第1回基礎問題小委員会 議事録
平成15年10月7日開催
〇委員
それでは、税調の第1回基礎問題小委員会を開催いたしたいと思います。
いつもの部屋とはだいぶ違って、四角になっておりますから、お互いに顔が見えて議論しやすいと思いますが、私のそばに誰もいないので(笑)、まわってもらいたいくらいですな。
最初に、財務省の政務官にご出席いただいておりますので、ご紹介いたします。よろしく。
それでは、この基礎問題小委員会、昨日の総会で設置が認められまして、メンバー表もすでにお手元にあろうかと思います。総会という大きな場ではなくて、この基礎問題小委員会を使いまして実質的な審議を進めていきたいと思っております。
昨日の第1回総会にご出席いただかなかった方のために若干ご報告しておきますが、今日、2つの冊子が出ておりますが、「基本方針」と、「中期答申」の税制のあり方論、これがメインになって、小泉総理から、これをさらに先へ行くという形で議論してくれという諮問をいただきました。諮問文もお手元にあろうかと思います。
それでは、実質的に審議に入る前に、昨日も申し上げましたが、若干の審議の進め方につきましてご報告しておきたいことがあります。
言うまでもございませんが、この小委員会には出席はご本人限りという形にさせていただいております。随行の方等々はご出席いただけない。それから、実質的に審議を進める意味で、各省の幹事の方にもご遠慮いただいているという格好になっております。
それから、総会の場合には財研の記者クラブの方々がご出席いただきますが、小委員会の場合には、そういう形ではございませんで、議事録を後ほど公開する形で審議の状況を知らせる形にしております。
ただ、名前等々、つまり発言した方の氏名等々は付さない形で審議状況を知らせる格好になっております。
それから、会議終了後、私が記者会見をいたしまして、内容を紹介するという格好になっております。
通常は2回くらいこの小委員会をやりましてから、総会に諮り、税調全体の位置を確認するという段取りを行っております。
今日は最初でございますので、後ほどご説明しますように、事務局にお願いして膨大な良い資料を作ってもらいました。つまりこれからやるべきことは、基本問題、6月に出しました中期答申をベースにいたしまして、どういう形であるべき税制というものを構築するかということであります。
とりわけ、昨日の小泉さんの諮問にありますように、社会全体の共通費用をどうやって広く公平に分かち合うかという視点と、持続可能な社会をどうやって活性化しつつ導くか、そういう2つの点から、かなり理論的なことも必要かと思いますが、片や、日本経済の構造的な変革をベースにしてこの議論をしなければいけません。そういう意味で今日は、「基礎小1-2」の分厚な資料で、「わが国経済社会の構造変化の諸相」という形で、いろいろな方面からの構造変化を明らかにする資料を集めてもらいました。いうなれば理論的なそういう議論と実際的な議論と、両輪にしていかなければいけませんので、今日は、直接税制に関係のないものも、その背後にある、いわゆるファンダメンタルズを少し議論してみたいと考えております。これは、私も前から問題意識を持っていましたので、昨日の総会でも申し上げましたが、こういう議論から始めていきたい、こう思っております。
今日は、議題はこれだけでございますから、この資料の説明に十分時間をかけまして、その後、ご審議をいただきたいと考えております。
では、調査課長に40分か50分提供しますから、じっくりやってください。
〇事務局
調査課長でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、お手元の資料に沿いましてご説明させていただきます。今、小委員長からお話がございましたように、諮問にありますとおり、経済社会の構造変化を見据えてということでございますので、それに関連する資料を集めたということと、それを踏まえまして、今後の検討をどういう切り口で進めていけばいいかという提案につきましてご説明したいと思いますが、資料の基礎小1-2に沿いましてお話を進めていきたいと思います。
まず、目次をご覧いただきたいと思います。経済社会構造といいましても、非常に広うございますので、差し当たりということで、中期答申等々で触れられているキーワードを取っ掛かりといたしまして、とりあえず入手可能なデータを整理したというものでございます。
ただ、単純に集めても意味がありませんので、私どもの問題意識といたしまして、俗に90年代が「失われた十年」と言われるわけですが、その90年代はずいぶん日本の経済構造は変化したのではないか。日常我々が生活する中でも感じることでありますが、その足元で起こっていることは一体どういうことなのだろうか。それから、そのことが今後どうなるのだろうか。あるいは、それ以前の時代とどういうふうに変わってきているのだろうかというあたりは、これから税制を変えていく上でも、ファンダメンタルズというお話がごさいましたが、数字、データで確認しておく必要があるのではないだろうか。それを現象面として捉え切れない部分であれば、そこはもう少し本質的なご議論も、専門家を交えたご議論も必要なのではないだろうか、こういう問題意識のもとにデータを整理いたしたということでございます。
したがいまして、まとめ方といたしまして、私どもの英知を絞ってあらゆる限りの数字を入れたつもりではございますけれども、なにぶん十分な視野の広さがあるわけではございませんので、網羅的にはなっておりません。そこはご容赦いただきまして、またご指導を賜ればということでございます。
数字の整理といたしまして、平成2年、1990年を軸にいたしまして、それと現在を比較し、その前と後ろ、できればデータを並べるということで、足元10年どうなったかということをベースに見ていきたい、そういう資料整理をさせていただいたということでございます。
それでは、1ページからご説明したいと思います。
これはマクロ経済でございます。今さら申し上げることでもない話でございますから、詳細は避けますが、確認すべきこととしまして、経済成長率のところでございますが、GDP成長率が実質・名目ともに非常に低い数字になっているということで、まさに数字が様変わりになっていることはご案内のとおりでございます。完全失業率の数字、消費者物価指数の数字、このあたりは、デフレという形で、この90年代に起こりました変化がここにあらわれてきているということだろうと思います。
この数字の見方につきましては、エコノミストをはじめいろいろなご指摘があるわけでございます。バブル崩壊に伴う資産価額下落に伴う低成長の要因になっているのではないかとか、グローバル化によっていろいろなリスクが外から入りやすくなっている、そういう意味での脆弱化があるのではないかとか、潜在成長率そのものが下がってきたことの反映ではないかとか、いろいろなご議論、諸説あるのだろうと思いますが、そういう中で、あとで申し上げます大きなポイントとしまして、労働力人口が伸びていないか、むしろ減っていくという状況の中で、労働生産性をどう考えるかというあたりが一つのポイントになってくるのだろうと思います。
いずれにしても、右肩上がり経済から、定常型の経済といいますか、あるいは、低成長型の経済に定着していくことは論者の論ずるところでございますが、一方で、1人当たりの名目GDPを見ていただきますと、例えば平成14年の数字ですと390万円ぐらいでございます。これであれば世界3番目であるということでもございますので、1人当たりで見ると、まだ豊かさの中にいるということかもしれません。このあたり、どのような経済社会の像を描いていくかということがあるのだろうと思います。
ちょっと飛ばしていただいて、3ページでございます。ここは金融関係の数値を主として入れてございますが、日経平均の動き、地価の動きのところをご覧いただければと思います。ご案内のとおりでございますが、平成2年、3年をピークといたしまして、その前後、高騰・急落という形を経験したわけでございますが、現在はおおむねといいますか、バブル前の数字に戻る流れになっております。特に地価につきましては、一番下の土地価額というところで、対名目GDP比が平成2年の段階で5.6倍になったということでございますが、その前後で2.9倍ということでございますので、資産ストックの価額とフローの所得のバランスが回復されてきた形に見えてくるということだろうと思います。いずれにしても、日本の経済の将来像を考える場合に、こういうストック面とフロー面というものが急激にこの90年代を通じて変わってきているという前提のもとで、考えていくことかなということでございます。
次に、人口の問題でございますが、4ページでございます。数字がごちゃごちゃ並んでいますけれども、ポイントだけ申し上げます。まず、総人口のところでございます。平成14年、1億2,744万人という数字が書いてございます。実は、わが国人口はこの4年ほど後の2006年(平成18年)にピークになります。1億2,774万人ということでございますが、そこからピークアウトいたしまして、右下がりのトレンドになっていきまして、人口減少社会に入っていくということでございます。2050年というところを見ていただきますと、1億0,059万人ですから、差し引き約2,700万人になります。これぐらい大きな変化が起こるということです。
それから、人口の年齢構成のところをご覧いただくわけですが、0~14歳、平成2年のところ、2,249万人、14年になりますと、1,810万人ということでございまして、ここで2割減。それから2050年までいきますと、1,084万人ということでございまして、現在から見ましても700万人ぐらいの減が生じるわけでございます。
それから、65歳以上のところでございます。平成2年、1,490万人という数字でございますが、2002年では2,363万人ということで、6割増になりまして、さらに2050年の段階では3,586万人ということで、プラス約1,200万人になります。
見ていただくのは、0~14歳の平成2年の2,249万人と、65歳の1,490万人、この数字の関係が90年代に逆転いたしまして、今の2002年の段階では65歳の方が増えているということで、ここでクロスしているというのが一つございます。
それから、15~64歳の中のトレンドといたしましては、8,571万人というのが2002年の数字でございますが、2050年にいきますと5,389万人ということで、実数にしまして約3,200万人の減が生じてくる、こういう大きな変動ということでございます。
これはどういう理由で起こったかといいますと、ひとえに出生率の低下でございます。出生率の低下が何によって起こるかというのは、また諸説あるわけでございます。経済的要因という話も当然ありましょうが、あとで出てまいりますが、家族という話も出てまいります。家族観の変化も要因の一つになっているのではないかという感じがいたしますが、そのあたりはあとでご説明させていただきます。
いずれにしても人口が減少していく社会でございますので、その中で当然、今までの人口増を前提とする社会から、おそらくシステムの大きな変革、価値観の変革が出てくるだろうということで、高齢者の位置づけ、活力の問題、子育ての問題、こういう問題が派生的に出てまいりますし、テーマ、テーマによりまして税制もかかわってくることになってくるのだろうと思います。
