第23回基礎問題小委員会 議事録
平成15年2月4日開催
〇委員
それでは、時間になりましたので、基礎問題小委員会、23回目になりますが、開催させていただきます。
まだお見えになっていない方、数人いらっしゃいますけれども、いずれ、お見えになると思います。
今日から、今年の税制改革論議が始まるわけですが、大きなねらいははっきりしておりまして、例の昨年の6月に出しました「あるべき税制」、これを一歩一歩踏み固めていくことだと思っています。それから、17日の総会に総理大臣においでいただきまして、皆さんも御出席だと思いますが、そのあるべき税制、残ったものを、引き続き、不断の努力をしてやってくれと、そういうことがあり、かつ、少子・高齢化、そういうものの中での税制、国と地方の関係、こういう形で幾つか宿題を我々に出してくださいました。
いずれにいたしましても、9月にこの税調は3年間の任期を終えるわけでございますので、夏ごろまでには、俗に言われます「中期答申」をまとめなければいけない。そういう意味で、夏ごろにまとめる中期答申を頭に入れて、今年の審議を今日から始めようということになろうかと思っております。
今日は、前半で、幾つか御報告いただく材料がたまってしまいましたので、来年度税制改正の話も含め、アメリカの情勢、あるいは外形課税の話等々ございますので、それをひと通りこなしたあとで、後半に、少子・高齢化と税制の中の一環として、人口の動態をいろいろお話を聞こうと思っています。国立社会保障・人口問題研究所の所長に来ていただきまして、後半はじっくり、超高齢化のいうなれば今後の行く末等々につきまして御議論をいただき、御質問したいと思っています。
では、早速最初に、今後の課題になります、経済・財政の状況につきまして、かいつまんで事務局から御説明を受けたいと思います。
では、事務局、よろしくお願いします。
〇事務局
まず最初に、縦長に「資料」と書いてあるものでございます。これは何度かご覧になっている内容でございます。はしょって御説明いたします。
目次をおくりいただきまして、「平成15年度税制改正案の概要」となっております。1ページ目が法人関係、2ページ目が相続・贈与税、3ページ目に金融・証券。これにつきましては後ほど一課長から御説明いただけると思います。土地流通課税の軽減、それから、個人所得課税の配偶者特別控除、消費税の中小事業者に対する特例措置の見直し。次のページに、酒税・たばこ税、その他、NPO税制をはじめとするその他の項目、ここに書いております。
地方税、後ほどといたしまして、2ページほどめくっていただきまして、折り込んでございますA3版、大判でございます。これは、先ほど会長が言及されました、昨年6月の「あるべき税制の構築に向けた基本方針」をまとめたものでございます。
一番上に「基本的考え方」、四つの視点がございます。「21世紀を見据えた社会経済情勢の変化への対応」ということで、個人所得課税に始まり、さらに「その後の課題」ということで、個人所得課税、さらに消費税と書いてあるものでございますが、お気づきのように、下線が引いてある部分、これが、15年度税制改革において取り上げたそれぞれの項目でございます。逆に申しますと、線を引いていないところ、これが、総理がおっしゃった、いわゆる課題が残っているというふうにされる部分でございます。
次のページに、これをあえて申し上げますと、ということで、「主な課題」でございます。「少子・高齢化と税制」となっておりますが、例えば所得税を中心といたしまして、高齢者に関連するいろいろな控除等がございます。税制上の考え方からすれば、ある意味ではディストーションになっている、そういうものもあるわけでございます。
その二つ目、「金融資産性所得の課税の一体化」。これは後ほど御説明申し上げますが、15年度税制改正において行った諸措置、その先にあるものということで、納税者番号制を含めいろいろな議論があろうかと思います。
さらに三つ目、「非営利法人課税等」となっております。これは、現在、ワーキンググループで鋭意御議論いただいていることでございますが、「等」となっておりますのは、例えば多様な事業体、そういう課題も残っているわけでございます。
四つ目、「国と地方」というものも重要な課題でございます。
「その他」といたしましては、例えば環境の問題、国際課税の問題、こういったものもまだ残された課題というふうに整理できるのではないかと思います。
次に、資料の二つ目でございます。「財政の現状等」という横組みになったものでございます。
目次をおくりいただきまして、1ページ、「一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移」ということでございます。15年度、一番右のところでございますが、歳出の総額は81兆8,000億円、それに対しまして税収は41.8兆円、税外収入を除いて、いわゆる借金、公債発行額が36.4兆円、このようになっているわけでございます。
次のページでございますが、「一般会計税収と歳出総額に占める割合」ということで、太めの線、これがいま申し上げた割合でございます。税収割合ということで、分母が歳出総額、分子が税収というものでございます。適時、平成元年からプロットをしてあるわけでございますが、この数字、平成2年におきましては86.8%でございました。これがずっと下がってまいりまして、現在、15年度当初予算では51.1%。
ドットラインになっておりますのが、いわゆる郵貯除き。大量償還に伴います利子課税、この分を除いた数字でございます。平成12年、13年と、これから来る税収が結構あったわけでございますが、それがかなりはがれてきたという状況でございます。これを仮に除くといたしますと、50.6%、半分ちょい、こうなっているわけでございます。
次のページでございますが、税収の推移、その裏にいろいろな改正がありました、ということをポンチ絵にしてあるわけでございます。ご覧いただきますように、平成10年、個人所得課税の特別減税をやり、法人税制も改革しました。平成11年には、いわゆる恒久的な減税をいたしまして、それがいまも続いているわけでございます。
加えて、一番右、上にちょっと書いてありますが、今回の改正案ということで、国・地方を通じましてネットで1.8兆円の減税を行ったということでございます。ここをご覧いただきますように、13年度、14年度と税収ががたっと下がってきているわけでございます。
次のページ、4ページでございますが、13年度税収、補正後予算、これは13年の11月に行いました。当初予算が、ここに書いてございませんが、50.7兆円でございました。そこから補正ということで、49.6兆円。1兆円強、補正減を立てたわけでございます。しかし、結果出た決算が47.9兆円ということで、補正後予算から1.7兆円、減額になってしまったということでございます。
これには事情がございまして、この13年の9月、例の同時多発テロがございました。この補正を組みましたとき、小さい字で恐縮でございますが、内閣府の試算でこの13年度経済は実質ベースで0.9%のマイナスであろうと。民間予測、これを平均したものも実は▲0.8%ということでございましたが、ふたを開けますと、▲1.4%になっていた。同時多発テロ、それから、それから来る世界経済についての透明性が薄れてきた、こういったもので全世界的に税収のへこみというものが見られたわけでございます。
ちなみにでございますが、米国、これは2001年の8月、同時多発テロの直前でございますが、8月の見積もりからその1年後、ほとんど実績でございますが、その差額が実は2,000数百億ドル減収になっておりまして、この間、アメリカは減税をしております。それを差し引きますと、約25兆円、税収に対する割合は10%弱、税収が落ち込んでしまったということでございます。
このように、13年度予算における税収、これがどかっと落ち込みました関係をもちまして、14年度、当初予算46.8兆円だったのを、2.5兆円減額補正せざるを得なかった。一つは、ここに書いてございます土台減が1.7兆円。還付金の増、これは、13年度に払い過ぎていた税金を、14年度に入ってから還付するというものが法人税を中心にございます。その他を含めまして、2.5兆円の減額。
ここ1~2年の税収のへこみ、これは、まさに13年度のこの土台減が重くのしかかっている。その理由としては、米国同時多発テロ、それから端を発した世界経済の不透明感、こういったところに一つの大きな理由がある、このように考えている次第でございます。
地方税、これは後ほどの御説明としまして、5ページ、6ページ、7ページ、ちょっと飛ばしていただきまして、8ページでございます。
まず、国民負担率、その次のページが租税負担率になっておりますが、統計の都合上、特に社会保障負担の数字がなかなか固まらないものですから、国民負担率はやや年度が古くなっております。資産課税、消費課税、法人税課税、個人所得課税、これを足し上げた租税負担率が、2002年、いわゆる当初予算ベースでは22.9%、これに値するアメリカの数字が26.2%、イギリスが41.4%、ドイツ31.2%、フランス39.8%、このようになっております。この上にのっかる社会保障負担、これが15.5%。その上にさらにのっかる財政赤字が8.6%。これは当初予算ベースですが、15年度予算、これは11.0%に膨らんでおります。
次のページ、租税だけ拾ったものでございます。これにいたしますと、比較的新しい数字になります。特にアメリカは2000年の数字が拾えました。日本は、先ほど申し上げた、15年度予算、当初予算の数字でございます。去年の当初予算では、22.9%だったのが、2ポイント落ちまして、20.9%、このようになっております。ざっと見ていただきますと、やはり目立つのは、当然のことでございますが、黒いところで囲っております個人所得課税。この大きさが、日本国の場合は目立って少ないというのが見てとれると思います。あと、もちろんでございますが、欧州に比べますと、消費課税のところも目立って小さい。このように見てとれるかと思います。
次のページ、公債残高の累増、この辺はもう皆さんよく御存じの数字だと思いますので、これをもって割愛させていただきます。
若干はしょりますが、あと、ドキュメントが幾つかございます。簡単に御紹介いたします。
「平成15年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」、1月24日に閣議決定したものでございます。2の「15年度~基本的態度」というところで、3行目でございますが、「金融システム改革」、「税制改革」、「規制改革」及び「歳出改革」、これを構造改革の四本柱として一体的かつ整合的に、このように税制改革が位置づけられております。
2ページでございますが、第2パラグラフには、税制改革についての記述がございます。ここでは、15年度の経済政策なものですから、15年度の税制改正の中身を簡単に書いてございます。「なお」ということで、「この改革の実施により、平成15年度において1.8兆円程度の減税となり、多年度においては税制中立となる」、このように書いてございます。
次のページ、3ページになります。平成15年度の経済見通しになるわけでございますが、税について触れられておりますのは、第2パラグラフの「平成15年度は」というところでございます。「補正予算、『税制改革』における減税等を含め政府・日銀一体となった政策の効果が発現し、更に、年度前半には世界経済も徐々に回復していくことが見込まれることなどから、不良債権処理の加速に伴う影響等はあるものの、企業部門も緩やかに回復し、民需中心の緩やかな回復へと次第に向かっていくことが期待される」、このようになっておりまして、実質成長率0.6%、名目成長率はマイナス0.2%。
一番最後のページ、別添でございます。「主要経済指標」、これを見ていただきますと、先ほど申し上げたように、一番上の欄、国内総生産、一番右のコラムでございますが、平成15年度、名目はマイナスの0.2%、実質はプラスの0.6%となると見通されています。
