第13回基礎問題小委員会 議事録

平成14年5月10日開催

委員

それでは、13回目になりますが、基礎問題小委員会、開催いたしましょう。

今日は、谷口副大臣と吉田大臣政務官お見えの予定でございますが、まだのようであります。

今日は、幾つかテーマがございますが、最初に、一橋大学の高山先生から、「社会保障制度と税制」ということにつきまして30分ぐらいお話をいただきまして、その後、消費税のお話をいただき、そこで一区切りつけて議論したいと思ってます。3時間という長丁場でありますので、今日も途中で休憩をとることにいたします。

では、早速ですが、高山さん、よろしくお願いいたします。

委員

高山でございます。お手元の資料を使いまして、「社会保障制度と税制」について、ご説明をいたしたいと思います。

まず、事実の確認から入りたいと思いますけれども、平成10年度以降、国税負担と社会保障負担に逆転現象が生じているということでございます。これは図1をご覧になってください。社会保険料、社会保障負担というのは、租税と同様に、強制徴収という性格を持っております。そうしますと、最近ではこのように社会保障負担、非常に高額なものになっておりますので、租税だけでなくて、社会保障負担、国民負担という観点からは、一体的に論ずる必要があるというふうに考えております。

2点目は、国民負担率の長期推移ということでございますが、「社会保障負担率は景気の変動にかかわりなく、ほぼ一貫して上昇してきた」ということでございます。これは図2とか図3をご覧になっていただきたいと思います。

図2で申し上げますと、昭和45年段階から最近の平成14年度予算ベースまでですが、この間に社会保障負担率は国民所得比で10.1ポイント上がっております。5.4%から15.5%になったということですね。国税は、景気変動の影響があるのですが、この間に+0.7ポイントであります。地方税3.4ポイントということでありまして、ほぼ一貫して上昇してきたのは社会保障負担ということでございます。

国民負担のピーク、3点目でございますが、これは平成2年度、38.8%、その後はこれを超えることがなかったわけですが、この間、老年人口比率は急激に上昇しております。大体1年間で0.5ポイントずつであります。20年間で10ポイント上昇するというのが老年人口比率。65歳以上人口が総人口に占める割合であります。

今、18.5%というのは世界で最も高い水準ですね。今まで高かったのはスウェーデンですが、スウェーデンの水準を昨年の段階で抜きました。今イタリアと並んでおりまして、イタリアをもう2~3年のうちに抜いて、確実に、将来25年間ぐらいは日本が一番高齢化率が高い国になるということでございます。

老年人口比率が上昇しているということですが、ご案内のように、社会保障給付費のほぼ7割は高齢者関係の給付費でございます。したがいまして、老年人口比率が増大するというのは社会保障給付関係費が増えていくという構図でありますけれども、国民負担全体としてはこの間増えてないわけですから、そこで財政赤字というものを生み出す大きな要因になってきたということでございます。

その次の図は、ヨーロッパの主要国と比較すると、日本の消費課税や所得課税の負担が低いということでありまして、これは周知のとおりでございます。

5点目は、日本の公租公課の中では、最近、年金保険料負担が突出しているということでありまして、これは図5でございます。従来、国民の不満というのは、所得税が高いとか、法人税が高いとか、そういうところにあったのですが、どうも最近ではそういう話ではなくなってきておりまして、年金保険料や医療保険料の負担の重さというものに非常に敏感になってきているということであります。

ちなみに、所得税、この99年当初予算ベースですけれども、15兆円台であります。法人税10兆円台、決算ベースでたしか9兆円ぐらいだと思いますが、地方関係諸税も9兆円前後のものが多うございますけれども、その中で年金保険料が約30兆円、医療保険料17.4兆円ということでありまして、社会保険料負担が極めて重いということであります。

その次の図は、6点目のポイントにかかわるのですが、日本の再分配後所得、これは個人ベースで調べたものですけれども、最近に関しては60歳以上の高齢者のほうが50歳未満の人よりも高いということになっております。これは再分配後と再分配前と書いてありますが、再分配というのは社会保険料や税負担をするという意味、あるいは社会保障給付を受けるということでありまして、そういうものが全然起こらなかった場合と起こった後の水準であります。

ここでは薄い線で書いてあるのが再分配後というところでありまして、60歳以上のところは、1年間1人当たり大体250万円前後ですね。50歳未満のところは200万前後のところに位置しておりまして、再分配の結果、高齢者の所得水準はかなり高めに位置している。現役で働いている人たちのほうが相対的に低いようなところに位置しているということでございます。

7点目は、図表を用意しませんでしたけれども、厚生年金、政管健保、雇用保険の収支、これは年々の収支でございますが、これが来年度、平成15年度から赤字に転落するおそれが極めて大きいということであります。政管健保はこれに備えましてすでに国会に法案を上程しまして、現在、審議をしております。雇用保険は1回、数年前に保険料を上げて対応したのですが、どうもこのような雇用情勢の中で今のままではもたないということになりまして、来年度予算で保険料アップや給付の見直しがおそらくまた提案される運びではないかと予想しております。

厚生年金については、年金の中では唯一、短期的に見れば安泰な制度だと予想されていたのですが、ここに来て、ついに来年度から実質的に赤字転落だということでございます。これは保険料収入が思ったより伸びないということが大きな原因であります。それから運用収入も予想をはるかに下回っております。

他方で、給付の支払いのほうは確実に増えているということでありまして、厚生年金もついに赤字転落ということでありまして、これは新しい事態ですね。今まで予想してこなかった事態がもう目の前に迫っているということでありまして、そういう意味で、社会保障関係すべて抜本改革を強いられるようなところに今立ち至っているということでございます。

従来、社会保険会計が悪化してきますと保険料の引上げとか給付の見直しというのが常套手段でありまして、そのために、社会保険料負担、ほぼ一貫して上昇してきたということですが、問題は、今後とも過去の延長線上で社会保険料を引き上げていっていいのかどうか、それがベストの選択と言えるかどうかということでございます。社会保険料はある意味では税金と機能的には同じですから、これは増税と同じですけれども、増税というふうには理解せずして、知らず知らずに実は隠れた増税が起こってきたということだと思うのですけれども、その路線を今後とも過去の延長線上ということで続けていくかということが今問われている問題だと考えております。

社会保険料負担の問題点、幾つかございます。これはもう皆さんはご案内のことばかりだと思いますが、復習という意味で論点整理をさせていただきます。

まず社会保険料負担は、この平成14年度では56兆5,000億円という金額になっておりますが、個人所得課税、法人所得課税の課税ベースを縮小させているということであります。この間ずっと税調は税制の空洞化の議論をやってきました。まさに所得税、法人税の課税ベースを侵食しているわけでありまして、税収を落ち込ませる大きな原因になっているということであります。

それから、社会保険料は法制度として見れば目的税というふうには言わないのですけれども、少なくとも経済機能に着目する限り、使途が特定されている目的税だというふうに考えて決しておかしくないわけであります。従来、税の専門家の議論の中では、道路特定財源の話もありまして、目的税というのは非常に問題の多い制度であると、できればそういうものはやめたほうがいいというのが一般的な論調だったと思います。これを拡大することには、したがって極めて消極的なスタンスだったはずですが、事、この社会保険料については、機能的には目的税として全く同じであるにもかかわらず、その引上げに対する期待感というのは政府関係者の間には非常に強いというのが私の理解です。

一方、目的税はだめだだめだと言っていながら、社会保険料については上げるのはやむなしという、経済財政諮問会議でさえそういうトーンで今までレポートを書いておりますので、それは本当に整合的な主張なのかということであります。

それから3点目は、社会保険料、ご案内のように、賃金をもらったり、賃金を支払った段階でかかるものが普通ですので、賃金税としての性格が強いわけであります。極めて直接税的なものですけれども、この負担は分配面から見ますと極めて逆進的だということであります。これは社会保険料を賦課する、徴収するときに対象賃金に上限が設定されておりますので、その上限を超えた人たちの負担は相対的には軽くなるという問題ですね。

それから賃金だけに着目しておりまして、その他の所得、財産所得等が徴収ベースに入っておりません。所得の高い人はおおむねこういう財産所得に恵まれているケースが多いわけでありまして、それが徴収ベースに入ってないという意味でも逆進的であるわけです。これが分配面の特徴ですね。

それから資源配分的には中立的でないということであります。税制においては中立性というのは最も大事ということになっているのですが、社会保険料は、これは釈迦に説法みたいなものですけれども、これを引き上げますと、サラリーマンの人たちの手取り所得を減らしまして、結果的に消費支出を減退させてしまう。景気に対するマイナスの影響が出てくる。企業経営上は人件費そのものですので、人件費を引き上げますと、これは企業経営をやはり圧迫する話になるわけです。企業は今までいろいろな対応をすでに試みてきました。生産拠点を社会保険料負担の低い海外に移すとかいうことでありまして、これは言われるところの製造業の空洞化の話につながるということであります。

そういう意味で、社会保険料、逆進性もあるし中立的でないという意味で、事、税の観点から見ると決して問題が少ないというふうにとらえるわけにはいかないものだと考えております。社会保険料、これまで段階的に引き上げてまいりました。特に年金についても今後段階的に引き上げることが予定されているようでありますけれども、これは世代間で見た負担の不公平感を高めるおそれがあるということでございます。

第5点目は、社会保険料を今後さらに引き上げると負担回避の動きが加速し、国民年金だけでなく厚生年金においても空洞化がますます進むおそれが強いということでございます。国民年金はすでに空洞化しております。非サラリーマン層、自営業等の人たちは、本来加入すべき人たちのほぼ半数がすでにもう保険料を払っておりません。これは未納とか免除だとか未加入だとかいう問題でありまして、空洞化が言われて久しいのですが、ここまで保険料負担が上がってきますと、民間の企業が入っている厚生年金においても空洞化が進むということだと思います。

これは、先ほど言いましたように、企業は事業拠点を海外に移すというようなことをやりますし、これはモノをつくる段階ですが、サービスのほうもサービスそのものを海外に発注するという形で対応することが可能です。それから国内、どうしても雇用しなければいけない場合でも、いわゆる雇用面におけるリストラの強化を図るという意味で、人件費の節約を図るというのは大いにやってますし、また、社会保険料を意図的に逃れるといいますか、そういう動きが最近目立っているわけです。これは雇用形態をまず調整するということですね。中核労働者を牽制しまして、派遣とか契約だとか請負だとかパートとか、そういう人たちの割合を増やしてきますと、結果的に社会保険料の負担を逃れることができるということであります。

それからボーナスにも保険料負担かかるようになるのですけれども、例えば年金でいえばボーナス1回につき150万円が上限ということになっております。そうしますと、年間の賃金支払いが同じであっても、社会保険料負担を逃れる方法というのはあるのですね。これは月々の月給の支払い分をものすごく低く抑えるということで、例えば今の半分ぐらいにしてしまう。かわりにボーナスの割合を年20カ月払うとか、そんな形にしてしまう。ボーナスは年2回払いではなくて1回払いにするというふうな形で対応しますと、これは社会保険料負担をものすごく逃れることができるわけです。

いずれにしても、社会保険料負担を上げて収入増を図ろうとしても、企業は企業の論理で行動するわけです。社会保険料負担逃れようとするわけです。保険料を上げても保険料収入は入ってこないという事態が予想されるという意味で、空洞化ということを考えずに、今までの延長線上でそういうことを続けていっていいのかということですね。

特に最近時点では現役で働いている人たちの数が減っております。これは景気が悪いということと少子化が進行しているということと同時並行なですけれども、そうした中で保険料を上げても保険料収入全体としては伸びないというおそれが非常に強まってきた。そういう中で保険料を上げ続けることの意味が改めて問われているということではないかと思います。

その次の問題は、増大する社会保障給付費をどう賄っていくかということでありまして、これは大問題であります。税制調査会の守備範囲を超える話だと思いますけれども、基本的な方向は以下に書いてある3点だと考えております。

給付抑制及び給付課税の強化ということでございまして、これは、今給付を増大するといってもできるだけその増大分を削るような、抑制するような努力を今後とも続けていかなければいけないということです。年金でいいますと、法制度上は年金給付というのはスライドを実施するということになっておりますが、どういうわけか、今それをサボって、物価が下落しているにもかかわらずスライド減額をしておりますが、これは政府みずからが法律違反をやっていることだと私は考えておりますけれども、そんな形になっている。

ここ3年間、スライドは凍結状態に置かれておりまして、3年間で1.7%、物価は下がったのですね。今年の年金給付費総額は大体45兆円ですから、1.7%掛けますと8,000億円弱ですね。この8,000億円弱を現役や事業をしている人からOBの人たちに年金として渡すか、それとも現役や企業のもとにお金を残すかの選択問題だと思うのですけれども、どういうわけか、OBのほうに渡さないと景気が悪くなるという理解しがたい理屈がまかり通っておりまして、スライド減額が実施されてないというのが実態であります。

長期的にいいますと、いずれにしても給付を抑制する。公的な制度の守備範囲をできるだけ少なくして、私的な、民間の制度の役割をもうちょっと上げていく。そうした中で、公的な負担はあまり上げないで、プライベートに負担していく部分を増やしていかざるを得ない状況にあると思っております。

それから給付課税の強化の話ですけれども、これは4月のこの小委ですでに議論がなされたということですので、ここでは省略します。

2点目は「高齢者も原則として現役組と同じ基準で費用を負担する体制へ」ということでありまして、これは先ほど図5で解説いたしましたけれども、高齢者はもはや決して経済的な弱者ではないと。高齢者かわいそう論という主張がございましたけれども、それは今現実には成り立たない話でありまして、高齢者を特別扱いする理由は何もない。年齢に着目して特別扱いというのはもうやめたほうがいいということであります。

ただし、高齢者であっても手元不如意で生活に困っている人がいないわけではないわけですから、そういう人たちには特別の配慮を、主として給付の面なりいろいろな形で対応するということは当然やらなければいけないことだと思いますが、いずれにしても、高齢者も若い人と同じように保険料を負担すると、あるいは社会保障給付、サービスを受けるに当たっては、現役の人たちと同じように利用者負担金を払うということにしないと将来はもたないということではないかと思います。

3番目は、「オールジャパンによる公平負担」ということであります。社会保障負担は保険料主義でありまして、賃金税に負担が偏っていたわけですけれども、これは直接税的な性格が極めて強いわけです。過去20年、日本の税制改革においては直間比率の見直しというのが大きなテーマであったわけですが、事社会保障においては、この直間比率の見直しということを一切してこなかったわけです。それは税制改革の話とは全然違った動きであったと思うのですが、国の方針として、税制改革で直間比率見直しをやりましょうと言っていながら、社会保障のほうはしませんというのは全然論理的に整合的でないわけです。やはり社会保障のほうも負担において直間比率を見直さざるを得ないのではないか。そういう意味で、賃金税に財源論、主要な部分を依存するような体制については見直しをしていかないといけないということだと思います。