次のページでございますが、これはピラミッドでございます。左上から右に見て、下の左から右に見るという形ですが、末広がりのピラミッド型から釣鐘型、最後はいびつな、これは縄文式土器というのでしょうか、松茸型になりまして、見ていただくのは女性のところでございます。2050年の女性の85歳以上のところがきわめて突出しておりまして、これは生物学的差異ではないかとする学者の方もいらっしゃるようでありますが、ここは、平均寿命の男女の差が強烈に出ているところです。
すみません、ちょっと戻っていただいて、4ページです。平均寿命の差だけ見ていただきますと、昭和40年のとき、男性67.74 歳、女性72.92 歳でございますから、5歳くらいの差でございますが、2050年になりますと約8歳の差になります。この差が出てくるということだろうと思います。
6ページは、先ほど申し上げたものをグラフにしたものでございますが、飛ばします。
次の、7ページ、「家族」というカテゴリーでございます。これは、国勢調査で調べたものの世帯構成というところでございますが、これをご覧いただきますと、3つ目に「夫婦と子供のみ世帯」と書いた欄がございます。これが、特に税制を考えていく場合の標準的な世帯ということに通常なるものでございますが、これが2002年、平成14年の段階では、1,492万世帯ということで、約3割のウエートになってございます。昭和40年の段階を見ますと、約4割。おそらくその前を見ると、もう少し割合は高かったのかもしれませんし、あるいは三世代のところが多かったのかもしれませんが、そういうウエートだったものが、平成32年の段階、20年後では26.7%で、全体の約4分の1になってしまうということでございます。
それでは、何が増えたかといいますと、まず単独世帯でございますが、ここが現在、1,291万世帯ということで、27.6%。これが20年後には約3割、29.7%に増える。それから、単独世帯と夫婦のみの世帯、すなわち子供のない世帯という見方をしていただきますと、現在でも27.6%と18.9%を足していただくと、約46~47%というウエートですが、20年後にはこれが約51%に増えてくるということで、子供のない世帯の方が多くなるということでございます。
次に、男親と子供、女親と子供のいわゆるシングルペアレントという世帯でありますが、ここも増えてまいります。特に女親と子供のみの世帯が非常に大きなウエートということでございます。
それから、夫婦と子のみの世帯の中で、妻が共働きか専業主婦かというところで見ますと、俗に言う専業主婦の欄、「夫が就業、妻が非就業」という欄は全体43.6%でございます。この651万世帯が、一般世帯4,678 世帯との関連でいきますと、10%強のウエートであるということでございます。
ちなみに、その下に「夫が非就業、妻が就業」という主夫業という方も、世帯数としては、失業とかいろいろなことがあるのでしょうが、40万世帯ある、こんなことも見えてまいります。
そういう意味で典型的な世帯が減って、単独世帯、子供のない世帯、片親の世帯、離婚を通じてでしょうが、そういう世帯が増加するということで、一言でいえば多様化ということですが、世帯の持ち方がずいぶん変わってきたということかと思います。
そこで一つの仮説としては、そういうことですから、家族観が大きく変容しているのではないだろうかということが推察されるわけであります。
次のページでございますが、8ページ。ダイレクトな数字がないので、間接的数字とご理解いただければと思いますが、一番上の欄、「夫婦と子供のみの世帯のうち、最年少の子供が20歳以上の世帯」というのが551万世帯ございます。この中には、親孝行の人もいるかもしれませんが、いわゆるパラサイトシングルとか、万年学生であるとか、社会的ひきこもりというカテゴリーの人が潜在している可能性があり得る。ものの本によりますと、社会的ひきこもりという人が約140万人いるという推計もありまして、これは、家族という問題のあり方、あるいは、もうちょっと違う意味の社会病理学的なものかもしれませんが、そういう面もあるというのを参考までにお話ししておきたいと思います。
次は、婚姻観というものでございます。まず初婚年齢でございますが、昭和40年と現在を比べますと、夫は27.2歳から29.1歳、妻が24.5歳から27.4歳ということでございますが、妻に関して言いますと、昭和40年から平成2年の25年間で、24.5歳から25.9歳、1.4 歳上昇していますが、次の12年間、すなわち1990年から2002年の間で1.5 歳上昇しているという形になっていまして、晩婚化が急速に進んでいる姿が見えます。
出産年齢でございますが、第1子と第2子の出産年齢でございます。現在は第1子が28歳でございますが、この28歳というのは昭和40年の第2子を出産した年齢に近い水準でございます。そういう意味でも高年齢出産化が進んでいるということであります。今の28歳、35年前であればすでに子供が2人いるという状況であったということです。
離婚件数でございますが、現在29万件くらいございます。昭和40年当時に比べますと約4倍でございます。婚姻件数が75万7,000件ほどでございますから、これで割算しますと、瞬間風速的に見ると、3組に1組はあっさり離婚しているということか、ということです。
再婚割合というのを見ますと、夫16.3%、妻14.8%ということで、これも大きく伸びてきていまして、わりとあっさり再婚するという感じになっている。
それから、未婚率でございます。未婚率というのは一度も結婚したことがないというデータでございまして、30~34歳まで未婚という人というのは、男で42.9%、女で26.6%というパーセントでございますが、49歳までというふうにとりますと、男14.6%、女6.3%という大変大きな数字になっておりまして、相当数、結婚しなくても平気という人たちが出てきているということかと思います。
それから、国際結婚というのを見てみましたが、「うち、夫:日本人、妻:外国人」、その逆というケースで分けておりますが、トータルで見ますと約3万5,000件で、総婚姻件数の4.7%ということですから、20組に1組は、フローベースですけれども、国際結婚ということでございます。
未婚だったり、離婚したり、再婚したり、国際結婚したりということで、典型的な一つの結婚というのにはこだわらない様子が出ているのではないかというのは、このデータからいくと、ちょっと深読みすぎかもしれませんが、そういう気がしてならないということでございます。世帯の多様化ということで、さまざまな世帯の形をとっていると申し上げましたが、その裏側にある事情というのはこういう事情なのかもしれません。したがいまして、子供に対する感覚、どういう形で子供を持つかということについても、併せて、変化してきているということかもしれないという気がいたします。
次のページでございますが、9ページ。これは、博報堂のアンケートからとりました、首都圏のサラリーマン世帯を中心という前提でご覧いただきたいと思います。「家族意識の変化」ということで、1988年と1998年との間でどういう変化があったかということで、大変面白いアンケートでございますのでご紹介させていただきます。
まず、左上のボックスでございます。「平等化」と書いてございまして、「家庭では夫婦は平等であるほうが良い」、増えております。よく考えてみると、夫がゴミ出しをしたり、家事分担というのは間々あることでございますし、いわば友達夫婦という話かなということでございます。
その次、「妻権化」と書いてございまして、「まとまった貯金の最終決定者は妻である」というのがウエートが非常に上がっておりまして、決定権も、財布のひもも妻と、こういうことだろうと思います。
次が、「妻が大病、事故に遇ったときに頼る人は娘である」ということで、「女系化」と。ちょっと数字が小さいので決めつけすぎかもしれませんが、女の子とか、娘夫婦とか、妻の親に頼る、こういう話かなというふうに思われます。
右側でございますが、「子供の進路決定の最終決定者は子供である」と。データは、ちょっとスペースがないために省略していますが、夫にも妻にもそれぞれ聞きますと、一応自分のことは自分で決めるというデータが出ておりまして、そこが「個人化」というまとめにこの報告書ではなってございます。個人重視の流れ、教育の影響もあろうかと思いますが、自分のことは自分で決めるという考え方が家族の中に入ってきているのだというのが、このレポートのまとめでございます。
次の欄、「緩系化」と書いてありますが、「夫婦はどんなことがあっても離婚しないほうが良い」。絆が弱まる方向になっているのではないか、ただし、適切な距離感を持ったほうがいい、こういう解釈ではないかと指摘しております。
最後、「住宅購入費用を親から援助してもらった」、合理的な行動であるということで、これも数字が小さいですが、そういう結論でございます。
申し上げたいことは、家族というのは、どちらかというと介護とか、育児とか、愛情の受け皿として通常社会学で呼ぶようでありますが、そういう紐帯よりもやや個人的な部分が強く家族の中にでも出てきている。緩やかなつながりのほうが心地よいという感じになってきているのではないかということで、ここから先は、これをどうデータで読むかということでございますが、一つの見方として、家族がある種のセーフティネットだったり、ある種の帰属主体、アイデンティティの主体であるということになると、その部分がすごく緩んできているということですが、これが先ほどありました世帯の多様化等々に反映しているのではないか。
この点、例えば税制を考える場合に、どういう負担主体を想定するかということにもつながってくるインプリケーションがないかどうか、考えてみたいということでございます。
次の10ページでございます。「就労」でございます。ちょっとお時間もありませんのではしょりながらいきますと、就業者の総数、産業別構成というところで、これは俗に言う、産業のサービス化、ソフト化を反映しまして、第二次産業、第三次産業、特に第三次産業が65.3%というふうになってきております。特に、最近では企業のアウトソーシングが進むということもあり、規制緩和も進むということで、そういうサービス化が非常に進んでいることも反映して、第二次産業で比較的リストラが行われる部分の人の流れが、第三次産業が受け皿になって流れているという姿が見えているかと思います。
それから、自営業者と就業者総数の比でございますが、これも15.4%ということで、下がってきております。自営業者から雇用労働者へのシフトという流れが依然として強く進んでいるということでございます。
労働力人口のところは、人口全体が減少社会になっていくことと並行いたしまして、今は6,689万人という数字がございますが、これが2025年には6,300万人に減っていくことが数字としてあらわれております。
65歳以上の労働力人口、女性の労働力人口、就労目的の外国人、それぞれ数字が出ていますが、いずれも数字が増えておりまして、全体の労働力人口が増加していく中で、65歳以上、女性、外国人というものも、労働力としてある程度のウエートを占める状況になってきているのが現実でございます。
次の11ページでございますが、雇用者総数というところです。ここは雇用形態別でまとめていますが、上2つをまとめて、正規職員、コアの職員。それから、その下のパート以下が非正規というふうにまとめて見ていただければということですが、正規は平成14年のところで、390万人と3,456万人を足し合わせて、約4,000万人弱でございますが、7割占めています。それから、パート以下は3割くらい、足し算いたしますと、そうなっております。