この中で、上から六つ目の政府支出のところを見ていただきますと、名目ベースでは0.0%、実質では0.2%ということで、基本的には、政府の経済に対する影響というのは足を引っ張るものではない。ある意味ではニュートラルになっているということでございます。
さはさりながら、上から半分ぐらいのところですが、国民所得をご覧いただきますと、例えば雇用者報酬、平成13年度の実績では275兆6,000億円、こうなっておりました。14年度で269.4兆円、15年度見通しで267.8兆円。雇用者の報酬は減ってきているということもここで見てとれるかと思います。
次のドキュメントですが、「改革と展望」。はしょって恐縮でございます。これも同じ日、1月24日、閣議決定をしたものでございます。
「改革と展望」、これは、去年初めてつくりまして、今年はそれの改定ということでございます。いろいろなことが書いてございますが、長い目で経済のあり方ということを書いてございまして、4ページに「経済の展望」というところがございます。
その一つ目のポツでございますが、「少なくとも当面、実質成長率は1%以下程度、名目成長率はさらに低いものとならざるを得ない」。こんな中ではございますが、そのページの一番下でございます。「2010年代初頭にはプライマリーバランスを黒字化することが望まれる」。2010年代初頭、プライマリーバランス黒字化目標というのがここに書いてあるわけでございます。
あと、税については次のページ、5ページでございます。三つ目のポツに、「2006年度までに、国と地方双方が歳出削減努力を積み重ねつつ、必要な行政サービス、歳出水準を見極め、また経済活性化の進展状況および財政事情を踏まえ、必要な税制上の措置を判断する」、このようにも書かれてございます。
その次のページ、6ページでございます。ここに「包括的かつ抜本的な税制改革」ということで、経済財政諮問会議、内閣府が原案をつくりましたこの文章では、「その際、[1]経済社会の活性化に向けた更なる改革、[2]租税負担と社会保障負担の総合的な検討云々、[3]三位一体の国・地方」、こういったことが記述されているわけでございます。
この文章自体は閣議決定されたわけでございますが、この際に、別冊子になっておりますが、参考ということで、「参考資料 内閣府作成」というものがございます。これは、内閣府のほうでモデルに合わせて計算したものでございますが、基礎年金国庫負担割合1/3の場合と、1/2の場合、ふた通りに彼らのモデルをまわした結果が出ております。
このページで言うと、5ページでございます。これは、基礎年金国庫負担割合1/3のケースということで、実質成長率が2003年度が0.6%、これは先ほど御説明したことでございます。それ以降、0.9%、1.3%、1.5%、1.6%、さらには2010年度、これをリニアに伸ばすと1.9%になる。こういった前提で、下の国と地方の財政の姿ということで、プライマリーバランス、合計を見ていただきますと、2003年度においては▲5.4%、これが徐々に小さくなっていって、2010年度におきましては▲1.3%になるという彼らの試算でございます。
同様の積算を、1/2の場合で計算したものが10ページに出ております。これは、1/3を1/2に引き上げておりますので、消費税率をほかに置きようがないという図で、1ポイント上げるという計算で置いた数字だそうでございます。この結果、先ほどのプライマリーバランスのところを見ていただきますと、2010年度、同じ▲1.3%。財務大臣が2013年に黒字化とおっしゃったことがございますが、この線を真っ直ぐ伸ばすと、2013年度にこのプライマリーバランスのところがゼロになる、そういう計算でございます。
最後に、「委員限」とあります白表紙の紙でございます。実はこの紙、明日の予算委員会に提出される、そのときに公表されるということでございまして、このような取扱いとさせていただいております。これは、昭和56年度から当時の大蔵省がずっと出してきております、俗に言う「中期展望」というものでございます。これを明日、予算委員会に提出する運びとなっております。
後年度試算というのは、御存じかと思われますが、現在の制度、これを置きっ放しにした場合に将来どのような歳出需要が生じるか。先ほどの内閣府の計算は、例えば公共事業は毎年3%減らしていくとか、こういった数字を入れ込んであるわけでございますが、そういう意味ではこの中期展望というのはかわいた試算でございます。現在の制度をそのまま置けば、ということでございます。
かつ、税収につきましては、いわゆる弾性値というのを仮置きいたしまして、GDPの伸びにぽんぽんとかけるだけの計算をしているわけでございます。
その結果、差額というのが、これは国債だけではないということですが、15年度は36.4兆円、一番下の欄でございます。これが、16年度は41.8兆円、17年度は42.9兆円、18年度は42.9兆円と。
次のページは、いま申し上げたのは試算1ということで、改革がうまく進んで、0.5%、1.5%、2.5%と成長率が伸びていくという前提ですが、そうでないケース、ずっと名目成長率がゼロの場合、これが試算の2ということでございます。同じ数字を見ていただきますと、差額のところ、15年度36.4兆円、16年度42.1兆円、17年度44.1兆円、18年度45.5兆円と。成長率が伸びないものですから、税収も伸びないという計算であります。この試算では、平成16年度において、税収の欄をご覧いただきますと、41.6兆円ということで差額のほうが大きい、このようなことになるわけでございます。
はしょりましたが、以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。
では、地方税関係、お願いします。
〇事務局
最初に御説明ありました、縦組みの「資料」という中に、中ほど3枚ぐらい地方税が入っておりますので、ご覧いただきたいと思います。「平成15年度地方税制改正(案)について」ということで、後ほど御説明します、外形標準課税の関係、土地流通課税等の軽減の関係、固定資産税、それから、金融・証券税制と入っております。細かい説明は省略いたしますが、中身はかなり大きな改正でありますけれども、今年の主な骨組みがありますので、ご覧いただきたいと思います。
それから、二番目に御説明がございました横組みの資料、「財政の現状等」というところで、地方税関係は5ページから3枚ほどございます。国税と、あまり貧乏であることを競ってもしようがないですけれども、5ページにありますように、税収はここ2年ほどがた落ちしておりまして、15年度で32.2兆円くらいのレベルになっております。
6ページに、歳出総額に占める税収割合ということで、ちょっと古いですけれども、一時期は4割を超えましたが、まただいぶ落ちていまして、国税も5割ちょいということでございますが、地方税は3割台。14年度、15年には、さらに落ちるであろうと思っております。
7ページは、財源不足、15年度は17.4兆円ということになっておりますが、いままでで最高の財源不足。これは、もちろん減税等の影響もございますけれども、一般的な財源不足も相当大きくなっているということで、合計で17.4兆円となってございます。
以上でございます。
あと、11ページに借入金残高とございますが、省略いたします。
私からは以上でございます。
〇委員
今の御説明に御質問あろうかと思いますが、事務局の御説明を全部聞いてから時間をとりますので、そこでまとめて質疑応答の時間をつくります。
次に、平成15年度税制改革案のうちで、やはり少し説明していただいたほうがいいだろうと。税調で議論していただいたものとちょっと違った点があった点を、かいつまんで、外形標準と、金融・証券税制について事務局から御説明いただきましょう。
では、どうぞ。
〇事務局
それでは、お手元の「基礎小23-2」「外形標準課税関係資料」をご覧いただきたいと存じます。いま、お話がございましたように、法人事業税への外形標準課税の導入につきましては、15年度税制改正として決定されたところでございます。これまで御説明してまいりました総務省案などと異なる部分を中心にご覧いただきたいということで、若干ポンチ絵風のところもございますが、3枚ほどで御説明したいと思います。なお、細かな点については、4ページ以降に文章で表記させていただいております。
1ページをご覧いただきたいと存じます。対象となる法人についてです。総務省案では、公益法人や、特別法人などを除きまして、いわゆる普通法人を対象としていこうということでございましたが、今回、資本金1億円を超える法人を対象とするということで整理いただいております。大体3万1,000社が対象となります。
次に、外形の導入の割合等です。総務省案では、段階的ではありますが、2分の1まで外形標準部分を導入するということでしたが、この図にありますように、所得基準4分の3、外形基準4分の1という格好での導入です。外形として付加価値、資本等の金額に課税します。それぞれ付加価値割、資本割と呼んでおります。両者の税収の比がおおむね2:1というのは総務省案のとおりでございます。
なお、枠の中にコメ印で書いていますが、ターゲット税収と呼んでいるのですが、外形標準課税で徴収すべき税収の目安でございます。従来から最近の平均税収ということで、平成3年から12年までの対象法人分の平均税収、これの4分の1を外形化することにさせていただいてございます。
1ページの下のほう、二つ、配慮措置というものをつくるということで出させていただいてございますけれども、これにつきましては次のページをご覧いただきたいと存じます。
まず、付加価値の関係でございます。上半分が付加価値割についての仕組み、それから税率を出してございます。そこにコメ印で書かせていただいております。これが配慮措置です。
報酬給与額の割合が相対的に高い法人への配慮という趣旨でございまして、「雇用安定控除」と名付けようと思っております、図では白いところです。これは、収益配分額に占める報酬給与の額の割合が7割を超える場合には、超える額を課税標準から控除する、こういうことでございまして、結果として、雇用、あるいは給与の水準を維持するほうが税負担が抑制されるという趣旨です。総務省案には入っていませんでしたが、旧自治省の案のときには、この考え方も整理して入れておりました。
それから、資本割の関係でございます。下半分のほうですが、2種類の配慮措置を入れるということで、まずコメ印一つ目でございます。これは、昨年の政府税調で考え方の御説明をさせていただいたところでございますが、一定の持株会社につきましては、同程度の事業規模の法人と比べると、資本が過大傾向にあることを踏まえまして、総資本に占める子会社の株式の割合分を課税標準から除こうとしております。右のほうにポンチ絵風に出してございますが、そういう考え方での整理です。
下のほう、コメ印の二つ目です。資本圧縮特例という言い方になろうかと思っていますけれども、資本等の金額が特に大きな法人につきまして、そのまま税率を乗じた場合には、事業規模に比べまして過大な税負担になる。こういうことで、資本等の金額が1,000億円を超える場合に課税標準を圧縮していこうと。1兆円以上は1兆円までという形での計算になるところでございます。
3ページをご覧いただきたいと存じます。上のほうが、赤字法人に対しての徴収猶予。下のほうが、地方税法の72条の19という、条例によって外形標準課税が導入できる特例の改正。この二つも今回の特色でございますが、いずれも、従来から税調の場でも御説明をさせていただいていたものでございます。
特に、下のほうの72条の19の関係、たまたま東京都のいわゆる銀行税条例について高裁の判決が下されたこともありまして、若干触れさせていただきますと、東京都の銀行税の条例はこの72条の19を根拠としております。ここには詳しく書いてございませんが、規定自体は、事業税の本来の性格にかんがみまして、都道府県が一定の場合に外形標準の基準を用いて課税できる道を開いている、こういうものでございます。
今回、全国共通の外形課税を導入いたしますので、その対象となります法人については、実際にこの動きが出ます平成16年度以降は、この規定の対象外となるように改正を行うということでございます。
