第25回基礎問題小委員会 議事録
平成15年4月1日開催
〇委員
それでは、時間になりました。第25回になりますが、基礎問題小委員会、開催いたします。
お手元にすでにお配りしてある議事のほかに、今日は、報告事項でございますが、不良債権問題をめぐっての最近のいろいろな税制が問題になっておりますので、それを事務局から説明していただきまして、今後の話につなげたいと考えております。メインは「少子高齢化と税制」、それから「環境問題と税制」、2つございます。おのおの外から、あるいは中からスピーカーを決めまして、意見を陳述していただきまして、その後議論と、こういう格好にいたしたいと考えております。
そういうわけで、不良債権問題がちょっと入りましたので、時間が延びる可能性がありますので、あらかじめ、その旨ご承知ください。ただ、ご予定がある方はどうぞ、当初の予定で結構でございますから、ご退室ください。
それで、最初のテーマは「少子高齢化と税制」でありまして、今日はお二人の先生から、いろいろこれまでの経緯を踏まえてお話をいただくことになっております。20分ずつご説明いただきまして、その後質疑をという格好にしたいと思います。
じゃ早速ですが、先生よろしくお願いします。
〇委員
今日は、「高齢社会における所得税のあり方」という問題について意見を述べるようにということでございますので、簡単に意見を申し述べさせていただきたいと思います。
お手元にレジュメのかわりの一枚紙がございますけれども、それを見ていただきますと、最初は「21世紀の税制」ということで、やや大上段なことが書いてございますけれども、これは要するに、21世紀になっても税制はタックス・ミックスであるべきである。つまり、所得と消費と、それから資産に対する租税の適切な組み合わせが好ましいということでありまして、これは特に新しいことを言おうとしているわけではなくて、安定的な税収の確保のためにも、私的経済活動に対する租税の持つ歪みを最小限にするためにも、それから納税者の不満を緩和するためにも、タックス・ミックスがよろしかろうということを言おうとしているわけでありますが、こういうタックス・ミックスの中において、所得税は基幹税としての地位を継続的に占めるべきだというふうに私自身は考えているわけであります。
ところが、どうやら、最近の統計を見ると、基幹税というのには、ちょっともの寂しい数字が出ているという感じもいたします。これも繰り返すまでもありませんけれども、所得税は担税力に即した税負担の配分という点で最も公平な租税でありますから、税制の中で基幹税としての位置を占めるべきである、そして、それによって富の偏在なり集中なりを多少とも抑制することができるのではないか、また社会の不安定化を防止することができるのではないかと考えているわけであります。
最近の統計を見ますと、国税の場合ですと、法人税を加えれば40%を超えておりますが、個人所得税だけですと30%を若干上回る程度、それから地方税については、都道府県では税収の15%余り、それから市町村では30%余りということで、いずれも、私としてはややもの足りないウェイトであると考えているわけです。
こういう所得税の税収中に占める割合が低くなってきたこと、これは、例えば消費税の税率を上げれば所得税のウェイトは自動的に下がるわけですから、そのこと自体は驚くには足りないわけでありますし、それから不況のために所得が減少しているということもあります。それから、たび重なる税率の引下げが行われたということも大きな理由でありますけれども、同時に、所得税が空洞化しているのではないかということであります。この問題意識は税調の報告書の中にも出てまいりまして、私も同感であります。
しかも、所得税の税収の中で源泉徴収分が非常に大きい。ということは、どうやら所得税が、実態は給与所得に対する租税の色彩を強めているのではないか。ということは、働く世代が所得税の圧倒的な部分を負担していることを意味している、ということになるのではないかと思うわけです。そこで、この空洞化の是正のための方策とあわせて、所得税の負担の働く世代への集中を防止するためにはどうしたらよいのであろうかということを考えてみたいと、こういうわけであります。
そこで、空洞化を是正するのにはどうしたらいいかということでありますが、その前に、2.として「所得税制度の類型」ということで、総合累進所得税と二元的所得税を主要な類型として挙げておきました。これも詳しくはお話しいたしませんが、ただ、私は、依然として総合累進所得税がザ・ベストであり、それから二元的所得税はセカンド・ベストであるというふうに考えております。
ただ、セカンド・ベストのほうが人気があるということはしばしばあり得ることですし、また、実際的な妥当性を持っているということもあり得ることですから、そういうことも含めて検討しなければならないと思いますけれども、ただ、今日はこの問題が主要なテーマではありませんので、3番目の「空洞化の解決」というところに移っていきたいと思います。
最初に「構造上の問題」ということを書いておきましたが、これは実現原則のことでありまして、所得課税は原則として実現した所得に対してだけ行われることになっているものですから、未実現の所得には課税されない。ただ、現在の不況のもとでは、主要な資産である土地と、それから株式の価格が下がっておりますから、実現原則をとっていてもそれほど不都合はないわけでありますが、ただ、場合によっては未実現の利得に課税したほうが適当だという場合もありますので、実現原則に対してどこまで例外を認めるべきかということについては、あるいは例外を認めたほうがいいかということについては、随時検討が必要であるというふうに考えております。
そのあとは所得控除のことでありますが、最近この一枚紙にあるように所得控除を分けることにしておりまして――しておりましてというのは、私の個人的な分類の仕方として、人的控除、それから担税力調節控除、社会保険料控除、保険奨励控除、寄附奨励控除、こういうふうに分けることにしているのですけれども、所得税の構造的な構成要素という観点から見ますと、おそらくは、人的控除の中の基礎控除と扶養控除、配偶者控除、この3つの、基礎的人的控除と呼ぶことにいたしますが、基礎的な3つの人的控除ですね。これは所得税の構造的な構成要素だと考えてよろしいと思いますが、それ以外のものは構造的な要素というふうには必ずしも言えないわけでありまして、どこまで認めるかは政策的な問題であると考えてよろしいのではないかと思います。
ただ私は、むやみに所得控除をやめろと言っているわけではありませんけれども、なるべく整理をしたほうがいいだろうとは考えております。
例えば人的控除でありますと、3つの基本的な控除のほかに若干の追加的な控除がありまして、それぞれは、考えてみますと、できるときには非常に人道的と申しますか、あるいは経済的な困難な状況にある人に対して救いの手を差し伸べるというような考え方でできているのですけれども、ただ、一般性を持った控除ではありませんので、できるだけ3つの控除のほかは整理したほうがいいだろうと考えております。
それから担税力調節控除、これは雑損控除と医療費控除のことでありますが、これも完全に廃止するというわけにはいかないと思っております。政策判断の問題としてはそういうことになるのではないかと思います。
それから次は社会保険料控除でありますが、これは自己責任ということを強調いたしますと、社会保険料、これも一種の貯蓄の形態であると考えることができます。ただ、強制貯蓄の要素は持っておりますけれども、というよりも強制貯蓄でありますけれども、しかし、貯蓄の一種だと考えることもできます。そうすると、普通の貯蓄であれば、貯蓄の段階では所得からは控除されない。また、そのリターンを受け取る場合には、元本に対しては課税されないけれども、リターンに対しては課税されるということになるわけであります。
ただ、これは強制的な貯蓄であるという要素を考えてみますと、完全に貯蓄と同じように取り扱うということはできませんけれども、原理的には貯蓄の一形態であるというふうに考えますと、租税政策はこれについてもかなりフレキシブルになり得るのではないかと思います。
それから保険奨励控除のうち、通常の生命保険料控除とか、あるいは損害保険料控除、これはなるべく整理したほうがよろしかろう、あるいは廃止してもよろしかろうと私は考えております。
それから、例えば確定拠出型の年金の支出、保険料ですね。あるいは企業型の確定給付型の年金の保険料、こういうものをどう取り扱うかということが問題になるわけですが、これも政策的な判断からして、そういう年金制度を奨励するという観点から、保険料の控除を認めるということは理由のあることだと思います。
そうすると、企業と従業員が半々ずつ拠出するという場合には、企業の拠出金、これは所得税の理論からすれば、拠出の段階で従業員の所得になる。これは経済的な利益の供与ということでフリンジ・ベネフィットになるのですけれども、しかし、課税されておりませんから、その部分は受け取る段階で元本も含めて完全に課税されるべきだということになるでありましょうし、それから従業員の保険料、これは支払いの段階で控除を認めれば、受け取りの段階では完全に課税されるべきだということになるであろうと思います。
それから寄附奨励控除。これは、NPOとかそういうものもだんだん定着してきて、この点は私は、公共サービスというものをpluralisticに見る必要があると考えておりまして、NPOとかその他の活動というのは国の手が届かないところにこういう活動が行われるということになるわけですから、そういう意味では国の公共役務と似通った性質を持っていると考えますので、相当程度認めてもよろしいのではないかと思います。
それから公的年金等控除についてはすでに申し上げたとおりでありますけれども、これは保険料の支払い段階で控除を認めて、そして受け取り段階ではフルに課税するというのがよろしいのではないかと考えております。と申しますのは、私は、所得控除のところで申し上げようかとも思ったのですが、あるいは給与所得控除のところでお話ししたほうがいいかもしれませんけれども、ちょっと給与所得控除のことをそれでは先にお話しすることにいたします。
給与所得控除は幾つかの理由に基づいて認められているわけですが、最大の論拠は、給与所得の概算経費控除だと理解されていることはご案内のとおりでありますけれども、その観点から見ますと、現在の給与所得控除はあまりにも金額が大き過ぎると考えているわけです。そこで、その相当部分をカットすることができるのではないかと思います。
他方では、私は、3つの基本的な人的控除の金額をもっと引き上げて、これは皆さんの意見と一致するかどうかわかりませんけれども、生活保護の金額とほぼ等しいところまで引き上げるべきではないかと考えております。その財源は、公的年金等控除の廃止とか、あるいは給与所得控除のカットとか、それから各種所得控除の整理合理化とか、そういうようなものによって賄うことにしたらどうかと考えているわけです。
ただ、給与所得控除というのは、これは実をいうと多くのサラリーマンが所得税について重税感とか不公平感を持っておりまして、そういうものを吸収したり緩和したりするという機能を実は持っているのではないかと思うわけです。そういう観点からいたしますと、これを全部廃止するというわけにはいかない、相当程度は残すべきであろうと思います。必要経費の分以外にも、相当程度残すべきであろう。
欧米の人が聞いたらちょっと驚くのではないかと思いますけれども、実はこれはバネのような機能を持っておりまして、いろんな装置でバネを使っているものがありますが、あのバネというのは実は装置が円滑に動くための役割を果たしているわけでありまして、給与所得控除というのもどうもそういうバネのような性質を持っているというところがあるのではないかと思うわけです。しかし、あまりにも大き過ぎるので、相当程度カットしてもいいのではないかということであります。
そこで私は、公的年金等控除も含めていろいろなものをカットする代わりに、増額された人的控除プラス標準控除に一元化するという形で処理したらどうかと考えているわけです。標準控除というのはアメリカのスタンダード・ディダクションのことでありまして、人的控除のほかにも相当数の所得控除を残すといたしますと、そういう所得控除のかわりに標準控除を利用することができるということにしておきますと、結局は、標準控除は第二の基礎控除というのと同じことになるわけでありますので、人的控除プラス標準控除にいろんなものを一元化するという形で、いろいろな控除をカットするのがよかろう、あるいは減額するのがよかろうと考えているわけです。
大体20分来てしまいましたけれども、もうちょっとよろしいでしょうか。
〇委員
どうぞ。
〇委員
それから退職所得。これは終身雇用制が一般的であった時代の制度でありまして、終身雇用制の社会には適合的であったと考えますけれども、終身雇用制が崩れつつある現在では、その制度としての妥当性を失いつつあるのではないかと思いますので、これは裁判などでも、5年定年制の事件とか10年定年制の事件などでしばしば問題になりましたけれども、根本的に検討し直す必要があるのではないかと考えているわけです。
それから地方所得税、つまり住民税でありますけれども、これは、私、先生や、こちらのある委員がおられた分権推進委員会に、意見を述べるようにと言われて1度行ったことがあるのですが、そのときに財政学者の書物をいろいろと行く前に読んだのですが、最近の若手の財政学者はほとんど全部が、地方税は比例税率にすべきだということを言っているのですね。これは要するに、地方団体単位で再分配をするということは適切ではなくて、国全体を単位として再分配をすべきだということが一つの論拠と、それから地方税というのは地方団体の提供する公共サービスの対価であるという考え方から、そういう考え方が出てくるわけですが、私もこの点は比例税率が、その勉強の結果いいと思いまして、そういう意見を述べたのです。現在は5%、10%、13%の累進税率ですが、例えば10%の比例税率が適当なのではないかと考えているわけです。
