第17回基礎問題小委員会 議事録

平成14年8月30日開催

委員

それでは、時間になりました。17回目になりますが、基礎問題小委員会、開催させていただきます。

今日は2時間半コースですので、あらかじめ覚悟しておいてください。休憩もなしにします。

それでは、議事は議事予定で既にお配りのごとく、今日は4つほど議論すべきものがございますので、順次消化していただきたいと思いますが、議事を進行したあとに、中間整理についての文案について、御議論いただきたいと思います。

それでは、前回、研究開発投資と投資減税、外形課税について行いましたので、今日は来年の税制に絡めて、相続・贈与の話、消費税の免税点等の話、配偶者特別控除・特定扶養控除、この3つの議論を固めた後で、総会に出そうと思っております中間まとめ、その文案をあとでお配りいたしまして、御検討いただきたいと考えております。

それでは、最初に、相続税・贈与税は非常に重要なので、これを一渡り御説明をいただいたあとで議論をして次にいくという段取りで、今日はまず最初にこれを集中的に議論いたしたいと思います。

では、お願いします。

事務局

それでは、お手元の「基礎小17-1」『説明資料(相続税・贈与税関係)』、この資料でございますが、これに従いまして御説明をさせていただきます。

まず、1枚おめくりいただきまして1ページ目でございます。6月にいただきました基本方針の復習でございますが、ここに書かれておりますのは2点ございます。一つは相続税本体のお話、もう一つが一体化課税の話でございます。本体につきましては、ここにございますように、経済のストック化の進展、社会保障の充実、高齢化の進展等を踏まえまして、従来より広い範囲に適切な税負担を求める必要がある。他方、最高税率の引下げ、累進の現行程度の水準の維持というようなことがうたわれているわけでございます。すでに方向をお示しいただいているということでございます。

それから、一体化の関係でございますが、こちらはここにございますように、「高齢化の進展に伴って相続による次世代への資産移転の時期がより後半にシフトしていることから、資産移転の時期の選択に対する中立性を確保することが重要となってきている」という御指摘でございます。「高齢者の保有する資産が、現在より早い時期に次世代に移転するようになれば、その有効活用を通じて経済社会への活性化に資するといった点も期待される。このような観点から、相続税・贈与税の調整のあり方(いわゆる一体化でございますが)を検討すべきである」と、こういう御提言をいただいているわけでございます。

2ページ目、3ページ目でございますが、2ページはいわゆる「骨太2002」、3ページ目では与党3党首の合意をつけさせていただいております。政府与党の方針としましても、この一体化の関係については来年度税制改正でぜひやれと、そして原則15年1月1日に遡及してやれと、こういう御指示をいただいているわけでございます。

それから、4ページ目から以下5ページほど、基本的には既にご覧いただいている資料でございますが、いまの一体化、それから相続税の関係の御議論の基礎資料ということで、改めて思い起こしていただく上でつけさせていただきました。

4ページ目でございますけれども、家計資産の残高。バブル後でもこの30年で5倍ぐらいの伸びになっておるということでございます。

5ページ目でございますが、高齢世帯の金融資産のウエイトが増してきているという数字がご覧いただけるかと思います。

6ページ目は社会保障との関係。相続に着目してより広い税負担を求めるということが一つの方策となり得るという御指摘でございます。

7ページ目、8ページ目、高齢化の進展をご覧いただける資料でございますけれども、特に8ページ目、この平成13年の平均寿命、今回新しく入った数字でございますが、おめでたいことではございますけれども、平均寿命がまた延びたということでございます。高齢化の進展によりまして、いまご覧いただきましたような高齢者の資産が拡大をしておると。そして、これまで60歳、70歳ぐらいで通常相続が行われていたものが、これは幸せなことでございますけれども、80歳、90歳まで長生きをされる。相続がなかなか生じない。いまの贈与税の仕組みは、御承知のとおり暦年取り切りで、しかも税率は相続税逃れを防ぐために禁止的に高い税率を張っておる。これを見直して生前贈与を円滑化すべしというのが、この一体化の御議論の問題意識というふうに承知をいたしております。9ページ目が基本方針での一体化の表現でございます。

そこで、10ページ目でございます。この基本方針を受けまして、夏の間、私ども事務局としていろいろ検討いたしてまいりました。ここにございます1枚紙、これがいま私どもの夏の検討結果ということで、本日御紹介をいたしたい内容でございます。

「相続税・贈与税の一体化措置の導入に向けた検討の方向」ということでございまして、「あるべき税制の構築に向けた基本方針」に基づきまして、生前贈与を通じた次世代への資産移転の円滑化に資する観点から、現在の執行体制の下で可能な相続税・贈与税の一体化措置を導入するためには、以下のような方向に沿ってその具体案を検討する必要があるというふうに考えております。

4項目ございます。まず1番目の項目でございますけれども、「生前贈与を受けた者については、選択により、相続時に、それまでの贈与財産と相続財産とを合算して計算した相続税額から、既に支払った贈与税相当額を控除することにより、贈与税と相続税との間の精算を行うことのできる新たな制度を導入する」ということでございます。

ポイントが4つございます。

まず、「相続時に」というのがポイントなのでございますけれども、6月の基本方針の段階で欧米の例、贈与時における累積課税というような例を御紹介しました。今回の一体化措置の性格でございますけれども、毎年度の贈与時における累積課税ではございませんけれども、相続時における累積課税ということでございます。

1枚おめくりをいただきまして、相続税・贈与税の今回の一体化措置のイメージということで御説明を申し上げます。いま申し上げました欧米の例、これは累積課税といいましても、毎年の贈与時でございますが、毎年の贈与時にそれまでの過去の贈与を積み上げて贈与税率を適用し、過去すでに支払った贈与税額を差し引いて、毎年毎年洗替えをする。さらに相続時に精算をするというのが欧米流のやり方でございます。

今回ここでイメージ図でお示ししておりますものは、そういう毎年毎年の贈与での洗替えということはいたしませんで、毎年毎年の贈与では、それなりに軽減した贈与税率でもって贈与税をいただく。そして、最後相続の段階でそれまでの贈与財産、相続財産を全部足し合わせまして、それに贈与税率を掛けまして、そこから過去お支払いいただいた贈与税額を差し引いて精算をする。こういうシステムでございます。

これは欧米のように贈与時の累積課税を採用しなくても、死亡時における捕捉をしっかり行うことによって、簡素で効率的、執行可能な制度が実現し得るということで考えております。

今までアメリカとかドイツ・フランスの例を既に御紹介をいたしているところでございますけれども、例えばドイツ、フランスは、一定期間の累積課税ということになっておりまして、例えばドイツ、フランスは10年累積ということになっております。この10年の累積でございますと、1年目と、仮に10年たって11年目の贈与ということになりますと、この間は実は中立でなくなっております。このようにドイツ、フランスの今の仕組みは、中立性に限界があるということで、今回、この私どものスキームの中には採り入れてございません。

それから、アメリカは一生累積課税ということになってございますが、これもアメリカと日本の根っこの相続税のシステムからいって、アメリカ式をやる必要はないのではないかというのが私どもの判断でございます。御案内のところでございますけれども、我が国の相続税は、各相続人等が相続または遺贈により取得した財産の合計を、まず法定相続分で分割をいたしたと仮定をいたしまして、相続税の総額を算出し、それを実際の遺産の取得額に応じて按分する計算の仕組みとなっております。このために、遺産課税であるアメリカ式と違いまして、法定相続分できっかり同じ割合で各受贈者に生前贈与がなされていない限りは、仮に毎回の贈与時の累積課税を行っておりましても、相続時点では改めて精算をする必要があるということでございます。したがいまして、仮にアメリカと同様の相続時までの切れ目のない累積課税を行う場合におきましても、一度相続時に精算をすればいわば十分でございまして、毎回の贈与時に精緻な贈与税の累積課税を行う必要はないと考えられるところでございます。相続時における累積課税というのが一番目のポイントでございます。

2番目のポイントは、「選択により」ということでございます。今回の一体化措置は、現行の執行体制の下で可能な措置として、真に生前贈与の円滑化を望む納税者に対して途を開くものということで、選択制とすることが適当と考えられます。この選択でございますけれども、贈与者ごと、例えば贈与者といいますと、お父さん、お母さん両方いるわけですが、お父さん、お母さんごと。それから受贈者ということで、兄弟でございますと、お兄さんは一体化措置を選択するけれども、弟はしないというようなことを認める方向で考えております。

それから、3番目のポイントでございますが、「贈与財産と相続財産とを合算する」ということでございます。合算する贈与財産の価額は、各々の贈与を受けたときの時価ということで考えております。

4番目のポイントは、「相続税額から既に支払った贈与税相当額を控除する」ということでございますが、この控除の中身、仮に既に支払った贈与税額の方が最後に算出した相続税額を上回る場合には、その差額は還付する方向で検討をいたしております。

大きな2番目の項目でございます。「本制度の適用を受ける生前贈与については、贈与を受けた時に支払う贈与税を軽減する」ということでございます。

先ほど、現行の贈与税率は、生前贈与による相続税逃れを防ぐために、禁止的な高い税率になっていると申し上げました。これを軽減するということでございます。具体的な贈与税の負担水準につきましては、今後の検討課題と考えております。中立性、簡素性等の考え方等から、いろいろな考え方があり得るのではないかと思っております。なお検討いたしたいと思っております。

3番目でございますけれども、「本制度の適用に当たっては、贈与者は65歳以上であること、受贈者は子である推定相続人であることなど、一定の要件を設ける」ということでございます。

贈与者の年齢要件は65歳以上に設けるわけでございますけれども、これはもともと、先ほどご覧いただきました「高齢化の進展に伴う資産移転時期の遅れに対処する」というこの制度の趣旨からいきまして、一定以上の高齢者からの贈与ということが適当であろうと思われます。

もちろん、現行の執行体制の下で可能な措置ということでございますから、管理の期間が、そう長くないものという要請もございますし、それから、12ページ目をご覧いただきますと、高齢者の一つの目安ということでございますが、例えば年金の受給資格は65歳、それから、これまでの税法での基準は65歳ないし70歳ということでございますので、65歳というところで線を引くのが妥当ではないかということでございます。

受贈者の要件でございますが、何度も申し上げますが、次世代への資産移転の円滑化に資するという観点がございます。そしてまた、相続税と贈与税との一体化ということでございますので、対象となり得る受贈者の範囲は、次世代であって、かつ、将来においてその贈与者の相続人となり得ると推定される者、すなわち子供に限定するのが制度の趣旨にかなうのではないかと考えております。

13ページをおめくりをいただきますと、御案内の民法の相続人の規定が出てまいります。民法上、第一順位の相続人は子と配偶者ということでございますが、その中で配偶者はいわば贈与者と生計を一にしている存在でございますし、いわゆる次世代ということには当たらないと考えられますので、受贈者から除外する方向で考えております。

孫という御議論があり得るかと思います。孫も相続人ではないということ等から、受贈者から除外する方向で考えております。この中には当然養子も含まれ得ると考えておりますけれども、いわゆる孫養子等につきましては、租税回避防止等の観点から、今後さらに検討する必要があるのではないかと考えております。

「など」ということでその他の要件、まだここは必ずしも固まってきておりませんけれども、先ほど贈与者の方では年齢要件というのが出ているわけでございますけれども、例えば受贈者におきましても、30歳以上とか、何かそれなりに資産を移転を受けて活用する年齢要件というものが必要ではないか。これも今後の検討テーマでございます。

それから、4番目の項目でございますけれども、「なお、本制度の適用に当たっては、租税回避防止措置など、適正な課税を確保するための措置を講ずる」ということで、中身といたしましては、例えば既に6月の基本方針の中にも触れていただいております除斥期間の延長でございますとか、あるいは先ほど受贈者ごと、例えば兄だけ、弟だけでこの制度は選択できるという方向で検討しておりますが、その場合に、選択していない他の相続人から、選択している相続人の申告内容の開示を求めるような、例えばそういうチェックの体制が必要ではないか等々、いま検討をしているところでございます。

全体といたしましては、この一体化措置を選択した受贈者について、当該受贈者に係る贈与時の贈与者の死亡時に、過去の贈与税の申告実績を的確に把握できるような体制を実現する必要があるということで、検討を進めているわけでございます。

以上、私どものこの夏の検討結果ということで、概略を御報告させていただきましたけれども、本措置は何分相続・贈与税制の根幹に関わることでございまして、昨年の連結ほどではないにいたしましても、法案化には相当な作業量を伴います。そのため、他の部分よりは早く秋のうちから固めていって、年度改正に間に合うように作業をするということが肝要かと考えております。本日、現段階での勉強の結果を御報告させていただいておりますけれども、おおむねこの方向で詰めていくということに御了解をいただけましたら、さらに今後これに沿って具体案の策定に向けて詰めてまいりたいということでございます。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

ひと夏かけた研究成果が10ページ1枚というのは少ないように思われますが、これは非常に含蓄のある4項目でありますから、これにつきまして、これからしかと議論いたしたいと思いますし、それから、相続税本体の方で、最高税率を下げる、あるいは課税最低限を引き下げるという議論もございますので、あわせて今からしばらく時間を取りまして議論をいただきたいと思います。