ウエートとしてはそれくらいですが、いずれにしても平成2年から平成14年の間を比べますと、この指数で見ていただくように、正規雇用が減って、非正規雇用が増える。もちろん、景気の状況、企業の雇用政策の変更というものを反映しているのではございますが、これが二極化しつつあることは事実でございまして、いわゆる正規雇用を前提とする制度の基本の部分がずいぶん変わってきているのが見てとれるかと思います。
次のページ、12ページでございます。一言だけ。フリーターの欄を見ていただきます。フリーター数が平成14年では417万人という数字でございます。このフリーターの定義でございますが、「学生、主婦を除く15歳~34歳の若年者のうちでパート・アルバイトをやっている者」、こういう定義でございます。数字も伸びていますし、そのウエートも21%ということで、相当大きな社会の層を作っているということでございます。俗に言うモラトリアムタイプ、会社に帰属しないということでは、今までのいわゆる会社に帰属するという労働観からはずいぶん違う層が、ある一定のかたまりで形成されつつあるという状況かと思います。
13ページでございます。このあたりはアンケートを見ていますので、そういう意味では、サンプルとか、いろいろ偏りがあるということを承知の上で載せておりますので、そこはご容赦賜りたいと思うのですが、まず、左側の「会社に対する帰属意識に関する調査」でございます。これは一般の人を対象にしたものでございますが、会社の帰属意識が、「薄れた」というところが、95年と2000年の間でジャンプしております。それから、「今まで通りある」というのが下がっております。ここは、帰属意識が薄れつつある数字として出ています。ただし、これは東京都内に本社がある主要企業というサンプルでございます。
右側の「転職についての考え方」、これは若者中心でございます。18~24歳までの青年意識調査というものでございます。これをご覧いただきますと、日本のところ、9.6%、これは、「一生、一つの職場で働き続けるべきだ」と。それから45.7%、これが「転職することもやむをえない」、20.8%が、「不満があれば、転職」、22%が「積極的に転職」ということで、この後の2つはどちらかといえば積極的転職派。かっこよく言えば、リスクテイクしても構わないと思っている人たち。45.7%のところ以下はリスク回避型ということで、消極派、そういうふうになるのだろうと思います。
会社への帰属意識は薄くなってきているということで、おそらく若者については転職にそれほど違和感がない姿も見えてきているのかもしれませんが、ただし、その場合でも、積極的にそういうことを求める者とそうでない者とに分かれているのかもしれません。
次に、14ページでございます。これも若者中心のデータでございます。「人並み以上に働きたいか」と聞かれて、「人並み以上に働きたい」という人と「人並みで十分」というのが同じくらいのウエートではございますが、増減の方向が違っています。
それから、「仕事と余暇」を聞いて、余暇を志向するという人の数は増えてきていますが、一方で、仕事と余暇を両立させる人も増えてきている。仕事志向の人は圧倒的に減っているということです。
次に、「仕事に関する価値観」。「一番理想的だと思う仕事、二番目に理想的だと思う仕事」ということで足し合わせたものでありますが、一番左の、「仲間と楽しく働ける仕事」、好みの共有ということでしょうが、これは増えてきています。3番目の「専門知識や特技が生かせる仕事」、これも増えてきています。ここは専門性、特技ということでございまして、資格を取ったり、俗に言うカリスマ美容師とか、かっこよく言えば「イチロー現象」という話かもしれませんが、専門性をかなり強調する人たちがいます。
〇委員
ちょっとスピードアップしないと終わらないよ。
〇事務局
はい。では、急いででやらせていただきます。
そういうことで、若者中心ではありますけれども、組織帰属、会社帰属型から、わりと個性的な、専門性を生かしたという形のイメージが出てきているのかなという気がいたします。
次の15ページは、今度は企業サイドに聞いたものでございますが、年功賃金をどう思いますか、業績評価制度をどう思いますか、というあたりを聞いたものでございます。やはりここには年功賃金離れというものが出てきているということで、こういうシステムの変化にも影響が出てきている。そういう傾向を考える場合に、現在の終身雇用制を前提とした諸制度が根本の部分で揺らいできている部分があるのかもしれません、ということを申し上げたいわけでございます。
次は、「ライフスタイル」でございますが、16ページの表は、消費支出の中でサービス化ということで進んでいるということの表でございます。
次をめくっていただいて、17ページ。どういうような消費が好まれているかということでございます。数字だけ見ていただきますと、増えているもの、一番上が健康、2つ目がパソコンでございますが、情報関係。3つ目が、教育とか自己啓発。4つ目が、ペットとかそういうものですから、癒し、リフレッシュメント。最後は、デパ地下のような、レトルトとか、そういうものでございますので、これをアウトソーシングといいますと、Health、Information、Education、Refreshment、Outsourcing で、俗にこれを、消費の「HIERO(ヒーロー)」化、5つのフロンティアというそうでございますので、ご紹介申し上げておきます。
それから、18ページ、乗用車の販売台数。これは、乗用車の何が見たいかといいますと、乗用車の販売の中で小型車の数が減ってきまして、軽自動車と普通自動車のほうに分化している。そういう意味では消費の二極化ということで、ユニクロとエルメスの共存という世界が出てきているということでございます。
20ページまで飛ばしていただきます。「日常生活でどういうことを考えますか」というアンケートをとりましたというのが、内閣府の調査でございます。「日常生活で悩みや不安がある」と思う人が67%、「ゆとりがある」と思う人が61%と。矛盾するようですが、下の年齢別分析を見ていただきますと、悩みや不安を感じている層が40代、50代の層に多く、ゆとりがあると感じているのは60代以上に多いということで、世代間の意識の違いが出ております。
次に、「社会的規範や道徳に対する考え方」。これは電通の調査でございますが、黒い部分、「譲り合うことがいい」と見る部分が減り、右側の「競争することがいい」と見るのが若干増えていますが、真ん中の部分、迷っている層がいるということでございます。
次の22ページは、「世代・社会階層」でございます。これは、いろいろな機会に見るものでございますが、例えばジニ係数というところで見ていただきますと、現在、再分配所得のベースで見ますと、0.3814という数字になっていて、昔に比べれば数字上は拡大傾向にあるということではございますが、この拡大が有意性があるかどうかということはまたご議論あるところだと思います。
ただ、意識面で見てはどうかということで、次の23ページでございますけれども、中流意識。これは内閣府の調査でございますが、これを見ていただきますと、「下」の部分と、「中の下」の部分が減りまして、みんな「上」にシフトしているということでございますから、これらは、先ほどのジニ係数の議論等を含めまして、どういうふうに考えたらいいかということでございます。
それから、24ページ、「生活の分野で社会階層の差があると思うのはどういうケースですか」と聞きますと、住まいとか、ブランド、ファッションの部分は相当感じるようでありますが、それ以外の下のほう、日常生活にかかわる部分はあまり感じないということですから、アイテム・バイ・アイテムでヨコの差異を時々感じるという分析に、これは博報堂ですが、なっているということでございます。
次の26ページ以下は、「グローバル化」ということです。ここはいろいろな形でデータをとれるわけですが、ご案内のとおり、90年代に大幅にボーダーレス化するということがございまして、ヒト、モノ、カネ、情報が行き来するということ。一方でIT化がございましたし、通貨危機が起こるということで、いわゆるメガコンペティションという話と、一方で、そういうリスクが高まるという話が出てきた時代だと思います。
データ的に見ますと、モノの移動は輸出入ともに増えてきています。
それから28ページ、投資の部分。対外直接投資については、バブル崩壊、通貨危機等ございまして、そういう変動を受けているので数字は減っておりますが、対内直接投資は相当増えてきている。それから、国際収支の例えば所得収支というあたりを見ますと、このあたりも金の出入りということで相当受取超になってきている。さらには、特許使用料の出入を見ると、いわゆるノウハウで稼ぐ形にだんだん近づいてきているということでございます。
次は人の移動でございますが、29ページ。旅行者、在外邦人、留学生、外国人労働者、これをすべて見ますと、増えてきているということです。ちなみに外国人労働者のところで言いますと、就労目的の人も増えてはいますが、不法残留者、これは推計でございますが、当然、増えてきておりまして、ある種影の部分があらわれているわけでございます。
企業の海外移転ということで、次の30ページでございます。海外進出法人数が増え、海外生産比率もこういう形で増えてきているということでございますので、企業行動としてグローバル化の下でインフラコスト等を考えて、いろいろな形でシフトさせていくという部分があるのでしょうが、当然、その裏には一定の影の部分があるのだろうと思います。
研究投資の部分なども、海外への投資、研究開発投資を国内でやる場合でも、海外に持っていく研究が依然として多いということも言えます。ここは、国内で知的財産権をどう考えるかという話に結びつく話かなというふうに思います。
次は、31ページでございますが、国の競争力の推移ということで、スイスのIMDというところで出すデータでございます。これは、第三者から見た日本、あるいは、それぞれの国の見方でございますので、相当世論に流される部分がございますが、明らかに外から見た日本像のランクが下がるということでございます。これも絶対的というわけではありませんが、一つのインプリケーションはあるのかなということで用意をいたしました。
ポイントは、右側の表でございますが、「高い評価を受けている指標」、「低い評価を受けている指標」というところで、例えば経常収支とか、金融資産とか、外貨準備高とか、あるいは、特許数とか、R&Dとか、こういうところは高い評価を受けています。
低い評価というところですが、移民法制、大学、教育の関係、起業家精神、株主重視の度合い。昔、教育とか日本型経営というのはいいものだと言われた時代があったのですが、そこのところの評価は、むしろ悲観的な評価に振れているというあたりもこの背景にあるのだろうと思います。
32ページは、1人当たりの国民所得は日本は3番目と申し上げた、その数字をそのまま入れたものでございます。
ずっと飛ばしまして、36ページ以降、「企業等」というところでございますが、37ページを見ていただきますと、90年代において「三つの過剰」と言われた時代がございました。日銀短観等をとりますと、設備過剰感、雇用過剰感というのが幾つか山谷を繰り返していますが、最近では右下がりになってきている状況が確認できるかと思います。
