第21回基礎問題小委員会 議事録
平成14年10月17日開催
〇委員
おはようございます。それでは、時間になりましたので、基礎問題小委員会、21回目になりますが、開催いたします。
今日は、1日繰り上げまして行いましたのも理由があるのですが、後ほど申し上げます。
それでは最初に、10月11日、先週の金曜日ですけれども、私、経済財政諮問会議に出てまいりました。このとき、塩川大臣が出されたメモ、それから、例の「税制改革と経済財政政策の運営について」というペーパー、この説明をいたしまして、1回か2回しか発言がなかったのですが、一応税調の空気を伝えてまいりました。
あえてそこで話題にすべきことがあるとすれば、減税規模云々を諮問会議2.5兆円、財務大臣が1.5兆円と言っているわけですが、私は、減税規模はもう政治家が決めるべきではないかということをかねがね発言しておりましたら、経済財政政策担当大臣がそれを諮問会議イコールで取ってしまって、「諮問会議で決めるべき」なんて言っているから、それは訂正してきました。
そして、財務大臣とか、総務大臣とか、総理大臣、政治家が決めるしかないだろうということで、それはその場でまた諮問会議の民間議員もそれに便乗いたしまして……便乗というか、そういう意見をみんな言ったのですが、総理大臣は、まだ先でいい、それから党の意向も聞かなければいけないということで、そこで即断は避けた。それは、ある意味では正解ではなかったかと思います。こういう状況がございました。
今日は、今からお諮りいたします、冒頭の議題でございます「研究開発・投資減税」につきまして、ペーパーをまとめたものを一応「会長談話」の形で出したいので、御審議いただいて、それを、午後の諮問会議で向こうに行って税調の空気を届けたい、このように考えております。そのほか、消費税とか幾つかテーマがございますが、まず最初に、用意いたしました、上にのっかっていると思いますが、「研究開発減税・投資減税の基本的枠組み」というペーパー、4枚ほどございます。これが今日の一つの大きなテーマでございますから、早速審議を始めたいと思います。
申し訳ありませんが、事務局、お読みいただけますか。
〇事務局
研究開発減税・投資減税の基本的枠組み
税制調査会は、経済社会の活性化に資する「あるべき税制」の構築の一環として、15年度税制改革について、いわゆる総理指示5項目を中心に検討を進めてきている。
その多岐にわたる検討項目のうち、研究開発減税・投資減税については、企業の投資の計画的対応に資するよう出来るだけ早い時期にその大要を明らかにすることが望ましい。すでに公表した9月3日の「議論の中間整理」において検討の方向を示したが、その後の審議を踏まえ、その内容がより具体化したので、その考え方を別紙のように整理した。
この際、次のことを付言しておきたい。15年度税制改革については、内閣総理大臣より、経済活性化に資する「あるべき税制」の実現に向けて、多年度税収中立の下で税制改革を一括の法律案にまとめるとの方針が示されている。研究開発減税・投資減税も、この方針に従い実施されねばならない。
つまり、財政の持続可能性に対する懸念が国民の将来不安を招く一因となっている状況を踏まえると、減税の実施に当たっては、具体的な増税と一体で措置することが不可欠である。換言すると、将来世代へ負担が転嫁されないように、一定期間での税収中立を達成すべきである。
現在、税制調査会は、来月中旬を目途に予定している15年度税制改革に関する答申のとりまとめに向けて、引き続き検討を進めている。
(別紙)
「研究開発減税・投資減税の集中」に関する考え方
15年度税制改正において検討すべき事項として、内閣総理大臣より指示のあった「研究開発減税・投資減税の集中」については、本年6月にとりまとめた「あるべき税制の構築に向けた基本方針」において、十分に検討されている。つまり、「我が国企業の競争力強化や産業構造の改革を進めるためには、21世紀をリードする産業・技術を見据えた明確な国家戦略を前提に、総合的な政策の重点分野への集中投入が必要」であり、その一環として、「政策税制を研究開発分野等真に有効な分野に重点化すべきである」との考え方を示した。
その後、当調査会において議論を進めた結果、以下の基本的な考え方に従い、具体的な制度設計を進めていくことにする。この制度設計に際し、当然のこと、既存の租税特別措置の本格的な統廃合を行う。
1.研究開発税制
企業が行う研究開発の成果は広く経済全体に恩恵を及ぼすものである。しかし、投資リスクが高いため、市場原理に任せるだけでは十分な活動が行われない可能性がある。このような外部効果を有する研究開発に対し、政策税制で支援することには一定の合理性が認められる。
このため、「議論の中間整理」においては、「厳しい経済状況の下、研究開発の分野でも合理化、効率化が進められる中で、試験研究費の額が「増加」した場合等に税額控除を行う現行制度が有効に機能しなくなっている面があり、見直す必要がある。このため、英米等の例も参考としつつ、新たな研究開発税制を設ける。」との考え方を示した。
米国では、基準額からの「増加分」の一定割合を税額控除する制度に加えて、1996年より、選択制で、研究開発支出の「総額」の一定割合を税額控除する制度が採用されている。この「総額」方式は、過去に研究開発支出を多く行ったために、「増加分」方式では減税効果が効きにくい企業にインセンティブを与える趣旨で導入されたものである。また、研究開発支出のウェイトの高い企業をより優遇するとの観点から、売上高に占める研究開発支出の比率が高いほど、高い比率で税額控除が受けられるように設定されている。
現下の状況を踏まえ、我が国においても、研究開発支出の「総額」の一定割合を税額控除する制度を新たに導入する必要がある。その際、以下の点を踏まえた制度設計を行うこととする。
[1] 研究開発支出を増加させるインセンティブを高める観点から、基本的に売上高に占める研究開発支出の比率が高いほど、税額控除率を高く設定する。
[2] 研究開発はあらゆる分野で行われるものであることから、支援対象を特定の業種に限定せず、海外への委託研究を含め研究開発全般に適用する。
[3] 基礎的、創造的な研究活動を支援するとともに、大学・研究機関の専門知識の活用を促進する観点から、産学官連携の共同研究、委託研究に対し、高い税額控除率を設定する。また、経営基盤の弱い中小企業の研究開発活動を支援する観点から、同じように一定の配慮を行う。
[4] 研究開発の促進は21世紀の我が国を支える産業・技術の創出につながることから、本制度の基幹的部分は期限を区切らない措置とする。ただし、集中的に政策効果を高める観点から、時限措置として上乗せする部分を設ける。
2.設備投資税制
「議論の中間整理」においては、「一般的な投資促進税制は、企業が過剰な設備・債務を抱え、キャッシュフローを借入金の圧縮に充てている中で、設備投資の増加につながるか疑問があり、また、将来的に競争力を失う産業にも優遇措置を与えるため、構造改革に逆行しかねない。したがって、経済社会の活性化や構造改革のために、真に有効な分野に集中・重点化した投資促進税制を創設する。」との考え方を示した。
(1)IT投資減税
IT投資の促進は、短期的な需要創出効果が見込める。それだけでなく、広く我が国企業全体の事業効率化、付加価値向上を通じ、中長期的な産業の競争力強化、経済社会の活性化につながることが期待できる。このようなIT投資に対し、集中的に政策効果を高める観点から、期限を区切り重点的な政策税制を講じる必要がある。
かかる観点から、ハードウェアのみならず、ソフトウェアも含むIT投資全体を対象とし、対象事業者の限定は行わない。また、政策措置の方法としては、企業が状況に応じて対応できるよう税額控除と特別償却の選択制とする。
(2)研究開発用の機械、設備等の特別償却
研究開発については、前述のように研究開発支出全体を対象に「総額」の一定割合を税額控除する制度を導入するほか、研究開発を設備投資の面からも更に支援するため、期限を区切り、研究開発用の機械、設備等の取得に対して特別償却による支援措置を講ずることにする。その際、研究開発を広く支援する観点から、本措置についても、対象業種を限定しない。
このような措置をとることにより、特に、いわゆる重点4分野(バイオ、IT、環境、ナノテク)をはじめとする先端分野に係る設備投資が促進されるものと考えられる。
〇委員
ありがとうございました。
一点、議論を始める前に、3ページ目の[4]に書かれていることを、わかっていれば具体的に説明していただけますか。つまり、基幹部分は期限を切らないし、政策効果を高める場合には時限でやるというところの具体的な設計はもうできていますか。
〇事務局
具体的設計はこれからでございますけれども、この前御議論いただきましたとおり、研究開発税制については、外部効果といった観点から恒久的な措置とすることが望ましいということを基本としつつ、さらに、現在の経済状況ですとか、日本の産業の置かれた状況にかんがみて、上乗せする部分というものもある程度あり得るのではないか。その場合は、時限的な措置として、ある程度の上乗せをさせていただくという基本的な考え方でございます。
〇委員
まだ上乗せの具体的な設計はできていないということですか。
〇事務局
はい、まだでございます。
〇委員
わかりました。といったようなペーパーを作成いたしまして、「会長談話」という形で、今日以降、公表したいと思います。
ちょっと補足しておきますと、この基礎小でも、税率を下げるか、政策減税をやるかと、よく委員から御発言がありましたけれども、その効果を見極めてという議論もだいぶございました。
それから、政策減税でやると租特が増えるから抵抗があるというのは、委員からもだいぶ御議論がありまして、最近までこの議論、選択をめぐって我々は議論を交わしてきたと思います。
諮問会議の4議員は、相変わらずと言っては失礼ですが、税率引下げを絶えず言っておりまして、それに対して我々は、はなから研究開発等に集中したというようなとらえ方をされておりますが、我々としては、幾つかの選択肢の中で今回この方法をとったというのが本音でございます。そういう意味で、そういう状況も説明しつつ効果を見極めてやりたい。
それから、租税特別措置も本格的に見直しつつ、研究開発とか投資減税、これに切り込みたいと思っていますので、そういう説明もしていきたいと考えております。
これぐらいの説明でございますが、どうぞ御自由に御議論いただきたいと思います。
どうぞ。
〇委員
3ページの[2]で、研究開発云々で「支援対象を特定の業種に限定せず、海外への委託研究を含め研究開発全般に適用する」とありますね。僕はこの前、ここで発言したことはないけれども、どなたか海外への委託研究について言及された方があったと思うのです。それでこれは理由があって入ったのだと思うけれども、海外への委託研究のときに、特定の企業なり何なりがどこかの大学院にバーンとファンドか何か出して、適当にやってくださいよというふうな金の出し方もあるし、これで見ると、技術開発全般について海外の大学と協力してやるなんてことは、どの程度の比率であるんですかね、いま世の中で。
〇委員
これはたしか事務局が大学云々を例に出されて御説明いただきましたけれども、これは、やり方はかなり広いのでしょう。
〇事務局
いま、ちょっと具体的な数字は持ち合わせておりませんけれども、ある程度そういう例は数字的にもございます。
〇委員
委員の御質問は、バカッとファンドを出して恒久的なある研究所をつくってやるとか、研究ファンドをつくってやるというのもあるし、単に短期的に委託研究で終わらせるものもあるし、そういうのはどれでもいいかね、という御質問でしょう。
〇委員
技術研究開発なんかで本当に金を出しているんですかね、日本の企業は。
〇事務局
いま、ちょっと数字は調べていますけれども、うろ覚えで恐縮ですが、3分の2ぐらいはむしろ海外への研究が多いというデータがあって、それ自体どう評価するかという議論は絶えずあるわけでございます。私どもも含めて、ここでは、それも含めた優遇対象にしたいという考え方でございます。
〇事務局