それから課税最低限は、地方公共団体のサービスの対価だと考えますと、おのずから所得税よりも低くていいということになると思います。
それから国際化と執行体制とかそういう問題は、時間がまいりましたので、また後で、ご質問があれば答えさせていただきます。
時間を少し超過いたしましてすみませんでした。
〇委員
ありがとうございました。
それでは、10分ぐらいの予定ですが、質疑応答、これから行いたいと思います。どうぞ、どなたでも結構ですから。――いらっしゃいませんか。
じゃつなぎに、私、質問を1つ。標準控除に集約してとおっしゃっているときに、具体的には何を落っことしていくのですか。
〇委員
雑損控除とか、医療費控除とか。
〇委員
そういうやつですね。保険だって……
〇委員
そうそう。
〇委員
その辺を落として。
〇委員
そうです。人的控除以外の残したもののかわりに標準控除を使うということになりますから。
〇委員
これは、そうすると金額的に30万とか40万とか固まった課税所得のね。
〇委員
そうなるでしょうね。
〇委員
それから配偶者控除については、配特を今度やめようとしてますけれども、配偶者控除そのものも、今の男女共同参画社会にふさわしくないという議論もございますが、先生のお考えでは、構造的な要素に入っているのだから残せというお考えのようですね。
〇委員
そうですね。私は、男女共同参画社会の推進に全く賛成ですけれども、それは家で働くか、それとも社会に出て働くか、これは選択の問題ですからね。どちらかを特に奨励するという問題でもありませんので、まあそういうことでいいのではないかと思っているわけです。
ただ、税調の報告書を見て、配偶者控除についてはやめたほうがいいのではないかという意見がどうやら非常に強いらしいということは存じております。
〇委員
わかりました。
ほかにどうぞ。
〇委員
所得税の基幹税としての地位を復活させるために、いろいろ控除を整理したほうがいいというご意見、私、全く賛成なのですが、その際、先生おっしゃった3つの基礎控除をもっと引き上げて、生活保護とほぼ等しい水準まですると。これはどういう理由によるものですか。
それからもう一点ですけれども、いろんな控除を整理して、課税対象となる所得をできるだけ広げるということだろうと思うのですが、その場合、累進税率はできるだけ低くしたほうがいいのではないかという、そういう意見がありますね。この点はどうお考えですか。
〇委員
それは私もそう思います。それで、二元的所得税というのはいわば資産性所得について比例税率を適用するということですね。私、これは年来の考え方なのですけれども、所得税は資産性所得も勤労所得も含めてすべて比例税率で、一本の比例税率で課税する。そのかわり、累進的な一般資産税、これと組み合わせる形で一本の比例税率にするという考えを持っているのですけれども、ただ、それが実現できるとは思えない。思えないというか、本当は実現するといいと思うのですが、ちょっとそれはなかなか難しいところがあるわけですが、税率自体は、下げることには反対ではありませんけれども、現在、大体50%ですね。国税と地方税を合わせて。まあ50%がいい線ではないかと私は思っております。45%という考え方もあるかもしれませんが、ドイツなんかでも、憲法裁判所で問題になっていましてね。50%なら適当なのではないかと私は思ってます。
〇委員
基礎控除を引き上げるのは……。
〇委員
基礎控除を引き上げるのは、自分は働いていて、お隣は生活保護を受けていて、そして生活保護費と同じ程度の所得しかないのに所得税を払っているとか、そういうのはちょっと不公平なことではないかということがあります。それから、やはり法律学者ですから憲法25条のことは当然考えるわけでありまして、憲法25条ですと、健康で文化的な最低限度の生活を保障するということがありますので、生活保護費というのは、健康で文化的な最低限度の生活を保障するのに必要な金額の一つのメルクマールなのではないか、現行法上使われているメルクマールなのではないか。それがいわゆる、アメリカで言われているpoverty line、貧困線ということにもなるのではないかと考えているわけです。
〇委員
ありがとうございました。
ほかにどうぞ。
〇委員
先生のおっしゃった基幹税としての所得税の機能回復というのは大賛成で、小さいながらもステップを踏み始めたところだと思うのですね。それで、現実的に考えた場合に、所得税の機能回復ということでこの中にいろいろなことを書いていらっしゃいますけれども、あわせて、所得税自体の機能回復だけを突出した形でやるということは実に大変難しい話なのですね。
同時に、消費税のことがどうせこれから具体的な日程に上ってくるでしょう。どの政権か知らないけれども。そうすると、ともすれば、消費税をかなり大胆に上げるという話になると、直間比率論で、また所得税を下げるなんてあほなことはこれから絶対出ない発想だけれども、それにしても、2つ、片方が機能回復と消費税の拡大というのはなかなか政治的に難しいですよね。
〇委員
そうですね。
〇委員
今日は先生から所得税の話をお聞きして、ほとんど総論として賛成なのだけれども、全体として、税収というのが国家財政の少なくとも7~8割はカバーするのだという当たり前のことを実現するために、どのぐらいの時間とあれを考えていらっしゃいます? 現実的に。
〇委員
今おっしゃった点ですが、今日は所得税のことを話すということになっておりましたので、消費税のことは触れなかったのですが、私は、消費税は着実に税率を引き上げていったほうがいいのではないかと思います。そうした場合に、ウェイトの上では所得税のウェイトは若干ずつ下がっていくということはありますが、それはやむを得ないことでして、ただ、所得税自体をきちんとした姿にしておくということは、消費税の割合が上がっていくのに応じて所得税の割合が相対的に下がっていくにしても、きちんとした姿にしておくのは好ましいことだし、きちんとした姿にしておけば、消費税ほどではないにしても、所得税の金額、税収、これは上がっていくはずですし、特に景気が回復すればもっと上がってくることになると思います。
それで、こんなに財政赤字が増えてしまって、本当に危機的と呼んでもいいような状態だと思いますけれども、これはみんなが努力して工夫して、とにかくそれを着実に穴埋めしていかなければいけないので、やはり政治家の皆さんに何よりもその点の認識を持ってもらうということが大変に重要なことではないかと思っております。
〇委員
あと、ご発言のご希望は4人ですね。あとお待ちの方もいらっしゃいますから。
〇委員
先ほどの委員のご意見、全く同感でございまして、所得税だけではなくて、消費税と一緒に本当は議論をしていくべき話だと思いますが、幸か不幸か、今はその環境にない。そういう意味におきましては、現時点においては、極力、所得税、空洞化的現象を排除して、できるだけ目いっぱいまで負担を進めていく。それによって、やはり次は消費税だという流れができてくるという面もあると思いますので、現時点では、このいろんな控除の諸問題を取り上げるのがいいだろうと思うわけでございます。
この控除の問題について、2点につきまして、ちょっとご意見をお教えいただきたいと思いますが、社会保険料控除、これはある意味では年金税であり国民健康保険税でございます。収入の何%とかいうことで取る。これはある意味で地方税と一緒でございますから、所得税として強制的だということはあるにしても、一種の税であると。所得税は自分では自分を控除しないわけですから、そういう性格のものとしてとらえても、所得税上控除しなくてもいいのではないかという見方はないのかどうかという点が1つでございます。
それから給与所得控除でございますけれども、お話のように、概算経費としての性格と不公平感と関連した性格ということでございますけれども、そう言いつつも、結局、事業者というのはほとんど、どんどん給与所得化してきている。雇用化してきている。雇用労働者のほうが圧倒的にもうどんどん増えてきている。こういう状態になってきている社会状態では、もはや不公平感的なものというのはむしろもうだんだんその要素が小さくなってきているという面もあるのではないか。そういう意味におきましては、むしろ概算経費控除的な性格を徹底させて実額控除的なものに向けていくということは、なかなか執行上は難しい面もあると思いますけれども、そういう方向はいかがなものか、ご意見、お教えいただけたらと思います。
その2点でございます。
〇委員
じゃすみません。簡単にお願いします。
〇委員
第1の点はおっしゃるとおりだと思います。それから第2の点も、そういう方向に進んでいくべきだというふうに私も考えております。
〇委員
非常に簡単過ぎますね(笑)。
〇委員
簡単にと言ったから、簡単に(笑)。
〇委員
住民税の比例税率の問題ですけれども、私もこれは、税源配分の有力な材料で、所得課税のもので、そういう意味で財源調整の必要性が少なくなると、軽く済むという意味で、比例税率化、基本的には賛成なのですが、最近、地方行政の福祉の分野の行政というのは老人なりハンディキャップト対策、要するに現物給付的な仕事というのはだんだん増えてきておるわけですね。それで、そこいらは年金と違って、所得再調整では直接はないのですけれども、やはりミーンズテストは何とかというような話があるぐらいなら、むしろ若干軽い比例税率は残しておいてもしかるべきではないかと、こういうふうに思うのですが。
〇委員
比例税率を残すのですか。
〇委員
それはやはり政策判断の問題だと思いますね。累進税率を完全に排除するかどうかということは、今おっしゃったような点も加味して判断すべきだと思います。
〇委員
ご説明を省かれた国際化と執行体制の話、これを簡単にお教えいただければ。
〇委員
これは私の持論なのですけれども、国際化が進みますと、どんどん金融資産などは外国に逃げて行ってつかまえにくいということがあります。納税者番号制度を日本はまだ持ってませんけれども、採用することにいずれはなる。ヨーロッパがヨーロピアンナンバーというのを作れば、私は、日本も当然に作ることになると思います。ヨーロッパを待たなくても作ることになると思いますけれども。国際納税者番号は要するに、例えば12345という番号が国内の納税者番号としてあるとしますと、日本は、国際番号として使う場合には081という3桁を頭につける。アメリカだと001という番号をつけて、そして、例えば日本の個人なり法人なりがアメリカの金融機関にお金を預けて利子を得ているという場合には、その081何番という人が幾らの利子所得を得たかということがわかりますね。それを条約に基づく情報交換で情報を日本が求めて、いろいろと情報を入手するということが考えられるのではないか。だから、国際化の進展とともに、納税者番号が一国単位で使われるという時代はすでに過ぎて、国際納税者番号の時代に入っていくべきであるというのが私の考え方なのです。納税者番号制度についての。
〇委員
フィージビリティはどうですか。
〇委員
まず、国内でできなければ話になりませんね。
〇委員
ええ、なりませんしね。国際的にリンケージするのも難しいでしょうね。それができたらいいと思いますよ。
〇委員
国内にできれば、あとは情報交換ですから。
〇委員
だってイギリスはないし、ドイツはないし、ないところいっぱいありますよ。
〇委員
だけど、ヨーロッパは一つのマーケットを作ろうとしているわけでしょう。そうすると、ヨーロピアンカードとかヨーロピアンナンバーがないとやっていけないのではないかという。
〇委員
わかりました。
どうぞ。
〇委員
先ほど委員が質問しかけたままになっていたところで、生活保護費ぐらいのところだというふうな、控除の一元化というのを大体のレベルがそうだというふうにおっしゃっていたのですけれども、生活保護費、現在の控除より多くなるのか少なくなるのかよくわからないのと、生活保護費というものの根拠というのがよくわからないのですね。控除のレベルがなぜそこ、生活保護費ぐらいまでと。その生活保護費というのはどういう根拠から金額が導き出されるのかよくわからない。
〇委員
私、実は半年ほど前に調べたのですけれども、ちょっと金額が今わからなくなっているので、資料を持ってまいりませんでしたので、すみませんけれども、また調べてみるようにいたします。この前調べたときは……
〇委員
生活保護費の水準ですか。
〇委員
ええ。
〇委員
それは事務局に聞けばわかるのではないですか。後でまた出していただけばいいのではないですか。今日は先生がお持ちでないならば。今200万台でしょう。委員、後で事務局に、次回にでも報告してもらうということでよろしゅうございますか。
すみません。次の次のスピーカーの先生が登場されてしまったけれども、まだもう一人前にいますので(笑)。
先生、ありがとうございました。
では先生、20分ほどでお願いします。
〇委員
私は少し広めに、「高齢化社会を支える租税制度を求めて」ということで、高齢化社会を支える租税制度全般についてお話をさせていただくということになっております。
お手元にレジュメがいっているかと思いますが、高齢化社会における、まず政府の役割、どんなことが政府の役割として考えられるかということでございますが、1番目に、まず事実確認ですけれども、私の考えでは、扶養しなければならない人口というのはまたもとに戻るのだという考え方です。