広く薄くということでこれまで税制改革の中でやってきた負担は、実は消費税を導入し、税率を引き上げることでありました。広く薄く、ライフステージにおける負担の平準化等ございますので、その財源を消費税、消費支出を徴収ベースにするものに移していかざるを得ない。これはいろいろな方法があると思います。消費税の税率を上げて、それを社会保障財源に回すというやり方もありますし、一部を目的税化するという話もありますし、現在の社会保険料の徴収ベースを賃金から消費支出に移しかえるという方法もあるでしょうし、いろいろあると思うのですが、いずれにしても、税制改革とパラレルな形で、社会保障負担、社会保障の財源についても改革していかなければいけないのではないかと考えている次第です。

次は「税金で賄うべき社会保障給付の再検討」ということですけれども、社会保障給付については、じゃ税というのはどういう形で投入するのが真っ当なのかという議論を改めてしないといけないのではないかと思います。従来、税の役割いろいろあったわけですけれども、外部性のあるようなものについて入れるとか、所得再分配上の配慮で入れるとか、いろいろあったわけです。

現在でも、基礎年金については給付の3分の1が国庫負担となっておりますし、老人医療や介護についても、公費負担かなり厚めについているわけです。そのときの理由づけをどうするか、それぞれの制度によって違っているわけですけれども、今後何らかの負担増が必要である場合に、渋々であっても国民の多数派が受け入れて納得するような税の投入というのはどういうものかということについて改めて議論しないといけないのではないかと思います。

これは例えば年金について言いますと、基礎年金の税方式化の議論にかかわるわけですけれども、基礎年金を税方式化すると、これはもうミーンズテストをつけなければいけないと、あるいは第二生活保護的なものに変えざるを得ないのではないかという議論が一部で行われておりますけれども、諸外国で基礎年金を税で賄っている国が幾つかあるわけですね。そういう国を見ますと、ミーンズテストを必ずつけなければいけないという形にはなっていないということです。

例えば典型的な例はニュージーランドでありまして、ニュージーランドの年金というのは実は1階のフラットな年金しかないのですが、こ れはミーンズテストなしに、インカムテストなしで全部税金で賄っている制度であります。これは要するにミーンズテストつけなければいけないという話でも必ずしもないということですね。

背景にある考え方は、例えば義務教育の経費みたいなものだと考えればいいと思います。要するに義務教育の経費を、じゃ金持ちの子どもには義務教育の給付はみんな自己負担でやってもらうというような話にするかどうかという話と同じでありまして、そういう給付の性格をどう考えるかということに依存すると思います。基礎年金を税方式でやっている国はほかにもありまして、カナダとかスウェーデンもその典型ですけれども、カナダは、1989年から今までミーンズテストなしでやってきた制度に、所得の高い高齢者については給付を一部遠慮してもらうというインカムテストをつけたわけです。大体年金受給者中の5%がその対象になっておりまして、大半の人はその適用を受けてないのですけれども、そういうような形になっている国もある。

スウェーデンは1999年から新しい制度に変わりました。それまではフラットな1階、全部税金で賄っていて、これはミーンズテストなし、インカムテストなしだったのですが、99年からは最低年金水準の保障のための財源に税金を特化するという話になりまして、今位置づけが変わりましたけれども、いずれにしても、基礎年金だからといってミーンズテストとセットだという話ではないケースが幾つか外国にあるということであります。ユニバーサルにミーンズテストなしで給付をつけて、その上にミーンズテストつきの給付を上乗せするというような国さえあるわけです。

ただ、いずれにしても、何らかの形で負担増が必要であるときに、金持ちの高齢者に対して税で給付を賄うことに国民の広い支持が集まるかどうかは慎重に見極めなければいけない問題だと思います。最近の諸外国の流れを見ますと、所得の高いグループについては一部給付を遠慮してもらう、かわりに所得の低い高齢者についてはプラスアルファをつけるというふうな調整をしている国が目立ってきたということだと思います。

2点目は、財源として社会保険料、依然としてあるわけですけれども、これとのすみ分けをどうするかということです。これも非常に社会保険料という性格があいまいだったのですけれども、給付と直接結びついている負担としての社会保険料という形に位置づけを変えて、制度を再構成する必要があるのではないかと思っております。

例示として、今日配付の資料で私が最近読売新聞に書きました記事、「年金制度改革:負担と給付、一目瞭然に」という一枚紙がついておりますが、ここで概要を説明しております。これは基本的に今1階の基礎年金部分の3分の1を税で賄う体制を残し、1階の基礎年金、残り3分の2が実は社会保険の年金保険料で賄っているのですが、これを所得比例的な保険料負担に負担の構造を変え、給付もいわば所得比例年金に変えてしまう。いわば1階の3分の2を2階に格上げしてしまうという、そういうことをたたき台として提案してい るものであります。

しかも、みなし掛金建て方式的なものに、拠出したものが給付として必ず返ってくるようなものに変えれば、若者の年金不信みたいなものを解除することができるのではないかと。あわせて、あまり保険料を上げなくても、将来に対する対応可能ではないかということを主張したものでございます。

4点目は、消費税、今、国の税金に関して言いますと、予算総則の中で3つに使途が限定されております基礎年金、老人医療、介護ということですけれども、消費税というのは使途をこの3つに限定していいのかということを改めてやはり問題にしたいということであります。

福祉関係といっても、老人にかかわるものだけでなくて、子どもにかかわるものだってあるわけです。子育て支援のためのいろいろなコストかかりますし、じゃ教育費は消費税でやらなくていいのかとかいう話になっております。あるいは地方でいろいろなサービスをしておりますけれども、そこについても縛りをかけることに本当に意味があるのかどうか。要するに消費税というのは使い道を幅広く残しておいたほうがいいのではないかと思います。3つに限定することの意味はやはり改めて問い直さなければいけないと思います。

5点目は、もう時間が来ましたので短めに話しますけれども、「パイの大きさ、切り方よりも味にもっと注意と関心を」ということであります。これは税制の空洞化という話以前に納税者意識が空洞化しているということでございます。お手元に机上配付の資料として日経に書いた私の記事がありますが、そこに書いてあります。

いずれにしても、給付と負担の関係を見やすくして、制度内容の取捨選択をもっと容易にしなければいけないのではないか。そのことが制度への加入意欲を高め、税なり保険料を払う気持ちにさせることにつながると思っております。そういう意味で、応益負担をもっと強化していくとか、消費税というものの使い道をもうちょっと明らかにするような形で税率のアップを考えるとか、内税化を検討するとかいうことが問題になるのではないかと思います。

最後は、「社会保障の将来像が明確でないことが国民の将来不安の一大原因となっている」、あるいは「頻繁な制度改正が年金制度への不信感を生んでいる」というふうによくマスコミ等で主張されております。これは本当なのかということでありまして、仮に何か制度を変えないと、30年先の制度はこうなりますというふうに言って、どんなことがあってもそれは変えませんと言うことが、不安を取り除き、制度、政府や政治に対する信頼を回復する道になるのかというと、私はそうなるとは思っていないということです。

今から30年前を考えてみますと、1972年ですが、高度成長真っ盛りのときです。この時点で、将来30年先の例えば年金制度はこうしますと決めてしまって、その後何が起ころうとも制度は変えませんとやったら、今よりももっと強い不満が国民の中に充満していたと思います。それは、高度成長期に決めるとどういうことになるかというと、石油ショック起こる前です。バブルもないし、円高もない。ゼロ金利なんていう事態を予想もしてなかった。ボーナスや月給がカットされることも予想してなかった。株価が4分の1に下がるなんてだれも予想してなかった。出生率がこんなに下がるなんてだれも予想してなかった。そういう事態がこの30年間実は起こってしまったわけです。にもかかわらず、そこを予想しなくて制度をフィックスして、制度だけはどんなことがあっても守り抜きますと言ったら、今よりも社会保障負担、ものすごく高くなっていたはずです。それを払う気になるか。払う気になるはずがないのですよ。その調整を繰り返し繰り返しやってきたわけです。

ですから、一たん制度をフィックスさせて、どんなことがあっても変えないということのほうがはるかに欲求不満になるのではないかということであって、変えることが欲求不満の対象ではないということですね、私が言いたいことは。むしろ社会保障制度の改革の手順やルールが信頼されるものになっていないと。

これは例えば前回の年金改革でもそうですが、衆議院で強行採決をやったわけですね。改革案を見ましても、これは国民の間に開かれた議論が十分になされたとは到底思えない。5つの選択肢は、審議会と関係なく突如として発表されたわけです。当初、関係者の間であの法案通らないのではないかと予想されていたのですが、どういうわけか、公明党が与党化しまして丸のみしたという現実がありまして、それで法案通ってしまったということですね。関係者、通らないのではないかと言っていたものが通ってしまって、制度決まってしま ったわけです。

そういうような、議論も尽くさず、国会における多数派の論理だけで物事を決めていく、納得も関係者してないままに制度を変えていくということを繰り返していくことが将来不安の原因。また同じようなことを将来に向かってやるのではないかということです。むしろ開かれた場で十分議論を尽くして、多数派の賛成と理解を取りつけていくという意味での手順やルール、そういうものを信頼に足るものにすることのほうが大事だと考えております。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

それでは、引き続きまして、消費税の話とも若干絡んでおりますので、消費税の内容を説明いただきまして、高山さんのご報告とあわせて、消費税、あるいは社会保障関係の財源ということでご議論いただこうと思います。

ではお願いします。

事務局

それでは、お手元の資料に沿いましてご説明を申し上げます。

「消費税について(メモ)」という一枚紙がお手元にあろうかと思いますが、これまでご覧いただいた資料が中心になりますが、現状と、それから12年の中期答申でおまとめいただいております課題に沿いまして、諸制度のファクトを簡単にご説明したいと思います。

基礎小13-3という「説明資料(消費税関係)」をご覧いただきたいと思います。目次が2枚ついておりまして、おめくりいただいて1ページでございますが、消費税収の現状で、一般会計の税収でとっておりますけれども、ご覧いただきますように、14年度予算で、消費税収、国の一般会計分で9.8兆円ということでございます。平成8年までが3%の税率で、平成9年から税率が引き上がっておりますけれども、着実かつ安定的に消費税収、推移をしてきておりまして、11年、12年のところでやや、10.4兆円から9.8兆円とマイナスがございますが、NTTの持株会社化に伴う大幅な還付が11、12年にあったという特殊要因でございます。

こうしたことを除けば着実に伸張してきたということでございますが、14年度予算で初めて13年度よりも下がっておりまして、最近の消費の減少等によって、予算ベースで初めてマイナスになっておるということではございますが、一般会計税収の約2割を占めるところまで消費税出てきておるということでございます。

2ページはその詳細なバックデータでございますので、ご覧いただければと思います。

それから3ページ、「消費税の歩み」ということで、一般消費税のころからの主な出来事を整理してございますが、これもご覧いただければと思います。

4ページが、これもいつもご覧いただいております「付加価値税率の国際比較」。これは先進国を中心に比較をしてございます。ご承知のように、EU諸国は、欧州理事会指令等によりまして、15%から25%内のレンジで税率を設定するということでございます。

それから5ページにお進みをいただきまして、この消費税を含めた消費課税全体の国民所得に占める割合をG5で比較してございます。黒い部分がいわゆる付加価値税でございます。課税ベースの広い消費課税の負担水準、日本は3.4%ということで、ヨーロッパの約3分の1程度の水準になっております。これに個別消費税を含めました消費課税全体の負担で見ますと、アメリカを若干上回っておりますが、やはりヨーロッパ諸国の半分未満という状況でございます。

それから6ページがアジア諸国の付加価値税率との比較を掲げてございますが、アジア、発展途上の諸国でも付加価値税が採用されている国が結構ございまして、こういう現状になっております。

それから7ページが「アジア諸国の租税負担率」ということで、黒い部分が消費課税の負担率でございますが、比較的消費課税のウェイトが大きく、かつ、負担率ベースでも高いということが見てとれようかと思います。

それから8ページにまいりまして、先ほど高山先生からもお話がございましたが、「消費税の使途」を簡単に図示してございますが、ご承知のように、4%が消費税、1%相当が地方消費税ということでございまして、国の消費税のうち29.5%が交付税として地方へ配分されるという結果、この5%の実質的な配分は、国が56.4、地方が43.6というのが現状でございます。

この国の56.4分が9ページでどう使われているかということで、これも高山先生からお話がございましたが、福祉目的化ということで、平成11年度の予算以降、予算総則で、基礎年金、老人医療、介護に充てるということで、国の消費税分が6.9兆、対象経費が10.1兆ということで、すき間が3.2で、消費税ではこの対象経費を賄い切れていないというのが現状でございます。

10ページにお進みいただきまして、こうした現状を踏まえまして、12年7月の中期答申では、3つほど課題を整理していただいております。アンダーラインを引いておるところでございますが、少子・高齢化が進展する中で、「消費税を含めた今後の我が国の税制のあり方については、公的サービスの費用負担を将来世代に先送りするのではなく、現在の世代が広く公平に分かち合っていく必要がある」ということで、国民的な議論によって検討されるべきであるが、その前に消費税の役割はますます重要になっていくといった指摘がまずございました。それから中小事業者に対する特例措置、仕入税額控除方式などのあり方について検討を行っていかなければならないというご指摘。それから3つ目に、消費者の便宜を図る観点から、ヨーロッパ諸国の例を参考にしつつ、「総額表示方式」の普及を図ることが適当である。消費税に関してはこの3つほどのご指摘を中期答申で検討課題としていただいておったところでございます。

11ページが創設以来の改正の歩みを簡単に整理してございますけれども、税率は3%から4%、これは地方消費税合わせますと現在5%でございます。それから中小事業者の特例制度といたしまして、創設時、免税点、簡易課税制度、限界控除制度、3つございましたけれども、免税点につきましては、この適用上限の3,000万円がいまだに適用されておるということでございます。それから簡易課税制度につきましては、適用上限やみなし仕入率につきまして、平成3年、6年と改善が行われてきております。それから限界控除制度につきましては、平成6年の改正で廃止していただいていると。仕入税額控除の方式につきましては、帳簿方式から請求書等保存方式に改正がなされておりまして、申告納付につきましても、平成3年、6年と中間申告の回数を増やす等の見直しが行われてきております。いずれも、詳細についてはこれからそれぞれ簡単にご覧いただきたいと思います。

それから12、13、14、15あたりは、先ほどの高山先生の関連の高齢化等の資料がついてございますので、ご覧いただくにとどめて、説明は省略させていただきます。

なお、15ページは、12年の10月の有識者会議の場におきまして、基礎年金、高齢者医療、介護の今後の経費の伸び、それを消費税で賄った場合にどのぐらいの税率になるかという試算が示されておりますので、ご覧いただければと思います。

それから16ページでございますが、これもよくご承知のことでございますけれども、12年の年金改正の際、国民年金法等の一部を改正する法律の附則で、今後の基礎年金のあり方につきまして、「当面平成16年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の2分の1への引上げを図るものとする」という規定が置かれておるところでございます。