実は諮問会議で塩川大臣が出された資料の中にも、委託研究費のうち3分の2が海外支出だというのが出ておりまして、これはむしろ産構審で通産省がお出しになっている資料でございます。それで、その委託費の中身というのは、ちょっと聞いた感じで言いますと、いろいろな形態があって、いま委員が言われたように、大学へ出すというのももちろんあるのですが、同時に、最近の海外の委託研究は、法人税率の議論でもちょっと御説明したとおり、実は海外子会社がやたら増えていて、海外子会社への委託研究費支出というのがあるようでございます。
すなわち、海外子会社で研究部門までやっている。これは、具体例をあまり言うのは好ましくないと思いますが、大手の精密機械とか、自動車等の中にも、単なる組み立てではなくて、研究部門をむしろ先進国に置いてやっている、それを別会社でやっている、そこに委託研究費として支出する。そういうものが結構多くて、そのようなものも従来から対象として拾ってきております。それの善し悪しというのはもちろんあるのですけれども、しかし、会社の基礎力をつくるには、いまや日本国内だけではもうおさまらなくなっているというのが実態のようですから、そういう委託研究費まで排除することはちょっと難しいのではないかということでございます。
ちなみに、アメリカなどはこういう海外委託の研究費は対象にしていないということですから、そういう意味では日本の方が緩い制度を実はつくろうとしているということであります。
〇事務局
先ほどの数字でございます。総務省の調査でございますが、産業セクターからセクター外、大学と主には公的な研究機関でございますが、そこに対する研究投資ということで、合計額約2,700億円のうち約1,800億円が海外に向けてのものということになってございます。
〇委員
3分の2ですね。
〇委員
ちょっと確認させていただきたいのですが、この研究開発費の中身ですけれども、いま会長言われましたように、例えば、研究開発のために研究所を立ち上げるので不動産購入とか、こういうのも入ってしまうということでしょうか。
〇委員
僕もついでに聞きたいのだけれども、これは研究開発だから、大体理科系のイメージですよね、自然科学系のイメージですよね。ところが、海外の大学へ行くといろいろあるんですよ、文系の。文系まで入れていいかどうか、これって難しいですよね。その辺の定義はこれからだと思いますけれども、具体的なイメージを与えていただくような何かありますか。
〇事務局
たしかに数字的には理系のほうが大きいと思いますが、そこも、基礎研究も含めてここで切るということがなかなか難しいものですから、文系の研究も含めて業種全般ということで考えさせていただいております。
〇委員
建物もいいんですよね。
〇事務局
建物も、減価償却分が毎年、毎年、カウントされていくということになります。
〇委員
これも質問です。今のに似ているのですけれども、これは、海外の例えば大学への冠講座なども入るわけですか。
〇委員
冠講座は入りますかな。どうですか。
〇委員
それからもう一つ、新しく入ったのでは売上高に占める研究費比率、これは結構なことだと思いますけれども、これは、総額と売上高に占める研究開発費比率で税額控除というのは違ってくるわけですね。その2点です。
〇事務局
まず、2点目のほうからお答え申し上げます。今おっしゃられましたとおり、アメリカの制度を念頭に置いておりますが、支出額に占める研究開発費の割合に応じて、いわば階段がついていると申しますか、斜めに傾斜がついているような控除率というのを考えていく必要があるかと思っておりますが、具体的な制度設計はこれからでございます。
それから、冠講座の点でございます。どういう形で出されているかによりますが、委託研究費ということであれば、それは企業にとって、研究開発をお願いしてその成果が戻ってくるということになりますし、まさに大学に対して寄附金として出されているという趣旨であると、寄附金ということになってしまって、ここには取り込まれないということになります。
〇委員
前段ですけれども、僕は、10%ぐらい税額控除があったら、せいぜい1段階ぐらい、15%にするぐらいな話がこの研究開発のウエートのインセンティブだと思ったけれども、今のお話だとかなり段階を設けるという考えですか。
〇事務局
実はアメリカは三段階という方式でございます。この辺は私ども、これから制度設計していきたいと思っておりますが、ただ、階段にいたしますと、階段にいる限りは少々増やしてもインセンティブが働かないということで、より効率的にインセンティブを働かせるためには、ずっと傾斜にする、坂道のようになっているというカーブのほうが、常に企業に対してインセンティブを与え続けられるのではないかといった議論を、いま事務方ではやっております。
〇委員
では、階段ではなくてノンリニアにするわけですな、ドイツの所得税率みたいな。そんな感じ……。
〇委員
今の点と、前回も二点申し上げたのですけれども、海外での研究をどう扱かというのは、ある意味で法人税の率の話とも関連すると僕は思うのです。日本の企業が海外に、まあ税率だけで出るわけではないでしょうけれども、税率格差で出る誘因があると。ましてや、海外で得た所得を日本に送ってくる誘因はないという状況で、海外の委託研究を認めるということは、本来海外でやるかもしれない研究を、国内の本社が委託するということにして、日本国内での所得を減らして海外に移転してしまうという可能性もあると思います。
しかし一方で、そんなけちなことを考えないで、研究というのはもっと外部性もあるではないかという議論も同時にあるですけれども、ここはもう少し議論が要る。法人税率をどうするかという議論もある中で、ここはどうするかというのは議論があると思います。
第二点は、これも前回申し上げたのですけれども、4ページで特別償却の扱いです。これは確認ですけれども、特別償却部分も税額控除の対象になるのですか。それとも税額控除の対象になるのは本則部分だけですか。
〇事務局
あとのほうの御質問にお答えいたしますと、税額控除の対象になるのは本則部分だけでございます。
〇委員
それは当然そうだと思うのですけれども、ここで考え方としては、税額控除をもっと徹底して、もし完全に研究開発費にかかわる税額控除が当年度に引けないときも、繰越しを認めるとか……。
〇委員
そりゃそうですよ。
〇委員
認めるのですか。
〇委員
認めますよ。つまり、赤字法人に使わせてもいいか、ということでしょう。
〇委員
そうですけれども、そこは……。
〇委員
と思いますよ。欠損繰越しの制度が使えるんですよ。
〇事務局
今の制度の立て方といたしましては、税額控除というのは、当該年度に支払う支払税額のある法人に対して適用していただく。一方、特別償却の制度を採用していただくと、これは、赤字法人であっても繰越損失という形で5年間繰越しができるわけでございます。そこは、企業の状況に応じまして、税額控除を選択する場合、それが赤字企業のような場合には特別償却という形で選択していただくというケースがございます。
〇委員
その点を申し上げたかったのですけれども、まさに非常に大きな改革をしようとしていて、整理すると、税額控除の中には人件費のような費用と減価償却が入る。それが当年度の所得よりも多いときには、完全に引けないときには、税額控除の場合には引けないわけですよね。だから私が申し上げたのは、努力を払うならば、一つのアイデアですけれども、税額控除をもっときれいにして使いやすいようにする方向に力点を置くべきではないか。
特別償却については、一時的に措置でやるのだということならばそうなんでしょうけれども、それならば、その場合に研究開発上の機械・設備の耐用年数をこの際きちんと調べると。やるべきことは、その耐用年数が長いならばそこを短くする、それは特別償却という形を必ずしもとるべきではない。せっかくやるわけですから、何かもっとすっきり、パワフルな形でできないかというのが意見です。
〇委員
税額控除をすっきりするというのは、どういうことですか。
〇委員
引けないわけですよね。
〇委員
引けないよ、儲かってなければ。
〇事務局
試験研究費の税額控除制度の場合ですと、当該年度に法人税額がある場合でございます。
〇委員
どうぞ。
〇委員
この「石会長談話」というのは、今日の諮問会議というか、いわゆる総合デフレ対策の審議があるということで、そこに提示されるということでよろしいですね。全体の印象を言いますと、ちょっと技術論というのかな、どうしてもしようがないのかな、専門家の方が多いので。要するに技術論は技術論として、はっきり言って、わかりやすさとか、あるいは元気を出してもらいたいという熱意とか、これは表現の問題かもしれませんが、そちらの方をもう少しアピールしてもいいのではないかというふうに思います。文章は文章として、諮問会議に会長が出席されるのでしたら、言葉か何かで。
というのは、一つは、税率を下げるか、政策減税かということの議論の軸となったのは、一般制度か恒久制度かという面では税率引下げの方がわかりやすい。しかし、即効性なり集中性ということからすると、政策減税のほうがいいのではないかというきわめて理論的な論争だったわけですね。どっちがいいか悪いかとか、意地の張り合いとか何か、それは別にして。そういうことで言いますと、「研究開発減税・投資減税の基本的枠組み」という表題からすると、いわゆる一般性なり恒久性なり、政策減税の言ってみれば弱いところ、わかりにくいところも重視した、つまり一般性、恒久性にきわめて配慮したというあたりは、どこかではっきり……。全体のねらいというか。
それから、技術論が過剰だと自分で言っていながら、ちょっと技術論的なことに入ってしまうわけだけれども、これも口頭でもいいし、あるいは、これからの税調としての答申のまとめか何かで入れればいい話かもしれない。私は何度もここで言ってきたわけですが、研究開発税制の一つの弱点というか、一つの抱えている課題というのは、わかりにくさ、利用のしづらさ、あるいは、その結果としての関心のなさ--ということが、特に中小企業あたりではかなり浸透というか、そういうふうに思い込まれている。それが、せっかく制度がありながら、それがあまり活用されていない一つの原因ではないか。
したがって、もっとわかりやすさというか、制度の普及に努めるというのも、税制の仕組みとはまた別のテーマになっていると思うわけであります。今度のやつでかなり一般化されるとはいえ、こういう場合だったらマルです、しかし、こういうのはちょっと難しいでしょう、おそらくバツになるでしょう、というような一つの手引書みたいなものを国税庁なり主税局なりがつくって、そして、中小企業のこれまでこの制度と比較的無縁だった方々に対する普及を目指す、というような心配りがあってもいいのではないかというふうに思います。
〇委員
それは事務局にお願いしましょう。
あと、他に御発言の方いらっしゃいますか。どうぞ。
〇委員
大筋としては結構ではないかと思うわけでございます。恒久性というか一般性という面については、ちょうど交際費支出の扱いと似ているのではないか、そういうふうに理解できるのではないか。一つの研究開発支出、これは税法上で言えば、ほかの支出と差別的に扱うという、純粋に技術的に考えればそういう余地はないわけですけれども、一方、交際費支出というのは何十年間にわたって損金の不算入を強いている。そういうことからある意味で恒久的なものになっている。研究開発支出というものもその外部性といった観点から、一つの特性のある支出として、法人税のいわば一つの中核的な部分としてここで考えたのだというふうに理解し、かつ、説明をしていくということでいいのではないかと思うわけでございます。
ただ、その点に関連して、逆の言い方にもなるわけですけれども、たとえそういうふうに恒久的なものにしたとしても、税制調査会なり、税制のあり方を考える場合には、常にそれは根底から問題にできるわけでございます。法人税率なんていうのは、別に意見がなくてもいつも議論されていると同じことですから、恒久的なものにしたからといって、その本質は未来永劫的なものではないので、常にそこの議論の余地というのは調査会としては持っているというふうに理解いたしたいと思うわけでございます。
