第18回基礎問題小委員会 議事録
平成14年9月27日開催
〇委員
それでは、時間になりました。18回目になりますが、基礎問題小委員会を開催いたします。
今日の記事の予定は、予めお渡ししてございます一般的な総論的な問題と、個人所得課税の少し立ち入った議論をしたいと思います。
冒頭、少し時間をかりまして、経済財政諮問会議に出た経過を私のほうから説明をさせていただきます。
9月20日に、5月30日以来時がたっていたのですが出席いたしまして、税制改革について、当方が5月30日以来何をやったかということを踏まえて議論をしてまいりました。当日はマクロ的な動向、規制緩和、金融の問題、そして税制と、4つ盛りだくさんにテーマがあったものですから、税制関係は30分でありましたが、それでもかなりいろいろな形の議論はでき、諮問会議と税調の考えているところの違いあたりは、かなりクリアカットになったのではないかと思います。
そこで、いま申し上げましたように、まず経過説明。これは5月30日以降、それから6月7日、14日、いろいろな形で首相から指示があったり、我々が基本方針を出したり、あるいは対話集会を重ねたり、そういうことを簡単に説明いたしました。
そこで、再度強調したことは、「あるべき税制」の基本的な意義であり、10年、15年先を見据えた、いうなればそういうものであって、景気対策的なものもその中に含み得るけれども、我々の関心はもっぱらその先にあると。
そこで、もう1点そういうことをベースにいたしまして、いま言われております先行減税、そのあとの後年度増税の組み合わせについて、いろいろ言われている中で、税調はこう考えるという形の議論をいたしてまいりました。ここが諮問会議の意見とは分かれているところでございまして、諮問会議との意見は2つで大きく違っていたと思います。
1つは、先行減税の中身は法人税しかないという認識であり、諮問会議は実効税率を下げろと言い、我々は研究開発投資がいいだろうという形で、そこはそういう分かれでありましたが、やはり一番私が気になりましたのは、先行減税のあとの減税財源をどうするかというところで、諮問会議は、あとから出てくるであろう自然増収あるいは歳出削減を充て、足りなければ改めて増税を考える。こういう三段構えで行っておりますが、私は、自然増収とか歳出カットというのは全く不確定な税源であって、そういうものを組み込んだ形の増減税一体の先行減税・後年度増税の組み合わせはおかしいということは、はっきり申し上げました。
それから、もう1点規模については、新聞紙上、1兆円になったり、2兆円になったり、2.5兆円になったり、何か日替わり定食みたいに変わっている動きが出ておりますけれども、私ははっきりやはり政治家の責任で規模等々、それから組み合わせ等々は考えるべきであるということを申し上げました。したがって、税調はそれを受けて、中身の制度設計をする。その規模等々については、政治家の責任でやるべきであると。
それを受けてか、最後のとりまとめで経済財政政策担当大臣は、それでは諮問会議でやりましょうなんていう話になって、そっちに話がいってしまったのですが、ちょっとそれと私の言っていることは違うので、抗議をしようかと思ったけど時間切れになりまして、そこは勝手に言い合ったという形になったかもしれません。
そういうわけで、経過の説明と、それから現に行われております政策論議の中身について、税調の立場を説明してまいりました。それに対していろいろ議論はございましたし、当然のこと、賛成・反対もあったということでありますが、正直言って、実効税率の下げを主張しているのは民間の4議員であり、経産省の大臣も含めそれ以外の方々は、研究開発投資、設備投資減税のほうが、いまの段階では有効な手立てではないかということで、話はまとまってきつつあるかと思います。財務大臣もその辺は精力的に絶えず議論をリードされておりましたので、そこに話は行き着くかなと思っております。これが簡単な説明でございます。
あと、今後の説明という形で、11月目処、あるいは財務大臣は10月いっぱいにというようなことをおっしゃっていましたが、その辺を目処に我々がいま固めているということも申し上げてまいりました。
諮問会議等々について、何か情報という意味で御質問等々あれば、お答えいたしますが、よろしゅうございますか。
それでは、今日の本論に入りたいと思いますが、今日の本論は、来年度税制改革に向けてのいうなれば今日はスタートでございますので、総論的な議論をまとめたいと考えております。6月14日に「あるべき税制」に向けての基本方針を出し、9月3日には「小泉5項目」を受けて「中間整理」をしたという段取りでございます。
今後は、いま申し上げたように、多分11月の中旬になりますか、それを目処に15年度税制改革の中身を詰めたいと考えておりまして、今後、週1回ぐらいの割合で、少なくとも10月いっぱいは続くということになろうかと思います。
ただ、途中で「小泉5項目」というのが出てきたものですから、あれを軸にして「中間整理」をつくったという意味において、6月の基本方針とは何か離れてしまったのではないかということをお考えの方もいらっしゃいますので、まず冒頭、「あるべき税制」の我々の基本的なロングレンジの話と、来年度税制改革の項目と、これがどういうふうな形でどうミックスしているのかという点を、まず最初に事務局のほうから御説明いただきまして、少し時間をたっぷり取りまして、このあるべき姿論と来年度税制改革のいうなれば関係を少し整理しておいたほうがいいと思います。
では、お願いします。
〇事務局
基礎小「18-1」というA3判の大きい資料でございます。これをお開きいただきたいと思います。ただいま会長からお話がございましたように、11月中旬を目途としましてとりまとめていただく。それに向けまして、15年度の税制改正についての本格的な御論議、御審議を始められるに当たりまして、すでに6月に出していただいた紙の整理でございますので、あくまで念のためという意味におきまして、この基本方針を、網羅的ではないのですが、いわば工程表的なものに整理いたしましたので、ご覧いただきたいと思います。
構成といたしましては、一番左側から「考え方」「当面の課題」「その後の課題」で、個人所得税、法人税、消費税、それぞれの税につきまして、この3つに列を分けまして整理をしておるわけでございます。
1番目の「考え方」、これは基本方針におきましては、「基本的な考え方」というような節というか部分で触れられているところ、これを抜粋しております。
それから、「当面の課題」、これは総理指示の5項目を中心に、15年度の税制改革において検討していただいてきている、ないしはこれからしていただく、そういう課題を整理しております。
3つ目の「その後の課題」、これはいま申し上げた当面の課題を仕上げた上で、一番右に書いてございます経済社会の活性化に資するあるべき税制・税体系に向けてのさらに検討、具体化していく、そういう課題という分け方をしております。
時間の関係もございますので、多少はしょりまして御説明申し上げます。
まず、1つ目の個人所得課税でございます。ここに書いてございますように、考え方としましては、基幹税としての機能回復、同時に経済社会の構造変化への対応、例のライフスタイル等々の御議論でございます。こういう基本的な考え方を背景に、当面の課題といたしまして、人的控除の簡素化・集約化。配偶者特別控除、特定扶養者控除等、これによりまして3控除に簡素化・集約していこうと。こういう作業を踏まえ、その後の課題ということで、人的控除の基本構造、基礎控除、配偶者控除、それから扶養控除、こういったものについてのさらなる見直しでありますとか、公的年金等控除を含め高齢者に関する控除、さらには税率控除、こういった課題がその後に残されておると。
次の法人税でございますが、国際的に整合性がとれること。それから中立的な税制が基本である。さらには構造改革等のために政策措置は集中・重点化する。こういう考え方を背景に、まず当面の課題として、21世紀をリードする戦略的分野への集中・重点化。研究開発、設備投資と書いてございます。その後残ります課題として、今後の法人税率の水準ということで、租税負担の問題、税体系の問題、先進諸国とのバランス、こういう[1][2][3]の視点が書いてございます。さらには非営利法人等をはじめとするさまざまな課題が残っております。
消費税は、考え方といたしましては、世代間の公平等々の観点から、極めて重要な税であると。こういった考え方のもとに、中小企業者に対する特例措置の抜本的な改革ということで、免税点のお話、それから簡易課税制度、こういったことによりまして、制度に対する国民の信頼性、制度の透明性を向上させる。その後の課題といたしまして、社会保障支出の増大や財政構造改革を展望し、今後税率を引き上げ、役割を高めていく必要がある。また同時にインボイス制度の検討もしなければならない。
以上、これら3つ、国税の税体系で申しますと、基幹税となっている税につきまして、当面の課題とその後の課題という整理となっておるわけでございます。
次に、相続税・贈与税でございます。「考え方」といたしましては、ここに書いてありますように、次世代への資産移転の時期のシフト等の状況への対応ということで、これは分かれておりませんが、15年度検討しております中身として、相続税・贈与税の一体化措置の導入、最高税率、基礎控除のあり方。
次の法人事業税(外形標準課税)でございますが、これもここに書いてある考え方は基本方針に述べられておりまして、税負担の公平性、応益課税、地方分権を支える基幹税の安定化等々の考え方のもとに、先だっての中間整理でも述べられておりますように、「内容について必要な検討を加え、その意義の更なる周知に努め、早急に導入」、こういう記述をちょうだいしております。
これら5つの税ですが、これが総理御指示の5項目に関連した項目でございます。さらに加えまして、時間の関係で文言自体の紹介は割愛いたしますが、固定資産税、土地税制、金融・証券税制、これらにつきましても、ここに要約してある考え方と申しますか、検討の方向性、これが基本方針に書かれております。
こうした事項も含めまして、15年度税制改革として御審議いただく諸課題は、もう一度繰り返しになりますが、一番右側にございますあるべき税制・税体系、それによる経済社会の活性化という、そういうものに向けての取り組みの、若干キャッチフレーズ的に申しますと、第一歩ということで位置づけられるのではないかと考えております。
以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。
時間の関係ということで簡潔に御説明いただきましたが、これから30分ぐらい時間を取りたいのです。そこで、この箱に書いてある中身、あるいは全体像、あるいは今後の議論の進め方、いずれにいたしましても、今日、重要なこれからの第一歩を踏み出すわけでありますから、どうか多方面にわたって御議論をいただきたいと、このように考えております。まとめますと、あるべき税制、税体系、これからどう進めるかということと、来年度税制改革をどういうふうにその中で位置づけていこうかといったあたりの兼ね合いの問題も含めて御議論いただきたいと思います。どうぞ。
これ全体はわかるのですけれども、端的にいま経済界なり何なりの一番の最大課題は、不良債権の処理をどうするのだ、それに税制上問題があるのかないのか、その辺を一回議論しないでいいのだろうかということ。
私はむしろ質問で、あとでまた法人税の時間がありますけれども、どうも銀行や何かの連中に聞いていると、要するに不良債権の定義自体が、金融庁なりと税で違っているのではないかと。確かに税の立場からいえば、破産なり更生まで進まないと償却はさせないのでしょうけれども、一方では積立金をどうするとか、オフバランスだとか、あるいは時価評価主義だとか、そういうような企業サイドの流れというのですか、金融そのものの流れと税が果たして対応しているのかどうか、その辺で何かうまい手があるのかどうか、そういうものを打ち出すことが1つの現在の経済情勢に対する税調としての対応になるのではないか。これ全体とは別にですね。そういうような、若干時事的なものも取り上げる必要があるのではないか。
