはすべて社会保障給付は非課税扱いでございますから、税込みと税抜きという考え方はほとんど理解できないわけです。
しかし、ヨーロッパ諸国、特に北欧諸国などはほとんどが課税所得でございますから、実際は税抜きで見たときの給付水準がどうかということを見ますと、ずいぶん今までと考え方が違ってくる面がございます。同時にそれは、費用回収の手段でもございまして、財政収支に与えるインパクトという点からも社会保障給付と課税の関係を考える必要がある。
四番目は、社会保障給付に事実上代わるような措置が、税制上の、特別措置と言っていいかどうかわかりませんが、たくさん行われます。例えば特定扶養控除などは、社会保障ではありませんが、一種の教育支出の代替でございますし、あるいは、有名なのはアメリカですけれども、アメリカは現役のサラリーマンの公的な医療保険がございませんので、企業が民間の保険会社と契約を結んで保険料を払います。これが損金算入されるという形で、一種の租税支出と、財政学なり税制の世界では呼んでおりますけれども、そういう形での代替するものもある。
こういう四つの視点で、社会保障との関係では税の問題を議論していただきたいと思っております。
資料のほうを特に見ていただきませんが、わが国の社会保障制度は、給付で申しますと、9割が社会保険を通じる給付でございます。ただ、財源的に言いますと、そのうち社会保険料は6割ぐらいですので、残りが先ほど申しました公費、国なり地方からの歳出で賄われているということになりますが、社会保険については、基本的には政府が組織をし、運営するという観点から、その事務費なり運営費の補助が原則的な考え方とされております。しかし、実際にはわが国の社会保険制度をよく見ますと、特に医療ですと国民健康保険、年金ですと国民年金、介護保険、老人保険、こういったものは、国民年金ですと5割ぐらいが公費が入っておりまして、公費の投入割合が非常に高いと言われております。
今申し上げましたように、介護保険にせよ、国民健康保険にせよ、老人保険にせよ、要するにサラリーマン以外の人も含む、あるいはサラリーマン以外の人を対象にしているという点に特徴がございまして、そういう点を考えますと、一つの公費の投入の理由は皆保険の政策コストと言っていいのかと思います。つまり、保険料の支払い能力の低い者であるとか、あるいは、保険者であっても財政力の非常に低い市町村などに対して、保険を維持するための費用として出されている公費が一つございます。
これは前から議論されていることですが、最近になりまして、社会保障負担を抑制する--別の言葉で言いますと、労働費用、人件費をどう抑制するかということが、もう一つの大きなテーマになってきております。前回の年金改正時くらいから、年収ベースで20%くらいの保険料率が限界という考え方が非常に有力になってまいりました。明確な根拠が必ずしもあるわけではございませんけれども、ヨーロッパ諸国などを見てそのくらいか、というような話でございます。
ところが、今回の新しい人口推計で、従来の制度を維持いたしますと、国庫負担3分の1で24%強になる。仮に2分の1にしても22%強というところまで、将来、保険料率が上がることが想定されております。その中で、労働費用の一部を構成する社会保険料の料率をいかに抑制するかということが大きなテーマになり、特に、人口の少子高齢化が予想を超えてさらに進む状況を考えますと、これが大きな理由になってきているわけでございます。
今、年金の議論では、例えば最終保険率の上限をある程度固定する。例えば年収で20%に固定をして、あとは、マクロ経済スライドという自動調整装置を組み入れて、制度の変更をできるだけ小さくしたいという議論をしております。仮に20%といたしますと、3分の1のままですと、約5%保険料率を下げる、あるいは、2分の1の国庫負担でも2.5%程度保険料率を下げる。20%に抑えようとしますと、給付の削減もこれに伴って同時に起こってくるわけでございまして、むしろ保険料率の上限という考え方をとると、今後、一つは給付の調整が必要になる。その場合に、それでも20%を超える可能性がありますので、国庫負担を3分の1から2分の1へという議論が行われているということでございます。
ただ、特に国庫負担というものは、言うまでもなく財政支出の増をもたらすわけでございますし、その点を考えますと、上限を固定することに伴う給付水準の一つは、削減、適正化ということが必要になりますし、社会保険料の徴収体制をどうするかということが、今後のもう一つの前提条件として出てくるだろうと私は理解しております。