東京都の銀行税条例は、そういう意味では実際に16年度から地方税法が改正されますと、その限りにおきまして、法律上の効力を有しないということになるわけです。都の条例は12年度から5年間ということでスタートしてございますので、最後の年、これが16年度ということで、ここの部分が効力を有しないというわけですが、都も、この点については特段の異論はないというふうに承知をしてございます。
あと、資料番号はございませんけれども、いまの「基礎小23-2」の下に2枚の紙を置かせていただいております。御参考までにということで、今回の高裁の判決の骨子です。本文は膨大ですので、骨子だけですけれども、東京都では、上告をされる方針にあると聞いております。判決自体、確定的なものではございませんが、若干ご覧いただきますと、判決骨子2のところで、72条の19との関係を整理されておられまして、一審とちょっと考え方が違うわけでございます。こちらのほうでは、東京都の条例については72条の19には違反をしていない、こういう考え方での整理でございます。
3のところ、こちらが地方税法でも72条の22というところで、「『著しく』均衡を失しないことを求める」という部分がございますけれども、これとの関係で、東京都の条例、地方税法、ここの部分に違反をする、無効、こういう考え方での整理だろうかと思っております。
私どもとしては、現在、法案のほうを準備してございますので、成立のあかつきにはその定着を図る、こういうことでございます。
以上でございます。
〇委員
あまり先に進み過ぎますと、質問を忘れてしまうといけませんから、ここで、5~6分、二、三、質問をいただいて、先に行きましょうか。特に、いま、お3方からありました。
どうぞ。
〇委員
この「委員限」という資料に関して質問があるのですが、こういった中期見通しはよくお目にかかるのですが、地方財政、特に地方の歳出、金融・財政事情、通常収支等々の中期的な見通しというのは、これまでやったことがありますか。あるいは、国の一般会計に準じて平成18年度ぐらいまで、地方の財政状況が、今の制度を前提とするとどうなっていくか、そこら辺の試算をやろうとすれば、それは可能ですか。質問です。
〇事務局
かつて、地方財政の収支見通しというのを出したことがございますが、今はやっておりません。と申しますのは、不確定要因が非常に多いといいますか、国のほうの措置による交付税の手当て等によって相当先は変わってしまうものですから、なかなか国のように全体の先の予測はしがたい。しても、かなりあてにならない、という言い方は悪いですが、相当狂ってしまう。幅がございますので、現在はそうしたものは作成しておりません。
〇委員
これからの税調の論議でも、国と地方の税源移譲、税源配分の問題、しかもそれは、補助負担金、あるいは交付税制度と三位一体で議論する、この線は当税調でも遵守すべきだと思うのです。その際に地方の状況がどうなっていくかというのは、欲しい資料でございます。自治財政局のお仕事なので、ここでは明確なお答えはいただけないかもしれませんが、ひとつ、御努力をお願いしたいというふうに思います。
〇委員
何かできそうですか。
〇事務局
今の御意見を自治財政局にもお伝えいたしまして、御相談させていただきますけれども、従来から、国会等でもこういう議論があったときに、かつて出したやつが、今は、なかなか私が申し上げたような事情で難しいですというお答えをいたしておりますので、なかなか困難かもしれませんが、一応また御相談させていただきます。
〇委員
前にできたのがなぜできないのと言われたら、答えに窮するでしょう。
〇事務局
前できたというよりも、前つくってみたが、あまり当たらなかったということであります。
〇委員
それは慎重に考えたほうがいいですね。
はい、どうぞ。
〇委員
法人事業税の外形標準課税問題ですけれども、これは政府税調の議論では、取りやすいところから取るようになるのは非常に困る、そういうふうであってはならないという意見が多かったと思うのですが、この結果を見ますと、資本金1億円を超える法人ということで、やはり取りやすいところから取るということになっているのではないか、そういう印象を拭えないんですね。しかも、非常に制度が複雑で、簡素とは著しくかけ離れていると思わざるを得ない。
今後、一体どうするつもりなのか。どういうお考えなのでしょうか。資本金1億円を超えないところは、もうそのままほったらかしというお考えなのかどうか、ちょっと伺っておきたいと思います。
〇事務局
総務省案、私ども旧自治省案に対する御指摘も踏まえて出させていただいたわけですが、総務省案に対しまして、現下の経済情勢のもとで、中小企業に対して外形標準課税を導入することを避けるべきではないか、あるいは、外形標準課税の導入割合を見直すべきではないか、こういうような御指摘等もございました。そういうものを踏まえまして、今回、決定されたものになったわけです。私どもとしては、こういう形、大法人というふうに俗に言ってございまして、数は3万1,000社ですが、税収については6割以上がここの大法人があげておりまして、相当程度税収の安定化が図れるし、また、大規模に事業展開をしているのに事業税を負担していないという現状を是正する、こういう意義もあろうと思っております。
私どもは、今回、一刻も早く、まず法案を国会に提出しなければいけないわけでございますけれども、国会の審議を経まして、これの定着を全力を挙げてやってまいりたい、こういう立場でございます。
〇委員
その先どうするのか、というのが先ほどの委員の疑問なんですよ。通ってから--通るまではわかりますよ。その先はわからないといえばわからないでもいいんですけど、方向として。
〇事務局
まず定着させまして、その状況を見極めてということになろうかと思ってございます。
〇委員
「改革と展望」の改定版の中の6ページ、先ほど御説明がありました、今後の税制改革の課題は三つあると。二つ目は社会保障との関係、三つ目は国と地方との関係ですが、この一つ目の「持続的な経済社会の活性化に向けた更なる改革」、これは言葉はわかりますが、何か具体的なイメージがあるのかどうか。
それと、最初に御説明のあった、A3の税調の「基本方針」、アンダーラインがあるところとないところ、ないところがこれからの話だということですが、それとの関連でこれを考えた場合に、どういうふうに考えたらいいか。何かイメージがあったら、教えていただければと思います。
〇事務局
この「持続的な経済社会の活性化」というのは、昨年の6月にちょうだいしました「基本方針」の一つの命題でもございました。そういう意味では、大きな意味での経済社会の活性化ということでございまして、これを実際に書かれたライターにどのような御存念があるのか、そこまではわからないのですが、少なくとも我々としては、大きな意味でこの文言を受けとめているということでございます。
〇委員
では、次に行ってよろしゅうございますか。
今日は、まだいっぱい話題があります。また戻っていただいても結構です。
それでは次に、事務局から、金融・証券税制、この説明を受けたいと思います。
どうぞ。
〇事務局
それでは、「基礎小23-3」という資料をお願いいたします。
目次を飛ばしていただきまして、1ページ目は、昨年の11月にお取りまとめいただきました「答申」の抜粋でございます。アンダーラインが引いてございますけれども、金融・証券税制につきまして、できる限り一体化する方向をお出しいただいた上で、下の3行で、平成15年度税制改正、簡素・合理化等の御指摘をいただいたところでございます。
これを踏まえまして、結果でございますけれども、2ページにお進みいただきまして、「金融・証券税制の見直し案(概要)」と書いてございまして、2つ、見直し措置I、見直し措置IIと整理させていただいております。左のほうは、見直し措置Iがいわば基本型でございまして、今回は、上場株式等の配当、公募の株式投資信託の収益分配金、上場株式等の譲渡益につきまして、利子と同じように20%の源泉徴収で納税が完了する仕組み(申告不要)を導入させていただいております。
配当、譲渡益につきましても申告納税が基本ではありますけれども、納税者の選択によりまして、申告不要で源泉徴収だけで課税が完了する仕組みを入れるという趣旨でございます。
考え方は、その下にございますように、将来の一体化を展望してこういう措置を講じたということでございます。措置の具体的な内容については、3ページ以降でご覧いただきます。
それに加えまして、右のほうで、見直し措置IIと書いてございます。当面の優遇措置としまして、今後5年間は20%の税率を半分の10%に軽減するということでございまして、これにつきましては、「貯蓄から投資へ」という政策課題に対応するという趣旨でございます。
3ページにお進みいただきまして、まず、配当課税でございます。左側に、これまでの現行の措置が書いてございますが、総合課税を原則としつつ、少額の配当については確定申告不要、真ん中にありますが、「中額配当」と俗に言っておりますが、これについては35%の源泉分離選択課税という、3段階の課税でございます。
これを、右のほうにございますように、今回の見直し案では、「大口以外の上場株式等」と書いてございますけれども、発行株式総数の5%未満を大口以外ということで定義いたしまして、その大口以外の上場株式につきましては、配当について20%の源泉徴収で終わる仕組みを入れるということでございます。
ただ、今後5年間は10%の軽減税率ということで、大口の上場株式、それから、非上場の株式については従来どおりの取扱いにさせていただいております。
4ページでございます。公募の株式投資信託課税でございますけれども、これにつきましては、現行、左側のほうに書いてございますが、これまではいわゆる利子並み課税をしてございました。これを、先ほど見ていただきましたように、配当の課税が見直されることに伴いまして、公募の株式投資信託の収益分配金についても、配当課税ということで、右にございますけれども、20%の源泉徴収(申告不要)というのを基本といたします。いわば株並みの課税になりますので、[2]にございますが、償還解約損につきましては、株式の譲渡益との通算を可能にする措置を導入したいと考えております。
5ページでございますが、株式譲渡益課税につきましても基本的には同じでございまして、上場株式の譲渡益につきましては、20%の税率を10%に軽減いたします。これに合わせまして、昨年つくりました、左のほうの現行の真ん中あたりの箱にございますが、1年超保有上場株式等については、税率を軽減した上で100万円の特別控除を適用するといった優遇措置については、今回の改正に合わせまして、簡素化の観点から、注1にございますように、廃止するということでございます。
併せまして、特定口座制度の改善・簡素化ということで、これについては次の6ページをご覧いただきたいと思います。6ページに三つ書いてございますけれども、特定口座と申しますのは、株の譲渡益につきましては申告分離課税が原則でございますけれども、簡便な納税をするという観点から、証券会社ごとに特定口座を設けることができるという制度でございます。このうち、源泉徴収だけで終わらせる口座、そこには源泉徴収口座と書いてございますけれども、源泉徴収口座を選んだ投資家の利便のために、その下に3つ書いてございますが、改善措置を講じてございます。
一つは、源泉徴収口座を利用すれば、税務署等への申告なしで納税が完了する仕組みをつくるということで、源泉徴収方式を年間分一括の方式に変更する。後ほど御説明があろうかと思いますが、地方税でも源泉徴収の仕組みを入れていただく予定でございます。
この特定口座で取引できる株が制限されているといった議論がございまして、秋に一定の改善をいたしましたが、さらに、そこの2番目にございますように、「タンス株」、証券会社に預けておられなくて自分で保管しておられる株についても、向こう約2年間については、このタンス株を受け入れることが可能になるという措置でございます。