いま申されたように、これは非常に大きな問題でございますから、今日だけではございませんが、少なくともこの4項目につきまして、ある程度基本的な方向をお認めいただきたいというのが今日の出した趣旨でございます。どうぞ、どなたからでも結構です。御意見あるいは御質問をいただけますか。

委員

事務局にも一度お聞きしたことがあるので、難しいのかなということも含めて、ちょっと私が気がついたことだけを申し上げて、皆さんと問題意識だけを共有していただければと思うのですが、新しい仕組みは、孫養子の問題とか、もう一つは、多分課税ベースの話として、贈与時の時価で全部いくので、インフレが起きたり、利子率の調整なんかが多分できないのだろうと。

委員

やらないんです。

委員

やらないのだというところを、どういうふうに考えるのかなというのが一つの問題としてあるのですが、とりわけそれとの関連で私がかなり気になっているのは、65歳以上であるという、この年齢制限がついているということが気になっていて、例えばインフレが起こりそうだとか、地価が上がりそうだとか、場合によっては外国為替なんかもそうですけれども、そういう価格が非常に変わりそうだというような状況があるときに、タックスベースが広がってしまう可能性があるので、できるだけ早く贈与をしたいという希望を持つ贈与者、将来の相続人というものが非常に出てくる可能性があるわけですね。

そのときに、自分が65歳以上であれば、当然この新しい仕組みに従って贈与できるわけですが、65歳以下であると贈与ができない。65歳になるまで待たなくてはいけない。そこで年齢でガラッと差が出てくる。もちろん、65歳で差がある仕組みは、ここにもあるようにたくさんあるわけですが、普通は何か上限があって、例えば年金なんかでもそうですけれども、いくらまでだったらもらえるというような仕組みになっているわけですが、贈与だと、もちろんその税率設計をどうするかということにもよりますけれども、かなり多額の額をバンとやれる人と、年齢がほんのちょっとないがために、それが全くできない人というのが分かれてしまう可能性があって、そこがやはり税に対する不信感みたいなものを生まないかなというのが少し気にはなっている。ただ、それをどうやって直せるのかというのは、私自身もよくわからないのですけれども、そこが一つは気になります。

それとの関連で言いますと、私はドイツ、フランス方式というのは、多分そこら辺それほど問題が少ないといいますか、年齢制限がついていない。アメリカはあまりにも年齢制限がついていませんけれども、一生累積ですから、ここまでいくのはちょっと無理だという事務局の御意見に私も賛成なのですが、「ドイツ、フランス型はどうもうまくいかないのです」とおっしゃっていることの意味が、ちょっとイマイチ私よくわからないので、もし御迷惑でなければ、もう少し何がいけないのかを簡明に教えていただければと思います。

委員

では、後段の質問にお答えください。要するに10年で動いたときの問題でしょうから。ドイツ、フランス型が不公平で採らないと言った根拠を、もうちょっと明確にしてくれということです。

事務局

わかりました。ドイツ、フランス方式は、御案内のことでございますけれども、10年間の累積ということになっております。したがいまして、ずっとローリングをしていくわけでございますけれども、仮に例えば1年目にドーンと贈与をいたしまして、10年お休みして、11年目にまた贈与するということになりますと、10年のローリングでございますから、1年目の贈与と11年目の贈与というのは、これは調整がなされないわけでございます。そういう意味では、期間を限ってしまったために、10年を超えた調整をされますと、そこは生前贈与と相続との間で中立性が保たれないということになるわけでございます。したがいまして、今の私どもがここでお示ししている案は、そういうことはなくて、逆に65歳というところで切ることによって、あとは亡くなるところまで不定期でということになっておりますので、その間、65歳以上は亡くなるところまで中立性が維持をされるということで、今のドイツ、フランスの10年にちょん切った制度よりは、中立性が高いのではないかと考えているわけでございます。

委員

いろいろあると思いますが、委員の問題提起もまさに経済学者が考えそうなことだし、私も金利とかインフレは考えているんです。ただ、これはやはり第一歩で、現在の執行体制ということと、それから世代間の資産移転を速やかにというところが65歳のポイントでございましょう。まあ、いろいろこれから御議論いただきたいと思います。

委員

考え方の方向として結構ではないかと思います。結構な方向だと思いますので、シャウプ勧告のときのような完全な累積、あるいはアメリカ的な累積ということまではいかないにしても、そうした最終的な姿を頭に置いて考えていくことが適当ではないかと思うわけでございます。

現下の経済情勢、景気対策として、できるだけこういった活用を図るというのも一つの考え方ではありましょうが、あまりそういうことにこだわるということでなくて、やはり税制のシステムとして、こういうことではないかということで、考え方で整理していった方がいいのではないか。一回制度をつくりますと、なかなかあとで手直しということも難しい面もありますので、大きな方向は制度的に統一していくのだということを理念としていかれたらいかがかと思います。

そういった意味におきまして、一つの制約は執行体制でございます。確かに現在の執行体制が完璧であるとは、一生累積に耐えられるかということはありますけれども、まあ、現時点でも例えば農地の生前贈与20年間というのもやってきている経緯もあります。ですから、現在の執行体制の制約をあまり気にしない、むしろ執行体制についてきてもらう。こうしたことを執行体制が考えることによって、だんだん資産の管理というものにつきまして、経験、実績を積んでいくという面も執行体制であるのではないかと思いますので、「現在の執行体制の下での可能な」という表現がありますけれども、それにとどまらず、少し引っ張っていくような気概で組織されたらいかがかと思うわけでございます。

そういった意味におきまして、あまり、中途半端というと恐縮ですけれども、アメリカ流とドイツ、フランス流とをつなぎ合わせたり何とかというような、そういうことよりは、やはりすっきりした一本の理想形に近いものにされていったほうがいいのではないか、こんな感じがいたします。

委員

いまの原案は、理想形なんですか。

事務局

まあ、65歳というのがありますけれども。

委員

一つあるけど、まあしようがないということですか。

事務局

理想形だと思っておりますし、それから、本法改正でかなり中期的にも対応し得る制度をつくりたいと思っております。

委員

わかりました。

委員

この相続税・贈与税の問題ですが、最初から一本化しようという命題が出ていて、それに対する答えを出しているわけですね。本来、相続税・贈与税というのは非常に大きな意味がありますよね。非常にいろいろな論争もありますし、これまでの議論としては非常に不十分であると思います。だから、もっともっと議論する必要がある。

そこで、これを暫定措置ではなくて、かなり長く続くような措置とすることはいかがなものかと思うのです。例えば配偶者については、蹴っ飛ばしているわけですね。生計を一つにしていない、次世代への移転を円滑化するのが目的であるから、配偶者は対象にならない。配偶者はどうしてだめなのかという議論があるわけですよね。配偶者に移転をするのは一向に構わないではないかという議論もあるし、そういうことをやっている国もあるわけです。ですから、議論が非常に不十分であると私は思います。

委員

いや、議論はこれからやるんですよ。

委員

まあそうなんですが、とりあえずこれを来年度に出そうということですよね。だから、あまり拙速に過ぎないのかという感じがあるわけです。ですから、これをやるとすれば、やはり暫定措置という性格を帯びざるを得ないのではないだろうかという気もするわけです。

相続税の本体部分の議論についても、最高税率を下げるのはいいかと思うのですけど、課税最低限を下げることについても、これは相当議論がありますね。やはり相続税課税は普通の所得課税とは違うのだから、そこは課税最低限を下げるのは果たしてどうなのかと、そういう反対意見ももちろんあるわけですね。これはどういうふうに考えたらいいのでしょう。やはり暫定的措置ではないのかどうか。

委員

それはさっき説明したように、安定した制度にしたいというねらいがあるから、そのためには一生懸命議論するというのは非常に重要ですから、秋にかけて……。これは今日、4項目ある基本方針を出しただけでありますから、制度設計がまだ完全でありませんから、当然おっしゃるとおり不十分ですよ。ただ、これがもうちょっと制度設計されてきたところで、いくつか、例えば妻がどうだとか等々議論があると思いますから。

ただ、私の個人的な感じでは、これまで相続税・贈与税は、累次の答申で随分議論したと思っていますけどね。まあ個人的考えがあるかもしれません。

委員

主に贈与税の問題なんです。2番目の資料の3ページにある「贈与税の課税状況の推移」というのを見ると、税額も低いのですが、年々減ってきているのは、土地が下がってきているとか、あるいは贈与税を緩和したからということなのでしょうか。それは質問です。

それから、執行体制のことですけれども、現在の枠は年間110万円でしたね。贈与する場合、土地とか株券とかいうのは捕捉できやすいのでしょうけれども、現金というか、預金というか、お金ですね、これの捕捉というのは、果たしてどのぐらいできるのかということをちょっとお聞きしたいのです。

というのは、私の知り合いの弁護士の話によると、現在の110万円という枠をどういうふうに使うかというと、110万円でなく120万円もらったことにしなさいと。10万円だけ納税すれば、これが将来証拠になるということで、何か証拠のために枠を使っているにすぎない。現実には一体どのぐらい渡っているかわからないということも言っているわけですね。ですから、その辺の問題はどうなのか。

それから、贈与税の枠を超えて、贈与税法違反で追徴課税されたケースというのは、どのぐらいあるのかというのがわかったら教えていただきたい。

最後に、先ほど事務局の方で、申告実績を把握する手段、体制を整えてからとおっしゃいましたが、これはどういうことを考えておられるのか。以上が質問です。私は基本的にはこの考えに別に反対ではないのですが、執行体制のことを中心にお聞きしたい。

委員

今の御質問に事務局の方から返答をいただけますか。

事務局

執行当局にかかる部分もございますから、必ずしも十分な御説明がこの場でできるかどうかわかりませんが、一つは贈与税の課税実績ということで申しますと、御指摘のような地価の下落等もございますでしょうし、それから、3ページの資料をごらんいただきますように、基礎控除も上げておりますので、そういう絡みもあるかと思います。

具体的に現金で渡した場合に、どれぐらい把握できているかと。これはなかなか難しくて、いま私ども手元に回答を持ち合わせてございませんが、現場において適正に執行していくということかと思います。

それから、体制の話ということでございましたけれども、要は、先ほどの御説明の繰り返しになるかもしれませんけれども、今回の措置は、相続時にそれまでの贈与の申告実績を振り返りまして、それをチェックして、そして過去の贈与財産と相続財産を合算して課税をして、過去にお支払いいただいた贈与税額を差し引いて精算するというシステムでございますので、相続の情報が税務署にまいりまして、そのときに過去の贈与の申告をチェックして、適正な課税ができるようにという、その体制の構築をこれから図るということでございます。

ただ、6月の基本方針にも書いていただいておりますように、基本的には現在の執行体制の下で可能な措置ということでございますから、そういう方向で、国税庁の内部事務処理のシステムの開発等もございますが、そういうことを考えているわけでございます。

事務局

私がこの制度改正がどうしても必要だと思った理由を少しざっくばらんに話させていただきます。

資料をご覧いただきますと、平均が大体300万円ぐらいの贈与で、年間40万件ぐらい行われているという統計があります。

しかし、いままさに委員が言われたとおり、現金の贈与は、申告しないで、子供にやっているというのが多分実態としてあると思います。実は統計に出ている贈与の多くは、土地ですとか、株ですとか、そういうものを分筆して、細切れにしながら徐々に移していっているという時代であります。したがって、本当の大金持ちは、こんな毎年300万円ずつ移したって、10年やっても3,000万円にしかならないわけで、こういう形をとっているかどうか、極めて疑問があると思います。

しかもこの贈与は、ここでおわかりのとおり、現金である場合というのは、実は法定相続人への贈与とは限りません。現実に行われている、他人への贈与も実はこの贈与税でございまして、そういう点では、実は他人ですけど、一番世話になっている長男のお嫁さんなり、次男のお嫁さんなり、同居している奥さんへの贈与がかなりあると思われます。これは法定相続によれば、死んでしまいますと、長男には相続財産が行きますけど、お嫁さんには行かない。にもかかわらず、長男よりよっぽど嫁さんに世話になっていると思っている人は結構いるはずで、そういう意味で、世話になっているお嫁さんへ生前に贈与してそれを申告することで、明確にしておくというケースが見られるわけであります。

しかも、今の実態で見ると、一番気の毒なケースは、一生懸命介護していたお父さんが痴呆症になる。長男が交通事故で死ぬ。こういう場面ですと、面倒を見ていた長男のお嫁さんには一切財産は行きません。これがいまの民法であります。民法学者が言われたとおり、面倒見というのは、いまの民法では考慮されないからであります。それを少しでも逃れようとすれば、嫁さんを養子にするか、このような形で細切れの贈与をするかしかないわけであります。

