第12回基礎問題小委員会 議事録

平成14年4月19日開催

委員

それでは、時間になりましたから、基礎問題小委員会、12回目になりますが、開催しましょう。

今日は、財務省から尾辻副大臣、谷口副大臣も御出席いただいておりますので、適宜また御発言をお願いいたしたいと思います。

今日は、宮島さんから年金課税に関係して、「社会保障と税制」という形でお話しいただくことになっていますが、その前に、若干事務局のほうから御説明があるようなこともあります。最初に、経済財政諮問会議に出された塩川大臣の例の三原則という話の御説明を簡単にいただきたいと思います。

事務局

4月16日の経済財政諮問会議におきまして、『6月のとりまとめに向けた三原則 第10回経済財政諮問会議 塩川議員提出資料』、1枚紙を大臣のほうから提出したものでございます。これは、これまで大臣が国会等の場でもいろいろお話をされて述べられてきたところでございますけれども、経済財政諮問会議でこれから税制等6月のとりまとめに向けた議論が行われていく。財政を預かる大臣のお立場から、議論の基本的枠組み、いわば土俵といったものを与えるということで、整理してお示しされたものでございます。

第1点は、「税制改革は、財政規律の観点から、増減税一体(一定期間内、税収中立)」ということで、財政規律の観点から、仮に減税を先行させるならば、増減税の具体的内容・実施時期などを含め、1つの法律案にこれを盛り込むということで、一体として決める。それから、その期間内として中立ということを言っております。

また、第2点、政策減税を行う場合には、経済活性化のために真に有効なものに限ることとし、その場合にも上記原則による。

第3点、財政のプライマリーバランス回復に向けた取り組みとの整合性を確保する。という点をいわば議論の土俵ということでお示しされたものでございます。

第2点は歳出のほうですが、やはり財政規律の観点から、一層の抑制化と重点化。特に(2)のところでは、15年度の財政運営については、新たな考え方を、いま14年度については30兆円といった原則がございますが、新たな考え方を6月中にとりまとめると。

それから、第3点でございますけれども、民間経済の活性化に向けて、国の施策を成長分野に集中させていくことが必要だということで、望ましい産業構造あるいは研究開発の中で、重点的な分野を明確にしていくことが必要だと、そういった議論をということで述べられてございます。

以上のような三原則を去る16日の諮問会議で提出されたということでございます。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

御質問もあろうかと思いますが、後ほどの自由な討議の時間にお出しいただけたらと思います。

それでは、さっそく今日の本題でございます。宮島さんから、「社会保障と税制」ということのプレゼンテーションを受けたいと思います。その後に事務局からまた関連する話も聞こうと思っています。

それでは宮島さん、15分ぐらい、短くて恐縮ですが、御報告ください。

委員

宮島でございます。15分ほどお時間をいただきまして、社会保障と税制につきまして、お話をしたいと思っております。

レジメのほうは、私、相当急いでつくったものですから、番号を間違っているところもありますが、それはお許しいただきまして、社会保障と税制、主に社会保険と税制と言ったほうがいいかもしれませんが、例えば前回の年金改正法の附則で触れられているように、基礎年金の3分の1から2分の1に国庫負担を上げるというようなことがうたわれているわけでありますけれども、そういう特に財源としての税制の持つ役割というものは、従来、主として議論されてきたのだと思います。今日お話しするのは、それと並行いたしまして、特に現金給付の給付水準の調整を果たす税制の役割と、それから、より直接的に政府がいわば費用を回収する機能としての税制の役割というものを中心にお話しして、もう1つは、実は社会保障給付に代替的な、我々の財政学の専門家ではタックス・エクスペンディチャーと申しますが、後ほど申し上げますように、いくつかの減税措置など、こういうものを一体として社会と税制との関係でとらえておきたいというのが今日の趣旨でございます。

これは実は5年ほど前からOECDで、特に社会保障水準の国際比較という観点からこの議論が始まりまして、私たち何名かのグループとOECDとが現在共同研究を持っておりまして、それが2002年度に一応の日本を含んだ推計が出てまいりましたので、それも使いながら少しお話ししたいと思っております。