さらに、源泉徴収口座を利用されておられる限りにおいては、「年間取引報告書」が税務署へ送付されないという措置を、併せて講じることとしてございます。
7ページは、「金融・証券税制の見直し案(全体像)」と書いてございまして、三つの措置の適用のスケジュールが書いてございます。今回、企図しております改正というのは、譲渡益、配当、投資信託の収益分配金、平成16年の1月、来年の1月には、いずれも企図した措置が出そろうことになります。今回は、申告をしなくて済むということで、源泉徴収という手法を多用することにしておりまして、地方のほうでも配当割とか譲渡益割といった源泉徴収の仕組みを入れていただくわけで、支払者側、課税当局側、それぞれ、システムの準備等がございまして、平成16年1月から全部がそろうことになっております。
上場株式の譲渡益については、そこにございますように、15年の1月から、配当については平成15年の4月から、それぞれ特別の対応をすることによりまして、なるべく早くこの適用ができるようにということで、いわば前倒しで譲渡益と配当については実施することにしてございます。その技術的なことは、大変恐縮ですが、省略いたします。
〇委員
では、地方税関係、お願いします。
〇事務局
続きまして、地方税の御説明をさせていただきます。同じ資料の8ページをご覧いただきたいと存じます。
地方税におきましては、ほとんどの所得が翌年度、申告をいただいて課税することになっており、例外といたしまして、利子所得がございます。これは、きわめて少額のものがたくさんあるということから、金融機関がその所在地の都道府県に対して、その年、いわば天引きの形で納めていただいて課税関係を終了するというものでございます。
現在のところ、株式の配当につきましては、翌年度、総合課税、申告していただくということになりますし、譲渡益につきましては、翌年度、申告分離で課税するという形になってございます。
今般、利子並みの取扱い方法で株も扱えるようにということで、8ページに掲げておりますような、利子割をならった配当割、株式等譲渡所得割という新しいシステムを導入いたしたいということでございます。
詳細は9ページでございますが、課税主体は都道府県でございます。真ん中辺に徴収方法と書いてございますけれども、配当につきましては、配当される株式会社、あるいは、実際の事務を行われる信託銀行が徴収しまして、そして都道府県に納めていただく。
それから、株式等の譲渡所得につきましては、証券会社が特別徴収いたしまして都道府県に納めていただく。そこで課税関係を終了することができるということにいたしますが、利子と異なりまして、株式につきましては、控除、その他、特例を受けたい方もおられますので、[6]に書いてございますように、申告の道も残すということで、申告があった場合には、所得割で翌年度精算するということでございます。
[8]の施行時期がございますが、都道府県等の準備もございますので、平成16年1月ということで、これから準備を進めるということでございます。
以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。
それでは、事務局から、アメリカの金融・証券税制、この御説明をいただきましてから、また一括、質疑応答したいと思います。
〇事務局
横長の資料で、「米国税制の動向」でございます。ちょっとはしょります。
1ページ目に、米国ブッシュ減税の全体像ということで、目的のところ、「経済回復を押し進めるための個人消費の促進、成長と雇用創出のための個人及び企業の投資の促進」、こういったことが題目になっております。
内容的には、一つが、ブッシュ減税、所得減税の前倒しということで、次のページ、いつもご覧いただいております実効税率のカーブでございます。日本が一番下、2003年ベース、それから米国、2003年、ブッシュ減税を実施した場合、このようなカーブになっております。
これを反映させたのが3ページでございます。それぞれ、500万円、700万円、1,000万円の場合の国・地方を通じた所得課税の負担、これを比較したものでございます。日本は、現行、改正案。これは、配偶者特別控除がなくなったことに伴い棒の高さは高くなっている、アメリカのほうは低くなっている、このような状況でございます。これが所得税でございます。
1ページにお戻りいただきまして、2ポツ、「配当への二重課税の撤廃」。配当課税につきましては、現在のアメリカの制度は、個人の株主段階、法人税、所得税との調整を全く行わない。こういった二重課税の制度を見直し、個人の株主段階での配当課税を行わない、と。
これもちょっとポンチ絵で恐縮でございますが、4ページでございます。まず、日本のケース。通常の所得、100所得があった場合には、個人段階では37、これは最高税率でございます。それに対して配当所得でございます。これは、法人段階で法人税率が30%かかっています。個人段階、70配当が行われ、それに源泉徴収税率7%、これは国分でございますが、4.9ということで、足しあげますと、35。これが税負担になっているわけでございます。
これに対しまして、アメリカのほうでございます。通常所得の場合は、個人段階、今度の減税で最高税率が35になります。
配当の場合でございます。ちょっとややこしゅうございますが、法人段階で法人税率の35が課税になる。残り65が配当ということで回るといたしますれば、今の制度では、「現行では」と書いてございますが、65に対して35の最高税率を仮にかけますと、22かかるところを、これをかけない。あくまで法人段階だけの課税にするということでございます。
実はアメリカの今の案では、配当した場合、個人段階では個人に配当課税しない、こうなっているわけですが、内部留保した場合も、それぞれ個人が持っている株のその価値が上がるであろう、それは譲渡益の形になるであろうということで、内部留保に対応する譲渡益分を差し引くということで、これも、二重課税を排除しようという案になっております。
ただ、これは徴収事務がなかなか難しいということで、実際どのように仕組むのか、これからの検討課題でございます。
ざっと申し上げますと、実は、共和党の中にも、例えば譲渡益課税、いま、総合課税にしているわけですが、こういったものの見直しのほうが先ではないかという議論。それから、当然、民主党からは、所得再分配機能、貧富格差拡大の云々という問題がございまして、これからおそらく3月にかけまして法案化され、夏にかけて議論されるわけでございますが、我々も注意深く見守っているところでございます。
以上です。
〇委員
後半のスピーカー、国立社会保障・人口問題研究所の所長がもうお見えのようでございますが、時間を5~6分とりまして、今の御説明について質疑をしたほうがいいと思いますので、どうぞ、証券・金融税制につきまして御意見があればお出しください。
〇委員
金融小委員会の委員長でもありますので、一言述べさせていただきたいと思います。
一つは、今御説明のありました平成15年度の税制改正ということに対して、金融小委員会も含めて、去年の税調できちんと議論をしないままに出てきている。他方では、一応最低限の改正はしますけれども、やはり、かなり本格的な金融税制に関する改正が必要ではないかというふうに思います。そういう意味で、そういうきちんとした議論をするべき時期に来ているのではないかということです。
とりわけ重要な論点としては、一つは長期的な視点から、所得税とか、法人税とか、消費税というような基幹税目との関係も踏まえて、もう少し金融税制というものを見直す必要があるのかなというふうに私は思います。
もう一つが、「貯蓄から投資へ」という流れであるとか、産業構造の改革とか、知的財産相続とかそういうことを踏まえた投資が引き出される、そういう金融税制を構築することを考えたらどうかというふうに思っておりまして、できれば、少しきちんとした検討を、一つは、課税体系、方式、経済学とか租税論の立場から、理論的にきちんと基盤のある議論ができるようにということ。
もう一つは、個別の金融商品課税などについても、それぞれの特質を踏まえた議論ができるように。
それから3番目に、かなり重要な論点だと思いますけれども、そろそろ、こういうことになってくれば、納番であるとか、資料情報制度であるとか、課税環境に関する議論もしたらいいのではないかというふうに思います。
その中で、外国で何が起こっているか。二元的税制の話であるとか、今お話がありました米国の問題なども議論すべきだろうと思いますし、いままではあまり議論されていないのですが、私個人の問題意識としては、例えば帰属家賃であるとか、住宅ローンであるとか、ひょっとしたら、金融税制に関する問題が法人なりに影響しているのかもしれないとか、そういうような、やや思い切って踏み込んだ議論を幅広くしてはどうかというふうに思っております。
〇委員
おっしゃるとおりです。税調会長として、税調で議論しない形で--まあ、いろいろ事情もあったと思いますが、金融・証券税制、先にだいぶ飛び出ていますので、後追い的でもいいですから、我々、正確に整理し直して議論しなければいけないのです、本当は。
そこで、実は金融小も立ち上げようと考えております。事務局と相談いたしまして、いずれ、この国会の税制改革法案があがったくらいのころなら、事務局のサポートも得られると思いますので、6月の中期答申、あるいは7月の中期答申を目指して、また金融小委員長にも御苦労いただかなければいけないと思いますが、今おっしゃったようなテーマをこれから着実にこなしていただきたいと考えております。
〇委員
ただいまの点とも若干関係するわけですけれども、先ほど御説明がありました資料「米国税制の動向」の4ページのところで、日本は改正案で、配当70があって、税金は5%になる。それと源泉徴収が7%。源泉徴収で済むということですけれども、この人が仮にこっちのほうをとらないで、総合課税すれば、配当控除がある。その人の所得水準によるんですけれども、1,000万円以下なら、70の配当があれば、その1割の配当控除があれば、この人は税金はゼロになるのだろうと思います。
そういった意味で、配当控除ということで従来からかなり丁重に調整をしてきているので、むしろアメリカよりはかなり進んでいる。今回のこういう改正、非常にお得になります改正ですよというのはいいんですけれども、むしろ日本は先に配当控除で調整をしていることも理解してもらえるようにしてもいいのではないか、という気がするわけでございます。
そういった意味で、昔は配当控除は、配当が何百万までは税金がかからないと言っていました。いま、あまりそういう議論はしませんけれども、現在の所得税率でいくと、700~800万円までは配当は所得税がかからないのではないかと思うわけでございます。配当が700~800万円までかからない、配当所得が800万円もあるという人は、元本で10億円ぐらい持っている人ですから、大体そこに入るのではないか。そういう人たちは、7%を10%にしますという以前の問題として、すでに十分配慮されているとも言えるのではないか。そこらはきちんと御説明して、日本はいままでここまでやっていますということをもう少し言ってもいいのではないか。そのような気がいたします。
〇委員
今の点は非常に重要で、従来の制度は残してこれを別途やるわけですから、従来の制度の説明も頭に入れてこれをお聞きいただけたらと思います。
〇委員
金融・証券税制を、譲渡所得、配当で見直し10%というところですが、これをなぜ上場株式に限定したのかというところが、やや疑問であります。「貯蓄から投資へ」という理念はわかるとして、未上場株式は除くというのが、これだって、貯蓄から投資という理念には未上場株といえども適合するわけでありまして、ここら辺はどういういきさつがあったのか、御存じだったらちょっと説明していただきたいと思います。
〇事務局
今回、貯蓄から投資へということで、政府のほう、あるいは、党のほうで議論がありましたのは、一般の個人で、預貯金に金融資産を置いているという方について、預貯金並みの手軽さ、と言うと変ですけれども、そういうことで直接金融市場にも入ってもらいたいという政策的な議論がございました。一般の個人が買える金融商品についてまずは政策的に優遇しようということで、ここにございますような、上場株式ですとか、公募型の株式投資信託について、こういう措置をとったということでございます。
