第15回基礎問題小委員会 議事録

平成14年5月21日開催

委員

それでは、時間になりました。第15回になりますが、基礎問題小委員会を開催いたしたいと思います。

3時間予定しておりますので、途中休憩を挟みたいと考えておりますが、今日のテーマは、すでに御案内のように、国と地方の関係と、エネルギー関係諸税と、たばこ・酒、できたら租税特別措置、これはもう2回先へ送っていますから、何としてもここまで時間を確保してやりたいと思っています。

今日は、冒頭、地方分権の課題につきまして、神野さんと吉田さんに御報告いただきますが、その前に、5月17日、新聞ですでに報道されておりますが、我々税調委員が10人ぐらいと私と上野さんで、首相官邸へ小泉さんに会いに行きまして、会いに行ったというよりは晩飯を御馳走になったというほうが正確かもしれませんが、税調のほうの議論もまとめの段階に入っているし、この際ゆっくり意見を交わそうというのが趣旨だと思いますが、約1時間ぐらいですか、自由闊達に議論いたしまして、皆さん積極的に議論を仕掛け、かつ小泉さんも積極的に応じてくれたということで、和気あいあいの中に貴重な意見の交換ができたと思っています。

新聞にも報道されておりますように、基本的にいうと、あの人は、「増税しない」と言っている増税の意味は、税率を上げないということでありまして、課税最低限を下げるとかその他によって、制度の歪み等々を直す結果出てくる増収は、増税と思っていないらしいですが、「とりあえず俺の任期中はやらない。ただ歳出を徹底的にカットして、無駄、非効率をなくしてその後につなげたいというのが俺の内閣の使命である」とおっしゃっていましたので、長期政権が続けば先のことはわからないけど、当面は歳出カットで、いまの財政のバランスをとる先兵隊になりたいということだろうと私は理解をいたしました。

かなり増税の言質を取ろうと積極的に議論を吹っかけた委員の方もいらっしゃったのですが、そこはしたたかなものでありまして、はねつけられたというのが実態ではないかと思います。しかし、非常にそういうところでフランクに意見の交換ができた有益なひと時であったと考えております。

最初に、国と地方の関係につきまして、神野さんと吉田さんから各々15分ぐらいずつ、短くて恐縮なのですが、「地方分権の課題」というので神野さん、「分権時代の地方税制」ということで吉田さん、最初にプレゼンテーションをお願いしたいと思います。では神野さんお願いします。

委員

お手許に私のレジメが行っているかと思いますが、私の話は、昨年の7月に解散いたしました地方分権推進委員会の最終報告を解説させていただきながら、意見を述べさせていただくということにさせていただきたいと存じております。意見はあくまでも私の個人的な見解でございますので、委員会としての見解ではないということを初めにお断り申し上げておきたいと思います。

お手許のレジメの最初の「1.」のところに「垂直的財政調整と水平的財政調整」というふうに書いてございますが、財政調整の生みの親と言われているドイツのポピッツの議論などに従いながら、私どもドイツの財政学をやっております立場から、財政調整に対する考え方を理論的に最初にお話をさせていただきたいと思います。

「垂直的な財政調整」というのは、これは国と地方自治体、国と地方政府との財政関係を調整するという意味ですし、「水平的な財政調整」というのは、地方自治体間の財政を調整するという意味でございます。

まず、国と地方に垂直的な財政調整で国と地方の財政関係を調整するわけでございますが、それは国と地方にそれぞれ行政任務を配分する。どういう行政任務を国に、どういう行政任務を地方に配分するのかということをまず行い、その上で、それぞれ割り当てた行政任務を遂行可能にするような課税権を配分するというのが「垂直的な財政調整」でございます。

それから、「水平的な財政調整」というのは、行政任務を国と地方に割り当てますと、地方に財政需要が生じてまいります。それから課税権を地方に割り当てますと、その地域社会から税収を調達する力、課税力が生じてまいります。この財政需要と課税力を合わせて財政力というふうに申し上げておきますと、この財政力を調整するというのが「水平的な財政調整」になるという考え方ですね。ここで重要な点は、まず垂直的な財政調整を割り当てないと、水平的な財政調整のやりようがないということでございます。

そして、垂直的な財政調整を分権型にするということは、身近な政府である地方政府に、多くの行政任務を割り当てるということを意味するということです。ただ、多くの行政任務を割り当てたとしても、次の2つのことが生じてしまうと、国と地方の財政関係は分権的にならない。1つは行政任務の決定と執行が非対応になっているということです。つまり行政任務における決定権を中央政府が握り、地方政府は執行するだけになってしまっていると、行政任務を地方が多く遂行していても分権型にならない。

それから、もう1つは、行政任務と課税権というのが非対応になっていると分権型にならない。つまり、行政任務のほうは地方自治体に多く割り当てられているのだけれども、それを遂行可能にする課税権が地方のほうに設定されていないということになりますと、分権型にならないということです。

あと、もう1つ重要な点は、垂直的な財政調整を分権型にいたしますと、水平的な財政調整、つまり地方自治体間の財政力格差を是正する機能は強めなければならないというのが原則でございます。ほとんどの行政事務を中央がやっている限りは、地域間、地方自治体間の財政力の格差を調整する必要性は薄らぐということを意味するということでございます。

それが私ども財政学で言っている理論的な背景でございますが、地方分権推進委員会の先ほどお話しいたしました最終報告では、どのようなことを述べているかということでございますけれども、2.のほうの丸ポツの1ですが、地方分権推進委員会は中間報告から、地方自治体に自己決定権を与えるということを重視してまいりましたが、それが行政面においては一定の成果、つまり機関委任事務の廃止などの成果を上げ得たのですけれども、財政面における成果があまりないのではないかという御批判があったところでございます。地方分権推進委員会の最終報告では、地方自治体に与える自己決定権を財政面にも拡充をするということを目標にいたしながら、分権推進委員会の最終報告をしたためております。

お手許の5ページ目をお開きいただきたいと思いますが、5ページ目からが地方分権推進委員会の最終報告になっておりまして、第3章でございますが、「地方税財源充実確保方策についての提言」というところから述べております。

まずはじめに、分権推進委員会の最終報告では、財政面においても自己決定権を拡充するということをうたっているのですが、これは前文のところでうたってございますので、第3章のほうではそれを受けた形になっております。しいて申しますと6ページ目の(2)の(3)が始まる前の2行目ですが、「また税財政面の自己決定権の拡充及びその発揮により、住民の声が地域の行政サービスのあり方に反映されやすい仕組みができあがることにもなる」というふうに書いてありまして、これを受けて書いているということが、そこでおわかりいただけるのではないかと思います。

その上で、私どもが取り組んだのは、行政任務における決定と執行の非対応、これを行っている最大のルートと申しますかメカニズムは、機関委任事務でございますので、この機関委任事務の廃止は、一応分権推進委員会のほうで打ち出しましたから、残された課題として行政任務と課税権の非対応の解消ということを、自己決定権の拡大ということで重視をしたということでございます。

そこで、5ページ目をもう1度お開きいただきますと、1の(1)のところ、一番上のパラグラフをご覧いただければと思いますが、「地方税源については、地方分権を更に推進するため、既に第2次勧告等で述べたように、地方の歳出規模と地方税収との乖離の縮小」、ここのところが行政任務と課税権の非対応を解消するということをうたっているところですね。それは結局、住民の受益と負担の対応関係の明確化につながるわけですので、そうした観点からその充実確保、つまり地方税源の充実確保を図っていくべきであるというふうにうたっている、というのが住民の受益と負担の対応関係の明確化というところでございます。

また1ページ目にお戻りいただきまして、2.の丸ポツの3番目ですね。そうしたことを行うためには、国から地方への税源の移譲による地方税源の充実が必要になってくるということで、具体的に、7ページ目をおあけいただければと思いますが、中ごろあたりに入りますが、(2)です。「この場合、地方公共団体の自己決定、自己責任の拡充及びその発揮を税財政面において適切に担保していくためには、地方税の中でも特に基幹税目の更なる充実が不可欠である」というふうに、今回、基幹税目の充実確保ということを明確に打ち出したということでございます。そして中身は7ページ目の(4)の(個人住民税)のところを見ていただきますと、最後から2行目、「税源移譲により、個人住民税の最低税率を引き上げることにより」とうたっておりまして、税率をフラット化しながら住民税の税源を確保していくということをうたっています。

それから、8ページ目をご覧いただきたいと思いますけれども、1行目で、個人住民税のより比例的な税率構造にとうたっているところですね。

それから、地方消費税についても、一番最後の行でございますが、地方交付税の原資として組み入れられている消費税の一部分を地方消費税に組み替えることも検討すべきであると。

それから、個別間接税のところですが、たばこ税などの個別間接税の税源移譲を含めて検討と、こういうふうにうたっているところでございます。

そういうふうに税源配分の見直しをすることによって、行政任務と課税権の非対応を解消するということをうたっているわけですけれども、自主的な課税努力の重要性も一応うたいながら、ただし、それには限界があるということも、うたっているところです。8ページ目の一番最後の行の最後のほうですが、「自主課税の努力が必要である」というふうに必要性をうたいながら、9ページ目の一番上のパラグラフ、国・地方を通じ主要な税源はすでに法定税目とされているというところから、限界があるともいたしております。地方税源の充実に伴う国から地方への移転的な支出は削減する。この削減の方法は、まず国の関与の強い特定財源である国庫補助負担金をまず行って、これを一般財源化する。一般財源の交付税をその次に減らして自主財源化する。つまり税に変えていくというのがこの勧告のトーンになっているということですね。

それは9ページから10ページあたりをご覧いただければおわかりいただけると思いますので、省略させていただきたいと思いますが、ただ、先ほども申しましたように、垂直的な財政調整を分権型にすると、水平的な財政調整をむしろ強めなければならないというのが原則でございますから、10ページ目の3の(1)の下から3行目あたりからお読みいただきますと、「財政力の格差が拡大する可能性があることから、財政力の格差を是正するという地方交付税の役割は依然として重要であると考えられる」と、こういうふうにうたっているところであります。

私どもの勧告はこういう勧告をしたのですけれども、こうした勧告は的を射ていないかどうかということを、私たち日本の歴史と国際比較によって少し確認をしてみたいと思います。

1ページ目の3.の「過去およびヨーロッパからの教訓」を見ていただきますと、次のように3つの言葉が書いてあります。「地方に財源を与ふれば 完全な発達は自然に来る」「地方分権丈夫なものよ ひとりあるきで発てんす」「中央集権は不自由なものよ 足をやせさし杖もらふ」。これは1928年の第16回総選挙のときに、時の二大政党の1つでありました政友会の選挙ポスターでございます。この選挙ポスター、現在でも通用するわけですね。「地方に財源を与えさえすれば、地方の完全な発達というのは自然にやってくるんだ。地方分権というのは丈夫なものであって、地方はひとり歩きで発展することができるんだ。中央集権というのは不自由なもので、地方の足をやせさせてしまって、杖をもらわないと生きていけなくなってしまう」と、うたっているわけですね。

この1928年の第16回総選挙というのは、日本の民主主義にとって決定的な意義がありました。これは第1回目の普通選挙です。第1回目の普通選挙でなぜ政友会がこうしたことを打ち出さなければならなかったのかといいますと、これは大正デモクラシーの成果ですね。大正デモクラシーというのは、御存じのとおり両税移譲、それから義務教育国庫負担金の増額。義務教育国庫負担金というのは、現在で申しますと交付税に当たりますので、財政調整制度を拡充し、両税移譲、つまり地租と営業税という2つの税金を地方税から国税に移してもらいたい。この税源移譲と義務教育国庫負担金の財政調整制度の強化が日本の民主主義のシンボルだったということですね。

シャウプ勧告は、この大正デモクラシーを見ながら日本にやってまいりまして、日本で税源移譲と財政調整制度の強化をシャウプ勧告でうたうわけでございます。

シャウプ勧告を最後につけてございますが、18ページをご覧いただければと思います。「北海道町村会の報告によれば、77種の法定外独立税」、つまり独自課税をやっているのだけれども、そうしたことを受けて2行目から3行目ですね、「地方自治のために、われわれは、地方行政単位がこれらの租税を、その賦課しようとするかも知れない他の法定外独立税とともに、法定外独立税として課することを許されるように勧告するものであるけれども、地方当局に対しては法定外独立税の数はこれを制限するように忠告したい」というふうに言っているわけですね。つまり、自主努力でやるということは重要だけれども、しかし、あまり多くの租税を、税収を依存するような独 自課税をやると不健全で不公平な税金ができ上がるということを勧告しているわけであります。

そして最後の4行目から、「もし地方当局が実質的で依存できる税源に接するならば、法定外独立税の問題は大いに減少し、異常の場 合以外には地方の決定に安んじて委せておくことができるであろう」、こういうふうに言っているわけであります。

シャウプ勧告はこれを受けて、大正デモクラシーが要求した税源移譲を実現させ、そして平衡交付金という財政調整制度を勧告していたわけでございます。

それから国際的に見てみますと、地方分権のうねりはすでに1985年で「ヨーロッパ地方自治憲章」、これは30数か国すでに批准をいたしておりますが、これが火をつけております。その「ヨーロッパ地方自治憲章」は、地方財政についてどううたっているのかということですが、14ページをおあけいただきたいと思います。

「ヨーロッパ地方自治憲章」を見ていただきますと、9条が地方財政について規定をいたしております。「第9条1 地方自治体は国家の経済政策の範囲内において、かつ自らその権限の範囲内において、自由に使用することのできる適切かつ固有の財源を付与されなければならない」。15ページの2、「地方自治体の財源は、憲法及び法律によって付与された責務に相応するものでなければならない」。3と4を省かせていただきまして、5番目「財政力の弱い地方自治体を保護するため、財政収入及び財政需要の不均衡による影響を是正することを目的とした財政調整制度又はこれに準ずる仕組みを設けるものとする。ただし、これは、地方自治体が自己の権限の範囲内において行使する自主性を損なうようなものであってはならない」、こういうふうに規定しているわけですね。

これを受けまして、昨年の秋ぐらいに最高潮に達したのですが、国連が世界自治憲章をつくろうといたしました。その原案でございますが、12ページをおあけいただきたいと思います。12ページからが「世界地方自治憲章」の原案になっております。この9条が地方自治体の財源を決めているところでございますけれども、内容は「ヨーロッパ地方自治憲章」とほぼ同じです。ただ13ページの5を見ていただきますと、私が先ほど使いましたドイツ財政学の垂直的な財政調整と水平的な財政調整の考え方を明確に出しているということです。「脆弱な地方自治体のため、財政の持続性を、垂直的、水平的又はその両方であるとを問わず、特に財政調整制度により保護しなければならない」と書いてある。こういう考え方、こういう世界の流れを見ても、分権委員会で最終報告で出した考え方は、そう大きなずれはなく、歴史的にも国際的にも言えるのではないかということが言えると思います。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。では、引き続き吉田さん、15分ほどで御説明ください。

委員

まず私の地方分権なるものの考え方を少し述べながら始めたいと思います。

私は、阪神大震災が起こったとき、関学の小西君が来て、経済学者のボランティアとして再建計画をつくろうということで始めて、それをこちらの中央官庁にも持ってきて、神戸市と兵庫県へ持っていったわけですが、兵庫県なり神戸市へ持っていきますと、「いま偉い人がみんな東京に行っているので申しわけありません」と、課長さんあたりの人が対応してくださって、そういう状況だったわけですね。