それから38ページ、労働生産性の問題。先ほどの労働力人口が減るということと併せて、将来を考えていくときに労働生産性がどうなるかというのは、一つポイントだろうと思いますが、これは経済白書のデータでございます。90年代とその前を比べると、労働生産性の伸びが3.7%から2.0%に落ちている。そのあたりの内容を見ますと、当然、人の移動もありますが、技術革新の部分を見るためにということで、下のTFPで見ていただくと、非製造業に比べて製造業の全要素生産性はアップしているという状況でございます。
それから次の、39ページ。リスクテイクという面だけをちょっと見ていただきますと、事業所数の開業率、廃業率というのは、景気を反映して落ちてきていまして、そういう意味では新陳代謝がそもそも非常に不活発だということ、リスク回避傾向がもともと強いと言われている中でさらに全体的に低調になっているわけです。一方で、上の段、大学発ベンチャーというのも実は数が増えてきておりまして、中にはリスクテイクする人も出てきているということでございます。
ただ、それには、参考の欄がございますが、TLOの話とか、MOTの人材ということで、そういう環境の部分、特に目利きのできるネットワークが必要ではないかということがしばしば指摘されるところでございます。
次に、「コミュニティ」でございます。コミュニティで何を見るかですが、例えば犯罪を見てみました。検挙率、いまは38%ということで大きく下がっています。それから、少年につきましては、検挙人員数は減っていますけれども、いわゆる凶悪犯が増えているということで、隣近所というコミュニティの機能が低下していると、しばしば指摘されるデータでございます。不登校の子供の数は13万8,000人ほどいるということで、このあたりも関連する指標かなということで挙げております。
一方、41ページ、ボランティア、NPOの数ということで、何らかの形でコミュニティにかかわっていこうという動きはますます高まっている面もございます。
42ページ、国民の生活選好度ということで重要な項目は何ですかと聞いた場合に、右下の56、57、60に書いてございますとおり一種のコミュニティに参加する意識の度合いが非常に低いというのが現状でございます。
それから43ページ、どんどん飛ばしまして恐縮でございますが、ボランティア活動の経験がありますかと若者に聞いたところ、全くしたことがないというのが74.7%でございます。コミュニティの意識の一つのあらわれかと思います。
次に、「情報化」、44ページです。ここは言うまでもありません。90年代に急速に情報化いたしましたので、どんどん数字が伸びてきているわけでございます。
45ページ、例えば携帯、Eメールの使用率も、若者はともかくシニアの方も持つようになってきたということでございます。
46ページ、これは主婦に聞いたものですが、インターネットについて認知度のところを見ていただきますと、「知っているという人」と「知らないという人」が半分くらいになっていまして、このデータで大丈夫かなと思ったのですが、ここにディバイドというのがあるのかなということで挙げました。
[3]のところで、Eメールの受送信にインターネットを使うということで、コミュニケーションの手段としてはもう意識されている。そのかわり、「不安は何ですか」と聞くと、真ん中あたりですが、やはり個人情報の問題が指摘されている。これから、いろいろな問題を我々が議論するときにも参考になります。
最後、「環境」でございます。環境につきましては、CO2、NOX、SOXということで見ていただきますと、まさに地球温暖化という言葉どおり、もう一つのグローバル化ということでございまして、増えている傾向がございます。ただ、例えばCO2で見ますと、アメリカ、中国、ロシア、日本というあたりの構成比が非常に大きくなっていまして、全体としてまさにグローバルということで、世界全体としての取組みとの関係が重要な部分なのかなという気がいたします。
それから、49ページ。ダイオキシンに関係いたしまして、ここは規制が効きましたので、規制的手法によりまして大幅に下がったということです。土壌汚染問題にもここでは規制的手法で効果が出てきている。あと、ゴミ、産廃量、これは伸びている。
50ページでございますが、ペットボトル回収率は上がってきていますが、これは、リサイクル法というのができたというようなことでございます。
企業の関連で、下のほうですが、いろいろな企業投資等、企業は環境に対して企業イメージを重要視しているせいか、伸びてきているということでございます。
最後、52ページでございます。個人の意識のレベルを聞いたところ、全体として、例えば一番下の「生活が不便になっても環境に悪影響を及ぼすようなものを使わない:はい」、日本が下の方にありますが、この数字をどう見るかということでございます。
駆け足で資料を説明いたしました。
最後に、資料1-1に戻っていただきますが、その前に、「問題意識」と称した紙を見ていただきたいと思います。
今のお話を踏まえまして、今後、当小委員会で、この社会経済構造の変化をどういう形で取り組んでいくかというときの、頭の整理としてまとめたものでございまして、ご提案させていただきたいというものでございます。
ちょっとお時間の関係がございますので、はしょりながら読みますと、1は、まさに諮問のことが書いてございます。
2といたしまして、「しばしば指摘されるように、わが国の経済社会は、1990年代を通じて急速に進展した少子・高齢化、グローバル化、情報化、経済成長率低下などの大きな環境変化の中で、その拠って立つ価値観や基盤システムがかつてない構造的な変化・変容を遂げつつあり、さらに今後もこうした流れが継続していくものと予想されている。
税制は、経済社会を支える重要なインフラストラクチャーであり、その時々の経済社会のあり様と不可分の関係を成すものである。今後、あるべき税制の具体化に向けた検討を進めるに当たっては、こうした歴史的な構造変化を遂げつつあるわが国の経済社会システムの実像を十分把握した上で、現行税制をこれに可能な限り適合した姿に再構築していく必要がある。
このような問題意識を踏まえ、当小委員会においては、あるべき税制の具体化に向けた検討の『基礎固め』として、税制を取り巻く社会経済情勢について、90年代を通じてどのように構造的に変化してきており、さらには今後どのように変化していくと予想されるか。
こうした変化が、個人、企業等経済社会を構成する各主体の在り様や行動様式、価値観等にどのような影響を生じ、さらには今後どのような影響が予想されるか。
こうした中で、今後の検討にあたって、税の基盤を成す家族や地域社会、企業や非営利団体、ひいては国家のあり方・役割としてどのような姿を想定すべきか、といった点について、トータルな理解を深めるため、各分野の専門家や有識者の知見を聴取しつつ集中的に審議を行うこととする。」
(注)としまして、「具体的な審議項目については、資料1-1の項目例を『たたき台』として、今後のご議論を踏まえて確定させることとする。具体的な審議スケジュールについては、来年5月頃までを目途に、月1~2回のペースで行うこととする」としまして、項目と称したものでございます。
ちょっと読みますと、1「個人」。「家族」。少子高齢化、低成長経済の下での「家族」の機能・形態や家族観の変化等。
「就労」。低成長経済、グローバル化の下での雇用や起業の形態、労働観の変化等。
「ライフスタイル・価値観」。日本人のライフスタイル・価値観の変化の傾向とその特徴。
日本人の消費行動、貯蓄行動の態様の変化とその要因。
「世代、社会階層」。世代内及び世代間における経済的格差や価値観の差異の実態とその変化」。
2「企業等」。低成長経済、グローバル化等の下での産業競争力や企業戦略の実態と今後の展望、いわゆる「日本型経営」の変容の実態。
グローバル化の下での経済取引、金融取引の多様化の実態。
新たな産業、ビジネスの実態等。
3「地域(コミュニティ)」。少子高齢化、価値観の多様化、家族の機能・形態等の変化の下での地域(コミュニティ)の役割、民間非営利活動が果たす機能の実態等。
4「情報化」。IT化の進展の状況と、経済社会に及ぼしてきた影響及び今後の展望等。
5「環境」。いわゆる地球環境問題の実態と展望等、ということでございます。
以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。ちょっと急かせまして、申し訳ありません。
今、ご説明いただきましたデータ、それから、くみ上げてきた審議事項についての幾つかの候補、問題意識等々、これから後半の時間にかけましていろいろご議論いただきたいと思います。必ずしも税制に結びつけなくてもいいかと思いますが、ただ、税制を議論するのに、このようなさまざまな基礎的なもの、構造的なものがあるわけですから、どういう問題意識でこれから議論を進めたらいいかという点で、ご意見をご開陳いただきたいと思います。
今日は15~16人の委員の方しかございませんから、皆様全員に発言いただいても十分時間はあると思いますから、ときには、時間があけばこちらから指名もしようかと思っていますので、よろしくお願いいたします。
どこでどうというふうに区切らないで、どこでも結構ですから、今日のお話の中でお気づきの点から自由に取り上げていただけたらと思います。どなたからでも結構でございますから、どうぞ。どなたか皮切りで発言していただけませんか。
お願いします。
〇委員
感想みたいなもので。
〇委員
はい、それで結構でございます。
〇委員
この資料のねらいというのは何となく透けて見えるわけですけれども、一番大きくスペースを割かれているのは、生活スタイルとか、価値観、例えば仕事の対応の変化、要するに企業中心から、いろいろな形態、フリーターまで含めて、そういうふうに変わってきている。そういう社会構造の変化に税制がどういうふうに追いついていくかということかと思うのですが、これは、今まで答申にも書かれているし、その方向だと思いますけれども、一つは、家族中心、企業中心の所得税の課税の仕方、徴収の仕方、そういうものを見直していく必要があるのかなということです。
特に、家族単位のいろいろな控除の仕方とか、年齢だけを見た控除のあり方とか、そういうようなものを見直すのでないと、不公平感が相当高まっているのだろうと。先ほどもありましたけれども、離婚率。たぶんこれは、フランスに追いつけ追い越せの状態で、フランスは6割と聞いていますけれども、日本もかなりのスピードで離婚率が高くなっていることを前提にすると、課税上、離婚後の男性はともかく、女性の姿というのはどうなるのか。そういうようなことを考えますと、家族のとか、扶養のとか、そういう観点から個人単位の課税に変えていかないと、その辺の不公平感をぬぐえないかな、対応できないかなという気がします。
もう一つは、そういうことになりますと、所得税の徴収を企業に任せておけば済んだ、個人も所得税を一体いくら払っているか知らない。知らないで一生終わってしまった企業人はたくさんいるわけですけれども、そういうことではなくて、自分が申告しなければいけない、申告納税という前提で考えていく必要があるとすれば、もっと所得税の項目を簡素化する。それから、納税者番号制とか、そういう整理の仕方も重要になってくると思いますけど、そういう必要があるのではないかなと。
〇委員
控除の項目ですね。
〇委員
そうです。控除の項目が多すぎるとは言いませんが、非常に多いですよね。ですから、ずっと最後まで、納税額が決まるまでに相当いろいろなことをしなければいけませんよね。そういうことができるだけ簡単な操作でできるようにする必要があるかなと、そんなことを感じました。