今回の一体化措置においては、民法が採用する均分相続制の趣旨を踏まえ、いわゆる法定相続人への贈与しかできないわけですけど、しかし、何らかの形で今のような実態、しかも委員の御質問にもう一つ答えるとすると、実は税の現場では、現金で証拠なしにくれてやったやつというのは、もしそれが把握されたとすれば、贈与はなかったとみなして、相続段階で課税するというケースが多いと思います。典型的にはゴルフ会員権。名義を子供にしてあっても、親がもしその代金を払っていれば、贈与はなかったと見ますし、ほとんどは贈与という時点で課税するよりは、税の執行の場では、相続税で課税しているという実態が法定相続人との間ではあります。そうではなくて他人の場合は、これは贈与でつかまえるしかありません。相続で決着がつきませんから。日本の贈与税というのは、実は今回改正しようとする法定相続人で精算される相続贈与と、全く第三者への贈与、すなわち一時所得みたいなものとが渾然一体となっているというところに、余計ややこしさがある。こういう実態です。

ただ、贈与は対価性がない取引であるがゆえに、非常に難しいという実態があります。ですから、それは贈与がなかったとみなして、むしろ相続の段階で精算するという方向へどうしても持っていっている。それを逃れるために、むしろ申告をしてきちっと贈与税を払って、決着したかのようにするというのが結構あるという実態もあるということです。

ただ、いずれにしても今回の改正で思いますのは、いま申し上げた意味で、チョビチョビこうやって贈与税を払いながらしている人が、必ずしも死亡時点では、相続税がかからないような、いわば決して資産家でないような人が贈与税を払っているという実態があるものですから、むしろそれは本来、相続税・贈与税は一体であるはずなので、これが執行の結果贈与税を払って、本当は相続時点では払わなくていい人が払っているという実態も一方で見受けられるので、ですから、先ほど相続時点で還付も考えますと説明したのも、実はそういうことだってあり得るからだと思っています。

いずれにしても、本日お示ししているものはまだ検討段階のものですから、完璧なものではないのですが、執行の実態が、必ずしも現行の相続税・贈与税でも完璧でないというところからも、こういう一体化にチャレンジした方が、むしろ中立的なのではないかという気がするということであります。

委員

何か追加がありますか。

事務局

1点手許で数字が確認できましたので、追加で御紹介いたします。国税庁の統計年報書によりますと、12年の贈与税の修正申告による増差額でございますけれども、3,950人について修正申告がございまして、56億円の増差価額が出ておるという数字がございます。

委員

ありがとうございました。

今日は盛りだくさんの話題があって、全部これに時間を使えないのですが、これについて御発言の御希望は何人ぐらいいらっしゃいますか。では3人で打ち切ります。

委員

いろいろ実際の難しいことはわかるのですけども、この目的というのは、5ページの表にあるように、60歳以上が半分以上を持っている資産、土地もそうなんですが、これの活性化を図ることだったと思いますので、これをこっち側の左の方にいかに移すか。それで、経済全体に役立てるかということだと思います。ですから、あまり65歳以上に絞るとか、ある程度年齢はしようがないのでしょうけれども、あまり制限をつけない方が、物事の考え方としてはいいのではないかなと一つ思います。

委員

ということは、65歳ではなくて、50歳でもいいし、60歳でもいいという御発想ですか。

委員

そうです。

委員

いずれはということではないですかね、それは。最初から全部というわけにいかないのですけど、そういう御意見はあると思います。

委員

事務局から実態の説明があって、それでこういう案にたまたまチャンスがあって到達したのだという説明があって、それはかなりわかったのですけど、そもそもは、いま彼が言ったみたいに、景気振興策というまことに珍妙なる発想が、他人のふんどしで景気をよくしようという発想から始まって、僕もそれに一部加担したことがあるんだけどね。

それで、お尋ねしたいのは、今だって、あれは国土省かどうか知らないけど、住宅政策上の観点もあって、自民党の中にもあるけれども、これとはちょっと別に、生前贈与で住宅ならば3,000万円だか4,000万円だか5,000万円だかというけれども、やったらどうだという話があって、これとはちょっと違った筋の話になっているんですよね。将来、来年すぐというようなことは言わないけど、将来、いまの個別の政策目的で、といっても住宅だけれども、それのために大幅なことが言われている。部分的にも認められている。それとこれとが将来どういうふうな形でドッキングするんですか。それをちょっと教えてください。

委員

特に550万円の例の住宅取得控除の関連について説明がなかったから、ちょっとやってください。

事務局

いまの550万円の住宅特例でございますけれども、これは全体のベクトルとしては、今回の一体化措置と重なる部分があると思います。今の措置は御承知のように、一生に一回、住宅に限ってという措置でございますから、今回の一体化措置はそういう意味ではどの資産にも限らない、それから、何度でもできるということですので、性格としては重なってまいるわけです。ですから、この一体化措置はまだいまのような段階でございますけれども、これが年末に向けて煮詰まっていく段階で、当然、今の住宅特例との整理、どういう形で整理するかまだちょっとございますけれども、ベクトルが重なってまいりますので、そこは整理をしていく、検討をしていく必要があると思っております。

委員

整理というのは、統廃合の方の整理ですね。インディペンデント、残すという意味じゃないんでしょう?

事務局

できるだけ吸収したいという気持ちを事務方としては持っておりますけれども。

委員

4点の3番目がいろいろ質問が出ているのですけれども、65歳の話です。少し考え方を整理できたらと思うのですけれども、遺贈に対する課税というのは、もらう方で払うか、払う方で払うか。これに関しては我々は受ける方で、もらう方で払う。それはそういうことだと思います。

そのときに、なぜ今度、もらう人だけでなくて、誰がくれるのか。そのくれる人との関係はどうであるのかというヒモがつくわけですよね、今度は。そうすると、遺贈に対する課税は、もらう人が払うのだということならば、先ほどから出ているように、贈与者の年齢とか、贈与者との関係というのは不必要だろうと。そうすると、生涯課税にすればいいではないかと。それは制度的に現実的に難しい。その辺の折り合いで、10年か何年か知りませんけれども、10年にしたらどうだと。そこへ先ほどの委員のお話で10年のところで切れるといいますけれども、あるところで何かやればコストがかかるわけですよね。

そうすると、いまお話を聞いて僕の考えは、10年なら10年で区切ることに伴うコストと、遺産贈与の課税を受け取り側でかけると言いつつ、くれる人との関係とか、くれる人の年齢を制限するということとの、その得失というのか、それをもう少し議論を詰める必要がある。非常に大きな改革で、やはり遺贈に対して、受ける方でかけるという以上は、その精神というか、その原則をどれだけ徹底できるかということに関して、今日お話を伺った限りですけども、もう少し何か具体的に検討が要るような気がします。

委員

それでは、次の議案に移りたいのですが、いま様々な論点を出していただきました。ちょっとまだ議論が不十分だという点はいくつかあろうかと思いますし、10年、65歳、この辺の利害得失もこれから事務局でもっと詰めていただきたいと思いますし、配偶者がだめというのが果たしていいかとか、いろいろございますけれども、今回議論を進めていただくために、4つの基本的なスキーム、これはお認めいただいて、事務局に我々として制度設計を調整してくれというのでよろしゅうございますね。

では、そういう形でお認めいただきましょう。

それでは、次、消費税にいきましょうか。

事務局

お手元の資料、「基礎小16-5」に基づきまして、消費税関係について御説明させていただきます。

目次を飛ばしていただきまして、1ページ目に6月にいただいた基本方針で、消費税の中小事業者に対する特例措置に関する部分を載せております。中小事業者に対する特例措置につきましては、下線にありますように、「制度全体に対する国民の信頼性、制度の透明性を向上させる観点から、早急に抜本的な改革に取り組むべきである」とされておりまして、具体的には、事業者免税点制度につきましては、制度創設以来据え置かれていること、依然として6割強の事業者が免税事業者となっていること。そのために消費者の支払った消費税相当額が国庫に入っていないのではないかという疑念を呼んでいることなどを踏まえまして、「個人事業者と法人の相対的な事務処理能力の差異も念頭におきつつ、現行の免税点制度を大幅に縮小すべき」とされております。

次に、簡易課税制度につきましては、「消費税制度が定着して、事業者が納税事務に習熟してきたと考えられること、また事務処理能力のある中小事業者が納税額の損得を計算した上で適用している実態が多数存在していると指摘されていることから、制度の廃止を含めた抜本的見直しを行うべきである」とされているところでございます。

ページをめくっていただきまして2ページ目に、これまでの改正の歩みがございますけれども、免税点制度につきましては、いま申し上げましたように、創設時の適用上限3,000万円がそのまま今も続いているところでございます。

[3]の簡易課税制度につきましては、創設時適用条件5億円でありましたものを、平成3年改正で4億円、平成6年秋の改正で2億円と縮小してきているところでございまして、それに伴ってみなし仕入率の区分についても、創設時の2区分から5区分に増やしてきているということでございます。

もう1ページめくっていただきまして、事業者免税点制度の概要。これは何度もご覧になっている資料でございますけども、制度としましては、前々期の課税売上高が3,000万円以下かどうかということで、消費税を納める義務が免除されるかどうかの判定をしているということでございます。

次のページ、4ページ目にこの事業者免税点制度の適用状況をお示ししております。これは売上高階級別にそれぞれどの程度の免税事業者が存在するかということを試算しましたものでございます。逆に言いますれば、免税点3,000万円を引き下げた場合に、どの程度の免税事業者が残ることになるかということをお示しできる資料かと思います。

具体的には事業者全体で、右隅にありますように、593万者の事業者がいらっしゃるわけですけれども、これを100%といたしまして、現在の免税事業者はその62%に当たる367万者でございます。その内訳がこの網掛け部分でございまして、売上高が1,000万円以下の階層については、個人事業者が183万8,000者、全体の事業者の31%、法人は8%、個人、法人を合わせたところで39%の者が売上高1,000万円以下の階層に存在するわけでございます。

次の1,000万円から2,000万円以下の階層につきましては、個人事業者が全体の事業者の10.2%、法人が4.4%で、合計14.5%の事業者が存在いたしまして、累積割合というところにありますように、根っこから2,000万円まででは、53.5%になるということでございます。

以下、2,000万円超は個人4.6%、法人3.8%で、合計8.4%。ここまで合わせたところで62%の免税事業者が存在しているということでございます。

次のページ5ページ目に、これも従来からお示ししている資料でございますけれども、免税点制度等、いわゆる益税、事業者の手元に残ると言われている部分の関係を図示したものでございます。左に免税事業者の図がありますけれども、免税事業者といえども、仕入価格、ここでいいますとBにかかる消費税分を負担しているわけでございまして、この部分についてだけの転嫁であれば、いわゆる益税というのは発生しない。ただし、例えばAも含めて転嫁を行っていれば、そのAの部分が益税ということになります。一方で、Bの部分も転嫁しない場合には、いわゆる損税が発生することになるということでございます。

もう1ページめくっていただきまして、6ページ目に主要国の免税点制度の概要でございます。フランス、ドイツ、イギリスの3か国を掲げておりますけれども、日本と若干異なりまして、前歴年、当暦年、両方を判断の基準にしているわけでございますけれども、日本の判断の基準である3,000万円に対しまして、フランスでは300万円強で免税事業者かどうかの判断をしている。ドイツについては、前暦年は200万円弱、当暦年については600万円弱という水準の免税点制度になっております。イギリスにおきましても、1,000万円前後で免税点が設定されている。いずれにいたしましても、日本よりは相当低い水準の免税点になっているということでございます。

次のページ7ページ以降は、簡易課税制度の概要でございます。簡易課税制度につきましても、御承知のように、前々期で判断いたしまして、課税売上高が2億円以下の場合に、届け出を出した場合に簡易課税制度を選択できるということでございます。現行のみなし仕入率は、下にありますように、5業種に応じて設定をされているところでございます。

次のページ8ページに、先ほどと同じように、簡易課税制度の売上高階級別の適用状況はどうなるかということをお示ししております。ここでは課税となっている事業者の合計、右隅にありますように、225万者、これを100といたしまして、どれだけのパーセントの者が存在するかということでございます。簡易申告者の合計は106万3,000者で、課税事業者全体の47.1%。これだけの者が簡易課税を選択しているわけでございます。

これを売上高階層別に見ますと、免税点の水準は3,000万円でございますけれども、基準年度では3,000万円を超えている者、あるいは免税点以下でも課税事業者を選択する者がございまして、3,000万円以下の者も存在いたします。3,000万円以下の者は、個人、法人を足したところで8.1%でございます。

次の階層の3,000万円を超えて5,000万円以下の者は、合計で14%、根っこから5,000万円まででは22.1%。次の階層の5,000万円を超えて1億円以下の売上高の階層は、個人、法人を足して15.5%で、ここまででは根っこから37.6%になる。最後に1億円超が9.5%で、ここまで足して47.1%ということでございます。

次のページ9ページ目に、今度は簡易課税制度といわゆる益税の関係でございます。本則課税と簡易課税の図表にありますように、簡易課税の場合、売上高にみなし仕入率を掛けて仕入高を計算するわけでございますけれども、これが実際の仕入高を上回っている場合に、いわゆる益税が発生するわけでございます。

