第20回基礎問題小委員会 議事録

平成14年10月11日開催

委員

それでは、時間になりました。20回目になりますが、基礎問題小委員会を開催いたしたいと思います。どうもお忙しいところ、ありがとうございました。

今日はすごく内容が豊富でありまして、頭をクリアにしておいてください。どんどん難しい問題が出てきますから。それに対して我々としても慎重に議論したいと思います。それから、事務局のほうの説明は、議論の時間確保のために極力短くお願いしたいと思います。

それでは、最初に報告事項から入りますけれども、まず新聞で報道されておりましたように、10月7日に、今週の月曜ですが、諮問会議がございました。そこでの議論の模様と、それから、私が今日このあと出席します諮問会議で、財務大臣が提出されるであろうというメモを事務局から御紹介いただいて、我々の共通の理解にいたしたいと思います。

では、よろしく。

事務局

お手元の番号のついていない「平成14年度第28回経済財政諮問会議議事要旨」という冊子、それと恐縮でございますが、「会議終了後に返却願います」とされているもの、これを御説明申し上げます。

まず、1つ目の議事要旨のほうでございますが、これは、当方が要約するよりも現物をということで、きのうの夕刻、ウェブサイトに載りました議事要旨をそのまま御用意いたしました。

10月7日は、ここにございますように、政策金融等々の御議論があったわけでございますが、ほとんどが税金のお話になりました。時間の関係上、若干はしょりますが、冒頭飛ばしていただきまして、5ページ、このあたりから税の話に入りまして、ちょっとアンダーラインをしておりますが、本間議員が税のお話の口火を切られる格好になりました。

次のページでございます。「狭義の税収中立の問題ではなく、その枠を超えた『負担率中立』の考え方、さらには『財政収支中立型』(これはしばし時間を置いて、そのうち自然増収、歳出削減が出るであろうというそういう御趣旨でございますが)の中で実現しなければ、税制改革自身がデフレ的な要因に与する」というふうに本間議員が御議論の口火を切られました。

それに対しまして財務大臣が、ここも下線部でございますが、「8月6日、諮問会議において総理から発言があったことは、『経済活性化に資するあるべき税制の構築。財政規模の観点から多年度税収の中立性を維持する。それから、1兆円を超える規模の先行減税をせよ、増減税一括の法案でないとだめだ』」ということが総理からあったのですということを、念押しをされておられます。

その上で、6ページ、その下のほうでございますが、議論の1つの焦点になっています法人税について、財務大臣のほうから、「法人税についても、活性化の問題で、私どもも調査していろいろ考えた挙げ句、要するに研究開発、設備投資を重点に置いた企業の活性化を重点に考える(必要がある)」と、このように本間議員の御議論を受けられました。

次のページでございますが、吉川議員から御提起ございまして、ここも下線部でございます。「歳出の大きな姿は、予算の世界だけの議論では不十分だ。それは経済に非常に大きな影響を与えるため、経済政策全体の中で考えなければいけない」「税についても同じで、予算でいう箇所づけのような技術的な細かいところまでは踏み込まないにしても、減税規模も含めた大きな姿、どういう税の改革が必要なのか、なぜそういうことをやるのかを整理することは諮問会議の仕事であると考えている」と。

それに対しまして、財務大臣でございますが、「経済全体のことを考えろ、予算だけじゃないとおっしゃるから、『多年度中立』という、法律でどう書くのか悩むようなこともあえてやろうとしている。予算や経済も考え、いろんなものを考えてやっている。多年度中立を考えろとおっしゃるならやるが、結局は何年か先に、財政を合わせないと持たない。自然増収を期待しろとおっしゃるが、経済の低成長で自然増収をどこまで期待できるか非常に疑問だ」、下線部飛びまして、「多年度中立という方向だが、中立の中身の組み方、減税と空洞化を埋める増収の組み方をどうするか。財政の中立を外してまで減税をやれとおっしゃるが、非常に危険だ」と。

総務大臣のほうからもお話がございまして、「税と言っても、法人課税、所得課税、消費税、地方税等様々ある。どこまでが『全体像』(すなわち諮問会議で議論されようとする全体像)の話なのか。それを頭から決めるというのも政策だが、税には積み上げもある」という御指摘。それに対して吉川議員が、全体像は1つはもちろん規模の話だと。それに対して総務大臣、「それは、政治的な面も含めて、10月中旬では決まらない。問題を大きくするおそれがある」。吉川議員、これを受けられまして、「財政の規律は大事だと有識者議員4人とも思っているが、こういう状況でどういうステップで財政再建をやるのがいいか。問題はそのスピードに尽きる。そこは判断の問題だ」と。

そこで財務大臣、「歳出カットで財源はなかなか出てこない。これは責任を持って言わざるを得ない。歳出の当然増が出てくるが、それを増として増やさないで、14年度のベースで吸収するのも歳出カット(である)」と。

それに続きまして、ちょっと下に飛びますが、奥田議員が、法人税率を下げるほうが声としては大きい的なことをおっしゃったあと、財務大臣、「中小企業に聞けば、そんなことは言わない。聞き方にもよるし、もうけている会社は、全部日本の国内でもうけているのではなく、外国からの配当金をとっているのではないか。外国で稼いで本社へ持ってきて法人税を納めている。そういう会社がしっかり国内で設備投資をして、人も雇えばいいが外国へ逃げて、そっちで設備投資になれば、日本でいくらセーフティネットとして経産大臣が頑張っても雇用も設備投資も起こらない」。こういう御議論をされました。

若干飛びまして、総務大臣から、「歳出を抑制しているから減税で景気浮揚ということだが、その減税の財源のために歳出をさらにカットすると、それがまたデフレ圧力にならないかが(心配である)」。

それから、第2点として、「外形標準を導入すれば、2.7%(実効税率でございますが)は下がる。あとは、財務大臣も言われるように、国内産業の空洞化対策として設備投資や研究開発の減税の方が効果があると思う」。

しばしこういう御議論をされましたあと、13ページに飛ばせていただきますが、いろいろな御議論がありまして、進行役であられる財政政策・金融大臣のほうから、アンダーラインのところだけ恐縮でございますが、「マクロ担当の私としては、不良債権処理を加速する中で、ある程度のネットの規模を(減税でございますが)確保しないとマクロ経済が持たないという懸念を持っており、こういう観点から、規模についてはとりまとめの方法を探りたい」と、こうおっしゃったのに対し、次のページでございますが、財務大臣が、「ちょっと待って欲しい。総理は1兆円を上回る減税とおっしゃったのであって、ネットで2兆5,000億円(これは有識者議員のペーパーに書いてあったのですが)はその原則に合うのだろうか」と。

総務大臣からも、「減税の財源については、ある程度具体性がなければならない」。

こういう御議論のあと、15ページでございますが、議長である総理から御発言がございました。ある種締めくくり的になるわけでございますが、真ん中あたり、「税制改革は臨時国会ではやらない。来年度の15年度税制改革で、あるべき税制をやる。その際には、15年度の改正だけれども、15年1月の先行実施は結構だ。減税も1兆円以上の減税先行は結構だ。そして、今まで単年度(税収中立)だったが、多年度でいい。しかし、法案は減税だけでは困る。将来の税制健全化に資するため一括でやる」という締めくくりをされたということ でございます。

こういう議論を受けまして、本日の5時から経済財政諮問会議がございます。そこで財務大臣から提出されます資料を御用意いたしました。「来年度税制改革の基本的方向について」という題でございます。

「基本的考え方」、ここだけは読み上げさせていただきます。

「来年度税制改革において、経済活性化に資する『あるべき税制』を構築するため、多年度税収中立を図ることにより、財政規律を堅持しつつ、現下のマクロ経済の状況を踏まえ、1兆円を超えるできる限りの規模を目指した先行減税を含め、税制改革全体を一括の法律案としてとりまとめる。なお、税収中立期間後の税制については、その時点における経済・財政・税収の状況等を勘案しつつ、税体系全体や2010年代初頭のプライマリーバランスの黒字化目標との関係の中で改めて検討を行う。」

この基本的な考え方のもと、「検討の具体的内容」ということで、法人課税、個人所得課税、消費税、相続税等広範にわたり、将来の「あるべき税制」の構築の一環として、ということで検討を行おうとしています。

法人については、研究開発・投資減税を集中・重点的に行う。

「なお」といたしまして、税率の水準については、マクロ経済の状況、国際的視野、税体系のあり方を勘案しつつ、引き続き検討を行う。

(2)の個人所得課税については、今御議論いただいています控除の廃止・縮減を図る。

消費税については、免税点制度、簡易課税制度を抜本的に改革する。

4番目の相続・贈与につきましては、相続税・贈与税の一体化を行う。あわせて相続税の最高税率の引下げ・控除の見直しを行う。

(5)が税負担の公平性の確保、地方分権を支える基幹税の安定化等を図るため、法人事業税に外形標準課税の導入を図る。

(6)が土地税制、(7)が金融・証券ということで、株式に係る課税の簡素化を図り、「貯蓄から投資へ」の改革を促進するため、あるべき金融・証券税制の構築を目指し、改革を行う。

(8)が中小企業税制、(9)が酒税、たばこ税等のその他の項目についても「あるべき税制」の構築の一環として検討する。

このように大臣がまとめられたわけでございます。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

前倒しになりますが、これは会議後返却となっておりますから、横出しのほうに資料を置いておいてください。回収をいたします。

では、もう1つ報告事項というか、ちょっとお諮りしたいことがございます。奥野さんと宮島さんのほうからペーパーが出ておりまして、これは税制改革と今の経済財政政策全般にわたっての関連につきまして、御意見をおまとめいただいたものであります。ちょっとこれを御説明いただきまして、皆さんの御了解を得たら、我々の共有の認識にしたいと思っています。

委員

ここにまとめましたものは連名になっておりますが、事務局を通じて書面でやりとりしましたので、書いてあることはもちろん連名でございますけれども、それ以外の私があとで付け足すいくつかの部分は、私の個人の見解だということをお含みおきください。

「税制改革と経済財政政策の運営について」ということで、マクロ経済施策との関係と財政規律との関係についてまとめさせていただきました。

マクロ経済政策との関係としては、(1)に書きましたように、現在の危機的経済状況を考えれば、不良債権対策、企業再建政策、金融政策、財政政策などとともに、税制改革を総合的に検討し、1つのパッケージとして実施することが望ましいだろうということが1点です。

2点目は、財政政策・税制改革に当たっては、歳出・歳入のあり方をマクロ経済の状況に照らし、総合的に検討する必要がある。特にその際ですけれども、いままでは十分に定量的な分析などに基づいた検討が行われてこなかったという恨みが非常に大きいわけですが、本来はそうすることが必要であり、最近の税制改革に関する議論のように、何ら定量的な根拠を示すことなく、マクロ経済施策としての減税を議論することには問題が多い。今後は、そういう意味で定量的な分析を根っこに置いた提言をしてほしいということでございます。

それから、3番目が、少子高齢化の進展等を要因とする潜在成長率の低下、日本経済の国際化(開放度)の進展、GDPに占める税収の割合の低下等を踏まえると、マクロ経済政策としての財政支出や減税により、経済に大きな効果を与えることが困難になってきているのではないか。特に財政支出や減税が財政の持続可能性に与える影響をどう解決するかを国民に説得的に説明しないと、かえって財政規律に対する国民の将来不安を増幅し、経済に対してマイナスの影響を与える可能性すらあるのではないか。

その点を説明するとして、2に書いてありますが、その前に一言だけ簡単に、経済学的に考えると、これはどういうことなのかということをお話ししたいと思います。

私の理解では、いま非常に財政赤字が増えているわけですが、財政赤字が今後どうなるのかということが、国民はどう予想するかによって、それがいまの経済状況に、例えばGDPであるとか、国債の価格だとかいろいろなものに反映してくる可能性があります。経済学ではよく知られているわけです。ところが、いまの財政状況の危機的な状況というのは、国民が危機として共有しつつあるので、将来何が起こりそうかということに関しては、国民がものすごく関心を持って見ているわけですね。そういう意味では、かなり先を取り込んだ予想を国民がするようになっているだろう。経済学の言葉で言えば、国民が合理的期待を持つようになっているだろうと思われます。

国民がもし合理的期待を持つと何が起こるかということですが、1つの可能性が「ネオ・リカーディアン・セオラム」という、わりと有名な、皆さん御存じかもしれません。そういうことが起こります。

それは何かというと、減税をしたり財政支出をしたりして財政赤字が増えると、しかし、財政の維持可能性は満たされていると考えるとすると、当然、赤字が増えるわけですから、将来それを政府が取り戻そうというふうに考えるだろう。その結果、将来増税が起こるだろうというふうにみんな考える。そうすると、国民はせっかく現在赤字で財政刺激をしても、将来の増税というものを見越すがために、その現在の効果を割り引いて評価してしまう。事実上は本当に合理的な状況では、現在の減税を将来の増税で打ち消すというふうに考えて、何のポジティブな効果も生み出せない。場合によっては、税金というのは大きければ大きいほど歪みみたいなものを持って、国民経済に悪影響を与えますから、かえって減税をすると、将来の赤字がプラスアルファのマイナスを引き起こすということで、かえってマイナスの効果を引き起こすかもしれない。

さらにもっと悪くなると、財政の維持可能性がなくなるのではないかということを、財政赤字の増大に伴って国民が不安に思うようになる。そうすると何が起こるかというと、現在時点で国債価格が暴落する。また、信用格付けが下がるというようなことですね。そういう形で合理的期待を調整しようとするか、ないしは、一般物価水準が上がって、実質的な政府債務の価値を引き下げるという形で調整しようとする。そういう形で、典型的にいえば、日銀の国債引受けでインフレが起こるというようなことが起こる可能性がある。

そういう経済理論もあるわけで、そういうことで財政規律というものはやはりきちんと考えたほうが、いまのように国民が財政の将来像に不安を抱いているときには、むしろそういうことを考えることが大事なのではないかということで、財政規律との関係ということを2として述べているわけです。