それから技術的な点では、海外での研究開発支出です。企業は、税負担のいろいろな操作を考えるということはもちろんありますけれども、やはり研究開発、どこにそういったものを組めば、より効率的な、より効果のある研究ができるかということをグローバルに考えてやっているわけですので、ここは、海外への委託とか、海外との共同研究、こういったものも幅広く入れていったほうがいいのではないか。
アメリカは、自分のところが研究開発水準、技術水準が高いという面もあって、外国のものは、ということもあるのではないかと思います。日本としてはそこは世界的な目配りの中で、企業が最も有効であるという研究開発に支出したら、それに対して措置するということでいいのではないかと思います。
〇委員
技術的な論点になってまた申し訳ないのですが、この研究開発減税、面倒だというのは、おそらく、税率を引き下げるほうが簡単だという意見に対応しているのだと思いますけれども、現実にこの研究開発費は、通常の場合にはこれは繰延資産になって何年かで落としていくということになります。あと使い道で、いま出てきています償却資産を買った場合とか、消耗品を買った場合、この場合にはそこでまた一つの費用化をすることができて、さらに三つ目に、全体としての枠について税額控除が認められている。こういう三段階と理解してよろしいのでしょうか。
〇委員
確認ですね。では、事務局。
〇事務局
おっしゃるとおり、総額に対して税額控除制度があるのと、さらに、設備投資につきましては特別償却ということで割増があるということでございます。
〇委員
では、最後ね。どうぞ。
〇委員
委員が言ったことと通じるのですが、この[2]でちょっと気になるところ、例えば何とか総合研究所とかいうものの支出というのは、全部研究開発だということで、海外に人を送ろうが何だろうがそういうのは全部引かれることになるのか。あるいは、東京電力あたりが例えば1兆円ぐらい核融合に投資する。毎年1兆円やれば、ずっと税金を払わなくてよくなるのではないかとか、そういうのはどうなのですか。
〇事務局
まず、税額控除制度全般についての話でございますけれども、これは、日本でもアメリカでもどこの国でも上限というのが設けられてございまして、法人税をまるまるなくすということはどこの国でもできません。したがいまして日本でも、今回の制度も、上限どこまでが税額控除できる範囲かということは、法人税額に対する一定割合を定めていく必要があると考えてございます。
〇委員
イメージは1割とか1割5分とかそういう感じですから、なくなることはないでしょうね。
〇委員
先ほど、海外が2,700億円に対する1,800億円、3分の2ということで、かなり多い。へエーと思ったのですが、ちょっと気になったのは、海外子会社も含むという部分がこの数字の中に入っていないのか。つい先ごろ、超優良企業が海外の子会社に対して、研究開発と称して実は実態が伴っていない業務委託だったということで、国税当局からお叱りを受けたという例があります。海外子会社まで含むと、研究開発という名に値しないものまで結果として入ってこないのか、ちょっと危惧するのですが、いかがでしょうか。
〇委員
わかりますか。
〇事務局
先ほど申し上げた数字は、まさに自分のセクター外に行く数字でございますので、海外の子会社分がどれくらいかというのは、数字、すみませんが、いまは持ち合わせてございません。
〇委員
では、何かそういう情報がありましたら。
最後に、どうぞ。
〇委員
全体としてはこれでいいと思うのですけれども、一つ伺いたいのは、設備投資の部分で、いま一番問題になるのは、例えば中国脅威論のような議論がなされている中で、日本と中国の競争力格差、もちろん賃金ですけれども、賃金以外で、日本の技術水準が意外に遅れているということがあるわけですね。その原因は、既存の設備を償却できないでいるということで、次の設備投資に手が出せないという現状があるわけです。これを前向きにとらえていらっしゃるので、これはこれでいいのですが、これに行く前に、既存の設備投資の部分の特別償却とか、そういう配慮がこれに入るのかどうか。そこのところをしておかないと、次にやりたくても行けないということだと思うので。
〇事務局
まず、既存の設備の廃棄でございますけれども、これは当然、設備を廃棄された段階ですべて償却損として計上できる、損を計上できることになってございますので、特別償却制度をあえて設けなくとも、廃棄されればその時点でその設備については損が立つということでございます。
それから、過剰設備を廃棄しつつ新しい態勢を整えていきたいという企業に対しましては、「産業活力再生法」という法律がございます。これに基づきまして、事業転換計画をつくって事業転換を図っていくということにつきまして、例えば新しく買った設備についての特別償却といったような制度は現在でも仕組まれてございます。また、現在、経済産業省からは、ここに載せてございませんけれども、産業活力再生法についてもさらに使い勝手をよくしてほしいという要望を受けておりまして、それはそれでまた議論していきたいと思っております。
〇委員
そうすると、オーバーラップしないのですか。いまの産業再生法とか出ているいろいろなスキームと、今回これを出すやつと。
〇事務局
オーバーラップすることは……。いま申し上げましたのは、古い設備を廃棄して新しい設備を買う場合ということでございまして、今回の場合は、IT、それから研究開発するところに特化した措置でございます。
〇委員
でも、産業再生法だってITとか何か、当然言っているでしょう。
〇事務局
それは、両方が適用できるということはございません。それはそのときの企業の状況で。
〇委員
わかりました。
続けて、どうぞ。
〇委員
いや、それはたしかにそうなんですけど、制度的にはね。しかし、実際に動いているものを扱っているわけですよね。ですから、設備が廃棄できるということは、次のものがきちっとできていて、動くことが確実でなければ廃棄できないわけですね。ところが、実際上、産業、企業活動というのは、オーバーラップしながら行っているわけです、数年間。ところが、前が非常に速く進むために、遅れている設備がずっと残ってしまうという現象が起きているわけです。ですから、そこの遅れているほうの特別償却をする制度がないと、実際上はなかなか移行できないというのが実態ですよね。そこのところなんですよ。
〇委員
何かありますか。
〇事務局
重ねてでございますけれども、設備を廃棄されれば、その時点で全額損金に落とせる仕組みでございますので……。
〇委員
まだまだあるかもしれませんが、まだほかに議題がいっぱいありますので、先に行かせていただきます。
確認のために、今日、これを一応皆さんの合意に基づいてお認めいただいたという形で、いうなれば基礎問題小委員会の共有の財産として、「会長談話」という形でまとめた。ただ、修文の具体的な御指示はございませんでしたので、このまま出させていただきます。ただ、皆さんから幾つか、説明振り、あるいは、強調点の置き方等々で御示唆がございましたので、今日の記者レク、あるいは諮問会議での説明には、それを大いに頭に入れてフルに活用させていただきたいと思います。
それでは、今日の本論に入りたいと思います。きょうは、消費税と、外形と、固定資産税等の審議がこれからございますので、逐次、資料を御説明いただいて、御審議をいただきたいと考えております。
〇事務局
それでは、消費税関係について、お手元の「基礎小21-1」に基づいて説明させていただきます。
消費税につきましては、10月1日の本小委員会で、簡易課税に関して、簡易課税の適用の方の仕入率と本則を適用されている方の仕入率を比較する調査を行いまして、それをお示しいたしました。それに関して幾つか御質問なり追加の資料要求がございましたので、本日は、それをお示しして御説明させていただきたいと思います。
資料の1ページから4ページまでは、前回お示しした資料そのものでございますので、説明は省略いたします。
5ページ目、これは、その調査のバックデータと申しますか、売上2億円以下の方で、業種別に本則適用している方、簡易適用されている方、また、その比率がどうなっているかということをお示しした資料でございます。合計で言いますと、売上2億円以下の方の6割ぐらいが簡易を適用している。業種別には若干のばらつきがあるようでございます。
次のページ、6ページ目でございますけれども、これは前回、簡易課税適用されている方の仕入率を平均いたしまして、これを、みなし仕入率なり、あるいは本則を適用されている方の仕入率と比較して、「低い」という調査結果をお示ししたところでございますけれども、その個々の事業者ごとの分布はどうなっているかという御質問がございました。
この表は、実際の簡易課税適用事業者の方の個々の仕入率をみなし仕入率と比較いたしまして、右隅にありますけれども、みなし仕入率を5%以上上回っている方、みなし仕入率を上回っているけれども、5%未満の方、みなし仕入率を下回っているけれども、その差が5%以下、最後に、みなし仕入率を5%を超えて下回っている方という4つの分布で、5業種の分類で示したものでございます。
合計で見ていただきますと、やはりみなし仕入率を5%を超えて下回っている、相当下回っている方が多数存在するということが言えようかと思います。もちろん、個々の事業者の分布でございますので、みなし仕入率を上回っている方もいらっしゃいます。
ただ、ここで御留意いただきたいのは、簡易課税制度の制度上、簡易課税の選択というのは、実際の事業年度開始前に届出を出していただくということ。もう一つ、一たん簡易課税を適用していただきますと、2年間は強制的に簡易課税を適用していただくことになりますので、例えば、当初1年目は得をすると思っても、2年目は結果的に損になったり、あるいは事業年度開始前でございますので、当初の見込みと外れたり、そういう方もいらっしゃるのではないかと思います。
次の7ページ目でございますけれども、これは、みなし仕入率についてこれまでどのように設定してきたのかということをお示しするための資料でございます。導入時は90%と80%の2分類でございました。これを平成3年改正で4分類、平成8年度改正で5分類の現行制度にいたしております。
備考にありますように、導入時はデータがございませんので、法人企業統計を利用して設定いたしました。平成3年改正と平成8年度改正については、それぞれサンプル調査を行いまして、各業種の仕入率を算出し、それに基づいてみなし仕入率を設定したところでございます。例えば平成8年度改正、現行の5分類のみなし仕入率については、その右側にある「参考 平成5年度分サンプル調査結果」に基づきまして、これを四捨五入して仕入率を設定させていただいたところでございます。
ここで一点、備考の2番のなお書きにもありますように、このサンプル調査は、本則課税適用者と簡易課税適用者の双方を含めて、いわば各業種の平均的な仕入率という観点から調査を行いましたので、今回行った簡易課税適用者、本則課税適用者それぞれに行った調査とは、若干その観点が違った調査になっているところでございます。
次のページ、8ページ目でございますけれども、これは、前回サンプル調査を行った平成5年度から最新のデータである平成12年度まで、実際の売上2億円以下の事業者の方で、簡易課税を適用している割合がどうなっているかという推移を見た資料でございます。これを見ますと、第1種から第5種すべてにおいて、簡易課税の適用割合が着実に減ってきている。ある意味で事務が習熟し、その結果、損得計算などで本則課税に移行されている方が増えているというふうなことが言えようかと思います。
8ページの資料は、申告者数の事業者の数のベースで見たものでございますけれども、9ページ目を見ていただきますと、課税標準、売上高で見ても全く同様の結果が出ておりますので、ある意味で、各事業者の方の売上高にかかわらず、簡易の課税適用をされていた方が本則課税に移行されているということが言えるのかなと思っております。
事務局からの説明は以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。資料請求のあったものについて御説明いただきました。これを踏まえまして、改めて、御意見なり御質問があれば。