OECDの狙いというのは、現在のところまだマクロ的な水準でありますけれども、社会保障の水準なり、政府の政策効果をどう測定するかということでございまして、その場合、最も重要な点でありましたのは、社会保障と税制を一体として把握するということでございます。その意味は後ほど申し上げますが、要するに、社会保障給付については、グロス概念とネット概念を明確に区別する必要があるということでございまして、これまではその区別がなしに、グロス概念で比較をしていたことが、いろいろな国際比較などで、ある意味ではミスリーディングな結論を導き出していた面があるのではないかという点でございます。

そのグロス概念、ネット概念というのは、端的に言えば、例えば年金に対して所得税がかかります。100万円の年金が給付されましても、10%の所得税がかかりますと、実質的な年金給付額は90万円でございます。政府にとっても実質的な支出は、100万円ではなくて90万円ということになります。そういうように課税の影響というものを社会保障を把握する上で十分考えておく必要があるということでございまして、この場合には、特に社会保険の現金給付に対する直接税、あるいは社会保障負担のケースもありますが、社会保障負担といういわば直接税的な課税のケースと、さらに、それを差し引いた可処分の社会保障現金給付が実際に消費される際に、今度は消費税などの間接税がかかってくるということがございます。

ですから、例えば年金受給者にとって最も重要なことは、まさにグロスの年金給付額ではなくて、直接税や社会保障負担がかかるのであれば、それを差し引き、さらに今度は可処分現金給付から消費をするのにどれぐらいのものが買えるかという購買力の問題でございますので、そこで実際的に把握する、そして比較するのが最も重要だというのが今回の1つのメッセージであります。

もう1つは、これもよく知られておりますけれども、多分日本でも厚生年金基金とか税制適格年金に対しては、掛金の拠出の段階で優遇措置といいますか、損金算入措置がとられておりますし、そういうような実際に私的な年金給付であっても、政府がむしろ減税という形で、そこに奨励をしたり関与しているケースが出てまいります。あるいは、よく言われますように、児童手当と扶養控除の関係のように、税制でやるか、手当でやるかというのは、ある意味では選択の問題という点もございます。そういった税制上のいわば社会保障の 支出に代わるような機能というものもありますので、それも含めて考える必要があるということでございます。

ここまでお話ししまして、お手許にお配りしました横長の資料を見ていただきますと、これもまだ推計の問題がいろいろございまして、細かい点になりますと、いろいろまだ疑念もあるわけで、必ずしも的確なものとはまだ自信を持って言えない点があります。

これはまず97年であるということと、GDP比率で全部表示されているということで御理解いただきたいと思いますが、例えばデンマークやスウェーデンというのは、極めて社会保障支出水準の高い国だというふうによく言われます。それに対してアメリカや日本は、非常に低いというふうに言われます。確かに先ほど言いましたような、課税を全く考慮しないグロス概念の比較をいたしますと、GDP比でデンマークやスウェーデンは35%を超えるというような非常に高い水準でございます。それに対して例えばアメリカなどは、半分以下、16%弱という程度でありますし、カナダもかなり低い。

ところが、ここからそれにかかる公的な負担、直接税とか社会保障負担でありますとか、先ほど申しました可処分の現金給付に対するその消費に対する間接税負担などを考慮して、それを差し引いたいわば税抜きの概念で比較いたしますと、実はデンマークやスウェーデンは10%ほどウエイトが下がってしまいます。それに対してアメリカや日本はほとんど変わらない。こういう仕組みになっております。

日本については後ほど別に申し上げますが、さらにその下の社会支出代替的な租税支出、私的年金以外というのは、これは特に子供などに考慮した扶養控除やそういった類のものでございますし、それから、私的年金関係というのは、これは主として先ほど申しました厚生年金基金であるとか、税制適格年金のような民間年金保険に対する掛金の損金算入措置などから生じている減税分でございます。