いまお話しいたしました議論は、実は議論としてはもっと先に進んできておりまして、基礎年金の税方式化という議論が、最近、比較的多く議論されております。3分の1から2分の1という、6分の1、国庫負担を引き上げる考え方から、もう一つの選択肢は、全部を税方式化するという議論にもなってきているということであります。
この辺についてどう考えるかということはいろいろ議論がございまして、私の立場としては、そう簡単に言いにくい面もございますけれども、私としては、当面考え得るのは、3分の1か2分の1の国庫負担増が可能かどうかということがまず問題であって、税方式化の議論まで進むのかどうかということについては、全く楽観できない状態とむしろ考えております。
それ以上に、私としては、税方式化という考え方についてやや疑問がございます。一つは、社会保険というのは、制度としては、理念的なものとは外れてはおりますけれども、役目が二つあって、一つは、若い時代から将来の老齢のリスク、例えばそれは所得保障であったり、医療であったり、介護であったりするわけですが、そういう加齢に伴うリスクを、早い時期に、その必要性と、そういうものがあり得るというメッセージを、きちんと国民に伝える役割を一つ持っているだろうと思います。つまり、強制加入を求める、拠出を求めるというのは、若い世代に、まだ30年、40年先であっても、そういうことがあり得るんだということのメッセージを送るのが一つだと思います。
もう一つは、保険という仕組みをとっている以上は拠出が前提でございますから、拠出をするためには何らかの就労ないし就業が条件ということでございます。これは、社会保障の倫理という点で私はかなり重要な問題だと実は思っておりまして、やはり若いうちからきちんと仕事をしなさいと。それは自営業であれサラリーマンであれ一向に構わないわけでありますけれども、所得を得てそこから拠出することを前提にするという意味では、国に頼る、地方に頼るというのではなくて、まず基本は自分が働くことだと、そういうメッセージだろうと私は理解しております。そういう点から申しますと、居住条件と年齢条件だけの税方式ということのメッセージが、私は、経済的な意味合いから申しましても問題がないか、という気持ちを常々懐いております。
それから、今、税方式化の議論は、一つは、社会保険料をもっと下げたいという意見であると思いますけれども、単に税と社会保険料と代替させるということであれば、国全体で見た税収なり社会保険料と相殺されるわけでありまして、特に増えるわけではないわけで、わが国の中・長期的な財政見通しや、将来の財政再建なりプライマリーバランスの問題を考えますと、単にそこにとどまる税の議論ではないだろうという考え方を私もとっております。
これから、社会保障と税財源との関係をどういうふうに考えるかということは、私は四つの条件があるだろうと思っています。
一つは、わが国の出生率の低下と平均寿命の伸びが予想外でございまして、平均寿命のほうも、特に女性は将来90歳くらいで、男性との格差が広がることがほぼ予測されております。そういう中で持続可能な社会保障制度をつくるためには、世代間の給付と負担の公平をどのような形で近づけていくか、これが一つの税の役割だろうと思います。
二番目は、平均的には高齢世代は、所得、資産の上でも決して見劣りしない状況でございますけれども、先ほど事務局から説明がございましたように、平均値というのは上が引っ張ります。我々はどちらかというと、中位推計とかそういうものを使うことが多いのですけれども、高齢世代内での所得や資産の分布状況が現役世代よりもかなり大きいという認識がございます。この認識がどの程度正しいかという問題はあると思いますけれども、そうなりますと、一方で、高齢世代内の税負担の公平という問題も税の役割として考えておいてほしい。
三番目は、すでに労働力人口は減少局面に入っておりますし、総人口は2005年ぐらいをピークに減少していくということでございます。現在の就業率を前提にいたしますと、将来のわが国の総人口に占める就業者の割合は半分を割り込むと予想されております。そういう人口減少社会、あるいは低成長社会において、経済の活性化をいかに図るかということになりますと、例えば生産性をいかに上げるか、これは貯蓄と投資の問題でございますし、就業率を上げるということになりますと、労働や企業に対する課税はあまり高くできないだろうということでもございます。経済の活性化と考えますと、私は、労働と資本に対する直接的な課税強化はできるだけ避けなければならないだろうと思います。