〇委員
非常にわかりやすい表になったと思うのですけれども、論点は、みなし仕入率というのがあって、実際自分の仕入がそれ以上の人は、みなし仕入率は簡易課税が使えても選ばない、自分は仕入率がもっと低ければ簡易課税でいる、そういうのが経済的な原理ですけれども、それが、細かなことは飛ばすと、簡易課税業者の中の分布を見ても非常に明らかになってきた。
そして、最後に事務局が示された簡易課税業者の比率が下がってきたというのは、やはり簡易課税業者の適用される人たちが損得計算をして、申告したほうが得ならば申告をする、簡易課税で行ったほうがよければ簡易課税がいいと。そういうわけできちんと計算もできてきているわけです。そして簡易課税というのが、そもそも、制度を簡便に適用させてあげるという精神だったことを考えれば、役割は終わったと私は思います。
〇委員
終わったという意味は、すぐ全廃してもいいという意味ですか。
〇委員
ええ、もう要らないと。
〇委員
そういう意味ですね。
〇委員
はい。
〇委員
ほかにいかがでしょうか。
〇委員
ちょっと最初のお話に戻るのですが、「会長談話」の1ページ目に、「多年度税収中立の下で税制改革を一括の法律案にまとめる」云々という記述がございます。会長、この多年度税収中立の多年度というのは、何年ぐらいを想定されているわけですか。
〇委員
文字どおり多年度ですから、財務大臣は5年ぐらいを言っておられますよね。そこを僕は決め打ちにはできないのではないかと思います。ただ、常識的には、4とか5とか数字が出てくるのではないでしょうか。いま5かなあ、一般的には。
〇委員
私は全く別の次元で考えて。5年と言われると、2007年とか2008年と。では、それまで消費税も何も上げないで、いまある手持ちのやつでこうだああだとやるのかね、と。そこら辺が、かえって未来を拘束されてしまうような感じも若干しないでもないわけです。それはこれからの議論ということで、いまここできっちり詰める必要はないと思いますが。
〇事務局
多年度税収中立というのは、政治家の方に御説明していてもかなり誤解されているところがあるのは、実はこういう理解でよろしいのだと思うのです。本来は増減税を同時に施行するというのが原則だろうと思うのですが、いまの景気状況の中では、その実施時期を少しずらす。それである期間でとんとんにする。本来なら初年度に全部実施すれば、初年度で収支とんとん。それを要するに時間をずらすことで一体にする。
こういう意味で、来年度改正を封じるとか、再来年度改正を封じる趣旨では全くないわけで、来年度は来年度の時点に立って、いま言われた消費税の議論であれ、もしも許されるならやっていくということを禁止しているものでは全くない。あくまでも今回の増税、減税を時間軸を少しずらして実施するということを言っているのであって、初年度、多年度期間中の税制改正はもうこれで終わりと言っているわけでは全くない。委員の言われているのはそういう意味ではないのかもしれませんけれども、多年度期間中の税制改正を今年1年で終えてしまって以後は何もやらない、というようなことを言っているわけでは全くないものであります。特に年金税制の話とか、たぶん、来年度にかけてもう一つ大きな議論が予想されますので、そこを逃げているわけでは全くないというものでございます。
〇委員
今の御説明は御説明として承っておきますが、しかし、「多年度税収中立の下で」、この文言と、もう一つ私が以前から気になっている「一括の法律案」と。こうなると、いわゆる一括の法律案を出して、しかし、先のことはそのとき決めればいいんですよという理屈になっていくのかどうか。まあ、ここでそのことを深く議論するというか、結論を出す必要はないと思うのですが。
〇委員
別な項目ならいいんでしょう。これ、架空の話ですが、仮に消費税を2、3年後にどうしてもということになれば、先行減税の多年度スキームと、外枠というか、別次元の話として議論できるのではないですか。
〇委員
そういう御意見があるのはわかりますが、しかし、先行きこれを何年から増税だとか、これを何年から増収措置を講じるというようなことをやった場合、その途中で、例えば消費税の大物がボーンと。そうすると、何年か先にこうしますよというその法律の中身はどうなってしまうのでしょうか、という疑問を周囲にいると感じるということです。
それはいいのですが、なぜこんなことに時間をとったかといいますと、実は、消費税の益税というか、中小特例の問題ですが、単刀直入に申し上げると、これは来年度からすぐというわけにはなかなかいかない、実務的、あるいは事業者たちの準備の都合上。ということで、1年ないし2年の間隔を置く、そのとき一挙にやるのか、あるいは、段階的に縮小・廃止の方向に持っていくのか、いろいろなやり方があると思うわけであります。少なくとも、来年度から一挙に免税点も簡易課税も全部廃止という印象を世間に与えると、かえってマイナスではないのか。そこら辺はいろいろなオプションがあるということを留意しつつ、これから議論を進めていったらいいのではないかと思います。
〇委員
今の御意見は、景気への配慮も少し入れてのお話ですか。
〇委員
そうです。つまり、この問題は税の理屈から言うと全くそのとおりで、なかなか反論できない。私はあらゆることに増税、増収は反論してきているけれども、理論的には非常に難しい。
ただし、これを実際に全廃してしまった場合、企業相互間の取引に何らかの影響を与えることを一応想定しなければいけないわけです。つまり、全部実額だと。簡易課税で少し儲かっていたところは吐き出すという格好になる。そうすると、その分を取引業者に押しかぶせるみたいな行動が起きやしないか。取引条件というか、取引実態になにがしかの影響があるということも一応念頭に置いておかなければいけない--というようなことで、この制度の廃止・縮小は、なにがしかそういう要因も念頭に置きつつ議論していく必要があるのかなという気はします。
〇委員
今の委員のお話とも関連するわけですが、この簡易課税、特に今日は非常に興味ある数字として、例えば6ページの第2種、小売業とか飲食業というのは、むしろ仕入率より高い仕入率のところも採用しているとか、こういう数字はなかなか微妙な数字で、扱い方も難しい面もあろうかと思います。こういった実態を見ると、もうだんだん本則に移っていいのかなという気がしないことはないわけでございます。
しかし、一方、いま免税点の議論をしておる。免税点を下げる。例えば法人は全部やめる、個人は1,000万円とか、2,000万円といういろいろな議論がある。新しく納税者になる方については、この消費税が発足したときにはある意味では経過的なものを使ってきたわけですので、今後、どういう免税点の方向が出るのか。それによっては、経過的なものであっても、こういった方向はやはり経過的に残しておくという配慮もあっていいのではないか、こんなふうに思います。
〇委員
いずれ、今の財政状況からしますと、消費税の問題というのは避けて通れないことだし、それから、先ほどから出ている多年度の中立のところで、消費税が拘束されないかどうか、これは非常に重要なことで、あまり拘束されるような形をとるのはうまくないのではないか。やはり自由度を残しておくというのが重要だと思うのです。
それで、いま問題になっている簡易課税等、免税点、これはむしろ不公平税制の是正という観点で議論してきたと思うのです。ですから前にありました、所得税を就業者の4分の1が払っていないとか、これはおかしいでしょうとか、あるいは、外形標準課税における7割の企業が税金を払っていない、これはおかしいでしょうというたぐいの話だと思うんですよね。ですから、この問題は、いわゆる増税かどうかという観点ではなくて、見え見えの不公平現象、それは早く是正しておくという立場をとっていくのが正しいのではないかというふうに思います。
〇委員
わかりました。
〇委員
これは、いろいろ考え方があると思うのですけれども、さて、いまの経済情勢を反映してということになりますと、経過措置という考え方が出てまいります。この表現の仕方ですけれども、もともと税金を集めて払ってもらう形になりますので、本来自分のお金であるという前提に立った立法ではまずいわけです。
事実上は、仕入業者との間でどちらが負担するかというのは、当然、簡易課税のもとでも行われていると思うのですけれども、いわゆる事務的な負担をそんなに急激に増やしてはいけないという配慮で経過措置ということが出てくると思うのですが、基本的にはこれは、消費者から、あるいは前の段階の事業者から受け継いだものを、控除して新しい売上のほうから落とすということですので、いわゆる法人税と同じように、所得がどれだけ残るかという発想でものを考えるとおかしいことになります。やはりここは、すっきりやったほうが私はよろしいのではないかと思うのですが、それによって経済的な影響がどうのというのは、技術問題ですから、それを前提に置くと何か法人税と混同するような感じがしますので、やめたほうがいいのではないかと思います。
〇委員
経過措置云々のお話は簡易課税の話ですか、免税点の話ですね。
〇委員
はい。
〇委員
わかりました。
〇委員
簡易課税も免税点も両方そうなんですけれども、3%とか5%とやっている間は別にどうでもいいやという感じがしますけれども、10%となると、額が大きくなって不公平も目立つようになるので、なるべく早くそういう特例はやめてしまわないとやりにくいというふうに思います。
〇委員
それでは、ちょっと時間が押していますので、次の外形に移ってよろしゅうございますか。
10月1日に、外形課税、あとの固定資産税、議論いたしましたが、まだ議論したいという御要望もございました。もう一度、いろいろ精査していただいたデータも出ておりますので。
では、最初、外形からいきましょう。事務局どうぞ。
〇事務局
それでは、10月1日の基礎小でいろいろ御指摘いただいた点等につきまして、さらに検討させていただきましたので、御説明させていただきたいと思います。
1ページから5ページ、これにつきましては前回御説明させていただいておりますので、省略させていただきたいと思います。
6ページをお開きいただきたいと思います。先の基礎小でも、外形標準でいただく税収、どのようにセットしたのか、段階的導入のやり方、また、景気変動に応じて法人事業税収はどのように変動することになるのかといった御議論があったかと思います。
まず、外形標準課税の税率水準、これにつきましては前回申し上げましたとおり、景気の上昇と下降の両局面を含みます平成元年から10年までの対象法人の平均税収、これは、現行税率換算し、物価補正したものでございますが、これに基づいて設定したものでございます。
その結果、一番左端にございますが、大法人からいただいた10年平均の税収が2.4兆円、中小法人からいただいた10年平均の税収が1.5兆円、合計3.9兆円ということでございます。そのそれぞれの半分を外形でいただくことにいたしまして、白抜きの部分でございますが、大からは1.2兆円、中小からは0.75兆円というものを外形基準で頂く額と設定しまして、合計では1.95兆円となりますように税率を設定した次第でございます。
真ん中のグラフでございますが、実際の導入に当たりましては、平成15年度税制改正で導入されればということでございますが、大法人は16年から3年間、外形1/4、所得3/4という形でやる。4年目から外形1/2、所得1/2とするということでございます。中小法人につきましては、大法人の2年遅れで同じくやっていくということでございます。
この場合に、所得基準による税収でございますけれども、所得基準による税収は景気変動を受けて伸びたり縮んだりすることになりますが、一方、外形基準による税収は1.2兆円なり0.75兆円ということで、比較的安定だというふうに考えております。したがいまして、例えば右端のグラフにございますように、所得だけでとっていた場合--例えば大で2.8兆円、中小で1.8兆円という場合、これに外形基準を入れればどうなるかということですが、所得基準による税収は、2.8 の半分、1.8 の半分ということで、1.4兆円と0.9兆円になるわけです。外形部分につきましては、安定的であるということで、1.2兆円、0.75兆円というままですので、現行のように、所得基準だけで課税した場合よりは税負担が全体として少なくなることになろうかと思います。もちろん、不況ということで全体が縮んだ場合はその逆にもなろうかと思います。