ただし、四角に書いている(注)にありますように、もしみなし仕入率が実態を下回っていれば、一見、先ほど免税点制度で申しましたような、いわゆる損税が発生するように思われますけれども、このような場合、事業者は簡易課税を選択せず、本則による申告を行っているものと考えられる。したがって、簡易課税制度の場合、これは事業者が制度に習熟してきていることもありますけれども、制度が益税を生み出している部分もあるかと考えております。

次に、10ページ目に主要国における簡易課税制度の概要でございます。フランスにおいてはこういう制度はございません。ドイツにつきましては、簡易課税制度を判断する基準が706万円、イギリスにおいては、これも当年の課税売上見込額と総売上見込額、ともに大体2,000万円前後で判断しているわけでございまして、日本の適用上限2億円と比べると、相当に低い水準になっているということが言 えようかと思います。

以上は中小特例措置でございましたが、次に11ページ、基本方針に盛り込まれている残り2つの項目、申告納付制度、それから総額表示制度について、以下のページで御紹介させていただきます。

申告納付制度につきましては、基本方針において、「消費税の預かり金的性格に鑑み、さらに申告納付の回数を増やす方向で検討すべきである」とされております。「検討を行う場合には、納税者の事務負担や税務行政コスト、更には消費税の滞納問題との関係にも留意しつつ、幅広い観点から検討を行う必要がある」とされているところでございます。

12ページに申告納付制度の主要国の例を掲げさせていただいております。各国においては、課税期間等も異なりまして、例えばフランスは、そもそも課税期間が1か月でございますので、申告納付の回数は年12回、確定申告を行うということになります。ドイツの場合には、課税期間が1年でございますけれども、確定申告年1回とは別に年12回の中間申告・納付を行うという制度になっております。イギリスは課税期間が3か月で、したがいまして、確定申告は年4回でございますけれども、税額が非常に多い者、年税額が3.7億円を超えるような場合は、年8回の予定納税を行うというふうな制度になっております。

次に、13ページに総額表示についての基本方針でございますけれども、「消費税を含めた価格の総額を表示する総額表示方式は、消費者の便宜を図る観点から積極的に検討されるべきである。ヨーロッパ諸国と同様、今後、消費者保護行政等の中で早急に具体化が図られるよう、関係機関において適切に対応していく必要がある」というふうに基本方針でされているところでございます。

14ページにヨーロッパ諸国がどういうふうになっているかということを、資料でお示ししております。3番の下線部にありますように、主要国におきましては、下記の消費者保護の観点から行われる価格表示に関する法令上の規制の中に、「消費者が購入決定後に表示価格を超える負担を求められることがないよう、消費者に対する価格表示は付加価値税込みとしなければならない旨の定めがある」ということでございまして、消費者保護行政の観点から、総額表示を行いなさいという旨の定めがあるというのが、ヨーロッパの主要国の実態でございます。

事務局からの説明は以上でございます。

委員

ありがとうございました。

それでは、引き続きまして、配偶者特別控除と特定扶養控除につきまして、事務局からよろしく。

事務局

お手元の「17-3」、所得税関係資料をお開きをいただきたいと思います。所得税関係は、6月の基本方針におきまして、基幹税としての機能回復という考え方のもとで、まずは配偶者特別控除や特定扶養控除等の諸控除の簡素・集約化を進めるという方向でおまとめをいただいたわけでございます。資料のほうは、6月までの検討の過程でご覧をいただいた資料がほとんどでございますが、何枚かお開きをいただきたいと思います。

2ページをお開きいただきますと、いわゆる配偶者特別控除と特定扶養控除が中心的な話題にはなっておりますが、真ん中あたりの(ロ)のa、bというところで、「特定扶養控除、老人扶養控除等の様々な割増・加算措置、勤労学生控除や寡婦(夫)控除等の特別な人的控除は、廃止を含め制度をできる限り簡素化すべき」というふうに言っていただいております。

それから、配偶者特別控除につきましては、bのところで、一番下の2行でありますが、「基本的には制度を廃止することが考えられる。なお、その際、税引後手取りの逆転現象について税制上何らかの配慮は必要であろう」という御方向を示していただいております。

これについて、対話集会でもそれぞれ星取表をいただいていまして、前回の復習になりますけれども、6ページの下の方で、配偶者特別控除については5割の方、それから特定扶養控除が31%、老人扶養控除が26%、下のほうで勤労学生控除が39%と、このぐらいの人が廃止、見直しをしてもいいではないかという点数をつけていただいておるということでございます。

それで、今日は配偶者特別控除についていくつか新しい資料を入れてございますので、それだけご覧をいただこうと思いますが、まず、9ページをお開きいただきますと、いつもの絵でございます。配偶者特別控除には、いわゆる内助の功の評価ということで、専業主婦の上に2つ目の特別控除を認めている部分、いわゆる上乗せの部分と、配偶者の収入が一定以上になりますと、配偶者控除のほうがなくなりますので、その後の就労調整への対応ということで、右に出して特別控除を復活させてまた認めている部分と2つあるわけでございます。この上乗せのほうの配偶者特別控除は、下で見ていただきますと、全給与所得納税者のうち942万人が適用しておられる。右に出しておる就労調整に対応する部分は、53万人の方が利用しておられるというのが、平成12年の実態でございますが、これをもう少し細かに見ていただいたのが13ページの表でございます。

数字がたくさん並んでおってわかりにくいのですが、区分が上の方で「配偶者特別控除の適用のある者」と、一番右の方で「配偶者特別控除の適用のない者」、2つにまず分けてございます。「配偶者特別控除の適用のある者」を2つに分けて、「配偶者控除の適用あり」と「配偶者控除の適用なし」。したがいまして、一番左の方の、配偶者特別控除の適用があって、配偶者控除の適用もあるというのが、先ほどの上乗せのほうの部分でございまして、これが一番下の計の欄で見ていただくと、人員が942万人、1人当たりの適用金額が33万円ということで、途中で低減する部分がありますので、全く働きに出ていない奥様であれば38万円乗っかるのですが、働き始める奥さんの分が低減しますので、マクロで平均をとると、1人当たり33万円ということでございます。

それから、真ん中の配偶者特別控除の適用があって配偶者控除の適用なし、これが103万円を超えて右に出ている就労調整の部分でありますが、これが人員で53万人、1人当たり26万9,000円ということになっております。

一番右の配偶者特別控除の適用のない人の欄、ここが一番多いわけですが、2,548万人ということになっております。ここが分布を見ていただきますと、給与収入の階級の低いほうに人が集まっておりますけれども、これはある意味で当然でございまして、若い独身者とか共稼ぎの方がこの配偶者特別控除の適用のない人として、こういう形で分布をしておるというふうに見て取れようかと思います。

それから、もう一つ、16ページ、これは男女共同参画会議のほうでつくられた資料でございますけれども、「共働き等世帯数の推移」ということで、ざっと折れ線グラフを眺めていただきますと、1980年代半ば以降ぐらいから、共働き世帯が増加をしておりまして、男性雇用者と専業主婦の世帯という、いわゆる奥さんが家にいて片働きという世帯が減ってきておるといったような社会の変化が見て取れるということを再確認いただけるとありがたいと思います。

ほかの資料は、大体6月までにご覧いただいた資料でございますので、時間の関係もございまして、省略をいたします。

事務局

続きまして、個人住民税関係について御説明申し上げます。資料は「17-5」をお願いいたします。

1ページをお開きください。住民税の控除についての考え方につきましては、所得税とほぼ同じでございますが、1点違いますのは、1ペ ージのアンダーラインの部分でございます。所得控除につきましては、個人住民税の負担分任の性格ということからいたしまして、所得税に比較してより広い範囲の納税義務者がその負担を分かち合うべきものであるということで、所得税より低い水準で設定すべきということになっております。従来からこのような方針で設定されておりまして、個別の控除につきましては、2ページをご覧いただければと思います。例えば配偶者控除につきましては、所得税が38万円になっておりますところ、住民税では33万円になっておりますし、配偶者特別控除につきましても、所得税のほうが最高38万円でございますけれども、住民税は最高33万円、合わせて66万円までということで、低く設定されているということでございます。

これ以外の考え方につきましては、原則所得税に準じて同じようなことになっております。

したがいまして、3ページ目以降の資料につきましても、特に控除額の額のところ以外につきましては、ほぼ所得税と同じということになっております。時間の関係上、3ページ目以降につきましては、説明を省略させていただきたいと思います。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

議論をいただく前に、今日この会議の始まる前に、男女共同参画会議の大澤先生から、これは正確には影響調査専門調査会の会長でいらっしゃいます大澤さんから、いまお配りしているような意見書をいただきました。これは、この間、大澤さんをお呼びいたしまして、ここでお話を聞きました。それを改めて文章にして、私の方に出していただいたということだと思います。お読みいただければわかりますが、現在議論しております配偶者特別控除だけではなくて、配偶者控除そのものも見直してくれということが一つポイントかと思います。

それから、配偶者と扶養控除をまとめた形で家族控除というのでも、物事の本質の是正にはならないから、これも反対だと。今のところ、いろいろな形で調査されて、例えばホームページで広く意見を求めたら、70件ほどあって、ほんの数件を除いては大体この案に賛成であると。一番言いたいことは、女性のライフスタイルというようなことを、こういう制度で、扶養された配偶者という形で歪められているというのが問題。本当に内助の功とか子育てであるとか等々を言うなら、課税最低限以下の人は税では恩恵をこうむらないのだから、手当でやってくれというのが筋ではないかという、そういうお考えでした。

私の個人的な考えは、税制改正の意見とか要望は、すべからく100%減税、減税なのですが、何か生まれて初めて増税でもいいよという方向が出てきたというのも、世の中変わってきたなと、こんな感じがいたしますけどね。どうぞ、以上3件、消費税、配特、それから特定扶養控除を含めて、ちょっと時間を取って御議論をいただきたいと思います。

配偶者特別控除、特定扶養控除を見直せという話が既に来ておりますし、消費税については、益税のところ、2つ見直せと来ておりますから、これはいま資料に沿って確認の議論がございましたが、この後につきまして、いかがでしょうか。

委員

配偶者特別控除そのものではないのですけれども、住民税の均等割に奥さん非課税というやつがあるわけですね。それで、いままでの答申では、この間の6月でも、「生計同一の妻に対する非課税措置については、男女共同参画社会の進展を踏まえ、個人単位課税の観点からそのあり方を見直すべきである」と、こういう文句になって、まさしく考え方としては一体のものでございますから、これも議論をしていただきたいと思います。

委員

今度大澤さんに会ったら言っておきます。いまのは配特と同じレベルの議論だとおっしゃるわけですね。

どうぞ、ほかによろしゅうございますか。

委員

大澤さんのヒアリングのときにいなかったので、そういう意見が出たのかもしれませんが、配偶者特別控除だけではなくて、配偶者控除というものがあると、実は給与のほうで配偶者手当であるとか、様々なものが出てくるわけですね。その結果、税制だけが例えば配偶者特別控除をつくったり、あるいはそれを廃止して、配偶者控除を家族控除か何かにしてスムーズにしたとしても、何か乱暴なところが所得全体としてどうしても残るということが起こるので、そういう意味で、できることであれば、やはり配偶者控除というものはなくすといいますか、それのほうが税制の副作用というようなことも考えた上で、望ましいのではないかというのが私の意見です。

委員

念のため大澤さんに聞いたことは、いつまでの時期にやったほうがいいのか、あるいは、どのぐらいのレベルというか、一挙にやるのか、等々を聞いたところ、そこは我々の関知せざるところで、それは税調のお仕事でしょうと。基本的な方向について我々は言ってきましたので、その方向で御論議いただきたいということでありますから、その辺のあとの設計は、仮にお認めいただければ、我々として議論しなければいけないと考えています。

委員

この大澤さんの御説は、非常に徹底してすっきりしていると思います。20歳以上の成人であれば、それぞれ一人一人が基礎控除というか人的控除を持つ。それが40万円か50万円か、ある程度考えなければいけないと思いますけれども、それが一番すっきりしていると思います。

しかし、そこまで徹底できるかどうか。もし徹底できれば、それが一番いいと思いますけれども、もし、そこまではちょっとということであれば、配偶者特別控除をなくすというのではなくて、実質的には配偶者控除を廃止して、配偶者特別控除を残すというほうの感じではないかと思います。配偶者控除は残すけれども、その配偶者に所得がある場合は、合算するというシャウプ勧告流の考え方でございまして、しかし、それは1万円ずつではきめ細かすぎるので、ここにある9ページの表のような配偶者特別控除方式のような5万円刻みでもいいのですけれども、そういうふうな形での配偶者控除を残せば、逆転現象とかそういったものもなくなるのではないかと思うわけでございます。この大澤さんの説で、一成人一控除、これは徹底すれば、そのほうがもちろんいいと思いますが、そうでないときは、配偶者特別控除の修正したものを残すというあたりかなと思うわけでございます。