〇委員
ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。冒頭から、問題意識が鮮明に出されたご意見を賜りましたけれども。
どうぞ。
〇委員
これは消費税のことは触れてなくて、消費税はもう我々は問題を提起しているわけで、今、政治的にそれをどうこなすかということは政治家がやっている話だから、これは連中に任せておけばいいわけですね。どう考えてみても、所得税をこれからの財政収入の大きな大きな柱に育てていかないといけないと思っているんですよね。それは、基本的にみんなが共通の問題意識だと思うけれども、僕は、このいろいろなデータを見て一番ショックだったのは、家庭とか、就労形態の変化とか、ここのところがものすごく意味がありそうに思うんです。我々、これから所得税をどう変えていくかという観点からすれば。
例えば、僕らが若い時代から、夫婦子2人というのが典型的な所得税体系を議論するときのパターンだったんですね。今でも部分的にそれを使う人がいるかもしれないけれども、ほとんどそうではなくて、夫婦子2人なんてものは標準でも何でもない。相変わらず多数ではあるけど。こんなものを基準にして議論したのでは、ずいぶんおかしなことになるなという感じがすぐにわかるんですね。
もう一つは、今、これは社会的に大問題になっているけれども、フリーターが膨大な数発生していて、好景気になればこれは減るのかもしれないと思うけれども、基本的にもう価値観は変わっているので、この連中が30歳、40歳になってもフリーターまがいの低所得水準で生涯終わるかもしれない。企業に入っていれば、年功序列で階段を上がるということがあるから、したがって、累進税率をかけてやればかなり税収は増えるけれども、横に低所得でずーっと行くのだったら、こういう人たちに相当フラットな形でしっかりした税金を払ってもらわないと、成り立たないと思います。特に所得税の関係について、実に悩ましい数字がたくさん出てきたので、よくわからないんだけれども、瞬間的に読めばそういうことを思うんですね。
もう一つは、法人税がだんだん先細りすることはお互いの確認事項であきらめている話だと思うので、それはそれでいいけれども、今、事務局が出した項目の中で、新税は環境税だけなんだ。ほかの税金は今までさんざっぱら、20数年議論したものばかりですよ、経過から見れば。環境税だけご新規さま。これは議論がまだオープンに始まっていないし、ここでもほとんど議論していませんからね。
これは、いろんな問題をはらんでいることは明らかなので、今の環境省の諸君が言っているような話は。それをここでどの程度公平に議論できるかということは、この項目から見れば、ニュースをどういうふうに新聞記者が報道するかといったら、環境税に対して税調はどの段階でどの程度突っ込んだ議論をやるのか、ということは注目の的だと思います。ほかのところは、従来型の議論の延長線上プラス、なにがしかの修正だと思うんですよ、大きく見れば。会長が環境税については大変な権威だから、いろいろな考えを持っていらっしゃると思うけれども、いつごろ、どの程度の突っ込み方で議論するかというのは、これはかなり大きな意味を持っていると思いますね。以上。
〇委員
そうですね。おっしゃるとおりだと思います。
ほかにいかがでしょうか。今、所得税と環境税についてご意見をいただきましたが。必ずしも税に引っかけないでご議論いただいても、結構だと思います。
どうぞ。
〇委員
全部、いろんな傾向というか、いろんな方面から見たものはあるので、どういうふうに考えたらいいのかなというのを考えていたんですけど、とある傾向が出ていると。今も委員が言ったように、平均的家族のスタイルが違ってきているから、それに合わせた税金を考えなければいけないという方向なのか、あるいは、そういう傾向は気に入らないと、税金によって正しい姿に戻そうというふうにものを考えるのか、どっちかによってずいぶん違うのではないかなという気がしまして、世の中の流れにだけ合わせて税のほうを変えるのは、なんか面白くないなと。好ましい方向に流れるように……。
離婚がいいかどうかわかりませんが、例えば離婚課税しちゃうとか、パラサイトシングルは強烈課税するとか、名前をそういうふうにつけるということではないですけれども。あと、社会階層の差をすごく感ずるというのが、ブランドとか、外国で泊まるホテルで差を感ずるとか、家の大きさとか家は固定資産税をやってはいるのですが、ここのところを生かして、いっぱい物品税がかかるのはうれしい、私は金持ちだ、こういうふうに思わせるようなことを考えるとか、どっちなのか、そこら辺を考えながらいろいろもっと分析していかなければいけないなと思います。
僕の好みとしては、自分の思うような世の中になるように税金を作ったほうがいいとは思うのですが、そうもいかないとすれば、ただひたすら流れに流されて対応していくというのも、ちょっと頭悪いんじゃないかなという感じも受けました。最初の感想ですけど。
〇委員
いや、いろいろ重要な指摘をいただきました。でも、なかなか世の流れを変えようというふうに税制改革するのは難しいでしょうけどね。
〇委員
まあ、全部じゃなくても。
〇委員
そうですね。おっしゃるとおりですね。
こちらサイドから議論が出ていますし、だんだんあとになるほどタネがなくなりますから、どうぞ。
〇委員
今の委員のお話、私も実は同じことを考えていたのですが、これは大変面白い資料で、しかも詳細を極めておりまして、ずっと参考にしていけると思うわけですが、似たようなものを昭和60年の税制改正のとき、中曽根内閣ですが、作ったことがございます。そのときは、どちらかといいますと、構造の変化、社会の変化に沿うように税制をつくり変えるということで、一定の目標に向かって世の中を引っ張っていこうというものではなかったと思うのです。ゆがみ、ひずみの是正ということが盛んに言われましたし、結局、突き詰められて議論の結果出てきたものは、直間比率の是正であるとか、間接税体系を個別間接税から幅の広い間接税に改めるとか、あるいは、貯蓄が行き過ぎなので、マル優を、廃止とまではいかなかったのですが、大きく縮小するというようなこと。そういうようなことがあって、一つ、貯蓄の問題は世直しという感じであったのですけれども、あとは、どちらかというと世の中の実情に沿った税制にするということであったと思います。そのときに、実情の変化というものの中核は、やはり人口構成の変化というものであって、あのころがそもそもこの議論の始まりであったように思うわけです。
実際問題として、今でもこれを見て一番大変なのは何かというと、人口問題だと思うわけですけれども、このような問題について税制で立ち向かうというのは、実は非常に難しいと思うわけですね。もし抜本的に解決しようと思えば、それは移民の問題であろうかと思いますし、税制で何かやれるとすれば、高齢者が働いたり、あるいは、家庭の主婦が労働市場に出て行ったときに何か優遇措置を講ずるか、そういうようなことに限られてきて、抜本的には変え得ないような気がするわけです。
しかし、もう一つ、抜本的に変えるというか、税制で世の中をリードしようと思いますと、理想とする「あるべき税制」ではなくて、「あるべき世の中」みたいなものをまず決めなくてはいけないわけですけれども、それが本当にうまくいくのか。できればすばらしいことだと思いますけれども、本当にそういうことに国民的合意が、今、得られるのか。離婚の問題一つとっても、離婚が悪いと考えている人の比率はだんだん下がってきているわけですから、なかなか全体の合意が難しいような気がするわけです。
一つ、目標を変えたほうがいいといいますか、手がかりを変えたほうがいいと思いますのは、先ほど調査課長がちょっと触れましたけれども、例のGDP、成長率の議論です。全体の国家としての成長率ということをやっていきますと、この人口構成の変化、人口の総数の変化ということを考えますと、未来は真っ暗ということになってしまいますので、検討している1人当たりのGDP、つまり、国民が豊かになればいいと、そういうところにターゲットを置いていきますと、いろいろな問題が解決しやすいのではないかと思います。
私は、政府やいろいろな有識者の方の主張されます言葉の中で、非常に違和感を覚えるものがありまして、それは何かといいますと、「豊かさが実感できない」という言葉なんですね。豊かさが実感できないというのは、ちょっと表現がきついのですが、思い上がった言葉のような気がするわけです。世界で有数の1人当たりGDPを持っていながら、豊かさが実感できないと言っているその感覚というのは、ちょっと理解できないところがあります。「足るを知る」といいますか、そういう考え方で、ものの考え方、視点を変えてみればいろいろなことが解決できるように思いますし、税制の取り組み方も見えてくるのではないかというふうに思います。
〇委員
ありがとうございました。貴重なご意見だと思います。
どうぞ。
〇委員
今の委員の続きで、私もいつも思っているんですけど、こういう数字を見ると、必ず前年度比何%増というのが出るんですよね。いつまで、前と比べて伸びなければいけないと思い続けるのだろうか、というのがよくわからない。今もおっしゃったように、世界の中で見たら、日本の豊かさというのはすごくて、これ以上のぜいたくをもっともっとしようとするのは、私は、人類として不遜であるというふうに思っているので、今与えられたものの中でどうやっていくかというふうに考えれば、本当はもっと活力が出るのではないかと思っています。
この資料を見ていろいろなことを考えたのですが、結局のところ、いろいろなものの単位を個人にちゃんとしなくてはいけないのではないか。さっき、夫婦で子供2人標準家庭と、ずーっとおかしいなと私は思っていましたし、稼ぎ頭が亭主だというのもおかしいなと思っていましたし。まあ、それはそれでいいんですけど(笑)。個人にすればいい。そうすると、専業主婦というのをどうするのかというのがあるわけですけど、私、主婦の仕事というのを数字にあらわすのはけったくそ悪くていやなんですよ。給料に合わせたら、亭主のパンツを洗うとか、くさい靴下を集めるとか、そういうのが何ぼだからやるとか、そんなアホな話ではないと思いつつもですよ、もしこれを個人に全部するようにするとすれば、それも何か評価しなくてはいけないのだろうというふうに思っているんですね。
ただ、今まで配偶者控除とか、配偶者特別控除とか、「かわいそう」みたいな発想で主婦を置いておくことはやはりおかしいので、税金を払わないのは一人前じゃないという意識をみんなに広めなくてはいけないだろうと。ここに根っこがあると思います。
最近、皆さんもご存じかもしれませんが、大阪のほうで障害者のNPOをやっていらっしゃる、竹中ナミさんという方が、障害者をかわいそうな存在に置いてくれたらいやだ、税金を払わせてくれ、そういう働きをしたいんだとやっている元気な方がいらっしゃるんですけど、そういうことなのではないかというふうに思います。
もう一つは、企業が今まで、だいぶ個人でやらなければいけない部分をやってますよね。だから、そこも離してしまう。源泉徴収から始まってあるわけですが、年金だとか、保険とかいうのが、企業と個人がずっと一緒にいくという前提で企業に押しつけてきた部分があるわけですけれども、それも全部払うという話にしなくてはいけない。
もう一つは、少子化の問題です。まさか“産めよ増やせよ”というわけにはいかないんですけど、2つ問題があると思います。