そのあとシンポジウムがありまして、サンタクルーズというロサンゼルスの郊外のまちですが、そこの市長が来て、当時のロサンゼルス大地震からの復興計画の話をされまして、そのときに住民を20人ずつぐらいのグループにしまして復興計画をつくったと。フェニックス計画をつくって、それの財源は、住民投票で一定限に限って売上税を導入したのです。えらい違いだと思ってびっくりしたわけでして、片方は住居を東京に移して仕事をするわけですし、住民は全く関係がないわけです。片方は住民が起案したものに対して住民が投票する。えらい違いだと思いまして、やはり21世紀の地方制度のあり方というのはこういうふうに、まあ、アメリカはちょっと特殊であるということはわかりますけれど、何か近づけるものがないかなと、それで地方制度についての提言をしたわけです。

そうすると、結果としてスウェーデンの制度とほとんど同じような制度になったわけですが、基本はまずコミューンを整理して、整理されたコミューンに課税の自由権を与えるという形でやったわけです。本質は、国家で福祉財政を維持することはできなくて、もう破綻してしまったわけですね。ある意味で丸投げに近い形で地方分権をするということが行われたわけです。ただ、スウェーデンの地方財政制度とスイスというのは、若干違いますけれども、非常によく似たところがあるわけです。スイスのほうは福祉なし、税金なしの国ですから、国税も納めたくないから民兵でやりますという徹底した国ですから、ただ、どちらか好きに選択できるというところが非常に大事なのだと。

日本の財政が何がおかしいかというと、戦後キャッチアップをしていく、そのキャッチアップ過程で形成された財政制度をそのまま続けているところではないかな、というのが私の基本的認識なわけです。

メモがございますが、「1 財源配分論でなく望ましい地方税のあり方」、こういった点から御議論いただければなと思っているわけです。中央省庁再編のときもそうでしたが、羊羹の切り分けとよく言われたわけですが、権限をどこの省庁にくっつけるかと。まあ、やらないよりやったほうがよかったのかもしれないですが、結局、21世紀の政府のあり方、財政のあり方というものを考えて始めたわけですけれども、結論的に切り分け理論。切り分け理論というのは、結局、基本的にナンセンスというのが私の考えであるわけです。

税制の話から入っていきますが、望ましい地方税制というのは、地方税のどういう性質が望ましいか。まず第1に、自治体が自由に税率を決められるということが大事ではないかなと。結局、その地域にとって何が適切かということが基本的に選択できるということが大事だと思うわけです。

それから、課税をしてそれが地域的な歪みを引き起こすような税制、それはまずかろうと。基本的に税率を自由にできるとしても、税目の選択は国の法律によらざるを得ないわけですので、その税目を設定するときに、地域的な歪みの少ない税というふうに考える必要があるかなと。といいますのは、自治体間競争で税率が決まるというようにすると、均衡税率がゼロになってしまうような税目は、もともと地方税に向かないということになるかと思うわけです。

それから、課税ベースの格差が地域間であまりにも大きなものはまずいわけで、結局、地域間で課税ベースの格差が大きいから財政調整が必要になってくるわけですから、もともとあまり大きくないものが大事で、安定した税収であることも地方税としては重要である。それから、地域の政策に適したものを選択できるというのも必要なことかなと思うわけです。

そういうふうに考えていきますと、どういう税がいいのか。所得にかけるというのが基本ですから、個人住民税を軸にしていくというのは当然のことになるわけですが、その場合も控除額を小さくしてフラットな税にする。地方税として日本にも人頭税があるわけですが、均等割分があるわけですが、人頭税というのも悪くない税とも思うわけです。これを累進税にしますと、当然のことながら、税率の高いところを嫌って金持ちが、金持ちのほうが動きやすいでしょうから、累進課税の累進率の低いところに行くことになりますから、歪みを生じてきますので、フラット税が望ましいのではないかと。行政と税との均衡を競争してもらったらいいわけですから、それでどこかで均衡するわけですから、そういった比例的な税というのが扱いやすいし、ディストーションが小さい。課税ベースの格差も、所得の格差というのはあるわけですが、所得の格差というのはある程度の大きさしかないわけだと思うわけです。

法人に対する課税というのは、法人が来てもらって、雇用機会が増えて、あるいは所得税のほうで取れるということになれば、法人税というのはどんどん競争していくと、均衡税率が多分ゼロになってしまうわけですね。東京都が少々かけても大丈夫でしょうけれども、法人税に課税するということが地域間の税収の格差の相当大きな部分を占めていますから、法人にはできるだけ課税しないほうがいいのではないかと思うわけです。

外形標準も議論されているわけですが、外形標準課税をするのはいいのですけれども、輸入品にかけられないわけですから、これだけ国際競争力の落ちている社会で問題かなと。外形標準の課税をするぐらいだったら地方消費税を上げたほうがまだマシかなと思うわけです。輸入品にかけられますからね。基本は、企業から直接樹液を吸い取って枯れさせるのではなくて、大きく育てて果実に課税したほうがいいというのが基本的な私の考えです。

それから、固定資産税の課税というのは、固定資産という表現は不動産でも土地でも何でもいいのですけれども、要するに課税資産を持って逃げられないというのに課税するのはどこの国でもやっていることでして、また固定資産の場合には社会資本投下をして、それに対する生産力が上がって、地価が上がって跳ね返ってくるという、そういう意味でも望ましい税制ということになるかと思うわけです。

消費税ですけれども、地方消費税があるわけですが、付加価値税として課税するというのは、各地方で自治体が独自に税率を選択することはほとんど不可能なわけですから、ちょっとでも税率が高ければ、そこをどんどん回避して生産するほうが望ましいのは当然ですから、したがって、どこの国でもやっているのは小売売上税ということになるわけです。したがって、小売売上税の強い地域では、国税とバッティングするというふうなことになってくるわけです。ある程度の地方消費税の形で基幹税を確保するというのも1つの発想かと思いますが、地方自治体として自由な選択ができないというところがマイナスかなと。

私が強調したいのは、次の料金ですが、地方財政で供給しているサービスというのは、相当多くが私的財のサービスで、利益を受ける者は、アイデンティファイできるものが多いわけですから、例えばごみ処理とか教育とか上下水道とか、そういうアイデンティファイができるのはできる限り料金でやる。マーケットを使うというのが基本になるかなと思うわけです。したがって、マーケットをできるだけ活用しながら、その上に個人と固定資産を中心に課税していくような仕組み、しかも比例税、そして固定資産は評価が問題になるわけですが、評価の一定の仕組みというものをつくっておけば望ましい仕組みになるかなと。

そのほか環境税というのがあるわけですが、地域の諸政策にコンシステントな意味で環境税というのも重要な税になるかなと思うわけです。

先ほど神野先生が御説明なされた財政調整の話でありますが、いまの交付税制度というのは、交付団体が90数%です。やはり試験をやって90%学生が落第したら、学生が悪いのではなくて、問題が悪いというふうに考えるべきではないかなと思うわけです。したがって、交付税の水準を下げて、地方税による税収を増やすというのは、基本的に間違いではないと思うわけです。

ただ、先ほど申しましたように、格差をつくるような税制をつくっておいて、財政調整力が必要だというのはナンセンスな話でありまして、もともと財政格差ができないような税制を組んで議論する必要があるのではないかなと。

さらに歳出のほうでも選択権というものを大きくしていかなければいけませんから、いままでのいわゆるナショナル・ミニマム論というのから、ローカル・オプティマムというのは適切な言葉かよくわかりませんけど、地方で判断できる、そして負担と受益のバランスの上で選択できるような形での歳出というものを選べる形にする必要があるのではないかなと。それでも財政調整が残るとしたら、それは生活保護型からネガティブ・インカム・タックス型にして、しかもその対象者を少なくするということが大事ではないかなと思うわけです。

そういう意味で、1つの仮の提案ですけれども、成績優秀な人に課税して、優秀でない人に補助金を出すという、それもネガティブ・インカム・タックス型ですから、一定比率を徴収していって比率を給付するという形にするのがいいのではないかなと思うわけです。

さらに言いますと、現在の3,300の自治体というのは、自治体経営ができる体制になっていないというところが最大の問題ですから、税収が全収入の1%というような自治体もあるということ自身は非常に変な話ですから、自治体規模の調整というのは、その前に行われなければならない話かと思うわけです。

いずれにしましても、1つのスキームですべての自治体をカバーしようとすること自身、もともと無理な話であって、それをやったがために、いま90数%が落第というふうな形になってしまっているのではないかなと思うわけです。

簡単に申しますと、先ほど下の2割と言いましたけれども、山間僻地の問題が起こるわけですから、山間僻地だけに適用するということで十分ではないかなと。多くの自治体にとって自ら選択できる仕組みに移行すべきではないかなと思うわけです。

それから、一番最初に申しました財源配分論ですが、財源配分論というのはやはり前提条件があると思うわけです。基本的には均衡財政であるということから、必要な事務に対して必要な財源を割り当てるという話になるかと思うわけです。現実に700兆円の借金があって、これは税金の先食いでありますから、将来の税がすでに食われているわけです。食われていてないわけです。ないものをあるがごとき議論して配分論をするというのは、私は何かよくわからないというふうに思うわけでして、逆に言うと、債務の配分論が起こってこないわけですから、したがって、財政のバランスを回復するということの問題がまず第1にあるのではないかと思うわけです。

財政というのが、どんどん国民財産を浸食していくということがいつまで続くかというのは、やってみないとわからないわけですが、GDPの150%まで行ってよくもっているなと思って、私はそちらのほうが不思議でしようがないのですけれども、いずれ破綻するわけですから、その前に財政のあり方を確立して、同時に望ましい地方財政、地方税制のあり方をそれと同時に議論していくべき話ではないかなと、そういうふうに思います。

以上です。

委員

ありがとうございました。それでは、お2人の先生の説明のバックグラウンドデータを御説明いただくという趣旨もあって、いまから事務局から、地方税あるいは国税から見た地方税という観点から少し御説明いただきます。

事務局

『地方税関係資料』「基礎小15-3」という資料をご覧いただきたいと思います。ちょっと厚めですが、必要なページだけ抜粋して、ごくごく簡潔に説明したいと思います。

この資料の1ページ、2ページは、実は3月15日と29日に行われた経済財政諮問会議で片山大臣がお示しになった考え方をまとめたものでございまして、1ページには、いまの地方税制の現状、問題点を4点に絞って書いてございます。1つは歳出規模と税収入の乖離。この下にありますように、租税収入は3対2で国が多いけれども、最後の支出は2対3で地方が多いのだと、この乖離が問題である。

それから、2番目に「応益性の空洞化」という表現になっていますが、例えば所得税で4人に1人というのがございましたが、住民税でも 就業者の5人に1人が払っていない。法人に至っては事業税は7割の法人が税負担がゼロであるということ。それから安定性が非常に欠けているというのが3番目でして、特に都道府県税収が非常に不安定になっているというのが1点。それから市町村税収は比較的安定しておりますけれども、最大の基幹税であります固定資産税が最近は頭打ちないしは減ってきているというようなことでございます。

それから、4番で先ほど議論もございましたが、税収の偏在がございまして、ここには3つの税だけ挙げておりますが、特に法人2税等を見ますと、東京を100として沖縄が21というような非常に偏在が大きい税があるということでございます。

2ページは、それを踏まえて地方税の目指すべき方向として、「応益」「広く薄く」「安定」というのがキーワードではないかということでございまして、下半分でありますが、それではどうするかということに対しては、3対2、2対3の議論はありましたが、当面、国税と地方税の比率を1対1ということを目指したらどうかと。その場合に住民税、地方消費税等の拡充が必要ではないかということであります。

それから、(2)にありますように、住民税は住民税で諸控除の見直し等検討すべきである。また事業税は応益性の関係もありますので、外形標準課税を導入すべきであるということであります。

それから、固定資産税等の既存税目も安定的確保が必要だと。

こういうことによりまして、一番下でありますが、住民のいわゆる応益性を強めると、住民によるチェック体制が向上するであろうということ。それから、自らの選択と財源で有効な施策を実施できれば、地域経済の活性化にも資するであろう、というようなことがこのペーパーのポイントでございます。

それから若干飛びまして、5ページ、6ページの2つは偏在度の関係で、地方税の税目別でお示しをしてあります。5ページの一番左に地方税収全体でも、これは人口1人当たりですが、全国を100としますと、東京は172で沖縄が54という偏在がございます。特に税目別で真ん中の法人事業税については、非常に大きなものがあります。両側にあります住民税や消費税等に比べても、相当大きな偏在性があるということであります。

ただ、今のはみんな東京に多かったのですが、6ページで自動車とか軽油のような税を見ますと、逆に東京が1人当たり非常に少ないということがありまして、税目の選択というのは非常に重要な問題だろうと思っております。

7 ページ、8ページには法定外税のことも書いてあります。地方独自の課税努力というのも必要だということがございましたが、これは平成12年から非常にやりやすくいたしましたこともありまして、いろんな申請が来ております。協議をしております。7ページの真ん中辺右側に12年度の法定外税収、これは8ページに内訳がありますが、ほとんどが核燃料関係でございますけれども、238億円でございます。13年以降やりやすくしたということもありまして、神奈川県とか東京都のいわゆるホテル税とかでかなりロット的にも大きな新顔が出てきたというようなことが下に記されております。8ページは内訳でございます。

9ページ以降は答申類をまとめてありますが、一番新しいものに絞りまして申し上げますと、12ページでございます。昨年の年末の当調査会の答申の中で、いわゆる国と地方の関係につきましては、アンダーラインのようにまとめてございます。さらに抽出しますと、地方税の充実確保を図ることが重要であるということ。その一環として、役割分担を踏まえて補助金負担金の整理・合理化や交付税のあり方の見直しと併せて、税源移譲を含め国と地方の税源配分について根本から見直しそのあり方を検討すべきである。その際云々と、こういうような表現でおまとめていただいております。

13ページは、内容はもう申し上げませんが、ほぼ同様の表現でして、今年の1月25日に諮問会議を踏まえて閣議決定されたものでございまして、上のほうのアンダーラインがその部分でございます。

14ページは、地方財政の果たす役割ということで、真ん中辺に棒グラフみたいなものがございますが、これは全体の歳出を、全体が四角でありまして、それぞれの横幅がボリュームをあらわしております。大きな支出額がありますのが国土開発、学校教育、民生等でありますが、斜線の部分が、うち地方が支出している分でございまして、それぞれ6割から85%ぐらい、こういう主要なものは、みんな地方が行っているということであります。よく、事務を移さないと財源の配分論にならないよというお話がございますが、実はすでに事務はこういうふうに地方に移っているというのが我が国の現状でございまして、事務は移っておりますが、補助金等で財源だけは留保されていて、それによって関与がなされているということで、ここの部分が事務事業と財源が乖離しているということでありますので、これをぜひ解消いたしたいということでございます。

それから、1ページ飛ばしまして、最後に16ページでありますけれども、税の国際比較をされますが、そのベースといたしましてぜひ御理解いただきたいのは、日本の地方団体は非常にたくさん仕事をしているということでございまして、上のくくりにありますが、一般政府支出で見ますと8割が地方財政であるということで、カナダとかドイツのような国に匹敵するような地方の仕事のウエートが高いということが、下のグラフは若干見づらいかもしれませんが、示されているわけでございます。

また、特に公的資本形成についていいますと、これもまた8割を日本の場合には地方団体が行っているということがございまして、仕事のウエートが高いということを前提に、地方税の割合なり、いろいろな議論についてお願いをいたしたいということでございます。

以降、財政状況の資料とか国税関係の資料、地方行革の資料、あるいは合併に関してでございますが、お時間もありませんので、説明は省略いたします。

以上でございます。よろしくお願い申し上げます。

事務局

続きまして、お手許の資料の「15-4」に基づきまして御説明をさせていただきます。

資料を2枚おめくりいただきました1ページに、昨年6月の経済財政諮問会議で決定されました「骨太の方針」を載せております。事後閣議決定をされておりますが、これを簡単に図示したものが2ページのほうにございます。ここで書いてございますのは、まず地方行財政の効率化を前提に、国と地方の役割分担の見直しをまず踏まえて、その上で国庫補助負担金の整理合理化、地方交付税のあり方の見直しとともに、税源移譲を含め国と地方の税源配分について根本から見直しそのあり方を検討する。その際、国・地方それぞれの財政事情や個々の自治体に与える影響等を踏まえる必要があるということが書かれておりまして、これが地方税の充実確保の問題を考えるに当たっての基本思想並びに手順といったものを整理されたものだと私どもは理解しております。