ここで述べていることは、(1)として、危機的な財政状況の下、財政の持続可能性に対する懸念が国民の将来不安を招く一因となっている現状を踏まえると、歳出・歳入をマクロ経済的視点から検討するに当たっても、常に財政規律の観点からの検討を怠ってはならない。

特に政府が「改革と展望」において、今年の初めに出た文書ですが、2010年代初頭のプライマリーバランス黒字化を目標とすることを決定していることからしても、税制改革を含む経済財政の運営は、その目標と整合的である必要がある。

2番目に、すなわち、現下の経済状況等を踏まえ、経済社会の活性化のために真に有効な減税の実施を先行させるためには、次の2点が前提となる。

第1に、財政規律の観点から、一定期間で税収中立を達成するよう具体的な増税と一体で措置する(多年度税収中立)ということが大事ではないか。

第2に、社会保障制度なども含め、プライマリーバランス黒字化の目標を目指した具体的な枠組みを示すことで、財政の維持可能性を回復し、税制に対する信頼を回復する必要があるのではないか。

3番目に、減税の実施や財政支出だけを先に決め、その後の財政健全化の道筋は、具体的な増収策の手当てを行わず「改革と展望」のシナリオで決めていくというのでは、かえって国民の将来不安を煽る結果となるのではないかということです。

最後に、私のもう1つ個人的な考えを述べさせていただければ、先ほどの諮問会議の報告の中でも出てきましたけれども、不良債権処理を加速するという状況、あるいはアメリカの株価・日本の株価下落というようなある種の緊急的な状況の中で、ある程度のネットの減税、財政支出ということを考えなければ、マクロ経済がもたないという可能性があるわけですが、もし万一そういうことをする、例えば法人税を下げるとか、補正をつくるとかというようなことを考えるにしても、それにセットとなった一定期間、多年度内での増税措置というものをとらないと、かえって国民の将来不安を引き起こすことになるのではないかと思います。

むしろそういう意味でいえば、いま政治的には非常に難しいかもしれませんし、小泉内閣の公約にもなっていますので、難しいかもしれませんし、中小企業等の反発も強いかもしれませんけども、私などの個人的な意見としては、むしろそういう際には、2年とか4年後に消費税を上げるというような形で、増税を今の法人税の大規模な引下げとセットでやるというような形でのことを、例えばですけれども、追加的に考えるならばするべきではないか。そうした方が、消費税というのは御存じのように、税率が上がることによって、むしろ消費の駆け込み効果みたいなものがあるわけで、増税がむしろ経済刺激という政策にもなるわけですし、プラス消費税を上げることによって、物価がむしろ上がって、それはデフレ要因という面もなくはないのですが、名目の価格を上げるという、非デフレ、反デフレ的な要因もあるので、例えばそういうようなこともむしろ潜在的には考えていくべきではないかというのが私が思っていることです。

以上です。やや付け足しもありました。

委員

ありがとうございました。

いま2つ報告をいただきました。何か御意見なり御質問ございますでしょうか。よろしゅうございますか。

最後におっしゃったのも、多年度中立の幅の中だよね。

委員

そうです。多年度中立が一番大事であって、むしろそういうことを考えていた方がいいのではないかということですね。

委員

財務大臣のお出しになった組み合わせのほかに、奥野流のミックスがあったということもあったということですね。よろしゅうございますか。

それでは、きょうは議題が山積みなので先に行かせていただきますが、確認は、今日私5時からの諮問会議に出なければいけないのですが、塩川財務大臣が御提出になった資料は、一応、税調としても基本的に同じ方向であるという認識でよろしゅうございますね。

それから、今お二人でお出しになったこの資料も、できたら諮問会議でちょっと紹介させていただきたい。御本人、よろしいですね。特に後段でおっしゃった多年度税収の重要性であるとか、サステイナビリティーがなくなってきた財政赤字においては、やはり将来の財源調達のことがないと、かえって不安になるというあたりがポイントではないかと思います。よろしゅうございますね。

それでは、この「会議後返却」は別に横に置いておいてください。

では、今日の本題に入りますが、今日はいっぱい並んでおりまして、いまから最初に法人税関係の研究開発・設備投資、不良債権等がまず最初の固まりの議題ですね。それから、2つ目が贈与税・相続税一体化の問題、3つ目が金融・証券税制と、3つのブロックに分けてこれから議論をしたいと思います。

では、最初に法人税の研究開発・設備投資税制等につきまして、まず説明をいただきまして、また、この間、新しい資料の請求が委員の方からございましたから、それも踏まえまして、まず最初に御説明を受ける。もう1つは、不良債権処理に係る税制、いま現に行われているわけでございますが、それについても説明をということもございましたから、あわせてお二人よろしく。

事務局

それでは、まずお手元の資料基礎小「20-1」と、それから、その下に基礎小「20-2」という1枚の紙が入ってございます。この基礎小「20-2」に今日御議論いただきたい主要な論点などをまとめてございますが、これを横に置いていただきまして、あとでまたこちらは簡単に御説明させていただきますが、今日の基礎小「20-1」の資料の方を御説明をさせていただきたいと思っております。

まず、基礎小「20-1」の資料の1ページをお開きいただきます。2枚めくって1ページをお開きいただきますと、中間整理を改めて載せております。下の方にございますが、[1]の研究開発税制については、英米等の例も参考としつつ、新たな研究開発税制を設ける。[2]設備投資税制については、真に有効な戦略分野に集中・重点化した投資促進税制を設けるという整理をいただいております。

1枚おめくりいただきまして2ページ、これに関します各省庁の主な税制改正要望をまとめております。

まず、研究開発税制につきましてでございますが、その主要なところをなすものが、一番上にございます試験研究費総額の一定割合の税額控除制度の創設。現行の増加分に対する税額控除制度に加えまして、総額を対象とした税額控除制度を設けてほしいという要望内容が一番目。これが主要な要望でございます。

そのほかに、その派生といたしまして、2番目にございますが、産学連携特別云々の創設というところで、これは大学ですとか、公的な試験研究機関につきましては、基礎研究をやっているところで、したがいまして、効果への時間も長期間時間がかかるといったような背景がございますので、いわば一番上の制度のより深堀りをしてほしいと。一番上の制度が要望内容は10%の税額控除でございますが、これに対しまして15%の税額控除制度をつくってほしいという要望でございます。

1つ飛ばしまして4番目、中小企業技術基盤強化税制の拡充というのがございまして、こちらは実は現在増加分に対する試験研究税制があるわけでございますが、中小企業に対してのみは、現在でも総額に対しまして10%の税額控除制度がございます。これを一番上のような制度の充実を図るときには、現在ございます総額の10%ですと、同じようなことになってしまいますので、これをやはり15%に引き上げてほしいという深堀りの要望でございます。

3番目の件につきましては、下の方にもう一度載せてございますので、そちらで御説明いたします。

設備投資税制でございますが、これはIT投資関係の減税要望が、経済産業省及び総務省、ほぼ同内容でございます。10%の税額控除及び特別償却の選択制の要望でございます。

それから、3番目に、これは上に書いてございますが、試験研究用に供する資産を取得した場合の特別償却制度の創設ということでございまして、ここには2つの意味が込められておりまして、1つは、上の研究開発税制としての位置づけということで、研究開発税制としては、これは人件費ですとか、物件費ですとか、すべての経費を対象としたいわば優遇税制ということになるわけでございますが、その中でも特に機械設備につきましては、その集中・重点的な試験研究体制の整備を図るという観点から、あわせて特別償却制度を設けてほしいというのが意味内容の1つでございます。

それから、意味内容のもう1つは、実は上の方にはITしかございません。御承知のとおり、「骨太の方針」などでは、重点4分野等に対して、これから戦略的に考えていきたいといったような問題意識が出ているわけでございますが、バイオあるいはナノテク、環境といったものにつきましては、要望省庁側から私どもが伺っておりますのは、こういうバイオ、ナノテクのような技術というのは、さまざまな最終商品をつくる過程においての基盤技術をなす、つまり小さくする技術ですとか、あるいはいろいろな野菜をつくるに当っての遺伝子組換えの技術を開発するとか、そういうところのいわば試験研究段階で生かされるのがバイオやナノテクのテクノロジーであるということで、実績には戦略4分野のIT以外の分野というのは、こういうところで救われる部分が大半であるという意味内容が2つ目でございます。

それから、4番目に産業活力再生特別措置法における革新的設備ということで、そういうバイオあるいはナノテクのようなものである場合には、最終商品としては一般の商品と同じようなものができ上がる。それがより環境によくなったり、あるいはより効率がよくなって出てくるわけでございますが、そういった中でも、特に革新的なバイオやナノテクに役立つものについては、商品化段階でも先進的なものがあれば認めてほしいという要望内容でございます。

1ページおめくりいただきまして3ページに、これは前回も見ていただきました外国の制度の概要を載せてございます。日本と一番右のフランスが増加分、対しまして、アメリカ、イギリスはより充実したような形の制度が仕組まれています。

また、アメリカのところをちょっと見ていただきますと、アメリカはもともと[1]にございますとおり、これは前回も御説明いたしましたが、増加分に対する20%の税額控除という仕組みでございました。※印のところにございますが、1996年から上記に代えて選択制という形で、試験研究費の総額に対する税額控除制度が導入されております。その税額控除をするときの割合でございますけれども、2.65%から3.75%ということで、試験研究開発費の割合が大きい法人ほど高い控除割合が受けられる。これはいわば企業に試験研究費を増加するインセンティブを考えて、このようないわば階段状の割合が設定されております。

アメリカの[2]でございますけれども、大学や試験研究機関等につきましては、これはまた別途の制度として優遇割合を高めているという措置を講じております。

4ページをお開きいただきますと、ここから先は前回いろいろ御議論いただきました中で、研究開発支出、どんなものがあるのかということでございまして、真ん中にございますとおり、現在、日本で約10兆円強の試験研究開発費がございまして、多い産業を図示してございます。右の方にございますが、電気機械工業とか機械工業、これはいわばIT関連の研究開発の多い法人でございます。それから、横に行きまして輸送用機械、これは自動車・船舶でございますが、ここは現在は環境関係のような研究開発を大分増やしてきております。

それから、左にいきまして化学工業、この中に薬品なども入ってございますが、ここがバイオといったところに注力している企業でございます。

こういった企業が大半を占めているという中で、5ページをお開きいただきますと、今申し上げました産業の中でどんな目的別の試験研究費になっているか。一番左に数字が2つ並んでございまして、例えば食品工業ですと、一番左の下の方の数字、1,950億円というのは、これは全体の試験研究費、うち目的を特定できるものが600億円ということで、残りの1,300億円は、基礎研究などもありまして、目的はなかなか特定しがたいと、アンケート調査で返ってきているものでございます。

その600億円の目的を特定できるものについての内訳が、このライフサイエンス、バイオのようなものであったり、情報処理、環境といったようなところにかなり重点的に入っているという中身でございます。

6ページでございますが、こちらは研究開発税制の比較ということで、日本型の増加分ベース控除方式と、アメリカ型の総額ベース控除方式で、効果等についてどのような違いがあるかということについて、内閣府がまとめたレポートの抜粋をつくっております。左の方を見ていただきますと、アメリカ方式ですと、誘発額が大きい。政府負担額が多い。制度は簡素。それから、問題点の1つとしては、一番下にございますけれども、もともと使っていた研究開発にも使われるといったような問題、ちょうど右側はその逆さまになるわけでございますが、そういう整理がなされております。

7ページ、アメリカの研究開発費の推移。平成8年に先ほど申し上げました総額方式が導入されまして、その後、それだけが要因だとは思いませんが、ここのところ、非常に高い研究開発費の伸びになっております。

8ページでございますが、経済産業省がこの研究開発投資減税とIT投資減税についての経済効果を研究会に報告されたものを、そのままお載せしております。左の方に短期(需要サイドの効果)、あるいは中期的には国際競争力が強化されることによる効果といったものを期待されるということで、右の2のところでございますが、研究開発投資減税につきましては、2行目で、効果は長期にわたって拡大する。3行目に外部効果(スピル・オーバー効果)を持つことから、市場に任せると過少投資となりがちであるといったところを、税制措置により補正できるといった指摘。

それから、下の方に、IT投資減税につきましては、需要創出等の短期面での効果が大きいといった指摘がなされております。

9ページもその試験研究費の範囲につきまして、一覧表をお載せしております。一番左は日本でございますが、日・米・英と比較しまして、基本的には共通する部分が多いと思われます。違っておりますのは、まず日本が狭い点でございますが、下から3番目の人件費、我が国におきましては、専門的知識を持ってその試験研究の業務にもっぱら従事する者にかかるものに限るということでございますが、アメリカですと、補助職員などが入っている。ここが日本が狭い部分。

逆に日本が広い部分でございますが、下から5番目ぐらいのところに、海外への支出ということで、国内において支出されることを要しない。反対にアメリカは国内のもののみ。あるいは、そのすぐ下の委託研究費でございますが、日本は特に制限を設けておりませんが、米・英等においては制限が入っているというような実態がございます。

10ページ以下は投資減税関係でございますが、10ページで、これも前に見ていただきました。キャッシュフロー自体は日本の企業は現在増えている状況にある。

11ページをお開きいただきますと、そうした中で、設備投資行動に対する意識調査、これは昔の開発銀行、いまの政策投資銀行のアンケート調査でございますけれども、投資を増やすとすれば何をしてほしいかという中で、「税制の優遇措置」とお答えになっている企業は、それなりにいらっしゃるという資料でございます。

12ページ、その内訳といたしましては、情報化あるいは研究開発、合理化・省力化といったところが上位に並んでおります。

13ページ、IT投資の経済効果ということで、左側が一般的な設備投資よりもIT投資の方が誘発係数が若干ですが高い。あるいは、右側でございますが、最近の経済成長への寄与度におきましては、IT資本の伸び率の占める割合が非常に高くなっているということを載せております。