〇委員
ある意味では「その他」というところですな。
〇委員
それで、「その他」みたいな話ばかりで申しわけないのですが、具体的に来年度の税制改正をするときに、今までの議論で、各税制の歪みなり何なりというのは、もうかなり摘出してあるんですね。そうではなくて、何を取るのだというときには、所得課税の税負担と法人課税の税負担と、どちらがどういうような、過去の経緯も含めて、どの程度進んでいるのか。いわゆる空洞化と言われるのがどっちの部門で多いのか。そうしないと、択一的にどっちに重点をかけるという議論ができないのではないか。それから、国民のほうもやはりそれを最後は関心を持つのだと思うのです。そういうような議論が入ってしかるべきではないかと思います。
〇委員
基幹税は今のところ3つあると事務局は説明されましたけど、今のお話は、所得税と法人税、それから消費税も加えていいのでしょうね。要するに、どこを最初議論するかという優先度を決めろということですね。わかりました。
〇委員
だから資料や何かも、今回はもちろんいいのですが、法人のときには法人課税と所得課税を並べた表を出していただくと、その選択がわかりやすいのでしょうね。
〇委員
前段の不良債権処理と税制というあたりで、この「その他」なんていう項目に何も入っていませんから、いずれやってもいいのですけれども、ただ、主税局のほうとしては、それに対してこれまでフォローしてこられましたか。それとも、何か議論をこれから発展させるような形のものをお持ちですか。何かあれば御説明いただければと思います。なければ別によろしいですが。
〇事務局
実はこれはもう3、4年前からずっと、国税庁、主税局入りまして、金融当局及び党のほうとも議論してまいりました。執行として不良債権を極力税制上も償却できる方向で直して、通達を明確にいたしました。ただ、最後残るのが、債権債務を残したまま税制上償却をしてしまうかどうか。これは債権が残った状態なものですから、よく言う「ナニワ金融道」のように、それで債権放棄したままあとでやるというのが出てくるのを一体どう防ぐのか。このあたりが実は税制上処理していないけども、ということは逆にいえば債権は放棄したまま持っているけど、まさに委員の言われるとおり、企業会計上は落としてしまうというものが実はあるわけで、そのときは企業会計上、もし回収できるとどうなるかというと、雑益になってくるわけでございます。
ところが、残念ながら、その雑益をきちっと計上していただければよろしいのですが、必ずしもその処理を一律全部いいよとしてしまいますと、処理上は、あとで何の税制上もそこに債権債務が残っていないものですから、そうすると、返ってきた雑益を把握できないという問題も実は別途あります。
ですから、現実は御存じのとおり、いま委員の言われたところは税効果会計で実は補填をしておりまして、いわゆる繰延税金資産という形で、その分は将来税金が取り戻せるという前提で、その部分を自己資金の中に積むという格好で補填できておるわけです。ですから、ある意味では金融機関の資産勘定には、その払った分が乗っかってもらう形で処理されているという、税金の前払いという形で処理をされているということかと思います。
〇委員
ただ最近、御承知のとおり、税効果会計自体の評価というのがかなり問題にされているようですから。
〇事務局
これは全く認めます。ただ、これはむしろ企業会計と税務会計の違いというのを、今後どういうふうにしていくのか。特に日本の場合には確定決算主義を完全に捨てていないものですから、そのあたりをいわば埋めるものとして税効果会計をつくってきている。今後、法人小委なりそこでまた議論がおありになるかもしれないのですが、そこはむしろ企業会計サイドの問題とドッキングしながら処理せざるを得ない話なのかと思います。
むしろ税効果会計というか、いま言った繰延税金資産の部分は、各国で少しずつ取扱いが違うことは事実ですが、現実に日本だけの独自というわけでもない、ということではあるかと思います。
〇委員
またこの問題で重要な論点が出ましたら、折に触れて議論を御紹介いただきたいし、資料を出していただけたらと思います。
ほかに、どうぞ。
〇委員
あまり大声で言うことでもないのだろうと思いますが、不良債権の処理のことは、実はかなり深刻だろうと思います。根本の問題は、法人税法22条2項ですか、「資産の譲渡」の資産の中に貸付金債権というのが入っていなくて、もちろん、平成10年改正でしたか、債権償却特別勘定を法律のほうにというようなことがあって、主税局なり国税庁のほう、きちっと努力はなさっているのですが、それにしても、不良債権を持っていてもそのままで部分化してやるとかというのは認めてくれませんし、債権放棄しても、ある税務訴訟のようにそれもだめだと。売っても大抵の場合に寄付金課税になってしまうということで、三重苦で処理が非常に難しいことになっていて、デフレ下でそれでいいのかというのは、相当実際には深刻だと思うのです。それは貸付金債権の話で、根本はだから資産に貸付金債権、金銭債権が入っていないということがあるのですが。
それと、もう一つは株式についてなのですけど、この前ヨーロッパの、アメリカは別なのですが、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、ルクセンブルグだったか、いろいろな国のを調べてみたら、法人株主が保有株式を売った場合には、益金不算入というか、非課税だというのがヨーロッパ標準になってきてしまっているみたいで、それはそういうふうにすべきだと言っているのではなくて、どうするにしろ、それに対して目をつむったままではいられない状況に来ているのではないか。株価は株式の値崩れと貸付金債権の値崩れ、その両方について一定の理論武装はしておきませんと、どうも実務はただ文句を言っているという感じでもなさそうですね。
〇委員
しんどい議論をしなければいけないという前触れの御意見ですな。いずれ法人課税小委員会でやっていくようにしてもらうかな。
〇委員
不良債権問題は私も個人的に興味を持っているので、一言言わせていただくと、この問題というのは、どこかを押さえるとどこかに弊害が出てくる。ある部分ではよかれと思ってやったことが、別の部分になると、非常に処理を難航させる、あるいは処理を優先させると実体経済に悪影響があるという、もぐら叩きみたいな関係がありますので、あまり一部分のことのみに着目して、そこの合理性を通そうとすると、どこかにあらが出るというあたりは、慎重に踏まえておかなければいけないと思います。
ついでに不良債権処理で一言だけ申し上げたいことは、これに関連して、では固定資産税を中心とした資産の評価の問題が、実際の納税者の間では相当不満というか、問題視されている傾向が出ている。つまり、銀行が債権放棄した、あるいは担保価値が急激に落ちてしまった、そういう市場というか実態面での評価額と固定資産税の評価額が乖離する傾向が見られる。この辺は税収の確保という大きなテーマがあるので、必ずしも一致しなければいけないということではないにせよ、何の税制面からの、つまり評価面からの検討というのがなされなくていいのかどうか。そこら辺は一つ問題意識として私は持っております。
〇委員
今言われた土地ですが、やはり考えてみますと、土地が今まで永遠に上がるもので、不足しているという前提に立って、稼得率その他を計算しているような状態で税制というのは立てられてきたような気がするのです。御存じのとおり、工場や何かがみんな海外へ移転してしまって、土地自体がトレーダブルグッズみたいになってきてしまって、だから、やはり土地に対する考え方というのを、猫の目税制とよく我々も書いて、あまり変えろとは言いにくいのだけど、根本的な今の評価のあり方というのを、稼得率とか、資産評価の、どのくらいマンションを建てたら稼げるかとか、そういう前提が、不足時代と考え方そのものが変わってきてしまったのではないかなという感じがしているのです。
あと、もう一つは、バブル以前に戻ったというのだけど、外資などに聞いてみると、バルクセールでもう少し税金が安ければ買ってもいいようなことを言う外資もけっこういるんですよね。この辺もやはり検討対象で、財政当局にはまた減収になって頭の痛い話なのですけど、やればもう少し不良資産というのが動くのではないかなというような気がしています。
もう一つ、証券の税制は、前も何回も申し上げましたが、一冊の解説本が出るような税制というのは……
〇委員
これは後段でやりますから、そのときに御発言ください。後段のビッグイシューですから。
〇委員
いや、後段はもうけっこうです。それだけです。
〇委員
不良債権にいま関心が集まっているようで、今日事務局が説明した項目にないところでいま議論が伯仲していますが、この紙も重要でありますから、これに沿ってまた御発言ください。
〇委員
では、この紙に即しまして、先ほどもお話がございましたけれども、やはり所得税、法人税、消費税というのは、日本税制の基幹税ですから、これらの税を議論するときは、全体のあり方との関連で議論はぜひしていただきたい。特に法人税率でございますが、ここにありますように、我が国の税負担全体をどう見るのか。全体が上がっていくのか、下がっていくのか。下がっていくなら法人税も下がってもいいと思いますけども、そういうことではなかろうと思います。
それから、税体系全体、法人税を下げる、あるいは上げる、まあ上げるというのはあまりないかもしれませんが、そのときには税体系全体として、では所得税はどうなのか、消費税はどうなのか、ぜひそれと一緒に議論をする必要がある。単に法人税率を下げればいいというときに、それだけでは治まりませんで、基幹税ですから、ぜひとも消費税を、なかなか消費税の税率を表向き議論できない雰囲気もあるようですけれども、そうであれば、法人税率の議論も控えておいたほうがいいのではないか。この基幹税は一体として議論する必要がある。
それから、3番目に「先進国との税率のバランス」というのがありますが、先進国と法人税率だけを比較しても中途半端なので、アメリカは法人税率はこうだ、しかし所得税を極めてしっかり課税している。ヨーロッパは法人税率は低いところもあるかもしれませんが、そういった国は消費税率はどうなのだと。そういうことで全体として議論をしていく必要がある。そういった意味におきまして、ここで書かれております整理された[1][2][3]、そして、さらには所得税と消費税を並べて提示しておられるこのスタンスは、ぜひ堅持していただきたいと思うわけでございます。
〇委員
最初に会長が言われた経済財政諮問会議でのことについて、ちょっと印象だけ述べるのですけど、さっき減税の規模は政治家任せだとおっしゃったでしょう。この場合の政治家というのは党も全部入りますから、そういうことだと思うんですよ。問題は、法人税絡みの議論で、会長がそこで言われたことは、僕らがいままで議論したことをそのまま集約されただけのことであって、しかし明らかに意見は違っているいまの状況があるわけですね。これは裁定するのは、総理は自分で裁定すると言っているわけですから、最後に我々は我々の意見を言う。民間4人の委員は意見を言っているわけで、どう考えたって我々の意見が正しいと思うけども、しかし、最後にこの問題は党がけりをつけるというよりも、総理がけりをつける性格のものだと思うのです。
それで、つくづく思うのは、いまの委員もおっしゃったけど、僕らが税調に入ってからでも、ずっと歴史を見て、高度成長期はものすごく自然増収があって、どう減税で戻すかばかり議論をやっていたんです。この審議会は大体減税審議会だったんです。歴史的には全部そうですよ。その場合は大体が全部所得税で、法人税は上がったり下がったりしましたから、これはちょっと別の扱いでしたけどね。僕らが税調の議論に加わるようになって、特にここのところ数年、10年間ぐらいは、不景気だということもあって、もっぱら減税論。苦しいながらもずっとつないできたという経過があるんですよね。