お手元の資料のほうの1ページ目をご覧いただきたいと思いますけれども、これは書き方によっていろいろ違うのですが、従属人口、つまり扶養しなければならない人口というのは、これまでも過去は非常に高くて、私の生きてきた50年だけがハッピーな時代だったということですね。これは20世紀が人口爆発の時代であって、日本人はこの歴史の中で5億人しか登場しておりませんけれども、そのうちの1億~2億人が20世紀に生きていたために、突然、生産人口が非常に多いというハッピーな時代を迎えた。しかし、幸福はいつまでも続かないということだろうと思います。元に戻るのだということより、ちょっと高めになるということになりますが、これはグラフの書き方でいかようにもなるところでございます。
ただ、どこが違うのかというと、過去の歴史は、幼年人口といいますか子どもたちを扶養していかなければならないという時代だったのが、今度は逆転して、65歳以上の人を中心に扶養していかなければならないという時代になる。どっちが社会全体として負担が高いか、大変かというと、私は、過去のほうが大変だったのではないかと。これは14歳までの子どもたちは社会的に教育をしなければなりませんけれども、65歳以上の人たちは教育をする必要もないし、消費能力も衰えていきますから、そう驚くべきことにはならないのではないかというのが私の考え方です。
いずれにしても、そういうふうに扶養していかなければならない人口が過去の50年間ぐらいに比べて増加していくということは間違いないわけですけれども、それを社会全体として扶養していくわけですので、何も政府だけが扶養していくわけではなくて、政府と市場とそれから共同体、家族とかコミュニティとかいうような共同体でどの程度分担して負担していくのかという問題だと思います。姥捨てをしない限りは、必ず社会全体で負担していくことになるわけです。
そうした扶養の義務を政府がどの程度責任を持つかということについて、3つの類型が考えられるのではないかと思います。これはほぼ、社会保障政策をおやりの方はご存じのとおり、エスピン・アンデルセンのモデルに従っておりまして、一番最初の最低限責任、これはエスピン・アンデルセンの言葉を使うと自由主義福祉レジームと言われているやつですね。福祉については、政府は最低限の責任しか持たないということです。基本的には市場に任せ、政府は最低限の責任しか持たない。それからもう一つのタイプは補完的責任。これは保守主義的福祉レジームないしはコーポラティズム的福祉レジームと言ったほうがいいかと思いますけれども、そうしたレジームが福祉的責任ということになります。これは市場や慈善組織に福祉を委ねますけれども、個人のニーズが満たされなかった場合には政府が補完を責任を持って行うという補完的な責任を果たすということです。それからもう一つのタイプは、政府は個人の福祉ないしは個人のニーズに対して最大限責任を持っていくという、その3つのタイプが考えられるのではないかと思います。
福祉を行う場合に、脱市場化というのでしょうか、つまり、市場から所得を得るということに依存しなくてもいいような程度というのが一つの指標になるわけですが、エスピン・アンデルセンはそれに基づいて分類していたのですけれども、最近では、これに脱家族化、ジェンダーの批判を反映して、家族にも依存しないで、サービス給付で行うという程度もメルクマールに入れています。これでいくと日本は非常に低くて、GDP比に占める家族サービスの割合というのは0.22です。アメリカは0.21ですから、最低限責任を持っている国と同じ程度。それからスウェーデンは1.85。非常に大きいわけですね。ここで補完的責任と分類している大陸ヨーロッパ諸国は0.37ですから、それがちょうど中間ぐらいになっているということになります。
最低限責任というものの例としてはアメリカ、それから補完的責任としてはドイツ、フランスが中心で、ここでは職業別ないしは所得比例的な給付、スタンダード保障と言ったほうがいいでしょうか。最低限保障だけではなくて、スタンダードを保障するために所得比例給付が多くなっている。それから最大限責任というのはスウェーデン、デンマーク、ノルウェーという北欧諸国があるのではないか。
そういう3つの分類をしておいた上で、家族の機能が非常に衰えているということを考えれば、政府責任というのを拡大していかざるを得ないのではないか。したがって、高齢社会に向かっては増税型の税制改革を実施せざるを得ないと考えています。この政府責任というのは、先ほど言いました脱家族と脱市場ということを考えれば、現金給付とサービス給付、この2つをセットで政府責任を果たしていくことが必要になるのではないかと思います。
以上のような考え方を前提にした上で、「租税負担の水準と構造」を見てみますと、お手元の資料のほうの2ページ目に「スウェーデンの世代別租税負担」というのを書いてありますが、これはちょっと後で説明させていただきますので、その次のページの「国民負担率の内訳の国際比較」というのを見ていただければと思います。
これを見ていただきますと、先ほど申しました最低限責任政府であるアメリカは、国民負担率が35.9%になっております。日本はそのアメリカとほぼ同じですから、36.1%。つまり、最低限責任政府と同じぐらいの国民負担率になっているということですね。それから2番目のタイプの補完的責任をとっているドイツ、フランスの特色は、国民負担率が56.5%、それから64.8%というふうに中間程度で高いのと、著しい特色は、補完的責任をとることを反映して社会保障負担の比率が多いということです。租税負担に比べてですが、租税負担が31.2%であるドイツは25.3%の社会保障負担、それからフランスは25.0%というふうに社会保障負担の比率が非常に多くなっているということですね。
日本を見ていただきますと、日本は国民負担率でいうと最低限責任政府に近い、低い負担率なのですけれども、租税負担率が低くて、社会保障負担の比率が非常に高い。つまり、ここでいうと補完責任国家に、社会保障負担国家のような構造になっております。1ページ目の下、年金国家になってますが、年金者国家ですね。私の言葉を使えば、土木事業国家から、日本はいよいよpensionerstate、年金者国家に移りつつあるというのが日本の国家の姿ではないかと思います。
中身を見ていただきますと、レジュメの2ページ目に移っていただいて、消費課税について言いますと、これは最低限責任政府であるアメリカと比べていただきますと、7.0%いっておりますので、消費課税についてはアメリカよりも高くなっている。租税構造上の特色というのは個人所得課税の低さにあるのではないか。6.1%というのはいかにも異常です。
フランスのように、直接税、つまり間接税中心主義だと言われている国でも11.2%ですので、その半分程度しか個人所得課税の比重がないというのはいかにも異常だと思います。最大限国家であるスウェーデンというのは、所得税だけで27.0%ですから、日本の租税負担率、国税、地方税合わせてもかなわないという状態になっているわけですね。
そういう意味で個人所得課税に焦点を当てるべきだというふうに思いますけれども、3番目の「個人所得課税の改革」というところを見ていただきますと、「個人所得課税のウェイトの低さは、世代内の不公平を助長している。しかも、世代間の不公平是正が進まない要因にもなっている」。
日本の所得税の特色というのは、明治以来の分類所得税の弊害をそのまま維持している。除去していないと。第一種、第二種、第三種というふうにやってきた分類所得税の弊害というものをまだ清算できていないのではないか。分類所得税の弊害というのは何かというと、資産性所得を合算しない。資産性所得などと言ったほうがいいかもしれませんが、資産性所得などの非合算と、それから特定収入と結びついた特定控除を設けているということですね。この2つが世代間ないしは世代内の不公平を拡大しているのではないかということです。
というのは、お手元の4ページ目で、控除の実態を高齢者と現役世代と比較しているところですが、その後、7ページ目あたりから見ていただきますと、世帯別に見てみると、高年齢者のところで資産性所得というのはかなり出ているということですね。つまり、2ページ目の(3)になりますが、資産性所得の分離課税、それから公的年金等の控除、これは先ほど言いました特定収入と結びついた特別控除の一つになるわけですけれども、それから老年者控除、過大な退職所得控除。過大な退職所得控除も、特定収入と結びついた特別控除ということになるわけですね。老年者控除は課税ベースの話になってきますが、これが世代内及び世代間の不公平を助長しているのではないか。
二元的所得税を採用しているスウェーデンでも、スウェーデンは勤労所得については地方が比例所得税でかけ、その上にプラスアルファで国が、これも比例的な所得税が原則ですけれども、かけていて、合わせ技で、2つ合わせると累進性だと言われるわけですが、そうであるとすると、先ほど先生もお話しになりましたように、資産性所得に対しては純資産税がちゃんと設けられているわけですね。1.75だったかな、純資産税が存在しているということを考えると、合わせ技で考えれば、資産性所得に対しても累進的な所得を求めているということが言えるのではないかと思います。
フランスでは、社会保障税、これは社会保障基金の財源をサポートするために、もう一つ、債務の保障税もこれに最近は付け加わっておりますけれども、社会保障基金に繰り入れるための目的税を作っているわけですが、ここも社会保障負担では賃金負担にしか課税されずに、世代間の不公平を助長するから、資産性所得を加えることによって世代間の公平を実現しようということで入れておりますので、こうした是正というのが重要なのではないかと思います。
それから4番目の「社会保障負担の改革」ということですけれども、日本では、付加価値税を社会保険、例えば基礎年金の財源にするなどという議論が盛んですけれども、私の知る限りでは、ヨーロッパでは、付加価値税が発達しているにもかかわらず、付加価値税を社会保障の負担と結びつけるという議論はないというか、私が見てないのかもしれませんが、あまりないと考えています。
ヨーロッパでは、賃金所得のみに負担が求められるような社会負担というのが逆進的で、そして世代間の不公平を助長しているということから、資産性所得を課税対象に加えていくということがむしろ議論されていると了解しております。
先ほど見ていただきましたように、日本は社会保障負担と租税負担との相対的な比率でいうと、圧倒的に社会保障負担が高い国になっているわけで、消費税で社会保障のほうの負担を賄うようなことをするよりも、租税負担の充実ということを考えていく、そういう政策目的が必要なのではないかと思います。
3ページ目をちょっとおめくりいただきたいと思いますが、租税負担と社会保障負担との違いについてですけれども、租税というのは強制性、強制的にとられてしまう。それからもう一つは無償性、つまり、ただでとられる。それからもう一つは収入を目的にしている。この3つがそろわないと租税とは言わないというのが普通の考え方です。
無償性というのは、反対給付の請求権がないことを意味しますので、税金を納めたから、特別の何か給付をくれということを請求する権限がないということを意味します。社会保障負担というのは、これは民間の保険と違って、リスク比例で負担しておりませんので、これは保険料とは言えないわけですけれども、目的税とも言えない。なぜ言えないのかというと、反対給付の請求権を持つからですね。逆にいえば、社会保障負担を納めていない人は給付から排除されてしまうということを意味しますけれども、そういう意味からいえば、無償性という点で、これは租税ではないという点を明確にしておく必要があるのではないかと思います。
それで、先ほど言いましたようなことで言いますと、資料の2ページ目、「スウェーデンの世代別租税負担」にちょっと戻っていただければと思いますが、これは上にすべての公共サービスが書いてあります。下に租税負担が書いてあります。子どもたちは税金をまず納めておりません。お年寄りを見ていただきますと、お年寄りは直接税も納めているし間接税も納めておりますし社会保障負担も納めているということです。
そしてスウェーデンの場合には、まず社会保障負担のほう、つまり保険料のほうですが、これは細かいことはありますけれども、個人負担はないとお考えいただければいいと思います。つまり、全部が雇用主負担だと考えていただいて構わない。ちょっと最近の改革でやりとりのバーターがありましたので個人負担がありますが、ちょっと細かいことは抜きにしていただくと、原則として、支払い賃金として企業が負担する。受け取ったときには、これは賃金所得だとみなされますので、賃金所得と全く同じ課税方法で所得税がかかってきます。これは所得税がかかってくるだけではありません。賃金所得を得たのですから、賃金所得を得た限りは社会保障負担をしてもらわなければならない。すべての賃金というのは社会保障負担をしているわけですから、社会保障負担をしてもらうということが明確な違いです。
社会保障負担をどういうふうに負担しているのかといいますと、まず現役世代は、企業に雇われている場合には、企業主が社会保障負担を支払い賃金の38.97%支払います。これは全部合わせてです。年金とか医療保険とか全部合わせて38.97%です。自営業者の場合には、これは支払い賃金というわけにはいきませんので、34.19%と、やや低くなります。そのほかに、社会保障給付を受け取る資格のない賃金所得、これに対して22.2%で特別給与税というのがかけられます。
社会保障給付を受け取る資格のない賃金所得とは何かというと、これは年金の所得のことです。年金はなぜ社会保障給付を受け取る資格がないのかというと、もちろん、それを払ったからといって年金給付をもらえるわけではないわけですね。そのほか、スウェーデンの場合には、医療保険もそのほかの社会保険もすべて賃金の代替、病気で賃金を得られないから、そのかわりとして支払うというのが原則です。