3ページをおめくりいただきますと、先ほどお話がございましたとおり、上のほうが国・地方の歳入、下のほうが国・地方の歳出でございます。上のほうが3対2という歳入の割合、下のほうが2対3という歳出の割合ということで、ここが割合の議論が出てくるもとになっているものでございます。

ただ、この状況というのは、私どもの目から見ますと、一方ではこの絵を全体をダイナミックに理解すれば、上のほうの88兆円の租税総額で159兆円の歳出額を賄っているというもう1つの問題をも現しておりまして、3対2をはじめとする割合の議論だけというのは、必ずしも物事を総合的にはとらえていないと思っているわけでございます。

4ページ、国と地方の財政を比較したものでございまして、同じような資料を5ページ、こちらは今年の1月に経済財政諮問会議の中期展望の参考といたしまして、今後のプライマリー・バランス等の推移を見たものでございまして、下の四角で囲っておりますところに、今後のプライマリー・バランスの推移、2010年にはおおむね均衡という絵が描かれておるわけでございますが、その際、国と地方に分解して考えますと、地方はいま現在ほぼプライマリー・バランスがとれている状況、一方国は、ここにございますとおり、未曽有のプライマリー・バランス赤字に陥ったままの状態が当分続くという状況にございます。

6ページをお開きいただきますと、これは最近におきます格付けの状況でございまして、日本はかなり下に下がってきておりまして、この原因の1つとして、現在の日本政府の債務依存体質、財政スタンスというのは持続可能でないということを根拠の1つに挙げられているわけでございます。

私どもから見ますと、税収というのはこれまでの借金の返済財源そのものでございますので、そういう意味ではフローの財政のみならずストックの財政から見たときの重要度が非常に高いと考えております。

7ページでございますが、4つ絵が出ております。右上がいつも見ていただいている絵でございまして、日本の租税負担率は22.9%ということで、非常に低いという状況でございますが、左の上下でそれを国・地方に分解したものでございます。租税負担率、国税のほうは13.4%ということでG5中最下位。地方税のほうは9.5%ということで、アメリカに続いて2番目という状況でございます。

ちなみに右下のほうを見ていただきますと、国税・地方税の構成比とございますが、日本はアメリカと並んで地方税の多い国になっているわけでございます。

8ページでございますが、その割合を時間の推移をもって見たものでございます。この表の真ん中辺に国民負担率[5]という表がございます。これを上から下に見ていただきますと、平成に入りましておおむね37~38%で横ばいという状況が続いているわけでございます。これを分解してみますと、[4]の社会保障負担が平成2年の11.3%から平成14年度15.5%ということで、約4%強増えている。その反射的な結果として租税負担率の[3]というのは、27%から23%に落ちているということでございます。その内訳を見ますと、[2]の地方税につきましては、おおむね9%前後ということで安定をしておりまして、[1]国税のところが4.5%程度の減少をしているという絵が見てとれるわけでございます。

9ページ以下でございますが、よく税源移譲ということの対象として所得税と消費税ということが出てまいるわけでございますが、9ページに所得税につきまして、今後も国税の基幹税として非常に重要な役割があるという税調答申をお載せいたしております。

さらに10ページをお開きいただきますと、これも同じように、右上のほうに日本の個人所得課税の負担率6.8%ということで、非常に低いということをよく見ていただいておりますが、左側に同様国税と地方税に上下で分解した姿をお示ししております。左下を見ていただきますとわかりますが、ここの中ですと、イギリスやフランスなどは地方税に個人所得課税がないという状況になっております。

その状況を、11ページをお開きいただきますと、税率表とともにお載せ申し上げておりますけれども、こういった形でイギリス、フランスには地方税がないということでございます。ドイツは共有税という形の税金がございます。

12ページをお開きいただきますと、その所得課税につきまして非常に大きな問題の1つと思っておりますのが、この10%のブラケット。これも所得課税のところでよく御議論いただきますが、日本の場合、納税者の8割が集中しているという、かなり異例の税率構造にございます。ほかの諸外国と比べて、10%部分というか、低い税率のところに集中しておりまして、これが仮に10%よりも低くなった場合には、それでもなおかつ日本の所得税は基幹税と言えるのかという状況に陥ることになると思われます。

13ページでございますが、消費税につきましての税調答申の考え方をお載せしております。

14ページはその税率の各国比較。

15ページでございますが、消費税5%とよく申し上げますが、実際は地方消費税が1%、さらに消費税4%のうちの29.5%は地方交付税ということで配分されますので、現在の国・地方の配分割合は56.4対43.6でございます。その国分の6.9兆円に対しまして、現在福祉目的化されてございますが、その福祉費用のほうは10.1兆円ということで、国にとって非常にまだこれから頼りにしなければいけない財源という状況でございます。

16ページを見ていただきますと、消費税・地方消費税の仕組みがございます。先ほどもちょっとお話がございましたが、このように転々流通する財をいわば追っかける形で前段階の控除をしていくという多段階課税というのが消費税の仕組みでございます。したがいまして、例えば真ん中の卸売業者のところでそこの県が10%の税率を課すると、その時点で制度自体が働かないというようなことになりかねない問題がございます。そういう意味で自主性と申しますか、あるいは自己決定権と申しますか、そういうことをそもそも許すことができない税制が付加価値税ということで、ヨーロッパ各国においても国税として仕組まれているわけでございます。

17ページでございますが、こちらは税源偏在を国税で見たものでございます。参考にお付けをいたしております。

18ページでございますが、こちらに今年の1月、昔の「経済白書」、現在は「経済財政白書」と名前を変えてございますが、そこで国税と地方税の比率を1対1にするような税源移譲、7兆円の税源移譲をシミュレーションしたものがございます。シミュレーションの結果を見ていただきますと、不交付団体、すなわち自立している地方公共団体の数でございますが、県で見ますと現在の東京、それに愛知が加わる。市町村で言いますと3,252のうち107であった不交付団体が253に増えるという状況でございますが、逆にいいますと、この引き算の残りの45都道府県あるいは3,000の市町村というのは、交付団体のまま残るということでございます。

一番下にございますが、税収の歳出全体に対する割合が2割未満という自治体は現在5割とされてございますが、4割に若干は減るという数字でございます。

それから19ページを見ていただきますと、もう1つの問題で経済財政白書で書かれておりますのが、不交付団体の増加によって多額の超過財源、すなわち東京ですとか一部の不交付団体、そういった団体に7兆円のうち1.7兆円超過財源が発生する。したがって、下線部だけ読ませていただきますと、「地方交付税の不交付団体(特に大都市)において発生する」「不交付団体の超過財源の増加分に応じて、交付団体の(つまり地方部の団体の)歳入規模は縮小することに留意する必要がある」というふうに書かれております。

それから、20ページ以下でございますが、これも先生方の御議論にございましたのであえて詳しくは申し上げません。20ページに、地方税としてあるべき姿というものの税調の御整理、21ページでそのうち均等割でございますが、地域社会の費用の一部を均しく分担する基礎的な理想的な税という役割の位置づけ、真ん中辺に「負担水準の見直しを図る必要がある」といった指摘がございます。

22ページを飛ばしまして、23ページでは固定資産税ということで、4行目ぐらいのアンダーラインにございますが、特に小規模住宅用地においては、6分の1とか3分の1といった大幅な特例措置が講じてあって、これを戻していくことを検討する必要性といったことにお触れいただいております。

24ページでございますが、自己決定権、自己責任という観点で地方団体の課税自主権の現状を、私どもから見た整理をさせていただいております。一番下に最近はやりの法定外税がいろいろ出てきたということがございますが、法定外税以外の法定税、固定資産税とか住民税につきましても、本来、地方税法上定められてございますのは、標準税率ということでございまして、税率設定の自由がもともと与えられているわけでございますが、ここで見ていただく網掛けの部分、個人に対する部分については、ほとんどそういう課税自主権というのは働いていない。網掛けのない法人に対しては、それなりのことが行われているという状況でございます。

最後でございますが、昨年6月の財政制度審議会の財政構造改革部会中間報告を載せております。交付税について議論されておりまして、「地方財政の健全化に向けて求められる取組み」として、(2)のところのアンダーラインだけ読ませていただきますと、「基準財政需要の算定を通じて地方の標準的行政に必要な財源を保障していることが、住民にとって受益と負担の関係を希薄にし、中央への依存体質を強めているとの指摘があり」、先ほど申し上げましたが、仮に大幅な財源以上が行われたとしても、本当に不交付団体というのはあまり数が増えないという状況にあるわけでございます。その残りというのは、結果的には現在の制度のもとですと、財源保障機能を有している地方交付税がそれを調整するという仕組みには変わりがないと思われます。ここではこうした財源保障機能を縮小するために、地方交付税制度の抜本的な改革が大きな課題となろうということで、[3]の下のところでございますが、「地方交付税制度を税源の偏在を調整する制度に近づけていく」という指摘がなされております。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

それでは、いまから20分ないし30分時間を取りまして、両先生のプレゼンテーションに対する質疑、あるいは事務局から出されましたデータについての質疑、御意見を賜りたいと思います。どうぞ、どなたからでも結構ですから。時間もありませんから、どんどん手を挙げてください。

委員

吉田先生に伺いたいのですけれども、先ほど外形標準課税は適当でないということをおっしゃって、その理由が、輸入品に課税できないと。それならば、むしろ地方消費税のほうがマシだということでしたけれども、外形標準課税は私は非常に中立的あるいは公平な税制だと思っているのです。実態としても法人の7割が赤字ということで課税できない。それから、実際問題として50社ぐらい一流企業が課税されていませんよね。そういうのを放置する税制というのは一体いいのかと疑問に思うのですが、その点はどうなのでしょうか。この輸入品に課税できないというようなことのほかに何か理由をお持ちなのか、理論的に何かお持ちなのか、その辺はどうなのですか。

委員

事業税よりマシなのは当然です。それは当然のこととして。だから、事業税より外形標準課税のほうがマシだし、外形標準課税より地方消費税のほうがマシということですね。時間がないので、はしょって話しました。

委員

そういう順序づけですな。

委員

全体的な話としては、やはり官から民へという流れと同時に、国から地方へというのは、これは世界的な潮流でもあるし、日本においても必要なのではないかと思うわけです。

両先生にちょっと確かめたいのですが、要するにインセンティブの点ですね。要するに、税源を地方にやって、行政事務も地方が多く背負うというところで、国・地方を通ずる行政の縮減効果というのですか、節減効果、これはかなり期待できるのではないか。そういうような行政のインセンティブとしても地方税減の充実ということは考えてしかるべきではないか。

ただ、インセンティブという場合に、私もそうなのですが、大体、所得割でもフラット税率のほうがいいということがあるのですが、やはり個々の地方団体におきます税源培養努力という意味におきましては、若干の累進、国税で考えられるような累進ではないのですけれども、要するに、地域をよくすれば、累進にも耐えられるような高額の所得者に住んでもらえる。そういうようなインセンティブなり、法人課税あるいは外形課税で問題にもなるのですけれども、そういうような地域振興に対するインセンティブの要因となる地方税というものも考えておく必要があるのではないか。ただ、これは過度にということは除いてですけれども、若干は残しておいてしかるべきものではないかと思います。

それから、よく国と地方との財政でプライマリー・バランスということが言われ、これは確かに数字はそういうことなのですが、前にも言いましたように、地方団体の財政というのは、いわばキャッシュフローでやっておるような状況なわけです。いわばサドンデスみたいなものなわけですね。国のほうは御承知のとおり、国、財投機関、そこらでかなりの国債を保有しているのは事実だし、この間の補正財源だって、NTT株の処理などでひねり出せるというような意味でのファイナンスの力というのは、国と地方とは残念ながら圧倒的に地方は弱いもので、むしろキャッシュフローという観点で見ていかないと困るのではないかと思います。

それから、債務の分割は難しいと言われましたが、私は現職のとき、昭和57年ですか、実はあのとき一時、石油ショック以来、国と地方とで特会借入れで済ましてきたのですが、57年に一旦はっきり分けてしまったのです。それから特会借入れはもうやめようよということまでいったのですが、バブルがはじけてからの景気対策でまたどうにもならなくなってしまったと。これは事実だけ申し上げるだけで、いま果たしてどの程度できるかどうかわかりませんが、過去にはそういうふうに債務を分けた事実もあることを私申し上げておきたいと思います。

委員

最初の意見について、お二人からお答えいただくということですか。インセンティブスの問題とキャッシュフローの問題ですね。

では、どうぞ。

委員

最初のは、多分、国・地方を通じて経費が削減になるという意味では、私の考え方は、国・地方を通じての税負担を変えないわけですし、歳出ベースも別に変えるというわけではないので、移転部分が減るだけ節税になるだろうということだと思います。

それと同時に、行政サービスというのは、単に少なくするということではなくて、その住民にとって必要なサービスが有効に出ていくということが効率性だと思いますので、そういう意味からいうと、身近なところで負担と受益が決定できるということが、基本的に効率性を支えるということになるというのが第一番目の考え方でございます。

それから、プライマリー・バランスその他についていうと、私の理解するところでは、地方予算が二重予算になっていないのは、日本だけぐらい、ほかの国はわりと経常予算と、あるいは経常勘定と資本勘定とが分かれておりまして、そのことによって地方の住民が自分の財政をコントロールしやすいようになっているということがございますので、そういう予算制度面を含めて、自分たちの財政を地域住民がちゃんとモニタリングできるようなシステムというのは、考えておいたほうがいいかと思います。

委員

まず、国から地方への流れということですが、もともと生活に関連する行政は地方でやればいいわけで、国がやる必要はないわけですね。ただ、キャッチアップがあったためにこんな状況になってしまったのだと思うのです。もうキャッチアップは要らないわけですから、それこそもとの仕組みに戻ればいいと。

そういうふうにしたらどうなるかということで、先ほどちょっと御紹介しました、昔、提言した中で計算したのですけれども、結局、国が地方に対していろいろな形で補助金でインセンティブをつけて、交付税で財源を保障しているような行政を削り取っていったらどれぐらいになるかと計算したのですが、13兆円ぐらい余ってくるという計算をしてみたことがあります。平成8年度ベースですけれども。おっしゃられるとおりで、いま与えられているメニューが全部必要であるということは考えられないわけですから、欲しい人がやればいいと。

地方分権をしたら、さっき言いましたスウェーデン型になるか、スイス型になるか。日本人はケチだから、スイス型に近いのではないかなと期待もしているのですけれども。

それから、キャッシュフローの云々の問題ですが、国の力というのは、結局、最終的にマネタライズできるという力がある。つまり、中央銀行引受けができるということですね。これは実は限界に来ているから、日本においても、地方・国関係なくキャッシュフロー・ベースでやらないと破綻する時代が来ると思います。

それから、債務の配分ですが、国・地方で債務の配分をするということも1つの方法ですが、ともかく、プライマリー・バランスを回復しておいて、その中から必要な事業をやる、やらない、それはそれぞれの主体者が決めて、それに対して適切な税制を割り振るという、もちろんこれは頭のトレーニングの問題ですけれども、実際の実行の話はまた別ですが、そういう発想からやるべきだというのが私の発想です。