ところが、会長が10年、15年先を見てということになれば、この基幹税制である所得税については、このままいけば増税論なんです。それは従来の戦後40年近くにわたる税調の歴史の中で初めての大転換です。歴史的に見れば。我々はそれはしようがないだろうと思っているんですよ。当たり前の議論を言っているだけにすぎないんだね。ところが、それがまた政治論としてみれば、なかなか難しいこともよくわかっている。
それで、実は僕はあるところで、法人税の税率引下げ論の人といろいろな議論をやったことがあるんです。そうそうたる学者とか、何とか次官とか全部含めてね。そのとき僕の言ったことは、今度一応やるのだったら、我々のセット論だと、4年か5年かわからないけれども、どうしてもどこかで増税を入れざるを得ない。自然増収頼みだとか、歳出カットとかいうのは、言葉としてはいいけれども、これは実際は逃げ口上の話だ。
そうすると、考えてみると、一般庶民の、それから中小企業の消費税の話もありますから、これはみんな2,000億円だ、3,000億円だと、実は腹の中では数字を計算しているわけだから。そうすると、そこでドカッと一般中小企業と一般庶民、サラリーマン諸君から集めた金を、いまのたまたまのことなんだけど、法人で成績のいいところにまた御褒美で捧げるのか。こんな効果も定かでないものについて。こんなこと政治家は通るわけないだろう。だからそれは政治問題だ、そんな議論は、という意見もあって、これは政治論を言っているんですよ。そうでない前の議論からいえば、我々は本格的に、しようがない、そういう立場に追い込まれたから、所得税の基本的な方向転換ということを考えざるを得ない。それなら我々も堂々と、この際いろいろ細かい議論はあるかもしれないけれども、会長がまとめられた方向で、あとはしようがない、人気の高い総理に任せるということしかないと思うんです、この話は。それを何もこれから修正する必要は全くないです、こちら側は。向こうも修正というものがないわけだから。効率が高いか低いかなんていう話じゃないわけだ、この話は。
もう一つだけ、言葉のあやで申し上げておくと、本格的な税制改正をやるなら法人税だと言っている学者がいるわけだね。それなら、本格税制をやるのだったら、所得税のことも消費税のこともセットで本格税制なんですよ。本格税制をつまみでやってもらっちゃ困るわけだ。効果も定かでないものを。繰り返し言っているけれども。それはもう腹を据えた議論を我々は我々でいままで固めてきたのだから、変えることは全くないんですよ。政治論からいっても税制論からいっても。ということだけ申し上げたい。
〇委員
諮問会議の空気を1点だけお知らせいたしますと、法人税の実効税率を下げろという民間議員の方の意見は、3割しか法人は税を払っていないけど、その3割でもいいし、1割でもいいし、2割でもいいのだけど、そういう儲かっているところを手厚くやってやることによって活性化するという議論ですよ。財務大臣はそれに対してかなり反発もしたし、僕も反発しましたけど、やはりもう一つの反発は、いまおっしゃったように、法人税の減税財源が個人の負担から行くというところが、おそらく通りにくい。これは対話集会でも出てきた話なんですよ。まして、いま企業なんかは不祥事を起こしたり、国民的に人気が落ちていますからね。と同時に儲かっているところを減税してやって、何でこれから所得税、消費税を上げるのだという議論、これがおそらくあって、諮問会議でもその辺のバランスはとれた議論をしていると思います。
それから、総理が責任を持ってやれと私が言ったときに彼も頷いていましたから、それなりの責任を持っておそらく采配を振るうのではないかと思いますけれども。そういうことを情報として提供します。
〇委員
この基幹税のところは、来年度税制改正でこういうところが重点になるし、こういう方向で出さなければいけないだろうとは思います。
それで、法人税についてですが、いま2人の委員がおっしゃったことと大体同じ意見ですけれども、やはり長期的には所得税、消費税と一緒に考えていかなければいけないだろうと私も思います。
それで、経済諮問会議のほうのこだわりなのですけれども、3割しか払っていないところを活性化させるために下げろと。それで本当に効果があるのか。やはり効果はないのだろうと思うのです。7割払っていないわけですし、実際に下げてどれほどの効果があるのか。だからこだわる理由がよくわからないわけでありまして、やはりないということを改めて念を押しておいたほうがいいのではなかろうかと思います。
〇委員
それは、あると主張して言っているわけですから、いろいろなモデルを組んだり、いろいろデータをつけてやりとりやってるから、それは水掛け論なんですよ。
〇委員
ヒアリングしますと、明らかにないんですよね。大企業なんかの話を聞いてみますと、これはないですよ。それどころかもっと節税できるあれがいっぱいありますから。
それと、相続税・贈与税のところ、これは非常に大きな改正になるわけでありまして、特に贈与税のところ、これは性格の根本的な転換になりますから、これについては、やはりはっきり方向を出すということが必要であろうと思います。
〇委員
ありがとうございます。ほかにいかがですか。
〇委員
「あるべき税制」というのをずっと一生懸命、私なんかはわからないながらもくっついてきたのですが、それをやってきて、現実には先行減税しろとか、あっちこっちから「税調委員様」と書いて届く手紙とか資料とかを見ると、全部減税しろということが書いてありまして、固定資産税なども地方税収の基幹税になって、一番多くなっている。だから下げろという話が来るわけです。固定資産税が何で多いかというと、住民税が減ってしまったから多くなっているだけであって、それなら住民税を上げれば、固定資産税が2番目になるから目立たないだろうというようなことを考えていまして、そういう中で、何でそうなるのかなというと、やはり税金など払いたいという人はいないわけであります。そこで、一生懸命立派な制度をつくっても、集まらなければ何の意味もないわけで、そこのところに税制論議の基本的欠陥がある。その結果、でき上がりで毎年毎年30兆円以上足りないということになっているような気がしますものですから、議論するような話ではないのですが、あるべき税収というものを頭に出しておかないと、制度ばかりこね回しても、でき上がりでお金が集まりませんというのでは何の意味もない。何ゆえにこれだけの税収が必要かということは、ちゃんと言っておく必要がある。そうでないと、どうしてもすぐ減らせ減らせという話になる。
一方、社会保険のほうは、使うほうは自動的に当然増とかいう、当然とは思わないのですが、そういうことで増えていく。支出は決まってしまうから、それに合わせて収入は必然的に増える。議論も何も必要ない、制度も何も必要ない、という上手なやり方を見ていますと、税の集め方が非常に下手なのではないか。そういう意味でも、まず最初に何ぼ必要なのだ、トータルでいくら必要であるか、という議論がないといけないのではないかという気がしています。
〇委員
正論ですね。税収確保の機能をということですね。
〇委員
フリートーキングということで、自由勝手気ままなことを言わせていただきますと、この小泉5項目ということに少しとらわれすぎている。あるいは、ここでの議論がこの5項目に視野が限定されすぎている。そういう印象をかねがね抱いております。
その主たる要因は、言うまでもなく消費税という問題がどうも後方に追いやられた。つまり21世紀の税制というのは、もう消費税なくしてはあり得ないということが現実ではないかと思うのですが、ともかくそれを議論の対象、蚊帳の外に置いてくれと、こういうことを言われると、その途端にこの5項目がちまちました話になって、何かあっちこっちからむしり取るような増税路線というような印象を与える話になってしまう。ここで改めて消費税というものを正面から取り上げる。そして、税か、保険か、社会保障の経費の負担問題というものを真正面から取り上げる。でないと議論そのものが何やら浅はかな、そして金集めの議論だというような、理念のない税制論議に陥ってしまう。そんな印象を感じているわけであります。
ともかく、これからは法人からはそう多く取れない。個人に負担を求めていくしかない。その場合は所得税なのか、消費税なのか、という選択がまずあるわけでありますが、そこで消費税はやめてくれと言われてしまうと、残った所得税を、あれを削る、これを削るという議論になってしまって、これは甚だ評判の悪い話になってしまうわけであります。
改めて申し上げますと、私は所得税か消費税かということを問われれば、消費税を中心に考えていくしかないという意見なので、ここで改めて申し上げさせていただきたいと思います。
それから、目下の焦眉のテーマとなったのはこの法人税の問題だと思うわけでありますが、私も、改めて申しますと、政策減税というものが本当に効果があるものならば、その政策減税でいくべきだと。しかし、いまのように使い勝手が悪い、いろいろ条件が付せられているようなことを、これまでどおりに、いわゆるおまけというような感じでの、付け足しというような感じでの政策税制ということをこれからも続けるのであれば、どうも議論としては、じゃあ税率を下げたほうがいいのではないか、一般性とか恒久性とか公平性とかという面から見て、それが税の本筋ではないかと言われると、なかなかこちらも反論しにくい。したがって、政策税制というのを、これまでの通念にとらわれない、大胆でかつ一般的な政策税制を考えるべきではないかと思うわけでございます。
諮問会議で法人税率の国際比較を言われて、高い、安いと言われるわけですが、どうも世界の法人税制の流れを見ると、意外と政策税制というのも世界的に大胆なことをやっている。税率ばかりではなくて、政策税制も一方の大きな柱になっている。そういう認識のもとで政策税制を本格的に議論する機会なのかなと思っております。
ついでなので申し上げておきますと、では、この法人税をなぜ下げるのだということなのであります。企業の活性化といえば聞こえがいいわけですが、企業を活性化してどうするのだということであります。ともかく、それが海外に行かなくても、日本にとどまって生産してくれる、雇用してくれる、投資してくれるというような企業像を目指すのか、そうではなくて、単にともかく元気を出してくれという一般的な励ましに終わるのかということであります。
そこで、かねがね私も問題意識として持っているわけでありますが、外国税額控除、これは基本方針にもさらっと触れたような気がするわけですが、つまり、海外移転というのはけっこうだけれども、税制上、補助的な措置を海外に与える時期なのか。それはもうかなり大胆に勇気を持って見直すべき状況になっているのではないかと私は思うわけであります。
しかも、中国、アジア等々の諸国では、法人税をほとんど減免しているというようなことまで出ている。しかし、減免しているのに取っているというふうにみなして、その分を海外、アジア進出企業にあたかも補助金のようにして交付している。こういうことが果たしていまの時代の理解を得られるのかどうかということなのであります。
したがって事務局に、これは委員長のほうから要請するのが筋でありますが、提案でございますが、どうも外国税額控除の資料が甚だ乏しい。私はあまり見たことがない。制度の説明ぐらいなものは出たような記憶があるのですが、実態がどうなっているのか、どういうところと結んでいて、いつごろ期限が切れて、実際の外国税額控除をみなし外国税額控除でどのくらいのお金を、企業名まではともかくとして、どんな業種に出ているのか。ともかく中国に工場をつくれば、そこで法人税相当分がもらえるというような実態から照らすと、その資料が甚だ心もとないのが現状ではないか。事務局にそこら辺の外国税額控除、みなし税額控除を含めて、少し資料の整備をお願いしたいと思います。
〇委員
いま、みなしってどのぐらいやっているのですか。ずいぶん整理したでしょう。外税控除。まだみなしを全面的に残しているの?