医療について、医療サービスは全部地方政府が公共サービスとして供給していますから、保険とは無関係です。したがって、社会保障基金で行われているものはすべて賃金の代替ですから、年金を失う、年金所得という賃金所得を失うということはありませんので、社会保障給付が発生しないわけですね。発生しないのだけれども負担してもらわなければならないということで、これは社会保障負担の税部分と言われておりますが、そこを22.2%負担するということになっています。つまり、スウェーデンの場合には税を厳格に定義いたしますので、社会保障負担、つまりコントリビューションと区別して、なぜ特別給与税と言うかというと、無償性ですね。その社会保障負担を払っても対価がないということでやっているということです。
したがって、見ていただければわかりますけれども、老齢所得も、スウェーデンの世代別の租税負担を見ていただきますと、高齢者も社会保障費用をちゃんと負担している。これは22.2%、給与税を負担しているということと私は了解しています。
私、急に発表させられたので、今手元にある資料で、私が調査してきた資料の範囲内で説明していますけれども、その範囲内では私の了解しているところで、後で、私の言ったことに間違いがあれば訂正していただくという条件つきで、今日はそういうふうに説明させていただければと思います。
したがって、保険料と租税というのはそこで全く違うのだと。基礎年金というのを消費税にするということは、年金の社会配当金化をしてしまって、つまり租税化してしまうということを意味するのではないかということで、私はあまり賛成できないと考えています。
5番目で3つの政府体系というところでは、国税、地方税、社会保障負担との区別は、先ほど言いました税と負担、コントリビューションというのは無償性があるかないかということで区別すべきですし、それから国税、地方税、社会保障負担というのは納める相手、納める政府が違う。中央政府に納めれば国税、地方政府に納めれば地方税、社会保障負担については社会保障負担。それぞれ地方政府がサービス給付、それから社会保障基金が現金給付をする、ミニマムを中央政府が保障するという役割を、責任を明確化した上できちっとした負担の区分けをすべきではないかと思います。
ちょっと大きな表題をいただいたもので、雑駁な議論になって、大急ぎで話したのでわかりにくかったかもしれませんが、時間でございますので。
〇委員
どうもありがとうございました。大変興味あるお話をいただきました。
いろいろご質問あろうと思いますが、10分ほど時間を割いてと思いますが、どうぞ。
〇委員
公的年金ですけれども、今行われている議論は、納めるときに控除があって、受け取るときに他の所得と同じように課税を増やしていくと、控除を少なくしていくということだと思うのですが、これは逆のやり方というのはないものですか。つまり、納めるときは控除は特に認めないと。しかし、受け取る段階では、いろんな個人差があるし、例えば他に所得のある人は別として、そうでない人もたくさんいるわけですよね。負担感が非常に大きくて、それを例えば、今先生は否定されているけれども、消費税で賄うといういわば逆進性と、それからこれのダブルパンチというようなことがありますから、そういう逆のやり方というのは外国では例があるかないか、あるいはそういう考え方はどんなものでしょうかということを教えていただければと思います。
〇委員
これはもちろんございます。所得税的な考え方で調整するのか、支出税的な関係で調整するのかということによって2つの考え方があるだろうと思いますが、私は、これは趣味の問題かもしれませんが、受け取ったときに調整したほうがいいのではないかと思います。
先ほど言いましたように、スウェーデンとかフランスの場合には、全部個人というか、原則として全部雇用主負担だということで、これがすべて損金算入になっているわけですが、そのせいがあるのかもしれませんが、どうも私は受取り段階で課税したほうがいいのではないかと思います。もちろんほかの方法もあるかと思います。
〇委員
今のお話を軸に、日本についての将来の所得税の充実といいますか、シナリオが幾つかちょっと思い浮かんでいまして、その理解が、お話しいただいたものと合っているかどうかなのですけれども、まず勤労世代における所得税の充実という点が1つありまして、おっしゃるように、日本における、所得税の比率がまだ非常に低いと。そのときに、どういうシナリオが1つあるかということ。
それから高齢者においては、公的給付は賃金の一部だととらえると、これを年金部分をセットにした所得税の改革みたいなものがあり得るとイメージしていいか。つまり、公的年金等控除とかいろんなものが日本にもくっついているわけですよね。その結果、かなりキャッシュフローとしては高齢者にはお金が残りやすい構造になっているから、そこの部分についても、もっとフラットなといいますか、その控除があまり大きくない形の、所得税に似たようなものを高齢世代には導入するというのは何かイメージできたのですけれども、勤労世代における場合はどうするのかなというのがちょっと1つ。
それから2番目に、日本の場合は貯蓄が非常に高齢世帯に偏っていると。資産が過去の積み上げ的なもので偏っていると。これは資産性と言っていいかどうかが非常に難しいところだとは思うのですけれども、ここに資産性課税をするというのはどういうことを言っているのかというのがちょっとお話のところでつかみにくかったので、もし何かあればお願いします。
〇委員
じゃ手短にお願いします。
〇委員
まず1点目は、勤労世代についても、私の場合には、手当、さまざまな児童手当とかセットでの上ですけれども、基本的には基礎控除だけでいいのではないかと。
〇委員
もっととるということですよね。
〇委員
ええ。とるというのは変だけど、あまり税金で社会保障政策を打たないほうがいいのではないかという意味です。だから、手当で打ちましょうと。税金はとっておいて、手当を打ったほうが貧しい人にも非常にやさしい。
〇委員
端的にいうと、公的年金の控除を下げてしまうということも考えられますか。それは考えない?
〇委員
段階的には徐々に下げていくというようなことも考えられるかもしれませんが、公的年金というのは、今の話は……
〇委員
社会保険料控除がかかってますよね。
〇委員
そちらの控除の話ですよね。
〇委員
そうです。それも下げてしまう?
〇委員
それはちょっと難しいのです。それはスウェーデンでも今一部、個人負担をつくったときに、これはもともと支払い賃金で課税していたのだからということで、原則として、個人のほうで支払いなさいというと、そこで所得税の対象になってしまうわけですよね。そこで控除をさまざま導入して配慮しておりますので、日本は50%、50%ですので、私はこちらのほうがいいのではないかと。というか、後ろでというか、受け取った段階で課税するということを前提にした上でということですね。
〇委員
次の先生がお待ちなので、あと3人、短く。
〇委員
じゃ簡単に。今世の中の議論としては、基礎年金の財源を消費税とするというところまではいってないと思うのですね。ただ、年金改正法の附則では、基礎年金の控除部分を3分の1から2分の1にするという方向をはっきりうたっているわけです。この2分の1論についてはどうお考えなのですか。
〇委員
途中経過の話ですので、段階的に社会福祉を支えるようなものを充実していけば、そこの部分は租税負担を引き上げるなり何かしていっても構わないというのが原則として私の考え方ですので、今のお話は、国庫が負担するということを前提にした上で、そこの財源として、僕は目的税化するというのはあまりよくないと思いますが、何らかの形で税を当てざるを得ないと思います。
〇委員
久方ぶりに原理原則的なお話をお伺いして参考になったのですが、実は今日、諮問会議で社会保障制度の論点整理ということをやることになっておりまして、その点で少し参考のためにご質問させていただきたいのですが、1つは、先生は、潜在的な、国民負担率でも結構ですが、政府のサイズというものをどういうぐあいにお考えになっていらっしゃるのか。これがやはり固まりませんとなかなか具体的なイメージが描けないということだろうと思います。
それから政府のサイズが決まりましても、ここで土木国家から年金者国家ということをおっしゃったわけですが、そこの中身を一体どういう具合にお考えになっていらっしゃるのか。これまた非常に大きなテーマであります。
それから社会保障制度にある位置づけを与えた場合に、年金、医療、介護、これをどういう具合に考えていらっしゃるのか。ここがやはり、高齢、少子化という現実の中では非常に大きな所得給付なのか、あるいは現物給付なのかと、こういうような状況になりますので、このあたりのすみ分け方というか、そういう中身をどう考えるか。そしてさらには、負担の面では、これは税金と保険料と、それから自己負担の部分、受益者的な形での自己負担の部分、ここらあたりをどういう具合に組み合わせるか。
原理的に無償性ということを中心にして整理していただいたのですが、現実には、ご承知のとおり、基礎年金の部分と比例報酬の部分があって、税と保険料がミックスされておるわけです。今後おそらく、給付の引下げと負担の増大という組み合わせを我々は選ばざるを得ない状況の中で、この組み合わせ、どういうぐあいに考えていくのか、これまた非常に大きなテーマではないかと思います。
しかも、基礎的な年金の部分と比例報酬をどのようにデザインの中で織り込むかということ、これは各国とも極めて違ったイメージの中で解決しておるというのも現実でございますので、今いろいろご質問させていただきましたけれども、先生がイメージされているそういう具体的な日本の姿というものがございましたら、イメージで結構でございますから、お話をいただきたい。
〇委員
すごい大きな問題だからお答えにくいと思うけれども、的確な……。
〇委員
サイズを国民が選べるようなシステムをつくるべきではないかというのが私の考え方です。私の趣味としては、大きいほうがいいというのが私の趣味なのですけれども、大きくするのか小さくするのかということを国民が選べるように。
それからもう一つ、お話のように、年金、医療、介護なども、現金の、つまり、お年寄りの生活を面倒見るのに年金という所得のトランスファーでいくのか、それともサービスで給付でいくのかという問題がありますから、これもちゃんと責任の所在がわかるようにした形で、自分が今支払った負担が現金給付にいくのか、それともサービス給付にいくのかということをわかるようなシステムにしようというのが私の考え方です。
年金とか医療とか介護などについては、現金給付部分というのはすべて失われた賃金の代替保障だというふうに明確にすべきだと。つまり、医療であれば、病気になって失った賃金を保障してあげる。介護であれば、両親や祖父母の介護のために失ってしまった賃金だけを保障してあげる。これは社会保障基金で行う。つまり、社会保障基金というのはそういう現金を失ったものだというふうに明確にする。中にさまざまな税金を入れてくる場合も、明確に切り分けましょうということです。
それから地方税の場合も同じように、地方は全部現物給付、サービス給付をやって切り分けようということをすべきだというのがイメージです。
お手元に2枚だけの図の資料があるかと思いますが、「所得税に占める実効租税負担の割合」というのを見ていただきますと、アメリカのように、最低限のことしかやらないよという政府は累進的な負担をとっている。それからスウェーデンのような国は逆進的な負担をとっている。そのかわり、みんなで共同事業で生活を、共同消費によって生活を支えていこうという選択になっているということですね。
そして、1枚おめくりいただきますと、社会保障についていえば、社会保障で自分が払った部分というのはあくまでも賃金を失った部分で比例的にしておいて、斜線で塗りつぶした部分は国が国税で面倒見る。地方も同じことで、地方税によってサービス給付をする。斜線で補った部分を国税で補うというふうに明確にわかるようにして、選択させる。それぞれの国民が、大きくするのか小さくするのかということが負担との関係でちゃんと選べるようにするというシステムが重要だと思います。
〇委員
残念ながら時間がなくて、大論争が起ころうとしているところで終わってしまいますが、いずれまた機会を見て。
じゃ、委員、最後に。
〇委員
2つだけ、ごく大まかなことをお尋ねしたいのですわ。政府税調は、これは会長の発想だと思うけれども、今年の5月かな、何人かの委員にお願いして、北欧を見にいくということになっているのですよね。それで、先生の学説というのは、私、ぼんやりだけれどもずっとフォローしているから、何をお考えかという哲学的なことはよくわかるつもりなのですよ。
それで、ある時期日本では、スウェーデン・北欧型というのは、こんな高福祉・高負担というのはごめんこうむるという主張が随分流れた時代があったわけだ。今再び先生の学説に近いようなことにまた戻るのかなあと。部分的には。いいですか。というふうに時代はまた逆に振れているのかなという気がしないでもない。そのことについて、全般的なご意見を聞きたい。
もう一点は、先生はこう書いていらっしゃるのだ。ページの一番最初、「共同体機能(家族機能)が劣化している」となっているのですよ。これは少子も同じで、もう不可避でどうもならんということ。そうすれば、当然のことながら、家庭の機能も低下するということでしょう。だけど、少子ということと家庭機能が低下するのは、親父の教育にもよるところがあるのですよ。僕はもう73歳だから、子ども6人いて、孫は何人もいるから、やり方だという気がしないでもないのだ。これね。だから、ここはあらかじめあきらめてしまうということは、これはえらい増税国家になるのではないかなという不安がないではない。