14ページ、15ページは、先ほど申し上げました「骨太の方針」で、重点4分野といったところを載せております。

こういったことを背景に、もう一度基礎小「20-2」という1枚紙にお戻りいただきますと、基本的考え方についての主要な論点といたしましては、増加分方式と総額方式、いずれをとるか。あるいはインセンティブを与える仕組みとしてどのようなことを考えるか。あるいは研究機関、大学等との問題をどのように考えるか。あるいは時限性と恒久性、外部効果といったことをどう考えるか。それから、より具体的な制度設計の問題としては、対象者あるいは試験研究費の範囲をどのようにとるか、等々の問題があると考えられます。

それから、設備投資税制につきましては、重視すべき戦略分野はどのように考えていくのか。研究開発用設備の取扱いをどのようにしていくかといった問題があるかと存じます。

以上が研究開発設備投資税制についての、事務局からの御説明でございます。

それから、もう1つ、1つ飛んで基礎小「20-4」という資料をおめくりいただきまして、こちらに不良債権関係の資料を簡単にお載せしてございます。大変専門的にわたる分野でございますので、簡潔に御説明をさせていただきますが、企業会計と税務会計、御承知のとおり企業会計は、企業の経営実態を適正に開示するという目的でなされておりまして、特にその中の金融機関については、最近に至っては、健全性とかシステムの安定性の観点から、非常に厳しくそれを見ていくという立場がございます。一方、税務会計の方は、納税者の間で不平等感が生じないように、税負担を公正・適正にお願いしていくという観点から、税務会計を組んでいただくということですから、企業会計から税務会計が連動しているという関係にはございません。その辺の関係をまず税務会計の方から簡単に御説明させていただくとともに、そこで違いが生じた場合の処理等につきまして、最後に御説明をさせていただきたいと思っております。

ページをおめくりいただきまして、1ページをお開きいただきますと、不良債権の処理に関しましては、2つの方法がございます。直接償却と間接償却。直接償却は、債権そのものをなくしてしまうということで、これは損失計上がなされるということになります。これにつきましては、国税庁が通達を定めまして、下の方にございますが、さまざまな基準から無税償却の判定基準が定められております。

一方、間接償却。こちらは債権を残したまま引当金を積むという形でございまして、右下にございますが、一括評価をする。つまり、貸倒実績率を掛けて一括評価をする債権と、そのほかに回収不能見込額が立つ債権につきましては、個別評価で引当金を積んでいただくという制度の枠組みになってございます。

2ページ、3ページでその辺の貸倒引当金制度の具体的な制度、2ページのところで個別の話、一括の話を書いてございます。それから、3ページでは、その個別の評価に当ってはどのような基準で行われているか。3ページの表の一番上と3番目が、法的な処理が行われた場合については、全額とか、あるいは100分の50といった割合。それから、2番目にございますが、実質的に取立ての見込みがないと認められる場合につきましては、いわば個別評価といった形で評価を計上させていただくという仕組みになっております。

事務局

続いて4ページ目をご覧いただきたいと思いますが、これまでの説明とほぼ重なっておりますけれども、より具体的にその場面を設定して、少し不良債権の処理について説明しております。左側にABCDとございますが、A、Bは先ほども申しました直接償却、特にAの方は回収不能債権額がもう帳簿上これを全部落としてしまうというような場合、いわゆる貸倒損失でございます。

それから、Bの場合は、子会社とか取引先に対して、債権放棄をする。あるいは何がしかの追加支出をするといったような場合、これは債権としては貸倒れていないということで、場合によっては寄附金という認定もあり得るわけでございますが、これの場合、合理的な債権計画に基づいて、経済合理性に基づいてやっている場合には、これは損金として認められるということが、基本通達の9-4-1、9-4-2というところで明らかにされております。

それから、最近では、債権処理の方法としては、債権そのものを第三者に売り切ってしまう。そして、当然バランスシートからは落ちるわけですが、そのときに額面との差額が売却損という形で計上できる。こういうケースも実際の処理の方法としては多く使われております。

最後にDは間接償却でございまして、貸倒引当金勘定の問題で、いまも説明がありました個別引当、一括引当がございます。個別引当の一番右側のところで参照条文がありますが、その下に基本通達11-2-1とございまして、税務上は貸倒引当金でございますから、債権と債務両建てでございますが、会計上、貸借対照表の上では、オフバランスといたしまして、すなわち貸倒引当金を差し引いた金額だけを資産に計上して、結果として部分的な直接償却という方法をとることも通達上これは認めますということで、明らかにしております。ただ、その際、貸借対照表には多くの場合注記がやはり会計上求められているというふうに承知しております。

次に5ページでございます。これもやや具体的な話でございますが、債権放棄のお話については、子会社や取引先の整理・再建のための再建放棄ということが非常に多くこのバブル崩壊以降行われてまいりました。先ほど通達で明らかにしていると申しましたが、具体的にどういった場合にこれが認められるのかということについては、やはり個々に非常に個別性の高い問題でございますので、国税局に平成4年から相談窓口を設けております。したがいまして、多くの会社はここに相談に予め来て、そして、国税局の一定の了解を得た上で債権放棄をしておるという現状にございまして、現在までのところで、すでに740件が手続きを経て再建放棄がなされております。特に平成7年から9年ぐらいは、毎年100件以上を超えるような相談があったと承知してございます。

それから、もう1つは、不良債権処理に関して、やはりいろいろ個別に工夫がされます。例えば昨年、全銀協からは、債権放棄に関するガイドラインというのを、全銀協と経団連さん等で合意されたと思いますが、そういった場合について、これは損失として認められますかということについては、全銀協からの問合せに対して、国税庁から認められるという文書回答をしております。あるいは公認会計士協会から、債権の評価損といったものについて、評価損をせざるを得ない場合、どういう手続きでやったらいいかということについて、自分たちはこういう手続きでやるが、それは税務上も認められるかというような問い合わせが、これは平成10年に来ております。これも同様に構わないという回答をするというような形で、世間の実態に合わせた努力をしておるということかと存じます。

事務局

税の観点からいま申し上げましたような形の運用がなされているわけでございますが、このような運用が、最近ここ数年間では、金融行政のほうでは、実質破綻先ですとか、破綻懸念先等の債権につきまして、非常に厳しくその引当金を積むようにといったような考え方もなされておりまして、必ずしも常に無税で償却できているというわけではないわけでございます。それは事実でございまして、そういう場合はよく有税償却ということで呼ばれております。

次のページをお開きいただきまして、税効果会計に係る会計基準でございますけれども、ここにございますが、企業会計上の判断と課税計算上の判断に相違がある場合においては、そこは期間配分を適切に配分して合理的に対応させるという考え方をとっております。具体的には、例えば有税償却が発生いたしますと、将来いわば税金を取り戻す権利が発生する。これはいわば資産でございますので、有税償却をした場合には、下にございますが、それが繰延税金資産として、貸借対照表上計上するということになってございます。これを一時差異と一般的に呼んでおりますが、そこにございます貸倒引当金等の損金、これは有税償却に当たりますが、その部分が繰延税金資産として計上されます。この繰延税金資産は、損益計算上はこのような差額を法人税等調整額としていわば足し戻す形になります。

ちょっとわかりにくいですが、次のページをお開きいただきますと、税務上の有税償却がなされた場合には、資産が会計上の資産よりも多いという状況がありまして、これがいわば将来税金を取り戻す権利であるということで、それに実効税率の40%を掛け合わせまして、これを資産として計上いたします。貸借対照表上です。また、一方、損益計算書上においては、これに伴う部分を、下の方にございますが、1回税金を支払った後に、今度はもう一度法人税等調整額ということで足し合わせて、当期純利益を計算していただくという形になっているわけでございまして、結局、ここで有税償却がなされても、企業会計上はその分は戻ってきて、利益は確保された状況がまたもとに戻るという形で、キャッシュフローの問題は別でございますが、企業会計上はこのように処理されるということで、自己資本にもその分が資産として入ってまいりますので、算入されるという取扱いになっているわけでございます。

もう一度6ページにお戻りいただきますと、6ページの真ん中辺の(注)のところに、有税償却の表現がございますが、一番右の方に繰越欠損金、これも将来税金を取り戻すいわば権利であるわけでございまして、現在の金融機関の経営状況のもとで見ますと、基本的にどこも赤字だということで、今の金融機関にとっては、有税償却をすれば、有税償却として繰延税金資産が生ずる。無税償却をすると、欠損が増えるという形になりますので、繰越欠損として繰延税金資産が増えるという形で、いわば同じ結果になるわけでございまして、この辺がいわば厳しくなった企業会計基準に沿って償却をした場合に、企業会計上償却をした場合に、税務上、これは本当はきちんと企業の資産・負債を調査して、実質的に何割が貸倒れが見込まれるということを出していただければ、当然、国税庁ではそれに対応した処理をすることになるわけでございますが、それをするまでもなく、結局損失計上になっておりますので、有税償却をしても、無税償却をしても、今の企業の経営には結果的には影響がないといった形で、なかなか有税償却したものを、わざわざ手間ひまをかけて、実態を無税償却をするための調査をする状況にないというのが、今の金融機関の経営の実態ではございます。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

それでは、時間を20分ほど取りまして、今のお二人の御説明につきまして、御意見なり御質問賜りたいと思いますが、どうでしょうか。ちょっと込み入ったところもありますから、質問も出てくるのではないかと思いますが。どうぞ。

委員

今の研究開発税制と設備投資税制についての御説明ですと、6月の中間整理と若干トーンが違っているのかなという印象で受けとめたのですが、それでよろしいのでしょうか。

委員

具体的にどこがどう違っているという御指示をいただけますか。

委員

中間とりまとめの基本方針のところで、これを読みますと、適用範囲というのを非常に限定したトーンになっていると思うのです。それが今の説明ですと、資料などを示されましたけれども、それでいきますと、例えば限定的な期間のものを恒久的なものに延ばすとか、対象範囲を弾力的に考えるとか、そういうことだと思うのです。私はそれでいいと思いますが、そういう趣旨でしょうかという質問です。

委員

わかりました。それがお一つでよろしいですね。他にいかがでしょうか。

委員

基礎小「20-2」の方にまとめてあるので、これでいくつか確認させていただきたいのですけれども、研究開発税制で、基本的にこれは税額控除でやるということで理解してよろしいのですかということです。

どれぐらいの額でやられるかはまだ書いていないですけれども、もし増額の試験研究費の税額控除ではなくて、試験研究費総額に一定割合の税額控除をするということになると、ある意味で日本の法人税制の中でも画期的というか、非常に今までないことをやるわけで、またこういう経済環境だし、私個人としては、税額控除としてきれいにやってもらいたい。

特別償却でやるかどうかということは、多少議論が要る。特別償却をするならば、今の試験研究用資産の償却年数が十分かどうかという議論が要るわけで、今、まさに日本の法人税制で、企業のR&D投資に関してサポートしたいというときに、できるだけきれいに、画期的な税制だと思いますから、つくるべきだと。

それから、今日の話を聞いていて、今まで知らないことが1点あったのですけれども、日本以外の国は、試験研究費の税制の適用範囲が、国内において支出されることというのがあるのです。この点もどう考えるかというのが、さっき気がついたことであまりよくは考えていないのですけれども、試験研究費の税制を今どうしてやるかというと、ある意味で、法人税率自身を下げればいいではないかと、そして、外国で稼いだ金を日本に送り返せるような仕組みにして、日本でR&Dも含めて投資ができるような関係にする。そういう議論もあるのでしょうけれども、この研究投資税制に関しては、やはり目玉の1つは、そういう税率の改革ではないルートで、日本国内で研究投資を活性化したいという戦略的な狙いがあるならば、支出の範囲というのも議論が必要だったのかなと。それもここで議論が必要な感じがしました。

委員

以上2点、御説明いただけますか。冒頭が少し基本方針とは範囲が大きくなっているのと、2つ目の今言った国内の問題を含めて。

事務局

まず第1点の御指摘でございますが、基本方針には、「21世紀をリードする産業・技術を見据えた明確な国家戦略を前提に政策の重点分野への集中投入が必要である」ということで、「新産業や技術革新の創出を目的とした政策税制を、研究開発分野等真に有効な分野に重点化すべきである」という御指摘をいただいております。

それに引き続きまして、先ほど1ページにお載せいたしました中間整理におきましては、その基本方針にございました研究開発税制を具体的に一歩進めるという御指摘。それから、2つ目にもう1つ設備投資税制につきましては、真に有効な戦略分野に集中・重点化した上で設備投資税制を組んでいくという2つの御指摘をちょうだいいたしております。私どもが今議論しておりますのは、ITを中心とする戦略分野、それから、それ以外の戦略分野としては、バイオ、ナノテク、環境といった重点4分野、こういったものを重点的にいま各省と議論をしているところでございます。

それから、税額控除につきましてでございますが、研究開発税制につきましては、いま中心的に各省庁から要望を頂戴いたしておりますのは、税額控除の仕組みでございまして、これが大半の措置になります。これに加えて、設備投資につきましては、さらに特別償却をいわばプラスアルファをしてほしいといった形の要望となっております。

委員

それから、国内か国外か云々の議論がありましたけど、何か御説明ございますか。

事務局

今の制度自体は資料にお載せしたとおりでございまして、我が国が日本国内に限定をいたしていないわけでございます。ここはお立場お立場でいろいろな御意見があると思いますが、一般的な企業の方に伺いますと、やはり一番効率のいいところに研究開発を頼んで、その成果を自分の企業に生かしていきたいという企業がかなりいらっしゃるようでございまして、例えばアメリカの大学ですとか、こういったところに頼んだ試験研究を生かして、生産の活性化に生かしたいといったような要望もございます。今の日本の制度の仕組みというのは、それをもとに立てられているということでございます。

委員

3点ほど短く。

まず最初に、財務大臣の発言要旨と先ほどのペーパーで、一言で集約すれば、このお二人の議論の一番中核をなす話は、多年度税収中立で、そのために税制改革全体を一括法でやるということがミソだと思うのです。これがたがが外れたら、どこまで迷走するかわからないわけだから。