四番目は、課税ベースは拡大して限界税率を上げない。今後の税を選択する場合においては、今お話ししたような労働と資本への課税強化を回避することと、課税ベースの一層の拡大と、限界税率が下げられるかどうかは別として、これを上げない。こういう二つの条件を満たす必要があるというふうに考えております。むろん、これは単に社会保障財源だけではなくて、財政の健全化ということもございますので、税収の安定性や伸長性ということも考えなければならない。
こういう条件を考えますと、一つの候補は言うまでもなく消費税でございます。こういう条件をすべて満たすというわけでは必ずしもございませんが、一つは消費税。もう一つは、所得税の中の年金所得に対する課税。もう一つは相続税でございまして、この三つを今後の課税の対象として考えられるのではないかと考えております。できれば、こういう全体の税制を見直す中で、今お話ししたような労働と資本への課税強化を避けるとか、課税ベースの拡大と限界税率をできるだけ引き下げるということを考えますと、年金所得税とか、消費税とか、相続税というものを、総合的に増収確保の対象として考えていくことが望ましいのではないかと考えております。
あと、それぞれの税の特徴というものはございますが、ただ、その議論は、細かくいたしますと時間を食うだけでありますので……。例えば消費税の場合ですと、安定性とか税収増の可能性が非常に大きいわけで、また、直接これが労働や資本への課税の回避につながることはそのとおりでございます。また長期的には、消費や貯蓄課税への選択への中立性を通じての、供給サイドの強化につながる可能性はありますが、当面、足元のこういうデフレ状況の中での難しさもございますし、また、一般に世代間の公平という点からも、年金の物価スライド制との関係で言うとやや問題が残るということがございます。
あるいは、現在の税制においても社会保障においても、どちらかというと世帯単位から個人単位化へという動きが起こっておりますけれども、消費税というのは基本的には世帯消費というのが原則でございますので、給付が個人単位で拠出のほうは世帯単位というその辺のミスマッチといいますか、そういう問題も私は少し考えたほうがいいと思っております。
それから所得課税、特に年金所得課税の場合ですが、先ほど申しましたように、資本と労働への課税を回避する、あるいは、所得税の課税ベースを拡大するという点で私は望ましいことだと思っておりますし、また、人的控除による高齢世代内の公平という点にもある程度寄与するのではないかと考えております。いずれにしても、税収規模の問題でありますとか、実行する上での難しさというようなこともありまして、そうすぐに大きな期待ができるとは考えておりません。
ただ、私がこの年金課税のお話をいたしますのは、一つは、在職老齢年金という制度が今ございますけれども、これは、できれば税と組み合わせる中で一つの制度の中に統合したほうがいいのではないかと常々思っております。今のところは給与所得だけと調整をしているわけでありますけれども、一方で高齢者の就業促進が言われている中で、高齢者が働けば働くほど年金が減るという仕組みは、あまり健全な仕組みとは思えない。もう少し全体の所得を見る中で限界的に変えていったほうがいいのではないか、というのが一つ。
もう一つは、最近の年金の議論で新しい論点は、既裁定年金にどうやって踏み込むかということでございます。年金制度の中では、新規裁定の場合ですと、いろいろ議論の仕方も給付水準の議論があるわけですが、既裁定年金を減らすかどうかについては、法律上、いろいろ難しい問題も実はございます。課税であれば、全くそういう点は関係なしに、既裁定年金もある程度課税ベースに取り組むことができるというメリットがあるのではないかと考えております。
資産課税につきましては、すでに相続税・贈与税のかなり大きな改正が行われたわけでございますが、その中で、課税ベースの拡大のほうはやや取り残されたという印象を持っております。相続に関しましては、最近、新聞などでもいろいろ取り上げられておりまして、相続権を持たない配偶者にどうするかという議論もあれば、相続に伴う議論もあるようでございます。相続は、家庭内の介護とか看護とのつながりがあると言われていたわけでございますけれども、例えば介護保険のようにそれが社会的な制度になってきていることを考えますと、私的な相続というよりは、むしろこれを税収として社会化をして、そういう財源に充てるのも考え方としては考えやすいのではないかというように考えています。