〇委員
最後のほうから言うとおっしゃるとおりで、ここにNPOなども含めておりますので、新しい共同体の機能というものが復活してくる。そうすれば租税負担も少なくなる。ただし、その場合には本人は無償労働を提供しなければならないということになります。家族の中で無償労働をするか、コミュニティで無償労働をするか、NPOで無償労働をするかは別として、無償労働をするという。だから、無償労働で公的なサービスといいますか、社会的な消費を支えるか租税で支えるかという選択だろうと思います。その点は全く同じです。
北欧というよりも、私は自分の考えが北欧に近いので、私としては一貫して主張していたつもりなのですね(笑)。世の中のほうが何か動いて、最初のうち私は右翼扱いになっていたのですけれども、最近ではなんか左派扱いになっていて、私としてはずうっと変わらずに主張してきたと思っております。
〇委員
今後も大いにまた主張してください。
大変お待たせしてしまったのですが、予定の時間を25分ほど過ぎてしまいました。
次のテーマに移らせていただきます。「地球温暖化問題の現状と課題」ということで、今日は中央環境審議会の会長でいらっしゃいます。先生はまた地球環境戦略研究機関の理事長でもいらっしゃいます。じゃ先生、20分ほどの短い時間でありますが、ぜひその現状をご説明ください。
〇委員
今日は「地球温暖化問題の現状と課題」ということで話をしろということでございまして、時間がございませんので、これは実は私が作ったというよりも環境省に作ってもらったのですが、お手元に12ページの資料があると思いますので、数字等につきましてはそこに書いてございますものがほとんどでございますので、それをご覧いただきたいと思います。
まず、今日お見受けしたところ、いろいろなところで温暖化問題にかかわっておられる先生方もたくさんおられますので、何となく釈迦に説法というような感じがいたしますけれども、一通り簡単に見ておきたいと思いますが、地球の温暖化という問題は、これは二酸化炭素を中心とする温室効果ガスが20世紀の大量生産・大量消費の時代に次第に増えて、特に第二次世界大戦後、非常に急速に増えております。特にCO2はエネルギー消費に伴って排出されるものですから、産業革命のころには280ppmであったと言われておりますけれども、それが1994年には358ppmに増加しております。これもほとんど1950年代になってから増えているわけでありまして、そこで、それじゃこの調子でいくとどうなるかということが1ページの左のほうに書いてございます。
最近の、IPCCという、地球温暖化の問題を研究しております、気候変動に関する政府間パネルというのがあるのですが、その報告によりますと、21世紀末には平均気温が1.4~5.8℃上昇と、これはモデルによってかなり幅がありますけれども、いずれにしても気温上昇する。そして、それに従って海面の水位が9~88センチ上昇するだろうと。そのために豪雨とか渇水などの異常気象が増加し、その結果、多くの人が、7,500万人以上の人が冠水したところで暮らさなければならないし、また農業生産等にも大きな影響を及ぼす。その他、生態系の破壊などがあり、日本でもマラリアなどが蔓延する可能性があるというようなことであります。
そこで、そうした事態を受けまして、1992年にブラジルの会議が開かれましたときに、国連気候変動枠組条約という、これは枠組条約でございますが、みんな何かをしなければならないと、国際会議はしなければならないということを決めた条約が採択されまして、これは94年に発効しておりますが、しかし、これは枠組条約でしたので、あまり具体的な中身が決まっていないということから、加盟国、第1回目から第3回目の締約国会議で少し具体的な目標と削減目標等を決めようということを決めておいたわけでありますが、ご承知のように、第3回は日本が誘致いたしまして、京都会議ということで1997年に開かれました。
しかし、ここでも先進国、途上国、あるいは先進国の間の思惑が対立いたしまして、結局、一応採択はされましたけれども、しかし、当初とかなり異なった様相を呈しております。先進国全体として5%の削減目標でありますが、EUは8%、アメリカは7%、日本は6%削減する。その他、それぞれの国で、例えばロシアはゼロとか、そういう取り決めをいたしました。
そして、その場合に1990年を基準とするということで、1990年というのは日本ではエネルギーの燃焼効率が最も上がったときでありまして、オイルショックの後、70年代の終わりから80年代にかけて日本はエネルギー効率を上げてきたわけですけれども、ちょうどそのピークに達するころを基準といたしまして、他方、ドイツなどはその後にベルリンの壁が崩壊しまして、その後に東ドイツを組み込んできて、だんだんとエネルギー効率を上げてきているわけでありますから、その意味で、90年を基準とするということは、最初から日本はハンディをしょっていたわけでありますが、この点につきましては、2ページに、どういうガスが対象になって、基準年が1990年で、目標が2008年~2012年、日本の場合は6%の削減が規定されているということでありますが、その後アメリカは、ブッシュ政権になりましてから、この京都議定書にはフェイタルなディフェクトがあると。
実は京都議定書はアメリカが主張しておりました経済的手法を導入いたしました。例えば排出権取引などを導入して、アメリカは極めて弾力的な施策を導入したわけですけれども、それに対してアメリカはディフェクトがあると言うのですが、結局のところ、途上国が義務づけられていないと。先進国だけが義務づけられたということと、それからアメリカの削減目標が7%であったところから、これだとアメリカの産業にとって不利であるというそのことが主たる理由で、アメリカは京都議定書を採択しないという、もちろん枠組条約のほうにはそのまま入っているわけですけれども、京都議定書の義務を負わないということを言ったわけであります。
資料の3ページに、京都議定書が発効するためには全体の55カ国以上が締結をし、そして排出規制の義務を負う先進国の、二酸化炭素の排出量の55%以上を排出している国が批准をすると、それで京都議定書が発効するということでございますが、現時点では、日本は批准をいたしましたし、EU等も批准いたしましたけれども、先ほど申しましたように、アメリカが批准しないということを決めて、その後、オーストラリアなどもこれに追随をしています。カナダは追随すると思われていたのが、カナダは批准をいたしました。現在、ロシアが批准しておらないのでありますけれども、いろんな機会で、ロシアは批准すると。ただ国内的な手続が時間かかるのだということで、おそらく年内、2003年内には批准するのではなかろうかと思われております。
しかしながら、全体として5%のCO2の削減で済むかというとそうではありませんで、長期的に見れば、科学者の予測によりますと、21世紀末までに現在の50%以上を削減しなければならない。イギリスなどは60%ぐらいを削減しなければならないというふうに言っておりまして、その意味では、京都議定書は大きな論争の種になっておりますけれども、いわばその第一ラウンドだということであります。
そこで、我が国はどうかということでございますが、先ほども申しましたように、我が国は、この基準年になりました1990年というのが最も燃料効率のよかった時代でありまして、その後、ライフスタイルがかなり変わってまいりました。産業界のほうはきちっと省エネをやっておりますけれども、あるいは景気が悪くなって省エネしなくても省エネになっているのかもしれませんが、例えばそれぞれの家庭のメンバーが自分の部屋にテレビを持つ、コンピュータを持つ、あるいは暖房をそれぞれの部屋につけるとか、あるいは大型の自動車を運転するというようなこともありまして、我が国はその後増えておりまして、2000年度の排出量は、1990年比で申しますと8%増加をしております。
その増加の仕方でありますけれども、5ページに出ておりますけれども、産業部門につきましては0.9%増ということで、あまり増えておりません。これは1つには経済的な不況ということもあると言われておりますけれども、ほとんどこれは横ばい状態でありますが、運輸部門については、これは貨物・旅客両方含みますけれども、20.6%、それから民生部門、これは家庭やオフィスビルなど含まれておりますが、これが21.3%であります。
大ざっぱに申しますと、産業部門、これはエネルギー転換部門も入れますと、産業部門はほぼCO2排出の半分、そして運輸が4分の1、それから民生が4分の1、これは大ざっぱに言ってでありますから、そういうことで産業部門がそれほど増えていないにもかかわらず、先ほど申し上げたような運輸部門、民生部門の増加によって、90年代で8%増加しております。2001年につきましては、天候の状態などがあって少し落ちております。6%ぐらいになっておりますけれども、これも省エネの結果そうなったというよりも、むしろそうした天候の状態などが影響したものと考えられます。
そこで、そのような状況の中で、我が国としては、京都議定書ということもありますけれども、先ほど申しましたように、いずれ、どちらにしても、世界中で、途上国も含めてCO2の排出、CO2だけではありませんが、そのほかの温室効果ガスの削減をしなければならない。先を見据えて、今の段階からストラテジーを立てていかないと将来大きな禍根を残すということから、批准をいたしました。
そして、この6%の削減は、今も申しましたように、日本にとってはかなりきつい目標になっているわけですので、そこで、日本が京都議定書を批准しようという方向で政策を調整していく段階で、2002年の3月に、地球温暖化対策推進大綱を策定しております。内閣総理大臣を本部長とする閣僚級の推進本部でありますが、これは京都議定書を採択した翌年にも地球温暖化対策推進大綱を採択しておりますけれども、そのときには、どちらかといえばかなり、いわば枠組み的なものでございましたけれども、次第次第に、まだ京都議定書は発効しておりませんけれども、現実的な目標を立てていかなければならないということから、この資料の6ページと7ページにございますけれども、まず、環境と経済が両立するようなものでなければならないと。
私自身は、そう皆さんが言うほど、win-winというわけにはいかないわけですけれども、例えばドイツなどはそうですが、イギリスもそうですけれども、いずれ温暖化の問題が深刻化してくるときに、技術的に解決しなければならない問題がたくさんある。かつ、資源も先が見えておりますので、省エネ・省資源を目標とした産業構造の再編成ということを考えておりまして、これは時間があれば後でちょっと申しますけれども、そのような考え方で動いているわけですが、我が国におきましても、この環境問題、地球温暖化の問題を解決することをいわば契機にして、いわゆる循環型社会を目指した経済に立て直していくべき、再編成していくべきではないかと。
そのためには、各界、各層が一体となった取り組みをしていく必要があるわけで、しかし、とはいっても急にやるわけにはいきませんので、いわゆるステップ・バイ・ステップのアプローチということで、実際に義務化される2008年までに、2002年~2004年、2005年~2007年まで、さらに2008年から第1約束期ということで、まず現時点で行われている対策がどれだけ効果を持っているのかということを2004年までに検討しまして、そこで、依然として増加傾向にある削減の目標、見通しが立たないというようなことであれば、2005年~2007年にかけて新たなイノベイティブな対策というものを導入をすべきではないかと。そこには環境税といったような経済的な手法も視野に入っているわけでありますが、第1ステップにおいては現在行われているさまざまな対策を進めていくということであります。
そして、この具体的な中身でありますけれども、細かくなりますので、7ページに出ておりますので、これにつきましては省略いたしますが、エネルギー起源の二酸化炭素を2008年までに、1990年に比べて±0に持っていきたい。その他の手法、その他の分野で6%のマイナスを稼いでいくということでありますが、ここに書いてあるものを単純に足していただきますと、4.4%ぐらいがマイナスですけれども、1.6%足らないのですね。それは実際には京都メカニズムなどを、排出権取引や、あるいはクリーン・ディベロプメント・メカニズムというようなものをこれに足していきたい。例えば代替フロンガス等3ガスが+2%ということですけれども、思ったよりもこれは削減が進んでおりまして、削減というより、増加しないということもありまして、この積算自身も将来見直すときにきちっと見ていかなければなりませんけれども、現在では、計画を仮に達成したとしても、6%というには手が届かないというのが現在の状況であります。
そこで、中環審だけではありませんで、これは経産省の産業構造審議会においてもそうでありますけれども、政府全体として、大綱に基づいてステップ・バイ・ステップで進めていくということでございますが、その際に、従来とられてきたような規制という、コマンド・アンド・コントロールというやり方は必ずしも経済効率性の面で望ましくありませんし、場合によっては、オーバーキルといいましょうか、過剰規制ということもあるので、規制に頼らざるを得ないところがあります。
例えば自動車などの技術開発にトップランナー方式を取り入れるということで、依然として規制も使いますけれども、むしろヨーロッパなどで使われているような自主的取り組み、つまり、経済界が一定の目標を立てて、そしてそれに最も適した経済効率的な方法で削減を進めていくというのも1つであります。