ただ、これは実は非常に重要な問題を孕んでいて、反対論、慎重論も当然多いことはわかっていますけど、であればあるほど、危機的状況その他でいろいろな議論が今行われているけれども、ここのところは不動の姿勢でやるということを確認する必要が僕はあると思っているのです。おっしゃったこともそういうことだと思ったのです。

2番目に、法人税の研究開発投資ですけど、今までこの手の要望を、これは経産省だけではなくて、関係各省からたくさん出ているのだけど、税調に来るときにはそういう陳情があって、まあ、いろいろ税法上問題はあるけれども、いやいやではあるか、ないしはしぶしぶでもあるけど、しようがないから認めるかというのが、これは租特的にとらえてみればそういう反応があって、それでもやってきたということは事実なんです。

しかし、今回は、本当に日本経済を5年、10年先のことを展望しながら考えてみれば、これはそういう「いやいや」とか「しぶしぶ」とか税調がやるような性格ではないんですね。積極的にやるべき仕事なんですよ、この話は。そのために税金を使うのは大いに結構な話だ。

だから基本的な理念において、私はここで大規模な、といっても1兆いくらになるだろうと思うけれども、やることは、そういう意味で消極的ではなくてむしろ積極的に大賛成だということです。

その線で言えば、ここに検討項目が並んでいましたね。それで見ても、アメリカみたいに総額方式でやるというのが、これは要望も全部そうなっているけれども、これも当たり前だと思うし、全部が全部そうなるかどうかはわかりませんけど、これはある一定期限を限ったものではなくて、恒久的に日本経済を本当に生かすために、この金を税法上投入するのだというふうに腹を決めることが一番重要だと思うのです。

細かいことだけ、1点だけ追加すると、ここにインセンティブを与える仕組みというのが書いてあるんです。これはさっきアメリカのことの説明の中にもちょっとあったように思うのだけれども、このことについては多少の工夫があってしかるべきだと思いますね。企業家がここに予算配分するときに、それをしやすいような、インセンティブを与えるような仕組みをかなりはっきりと入れた方が効果があると思うのです。

3番目に、これでおしまいですが、設備投資、IT関係の減税についていえば、研究開発税制というのは、結局、漢方薬みたいなもので、遅効性があっての話なんですね。だけどもそれは必要だ。しかも最近、ノーベル賞の会社の試験研究費の話は実におもしろい話で、東大教授の、10年前からいつもらってもおかしくないような状況でずっと待ちの姿勢で来たのと全く違った話で、あれはこの議論に、僕なんかは素人だからわからないのだけれども、技術者の研究者がどんなふうにしてやっていらっしゃるかよくわからないけど、この1点だけ見ても、僕なんかの積極論を尻押ししてくれるようなすごい例だと思うのです。まあ、稀なケースだと思うけどね。しかし、まあ、そこまで行かない研究だってずいぶんあるはずで、我々わからないところでやっていらっしゃると思うので、そういう意味で、この税制には大賛成。

ただ、これはゆっくり話が効くという漢方薬だから。即効薬があるのだったら、IT関連の投資というのはおもしろくて、いままで財務省のデータで経産省がつくったデータですということを、しらっとした顔して載せることは、実に近来稀な話なんだけど、それでも、まあいいんですよ。財務が分析できないから、経産が自分で売り込んで来たわけだから。

それは、僕はピンポイントで設備投資に対して、税制上この点について優遇措置を与えるということは、どうやら話をいろいろ聞いてみると、非常に広範にわたっていい影響を及ぼす可能性がある。どうせ税制改革を売り込むときには、その効果をかなり膨らませて書くというのは当たり前かもしれないので、全部が全部そのとおり信用できるかどうかわからないけれども、しかし、前者が遅効性なら、今度は即効性がかなりあると見て、これを現在の不況対策という側面も加味して、だからこれは時限でやったらいい。恒久とは全く違いますから。というふうに仕組んでやれば、2つともいやいやではなく、しぶしぶではなくて、腹を決めてやったほうがいい。その代わり、法人税のむだな減税を今やる必要は全くないと思っています。あれとセットなんていう議論をやったら、何ぼ財政があったってもつわけないのだから、と思います。

委員

全面的に御支持いただいたわけですね。

そうすると、あと4人でよろしいですね。

委員

委員の話に全面的に僕は賛成なのですが、不良債権を処理しろとずっと騒いでいたマーケットが、じゃあやるぞと言った途端に株が下がるのと同じで、減税減税と騒いでいるけれど、本当に減税をやると、国債が暴落する可能性が非常に大きい。マーケットというのはそういうものであると思っているものですから、もっと進めて、僕は本当は増税すればいいなというふうには考えていますが。とはいえ、首相が1兆円以上やれと言っているわけですから、それはだめだという回答はできないというのを前提にすれば、あちこち余計なことを言われるよりは、この研究開発・設備投資減税というのは、まあ悪いことではないということですので、ここだけで1兆円以上どうやって稼ぐかという、まさに定量的分析をちょっと教えてほしいなと思っています。

ただ、これは租特になるかと思うのですが、一方で中長期的には租特全廃ということをずっと言ってきて、全廃というか、なるべくやめようという方向で進んできたのを、ころっと変わって今年は別というのも、何かちょっとかっこ悪いなという気もするものですから、これを租特ではなく本則、どうやればいいのかわかりませんけれども、本チャンのものとしてやってもいいかなという、その方が筋が通るような気も1つするのですが、どうなのでしょうか。

委員

これは租特の扱いをするのかどうかといま御質問がございましたけれども、どういう取扱いをされるおつもりですか。

事務局

いまの法の仕立てからいたしますと、研究開発を含めて、やはり位置づけとしては、租税特別措置には該当するのではなかろうかとは思います。

委員

ただ、租特の中、細々したのをいくつかまとめてというような議論もありましたから、それを少し拡充する形になるということでしょうかね。

委員

大体先ほどの委員がおっしゃったのと同じです。今度の数少ない減税の中での、当然これは目玉になると思います。それから、元気のない日本の中でノーベル賞が2つ取れて盛り上がっているときでもあり、これは前向きに、かつ大胆にやっていいのではないかと私は思います。つまり、やるのなら、ケチケチというか、あまり小出しにしないで、例えば恒久的にやる、あるいは補助職員など周辺にも支出を認めるというように、しっかりしたものにしていいのではないかと思います。これはどのぐらいの税金が減るのかわかりませんけれども、その対象のパーセンテージによるのでしょうけれども、しっかりこれを打ち出すということに賛成であります。

委員

まだ減税規模云々に触れるのはちょっと早いのでしょう?

事務局

まさに多年度税収中立の議論とも絡むわけでございまして、今回の税制改正全体を仮に多年度税収中立の中で考えていくとなりますと、これは大きな減税項目になり得る項目でございますが、他方で増収項目をどういうふうにこれから議論していっていただけるかということとの中で、やはり全体として決めざるを得ないものですから、現段階では、金額なり具体的な率について、これ以上議論をなかなかしにくいということを御理解いただきたいと思います。

委員

ただ、一番重要な項目であるということは言えるということですね。

委員

はい。1つの大きなアイテムであることは認識を持っております。

委員

この研究開発・設備投資税制については、先ほどの委員が、「いやいや、しぶしぶやるべきものではない」という御発言でしたけれども、やはり税制によってインセンティブを与えるということは、税制を傷めるんですよね。それは間違いないので、その辺はやはり頭に置いておく必要があると思うのです。それでもやろうということでありますから、やる以上は経済成長に貢献し得るものに絞る必要があると思います。まあ、やってもいいということなんですが、やる以上は、欧米の研究開発関連税制に十分対抗し得る内容でなければならないと思うわけです。研究開発税制の場合は、基盤になる部分は、相当波及効果があるわけですから、恒久的措置にしてもいいのでしょう。また、あまり細かく枠を設けないほうがむしろいいという意味では、やはり業種を特定しないほうがいいと思います。中小企業もかなり配慮をしたほうがいいように思います。

設備投資減税は短期的な需要効果ということですから、これは時限措置でいいと思うわけです。

IT投資減税、これも研究開発税制と同様に、やはりあまり細かい枠は設けないで、なるべく業種を絞らないでやったほうがよかろうと思います。

研究開発投資減税、これは戦略分野に重点を置くのは当然ということであります。

ただ、これをやる場合、経済成長に貢献し得るとは思うのですけれども、やはりフォローアップが必要になると思います。そう簡単に効果が出ないのもあるわけですが、やはり実効性についてあとで検証する必要があるだろうと思います。

委員

税調良心派の御意見でしたね。

委員

大体皆さんと同じなのですが、まず研究開発と投資減税です。ここの諮問会議の議事録などを拝見していても、税率引下げがいいのか、政策税制がいいのか、というかなり白熱した議論があるわけですが、そういう議論の結果、この政策減税という選択をしたわけですね。したがって、間違っても税率引下げだと金がかかる、政策減税なら少しケチれるだろうというような印象を与えるものではなくて、むしろ、税率引下げにかわるものだということが誰の目にもわかるような、そういった本格的なものにしてもらいたいということです。

あと、研究開発なのですが、これは私もたびたび申し上げているのですが、大企業、きちんとしたノーベル賞研究員が出るようなところはいいのですが、問題は中小企業でありまして、要するに、研究開発の認定される範囲がわからないという話をよく聞きます。それは人件費云々ではなくて、どういう段階なのか、どういう研究なのか、それによってこれは認められるのか、否認されるのか、申告していいものかどうか、そこら辺がよくわからないという話を聞くわけです。統計はあるかどうかわかりませんが、中小企業での試験研究費税制の利用度というのは、おそらく低いのではないかという推測も成り立つわけであります。

そこで、提案したいのは、この研究開発税制というのを、今回かなり規模も内容も充実するということでありますが、同時にどういうことならば適格性といいますか、この税制に合うものなのかどうか。中小企業等々、これまで利用したことのないような人たちにもわかるような運用基準というのを、懇切丁寧なものを用意する必要があるのではないか、ということがここで申し上げたいことであります。

あと、不良債権のことも若干の御説明がありましたが、一言だけ言いたいのは、小泉改造内閣以来、不良債権処理の加速というものが非常に声高に叫ばれている。その結果、株価が1,000円ぐらい下がってしまったというようなことを見ますと、どうもこの不良債権処理の加速ということの言っている意味がよくわからない。おまけに公的資金の投入というようなことまで出てくると、何のための、どういう前提に立った公的資金の投入なのか。そこで揣摩臆測を呼ぶわけで、この心理が市場を覆って株価の下落というようなことになってしまう。

不良債権処理という大命題のもとに、税制全部でどう対応するかということを議論するのは結構ですが、その前に不良債権処理の加速、公的資金の注入というものが、一体何を狙った、どういう前提に立ったものなのかそこをしっかり見極めた上で議論するべき話ではないか。そこがはっきりしないまま、税制であれやります、これやります、直接償却がどうだ、税効果会計がどうだというようなことを言うと、また新たな混乱を招く。そこを私は心配するわけです。

委員

最後のほうは御意見として伺っておきますが、前段の中小企業云々で、適格性なんていうことはいま説明できますか。研究開発の適格性、中小企業まで使われていないと。したがって、使いやすいというような視点からいうと、適格性みたいなものが表示できないかという御意見だったけど、いま急には出ないかもしれませんが。

事務局

先ほど御説明いたしました資料に、基本的には、あそこに書きましたのは法律レベルのことでございまして、それに加えて通達が用意されておりまして、そこで一応一定の基準が示されているのではないかと私どもとしては思っておりますけれども、なお御指摘などがございましたら伺いたいと思っております。

委員

わかりました。

では、次の大きなテーマに移りたいと思いますが、相続税・贈与税の一体化の問題でございまして、これはある程度中間まとめの際に方向が出されましたが、さらにその後、事務局でいろいろ詰められておりますので、今日は十分時間を取りまして議論をいたしたいと思います。

では、まず御説明ください。

事務局

それでは、「基礎小20-5」という資料で御説明させていただきます。本日は大きく2つのことを御説明したいと思っておりまして、1つは、先日8月30日に本委員会におきまして、4項目でご覧いただいた一体化全体の仕組みでございますが、その後の検討の進捗を踏まえてバージョンアップしたものを御紹介申し上げたいと思っております。それから、2番目としまして、特に贈与段階の課税の仕組みについての考え方、これを今回御説明をさせていただきまして、御審議を賜ればと思っております。

目次を1枚飛ばしていただきまして、1ページ目でございます。このイメージ図でございますが、前回8月30日の本小委員会でご覧をいただきました一体化のポンチ絵を現行と比較したものでございます。御案内のことでございますが、現行が暦年の贈与税、取り切りの税でございますが、これに対しまして今回の一体化措置は、相続時にそれまでの贈与財産と相続財産を合算し、相続税額を計算する。そして、それまで支払った贈与税額を控除するという精算の仕組みを入れることにしております。そして、その贈与時の税負担をこれまでの暦年の贈与税よりも軽減する。こういうことでございます。

このような仕組みによりまして、資産移転時期の選択についての中立性を確保し、資産の移転の円滑化に資することが眼目ということにされているところでございます。

1枚おめくりいただきまして、2ページ目でございます。「相続時精算課税制度(仮称)案のポイント」という資料でございます。今回、仮称でございますが、いまの精算の仕組みにつきまして、このように名づけさせていただきました。前回8月30日のときに4項目の検討の方向として御審議いただいた内容につきまして、その後、法制局とも相談し検討が詰まってきたものを加え、あるいは前回口頭で申し上げてきたものを含めまして、ポイント式で書き下したものでございます。

なお、3ページ目、4ページ目に、さらにこれをもう少し詳しく、法律要綱的に書き下したものもございますけれども、お時間の関係もございますので、2ページを中心に御説明をさせていただきたいと思います。

前回の若干復習にもなってまいりますが、まず適用対象者でございます。高齢化の進展に伴う相続による資産移転時期の遅れに対処する趣旨等から、贈与者は満65歳以上の親。

それから、受贈者でございますが、次世代への資産移転の円滑化に資するということから、前回、次世代かつ将来贈与者の相続人になる人ということで、子である推定相続人に限定したいということを申し上げました。