次に、7ページでございます。これは、前回お示しいたしました、資本金区分別の平均的な法人の事業税負担のイメージでございます。この表につきまして、またいろいろ御議論いただいたわけでございますけれども、その中で、中小企業団体などがいろいろアンケートをしているではないか、これと7ページの結果とはどのような関係になるのか、といった御質問が多々出てきたわけでございますが、8ページが、中小企業関係4団体が実施しましたアンケートの概要でございます。
全体で1万3,000社余りからの回答でございまして、その「ポイント」にございますが、一つ目のマル、赤字法人について、1社当たり約161万円という数字になるということ。また、二つ目のマルでございますが、黒字法人でも外形を導入すれば税負担が増えるのが77%、といったような概要でございます。
9ページをお開きいただきたいと思います。8ページにございましたとおり、「赤字法人の平均税負担額161万円」ということでございます。私ども、このアンケート結果の数字自体は、回答企業の実態を示すものであるということでもちろん受けとめているわけでございますが、そこにございますとおり、アンケートの各資本金区分別の平均税負担額を前提にいたしましても、アンケートに回答した欠損法人の資本金別の分布、これを現実の欠損法人の分布に置き直すだけで、161万円が53万円になるということでございます。つまり、アンケートに答えた法人、小規模なものが実際よりも少なくて、大規模なものが実際より多い分布になっている。その結果、大規模なほうに引っ張られまして、161万ということになったのではないかと思うわけでございます。
いずれにいたしましても、例えば、1,000万円未満の小さな企業と大企業、それを全部足して平均額というものを出してみても、その数字自体はあまり意味がないのではないかと思う次第でございます。
なお、例えば黒・赤通じて、外形部分の平均税額が1社161万円と仮定しまして、そこに全法人数250万弱でございますが、それをかけますと、約4兆になる。外形だけで4兆になる--先ほど来申し上げておりますとおり私共が外形で予定しております額は1.95兆円ですが--ということでございます。もっともこれは、8ページの下にございますとおり、商工団体のほうでも「留意点」ということで、「回答を寄せた1万3,000社余の実データに基づきとりまとめたものであり、法人事業税への外形標準課税を導入した場合のわが国の法人全体で見た平均税額及びその増減傾向を示すものではない」と、お断りがあるところでございます。
なお、このアンケートの現物につきましては、15ページに添付させていただいております。
次に、10ページ、11ページにつきまして御説明させていただきたいと思います。前回の委員会で、黒字法人でも税負担が増える法人が多いのではないか、一体どうなっているのかという御指摘があったかと思います。10ページをお開きいただきたいと思います。前回出したものでございますが、欠損法人が約7割、利益法人は3割強。そしてその利益法人でも、[2]にございますとおり、400万円以下の所得しかない法人が約6割という現状でございます。
そして、下の右にございますとおり、400万円以下の法人に納めていただいている税負担は約5万円ということになっているわけでございますが、11ページをお開きいただきたいと思います。こういうことをボリューム的にちょっと工夫させていただいたわけでございますが、上に法人数、下に納めていただいている税額ということで示したものでございます。利益法人が3割程度、その中で400万円以下が6割、400万超800万円以下も加えますと、約3/4、73%強になっているわけです。
それぞれの法人に納めていただいている税額は、下の棒グラフにございますとおり、それぞれ300億円程度でございます。その中で、400万円以下は1社当たり平均に直すと5万円でございますけれども、もし、400万円以下の法人がいま5万円納めていただいているとします。ここに外形標準を入れた場合に全体としての事業税は最低幾らになるのかということで考えてみますと、まず、5万円という所得によるものが半分になります。半分の2万5,000円。そこに外形分が最低でも4万8,000円足されることになりまして、7万3,000円になります。いままで5万円だったものが、所得半分で2.5万円、外形4万8,000円足して7万3,000円。5万円が7万3,000円になるということでございまして、現行の税額よりも増えるであろうと。平均的には、現在納めて頂く税額が少ないので、そういった結果になってしまうのではないかというふうに思うわけです。
ちなみに、所得ゼロから800万円以下の法人に納めていただいている平均税額は約9万円でございます。そこに外形を導入いたしましたとすれば、9万円の半分で4万5,000円、そこに最低でも外形が4万8,000円かかるといたしますと、9万3,000円ということで、現行税額と似たりよったりになってくるのかなということでございます。
以上のように、黒字といっても所得の低い法人が大きな割合を占めている中で、こういった現象が生じているのではないか。これは、事業活動規模に応じた負担ということで仕組んでおります結果でもあろうかと思いますが、そこら辺、御理解いただくように努めてまいりたいと考えております。
以下は、前回添付させていただいた資料でございますので、省略させていただきたいと思います。
〇委員
ありがとうございました。
幾つかの新しい説明ができるような資料を御用意いただきました。ちょっと時間をとりまして、この外形につきましてさらに議論を深めたいと思いますが、いかがでしょうか。
どうぞ。
〇委員
アンケート結果というのは、いつの時点の資料になっているのでしょうか。
〇事務局
アンケートは8ページにございますが、調査しましたのは14年2月から6月、この間に各傘下の企業から回収したと承っております。
〇委員
そうしますと、今の課長の御説明で、9ページですけれども、アンケートの結果では161万円だけれども、現実に合わせれば53万円である。こういうお話だったのですが、それぞれの統計の時期が違っていますと、「現実の」と言っているのは平成12年で、アンケートが平成14年だとしますと、法人企業の実態の平成12年度の資料に基づくとこうなるけれども、我々が実施した平成14年のアンケートでこうなっていて、さらに企業の状態は悪くなっていると。こういう逆の説明もついてしまうような気がするのですけれども、そのあたりいかがでしょうか。
〇事務局
たしかに年度が違うわけでございますけれども、各資本段階別の法人の割合につきましては、それほど大きなブレはないのではないかというふうに思っております。
そしてまた、ここで申し上げたいと思いましたのは、小さな企業も巨大な企業も全部合わせたものの単純平均値が、いろいろ言ったところでどういう意味があるのかなという気持ちもあったものですから、こういった資料を作らせていただいた次第でございます。
〇委員
ほかに何かありますか。
〇委員
タイムシリーズとクロスセクションの視点から考えますと、例えば6ページの資料ですけれども、これは前回もコメントがたしか他の委員からあって、景気変動を前提したときにどういうふうに変わるかというのはシミュレーションしたほうがいいのではないかということでおやりになったと思います。これは、過去10年平均というのと好況、不況というのが、この10年の中で比較的好況と比較的不況というのを分けてやった数字なわけですね。たぶんおっしゃりたいことは、好況、不況があって、不況のときは利幅が減るから、黒字でも負担が出てきますよということですよね。逆に好況になれば、負担は吸収できるということになるんですかね。
その辺の言わんとすることは大体わかるような気がしますけれども、タイムシリーズの観点でもうちょっとわかりやすく説明されるといいのかなという感じがします。10年を2つに分けてやるというのも一つの考えでしょうけれども、そういうメッセージをもうちょっとわかりやすくすることは可能かなという気がします。
それから、クロスセクションで考えると、一つは9ページの数字があります。いまも御質問がありましたけれども、アンケートと現実の分布というのがちょっと時点のズレがあるようです。現実の分布のほうは、小さい企業で利幅も少ないとか、多いからこういう結果になるということだと思うのですが、もう一つは、課税対象の項目ですよね。賃金と資本と構成要素がありますが、賃金の比重の高いところは、もし利益が低いような状況ですと、ぎりぎりの黒字でもマイナス幅が大きいとか、あるいは、一見大量の雇用をしているようだけれども、よく調べてみると請負関係になっているというところはかえってマイナスが大きいとかいうのが出る。あるいは、資本のほうはあまり景気変動に左右されませんから、その比重の高いところは負担が大きく映るとか、そういうクロスセクションがありますよね。
これは両方とも、タイムシリーズの変化とか、クロスセクションのそういう構造的な違いというのは、説明すればわかるというか、はっきりしている事実なはずですから、そこのところをよく説明して、そういうことなんですよ、と。つまり、共通のデータだったら共通の結果が出ますよということが、納税者というか多くの方々に理解ができるというふうにすることが必要かなと思います。そういう方向でおやりになっていると思いますけれども、もうちょっと工夫されるともっとわかりやすいのかなという気がちょっとしました。
〇委員
ありがとうございました。
〇委員
外形課税で総務省がいろいろ数字を出してきているわけですが、結局、この外形課税というものは、はっきり言ってバブル期の課税形態ではない。つまり安定期の、21世紀のこれからの課税形態であるという大前提を置くとすれば、税率標準の計算に当たって、平成元年度から10年度までと、この時期のとり方がいいのかどうか。元年度とか2年度というのは、バブル真っ盛りかどうか、ともかくバブル熱がまだ高かったころなので、こういう前提で21世紀の課税形態、あるいは、運用方法たる税率の設定をしますよということが、納税者の間でどれだけ理解が得られるかというのが第一点。
それから、この前も申し上げたけれども、売上高業種は除いて計算していると。しかし、税収の設定はそれを入れた税収だということで、それをやると自動的に4,000億円とか5,000億円の税負担増になってしまう。4兆円の税金で5,000億円の負担増というのが、今この状況に合っているのかどうか。税収の試算等々をやっているわけですが、例えば平成元年度から10年度を、5年度から12年度に変えたらどうなのかとか、あるいは、売上高業種を除いていわゆる対象になる業種だけに限定してやったら税率はどうなるのかとか、少し現実に合わせた試算というものを示していただきたい。
結局、税負担が増える企業が何割かある。多少の誤差、認識のズレはあるにせよ、かなりの部分が税負担増になるということになると、それはそういう税金なんだからしようがないですよ、という言い方で果たして通るのかどうか。少なくとも私は、そういう言い方で納税者の納得を得られるとは思いません。少し現実に合わせた試算を別途お示しいただきたいということです。
〇事務局
ただいまのお話でございますが、6ページの図でちょっと誤解があるとあれですので、御説明させていただきたいと思うわけでございます。ここで、元年から10年までの10年平均ということで、大法人から2.4兆円、中小法人から1.5兆円というふうに申し上げました。これは収入金額課税法人は除いたものでございます。この外にあります。ですから、それを入れて税収を計算しているわけではございません。収入金額課税法人等以外の、実際に外形を入れる法人からいただいている税収ということでセットしているものでございます。いま委員から、5,000億円の増も含まれているのではないかといった趣旨の御指摘がございましたけれども、それは合わせて3.9兆円の外であるということでございますので、その部分を外形のほうでいただくことは考えていないということでございます。