それからさらに、例えば新エネルギーなどの開発につきましては、これはコスト的に非常に経済的に見ると引き合わない、現時点では引き合わないわけですので、これに助成措置を加えるというようなことを考えているわけでありますが、2004年に――といいましても、2004年に2004年の成績が出るわけではありませんで、これは2003年に一定の暫定的な数値を出してやるほかないわけですが、一応2004年の段階での成績を、削減の実績を見てやっていくことになります。しかし、当面はやはり、新しい技術開発をどのようにして進めていくのかと。
例えば技術開発の中にもいろんな、ボイラーであるとか、あるいはコジェネなどで、今まで、過去に考えられていたよりもかなり進みつつある技術がありますので、そういうものが将来的にいえば日本の環境ビジネスとして世界に通用するものと十分なり得る。その意味で知的財産権の稼ぎ手ともなるわけでありますので、将来の大量生産、大量消費の産業構造、社会構造から循環型の社会構造にそれを導くような技術的な手法を、技術的な開発を進めていくということを考えています。
現在、中環審でもさまざまな形で小委員会を開いてやっておりますが、それと同時にやはり、先ほど申しましたように、産業界はすでにかなり優等生でありますが、家庭とか、あるいは自動車、交通・運輸の部門で、なかなか規制するということも難しいし、それから自主的取り組みといってもなかなかそうはいかないので、こういうコントロールの難しいところに何らかの形で経済的手法を導入するということを考えなければならない、マーケットメカニズムを導入しなければならないと考えているところであります。
現在、政府税調でも環境問題についての税制について検討を開始されているということでございますし、中環審におきましても、別にそれと張り合うという意味ではなくて、環境税というものはどうあらなければならないと。これはもちろん国民に対していろんな形で、企業も含めて負担を求めるわけでありますので、それに対する理解を求めなければならない。そのためにはどういう制度を仕組むのがいいのか。
単純に法と経済などで言うように、経済的な負担をかぶせてやれば人の行動は変わると。そのためにコストを内部化するというような単純な議論ではもはや国民の理解は得られないということから、昨年、一応中間報告を出しておりますけれども、現在、もう少し具体的なあり方について検討するというふうに考えておりますし、また、その際にはぜひ政府税調とも調整をとりながら、どういう形のものが最も国民に受け入れられるのかと。また、そもそも効果のあるものになるのかどうかということも含めて検討していきたいと考えておりますけれども、現時点では、技術的な開発を促すような方策、これは規制もありましょうし、助成もありましょうし、税もあるかもしれませんが、と並んで、国民生活をどういうふうに環境によりやさしい、省エネ・省資源に向けていくかという、そのための方策というのを考えているところでございます。
どうもありがとうございました。
〇委員
どうもありがとうございました。それでは、少し時間をとりまして、先生のお話に質疑応答します。
どうぞ。
〇委員
先生も今日、新聞お読みになったと思いますけれども、一番かぎを握っているのはロシアなのですよね。ぐだぐだぐだぐだやっていて、経産の役人なんかも、今年の春、1月だったかな、モスクワに行って聞いても、何が何だかよくわからないような返事だったのですよ。今日、日経の記者がインタビューして、政策担当者の次官だそうだけれども、この京都議定書に入ってロシアのメリットというのは、金になることだったのですよね。天下周知の事実ですよ。何も努力しないで、金だけ入ることになった。金払うのはアメリカと日本だったのですよ。アメリカが抜けてしまったと。それがあって、いろいろ計算してみたら、これは排出権取引で金が入る目処があまりないと。したがって、経済的なメリットがないから、事務方の検討では、これは批准してもしようがないと、反対だというペーパーを3月にまとめたと。あとはプーチンの決断次第だという話なのですね。
これはえらい情報で、3段の記事だったけれども、僕はびっくりもしなかった。そういうことも大いにあり得ると実は思ってましたからね。ロシアの態度については。これが外れると、発効しないのです。すべてね。日本政府が営々として築き上げた大綱というのは本当に絵空事になってしまうのですよね。それでもなおかつ、そういう事態が起こっても、いや、省エネ、その他、環境的に適した社会をつくるということは高い理念なのだから、京都議定書は発効しなくても、日本は自主的にやるのだという議論は大いにあり得ると思うけれども、最低限、税金の話は完全に落ちるということだと思うのです。僕はこのニュース、かなり真っ当に評価しているのですよ。そういう可能性、大いにあると思って読んだのですわ。
2番目は、それでもロシアが、プーチンの政治的決断で、ぐずぐず、来年ぐらいに批准する可能性もある。ないとは言えませんよ。政治的な配慮があるし、EUも尻をたたくと思うからね。そのときに、最後に先生がおっしゃった税金の話ですよね。これは、ここで大議論やるつもりはありませんけれども、いつも先生にものを教わる立場だからあれだけれども、税金の問題を投入するというのは、これは実に難しいですね。先生が一番ご存じだから、随分口ごもってしゃべってらっしゃったけれども、わかる上で申し上げるのだけれども、例えば京都議定書発効、日本の国際的義務マイナス6%やらなければならんと。これはやらなければならんでしょう、おそらく。問題があっても。
そのときに、環境税を入れなくても達成可能だよという数字が間もなく出てくるのです、実は。責任官庁からね。それが数字のでっち上げかどうかということは検証に値するのですわ。しかし、少なくとも、これは環境税不要論なのです。プラス、それでもどうしてもつじつま合わなければ、規制強化論なのですわ、ロジックは。税金でいくのか規制でいくのかと言ってね。やはり規制の強化というのは、カリフォルニア州における大気汚染の防止のために車に対してえらい規制をかけましたよね、あれでイノベーションを引っ張り出す有効な手段であることは間違いないのですよ。強制的ではあるけどね。
これはなかなか、理論的なことを含め、理念的なことを含めて問題が多いのですが、僕は、環境庁の学者の先生方が集まってすっきり出すのは、それは一つのモデルだから構わないと思うけれども、これを議論するのは非常に広範な立場から議論しないとだめで、政府税調だって、今日、先生から初めて話を聞くのですから、まだまだ入り口の入り口ですよ、こんなものは。具体論になったら、それは単純な話ではないと私は思っているのですが、いかがでしょうか。
〇委員
まことにごもっともでして、先生とはあちこちでお顔を合わせますので、多分、先生もお気づきになったと思いますけれども、かつては、ちょうど環境基本法を入れたころには、環境庁は、まだ庁ですが、かなり理念的に環境税ということを考えておりました。その後、私もまいりましたけれども、イギリスやオランダなどにまいりましていろいろとインタビューをして、決してそう簡単なものでないということも十分認識しておりますし、それから経済界にかつて言われたように、初めに税ありきというのはけしからんではないかとおっしゃった方がおられましたけれども、現在では、初めに税ありきということでは全くありません。
その意味では、私自身は、理念的であるよりも現実的に考えているので、少なくとも今後の中環審の議論も、税を入れるために議論するのではなくて、ちょっと話は前後いたしますが、もしもロシアが批准をしない、したがって京都議定書が発効しないという段階であれば、私はそんなに慌てることはないと。しかしながら、先ほど申しましたように、いずれ、5年、10年のうちにはまたもっと深刻な問題が生ずるわけですから、それに対して日本としては備えていくべきだろうと。
しかし、そのことは、環境税で片づくものというのは私は非常に限定されていると思いますので、その意味ではいろんな方策を今のうちに考えておくと。そんな意味で、もしもロシアが批准をしない、京都議定書が発効しないということになれば、私は、環境税の問題は少し、少しか大いにか、後回しにしてでも、ほかの国に対してよりすぐれた技術、環境技術を、あるいは省エネ技術を日本が開発していくという、その方向でいけばいいですし、そのために無理やり規制を使う必要もありません。規制を使うことはいいこともありますけれども、私は法律家ですので、規制が効く限界というのは承知しているつもりですので、これもあまり無理する必要はない。
ただ、発効いたしますと、ともかく6%というのはかかってくるわけですので、私は、今、中環審の税に関する専門委員会もまだまだ十分検討しておりませんけれども、その際には、少なくとも2005年までにはどういう環境税のあり方があるのか、そもそも環境税というのは日本にとって入れることはいいことかどうかも含めて検討していきたい。今までのように、それぞれの省庁によっててんでんばらばらというのは、これは国益にかかわることですからやってはいけないことで、様子を見ながら、私は、密接な連携をとりながらやっていきたいと考えております。
〇委員
どうぞ。
〇委員
今ご指摘の中で、初めに税ありきではないということでしたけれども、同時に、環境税も補助に入れているということをおっしゃっているわけですね。それで、これまで政府税調のスタンスとしては、やはり環境施策全体の中での税制の具体的な位置づけを踏まえて議論していくのだということになっているわけですね。それで、この中央環境審議会としては、環境施策全体のパッケージ、これをまず作るのが先決だろうと思うのですね。そうしないと全く進まないと思うわけです。この点は一体どうなっているのか。現時点で、全体のパッケージをつくる作業は一体どうなっているのかと。
それからもう一点は、経済的手法の中には、何も税だけではないですね。課徴金だってあるわけですね。だから、課徴金でなぜいけないのかと。いけないとおっしゃってないのですけれども、課徴金でもいいのではないのかという気がするのですけれども、この2点、ちょっとお話しいただけますか。
〇委員
パッケージにつきましては、今日お持ちしませんでしたけれども、実は政府の大綱というのが中環審などで議論したものをまとめたものでありまして、いずれ京都議定書が批准されますと、今の大綱をもう少し、大幅には当面手直ししませんけれども、それで温暖化対策基本計画という形で作ることになっておりますが、もうすでにその意味では、まだ大したパッケージでないと言われればそうかもしれませんけれども、98年につくったものに比べますと、こういうことをやって何%を削減するというようなこと、それぞれのガス別、あるいは分野別にやっておりますので、もしも先生ご関心おありになれば、後でお送りをいたします。あるいは少なくとも財務省のほうにお届けいたしますが、そういうことになっておりますし。
それから2番目のご質問ですけれども、イギリスはclimatechange levyとなっております。財務省が所管しておりまして、これもタックスでなくて、レヴィというのとタックスとどう違うのかというのは、先ほどの話のように、厳密には私は区別しておりませんけれども、私は税法の専門家でないので、要するに人々の行動は変わる。あるいは場合によっては、この税なり課徴金から上がってきたものをどう使うかというのは、これまた別の議論をしなければなりませんけれども、それが仮に環境の技術開発のための投資に使われるとか、そういうことであるならばいいわけでありまして、それが課徴金というか、税というか、それは最後には所轄する役所がお決めになればいいことでありまして、私自身は、要するにそうした規制が効きにくいところでもしも何らかの負荷を、金銭的な負担をかけることによって行動が変わったり、あるいはそれによって一定の財源が得られるということであれば、それはどういう組み方でも、私は、今の段階ではほとんど考えておりませんし、将来にわたってそれがどういう決着がつこうと中環審は構わないとまでは、ちょっと代表性はありませんけれども、中環審ではそういう考え方の方が多いと思います。
〇委員
ありがとうございました。
大分時間過ぎてますから、じゃ委員、最後にどうぞ。
〇委員
簡単に伺いますが、今の先生のお話、ちょっと気になったのは、最後、これは所轄の役所が考えればよいことだというのは、今のこれは環境省のことを言われたのでしょうか。それとも財務省のことを……。
〇委員
税金ですから、財務省を考えて。
〇委員
中央環境審議会のこの部会でも非常に気になるのは、いろいろ議論がぐるぐる回っているのですけれども、どこまで本気なのだろうということが感じられるのですね。それで、今日拝見した6ページ目の推進本部の決定を見ましても、真っ先に「環境と経済の両立」というのを出してある。これは税金を入れることに対して非常に消極的なイメージを与えるわけですね。
今先生言われたように、これは所轄の官庁が決めればいいことだというようなお話になると、なるべく環境税は使わないようにしたいと。これならこれが一つの方向だと思いますが、その場合にはじゃ何を持ってくるのかと。むしろはっきりと方向として、環境税はこれは無理であるという形で議論をして、それにかわるような方法というものを考えるのが中央環境審議会の仕事ではないかとか、そのぐらいはっきり位置づけをしていただかないと、環境税、環境税で、結局、最後に来て、これはよくないことですと。やりたかったら財務省のほうでどうぞなんて投げてこられたら、これは大変な話になりますので、そこをどっちの方向で議論されるのか。これはもう早く決めた上で、いろいろ検討した結果だめでしたというようなことにならないような形で議論いただきたいと思うのですけれども。