さらに、その下のところに、例えば日本でいいますと、先ほどお話ししたような厚生年金基金でありますとか、税制適格年金タイプ、アメリカでは御存じのように、サラリーマンに対する医療保険がございませんので、それは企業が民間の保険会社と契約をするという形で、その損金算入が認められておりまして、そういったいくつかの類のものをさらに加算したり何かしていきますと、一番下から2番目の、上段の欄の2番目になりますが、ここになってきますと、実はデンマークやスウェーデンとアメリカ、カナダあたりは、実はこういう税制も統合して考えた場合の社会保障のマクロ的な水準は、ほとんど変わらないということになります。

ですから、例えばデンマークやスウェーデンは非常に社会保障給付が高くて、大変だというような印象を持たれるかもしれませんけれども、しかし、政府がかなりそれをいろいろな形で、税制の形で費用を回収しているという面が強く出てまいりますし、受給者から見れば、一見高そうに見えるけれども、課税等によってかなり実質の購買力が削減されてしまうというような点がございますので、よく見られるような議論は、ややミスリーディングではないかというのが1つの結論でございます。

もちろん、こういう計算の仕方なり理解の仕方がよろしいのかというのは、いろいろもちろんあるだろうとは思います。例えば、租税支出と手当のようなものを足し合わせることは、かなり性格が違います。特に租税支出などは、納税者にしか利益が及ばないという点がございますので、そういう分配上の違いが当然出てくるということもあります。

ですから、必ずしも簡単に足し合わせるものではございませんけれども、一応、こういうような見取り図をまず最初に描いておきたかったわけであります。日本がなぜ低いのかというのは、これは我々の間でもOECDとの議論でかなり大きな問題になりましたけれども、おそらく次のような点にあるだろうと。

1つは、日本の場合には、ヨーロッパに比べますと、育児や介護の部分が家族に委ねられている部分がまだかなり大きい。それから、雇用対策ですとか、特にアクティブ・レーバー・ポリシーと申しますけれども、雇用の再訓練であるとか、そういう労働市場対策がまだかなり企業に委ねられている部分が大きい。つまり、まだそれは必ずしも社会化されていないという面があるのではないか。

それから、もう1つは、日本の税制の中で、実はこのデータを送りましたときに、退職所得控除とか社会保険料控除とか、この当時もちろんありました高齢者の利子非課税などを必ずしも織り込んでいないという面がございまして、そういった租税支出の過少推計といいますか、それが1つあるだろう。

それから、3番目に大きいのは、おそらくまだ残っている参入規制とか業務規制という公的規制でありますとか、あるいは公共事業ですとか地方財政対策といった、世帯や個人を対象としていない再分配政策によって、むしろ社会支出を支えている面、そういう隠れた社会支出がかなり日本の場合まだ大きいのではないか。こういう点が、おそらくいろいろ勘案してみても、日本がまだ小さい理由であるというふうに一般に考えられます。

いずれも、いまお話ししましたように、こういう公的規制でありますとか、公共事業、地方財政対策などは、今後これが縮小していく可能性のほうがむしろ高いというふうに思われますし、さらに、特に家族政策なども、今後日本では大きな人口変動が進むためにそういう話題が起こってまいりますので、おそらく日本の場合も、今後こういう形で、だんだんと隠れたものから表に出るものが多くなっていくだろうと考えております。

もちろん、この推計上の一番の問題は現物給付の扱いでございまして、現金給付は比較的やさしいのですが、現物給付の場合には、これはこのままただ乗せてそのまま最後まで持っていっておりますけれども、例えば、保険医療に対する患者の自己負担などをどう考えるかというときに、私などは、給付として全体になされたもののうち、その一部を患者自己負担として納入するという一種のみなし直接税のような感覚でとらえて、こういうものに加算していくような形で、もう少し方法論的には統一されてしかるべきだと思います。

それから、こういった非常にマクロ的なものではまだよくわからない、単なる水準の問題でございますので、さらにこれが階層別とか職種別などによって、これがどう違ってくるかということがもっとわからないと、直接政策論で出すのはなかなか難しい点があるのではないかと思っております。