税制サイドの議論としましては、未上場株というのは、これまで、事業所得に非常に類似した性格を持っております。「公平」という観点から総合課税が原則であるという中で、申告分離課税にしつつも、26%という高い税率を適用してきたわけでございまして、未上場株とか、あるいは土地の問題とか、他の金融資産をどう扱うかという点については、今後もまさに議論すべき課題として残っているのではないかというふうに思いますけれども、当面の対応としては、こういう形でまとめさせていただいたということでございます。
〇委員
まだおありかと思いますが、所長もお見えでございますし、時間もだいぶ過ぎておりますから、次の議題にスイッチさせていただきます。
今日は、国立社会保障・人口問題研究所の所長においでいただきました。お忙しいところを、どうもありがとうございました。
いまから、「超高齢・人口減少社会の到来とその諸問題」という、非常にセンセーショナルですか、非常に魅力あるというべきですか……魅力はあまりないかもしれませんが、テーマとしては魅力ありますよ。そういうお話を、今から30分ぐらいで御説明いただけますか。
では、よろしくお願いいたします。
〇委員
御紹介いただきました、国立社人研の所長でございます。
おっしゃるとおり、タイトルは大変おどろおどろしいものでございますけれども、要は、少子・高齢化社会というと、まだ生ぬるいのではないかということのニュアンスを込めて、ちょっと大げさなタイトルをつけましたが、中身そのものは少子・高齢化ということで、多く語られていることでございますので、今日は、あまり目新しいことはないと思います。
しかし、人口をやる者から見て、現在、将来の日本がどういう位置づけになるのかということを、若干御説明してみたいと思います。資料は、「基礎小23-5」と「基礎小23-6」です。
早速ですが、「超高齢・人口減少社会」と名付けましたのは、教科書的に言うと、人口の世界で、「人口転換」という言葉が昔から使われているわけです。"demographictransition"という言葉ですが、これは、多産多死から多産少死を経て少産少死に至る、そういう流れをあらわしたものであります。
これは、1920年代、30年代から言われ始めていたものでありますが、そういう考え方に基づきますと、少産少死になったときには、1人の女性が平均的に産む子供の数が、2人ちょっとということを想定していたわけであります。そうなりますと、毎年の1国の出生数、死亡数がおおむね均衡する。そうしますと、出生、死亡の差がゼロに近い、自然増加がゼロ、ということで、人口転換のあとの社会は、人口静止、「静止人口社会」。
そして、人口転換のうち、出生力が例えば子供5人から2人へというふうに大きく下がりますと、必然的に高齢化が始まるわけです。ですから、人口転換が終われば高齢化が始まる。これは、日本が1950年代に転換が終わったあと高齢化が始まったことと符節を合わせるわけであります。
そういうふうに少産少死社会になれば、基本的に子供の数が大体2人、そして人口はやがて安定する。さらには、ほどほどの高齢化社会が来る、こういうふうに想定されていたわけであります。
ところが、先進国全体で1970年代以降に、いま日本で言う少子化--これは一応私の定義として、「人口置換水準以下への出生率の低下による子供数の減少」というふうに定義させていただきますが、要は、人口を維持するに足る出生率、いま日本では合計特殊出生率は2.08と計算されていますが、それを下回る出生率の低下が起こっている。
それは、すでに四半世紀、あるいは、30年近く続いているということでございまして、どうも、かつての人口転換論は現代の先進国には当てはまらないということで、むしろ先進諸国では少子化が当たり前の姿になるという「第二人口転換論」が、ベルギーやオランダの学者によって主張されております。もちろん、どれくらい下回るのかということによって、その先の社会が違うわけでありますが、極端な少子化を前提としますと、私が名付けた「超高齢・人口減少社会」が到来することになるわけであります。それが、図表の1、2で示したところであります。
では、いま日本が直面している、あるいは、これから直面する超高齢・人口減少社会をもたらす要因は何かというと、言うまでもなく、一つは長寿化でありますし、もう一つが少子化ということです。
長寿化のほうは、もちろん先進国というのは寿命が伸びてきたわけでありますけれども、この図表の3にありますように、60年代というのは比較的寿命の伸びが鈍っていた時期です。日本はあとから始まったので、例外ですけれども。ですから、そのころの人口学者は、寿命はそれほど伸びないのではないかというふうなことを言っていたわけでありますが、まさにその後、予想外の平均寿命の伸びが続いて、このこともまた高齢化を促進してきたわけであります。
昨年1月の私どもの人口推計の平均寿命の仮定は、図表4でありますが、これはまだまだ伸び続ける。日本はすでに世界最長寿でありますが、伸び続けて、50年間で女性は人生90年時代になる。男性は80年でありますが、そういう状況も十分に予想される仮定の設定になっております。当然のことながら、これが高齢化を促進する要素になるわけであります。
もう一つは、今お話しした少子化であります。ヨーロッパなどでは、1930年代に、出生率が2を下回るという状況を一度経験しております。しかし、その後、戦後40年代、50年代、60年代の半ばまでは、大変高い出生率、いわゆる長期のベビーブームが続きまして、それから再び出生率が下がり始めたという経験がございます。どちらにしましても先進諸国では70年代以降、出生率が、先ほどの人口置換水準を下回る。そしてその多くは、その後も低迷を続けているというのが先進国の出生率の現状でございます。
ただし、大まかに分けますと、近年では、相対的な高出生率国グループということで、北欧、英語圏、そしてフランス語圏が、1.6くらいから2.1と、比較的高いグループ。そして、相対的な低出生率国グループ--しばしば「超低出生率国」と呼ばれますが、日本、アジア、NIES、南ヨーロッパ、ドイツ語圏といった国々に二分されつつあるという印象を持ちます。
日本の出生率は、これは、昨年1月に人口推計を発表しましたときに、いろいろ解説等ございましたけれども、これまで主として、未婚化、若い方がなかなか結婚しないというか、先延ばしをする。そうしますと、結婚した年齢も遅くなるので、晩婚化。その後、子供を産みますので、出産も遅くなるということで晩産化。ですから、主として未婚化・晩婚化・晩産化。これが20数年間続いてきたことによって、出生率そのものが低下してきたというのが実情であります。
おそらく今後、生涯未婚率--これは、50歳の時点で一度も結婚したことのない人の割合ですが--が上昇するとか、あるいは、夫婦の子供数、最終的に産む子供の数の低下が起こるであろうという予想のために、これはいま現に起こっていることですが、微弱ながらも30代女子の出生率が上がっている。これは、20代で産まなかった部分、それをキャッチアップするという現象なのですが、それが、そういう二つの理由によって微弱にとどまるであろう、そのために出生率が将来的にも低迷を続けるであろうというのが、この図表6、昨年度1月の人口推計における少子化の仮定の論拠になっています。言うまでもなく、そういった極端な少子化が続くことが、超高齢・人口減少社会の到来を促すことになるわけであります。
次にまいりまして、では、これから訪れる超高齢・人口減少社会というのはどういう社会であるのかということであります。
一つは、人口減少社会であります。日本を含む多くの先進諸国は、20世紀は基本的に人口増加を続けてまいりましたから、あえて言えば「人口増加の世紀」ということでありましたが、21世紀、今世紀は、むしろ人口減少の世紀になるであろうというのが国連等の見通しであります。
図表7は、国連の推計による95年から2050年の55年間で、各国、あるいは、ヨーロッパ全体とか、EU全体が、どれくらい人口を増やす、あるいは減らすということを予想したものです。真ん中辺にユーロピアン・ユニオンとありますが、要するにヨーロッパ連合全体で50年間で人口が10%以上減る。ヨーロッパ全体でも10数%減る、こういうふうな国連の見通しになっております。そういう意味では先進国にとっては、21世紀前半は人口減少の世紀になるであろう。ですから後半も、当然ですけれども、ますますそうなるであろう、こういう予想であります。
日本は、先ほどの推計の結果をお示ししたものでありますが、出生率が1.3なり1.4なりで低迷するという仮定のもとですと、真ん中にあります中位推計のように、100年間で人口が半減するという見通しに当然なるわけであります。そういう意味で、日本もまた、21世紀は人口減少の世紀を迎えていると言えると思います。
では、総人口の減少をどういうふうに考えるかということであります。これについて本などでも、「ウェルカム人口減少社会」という、あえて言えば楽観論、そして、日本民族が衰退するんだという悲観論といいますか、そういうとらえ方があるようでありますが、これは取りようによっては、50年くらい先に1億人とか、あるいは、100年先に6,000万人というのは、日本にとってなかなかいい人口ではないかと。どうも、タイムスパンをそれぐらいにとればウェルカムだというニュアンスがあるようで、そこから先は減らないという前提があるように思われます。
しかし、逆に日本民族衰退論みたいな形になりますと、100年、200年という長期のタイムスパンで日本の人口が急減していく、なくなっていくというのは大変さみしい、そういう見方にもなると思います。
もう少し具体的に、総人口減少のメリットを考えてみますと、言うまでもなく、日本は人口過密が言われていますので、人口密度が下がることによって、一般的に、あるいは全般的に、過密問題が解消するのではないかという期待感がそこにあるわけです。土地、住宅、環境、緑、あるいは、社会的な空間といったようなものも含めて、過密問題が緩和するのではないかとか、あるいは、エネルギー資源の消費が減ることによって--実は、人口が半分になればCO2の削減効果は大変大きいわけでありますから、エネルギー消費による環境問題の解決への寄与とか、あるいは、食糧とか、水とか、他の資源とか、そういう問題との絡みで人口減少が望ましいという議論が出てくるところがあろうと思います。
それに対して、おそらく総人口減少のデメリットのほうは、消費人口そのものが減っていく。減る時期には、1年間に80数万人、90万人近く減るということで、国内市場が、毎年毎年、きわめて急速な勢いで縮小していくことが、投資機会を減らし、全体として経済の停滞につながるのではないか、こんな議論になるのではないかというふうに思われます。
どちらの論もある程度正当性があろうとは思いますけれども、これを実際のデータで証明するというのは、総人口が長期に減少した近代における事例はございませんので、何ともはかりかねます。
しかし問題は、少子化状況が続く限り日本の人口は減り続ける。別にどこか都合のいいところで止まるわけではない、ということがあるわけでして、その辺は十分考えておく必要があろうということでございます。
それから人口減少も、今のは日本全体の総人口の話でございますが、当然、日本人口全体が減っていく、あるいは高齢化していく中で、地域人口は言うまでもなく非常に差がございます。特に農村、非三大都市圏、あるいは、非東京圏といいますか、そういうところは、都市、三大都市圏、東京圏と比べて人口減少・高齢化のテンポが速いわけであります。
日本は、近代化とともに、農村社会から都市社会、そして人口が、三大都市圏、さらには東京圏に集中するという経験をしてまいりました。今回の推計、これは2030年まででございますけれども、図表10や11で見ますと、都市、三大都市圏、東京圏への青年層の人口移動がいまでももちろん続いておりますし、それから、都市は農村に比べてむしろ多産少死といいますか、若い人が集まっていますから、当然そういう傾向で、自然増加が大きいということが重なって、今後も都市、三大都市圏、東京圏への人口集積が続くことがこの図表の10や11で示されているところでございます。