〇委員
条約ではもう一切これ以上はやらないというお話ですね。
〇委員
やらないでしょう。
〇委員
シンガポールの条約はやめたんです。あとのは残っています。
〇事務局
一度御趣旨に踏まえて、丁寧に勉強させていただきます。
〇委員
そうだね。一回やりましょう。ありがとうございました。
それから、前段の御説明で、小泉5項目に限定されすぎているのではないかというのは、諮問会議の委員の方も、民間委員の方もそういうことをおっしゃっていましたが、あえて私なりに論点を整理させていただきますと、今日、課長が説明してくれたこの図でいうなら「あるべき税制・税体系」ということで、右のほうにどんどんこれから話が行くわけですよ。その第一歩として今回の小泉5項目が先行的に入ってきたということでありまして、第2歩、第3歩というのがこれから続くわけでありますから、そういう理解をしていただけると、ここで終わりというわけではないというふうに我々も確認をしていただきたいと思います。
どうぞ、ほかに。
〇委員
消費税のことですけど、僕はあまり歴史的経緯について詳しくないので、前にちょっとお尋ねしたことがあったのですが、小売価格の中に外税となっていますけど、普通のその辺の商店なんか、みんな1割、2割小売価格が違うのは当たり前なんですね。ですから、少なくとも小売価格のところでは消費税の表示が必要なのではないかと思うのです。5%が10%になっても、我々買うときに大して変わらないですよ。わざわざ5%だとか言う必要ないですね。しっかり取ればいいわけであって、しかも、小売業者はやはり価格競争をしていますから、5%、10%は吸収してしまいますね。しかも、いまデフレで安売り競争をやっていますから、そういう中で消費税10%ぐらい軽く吸収していくわけですから、僕は歴史的経緯を知らないからあれだけれども、あまり歴史的経緯にこだわる必要ないのではないですか。
〇委員
俗に言われる内税・外税、どっちがいいというお考えですか。中へ入れちゃっていいと思う?
〇委員
中へ入れちゃったほうが……。
〇委員
もう表示しないで、外に。
〇委員
ええ。
〇委員
それも1つの意見ですよね。
〇委員
そうすると企業努力をむしろ促進する。がんばるんですよ、みんな。価格競争だと思っていますからね。
〇委員
がんばらないで、税金をボーンと乗っけてしまうというやつもいるという話もあるからね、5%以上に。そこを言っている人もいるわけですから、議論が難しいところなんですよ。
〇委員
いまみんなオープン価格とかとなっているでしょう。もう安売りは当たり前ですからね。
それから、相続税・贈与税のところはあとですか。
〇委員
どうぞ。
〇委員
僕はこの間出ていないのですけれども、例の65歳以上が2,700万円持っているという話がありますよね。やはりそれは若い人に渡さなければいけないわけですから、そこのところ、前にちょっと説明したときには、ちょっとだけ変えるぐらいの話だったのだけど、やはり生前贈与はどんどんやったらいいんじゃないですかね。2,700万円持っていて90歳まで生きているから、息子が65歳になっちゃうんですね。65歳から上のところでグルグル回ることになっちゃうから。
〇委員
かなり抜本的な大がかりなことを考えていますから、いずれまた再度御説明のときがありますから、期待に沿うような話に多分なるでありましょう。委員も早く生前贈与することを考えたらいいですよ。
〇委員
税調に求められた役割というのは、あるべき税制の姿ということですよね。10年後、15年後と言ってしまったために、それ以前にデフレに陥って、その対策に何をやってもいいかと、こういう隙間を与えてしまったのだろうと思うのですけれども、政府税調としては、あるべき姿を30兆円の収支ギャップ、それを税の側から見てどこがおかしいかということをずっと議論してきたわけですね。それで空洞化の問題とか、ここに出ている6月の報告のような結果が出たわけですから、これはこれで、これだけの時間をかけてやったわけですから、崩す必要は全くないと思います。
問題は、10年後以前にデフレで日本が景気がおかしくなってつぶれそうだ、どうするかと、そういう話に巻き込まれているわけですから、政府税調としては、先ほどから出ている税制による景気刺激効果というのはどのぐらいのものかとか、いま置かれている日本の現状を税制でどれだけ回復させられるものかということについて答えられるかといえば、どなたか「絶対そんなのはありません」と言う人もいましたけど、ちょっとそれはなかなか言えないですよね。素人論議の域を出ないので、それはそれでやはり歳入歳出を含め全体の経済像を、それは別のところできっちり議論をしていただいて、税の役割はこのくらいか、歳出のほうの役割はこのくらいか、というふうにしてもらわないと、いきなりここへ法人税引下げ論をポンと持ってこられても、これはちょっと受けとめられないですね。我々の議論の経緯からしまして。それはいいですとも言えないし、だめですとも言えない。もしおやりになるなら、それでは30兆円のことはどうでもいいのですか、どういうふうに処理なさるのですか、ということをやはり言わなければいけないだろうと思いますから、それが会長のおっしゃっている政治家の責任ということになるのでしょうけれども、そこは民間議員と我々が対等に議論していてもしようがないと思うのです。そこはそういうしかるべきところで判断してくださいと。税調としてはこういうことですということでいいのではないでしょうか。
1 つ消費税の話が出ていますけど、例えば年金の問題で、国庫負担2分の1にすると簡単にポンと決められていますけど、これだって2兆円から2兆5,000億円財源が必要なわけでしょう。そのことを誰も言わないで、そういうことだけ決まっているわけですから、それを税の責任にされても困りますから、それはどこから持ってくるのですかということになれば、消費税とかそういうことに持っていかざるを得ないわけでしょうから、その点では税でやるとすれば消費税しかないですよということを、税調としてはきちっと言ったらいいだろうと思います。
〇委員
いまの点、もし事務局のほうから説明があればしていただきますけれども、いずれこの場でもおそらく議論をしなければいけない話になってまいりますから、そのときは消費税絡みでまた議論が起こるであろうと、予めお考えいただいてもいいと思います。
いまおっしゃっていただいたとおり、10年、15年先と我々は達観していますが、そうではなくて、現実は足元をどうするか、来年どうするかというところにマスコミなどは関心があるわけでありますから、長い目から見た短期の対策というあたりを、どう整合的に説明するかというのが我々の一番大きなテーマであり、幸いなことに小泉さんもそういう発想なんですね。中長期的に見て短期を考えなければいけないのだと、足元だけではいけないよと何度も言われていますし、その辺は意識は共有していると思います。
次のテーマに移ってよろしゅうございますか。証券税制でありますが、そのほうに関心がより皆さんお集まりになるかと思いますが。
それでは、前段の基本的な姿勢のフリートーキングを終わりまして、これから各論に入りたいと思います。各論の最初は、当然のことながら個人所得課税でございまして、今日さらに資料が出ておりますが、諸控除につきましてまだ議論は残っております。と同時に、今日は少し時間を割きまして、いま話題になっております証券税制、これをどうするか。とりわけ例の特定口座制度、これあたりがいま来年1月から始まるに当たっていろいろ問題を投げかけております。これに対して財務省、総務省、国税庁において、特定口座制度の仕組みや運用を改善すべく、いまプロジェクトチームを立ち上げているようであります。
そこで、どこがいま証券税制は問題であり、特定口座をどういうふうな形で考えたらいいか等々につきまして、まだ結論は到底出ないわけでありますが、その中間報告的なところを含めまして、事務局から各々御説明をいただきたいと思います。ではお願いします。
〇事務局
2つの資料をお時間をいただきまして引き続いて説明をさせていただきます。
まず、「基礎小18-2」『資料(証券税制関係)』という資料をご覧いただきたいと思いますが、会長からもお話がございましたように、株式譲渡益課税につきましては、昨年御議論をいただきまして、来年の1月から申告分離課税に一本化することとなっております。このため、証券会社ですとか投資家のほうでは、新しい税制への移行のための準備を進めておられるわけですけれども、新しい証券税制につきましては、後ほど見ていただきますが、投資優遇の観点から措置されましたいくつかの優遇措置が複雑すぎるとか、あるいは個人投資家の申告事務負担の軽減の観点から設けられました特定口座の仕組みが、煩雑で使い勝手が悪いといったような批判が出てございます。また、最近の株価の低迷と関連づけまして、こういった複雑な新しい証券税制のせいで、個人投資家の市場離れを助長しているといったような論調もございまして、事務局として、この9月の中頃から、円滑な特定口座制度の実施を確保する必要があるということで、特定口座制度の仕組みや運用の改善のための作業を始めたところでございまして、その報告を今日はさせていただきたいと思います。
資料の1ページをお開きいただきますと、おさらいになって恐縮でございますが、昨年お決めいただいた株式譲渡益課税の見直しの内容でございます。上場株式のキャピタルゲインにつきまして、そこにございますように、来年の1月から申告分離課税へ一本化されるという前提で、税率が20%に引き下げられております。
それから、譲渡損失について、向こう3年間の繰越控除制度が創設をされる。あるいは過去に取得をされた株の取得価額については、みなし価格の特例を設けるといったことをいたしてございます。これらは今後の恒久的な措置でございますけれども、2番目の箱にございますが、1年超保有をされた上場株式等につきましては、17年末までの特例措置といたしまして、さらに税率を10%に軽減をする。加えまして、100万円まではいわば非課税となる特別控除を設けるといった特例がついてございます。
さらに、3つ目の箱で緊急投資優遇措置ということで、一定の要件のもとで購入額1,000万円まで譲渡益を非課税にするということでございまして、1枚飛ばしていただいて3ページをご覧いただきたいのですが、いま申し上げた特例措置、暫定税率と100万円特別控除が17年末までの措置でございます。さらに緊急投資優遇というのは、昨年の暮れから今年いっぱい購入された株については、購入ベースで1,000万円まで、15年、16年と2年間保有をしていただいたあと、19年末まで3年間で譲渡をされた場合には非課税になるという特例がございまして、こうした特例がいずれも投資家にとっては非常にわかりにくいという御批判が1つでございます。
それから、1ページお戻りいただきまして、特定口座でございますけれども、先ほど御説明いたしましたように、これまで源泉分離課税に慣れてこられた投資家のために、申告事務負担を軽減するという趣旨で設けられた制度でございますが、投資家は1証券会社当たり1つずつ特定口座を設けることができまして、ここで取引をいたしますと、源泉徴収を選択する口座、それから源泉徴収をしない口座、どちらかを選ぶことができます。源泉徴収を選択をした場合には、基本的に申告をしないで済ませることができる。あるいは源泉徴収なしの口座でも、右のほうにございますが、年間取引報告書というのを証券会社がつくってくれますので、簡易な申告ができるといったような仕組みを導入したわけでございます。
この特定口座につきましては、4ページに飛んでいただいて、どういう株式をその特定口座の中で取引できるかということで、一定の経過措置が設けられてございます。やや技術的で恐縮でございますけれども、矢印の一番右のほう、平成15年1月1日と書いてありますが、この新しい制度が発足して以降、1月1日以降取得した株は、何の問題もなく特定口座で取引ができるわけですけれども、過去に持っておられた株をどのように特定口座に入れ込むかということで、特定口座で取引できる株式は、証券会社がその取得価額を知っていなければ譲渡益の計算ができませんので、証券会社の事務負担等も考慮いたしまして、過去に取得された株式については、その取得価額につきまして、かなり割り切った経過措置を設けました。