前回、口頭でこの受贈者についても年齢要件というのは検討課題であると申し上げてきたのでございますが、やはり制度の趣旨から、贈与の受け手につきましても、最低資産を管理処分できる成人である必要があるのではないかと思われることから、今回、20歳以上ということを明示させていただいております。あわせて、代襲相続人等を書いておりますが、これは子が親より先に亡くなった場合に、孫等がこれに代わって民法上相続人になる。これは含むということを確認的に明示しているものでございます。人数の制限はございません。

それから、適用手続でございますけれども、ここは事務的な話でございますが、贈与の申告期限は翌年の3月15日までに選択の届をしていただきまして、最初にこの届をしていただけましたら、毎年改めて手続をしなくても、相続時まで適用が継続するというようなことを考えております。

それから、本制度の選択でございますが、受贈者である兄弟姉妹が別々に、また、贈与者である父、母ごとに選択可能。これは前回と変わってございません。

それから、これは1つこの制度のメリットになると思うわけでございますけれども、適用対象となる贈与財産等については、基本的に制限がない。贈与財産の種類、贈与期間、それから贈与金額、贈与回数には制限を設けないつもりでございます。

税額の計算等でございます。先ほどの精算の仕組みを再確認して書いてございますが、3つ目のポツで、確認的でございますが、相続税額は従来と同じ方式で計算をいたします。

それから、控除の仕組みは先ほど申し上げましたが、相続税額から控除し切れない贈与税相当額は還付もいたします。

それから、相続財産と合算する贈与財産の価額につきましては、贈与時の時価ということで考えております。

2枚おめくりいただきまして、今書き下した2ページのものの最後のところで、今後の検討事項ということで4ページでございますけれども、その末尾に「今後の検討事項」ということで、なお詰め切っていない部分を若干明示をさせていただいております。

先日、4項目目で適正な課税の確保策ということを申し上げました。例えば、ここにございますような除斥期間、いわゆる時効でございますけれども、今回、相続段階まで継続管理でございますので、その相続時までいわゆる時効を延ばせないかとか、それから、2つ目は、例えば今回、兄弟でもって片一方が選択するという場合があるわけでございますが、兄だけが選択している場合に弟にも申告内容を見せるような制度、こういうものが例えば必要ではないかというようなことで、なお検討しておりまして、今後まだ法制局等と詰めが残っておるということで、ここに御紹介をさせていただいております。

5ページ目でございます。ちょっと見にくくて申しわけありません。いつもご覧いただきます相続税の基本的仕組みでございます。2番目のテーマを御議論いただく前提といたしまして、ここで見ていただきたいのは4つございます。

まず、この流れ図の中で、一番上でございますけれども、相続税の計算は、相続人全体としてもらった遺産の総額からスタートするというのが1つ目のポイントでございます。

それから、2つ、3ついっていただきまして、基礎控除、それから、その左に「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」というのがございます。これが相続税の基礎控除ということでございまして、これが相続人みんなの分としてこれだけあるということでございます。

そして、3番目のポイントでございますが、分け方の操作による税額の操作等を防ぐために、実際にどのような分け方をしたかにはかかわらずに、まず法定相続分に分けて税率を適用する。これが3つ目のポイントでございます。

最後、4つ目のポイントでございますが、その下、ずっと流れを見ていただきますと、そこで出た税額の合計を実際に分けた割合で各人に分けまして、そのあと税額控除等で各人の事情に配慮する。こういうのが今の相続税の基本的な仕組みでございます。

6ページ目が、しからば、今ご覧いただきました相続税の計算の流れが今回の精算課税でどう変わるかということをポンチ絵風にお示ししたものでございます。前提といたしまして、左上に点線で囲っているところでございますが、夫婦子2人の家族で、例えばお父さんが遺産を残して亡くなったと。長男はお父さんから相続時精算課税制度を選択をしておりまして、生前贈与を2回受けていた。例えばそういうケースでございます。左下の方を見ていただきますと、長男への生前贈与が2回行われておりまして、長男はすでにその2回、贈与Aに対する納付税額a、贈与Bに係る納付税額bを納付している。こういうケースでございます。

左の上の方にいっていただきまして、ここが従来と若干変わるところでございますけれども、この相続時の計算のスタートといたしまして、相続が発生をいたしますと、いま長男が既にもらっております贈与財産A、B、それから、点線で切れ目をお示ししておりますけれども、各人がもらう相続財産、これを加えまして全体の財産総額が計算される。そして、先ほどご覧いただきましたものと同じような相続税の計算の流れがスタートをするわけでございます。

次のところに基礎控除とございます。3人でございますと、5,000万円+1,000万円×3の8,000万円という基礎控除を差し引きまして、その先は従来と同様に法定相続分で按分をし、税率を適用し、その税額のトータルを、これは実際にもらった割合、ここではα、β、γというようなことで書いてございますが、α対β対γで分ける。こういうことになるわけでございます。

そして、最後に、下のお尻のところで、長男にここで按分された税額が「α´」ということで示してございますが、ここから長男は既に払った贈与税額a、bを差し引いて、残りの税額を納めるということになります。引き切れなければ還付になるということでございます。

これをご覧いただきますと若干複雑に見えるわけでございますけれども、従来との違いは、右上の相続財産に贈与財産を足すというところと、右下で長男について、これまで支払った贈与税額を差し引くというところだけだということでございます。

そこで、大きな2つ目のテーマでございますけれども、贈与時の課税、従来の暦年の贈与税より軽減をするということでございますが、この考え方を今回少し私どもも整理をいたしましたので、私どもの考え方を御紹介申し上げまして、御議論をいただきたいと思うわけでございます。

1番に「基本的考え方」ということで、少し長々と書かせていただいております。ポイントは、相続時の精算で税制としての中立性は、先ほどご覧いただきましたように確保されております。また、いま見ていただきましたように、特定の相続人の贈与段階での贈与財産からは相続時の財産総額を、したがいまして、最終的な相続税の負担ということもなかなか推し測れないというのが、いまの仕組みを前提といたしますと出てくるわけでございまして、それを前提にいたしますと、贈与段階の贈与税は、いわば各年での概算払いにすぎませんで、その仕組みは簡素が望ましいのではないかというのがポイントでございます。

以下、少しこの文章長々としておりますが、読ませていただきます。

我が国の相続税は、各相続人等が相続又は遺贈により取得した財産の合計を一旦法定相続分で分割したと仮定し、相続税の総額を算出し、それを実際の遺産の取得額に応じて按分する計算の仕組みを採っております。いわゆる遺産取得課税と遺産課税方式の併用方式ということでございますが、そのために、相続時点でなければ、各相続人別の正確な納付税額は確定をいたしません。

相続時精算課税制度においては、このような我が国の相続税制度の特徴を踏まえまして、毎回の贈与時に精緻な贈与税の累積課税を行うことはせずに、相続時に限って累積課税を行うことで、次世代への資産移転時期の選択についての中立性を図ることとしているところでございます。

このように相続時精算課税制度は次世代への資産移転時期の選択についての中立性を、相続時の累積課税により実現しようとするものでございますので、贈与段階での贈与税負担自体を最終的な相続税の負担と一致をさせなくても、本制度の中立性に影響を与えるものではないと考えております。

そもそも特定の推定相続人が贈与段階で受けた贈与財産額から最終的な相続時の全体の財産額を推し測ることは困難である以上、贈与段階の税負担の設定に当たりまして、将来の相続時の税負担との一致を厳密に追求する必要性は乏しいと考えられます。

最終的に相続時に精算されることを前提とした贈与段階での贈与税は、各年での概算払いという性格を有するものでございますので、その仕組みは、むしろ簡素であることが望ましいというのが、この1枚目の結論でございます。

しからば、この基本的考え方を前提といたしまして、控除あるいは税率というような具体的仕組みをどう考えるかというのが、次に5つ の丸ということで書かせていただいているところでございます。

最初の丸でございますけれども、相続税の基礎控除により、先ほど見ていただきました例えば3人ですと8,000万円というところがあるわけですが、相続時の精算では一定額の財産までは非課税になることを考慮すれば、受贈者の申告を前提に、一定金額までの贈与について、贈与税を課税しない措置(特別措置等)を講ずることが適当ではないか、というのが1つ目の丸でございます。

少し敷衍いたしますと、相続時の負担とこの贈与段階での負担、やはりある程度バランスをとりませんと、例えば贈与段階で払い過ぎになりますと、納税者の方がこの制度を利用なさらないというところでございますし、あとでそこが払い過ぎということになれば、当然還付の手間もかかるということがあるわけでございます。

それから、ここで受贈者の申告を前提ということが書いてございます。現在、御案内のように、暦年の贈与税の110万円の基礎控除というのがございますが、その基礎控除はその金額までは申告を要しない控除でございます。それに対しまして本制度は、継続管理が前提でございますので、申告はしていただく必要があるであろうと。その上で、一定額までは税額をゼロにするということではないかと。これを、名前をどうするかはまだ確定しておりませんが、仮に「特別控除等」とここで書き表しているところでございます。

それから、2番目の丸でございますけれども、毎年比較的少額ずつの贈与を受ける方についても、公平にこの制度を利用していただくということを考えますと、これは若干管理上の負担は増加するわけでございますけれども、いまの非課税措置(特別控除等)は、限度額まで多年分にわたり利用できることとすべきではないかということでございます。

それから、3つ目でございますが、上記の非課税措置(特別控除等)については、定額部分と法定相続人比例部分からなる相続税の基礎控除の水準との関連を踏まえて設定すべきではないかと。

この定額分と法定相続比例部分、先ほどの5,000万円と1人当たり1,000万円という数字のことでございますけれども、御案内のとおり、相続税本体につきましても、今後、基礎控除の見直しという方向になってございますので、ここで特に確定数値では書いてございません。これは、先ほどご覧いただきましたように、相続人みんなのものでございまして、受贈者1人当たりのベースではないということに御留意をいただく必要があると思います。

しからば、これをどういうふうに分ける、あるいは、そこをどう考えるかということなのでございますけれども、そのうち法定相続人比例分、先ほど見ていただきました現行ですと、1,000万円の部分、これはいわば各人の持ち分とも言えるところでございますので、例えば  贈与時も1人当たり1,000万円というのは1つのベースの考え方としてあろうかと思います。

問題は、この定額の、現行でありますと5,000万円というところをどう考えるかということでございますけれども、例えば、現在平均法定相続人数というのは大体3.6人ぐらいでございますが、それはケースによってまちまちでございまして、10人おられるような場合もございます。したがって、先ほど1,000万円は1つの持ち分かなということがあるわけでございますけれども、ここから上乗せをするかどうか。あるいは、するとしてもどれくらいかというようなことが、具体的にはいろいろ御議論があって、いろいろなお考えがあるのではなかろうかということを考えるわけでございます。

それから、税率の方でございますが、基本的考え方にございますように、この制度における贈与時の税負担は概算払いという性格を有しますので、税率につきましてもかなり簡素に、一律または2段階程度の極力簡素な構造でいいのではないかということを考えております。

それから、2つ目でございますけれども、具体的な税率水準でございますが、これも概算払いという性格を踏まえまして、非課税措置の水準との適切な組み合わせ、具体的にはトレードオフの関係、例えば非課税措置が小さければ税率も低め、あるいは、非課税措置が大きければ税率は高め、というようなトレードオフの関係があるのではないか。その中で適切に設定する必要があるのではないかというようなことを考えております。

本日ここで考え方を詰めていただきますれば、今後それに沿って、なお私どももまた検討を詰めまして、最終的には、今後御検討いただきます相続税本体の税率、基礎控除の見直しをもにらみながら、具体的水準を固めてまいりたいと考えております。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

いま丁寧な御説明をいただきましたから、大体了解がついたと思いますが、しばらく時間を取りまして、今日の基本的なスキームについて、税調として承認できるかどうか、少し御議論いただきたいと思います。どうぞ。

委員

質問ですが、いわゆる精算課税制度ということに関しては、事細かな、かなり具体的な説明を受けたわけですが、1つ伺いたいことは、この制度はこの制度として、基本的に相続税と贈与税の一体化、あるいは税率構造をどうするのだということ、これは確認の意味もあるのですが、税率構造を同じにするということですか。

委員

今の質問にどうぞ。

事務局

この一体化の話ではなくて、相続税本体と贈与税本体という話でございますか。これはまだ今後の御議論だろうと思います。

委員

要するに、何が言いたいかというと、つまり、生前贈与を死後合算して、そこで改めてまた精算するということは、制度としてわかるわけですが、もう1つ、払い切りといいますか、つまり財産の所有者お父さんが、もう子供に財産は贈与する、分け与える。もうそこでおしまいにしたいと。つまり、自分が死んだあと、また贈与分が合算されて財産分与でどうのこうのということは煩わしいと。したがって、1回の贈与税の課税で終わりにしたいという要望というのも出てくるのではないかと思うわけです。要するに、こういう制度をつくって贈与しやすいようにする。それはわかるのですが、死んだあと、もう1回同じ相続税の計算を経なければいけないということを考えると、もう少しすっきりした方法、別の選択肢ができないものかというふうなことを希望される方が出てくる。

そこで問題なのですが、つまりこの精算制度を使えば、いろいろな恩典といいますか、猶予措置といいますか、それがつきますと。しかし、この制度を使わないと、贈与税はいまのままですよ、基礎控除も税率構造も今のままですよということなのか、それとも、相続税・贈与税というのを一体化して、生前贈与したものはそこでおしまいです、ただし基礎控除は110万円ぐらいにしておきます、少し相続段階よりも贈与段階の方が贈与税を重く負担していただきますと。あるいは相続税の税率に10%ぐらい付加税をつけて、それでおしまいという場合は、ちょっと余計払ってくださいというような方法もできるわけです。

