基礎問題小委員会(第28回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成15年5月13日(火)16:07~16:25

石会長

第28回基礎問題小委員会が終わりましたので、概略ご説明いたします。今日は大きなテーマが3つあったんですが、1つは海外視察報告、2つ目は厚生労働省の方をお呼びいたしまして、少子高齢化と税制という形の中で、社会保障の現状と課題をご説明いただきました。3つ目は環境問題への対応をやろうと考えたんですが、時間切れになりまして、資料はお配りしてあると思いますが、今日そちらはスキップいたします。

海外調査の方、骨子だけまとめたものが北米の方と北欧の方、お手元に行っているかと思います。これはお読みいただければということと、詳細な、もっと詰めたものにつきましては、いずれ冊子にいたしまして公表するつもりでおります。

行った先はカナダ・アメリカ、あるいはスウェーデン・デンマーク、各々財務省とか歳入庁とか研究所、それから労働組合の方とか厚生労働省に当たるようなところへ行ってまいりました。これにつきましては、今日一々細かくご説明いたしませんが、事実、質疑応答も余り時間がとれなかったので、一方的な報告になりました。ただ、私がカナダ・アメリカ、奥野さんがデンマーク・スウェーデンを報告しましたが、ポイントはどこかということだけ1~2申し上げます。

カナダ・アメリカの方は、やはりカナダの年金制度、これは3階建てになっているわけですが、1階が一般財源で賄われております、年金とは言いつつ、高齢者のための老齢年金、2階が保険料によりますいわゆるカナダペンションプラン、3階が税制を使った私的年金という、そういう3階建てが非常にうまく機能していると感じました。かつ、各々の目的もはっきりしているし、哲学もはっきりしている。そういう意味においては、我々としても学ぶべき点はあるかなとは思いました。

納番については、カナダもアメリカもフルに使っておりますが、私、15年前にカナダ・アメリカへ。納番の調査に行きましたけれども、15年前と比べますと、圧倒的に守備範囲が広がっているという印象というか、事実そういう認識をいたしました。つまり15年前は資本所得、利子配当、キャピタルゲインだけのマッチングだけだったんですが、今回は資産所得も賃金所得も含めて、かなり各課税所得についてマッチングが行われているということ、納番があることによって、税務行政が非常にスムーズにいっているなという印象を受けました。

北欧の方は奥野さんからご報告いただきましたが、これもお読みいただければと思いますが、1つ、非常に興味深く思えたのは、二元的所得税ということについて調査してまいりました。二元的というのは、文字どおり資本所得と勤労所得と2つに分けて、その二元の意味は、その間では損益通算をしないという壁をつくって、そこで2つに分けて、税率も分けるという発想で、我々こちらで見ておりますと、この壁は極めて厳格に行われておりまして、まさに二元だという印象、これは理念型といいますか、規範型なんです。ところが、今回の海外調査の報告によりますと、必ずしも二元的な所得税が理念型、あるいは規範型とはいっていないと。ここは何か相互に通算し合ったり、必ずしも二元というイメージにそぐわない面も多々あるということがあって、やはり現実的な対応という形でこういうふうに税の中で相互乗り入れが進んだというような印象を受けました。

そういうわけで、我々、二元的所得税を議論するときに、やはり連携、そして現実的対応というところとのギャップから、いろいろな日本型の問題も出てくるのかなという感じを読み取ったということであります。

後半は、3冊ほど資料がいっていると思いますが、お三方、政策統括官と参事官と年金局の総務課長がお出になりまして、30分ほど、現にやっております年金改革の実態、あるいは社会保障審議会の現実の話等々のご説明を受けました。大変膨大な資料があり、時間が短かったので、説明が必ずしも十分ではなかったという印象を持ちますし、かなり総花的な説明になってしまったというきらいもございましたけれども、ただ、我々としては少子高齢化と税制の問題は非常に関心を持っていますので、議論が非常に白熱いたしまして、先ほど申し上げたように、3つ目の環境問題への対応の問題は残念ながら時間切れということになりました。

この資料につきましては、後ほどゆっくり見ていただけれたらと思いますが、1つのポイントは横長の方で、実はもうご存じと思いますが、社会保障の給付と年金の見通しというのが23ページ以降に出ておりますが、こういうものがベースになりまして、今後、一体社会保
障の給付、そしてコスト面の対応、負担がどうなるかという、そういう面の議論に我々の関心は非常にあったということであります。