1つは、結婚しないわけですよね、子供を産む産まないの前に。男の人の立場からすると、する必要ないのよね、全然(笑)。わかります? 私も男だったら、しないと思いますものね。そんなアホくさ、そんなうるさい女房抱えて、行動は制限されるわ、お金の使い方も縛られるわなんて、そんなのやらなくたって、別にセックスだって食事だって勝手に妻なしでオーケーなわけです。こういう社会になってしまったのですから、これはする必要ない。ただ、別に「してもいいけど」と思っている人はかなりいると思うので、何かちょっと肩を押す方法があるかなというふうに思っています。それが1つ。
もう1つは、少子化対策といろいろ言っているのと、政府が片方でやっている男女共同参画というのが、私はバッティングすると思っているわけです。ジェンダーフリーなんて言葉、私、ほんとにけったくそ悪くて、フリーにできるわけないでしょ、男と女は違うんですから。バリアフリーとかスモークフリーとか、なくすなんて話はあり得ないですよ。それにのっちゃった馬鹿な男の人たちがいるわけで、おかげで世の中少しおかしくなっているというふうに思います。
私も子供2人を育てて仕事をしましたけれども、妻と仕事というのは両立するんです、よっぽどダメ男じゃない限りは。母と仕事というのはかなり大変なので、もし本当に少子化が問題だ、子供を産んでもらいたいというのであれば、社会がちゃんと見てくれるという形を見せない限り、女の側からしても、ルビコンじゃないですけど、一度仕事の面白さを経験したら、いやですよ。うちに帰って、亭主1人と子供2人のためにメシつくって待ってますなんて、そんな馬鹿馬鹿しいこともうやるのいやよ、と。どっちかでもないんですよ。だったら、よほどのことをしなくてはいけないというふうに思います。
私はフェミニストじゃないんですけど、平均寿命の話といい、種族として平均寿命がずっと多くて、多いのがいいかどうかは別として、これはものすごい権利だと思うんです。
それと、さっき貯金の使い方がありましたね。妻の63%が決定権を持っていると。日本の女の人は虐げられているという指標を出して、国会議員の数が足りないとか、会社の管理職が少ないとかいうのをすぐ出すんですけど、こういう数字を出して、「日本の女は実を取ってる」(笑)ということだと私は思っているのですが。
それで、さっきの個にするというのは、いつか資料で見たら、たしかイギリスは全部一律ですよね。簡素化の最たるものになるわけです。日本の場合、何歳以上の子供がいると何たらかんたらってやっているから、わけわからなくなっちゃうわけで、なるべく早くそういうのを個人にする。おかげで、みんなもちゃんと自立した個人というのができてくるのではないかというふうに思います。
〇委員
ありがとうございます。さあ、だいぶ議論が白熱してきました。
どうぞ。
〇委員
ある委員の発言から始まった議論にややのっかって言いますと、要するに起こっていることは、日本の社会が非常に大きな転換期にあるということだと思うんです。例えば日本型の経営ということも出ましたけれども、もっと広く日本型の経済システムというものがバブルのころまでは幅をきかせていた、それが「失われた十年」を通じてつぶれつつある。それから、伝統的な社会とか、価値観とかいうものがだんだん変わりつつあるという状況で、では、何をしたらいいかということだと思うんですね。
税で考えるのだったら、大きく分けて2つの方向がありますというのは、たぶん委員がおっしゃろうとしたことで、一つの方向としては、ひとことで言えば、制度とか価値観が多様化しているわけですから、税はそういうものから中立であるべきです、という考え方。いろいろな考え方に関して中立な仕組みに税をつくり変えていったらどうですか、という考え方がたぶん一つある。
もう一つが、委員がおっしゃったように、むしろ日本はいろいろな意味で危機的な状況にあるのだから、ある方向に社会を動かす方向で税を変えたらいいのではないか、という考え方だと思うんですね。
私の意見は、正直言いまして委員と逆というか、少なくとも委員とはそう完全には一致していなくて、税の本来の仕組みとしてはやはり中立であるべきだというふうに思います。そうではなくて、ある方向に動かすことが何か税としてできるのだったらば、それは地方に任せて、地方の間の分権的な競争で、ある地域はある価値観、ある制度を伸ばすような税制にする、別の地方は違うことをする。そして、地方の競争の中から望ましい制度とか価値観が生まれてくることをねらう。これが、たぶん日本の国としての立場であって、国の制度としての税はやはり中立であるべきではないかと思います。
ただ、さっきの家族と個人の例で言えば、中立であるということは、たぶん個人に税の軸足を移していくことだろうと思うのです。それはどういうことかというと、家族形態に関して、今、多様化が起きている。つまり、古い伝統がつぶれているだけではなくて、多様化しているのだというふうに考えるべきであって、一つの家族形態を推進したり、別の家族形態に負担を負わせるような税制であるべきではない。そうだとしたら、いろんな家族形態のそもそもの根っこにある個人というものに税を移していくことではなかろうかというふうに思います。
それから、そうは言うけれども、人口高齢化とかそこら辺についてどう思うんですかということに関して言えば、私は、今まで税はヒューマンキャピタルということに関してほとんど重きを置いてこなかった。そういう意味で言うと、例えば育児であるとか、教育であるとか、そういうことに関して何らかの税が出ていくことがあってもいいのではないかというふうに思います。
ついでに、先ほどの委員が最後におっしゃったこととの関連で言えば、男女ということで言うと、今までは女性が差別、差別という言い方がいいのかどうか知りませんが、あまりうまく税で扱われていなかったわけですけれども、それを女性を優遇する税制にすべきかというと、私はそうではないと思っています。例えばですけれども、あくまでも中立であって男でも女でも同じだ。そういう意味での中立的な税に組みかえていく。どちらかに引っ張るというのは、最後にもう一度繰り返しますけれども、それは地域に任せるべきだというのが私の意見です。
〇委員
これも一つのご意見ですね。
どうぞ。
〇委員
いろいろな意見が既に出ているのですけれども、たまたまこれまでの基礎小にいた者として、あるいは、この前の税調の答申を読んできた者として、前の3年間で税制はどうあるべきかということを議論してきたわけですよね。ここでは、どういう議論をするか。もちろん、今日、調査課長の説明されたことも重要だし、その中で、個人をベースに、あるいは中立性を重視してというような議論があるのでしょうけれども、税と絡めてさっきの話を整理できないかとずっと思っていたんです。所得税ですけれども、今までやっていた課税ベースの話も、今日さんざん出てきた家族の変化ということできちんと整理できるだろうと。
配偶者特別控除の改革ができたというのも、実は今日説明されたように、これまで典型とされてきた家族が必ずしもそうではないと。配偶者特別控除と、今まで考えられないようなことができたという流れでいけば、それでは扶養控除もどう考えるんだ、あるいは、少子化に対して、口先だけではなくて、児童手当てというか、タックスのクレジットのことも考えるのかとか、非常に重要な問題が、家族という問題は課税ベースで整理されるし、これもそういう形でやれるのではないか。
それから、せっかく少し時間があるというのならば、第2として、社会保障に税がどうかかわるのかということも議論すべきだと。この点、今日はあまりお話がなかったのですけれども、昨日、総会である委員の指摘された、社会保険と税がどう絡むんだと。高齢になって所得がない人に税を払えといっても、それは無理。しかし、保険料は払うべきだろう、利用料は払うべきだろう。それが払えない人ももちろんいる。払えないときに、例えばですけれども、死んだときに貯まったのを持っているお金から払わせることはできる。それをやろうとしたら、やはり社会保険と税を一緒に考えなければいけない。しみじみこの頃思うのは、高齢者に払わせない限り制度はもたない。そう考えてくると、税と社会保障も重要だと。
それから第3点として、地方財政についてもいろいろな問題があると思いますけれども、税源移譲といっても実際税源移譲ができるのか。どの県とは言いませんけれども、非常に経済力が小さい、徴税努力が劣っているところに税源移譲しても、かえって損をするだけだと。
次は、これで終わりですけれども、企業再生について去年あたりR&Dの改革をしたわけですけれども、ある意味であれは非常に追い風になったと思います。経済が今活性化してきて、所得も生まれてきた。そこでがっぽり控除できますから、結果的には僕はいい税だったと思うのですけれども、それもフォローアップすべきだし、それから、少しよくなったところで企業再生と税ということも考えるべきだし。だから、幾つか今日お話しになったところを、当たり前ですけれども、税という形で翻訳して、いずれ何カ月後かに、あるべき税制をさらに現実化するための戦略的なアジェンダとして整理すべきだというのが感想です。
〇委員
委員のご発言のしり馬に乗るわけではありませんが、最後に提案しようと思ったのですが、ちょっと宿題を出したいと思っていたんですよ。アジェンダをどういう形で皆さんがお考えかということを、3つ4つ、あるいは5つ6つ、少し時間を置いて考えていただいて事務局に出していただきたい。これは、前回の3年前の基礎小でもやりましたので、同じことをやりたいと思っていますが、これはあとで再度提案したいと思います。
どうぞ。
〇委員
税に全く素人なものですから、とんちんかんなことを言うかもしれません。
調査課長の資料、大変よくできていて、参考になって、これ、原稿を書くときに使えるなと思って楽しみにしているのですが(笑)、ただ、少し曖昧なところが残されているような気がしています。景気の循環による影響というのはどの程度あるのか。デフレと言ったらいいのかわかりませんけれども、そういうことの影響が全部構造変化というふうにくくられていますけれども、果たしてこれが全部構造変化というふうにくくれるのか、あるいは、景気の循環のところに引っかかっている話があるのかどうかということを、これから少し精査をしてみたいなというふうに思ったのが一つです。
それから、これは会長がどういうふうにお考えになるかわかりませんけれども、政党の税の担当者をこの会に呼んで話をさせるというか、してもらう。皆さん方は一体何を考えているのであるかということをやって、キャッチボールが少しできると、どうなのだろうかというようなことを考えていました、従来から。そんなことでうまくあれができれば、かなり激しい議論が行われて、そこから何か生まれることがあるかなあというふうに期待しております。ちょっととんちんかんかもしれませんけれども。
〇委員
最後におっしゃった政党のことは、個別にはこれまでいろいろ接触もあり議論もしましたけれども、税調としてできるかどうか。いろんなしきたりというか、設置のそもそもの縛りもあるかもしれません。ちょっと検討させてください。面白いご提案だとは思います。
どうぞ。
〇委員
今日の調査課長のご説明は、主に社会・経済の構造変化といいますか、それと税制との関係を考えようということでしたので、それ自身はむろん異議はありませんし、中身についても若干議論したい点もありますけれども、これ、政府の変化が入っていないのは何か理由がありますか。つまり、法人化したり、エージェンシー化したりと、政府の規模ですとか構成が、この間かなり変わってきて、あるいは分権化ということもある。