委員

税源移譲問題が非常に大きな焦点になってきているわけですけれども、やはりこの問題を考える場合は、いろいろな問題があると思います。いまのような非常に小さな自治体がたくさんある中で税源移譲しても、自立は実際問題として難しいわけですね。やはり市町村合併を一体どうしてくれるのだということをまず言いたいわけです。そうして、地方歳出も徹底して見直して、その中で税源のあり方を考えるべきだと思います。税源を移譲して、地方交付税、国庫補助金、同じ額削減するとかいう話も出ていますけれども、それで多くの地方自治体の財政状況が好転するかというと、好転しないということですね。政府のスリム化にもつながらないということだと思うのです。

やはり地方分権を考える場合、地方交付税制度の問題を避けて通るわけにいかない。これはこれまでも何回も議論してきていますけれども、結局、これによって一定の行政サービスの財源を保障しているわけですね。それが地方の国依存体質の源になっている。これは明らかにもうモデルハザードを発生させているわけです。全部が全部ではないかもしれませんけれども、発生させやすいということだと思います。おかしいのはいろいろあると思いますけれども、大型単独事業まで国が面倒をみるという、これまで財源保障に入れているわけで、これは一体、地方分権とはどういうことなのかと。そんなことで地方分権できるのですかねということを言いたいわけです。だから、地方交付税制度をそのままにしておいて、地方分権、課税自主権、地方税充実もあったものではないと私は思います。

それから、現実の問題として、所得税から地方に財源を移すとしますと、国の所得税そのものは一番空洞化しているわけですね。それを地方にやったら一体どうなってしまうのか。空洞化どころか、もっと先に進んでしまって何もなくなってしまうということもあるかもしれない。だから、消費税も先ほど説明がありましたけれども、多段階課税ですから、全国一律の制度が必要なわけでありまして、地方自治体が操作するというわけにもいかないだろう。これもはっきりしていると思います。

それと、債務残高、これが非常に多いわけですね。この返済のめども立たないまま税源を移譲するということになると、やはり国の信任に大きなマイナスになるということは明らかだと思うわけであります。

いずれにしても、総合的な地方行財政改革を一体として進める。その中で国もよくなるし、地方もよくなるという観点が必要だと思うのです。

個別の税目をちょっと見たいのですけれども……。

委員

いっぱい手が挙がっているので、もうちょっと、1つぐらいにしてください。

委員

もう少しいいですか。

委員

では、1つだけ。

委員

個人住民税の均等割にしても、個人住民税の所得割にしても、これはもっとやる余地があるんですよね。固定資産税についてもやる余地があると思います。法人事業税については、先ほど吉田先生の御意見がありましたけれども、私もこれは全く賛成でありまして、選挙権のない法人にあまり課税するのはいかがなものかと思います。

委員

最後のは、既存の課税ベースをもっと拡張しろという御意見ですね。

委員

どこのところですか。

委員

最後のところは、既存の固定資産税なり均等割なりをもっと上げたらいいではないかという御意見ですね。

委員

そうですね。均等割、所得割もそうですね。

わかりました。

いっぱい手が挙がっているので、あまり2つも3つも5つもテーマを入れないで、1個か2個にしてください。

委員

では、1点だけでございます。本当はたくさんあるのでございますけれども。

税源移譲とかそういったものは、すごい超過財源を生むとか、国・地方で700兆円の赤字があるときにはどうにもならないということでございますので、当面、やはり交付税を基本的に見直すということが必要ではないかと思うわけでございます。この交付税と地方税を合わせると、1人当たりの水準だと、例えば島根県とか高知県は東京の2倍になるとか、いろいろなデータがあります。いまの交付税の配分の仕方が問題があるという気がします。

それから、ナショナル・ミニマムというのは、もうそういう時代ではない。ほとんどの地方団体でそういったことは達成されておりますので、あとはもう自己責任だと思います。

そういった意味におきまして、現在の交付税の配分は、基準財政需要と基準財政収入、これを両方勘案して算定するようになっておりますが、そうなると、自己努力で税収を稼いだら、その分はマイナスになってしまうということで、自助努力に対してはむしろ妨げになっている面がある。そういった意味におきましては、交付税を抜本的に見直すとすれば、例えば、既存の税制による収入は考えない。地方団体の1人当たり所得水準の逆数で配分をして、潜在的な財政力を調整する。そういったことが考えられないかということでございまして、この点、そういう交付税、ですから、私は交付税というよりは、むしろシャープな平衡交付金、本来は地方団体相互間の、神野先生のおっしゃる水平的調整でいいのではないかと思いますが、それが非現実的であるとすれば、どの税目ということではなくて、国の税収総額の2割とか3割、これを配分する。そして、それは税制に基礎づけない、所得水準の逆数なり、ですから、その具体的な方法としては、例えば東京都は除くとか、あるいは所得水準が平均以上のところは除くとか、それでやってもしかし超過財源が出てしまうので、何かうまい方法はないかと思いますけれども、基本的には税制に関連づけない交付税、それは交付税というよりはむしろ平衡交付金ですけれども、そういったものが考えられないだろうかということでございます。

委員

どうですか、そういうアイデアが1つ出されましたけれども、コメントしてください。

委員

1つは、多くの国で課税力と財政需要を調整いたしますが、課税力の場合には、大体、課税力の水準を平均100として、それを超えたところから、超えないところに入れるとか、そういう形で調整いたします。

それから、いまおっしゃったような意味で、課税努力、ちょっと日本の場合に誤解を招きますが、日本の場合にも、税率を上げたらその分増えますので、交付税は別に減りません。むしろそれを推奨するというか、税率を上げたところは、自分のところはシビル・ミニマムが少し高いのだから、上げたところは多くあげましょうねと言っているのがフランスのやり方でして、課税努力をカウントしてあげるというやり方がないわけではないということです。

それから、財政需要のほうでいきますと、多くの国々がわりと、例えば人口1人頭いくらとか、児童数いくらとか、そういうことで計算をしてやっております。ところが、日本の場合に非常に複雑になる原因は何かというと、地方自治体がほかの国は対人社会サービスをやっているので、財政需要を計算するのは実に簡単であるということが大きな原因だと思います。

しかも日本の場合には、対人社会サービスというよりも、本来、国が義務づけて行われてしまっている、例えば、都道府県の財政が赤字になっていく最大の原因は人件費で、警察官と義務局国庫負担金ですけれども、その警察官の人事は、国家公務員である県警の本部長が全部自治を持っていて、かつ、膨大な警察官の賃金というのは、全部地方が払わせられたわけですね。そういうことをやめないと、そこの部分は交付税を手当てせざるを得なくなりますので、義務づけをまず外すということが一番重要だと思います。

委員

この地方制度にかかわる問題というのは、やはり財源論だけでは片づかない問題だろうと思うのです。この際、国と地方の役割分担というのをまずはっきりさせないと、どういう税を仕組むかという話はその次の話。まず、やはり歳出のほうから制度をどうするかということだと思うのです。

具体的に例えばでいえば、教育は全部地方がみるとか、国立大学は民営化するとか、そういうピクチャーを描いたあとで、そういう役割分担を明確化したあとに、こういう税制なり分担の役割というものを明確化しないと、税制そのものの議論というのはできない、具体論を書けないのではないかというような気がしているのです。

委員

これを見ていると、地方の歳出というのが日本は異常に大きいですね。その理由を考えると、やはりナショナル・ミニマムを高い水準に設定しすぎていると私は考えています。ですから、30人学級なんていうのを60人学級に戻す。それから警察官も、増やせ増やせというのをもう大幅に減らす。それから、年金はいま受給している人を含めて全部2割ぐらい削減する。まずそういうところから始めないと、この問題は片づかない。税源移譲の話というのは、これを持ち出すと、この税調の中でさえ対立が起きてぐしゃぐしゃになってしまうわけですから、それはもう本当に最後の話だと考えています。

委員

簡単な質問を2つお二方にしたいのですけど、1つは、方向、理念が正しいとして、それに対してまたいろいろな意見があるけれども、それはここで演説をぶったって始まらないから言わないことにして、どういう条件が整ったらば、両先生がおっしゃるようなことが実現するのか。例えば受け皿の問題もあるし、それから財務省の抵抗もあるし、ほかに奨励的な補助金を持っている中央官庁の抵抗など山ほどあるわけです。財務だけが敵でも何でもない、この話は。これは先生が一番よく御存じのはずなんです。この抵抗勢力にどう対応するか。これはお二方は十分考えていらっしゃると思うけれども、つまり、どういう条件が整ったらできるのか。つまり、何ぼ時間がかかるのだという話です。

2番目は、資料の中に、「経済財政白書のシミュレーション」というのがあるんです。これはなかなか意味深長なことが書いてあって、経済白書のまま書いたものだそうだけれども、これについて印象を一言だけずつお尋ねしたい。

委員

明快な御質問ですね。では、どうぞ。

委員

後半は?

委員

後半は、例の財源移譲7兆円についてどう考えるかということ。

委員

プログラムの話ですね。わかりました。

まず、第1点のお話については、先生がおっしゃるとおりなのですが、シャウプ勧告というか、戦後改革のときには、まず税源の配分のほうをシャウプ勧告がやって、そのあとこれに合わせて国と地方の事務事業の見直しをやりなさいねと言って、うまくいかなかった。分権委員会のほうは、それはもう逆にしましょうということで、事務事業の見直しをやったわけですね。先生御指摘のように、まず事務事業の見直しが必要で、国と地方の役割分担だと言って、補助金とか何とかを一生懸命私どもやりましたけれども、これはとてもじゃないですけれども、整理の時間が確保できなかったと。そうすると、私の考えでは、まず税源移譲をやって、逆に合わせてもらうというシャウプ勧告方式に踏み切らざるを得ないのではないか。そこの中でどうにか補助金とか何かを各省庁で削ってくださいというふうに言わざるを得ないのではないのか、というのが最初のお話です。

委員

各省に補助金を切れというのを任してしまうわけですか。

委員

そうです。

委員

そんなことできるかね。

委員

わかりません。総量規制でやるということですね。

それから、2番目のほうのお話は、私もこのシミュレーションについては御相談に乗りましたけれども、前提条件がいくつかございまして、補助金や負担金をどういう切り方をするか、これは一律カットしているわけですね。そうではなくて、豊かなところに多くいっているような補助金を切るとか、やり方によって、これは実際にはいくらでもクリアの仕方があるだろうというのが1つです。

それから、いまのはやり方の問題ですが、もう1つは時期の問題がございまして、私が5年ぐらい前にやったときには、地方自治体がちょっと移譲すると、かなり不交付団体が増えたのですけれども、いまちょっと悪すぎる。7兆円移譲しても、大阪が……、いずれにしても、非常に悪化してしまって、どんどん悪化してきている。移譲して不交付団体が増える分については、交付税を少なくして、貧しいところにちゃんと回せるわけですけれども、それがかなり困難な状態に陥ってきているということがございますので、この2つをあわせて考えざるを得ないだろうと思います。

委員

考えて、その先はどうなるの。

委員

考えて、したがって、シミュレーションが絶対ではなくて、例えば片山総務大臣がおっしゃっている1対1などを現実的に執行できるような方法はあり得るということです。このシミュレーションどおりになってしまうのではないかということではないということだと思います。

委員

まだほかにも選択肢があると。

委員

基本的に、先ほどからいろいろな議論がありますように、単にちょっと税金を移したら済むという問題でないということを証明しているわけですね。つまり、歳出の構造自身にも歪みがあるし、税制にも問題が非常に大きいと。

それをどうしたら直るかというのは、やはり政治家の決断しかないと思いますね。スウェーデンで二次にわたって改革しているのですけど、一次の改革は、「皆さんどうぞ御協力を」といってやったらできなかったんです。第二次改革でも、財源と歳出を丸投げしてしまって、「あと知りませんよ、どうぞ御勝手に」とやったわけです。それぐらいの度胸がないとできないと思いますね。そういう政治力のある首相にぜひ出てきてほしいということです。

委員

ほかにもテーマがまだいっぱいあるので、あと3人で終わらせていただきます。

委員

私のはちょっと技術的なお話なのですが、先ほど事務局からちょっとだけお話しされた7ページです。いわゆる課税自主権を尊重して、法定外税を設けると。おそらくはもう役所のほうではずいぶん検討されているのではないかと思いますけれども、いわゆる法定外の同意要件、これが許可制のときにはおそらく事前の指導などで動いたのだと思うのですけれども、法定外税の同意要件が、何度か私も論文に書きましたけれども、[1]から[3]とどうも適合しない。

具体的に申し上げますと、横浜市で問題になった勝馬投票券の、本当は国に帰属する収入を横浜市が持っていってしまうとか、あと多治見市の最近の例で、いわゆる名古屋市だけに税金をかけるという非常におかしいもの。これはこの同意要件だけでやりますと、どうしても答えとしてはこれの要件に入らないので、同意せざるを得ない。そうでないために係争処理委員会がありますけれども、今度はその同意の要件がおかしいために、係争処理委員会の答えもおかしくなって、いわゆる協議が調わないのに、家庭裁判所の審判を求めているのに、2人でもう一回話し合いなさいと、こういうような答えが出てくるわけですね。

ですから、考えてみますと、3つの要件が非常に不十分で、具体的に申しますと、国と地方の関係、それから地方と地方の地方団体同士の課税権、ここを何とかしなければいけないのではないか。隣の地方団体を納税義務者にするとか、国の収入を当てにして、それを課税標準にする。どう見てもおかしいのですが、法律の地方税には乗ってこない。これを直すと、いま直したばかりでまたやるのかというのは、非常に抵抗が強いとは思うのですけれども、何らかの形で立法で整備していかざるを得ないのではないか。そうしないと、係争処理委員会のほうもうまく動かない状態が続いてしまうのではないか、ということをちょっと申し上げたいと思いました。

委員

御意見、あるいは事務局のほうから何かあれば。

事務局

一言で申し上げますと、いかんせん、制度が改正されてからまだ時期が浅いものですから、ある程度いろいろなケースをみんなからケーススタディを、我々もしますけれども、地方団体の側にも出てくるのだろうと思います。

それで、若干新聞等で報道された、通知を新しくしたということがあるのですが、先ほどの、例えば多治見の廃棄物が名古屋市にかかるというようなことも踏まえまして、これは実は同意をいたしましたが、税以外で何かできるのではないかというような御意見をつけてあります。そういうのを踏まえて、今回の通知の中で、本当に税でしかできないものかどうか、税以外にもっといい方法がないものかどうかということも、十分地元で議論して検討してくださいというメッセージを入れまして流したわけでありますけれども、結局、その辺の判断は、当然、地元でそれぞれ議会等で行われるという前提で制度を書いたものですから、過渡期だと思いますが、いろいろなケースを踏まえて、我々も的確な情報提供なりをして、地方団体がいい税をつくれるようにというような方向でいまやっておりますが、制度そのもの、要件そのものの見直しというのは、もう少し時間をかけて、推移を見てからという判断になろうかと思います。

委員

では、時がたてばおのずからいいほうへ行くだろうと、こういう見通しですね。

事務局

性善説かもしれませんが、期待はしております。

事務局

大雑把な話を簡潔にいたしますけれども、いまの財政状況等からいえば、これはもう増税をしないともたないことははっきりしておるのですけれども、これを国税で増税することが、例えば消費税で増税することが可能か。おそらくこれはどんなすごい政治家が出ても不可能ではなかろうか。どうしてかというと、結局、負担と給付が国民・住民に見えないからではなかろうか。そう考えますと、負担と給付が見える形にするには、やはり地方自治体に生活に関するいろいろな行政の権限を譲り、それに合わせて税源を移譲する。これしか国民・住民の理解を得る道はないのではなかろうか。

何を譲るかというと、やはり社会保障関係、これが一番適切で、すでに介護については譲ったというか、地方自治体を保険者にしたわけでありますが、ほかのいろいろな社会保障、それに医療、教育、要するに人相手のサービスについて、このすべての権限を地方自治体に譲ると同時に、ふさわしい税源を移譲するというのが、立て直していく王道ではなかろうか。