基本的には、ですから精算方式以外は、あとは現状どおりということなのか、そこから一歩踏み込んで、払い切りということに関しても配慮した制度にするのか。それは一にかかって税率表がポイントになってくると思うわけですが、そこら辺は今の検討状況ではどうなっているのか、ちょっとお聞かせいただけますか。

事務局

まず、現在の相続税と贈与税の税率表でございますけれども、参考資料の11ページ目に載せてございます。

6月の基本方針の段階で、相続税の税率構造につきましては、最高税率は引下げの方向、それから、累進についてはある程度維持をするという方向性をお示しいただいていると思います。そして、おそらく相続税の最高税率をいじるに当たりましては、この贈与税につきましても、そのバランスをとってある程度見直しというのは、これは御議論として出てくるかと思いますが、その全体をどういうふうにするかというのは、まさにこれからの話ではないかと、この一体化と別に御議論いただく話ではないかと思っております。

事務局

ちょっと補足させていただきたいのですが、委員のお話、1つの新しい御提案だと思います。ただ、現在私どもがこの相続時精算制度の導入を検討し、ここまで何とか来た前提としては、やはり現行の通常の相続税と贈与税の相対関係というものは、基本的に維持する。だからこそ逆に生前贈与がしにくい。だから精算制度を導入して、生前贈与をしやすくするというのが、これまでの少なくとも基本的な考えなものですから、そういう意味では、逆に相続税と贈与税の関係を完全にまた新しい見直しをするということは、新しい問題提起ということで、これは次のまた大きな課題になるのではないかという気がいたします。

委員

ということは、払い切り1回制度というのは、応用問題としてもなかなか難しいということですね。

事務局

基本的には、前提としてはそういう、つまり贈与税の問題というのは、相続時に相続税をきちっと払ってもらいたいという大きな命題があって、今の厳しい贈与税があるわけですから、払い切りというのは、そういう今の前提からすると、今の110万円プラス今の贈与税の税率がまさに払い切りの制度なわけですから、根本的な問題提起だと思います。

委員

では、最後にどうぞ。

委員

新しい御提案というか、私はこの一体化の議論が始まったときから、そういう選択肢もイメージしていたわけです。いまおっしゃると、そんなことは最初から全然考えていないと。これはまた耳新しい、御提案というか、今度は反論でございまして、要するに、具体的に言いたいことは、今の相続税と贈与税の税率というのが、かなり贈与税が均一的になっているということで、これを一体化すると、例えば相続税だと、800万円までは10%であると。ところが、贈与税だと800万円が40%の限界税率がかかると。ここは800万円までは10%、基礎控除の問題があるから、実際の税負担はかなり高いとしても、これを払ってもらえればもういいですよと。つまり、相続段階でもう一回合算して、もう一回財産分与を遺族内で議論するということになると、せっかく作ったこの精算制度というものの利用度が少し削がれるのではないか。

新しい提案なら新しい提案でそれは結構なのですが、そういう選択肢も可能性がないものかどうか。もちろん、全く贈与税を相続税と同じにして切り得る人も同じだと言うつもりは全くありませんが、何かしらのハンディというか、余分な代償を求めるとしても、払い切り制度というのはやはりニーズが高いのではないかという前提のもとで、こういう御提案を申し上げます。

委員

それは高いでしょう。それは今後の検討課題にしましょう。

委員

今の委員からも話があったのですけど、これを見ると、相続税・贈与税と、あと生前贈与、この3本立てになるような気がしますね。それでいいわけですか。

委員

いいんですよ。旧制度は残すわけですから。

委員

残すわけですか。だから抜本改正のときには、相続税を最高税率を下げるというのだから、贈与税の方も下げて、税率構造をそろえるのがやはり筋ではないかなという気がしているのですが。

委員

これは制度をもうちょっと具体化するときによく考えておいていただきたいと思うのですが、要するに、一般の贈与税とこの概算相続税の税額を、私は、基礎控除1,000万円があるものだから、1,000万円はこちらの方の申告したものは取らないというような何か匂いもするのだけれども、そうすると、これは贈与にインセンティブを与えるというものが、逆に65歳になる前は、もう贈与はやらないというような、むしろ抑制の効果もあるから、その点はよくバランスを考えて。ただ、これはもっと基本的には、この間から出ている65歳という年齢制限をするかどうかという問題もあるので、そこまで含めて考えて設計してもらいたい。

委員

委員の御提案は、年齢のところと、それから65歳までやらないと、かえってインセンティブが欠けるから、問題だから、そこを考えろという御提案ですか。

委員

65歳になるまでは、贈与税でやると、かえって高い。

委員

110万円しかないですからね。

委員

だから65歳になるまでは、贈与は一切やらないという。

委員

それはしようがないのではないですか。多分、どっちが大きいかでしょうけどね。

委員

これはインセンティブというところが……。

委員

これはやってみなければわかりませんね。

委員

先ほどの法人税の研究開発のときにも申し上げようかと思ったのですけど、現在、抜本改革を進行中でございますし、「あるべき税制」をぜひとも構築したいということなのですけれども、先ほどもお話がありましたように、消費税の少なくとも本体、税率、これはこの中になかなか入ってこないということからして、抜本的な税制改革という姿はここでどこまでいけるかというのは、非常に心配があるところでございますけれども、そういった中におきましては、何か抜本的な基本的な税制改革的なものを探して、柱として立てる必要があるのではないか。

そういう意味におきましては、先ほどの研究開発投資、単なる今までの個別的な特別措置の要望にこたえたということでなくて、法人税の1つのシステムとしても位置づけるようにすれば、これが1つの今回の改革の「あるべき税制」の1つの筋道になる。

もう1つは、この相続税と贈与税の問題であろうかと思います。これはまさにシャウプ勧告にありました考え方でありますし、税制としてもかなり基本的な姿の形成になると思いますので、これはいろいろ問題はあるかもしれませんが、基本的には積極的に検討していただければということでございまして、これはかなり進んできているということで、結構なことだと思うわけでございます。

そこで、2つの点につきましてちょっとお聞きするというか、申し上げたいのですが、1つは、今お話のありました払い切りで済むような、できればそこまで行くようにして、利用を高めるということがいいのではないか。そこの1つのポイントは、やはり先ほどありました特別控除1,000万円はあると。ですから、最低は1,000万円があるのだろうなと思いますが、5,000万円をどう割り振るか。先ほど平均3.6人だというと、1人で1,500~1,600万円あるのかなと。そうすると、両方合わせると2,000万円ぐらいの数字が出るのか、あるいは3,000万円ぐらいの数字が出てくるのか、それによりましてかなりいろいろ影響されると思います。

もう1つは、もう相続人は子供1人だというときでも、やはり1,000万円なり2,000万円なのか。1人ならもう5,000万円のを使ってもいいわけですから、相当高くてもいいが、そういう推定相続人の数でいろいろ影響してくるというのは、制度としてはやはり複雑なのか。そこらは1つの検討課題。簡素につくるとすれば、1人いくらと決めざるを得ないのかなと思いますが、もしそれによってかなりな水準のものが実現できる、活用が多くなるということであれば、1つの検討の課題になると思いますが、難しいかなという感じはします。

また、この水準によって、現在あります贈与税の5分5乗、住宅資金に限られていますけれども、この特別控除の水準によっては、そういったものも吸収できて、むしろ簡素化できる面もあるかもしれないと思うわけでございます。

それから、もう1つ、第2番目の点は、これはあくまで相続税を計算するときのシステムでございますが、これが民法の相続と関係する点がないのかどうか。これは専門の先生方にもよく御相談して、検討しておく必要があるのではないか。例えば、兄貴はこの制度、弟は個別の贈与だというと、実際の相続になったときには、税法上の相続は全部兄貴にいくが、そこは遺留分の減殺請求とかそういうことと関係はないかとは思いますけれども、そこらも含めて法律的によく検討しておいて、いろいろな問題が起こらないように十分いろいろ考えておく必要があるのではないかという2点でございます。

委員

いまの後段の話で何かありますか。

事務局

実は先ほどの委員のお話とも全部つながった話なのですが、贈与の段階で完結するというのは、民法上あり得ないのです。ここが我々、実はいまの民法の最大のネックであったので、いわゆる法定相続人しかこの制度が適用できないのは、逆にいうと、遺留分減殺請求権を持った人にしか贈与は与えられないということなのです。ですから、逆にいえば、いまの110万円であれ何であれ、贈与税がそこで完結すると思っているのは税の世界だけであって、民法上はあくまでも遺留分減殺請求が永久について回るものですから、そういう意味ではそれを促進するような税制は、そもそも本当は民法上好ましくないということであります。

しかも、民法上は贈与税というものを前提というか、贈与というものは相続と一体として把握されておりますから、必ず遺留分減殺請求権のある人へ贈与をするのであれば、そこはいくらどういう形で贈与しても、相続段階でまたチャラにできるわけですから、それはどうぞ御勝手にと、こういう話に実は逆にいえばなるわけです。

ですから、そういう意味では、今回の改正というのは、民法を一番前提に置いて、遺留分減殺請求権を持った人で、しかも世代間のまたがる人、すなわち奥さんはこれは外しておりますから、その意味では、子供という法定相続人に対しては、極力民法で許されているわけですから、遺留分減殺請求ということで許されているので、低い税率で一応の仮の渡し方ができるようにしたい。こういう一応整理になっているわけです。

ですから、先ほどの委員が言われるように、従来型の贈与というのをもう少しというところは、実はこの贈与が、前も御説明させていただきましたとおり、いわゆる子供以外の第三者への贈与はそれで可能で、これは遺留分減殺請求対象者ではありませんから、これは渡してしまったら、渡し切りで取り返せないという話なので、この贈与は民法上の贈与とはちょっと違う。相続で補完されない贈与なものですから、それが一体になっているので、そういう贈与は贈与としてこれからも残していかざるを得ない。したがって、今回設けた贈与、いわゆる相続時精算課税というのをとる贈与は、本来、民法にのっとった処理の仕方、先ほど言われたシャウプが考えていた制度に極力近づけたいというものです。

そこで委員が言われた、本来は65歳というよりは、もっと遡れれば遡ったほうがいいということは、我々認識しているわけですが、しかしそこは執行のことも考えて、とりあえず、いわゆる老人という定義で65歳か70歳ということなので、一応65歳で始めさせていただきたいと、こういう考え方になっているということでございます。ちょっと補足でございますが。

事務局

それ以外に御質問の点に若干加えさせていただきますと、まず、遺留分違反の贈与があった場合というのは、いまもあるわけでございます。遺留分減殺請求を認められますと、そこはいまでも贈与税は遡って減額更正をしております。ですから、そこは今回の制度でもって新しくなる話ではなくて、いまの制度上もそういう救済はある。そこはあまり変わらないということがございます。

それから、2,000万円、3,000万円、そこら辺をどうするかということでございます。これは先ほども申し上げたところで、税率とのトレードオフということで御議論いただく対象なのかなと。

それから、やはり控除の額としては、確定数値のほうが執行的にはやりやすいだろうという考え方は持っております。

委員

今の関連ですか。では手短にお願いします。

委員

遺留分の問題というのは、遺留分でやってもらえばいいので、それは民法でやってもらえればいいので、遺留分の民法の規定を持ち出して、この制度しか使えませんというのは、少し強引すぎるような理屈という印象を受けるのだけれども。

事務局

今説明したかったのは、むしろ委員が最も望まれていた贈与段階で完結というのが、実は税の世界で完結しても、民法の問題が解決しないので、セットでパラレルで考えていただきたいという趣旨が一番大きいと思うのです。そこは最後はやはり調整せざるを得ない。つまり相続のときに調整するという話は、どっちにしても残るということだろうと思います。

委員

難しい問題がありそうですから……。何かコメントしてくれますか。

委員

民法と関連づけませんと、なかなか難しい問題があるというのは1つの例なのですけれども、御老人のひとり暮らしの方がいて、この制度ができて、じゃあ、子供にずいぶん贈与してしまおうと。してしまったあとで再婚したと。この奥さんは遺留分減殺請求の関係でいろいろ難しい問題が出てくるとか、あるいは、後妻さんとお子さんがいた場合に、奥さんの方は贈与の内容について開示を求められるかどうか、これは今後の制度のつくり方でしょうけれども、知らぬうちに全部子供の方へ贈与が行ってしまったとか、いろいろなことが出てきますから、やはり民法と相互連関でやっていかないと、なかなか厳しい問題もあるのかもしれないなと思うのです。民法の人から責められるという。

委員

まだ問題提起があろうかと思いますが、これはもう少しで締め切らないと、あと証券税制が残っていますから。

委員

この一体の制度ですけれども、大体よその国の贈与税の累積の考え方に比べると、65歳スタートということで非常に明確で、なおかつ簡素でよろしいと思うのですが、やはり気になるのは、スタートしてから現実の相続時点まで、65歳ですから10年、20年間があいておりまして、20年たったところで、いろいろなケースがありますけれども、仮にもう相続する遺産はなくなっている。残っていたのは各自がもらった財産であると。そこで相続税を納める計算をする段階になって、ある者は株をもらったのだけど、その株は会社がつぶれてゼロになっていたとか、不動産でも値上がりしたところと値下がりしたところで、みんな相続の段階になって、もう一回あいつはどのぐらいもらったかというのを計算しますので、さて、それが20年前のものですんなりいくのだろうかという問題が1つなんです。これはだけど、そういうふうに決めたのだからと言えばそれまでですけれども。

そこで、先ほど言われた遺留分減殺請求。さて、遺留分減殺請求というのは、相続のときの価額でやると思うのですけれども、こういう20年前のものにかかっていくような問題というのは出てくるのでしょうか。それとも、「これは遺産がないのだから、もうおしまいです」で対応できてしまうのか、いかがでしょうか。

委員

時価評価の問題ですね。どうぞ。

事務局

今の民法事例は、私も以前に調べたときのものなので、現在もそうかどうかというのはあるのですが、基本的には、それは必ず遺留分減殺請求は、今の相続税制においても、実はそのときの価額で現実はされております。これは本当は時価で評価し直さなければならないというのは、そのとおりではあるのですけれども、多分それを全部インフレートして、あるいはデフレートしてやるというのは、現実の訴訟その他ではなかなか難しくて、埼玉県とかそういうところのいくつかケースは当たって見ていたのですが、あまりそこは厳密にはされていない。