いずれにしてもこれも税収規模の限界がございます。また、社会的な日本の家族観でありますとか、承継税制との関係で、これもそう簡単にすぐに動けるという状態ではないとは思いますけれども、こういう三つの課税対象を、いずれも可能性を探る、それから、一挙に社会保障財源としての税収を増やしていくことが難しければ、ある程度時間をかけることも考えざるを得ないのではないかと思っております。
前回、私はここでお話しいたしましたように、わが国では、税込みの社会保障給付と税抜きの社会保障給付という考え方がほとんど理解されていない、そういう制度をとってきたわけでございます。あたかも公務員に初めから課税分を引いて給与を渡すようなもの、そういう仕組みを日本の社会保障はとってまいりました。税制を使った再分配とかそういうことを考えますと、課税の扱いにした上で、所得税なり消費課税なりを使って給付を実質的に調整する、あるいは、それによって費用を政府が回収していく仕方をとることが、既裁定年金の課税ベースへの取り組みとかそういうことを考えますと、むしろそのほうが望ましいのではないかというふうに考えております。
年金制度の中での所得制限ですとか、ミーンズ・テストをかけるよりは、税制を使った毎年度のマージナルな調整をしていくという仕組みのほうが、社会保険制度としても望ましいと思いますので、そういう方向を特に税制との関係で考えていただきたいと思っております。
最後に、実は社会保障と税制というのは、同じようなことをしている場面がございまして、損金算入ですとか、所得控除によって、事実上、社会保障給付のかわりをしている面もございます。そういう面も含めて、全体として給付水準のあり方なり機会の利用可能性なりを考えておく必要があるだろうと思います。例えば、所得税における特別な人的控除、生命保険、個人年金控除、それから、18年からはかなり制限されますが、高齢者の利子非課税制度でありますとか、そういうものが所得税ではあったりする。法人税では、企業年金や何かへの拠出の損金算入制度がございますし、消費税では、社会保障関連のサービスに対しての非課税措置というものがございまして、こういうものを総体として見ていく必要があるのではないかと思っております。
あまり焦点は絞りませんで、社会保障と税制の関係につきまして、その見方と、税制を考える場合のやや原則的な話をさせていただきました。
〇委員
ありがとうございました。
大変有益なお話を伺えたと思います。まだ時間が若干残っておりますから、先生に幾つかご質問、あるいはご意見、ご批判があれば、どうぞ。
〇委員
「少子高齢化と税制」ということで、宮島先生で三人目だと思うのですが、お三方のお話を聞いていると、どうも公的年金等控除等々の、高齢者に対する、とりわけ社会保障給付に対する税制が甘すぎる。したがって、そこから幾らかでもいただくほうが、社会的合理性、あるいは、これからの社会に適合するのではないかという基本的なご趣旨だと私は理解しているわけです。
ただ、一つ伺いたいというか、意見も含めてですが、社会保障というものがある意味では社会契約であり、長期契約であり、国と個人との約束事である。したがって私の考えでは、一番重要なことは、約束したものはできるだけ守るということが基本になければいけない。どうやって守るかということを一生懸命考えて、その上でどうしようもないということであれば、それなりの説得をしていくほうがいいのではないか。これは、先生もおそらく同じご意見だと思うわけです。
ただ、今の先生のお話を伺っていると、社会保障、社会給付と税制ということを中心にお話ししていただいたわけでありますが、高齢者に対する課税、とりわけ所得課税という面から見ますと、公的年金等控除のほかに下にいろいろなものがくっついている。来年からは、おそらく高齢者の適用例が多いと思われる配偶者特別控除が廃止される。だるま落としの一番下のがポコンと落っこちる。その上には老年者控除、これもいろいろ批判のある制度でありますが、そんなものものっかっている。つまり、そういったものを削っていけば実効性はある程度上がるのではないか。公的年金等控除に直ちに手をつけるというアプローチばかりが選択肢ではないのではないか、ということが一つ。
それから今のお話で、在職老齢年金に関して、これはできるだけ緩くというか、所得は所得として認めたらいいのではないかというご趣旨だったわけですが、むしろ、高齢者、60歳なり65歳を過ぎた方が職があるということは、社会的に言って恵まれている部類ではないか。つまり、高齢者の一つの特徴は、有業者と無業者というのがはっきり分かれていることでありまして、そこで所得がある人には年金のほうはしばらく我慢してもらいたい。今おっしゃったように、給与所得控除との兼ね合いだけで在職老齢年金が議論されているわけですが、事業所得、不動産所得等々も入れて在職老齢年金を考え直すというアプローチはあり得ないのか。その二点を伺いたいと思います。