そういう形で移譲いたしますと、例えば地方交付税の問題も、これは介護保険につきましては、おおむね高齢化率に応じて調整をするというような仕組みができておりますから、そういう関係でかなりの部分が解決できると思いますし、それから、受け皿の問題で現に介護保険につきましては、広域連合というのがどんどん事実上できておりますので、あれをきっかけに地方自治体の整備も進むであろうと思います。

何を移譲したらいいのか。いろいろあると思いますけれども、やはり国民・住民に一番わかりやすいという観点からすれば、消費税といいますか、問題があるなら小売売上税ですね。このあたりが一番よく理解できるのではなかろうかと思います。

委員

国税で福祉目的税というアイデアもあって、委員のアイデアもそっちで生かすこともあるけど、そういう部分ですか。

委員

それもいいと思います。

委員

むしろリンクしろということですね。

委員

そうですね。

委員

わかりました。

委員

地方分権をめぐってはいろいろな議論があるので、皆さんおっしゃったとおりだと思うのですが、一言言わせていただくと、つまり、自分たちのコミュニティを維持するコストは、自分たちで支払うのだと。その過程で足りないものはサービスを求める、要らないものは切っていく。そういうマインドがないと、いくら税源移譲の問題を言っても、結局は地方に税源をやってしまった、国が足りなくなってしまった、今度は国税増税だというような展開になってしまう。これが一番最悪な展開だと思います。

そこで、結局、自分たちで地域が独自に税負担を求めていく、足りないものを求めていくという努力を促進する環境がこの際必要かと思います。

そこで、ちょっと具体的に、瀧野さんがいらっしゃるので質問ですが、去年8月、たしか経済財政諮問会議に片山総務相が交付税の見直しと絡んで、留保財源比率の引上げということをおっしゃった。あれはどうなったのですか。消えてしまったのですか。

事務局

交付税の見直し議論というのは、経済財政諮問会議でもいろいろとりあげられておりまして、項目としては3つ出たわけでございます。事業費補正の見直しと、それから段階補正、小規模団体に割増補正するような交付税の配分の見直し、それといま御指摘になりました留保財源率の引上げと、3つございました。

前二者につきましては、一応14年度からとりかかっておりますが、この留保財源の見直しというのは、財源の偏在を来す面があるものですから、なお内部で多面的に検討を、今しております。いずれにしても、経済財政諮問会議でもいろいろ指摘がございましたので、15年度に向けて更に見直しをしていこうということで、いま内部で検討しております。

委員

では、先行き可能性もあるということですね。

事務局

できるだけそういう方向にしたいと思っていますが、全体ができるかどうか、どこまでできるかということを議論しております。

委員

まだ御質問はいっぱいあろうかと思いますが、この問題はエンドレスに続きますので、といって今日議論が大いに進捗したかというと、そうでもないんですね。何かぐるぐる回っている感じで、もう1個ブレイクスルーが必要だと思いますので、いずれ本格的に我々の基本的な方向をまとめたあとで、少し特定の分野に入り込んだ、例えば地方交付税のあり方論でやらなければいけないかと思っていますが、いずれその機会を持ちたいと思っています。

吉田さん、どうもありがとうございました。

(吉田教授退席)

次は、エネルギー関係諸税に入ることにいたしましょう。中里さんに「環境問題に対する税制論の対応」という形で、エネルギー関係諸税は環境問題と絡んでいますので。

委員

2枚ほどの簡単なレジメを用意いたしましたので、それに沿って簡単に進めてまいります。まとめて意見を申し上げる機会もあまりないものですから、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

「はじめに」というところから入っていきますが、言わでものことですけれども、環境問題につきましては、経済学と法律学のメンタリティが非常に異なるものですから、様々なフリクションが生じてまいります。

簡単に整理しますと、経済学の先生方のほうで示す方向を、様々な法的制約の中で制度として具体化していくということになりますので、法的制約なしだったら、経済学の理論どおりになるのでしょうけれども、憲法その他の様々な制約がございますので、そこを考えるのが法律家の役割ということになるのだろうと思います。

ただ、経済学者はどうしても法的制約を無視しがちで、それなら憲法を変えてしまえばいいではないかとか、そういう議論を私聞いたことがありますが、なかなかそうもいかないと思います。逆に法学者は、経済学者の思考を軽視しがちで、この両者のミスマッチが環境問題については顕著に出てくるような気がいたします。両者の理論の調整をうまく図っていく必要があるのではないかということで、他方だけ強調しますと、望ましい制度は決して構築することができない。理論だけでは制度はできませんし、制度論だけでは方向性が示せないということで、役割分担を考える必要があると思います。そういう点からいくつかの問題について、私が考えているところを申し上げさせていただきます。

1つが汚染者負担原則(PPP)についてでございます。これは税調の答申の中にも、環境税について、汚染者負担の原則に沿ってということが書いてあるわけですが、この中身について誤解があるような気がいたします。

インセンティブ効果を狙った課税は、理論的にはもちろん妥当で、マーシャルの後継者であるピグーが言ったわけですから、これはミクロ経済学的に全く問題はないのだろうと思いますが、問題はその具体的中身でして、汚染者負担の原則というのは、このインセンティブ効果云々ということとは全然別の話ですから、一旦切り離す必要があるのだろうと思います。

でも、両者仮に一体とするとしましても、汚染者負担の原則は、環境を汚しているのだから、補助金を与えるのではなくて、課税で対処すべきであるという、ただそれだけの意味に理解すべきであると考えます。汚染者を納税義務者として課税しなければいけないという誤解が蔓延しているわけです。特に法定外税において著しいわけです。どんなことをしてでも、他県にいようが、外国にいようが、汚染者を納税義務者としないと、汚染者負担の原則に反するという誤解をしていらっしゃる方がいるわけです。

汚染者に対して汚染地が課税して税収を得るというのでは、実は困る場合があります。例えば、東京都は産業廃棄物を排出しておりますが、処理はほとんど行っていない。こういう場合に東京都が法定外税で産業廃棄物の排出に関して、排出者に対して課税すると、排出するだけで税収が上がるという、まことに虫のいい話になるわけです。廃棄物を持ち込まれる県はたまったものではないということになりますから、汚染者を納税義務者として課税しなければならないというのは、PPPの内容ではないのだろうと。汚染地と排出地がずれることも少なくないから、なおさらのことであります。

それから、目的税の税収の使途についても、環境税の税収は必ず環境目的で利用しなければならないという誤解が、これも蔓延しております。目的税というのは、例えば環境税の税収を老人介護のために用いるような目的税も当然可能でございまして、両者の間に密接な関係、あるいは直接的な関係がなければならないというものでもないのではないかと思います。

いずれにせよ、原因者負担的租税とか受益者負担的租税というのは、課税理論上は例外的なものでございますので、あまりこれに過度の期待をするわけにもいかない。何よりも、場合によっては、環境改善効果がない環境税というのが環境税という名前で出されてきて、これが要するに単なる収奪、狙い撃ちという可能性が高いということになります。

それから、炭素税についてでございますけれども、環境政策全体における租税制度の位置づけというのを明確にする必要がありますが、なかなか誤解がどこにでも、私も誤解しているかもしれません。誤解があります。中央環境審議会の議論に出ますと、環境税の法的仕組みについて議論していても、経済学者の方は常に外部不経済の内部化一本、ほかにないのだろうと思いますが、これだけで来るわけです。それは制度論ではございませんで、何か理念ですから、こういう抽象論だけで租税制度が構築できるのであれば、法律家は要らないわけですけれども、それは無理だろうということです。これは意思疎通の問題で、どっちが悪いということではありません。外部不経済の内部化自体は非常に重要な話ですけれども、それは法的な制約の中で、法的技術を使って実現していくということを御理解いただかないと困るわけです。

それから、これもたびたび出くわす話ですが、経済活動に対して与える影響についても検討する必要が当然あるわけでございまして、環境さえよくなれば、他はどうなってもいい。これは私はちょっと困ると思います。ただし、経済だけよくなれば、環境はどうなってもいいというのでも困るわけで、要はバランスの話で、財政というのはそういうバランスを前提として議論する話で、環境税だから環境だけ、経済活力だから経済活力だけということではないところに妙味があるのではないかと思っております。

その中で、財政問題として炭素税について最も心配しておりますのは、これは環境税と密接な関係がありますが、排出権取引の問題でございます。経済学的には排出権取引による外部不経済の内部化というのも、これは環境税と同じように効果がある。当たり前のことでございます。ところが、京都議定書の枠組み自体がヨーロッパにとっては非常に有利でありますが、日本にとってはまことに不利なようにできている。これは具体的にいろいろ言うまでもないことだと思います。日本企業は、乾き切った雑巾をさらに絞らなければいけない。ヨーロッパはロシアを抱えていますから、余裕で対応できるという、これは外交の問題なのか、あるいは日本の志が高いのか、いずれにせよ不利であることは間違いありません。

排出権を企業が買うのではなくて、国が外国から買ってこなければならないとすると、深刻な問題が起こってきます。私は国家財政が破綻する可能性だってあるのではないかと思っております。この点を無視して排出権取引は外部不経済の内部化だからといくらやったところでしようがないので、金がなくては買ってこられない。それではどうしようもないということになりますから、排出権取引のお金、資金を手に入れるために、炭素税の財源を充てる。これも何だか変な話ですが、そういうことも考えられていいのかもしれません。

それから、炭素税の税収、仮にこういうものが入ったとして、その税収を環境目的のために用いることがあったとしても、特定財源化して何でも何でもということにはならないと思いますので、技術開発とか、排出権売買とか、一定の縛りをかけて、余剰があれば別の方向にというようなことも考えなければいけないかもしれません。道路特定財源のようにする必要はないということです。

それから、地方が独自課税を炭素税について国よりも先に導入する可能性も考えられます。多分、東京都とか北海道は考えていらっしゃるのではないか。それぞれ理由があることだと思いますが。ただ、局地的環境汚染に対する場合と違いまして、地球規模の問題に対して東京都だけで努力して、努力は貴いですが、貴いだけではどうにもなりませんから、地方税に馴染むかという問題も考える必要がある。先に地方税ができてしまったときに国税をどうするのかという問題もありますので、これは考えなければいけないと思っております。

それから、先ほど法定外税についてお話しになりましたが、地方環境税の問題について深刻な事態が生じているわけです。法定外税の名のもとに想像し得るあらゆる種類の信じられない悪税も含めて提案されているわけです。法定外税ができたときに、こんな奇抜な税ができるのではないかということを、助手や院生と議論しましたが、そこで我々が想像し得たあらゆるものが出てまいりました。我々の創造力が貧困なのか、地方団体の創造力が豊かなのかわからないわけです。中にはものすごくいいのもありますが、中にはとんでもないのも、これはただ貶める意味ではなくて、努力は立派だと思いますけれども。地方分権は域内住民に対する課税、負担を原則として成立するものでございまして、まともな法定外税と並んで、政治的アピール以外に何の目的もないのではないかというような奇妙としか言いようのないものが散見されるわけです。

地方税法というのは、税金に関する法律です。したがって、法定外税というのも税金でなければならないわけです。したがって、法定外税の形をとって税金でないものを課税することはできないというのは、論理必然的ではないかと思うのですが、なかなか条文の解釈上、そうは言えないというのが総務省のお考えのようで、多治見市が名古屋市に対して課税した租税、私はこれを税金だとは思っておりませんが、少なくとも同意はなさったわけですから、何らかの理論武装はあるのだろうと思います。

地方団体間で課税を打ち合いするのが地方自治だとすれば、これもこれで戦国時代のようで、なかなか美しい世界だとは思うのですが、どうなんでしょう、連邦国家ではありませんから、これでいいのかという気はいたします。

特定企業を狙い撃ちにするためには、法定外税としての環境税が地方団体にとって、最も安易かつ最適なわけです。特に電力会社に対して過重な課税が構想されております。福島県とか鹿児島県、仙台市の例でございます。それはそれで、そちらの立場に立って考えれば、気持ちはわかるわけですが、これがあまり安易な課税になってしまっては困る。核燃料税が必ずしも環境税であるかどうかわかりませんけれども、これは心理的アピールとしては非常に同一方向を狙っているものです。原子力発電というのがない限り、日本の電力の需給が賄えないと仮にするのであれば、そう簡単に狙い撃ちするのがいいのかどうかという問題は起こってまいります。

原子力発電所は引越しが難しいわけですし、そこにあることが確実ですし、払ってくれる人はそれなりの財政力があるところですから、これにかけるというのは、納税者は1つですし、こんなやりやすい税金はないわけですが、さて、どうなんでしょうかということですね。

それから、エネルギー関係諸税、自動車関係諸税のところですが、特定財源の制度について、これは財政の点からは望ましくないとしか言いようがないわけです。しかし、一般財源化を図ろうとすれば、減税しろということになるわけですから、そこは難しい問題がありまして、いまそういう特定財源となっている様々な税金を廃止して、では消費税を上げられるかといったら、そうもいかないというときに、これはこれで一定の意味があるとするならば、問題はその使途になるのだろうと思われます。したがって、エネルギー関係諸税や自動車関係諸税、これを環境税として再構築する考え方というのは、一定のアピールを持つわけです。

税収の使途というのは、租税理論からすれば、限定しすぎないほうがよい。これはラーバント以来の、ノン・アフェクタツヨン・スプリンチップというのがございまして、これに対して交通経済学の方とか、いろいろおっしゃっていますけれども、ラーバントに勝てるほど根性のある方はなかなかいらっしゃらないと思います。

あとは、租税政策以外の政策的視点をどの程度加味するかということでございまして、上がった税収のうちの一部を環境目的に使う、あるいはほかの目的に使うということにしながら、当分の間は特定財源も場合によってはやむを得ないのかなという気もしますが、もっと議論が必要だと思います。

まとめのところは、単純な話ですから、省かせていただきます。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

それでは、また事務局のほうから、エネルギー関係諸税につきまして、国税・地方税を合わせまして、順次御説明いただけますか。

事務局

それでは、まずお手許の「15-7」という資料に基づきまして御説明をさせていただきます。

1ページから3枚にわたりまして、まず特定財源につきまして御説明をいたしております。1枚目がいわゆる道路特定財源とされております国税の税金でございます。4つ並んでおりますが、この4つの中にもいくつか種類がございまして、上から2つ目の地方道路税というのは、米印がついてございますが、いわゆる目的税でございます。税法上、使途を限定した上で課税されているという最も狭義の意味での特定財源でございます。

そのほか、その上のガソリンに課税される揮発油税につきましては、これは税法上は使途の特定はございませんが、その他の実体法、歳出法に基づきまして、財源の使途を特定されているものでございまして、いわゆる特定財源でございます。

それから、4つ目にございます自動車重量税でございますが、こちらは法律上は一切使途の規定はございませんで、国の一般財源でございます。(注)のところに書いてございますが。ただ、これまで様々な経緯から、実際上、道路整備に充てられてきたというところでございまして、昨年度、平成14年度予算においては、道路特定財源等の額が道路予算の額を2,247億円上回ることとなり、この分を一般財源として活用したという経緯がございます。

1ページおめくりいただきまして、2ページは道路特定財源以外の特定財源を3つまとめてございます。

3ページは、地方の特定財源でございます。

4ページは飛ばしていただいまして、5ページをお開きいただきますと、これがいわゆる特定財源、目的税でない揮発油税につきましての規定でございまして、左下にございますとおり、道路整備緊急措置法という歳出法に基づきまして特定財源化されてございます。この法律は2つのことを主に定めておりまして、第2条第1項、左下にございますが、まず道路整備五箇年計画の根拠規定となっております。それとともに第3条で、その道路整備五箇年計画に要する経費にガソリン税等の収入の予算額を充てるという仕組みでございます。これに基づきまして、右下にございますが、道路整備五箇年計画というのが平成10年につくられまして、今年度で満期を迎えるわけでございます。