それから、消費税の免税点についていえば、法人はもう少なくとも整理してもいいのではないか。個人はやはりある程度のものは残されるのかなということでございます。

それから、申告納付については、やはり目先の納付金額に一番注目して、すぐ納めていただく。半年後でいいとなると、どうしても滞納も増えるということからすると、毎月納付がいいのではないか。しかし、その場合、前年の例えば12分の1の予納申告的なもの、しかもそれを振替納税で自動的に落とすような制度ができれば、毎月でも受け入れられるのではないかという気がいたします。

それから、総額表示は、やはりこれができればいい。消費者のためにも利益になると思うのですけれども、まだ日本の消費者団体からの御理解がなかなか難しい面もあろうかと思います。これは免税点とも関連するのですけれども、どう見てもこの店は非課税、免税ではないかなと思うところでも、5%上乗せされる。それはどうしても聞くわけにもいきませんけれども、何となくすっきりしないという意味では、総額表示で徹底した方が、お客さんのためにもいいのではないかと思います。消費者団体の理解が得られるように、PRをすることが必要ではないかと思います。

委員

大澤さんの文章の中で、1人当たりの人的控除を認めてというのは、文句がございますか。

委員

配偶者控除はおそらく大人だから一人一人の……

委員

いや、そこまでは言っていないと思いますがね。

委員

私はそこはあるのかなと思ったんです。

それは委員の御持論だから、こちらに反映させてお考えになった。それは聞いていませんが、確認はします。

それから、免税点をなくせと言うけど、法人は要らないと言ったことは、もう3,000万円なんていうのは認めないで、法人はすべからくもう課税業者ですか。どんな零細でも。

委員

法人になれば、それだけの経理組織もある程度のものはあるのだろうと。

委員

そうですか。わかりました。

他に、どうぞ。

委員

配偶者控除と特別控除ですけれども、大澤さんが言っていらっしゃるのは、要するに養われているという制度、それをなくしてくれということですから、配偶者特別控除だけをなくしても配偶者控除が残っている以上、何にもならない。したがって、この2つを制度としてなくすと、さっき説明がありましたように、半分の専業主婦がいるわけですから、政治的に通るのが困難なわけで、それの代替措置を何かいい知恵を出すのが現実的な話だと思います。

それから、消費税のほうは、今の委員とほぼ同じ意見なのですけれども、一つ私よくわからないので、例えばサービス業で、人の物を預かるというとおかしいですけれども、売上に立たないけれども、扱った金額、つまり取り扱った売上規模というようなものの扱いが、消費税の手続き上どういうふうになっていくのかというのが、ちょっとこの簡易課税制度と、それから免税点を廃止したときに、そういう問題が出てくるのかなと。つまり、製造業とかそういうはっきり物の移動があるところは問題ないのですけれども、サービス業というのはそういうのがあるわけですね。例えば広告代理店のようなところとか。実際には受け取っていないのだけれども、扱ったことになっているというような、そういうケースがあるのかなということがちょっと気になるので。

委員

ただ、マネーでは表示されるわけでしょう、そのサービス等々の。

委員

それをどんどん突き詰めてインボイス方式でいけば、解決できるのですけれども、インボイス方式がとられていないときに、そこのところがちょっとどうなるのかなという疑問があるので、もし明快にお答えいただければと思います。

委員

では、ちょっと御説明いただきましょうか。

事務局

今委員がおっしゃったいわゆるサービス、物の移動のない場合も、結局、そのサービスに伴って金額の移動があるわけでして、いま例えば仕入れに当たる場合、何によって証明しているかというと、請求書等保存方式と申しまして、請求書あるいは領収書の類があれば、それで取引を証明する。その分仕入税額控除するというふうな手続きになっております。

委員

まず消費税について、大体この基本方針にもう打ち出されているとおりですけれども、消費税に関しては世間の関心が極めて高く、この間の対話集会でも、将来上がることを薄々覚悟しているという感じですが、一方で税の不公平感というのを国民の多くが持っており、その一つがこの免税点制度と簡易課税制度になっているわけです。

これを何とか導入するために、ちょっと砂糖を入れたといいますか、飲みやすくするということでの導入する側、業界側の論理でこういうのをつくったわけですね。しかし、今後消費税をさらに税率を上げるというようなとき、ここの部分は非常に大きな反対の理由になりかねないと思います。これだけの時間もたったし、基本的には免税点制度も簡易課税制度も一切やめる、すべてちゃんと払うというのが本来筋だと思います。

しかし、現実には、小さなお店の、おじいさん、おばあさんでやっている例えば学校の前の文房具屋とか、スーパーのそばでやっている焼鳥屋とか、そこまで事務的なことを課すのもきついと思うので、1,000万円以下ぐらいの年間売上なら、国民も許してくれるのではないかと思いますので、その辺が一つの考え方ではなかろうかというのが消費税です。

それから、もう1点だけ配偶者特別控除あるいは配偶者控除について、大澤さんの紙を軸に1つだけコメントしたいと思うのは、やはり家族というものを大事にすることは、国の方針として非常に重要だと思うのです。ましてや少子化が懸念される時代でもあるし。したがって、これを大澤さんのように、特定のライフスタイル、特定のライフスタイルと言いますが、どんなライフスタイルもみんな特定なのであって、基本はやはり家族を大事にするということで国は誘導しなければいけないと思います。

配偶者控除まで廃止するといっても、実際には老人の介護とか、小さな子供を育てなければいけないとか、働きたくても働けない人も多数いるわけです。ですから、なかなかこれは利害相絡んで、それから理屈の上でもなかなか私もすっきりとはいきませんけれども、少なくとも家族単位の生活を重視するという税制であってほしいと思います。

委員

あえて大澤さん流に返事をしておくと、老人の介護と子育てだって、共稼ぎでもやっているではないかと、何で片稼ぎのところだけ面倒を見るのだというのがロジックですよね。

委員

僕は前から、次の消費税アップのためには、前に制度的な欠点を直さなければならないということを申し上げた。その点は全然変わらないのですが。

ただ、このデフレが長期化する世の中で、メチャクチャな価格競争が行われている実態の中で、この免税点事業者の人たちが、公然と5%いただきますよという商売をどの程度完遂してできるのかなと。いま、実に体力消耗的なくだらない市場主義に基づく競争ばかりやっているんだね。やってないのは新聞だけだよ。特定な条件があってね。これまた問題かもしれないけれども、いかにもひどい、今のやつは。こんなことをやっていて、資本主義がよくなるわけがないんだ。それはちょっと話が別だけどね。

それと、益税というのは、実は導入時から10年来僕ら議論しているんです。彼が言ったみたいに、導入するときに甘いことを用意してやったということは、紛れもない事実です。そのとおりだったんだから。それはわかるけど、いまの現実のデフレ状況からいって、これからまた相当続くと覚悟をするとするならば、益税というのは、ひょっとしてそんなにないかもしれないと思うんだね。ただ、制度論としていえば、益税、損税、構わないけども、こんな手厚く甘いことをやることはないと思うということがあります。

それは同じことは簡易課税でもある。ここに書いてあるように、この人たちは計算する能力がないから、というのはいかにも見くびった話で、「おまえらバカじゃないか」と言っているような話ですよ。そんな商売をやっていない、今の普通のごくまっとうなビジネスマンはね。これはもう、こちらこそ全廃しても構わない。すっきりと割り切って。というぐらいのつもりでいます。

もう一つ、大澤さんのペーパーで、いつの時代だって、世の中変えるときには、こういう根本的な議論提起があって変わるんですよ。だから、これはこれでいいんです。ただ、税制に激変というのはなじまないんですよ。だらかどうか知らないけど、現実そういうことなんです。この話は政治問題。専業主婦が900万人いるというときに、「おまえら全然ネグるよ」というようなことを言って、政権がもつわけがない。したがって、それを考えてみれば、移行については、基本的には彼女の言っていることは筋が通っているんですね。手当てするなら別に手当てすると言っているわけだから、その別の手当てをどうやってやるかはまた別の話だから、それがセットにならなければ具合が悪いので、これも2段階か3段階で段階的にやるしか道はない、現実論で言えば。この話はほとんど政治問題、と思います。

委員

消費税についても、配偶者特別控除もさんざん議論されたのですけれども、配偶者控除について一言言わせていただきます。

最初におっしゃったように、今までの税制改革の中で、ある意味で画期的なわけですよね。初めて課税ベースを広げろという要求が出てきた。ただ、そういうときに、そんなことできるか、できないか、という議論もあるのでしょうけれども、やはりいくつか論点があると思います。

配偶者特別控除を取るだけで終わらせるのか、大澤さんがおっしゃっているように、配偶者控除、配偶者特別控除をあわせて廃止するのか、その選択がまずある。

第2に、それを取っ払ったあとの手当てをどうするか。大澤さんのほうは、廃止したあとに家族控除をやるのでは意味がないではないか、元の木阿弥だということを書いてあるわけですよね。僕は個人的には、配偶者控除あるいは配偶者特別控除を廃止したあとにどうやってそれを手当てするのか。それは子供だろうと。育児に対する手当てというのを与えるべきであろう。それを所得控除でやるのか、税額控除でやるのか、そこも議論はあると思いますけれども。また税額控除というのは、なかなか対話集会でもわかってもらえないわけですよね。だけど本質的にいえば、2つの、あるいはどちらかの配偶者に関する控除を撤廃したあとに一番効果的なのは、やはり子供を育てること。これは少子化に対する効果があるかどうかは知りませんけれども、子供を育てることに対して社会がサポートするのだというメッセージを送る意味でも重要だと。

それから第3に、やはり税調としても、この問題は税だけでは解けない問題で、本当は大きな問題は130万円ぐらいのところから社会保険料がガバッと変わってくる、その問題があるのだよということは、税調としても指摘すべきで、税で全部解けてしまうわけではないと。ただ、我々としてもポジティブなメッセージをどう送るか。それはやはり手当てのところをもう少し踏み込まないとなじまないと思います。

委員

消費税ですけれども、私も事業者免税点制度のところでは、やはり法人はもういいだろうと思うのです。個人事業者について1,000万円以下、それを残しておく程度でいいのではないかと思います。

簡易課税はもちろん廃止する必要がある。やはり消費税の環境整備、これは全体としてどうしても急ぐ必要が出てきていると私は思います。

それで、納付回数ですけれども、これは毎月納付できればそれにこしたことはないと思いますが、それが果たして急激な事務負担の増加につながらないのかどうか。つながるとしたら、その辺はやはり配慮をする必要があるだろうと思います。

それから、所得税関係でありますが、配偶者特別控除、この制度の創設の経緯は非常に政治的につくられているわけですね。非常にいびつな政治的圧力で生まれている。これはやはり廃止するのは当然ですね。だから、一挙に廃止できるかどうかはともかくとして、まず第一段階としては、上乗せされている部分は、これはもう廃止する必要があると思います。

さらに特定扶養控除、勤労学生控除ですか、この辺も廃止していいだろう。そういうタイミングにあるのではないかと思います。

委員

配偶者控除のほうは、さっき言われたけれども、非常に政治的な意味、その辺はやはり考えざるを得ない。相当ショックが大きいと思いますね。全国の女性を二分するような話でもありますし、やはりその辺の衝撃というものは頭に置いておく必要があるだろうと思います。

委員

配偶者控除の問題については、私の立場はわかっているわけで、言っても仕方がない話なのですけれども。

委員

もう一回整理してください。

委員

まず、年金とのステータス。配偶者控除が子育てとくっついているけれども、65歳までずっと子育てをしているわけではなくて、非常に時限的に働けないという期間があるわけで、これがなぜずっと、終身ステータスというか、になってしまうかというと、やはり年金のステータスとの関わりが強すぎる。だから、これは切り離して配偶者控除は手当てする必要があるのは、とりあえずは必要な措置かなと思うのです。

それから、家族の単位が壊れる、壊れないというのは、個人的な話なのですけれども、これだけ900万人に至って、しかもなおかつ、今増加傾向にあるということは、やはり経済の情勢が非常に悪くて、どうしても働かざるを得ない家庭が非常に増えているということは、逆に壊れるから働くのではなくて、働かざるを得ないケースが増えている。この数字はまだ増えていく可能性があると思うのです。

女性が二分するとおっしゃるのですが、900万人というのは、ある面で二分するほどの大きい数字ではなくて、共稼ぎの世帯が、自営業の方が1,100万人いらっしゃって……、これはトータルで1,100万なのかな。共稼ぎ世帯は2,000万世帯というふうに考えていいのでしょうか。

事務局

雇用者と自営業者、トータルでの共働き世帯がこの1,100万世帯です。そのうち雇用者の共働きが900万人ちょっとです。

委員

1,100万人対900万人なんですが、900万人の中に本当に働けない、子供を育てなければいけなくて働けないという層と、ステータスとして持っておきたいという2種類の人たちがいるわけですから、これを実際数を出すのは非常に難しいと思うのですけれども、つまり扶養手当とかそういう形で還元されることによって、この900万人という母数はかなり変わってくる可能性があるわけで、最終的に増税になってしまう人がどのぐらいいるかというのは、900万人ではないと思います。かなりもっと小さい母数になる可能性があって、そこがどのくらいの数字かというのが欲しいといえば欲しい。実質増税というか、その世帯がどのくらいあるかというスケールが知りたいというのが一つございます。