〇委員
公的年金等控除の話をいたしましたのは、これはむしろ税制上の全体をどうするかということにかかわることであると思います。私自身も実はかなり妥協的な話をしておりまして、公的年金のように非常に長期にわたるものについては支出税的な発想でやらざるを得ない面もある。そういたしますと、拠出の段階で控除していて、そして今、特別法人税が停止になっておりますけれども、その上に公的年金等控除という形で、企業年金のほうまで含めて事実上は非課税に近いような扱いにしていること自身が、税制の一貫性という点で問題がないかということでございまして、今の拠出控除というものを前提にするのであれば、むしろ出口はきちんとしめたほうがいい。特別法人税のように、今、利子が非常に低くて停止されているものもありますけれども、場合によっては、企業年金、今後のことを考えますと、そういうものの見直しにも、公的年金等控除を縮小するという方向が一つの契機になるのではないかと私は考えております。
それから、私の議論のいつも一番弱いところは、「所得税というのがまともな姿か?」と言われるとちょっと困るわけでございます。つまり、在職老齢年金にせよ、あるいは税による課税の給付水準の調整といっても、実を言うと、支払調書も出ていない所得が省かれているのにそれでいいのか、というようなことがございますので、事業所得も含め、それから、デュアル・インカム・タックスのような形で資産所得について、仮に将来、日本で給与所得を別扱いにするにしても、支払調書ぐらいはちゃんと出してほしいと。源泉取りっきりでおしまいというのではなくて、やはりある程度家計の所得なり個人の所得なりが少なくとも把握できるような体制でないと、なかなかこういう仕組みはうまく動かないので、今お話のように、そういう点の条件整備がないと、事実上、給与所得で調整するような仕組みとあまり違わないことになりかねないので、その点はご指摘のとおりだと思っております。
〇委員
ありがとうございました。
ほかにございますか。
〇委員
一つ質問ですが、社会保険の場合は保険料を払ってその保険料で給付する。税金の場合は税金として取って、それを公平に政策的に分配するというのはわかるのですが、3分の1補助というのもなんかよくわからない。それを2分の1に上げると。保険のほうで、お金が足りないから税金を使いますというこの考え方というのは、ミックスされると、何でもよくなってしまうのではないか。ここは、厳然と保険は保険、税金は税金というふうに分けておくべきだと思うのですが、そうじゃないんでしょうか。
〇委員
それに対してもクリアな答えは難しいですが、先ほど申しましたように、まず今回前提になっておりますのは、今の人口推計で、厚生年金の最終保険料を、例えば年収ベース20%には抑えたいというのが一つ前提になっている話でございます。先ほど申しましたように、現行のままですと、国庫負担3分の1ですと、中位推計で最終保険料が24.8%ということになるわけです。それから、そこで例えば2分の1にしたときには22.4%と見込まれております。ですから、あと2.4 %が給付のカット、こういう組み合せ。基準としてそれが客観性に耐えうるかどうかは別として、おおむね最終社会保険料率を厚生年金で年収の2割ぐらいを限度にするのが、労働費用的に許容できる部分ではないかというのが前提にはなっているということであります。
その場合、私がもう一つ申し上げていることは、社会保険と税制との関係は、どうもぐちゃぐちゃしてあまりはっきりしない。大して違わないのではないかという点があると思いますけれども、ただし、国庫負担のようなものは限度はきちんと考えておかなければいけないわけです。この限度を考えておきませんと、数年前ですが、ある医療保険で、高齢者医療は95%税で、5%社会保険料でと、そういうアイデアが出てくるということになりますので、私は限度は半分だろうと思います。それ以上にしてしまいますと、中身的にも、単になごりだけが残るというようなことになってしまうのではないか。ただ、それが客観的なり合理的な根拠があるかと言われますと、必ずしもはっきり言えませんが、それは半分でしょうと。
〇委員
先生、消費税の福祉目的税はどうお考えですか。これからここでまた議論しなければいけないし、我々としては、長い目で見てどうも否定的だから……。
〇委員