ですから、今後30年間で非三大都市圏の人口は一段と縮小し、高齢化する。そして、三大都市圏の人口減少と高齢化はそれに比べてずっと緩やかである、というのが地域人口の見通しであります。
高齢化のほうでありますが、もちろん、日本全体、地域人口全体が高齢化していくわけでありますけれども、ある地域における高齢者人口の割合の上昇という意味での高齢化というのは、当然、非三大都市圏で顕著であります。図表の11が示しておりますが。
しかし、別の意味では、日本全体に住む高齢者のうち、三大都市圏、都市、東京圏に居住する割合がこれから大きく上昇していく。図表12に老年人口の増加率を示したものがありますが、とりわけそういう三大都市圏、東京圏などで大変増加率が大きいということで、高齢者全体のウエート、それはむしろ都市の問題になっていくことを、この推計の結果が示しております。
人口減少と高齢化によって、非三大都市圏、とりわけ過疎の自治体の人的・財政的な基盤がすでに相当弱まっている。これからも、ますますその点で弱体化していく可能性があると言われているわけでございます。
それから、今のは人口減少社会の問題でありましたが、もう一つ、超高齢・人口減少社会の超高齢社会のほうの問題でございます。
図表の13以下ですが、一つは、全体の傾向として、出生力転換、つまり子供が5人から2人へ減るということを経験したあと、先進諸国では、もうすでに長い間、人口の高齢化が続いております。日本も1950年代までに子供2人ということを達成したものですから、それ以降、戦後一貫して人口の高齢化が続いている。この辺は御承知のところだと思います。ですから、図表13の1940年以降というのは、他の先進国では、かなり高齢化した国がすでにその時点であるわけです。先ほど申しました70年代からの少子化と長寿化によって、先進国全体で、今後も高齢化がかなり急速に続くことが予想されております。
しかし、図表13に見ますように、現在、あるいは今後の少子化の程度によって、将来の高齢化水準も相当異なる。御承知のように、日本やイタリアのように出生率が世界で何番目に低いという国ですと、今後の高齢化水準は大変高いものになる。国民の3人に1人以上が65歳以上ということになりかねないのに対して、出生率が現在2.1を超えているアメリカのような場合には、将来も高齢化率は20%程度でおさまる。ですから、これで言えば、アメリカは単なる高齢社会ということになるわけですが、そういう大きな違いが出てくるのは、もっぱらこの少子化の現状と見通しによるわけであります。
その中で日本の高齢化の特徴は、よく言われますように、図表の13を見ていただきますとわかりますように、他の先進国に比べて高齢化が明らかに遅く始まった。これは、出生力転換というものが遅く始まったからであります。それが第一点。それから、高齢化のスピードが速いということが第二点。そして90年ころまでは、日本の高齢化水準は先進国の中で最も低いというふうなことを言っていたわけでありますが、わずか、ここ5年、10年でいまや世界有数の高齢化国になっている。そして、これからの少子化によって、21世紀前半にはまさに超高齢社会に突入していくということが言えそうであります。
「高齢化の諸問題」というふうに書きましたが、これは実は人口学者の出番ではなくて、むしろ経済学の出番で、私のような者が言う筋合いのことではないのですけれども、人口の立場から言うとどういうことを指摘しておく必要があるのか、というふうにお聞きいただければと思います。経済の話は、ちょっとここでは勘弁させていただきたいと思います。
高齢化の諸問題として四つほど掲げてございます。
一つは、年齢構造が全体として変わることによって、当然、若年者、中年者、老年者というのは、当然、持っているニーズが違うということで、年齢構造が変わればニーズの構造が変わるということを指摘しております。
もう一つは、生産年齢人口が変わっていくということで労働力への影響がある。それから、全体として働き手と高齢者の構造が変わっていくということで、高齢者の扶養構造が変化していく。
最後に、若干違った角度から、政治意識の変化ということを指摘しております。
ニーズの変化のほうは、しばしば指摘されておりますように、図表15で、一つは、子供の人口がまだまだ減っていくということ。それから、生産年齢人口というのがございますけれども、この中で例えば20代の人口を考えると、これもまた急速に減っていく。とりわけ他の年齢層よりも早く減っていく、大きく減っていくということです。逆に、老年人口だけがある時期まで増えていって、あとは横ばいというのが2050年までの見通しであります。当然、子供の数が減っていることが、赤ちゃんや子供、児童に関連する産業や行政のニーズを低下させる、とりわけ教育への影響が大きい。
図表16は、例えば学校に入る、あるいは出ていく年齢が、この20数年間の少子化のエコー効果として順次訪れている。大学進学人口なり卒業人口すらも、小さくなっていくというふうなことが順次起きていて、いまや、第二次ベビーブーマーのピークが20代の後半に来ていて、青年の人口も減少を始めているということであります。
このことが、おそらく現在、あるいは将来も、青年期の人口減少が大学進学率を上昇させるでしょうし、さらには、新しい世帯を形成する人口を減らし、そのことが住宅や耐久消費財の需要に影響するでしょう。こういうスペキュレーションをしております。
その一方で、老年人口の増加というのは、シルバーインダストリー、あるいは高齢者関連の行政ニーズを強めることは言うまでもないことであります。
大きな二点目は、労働力への影響でありまして、生産年齢人口が15~64歳で8,600万人から5,400万人に50年間で減る。しかも、生産年齢人口自体が高齢化していくという二つの側面があるわけです。その生産年齢人口の数、並びに割合が減少し高齢化するということは、言うまでもなく、労働力の人口総量、割合を減少させ、さらに、労働人口自体の高齢化につながることが予想されるわけであります。
ちなみに、2000年の男女年齢別の労働力率を一定にしますと、15歳以上で、全体の労働力が6,600万人から50年間で4,500万人まで減る。人口全体に占める労働力率が61%から50%まで低下するというふうなことで、どう見ても、人口の大きな変化が労働力に大きな影響を及ぼすであろうということになるわけであります。
三番目には、働き手と高齢者の比が大きく変わっていく。いわゆる老年従属人口指数、これは図表17でございますけれども、真ん中のグラフがそうでありまして、働き手、あるいは、生産年齢人口100人に対して高齢者が現在26人、それが50年後には67人というふうに、単純に比の倍数をとりますと、2.6 倍になるということでありますから、仮に同じ社会保障の制度をそのまま完全賦課方式で維持しようとしたら、現役の働き手の負担は大変大きなものになることは一目瞭然であります。
もう一つ、稀にですけれども、指摘されるのは、政治意識の変化です。これは、あくまでも若い人は自分たちのことを主張し、高齢者は自分たちの利害を主張するという前提でありますけれども、図表18のように、戦後50年間、そしてこれからの50年間、20歳以上の有権者の青・壮・老の比率がこういうふうに大きく変わるんですね。かつては、もちろん青年が最大の有権者でありましたが、現在は、壮年人口が中心、やがては老年人口が中心になる。仮に、自分たちの利害だけを主張するという前提に立てば、ますます子供や子育て世代の発言権は弱まって、高齢者が自分たちの発言権を強めるということで、子供向けの福祉予算が削減され、高齢者向けの福祉予算が拡充されるという議論をすることがときどきあります。そういうことが起こる可能性もなきにしもあらず、ということをお示ししたものであります。
最後に、家族の問題について若干触れておきたいと思います。家族の変化そのものは、高齢化と一緒に起こる部分と、独自に変化する部分とございます。独自に変化するという意味では、まさに核家族化が起こってきたということが戦後の経験でありますが、それによって三世代世帯の割合が低下を続ける。逆に、いま、単独世帯、独り者の世帯が大変上昇しているということがありまして、その結果、平均世帯人員が大きく縮まっているというのが、表19が示したところであります。
同じことでありますが、高齢者のうち、子供たちと同居する割合がどんどん低下を続けている。かつては、65歳以上の人の8割以上が子供たちと一緒に住んでいたものが、現在では、ちょうど半分になっております。その反面で、高齢者夫婦だけ、あるいは単独で住む、あるいは施設に住む割合が増加を続けているのが、図表20が示したところであります。
それから、人口の高齢化によって、高齢者世帯と言われる65歳以上が含む世帯の数、割合がどんどん増加している。これは、まさに高齢化がそういう高齢者世帯を増やしている部分でありますが、中でも、高齢者のみの夫婦世帯、そして、高齢者の単独世帯が増えていることが今日の趨勢であります。これは図表の21。
それから、家族動態の変化というところで示しておりますのは、少子化の背景にあります、70年代半ば以降の未婚率の上昇、未婚化、晩婚化が続くということで、未婚者の親離れの年齢、離家年齢の上昇が続いている。20代、30代の青年、あるいは、壮年に近いようなところで、親世帯と同居する割合がどんどん高まっているというのがしばしば指摘されます。図表22は、世代ごとに、結婚前に親元を出ない割合がだんだん上のほうにあがっている、いわば親離れしていないということは、こういうデータで示されておりますが、これは、しばしば「パラサイトシングル現象」と呼ばれるものであります。
そういう今日の未婚化現象は、図表23の推計の前提ですけれども、現在は、女性で言えば、20代、30代の未婚化が進んでいるのでありますが、それがやがて40代、50代と上がっていくと、生涯未婚率が上昇していく。図表23で、生涯未婚率は現在まだ5%ぐらいですけれども、それが、将来見通しとしては17%ぐらいまで上がるだろうと。ですから、男性は20%を超える、5人に1人が未婚でとどまるという仮定になっているわけでありますが、つまり、そういう社会をこの推計は想定していることにもなります。それが、さらにもう少し先にいきますと、未婚の高齢者が大変増えていくことにもなることを、いわば示唆しているということでもあります。
別な面で、これは[3]ですけれども、戦後、夫婦の平均子供数が平均2人に変わったために、60年以後に生まれた人たちのうち、男の大体67%が長男、そして、女子人口のうち男兄弟のない者が40%前後。いわゆる長男・長女社会と言われる現象。これは、戦後の夫婦の子供数の減少が、その後、一種のエコー効果を伴って、その人たちが成人したときにそういう長男・長女社会が訪れたということになるわけであります。
[4]では、もう一つ家族の変化として、特に80年代半ば以降に日本で離婚率が急激に上昇している。すでに今日では、一部といっても、平均的な西欧諸国並みの水準に達しております。人口1,000人当たりで2.3 という数字です。
離婚率上昇の結果として、母子家庭、女親と子供のみの世帯が増大している。また別の面では、離婚率の上昇によって再婚の割合、現在、1年間の結婚のうち15%が再婚です。そういう再婚割合が高まる。当然、義理の親子関係、ステップファミリーが増える、そういうことが日本でもいま急速に起きているということでございます。
最後に、これは、別の労働力のデータなどでよく言われることですけれども、専業主婦型家族といいますか、奥さんが仕事を持っていない家族は、いま、図表25に見ますように、若い世代の中では、有配偶、つまり結婚した方の中で専業主婦型の家族というのは、70年代にピークに達して、それ以降はむしろ低下傾向にあることがしるされております。
ちょっと長くなりましたけれども、以上で、「超高齢・人口減少社会の到来とその諸問題」ということで、ご報告させていただきました。