共稼ぎの世帯の中でも、現在の配偶者控除及び配偶者特別控除の問題が解決されれば、むしろいま全く働いていない方の中からも、もっと働こうという意欲に転じる方も出てくるわけですから、この辺は、女性を二分するほどの政治的な問題というよりは、もう少し税調としてははっきりとした方針が出せるスケールまでもう来ているのではないかと。むしろ、1対1になっているときに、税調として方針が出ないというほうがおかしいのではないかと。だから、段階的とか政治的問題にいくまでに、もう少しきちっとした方針が出せるのではないかと思いますし、私は両方廃止で全く問題ないと思います。

委員

次のテーマに移りたいのですが、皆さんの御議論を聞いていて、次のような意見が多数意見ということでよろしゅうございますか。

配偶者特別控除、配偶者控除、この2つに分けて議論するというのが大体、一挙に両方というのは難しかろうという印象をお持ちの方が多かったと思うし、激変緩和あるいは時間を少し取ってということで、基本的な方向は大澤さんの言う方向というのはわかるというあたりが、今後の議論の方向づけではないかなという気はいたします。何せ政治的にいろいろ入ったということも踏まえて、政治的な動向には十分気を配るということだと思います。

それから、消費税に関しましては、皆さんほぼ同じように、免税点は下げろ、そして、簡易課税は廃止の方向であるということでよろしゅうございますね。

免税点を下げる場合には、個人は面倒を見るけど、法人はいいじゃないかということがお二人からも出ましたし、そうかなという感じがいたします。これからまだ議論を詰める必要がありますけど、そういうところがいまの集約かなと思います。

委員

僕は専業主婦というのは日本の宝だと思っていまして、専業主婦というのはずっといていいと思っているんですよ。そのことと配偶者控除というのは関係ない話で、あたかも配偶者控除をなくするのは、専業主婦はいちゃいけないと、そういうふうに言っているようなので、それはちょっとおかしいのではないかなと思います。

そうですね。うちの女房もそう言っていましたから、そうでしょう。

それでは、次の今日の一番メインのイシューで、「会議後返却」というものでちょっとごらんいただいて、これをこれから議論していきたいと思います。

これまで2回に分けて本小委員会での議論の内容を、対話集会の意見等を踏まえて私なりにまとめたものです。

3日の総会で出して公表したいと考えております。

それでは、申しわけありませんが、事務局のほうから朗読いただけますか。

事務局

「あるべき税制」の実現に向けた議論の中間整理(案)

~「税についての対話集会」の状況を中心に~

当調査会は、本年1月の内閣総理大臣の指示を受け、6月14日に「あるべき税制の構築に向けた基本方針」(以下、「基本方針」という。)を公表した。そのとりまとめに先立ち、6月7日に内閣総理大臣より当調査会に対し、15年度税制改正において検討すべき主な事項について指示があった。更に、8月6日には内閣総理大臣より、経済活性化に資する「あるべき税制」の実現に向けて、多年度税収中立の下で、1兆円を超える規模の先行減税を含む税制改革を一括の法律案にまとめるとの方針が追加的に示された。

当調査会は、3月中旬から9月上旬にかけて全国11か所で「税についての対話集会」(以下、「対話集会」という。)を開催してきた。「基本方針」の公表を受けて、7月以降の「対話集会」では「基本方針」を説明した上で、主な論点について会場の参加者からアンケートを実施するとともに意見交換を行った。

アンケートによると、総論的には、税金についての要望として、公平、簡素を求める回答が多く、また、今後の税負担のあり方については、「今まで以上に、皆で税の負担を広く分かち合う」との回答が約6割を占めた。更に、将来の税制においては、「消費税の役割を高めるべき」との回答が約6割であった。そのほか、当調査会が、「今後10~20年を視野に入れた「あるべき税制」の姿として、大幅な歳出削減を前提に、増税もやむを得ない選択」としていることについては、「賛成」、「どちらかといえば賛成」の回答を併せて約7割の方が選択した。総じて、将来世代への負担の先送りとならないよう応分の負担を分かち合うとの考えが広まってきているものと思われる。

次に、内閣総理大臣より15年度税制改正において検討すべき主な事項として指示された項目を中心に、「対話集会」の結果等を踏まえた現在の議論の状況を整理すると、以下のとおりである。

1. 配偶者特別控除、特定扶養控除等

(1) 個人所得課税における諸控除の見直しについては、「基本方針」では、(イ)税制としてはできる限り簡素化・集約化する方向を目指すこと、(ロ)ライフスタイルの多様化、少子・高齢化の進展といった構造変化に対し、税負担に歪みが生じないような、また、経済社会の中で行われる個々人の自由な選択に介入しないような中立的な税制とすること、(ハ)課税ベースを拡大する方向で諸控除のあり方を見直すことといった視点を示した。

(2) これに関し、「対話集会」におけるアンケート等では、税制が複雑なのでわかりやすい税制にしてほしい、少子・高齢化社会の下では今まで以上に皆で税の負担を広く分かち合うことが望ましい等の意見・回答が多く出されており、諸控除の見直しはこれらと方向性を同じくするものと考えられる。

その中で、配偶者特別控除や特定扶養控除をはじめとする各種割増・加算措置等については、国民の生活上の諸事情に直接関わる事柄であり、慎重に検討すべきとの意見があった。その一方、男女共同参画社会の形成の観点からも配偶者特別控除の見直しを進めるべき、ライフスタイル等が変化している中、複雑な各種割増・加算措置の見直しも必要との意見が出されるなど、「基本方針」で示された考え方に対し、賛成する意見が多かった。

(3) これらの意見等を踏まえ、今後、「基本方針」の考え方に沿って、以下のとおり見直しの具体化に取り組む必要がある。

[1] 配偶者特別控除については、基本的に制度を廃止する方向で見直しを行うこととし、税引後手取りの逆転現象に対しては所要の配慮措置を検討する。

[2] 特定扶養控除をはじめとする各種割増・加算措置等については、廃止を含め、制度をできるかぎり簡素化する方向で検討する。

2. 外形標準課税

(1) 外形標準課税については、「基本方針」では、「税負担の公平性の確保、応益課税としての税の性格の明確化、地方分権を支える基幹税の安定化、経済の活性化・経済構造改革の促進などの重要な意義を有する改革である」とされ、「外形標準課税は、受益と負担の関係を明確にして真の地方分権の実現に資するため、早急に導入すべきである」とされている。また、「外形標準課税を導入すると、法人所得課税の実効税率は下がることとなる」ものである。

(2) これに関し、「対話集会」においては、外形標準課税の導入に関するアンケートで、「赤字法人といえども、地方の公的なサービスを受けているので、広く薄く公平に負担を求めるために導入すべき」、「赤字の零細法人などに特例を設け、過度の負担にならぬように配慮すれば、導入してもよい」との回答が約8割を占めた。「零細法人や赤字法人に過度な負担となるおそれがあるので反対」との回答は1割強であり、全体として「基本方針」の方向性に理解を示す意見が大勢であったと判断される。

(3) また、外形標準課税については、昨年、総務省から、外形基準の部分について付加価値額を基本としつつ、資本等の金額を補完的に併用する具体案が示されたが、これに対し、当調査会では、「担税力に配慮しつつ、課税の仕組みが簡素化されており、「薄く・広く・公平な課税」という考え方を堅持しつつ、各方面から寄せられた意見を取り入れて、工夫された案となっている」としたところである。

(4) これらを踏まえ、外形標準課税については、その内容について必要な検討を加え、その意義のさらなる周知に努め、早急に導入すべきである。

3. 研究開発減税・投資減税

(1) 法人税のあり方については、「基本方針」では、「国際的に整合性がとれ、企業活動に対し歪みの少ない中立的な税制であることを基本とすべき」とされ、税率水準については、「累次の引下げにより、国の法人税率は既に先進国並みの水準となっており、開発途上国の水準を念頭において、これ以上の税率引下げを行うことは適当ではない」、「今後の法人税率の水準については、わが国の租税負担全体の水準や税体系全体のあり方との関連、更には先進国との税率のバランスを踏まえて検討していくべき」とされている。

(2) これに関し、「対話集会」においては、法人課税の負担に関するアンケートで、「現在の財政状況からすれば、これ以上の負担の軽減は適当ではない」との回答が約4割、「利益の出ている法人からは、もっと税負担を求めるべき」との回答が約2割を占め、「企業活動のグローバル化の下では国際的な整合性が重要であり、他の税に負担を求めてでも、負担の軽減を図る方向で見直すべき」との回答は約3割であった。

(3) 他方、「基本方針」においては、「わが国企業の競争力強化や産業構造の改革を進めるためには、21世紀をリードする産業・技術を見据えた明確な国家戦略を前提に、総合的な政策の重点分野への集中投入が必要である」、その一環として、「政策税制を研究開発分野等真に有効な分野に重点化すべきである」とされている。また、閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」においても、重点4分野(バイオ、IT、環境、ナノテク)など戦略分野に政策措置の選択と集中を行うとの考え方が示されている。(4) これらを踏まえ、既存の租税特別措置の統廃合を大胆に進めつつ、真に有効な政策税制を集中・重点的に講じることとする。以下の考え方に基づき、研究開発減税・投資減税の集中について、検討を進める。

[1] 研究開発税制

厳しい経済状況の下、試験研究の分野でも合理化、効率化が進められる中で、試験研究費の額が「増加」した場合等に税額控除を行う現行制度が有効に機能しなくなっている面があり、見直す必要がある。このため、英米等の例も参考としつつ、新たな試験研究税制を設ける。

[2] 設備投資税制

一般的な投資促進税制は、企業が過剰な設備・債務を抱え、キャッシュフローを借入金の圧縮に充てている中で、設備投資の増加につながるか疑問がある。また、将来的に競争力を失う産業にも優遇措置を与えるため、構造改革に逆行しかねない。したがって、経済社会の活性化や構造改革のために、真に有効な戦略分野に集中・重点化した投資促進税制を設ける。

4. 消費税の免税点制度等

(1) 消費税については、「基本方針」では、「消費税制度に対する国民の信頼性、制度の透明性を向上させるための措置を講じる必要」があり、中小事業者に対する特例措置について、「早急に抜本的な改革に取り組むべきである」とされている。

(2) これに関し、「対話集会」においては、中小事業者に対する特例措置に関するアンケートで、「消費税に対する不信感をなくすために見直しが必要」との回答が約8割に達した。また、「事業者免税点制度は、本来特例措置であるにもかかわらず6割強の事業者が免税となっている現状はおかしい」という意見が出されるなど、全体として、「基本方針」に示された消費税制度に対する国民の信頼性、制度の透明性の向上を求める声が大勢であったと判断される。

(3) これらの意見等を踏まえ、以下の方向で抜本的な改革に取り組む必要がある。

[1] 事業者免税点制度

事業者免税点の水準は、消費税制度の創設当初から長期間にわたって据え置かれたままであることや諸外国と比べても極めて高い水準にある。このことを踏まえ、免税事業者の割合を現在の6割強から相当程度縮小させるべく、現行の免税点制度の大幅な見直しを行う。

[2] 簡易課税制度

これまで二度にわたり簡易課税制度の適用上限を引き下げてきた。しかしながら、全ての事業者に対して本則の計算方法による対応を求めることが消費税制度のあるべき姿であるので、基本的には、廃止の方向で検討する。

(4) なお、申告納付制度及び総額表示方式のあり方については、「基本方針」の考え方に沿って、検討を行う。

5. 相続税・贈与税

(1) 相続税・贈与税の改革については、「基本方針」では、次世代への資産移転の時期の選択に対して中立性を重視する観点から、相続税・贈与税の調整のあり方を検討し、現在の執行体制の下で可能な相続税・贈与税の一体化措置の導入を検討すべきとしている。また、相続税については、最高税率を引き下げつつ、現行程度の累進を維持する一方、基礎控除の引下げ、非課税措置の廃止・縮減、特例措置のあり方を検討すべきとしている。

(2) これに関し、「対話集会」におけるアンケートでは、生前贈与を通じた資産の世代間移転の円滑化に資する観点から相続税・贈与税を一体化することについて、賛成の意見が約7割を占めた。

(3) 高齢化の進展に伴って相続による次世代への資産移転の時期が相続人のライフサイクル(生涯)のより後半にシフトしていることから、資産移転の時期の選択に対して中立性を確保することが重要となってきている。また、高齢者の保有する資産が現在より早い時期に次世代に移転するようになれば、その有効活用を通じて経済社会の活性化に資するといった点も期待される。「基本方針」で提案した相続税・贈与税の一体化措置は、このような社会的要請に応えるものである。他方、「基本方針」で示したように、今般の一体化措置は現在の執行体制の下で可能なものとする必要がある。

(一体化措置の検討の方向)