なお、その他の御指摘で、平成元年から10年というところをとっているわけでございますが、平均値をとるということこれ自体は、外形導入の一つの目的が、税収の安定化と年度を通じます法人の負担の均霑化にございます以上、税収中立というのを平均税収との関係でとらえることについては、意味があるのではないかというふうに考えているところでございます。
〇委員
この前もその話が出たのですが、事務局は、この前言ったことの繰り返しのようでもあり、あるいはまた、全然違うことを言い出したというような印象もあるわけです。というのは、3.9兆円という数字が2カ所に出てくるからややこしくなる。つまり事務局のおっしゃりたいのは、この10年間平均で、4業種を除いて、税率もいまの9.6%に合わせると3.9兆円、こういうことでしょう。
〇事務局
そうです。
〇委員
私の言っているのは、平成12年度の税収が3.9兆円なわけでしょう、事業税全体の。その中には4,000~5,000億円程度の4業種が含まれている。含んで3.9兆円だと。したがって直近のものを基準とすれば、その4業種分は除いて--もっと具体的に言えば、3.3兆円とか4兆円とか、そういう税収を前提に税率を設定したらどうなのかという試算を示してもらいたい、こういうことですよ。
〇委員
わかりました。これ、無限にあるわけですね、試算の組み合わせというのは。したがって、どれだけ出れば委員の意に沿うかわかりませんけれども。
何かありますか。
〇事務局
どういう形で平均税収をとらえるかということについては、いま会長もおっしゃられましたけれども、当然、いろいろな議論があるというふうに思います。我々としては、税収の安定化を図ろうというもともとの趣旨がありますので、それを、当面の直近の税収と比べたということになりますと、今はともかく税収がどんどん落ちているときですので、低位で固定したような形になりますので、そういう形でのターゲット税収の考え方というのはいかがかなというふうに思います。
もちろんそうなりますと、委員のおっしゃいましたように、直近に比べると増税になるのではないかという議論になるわけでございますけれども、そういったところについては、制度の改正を種々よく御説明する中で御理解を得ていきたいというふうに思っているところでございます。
〇委員
その御理解についてちょっと質問を重ねてしておきますが、諮問会議に出ますと、経済産業大臣と総務大臣の猛烈な論争が始まるんですよ。僕も経産省から陳情も受けましたし、今、経済界は絶対反対なんですよ、この外形は。総務大臣はもう決まったようなことでおっしゃっているから、とんでもないという噛みつき方をされていましてね。そういう御理解を得る努力、それはどういう感じでやっているかということが一つ。
それからポイントは、黒字法人、77%の増税になるよというポイントなんです。今日の計算で、これ、おそらく計算できないと思いますけれども、77%はかなり落ちるのでしょうね、この平均値が落ちているから。たぶんね。それはそれでしようがないんだけれども、今言った対立点を取り崩さない限り、僕はこれは政治的には無理だと思う、見ていて。その場合、どういうことをやられるおつもりですか。
〇事務局
まさにそこのところが非常に悩ましいところでございますけれども、大臣も含めまして経済界の方々とは何度もお話はしております。もちろん、話をしたから進むかというと、お互いの主張の違いが鮮明になるところを繰り返しているような面もありますけれども、少なくともお互いに、制度の前提といいますか、制度の中身について、考え方がそごしていたというか、お互いに理解が違っていたところは理解が進んできているというところにあると思います。
今後、時間があまりないわけですので、その中で経済界の方々ともそこの点はよくお話をし、少なくともその理解のレベルが違っている、とっている数字も、前提が違う数字を話し合っているというようなことだけはないようにして、その中で何とか妥協点を見つけていきたいという気持ちでおります。
〇委員
次に行ってよろしゅうございますか。
〇委員
一言。
〇委員
はい、どうぞ。
〇委員
これも延々たる議論をやって、今日も続いているけれども、僕のところにもいろいろな団体からいろいろな要望文とか計算とか送ってくるけれども、外形標準化反対だということなんだよね。理由はいろいろあって、それはそれで結構だと思うけれども、反対の人たちは、現状のものでいいということを言ってるの? 現状だと、ここに数字があるみたいになって、ごくひと握りの大企業がべらぼうな金を払っているわけです。
それは一向に構わんよという議論をするのか。いや、外形標準化することは反対だ、しかし、特定の企業にこんなに集中的に金を払わせるのはおかしいではないかという議論があるとするならば、「今の税の姿をこういうふうに変えたい」というふうな提案が来ているのか、それをちょっと教えてもらいたい。
〇事務局
今の税制がこのままでいいというふうにおっしゃっているのではないと、私は理解しております。そういった中である経済団体などは、均等割みたいなものをあげたらいいのではないかとか、あるいは、繰越損失の控除額がございまして、神奈川県ではそれに法定外税をかけておりますけれども、そういう形でやる変形的な形もあるのではないかという提案が出てきていることも事実でございますので、このままのような税制でいいというふうにはお考えになっていないと思います。
ただ一点、最後はお互いになかなか歩み寄れないところは、いまの経済状況の中でどうするのか、ということなのではないかと思います。そういう意味で総務大臣も、導入の時期については十分配慮しているということを繰り返し申し上げている状況でございまして、一番の対立点は、今の経済状況の中で改革に取り組むかどうかという点ではないかというふうに思っています。
〇委員
どうも話はその辺に落ち着きそうなんですね。
〇委員
もちろん、いまの状況が決定的な影を差していることはわかるのですけれども、ただ、いまの議論で少しわかってきたことの一つは、黒字法人というけれども、その利益率が問題なわけですよね。これから日本の企業の利益率がどのくらい改善するかわかりませんけれども、おそらく売上高に対する利益率があまり伸びないと。もちろん、どの程度の外形標準課税を仕組むかによるのでしょうけれども、外形標準課税を入れると、利益率が低い中でそういう企業の負担も増えていってしまう。そうすると先ほどの委員の方が、ひと握りの企業がいっぱい払っているんじゃないのか、それをどう変えるのかといったときに、その図がどういうふうに変化していくのだろうか、と。そうすると結果的には、大企業が外形標準課税を導入しても、その多くは、収益率の低い大きな企業が大きな負担を被ってしまうという図は変わらないのではないか。
そうではないのだ、と。事務局がおっしゃったように、5万円の税金を払っている企業は2.5万円にまず所得部分がなって、残りが4万8,000円で7万3,000円になる。ある意味でそういう議論を正面からするならば、説得性はあると思うのです。5万円払っている企業が7万3,000円になるんだと。だからこそ、そこはまた非常にハードな壁にぶつかってしまうような感じで、現状と、そして本質的に改善をしようといったときには、5万円が7万円3,000円になるところがきついというような感じがするんですよね。だけど、そうは言っていられないわけで、まずは均等割というか、5万円を7万3,000円にするような考え方を打ち出さざるを得ないと私は思います。
〇委員
ちょっとすみません、一つだけ。先ほど会長が言われたことは大変重要で、政治というのは常に即物的、現実的、短期的な問題に大きく影響されるわけです。しかし、この政府税調というのは中・長期的なシステム設計を考えるわけですから、そこの基本は踏まえておかなければいけないので、たぶん会長に諮問会議では大いに頑張っていただかなければいけないのではないかと思いますけれども、努力に報いる税制にしたほうがいいということの総論については、誰も異論はないと思います。
ところが、この議論の経緯を見ていると、付加価値というのでやってきたけれども、賃金分が多いではないか、雇用に対してマイナスではないか、こういう議論があって、一時、潮流が変わりかけた。それに対して、資本割を入れることでそれを中和させたということがあるわけですね。ところが今度は、黒字法人に増税が出てくるのではないか、しかも8割だと。企業の実名入りのデータが出回っているわけです。それを見て非常に迫力が出てくるわけですよね。これはすぐ政治論に結びつくし、業界はすぐそれに飛びつきます。それは我々十分踏まえなければいけないのですけれども、政府税調というのはシステム設計するところですから、過度にそういうものに振り回されないほうがいい。
今日の説明は、私は努力されたと思うけれども、もうちょっとわかりやすくやってもいいかなと思いました。例えばさっきの6ページです。これ、作業が大変だとは思うのですけれども、本当は、景気変動はグラフでこうなるとこうなるという絵を描けるはずなんですよね。それを二次転換ポンポンとやるから、ひょっとするとアービトラリーではないかと。この好況時って何だというと、10年間の相対的好況時をとったのだと。これ、誰かに聞かなければわからないわけで、そういう説明はなかったわけですから、そういうこと一つをとっても、自明の事実なはずなんだけれども、自明に説明が行われていないですね。
そこをもう一つ頑張ってもらいたいのと、それから、産業の業態によって、資本のところに負担がかかるところと、雇用のところに負担がかかるということがありますから、もう一つ、みんなが非常に気にするのは不公平感なんですね。だから、黒字が出ていても景気が悪い、利潤値がうんと低いと、まさに外形標準の影響があって赤字になるのはこれは避けがたいことですよというのは明快に言って--そこのところは、「ベストはこの辺ですね」と。誰もが納得するものなんてないわけですけれども、最大公約数の納得というのはあって、その辺がシステム設計の落としどころなのではないかなと思うんですね。これは、会長にひとつそこは頑張ってもらいたい。
〇委員
まだ大物が残っておりまして、時間がだいぶなくなってきたので、よろしいですか。固定で一緒に答えてください。次は固定ですよ。
でも、短くならどうぞ。
〇委員
この外形標準の問題は、14ページにあるアンケートの結果、これが一般の国民の意識ではないかと思うんですよ。正直言って、大銀行だとか大製鉄所などが税金を納めないで、小さなコンビニだとか魚屋さんから税金を取っている、おかしいじゃないかと。それよりも一般的に低く広く負担してもらおうと、これが、それぞれの地方行政の中における法人活動ともマッチしているのではないか。
それからもう一つは、前から言われるように、1割の大法人のところに9割ぐらいの税金をかけてしまうというのは少しは直したい。要するに、成長力のあるものに安く、もっと伸びさせてという発想が、構造改革の一環にもなるのではないかということです。ことさら新しいことを言っているわけではないですね。
〇委員
それは、説明で、こういう御意見もあったと紹介しておきたいと思います。
では、事務局、手際よく御説明ください。
〇事務局
それでは、固定資産税、「基礎小21-3」の説明資料に基づきまして、御説明いたしたいと思います。
これまでに御説明しました資料につきましては、別途、「参考資料」として配付させていただいております。固定資産税につきましては土地税制の一環で御説明してきておりますけれども、15年度の評価替えを控えまして、家屋分、償却資産分、あるいは評価の考え方についてもご指摘ございましたので、その関係で資料を取りまとめて御説明させていただきたいと思います。
1ページ目は、折れ線グラフで固定資産税収の全体の動向を示しております。下に棒グラフで、土地以外の家屋、償却資産と分けて出させていただいておりまして、土地以外の部分についても相当な額の税収にあがっているということでございます。