この資料を全面的に使いましたので、一々どうだこうだと説明する余裕もございませんので、主要な論点だけ3つ、4つご紹介するということにいたします。

1つは、給付と受給と、それから費用、この関係から見て、今後どうなるかということについて、厚労省はどう考えているかという質問に対しまして、やはり現行制度は給付が高齢者に偏っているんですね。そして、負担の方は働き手の層に偏っている。言うなれば、世代間で受給と負担のバランスが非常に崩れておると。これを将来まで持ちこたえるのは大変だろうという意味において、今後の年金改革の1つの方向は、この世代間のアンバランスをどうやって是正するかという形で、平準化ということを考えているという点で、具体的な手段については言及されませんでしたが、おのずと若手の方、働き手の方の負担を少なく、そして今非常に受給の方で集中的に行われております高齢者の方の受給のレベルを減らすなどと、いろいろな手段があると思いますが、そういうことが1つのポイントになる、そういうことだと思います。

2つ目は、高齢化のスピードというものが資料に幾つか出ておりますが、要は、高齢化率が7%から14%になるのにわずか24年、たしかスウェーデンあたりが85年かかっていますか、そういうところの設計が、そういうところの差が、やはり世代間の今言ったアンバランスに響いていると。それについて、これまで当方としてどういう推計のミスがあったか、ある程度予想したけれども、これほど少子化、特に出生率の低下が急激に進んでいることは予想外であって、この辺が恐らくミスと言えばミスだろうという形のお答えがありました。

改革の方向として、やはり苦労話としては、年金の支給年齢の引き上げも大変な話で、過去に随分やってきて、今、60歳が65歳にかけて、徐々にならしでいく方向になっていますが、つまり雇用の手当が後からついてくるという意味で、空白期間ができてしまった場合、高齢者の生活をどうするかという問題を含めて、これは政治的な問題も非常に厳しいので、年金支給開始年齢の引き上げというのは、今後できるかどうかということも含めて、これは非常に大きな問題だということをおっしゃっていましたし、そういうことだろうなと思っています。

先ほど申し上げました社会保障の給付と年金の、数ページ後に試算の前提が出ておりますが、これは甘過ぎるのではないかと。つまり、名目成長率1%と見ているんです。こういうことを踏まえて、これが甘く見過ぎていると、年金破綻が現実に来るので、この辺どういう
ふうに考えるんだという点について、既裁定年金、つまり既存の給付水準を下げてということをやっていないけれども、これから実際にどういうことが起こるんだという形で、この資料に出ておりますが、俗に言われますスウェーデン方式で、保険料を20%に固定して、働き
手の拠出側の負担を少なくするということをまず最優先して、結果としては、その後、給付水準が落ちますよね。過去にもらっていたということも落ちるわけで、俗に言われます所得のリプレイスメント・レイショーと言っていますが、置き換え、つまり現役時代の何割もら
えるかというのが59%から52%ぐらいになるのではないかという推計等々あって、そういう議論も現実の問題として起きてくるかもしれないという議論もございました。

そういうわけで、スウェーデンみたいに、自分も負担が重いけれども、自分のおじいさん、お父さんも負担が重くてやってきたし、自分の子供、孫も負担が重い。しかし、ともに世代が負担を抱えつつ、この公的年金を支えていこうという、日本の場合、そういうスタイルで
ないということは明らかで、移民の問題はどうかという形の問題が提起されました。そこで、移民というものをどれだけ入れたら、スウェーデン型にまでなるかどうかまでは、推測が難しいと思いますけれども、年金を現状程度に維持するためにどのぐらいの移民というものを念頭に置いたらいいかという質問については、厚労省の方ではまだ正式にそういう計算をしていない。ただ、学者の中でやっている人がいるかもしれないというような議論がありました。

最後に、我々の問題意識でございます公的年金等控除、この廃止の意義をめぐって、これから我々幾つか議論しなければいけないんだけれども、厚労省として現にどう考えているかと。これは実は20日に社保審の委員と税調の委員が議論いたします。その日にこの問題をめぐって社会保障審議会は議論するようでありまして、そのときに議論するという前提つきでありますが、やはり公的年金等控除の額は非常に大きいので、これは先ほど申し上げた高齢者に過度に受益が行っているというような視点から見ると、やはりこれは問題ではないかという、そういう認識をお持ちのようでありました。