〇委員
ありがとうございました。
大変示唆に富む、興味深いお話をいただきました。税調も高齢化していますから、我々の問題として受けとめましょう。どうぞ、少し時間をとって、所長に質問なり、あるいは聞きたいこと等々ありましたら、どうぞ御自由に。
〇委員
この図表の、1930年代から45年までのいわゆる日本の戦争世代といいますか、そういうものとの比較は何かなされていますか。つまり、そのころはどうだったのかということ、そういうものとの比較。やはり戦争と非常に関係が深いと思いますし、例えば、イスラム世界のそういう社会制度や人口動態を見ると、そういう現象がありますよね。そういうこととのかかわりで何か研究されているかどうか、ありましたら、教えていただきたいと思います。
〇委員
ちょっと御質問の趣旨があれなのですが、30年代生まれの、というのではなくて……。
〇委員
いえいえ、1930年代から1945年ですよね、戦争が終わったのが。その間の人口動態というのはどういうものだったのか。それから、こういう形での分析をなされているかどうか、そういうことです。
〇委員
日本は、戦前というのは、まだ、実は途上国型の人口レジームでありまして、1夫婦といいますか、1人の女子当たりの子供の数が、大正で平均5人、戦前の最後のころでも平均4人ということで、本当に今の途上国並みのパターンでございました。それから平均寿命も、1940年代の戦争直前くらいで、50歳になるかならないかというふうなことでございましたので、その点でもやはりまだ途上国型のパターンであったということでございます。
その結果として、人口は大変な勢いで増加し、さらには人口ピラミッドが、明治の初めよりもむしろ若返るといいますか、子供の数が相対的に大きくなる、そういう人口の若返り現象をむしろ経験していた、そういう時期でございます。
〇委員
いままで、少子・高齢化についていろいろな本も読んだし、話も聞いたし、個人的な体験もありますけれども、今日の先生の話を聞いて、私は、これで自分の気持ちはもう決着がついたのね。ああ、これで日本民族の衰退論というのは決定的だと思ったですね(笑)。そこから先の対応は二つしかないんですよね。あきらめ型で適応するか。これは温暖化も同じなんですよ。地球が温まるのはしようがないと考えるか、ということと絡むんだけどね。それで、どうやら若干適応するかと。それから、無駄な抵抗かもしれないけれども、移民と少子化対策をやってみるかと、二つしかないと思うんですね。ここに先生が書いたとおりだと思うんですよ。
それで、僕はもうあきらめ型に近いんだけれども、それでもなおかつ、どの程度のスケールのことをやれば--例えば移民にしても、何百万人ぐらい10年か20年で入れれば何とかもつのかとか、子育て対策で、いま政府はいろいろなことをやっているけれども、今のスケールの何十倍ぐらいやれば、先生の見通しでは、幾らかカーブは変わるか、と。あきらめているけど、しかし、先に対する若干の未練もあってお尋ねしたいのですが。
〇委員
いや、大変難問でございまして、私ごときでとても……。人口学者の領域といえども、多くの有識者の知恵を集めなければならないと思いますが、一つは、移民についてです。これは、経済の問題を抜きにして、単純に人間の数だけを現状維持するにはどれだけの移民が必要かというのを、実は、このお配りした資料の16ページの表、「参考5」というところに掲げてございます。
これは、国連が先進諸国について計算したもので、別に非常にメカニックな計算ですので誰でもできるわけですけれども、2000年から2050年、例えば下のほうに「日本」とありまして、時計数字のIIIに、総人口維持のためにはこれからネットの移民として毎年どれだけ必要か。日本の人口の趨勢は、国連の推計も日本の推計もそれほど変わりませんから、50年間で大体1億人になるという推計ですが、1億2,700万人をそのままキープしようと思ったら、どれだけの移民が必要かというので、毎年34万人というのがその計算結果です。50年間で1,700万人ということですね。
それから、生産年齢人口、今8,600万人。この生産年齢人口が減らないようにしようとするためにはどれだけ必要かというと、年間で65万人、50年間で3,200万人必要だということです。
時計数字のV番は、高齢化水準です。先ほど、65歳以上人口割合で17~18%と言いましたけれども、今、ここに挙がっている数字は「潜在扶養指数」といって、老年従属人口指数の逆数です。1人のお年寄りを何人の生産年齢人口で支えられるか、そういう数字です。その現状のまま--今、ちょうど4人に1人ですから、4人に1人の水準で維持しようと思ったら、毎年1,000万人の移民が必要だと(笑)。50年間で5億人の移民が必要だというのが、全く機械的な計算です。当然、移民の人も歳をとりますから、よけい必要になってきます。ですから、高齢化を移民で押しとどめようというのはもう不可能だということが、この計算結果が示しているんですね。
では、例えば30万とか60万の数字はどうかというと、一番左端の時計数字のIというのは、例えばドイツの20万人とか、アメリカの76万人というのは、現在、アメリカが入れている移民がそんなものなんですね。それを前提にして国連が推計しています。ですから、人口比から考えて、例えば日本で30万人入れるという数字は荒唐無稽な数字ではない。つまり、先進国社会の中でそういうことをやっている。ドイツは8,000万人で20万人ですから、そういう前例といいますか、実例がないわけではないという意味で、その程度の移民は全く考えられない数字ではないというのは、あくまでも人口上の計算から出た問題でありまして、もちろん、経済との関係でまた話は全然違ってくる。
少子化対策のほうでありますが、これは、お金の額としてどれだけかければというのは難しいのですが、しかも少子化対策については、なお日本でも意見の相違があるようです。ですから、どうしても個人的な意見といいますか、私のいろいろな分析の結果から、私自身はそういうリコメンデーションをしているということを申し上げるのですが、先進国の中で相対的に出生率が高いのは、英語圏、北欧圏、そしてフランス語圏なんですね。それに対して低いのはドイツ語圏、南ヨーロッパ、そして、日本を含むアジア、NIES、儒教文化圏というふうなことなんですね。
その違いというのはかなりクリアでありまして、男女共同参画といいますか、要するに女性も男性も働くシステムづくりにある程度成功している国のほうが、現在ではむしろ出生率は高いという傾向が見られます。それは、その国によっていろいろな方策があるわけですけれども、それに対して、考え方として、伝統的な家族を守ろうと、そういう考え方が強い国のほうがむしろ逆効果になって、出生率が低い傾向があります。
私個人としては、方向として女性の社会参加を促進しながら、しかし、家庭責任と仕事の両立を図っていく、そういう方向の政策をとっていったほうが日本としては望ましいのではないかということで、法整備とか、さまざまな企業の変革とか、そういうものが求められると思うわけでありますけれども、もう一方で、子育ての経済コストを無視していいのかということがあります。最初に申し上げたのは、いわゆる仕事と家庭の両立という問題ですけれども、もう一つは、子育ての経済支援というものが、フランス語圏を筆頭にして、かなり北欧でもやられているわけです。あるいはドイツ語圏でもやられていますけれども、これもやはり無視できない。
個人的には、両刀遣いというか、両方をやるということがあるので、そうしますと、当然のことながら大変なお金がかかる。今、日本の児童手当ては6歳未満ですけれども、欧米のほとんどの国は普通で15歳ぐらいです。18歳、そして大学に行くような場合には22歳までそれを延長するとか、そういう児童手当てがイギリスを含むヨーロッパ諸国では実施されております。ですから、当然、これで日本の何倍に匹敵するお金がかかるということでありますが、そういう点で、お金をかけないでこの少子化対策をやるというのはなかなか至難の業ではないかと逆に思います。
〇委員
冒頭に先生が明快におっしゃったのは、出生率の低下と、未婚の増加、晩婚、晩産、それが相関していると。今、先生が御質問に答えておっしゃっていた問題ともかかわるのですけれども、それを逆に見ると、つまり、結婚しにくい。それから、結婚したとしても大変遅れていく。これが一つですね。それから、家族を形成したけれども、子供を持ちにくいのか、持つのを遅らせるのか知りませんが、今、最後におっしゃっていたことは後段の話と非常にかかわっていると思うのです。
諸外国を見ますと、日本の出生率は90年代以降、急低下していくわけですよね。欧米諸国よりもどんどん下がってしまって、欧米諸国は高い。今、日本の人口構造全体は、先ほどおっしゃられたように、現存の国民は途上国型のものを引っ張っていますけれども、新しく生まれてくる国民というのはは極端に先進国の先を行っているという感じになっていますよね。ですから、ちょっとそれは異常な動きだと思うんですけど、途上国的なものを引っ張りながら、しかし、先進国的なレベルのところで収れんするという姿になっていないんです、日本は。超えてしまっている--下回ってしまっているという感じですね。
それは、私は、都市問題とものすごく関係があるのではないかという気がするんです。つまり、この1億数千万の国民が、例えば東京の昼間人口は3,000万人ぐらいいくわけですけれども、大都市に集中していて、この人たちの暮らし方を見ると、子育て支援の仕組みにしても、保育にしても、極端に欠けているわけです。地方に行けば、かなり十分。ただ、仕事がない。仕事はみんな都市に集中している。そのギャップですよね。だから、子供を持っても1人以上持てない。しかもすごく後になる、こんな感じではないかと思っているんです。
人口の数をどうするということは全く本末転倒な議論で、そういう議論はすべきではないという考え方を私は持っているんですけれども、人間的なwantsを実現できるような社会構造になっているかどうかということは、かなり真剣にチェックする必要があって、その観点から見ると、やはり子育て支援は相当ひどい状態だと思います。
では、児童手当てを渡したら子供を産むか。私は一度、児童手当て審議会に入っていたんですけれども、引き受けるときの条件として、児童手当はなくせという考え方。それだけ言わないでくれというから、じゃあ言いましょう、1回500万円にしてくれと。そしたら、商売で子供を産むと思うんですよ。そんな数万円なんかで子供を産む人がどこにいるかということなんですね。
それよりも現実問題としては、子育てインフラが非常に悪いのと、労働時間のアレンジが非常に悪いということで、成立できないですね。そんな感じを持っていますが、先生、どんなお考えですか。
〇委員
都市がほかに比べて極端に住環境として好ましくないとか、そういう議論というのはもちろんございますし。
〇委員
出生率は現に低いでしょう。
〇委員
もちろん、そうです。なかなか難しいのは、農村の若い方が東京に集まってしまうから、1人当たりがよけい低くなる、そういう面もある。統計上のそういう問題もございますけれども、しかし、現実に出生率が大変低いという側面は否めないと思います。
それからもう一つ、労働環境といいますか、これは、もちろん政府だけの問題ではなくて、企業、社会の問題でもありますから、単純にどうこうということは言いにくいですけれども、そういうものをどこかで全体として両立しやすいような姿に変わっていかないと、結婚、出産というのはなかなかこれから回復しにくいということも、同意するところであります。
ただ、最後に申し上げたお金、これは、数万円で子供を産むのかと、すぐそういう議論になってしまうのですけれども、これはあくまでも相対論でありまして、英語圏の場合は税制でやっていますから、ちょっと違うんですけれども、ヨーロッパ諸国のほとんどすべてが、児童手当てを中心にして子育ての経済支援をしている。やはり底支えといいますか、下支えがあるわけですね。