2ページでございますけれども、こちらのほうに、評価基準の沿革を簡単に挙げさせていただいております。現在の評価基準、これは総務大臣が決める告示でございますけれども、もともとは、ここにございます固定資産評価制度調査会、こちらからの答申に基づきまして、中央固定資産評価審議会の議を経て改正されたということを基本にして、以後、必要な改正を行ってございます。一番最後に書いてございますが、今は審議会の形が少し変わってございます。
3ページでございます。土地についてはこれまでも御説明をしてきてございますけれども、評価基準の中に入っているものを簡単にお示しさせていただいておりますが、「売買実例価額方式」ということで、売買実例価額に基づきまして評価額を求めるという方法を基本にしております。特に宅地につきましては、地価公示価格などの7割を目途として決めさせていただいているということでございます。
例として、宅地の、どちらかというと都市部の評価方法を挙げさせていただいております。宅地の用途などいろいろ考慮しまして、地区、地域、つまり、商業地区であるのか、住宅地区なのか、あるいは状況が類似しているところがどこなのかということで区分をして、標準宅地というものを選定いたします。右側のほうにちょっと書いてございますが、いま、地価公示の地点としては、全国で3万1,000ぐらいの地点がございます。それを活用できるところは活用をいたしまして、さらに加えて、全体としては44万地点、標準宅地というものを評価してございます。これをもとにいたしまして、街路ごとに路線価をつけるということをやらさせていただいて、さらに、そこから個別の宅地の評価を評価替えのときにやっているわけでございます。
なお、注に書いてございますが、いま地価が下落期でございますので、評価替えがない年におきましても、下落が認められる場合は価格を見直すことができるようにしてございます。
4ページでございます。商業地などの宅地におきます固定資産税の評価額の推移を9年、12年、14年で挙げさせていただいております。これまでも御説明しました図でございます。地価公示を100とした場合に、固定の評価、上限が7割になるということでございますけれども、さらにその中で、地価の下落に応じて税負担を引き下げる部分と、据え置きの部分、それから、全体の均衡化のために地価下落しても税負担を引き上げる部分、大きくは三つに分かれるわけでございます。
一番下に小さな字で書いてありますが、平米当たりの評価額でもってこの9年、12年、14年の全体のグラフの高さを調整してございます。全体として、地価の下落傾向とも相まって、この白い部分、地価が下落して税負担が引き上がる部分が、急激にウエートを下げてきているということでございます。税負担が上がる部分は全国で2割、大都市では5%しかそうならないということで、15年の評価替えでも同様の傾向がさらに強まると見てございまして、市町村財政へ与える影響が非常に大きいというふうに思っているわけでございます。
次に家屋の関係、5ページをごらんいただきたいと思います。新築の家屋、先だっても若干御説明しましたが、形を変えてございます。再建築費、あるいは再建築価額方式と呼んでおりますけれども、評価の対象となりました家屋と同じものを新築する場合に、建築費が幾ら必要なのかということに基づきまして評価額を求めることとしてございます。
下にポンチ絵を出しておりますけれども、住宅、いろいろな形がございますが、屋根であるとか、外壁であるとか、基礎であるとか、構造がいろいろ分かれるもの、これの評価を積み上げていくということでございます。例えば屋根であれば、瓦屋根、材質に応じて評点数の違いがございますけれども、点数化をしていって全体の評価を出させていただくということをやっているわけでございます。
6ページでございます。家屋につきましても、新築後3年に一度、評価替えをいたすわけでございまして、その際の考え方でございます。これも再建築価額方式ということで、新築の場合の方式と平仄が合っているわけでございます。評価替えに影響を与える要因は、単純化いたしますと、そこに書いたように二つあります。まず建設物価の変動、もう一つは、経年による減価--何年か経過すれば価値が減少するということでございます。
インフレかデフレか? というふうに書いているのは、ややミスリーディングでございますが、建設物価が前の評価をやったときと比べて上昇しているか、下落をしているかということでございます。最近の動向としては、左側にちょっと書いてございますが、3年間でいけば建設物価の下落というのがどうしても続く。それに経年による減価、この二つを掛け合わせますので、評価額自体が下がるという状況が続いているわけです。
かつては、右側のほうにございますけれども、建設物価の上昇のほうが上回っていた時代がありますので、理論的には、3年たつと評価額が上がるという数字が理論値としては出てまいります。ただ、実際には据置き措置をいたしまして、評価額自体を増やしていくことはしておりません。
最近の傾向を7ページに掲げさせていただいておりますけれども、平成6年度以降の木造と非木造を大きくわけて、全体を右側のほうに書いてございますが、評価替えをしましたときに単位面積当たりで評価額がどれぐらい動いたかということを出しております。ごらんいただきますように、だんだん数字が悪くなっているわけでございまして、12年度では在来分は1割近く落ちております。15年につきましては、いま、市町村のほうで評価替えの準備をしておりますけれども、これ以上落ちることになると予測をしてございます。
8ページは、先だってもごらんいただきましたが、いま申し上げましたようなことで、それぞれ評価額がどう動くかというのをモデルで挙げております。左側のように評価額が下がるケースが非常に多くなっているわけですが、場合によりましては、建築年次がやや古くて、インフレ期の影響が大きいものについては、まだ評価額が下がらないケースもあるということでございます。
9ページでございます。償却資産の評価につきまして簡単に掲げさせていただいています。償却資産については取得原価方式というものを用いてございます。取得価額を基礎といたしまして、これは評価替えの年だけではなくて、毎年、耐用年数に応じて減額いたします。耐用年数に応じた控除額を下のほうに書いてございますけれども、法定耐用年数に応じて定率法でもって算出いたしておりますけれども、そういう形で毎年落としていくというやり方をとってございます。
10ページでございます。これはいままでのお話と趣きを異にしますけれども、下のほうに「参考」を出させていただいておりますが、昨年の当調査会におきまして御答申をちょうだいしております。固定資産税、評価が非常に大事だということもございまして、これらの透明化をより一層図る観点からの改正を進めるべきだという御答申を受けて、昨年、実施したものを中心に挙げてございます。
一つは、先ほどもちょっとごらんいただきましたけれども、固定資産税の評価の場合には、路線価ということで、いわば道路に値段をつけていくといいますか、路線に面する宅地について基本が幾らだということでやっております。これを、平成3年度以降、順次拡大を続けながら公開してございます。路線価でやっているところ、基本的にはほとんど公開になってきたということで、これから義務化をするということが1でございます。
2番目につきましては、評価額の納税者に対する開示ということで、これまでの縦覧制度は、基本的には御本人の土地なり家屋なりの評価額等しか見ることができないということでございましたのを、一定期間でございますけれども、周辺と比較ができる形で納税者に対しての開示を進めていく、こういうこともやってございます。市町村の評価等の一層の適正化を図りたいということで、15年度評価替えから実施することにしてございます。
簡単でございますが、以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。
時間も限られてきましたけれども、まだちょっとありますので、どうぞ、いまの御説明について、あるいは来年度評価替えについて、何か具体的な御意見なり御提案があれば。
〇委員
いまの資料で、5ページのところですけれども、新築家屋というのは、普通の住宅みたいなものが前提になっているわけですね。そうではないのですか。
〇事務局
固定資産税の場合は、土地・家屋・償却資産という言い方をしておりまして、家屋というのは、例えば商業用のビルのような事業用の関係のものも含めてございます。これは、たまたま例として住宅を出してございますが、かなり大きな建物であっても……。家屋という言葉がちょっとあれかもしれませんが。
〇委員
なるほど。あっても入るのでしょうけれども、減価償却の対象になるようなものですか。これ、償却資産ではないでしょう。
〇事務局
土地と家屋と償却資産という形で、家屋の部分は法人税等で減価償却等の対象になるものでございましても、別途の固定資産税のほうのジャンルでは、住宅あるいは商業用のものも含めて一つのものに。
〇委員
償却資産にならないものもあるわけですね。家屋。
〇事務局
個人住宅などは当然法人税での減価償却の対象には入ってございません。しかし対象とならないものも家屋には入ります。固定資産税の家屋には入ります。
〇委員
個人住宅は原則的にならないでしょう。ならないですよね。
〇事務局
なりません。
〇委員
そうですね。だから、商業用資産ですよね。「償却資産の評価のしくみ」というところに出ている例えば9ページの説明というのは、商業用資産に当てはまるわけですね。
〇事務局
はい。ですから、多くは機械関係のプラントですとか、そういうもの。
〇委員
わかりました。それから一つ、10ページで伺いたいのは、ポイント2ですけれども、これはかなり大きな変化だなと僕は思っているんです。縦覧制度を改正したんですね。これは30年くらい前に高裁判決があって、開示するべきだというのに対して守秘義務だとかいって、地方自治体は開示しなくていいということにしたわけです。それを、30年くらいたっていま変えたのですか。これ、どういう理由で高裁判決を引っ繰り返したのですか。
〇事務局
経緯で申しますと、もともと、固定資産税につきまして縦覧制度というのは、納税額が確定する前に納税義務者の方にご覧いただいて、それが妥当かどうかをチェックする。妥当でないと思えば不服申立等ができるという形のものでございました。言葉の意味としても、縦覧ということで「広く見る」というイメージの言葉を使っておりますが、昭和30年代くらいまでは、必ずしも御本人の資産に限定して見るという形にはしておりませんでした。いま御指摘がありましたように……。
〇委員
訴訟があったんですよね。
〇事務局
はい。それから、最高裁の判決としても基本的には……。
〇委員
最高裁まで行ったんですか。
〇事務局
はい。最高裁で、地方団体の「見せない」という方の取扱いについては、現行法では、それはそれで妥当なんだということでの結論が出ております。
ただ、他方で評価につきましては、土地の評価などを含めて、果たして妥当な形で行われているのかという意見が非常に強くなってございます。特に情報公開の流れがある中で、納税者の方から、自分の分だけではなくて周りと比較をしたい、こういう要望が非常に強くなってきた。では、それを受けてどうするかといいますと、オープンにすることによるメリット、デメリット、両方あるわけでございますけれども、メリットの方がまさるとなっても、単純に事務取扱いを変えるとかいうことでは、すでに最高裁の判決が出ておりますので、押し切れない。そこで……。
〇委員
どうやって最高裁の判決を引っ繰り返したのですか。非常に重要なことだと思う。
〇事務局
こういう場合については、法律でもって、完全な情報公開ではありませんけれども、一つの市町村の中で、納税者の方が他のところと比較ができるようにするという根拠を置きまして、そのことによっていままでの取扱いを変えた。
〇委員
総務省の解釈でやったわけですか。
〇事務局
違います、法律を改正してございます。