黒く塗りつぶした部分でございますが、証券会社が取得後保護預りをして継続して持っておった株式につきましては、平成5年1月までさかのぼって黒い箱ができてございますけれども、顧客の勘定元帳といった書面の保存が10年間は義務づけられておりますので、それまでの間のものは、実際の買付価額を取得価額として特定口座に入れる。
その他のもの、白い箱をご覧いただくと、平成5年より前、平成4年以前に証券会社が保護預りをしていたような株式等につきましては、そこにございますように、昨年の10月1日の80%相当の価格、いわゆるみなし価格で割り切ってもらって特定口座に入れるといったような経過措置を設けさせていただきました。
こうした制度を9月から証券会社は準備を始めて、投資家との間でいろいろと説明会等を進めておられるわけでございますけれども、5ページをご覧いただきますと、9月の半ばから、そこにございますように、事務方でプロジェクトチームを設けまして、証券業界からのいろいろな意見を伺っておるところでございますが、ヒアリングの際に特定口座に関して、証券会社側から出ております主な改善要望をいくつか申し上げますと、いま4ページでごらんをいただいたみなし取得価額で特定口座に入れなければならないという経過措置につきまして、証券会社が取得価額や取得時期を証明できるような場合には、みなし価格ではなくて実額で入れられるようにしてもらえないかと。特に平成3年とか4年ごろ、バブルの頃に高値で取得した株を保有しておられる投資家あたりですと、みなし価格で割り切っていられることに対して非常に不満が強いようでございます。
さらに、これまた複雑で恐縮ですが、2ページの表をごらんいただきながらお聞きいただきたいのですが、特定口座で源泉徴収を選択された場合にも、最終的に譲渡損が残った場合には、確定申告をして、その還付を受けなければならないということで、これまで源泉分離課税に慣れておられた投資家は、確定申告の手間がかからないような仕組みにしてほしいといったような御要望があるようでございます。原則、申告分離課税に一本化するわけですから、ややそれとそぐわない要望ではあるのですけれども、できるだけ投資家は申告を回避して簡便な納税で済ませたいという要望がまだまだ強いようでございます。
そのほか住民税の関係の要望ですとか、かなり技術的な要望を含めまして、非常に多数の要望がいまヒアリングの過程で出ておりますので、私ども事務的に早急に検討をして、改善策を講じたいと考えております。
さらに申し上げますと、特定口座をそのような形でいくら改善をいたしましても、先ほど1証券会社1口座と申しましたが、複数の証券会社に口座を持っておられたり、損失の繰越控除ですとか、各種の優遇措置の適用を受けたいという場合には、結局、申告が必要になってまいります。そうなりますと、いろいろな優遇措置があるがゆえに、制度が複雑で申告するにも非常に難しいということで、そうした説明を聞いただけで、高齢者や女性といった投資家は、理解できずに株の投資をやめてしまうといったような声がございまして、投資家は利益が出れば税を負担することを決して嫌がるわけではないのに、複雑なゆえに非常に批判があって、とにかく簡明でわかりやすい税にしてほしいといったことを、証券会社の皆さんが現場の声として私どもに伝えていただいております。
そういうのがいまのヒアリングを通じての現状でございまして、6ページにお進みをいただきますと、金融税制につきましては、6月の基本方針の段階で一定の方向感をいただいております。1つは、「わが国の金融をめぐっては、そのあり方として、『貯蓄から投資への切り替え』が指向されている」という点、それから、2つ目のアンダーラインですが、「金融商品間の中立性や金融分野以外の所得との公平性の確保、さらに制度の簡素化等、現行制度の見直しを検討していく必要がある」。アンダーラインを引いてございませんが、引き続いて、「その際、納税者番号制度をはじめとする所得捕捉体制の整備があわせて検討されるべきである」といった方向感を6月の段階でいただいておりますので、こうした基本方針の方向に沿いまして、私どもとしては、特定口座制度の実務面での改善、簡素化の作業をいたしますとともに、金融証券税制について、複雑すぎるといった批判を踏まえまして、できるだけ簡素でわかりやすい税制のもとで、この「貯蓄から投資への切り替え」といった政策的な目的に資するような本格的な見直しを、できれば金融証券税制全般についてさせていただきたいなと思っておりまして、今後のこの委員会でまた具体的なことは御議論をいただきたいと考えておりますので、ぜひよろしくお願いをいたします。
なお、それに関連いたしまして、最近、証券界等からは、株価対策等の観点で、緊急措置として株式の譲渡益を、例えば1,000万円を限度に非課税にしてくれといったような運動が進められつつございます。若干の資料を見ていただきますと、7ページでございますが、これは内閣府の世論調査で、「株式投資を行いたいと考える理由は何ですか」というのを聞いた答えでございますが、上から4つを見ていただきますと、一番多いのが値上がり益、2番目が配当益、3番目が預貯金以外にも幅広く運用したい、4番目が株主優待制度を利用できるといったようなことでございまして、税制上の優遇措置があるからというのは、下のほうに2.0%というふうに書いてございます。こういったアンケート結果を踏まえましても、私どもとしては、税制上の特例措置があるから株の投資が進むというよりは、やはり税制としては、できるだけ簡素で安定的な、投資家にとって予見可能性のあるような金融証券税制を構築することが大事なのではないかと思っておりまして、そういう制度本来の本格的な議論をぜひしていただけるとありがたいなと思っております。
なお、一番最後の紙でございますが、これは最近の世界の株価の推移を追いかけた表でございます。(注2)にございますように、2001年、平成13年4月26日の株価指数を100としまして、その後の推移を指数で表しております。平成13年4月26日というのは、小泉内閣が発足した日でございますが、日本だけが下がっているわけではありませんで、世界的に大体同じ動きをしておるということで、あえて言いますと、ドイツが一番下がっておりまして、キャピタルゲインが非課税になっているドイツで最も下がっているというのは、あえて申しませんが、特徴的かなと。
以上が証券関係でございます。
もう一つ、「基礎小18-3」ということで諸控除の関係の資料をおつけしてございます。簡単に御説明をいたしますが、配偶者特別控除や特定扶養控除等の割増加算となっております特別な人的控除につきましては、6月の基本方針ですとか、9月3日の中間整理におきまして、男女の社会における就労やライフスタイルの選択に対して、できるだけ中立・公平な制度にすべきだということで、簡素化・集約化の観点から、廃止・縮減の方向で見直すべきだという方針をいただいてございます。したがいまして、ここで改めてそのための資料説明はいたしませんけれども、最近出ました少し新しいデータもございますので、経済社会の変化に即応して、こうした特別な控除を適正化するという視点で、その見直し論の根拠を若干補強できるかなと思うような資料が散見されましたので、若干余計かもしれませんが、その御紹介をさせていただきたいと思います。
資料の、ずっと飛んでいただいて12ページをお開きいただきたいと思いますが、これは前回もごらんをいただいた男女共同参画会議で、1980年代半ば以降、共働き世帯が増えてきておるという絵でございます。この関連で15ページをお開きいただくと、厚生労働省のデータで、1年間の年収別のパート労働者の数の割合ということで、平成7年の調査と平成13年の調査を比較してございます。平成7年のほうは、70万円から100万円というところにかなり集中をしておりまして、パートタイム就労者の年収がここでかなり突出しておるということで、若干就労調整が行われているのかなというのが見えたわけですけれども、平成13年の調査になりますと、100万円から300万円ぐらいのところにかなりばらけてきております。補助的にパートに出て就労するといったところから、やや本格的にパートに出ておられるといったところが最近の傾向として見て取れるかなと思います。
それに合わせまして右側の円グラフを見ていただきますと、平成13年調査では、就労調整をしているという回答が、平成7年に比べて10ポイントほど下がっておるということのようでございます。
引き続いて16ページをご覧いただくと、これも厚生労働白書からとったグラフでございますが、ちょっと見にくうございますけれども、この棒グラフは、その下にありますように、一番黒いのが正規の職員、右側のやや白いのが無業、いわゆる専業主婦でございます。専業主婦は、棒グラフを追いかけていただくと、500万円から699万円、あるいは700万円から999万円のところで高くなっておりまして、この関係で比率を見たのが折れ線グラフですけれども、丸の折れ線グラフで見ていただくと、これが無業の割合というふうに書いてございますが、夫の所得が高いほど妻の無業の割合、いわゆる専業主婦の割合がおおむね上がっていくといったところが見て取れようかと思います。
それから、ちょっと下のほうにごちゃごちゃっと書いてありますが、三角の折れ線グラフが正規の職員の割合ということで、妻が正社員である割合は、見ていただきますと、夫の所得が300万円あたりから499万円あたりのところでピークになっていまして、夫の所得が上がっていくと、この三角は下のほうに下がっていくということでございます。
それから、バツの折れ線グラフがパートの割合でありますが、妻がパートに出ておられる割合というのは、夫の所得が700万円から999万円のあたりまでは、夫の所得の上昇に応じてバツの折れ線は上昇してまいりますが、そこでピークアウトをして、それ以上に夫の所得が上がると下がっていくといったような傾向が見て取れるということのようでございます。
それから、17ページでございますが、同じ厚生労働白書で、これは妻の就業状態と所得階級別の構成を見たものでございまして、昭和57年と平成9年で比較してございますが、この白い1つの箱が無業ということで、昭和57年は、有業よりは専業主婦のほうが相対的に多くいたわけでございますが、平成9年になりますと、有業と無業が逆転をしておりまして、妻が有業というほうが増えております。さらに、その構成を見ていただくと、300万円以上の妻の有業の階層というのが増えておりまして、妻の働き方として、夫の補助的な就労というよりは、本格的に働く者が増えつつある。いわゆる本格的な共働き化というのがここからも若干見て取れるかなというデータであろうかと思います。