以上でありますが、あとの予定は、基礎問題小委員会といたしましては、今週の金曜日と来週の火曜日の2回を考えておりまして、やはり少子高齢化の問題、それから今日は環境の問題を置いていってしまいましたけれども、少子高齢化の問題の各個別の最後の整理をしていかなければいけないと思っていますので、この問題をこれからさらに詰めていきたいと、このように考えております。

概略は以上です。

記者

控除の廃止のところ、最後のところで、税調の委員の側からはどういうふうな意見が今日は出たんでしょうか。

石会長

公的年金等控除のところですか。今日は、最後時間切れでありまして、これは次回以降の少子高齢化と各税目の検討のところで議論が出てくると思いますが、今日はこれについて、税調側の意見を表明する時間的余裕もなかったので、やっておりません。

記者

厚労省側の今日の説明で、国庫負担2分の1引き上げに関する説明はあったんでしょうか。

石会長

それについては、どういう質問があったか省略してしまいましたが、つまり3分の1、2分の1という議論、これをどのぐらいのタイムスパン、あるいはどのような重要さであるかという質問に対して、保険というのは災害が起こった、つまりどっと経済の変動にもろに響くわけではなくて、長期的なスパンでありますから、今日直せなければだめだという話ではない。この具体的な推計は、たしか横長の資料の9ページに出ていると思います。後ほどご覧いただけたらと思いますが、9ページ目に方式I、方式IIが出ておりまして、制度の安定、つまりここに出ておりますように、国庫負担割合2分の1とすると、今 13.58%の厚生年金の保険料率が23%になるという話ですね。3分の1を維持すると26.2%になる、これはどう考えても制度として維持できない。そういう意味で、制度を安定した形で維持するためには、どうしても2分の1ということが制度の安定の維持のために必要ではないかと、こういうことをおっしゃっておりまして、言外には税を入れてくれというご発言のようでありました。そういう意味では、厚労省としては既定の線どおり3分の1、2分の1ということについて意見はお持ちのようです。

記者

確認で、20日の税調と社保審の幹部会合、公的年金等控除をめぐる意見交換だけではなく、そのほかにも基礎年金の3分の1、2分の1の話とか……。

石会長

それは、まだ社保審の議論の内容を確かめていませんが、高齢化と税制というテーマを集中的にやると言っておりますので、その中の一環として公的年金等控除の話も話題になる。したがって、今日は社保審の審議を踏まえないで、我々事務方として前広に言うのは差し控えてあるという趣旨でございますから、当然、控除の問題、それから恐らく、私わかりませんけれども、やはり3分の1、2分の1問題というのは、税の問題が絡みますから、当然、税の問題にいったときには絡めて議論になってくるというふうに理解しています。

記者

そこは自由な意見交換の場という位置づけですか。

石会長

これもちょっと事前に貝塚さんとも議論しておかなければいけないかと思いますが、少なくともどのようなフレームで、どのような議論の対応で、この3分の1、2分の1問題をやるのか、これはいろいろただし書きがついていますから、安定的な財源がなければなしとい
うふうな議論もあったり、そういう中で、社保審としてはどのぐらいの覚悟というか、決意というか、そういうことでやるのかどうかということも当然議論になってくると思います。それに対して、我々としてどういう対応をするかというのは、それからの議論だと思っています。したがって、お互いの審議の状況を議論し合うとともに、今後どうやっていくかというところまで話が進むのかなという気はいたしています。

記者

中期答申のことでお伺いしたいんですけれども、中期答申に盛り込む所得課税のパーツの部分、これまでの税調の議論というのは、基本的に少子高齢化と税制というテーマでやってきましたが、メインはそれで、それ以外の、例えば給与所得ですとか、退職所得ですとか、その他の所得税の歪みの部分についての言及は、去年の基本方針を踏襲するのか、新たにそこも盛り込まれるのか。

石会長

昨年の基本方針でほぼ網羅的に、すべての所得控除の問題点を指摘して、かつ課税ベース拡大という視点において、あるべき税制から広げなければいけないと言っていますので、あれで我々の一定の方向は尽きていると思いますが、ただ、少子高齢化と税制という切り口から議論していなかったはずでありますので、今やっております少子高齢化と税制という切り口になったときには、それに関連するであろう所得控除の見直しが浮上してくるということは当然あり得る。ほかのものは全部やらなくていいというふうには考えておりません。ただ、将来の話でありますから、おのずと優先度というふうなものがわかるような形で書ければなとは思っています。

(以上)