〇委員
したのでしょう。
〇事務局
はい。それで、15年度の評価替えから実施できるようにということで、いま時点ではまだ施行されていませんが、法律自体は改正……。
〇委員
これは画期的なことなんですよ。私は、いままでのやつは憲法違反だと思っているんです。最高裁の態度は憲法違反だと私は思う。それぐらいひどかったと思うけれども、これは非常に画期的なので、頑張ってくれと言いたい。これをしないと、1物4価で、それでなくてもわけのわからないのを、課税標準まで見せないというとんでもないことをやってきたんですよ、日本の政府は。だけど、これは私は正しいと思う。頑張ってもらいたい。
〇事務局
すみません、課税標準ではなくて、評価額までがこれまでの台帳に載っておりますので、そこから別途ほかの人と……。
〇委員
自分の土地なんてわかっているのは当たり前だけれども、みんな隣り近所を知りたいんですよ。そうしないと市場価格が見えませんからね。
〇事務局
ええ。それがわかるような形で、評価額としての縦覧ができるようなという改正です。
〇委員
頑張ってもらいたいです。
〇委員
同じようなことの繰り返しですが、資料も出たということで改めて申し上げたいのですが、平成14年度の土地・家屋・償却資産別の税収を見て、やはり目立つのは家屋が土地を抜いたということで、いま、固定資産税の主たる最大の税収源は土地よりもむしろ家屋だと。もちろん、今度評価替えがあってこれが10%とか、それ以上下がるのでしょうから、また状況が変わってくるかもしれないけれども、14年度の次元で見ると、家屋というのが相当のウエートを持ってきている。
ここで一つ申し上げたいのは、固定資産税の議論というのは、毎年、土地だけで終わってしまったという感じがありまして、家屋の問題というのが議論なしでいいのかなと。少なくともここまでウエートを高めてきているという観点から、少し家屋の問題についてもここで議論すべきではないかというのが、かねてからの私の考えなわけです。なかなか難しいといえば難しい、何かいい方法がほかにないかと、私自身、これだというアイデアを持っていないわけだけれども、一つ言えるのは、操業停止してしまった、あるいは、商売をもう閉じてしまった、シャッターをおろしてしまった、そういう事業所を広い意味での家屋とすると、結構あるわけです。
ところが、再建築価額方式だと、営業をやっているかやっていないか、あるいは、上物の価値がどんなものなのか等々は考慮されない。建てたとき幾らです、それで、経年で減点補正をするとこんな感じになりますと。つまり市場としての価値、あるいは、その事業を営んでいることによってもたらされる収益の還元という考え方が家屋には入っていない。ゼロとは言わないかもしれないけれども。それでいいのかということはかねてから私は疑問なわけです。
課税根拠から言っても、もう操業していない工場、営業していない店舗、そこから固定資産税を取ると。どういう根拠で取るのかねという疑問、これは誰しも感じると思います。もちろん、家屋は個別性がかなり大きいので、一般的になかなかやりにくいとは思うのですが、少なくとも一定の条件のもとで、そういう操業を停止したようなところには家屋課税というのは配慮すべきではないか。担税力から言っても、あるいは課税の根拠から言っても。そう思うわけであります。それで、どういう案がいいのかということは専門家にお任せする。それは総務省ばかりでなくて、各自治体の方々の知恵もお借りする。あるいは、各自治体の方々の裁量制をもっと広げることが必要ではないか。
とりわけこの6年間、土地については、下落修正等々の経過的な実態になるたけ合わせるという手法が導入されてきたわけですが、家屋は下落修正というものが導入されていない。土地みたいな下落修正ができるのかねというと、これもなかなか難しいかもしれないけれども、途中の経過に応じて、家屋にも、現実に合わせた修正という可能性がないものかどうか。そこら辺を御検討いただきたいということです。
〇委員
この間も同じ御発言でしたけれども、事務局、いまのあれに何かございますか。
〇事務局
なかなかの難問でございまして、必ずしも評価のやり方だけでの御指摘ではないと思うのですけれども、評価の形でちょっとお話しさせていただくと、適正な時価というのをどう見るかというのは非常に難しい問題でございます。客観的に公平でなければいけないし、おそらく委員の御指摘でいけば、納得が得られるかというようなことも十分ウエートをかけてみるべきではないか、ということであろうかと思います。
一方で、固定資産につきましては、個別個別の家屋一つずつを全部細かく見ていくというのではなかなか足りないといいますか、十分にやり尽くせないというところもございまして、ある意味で手続面での簡素化、明確化ということも、必要な部分として非常に大きくあるというふうに思っております。
全般的には、御指摘にはちょっと平仄は合いませんけれども、中小の店舗等については、土地の下落に応じて地価も下がりますし、家屋も下がりますし、だからいいんだというふうには思っておりませんで、さらに御指摘を踏まえて検討を加えたいと思いますけれども、個別個別の家屋の経済的な状況などで評価をかえていくということは、なかなか難しい面が多いというふうに思っております。
〇委員
私も何度も強調しているように、簡単だと思わないわけです。しかし、難しいとか、実行困難だとかいうことで、では、いまのままでいいのかという状況でもない。そこら辺はひとつご留意いただきたいということです。
宿題が出たということですから、それを受けとめて御議論いただきたいと思います。
では、もう時間ですから、お2人に限らせていただきます。
〇委員
地価がずいぶん下がってますよね。したがって、土地にかかわる税収というのはだんだん下がってきているけれども、いまの調子で行ったら、ある仮定を置けば、固定資産税というのは例えば地価関係だけ、土地関係だけ見れば、どの程度年々減っていくわけですか。何かそういう数字はあるんですか。
〇事務局
一つは、地価の動向がもちろんポイントになるわけですけれども、もう一つは、商業地について上限というのを設けておりまして、それが80%であったものを、75%、70%と。これが、これまで減収の中では効いてきたという歴史がございます。これからどうなるかということを含めていきますと、地価の動向について将来推計みたいなものはなかなかないものですから……。
〇事務局
ちょっと補足させていただきますと、一つは天井の話、下がるという話があるのですが、一方では、税収としては評価に対して実際の課税が低いとか、それが上がっていくという部分、この辺はかなり時間がかかるということもあって、それをどう設計するかということと連動になる。定性的にはそういうことだと思います。
〇委員
どうぞ。
〇委員
ちょっと固定資産税と離れるのですが、たまたまここに資料のほうにあったので、「特別土地保有税」について一言。企業とか不動産業界とかいろいろ言ってくるわけで、大体においては税金を下げろ、下げろというのが多いので、当然のことですが、その中で、聞いていてちょっとこの辺は直せないのかと思うのは、この特別土地保有税、これは去年も議論になりましたけれども、これ自体が、参考資料の18ページ、「未利用地の有効利用を促進する市町村税となっている」とあります。これも是非についてはいろいろ意見があると思います。
ただ、企業側の不満は、持っていてどうにもならない土地があると。最終的にちゃんと使えばいいわけですが、その途中の経過で、毎年毎年、確認の申請が大変なコストになっている。大体広い土地を持っているわけだから、分筆も多いし、毎年数百万円のコストになり、その申請のために人もだいぶ使わなければいけない。この手続のコストをせめて何とかしてほしいという声があるのですが、そこら辺についてはどうでしょうか。
〇事務局
たしかにそういう御指摘がございまして、これまで簡素化というのをやってきてはいるのですけれども、一つは、企業がお持ちの場合、全国の市町村に非常に土地があるというような形などもあって、特定の企業にとってはそれなりの負担になっている面は否めないと思います。
現実の問題といたしましては、特に手数がかかるというのは、将来有効活用をしていただくことを前提として、当面、課税はいたしますけれども、徴収を猶予するということを続けております。その意味では、定期的にチェックといいますか、今後どういうふうにするのかということも含めて、いわば減免といいますか、そういう手続を取っていただく必要がございまして、完全には全くやめてしまうということはなかなか難しいところがございます。
〇委員
ちょっと追加です。完全にやめるというのは、法律をどうこうというのはともかく、手続をもう少し簡素化できないかということ。数百万かかるというのだったら、相当のコストになると思うんです、ただ手続のために。これを10年も持っていれば大変なことになる。
〇委員
8ページの表、右側のほうで、昭和44年に建てた建物が決定額がなぜ下がらないのか。実際に見ると、これ、普通の売る場合だったらもう無価値ですよね。土地代だけですね。これが下がらない理由というのを教えてください。
〇事務局
ここの図の中でいきますと、同じ建物をいま建てたらどれくらいかかるか。これですと、44年なら44年に建てたときの建設関係の物価、これをスライドして現在に置き直して考えるというのを基礎としてございます。その後、たしかに年数がたっておりますので、その分、価値としては落ちる。そこの分は経年減価という形で落としてはいるのですけれども、物価のこれまでのインフレ、デフレの結果と経年と、両方の掛け合わせた結果として、ここの建物の場合、このモデルの場合ですと、落ちないという形になっています。全体的に言えば、非木造関係については木造よりも耐用年数が長くなりますので、物としては右側のほうに移るケースが多くなるということがございます。
〇委員
マーケットの価値から言うと、まだ高いということだよね。
〇委員
鉄筋だと耐用は30年と言われますよね。
〇委員
さあ、よろしいですか。確認ですが、いまから私、記者にだいぶ聞かれると思うけれども、15年度の固定の評価替えについて、今日は別に新しい御提案はないのですね。例の評価を縦覧すると、あとは従来どおりでやるということですね。
〇事務局
基本的に土地の分については、これまで以上に均衡化のためにスピードアップをしたいということでございます。それ以外は基本的な考え方自体は大きく変わりません。それから、情報開示の関係はすでに法律改正はやってございますので、実施を15年からやるということです。
〇委員
それでは、長時間、ありがとうございました。
次回以降の予定を御説明して、散会にいたしたいと思います。
明日、2時から4時半まで、2時間半になるのですが、総会を実施いたします。総会には、過去3回になるのかな、基礎問題小委員会でやりました議論をもう1回説明して、いろいろ御意見を賜ることになっています。ぜひ、基礎小にお出になった委員の方にも出ていただきまして、総会の方々からのいろいろな御批判もあろうと思いますし、御質問もあろうと思いますので、それに参加していただきたいと思います。
それから、来週火曜日、時間がちょっと繰り上がりますが、1時から3時半までの2時間半。「相続税・贈与税」、「国際課税」、「酒税・たばこ税・、エネルギー関係諸税」、「資料情報等の納税環境の整備」等につきまして、残った問題を全部整理したいと思っています。1時になりましたのは、5時から「若者集会」を考えているということで、直接御関係のない委員の方には御迷惑かと思いますが、よろしくお願いいたします。
それから、10月29日に再度総会を予定しておりまして、それで本年度税制改革の起草に移りたいと思っています。今年度は例年より1カ月ぐらい事柄が進行しておりますが、そういう段取りでおりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
日程等につきまして、何か御質問ございますか。よろしいですか。
今日は、どうも長時間、ありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。