日本は、たまたまそれが非常に弱かったので、今から増やそうとすると、いろいろな御批判があって難しいと思うのですけれども、子供というものは、よく経済学で言うように、かつては生産財、資本財であった、いまは消費財になったと。もっと別の見方をすれば、かつては子は家の宝であった。そういう家の宝の側面はどんどんなくなってきて、親が子供を持つ動機が弱まっている。しかし、子供というものは将来の労働力であり、一種の社会の宝として大変価値が高まっているという、このアンバランスといいますか、ギャップがある。そういうときに、社会の宝に対して、社会が子育ての経済的な支援をしないというのも、どうも不親切ではないかということを個人的には思っています。
その辺で日本は突出する必要はないですけれども、ヨーロッパ並みまでもっていくことはどこかで必要ではないか。特に日本の場合には、もう一つ、大学教育のお金がほとんどカバーされていませんね。ヨーロッパの学生と比べたときに、ヨーロッパの国立大学は、タダではないけれども、せいぜい年間に5万円ぐらい払うとか。日本だと、国立大学はおそらく50万円ぐらい払うわけです。その違いというのもあるので、子供を育てていく全体のコストが日本はちょっと高いのではないかなということで、そこのところを社会的にもう少しサポートしてもらえないかなというふうに、個人的には思っております。
〇委員
だいぶ時間が迫って、もうほとんど超えていますが……。
では、最後でよろしいですか。
〇委員
大体、お話で私の疑問もわかったのですが、先生のこの資料の中に、「日本の出生率は、主として未婚化・晩婚化・晩産化の進行により低下してきた」と書いてあります。これは、我々の周りを見てもごもっともで、そうだと思うのですが、「日本の出生率は」ということは、では、外国に比べて日本は何か特殊性があるのでしょうか、というのが第一点。
第二点は、子供が生まれないという少子化の中で、諸般の環境が整えば増えると、そういう前提で考えていいんですか。つまり、いくら周りで対応しても、産む女性が、「もう要らない」という社会的風潮……というか、そういう人生観であれば、そういう政策をしてもムダです。ですから、その辺の日本の女性の心理、あるいは、もし産みたいとすれば、阻んでいるものを取り除ければ増えるというふうに考えてよろしいのでしょうか。そこの二点です。
〇委員
第一点ですが、ちょっと文章の書き方にもよるのですけれども、未婚化・晩婚化・晩産化というのは先進国に共通しています、その程度の違いはありましても。ただ、日本の場合は、未婚化、つまり結婚していないというと、結婚していない人の中で同棲をする人が大変少ないものですから、一種の"純粋未婚"で、同時にそれは、子供を産まないと。つまり婚外子が大変少ないわけです。
ところが、ヨーロッパ、アメリカも含めて、未婚化・晩婚化・晩産化は同じですけれども、その未婚の中で同棲する人の割合が大変高いんですね。同時に、同棲で子供を産む人の割合が大変高いということで、未婚化がそのまま少子化につながっているわけではないところが--例えば日本を含む東アジア、それから南ヨーロッパが相対的に低いですね。そこと、それ以外との違いが大変大きいということでございます。
それから第二番目の、少子化対策をやっても、人生観がそもそも子供を産まないということであれば、これは何をやってもしようがないと。これは、おそらくおっしゃるとおりだと思います。
ただ、私どもは、あるいは私どもに限らず、いろいろな社会調査があって、若い方に、例えば、「一生に一度は結婚したいですか」とか、「子供は何人ぐらい欲しいですか」という一般的な質問を投げかけたときに、結婚したくないという人はまだ数%、せいぜい1割。本当に数%ですね。それから、子供を産みたくないという人もほとんどいない。一般的には、平均で子供が2人ぐらい欲しいという答えがあります。その答えを信用するかどうかは別問題ですけれども、少なくともほとんどの調査でそういう結果が出ています。
そういう意味では、結婚--結婚よりもっと広い意味で、パートナーシップをつくりたいという願望とか、それから、そのパートナーシップをつくった中で子供を持ちたいという願望そのものが、消え失せてしまったというふうには調査結果からは思えない。少なくとも思いたくないというのはありますけれども(笑)、そうであるとすれば、むしろいまの問題は、こういう非常に企業社会の厳しい中で女性もキャリアを追い求めるというところで、仕事と家庭の両立、つまり二者択一でなくて、ぜいたくであっても両方求めるというところを実現させていくような社会施策が必要ではないか、という結論のもとに私は旗を振っているということでございます。
〇委員
時間が過ぎていますが、女性が2人いますから、コメントを。
どうぞ。
〇委員
黙ってようかと思ったんだけど、これはね、絶望的なんですよ。今、結婚したくないわけでもないし、お金が足りないわけでもないの。男が魅力的じゃないからなの(笑)。だって、大学の先生は皆さんおわかりになると思うけど、この男と一緒にいようとか……面倒見てやらなきゃしようがねえ、というのはいますよ。だから最近、年下が多いんですけど。年下にしてアゴでこき使ってやろうというのはいるけどね。いないんだから、根本的に無理です。今も統計に出たように、したくないと言ってるんじゃないんですよ。相手がいないだけなんです。
〇委員
何か税調の対話集会でもおっしゃってたね。
〇委員
これはね、根が深くてほとんど無理ですね。
〇委員
では、どうぞ。
〇委員
時間が超過していますけれども、先ほどの「未婚化・晩婚化・晩産化により」という、この「により」という中身が、女性が子供を産まなくなったからというこの説明は正しいんですけれども、「により」の中身がもうちょっときちっと整理されないといけないと思うんですよ。
私は家族問題の専門家に2、3日前に話を聞いたのですけれども、何に女性たちは反発しているかということだと思うんです。一番大きいのは、まず、日本の賃金の考え方、家族賃金。いわゆる世帯賃金というか、それが高度成長の中でどんどんつくられて、主婦を務めることが非常にいいことだと、非常に国民運動的に、家族主義みたいなものが浸透した。大企業が奥さんに対していろんな控除をしたり、とにかく家で仕事をすることが旦那にプラスであり、また、子供を産むことも日本の産業にとって非常に重要でありという、産業のサイクルにも巻き込まれた形で家族が動いていくというこの姿に対して、その歯車になることはおそらく間違いではないか。今、専業主婦願望は明らかに減っているし、それから昔は、女性は職場の花とか、腰掛けだとかさんざん言ってきて、これに対する反発がものすごく強いわけです。
しかし、女性たちが働き始めるというのは、男性のように、がむしゃらに産業の歯車になって働こうと思っているわけではないということで言えば、働けばいいんだとか、職場に入れればいいんだという話とは、もうちょっと違うものを追求しているというのが一つあると思うんですよ。
それから最後に言えば、「亭主元気で留守」と。留守じゃ足りない、すっかりいなくなってくれないと荷物がとれない、と。
〇委員
離婚して子供を連れて帰るという……。
〇委員
そうですよね。これも今の話と全く裏返しで、そういう根本的な問題をきちっと整理しないといけないのと、三つ並んでいるのは何だかニュアンスが非常に悪い。未婚化と何とかと晩産化。未婚化と晩婚化は両方の問題で、晩産化は女性だと思うんですけど、これはカップルの問題。それが女性の晩婚化というふうにとれなくもない話なので、ちょっと……。
〇委員
委員がおっしゃるのはわかりました。
では、どうぞ。
〇委員
私のは簡単な質問で、先生にお伺いしたいのですが、これ、単純計算していくと、日本という国は何百年後になくなるわけですか。
〇委員
なくなるのは計算上大変で、2000年ぐらいかかるかもしれません。ただ、例えば今の出世率がずっと一定だとすると、200年で1,000万人台になりますから、それぐらいの勢いだということですね。
〇委員
2人の先生について、先生のほうから何かコメントはありますか。そのとおりですか。
〇委員
いや、御遠慮しておきます。
〇委員
では、時間になりました。まだ尽きぬ議論でありますが、だいぶ時間も超過しました。
どうも、今日はお忙しいところをありがとうございました。
〔所長退室〕
〇委員
それでは、今から、非営利法人課税ワーキンググループの御報告を、座長と事務局から、ごく数分ずつでいただきたいと思います。
では、座長、簡単に。
〇委員
時間も超えていますので、簡単に御報告させていただきます。報告事項です。
この秋に、非営利法人課税ワーキンググループというものをつくっていただきまして、公益法人、NPO、中間法人の課税問題を検討するということになりました。これは、内閣官房行政改革事務局のほうで懇談会という形で、いわゆる公益法人、中間法人、NPO、これの法制度を考え、新しい制度に変えるという方向を目指しておりますので、それに対応して、税制上もどういう税制があるかということを検討することになっております。
それで、今まで2回ほど議論いたしましたが、まず、現行の公益法人、NPO、中間法人の課税の仕組み、公益法人制度改革の経緯がどうであったのか、そういうことにつきまして幅広に御意見をいただいて、論点をまとめているところでございます。
この金曜日に、内閣官房の行政改革事務局から来ていただきまして、公益法人等と呼ばせていただきますが、改革の方向、議論の様子などをお話しいただきまして、このワーキンググループのほうでもまとめる作業に入りたいと思っております。3月中旬には、こちらの小委員会にワーキンググループの基本的考え方という形で御報告したいと思っております。
詳細な論点等は、時間の制限もございますが、事務局からお願いいたします。
〇委員
では、主要な論点だけ御紹介ください。
〇事務局
お手元の14年12月24日の「非営利法人課税の主な論点」という資料で、ごく簡単に御説明を申し上げます。
1ページをお開きいただきますと、いま座長からお話がございましたとおり、現在、公益法人、NPO法人、中間法人と三つの法人形態がございます。公益を対象とする公益法人とNPO法人につきまして、一つは、主務官庁の許可、あるいは都道府県知事の認証があった段階で法人格が取得されるとともに、法人課税が原則非課税になっている。一方、中間法人につきましては、右にございますが、準則主義のもとに設立されて、普通法人並課税となっているという、一つは法人課税の問題がございます。
もう一点、下のほうにございますが、その公益法人とNPO法人の中から、一定の要件に該当する場合にその法人に対して行われた寄附を優遇するという、寄附金税制の二つ目の問題点がございます。
2ページをお開きいただきますと、いま申し上げましたとおり、民法上の社団・財団、NPO法人は、左端にございますが、公益を目的とし、さまざまな許可、認証、あるいは監督等がある。一方、中間法人は、共益を目的とし、そこに書いてあるような状況になっているという中で、新しい非営利法人制度は、右のほうにございますが、これらを取りまとめまして、公益、共益問わず非営利ということで、登記で簡単に幅広く設立していくという方向です。これに対しましてどういう課税をするか、あるいは、それが原則非課税になった場合には、どういう非課税法人としての要件を考えていくかという問題がございます。
3ページにございますが、寄附金優遇法人制度につきましては、現在、NPOと公益法人と二つの制度がございます。右にございますが、新制度のもとでどのような制度をつくるかという問題がございます。
以下、4ページ以下の文章にそれがございますが、省略させていただきます。
〇委員
ありがとうございました。
どうも時間を超過してすみません。これで終わりにいたしたいと思いますが、次回は、3月14日(金曜日)でございますが、2時-4時と考えております。いま、国会開催中でございまして、税制改革法案が提出されておりますので、あまりここで頻繁に、税調、基礎小と開催するわけにもいきません。国会の審議状況を見極めまして、また、いろいろお願いすることがあろうかと思います。
よろしゅうございますか。
では、どうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。