17ページへお進みいただきまして、これとの関連で、先ほどの12年10月の社会保障構造の在り方について考える有識者会議におきまして、基礎年金の国庫負担割合の引上げに関連して、このような指摘がなされております。2番目の・でアンダーラインを引いた部分でございますけれども、国庫負担割合の引上げについては、多額の安定財源の確保が必要であるということで、「その財源として国民が薄く広く負担し、経済活動に比較的中立的な消費税をどのように活用すべきか検討する必要があるとの意見がある」とされた上で、この国庫負担割合の引上げ自体につきまして、[1]、[2]、[3]ということで指摘が行われております。

[1]は「社会保険料負担と税負担とをあわせて見た場合全体の国民負担は変わらないこと」、それから[2]が「消費税を財源として国庫負担を引き上げた場合、あらゆる世帯がそれを負担することになること、高齢者の受け取る年金額が物価スライドすることから、その負担の大部分は若年世代に帰着すること」、それから[3]として「国庫負担引上げのための財源は財政全体の歳入・歳出ギャップの解消にはつながらないこと」といった有識者会議の指摘があるところでございます。

それから18ページで、この有識者会議の後に、平成13年の春に政府・与党の社会保障改革協議会が「社会保障改革大綱」としてまとめた中に、やはり社会保障の財源のあり方についての記述がございまして、ここではさらに抽象的なことが書いてございますけれども、「社会保障費用については、利用者負担、保険料負担と公費負担の適切な組み合わせにより、必要な財源を確保する」とした上で、税制については、そこにありますように、「21世紀の経済社会にふさわしい税体系の在り方について検討する必要がある」といったような記述にとどまっております。

それから19ページにお進みいただきまして、これもよくご覧いただく資料でございますけれども、収入階級別の消費税の負担ということで、消費税率を引き上げます場合にはいわゆる逆進性の議論というのが常に出てまいるわけでございますけれども、現状では、V分位の収入階級別に実収入に対します消費課税の税負担割合を見ますと、右のほうでございますが、第I分位が2.7、一番高い第X分位が2.0ということで、実収入が増えるに従って、やや負担割合が低下しております。一方で、所得税を含めましたすべての税の合計で見ますと、税負担割合は7.1から14.6に上昇するということで、現状では、税制全体としては負担の累進性が確保されておるということでございます。

それから20ページでございます。これも時々ご覧いただく資料ですけれども、平成9年の引上げの際にも、低所得者の年金受給者等の真に手を差し伸べるべき方々への配慮ということで、歳出面でも臨時福祉給付金の支給等が行われておったところでございます。

それから21ページにお進みいただきまして、「食料品に対する付加価値税率の国際比較」ということで整理させていただいております。消費税率の水準が将来ヨーロッパ諸国並みに2桁になってまいりますと、所得に対する逆進性を緩和するための政策的配慮ということで、食料品に対する軽減税率などといったご議論があるわけでございますけれども、ご覧いただきますように、軽減税率と申しましても、EU諸国、10%程度のところが多うございます。一方で、軽減税率の対象となる食料品を一口に申し上げましても、どういうふうに適用範囲を設定していくかということはなかなか、これからそういう合理的な範囲を画するということは可能かどうかという問題もあるのではないかと思っております。

それから(備考)の2.に書いてございますが、ご承知のように、欧州の理事会指令におきましては、ゼロ税率と5%未満の軽減税率は否定する考え方がとられているところでございます。

それから22ページでございますが、「消費税における非課税取引」。これもよくご承知のことだと思いますが、現在2つ範疇がございまして、土地取引、金融取引といった税の性格から課税対象とならないものに加えまして、医療、福祉、教育といった政策的な配慮に基づく非課税措置というのがあるわけですけれども、22ページの左の下の箱の中に書いてございますように、消費税の場合、非課税と申しますのは、売り上げに課税されないとともに、売り上げに対応する課税仕入れについても、仕入税額控除ができないというのが消費税の非課税措置でございまして、転々流通するような物品を非課税とする場合には税の累積が生じるといった問題もございまして、現在、この政策的な非課税の範囲は医療、福祉、教育といった最終消費者に提供されるサービスに限定されておるというのが現状でございます。

それから23ページでございますが、免税点制度。これは前々年、または前々事業年度、2年前の課税売上高が基準となっておりまして、それが3,000万円以下の事業者については消費税を納める義務が免除されておるということでございます。

24ページでございますが、平成元年の創設以来の免税事業者、あるいは売上高の推移をつけてございますけれども、一番右の12年でご覧いただきまして、全事業者で593万社、このうち免税事業者が368万ということで、62%ございます。平成元年創設当時はこれが67.6%でございました。この間の物価上昇などで名目の売上高が上昇してまいりますので、免税事業者の割合は趨勢的に減ってきてはおりますけれども、依然として62%が免税事業者という状況でございます。売上高に占める割合としては、一番下でございますが、2.5%といったところでございます。

これを個人、法人別にちょっと見ていただくのが次の25ページでございます。まず真ん中の横で見ていただいて、bの免税事業者というのを横で見ていただきますと、個人がA/C、74.0、法人がB/C、26.0となっておりまして、免税業者のうち約4分の3が個人事業者でございます。

これを個人、法人それぞれ縦で見ていただきますと、全個人事業者に占める免税事業者の割合は、b/cで83.5%でございます。それから真ん中の法人の欄で見ていただきますと、全法人に占める免税の法人の割合は35.8ということで、特に個人事業者において免税事業者のウェイトが高いというのが現状でございます。

それから26ページにお進みをいただきまして、簡易課税制度。これもご承知のように、課税事業者のうちで簡易課税を選択される場合には、売上高からみなし仕入率を用いて納付税額を計算することが可能であるということで、課税売上高が2億円以下の場合にはこの制度を選択できるということでございます。現在、みなし仕入率は、その一番下にございますように、5つのグループ分けで90から50までが設定されております。

この簡易課税制度の適用状況については、次の27ページをご覧いただきますと、12年で、課税事業者226万社のうち、この簡易申告をしておられる方がC/Aで、47.1%でございます。平成元年に創設されました当時はこれが68%ほどございまして、適用上限が5億から2億まで下がったり、みなし仕入率が細分化されたということで、是正された結果、この割合が下がってきておりまして、現在、47%、売上高での割合は5.5%ということでございます。

それから28ページをご覧いただきますと、ヨーロッパ諸国でのこうした特例措置がどうなっておるかということで、1つは免税点の水準、日本は3,000万でございますけれども、フランス、ドイツ、イギリス、そのような状況でございまして、比較的高いイギリスでも1,000万弱というところでございます。

それから簡易課税制度につきましては、フランスは昔、フォルフェという制度がございましたが、これが廃止されておるということで、ドイツにだけ平均率課税といった、売り上げに対してみなし仕入率を乗ずる複雑な制度がなお残っておりますが、その適用上限は660万円程度ということでございます。

それから29ページにお進みいただきまして、「事業者免税点制度と『益税』の関係」ということで、やや図式化して概念的なポンチ絵をつくらせていただいております。「益税」といいますのは、ご承知のように、消費税は間接税でございまして、最終的には、その負担を消費者にお願いするということが予定されておるわけでございますけれども、消費者が負担した消費税額の一部が事業者の手元に残る場合を言います。したがいまして、そこにございますように、免税事業者が消費税分として仕入価格の上昇分を上回って、みずからの付加価値の部分まで消費税分の価格の引上げを行ったとすれば、その部分がいわゆる「益税」が発生するという関係にございまして、この下の絵でAの部分が転嫁されるとそこが「益税」ということになりますが、仕入価格に対応する消費税額Bが全部転嫁できない場合が一方で損税ということがよく言われるわけですけれども、それぞれの事業者がどういう値づけをして転嫁しているかというのは経済実態によると思いますので、図式的に考えるとこうだということであろうかと思います。

それから30ページ、「簡易課税制度と『益税』の関係」でございます。こちらはみなし仕入率がその事業者の実際の仕入率を上回っておれば、その部分がいわゆる「益税」ということになろうかと思います。

それから、さらにやや図式的なことを続けて恐縮でございますが、31ページは消費税の減収額と益税ということで絵を整理させていただいております。減収額は、そこにございますように、消費税の個々の特例制度の適用を前提としまして、当該制度なかりし場合と比較して国に納付されない税収額の減を申します。益税額は、この消費税の特例制度を原因としまして国に納税されない消費税相当分についてまで、消費者に転嫁している額を言うということでございます。

そこに簡単な絵がございますけれども、800円で仕入れて1,000円で売る場合、課税事業者は売値の1,000円に対して5%、1,050円で値づけをするのが予定されておるわけでございますけれども、これが免税事業者の場合には、仕入れの800円にかかる40円の消費税を転嫁することまでは予定されておるわけでございまして、この1,050円と1,040円の差、10円が減収額となるわけでございますが、この予定された1,040円以上に転嫁すると、その部分が益税。ケース3のように、1,040円までも転嫁できない場合には、その差が損税といったようなことが図式的には言えようかと思います。

それから32ページはいわゆるインボイス制度、「仕入税額の改正経緯」でございますが、消費税創設当時は、そこにアンダ―ラインを引いてございますが、仕入れの事実を記載した帳簿または仕入先から交付を受けた請求書等の保存を税額控除の要件とする「帳簿方式」でございました。これが平成6年の税制改正の際に、納税者自身が記帳する帳簿のみですと、制度の信頼性の観点から疑問があるということでございましたので、仕入れの事実を記載した帳簿の保存に加えまして、請求書、領収書、納品書その他取引の事実を証する書類のいずれかの保存を税額控除の要件とする「請求書等保存方式」に変わったということでございます。

それから33ページはヨーロッパ諸国のインボイス制度でございますが、詳細な説明は省略させていただきます。

それから34ページにお進みいただきまして、「消費税の申告納付制度」でございます。消費税の場合、課税期間は、個人事業者の場合には暦年、法人の場合には事業年度ということで1年となっておりますが、その一番上、ややこしい表で恐縮でございますけれども、前課税期間の年税額が400万円を超えます場合には、年1回の確定申告に加えまして年3回の中間納付というのがございまして、全部で4回納付するという仕組みになっております。

これが年税額が小さいところは年1回の中間納付、あるいは48万円以下になると確定申告だけでいいということでございまして、消費者が負担した消費税相当額が、これは消費者の預り金的な性格を踏まえまして、事業者の手元に消費税相当額が長く滞留することは運用益が生じて必ずしも好ましくないということで、どのぐらいの間隔で納付してもらうかというのが一つの論点としてあるわけでございます。

35ページはこれまでの改正の経緯ですので省略いたしますが、36ページをご覧いただくと、ヨーロッパ諸国との比較をつけてございます。フランスの場合には、課税期間そのものが1カ月になっておりますので、年12回の納付があるということでございます。ドイツの場合には課税期間自体は1年で設定されておりますので、確定申告は年1回でございますが、このほかに、原則として毎月の中間納付があるということにされた上で、中小事業者の場合には、それが年4回あるいは全く中間申告なしでいいということで回数が緩和されておるということで、事業者の事務能力や規模に応じてこの納付回数をどのように設定するかというのは今後とも大きな議論の一つであろうと思っております。

それから37ページ、これは消費税の滞納の状況を簡単にご覧いただきたいと思いますが、平成9年、10年、景気の低迷や消費税率の引上げの直後であったということで、そこでご覧いただきますように、新規発生滞納額が9年で125.5、10年で134.4と増えた時期がございました。国税当局で重点的な滞納整理を実施した結果、最近は小康を得ておりまして、11、12はそういう数字になってございます。

38ページには、国税庁サイドでの消費税の滞納への取り組みを簡単にまとめてございますのでご覧いただきたいと思います。左下にございますように、各種の入札への参加資格の審査に際しまして、地方団体や国に対して納税証明書を添付させるとか、納税貯蓄組合等による期限内納付の推進活動とか、いろいろと国税当局で努力をされた結果、先ほどのような状況に少し改善してきておるということでございます。

それから39ページ以降は、これもいつもご覧いただく消費者に対する価格表示のあり方ということで、総額表示方式の諸類型が書いてございます。値札などに総額表示をした上で消費者の便宜を図るということではございますが、ここに何通りか書いてございますように、消費税の額をどう表示するかということについては幾つかのやり方があろうと思います。

次のページでご覧いただきますが、ヨーロッパ諸国でも総額表示については一定の義務づけがございますけれども、消費税、付加価値税自体の価格表示の規制を、表示の仕方をそういう中でどうするかという点については、必ずしも統一されていないということでございます。

40ページにお進みいただきまして、これもいつもご覧いただくヨーロッパの消費者に対する税額表示の状況でございます。この価格表示の方法につきまして、税法では規制はないわけですけれども、3.にございますように、消費者保護の観点から、価格表示に関する法令上の規制の中で、消費者が購入決定後に表示価格を超える負担を求められることがないよう、消費者に対する価格表示は付加価値税込みとしなければならないという旨の定めがございます。一定の罰則で担保されておるというふうに伺っております。

ただ、この場合、先ほど申し上げましたように、価格に含まれます付加価値税相当額をどう表示するかということについては任意であると伺っております。

消費者の便宜という観点でございますので、日本の場合にも、この総額表示をどのように推進していくかということにつきましては、必ずしも税法でというよりは、消費者保護に関する法令の体系の中でどういった取り組みができるかということが大きな課題であろうかと思いますが、41ページに現在の「消費者保護に関する法令」の例を並べてございますけれども、こうした消費者保護関係の行政を所管しておる省庁ともよく協議いたしまして、どういった方法で可能かということに取り組んでいく必要があるのかと考えておるところでございます。

いろいろな資料を雑駁に説明いたしまして恐縮ですが、以上でございます。

委員

ありがとうございました。

それでは、続いてお願いします。

事務局

それでは、基礎小13-6の資料をお願いいたします。「地方税関係資料(地方消費税関係)」というものでございます。

まず1ページをお開きいただきたいと思います。消費税が導入されました平成元年以降の地方税収、それからその中に占めます地方間接税の割合等々を記したものでございます。

平成元年に国の消費税が導入されたわけでございますが、これに伴いまして、地方税のほうにおきましては、電気税、ガス税、木材引取税が廃止になりました。また、娯楽施設利用税、料理飲食等消費税などは税率調整がされたところでございます。その後、平成9年に地方消費税が創設されまして、1%相当ということで創設されたところでございます。その後、平成12年に特別地方消費税、かつての料理飲食等消費税でございますが、それが廃止されました。これらの結果、地方の間接税、具体的には(注)の2にございますとおり、地方消費税、特別地方消費税、ゴルフ場利用税、道府県、市町村のたばこ税でございますが、地方税収の中の約1割を占めておるという状況になっております。

続きまして2ページをお開きいただきたいと思います。「地方消費税の概要」でございますが、3にございますとおり、課税標準は消費税額とされております。税率がそれの100分の25ということで、消費税に換算しますとちょうど1%ということになっております。それで、5の申告納付等ですが、譲渡割につきましては、当分の間、国の税務署に消費税とあわせて申告納付をしていただく。それから貨物割につきましては、税関に消費税とあわせて申告納付していただくということにしております。6番の清算・交付ですが、国から払い込まれた地方消費税相当額につきましては、それぞれ最終消費がなされたところに帰属するという考え方に立ちまして、商業統計の小売年間販売額その他の基準によって、都道府県間において清算を行っているところでございます。

なお、各県に配分されました清算後の2分の1につきましては、人口、従業者に按分して、各都道府県内の市区町村に交付していると ころでございます。

続いて3ページでございます。中期展望におきまして、地方消費税の現状と課題ということでおまとめいただいたものでございますが、1つ目の〇にございますとおり、地方消費税、非常に偏在性が少なく、また安定性にも富んでいる。こういう中で幅広い行政需要を賄う税として、重要な役割を果たしているとご評価いただいております。また、2番目の○でございますが、地方消費税の使途についてでございますけれども、これはもともと一般財源であったもののかわりということでできた経緯がございますけれども、今後とも幅広い行政需要に充てるための財源として位置づけていくことが必要とされております。

以上でございますが、よろしくお願いいたします。

委員

ありがとうございました。事務局から詳細なデータを今ご説明いただきました。

事務局

小委員長、すみません。1点。

申しわけありません。資料の中に1枚だけ、「ワールドカップ参加国の付加価値税率の国際比較」というのを机上に配付させていただいております。別にワールドカップ参加国が付加価値税率が高いとまで言うつもりはないのですが、閑話休題でご覧いただければと思いますので、一言だけお断りをさせていただきます。

委員

ありがとうございました。

ただ、やはり強いところは高いのだよね。これを見ると(笑)。その辺のことはご自分でご判断ください。

それでは、今からしばらく時間をとりまして、高山先生のお話と事務局のご説明、消費税に関しまして、ご意見なりご質問、いろいろあろうと思いますので、時間をとりたいと思います。どうぞ、どなたからでも結構です。

委員

今日のお話で、直間比率といいますか、年金の世界の直間比率を……

委員

だれに質問?