6ページでございますが、今年の1月の経済財政諮問会議の中期展望で、このあたりの検討を要する事項というのをとりまとめておられます。真に必要性の高い公共事業を選択する仕組みですとか、投資規模の見直しですとか、さらに特定財源のあり方の見直し。

その際、この五箇年計画の見直しが重要であるとされておりまして、いろいろございますが、括弧の下の3行目から、まず各計画の必要性そのものについて見直しを行う。それから、必要と判断される場合であっても、計画策定の重点を従来の事業量から計画によって達成することを目指す成果とすべきである、というような取組方向をお示しになっておりまして、これからこれに基づいた議論が進められるという状況でございます。

7ページは、先ほど申し上げました昨年の経緯を表にしたものでございまして、昨年、様々な議論を踏まえまして、公共事業は原則1割カットというようなこともございまして、右側に道路整備事業の事業費を積み上げまして、結果的に左側の歳入につきましては、自動車重量税の国分の8割というのがいままで道路整備費に充てられておりましたが、2,247億円が余ってしまったということで、これを一般財源として活用したというのが平成14年度予算でございます。ただ、扇国土交通大臣からは、これは14年度限りの措置ということで、来年度につきましては、もう一度議論をし直すという整理がなされております。

それから、8ページから3ページにわたりまして、特定財源制度の沿革を述べてございます。代表的な「イ」の揮発油税でございますが、もともと昭和24年に一般財源として創設されましたが、その後、昭和28年度以降、道路整備五箇年計画の経費として充てるというふうにされております。

それから、一番下の「ニ」でございますが、自動車重量税は、そもそもは自動車の走行が多くの社会的費用をもたらしていること、道路その他の社会資本の充実の要請が強いことを考慮して、広く自動車の使用者に負担を求めるため創設されましたが、創設時から、実際上はかなり道路整備五箇年計画の財源の問題に対処する必要性ということを意識してつくられまして、その後、暫定税率が設定されましたが、それは特定財源の所要額とにらみ合わせながら、五箇年計画ごとに延長されてきているという経緯がございます。

それから、11ページまで飛んでいただきまして、主要諸外国における道路特定財源制度を簡単に整理しております。

この中でイギリスにつきましては、1937年に特定財源制度を廃止いたしております。

右端のフランスも1981年に一回一般財源化いたしまして、一方では1968年に車軸税というバスやトラックに課税される税収を新たにつくりまして、これを特定財源として充てております。

それから、アメリカとドイツにつきましては、それぞれ特定財源の制度はそのままにした上で、使途拡大ということを1970年代に行っておりまして、ドイツなどは使途拡大の用途を非常に広く理解することによって、かなり広範な用途に充てているというようになっております。

それから、14ページまで飛んでいただきまして、ガソリンの税負担を諸外国で比較いたしております。よく自動車関係の税金は重いとかいう御指摘もございますが、ここにございますとおり、ガソリンについて見ますと、ほぼOECD諸国で中位でございます。

15ページを見ていただきますと、その中でも特にヨーロッパ諸国でございますが、環境問題への配慮という観点から、ガソリンに対する税金の税率を引き上げてきているというのが最近の歴史でございます。

それから、17ページをお開きいただきますと、自動車に係る課税関係を整理いたしております。取得段階では地方税として自動車取得税が、この網掛けの部分は特定財源としてかかる。保有段階では地方税の一般財源として自動車税等がかかる。一方、自動車重量税が国税の特定財源としてかかる。走行段階では、それぞれ燃料が課税されるという仕組みで、一応整理はなされております。

18ページを見ていただきますと、それらの総合的な税負担を各国ごとに比較してみたものでございまして、アメリカが極端に低くなっておりますが、ヨーロッパと日本はほぼ同じぐらい、あるいは若干日本が低めという状況でございます。

それから、22ページまで飛んでいただきまして、先ほど中里先生のほうから、環境税につきましてお話をちょうだいいたしましたが、今年の3月に「地球温暖化対策推進大綱」というものが温暖化対策推進本部でとりまとめられております。2012年の京都議定書の目標期間をめどといたしまして、現在、3つのステップ、第1、第2、第3ステップで物事を進めていこうという考え方になっておりまして、環境税につきましては、第1ステップ、これは今年から2004年まででございますが、第1ステップから講ずる施策としては、何ら記述がございません。含まれておりません。その中でこのような2012年をにらみまして、下線部にございますとおり、他の手法との比較を行いながら、国際的な連携に配慮しつつ、様々な場で引き続き総合的に検討するという位置づけがなされております。

以下、23ページ以降は環境税についての整理したものがつけておりますが、省略をさせていただきます。

事務局

それでは、地方税関係、「15-8」というので御説明させていただきたいと思います。

1ページは地方の特定財源等の概要でございます。目的税として軽油引取税と自動車取得税がございます。そのほか、下にございますとおりの譲与税がございます。

2ページでございますが、こうした道路特定財源ということで、網掛け部分をご覧いただければと思いますが、地方におきましては、特定財源比率が32.7%、約3割ちょっという状況、また、下のほうでございますが、地方道の改良率、右端にございますとおり、52.7%、半分少しという状況になっております。

それから、4ページは軽油の消費数量、小売価格、税率の推移ということでございます。ご覧のとおりでございまして、小売価格はこのところずっと安定しております。一方で消費数量につきましては、景気低迷といったような影響もあるのでございましょうか、若干減ってきているという状況でございます。

5ページが自動車税のグリーン化、環境とのかかわりということで御紹介させていただいております。上の箱にございますとおり、環境負荷の小さい自動車につきましては、税を軽減する。一方で、(2)、下の箱にございますが、環境負荷の大きい自動車には重課をするといったことをやっております。

また、次のページ、6ページでございますが、自動車取得税の軽減措置ということで、低公害車特例等々の措置を講じておるところで  ございます。

最後、7ページでございます。これは先ほども御紹介いたしましたとおり、環境関連ということで、三重県なり、多治見市なりでこういった税金をかけているということの御紹介でございます。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

今日は、私、諮問会議に呼ばれているものですから、どうしても4時に終わらなければいけないのです。そこで、まだ議題がかなり残っておりますが、ちょっとこのまま継続というのもなんですから、少し3、4分休みましょう。それで、帰ってからいまの御質問をお受けしたいと思っております。そのほうが効率的だと思いますから。3時7、8分から再開しますから、ちょっと御一服入れてください。

(休憩)

委員

さて、再開しましょうか。席にお戻りください。

残りの時間を考えまして、あと、酒・たばこと租特が残っているものですから、まず、資料の説明を全部聞いて、そうすると質問の時間も分散されますから、かえっていいかと思いますから、まず問題の設定だけ先にさせていただきたいと思います。

それでは、いますぐエネルギー課税と思いましたけれども、酒・たばこから順次御説明を聞いてから、一括して審議に回したいと思います。酒・たばこにつきまして、事務局から御説明をいただきたいと思いますが、引き続きお願いいたします。

事務局

それでは、お手許の資料「15-9」に基づきまして御説明をさせていただきます。

1ページには、酒税の税率体系をお示ししております。酒類を10種類に分けまして、それぞれに税率が設定されております。この中で見ていただきますと、しょうちゅう、ウイスキー、スピリッツ、リキュールと、いわゆる蒸留酒と言われているものにつきましては、ヨーロッパ等諸外国におきましても、アルコール度数にある程度比例的な税金をかけるという実態がございますし、また、WTOで内外無差別の課税をする必要があるという指摘を受けたこともございまして、平成9年から平成12年にかけまして、税率を基本的にアルコール分1度当たりということでならしてきておりまして、そのウイスキーが3%高いほかは、同一税率ということになっております。

ただ、諸外国でも蒸留酒にはアルコール分1度当たりということで税率が統一されているわけではございますが、あとで御説明いたしますが他の酒は、様々な経緯や事情を踏まえまして、それぞれの税率が設定されているという状況にございます。

日本の場合、昨年も御審議をちょうだいしましたが、ビールの税率22万2,000円に対して、下のほうに雑酒で入っております発泡酒の、特にその他というのがいま売れている発泡酒でございますが、10万5,000円ということで、半分以下になっているアンバランスの問題ですとか、あるいは、清酒と合成清酒と果実酒といった類似のお酒につきまして、税負担の状況がかなり区々であるといったような指摘をいただいてもおります。

それから、右端にございますが、価格という面で酒税の負担率を見ていただきましても、ここにございますとおり、様々な状況になっております。

2ページをお開きいただきますと、長い目で酒税の課税数量と課税額の推移を見てみたものでございまして、基本的に昭和30年代から昭和の時期を通しまして、課税数量、棒グラフの部分が伸びるに従って、課税額がそれを追い越す形で上昇してきております。下のほうを見ていただきますと、その間、累次の増税措置というのがあったわけでございます。

その後、平成元年になりまして、このときに級別制度の廃止などの抜本改革が行われまして、それに伴いまして、ここにございますとおり、改正増減収が約3,000億円減少したこともございまして、酒税収入額が減っております。

その後、平成に入ってからでございますが、それまでの課税数量の伸びと比較いたしますと、伸びが小さくなってまいりまして、税収額の増加も小さくなります。平成6年に一回増税措置が講じられましたが、その後、平成6年を境目としてほぼ課税数量が横ばいでありながら、課税額が急減するという状況にここ数年間は陥っているわけでございます。

3ページをお開きいただきますと、昨年もこれは見ていただいた表でございますが、その最も大きな背景といたしまして、ビール、発泡酒に占める発泡酒の割合がどんどん増えてきているということで、去年は3割と申し上げましたが、今年に入りまして、むしろ4割という水準でございます。

4ページにビール、発泡酒の課税額の推移をお載せいたしております。

それから、5ページをお開きいただきますと、最近の課税数量を種類別に比較してみたものでございまして、ビールが大きく減る一方、雑酒、これが大半は発泡酒でございまして、これが大きく伸びているという関係がございます。それから、清酒が長期低減傾向にある。それから、下のほう、非常に見にくいですが、ウイスキーが長期低減傾向にある一方、しょうちゅう甲類・乙類、あるいはリキュール類、それから最近落ちておりますが、果実酒類などの消費が長期的には増えている傾向にございます。

6ページはそれをより長期で整理したものでございまして、7ページをお開きいただきますと、現行酒税法におきます定義及び分類を一表にしたものでございます。10種類にお酒を分けまして、さらに品目ということで、必ずしもこれごとに税率が違うわけではございませんが、品目で分かれている側面もございます。

8ページをお開きいただきますと、これは各国の分け方を一覧表にしてみたものでございまして、アンダーラインの部分が税率区分の境となっていて、何区分に分類されているかという表でございます。イギリス6、ドイツ4、フランス8、アメリカ4ということになるわけでございますが、各国それぞれの事情を反映いたしまして、分け方は区々でございます。蒸留酒が1本、それからビールが独立していることは変わりありません。それから、ワイン関係ではワインとシャンパンなど、発泡ぶどう酒を分けるというのが、ヨーロッパ、アメリカ共通した分け方でございます。このほか、イギリスとかフランスにございますが、りんご酒が分かれてみたり、その中でも発泡性のあるりんご酒が分かれてみたり、あるいはフランスのように、一番上にラム酒というのがございますが、これは旧植民地で製造される関係がございます。その配慮ということで独立しているとか、それぞれ国の背負った事情があるわけでございますが、日本に比べれば少なめであるという実態がございます。

9ページは酒類の税負担の国際比較でございますが、省略をさせていただきます。

続きまして、10ページ、たばこ税等の税率でございます。一番右にございますが、1,000本当たり7,000円、1本7円というのが現在の税負担でございます。真ん中ほどにございますが、地方たばこ税がそのうち3.5円、国のたばこ税が2.7円と、それからたばこ特別税、旧国鉄の債務償還などに充てるということで平成10年から施行されておりますが、これを合わせて国が3.5円という状況になっております。

11ページは、紙巻たばこの税負担割合の状況ということで、右下にございますが、最近は約59%程度ということで、安定をいたしております。

12ページに移っていただきますと、諸外国との比較でございまして、右側の税負担額で見ていただきますと、日本がやや低め、これはアメリカの場合はニューヨーク州という比較的高い州を継続してとらせていただいておりますので、アメリカはちょっと高めに出ておりますが、基本的にヨーロッパの国と比べると、現在で比較してみますと、やや日本の税負担が低めに出ております。

その背景といたしまして、13ページにございますが、主要国におきましては、最近比較的たばこの税負担の引上げが行われているという実態にございまして、14ページをお開きいただきますと、これが平成9年から平成14年までの税負担状況の推移でございますけれども、たばこ税で見た場合に、日本は1本1円のたばこ特別税があったわけでございますが、ヨーロッパ諸外国もかなり大きな引上げをしてきているという状況にございます。

15ページは、たばこの税収の推移を国と地方で分けて見たものでございまして、16ページにその内訳。

17ページを見ていただきますと、薄い線の部分が税全体の最近の推移を示しておりまして、太い折れ線グラフがたばこ税の状況を示し ております。国・地方いずれにおきましても、税収が比較的低迷する中で、安定した税源となっている位置づけだと思われます。

18ページをお開きいただきますと、そのたばこの販売数量でございますが、平成8年にピークを迎えましたあと、最近数年間は少しずつ販売数量が減少する傾向にございます。

19ページをお開きいただきますと、その背景といたしまして、喫煙者率というのが長期的に非常に下がってきているという状況があるわけでございます。

20ページをお開きいただきますと、最近の動きということで、厚生労働省が平成12年につくりました「健康日本21」という、これは2010年をにらんで、健康づくり運動を総合的に推進するということでとりまとめられた文書でございます。20ページの下のほうに、たばこについて記述がございます。ただ、その下にアルコールもございますが、アルコールと比べて、全くたばこのほうが強い書きぶりになってい るというわけでは必ずしもございません。

21ページ、もう1つの動きといたしまして、世界保健機構(WHO)が2003年5月をめどといたしまして、「たばこ対策枠組条約」を採択したいということで、現在議論が進められております。この中でたばこ税についても議論が行われているという状況でございます。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

では、引き続きまして、2回ほど送ってしまいましたが、租特の問題を一回資料の御説明を受けたいと思います。

事務局

それでは、お手許に積み残しの関係で、5月10日、「基礎小13-9」という資料がございます。それとあわせまして、昨年の秋の10月2日ということで、石小委員長のメモを一緒につけてございますが、租特につきましては、昨年の秋、諮問会議の「骨太の方針」でも、租特の聖域なき見直しということが言われておりました関係もございまして、一度基礎小で御議論をいただいております。

その際に石小委員長のほうから、そこにございますようなメモをまとめていただいておりまして、このメモを若干ご覧いただきますと、御承知のとおり、租税特別措置は特定の政策目的を実現するための政策手段でございますので、1枚目の一番下にございますように、基本的考え方といたしましては、「必ずしも、すべての措置を不合理と断じるわけにはいかないことから、不合理な租特、すなわち見直すべき租特を判定する視点が必要である」ということで、2枚目にございますように、4つの判定の視点、「政策目的の検証」「政策効果の検証及び最適手段の選択」「特定業界、企業、地域の補助」「低調な利用実態」といった視点を提示をしていただいたところでございます。

それで、資料をお開きいただきますと、目次を飛ばしていただいて1ページ目、昨年暮れの政府税調の答申でも、石メモを踏まえたおまとめをいただいております。

2ページ目以降、租特の関係のデータが少し新しくなっておりますので、ざっとご覧をいただきたいと思いますが、2ページがいつもご覧をいただく租特の全体像でございます。所得税で1兆2,900億円、法人税で4,340億円ということで、数字が平成14年度ベースになっております。