(4) なお、相続税の最高税率の引下げ、控除の見直しについては、「基本方針」の考え方に沿って、一体化の枠組みの具体化と併せて検討を行う。

6. その他

以上のほか、「基本方針」の考え方に沿って、土地税制、金融税制等についても、更に検討を行うこととする。

今後、当調査会は、内閣総理大臣の方針を踏まえ、15年度税制改正において、「あるべき税制」の実現に向け、更に検討を進めていく。

委員

ありがとうございました。

6ページ「一体化措置の検討の方向」というのは、先ほど相続税・贈与税の一体化で御説明いただいた項目が入るという形で完結するわけです。

それでは、時間を少し取りまして、この内容につきまして、また文章につきまして、御審議をいただきたいと思います。どなたからでも結構ですから。これがいわゆる我々としての中間到達地点として公表されるわけでありますから、慎重に御検討いただきたいと思います。

委員

文章そのものというよりも質問ですけれども、先ほどちょっと具体的な答えがなかったので、もう一回聞きたいのですが、6ページの相続税・贈与税のところで、「現在の執行体制の下で可能なもの」ということが大変出てくるわけですが、この「現在の執行体制の下で可能」というのは、具体的にどういう意味なのか、ちょっと教えてほしい。

委員

いろいろあるでしょうけれども、納番を使わなくてやれるだろうというところも一つのポイントだと思いますが。

委員

その点なんだけれども、65歳というのがありまして、さっきの平均寿命が男で70歳後半になっていると、その後最後まで20年かかるわけですね。そういうのを追跡できるのかどうかというのが私の基本的な疑問でございます。

委員

ちょっと御説明ください。

事務局

先ほど、今回の私どもが紙でお出ししております一体化措置は、相続時に一回、相続時における累積課税ということを申し上げました。そういう意味では、欧米型の毎年毎年贈与について累積課税を行って、最後にまた相続時に精算をするというやり方に比べますと、相当手間が省ける。既に今の執行体制の制約ということは、6月の基本方針でも書いていただいておりますが、それを踏まえ、そして、先ほど中立性等のことも考えまして、効率的で中立的な仕組みということで、今回の一体化措置をお示ししておりまして、執行可能でもあるし、制度として適当ではないかということでございます。

委員

ただ、毎回毎回贈与の段階で記録はチェックしなければいけないわけでしょう。それを聞かれているわけですよ。欧米に比べると税額控除の手間は省けるけれども、5回も10回も何回もやる人が全部つかめますか。全国転々と動かれたときにどうしますか。

事務局

これはまさに税務執行当局が、適正な執行体制を整える最低限の努力は必要だと思います。ただ、この話は、納税者、申告者と税務当局のバイの関係で済みますから、第三者は介在しないわけですね。贈与を受けて申告する人、それが将来相続を受けるということですから、住所・氏名と、その他いくつかのキーワードを使って執行当局は管理をしていくということになります。もちろん、引っ越ししたりするいろいろな途中の移動も、例えばお亡くなりになる方、死亡の場合は、逆に今度はどういう方が亡くなったというのは、別のルートで情報が入るような今システムになっていますから、その方にどういう家族があるかというのは、それはいつもいまの執行体制でも調べているわけです。ですから、そういうのを組み合わせて、やはり努力をしていく。それはコンピュータ化も少しそれにはプラスになって、納税者管理というものを常にいろいろなキーワードで、いろいろな要素で追跡するシステム、これはある程度努力しなければいけない部分がありますけれども、基本的にはおそらく65歳から死亡されるまでの間のきちっとした管理は、当然やるという前提で、しかもやれるということを見きわめた上で、制度設計をするということでございます。

委員

自信があるということですな、これは。

事務局

そうです。

委員

つまり、名前さえわかっておれば、日本全国どこで死んでもわかるということですか。

事務局

それは基本的に追っかけるという、全国の税務署のネットワークを使って追っかける形になります。

事務局

今の現行システムにおきましても、ある方が亡くなると、そこは市町村長から税務当局に、こういう方が亡くなったという氏名と住所などの情報はいただけるようになっております。

委員

他にいかがでしょうか。

委員

今の点で御説明を聞いて安心したのですけれども、現行の執行体制で可能なものとする必要があるということで、非常に制約されるような感じがしたのですが、それはそういった方向で執行も努力してもらうのだということでしたので、結構なことだと思います。そういった意味では、執行体制で可能なものとする必要があるというのは、少し制約的に読み取れないか。執行体制の、あるいは執行可能性と調整を図るというあたり、6ページの(3)でございますけれども、考え方はお聞きしてわかりましたので、そこらはもう少し制約のないというか、これは大丈夫なのだという点も含めて表現があればと思います。

それから、表現の問題で、研究開発、設備投資、投資減税、5ページの2行目ですけれども、「将来的に競争力を失う産業にも優遇措置を与える」というのが、もしその産業が将来の必要な産業であれば、競争力を失っては大変ですから、優遇措置をやらなければいけないと思いますから、これは今後はもう退場していかざるを得ないような業種にもという意味なのかなと思いますが、ここの「競争力を失う産業にも」云々というのは、ちょっと難しい表現だなという感じがいたしました。

委員

何か修文で具体的に御提案がございますか。

委員

後ろに構造改革と反するとありますから、そこで言い尽くされてはいると思いますけれども、端的に言えば、「退場せざるを得ない産業にも」という感じかなと。

委員

そういうことでしょう、これは。

委員

「競争力を失う産業にも」というのは、競争力を失う、それは産業が悪いからで、もっと支援しなければいけないかもしれませんし、この意味がなかなか難しいなという感じがいたしました。

それから、これとは関係ない先ほどの配偶者特別控除、2ページですけれども、先ほどの大澤さんのおっしゃるのと私がさっき申し上げたのは同じだと思います。人として、別に女性としてというか、配偶者として特別な控除はなくて、要するに人間としての基礎控除はあるということですから、先ほど違うようなニュアンスで私申し上げたとすれば、そういうことではありませんので、そこは大澤さんと一緒だと思います。

委員

わかりました。

委員

ややこだわるみたいですが、6ページの相続税・贈与税の(3)の「一体化措置の検討の方向」を入れるということなのですけれども、事務局の御努力でそれなりに結構な案が出てきているということはいいことなのですけれども、現状の文章をここに入れて本当に大丈夫なのかなというのが、つまり、我々自身の議論が、この相続税・贈与税の本体の最初の文章のほうの10ページの4項目も含めた検討の方向を入れるということは、あまり我々議論していないのに、これを今の段階で入れてしまって大丈夫なのかというのは、少し不安なのです。

さっき申し上げた65歳というのは一つの例であって、もう少しいくつか例を挙げますと、例えばこれは65歳になったらば、もう贈与ができて、それは相続と一体化するということになっていて、これは平均寿命が例えば男だったら80歳ぐらいですけれども、65歳の平均余命だったら多分30歳以上あって、場合によったら100歳を超えてまで生きる人だって当然いるわけですよね。そういう30年、40年間の遺贈分を全部相続時に、しかもインフレ調整も利子調整もしないでやるということが、事実問題として本当にいいのかなというのが、例えばですけれども一つ問題になる。

あるいは、今度は受贈者が子供であればいいというけれども、子供が親よりも先に死ぬことだってあるわけですね。そのときに、では遺贈しておいたときに、子供が死んでしまったので、その相続税の分はどうなるのかということに関して、どういう仕組みになっているのか、我々は何もわかってもいないし、議論もしていない。そういう状況で中間整理の6ページのところにこの文章をバカッと入れちゃって本当に大丈夫なのかなと。別にこの案が悪いということを申し上げているのではなくて、事務局が御努力されたのは、そこは非常に評価しているのですけれども、いまの段階でこのままバサッと入れてしまうのは私は不安があるのですけれども、ということを申し上げたいのです。

委員

わかりました。ただ、「現時点において到達したところは」というような話を入れておけばいいのではないですか。

委員

だから、文章の入れ方をもう少しぼやっと入れてほしい。

委員

いつまでたっても何も基本的方向を出さないのでは、ますます世の中に対してメッセージを送れないから。

事務局

まさにごもっともな御指摘で、私どもも、いま御指摘されている点もすでに検討をしております。ただ、ぜひお願いしたいのは、骨組みというか、その骨格の部分は、ある程度これを前提に考えていくというのを明確にしていただけたらありがたいと思っております。

それで、もう1点、私どももこの問題は、すでに基本方針の中で相続税と贈与税の一体化という基本的な大きな合意の中で来ていますので、先ほど10年累積のようなお話が出ましたが、あれは10年単位で累積していく贈与税の課税の仕方になるわけで、相続税と一体化するということは、どうしてもお尻は相続の段階、それからどれだけ前に持ってくるかという話なので、もし中立性の問題があれば、一生累積か、お尻を切るかという問題でございます。一生累積はとてもできないので、どこかでこういう年齢制限を設けざるを得ない。ここはなかなか他に解がないと思います。相続税との一体化ということになりますと、10年の累積ですと、これは贈与税の課税方式としては選択の余地がありますが、結局、相続税との一体化ではないものですから、ちょっとそこは事務局の説明もやや混乱していましたけれども、私はぜひここのところは、基本的な方向としては、とりあえずこれでやってみる。もしこれで細部詰めていってまた問題があれば、もちろん修正をするということはできると思いますので。

委員

それは当然そうでしょう。今出したことがすぐさま前提になって……

委員

さっき言い忘れたことでもう一つ非常に気になっているのは、さっきインフレを言いましたけれども、デフレになったときに、贈与をしたときにはものすごく課税ベースが高かったのだけれども、相続の段階になると、今度はその価値が非常に低くなってしまったと。それで逆に相続税を払えなくなってしまうといいますか、いわば子供の方が全部調整し直してみたらうまくいかないとか、何かそういう問題。そこら辺は多分税率を変えないと出てこないと思うのですけれども。だから、そこら辺も含めてデフレ・インフレというようなことを考えると、あまり長期にこういうことが通算されるというのは、あまりよくないのではないかということが気になっていて、私が申し上げたかったのは、さっきどうして10年と言ったかというと、10年でやっていって一体化をする。つまり、一体化はするのだけれども、相続の段階では過去10年しか見ないというようなやり方はどうなのかなということも含めて、別に今日は結構ですから、今後、少しそこら辺も含めて議論していただければと思います。

委員

いつの段階でどうやるかというのは、多分、受贈者と受け取る側のリスクだな。

委員

はっきりしないということで質問なのですけれども、研究開発減税のところ、4ページですが、このケースで、最後の行に「新たな試験研究税制」というような「試験研究」という言葉を使っているのですけれども、「研究開発」という言葉と「試験研究」というのは、どういう定義で区別されているのか。研究開発というのは、上にも出ていますけど、バイオとかいろいろ書いてありますけど、そもそも個別企業によってみんな戦略上違うことを考えているわけで、政策的にはこっちのほうに集中するといいというとらえ方があるかもしれないけれども、どこまで個別の研究開発投資に何か税制的に介入しようとしているのか。あるいは、石会長が「限定的に」という言葉を使っていらっしゃるみたいなのですけれども……

委員

新聞が勝手に書いたんです。

委員

何をもって定義としてその範囲を定めるのか、ここがちょっとわからないので、修文というレベルまでいかないのですけれども、個別性と集中と選択というのは、そう簡単ではないのではないかということで、ちょっと……。

委員

要するに、「試験研究費」という言葉遣いと「研究開発」という言葉遣いの間に、何か差があるのか、同じかというコンセプトの問題がありますよね。どうぞ。

事務局

今の点につきましては、実は日本の現在の制度が増加試験研究費の税額控除制度となっておりまして、最後のところはそれに引っ張られておりますが、私どもこの2つの用語の間で特に大きな違いがあるという意味で、この原案を用意したわけではございません。

委員

どっちかといえば、研究開発税制のほうがいいんだね。

事務局

結構でございます。

委員

「新たな研究開発税制」のほうが言葉としてはいいでしょうね。

それから、特定の分野を特設する云々というところが、研究開発税制については明らかでないけど、設備投資減税では一応減税するんだよね。説明はね。

事務局

そのとおりでございます。試験研究費については、なかなかその中身が、完全な基礎研究の分野は一体何なのかということ、そういうことが一体そもそも選択ができるのかといった問題があるわけでございます。

委員

この辺についてもいろいろ御意見があろうと思うから、どうぞ。違うところでもいいです。

委員

2ページ目の配偶者特別控除、特定扶養控除のところですけれども、(2)で「これに関し」という段落のその次ですけれども、ずっと書いてきて、「その一方、男女共同参画社会の形成の観点からも、配偶者特別控除の見直しを進めるべき」云々、これはさっきの話に戻るのですけれども、ここに配偶者控除を入れるか入れないかというのは残っていますよね。だから、男女共同参画社会というのをどういうふうに言葉を使っているのか。大澤さんたちは、明らかに最初は配偶者特別控除だけを廃止し配偶者控除を存続させるのであれば云々と書いてきて、そこを突いているわけですから、そこはどうするか。

それから、第2点は、(3)の、したがってどうするかということで、[1]で、「配偶者特別控除については、基本的に制度を廃止する方向で見直しを行うこととし、税引後手取りの逆転現象に対しては所要の配慮措置を検討する」と、いかにも超お役所っぽい言葉ですよね。税引後手取りの逆転現象に関してはと。何かせっかくやる改革に対して、損をする人もいるから、損しない人もしてあげるよというのではなくて、さっきの手当ての話ですけれども、この改革はもうちょっと前向きな、ライフスタイルに関する中立性ということで、前向きなことをしたいのだという気持ちが出ないのかなという気はします。