委員

高山先生に。これによってどういう資金循環が実現するかということですけれども、気になっている点というのは、年金給付の問題と、それから予算から支払われているサービス及び生活補助的な経費が高齢者に支払われているわけですけれども、実際にはその年金支払いと実物のサービス、両方が何らかの形で高齢者に支払われているときに、この段階でのダブり感といいますか、サービスコストと年金給付のダブりといいますか、そういう問題が生じていないのか。ちょっとそこの問題が解決されませんと、消費税を目的化するという場合に、本来、一般化されて一般財源として使えたものを高齢者用に使うということによって、一般財源から年金会計へのより過度なといいますか、資金の移転が行われる可能性があるのかどうかということについて、ちょっと一言お答えをお伺いしたいと思ったのです。

委員

質問の趣旨を正しく理解しているかどうかよくわからないのですけれども、目的税化するときの一つの論点として、先ほど事務局からの説明資料の中にもあったのですけれども、例えば年金について言いますと、物価スライドがついてますので、消費税、税率上げて給付を賄うということをやりますと、年金給付はそのまま改善されてしまう。物価上昇分だけ。その分、結果的に高齢者負担しないで若者の負担に回るのではないかという指摘があったわけですけれども、これはスライドの仕方をどうするかという議論とセットでしないといけないと思うのですね。これは本当は消費税率を3%から5%に引き上げたときにもやっておく必要があったことだと思うのですけれども、仮に高齢者に対するいろいろな給付を賄うために消費税の税率を上げるのだということにするといたしますと、年金のスライドの規定の中でスライドすべきインデックスですね。そこは消費税率のアップ分によって上昇したその消費者物価の分はスライドから外すとか、そういう議論をしないと、広く薄くオールジャパンの負担にならないということだと思うのです。

いずれにしても、増税にしましても、社会保険料の引上げにしても、みんな結局嫌っているわけですから、関係者がしぶしぶながら納得するものはどういうことかということを議論していくと、おっしゃったようなダブりの話はやはり相当深刻に受けとめて議論、対応ということになるのではないかと思ってますけれども。

委員

よろしゅうございますか。

委員

委員の問題とも関連するのですけれども、高山さんのお話では、傾向的に保険料よりも税、税の中では消費税という流れになっていると思うのですけれども、消費税というのは、理論的に言いますと賃金税に極めて近い。その点があるのに、社会保険料が賃金税だということで消費税に置きかえることの理論的な説明はどうされるのかという問題が第1点です。

それから世代間の負担の問題で、確かに今ご議論の中で、インデクセーションをつけるかどうかということによって、徴収した部分が高齢者の中では負担したものが年金の中にまた振りかかってくるということで、大きな政府を助長するという問題があるわけで、そこはどういうぐあいに考えられるのか。

そして世代間の負担というものは、移行期において、私もそのやり方によっては世代間の不公平というのを緩和する可能性もあるだろうと思いますけれども、ライフサイクルの中でいうとそういう効果はあまり大きくないのではないか。したがって、高山さんがおっしゃっている理論的な枠組みの変更というものが実態としてどの程度その意図に合った形になっているかどうかということを、まず理論的な点でお聞かせ願いたいと思います。

委員

消費税が賃金税に近い性格を持っているというのはおっしゃるとおりですが、賃金税そのものではやはりないと思うのですよね。相続分だとかいろいろなものが入っておりますし、社会保険料、賃金、上限ついてますけれども、消費税についてはカウントすべきベースになっているような上限はないわけですから、近いと言いながら、やはりそこは違うというふうに考えるべきではないか。まさに負担の公平とかいうときに賃金から除かれる部分、消費税の課税ベースには最終的には入ってくるけれども、社会保険料だったら徴収ベースに入ってこないところの違い、そこをそう簡単に無視してやっていいのかなと思いますけれどもね。

それから2点目は、これは大きな政府になるかどうかは基本的に給付をどうするかにかかっている話だと思うのです。消費税で賄うから給付は野放しでいいとはだれも思っていないわけですね。消費税の税率アップはみんなそんなに賛成しないはずです。政治家は首をかけなければいけない話ですから、そんなに簡単にできるとも思いません。ですから、大きな政府を助長するというような話になるかどうか、まさに給付をどうするかのほうの話ではないかと考えてます。

ライフサイクルの話は、先ほども申し上げましたように、賃金だけに着目するのか。要するに、賃金所得のウェイトというのが経済全体でどの程度かということに依存する話だと思います。

委員

とりあえず高山先生にお尋ねしたいことがあるのですけどね。読売の提言欄で書かれた中で、第二消費税という発想を書かれていますよね。これは年金目的消費税で、年金財源の安定化を図るという大義名分ですけれども、今、保険料の引上げ、凍結されてますよね。先生の主張によれば、これ以上保険料を上げることはいろいろ問題があるということになると、保険料凍結はもうそのままにしておいて第二消費税を導入するということだと思ってお聞きしていたのですけれども、その場合に、僕らは第二消費税という形で入れることが賢明なのかどうか。確かにこのほうが抵抗が少ないかもしれないとも思いますけれども、消費税を2つに分割するということが本当にいいのかなという気がする。やるのならば、いろいろな欠点を是正した上で、しかるべき時期に消費税を上げるというほうがいいのではないかという気が漠然とするのです。

そのときに、先生はこの第二消費税ということを導入するときに、一体どのぐらいのスケールのことを考えていらっしゃるのか。実は今の消費税でもいろいろな欠点があるわけで、当然のことながら、その欠点を直した、同じようなものを第二消費税と命名するということだと思いますけれども、ここのところ、もうちょっと全体として納得できるようにお話をいただけませんかね。

委員

どうぞ。

委員

ここは極めて字数の限られたコラムだったものですから意を尽くしてない面が多々あるかと思います。

まず、第二消費税というのは仮の名前で、これがいいか悪いかは広く議論をいただきたいと思っております。実質的には、社会保険料負担において消費支出を徴収ベースとするものを増やすというところがポイントでありまして、名前をどうするかということには私はあまりこだわっておりません。第二消費税と呼ぶのか、現在ある年金保険料の徴収ベースを現在の賃金から消費支出に移すとか、テクニックとしてはいろいろあると。あるいは今の消費税のまま財源を、ややひもつきの形になるかどうかは別として、年金のほうに厚く配分するかとか、いろいろ方法はあると思うのです。

ですから、私はポイントは、年金財源の中で消費支出を徴収ベースとするものを厚くするというところにあって、具体的な方法論は何がいいかはぜひ皆さんの中でご議論していただきたいということです。

ただ、第二消費税という言葉を使った趣旨は、今でも地方消費税という形で消費税は事実上2つに分割されているわけですよ。5%のうちの1%は地方関係予算ですよと、地方関係のサービスに充当しますよという形になっているわけですね。第二消費税でそれを年金目的化すると、その部分は年金に使うのですよというのを明示するという意味があるわけです。消費税の税率アップはいずれにしてもそうやさしくないことでありまして、どういう言い方をしたら国民の多数派が納得してくれるかという問題でありまして、年金とひもつきにすることで国民の多数派が受け入れる余地があるということであれば、そこは検討していいのではないかと考えているという趣旨です。

スケールについては、これは年金給付の中、基礎年金の中でどれだけを税で充当するかということとセットだと思います。税方式化の議論は、とりあえず2分の1なのか、基礎年金の全額なのか、いろいろ議論分かれるところですけれども、いずれにしても増税には基本的にはみんなそんなに簡単に賛成しないわけですから、給付として税を投入すべき部分はどの部分かということをまず徹底的に議論する。その中で、じゃその部分は税で負担してもやむを得ませんねというふうに多数の人が納得すれば、そこで充てる話でありまして、スケールが初めから例えば2兆円になるとか5兆円になるとか、今から先見的に言う必要はないと思います。給付をどうするか、税で賄うべき給付というのは何なのかということを徹底して議論した上でスケールが決まるという話ではないかと思います。

委員

高山先生、いろいろ問題点を教えていただきましたが、高山先生の言われている考え方の中には2つあって、1つは現在の社会保険としての年金の徴収の仕組み等の問題ですね。いわゆる公的年金、社会保険料を払いますけれども、掛金払いますけれども、それを社会保険料控除でやって、受け取ったところに課税したいと、従来から税制調査会でも言っているところの仕組みですが、もう一つ、それに財源として新しくどう考えていくかと。これが2つお話の中に入っているのだと思いますが、それと関係するかどうかですが、先生が社会保障と言われたり年金と言われるのですが、中に、最近出てきた介護、医療、それからちょっと話外れますけれども、失業保険といったようなものですね。こういうものがカウントされますと、また変わってくるのでしょうか。あるいは、それとも、これは委員が言われたことに関連すると思うのですが、こういう、はっきりサービスが特定しているものについてはまた別の考え方でいくほうがよろしいのかどうか、ちょっとお伺いできますでしょうか。

委員

とりあえず、私は年金をずっと勉強してきたものですから、年金が一番話しやすいという意味で年金を例として申し上げたのですけれども、医療のほうは医療でやはり同じような議論の仕方でできると思います。老人医療、典型的ですが、実はかなり国費を投入しているのは国民健康保険ですね。あるいは政管健保も結構税を投入しているわけでありまして、それはそれで、それぞれの中で税で負担すべきものはどういうものかという議論をした上で、その財源を税の中でどうするかという話で、それぞれについてやることが適切だと思ってます。社会保障全体として大ざっぱにこうだというような話では決してないと思いますけれども。それぞれの個別の制度の中で議論を進めて、じゃこれは税で、この部分は税で賄いましょうという話になって、じゃ税のうちどういうものでやりましょうかという議論をしたほうがいいと思いまして、初めから全部消費税でというような乱暴な話ではないと思います。

委員

そうすると、目的税はどんどん増えるのですか。

委員

だから目的税にしたほうがいいものとそうでないものに分かれると思いますけれども。

委員

いろいろな角度からおっしゃっているので、質問が妥当かどうかわからないのですが、仮に一部を税化するということをおっしゃっているとすれば、例えば厚生年金なんかの場合は企業が半分持っているわけですね。これが税化した場合に、所得税、あるいは消費税に転嫁した場合には個人にいってしまうことになりますが、その場合、企業の役割というのはどうなるのかということとか、それから社会保障の範囲といいますかね。国が責任を負うべき、地方でもいいですが、公的な機関が社会保障的な観点からどこまで責任を負うべきかということで言えば、一番典型的なのは生活扶助者、扶助基準が適用されている人たちがいますね。そういう人たちに対して明らかにこれは国が、あるいは地方が手当てをしなければいけないと、これはよくわかるのですが、単なる、そうではなくて、力はあるのに未納、つまりサボっているだけというような人たちに対して、これは税化したときにもっと甘やかすことにならないのかというようなことですね。そういう疑問がちょっと出るのですが、その点はどうなのでしょう。

委員

まず社会保険料、これから上げていかないで、むしろ税で消費支出を徴収ベースとするものの負担割合を増やしていくと、結果的に企業負担が個人負担に振りかわるのではないかという話です。この話は税方式の批判論者というのはあらゆるところで書きまくっている話ですけれども、例えば消費税、だれが負担しているかというと、納税義務者は事業者にあるのですけれども、事業者がじゃ最終負担者とはだれも思ってないわけですよ。購入している人が負担していると考えているわけですね。転嫁と帰着の話は財政学の関係者の中では周知でありまして、法律上の納税義務者と実際に負担している人は違うという考え方だと思うのですね。

社会保険料の事業主負担はどうかというと、これは確かに事業主に法的な納付義務はあるのですけれども、それはじゃ事業主が全然ほかに転嫁しなくて払っているかというと、そういうことは普通考えていないわけです。これは基本的に賃金を払うときにそれを織り込んで、我々の普通の理解でいえば、労働の限界生産性の中で、ラベルの張り方を一部事業主負担にして、残りを賃金にしておくだけなのですよね。ですから、事業主負担といっても大半は本人が払っているわけです。実態は。

要するに、酒税は酒造メーカーが納税義務者ですけれども、酒造メーカーが払っているとは思ってないのですよ。みんなお酒を買う人が払っているわけです。だから、納税義務者と実際に負担している人の違いの議論をしないと、この話はいけないのではないかと思うのですね。法人から個人に負担が振りかわるという観点から批判する意見が多いのですが、まさにこれはそういう錯覚に基づいた議論だと私自身は考えます。

それから未納者を甘やかすというのが2点目の議論で出てきましたけれども、消費税は日本国内に住んでいればだれでもが払わなければいけないのですよ。保険料は納付をいろいろサボることが、あるいは回避することができるのですが、日本国内で生活して物を買う限り、これは逃れることができないですよね。そうすると、そういう人たちを甘やかすというのは、例えば所得税を中心財源にするといろいろ納めない人いっぱいいますけれども、消費税を中心に持っていく、消費支出を徴収ベースに持っていけば、これは日本国内に生活している限りみんな払っているのですよ。サボることできないのですよ。ですから、もっと私は公平になると思いますけれども。

委員

消費税は元年から適用されて13年になる。おおむねだんだんと社会には定着してきているのではないかという気がいたします。当初はどうしたら中小企業に十分な協力を得られるか、それから転嫁を適正にしてもらう、それによって消費者の信頼を得るかということからいろいろ苦労があっただろうと思いますが、定着してきている。