私が言いたいことは、そういう変化がどういう財政需要を生み出していくのかということが、かなり重要な意味を持つのではないか。つまり、税の議論というのはここでは、中立性とか公平性という議論でほとんど今のところやっていますけれども、根本は、税収をどうやって確保するかということである。そうすると、むしろこれから、国、地方、あるいは別の委員が言ったような社会保険と、やや財政とオーバーラップしたようなことも含めて、政府というのは一体今後どういうふうに変わっていくのかなということが、どうしても税の議論をするときには直接的には必要になるのではないかというふうに思っております。
あと、すみません、2つだけ。例えば雇用、就業形態が非常に多様化するということが今出てまいりましたけれども、単に多様化するというだけではなくて、ある1人の人が、男性でも女性でも、生涯の中であるときはフルタイムだったり、あるときは引退してみたり、またパートに戻るというように、生涯の中でも同時並行的に起こってくることがあると思いますので、そういう点は、私、税制を考える上でもかなり重要な意味をこれから持つのではないかと思っております。
もう一つ、人口の問題というのは、少なくとも20年くらい先まで読めるものですから、皆さん関心を持つのは当然だと思いますけれども、私の今の一番の関心は、平均寿命と健康寿命がわりと並行して伸びているんです。ところが、労働寿命がなかなか伸びない。むしろそのギャップが、いろんな税制ですとか、これは社会保障もそうですが、非常に大きな影響を及ぼしてきているということがあると思います。ですから、寿命というのは、単に平均寿命を見てもしようがないところがあって、特に労働市場にどれだけとどまれるかというような寿命で、少し考えていただくほうがいいのではないかなと思っております。
〇委員
労働寿命というのは、会社や何かの定年とかに引っかけて、いつまで社会に貢献できるかということですね。
〇委員
必ずしも定年だけではないと思いますけど。
それからもう一つ、ドラッカーですけど、ドラッカーが「組織の短命化」ということを言っております。企業だけではなくて、政府も、実を言うと、ゴーイングコンサーンとは必ずしも言えないような、組織としてかなり短命化。つまり、企業の集中合併、開業ですとか、そういうものを含めてかなり短命化してきているということを指摘しているのですけれども、そういうようなことも、私は税制を考える上でやや気になっている点でございます。
〇委員
調査課長、第1点、政府をなぜ抜いたか、あるいは、政府としてどういうお考えを調査課長としてお持ちか。何かあれば。
〇事務局
政府につきましては、まさに財政面の話は情報的には共通認識があるということで、差し当たりここでは、今まで言葉としてはあるんですけれど、数字としては見たことがないようなことをできるだけ集めたいということで、横軸に、グローバル化、高齢化、情報化といった現象を置きまして、縦軸に、個人、家族、企業、地域、こういうふうな主体をマトリックスとして頭に置きながらデータ整理したということです。国は、逆に、そういうものをちょっと違う角度からものを見ているイメージかなということで、まず、そちらの部分だけを整理させていただいたということなので、今のご指摘がございますので、どういう形で整理できるかわかりませんけれども、データ的にもしもできればやってみたいと思います。
〇委員
そうですね。いずれまた検討しましょう。
〇事務局
はい。
〇委員
どうぞ。
〇委員
私も初めて議論に参加させてもらったわけですが、いろいろ面白いデータをお聞きして興味深かったのですけれども、とにかくびっくりしたというか、未婚の率が30~34歳まで、男性で4割以上でしょう。私は団塊の世代ですけれども、我々の世代まではとても自分でメシは作れないなと。
〇委員
いや、売ってるんですよ。
〇委員
まあ、我々にはちょっとさみし過ぎて、結婚しないとこれはやっていけないなという気はありますが、この人たちがやっていけるのかと。そういう意味では、こういう人たちもこの場にいて本来なら議論してもらったほうがいいのかもしれないけれども、とにかくこんなにいるということは、担税力があるのかなというふうな気もしますが、一方でフリーターがこれだけ増えてきている。それも含まれているわけですよね。この辺はどうなのかなと。他の委員がおっしゃったように、課税してフリーターをやめさせろというふうな議論もあるかもしれないけれども、個人の議論は別として。
ただ、あるべき好ましい方向に日本社会を持っていくように税制も一応対応していかないと、これはまずいのではないか。例えばマクロ的に言えば、確かもう労働力人口は減っていくわけですよね。成長率至上主義ではありませんが、少なくとも潜在成長力の急激な低下は止めなければならないのは当然だと思うのです。そうすると、労働力の面でどうするのか。それから、技術革新の面で、別の委員がさっきおっしゃったように、R&Dの問題とか、この辺はきちんとフォローして押し上げるような形に税制も、国の制度、仕組みの一つですから、国全体としてそういう方向を目指したほうがいいのではないかなというのが感想です。
〇委員
どうもありがとうございました。
どうぞ。
〇委員
簡単なコメントが3つあるんですけど、1つは、特に今日の資料ですと、個人のところを半分くらいやったわけですけれども、個人の問題はたしかに税も非常に重要ですが、社会保障制度の制度改革の話が重要な点として入ってきます。先ほど、保険料と税負担との関係が重要だという話が出たのですが、それもそうですけれども、それ以上に社会保障制度自体をこれからどういう具合に、今のままでもたないことはわかっているわけですから、医療にしても、年金にしても、介護にしても。
その中で、50年くらい先の話をするのであれば、税制をどういう形で絡めていくかという議論をしないと、単に保険料と税負担の話だけだと、こういった長期的な世代構成の大きな話に対して議論するとすると、問題が少し狭すぎるかなという気がします。それはもちろん、税調でやるべき問題かどうかは別ですけれども、この議論というのは、社会保障制度全体を変えることのほうが税制の話よりはもっと大きな問題かなと。その一部として税の話が出てくるのかなという気がしました。
それとの関連で、税制の議論をどのくらい先のところまで織り込んで議論するかというところですけれども、たしかに50年くらい先に3分の1くらいの方が65歳以上になるというのは、今の人口構成からすると、かなりの確率でそうなると思うんですけれども、ただ、今から50年後の税制の話をしてもしようがないわけで、要するに税というのは、そのときそのときで抜本的に変えようと思えば数年で変えられる話なわけですから、5年、10年くらい先のことはにらんで税制改正をするのはいいとしても、数十年先のことまで考慮して、ここ2、3年の、あるいは抜本的な税制改正をするとしても、現在の税制の議論にどこまで織り込んでいくべきかというのは、これまた別の議論ではないかと思います。
基本的には、消費税にしても、所得税にしても、法人税にしても、大きな税の構造というのはそれほど差し当たって変える必要はないと思いますので、税率、その他、いろいろな課税ベースの問題等があるとして、こういった大きな社会構造の長期的なトレンドに税制の対応の守備範囲をどこまで考えるかというのは、また別の議論かなという気がします。
最後の税制の中立性に関する議論ですけれども、私もある委員と同じように、基本的には税というのは中立的であって、何らかの政策的な配慮が必要なときにそれなりの対応が必要だという立場に立つのですけど、問題は、どういう税制をとれば完全に中立的になるかというのは、これは必ずしも明快ではなくて、例えば勤労所得税にしても、累進的な税制にしている限りは、個人ベースにしても何らかの形で勤労意欲阻害効果があるわけで、完全に経済的な行動にニュートラルであろうとすれば、人頭税しかないわけです。この人頭税にしても、出生率等には当然影響が出てくるわけです。それも経済的理由で意思決定が行われているとすれば。もちろん現状の税制で、家族形態等の観点から、阻害効果を持っているものについて、それをより中立化する方向は必要と思うのですけれども、問題は、それはある意味で程度問題かなという気もします。
その意味では、せっかくこの基礎小委で議論する以上、中立性を阻害している大きさがどのくらい深刻なのかというのをある程度データ等で、これは非常に難しいと思うんですけれども、あえてそういったのが出てくれば、こういったところをより中立化することによって、メリットがあって、それが国民経済全体にとってもプラスになることが示せるわけですから、説得力がより出てくるのではないかと思います。
〇委員
中立性だけではなくて、活力も併せて考えろという人がいっぱいいますからね。まあ、それはまた議論しましょう。
ほかにいかがでしょうか。
どうぞ。
〇委員
大変詳細な資料をいただきましたが、一つだけ、資料の中で質問をさせていただきたいのです。4ページの人口の推計の中に、これはおそらく中位推計だと思うのですけれども、低位推計の数字というのがあると思うのですが、それを教えていただきたいのです。というのは、2050年の低位推計だと人口が幾らになるかということと、それから、そのときの特殊合計出生率は幾らで計算していたか、ということをちょっと教えていただきたいのですが。
〇委員
今でなければ、また次回でも……。
〇委員
今なければ、後で結構です。ちなみに、おそらく100年後の推計人口というのも出ていると思うんです。私は以前会議に出たのを記憶していますが、そのときは、50年後の低位推計の人口が9,200万人で、100年後は5,000万人という数字が出ていたと思います。そんなになるわけないではないかということですけれども、このままの出生率でいけばそうなるということですから、やはりそういうことを念頭に置いておかなければいけないと思うんですね。
それで、意見ですけれども、ここでこれだけの頭脳の方が集まっていらっしゃるわけですが、皆さん意見を言われるのは、やはり国民の幸せというか、いかに不安のない人生を送るようにするかということを、税制を通じてどうやって実現できるかということではないかと思います。私は、税制の中身はまだよく理解していませんけれども、今、人口が減ってきて、2006年から総人口が減るということを国民はやはり意識をしていると思うのです。人口が減っていく中で、もうすでにその矛盾があらわれてきているということで、非常に不安感を持っていると思います。これは、昨日もちょっと申し上げましたけれども、経済状況と人口の減少による不安感というのは、相当国民の潜在意識の中に入っているのではないかと私は思います。
したがって、そういう中にあって税制をどうするかということを考えていかなければいけないので、中長期的な観点から税制のあるべき姿というものを今まで議論されてこられたということはわかっていますけれども、その際に、日本の社会というか、先ほどもどなたかおっしゃっておられましたけれども、どういう姿を税制調査会としては想定するのかということをやはり議論して、それに対応する、あるいは、そうならないようにするために、税制をどうしたらいいかということを議論していくべきではないかと思います。