3ページはその内訳でございますので、飛ばしていただきまして、4ページでございますが、これが平成14年度改正におきます企業関係租特の廃止・創設項目ということで、聖域なき見直しを言っていただいた上での14年度のいわば星取表でございますが、廃止した項目が10項目、創設した項目が8項目ございます。このうち星印がついてございますのが沖縄関係で、14年度は特に沖縄の振興特別措置法の期限切れがあったということで、沖縄関係の租特が増えておりまして、沖縄を除きますと廃止が7、創設が3ということで、例年に比べますと、廃止が多くて、創設も少なくて済んだのですが、聖域なき見直しと言っていただいて、こういう結果であったということでございます。

廃止した項目の中で、下から3番目に低開発工業開発地区における工業用機械等の特別償却、これは昨年の秋に、昭和36年の池田内閣の所得倍増計画でできた措置だというお話をしました。それがようやく廃止をさせていただいたということでございます。ただ、一方で創設項目を見ていただきますと、沖縄の金融特区に係る特別の所得控除制度ですとか、愛知万博の出展準備金、あるいは新幹線の大規模改修準備金といった、いつもながらの企業関係租特がいくつか新設をされておるところでございます。

それから、6ページにお進みをいただきまして、減収額の大きい企業関係租特を一覧してございますが、先ほどの4,300億円余のうち、一番大きいのが中小企業投資促進税制で2,000億円ということでございます。中小企業関係のものがかなり残っております。一方で、基礎小でも4月に御議論をいただきましたけれども、経済活性化の観点で研究開発税制や投資減税という御議論があります。それらも租特でございますので、政策税制をどの分野に重点化するかといったような観点から、いま残っております中小企業関係の租特につきましても、政治的にはいろいろな議論があろうかと思いますが、そういったものに切り込んででも、やはり政策税制の集中重点化ということをやっていく必要があると私どもは認識をいたしてございます。

7ページ以降、いつも見ていただいておる資料が更新をされた形でついてございますので、10ページまで、説明は時間の関係で省略をさせていただきます。

事務局

11ページ以降、私から国税の所得税あるいは資産税の関係で、租税特別措置につきまして一言だけ申し上げます。

11ページは、先ほどお話がございました、秋の段階でも似た資料をご覧いただきましたことがございますけれども、そのときから変化いたしましたのは、一番下の欄外に米印がございますが、高齢者向けマル優につきまして、15年の1月から段階的に縮小するという税制改正が行われたということがございます。

この表自体はそもそも、そのときにも申し上げましたが、所得税の場合ですと、法人税と違いまして、産業政策という観点だけではなくて、社会政策的なことがそもそも組み込まれておりますので、いささか租税特別措置と申しましても、本法との間が連続的でございます。そういう意味で、租税特別措置法に規定しているものと、所得税法に規定しているものという形で、右左に対比して資料化したものがこの11ページでございます。一般に所得税関係の租特といいますときには、この黒丸のほうを呼んでおります。

今回、諸控除の見直しということで、例えば所得税法に規定のほうの、真ん中辺に白丸が並んでおりますけれども、ここの特定扶養控除なり配偶者特別控除なりは、扶養控除を原則といたしますと、それに対する例外的なものではございますが、一応ここでは白丸の整理でございます。給与所得控除も、概算の控除という意味では、特例的というふうな位置づけも可能である面もあるかもしれません。

したがいまして、今回、諸控除の見直しということで、白丸のほうの御検討をいただいておりますので、その反面といたしまして、特に黒丸のほうにつきましても、厳しく見直しが要求されることというふうには思っております。

特に、例えば住宅ローン控除につきましては、先般、非納税者割合をご覧いただきましたときに、かなり高額の給与収入の所得者の中にも非納税者が散見されるということの原因として、この住宅ローン控除の効果であるということを御紹介いたしましたが、そのような意味で、全体としての特例措置の見直しということが課題かなと考えております。

12ページ以降は、各制度につきましての資料でございますので、省かせていただきまして、18ページに、資産課税関係の主な特例措置ということで、国税の資産課税関係、登録免許税、相続・贈与税につきまして、主だった特例措置を掲げてございます。住宅、あるいは事業用資産、保険金というものでございます。

19ページ以降は、ここに挙げました6ページにつきましての制度の資料でございますので、御紹介のほうは省略させていただきます。

私からは以上でございます。

事務局

私は1分だけ、『地方税関係資料(非課税等特別措置関係)』「13-10」という資料でございます。これの1ページに総括表がございまして、若干、不動産取得税なり固定資産税で一部抜けているものがありますが、主なものの減収額を足しますと、8,260億円ということでございます。このうち住民税等は、ほとんど御説明は国に準拠するものでありますので、地方特有のものとしましては、事業税の中の社会保険診療報酬の特例、非課税でございます。累次の答申で御指摘いただきまして、特に昨年の年末には、速やかにこれを撤廃すべきであるという、少なくとも段階的見直しを図るべきであるという御指摘をいただきまして、段階的見直しに挑戦いたしましたが、なかなかうまくいかずに温存されてしまっております。

それから、一番上の固定資産税が、またこれが地方独自でありますが、3,270億円と大きいものでありまして、この主な減収額の大きなものにつきましての説明は、9ページから11ページにございますので、ご覧をいただければと思います。

私からは以上でございます。

委員

ありがとうございました。

これで30分議論のための時間を確保できることになりましたので、エネルギー関係諸税、酒、たばこ、租特、3つ合わせて、どうぞ。

委員

エネルギー関係のことについて、短くコメントします。大変納得のいく、留飲の下がる中里先生の問題提起であったと思います。

なぜそんなことを言うかというと、私は数年にわたって地球環境部会関連の研究会と審議会でみんな首を突っ込んでいるわけだ。そこで、環境至上主義論者でかつ経済学者の議論というのは、まことに……、至上論ですよ、ごくまっとうなあれではなくて、不愉快だというか、というのに悩まされ続けてきたんですよ。

それで、言いたいことはここから先なんだ。いま、環境税を導入する環境が全く整っていない。第1に、京都議定書の批准というのは今日あたり衆議院を通るのかな。それはそれでいいんですよ。日本はそれを批准するのでいいのだけれども、肝心なのはロシアなんです。ロシアは現金取引で金を儲けようと思っているんだ、あの国は、実に割り切った話ですよ。理念なんか関係ない、あの国は。いまの報道によれば、あと半年ぐらい頑張るよという話で、あとは条件闘争だと彼は言っているんですね。というと、秋口にめでたく批准が通って、発効することはないだろうと。つまり時間は大分あるよという話です。

2番目に、先生の中にも入っているけど、これは不公平論というものはものすごくでかいです。ここ半年ぐらいの間に産業界を中心に茫然と湧き上がった議論で、当たり前のことが当たり前の時期に出てきたということだけなんですけどね。経団連の会長はいまだに国会で批准することを反対しているわけだから、それにはそれで半分ぐらい理由があるんですよ。したがって、EUの外交手腕に日本は完敗したということが歴然としているということもあるのです。そういう側面もある。

3番目は、これは先生はここに全然掲げておられないけれども、濃淡様々の環境税があるわけだ。一体めちゃめちゃに効果があるような環境税をかけたら、そんなもの通るわけないんですよ。ガソリン税はいまリッター100円ぐらいだけど、150~160円にすればいくらか減るかもしれないけど、102~103円に上げたようなことは、一般庶民は全く意に介さない。関係ない、そんなことは。高いやつは導入できない、低いやつは効果がないということで、議論がなかなか進まないということがあって、ほかに言いたいことはあるけれども、一番でかいのは、政府が中間大綱で、3段階に分けて政策をやりますと書いたわけだ。それは政府決定だから。そうすると、あれは2004年までは何もやらないということです、はっきり言ってしまえば。したがって、税金の話も条件は相調わずなんですよ。

ただ、結局、最後は国の排出権取引と税金をどうセットするかということが勝負どころで、これ、現実問題になるのは7、8年先の話です。ただ、僕は基本的に入れたらいいと思っているんですよ。いつもそう思っているから。ただし、いろいろな状況の変化その他を考えてみれば、早急に税調で具体策について踏み込んだ議論をやるには、あまり条件は整っていないという気がしていますので、前回のときに、環境税はどういうふうにあるべきかということを書いたことがあるのだけど、いまのところは、あの議論のところを相変わらず這い回っているようなところかなと。状況はそんなに変わっていないですよね。ですから、前向きではあるけれども、しっかりと議論しましょうねということを言いたいのです。

委員

しっかりウォッチしましょうということですな。

委員

ばらばらに3点申し上げたいと思います。

まず、住宅関連の税制ですが、今日は島田先生がいらっしゃらないので、もう一回説明を聞きたいなと思っていたのですが、島田先生の主張で、たくさんいいことを言っていらっしゃるけど、特にいいと思うのは、住宅の需給関係がもうすでに供給過剰状態にある中で、日本の場合セカンド・マーケットが発展していない。それに税制が何かの役割ができないかということで、これは1つ、いつも後ろ向きのことばかりではなくて、前向きに考えたらどうかと、これが1点です。

それから、研究開発税制は経済界とかいろいろなところから出ていますが、現状の税制は、先ほど説明がありましたように、うまく機能していない。それをやめるか、やめないかという議論をしてもしようがないので、それが皆さんが必要だということであれば、例えば増加の部分についてやっているからおかしいのだという議論もありますけれども、本当にそうかどうかはわかりませんから、役に立つような研究開発税制、それを考えたらどうか。

それから、最後は発泡酒に関してですが、いま説明がありましたように、ビールが減少して発泡酒が増えているというのは、やはり税制としてはおかしい。こういう奢侈品に対する税のあり方としてはおかしい。やはりきちんと発泡酒の税に対して対処すべきだと考えます。

その3点です。

委員

前段の中古住宅への活性化は、何かアイデアがございますか。

委員

特にないのですが、やはりそれは税をまけろという話になると思うのですけど。

委員

何かあるのかどうか。事務局から何かあれば。

事務局

島田先生のお話、私、別のときに聞く機会もございまして、そのときの私の理解を申し上げますと、中古の住宅を売りましたときには、個人のほうは3,000万円の特別控除制度がございますので、よほどの利益が上がれば別ですけど、普通は3,000万円の控除の中に入ってしまうという点がございます。

もう1点、島田先生からお話しいただきましたのは、新しく住宅を例の生前贈与の場合に、現在の制度は、お金を親からもらいまして、新しく子どもが家を買うというものをイメージした制度でございますが、島田先生は、そういうふうに新しいものをつくる必要はないので、いま親が住んでいる家をそのまま子どものほうに移すことはできないのか、というような問題意識をちょうだいいたしましたことがございます。

委員

2番目のは、黙って住んでいればいいではないですか。所有を移さなくても。そう思うけどな。

一段目の3,000万円の特別控除というのは、キャピタルゲインの話ですか。

事務局

そうです。

委員

道路特定財源ですけれども、これはやはり歳出を見直すことがまず先決だと思うのです。その上で一般財源化を考える必要がある。一般財源化する場合、先ほどの話にもありましたけれども、減税すべきだという意見があるのですけれども、ガソリン税などはやはり環境重視の観点からむしろ増税を考えてしかるべきであろうと思います。

それと、特定財源というと、すぐ道路ばかり目がいくのですけれども、先ほど中里先生のお話にもありましたエネルギー特定財源があるわけですね。これは石油特会、電源特会ですか、この特会の使途がどうも政策目的から外れてきているという説があるのです。外れていてどこへ行っているかというと、省エネとか新エネにいっているらしいのですけれども、そういう点から考えると、この辺はやはり環境税として再構築する考え方があっていいのかなと思います。

たまたまですか、何ですか、電源開発促進税は電力自由化の問題がありますから、それに絡んで電力業界から何とかしてくれという話があるようですね。この辺、いい機会だから、技術的にどういう問題があるかはわかりませんけれども、もっと注目していいのかなと思います。

それから、もう1つ発泡酒ですが、これは去年の税制改正で、税率格差を縮小するということで与党が一致しているのですが、やはりもうちょっと強く出したほうがいいと思うのです。これまでの企業努力は認めて存続させるにしても、何年後にはもうやめるとはっきりと、同じアルコール製品なのですから、これはもう明らかにおかしいわけです。だから、時限的に年を区切って、5年後なら5年後、完全にビールと同一にするということにすれば、メーカーのほうも納得すると思うのです。そのかわりに努力してくれということでいいのではないかと思います。

それと、酒税全体として税率区分が細分化しすぎていますから、これはやはり当然簡素化する必要がある。税負担格差を少なくするのが必要なのではないかと思います。

委員

発泡酒は年末にかけて議論になりそうですか、事務局。

事務局

私ども再三にわたりまして、政府税調のお考えを基本にして、年末の各年度の税制改正、特に昨年、一昨年、努力してまいったわけですけれども、率直に申しまして、なかなか容易な話ではないように客観的な状況として思っております。

ただ、引き続き問題があることは今日御説明したとおりでございますので、改めてお考え方を示していただければ、それに沿った方向で考えていきたいと思います。

あと、党のほうからは、この発泡酒の問題のみならず、酒税全体の負担格差の問題、これを総合的に考え方を示すべきではないかというような御指摘が昨年ございました。

委員

まず、租税特別措置からちょっと触れてみたいと思うのですが、確かにいろいろあって、細かい、それから既得権化しておるというようなところはあるのですが、1つは、細かいというのは分けすぎているのではないかという印象があるのです。どこがどう違うのか。例えば、大武さんとか木村さんではわからないですね。これはどこがどう違うのか。だから最初から聞かないのだけれども。課長でも心もとないところがある。課長補佐ぐらいになったら、ああ、そうなのかとようやくわかる程度の、細分化されている。もっと統合したらどうかというのが第1点です。

それから、中小企業投資促進税制というのが一番の大物ですが、これをやめるという、あるいは縮小するという考え方もあろうかとは思うのですが、どうも税調の議論全体にも言えるのですが、1つのテーマになると、どうしてもそこだけしか見ないような傾向がありはしないか。つまり、この中小企業をめぐっては、例えば事業税を外形標準化するのだ、あるいは消費税の益税を吐き出させるのだ、あるいは固定資産税はまけられませんよ、おまけに投資促進税制は圧縮ですよと、こう並べてみると、それは納税者のほうからしたらいいかげんにしてくれと、こういう反応が予想される。つまり、特定のこの部分だけ見ないで、やはり常に全体を見る、あるいは納税者の都合というのもある程度は斟酌するという姿勢が必要ではないか。

それと、事務局の説明でちょっと気になったのは、投資促進あるいは研究開発を重点分野に絞り込むということであります。総会でも言ったのですが、世の中ITとかナノテクとか遺伝子解読とか、そればかりではないわけでありまして、むしろ私は、絞り込むよりももっと一般化する、あるいは使い勝手をよくする、という方向のほうがいいのではないかと思います。

次に、特定財源。そこで問題なのは財源の問題でありまして、結局、金があれば何でもできる。ないからこんなに迷ってしまっているわけで、やはり小泉総理もおっしゃっているように、歳出の切り込みというのは避けて通れない。そのシンボル的なものが道路特定財源であろうかと思います。この税調でも何度か指摘しているわけですが、一般財源化という路線は、さらに強行に主張すべきではないか。

そうすると、税率下げろ、減税しろ、というような意見が出てくるのではないかというような可能性もあるわけですが、それは余計なお世話でありまして、増税する話ではないので、いまの負担はお願いする、しかし使い道はより一般化していく、ということに反発する一般国民はあまりいないのではないか。その際、環境税というような考え方を導入するということもあり得るでしょうけれども、環境問題もこれあり、なかなかいまの交通関係、石油関係の税負担は下げられないということで突っ走る。

これも先ほどの事務局の説明で、道路計画がどうだとか、歳出のほうの見直しがまず先だとかという話がありましたけれども、それは私はむしろ逆でありまして、一般財源という前提をまずしっかりさせておいて、そこからいまの道路事業、道路予算に無駄、不効率はないかどうかということでありまして、早めに一般財源化という考え方を前提にしてしまう、固めてしまう、ということが必要ではないかと思います。