ただ、言われたとおり、今の制度のもとで生前で贈与してしまった分が、相続時においてその贈与した分しかない。それをいわゆる遺留分減殺請求で兄弟間で返せという事例は、実は結構ありまして、それはある意味で取り返すという事態になる。そうすると、先ほど説明したように、贈与分を返して、贈与税をその代わり返してあげて、それで調整しているという例は実はあるということでございます。

委員

時間もあれで、すでに論点は出ているので、問題はこれから言う問題が割り切れるのかどうか、そこを1点だけ指摘したいのですけれども、結局いろいろ工夫されて、累積課税はやらない、相続時に限って精算する。その結果、親が65歳から始めるにせよ、この税制が完結するのが65歳から死ぬまでですから、20年かかったり30年かかったりするという、すごい税になるわけですけれども、それに対して時間概念がないわけですよね。つまり早い話、65歳から親が生前贈与して、どういう形にせよ、時間概念がないというのは、現在価値にしたり割り引く概念がないわけですから、早い話、どういう格好で生前贈与に税金をかけても関係ないわけですよね。最終的に死ぬときに精算し直すわけですから。

そうすると、今問題を出されましたけど、結局、仮に親が生前贈与して20年後に死んで、そこで税をsettleする。20年前に払った税金も20年前の価額で評価するわけですよね。財産のほうも20年前だと。だから割り切って、まあいいやというのが1つ。その20年、30年、何年か知りませんけれども、超長期にわたるかもしれない税で、評価の問題がやはり残るだろう。

それと同じような問題は、今度は控除をどうするか。時間概念が全然ないわけですから、今相続の基礎控除は5,000万円+1,000万円×相続人ですよね。相続人の数を3人にすると、5,000万円を3で割って、あと1,000万円足して、これも現在全部あげてしまってもいいわけですよね。時間概念がないわけですから、これも全部非課税にしてもいいと。

経済学者が理屈を言っていると言われるかもしれませんけれども、やはり20年、30年にわたる税で、どうやって1年間の負担というのを評価するのだろう。いろいろな例があって、65歳で親が生前贈与して、親が全部あげてしまったとして、5年後に死ぬケース、10年後に死ぬケースで負担の額が変わってくるわけですよね。だから、そこは割り切りだという形でいけるのかどうかというのが……。

委員

割り切りなんです、今の議論は。どうぞ、何かありましたら。

事務局

新しい制度でございますから、いろいろな御議論はあると思うのですけれども、税の理屈のほうでいいますと、贈与段階で資産としては移転をしてございますので、そこからもらった人は、その効用といいますか、使用価値といいますか、そういうものを享受できるということをいうと、基本はもらったときの時価ではないかという税の面からの議論はございます。

それから、実務的にも実際にもらった資産は、相続のときまでにいろいろな形を変えてまいりますので、おそらく実務的にはとてもできないだろうと。

それで、国際的に少し調べてもおりますが、少なくとも今御議論のベースになっていますアメリカとかドイツ、フランスでも、なかなかこれは再評価的なことはできていないというふうに、私ども手元のまだ未確定な資料でございますけれども、そういうことでございますので、なかなか難しいのではないかと思っております。

委員

何かその辺の資料があったら、またお出しいただくということにしましょう。

委員

いまの話を聞いていて、この制度を導入すると、相続をめぐる悲喜劇というのは、いまでも我々の身近に山ほどあるわけだから、もっと複雑になるのかね、この話は。とにかく、いろいろな問題がありそうなんですよね。どうやらこれは5年、10年たってみなくてはわからないけど、この税制改革というのは、日本の親子関係に相当いろいろな影響を及ぼすに違いないね。ちょっと普通の税制改革とは質の違った影響を我々個人の生活に持ち込む可能性を持っているんですね。だから、これはえらい話に乗っかっちゃったなといま思っているんですよ。いや、本当にそれだけでかい話だと実は思っているんです。

ただ、しかしこの話は、そもそもはいろいろな産業界から、金を早く親父から息子に渡せと。住宅をつくっても何でもいいから、親父が死に金を持っていたってしようがないのだからという話から始まっている。それはまた実に単純な、時限の低いといえば低い、現実的といえば現実的な話だったんですよ。前の方の話は別にして、それぞれ僕も考えることがあるのだけど、私も65歳をとっくに過ぎているから。

だけど、それとは別に、さっき経産省のことが、IT投資について漠然たる効果というのを出したでしょう。お宅の方で調べてみて、これである想定を入れれば、4、5年の間にはこれだけ金が流れて、墓場に持っていく金が生きるという計算があるのなら、ちょっと時限が低すぎるんだよ、しかし税調だからしようがないから、その数字をいつか出してもらいたい。これは注文なんだ。

委員

まあ、アンケートをやるとか何かやりようがあるでしょう。どうぞ、何かあれば。

事務局

なかなか定量的には難しいと思いますけど、ちょっと勉強してみます。

委員

それでは、次の固まりが大きいので、移させていただきます。

その前に、本体のほうの相続税・贈与税、これはいずれにしても最高税率を引き下げるとか課税ベースを広げると、既にもう言っているわけですから、残った方の議論は、いずれ機会を見つけてやるということだけ予告しておきたいと思います。

では、金融・証券が残っております。これは特定口座のあたりが問題であり、例のプロジェクトチームができていろいろ検討されているようでございますので、この経過も含めまして、ごく短く御説明ください。

事務局

それでは、金融・証券税制につきまして、資料の上に「メモ」ということで1枚紙がございますので、金融・証券税制の改革本体の話と、特定口座の話と2つさせていただきたいと思います。

9月27日の基礎小委で、新しい証券税制、株式のキャピタルゲイン課税に対する批判の現状をお話をいたしました。メモの1にございますように、来年の1月から申告分離課税へ一本化予定でございまして、簡易な納税のために特定口座制度をつくったわけでございますけれども、そこに書いてございますように、多数の優遇措置があり複雑でわかりにくい。期限までの譲渡を優遇する特例措置が多く、売却促進につながりかねない。くだんの特定口座の使い勝手が悪い。申告の手間をできるだけ省くべきである。こういった批判がございまして、ここが現状の私どものいる足場でございます。したがいまして、申告に移行することが原則ではございますけれども、投資家の現状を踏まえますと、納税の簡便性を重視するという観点が今後の見直しにはやはり1つ大きなポイントになろうかと思っております。

それから、2番目に、この金融・証券税制についての基本的な視点ということで、4つの丸をつけてございますが、これは6月におまとめいただいた政府税調の基本方針にも書いてございますけれども、4つほどに整理できるかと思っております。

1つは、「貯蓄から投資への切り替え」という金融のあり方に対する政策的な要請でございます。

それから、金融商品間での中立性、制度の簡素化という視点もございます。

それから、個人投資家が何を考えているか。この間も内閣府調査では、税制優遇よりも値上り益や配当、あるいは預貯金以外への幅広い資産運用を重視して、株を買おうとしておられるというものがあるというふうにお伝えをいたしました。

さらに4つ目でございますが、「広く薄く負担を分かち合う」という税制改革の理念と整合的な金融・証券税制にしなければいけないという視点もあろうかと思います。

それで、「基礎小20-7」という資料をお開きいただきますと、1ページから3ページは、5月に基礎問題小委員会で御議論をいただいたときの主な御意見を整理してございますので、時間の関係で、御紹介したいのですが省略をさせていただきます。

それから、4ページが6月の基本方針の抜粋でございます。先ほど申し上げた基本的な視点が大体基本方針の中に盛り込まれたということでございます。

それから、5ページが、これは9月27日にも見ていただきましたが、「株式投資を行いたいと考える理由」、内閣府調査でございます。

それから、6ページが、ちょうどその時期に読売新聞が世論調査をされまして、「証券税制で大事なことは」ということについて、やはり税の仕組みを簡素化するという意見が一番多かったというものでございます。

それから、7ページは、この金融・証券税制の見直しに関する最近の総理や私どもの大臣の発言でございますけれども、総理も東証を視察に行かれた際に、来年度の税制改革に向けて、「貯蓄から投資へ」という環境を整えるために、簡素でわかりやすい税制としていきたいというふうに話をしておられます。

こうしたこれまでの推移を踏まえまして、先ほどのメモの右の方でございますが、検討課題ということで整理をさせていただきました。

1つは、金融商品間の課税の中立性の確保ということで、多様な金融商品間で中立的で簡素な税制にするというのがまず大きなテーマかと思います。「貯蓄から投資」という視点では、預貯金だけではなくて、上場株式や株式投資信託等、個人にとって多様な資産運用の機会を提供するという意味でも、税制をできるだけ中立・簡素にしていくということで、配当ですとか投信に対する課税の問題も含めて、検討をお願いしたいと思っております。

やや言葉がこなれておりませんが、この方向性として、「利子・配当・株式等譲渡益に対する課税の一体化」という表現をさせていただきましたが、基礎小でのこれまでの議論でも、金融課税をめぐりましては、二元的所得税ですとか、金融所得の一元化といった御指摘をいただいておりまして、税率の問題あるいは課税方式、損益通算の問題、それに関連いたしますが、納税者番号等の所得捕捉体制、こういったことについて、ぜひ御検討いただけるとありがたいなと思っております。

そういうことで、資料の8ページにお戻りをいただきますと、これまでの利子・配当・株式譲渡益課税の沿革をざくっと年表にしてございますけれども、利子所得、総合課税がいろいろな変遷を経まして、昭和63年の税制改正以降、源泉分離課税ということになっております。配当につきましては、総合課税がずっと続いておりまして、そこの40年というところを見ていただきますと、40年改正で、これは証券不況のあった年の改正でございますが、総合課税ではありますが、1銘柄年50万円未満等については、源泉分離選択を可能にし、1銘柄がさらに小さいいわゆる少額配当については、申告不要制度を入れたというのが40年の改正でございまして、それがそのままの形でいままで続いておるということでございます。

それから、株式の譲渡益については、総合課税をシャウプは指摘をしましたが、すぐに原則非課税化になりまして、これを課税化に直せたのが63年でございますけれども、その際に、御承知のように申告分離課税とみなし利益方式の源泉分離課税の選択ということになりました。有価証券取引税の廃止と同時に申告分離課税への一本化ということが決められましたが、一旦これが2年延長されたのち、昨年の秋にいまの形のような証券税制の改正が行われて、特定口座が創設をされたという経緯がございます。

9ページに進んでいただきますと、今の個人向けの金融商品の課税関係を簡単にポンチ絵にしてございますが、今見ていただきましたように、預貯金、公社債、公社債投資信託の収益は、利子所得として20%の源泉分離課税でございます。それから、公募型の株式投資信託の収益分配金は、配当所得でありますが、利子並みの20%源泉分離課税。それから上場株式の配当は、先ほどのように原則総合課税ということでございます。

それから、上場株式の譲渡益につきましては、下にございますが、来年の1月から20%の申告分離課税ということで、見ていただきますと、利子と株の譲渡益が、課税方式は違いますが、税率としては20%でそろっているということでございまして、メモの3つ目の丸に書いてございますけれども、配当課税について、40年以来の方式がずっと今日まで続いてきておるわけでございますけれども、利子ですとか株式譲渡益に対する課税等のバランスも考えながら、簡素化を図るといったような方向が1つの検討の方向ではないかと私どもは思っております。

それから、投資信託につきましては、今見ていただきましたように、株式投資信託は、収益の分配金については、配当ではありますが、利子並みに課税をされておるという問題がございます。それから、昨年金融小委でも御議論いただいたのですが、投資信託が解約とか償還が行われた際に生じる損失の課税上の扱いという大きな課題がございまして、これは個人所得課税において、譲渡損益ではない資産の損失をどのように考えるかという基本的な問題はございますけれども、こういった公募型の株式投資信託は、いわば個人になじみのあるリスク商品の1つでもございまして、そういった投資のリスクテイクへの中立性を確保する観点から、何らかの解決方策がないかなといったような問題意識を持っております。投資信託課税ということでメモに書かせていただいたのは、その点でございます。

それから、株式譲渡益課税とメモに書いてございますが、特定口座制度の改善等ということで、時間の関係ではしょらせていただいて恐縮ですが、もう1つの基礎小「20-8」という資料をご覧をいただきたいと思います。実務的な検討チームを設けて、証券界から意見を伺って、改善をいたしますということを前回御報告をいたしましたけれども、1ページをお開きいただきまして、今回、その第一弾として、一定程度の検討結果が出たものについて、今日この税調で御報告をした後に公表させていただいて、改善をしたいと思っております。

1ページ目の3つ目の丸にございますが、広範な要望項目のほとんどに前向きに対応したいと考えておりまして、中身、改善の項目自体は、2ページ以降に主なものを掲げてございますけれども、いずれも実務的・技術的で大変わかりにくくて恐縮でございますが、2つだけ御報告をしたいと思います。

1つは、2ページ目のまず最初の箱でございますが、特定口座制度の仕組みそのものの簡素化ということで、源泉徴収の方法の見直しをしたいと思っております。真ん中の箱にございますが、申告が不要になると言われて、源泉徴収選択の特定口座を利用しようとしたけれども、結局、譲渡益に源泉徴収はされますが、譲渡損が残った場合には、還付申告をしなければいけないということで、源泉徴収ありを選んだのに、結局、申告しなければいけないという投資家の御不満があるということでございますので、右側にございますように、源泉徴収税額を毎月国庫納付する現行の仕組みを改めまして、年間分を一括して国庫納付する仕組みとして、還付のために申告をする必要がない形に変えたいと思っております。投資家の実状を踏まえて、申告の手間の省ける特定口座にしたいという点が1つでございます。これは法律改正でさせていただきます。