昨日も申し上げましたけれども、少子化が当然の前提のように話されていますけれども、少子化にならないようにするために税制は何かやるべきことがあるのだろうかと。少しでも人口の減少を先延ばしすることが税制でできるのであれば、やはりそれは税制として活用すべきだと思います。
先ほどから、税制というのは中立であるべきだという議論が出ておりますけれども、たしかに発展途上のときは中立でいいし、減税をやるというのだったら、そのつどでもいいと思いますけれども、毎年毎年、税制改正をして負担を重くするというようなことをやっていったら、国民は不安でたまらないと思います。したがって国民に税の負担を重くするのであれば、それはそれでそうしなければならない理由があるわけですから、それをちゃんと説明して、そして長期的にそういう目標設定をして、それはもう変えないというようにしていかないといけないのではないかと思います。
特に社会保障の話が出ておりますけれども、社会保障というのは、個人の負担と税制をどうやってミックスさせていくかということを、税制調査会として、ちょっと越権行為かもしれませんけれども、社会保障制度はどうあるべきだ、その中で税制度というのはどういう役割を担っていくのか。それから国と地方の関係も、国と地方というのはどうあるべきだということを議論してもらいたいと思うのです。その中で国税と地方税はどうあるべきだ、というご議論をしていただけるとありがたいと思います。
〇委員
最近、越権行為という言葉はなくなりまして、方々でやり合おうとしていますから、昔とは違って、社会保障もやる、国と地方の関係もここでやる、歳出面もやるということもこれからの大きな課題になります。ぜひぜひ、その視点からご発言いただきたいと思っていますから、大いにやりましょう。
だいぶ時間も過ぎてきましたが、どうでしょうか。この際と思っていますけれども。
〇委員
すでに皆様がいろいろご意見を出されたのですが、先ほどの調査課長のご説明で、今の状況がどういうふうに置かれているかということを認識するのは、非常に重要なことであると思うのです。例えば、人口の図の4ページを拝見しましても、65歳以上の方がすでに2,000万人を超えている。こういう状況で、さて老年者控除というものがそのまま存在していていいのだろうかということを見ると、やはり考え直さなければいけないなという印象を受けるわけです。
ただ、ほかの問題になってきますと、ここから先また十年先を予測する必要があるだろうか、と。会長が何度もおっしゃっているように、中期答申をはじめ、特に中期答申ですが、10年先を考えてこういう税制のあり方をということでありますので、やはりこの資料のもとで将来のことを考えて税制も構想し構築していかなければいけない、これが一つあると思います。
ただ、一つ気になりますのは、シャウプ勧告なんですけれども、あれは1949年でしたですから、50年どころか、60年前のものである。にもかかわらず、今の時代になってもしょっちゅう引用されるわけですね。世の中は非常に変わっているのだけれども、ああいう税制の提案したものがいまだに持ち出されて、特に事業税の外形標準なんていうのはそれを復元したようなものですから。そういう意味でここの構造として、何十年たっても変わらない部分と、時代時代に対応して動いていく部分と、こういうものがあるんだなという感じがいたします。
ですから、今日のこれを基礎に置いた上で、なかなか難しいと思うのですけれども、今後10年くらいは視野に入れまして、すでにできている中期答申、これを具体化する作業、かなり難しいと思いますけれども、そういう作業をやっていかなければならないのかなという感想を持ちました。
〇委員
決意表明ですな。ほかにいかがですか。
どうぞ。
〇委員
今日、初めてこういう広範な問題についてフリートーキングをやって、いろんな意見が出たんですよね。事務方は全部メモしているから、大別して一番面白いと思ったのは、税制は中立であるべきか、何かに使うべきかという話ですよ。子供をたくさんつくれということは、使うって話だから。これは根本論みたいなもので、昨日、ある委員が言っていた活力、あれは経済の話から言ってるんだけどね。
そういうことを含めて、多様な意見が出たと思うんですね。だから、それをちょっと整理してもらって、外に出すことに一応なっているんだけど、僕はメモしたことは、よけいなメモになってるから実際はよくわからないから、あなたやってるんだから、我々に配ってもらいたいんだ。せっかくいろんな意見が出たんだから。
〇委員
いや、それは事務局、十分やってますから大丈夫です。ご心配なく。
主税局長、じっとしてると苦痛じゃない? 何かコメントあるんじゃないですか。あれば、どうぞ。
〇事務局
大変貴重なご議論をいただきまして、ありがとうございます。
先ほどある委員が言われた話につながるのですが、実は私どももちょうど昭和62年、消費税導入のころに、まさに現状はどうなっているかと。サービス化とか、高齢化とか、そういうのを考えて消費税改革みたいな議論をやり出したわけでございます。今の時点で、それではもう一つの要因として、今何が起きているか、まず現状を直視しないとしようがないだろうと。今見ていただいた幾つかの資料の中にも、離婚率の話とか、外国人との結婚がいかに多くなっていることとか、あるいは、議論はなかったですけど、特許件数は今や日本のほうが出すほうが多くなっていて、日本が受け取る一方だったのが違っているとか、まさにそういう意味では大きく変化してきている。
そういう中で、ある意味ではもう一つの切り口として、国際社会の中に間違いなく取り込まれつつある日本というか、取り込まれてしまった日本の税制というのをどう考えていくのか。それは、OECDの場で議論はやっているわけですけれども、もっと身近なアジアとの関係なども考えていかなければならない。そういう意味で、ぜひこの場で我々も現状をしっかりと見据えた上で、どういう税制をもう一回きちっと考えるかというのをお願いしたい。
それから、特に所得税というのを考えると、個人単位か否か含めて、10分類の所得税という今の日本の所得税がまさに合わなくなっていることが多数あるわけでございます。そういうのを考えるに際しても、まず現状をしっかりと認識するところから始めさせていただきたいなという思いで、とりあえずこのたたき台の資料を……。
〇委員
そうですね。
〇事務局
はい。ですから、いろいろご議論を、こういうのはどうだ、こういうのはどうだというのを……。ただ、残念ながら、これをやっていて調査課長が一番苦労したのは、データがないという事実がありまして、このあたり、こういう部分はこういう詳しい人がいるとか、ご紹介いただけたら何なりとやらせていただきたいと思いますので、ぜひ、よろしくご指導いただけたらと思う次第です。
〇委員
はい。
自治税務局長、地方のほうから見て、何か今の時点でおっしゃりたいことがあれば、どうぞ。
〇事務局
時間もないのですけれども、今、地方分権という大きな流れの中で、三位一体改革とか、国と地方をめぐるいろいろな問題がかなり間近な問題として起こっているのも事実だと思います。そういう中で、税のあり方というのは非常に大きな比重を占めておりますので、国と地方の税のあり方とか、こういうことにつきましては、従来この税調の中で、詰めた議論というのはなかったのかなという印象を持っているのですけれども、どういう切り口で、どういう議論をしていただくかということはともかくとしましても、やはりこれから、大きな政治行政上の一つの政策の柱になっていくことだと思いますので、この税調の中でもそういうことについていろいろご意見等をいただいて、我々もそれを受けて、いろいろと考えていかなければいけないかなというふうに思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
〇委員
詰めた議論をやりたいので、ぜひぜひご協力ください。
最後になって失礼ですが、政務官、何かご感想なり、さっき、政党とやろうなどというお話も出ましたので、政治家の立場から見てご意見をお伺いできればと思いますが。
〇事務局
このたびの政務官の異動で、財務大臣政務官を拝命いたしました。どうぞよろしくお願い申し上げます。
今日は、初めてこの小委員会に出席させていただきまして、委員の先生方のいろいろなご意見を拝聴させていただきまして、私自身、政務官として財務省に参りましてから日も浅いものですから、まだいろいろ説明を聞いているところですけれども、議員になる前、ずっと私はサラリーマンをやっておりました。23年間サラリーマン生活をやっていて、今の税制、私なりの感想を述べさせていただきますと、納税者としての意識というものを、これからの将来に向けてどうしたら変えていけるのかということが、大きなポイントかなというふうに思っております。ご意見を拝聴している中で、世の中の実情に合わせた税制にするのか、それとも世の中の実情を変えていくための税制にするのか、これは大変重要なポイントであると思っております。
今日配られた資料の中には、私も相当ショックを受けている数字もございます。ただ、それが今の世の中の進みである。では、これを変えていくかという議論と、その中でやっていく税制という議論を一緒にすることも、やはりこれは非常に難しい問題ではないか、そういうふうに感じました。
それと同時に、従来型のゆがみを直す税制改革ということではなくて、今のトレンドを正確に把握した中でのご議論も大変重要である、そういうふうに思います。とどの詰まりは、私はサラリーマンを長くやっておりましたので、納税者としての意識は非常に薄かったなというのが個人的な実感です。実際、私がサラリーマンをやっているときにひしひしと感じたのは、納税者であるという自覚が一般の事業者に比べて薄いのは、やはり日本の企業風土というものがあったろう、そういうふうに思いますし、今日の資料を拝見しまして、会社に対する帰属意識もだいぶ変わってきているというところは、これは一つの世の中のトレンドではないかなというのが正直な感想でございます。
これからも、ご議論を聞かせていただきまして、一生懸命頑張りますので、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
〇委員
こちらこそよろしくお願いします。
もう時間になりましたので、終わりに今後のことをお話しし、締めたいと思います。
ある委員から何か事務局にまとめてくれとボールを投げていますが、私は皆さんにまず、やりたいこと、あるいは必要と思うことをまとめて出してもらいたいと思います。今月いっぱいに、ファクスでもEメールでも結構です。項目だけでも結構です。こういうことが重要ではないかという意味で、優先度でもつけていただいて出していただいて、それを踏まえて、この基礎小、あるいは税調の問題意識という形で、今日の議論も踏まえて事務局でまとめていただければ、今後の柱ができるのではないかと思います。よろしくお願いします。そういう意味で、今月中、遅くとも今月いっぱいに事務局にご連絡ください。
それから、選挙が行われる間、ちょっとこの基礎小を開くのもと思いますので、次回は11月中旬になるかと思います。その後、例の年度改正の議論にすぐ飛び込むかどうか、その状況は今はわかりませんけれども、そういう段取りで考えております。次回の開催日程等々決まり次第、また事務局からご連絡いたしたいと考えております。
それでは、時間になりました。今日は非常に活発なご議論をいただきまして、ありがとうございました。
これにて散会いたしたいと思います。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。