それから、18ページでございますが、これは昭和50年、61年、平成12年と世帯構成の状況を比較したものでございます。昭和50年、実は政府税調の答申あたりで、夫婦子2人、特に働く夫と専業主婦という片働きの世帯で子供が2人というのを標準世帯として、いろいろな所得税の負担を議論するようになりましたのは、昭和47~48年頃からでございます。その当時の昭和50年では、なるほど、見ていただきますように、夫婦子供2人の世帯というのは2割ほどございます。それが昭和61年までは増えておるのですが、平成12年になりますと、典型的な標準世帯としておりました夫婦子2人の世帯というのは、14.5%まで下がってきておりまして、単独世帯とか夫婦のみの世帯というのが相対的に増えてきております。おそらくこれは高齢化が進展をしたということも相当影響しておろうかと思いますが、こうやってざっと見ますと、夫婦子2人だけに光を当てて所得税制を考える時代が徐々に終わりつつあるのかなという感じがしておりまして、その関連で19ページを見ていただきますと、昭和50年、61年、現行と、先ほどの世帯構成に合わせて課税最低限の推移を書いてございますが、夫婦子2人の給与所得者、昭和50年を100とした場合、比較して現行の課税最低限が210ということで、2倍強になっております。それに対しまして、一番下の独身の給与所得者、正規の共稼ぎ世帯ですと、独身の給与所得者が2人いるような世帯になりますが、そこでは課税最低限の上昇が143ということで、1.5倍弱ということでございまして、これまで夫婦子2人の給与所得者に光を当てて、配偶者特別控除、あるいは子供の1人分は特定扶養控除ということでこの課税最低限を計算しておりますが、その辺で課税最低限を上げてきたという経緯がございまして、現在、見直しの対象としておりますのが、この配偶者特別控除や特定扶養控除ということで、若干世の中の流れに合って見直しの議論を進めていただいているということで、かなり迂遠な資料でありますが、ちょっと時間もございましたので、紹介をさせていただいた次第でございます。よろしくお願いいたします。
〇事務局
個人住民税の証券税制関係につきましては、事務の流れ等、若干の相違がございますけれども、所得税と基本的に同じでございますので、資料説明は省略させていただきたいと思います。
個人住民税関係の控除のことにつきまして、資料の「基礎小18-4」で御説明いたしたいと思います。たびたび申し上げておりますけれども、1ページをご覧いただきたいと思います。個人住民税の場合は、特に地域社会の費用を広くみんなで分かち合うという負担分任の性格がございますので、控除等につきましても、所得税に比較して低く設定してあるということでございます。
以下、現行制度、経緯等でございますが、6ページまでお進みいただければと思います。いまほど所得税につきましても同様の御説明がございましたけれども、やはり同じように個人住民税におきましても、夫婦子2人を中心としまして、こういう形のところに厚く遇してきたということで、課税最低限の上昇も高くなっております。これは所得税と同じでございますが、特に所得税以上に、昭和51年度を100とした場合の上昇率は、個人住民税のほうが高くなっておりまして、負担分任の考え方からしますと、逆に税金を払わない方々が多くなってきているということを示しているかと思います。
以下、経緯等でございますけれども、時間の関係上、13ページ、最後に飛んでいただければと思います。個人住民税につきましては、所得割と均等割というのがございまして、所得割のほうは所得税とほぼ似たような考え方でございますが、固有のものとしまして均等割というのがございます。控除そのものではございませんけれども、この均等割の人的非課税というところで、資料の真ん中辺のイで、均等割が非課税とされるものということで[2]がございますけれども、均等割の納税義務を負う夫と生計を一にする妻で、夫と同じ市町村内に住所を有する者、というのがこの均等割が非課税とされております。
ちなみに、配偶者をお持ちの女性というのは、3,300万人ぐらいおられますけれども、収入のない専業主婦などにつきましては、このように特例を設けるまでもなく非課税になるわけですが、例えば100万円以上のパート収入があるような場合、98万円超の部分につきまして、所得割が課税されますけれども、この特例がございますので、均等割の部分につきましては、どれだけたくさん稼がれる女性であったといたしましても、生計を同一にしている場合については、この均等割の部分が非課税になるということでございます。控除そのものではございませんが、人的非課税の個人住民税の特異な形ということで御紹介させていただきました。
以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。
今日はスムーズに進んでおりまして、4時まで35分たっぷりありますから、大いに議論いたしましょう。特に証券税制はいろいろと御関心の方もいらっしゃると思いますから、どうぞ。
〇委員
僕は素人なので乱暴な議論を先にさせていただきますけど、証券税制関係の税収はいまいくらぐらいですか。
〇事務局
株のキャピタルゲインからの税収が2,000億円ぐらいです。
〇委員
ドイツが非課税でも下がっているという話があったけれども、あれは2001年の5月を基準にしているグラフだから、あまり当てにならないかもしれないのですが、お金を取るのをやめちゃったらどうですかね、3年とか5年とか。2,000億円ぐらいでしょう。いま民営化委員会で道路のことをやっているが、道路一本5,000億円とか1兆円とかそういう話をしている。本当に要らない道路一本5,000億円のを軽くつくるなんていう話で、第2東名で5兆円とか、そういう話をやっているのですけど、これ2,000億円ぐらいだったらやめちゃったほうが、3年とか5年とか。
結局、いろいろ理由は書いてあるけれども、要はやはりややこしいわけでしょう。気持ちの問題として、これバーンと取っちゃったらいいかなと思うんですけれどもね。3年とか、せいぜい5年とか、短期でいいと思うんですけれども。2,000億円ぐらい大したことないなと、大ざっぱな言い方になって申しわけない。そういう気持ちになって仕事をいまやっていますから。
〇委員
そういう議論が展開されると、我々も楽なんですけどね。やはり2,000億円の金目以外のさまざまな課税の公平担保のコストもあるでしょうからね。でも御意見は御意見としていっぱいあるお話ですから、承っておきますが、税調のマジョリティーになるかどうかになると、問題にする人がいるかもしれません。
〇委員
素人の意見だと謙遜なさって言われましたけれども、別にそういう意見があってもいいわけですよね。ただ、私はそれには賛成はしないのでありますけれども。
やはり今の御説明を伺っても、非常にわかりにくいですね。これは政府税調の意思とは無関係にこういうふうに複雑化してしまったわけでありまして、政治的な色彩が非常に強いわけです。非常に極端に複雑化している。これはやはり何とかしなければいけないと思うわけであります。だから当面の施策としては、さっき言われたように、実務面での改善、簡素化する必要がある。それはもちろんそうでしょうけども、明らかに限界があるわけでありまして、そういう限界があるということを事務局もおっしゃっているのでしょうが、やはり根本的な議論がどうしても欠かせないと思うわけであります。
これは二元的所得税論にいくのかどうか、最適課税論の立場にいくのかどうするかですね。いずれにしても、国際化の急進展もありますし、そういう影響も非常に急速に広がっているわけでありますから、根本的な議論をどうしても急ぐ必要がある。それはどういう場でやるのか。新しい委員会をつくるのか、これまでの小委員会をそのまま使うか、どちらでもいいと思いますけれども、少なくともそういう検討を急ぐという姿勢をはっきり出す必要があるだろうと思います。
〇委員
いまのところ、金融小委でも立ち上げるか、基礎問題小委でやるか、場はまだ確定しておりませんが、いずれにしても12月か年明けぐらいに、さっそくこの金融所得の一元化も含めて、いまおっしゃったような問題提起は税調で受けとめたいと思っています。
〇委員
去年も申し上げたのだけど、例えばおじいさん、おばあさんがわからない場合どうするのかという話をしたら、お答えになった課長さんだか何かが、「大丈夫です」と言われたのを私覚えているのですけど、これはやはり周知徹底が行き届かないと、途中から余計なものがいろいろ入ってきてしまったのだろうけど、行き届くのかなというので、全然大丈夫じゃないんですよね。じいさん、ばあさんが持っているのは大した額ではないから、一時所得でやれば、20何万円かの所得があっても、そんなもの無税だから大丈夫だと、そういう説明だったのですけど、話を聞いてみると、そんな簡単な話ではないんですね。要は株をやっているのも玄人と素人がいて、玄人はこういうのでは困るという話なのだろうけど、素人でも特定口座というのをみんなつくらなければいけないわけなんですか。その辺のそもそも論、イロハからわからないので、ちょっと質問いたします。
〇委員
ちょっと御説明ください。
〇事務局
特定口座というのは、申告分離課税という制度のもとで、それをつくって、なるべく簡易な手続きで済ませたいという人が任意に選べる制度でございまして、特定口座に入らなければいけないということではないのでございます。
〇委員
金融小委員会ができたのは、去年でしたでしょうか。あのときに、基本的な政府の方針として「貯蓄優遇から投資優遇へ」というのがありまして、小委員会のほうで、それがどうなるのだろうということで、けっこう証券業界関係の方は、税制でもそれが基本になるのだというようなことを主張されておられたのですが、先ほど御説明いただいて、それから「あるべき税制の構築」、これを見てみたら、「優遇」という言葉がなくなって、「貯蓄から投資へ」と、ずいぶん表現が柔らかになっているのですが、これは税制調査会での税制の基本的な方針としては、せめて貯蓄並みに投資も扱いましょうと、こういう基本的な方針ということで理解すればよろしいのでしょうね。簡単にいうと、利子並み課税というのがずっと大体金融商品で来ましたけれども、今度はそれを一歩超えて、投資のほうはもうちょっと政策的に優遇する。そういう発想ではないということだと私は思うのですけれども、先ほどの御説明もそれでよろしいのですね。
〇委員
ちょっとわかりにくいな。
〇委員
「貯蓄優遇から投資優遇」というと、いわゆる貯蓄よりも投資のほうを優遇しろと言っているように感じるのですが、それを先生が中心でまとめられたこれは、私見ましたけれども、いわゆる「優遇」を取りまして、「貯蓄から投資へ」と、こういう表現になっていますね。
〇委員
いつ「優遇」が取れたか、記憶が定かではないのだけど、そういうことがあったのでしょうな。
〇委員
基本的な方針としましては、投資を貯蓄並みに扱いましょうと、いわゆる利子並み課税、それでよろしいのでしょうか。いかがでしょうか、基本的な方針というのは。
〇委員
何かありますか。
〇事務局
この「貯蓄から投資」というのは、税制に限らず政府の政策的な方向として出されておるのであろうと理解しております。税制の構築もこれに沿って考えるべしということで、貯蓄から投資への切り替えが指向されているというおまとめをいただいたのであろうと思いますけれども、いまの新証券税制の「貯蓄から投資」という部分は、先ほど見ていただいた複雑な優遇措置でそれにこたえる形になっておるのですけれども、税調の基本方針では、金融商品間の中立性とか公平性とか制度の簡素化といったことも言っていただいております。昨年の金融小でも、まだ投資信託ですとか配当の課税について宿題が残っておるような認識もしてございまして、そういったところを今後ぜひ御議論をいただきたいなというのが私どもの立場でございます。
〇委員
基本的方針としては、何も投資を優遇しろと、株価の問題ではありませんけれども、大体足並みをそろえる、バランスをとるという感覚でよろしいのでしょうね。どちらにしても租税特別措置になってしまいますけれども。
〇事務局
その点については、また改めて基礎小の時間もいただいて、私ども資料も出させていただきたいと考えております。
〇委員
まだそれは決めていないよね。どっちのバランスでどうやるか。ただ、キャピタルゲインのところが、26%を20%にしようとか、そういう議論をしていて、いまのところ、イコールフッティングでというような議論になっているのだけど、いまの委員の議論をさらに言うのは、もうちょっと議論が必要でしょうね。
〇委員
事実認識を含めて証券税制で話したいのですけど、もし間違っていたら訂正いただくとして、例の特定口座。申告分離にする。しかし申告になじまない人がいるので、特定口座、マイアカウントみたいなものですよね、それをつくろうと。