そういう観点からすると、免税点の問題、簡易課税の問題、これは導入当初いろいろな問題点を緩和するために行われた点もあるわけですから、そろそろ基本的に見直していい時期ではないか。そういった意味においては、例えば免税点でいえば、法人の事業者であれば、免税点はそもそも要らないのかもしれない。個人は500万か1,000万ぐらい、それから簡易課税というものもほとんどなくてもいい。あるいは場合によっては、免税事業者が課税を選択したときのための特例として残すぐらいでいいのではないかという気がいたします。

しかし、そういうことと関連して、益税という点をあまり強調するのはいかがかという気がいたします。今ご議論ありましたけれども、消費税の性質、本質、どういうふうに見るか。しかし、これはあくまで納税義務者は事業者でありまして、そして入ってきたお金の105分の5を国に納めてくださいと、そういう税金でございますから、益税が事業者の手に残るというふうに考えると、税の性格を混乱させるのではないか。そういった意味においては、源泉所得税なんかとは本質的に違う税であるということは確認しておく必要があるのではないか。

転嫁できるできない、値段を幾らにする、仕入れを幾らでおさめる、こういったことはすべて市場の中から決まってくることで、その市場の中で決まった価格の105分の5を納めていただくということで徹底をしていかないと、今後税率を上げていくときに事業者を悪者にしてはいけないわけでございますので、ご説明もすべて、いわゆる益税とか、図式的に見ればというご説明ですから、そこは理論的には整理はされているとは思いますが、その点は若干留意する必要があるのではないかと思うわけです。

それから消費税は所得税と並ぶ財政、税制の柱としてできたわけでございますから、基本的にはやはり目的税化ということは避けるべきではないか。仮に何らかの結びつけをするにしても、例えばお話ありました第二消費税、第二消費税と言うと誤解を招くのであれば、国民福祉税でも何でもいいのではないか。その課税標準、納税方法は消費税と一緒。それは例えば揮発油税と地方道路税があっても、同じような課税標準、納付方法というようなことでございますから、そこは知恵の出し方かなと思うわけでございます。

それから、この使途とも関連して、これだけ高齢者の割合が増える、17%、18%だと言いますけれども、その反面においては少子現象がある。従属人口全体、子どもと年寄りを含めれば、合わせれば、従属人口比率というのはあまり大きく変わってないのではないか。そういった意味においては、この従属人口に対してどういうふうな施策を講じていくかということ、その中でどうして高齢者のほうにばかり偏るのか、そこだけが問題が大きく取り上げられるのかということが若干不思議に思うわけでございますが、これはやはり大人、高齢者、老年者のほうが時間はあるし、お金はあるし、政治にかかわる時間、暇も豊富にあるということかなと。これは高山先生の最 後に指摘された社会保障制度の改革の手順とも関係するわけでございます。

例えば子どもの場合においても選挙権をみんな与えてやると。ただ、親がそれを行使すればいいわけですから。そういったことでもやらないと、どうも消費税も、使うにしても高齢者のほうばかりいってしまう。やはり少子のほうにも十分配慮して、教育なり育児なりに、もし社会福祉的に使うのであればそっちのほうにも考えるべきではないかという気がいたしますが、ここにあります社会保障制度改革の手順、ルール、信頼されるものになっていない、ここらについて何かいい考え方、方法がないものか、そこらは高山先生、何か具体的なお考えはあるのでしょうか。それとも、これから何とか考えなければいけないということでしょうか。

委員

じゃ最後のはご質問ですから、どうぞ。

委員

目的税化というのは、私も財政を勉強している者の端くれですから、決していいことだとは思っていないのですね。ただ、消費税の税率を上げる際にどういう説明をしたら税率の引上げができるかということの一つの選択肢としては、いわゆる目的税化が検討に値するのではないかという意味で、ここで問題提起させていただいたと。私は目的税そのものに賛成しているわけではないということをあらかじめお断りしておきたい。

それから最後の点は大変難しい問題です。今、審議会等いろいろ分かれて、税は税、社会保障は社会保障、しかも社会保障も全部部会に分割されておりまして、相互にあまり調整するところがなくて行政のレベルではやっている。それが政治の世界に投げかけられて調整しているということですけれども、今の形では、将来に向けた総合的、包括的、戦略的なものがなかなか打ち出されていないように思います。社会保障全体の重みはこれだけ大きくなってきたわけですから、私は、第二臨調のような形の社会保障改革に関する国民全体を巻き込む議論というのを一回、首相のリーダーシップのもとでやる必要があるのではないかと思っています。医療は医療、年金は年金というふうなやり方、あるいは税は税だというようなやり方がもうあまり将来に向けて有効な施策を打ち出せない原因になっていると考えております。

委員

ありがとうございました。ほかにどうぞ。

委員

先生の書いたものは、私、精読させていただきまして、いつも感銘を受けております。

1つ、高山さんのおっしゃっていることは要するに、消費税導入前の議論にさかのぼる、先祖返りするようなところがありまして、消費税を導入するに当たっては高齢化社会の対応というのが大きい名目になっていた。それがいつの間にか直間比率の見直しということのほうを優先課題にした。十何年間。その間に社会保障制度の改革のほうはかなりのスピードと厳格さで進んでしまったと。したがって、負担と給付の問題というのが保険の原理、保険の計算だけでどうなのかなあという段階に今さしかかっている。そこの中での議論だと私は理解しております。したがって、時宜にかなった議論の提案だと私は思っているわけです。

高山さんの書かれていること、あるいはおっしゃっていることの中でもう少しはっきりさせておいてもらったほうがいいとかねがね思っていることを申し上げますと、1つは社会保障というのはどう見るかというその原則論、原理論あたりをもう少し突き詰めてもいいのではないか。つまり、私なりの整理をすれば、社会保障というのはリスクの分散と公的補助と2つの機能があるわけであります。リスクの分散という意味からすると、現役の医療保険、あるいは雇用保険、これはリスクの分散ということでいいだろう。つまり、保険原理を徹底していいだろうと。しかし、高齢者医療等々も、少なくとも75歳以上とかいう、だれでも病気になるそのリスクが極めて高い、そういう世代になると、これはリスクの分散というよりはむしろ社会扶助、公的扶助という考え方を導入してもいいのではないか。したがって、その財源としては税というものをもっと出してもいいのではないかという社会保障論の中から、税か保険かという議論の整理をもう少し強めたほうがもっとわかりやすい議論になると思っております。

それから目的税の議論、おっしゃるとおりだと思います。この話になると、目的税がどうだという話になって、ついでに特別会計どうするのだとか、勘定をどうするのだとか、あるいはスライド制、柔軟性どうするのだとか、必ずその議論が出てくる。私は少しこの分野に消費税の財源を投入するということには賛成ですが、しかし、目的税の議論ばかりに絡まってしまうと問題の本質を見失う。つまり、制度論が本質論を押しのけてしまうようなところがあると。私は高山さんと全く同意見でありまして、そこはプレゼンテーションの問題、説得性の問題だと思います。

もう一点言わせていただくと、第二消費税をめぐる指摘があるわけですが、私は、この言葉の使い方はともかく、第二消費税という言葉がいいのかどうかはともかく、ただし、おっしゃっている意味はおそらく、地方消費税との関連、それから交付税との関連、つまり、消費税収の半分近くが地方の財源に回っていると、地方の財政調整に使われているということが、福祉財源として消費税の役割を高める場合、避けて通れない問題だということで、私はこの言葉の定義とか、あるいは制度はともかくとして、第二消費税的な、今の地方財源との関連を、この問題を本当に議論する場合、避けて通れない問題だと思っております。

委員

手短にお答えいただけますか。

委員

私の問題意識と先生のお話、かなり問題意識を共有しているところが多いと思います。あえて反論することはないと思いますし、つけ加えるところはとりあえずないというふうに整理させていただきます。

委員

わかりました。

じゃ手短によろしく。

委員

手短にいきます。要するに年金保険料というか、社会保険料の負担が大きい、これは確かですけれども、高山さんにお聞きしたいのは、高山案というのはそうすると、年金だけにして、基礎年金の部分は消費税でやると。それ以外の部分は社会保険料でとると、そういう提案なのですか。

委員

基礎年金についても、今の全額、65歳支給の場合だと1人月額6万7,000円ですが、それを全く全部するかどうかについてはもっと議論しなければいけない。要するに、基礎年金全体を税で賄うかどうかということは大いに議論しなければいけないと思っているのですね。そもそも3分の1に合理的な説明はなかったわけです。2分の1に引き上げることになっていますが、これもなぜ2分の1かという説明はだれもしなかったわけですね。年金給付の中で税を投入すべき部分というのはどういうものかという議論をした上で私は税でやるべきであって、今の基礎年金全部を税でやれというふうなことを積極的に主張するつもりはない。むしろそこのところの議論が足りないということを申し上げているわけです。あとは、所得比例のものについては賃金税的なものでいいと考えているということです。

委員

私が思う限り最大問題は、結局、どういう理由にせよ、国民が今、税、社会保険の負担感ということでいえば、基礎年金でとられようが、消費比例でとられようが、とにかく社会保険料部分が大きいわけですよね。だから、そこの部分をどういうふうに改革して、そして、どういう形にせよ、ベイシックなものを基礎年金とすれば、基礎年金部分をある意味で、消費税でとろうと、賃金税でとろうと、そこがセトルされれば本質的な問題ではない。だから、その意味では税制のマターではないと思うのですけれども、そもそもの問題はやはり、これから30~40%に向かっていく保険料を、負担を払えるか払えないかということをセトルしない限りは、ある税をどの支出に対応させるかとかいう、何か問題の本質に迫れないのではないかという気がするのです。

委員

その点はどうですか。

委員

結果的に将来どうなるかは給付をどういうふうにするかにかかわっているわけですね。私は基礎年金給付も見直しの対象だと思いますし、ここの読売に書いた記事はまさに基礎年金給付の3分の2を2階に格上げしてしまうという案です。そうすると2階全体をまた組みかえる話が当然出てくるわけですね。ですから、将来どこまで保険料を上げていくかというのは給付をどうするかという議論と一体なわけです。ですから、今の制度のままでいくとこうなりますよというシナリオが書いてあるわけですけれども、そこにみんなが賛成しているわけではないわけですね。そこの議論をしない限り、先生のおっしゃった問題をクリアーできないのではないかと思ってます。

委員

簡単に言います。1つは消費税のシステムですけれども、今後増税になるとは思いますけれども、そういった改正のときに、要するに不公平感というのが非常に国民の間にあるわけですから、簡易課税制度とか、そういった導入時に、先ほど委員がおっしゃったように、少しオブラートに包むという形で甘くしている部分というのも今回はきちんとして、極力甘い部分はやめて透明性を確保するということが極めて大事だと思います。そういうふうにしていただきたい。

それから高山先生に1点だけちょっと確認的質問ですけれども、消費税の税率アップのとき、先ほどから論議になっている目的税化ですけれども、これはこれでそういうふうにすれば非常に国民に通りやすい、のみやすいということはまことに確かだと思います。ただ、目的税化すると、言われているように硬直化し、自己増殖し、今からそんなこと考える必要はないかと思いますけれども、道路特定財源などが時代を経てそういう問題になってきていることもあるので、要するに質問は、税率アップの場合に国民にのみやすいためにそうすると、そこの1点にあるわけでしょうか。つまり目的的税でよろしいと、そういうことでしょうか。

委員

基本的にそういう理解で私はオーケーです。

委員

じゃ委員、どうぞ。

委員

高山先生に伺いますが、図6の「年齢階層別の平均所得」というのがあって大変興味を持ったのですが、この96年の数字ですね。今現在、このカーブというのはこれと変わっているというか、大勢としてはこれと似たようなものなのかどうかということをちょっと伺います。

委員

厳密にチェックをしておりませんので確かなことは言えないのですけれども、これはデータは96年に行われた所得再分配調査です。基本的に3年に1回大調査になってまして、その新しいものを調べれば似たり寄ったりの図は書けると思います。構造は変わっていないというふうに思ってますけれども。

委員

じゃ委員どうぞ。

委員

先ほどの理論的な質問について、まだ私は理解ができてない部分があるのですが、その辺のところは置いておくとして、議論を十分すべきだということを繰り返されているのですが、これは高山さんや委員や私なんかの責任かもわかりませんけれども、税源、あるいは保険料の組み合わせがどういう形で世代間の公平や垂直的な公平に対して影響を与えているのだということを解析的な形でやらないと、幾ら議論を繰り返しても、実はもう消費税からずうっとこの問題やっているわけで、そして知識もみんながそれぞれ違うわけで、もうそろそろ年金の専門家としてそういうことを高山先生に期待してもいいのではないかというのが第1点です。

それからもう一つは、基礎年金の部分と比例報酬の部分のところの仕分けの部分が、先ほど委員からも議論が出ましたけれども、ちょっとまだわかりづらい感じがしてまして、年金のこの2つの性格を財源と結びつける議論の一つの流れとして、2階建ての部分のところは民営化をしたらどうだと、こういう考え方もあるわけで、そういう意味での点をもう少しクリアーにお話し願えないかと。

それから3点目はストックの関係ですけれども、このストックの関係というのは、1つは、社会保険料をプールしておくという意味での平準化機能が非常に強調されるわけですけれども、今のように非常に過剰貯蓄のときに、それをプールして、そして利回りが悪いときにリスクを国家全体で負うということが、将来世代、あるいは平準化にとっていいことなのかどうか。ここら辺は議論の分かれるところだろうと。その意味で、そのストックの部分をどう考えるかということ。

それからもう一つは、いずれにしても我々は消費税を入れながらこの問題に対応していくということになれば、そして所得税のところでは累進性を緩和していくということになれば、明らかにこれは世代の中における垂直的な分配が非常に広がっていく形になるわけで、その一方で、つまり、現役世代から非常に大きな巨大なトランスファーが高齢者世代にいきながら、高齢者世代の中で分散が広がっていく。その結果を今度は内需拡大策として贈与税とか相続税で私的な形で割り戻せという議論が実は一方にあるわけですね。こういうことが果たして政策のコンシステンシーからいっていいのかどうかという問題が根っこのところであるのですね。そういうストックの関係についても、今、高山先生、どういうぐあいにお考えなのか、ちょっとご質問させていただきます。

委員

議論よりも解析をという話はおっしゃるとおりだと思います。実は今回も時間があれば最初の6つの図表をもうちょっと所得階層別だとか、年代、世代別だとか、いろいろデータ出そうと思ったのですが、時間の制約でできなかったと。ただ、おっしゃるように、解析が足りないというのはそのとおりだと思います。

それから1階、2階の部分、民営化の話は、年金のプロが世界でいろいろ議論した結果というのはほぼ大体、ある意味ではコンバージしてきたと思うのですけれども、積み立てに変えても、賦課のまま走っても、基本的な経済的な負担についてはあまり変わりがないということだと思うのです。

私は、スウェーデン方式で2階をみなし掛金建て方式に変えて拠出給付の関係を強めるのが今後若い人の理解を得るための有力な方法だと考えておりまして、別に賦課方式のままで2階をということにおいてあまり大きな制度改革における激震を起こさずに、ある意味で国民全体がのみやすい形での制度改革が可能になるというふうに思ってますので、民営化というような選択肢、結果的に給付を減らすわけですから部分民営化と同じだと思うのですけれども、2階全体を民営化するという話をすることによるマイナス面ですね。