福祉目的税というのは、今でも優先的に使うということにはなっているということですね。問題は、消費税を完全に特別会計の税とする。例えば厚生保険特別会計なり国民年金特別会計なり、あるいは地方の場合ですと、老人保険の事業会計なり、介護保険の事業会計なりの特別会計の税にする、直入してしまう。それを財源として、一般会計のほうからの補助ですとか、地方で言いますと、繰り出しのようなことはしないという意味で、かなり厳格な意味での目的税というふうに考えることは、一つは、それが目的税の明確な考え方であろうと思っております。
ただ、そうなりますと、消費税率の話と社会保険の給付水準との間のリンクが明確になるという形で、どういうふうに働くことになるのか。そこの点は、正直言って私は必ずしもはっきりわからない点がございます。例えば、今の公的年金の物価スライド制を前提にする場合には、年金給付が物価上昇分だけ、1年遅れでありますけれども、保障されるということになりますと、消費税だけであった場合には、今のお話によりますと、年金受給者は、平均的に見れば年収の半分ぐらいは回避できる可能性がある。そういう点を考えますと、年金課税のように、もう少しターゲットを絞ったほうが、世代間の公平という点では意味があるのかなというふうには考えております。
ですから、目的税といったときに、優先順位があるというのではなくて、もっとはっきりとした制度設計といいますか、それがないと、税なのか一般財源なのかよくわからない状況での議論というのが、やや私も議論しにくい点がございます。
〇委員
はい、わかりました。ほかによろしゅうございますか。でも、福祉目的税といったときには、特会に入れるというのが前提でしょう。
〇委員
と思います。
〇委員
だから、その前提で議論してどうか、という議論をおそらくしなければいけないのでしょう。
どうぞ。
〇委員
非常に勉強になるお話をありがとうございました。
ちょっと質問させていただきたいのですが、2ページ目の7の相続税関係ですが、先生は先ほど相続税が重要になってくると言われて、私もそう思いますが、その中の[3]で、「遺産の相続税を通じる社会化」で「勤労意欲への阻害効果」となっております。これは、詳しくはどういうことを……。
〇委員
実は昨年、相続税の議論があったときに、経済の活性化に役立つという話が非常にあって、それが議論としては市民権を得たようですが、私はそれがあまり理解できなかった。むしろ私から見ると、親の世代から子供の世代への資産の移転をスムーズにするということは、いわば子供にとって、所与条件としての所得なり資産を与えられるわけで、そういう意味で、パラサイトシングルをこれ以上生み出すのではないかという懸念がだいぶございます。昔から、相続税や何かというのは帰属社会的な税だという言い方をされておりましたので、そういう点で申し上げたということでございます。
〇委員
今、所得税がかかると勤労意欲が落ちますから、先送りして相続税の段階で調整すると、これが普通の考え方ですが、先生が言われたのは、相続税で取ってしまうこと自体が、あるいは、早めに子供が財産をもらってしまうことが勤労意欲を阻害させてしまう、こういうご趣旨なわけですね。
〇委員
そういう面もあるのではないかということです。
〇委員
ありがとうございました。
〇委員
よろしゅうございますか。ちょうど時間になりましたので、これで終わりにしたいと思いますが、先生、どうもありがとうございました。大変参考になりました。
それでは、次回以降の予定を最後に申し上げまして、散会にいたしたいと思います。
次回の基礎小は4月18日。これは、時間の関係で午前中10時-12時に開催することになっております。いつもとはちょっと変則的になりますので、ご注意ください。中期答申に向けまして、「少子高齢化と税制」の問題を再度取り上げたいと考えています。
それから、4月15日、その前の火曜日ですが、金融小委員会を立ち上げようかと思います。ここでは、金融資産の一元化、あるいは金融財政そのものの議論をしたいと考えております。
それから、4月22日・火曜日、総会を開催いたしまして、4月に議論いたしました基礎小の問題を少し整理したいということも考えております。
少し頻度が多くなってきまして、恐縮でありますが、よろしくお願いします。
前触れに申し上げて、5月は13日と16日と20日ぐらいを候補日と考えております。これは三つやるという意味ではなくて、火、金の午後いずれか、二つぐらいとるようになりますかね。考えておりますので、追って正式にはご案内したいと思います。
今日は、どうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。