あるいは、もし環境税、これは大変な摩擦があって無理だということであれば、この環境税にかわるような、排出権取引以外のものですね、こういうものについてもどんどん、部会なら部会を設けて検討していただいたらありがたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
〇委員
環境と経済の両立は、税金を排除するということでは私は決してないと思います。環境と経済を両立させるための手法として税を使うことだって十分あり得ると考えてます。詳細は申しませんけれども。
それから第2の点でありますけれども、私は、わけがわからなくなったら財務省に投げるということを申し上げているのではなくて、私はやはり、国の制度としてそれぞれの役所がそれぞれの、司、司とよく言いますけれども、持っておられるわけですから、仮に環境省というか、中央環境審議会で税とすべきだと言っても、やはりそれを、環境省が税という形でやるわけにはいきませんで、その場合には少なくとも財務省と調整をしなければなりませんし、多分、税全体の体系の中で、そういうものを入れるとすれば、それは財務省抜きにやるということはできないという意味で、私は、どういう形で、どこがどういうふうにやるかということについては、結局、税である限りは税を所管しておられるところが最終的な決定をなさるのでしょうと。
それからもう一つ、ほかの方法を考えたらどうかということですけれども、私どもは、少なくとも政策というのはいろんなオルタナティブを考えておかないと、今までの日本政府のように、これだと言って、それでやって失敗したときに、もう取り返しがつかない。むしろいろんなシナリオなりいろんな方法を考えて、その中でどういうメリットがあるのか、デメリットがあるのかということを検討していくべきで、私は、現在、中環審がやっておりますのは、税の専門家の方にも入っていただいておりますけれども、基本的には、税を入れた場合にどういうメリットがあり、どういうデメリットがあるのかということを考えているわけで、その意味で政策の選択の幅を広げるというやり方をやっておりまして、その意味で、先ほど申し上げましたように、初めに税ありきという考え方ではないけれども、逆に、最初から税はあきらめたらどうかという考え方でもありません。
〇委員
ありがとうございました。かなりというか、非常に難しい問題ですよね。これから我々、今日終わるわけではございませんで、先生の今のご説明をバックにして、いろいろな方面から切り口を広げていきたいと思います。どうも先生、お忙しいところをありがとうございました。
それでは、まだお時間があれば残っていただきたいのですが、不良債権処理に関する税制上の処理を事務局から今日はご説明いただこうと思ってますので、10分か15分、ちょっと延長させていただきます。じゃお願いします。
〇事務局
それでは、お手元の資料、基礎小25-6に基づきましてご説明させていただきます。
1ページおめくりいただきますと、昨年度の税制改正要望、金融庁から出されたものでございまして、金融機関の自己資本を強化するための税制措置といたしまして3点。1点は、金融機関につきましての無税償却を拡大するという意味で、企業会計上の損金の全額算入を認めるということ。第2点で、金融機関について、欠損金の繰戻還付、現在凍結されておりますが、これを解除するとともに、15年間の間の税金につきまして繰戻還付をしてほしいということ。第3点で、金融機関につきまして、欠損金の繰越控除、今後の黒字と相殺できるという規定、現行5年でございますが、10年に延長するという3点でございました。減税見込み額が9兆5,000億円ということでございました。
これにつきまして、2ページにございますが、昨年11月の税制調査会におきましては、この金融庁の具体的な要望自体につきましては問題点もいろいろとご指摘いただいたところでございますが、一方、金融機関の不良債権処理の加速は重要な課題であるとして、「繰延税金資産の取扱いを初めとする諸課題に対し、金融行政、企業会計を含め全体として相互の関連を考慮しつつ検討しなければならない。その対応策の一環として、税制面の対応についても検討する必要がある。その際、課税の適正・公平の原則を初め、税務執行、企業全体に及ぼす影響等を踏まえなければならない」というふうにしていただきました。
その後、年末の与党の税制調査会においてもほぼ同様の結果でございまして、金融庁の具体的な要望につきましては見送られましたが、全体として、不良債権につきまして引き続き検討とされたところでございます。
その後、今年に入りまして、与党金融政策PTというのが開かれまして、実は3月24日に緊急金融対応策というものが取りまとめられました。これは不良債権の処理ですとか、あるいはデフレ克服に向けて思い切った経済政策を打っていく必要があるということで、与党3党として早急に検討されるべき政策というものをおまとめになられました。
今回ここにつけておりませんで申し訳ございませんが、金融政策、為替政策、市場政策等々が入っている中に、この話題になりました、昨年出されました関連の、この繰延税金資産に係ります3点の税制改正要望、無税償却の拡大、それから欠損金の繰戻期間の延長、それから繰越期間の延長について早急に検討するようにというようなことがその中に盛り込まれました。
これを受けまして、財務大臣のほうからは、政府の税制調査会においても検討してもらいたいというお話がございました。それが今日に結びついているわけでございます。
一方、この金融行政そのものにつきましては、金融行政、あるいは企業会計を含めたさまざまな扱いということで、繰延税金資産を初めといたしまして、税効果会計等の問題につきまして、金融審議会の中に自己資本比率規制に関するワーキンググループというものが設けられまして、こちらで、6月を目途に中間報告まで持っていきたいということで検討を進めておられるところでございます。
3ページ以降にはその具体的なの話などを載せてございますが、時間の関係もございますので、簡単にご紹介だけさせていただきますと、現在、この3ページにございますとおり、直接償却、間接償却とございまして、それぞれ一定の基準のもとに、税務上も損金算入がされてございます。これにつきまして、特に最近、銀行につきましては、金融行政の観点から、厳しく債権の回収可能性を見積もるということになっております。
そういう意味で、そういったものにそっくりあわせるというような議論もあるわけでございますが、それを考えるに当たって、6ページをお開きいただきますと、税務上の観点から見ますと、金融機関からの貸付金であろうと、その他の法人からの債権であろうと、同一の債務者であるとすれば、それは同一の取扱いができるような形でなければ公平・適正な課税とならないという点がございます。
そういった意味で、そういう公平・適正な課税というものを妨げない範囲内の措置ということで、7ページにございますが、最近におきましてもさまざまな措置が講じられてきているところでございます。
それから9ページをお開きいただきますと、無税償却の拡大ということは確かに大きな論点でございますが、ただ、足元の状況で見ました場合には、現在、例えば有税償却をされておりまして、その結果が上の段でございますが、繰延税金資産という形で、つまり、将来損金算入が可能となった時点で法人税を減少させることができるという意味での資産性に着目して繰延税金資産が計上されておるわけでございますが、仮に、下のほうにございますとおり、無税償却を拡大して無税償却をした場合にも、現在の赤字状況の金融機関の経営状況のもとでは欠損金が拡大するということで、この欠損金につきましても繰り越しが認められておりますので、同じように繰延税金資産として計上するという意味では、無税償却の拡大が現在の金融機関の経営状況のもとで直ちに繰延税金資産の減少につながったり、自己資本の充実につながったり、あるいは財務基盤の充実につながったりという関係に直接的にあるわけではございません。
そういった関係がございますものですから、10ページにございますとおり、欠損金の繰戻期間を延長してほしいという2番目の要望があったわけでございます。欠損金の繰戻しというのは、今年の赤字につきまして、去年の、1年前の法人税の繰戻し還付をしていただくという制度でございますが、平成4年から不適用ということになってございます。これを復活させれば、その分税金が返ってくる、つまりキャッシュが返ってくるという意味で、繰延税金資産が解消されるわけでございますが、10ページの一番下にございますとおり、還付を受けるには、繰り戻す年度に納税額があることが必要でございまして、その結果、1年繰り戻しても、昨今の経営状況のもとでは銀行に返るお金がないということで、その結果が15年分の還付、つまり、バブル時代に払った税金を返してほしいというような形となって、要望が昨年度は出されたわけでございます。
ただ、この点につきましても、上のほうにございますが、15年前の税金を返すということであれば、15年前の税金が正しかったかどうか検証できる必要があるわけでございますが、帳簿の保存等がない状況ではそういった検証ができないといった問題があるほか、そもそもこういった問題は公的資金の投入そのものの問題ではないのかというような問題もあったわけでございます。
それから、11ページにございますが、一方将来に対する欠損金の繰越しの問題でございますが、これを5年を10年にしてほしいというご要望がございます。これにつきましても、(参考)のほうにございますが、帳簿保存期間、あるいは除斥期間等との関係がどうしても出てきてしまう。つまり、帳簿の保存がなければ、例えば10年後になって今年の赤字を差し引くことができるとした場合に、10年前の状況が本当に正しかったかどうか、あるいは間違っていた場合に更正決定が打てるかどうかといったような問題と整合的に解決していく必要があるという問題がございます。
12ページ、最後でございますが、欠損金の繰越期間、繰戻期間が一番上の2つの欄に書いてございまして、アメリカやイギリスのように大変長い国があるというご指摘をいただくことがございます。日本は5年、1年ということでございます。この点につきましては、一番下に立証責任というところがございますが、アメリカ、イギリスのような国というのは基本的に納税者が立証責任を負っている国でございますので、納税者が帳簿等を踏まえて、10年前の欠損金は、これは正しいといったことを立証する責任がある立場になってございます。
一方、我が国、日本ですとかフランスのような国におきましては、一番下にございますが、課税庁、税務署側に立証責任がございますので、こういった国では、課税庁、税務署としてはそもそも納税者や取引先の方のところに帳簿が残っていなければ確かめようがないということで、日本でいえば、帳簿の保存期間5年または7年、フランスは6年ということになってございますが、この期間内に繰越期間をおさめているという制度の立て方になっているわけでございます。
以上、今日のご説明を終わらせていただきます。
〇委員
ありがとうございました。
時間が大分なくなっているのですが、今のご説明、あるいは現下のさまざまな情勢について、ご質問なりご意見がございますれば、ちょっと時間を作りたいと思います。いかがでしょうか。
どうぞ。
〇委員
細かい技術的な話は聞いてもよくわからなかったのですけれども、要するに、金融システムを安定化するために特別のご配慮を、税制上の公平論をけ飛ばしてもやれという趣旨の話ですよね。当時から、今日もこれは選択肢は2つあって、今彼は最後に言ったけれども、公的資金投入して、そのかわり頭取以下の首を切る。これが選択肢1。選択肢2は、首を切らない、税金還付してやるという話ですよね。ここまで来て、しかも10兆円内外の金でしょう。よくもこんな要望を金融庁は持ってきたと思うけどね。東京都知事が銀行税かけたことも随分いいかげんだったけれども、あれに比べればこれはもっとひどい議論だと思うのですね。
異常な事態だから、異常な対策が必要だということは理念的にわかるのですよ。これは確かにそういう状態であると思うからね。会長も、前から何かやってやろうじゃないかという気持ちを持っていらっしゃるからわかるけれども、それにしたって、税の公平論を盾にして、頭からどうだなんて機械的なことを言うつもりは全くないけれども、ひど過ぎると。この不公平は。ここまで言うのだったら。度が過ぎますよ、こんなこと。それなら公的資金投入やって責任とってもらえばいいのですよ。こんなソフトなことやって、頭取の連中、全然首切らないで、うまくやってちょうだいよというのはいかにも筋が通らない。僕は原点に返った議論をやるべきだと思います。しかし、今日はそんな技術論をやる場でもないし時間もないと思いますけれども、僕はとにかく基本的にそう思いますよ。
〇委員
ありがとうございました。
どうぞ。
〇委員
これは質問ですが、この資料の9ページ、「不良債権の償却と繰延税金資産」、つまり、有税償却と無税償却の2つのケースが示されているこの図ですね。この図によれば、結局は繰延税金資産というのは、有税償却だろうと無税償却だろうと同じですよという意味なのですか。
〇事務局
今の問題設定が、今の金融機関の状況のもとで繰延税金資産を減らすための方策としては有効たり得ないという。つまり、繰延税金資産は結果的には額は変わらないということでございます。
〇委員
1つだけ、金融庁の言っていることも相当吹っかけているという委員の指摘は私も同感なのだけれども、結局、去年来のいわゆる金融機関をめぐる動きで、繰延税金資産というのがかなり膨れてしまっていると。要するに過大に評価され計上されているのではないかと。これをもっと締めようやという意見が出て、それが実は銀行、金融機関経営に対する懸念となり、銀行株の売りを誘発したと一般的には言われているわけですが、その前提がある程度合理性があるとすれば、繰延税金資産を締めると、これはこれでしようがないとしても、何かしら税制で補ってやるより手法はないのかと。