現に、今、厚生年金基金という企業年金がありますけれども、解散が相次いでいますし、代行返上が相次いでいるわけです。積立方式にしたからといって、この世の中万々歳になるなんていうのは、一部の理論家が言ってますけれども、経済の現実はそう動いてないわけですね。ですから、民営化論の人たちはそこをもうちょっと説明してほしいと思うのですけれども、残念ながら、その議論はほとんどないということであります。

私は1階と2階、機能が違うというふうに言いたいわけです。1階は、ある意味では老後の生活における基本的な保障をするということでありまして、そこも国によっていろいろ違いがあるわけです。2階部分でたくさん年金給付ある人については1階は減らしていいではないかという議論も含めて、1階の組み方はいっぱいあるわけです。フラットに全員に平等に配らなければいけないというふうな議論は今や世界では、財源の窮迫等あって、だんだん少数派になってきたと思ってます。

ですから、いずれにしても1階は基盤的なものを用意するわけですけれども、それは他にある所得だとか、そういうものをどう考えるかということを十分斟酌する必要がある。2階は、所得の安定機能、従前の現役のときの生活水準を維持するための助けになるような形での機能という話だと思うのですね。それは1階の年金給付とは全然機能が違うということだと思うのです。そこの部分については、世界の主要国、全くみんな同じ体制をとっているというふうに私は思ってます。

それから3点目、ストックの話は極めて難しいと思います。今は確かに公的年金、積立金で、赤字に来年から転落しますのでほとんど増やせない状況ですが、百数十兆円の積立金を持っているわけです。これをどうやって運用するかということですが、企業年金の積立金を含めて、積立金はうまく運用できてないのですね。そうした中で、ここにそんなに何か将来期待かけることが本当にできるのかどうかということについては意見が分かれると思いますね。私は、今負担増を、社会保険料を上げて積立金をたくさん持つことの意味は、少なくともあまり有効でないというふうに思っているということです。

委員

じゃ委員が最後でよろしいですね。

委員

今の点で、民営化をするという考え方は、もちろんマネジメントの問題含めてもあるのですけれども、大きな違いは、確定の給付から確定の拠出に持っていくという意味合いを民営化は非常に強く出しているわけですね。そこのメリットは非常に大きいわけで、これをどんぶり勘定にして2階建てに一緒にして全部インデクセーションつけるということになれば、これはもう明らかにもたない状況で、あとは全部税のところで負担しろという話になってこざるを得ないわけですね。そこをどう考えるかということですね。

委員

積立方式の話と掛金建ての話というのは実は次元が全然違うのですよ。民営化論者はそこを混乱して話をしているというのが私の率直な印象なのです。今の日本の企業年金はほとんど給付建てです。掛金建てではないのです。民営化してもほとんど給付建てでやっているのですよ、実際は。掛金建てにするのだったら、民営化ではなくて掛金建てにしろと言うべきなのです。

じゃ公的年金のほうで掛金建てできないかというと、できるということになったわけです。スウェーデンは現にやってます。ポーランドやってます。ラトビアやってます。イタリアもやってます。公的年金のほうで給付建てではなくて掛金建てでやっているのですよ。そうすると、民営化論って何だということになるわけです。公的年金だって掛金建てできるではないかということですね。民営化して積み立てに変えたらうまくいくかというと、うまくいってない経営は五万と今日本にあるわけです。そうすると、一体民営化とは何かということが今問われている。そこのところを民営化論者は説明しなければいけないと。

委員

いろいろあるかもしれませんが、じゃ委員、最後に簡単に。

委員

年金制度の話は参加する資格がないから黙ってますけれども、とどのつまり、税調として消費税をどうするかという話が主たる責任で、我々、前回入れたときに、あの激烈なる反消費税ムードの中で随分と甘いことをやったのですよね。しかし、それは随分たたかれたですよ。僕はそのときに、いやいや、入れることが目的なので、内容について欠点があることはわかっているというふうに言ったつもりなのですね。今しかし、これから何年先かタイミングを選びながらやるのだけれども、税率を動かすということになってくると、この甘やかしたことがもう大変な障害になったわけですね。入れるときには有効だったのですよ。これを随分手直ししたけれども、今の状態だったらとても国民の納得を得ることはできないと思うのですね。税率引上げを課題にするならば。

それで、委員がさっきちょっとおっしゃっていたけれども、とりあえずは非常にクリアーカットに問題を提起する必要が僕はあると思うの です。あいまいではなくて、今回。税率を上げる前段階の話だけれどもね。だから、簡易課税制度についても、それから免税点制度についても、いろんな議論があって、すでに事務当局の考え方なんていうのは新聞に出ているような話で、それをなでることもないけれども、基本的には似たような発想なのですよ、私も。これを税調として、年金制度論とちょっと別にして、このことについてかなり、あいまいではなくて明快なことを言う必要がある。それをしっかりやっておかなければ、税率論議なんかに絶対入れない。

そのときに、さっき委員がおっしゃった益税論というのがあるのですよ。これ、悩ましい話ですわ。委員の言ったこともよくわかるけれども、世間では、マスコミを含めて、政治家も含めて、益税論というのはものすごい障害なのですわ。現実問題としてね。委員の割り切り方もそうだと思うのだけれども、僕はやはりここのところについて一応の説明ができるということも、政治的な課題として見れば大切なことだと思うのですね。

だから、この議論を全部排除は、委員のを排除しているわけでも何でもないけれども、そこのところを少し気を使いながら、簡易課税制度と免税点制度についてしっかりとした改革案、改善案を出してこれをやっておけば、いつ何時、政治的な条件が整ったときに税率引上げ論に入れるという状況に今度は間違いなくしておく必要があるのですね。税調としては。それだけを申し上げておきたい。

委員

今、委員や委員のご意見、最後、総括的なまとめをしていただきまして、きょうの一種のコンクルージョン・リマークスになってますけれども、何かご反対なり、ちょっとそういう方向で言われると危ないよという方向でありますか。よろしゅうございますか。次は、休憩後、もしくは時間があればまたやりましょうか。

委員、何か言いたそうな顔しているけれども、ありますか。よろしいですか。

委員

一言いいですか。

委員

じゃ一言どうぞ。

委員

益税等々の問題はきっちりするというのは賛成ですが、一言、やはり事業者、納税者の協力というのも、この税の執行には欠かせないと。その点は留意しておくべきだと。そこだけです。

委員

揺り戻しが来たわけですな。

じゃ、2時間もたちましたので、5分ほど休みたいと思います。高山先生にはご退席いただきますが、どうもお忙しいところをいろいろ貴重なご意見をありがとうございました。

じゃ5分ほど休みますので、3時7分ぐらいに帰ってきてください。

(暫時休憩)

委員

では再開いたします。

後半の時間で、納税環境の整備の問題と租税特別措置等の議論、2つ残っておりますので、1時間でうまく処理したいと思ってます。

冒頭、納税環境の整備につきまして議論を始める前に、谷口副大臣のほうから、この間も公示制度につきましてご発言ございましたが、もう一回、まとめる意味でコメントをお願いします。

事務局

その前に1点だけ、先ほどの消費税の関係で、徴収という面で大変滞納が増えておるといったことがございまして、企業が負担するのは預かり消費税を払うということでございますから、本来、預かって、それを納付するということですが、これをいわば運転資金に使ってしまうと。年一遍納付といったときにもう大変な金額になってしまうという観点もあるので、例えば毎月納付といったようなことも含めて検討する必要があると。これは塩川大臣もそういうふうにおっしゃっておるわけでございまして、そういう観点でもまた議論いただきたいと思います。

それで、今会長のほうからおっしゃっていただいたことでございますが、公示制度は従来から政府税調でも議論されておるわけでございますが、昭和24年にシャウプ勧告がございまして、25年に、第三者通報制度とともに実施されたものでございまして、これは所得税、法人税、資産税、本法に入っておるわけでございます。要するに、特に顕著なのは所得税でございますけれども、所得番付と言われるようなものがあって、大体高額納税者の方は載せられると。所得税でいきますと8万人程度がその対象になっていらっしゃるようでございますけれども、一般的にその番付の高い方が公示をされるといったことについて、どうも痛みを感じてらっしゃるというケースが多いようでございます。

このような高額納税者に対して痛みを感じさせるといった理由をどこに求めることができるのかというようなことでございまして、いわばこの経済の牽引役たる納税者のグループでございますから、このような方たちをいわば、総理がおっしゃっておる努力が報われる社会といったようなことを考えますと、むしろこういう制度をもう一度見直したほうがいいのではないかと。また実態的に考えますと、少額の納税を行い、その後修正申告を行うといって、納税者公示制度を免れるという潜脱行為がいわば黙認されておるという状況もあるわけでございます。

そういう観点から、まさに税制の抜本的な議論の中で、定性的な大変重要な問題だと。この法人税の本法でございますから、この改正にはかなりの努力が要るわけでございますけれども、このような公示制度、諸外国では行われておらないようなこの公示制度について、ぜひご議論をお願い申し上げたいということでございます。

委員

ありがとうございました。じゃ後ほどの議論にも絡ませまして、皆さんのご意見を賜りたいと思います。

それでは、あと納税環境整備につきまして、事務局から、そしてまた、わざわざおいでいただきました国税庁次長からおのおのご説明いただきたいと思います。

じゃお願いいたします。

事務局

私からは、公示制度の概要についてご説明させていただきます。今ほど副大臣からお話しございましたので、それに尽きておりますけれども、議論の前提としまして、資料をちょっと確認させていただきたいと思います。

お手元の資料で「説明資料(公示制度関係)」基礎小13-7というものがございます。数枚の薄いものでございますが、制度の確認だけさせていただきます。

1ページに「公示制度一覧」というものがございます。公示制度は所得税、法人税、相続、贈与それぞれございます。特に所得税でございますが、一番左の欄にございますように、所得税本法の中にございますし、公示要件が税額1,000万円超、公示事項が氏名、住所、その税額ということでございます。公示の期間は翌年の5月16日から5月いっぱいということになっておりますし、税務署の掲示場に公示されると。その対象になるものは3月31日までに提出されました申告書というものでございます。法人税、相続、贈与税にもそれぞれございます。

2ページにまいりまして、その対象の限度額の推移でございますが、所得税のところで見ていただきますと、25年度以来たびたび改定されてございまして、左下の昭和59年度のときに、所得1,000万超から税額1,000万超というふうに大きな改正が行われております。ここで税額をたくさん納めている方ということの公示対象になりまして、高額納税者に対する顕彰の意味を含ませたということでございます。

ちなみに、税額1,000万超というのは、当時の税制で大体、給与所得で見ますと3,000万ぐらいの収入の方、現在は、減税がございましたので、4,000万円ぐらいの収入の方が税額1,000万というような水準でございます。

3ページにまいりまして、大体どのぐらいの方が公示されているかということでございます。谷口副大臣のお話にもございましたが、現在、約8万人ぐらいが公示の対象でございます。小さな表で恐縮でございますが、一番下に8万という数字がございます。大体、過去から数万、あるいは十数万でございます。

所得の伸びに伴いまして公示対象が増えますと、所得の水準を改定いたしまして現在に至っておると。昭和57、58のところで大きな改 正がございましたので、激減いたしまして、その後、大体申告納税者の1%ぐらいという経緯がございます。このほかに、もちろん年末調整で済んでいるサラリーマンについてはこの数字の外側にございますので、それは公示の対象ではございません。

4ページ、外国の制度の比較でございます。もともと日本では、昭和22年に新しく申告納税の税制になりましたときに、申告書の閲覧とか、第三者の通報制度が入りましたが、その後、シャウプ勧告で、谷口副大臣のご指摘にございますように、公示制度に変わったということでございます。

諸外国を見ますと、アメリカ、イギリスは現在まだ第三者通報で報奨を与えることができるという制度でございます。ドイツは、その公示及び第三者通報という制度がない。フランスは公示制度があるという状況でございます。

5ページは、昭和58年に税額の公示に変えるというときに税調からいただきました答申でございます。

6ページは、特段のものではございませんが、こういう氏名、住所、所得税の額という用紙にそれぞれの氏名なり金額が書かれましたものが税務署の入り口に張られるというようなことでございますので、これは単なる形式だけをご覧いただいたものでございます。

私からは以上でございます。

委員

ありがとうございました。

では、お願いします。

事務局

資料は基礎小13-8というのを一応用意させていただいております。本来でございますれば、私どもの税務行政全般につきまして、国税庁、どういう取り組みを行っているのか、あるいはどういう課題を抱えているのかということをご説明させていただくべきところではございますが、本日いただいているお時間、10分程度でございますので、納税環境の整備に重点を置き、かつ、要点のみをお話しさせていただきたいと存じます。

私ども、税務執行のお話をさせていただく前提といたしまして、最近の執行を取り巻く環境の特徴を簡単に頭に入れていただければと思います。私ども、3Kと呼んでおります。KはアルファベットのKでございますが、広域化、国際化、高度情報化ということでございまして、こういった環境変化のもとで、私どもの任務でございます、適正・公平な課税の実現を追い求めているということでございます。この税務執行におきます適正化・公平化の観点からご留意願いたいことを、若干の具体例も交えましてご説明させていただきたいと存じます。

まず第1に、資料・情報制度の充実が挙げられます。この資料・情報制度は、納税者の申告が適正なものであるかどうかを確認するための重要な手がかりとなるものでございまして、正確な事実認定の基礎となるものでございます。資料・情報制度は適正・公平な課税を実現する上で不可欠な役割を担っておりますが、金融取引を初めといたしまして、経済取引の複雑化・多様化、さらには、今申し上げました3K、そういったものが進展している状況のもとで、今後一層の資料・情報制度の充実を図る必要があると考えております。

例えば今ご覧いただいておりますお手元の資料の7ページにございますように、現在、47種類の法定調書がございますけれども、これを例えば金融取引などに関連してみますと、大まかには、次の8ページにございますイメージの図のようになります。

この8ページのAの部分につきましては、個人の預金利子等が原則、ご案内のように、源泉分離課税となっておりますので、法定調書の提出義務は停止されております。また、この8ページのDの部分でございますが、源泉徴収もされておらず、法定調書の提出義務もございません。また、利子所得等の課税という観点とは別に、金融資産には脱漏所得が含まれている場合もございまして、このような金融資産を把握することは非常に重要であると認識しております。多様化・複雑化しております金融取引につきましては、その課税のあり方が重要でございますとともに、把握が常に重要であると認識しております。

また、資料はちょっと用意しておりませんが、ご案内のように、最近のインターネットの普及等によりまして、電子商取引が急速に進展しておりますけれども、インターネット上の商取引におきましては、取引を行っている者に関する情報が非常に不十分でございますことから、だれがどこで取引を行っているか把握がそもそも困難であります上に、電子的な取引情報等はデータの消去が非常に容易でございますので、その把握や確認が困難であると、こういう状況にございます。

こうした状況にかんがみまして、脱漏所得が含まれている可能性が高い金融資産の保有者に関する資料・情報、たとえていいますと電子商取引を行っている事業者を特定できる情報等の充実が必要であると考えております。