委員

文章のところは問題があるけれども、例の逆転現象云々がぶら下がっているところですよ。103万円を超えて、あそこだけ残して、上積みのところは取りましょうというインプリケーションですよ。

委員

そうですか。そっちなんですか。

委員

僕はそういうふうに理解している。それがいいかどうかわからないけれども。

委員

第2点ですけれども、いま「あるべき税制の構築に向けた基本方針」と比べて見ていたのですけれども、1番目が配偶者特別、それから特定扶養控除ですよね。2番目が外形標準課税で3番目が法人税。「あるべき」のほうは、最初に個人所得税で、次に法人事業税ですよね。並べ方にすぎないのかもしれませんけど、2が先なのか、3が先なのかというのは、流れとしては個人所得税があって、法人税があって、そして地方法人課税だと思いますけれども。

委員

これは総理から出た5項目の順番なんです。どっちでも理屈はつくと思うけど。

配偶者特別控除の後ろに配偶者控除そのものを入れるかどうかの問題は残ると思いますが、ただ、男女共同参画会議の話ではなくて、これは女性の社会進出ですから、ちょっとこれはどうしますかね。

それと、特定扶養控除の云々は、今日は一切議論していないんですよね。前からも議論していないですよね。これは当然のものと受けとめていれば、それでも結構だし。

委員

その点でいえば、高齢者について一言も触れていないというのがありますよね。どの控除にしてもね。

委員

いえ、これはだって前に書いてあるじゃない。これは小泉5項目についてやっているから。その枠外については、その他で議論するならいいけど。それは一応議論したほうがいいと思います。

委員

こういう形である方向を出すということは、過去に例がないと思うんだね。

委員

そうですか。

委員

そうですよ。対話集会をやってみたら、予定調和的に立派な答えを全部いただいて、それは石さんの説明がうまかったからということもあるかもしれないし、みんなの客観的な認識が正しかったということもあるし。だから、これはこれでいいんですよ。対話集会をやってみたことのアンケートをバックにして、大体我々の方向は、大なり小なりあるけれども、基本的に支持されたよということが書いてあるわけで、だから対話集会は成功だったということですよね。それはそれで皮肉でも何でもなくて、ただ、実にめずらしいレポートを書くもんだなと思っているだけですよ。

2番目に、法人税の話ね。当基本小委員会では大論争にならなかったけれども、総会になれば論争を構える人もいるでしょう。今日は見えていないけれども。他にもいるかもしれない。それに対しては、我々は発言を求められればこれで押し切るつもりだけれども、いろいろな意見があって、それはしょっちゅう会長がやっていらっしゃるから、会長が引き受けてもらっても構わないのだけれども、必ず出ると思うんですよ。

もう一つ、一番最初にこう書いてあるんだ。総理が多年度税収中立で1兆円を超える規模の先行減税という漠然としたことを言っているわけですね。当財務大臣はもっと漠然としたことを、いろいろ触れながら言っているということがある。それはみんな少しずつ断片的に印象に残っていって、よくわからないということがあるのですが、これは一般の受け取りが混乱するのは当たり前だと思うんですよ。

それで、法人税減税に関してそれをひっつけて言えば、特別措置で減税その他をやるということは、時限立法だからこれは、30年やるなんていうことはあり得ないわけだから、また時限があって初めて意味があるので。そうすると、こっちは減税規模がなんぼになるか知りませんけれども、ある程度時限が来たら、まあ、いままでのケースだったらまた引っ張られるからどうにもならないのだけど、基本としてはこの話はサンセットで途中で切ってしまうというのが基本原則だから、それでやる。しかし、片一方の、いろいろ書いてあるけれども、これをずっと突き合わせていくと、これは増収論だから、そちらを恒久的にしっかりおやりになるのだなと。それと行って来いでどうなのかなという議論があるんですよね。

それで必ず出てくるのは、恒久的な増税はしっかりやれそうだから、どの程度の金額になるかわからないけれども、しかし、短期的な減税というのは、そう大したことはないかもしれないねと。表面財政中立でも、長い目で見れば、そうでなくなるかもしれないという議論はいくらでも出てくるんですね。

そのときに、私なんかが思うのは、当たり前だと、そんなことは。基本的に増収を図らなければどうにもならないんだから、ということを「あるべき姿」で書いてあるわけです。それを何かそこのところの政治的な発言にかこつけて、それでいろいろな議論を巻き返すというのは、まあ巻き返したい人の気持ちはわかるけれども、基本姿勢が僕は間違っていると思うんだね。だけども、そういう議論も出るかもしれない。それをしっかりと会長が受け止めて……。

委員

いや、出るかもしれないではなくて、このあとの記者レクなんか全部それですよ、多分出てくるのは。新聞記者は何でこう足元の短期のところばかり興味があるんですかね。

委員

新聞記者は一般的にそうかもしれないね。

委員

配偶者控除のところですが、これですと、先ほどと同じようなことになりますが、いわゆる税が経済活動の中立性を妨げるということを取り除こうという趣旨からしますと、配偶者特別控除だけに絞ってしまうと、やや問題というか、もうちょっと広げておいたほうが……。落としどころとして、多分特別控除がせいぜいでしょう。ですけど、配偶者控除も同じ問題なのですから、そういう男女共同参画社会というか、そういう観点を税調も少しわかったかということになるには、2つ入れておいたほうが……。これですと、全然わかっていないなということになりますね。

委員

トータルで1兆円を超える減税と書かなければならないのかもしれないけど、全体で辻褄が合わないのではないかなという気が一つします。増やすのがいっぱい書いてあって、減るのは、どう足したってならないだろうと思うのですけれども、そんなこと気にしないといえばそれまでなんですけど。

一つ、そんなのなかったのか、ふと忘れたのは、定率減税というわけのわからない減税、あれをやめるというのを、何かどこかに書いてあったような気がするのですが、それを抜きにして配偶者特別控除をやめるというのだけいきなり最初出てくると、何か安っぽいところから始まったなという気が一つするのと、あと、この2つの例示でいいのか。あまりいっぱい例示すると、かえって逆効果かもしれないのですが、3つぐらい挙げておいたほうがいいかなと。どれでもいいのですが、老年者控除でも何でもいいのですが、人気のあったのをもう一つどこかへ入れておいてもいいかなと思います。

あと、流れとしては、先々家族の控除の構造全体を見直すのですよというのがないと、ただ思いつきで減らしたみたいに思われるのも悔しいので、一言あってもいいような気はするのですけれども。

委員

これは事務局に念を押しますが、この表題は「『あるべき税制』の実現に向けた議論の中間整理」なんだけど、ベースは小泉5項目が軸なんですよ。それを表題で振る必要があるのか、ないのか。つまり、今言われたのは、それを逸脱した定率減税とかほかの諸控除も入れろという話とどう整理するか。

もう1点、8月6日に内閣総理大臣が云々言ったというのは、もう今ぶれているわけです。いろいろあっちこっち。極めてフレキシブルでしょう。これ、ここで入れちゃいますか。ちょっとそれもあわせて。

事務局

確かにこれを読まれた方は、非常に限られたところの意見だけが出ているという印象だろうと思うのです。ただ、要は総理からも、会長にもあったと思うのですが、できるだけ広く国民に税の実態を知らしめてほしいというのがそもそもスタートでありまして、特に基本方針をまとめた中で、今年まずやってくれと言われた5項目、それをこの7月から対話集会でまとめたものですから、確かにこれはあくまでも税の対話集会の状況を中間整理したということなので、そういう意味では表題の中で「『あるべき税制』の実現に向けた」と言うと広すぎるから、表題をもう少し限定したほうがいいのかもしれません。副題であるかどうか。ちょっと考えさせていただきたいと思います。

それから、あと、8月6日の総理大臣の指示は、はっきり言えばこれは諮問会議の場で総理から指示があり、総理演説という形で整理されたものですから、直接政府税調ではありませんけれども、同じ総理大臣がいわば総理大臣談話としておまとめになっていますので、これはあくまでもぶれてはいないと思います。いろいろな方がいろいろ御発言になっていることは事実ですが、総理からは、多年度税収中立、それから、税制を一括の法律案でぜひやってほしいということと、1兆円を超える規模の先行減税というのが入っているのは、論理的にまだ詰まらない部分があるような気は私個人はしますけど、いずれにせよそういう御指示でありますので、そこははっきり総理談話として、いわば諮問会議の場でも、それから、そのあとの談話でも出されているということで、ぶれていないということだろうと存じます。

したがって、ここはやはり方針が追加的に示されていることは事実ですので、できれば書いておいていただけたらと思う次第です。

委員

これは政府税調に指示があったという書き方ではないのね。

事務局

ないんです。

委員

ウエイトが違うからね。

事務局

そうなんです。

委員

それならいいかな。

事務局

指示があったのは上で、5項目で。

委員

どうぞ、他に。

委員

総理大臣指示という範囲の中というふうに区切ると、私の言った住民税の均等割の奥さんの非課税の問題、入るのか、入らないのか。

委員

入らないです。

委員

入らないんですか。ただ、問題の次元としては同じなので、書き方とすれば、「という指摘があった」ぐらいに書いておくのか。まあしかし、これから15年度改正をやるのだから、もういまのところはいいじゃないかという気もするのですけど。

委員

これは15年度改正に向けて目下のところ議論しているのを、まとめたという立場なんだね。この書き方はね。だからそういう表題のほうがいいかもしれないね。

事務局

確かにここの頭を読んでいただければ、5項目を中心にということで、2ページの頭に書いてあるわけです。「項目を中心に、『対話集会』の結果等を踏まえた現在の議論の状況を整理」となっていますから、その意味では、よく読むとそうなっているのですが、全体の表題が若干全部のあるべき税制、御答申いただいたものが頭にかかっているものですから、その部分のごく一部だねという先ほど来のお話を聞いていてもつとに思いますから、ちょっと表題は工夫したほうが私もよろしいかと思います。

委員

同時に「あるべき税制」を我々は検討していて、その先行的に議論すべきものがある意味で5項目なんですよ。

事務局

それも実はあとで出てまいりますが、その後政府税調に総理から御指示をいただいたのが5項目であって、その後、実は我々政府の役人としては、政府与党の場で、例えば土地税制とか、金融税制とか、それから「骨太2002」には、さらに寄附税制などというのも入っておりまして、今後年末に向けては、やはり議論していただかざるを得ないわけでございます。

ですから、あくまでもそこは、とりあえずいただいた5項目を中心に対話集会でアンケートを取ったそのものをむしろ中間整理しているという程度のまだ位置づけだろうと。したがって、さらに議論が深まったところでは、できれば、さらにこういう形でも結構ですし、さらには会長談話でも結構ですが、いろいろ発信していっていただけたほうがいいのではないかと、そんなような気がいたすのでございますが。

委員

どうぞ、他に御意見。

では、表題は少し考える。それから、「あるべき姿」と今後の進め方等々も少し考える。

いろいろあると思いますが、そんな大幅な修文をしなくてもいいと思いますので、あとの修文は私と上野さんと事務局にお任せいただけますか。びっくりするほどの修文はするつもりはありませんが、とりあえず3日の総会にはこれは出したいと思います。3日の総会にこの種の文章を出すことはよろしゅうございますね。では、それはお認めいただいたことにいたします。いろいろ御注意をいただきましたので、それを十分に生かして、実行したいと思います。

何か特に御注意いただくことはございますか。よろしゅうございますか。

それでは、次の予定をちょっと述べさせていただいて散会にしたいと思います。

まず、「会議後返却」と書いてございますから、これは机の上にお残しください。

それから、次回は総会が3日、2時から4時まででございます。この文章を出したいと思っています。

それから、あとの基礎問題小委員会の位置づけですが、ここで一つまとめましたので、9月の後半から一応再開いたしまして、まさに相続・贈与のあたりは、これから本格的に議論も詰めなければいけませんし、残った問題でまだいっぱいあると思います。それから土地も金融もいろいろ出てくるのかもしれません。そういうことを踏まえまして、10月からは毎週というような感じになるのかなというおそれを持っていますが、多分そうなるでしょう。

そこで、11月の真ん中ぐらいまでには、一応、基本方針を6月に出しましたから、そのあと審議したものを踏まえて、最終的な基本方針をまとめたいと、このように考えています。

それ以降は、年が明けてから、来年度9月、あるいはもっと早くなって6月かもしれませんが、我々の3年目に出します中期答申、これをまとめなければいけませんので、具体的なやや長めの問題を念頭に置いて議論したいと考えています。また、他の小委員会を立ち上げるということもあるかもしれませんが、そういう段取りでございます。

何か今後の予定につきまして、御質問なり御意見ございますか。あるいは事務局の案がございますか。よろしいですか。

それでは、7分ほど早く終わりましたが、皆さんの御協力を得まして、どうやらまとまりました。ありがとうございます。

それでは、これで散会いたします。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。