これは、なぜこんなに混乱を生じてしまったのかというと、いろいろな特例ができた。暫定税率とか特別控除とか、さらに緊急投資優遇措置ですか。これ、どれでも使おうとすると、結局、申告しなければいけないわけですよね。そうすると、現実問題として、これを使わない人はまずいないだろうと。そうすると、結局は申告をしなければいけないので、それは申告するのはいいと。次の第2の問題は、申告するときは証券税制のところだけではなくて、根っこからやらなければいけないわけですよね。給与所得も全部当然確定申告書を書かなければいけない。だから、ある意味でこんがらがったというか、この証券税制を簡素化するというのは、とりあえず証券の部分に関しては、そこだけ閉じて申告する。ほかの給与所得とかは忘れて、証券の所得のところだけで特別措置を使ったり、損失が起きたらその中で相殺し合ったり云々のことですけれども、そういう考え方はできないのですか。本来申告だから、この証券税制を切り離した形での申告。
〇委員
それでいいんでしょう。それでいいんですよ。
〇委員
だけど、現在、最終的に申告しようとするときは、そこだけではなくて、給与所得も含めて確定申告書を全部つくらなければいけないわけでしょう。
〇委員
事務局からお答えしてください。
〇事務局
申告分離課税という仕組みでございますので、申告は株の譲渡益についてだけやっていただければよろしいのだと思いますが、その関係で、例えば合計所得金額というのが増える形になって、場合によっては旦那様の配偶者控除とか配偶者特別控除に影響するということはありますけれども、御本人は株の申告分離一本でやっていただければいい仕組みだということでございます。
〇委員
いま特別減税をやっていますよね。定率減税をやったり。定率減税を計算するときなども生じるから、結局、それ自身は申告分離なのでしょうけども、本人自身の税額を固めるために、確定申告書自身を全部提出しなければいけないわけですよね。
〇事務局
若干説明がおかしくて恐縮でございました。ほかに所得がおありになるときには、そちらの所得もあわせて確定申告していただく必要があります。それはある意味では当然だと思いますけれども。
〇委員
この証券税制について、ちょっと申し上げたいと思うのだけど、基本的に、面倒だとか複雑だとかという批判には、我々としてはまじめに一生懸命対応する必要はない。金を儲けるのなら、それなりの複雑さも克服しなければいかんし、勉強もしなければいかんわけなので、それは単に横着者の言っているセリフなので、耳を貸す必要はないと思うわけであります。
それから、先ほどの委員が言われた、3年間ぐらいフリーにしたらどうだと、こういうお話なのですが、これは会長のほうからも言われたように、私はやはり株式で得た所得も所得の堂々たる一環なわけでありまして、いろいろ存続の理由というのはあると思うのですが、私なんかは、アメリカの去年、おととしあたりの税収を見ると、株式譲渡益というものが相当の財政再建に貢献している。いまは2,000億円ぐらいの微々たるものかもしれないが、これがいずれ1兆円になったり、2兆円になったり、非常に財政に寄与する可能性がある。その卵はやはりつぶさないで取っておきたいという気がいたします。とりわけ課税最低限とか配偶者特別控除とか云々をやっているときに、株だけはいくら儲かってもノータックスですよというのは、なかなか世間の理解は得られないのではないか。
それから、源泉徴収をもう一回復活しろというような業界サイドからの御要望があるようでありますが、それならばこの100万円控除とか1,000万円非課税とかいうのは、またもとに戻す。一切原状回復といいますか、昔に戻すというぐらいの言い方はしていいのではないかと思うわけであります。
ここら辺までは当局が非常に喜びそうなことばかり言いましたが、少し耳に痛いことも言わせていただきます。
1つは、これは制度面はもうすでに法律が動いている話なので、どうしようもないという現実があるのでしょうけれども、やはり当初からいろいろそろえすぎた、手をかけすぎたという印象はどうしても拭えないわけなのであります。この資料にもあるように、暫定税率があって、100万円控除があって、1,000万円非課税がある。私はこの1,000万円非課税だけでもよかったのではないかと。何でこんな3つ、あるいはもっとあるのだろうけれども、ごろごろ並べて、これは即座に理解しがたいという批判は、その限りでは当たる。しかし、これはもう制度が動いている話。とりわけ100万円特別控除なんていうのは、もう10月から適用例が出てくるということなので、いまさらということであります。
あとは特定口座なのでありますが、これは結論から申し上げて、この特定口座をつくったということは、失敗だったということをはっきりさせたい。いろいろ制度があって、投資家、証券会社からわかりにくい、複雑だと。じゃあ、一括して証券会社が代行しますよというようないきさつで生まれたかもしれないけれども、ここで、当局が使ったかどうか知りませんが、「申告不要制度の創設」というような紹介の仕方をしている。特定口座をつくれば、何でもかんでも証券会社がやってくれるというような誤解を世間に与えてしまったというのは失態であった。私は実際の問題として、これはほとんどの投資家のケースで確定申告が必要であるというのが偽らざる現実ではないか。私はそのくらい、確定申告はしていただきますということを、一番最初にはっきり言うべきであったと思うわけであります。
確定申告が面倒くさいからどうのこうのというのも、税調の中のこれまでの議論からいうと、年末調整をやめろだとかという議論もあって、全部申告制に移行しろなんていうことを一方で言っているわけで、株で売って儲けたとか儲けないとかという話で、確定申告はちょっと面倒くさいですねなんていう、そういう意見に同調するのはいかがなものか。例えば、我々なんかも原稿料とか講演料とか、いろいろ入りまして、毎年確定申告はしているわけなので、それはお金が入ったのだからしようがないと理解してもらうしかない。
ただ、この特定口座の現実の制度設計からいいますと、確かにわかりにくい。わかりにくいし、しかもこれをやれるのが、大手の資金力もある、組織力もある、ノウハウもある、そういう大手に限られがちだということで、この特定口座に株が中小証券から移動してしまうというあたりも、業界の混乱要因になる。それがまた1つ制度の評判を悪くしている要因ではないかと思うわけであります。
2点ばかり意見を言いたいわけでありますが、1つは、特定口座という制度が、1つは源泉徴収をとりあえずします、そしてもう一つは年間取引報告書を投資家に提供しますと、二本立てでなっているわけでありますが、私は、いつ買った、いつ売ったという年間の取引報告書は、大手に限らず、準大手とか外資系とか中小証券とかでもできるのではないか。だから、特定口座という名前にこだわらないで、年間取引報告書の1枚紙での記録記載をほかの証券会社にもできるようにしたらどうか。そのためには時間も必要でありますから、特定口座の申し込みというか開設の期限がたしか今年いっぱいですか、これは延長してもいいのではないか。準備もあるでしょうし、というのが1つの意見であります。
何よりも、特定口座ということ、またいろいろいじくり回すと、そこでまたわからなくなってしまう。しかし、実態はそんなに複雑な話とは思わない。なぜならば、本人が最終的には確定申告を自分でやらなければいけないということを前提にするならば、単に計算の補助手段であるにすぎないという事実をはっきりさせるのが何よりも優先されるべきではないか。そこからいろいろな対策が出てくる。あるいは期限の延長等々の問題も出てくると思います。
〇委員
明確な論点の整理ですね。
〇委員
大体いまおっしゃったことと一緒なのですが、このキャピタルゲイン、戦後40年間ずっと非課税だったのが、消費税を入れるというのだったら、やはりこういうものは非課税にはちょっと放置できないのではないかということで、とりあえず源泉分離で入った。それが定着したら次は総合課税ということだったのです。それがいつ来るかなと思っていたら、割合早くて平成15年だと。これはむしろ早いペースだなという感じがするわけです。しかし、そのためには円滑に御協力を願わなければいけない。証券会社にも納税者にもということでございまして、それでいろいろ知恵を関係者が出されて、特定口座なり、みなし取得価額制度をつくった。それがために逆に複雑になってしまったという面もありますけれども、そこは証券会社のほうももうちょっとサービスしてもらって、例えば前からそこに保護預りしていなくても、取得価額を立証していただいたら、みなしでなくてもいいようなことを認めるとか、もう少し弾力的にやっていただければ混乱も少なかったのかなと。しかし、これからまたさらに話し合いをされるということですから、非常にけっこうなことだと思います。
ぜひとも、せっかくの基本方針でございますから、円滑にいくように、関係者でひとつ根気よく粘り強く改善のための検討を続けられて、ぜひ予定どおり円滑にされていただいたらと思うわけでございます。ここへ来てまた全く新しい方向ということでありましても、やはり今後消費課税をいろいろ議論するあたりの関係等もありますと、これが非課税ということでは、なかなか世の中に訴求する力がないということでございます。
そういった意味におきまして、前にもちょっと申し上げたこともあるかもしれませんが、譲渡したら譲渡益が出るから課税という、それがいろいろややこしいというなら、むしろ取得したときに、即、2割、3割取得価額を下げてやって、損金に見てやる。そのときに勝負がつくような、そういう方法もあったのかなと。それはさらに取得価額を下げてしまいますから、売ったときには利益がもっと大きくなる。それによってかえって売らなくなる。売らなくなれば市場にはいい影響があるのではないかなという感じもするのですが、これはもう現行制度が発足していますから、これを大事にしていくほかないので、いまいろいろ言っても混乱を招くわけですから、ぜひともいまの仕組みを粘り強く御検討いただきたいと思うわけでございます。
それから、先ほどの委員からお話のあった貯蓄から投資への切り替え、時々「優遇」という言葉が入ることがあるわけですけれども、やはり貯蓄なのか、投資なのか、リスクキャピタルなのか、元本保証のあるもの、元本保証もこのごろはあやしいわけですけれども、そういったものをどういう投資をするかは、やはり納税者の御判断ということで、税制としてどっちかを優遇するというのはいかがかなと。
しかし、6ページの表現にもございますように、要するに、金融商品間の中立性をここで強調されている。この中立性、それぞれの貯蓄なり株式なりの商品の特性に応じた税制上の仕組みを考える。それは必ずしも一緒ではないと思います。利子と配当、キャピタルゲイン。しかし、それぞれの商品の特性に応じた仕組みを考えてやる。それが一番の要件ではないか。そういう意味で、ここで中立性、公平性の確保とございますから、それでよろしいと思いますので、先ほどの「貯蓄から投資への優遇」と言ってしまうと、少し言いすぎかなと。しかし、これは「優遇」という言葉が外されていますから、けっこうなことだと思います。
〇委員
私個人は、株式投資というのは今日に至るまで一回もやったことがないんだ。だからこんな話は全然わからない。ただ、言えることは、やはり朝令暮改というのは恥ずかしいことなんだね。権威のある組織が一応決めたのだから。だけども、決めた経過は、誰かが言ったけど、これは我々の預かり知らないところで、財務大臣と党がガタガタ決めたということのほうが多いわけです。我々は追認しただけだから、実際は。だから、こんなものは別に恥ずかしいことではない。
2番目に、やはりいろいろ問題が言われているのだから、悪いことがあったら、それは朝令暮改でも何でもいいから、改めるにはばかることなかれですよ、こんな話は。腹さえ決めればいいわけで、細かいことは別にして。
世の中大体ちょっとおかしくなると、税金が悪いと必ずツケを税制に回すんだ。何でもそうだ。法人税の話でも、空洞化の話でもそうだし、この話は全部。つけ回しやすいんですよ、税制というのは。これだけ言っていればいいのだから。全部減税しろという話に統一されるんだね。こんな風潮はどこかでやめなければならないでしょう。