いずれにしても資料・情報は不可欠でございますが、これに関連して、一般的な資料収集目的のための協力制度や、官公署、官庁、お役所ですね、等の協力制度の強化の必要をお願いしたいと存じております。

なお、この点につきましては、さきの12年7月のいわゆる中期答申においてもご指摘いただいているところでございますが、なお一層よろしくお願いしたいと存じます。

2つ目は、お手元の最後のページ、10ページをご覧いただきたいと存じますが、租税条約に基づく情報交換のための質問検査権ということでございまして、企業活動、ご案内のように、国際化の進展は著しく、我が国の企業に対する適正・公平な課税を確保する観点から、国外の課税情報の重要性が一層増しているところでございます。

こうした中で、国税庁は租税条約に基づきまして、相手国との間で課税上の情報交換を行っており、これが国際取引調査のための不可欠な手段として積極的に活用させていただいているところでございます。国際的にも、同様の認識のもと、いわゆる自国の課税上の利益がない場合にも、課税当局が調査権限を行使して情報収集を行い、そして得られた情報を他の国に提供するなど、情報交換の範囲を拡充する動きが見られますが、我が国の場合には国内法制上の手当てがなされておりません。したがって、こうした情報収集がなかなかできない状態にございます。

例えば情報交換制度は相互主義が原則となっておりまして、現実に我が国が情報交換制度を利用して他国から情報を入手しようとした場合に、相手国から、そもそも日本は相手国に対して同様の情報提供が行えないと。だから、そういうことはできませんということで断わられるという例も生じております。

今後、我が国が適正・公平な課税の実現のために情報交換制度を十分に活用していく前提として、条約相手国の要請に基づきまして、情報収集のための質問検査権を行使して情報収集が行えるよう、国内法の改正も含めた体制の整備が必要であると、かように考えている次第でございます。

それから3つ目は、多様な事業体に対する課税ということでございますが、企業活動の国際化がこれも急速に進展しつつある現在、我が国の法人、内国法人が海外投資を行う、逆に外資系企業による我が国への投資、対内投資が行われる、そういうのは増加の傾向にございます。企業の中にはいわゆるリミテッド・ライアビリティ・カンパニー、あるいはリミテッド・パートナーシップ等、日本で言うところの会社以外の多様な事業体を用いて国際間取引を行うものが増えております。

その原因としていろいろ言われておりますが、そういった事業体がリスク分散、あるいは機動的な経営などの点で、会社形式よりもすぐれているといったこと、それから租税負担上、会社に比べて有利な場合があること等が挙げられているところでございますけれども、こうした多様な事業体につきましては、その組織の実態が不明である場合が多いことから、課税すべき主体を特定する、つまり、その事業体自体に法人税を課すべきなのか、あるいはその事業体に出資している者、つまりパートナー等に対して課税すべきなのか、それとも、そもそもそういったように截然と2つに分かれるのか、途中でいわば滞留しているものがあるのか、それに課税すべきなのかという問題。さらには、そもそも事業実態の把握、構成員の特定等が困難であるという問題がございます。このため、まずは、これらの多様な事業体の実態把握のための方策が必要であると考えておりまして、多様な事業体にその実態を明らかにさせる情報申告制度の導入が必要ではないかと思っております。

なお、これもご案内のように、現行法人税法は基本的には法人格を有するものに対して法人税を課税するということにしておりますが、そもそもこのような法人課税のあり方について、さっき申し上げましたように、滞留しているものに対する課税、最近では特定信託に対する課税制度を導入していただいたわけでありますけれども、そういったこともご検討いただく必要があるのではないかと考えている次第でございます。

それから納税環境という整備から申し上げますと、罰則、あるいは附帯税のあり方についても検討の余地があるのではないかと思っております。納税環境の整備、もう言わずもがなでありますけれども、こういった、先ほどから出ております公示制度も含めまして、制度上のいろいろな見直しだけではなく、国民の納税意識、そして私ども税務を執行しております職員の意識改革、さらには租税教育の充実を図るということが必要ではないかと感じております。

それから税の基本原則として3つ言われておりますが、その中の簡素化というのについて若干触れさせていただきたいと思います。執行の面でいいますと簡素化、あるいは、技術的でありますが、明確化ということであろうかと思います。

これも、もう今さら申し上げるまでもないですが、例えばお手元の資料の5ページをご覧いただきますと、例の各種控除が並んでおります。非常に複雑なものになっておりまして、納税者、源泉徴収義務者、さらには、私ども税務当局のおのおのにとって大きな事務負担となっているわけでありますが、今後あるべき税制の構築の観点から、簡素でわかりやすい、明確である、そういうものにしていただければと感じております。

それからもう一点は、さっき高度情報化ということを申し上げましたが、政府として、15年度中を目途に電子政府の実現ということで、納税で申し上げますと、そもそもいろいろなものの申請を電子的に行う。それから申告も電子的に行う、納税も電子的に行うと、こういったことで今作業を鋭意進めているわけでありますけれども、その際、簡素なシステムでないと、申請、申告自体は電子的にできるかもわかりませんが、それに山ほど添付書類が必要であるということになりますと、添付書類については別途、例えば郵送していただかなければならないということになりかねませんので、電子申請、申告、その実を図るためには、それなりの制度でないとなかなか執行のほうはきれいにいかないのではないかと思いますので、ご留意願えればと存じます。

最後に1ページをちょっとご覧いただきたいわけでございますが、これは国税庁、私どもが申告納税制度のもとで税務行政を行っていくに際しまして、いかにして納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現していくかということが最も重要な点でございまして、これを国税庁の使命と呼んでおります。この使命を達成するために、国税庁、そこにございますように、3つの任務を透明性と効率性に配意しつつ遂行することとしております。

例えば内国税の適正かつ公平な賦課、徴収の実現、これは最大の任務だというふうにしておりますが、そこに対しましては、「適正申告の実現に努めるとともに、申告が適正でないと認められる納税者に対しては的確な調査・指導を実施することにより誤りを確実に是正する」と、ちょっとかたい言葉で書いてございますけれども、もう少しわかりやすく申し上げますと、一般の納税者には親切丁寧に、悪質な納税者に対しては断固厳しくということでございます。そういったことを定めているわけでございます。

2ページに、「国税庁定員の推移」を示してございます。平成元年度前後から、消費税の導入等に伴いまして、そういったことがございまして、9年度ぐらいまでは頭数、定員増が認められているところでございますが、近年は中央省庁等改革基本法等に基づく政府全体の定員削減、これは今後10年間に少なくとも10%の削減、新規増員の抑制等によって25%純減すると、こういったこともございまして、徐々に定員が減少しておりまして、平成14年度の定員は5万6,466人となっております。

なお、ご参考までに資料の3ページに定員の内訳をお示ししてございます。ざくっと申し上げますと、1万7,000人で個人課税の調査、同じく1万7,000人ぐらいで法人課税の調査を行っているということでございます。

ちなみに、今年の確定申告で申し上げますと、約2,000万枚の確定申告の提出がございました。そのうち1,000万枚が還付の申告でございます。700万件が、私ども、テクニカルに有税申告と申しておりますけれども、何らかの有所得、有所得と言っておりますが、要するに税を納めていただく申告、残りの300万がその他ということでございます。そういったことを1万7,000人前後で行っているということであります。

それから4ページには予算の推移を示しております。若干出入りございますけれども、7,000億程度で推移しておりまして、8割が人件費でございまして、残りの20%でいろいろな、KSKシステムといった運営費、あるいは調査旅費等を賄っているということでございます。

申し上げましたように、私ども国税庁の使命を達成いたしますために、効率性にも最大限配慮して任務を遂行してきているわけでございます。3K等の、経済社会の変化に的確かつ柔軟に対応して、また納税者のニーズにもおこたえできるように、税務行政の組織、税務行政について不断に見直し、改善を行っているところでございます。

ただ、幾ら効率化に努力いたしましても、大幅な事務量の増加を伴う制度改正が行われる場合には、当然のことではございますが、所要の定員、予算措置など必要となることにもご留意いただければ幸いでございますので、よろしくお願いいたします。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

それでは、若干時間をとりまして、もう10分ぐらいしかないですが、今のご説明について、どうぞ。

委員

すみません。わざわざ説明を省いていただいた6ページのところですけれども、前にも僕は申し上げておりましたが、公益法人の収益事業の問題です。これは、ここに書いてありますように、2番のところですけれども、平成14年の3月29日閣議決定ありまして、公益法人制度について、関連制度、つまり、NPOとか中間法人とか公益信託、いろいろあって、それを抜本的かつ体系的見直しを行うということで、内閣官房行革推進事務局の公益法人室で今有識者ヒアリングを始めまして、それはそれでいいのですが、そういう担当者が申しますには、やはり政府税調等もある程度絡んで話を進めていったほうがいいのではないかということがありまして、僕が前から主張しておりますように、この収益事業の範囲の拡大というか、33から34、35、36と増やしていくようなこととか、それからもう少し公益法人に対するチェックを厳しくしていただくとか、そういうことを考えて、6月に整理するときに何か入れていただければと思うのですね。そうすると、少しこの公益法人改革も効き目があると思うのです。よろしくお願いします。

委員

直接のご質問ということではありませんね。ご意見ですね。

では、委員、どうぞ。

委員

その6ページに書かれている2番目の●印の「多額の利益を生じているにもかかわらず非収益事業であるため課税対象とならないケース」というのはどういうケースがあったのでしょうか。それと、どういうふうに対処しておられるか、具体例がありましたら教えていただきたいと思います。

事務局

そもそも現場で起きていることを申し上げますと、33の事業自体が、ここにこう書いてありますけれども、その事業に該当するかどうかというのでトラブルが1つと、それから、今いろいろな仕事といいますか、職業の中身が出てますので、これに該当するのかどうか。それから明らかに該当しない、しかし、よくもうかっているというようなものが出てきて、ああいうところはもうかっているのになぜ課税がされないのかということで出ているということでございます。

具体的に申し上げますと、技芸の教授というのがございます。限定列挙でございまして、ダンス、民謡、絵画、書道の教授を行うと。これは収益事業になっているわけですが、一方で、簿記、英会話、コンピュータ、水泳、こういったところの教授を行う事業は列挙されておりませんので、収益事業には該当しないということになります。

したがって、これは私が申し上げるのは何ですけれども、かつて物品税のときに、消費税、その結果移ったわけでありますが、何を課税物品かということで、Aは課税対象なのに、同じようなものでBは似て非なるものということで課税にならないとおかしいではないかという議論と同じようなことがここでも起きているということでございます。

あと、具体的に今たまたま技芸の教授でお話しいたしましたけれども、それ以外の業種でも同じようなものが出ております。

委員

これは時々見直すのですか。10年前の話ではないでしょう?

事務局

最近ほとんど見直されてないという。

委員

これは20年ぐらい見直してないのですよ。全然。

委員

なんかかなりいいかげんなことあるね。

事務局

いや、執行はいいかげんではございませんので。

委員

わかりました。どうぞほかに。

委員

先ほどの説明に関連して、5ページに「所得控除の概要」という一覧表をお示しになって、気になる発言、要するに複雑だと。執行上いろいろ問題あるというようなことですか。つまり、要するに言いたいことは、この程度で複雑だというのは、国税庁の職員はちゃんと勉強しているのですか。お仕事なのだから、この程度はやはり覚えてもらわんとね(笑)。それで複雑だなんていうことをここで言うなんていうのは、次長としてどうなのですか。

事務局

さっき私申し上げましたけれども、非常に数が多くて、かつ、控除額等がさまざまであるということで、当然、所得を担当している担当者は理解はしております。ただ、さっき言いましたように、納税者、源泉徴収義務者と、結局、所得の担当者ではなしに、法人の担当者であるとか、間接税の担当者、一般の人は税務署の職員だと全部税法を知っているというふうに認識されているけれども、大蔵省の人間は予算も税制も金融も全部わかっているというふうに質問されるのと同じで、やはり専門のところはもちろん専門ですからそんなものは右から左へ出てきますけれども、それ以外のものが出てくるということで、できるだけ簡素で明確なものにしていただいたほうが、そもそも納税者のほうで事務負担にならない。源泉徴収義務者もならない。それから、さっき申し上げましたように、電子申告のときにもストレートに結びつくということで、あえてここは「簡素化・明確化」のところで例に入れさせていただいているということでございます。

委員

公示制度の話、いいですか。

委員

どうぞ。

委員

先ほど公示制度の話があったのですが、これは最近というか、大分前から全国に金持ちの名簿が回ったり、金儲けで、それで広告を要求されたり、暴力団に旗立てて家に来られたとか、献金を要求されたとか、そういう話をよく聞くのですよね。ですから、昔は納税者というのは立派な人だと言っていたのだけれども、今出てくると、週刊誌、こっちもマスコミで言いづらいのだけれども、何かのぞき見的に、何か悪いことしてやったのではないかというような感じが非常にするのですよね。メディアも勝手で、透明とか公開性と言いながらプライバシー保護って、また裂きの話をしているのだよね。ここはやはり、納税者の権利というのは、プライバシーの保護というのはあるので、時代の方向というのは、透明性、公開性も必要だけれども、やはりある程度プライバシーの保護というのは必要ではないかという感じが私自身はしているのですけどね。

それからもう一つの問題は、これに出てこない人というのは節税会社なんかつくっている人だっているわけですよね。だから、これは時代的にちょっとおくれた話ではないかなという感じは私自身はしております。

それからもう一つ、電子申告の話、ついでにちょっと質問で、後でも結構ですが、OECDでいろいろつくって、サーバーだとか、パーマネント・エスタブリシュメント、いろいろやってますが、これは最近は進展しているのでしょうか。

事務局

後でまとめて、またご説明をちょっとしたいと思いますので。

委員

重要なので、いずれお願いいたします。

じゃ委員。

委員

最近やった税の対話集会でも、すでにご存じだと思いますけれども、やはり税の執行に関する不満がかなりあるという印象を受けたのですね。さっきおっしゃったように、3Kの進展で、税の執行も当然変わらざるを得ないと思うわけです。

具体的にお話ししますと、裁量権あるのはわかるのですが、税務署が変わると判断が変わるとか、担当者が変わるとまた判断が変わるとか、そういうことがよく言われますが、この点一体どう考えているのかということですね。

それと、国際化が急速に進展していると。そういう状況の中で外国企業の投資も増えると思うのですが、外国企業が日本に進出する場合に、一体どこに税金がかかってくるのか、土壇場になるまでわからないという不満もあるようですね。これはタックスリスクではないのかと。これはもっと本当に、そういうタックスリスクがあるとすれば、そういうのをやはり熟慮していく必要があるだろうと思いますが、その点もどう考えているのか。

それから租税教育の話、これも対話集会でよく出ましたね。非常にまじめに考えている方々は、租税教育、非常に今不徹底であるという不満が多いですよね。津の集会では、税理士さんから出た意見では、税理士の協力を仰ぐべきではないかと、我々はいつでも協力するのだということをおっしゃってましたね。こういうご意見に対してはどうお考えなのか。