委員

道路特定財源、エネルギー財源の関係につきましては、先ほどの税目の中にございました石油税というのが1つの特徴のある租税ではないか。これは原油の輸入、原油の採掘、これに対して薄く広くかけている。この使い道については、先ほどの委員から御指摘もあったように、必ずしも最初から一定しているわけではないという点があるわけでございます。現在、石油公団をどうするのかという問題もあるようでございます。非常に幅広く薄く原油というものにかけておる、この税の将来、これを注視していくに値する税ではないか。これがどういう展開をするかによって、いろいろな考え方が出てくるのではないかと思うわけでございます。

それから、たばこについては、なかなか言いにくい立場にはあるわけでございますが、3,300万人の愛煙家がおられますので、一言だけちょっと負担水準につきましてと思います。

たばこ事業法というのがありまして、これは、たばこ産業の健全な発展と財政収入の確保ということが目的になっているわけでございますので、この趣旨に即するように、適切な負担水準が維持されるようこれまでも対処されてきているわけでございます。その負担水準は、確かにヨーロッパに比べると若干低めであるという点は、御指摘もあるわけですけれども、日本についていえば、先ほどお話がありました1本7円7銭でございますが、大体3,300万人の方、これは大体1年に3,200億本飲んでいただいている。1人平均9,700本でございます。それを税金を集めますと、6万9,000円になります。一方、サラリーマンとしては、4,500万人おられますけれども、平均的な所得者、これはこの間御説明がありました。460万円ですけれども、例えば500万円の方をとると、その方の所得税というのは6万5,000円。むしろたばこ飲みの方のほうが、基幹税である所得税よりもたくさん納めていただいているという点もあるわけでございます。

また、外国のほうが高い点は、確かに高い。例えばイギリスは日本のたばこ税の3.4倍ですけれども、500万円の方の所得税を見ますと、日本は6万5,000円に対して、イギリスは79万円の所得税がかかっている。日本の12倍でございまして、これからすると、イギリスではたばこと所得税の税を比較すると、日本はたばこのほうが1.1倍なのに、イギリスはたばこ税は所得税の0.3倍、3分の1であるというような数字もあるわけでございます。

それから、先ほどちょっとお話にもございました健康の問題。これは確かに健康へのリスクは否定できない。そこで、たばこの箱には、あまりお飲みにならないようにという文言があるわけでございます。平成元年の政府決定で従っておるわけでございますが、これはもう若干見直す必要があるのではないかということで、いま財政制度等審議会で、たばこと健康の問題につきまして、検討がなされておるところでございます。

それから、もう1つ、国際的にWHOがたばこ条約を現在審議中でございます。ここにも健康の問題が出てきておりまして、健康と関連して税負担水準も条約に入れようという議論が出ておりますが、日本の政府としては、税負担水準というのは、これは各国の主権の問題であると。だから、条約で言ってくれるなということで、政府としては対応方針といたしておるところと聞いております。

委員

たばこに関してはこれだけで打ち止めにしていただけますか。やはり座長として、たばこというものについて、とうとうと御説明いただくのは結構なのですけれども、いろいろな立場上おありなのはわかっておりますから、事情は事情でお伺いいたしましたけれども、これからどういうふうに話が転がっていくかわかりませんけれども、一応事情をお伺いしたという形で。

委員

ただいま全部申し上げました。

委員

それでもう思いのたけは述べられたと思いますし、事情も我々把握いたしましたので、たばこのときには、それは承ったということにしておきたいと思います。

委員

まず発泡酒なんですけれども、これはビール会社は反対していますけれども、実は一番困っているのは僕はビール会社だと思うのです。全部利幅の薄いほうに商品が移ってしまっていて、だからもう少し強引に発泡酒課税を適正化するという方向を出してもいいような気がいたします。

それから、自動車関係の諸税なのですけれども、これはものすごく複雑になっていまして、今度、自工会の会長になったホンダの社長も、何とかならないかというようなことを言っているわけです。負担水準は別として、国税・地方税いろいろ入り組んでいる、あるいは取得段階、保有段階、利用段階、入り組んでいるのを、もう少し将来的にはすっきりさせることを考えていいのではないかなと思っています。

委員

法人税の租特の減収額というのを、事務局に聞きたいのですけれども、3ページの中小企業投資促進税制、平年度減収額2,000億円と書いてあるのですけれども、これがいわゆる黒字法人の本当に引けている税収額なのか、いわば理論ベースの、課税ベースというのですか、赤字も含めての減収額なのか、ちょっとそこを確かめたい。ということは、果たしてこんな数字が出ても、本当に効いているのだろうかという疑問があるものですから。

事務局

例えば法人税で租特の減収額4,340億円という計算をいたします場合には、利益法人割合というのを掛けて試算をしておりますので、黒字で法人税を納められる企業がどのくらい減税になっているかという歳入への影響として試算をしておりますので、赤字法人が7割あるという前提の試算であると御理解いただいてよろしいと思います。

委員

最初にお話しいただいた環境問題と税制との関係なのですけれども、基本的な私の問題提起と若干違うところがあるので、中里先生の御意見も1つ伺いたいと思うのですけれども、私は地方環境税の範囲に入るのが、一般廃棄物とか下水道など、地域公共財といいますか、地元で発生しているような環境サービスみたいなものは、今後、地方環境税のような形で、いわゆる受益者負担、あるいは汚染者負担という格好で、地域で新たな課税ベースをつくっていく。

いま、地方財政がきちっとした形にいかないというのは、やはり国税の課税ベースと一緒のものを使って地方税収を得ようと思えば、それは必ず地方でやっている公共サービスと財政収入が一致するわけないわけで、やはり新たな財源のポートフォリオとして、この地方環境税というものを、先ほど均等割の話もありましたけれども、私は均等割よりは、ごみとか下水道とか上水道とか、こういうものの有料化によって、一定の課税ベースをもう1つつくれるのではないかと問題意識を持っておりまして、その観点からいくと、中里先生の原因者負担、受益者負担は、課税理論上は例外的なものにしかすぎないというふうな位置づけなのですけれども、課税から見ると例外的ではありますが、21世紀の税制としてもう少し積極的に、この地方環境税を1つの有料化を通して、課税の空洞化の問題をカバーできるような発想がないのかどうかということをちょっと考えておりまして、それをどう展開するのかなという問題提起をさせていただきます。

委員

いまのに対して、中里さんの意見に触発されたような御意見だから…

委員

おっしゃるとおりだと思います。ただ、いま各地方団体から出てきている環境税というのは、域外の、特定の、少数の企業を狙い撃ちするものでございますから、住民から少しずついただくというのは、まことに結構なことで、むしろ先生のおっしゃるとおり、私も大賛成でございます。

委員

一言つけ加えると、ある市町村で、ごみと水と料金を上げてみた。そうしたら、一斉に反対されたのでやめましたという御意見がありました。一斉に反対されたら、税金を中央からトランスファーしているほうがよっぽど楽なわけで、税負担という話になってしまうのですけれども、本来ならば、反対しているところに最終的な次の税制の鍵があるわけで、これを抜きにして税制だけの議論にとどめるというのは、いかがなものかと思います。

委員

どういうふうに申し上げていいかよくわからないのですが、酒税とエネルギー税について共通の問題があるように思っていて、それでちょっと申し上げたいのですが、何かこの議論をするときに、既存の税制から議論をしすぎているというのが私の印象でございまして、やはり構造改革をする、税制改革をするのだったら、将来のビジョンみたいなものを考えた上で、そこから戻ってきたほうがいい。

そういう状況から考えると、例えば酒税でいうならば、既存の発泡酒税とビール税をどうするかという議論をするのではなくて、さっき事務局が申されましたけれども、どういう形で酒税を組むのがいいのかという形から議論をすべきだと思うのです。そういうことから考えると、多分、酒を大雑把に、例えば醸造酒と蒸留酒とか、いくつかのビールとか、いくつかに区切った上で、基本は課税ベースを何にするかということを表に出すべきです。だから、酒税の場合はアルコールの含有量というのが基本的な課税ベースなのだということにすべきなのではないかと思うのです。

同じようなことが私はエネルギー税についても言えるように思っていて、これはとりわけ特定財源などとも絡むことですが、過去のしがらみを打ち切るためには、やはり環境税というものを表に高々とある意味では掲げて、ある意味ですぐにできないからこそ高々と掲げて、それで、これをやらなければいけないと。そのためにはあるべき税制はどういうものかということを考えて、だとすると、多分、それは炭素というものを課税標準にするという形できちんと位置づける必要があって、だから割増税率とか特定財源とは無関係であって、そういう形でもう一度きちんと日本のエネルギー関係税制をつくり直しましょうという形で、せっかくのこういう機会ですから、税調としてはおっしゃっていただきたいなということです。

委員

賛成ですね。今日の結論が出たような話ですね。どうもありがとうございました。

委員

短めにいきますけれども、発泡酒は間もなく半分になってしまいますので、今年を逃すと、きっと発泡酒のほうが増えるから、ビールのほうを下げろというのは当然出てくるから、本当は去年がラストチャンスと思っていたのですけれども、今年やらないと、下げろになるおそれがあると思います。

あと、道路特定財源ですけれども、それも今年がチャンスだと思っているのですが、放っておくと、これはもとのままというふうになりそうなものですから、それを考えると、環境税としてとりあえず取ってしまうというのを、かなり早いところから宣伝していかないと、できないのではないかなと。もう遅いかなという気はしますけれども、まだ間に合うから、その辺やるべきではないかと思います。

あとは、さっきの税源移譲の話を聞いていても、何か貧乏人同士が取り合いをやっているような感じで、もとのところを増やさないとどうにもならないという話だと思いますので、どうしても増収をあっちでもこっちでも考えるべきだと思うのですが、その中で租特は、あっちのほうでは法人税率を下げるとか言っていますので、その見返りとして租特全廃というのは当然かとは思って見ていますけれども。

あと、個人所得のほうの租特というか控除も、下げる上で住宅ローン控除というのはものすごく金額的に大きいと。これはでも10年先まで決まっているのを変えることができるのですか。質問を1つだけです。

委員

16年で見直すんです。

事務局

住宅ローン減税というのは、まさに景気対策として、住宅建設を通ずる景気対策として呼応したものであります。まさにインセンティブ税制ということになっておりまして、したがって、そういう税制措置があるからということで家を建てた方がいらっしゃいますから、それをさかのぼって、家を建てた方について、それを不利益に遡及的に直していくというのは難しいのかなと思っております。だから、直すとすれば、将来的にこれから家を建てる方については、もうこれについて一切適用いたしませんと、そういうことになろうかと思っております。

委員

さて、ぼつぼつ時間なのでよろしゅうございますか。ただ、これはちょっと皆さんの意見を集約しておいたほうがいいですね。ちょっと私なりにまとめさせていただきますが、エネルギー関係につきましては、要するに揮発油税を含め道路特会が一般財源化という御意見が強くて、従来どおり、道路特定財源のまま維持しようという御意見はなかったと思いますので、我々としては、これは加藤先生の時代から一般財源化というのを言い続けておりますから、これはこれでまた言い続けるということになろうかと思います。

それから、酒のほうは、簡素化ということも含め、先ほどの委員が最後におっしゃったように、既存のもののごちゃごちゃした手直しではなくて、本来あるべき姿からいろいろ議論としてあるだろうと。そういう意味では、10種類を大幅に縮める、簡素化の方向でまとめるということはあり得ることと思いますし、発泡酒については、より一段と強い調子で是正を迫るという意味で、何年後というふうに期間も限定するようなことがいいというような強い御発言があったということですね。今日は発泡酒擁護派が少なかったので、今日のここの雰囲気はそういうことであるということでよろしゅうございますね。

それから、ガソリン税の見直しと環境税に関しましては、御意見がいくつかございましたが、いますぐ環境税というのはなかなかしにくいという意味において、慎重にウォッチしつつ、これから慎重にゆっくりとこの議論を固めていかなければいけない。つまり、環境税を議論する環境がまだ変わっていないということで、これまたもっともなお話だと思います。

それから、租特については、これもずいぶん議論いたしまして、今日新たな展開はなかったと思いますが、あまりにも細かくなりすぎており、統合化が必要であるという形。それから、全廃してもう一回見直すなどという議論が、おそらく先ほどの委員の背後にはあったのかもしれませんが、極力というか、ここは大幅に見直せということだろうと考えております。

それから、自動車関係諸税も時の流れで見直すという話。

それから、たばこについてはお一人御発言がございましたが、これについてはあまり議論がなかったので、そういう御意見があったということですね。

国と地方については、要約するまでもなく、様々な議論が出ましたし、従来の流れに沿って、分権の流れであれど、交付税見直しを前提にしつつ、それがあって初めて国と地方の税源配分ができるというような話であろうかと思います。

あとの予定でございますが、一応、基礎小の各論、最後急いでしまって、あまり議論が活性化しなかったという心配がございますが、一通り見たという形で、5月末の総会に、過去3回になりますか、法人税、所得税以外のところの様々な議論を紹介いたしたいと思います。一応これを総会でフィードバックさせて、再度税調全体の意見をまとめたいので、「おれは基礎小で言ったからもういい」というわけではなくて、総会でもう一回議論を言っていただくということが、税調のルールにおいて非常に重要でありますので、24日、2時から5時まで考えておりますので、ぜひ御出席いただき、同じ御発言で結構でありますから、繰り返していただきたいと思っております。

その後、総会の議論を経てから、6月中旬をめどにしております「基本的な方針」をまとめなければいけないので、そのまとめる作業にこの基礎小の諸先生のお力を借りてやりたいと思っております。ただ、起草小委員会なんていうことなりますと、また話が公開であるとか何だかんだと非常に面倒くさくなりますので、起草会合という格好にして、数回、皆さんのお力をお借りしつつ、ここでまとめるというような、ややインフォーマルな格好でこの起草をやっていきたい。座長も上野さんにお願いしたいと考えておりますが、そういう形で、6月に入りましてからこれまでの議論の総括をしようということを考え、かつ、文章化を考えたいと思っています。2年前の7月に出した膨大な報告書ではございませんで、ごくかいつまんだ、私のイメージでは15枚とか20枚程度でいいのではないかと思いますが、そういう骨子だけ本文でまとめるという形で議論をしたいと思いますし、また、すっきりした形で書きたいと思いますので、あまりごたごたしないような形で結論をある方向を出してもらいたいと考えております。

日程等々につきましては、まだ確定しておりませんので、別途また御連絡いたします。

これの進め方について、何か具体的な御提案等々ございますか。

委員

進め方ではないのですが、一言最後に会長にお願いしたいのは、これから諮問会議に出席されると。要するに、この前の小泉さんの話でも、歳出は諮問会議でやってもらうということになって、それはそれでいいと思うのですが、つまり、歳出でどの程度の合理化ができるかというのは、実は税制論議にも微妙な影響を及ぼすわけです。どうもこれまでは歳出の削減という抽象的な表現でしか言っていないので、早めに具体像を示してくれということを、会長の御判断でお願いしていただければと思います。

委員

具体像のイメージは項目でしょう。公共事業とか社会保障等々と時間の問題でしょう。それで、どこまでやれば、いうなれば我々、例の対話集会でも大分問題に突き上げられたけど、国民のほうで納得していくかというめどですよね。そういうことを具体的にしていけということですね。わかりました。

私、5時から諮問会議に出ますけれども、何かアドバイスでもございますれば。税調の報告もしなければいけない。まだ税調の報告はしませんけれども、今日のような、質問があればお答えしなければいけませんから。よろしゅうございますか。

それでは、長時間ありがとうございました。時間がちょっと過ぎましたが、終わりにしたいと思います。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。