いずれにしても、僕はどういうふうに最後仕上がるのか知らないけど、とにかく、日銀が今度異例のことをやったのに比べれば、ぐっと玉は小さいけど、まあまあまともに、こちらも個人がマーケットに入ることについて、多少はいまよりも障害を小さくするよという趣旨が伝わればいいわけで、こんなことで僕は個人投資家がぞろぞろ今の市場へ入ってくると全然思わない。株が上がれば、黙っていたって入ってくるんですよ、こんなものは。上がらないから入ってこないだけの話だ。
しかし、いわれなき中傷をされるのはこっちは不愉快だから、濡れ衣は晴らしておく。あとは技術的なことは役所が全部やるのだろうから、お任せするというのが私の心境です。
〇委員
先ほどの関係で伺いたいのですが、申告分離というのは前からありましたけれども、今度の申告分離というのは、株の売った値段から買った値段を引いて計算をしてくださいと。それで申告をしてくださいということまでわかりますが、さて、それでいわゆる恒久的減税を受けるときの所得金額がどのぐらいですとか、配偶者特別控除のときの金額がこのぐらいですと、ここにまでカウントするということはないのだと思っていたのですが、全く別立ての総合課税のほうの申告と、こっちの別立ての申告分離、それは別々でよろしいのでしょうね。ちょっと教えていただけますか。
〇事務局
先ほどの委員のお話にもやや不適切なお答えをして、申しわけございませんでした。申告分離課税ではございますけれども、いま委員から御指摘いただいた定率減税あるいは配偶者控除のカウント、すべて影響する仕組みにいまなっております。
〇委員
定率減税は影響するんですよ、儲けたあとでまた。
〇委員
時間がないようなので、単純に質問します。
このプロジェクトチームのことなのですが、いま業界のヒアリングをやっておられる最中のようですが、いつまでにどうされるつもりか。というのは、先ほどおっしゃったように、この話は混乱に混乱が加わっているので、スピードだと思うのです。いま証券会社からそれぞれの株主のところにいろいろなダイレクトメールが来て、特定口座に入ったほうがいいですよ、どうだこうだとあって、みんな株主は判子を押して待っていて、何か変わりそうだからといって、机の引き出しに入れたままになっているという誤解に基づく混乱がもう一度起きているんですよね。だから、これをどういうふうにするのか。もし中身の腹案がまだ言えないのなら、運び方の腹案だけでも、いつごろまでにどうするつもりですか。
〇事務局
先ほどの資料の5ページに書かせていただいてございますが、現在、証券界からヒアリングを継続してございまして、趣旨の2段目にございますけれども、運用面の措置は速やかに実施するとともに、法改正が必要な事項については、15年度税制改正において所要の措置を講ずる方向で検討するということでございまして、政省令以下で対応できるものにつきましては、検討した後にできるだけ早く関係者にお知らせをして実施をしたいと思っております。いま鋭意作業をしてございます。
〇委員
ただ、1月1日から始まるものについては、いままでの制度がそのまま移されるわけですよね。何か期待して待っている方がいるかもしれないけれども。
〇委員
先ほどの委員のような専門家が質問しなければならないというのは、おかしいことですよね。
〇委員
制度がこんがらがっちゃうのでは。
〇委員
そのとおりで、しかし、ここは非常に重要なところで、申告分離課税に移ったということは、決して投資家にとって悪くないし、重要なことだと。それをまずネジを巻いて訴えなければいけない。それはどうしてかといえば、これは株式の範囲ですけれども、損失があれば他のゲインから相殺できる。そして、今回3年ですけれども、損失の繰越しもできる。それはいままでの源泉分離では、選択だったけれども、できない。そうではなくて、ロスがあったときは、それに対して国はリスクをしょいますということを言っているわけで、これ自身、株式等のキャピタルゲインに関して申告分離に一本化したことは、非常に重要な改革なのだと。
ただ、混乱が起きているのは、繰り返しになりますけれども、申告分離と言いながら、確定申告するときは全部やらなければいけないというのが、やはり僕はどうしてもそこがおかしいと思います。そうすると、二元的な所得というよりも、考え方とすれば金融所得というのが1つある。ただ、いま我々議論しているのは、株式の譲渡益に関しては1つのくくりをつくるのだと。そこで閉じるのだと。申告分離は非常に重要な改革なのですと。そして、申告分離を実行するに当たっては、株式等のキャピタルゲインというカテゴリーを設けて、そこで申告は閉じますと。
そして、閉じるときにこんがらがったのは、特定口座という、我々は「マイアカウント」と呼んでいたのですけれども、僕が思っていたのは、ある証券会社に私が1つ持つ。ほかのところには持てない。そうすれば、その証券会社が全部僕の代わりにやってくれる。そして、私の確定申告に代わって、その証券会社から取引と1年間の譲渡益に関する証明書が行くというのならわかったわけですけれども、結局、これが「マイアカウンツ」になったわけですよね。いろいろ事情があったと思うのですけれども。
したがって、「マイアカウンツ」になった限り、個人がいろいろな特典を利用する意味からも、結局申告しなければいけない。したがって、「マイアカウンツ」にした時点で、この特定口座というのは、特定な名前はもうなくなったわけですよね。だから、いまのような形の特定口座で進めるならば、思い切って言えばやめる。そして、申告分離なのだから、それぞれ皆さん申告してください。しかし、その申告の仕方は限りなく簡単にしますよと。特別減税とか配偶者控除の云々とかありますけども、まさにその辺がネックならば、その辺は思い切ってネグってしまうような、そういう考え方のほうが制度が生きると思います。
〇委員
ネグれない理由は何なんですか。いま2人の委員が出されて、僕も疑問なのですけど、何で申告分離と言いつつ定率減税だけ認めるのですか。何で配偶者特別控除のときにこれをカウントするんですか。それはわからないですね。当時の経過はどういうことだったんですかね。
〇事務局
申告分離ということで、株の譲渡益、あるいは今回譲渡損は繰越控除という3年間の仕組みがございますけれども、他の所得との損益通算をしないという意味で申告分離でございまして、その上で、その方に株の譲渡益以外に所得があります場合には、全部でいくら所得があったかということで、扶養の関係ですとか、定率減税のほうも効かせようということでございまして、その人の所得が申告分離を前提としながらも、全部でどれぐらいあったかというところで減税などは効かせているという発想だと思います。
〇委員
その発想は、変えることはそう難しくないような感じもするけど。
〇委員
株式について申告分離が難しいのは、計算が面倒だから。だから計算は証券会社が代わってやりますと。だけどいま言っているのは、計算は証券会社がやってもらえるけれども、申告が面倒だという話でしょう。申告が面倒では申告分離も申告納税制度も成り立たないのですから、計算が簡単になったのだから、あとは申告を税理士にでも頼んでやってもらうというのは当然ではないですか。それに中学校を出れば書けるように申告書ってつくってありますから、申告するのが面倒で申告分離なんて言われても、それはもう聞く必要ないし、この制度をうまく生かしていけば、計算が面倒なところがある程度省略されるのですから、申告分離から本当の総合課税にだって移行できるステップになると思うのです。だからあまりむちゃくちゃ文句言っても、計算のところだけは他人任せにできるというところは、素人にとっては大変なプラスだと思います。
〇委員
短く一言だけ言います。
最近、私も機会があって証券会社の人と話をすることがありまして、この制度について聞きました。確かにこの制度全体は非常にややこしくて、私も十分理解できないのですけれども、結果的に逆にお客の立場からいうと、個々の人にとっては、自分の該当するケースは非常に部分的であって、そんな難しい話でもないと思うのです。証券会社の担当者が理解するのが難しくて大変だと。それから、これによって客離れするなんていうのは、説明の仕方が悪いからで、これをまたいじりますと、すでにお客のほうにインプットされつつあるわけですから、また非常に混乱する。これ自体を、私の意見では、このまま進めていいと思います。何年かすればすっきりするわけですね、時間がたてば。それから、もしいじるとしても、最小限にしないと、またまた大変な混乱が起きて、よけいややこしいことになると私は思います。
〇委員
質問ですけれども、マイアカウントが1社だけという話を最近新聞を読んだのですが、それが複数になった理由は何でなんですか。
〇委員
事務局が考えている間に、ほかの委員で簡単に御質問があれば。
〇委員
簡単に。証券税制について、所得税についてはいろいろ議論があるので、せっかく総務省の方も来ていただいているので、あの5%というのが、具体的な運用方法が意外と新聞広告その他であまりわかっていない。あれは5%の通知が来て、また申告しなければいけないのか。それとも、そのまま払えばいいのか。課税通知をそのまま固定資産税みたいに払えばいいのか。あるいは自分で申告書を書かなければいけないのか。
あるいはもう一つ、奥さんがやった場合、103万円まで配偶者控除を受けられる。所得税の場合は、これは完全に離れたやつだから、奥さんが株でちょっと儲けても、旦那さんは配偶者控除を適用になる。しかし、住民税はそうではない。奥さんが株で利益が出た場合、合算してしまって、住民税の配偶者控除が受けられないケースがある。等々、所得税に比べると、住民税の広報体制が、それだけ話題になっていないのかもしれないけれども、やや遅れているかなということで、1つわかりやすいように説明する機会をつくってみたらどうかと思います。
〇委員
そうですね。今日お答えができればそれでもいいですけれども、何か資料も必要でしょう。
〇事務局
いまお話しいただいたように、住民税は現年課税ではなくて翌年課税になるので、ちょっと手続きが違ったところも出てまいりますし、いまおっしゃられた2点目のところは、もうちょっとわかりやすくできましたら……。
〇委員
そうですね。やっていただきましょう。とかく地方税のほうに目がいかないので、大変失礼していますから、時たま焦点を当ててね。
〇事務局
先ほどの1証券会社1口座ということで、投資家にとっては特定口座を証券会社ごとに結果的に複数つくれるようになっておりますが、これは現状が複数の証券会社と取引をしておられる投資家がかなりおられるということで、こういう形で制度を設計したということでございまして、その結果が複雑になっているという御指摘は、ヒアリングの中でもございます。
〇委員
ただ、1社には限定できなかったのでしょうね、多分。現実問題としてみんなやっているからね。
〇委員
そうすると、申告の場合は複数のが一緒になってやるわけですか。
〇事務局
複数の証券会社で特定口座を設けておられますと、それぞれの証券会社から年間取引報告書が出て、それを集約して申告されると。
〇委員
さて、後半になって俄然盛り上がりましたけど、時間も過ぎましたから、今日は終わりにしたいと思います。
次回以降の予定を申し上げて散会にしたいと思います。講義と同じで、終わった途端に私語が飛び交うけど、いいですか。次の時間わかっていますか。
来週1日、火曜日、2時から4時まで、消費税、外形、土地税制等について行いますので、お忙しいとは思いますが、ぜひ御参集ください。次々回は10月11日であります。金曜日になりますが、午後でございます。御予定ください。大体10月下旬まで週1回のペースになると思いますので、予めテークノートをしておいていただけたらと思います。よろしゅうございますか。よろしくお願いいたします。
では、どうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。