その一つとして、この有税償却、無税償却の話が出ているという脈絡だと思うのですが、改めて伺いますが、結局それは、無税償却というものを認めても繰延税金資産には全く影響も効果もないと、こういうことですね。
〇事務局
足元の問題として見た場合には変わらないということでございます。ただ、もちろん、将来にわたる制度としては、そこが食い違っていることが繰延税金資産が発生する原因であるという、将来に向かっては、いずれはそういう局面が出て来得るということだと思います。
〇委員
足元、足元とおっしゃるのは、赤字法人だからというご趣旨ですね。赤字法人の場合はということですね。
ほかにどうぞ。
〇委員
ただ今のご意見と大体同じなのですが、繰り越しでいえば、これは数年後でなければ効果は出てこない。繰戻しはそれぞれ、確かに停止はしてますけれども、翌年分1年だけ返すということで本来経過してきているわけですから、それぞれ、そのときそのときで勝負は終わっているわけですから、これを今、昔に戻って還付するということは到底できる話ではない。ということですから、現時点で何か検討するといっても、効果の点では意味がない。
また、ほかの債権者と区別して金融機関について特別の措置を考えるとすると、課税の公平の問題、税体系全体の問題が出てくるということで、非常に難しい問題ばかり、あるいはおよそ効果的な手段がとりにくい環境ではないかと思うのでございます。そこを大臣が検討しようということをおっしゃるというのは、もちろん公的資金のほうで検討するけれども、そっちのほうも勉強はしておいてくれということと解釈していいのか、何か本当に探さなければいけないというご検討のご感触というのか、そこらはどんなものか。どうも実効ある措置を現時点で具体的に出すというのは非常に難しい環境にあるという感じですが、そこらはいかがでございますか。
〇委員
これはどうですか。
〇事務局
今の状況を申し上げますと、確かに抜本的に何かをしようとすると、多分、公的資金論、あるいはその他をやらなければなかなかならない状態にあるという認識は、多くの方、おありだと思うのですが、かといって、不良債権処理も加速させなければならない。同時に、繰延税金資産の計上基準というのも、会計基準として厳しくしようという動きが一方である。そのときに全体として一体どう考えたらいいかという議論としてあると思うので、特にこの3つ並んでいるのですが、多分、税の話というのは、後ろ向きに議論するより前向きに議論する部分としては何かいろいろあるのかもしれないですが、後ろ向きにはとても難しいということは大臣も極めて認識しておられると思うのです。
特にこの15年というのは、ある意味でいえば、他の金融機関以外も、15年前にさかのぼれば、みんな税金払っていたところは多数あるわけで、そういう意味では、課税の公平という基準からすれば、税を公的資金を入れる理屈に引っ張り出した以上、より公平性が求められることになって、それはより公的資金導入すら難しくなるというようなご議論もかなり広がってはいると思うのです。
ただ同時に、税の扱いが少なくとも渾然一体となって、繰延税金資産の問題、企業会計の問題ですね、あるいはそれ以外の公的資金の導入の問題、すべてがいわば一体となってこれから議論しようとしているときなものですから、税は税で全く議論しないということではなくて、そういう動きの中で一緒にご議論してほしいと、こういうご趣旨ではないのかなと思うわけであります。
〇委員
どうぞ。
〇委員
今のお話で、私、この議論というのは、要するに銀行の資本増強の問題、自己資本をどう考えるかという問題から議論が出ているのだろうと思うのですね。税制上の問題が先にあって、主体的に取り組むという話ではないだろうと思うのですが、今の事務局のお話を聞いて、そういう、銀行の自己資本の問題を取り扱う過程で税制との関係があるとすれば、要するに先行き5年というのを延ばしたときに、銀行の自己資本の繰延税金資産をどう考えるかという、そういう観点で、繰延税金資産が将来、銀行の黒字化の可能性が先に延びるということを計算できて、繰延税金資産は2年とか3年とかの範囲に限ると、銀行の収益力を見てどれだけ入れるかを決めようと、こういうのが今の議論だと思うのですけれども、税制上それは、後ろに今の制度が延びたら、繰延税金資産の企業会計原則上の取り扱いにはね返るという面があるのですかね。
〇事務局
多分、赤字法人の場合はあくまでも、例えば5年繰越しが、例えば今の帳簿保存からいうと7年というのは帳簿のぎりぎりとしてあることはあるのですが、じゃその間に黒字にならないとなると何の意味もないわけでございますね。そういう意味では、多分、繰延税金資産のむしろ有税償却の側もその意味では同じ、厳しい基準を持つとすると、税務会計とは別に、企業会計上は多分、そこも切られてしまうのではないかという気がしますね。
要するに今、実は9ページの表をご覧いただきますと、これは当時の議論を読み返していただきますと、今事務局が申し上げたとおり、有税償却、無税償却、どちらも赤字法人にとっては、将来、損金算入が可能となれば法人税等が減少するので、その分を資産計上していいですよということでいきますと、どちらも、赤字法人の場合は同じ40%であると。ただ、実は5年間でその赤字法人が黒字化しないとなると、実は5年で、この税務上の損金不算入化というのは切れてしまう。ところが、当時の見通しでいうと、税務会計でなくて企業会計は、永久にこれはいいのかもしれないという思惑があるものですから、5年で切れないかもしれないと。逆にですね。そういうご議論もあったものですから、赤字が続くと見通される金融機関にあっては、むしろ有税償却のほうがずうっと5年以後、6年、7年と実は税金繰延資産が積まれる可能性もあり得ると。もちろんそんな確約されている話ではないですけれども、そういう思惑も実は一部あったと思うのです。ところが、税は明らかに5年しか繰り越せませんから、税務上そこから先は繰り越せないということが決まっているので、5年で打ち止めですよと、こうなっていたわけでございます。
ところが、昨今、この議論をやったのがたしか平成10年でございまして、ちょうど5年たってきたわけです。そろそろ5年たつわけで、いよいよ今度は、企業会計上もこの繰延税金資産を、今委員が言われたとおり、むしろ3年にしろとかこういうご議論になってくると、繰延税金資産の税務上の扱いというより、企業会計上は、やはり同じように、税務上、5年、6年と認められても、企業会計上は果たしてどういう扱いになるのか。有税であれ無税であれ。そこは自己資本をどう見るかという企業会計上の理論としては、実はあまり税務会計とは関係ないかもしれないなあと。この辺は、今後、企業会計のほうがどうお扱いになるのかにかかっていると。企業会計と税務会計はもともと目的も趣旨も違いますから。税務上は、例えばこれが7年になれば、7年間税金が、その間に黒字になれば、いいですよというご議論にはなりますけれども、そのあたりは、多分、企業会計どうお作りになるかとリンケージしているものですから、そちらのほうを一緒に見ながら我々も議論しない限り、あまり意味のない話なのかなあという気はします。
いずれにしても、我々は我々税務サイドとして、特に課税の適正性ということを考えると、この扱いを延ばすという議論になるなら、これは銀行だけにとどまるものではありませんので、中小企業であれどこであれ、それを延ばしてあげなければいけないという話になるので、ここは、多分、百貨店なんかは相当帳簿を長く持たなければならないという意味では、相当倉庫を多く要するとか、かなり、リクルート事件のときに反対があったように、そこの受任義務をどこまでお願いできるかというあたりと絡んでくると、こういうことかと思います。
ただ、いずれにしても、そこは、やはりより重要なこととして、金融機関の問題を解決するために必要ということならば、いろいろなご議論があると思います。ただ、要は企業会計上の自己資本比率が重要なのであって、税務上の話ではないというところから来ると、あまりストレートにリンケージしてないのではないかなあとも私は思うのですが。
〇委員
事務局ね、委員がお出しになった話で、勉強するのか、何か種探すのかという二元的に分けたとき、我々としてはやはり、これまでの諸般の事情を頭に入れつつ、論点整理とか勉強しながら、その結果として、何か出てくることがあれば、それはそれで使ったり、あるいは公にするというような、そういう基本的な姿勢でいいわけね。
〇事務局
多分そうだと思います。ただ、いずれにしても、例えば、もう少し掘り下げなければいずれいけないのは、この不良債権の直接償却と間接償却の話も、金融上これをどういうふうに企業会計で整理していくかという問題は多分あって、このあたりも税務会計のほうで、それじゃそれをどう受けるかというのは前向きの話として、これから先の話としてあることはあると思います。
ですから、全く知らぬ存ぜぬというわけでは全くないと思うのですが、ただ主体的に、その受け皿の全体像を見ないで、税の側だけでどうこうというのはなかなか難しい状態なのかなと受けとめながら、しかし、政府税調として、そのスタンスをまさに国民の視点でどうご議論していただくかお願いできたらと思う次第なのでございます。
〇委員
難しい任務ですけれども、まあ頑張りましょう(笑)。
どうぞ。
〇委員
繰延税金資産の話はともかくとして、無税償却をもっと推進すべきだという議論がもう一つありますね。それでいうと、無税償却の認定基準というのがこの資料にもあるのですが、ここら辺は考えられる分野なのですか。
〇事務局
今日は第1ラウンドで時間の制約もあるものですから、もっぱら税の基準だけしかお示ししてないわけで、今世間で問題になってますのは、これと、金融情勢上なり企業会計上のこの引当金への繰入基準なるものの不一致が、有税償却として繰延税金資産を生んでいるではないかと。これを無税化したところで、さっき申し上げたような効果論はちょっと、現状ではあまりないわけですけれども、さはさりながら、そういう不一致自体がもうちょっと幅を狭める努力なり余地がないのかどうか、これはぜひこれからご議論していただきたいと思います。今日はちょっと時間の制約もあって、資料が……。
〇委員
いずれ、資料をもっと整えていただいて、時間をとって議論する場を設けたいと、このように思ってます。じゃよろしゅうございますか。
どうぞ。
〇事務局
まさに今回のこの問題は、委員がおっしゃったようなところがあるだろうと思うのですね。それで、会計上の問題と税務上の問題は全く切り離してという事務局のお話がありましたが、やはり無税償却をどう考えるのかという一つの問題はあるだろうと思うのです。ですから、そのような問題は考えていく必要があるのだろうと思います。
また繰延税金資産の問題も、これは私も企業会計で言っているわけですけれども、以前のことにさかのぼってそれを修正するといったことは、行政のリスクといいますか、そういうことがあるので、そのようなことになるならば、その問題になっている以降についてそういう対応があってしかるべきだと。しかし、基本的には、企業会計では費用収益対応の原則というのがございまして、収益と費用は対応するものだということで、従来の企業会計では、しかし、利益と税とはいわばそういう関係になかったわけで、そういう関係にしていこうということで、今回こういう税効果会計というのが入れられたわけで、ですから、むしろ税効果会計というのは一般的な考え方であり、むしろそれが特殊な批判されるべきものだというようなことではこの企業会計の社会ではないということだけは考えておく必要があるだろうと思うのですね。
あとは、税の問題は、事務局が言ったように、国会の中でもこんな議論がございますから、事務局の言ったような対応で私どもも答弁もしてます。また、大臣もほぼそういうお考えなのだろうと思います。しかし、一方で、金融のプロジェクトチームの方から上がってきておる問題をむげに断るというわけにはまいりませんから、そのような観点も含めてご議論いただきたいということであったわけでございまして、一番の問題点は、私は、有税償却、無税償却の、この問題と切り離しても、これについては検討していく必要があるのではないかと。
あと先ほどの繰延税金資産の問題においては、現下の状況では変わらないということであって、利益が計上されるという状況では変わるということだけは認識していただく必要があると思います。
〇委員
ありがとうございました。
最後、おまとめいただいた格好になりましたので、我々の方向は大分はっきりしてきたと思いますが、予定の時間を35分過ぎてしまいました。これで終わりにしたいと思いますが、あとの予定を申し上げたいと思います。
来週の8日、2時から4時まで、またこの基礎小を開きたいと思っております。今度は国と地方の課税自主権を含めて、それの議論をしたいと思っております。それから18日、金曜日ですが、午後ではなくて、ちょっと都合がありまして、午前中に基礎問題小委員会を開きたいと考えております。したがって、基礎小は4月8日の火曜日の午後、そして4月18日金曜日の午前中というふうになりますので、ちょっとテイクノートしてください。
それから22日、火曜日になりますが、それまでの議論を受けて総会を開催したいと思ってます。それから金融小委員会も立ち上げる時期になっていると思いますので、4月15日、これまた委員にお願いいたしますが、火曜日になりますが、午後、この金融小、立ち上げまして、金融・資産性所得の課税の一元化とか、あるいは納番とか金融税制等について本格的議論を始めたいと考えております。いずれにいたしましても、後ほどまた正式にご案内を差し上げます。
どうも今日は長時間ありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。