以上3点です。

事務局

まず一番最初の執行の裁量云々でございますけれども、まさに委員ご指摘のように、北海道で行っていることと九州で行っていることとの間に違いがある、あるいは同じ北海道の中でも署によって違いがある、同じ署の中でも人によって違いがあるということは、私はあってはならないことだと思っております。税法ですので、税法自体が非常に精緻に規定されておりますけれども、それでもどうしても環境の変化等に伴って解釈の余地が出てくると。先ほど申し上げましたように、区々の取り扱いというのは極めてまずいと、避けなければいけないというのが私どもの認識でございますので、そこで通達をつくっているわけでございます。そういったことで、全国どこででも、あるいは時代にかかわらずということでやっているわけでございまして、基本的には区々の取り扱いにならないように、これは日ごろ努力しているところでございます。

なお、それが百点満点かというと、そこは、おそらくそういうご意見が出るということはそうではないのではないかと思って、これはなお今後の努力を積み重ねていきたいと思っております。

それからタックスリスクでございますけれども、この点につきましては、いわば書類による事前相談的なもので一般的に適用できるものについてはできるだけレターで回答するといった方向で行っております。そういう努力もして、スタートしたばかりですので、どこまでそれを一般的にできるかどうか。個別の問題について、個別になればなるほどなかなか、非常に矛盾したことを申し上げるかわかりませんけれども、レターで出すというのはなかなかしんどいかなという気がしますが、ただ、一般的に使えるものについてはレターで開示するということをスタートしております。

それから租税教育につきまして、税理士さんのほうでそういうご意見、非常にありがたいと思っておりますので、私ども、税務署の職員が例えば小学校、中学校等へ出かけて職員自体が行っているわけで、税理士さんでそういうご意見があるのであれば、これは税理士会とも話をしてタイアップしてできればと思っております。ウェルカムでございます。

委員

副大臣が提起された公示制度ですけれども、現実には、出ると、スポーツ紙が中心だと思うけれども、一般紙もそうかな、作家ベストテン、スポーツ選手ベストテン、それから地主がどうだとか、株主がどうだとか、株屋さんがどうだとか、名前が出て、これは一般読者の好奇心の対象なのですね。ただしかし、あまりレベルの高い好奇心でもないのだな。真実を追求しろなんていう話ではなくて、あいつがあんなものかという話でしょう。で、消化されているわけだ。大体それでおしまいですよ。

ちょうど次長が見えているのでお聞きしたいのだけれども、さっき説明があったけれども、第三者通報制度というのがあって、これでうまく当たればごほうびが出るという、戦後混乱期としては大いにあり得た話だという気がするのだね。今国税庁のこの組織力をもってして、調査能力をもってして、これがないと公平な徴税ができないということを本気になっておっしゃるのなら、これもまた一つの手段で残す値打ちがひょっとしてあるかもしれないなという気がしないでもないけれども、国税庁はこんなのに頼っているわけではないだろうと。もっともっと別のソースからたくさんいろいろな情報を持っていると思うから、それなら、無理やり残すこともないかなと。

こういうことを言ったことがあるのですよ。所得基準から納税額基準に変えたときに、何で納税額基準にするんだと議論やったときに、たしかこの場だったと思うけれども、いや、税金をたくさん納めている人は顕彰に値する、名前を公示してみんなに敬ってもらいたいという、半分こじつけだけれども、そんな議論も出たことを覚えているのです。

どっちにしても、プライバシーがやかましい世の中に、関連する法案がどうでこうでと今国会で問題になっている最中に、あまり積極的に、ぜひ残すべきだということを言うのは僕自身はばかるわけ。だから、次長さんにもう一回聞くけれども、あなたのところでこれがないと本当に困るかなと。ちょっと教えてもらいたい。

委員

つけ加えて言えば、戦前は都道府県で各1人ずつ貴族院議員にしてもらったのだよね。高額納税者はね。納めたから名誉があるのだけれども、納めたらバッシングになってしまうというのではおかしいのだよな。

委員

今のに何かありますか。

事務局

なかなか難しいご質問。難しいと申し上げる意味は、これがないとできないかと、マルかバツかと、こういうことで答えろとおっしゃれば、それは、要するにできないとは言えない、そんなことはないということであろうかと思います。もちろんこれによって一定の制度自体、ワークはしているとは思いますけれども、つまり、これに基づいて間接情報が入ってきているのもあろうかと私は思いますけれども、これがないからといって組織がワークしないということ、それはマルかバツかと言われればないということは言えようかと思います。

委員

難しい答弁だな。わかりました(笑)。

じゃどうぞ。

委員

この場でもしょっちゅう議論されている問題の一つに給与所得控除、これを何とかしなければいかん時期に来ているという議論でございます。その中の一つの議論として、例えば今の給与所得控除を半分にして、概算控除を認めつつ実額控除も認める、そういうふうな議論があるわけでございます。それからもう一つ、相続税と贈与税の関係について、これは一本化したらどうだと。シャウプ勧告のころは一本化されておりましたけれども、それを累積していくことはとても不可能だということで今みたいになったのですけれども、例えば10年、20年とか、60歳以降とか、こういった範囲で通算をして贈与税を相続税の中に一本化するという議論もあるわけでございますが、そうした場合に一体税務署はもつだろうかという議論があります。

しかし、先ほどのお話ですと、毎年2,000万人の方が申告される、1,000万人が還付されると。サラリーマンは4,000万人いるわけですが、あまり増えないのか、いや、ものすごく増えてしまって、税務署はもうてんてこまいだ、とてもさばき切れないという感じになるのか、そこら辺につきまして、執行面から何かお感じがあればお伺いしたいと思います。

事務局

まず、控除の見直しによってどれぐらいの見直しがなされるのか、それからそれによってどれぐらいの人になるのかということであろうかと思いますが、今の委員のご指摘が、もし今の頭数のままで、つまり、徐々に数百人ずつ減っている体制で、他方で対象者のほうが増えていくということになれば、それは執行当局としてはやや危機的な状況かなと思いますが、控除の見直しの程度、制度の中身で、かつ、それに対応して人のほうも増えれば対応はできる。当たり前の話でございます。

ただ、今日言って明日というわけにいきませんので、例えばさっき1万人と言いましたけれども、仮に1,000人にしても、それだけの人を一遍に増やして即戦力というのはなかなか難しかろうとは思いますので、ましてや1万人になってくると、それはとてもじゃないけれども実行不可能でございます。要は見直しの制度の中身であろうかと思います。

委員

あと5~6分しかないのですが、ご希望の方、どのぐらいいますか。

じゃその4人か5人で切らしてもらいます。どうぞ。

委員

高額納税者の公示制度について一言だけ。

いろいろ反対意見が強いようですが、私はこれは問題ないし、あっていいのではないかと思います。というのは、このいきさつからいっても、国民が疑心暗鬼にならないように、納めるべき人は納めているのだというのを内外に示すということは意味があるのではないか。それから私の親戚である叔父は、大した高額納税者ではないが、かつて名前が出ており、これによっておれがちゃんと払っているのがわかって、お金使っても世間から指を指されないというようなことを親戚に自慢しておりましたから、これはこれなりに意味があるし、それから寄附が押しかけるとかいうのは別にこれだけを頼りに押しかけるのではなくて、これがなくなったってほかの方法で押しかけるということを含めると、そう目のかたきにする問題ではないのではないかと思います。強いていえば、住所まで示すのはどうかなという気はします。

委員

ご意見として承ることにします。

委員

その公示制度ですけれども、この間週刊誌を見ていたら、かなり全国で上位になる人が毎年出るのを楽しみにしているというのがありまして、そういう人もいることはいるわけで、本人の感じ方の問題というのはかなりあるような気がいたします。

日本の場合、個人の所得なり何なり、あまり知らしめないというのが慣習的に確立しているのですけれども、例えば企業の役員の報酬というのは日本は出さないし、退職金も個人は出さないですね。この間商法の改正があって、株主代表訴訟に絡むあれを年収の2年分にするということで、これが改正で設けられたわけですが、その条件として、報酬が幾らであるかというのを明示するという条件が法律の中についているのですが、運用としては、個人の報酬ではなくて、役員全体の報酬総額という運用でおさまるようですね。

少なくとも上場企業の役員である以上、株主に対して自分の報酬は幾らであるというのを個別に明示するのが義務ではないかと私は思うのですね。株主はもっとそういうことを要求すべきだと思うのだけれども、日本においてはそうなってない。唯一代わり得る機能を果たしているのがこの部分ではないかなという気もするわけです。ですから、この公示制度をやめるのでしたら、少なくとも上場企業の役員は年収を財務諸表の中で公開すると。もう一人、あと国会議員ですね。これは今資産だけですけれども、国会議員には少なくとも国民として年収を公開するという制度を要求したいと思います。ですから、そちらのほうの制度が完備されてきたらやめてもいいと思いますが、今現在はまだ残したほうがいいのではないかというのが今現在の私の考えです。

それから、今度は全然別の話で、非営利法人の話ですけれども、きょう先生がいなくなってしまったのでかわって申し上げますけれども、NPO税制というのを議論して、ようやっとおととしですか、設けたのですが、やはり非常に使い勝手が悪い。あれは導入した当時、私もかなり危惧したのですが、使い勝手が悪くて、全国ではほんの数えるほどだと思うのですね。ですから、これは先生がいつもおっしゃるように、公益法人制度について抜本的かつ体系的な見直しを行うとあるのですが、その中でやはり税の扱い方というのを統一的に考える必要はあると思います。

委員

公示制度の関係ですが、副大臣のご提案を聞いていて改めて思うのは、この国では税金をたくさん払ったからといっていいことないなあということですね。何人か同じようなご意見もあるけれども。私は、例えば日本で税金一番払っている人は勲一等あげてもいいと思うのですよ。日本の叙勲制度というのは、政治家とか官僚とか、税金使うほうが偉くて、税金払っているほうが虐げられている。これはあべこべですわ。

しかし、勲章制度等々の話になるとまた話は広がるので、私はある程度以上の高額納税者、例えばここに公示対象になっているような人はもうメダルとか、1個1万円ぐらいのコストをかけた、造幣局の技術の粋を結集したメダルをつくって、それを差し上げると。紫のふくさに包んで税務署長が自宅にお届けに上がるというぐらい、高額納税者に対する感謝の気持ち、あってもいいと思いますよ。この公示制度をやるやらないは別にして、納税者に対する感謝、顕彰というものをもう少し強めてもいいのではないかと思いますね。

委員

じゃ公示制度は残しておいてもいいわけですね。

委員

だけど、メダルを……。

委員

全く違う観点なので、一言だけですけれども、次長がせっかくいらっしゃっているので、統計のことですけれども、日本で例えば、我々今税調で議論しているのですけれども、議論するときに、私の理解ですが、決定的に欠けているのは、情報の問題で、我々の議論は基本的には国税庁から出ている統計年報書とか集計データでやっているわけですよね。それで、例えば今所得控除を改革したらどうなるか、専業主婦がどうなっているかとか、今いみじくも高額所得者がどうなっているかとか、インプットとして個人データのサンプルを使った実態というのか、そういうのが出てくると議論が非常に現実的になる。

それは別に、僕の知っている限り、アメリカのIRSはそういうデータを、僕も使えればいいのですけれども、研究者にも出しているのですよね。そういうわけで、ポリシーに対するフィードバック、だから、国税庁自身のデータを使ったポリシーへのフィードバックというのもあると、こういうところの議論が具体的になると。意見だけです。

委員

何かありますか。難しいですか。

委員

これも非常に、何を言っているかわからないことになると思いますが、中身次第で、お出しできるものはできるだけお出ししているのが現状。なぜそうかというと、守秘義務の関係で、なかなか出したがらないというか、出せないというのがございます。したがって、どういうデータだろうかによってそこは違ってくると思います。

委員

最後に委員、どうぞ。

委員

今の委員の意見に非常にセカンドしたいのですけれども、これは国税庁の問題だけではなくて、日本の統計全体の問題で、統計審議会が極めてネガティブであるわけですね。しかし、統計審議会自体が次第に今変わりつつあるので、国税統計自体のマイクロデータを全部出せということを委員がおっしゃっているわけでは全くなくて、むしろ非常に特異値みたいなものはきちんとスクリーンアウトして、まさに守秘義務が発生しないような形で統計を加工して、そこまでした上で外に出してくださいということを委員はおっしゃっているわけですね。それはまさに国民に対する透明性とか情報公開とかいう、官庁の責任に対応すると思いますので、ぜひそこは積極的にお考えいただきたいと思います。

税調としてもお願いしましょう。

それでは、時間が過ぎましたので……

委員

最後に一言だけ。ちょっとすみません。

委員

どうぞ。

委員

前半の議事録に入れたほうがいいかもしれないのだけれども、さっき高山先生がお話ししたときに、幾つか確かめてから質問しようと思っていたので、できなかったのですけれども、先ほど消費税の増税の話になって、流れとしてそうなっていきそうな気配があるのだけれども、あまり暗い話になっていくよりも、もう少し考え方変えたらいいかなと思いまして、ちょっと高山先生に確かめたいのですけれども、いわゆる年金の積み立てですけれども、ドイツは1カ月、イギリスは2カ月なのですね。アメリカは1年、カナダは1年ぐらい。日本は5年ですから、200兆円たまっている。

こういうふうな積み立ての意味があるのかどうかということですけれども、ほとんどゼロ金利で、運用なんかできないわけだから、死んだお金がもう10年も積んであって、大体そこにありがたがって特殊法人だの公益法人だのみんな天下るようになっていて、200兆円腐っているのですけれども、まあそれは置きまして、この200兆円で5年分ためる必要もないと思います。

つまり、その200兆円で、例えば年金の支払いというか、我々の支払いをストップするだけでも5年分の減税になりますからね。つまり、5年ためる意味というのは、要するに何十年後に困るからとかいう話だけれども、5年ためる意味はほとんどないと思いますね。だから、今言ったように、ドイツ1カ月、イギリス2カ月だと高山先生おっしゃいましたけれども、アメリカでも1年ぐらいですから、そういうところで、今たまっている200兆円を早く配ってしまえと(笑)。それのほうがよっぽど景気刺激になりますよ。だから実質減税ですよね。だから、消費税を上げる上げるという方向で考えるよりは、そういうふうに考えたほうがいいのではないかと思います。高山先生に幾つか数字を確かめてからしゃべろうと思ったのですけれども、以上であります。

委員

どうも会期末にえらい爆発的な提案が出ましたけれども、一応テイクノートしておきましょう。

租税特別措置等について議論をきょうは時間的制約で省きました。次回に回させていただきます。

次回でありますが、5月14日火曜日、2時から5時まで、また3時間の長丁場になりますが、金融関連税制と相続税、贈与税、そして今日の租特を入れて議論をいたしたいと思います。それからその次、次々回は5月21日火曜日、酒、たばこ、エネルギー関係諸税、国と地方等々の議論をいただく予定になっております。

いよいよ6月に向けての論点整理の最後の段階でありますので、お忙しいとは思いますが、ぜひご出席いただきまして、積極的なご意見を賜りたいと考えております。

5分ほど過ぎましたが、今日はこれで終わりにいたしたいと思います。どうも長い間ありがとうございました。次長、どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治 税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。