もう1つは、3ページにお進みをいただいて、これも前回ちょっと例示で御紹介をしましたが、特定口座に入れられる株が非常にわかりにくい。煩雑で不合理であるという経過措置を簡素化したいということで、バブル期に高値で購入した株式を特定口座に移管しようとしましても、一律に昨年の10月1日の終値の80%のみなし取得価額が適用されるため、バブルで高値で買ったやつをそれで入れると、かえって損してしまうという御批判があるということで、一律にみなし取得価額を適用する現行制度を改めまして、保護預り口座から実額で移管することを可能としたいと思っております。

これにあわせまして2番目の箱でございますが、特定口座への株式移管期間を投資家が少しゆっくり判断をして、この経過措置が適用できるように1年延長したいと思っておりまして、平成15年中の開設の際にも、保護預り口座からの株式移管ができるようにするということでございます。

その他、実務的、技術的な要望がいろいろございましたが、基本的には現段階のものはなるべく受け入れるということで、さらに今後ともいろいろな要望が出てまいりましたら、15年度の税制改正過程において引き続きさらなる見直しを行うという方針で臨みたいと考えております。

これが特定口座の御報告でございまして、メモに戻っていただきまして、検討課題のその他の上の最後の丸、下から2番目の丸でありますが、株式譲渡益課税については、この特定口座制度の改善のほかにも、複雑怪奇と言われております多数の優遇措置をどのように簡素化するかという課題もあろうかと思います。これについても、私ども年末に向けていろいろと考えなければいけないなと思っておりますが、できましたら基礎小の方では、ここの利子・配当・株式譲渡益に対する課税の一体化という言葉を使わせてもらっておりますが、そういった方向、あるいは配当課税の問題、投資信託課税の問題等を中心に御議論をいただけるとありがたいなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

委員

ありがとうございました。

島田さんのメモが出ております。資料の最後に1枚紙がついておりますから、あとでお目通しください。

では、どうぞ。

事務局

先般、個人住民税における特定口座の扱いについてお話がございましたので、簡単に御説明させていただきたいと思います。

今ほどの資料の7ページをご覧いただきたいと存じます。投資家の方が特定口座を選ばれました場合、証券会社の中で特定口座ごとに所得金額を計算して、そして、所得税の場合ですと15%の課税ということになりますが、個人住民税の場合ですと、源泉徴収口座を選ばれた方は、証券会社から市町村に1月末までに上場株式等取引報告書というのが提出されることとなっております。これには収入とか費用とか差引額などが記載されておりますし、また、投資家の方がどのような徴収方法を選ばれるかという意向が記載されております。

そのほかに、(注)のところに書いてございますけれども、一定の申告義務免除者、あるいは確定申告書を出されて申告書を提出されたものとみなされた者を除きまして、3月15日までに申告をしていただいて、それらの情報をもとに市町村で税額を計算して、そして、普通徴収あるいは特別徴収という形で課税されるというものでございます。

個人住民税における特定口座の流れは以上でございます。

委員

ありがとうございました。

残った時間が十数分しかございませんが、いまの御説明につきまして、御質問なり改めて何か御意見がありましたらどうぞ。

委員

この新しい証券税制が複雑でわかりにくい、それで株価下落の原因であると、そういうことがもっぱら言われているわけですが、私は株を持っていないので、複雑なのかどうなのか、実地としては知らないのですけど、ただ、どうも本当に複雑だから投資家の株離れが起きているのかどうかという点については、いろいろな説がありまして、例えば主婦がこの方式に応じていくと、結局、人的控除、扶養控除につながっていくという、そこが一番恐いところだということと、それから、そうこうしているうちに資金の源泉に話がいってしまう。そのあたりが一番恐いのであって、別に複雑かどうかというのは、実は大した問題ではないというようなことかなと私は思っているのです。

もともとは申告納税制度、それから総合課税の方向というのは正しいと思うので、それを今のこの時点で強行するというか、やった場合に、いろいろなことを言われて、その都度、いろいろな細かい改善をするというようなことをするのが得策なのか、それとも、こういう株価の大幅下落というこの嵐が通り過ぎるのを待って、もう一度持ち出すというやり方がいいのか。その辺はちょっと、これは政治のレベルの話かもしれませんが、どうなのかなというちょっと疑問を持っているので、その辺どんなものでしょうか、という妙な発言になってしまいましたけれども。

委員

わかりました。

委員

ちょっと公社債投信についてだけの質問なのですけれども、これは譲渡益は非課税であり、譲渡損はないものとみなすとなっていますが、これはどういう理屈でこうなっているのでしょうか。

もう1点は、つかぬことを伺いますが、銀行に預けたお金で損をする。つまりペイオフか何かにあった場合。こういう損失というのは、税法上個人にどういう扱いになるのか、その2点をお聞きしたいとまず思います。

事務局

9ページの資料でございますが、公社債投信ということで御指摘がございましたけれども、公社債も同じでございまして、公社債、公社債投資信託の譲渡益は、現在、非課税という扱いに所得税法上なっておりまして、譲渡益が非課税となっておる反射として、譲渡損もないものとみなすというのが所得税の扱いでございます。預金を銀行にされておられる場合に、例えばペイオフがあって、1,000万円以上が返ってこなかったという場合の、いわば投資なりをされた個人の元本の損失というのは、所得税上は、それは個人がいわば所得を自ら消費をされた処分でございまして、それは生計費的な考え方で、元本の損失というのは、所得の計算上控除しないというのが、いまの個人所得税の考え方でございます。

委員

ペイオフは所得の消費とみなす?

事務局

所得の処分ということです。

委員

それでは、今の関連で。

委員

関連でどうぞ。

委員

ちょっと銀行に預けるのが消費かどうかは疑問なのですけれども。ということであるとすれば、投信も公社債も自己責任でやっているわけですから、譲渡損はないものとみなすということで、いまのでいいのではないかと思います。いまは、つまり下がっているからこういう声が強いわけですよね。預金より危険なこういう投信、信託などにお金を預けて損するというのは、これは仕方ないなという素人考えというか……。

委員

時間がないから、非常に具体的で小さな話と大きな話をしたいのですけれども、事務局のほうから特定口座の見直しの話があって、その最初のほうには、要するに使い勝手が悪いと。間違っていたらあとで御指摘いただきたいのですけれども、毎月源泉徴収をするので、その年に譲渡損が出たときは引いてくれないと。したがって、1年間証券会社が投資家のかわりに何か面倒をみてくれるということですよね、大雑把に言えば。

そうすると、何かある意味で申告の制度に真っ向から逆行するような感じで、証券会社が1年間個人のかわりに源泉徴収をやって、1年最後終わったときに何かやってくれる。そうすると、消費税のときのある意味で管理で、3か月が長いのか、短いのかという話をしていますよね。1か月ごとに納税するかどうか。この場合、源泉徴収業者が1年間お金を持っているわけですよね。したがって、僕が言いたいのは、結局、こういう形で議論していくと、袋小路にはまってしまう。したがって、最も言いたいことは、今日のメモのほうですけれども、やはり金融所得というのをある1つの大きなくくりにして、そして、それは本当にきれいに切り離して税をかける。しかし、そこは個人がみんなきちんと確定申告してくださいよというふうな方向に行くような流れが僕は必要だと。何かこういうのをつくっていくと、移行経済ではないのですけれども、隘路にはまってしまうのではないかと。それを危惧します。

委員

それは御意見でいいですね。

委員

もちろんいいです。

委員

その方向にいま行っているはずで、事務局、何かありますか。賛成?

事務局

賛成です。

委員

この問題は、金融システムの機能回復と直接関係があるわけでありまして、金融界とか財界などは、金融システムの機能回復のために、キャピタルゲイン課税について1,000万円非課税にしろとか、そういう要望を出してきているわけですね。金融システムの機能回復は緊急課題なのですけれども、金融界とか財界の要望は、あまりにも目先にとらわれた要望だと思うわけですね。

いずれにしても、この問題の緊急性から見て、利子配当・株式譲渡益課税の一体化というのは、やはり早急に進める必要がある。来年1月からでもやらないと、これはもたないと思うわけです。また、そうすることによって、投資優遇の目的が明確化するということになると思いますし、本格的な構造改革を推進する税制ともマッチすると思うわけですね。これはやはりやらないといけない。本当に緊急性を要する。それをやって、二元的所得税論、金融所得の一体化議論に結びつけていく必要があると思います。

委員

いま世界中が株が下がっていますから、この際、日本は株式市場からは金を取らない、すべてゼロであるというようなことをやれば、貯蓄から投資に切り替えるチャンスになるのではないかとか、ふと考えたのですが、8ページの表なんかを見ると、やはりゼロにしようが、有取税をなくすれば日本の証券界は活性化するとか何とか、証券界のいろいろな話を一々聞いていると、すべて嘘であるということは歴然としている歴史でありますので、要するに、株というのは値上がりしなければ流行るわけはないのであって、何か税制でコチャコチャやっても変わらないということを考えますと、先ほどの委員と同じことにはなるのですが、そういった目先のしょうもない優遇措置とか何とかは政治家に任せて、そういうのは関知しないで、やはりどうやって税金を集めるかというところにだけ集中して、この一体化というか、そこのところだけ税調では考えていくのがよろしいのではないでしょうか。

委員

結局、諸悪の根源はやはり特定口座にあって、財務省が片棒を担いだのか、それとも証券会社が利用したのかわからないですけど、コマーシャルを見ると、まず、「特定口座が来年度から導入されます。御相談ください」と出てきて、それがまず大混乱のもとなんですね。これで要は長期には8割のあれが今度廃止されて、実額でいいということになったのですが、やはりこの特定口座なるものが、どっちが利用したのか、されたのかは知らないけど、その前には実額でわからないから一回売っておきなさいというので、必ず証券会社の回転売買のえさにされちゃっているんですね。

こういうことをやるときは、前から証券税制で申し上げているのだけど、もっとよくPRを事前にしないと、一般の人はみんな混乱するんですよ。特定口座へ入れないと、罰金を取られるような話みたいに証券会社は脅かすしね。だから、これはこういうことを教訓にして、もっとちゃんとしてやってもらいたいというのが第1点。

それから、前回も質問したのですが、例えばおじいさん、おばあさんが死んで、株券が出てきて、取得日は大体名義書き替えを出せば載っていますね。その場合、例えばその頃の新聞を見て、図書館か何かで調べて、その月の終値か何かを持っていけば、証明として取得価額として認めてくれるのかどうか。その点ちょっとお伺いしたいと思います。

事務局

その点についても今回要望がございまして、実額で特定口座に入れていいということにしたこととの兼ね合いで、国税庁のほうで取得価額の把握の仕方について、明確なガイドラインを出すということになっております。いま御指摘がありましたように、名義書き替えがあったときには、株券の裏面に書いてあればそれでもよろしいですし、そういうものがない場合でも、本人の例えば日記帳とか預金通帳、そういった手控えで証明ができるということであればそれでもいいということで、一度国税庁のほうで考え方をお示ししましたけれども、改めて明確なガイドラインを出すということでいま作業をしております。

委員

それでは、最後締めてください。

委員

今の委員のお話と同じでございますけれども、事柄は簡単なんでございますね。売った値段と買った値段と比べて、儲かっていれば原則20%いただきますというだけなのですけど、それを親切心を持って、特定口座で証券会社が代行してあげますという制度をつくる。それから、取得価額がわからないから、みなし取得価額制度というのを作ってあげますという、まさに親切心が逆に出てしまって、特定口座に入らないと、みなし取得価額が使えないのだよとか、いろいろPR不足の点があると思いますから、おっしゃるようにPRが足らなかったのかな。ですから、そこはPRとともに、さらによく使い勝手のいいように詰めることが必要ではないかと思うわけでございます。

ついでに、先ほどの配当課税の話がありました。1銘柄10万円というのが昭和40年代に決まった。その後いろいろ合併があったり、持株会社ができたりしていますから、ここは当然見直していい方向ではないかと思うわけでございます。

ただ、配当については配当控除というのがある。配当控除を使えば、相当な金額までは税金が返ってくるという制度もありますから、すべて利子並みというわけにはどうもいかない。ですから、申告不要の範囲をかなり広げて、実質的に20%で大体個人は済むというような大雑把な方向がいいのではないかと思うわけでございます。

委員

その方向で考えられているし、二重課税の調整のところを残すのだろうと思います。

まだ議論がいくつかあるかもしれませんが、時間も過ぎておりますので、よろしゅうございますか。

委員

申告不要反対。

委員

申告不要反対という声だけテイクノートしておきます。

それでは、次回以降の予定をお伝えいたしまして、今日は散会にいたしたいと思いますが、まず最初は、次回金曜日にやる予定の基礎問題小委員会は1日繰り上げまして、10月17日、木曜日の午前中、10時から12時までになりました。この点をまず最初に日程変更してください。

議題は、消費税の免税点制度等の話、外形の話、土地税制、固定も入りますが、それについて御議論いただくとともに、本日の研究開発あるいは設備投資税制の議論ということが大体煮詰まってきまして、今日は積極的にやれという御議論もあったわけでありますが、それを受けて、一応対外的に、今非常にこの点は問題になっておりますので、私が少しメモにしたものを出して、一応御議論いただいて、それを会長談話というような形で議論を煮詰めたいと思っています。そういう形のものをもう1つ出したいと考えております。

それから、18日午前中予定しておりました基礎小はなくなったのですが、午後総会がございます。これは2時から4時まででございますので、これまで3回やりました基礎問題小委員会の議論を報告して、皆さんにそれを補足してもらおうと思いますので、ぜひ御参集いただけたらと思います。

それから、次々回の基礎小は10月22日、火曜日でありまして、実はこの日5時から例の「若者集会」がありますので、その関係もありまして、13時から1時間早めまして開催する予定でありますので、ちょっとあちこちしておりますが、ぜひその辺は混乱のないようにお願いします。

今事務局からございましたが、18日、非常に盛りだくさんなテーマなので、16時と申しましたが、2時間半、16時30分まであるかもしれないということを、予め御予定ください。

最後に、「会議終了後返却」という例のメモ、これをお残しください。

では、どうも今日は長時間ありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。