実はこういう議論をしてまいりますと、私は従来の国民負担率という概念を少し考え直してほしいという気がしておりまして、つまり、デンマークやスウェーデンがとてつもなく国民負担率が高い。国民所得比でいいますと70%を超えると言いますけれども、実はそのうちのかなりの部分は社会保障給付受給者が引き受けているわけでありまして、おそらく国民負担率の抑制が一番問題になるのは、実際に経済活動を担っている現役の世代、あるいは別の言葉で言えば資本と労働であると思います。

ですから、問題は、こういう社会保障給付ですとか、世代で言えば高齢者が引き受けている国民負担率まで含めて抑制する必要があるのかどうかということでありまして、私はもっとそれは資本と労働、あるいは現役世代がどのくらいになっているかということに注目して、その抑制を考えたほうがいいだろうということで、下段は参考までに、GDP比で示した国民負担率のうち、いま社会保障給付に対する公的負担率を除いてみたらどんなふうになるかという見取り図を掲げてありますが、これも先ほどお話ししましたように、デンマークやスウェーデンというのは、一般に言われているほど、現役にかかっている負担率というのはそんなに高いものではないと私は考えております。

それから、もう1つは相続税・贈与税の話について、若干付言しておきたい点がございまして、御存じのとおり、いまの年金であれ、老人関係のものであれ、介護であれ、基本は世代間扶養という、若年世代が高齢世代を扶養するという仕組みになって、これについてはいろいろな批判もあり、そういう仕組みをなるべく変えろという議論があることは、私も十分承知しておりますが、その一方で、実は相続と贈与というのは、その意味では逆の世代間扶養の仕組みになっているわけであります。特に贈与の中には、高等教育なども含めますと、社会的に見れば大きく社会保障制度のような、どちらかというと若年世代が支える仕組みと、もう1つは、高等教育であるとか、そういう意味では、今度はむしろ年配の世代が支えているという逆世代間扶養という仕組みが並列しているわけでありまして、この2つを一体どういうふうに考えるかということになりますと、もしいまの世代間扶養型の社会保障制度を、世代間扶養ではなくてより世代自立型に変えるというのであれば、私は同時に相続や贈与に関する税制も自立型に変えなければ、平仄が合わないと考えております。

特にいまの高齢者が抱えている保有資産については、むしろこれを経済活性化のために若い世代に相続税・贈与税を減税して譲り渡せという議論がある一方で、私たちは、むしろこれはリバース・モーゲージなどを通じて、高齢世代の経済的自立の糧にすべきであると考えておりますので、その辺の考え方の違いは、私はかなり大きいのではないかと思っております。

最後に、特に具体的なお話をいたしませんでしたけれども、私は1つは、今後、特に課税最低限の問題を考えるときに、これは人的控除の話が中心に出てきたと思いますが、私は公的年金等控除と給与所得控除の関係の洗い直しが重要ではないかと。

特に社会保険料については、拠出分については、もともと拠出段階で控除がございますし、残りの部分はいわば移転所得ですので、移転所得のところに費用概念とかそういうものを考えるのは、やや難しいという点がございますので、公的年金等控除の見直しも1つは考えられてしかるべきではないかと思います。

それから、私は年金所得に対する税制の強化を前から主張しておりますが、それは先ほど言いました給付水準の調整の意味合いを持たしたいというのが1つであります。それから、もう1つ、直接費用回収をするという面と、その2つの役割を重視しておりまして、これはアメリカは1983年のレーガン税制改革の際に年金課税を導入いたしまして、これは信託基金にそのまま繰り戻すのです。つまり一種の目的税です。ですから、今日お手許にその場で配付していただきましたように、いま日本の公的年金の給付額は全体で約40兆円でございます。もちろんこれは全部合わせたものですが、これは間違いなく今後増えることがあっても減ることはおそらくないだろうという、最も安定的、かつ伸びが考えられる所得でございまして、ここから課税を通じて、これを年金の積立金なりそちらのほうに戻していく。それで、将来の世代の負担の抑制をできるだけ抑制する。同時にそれが課税最低限を超えていくような比較的高所得を持つ高齢世代にとっては、給付調整の役割を果たすという点を着目しているわけであります。

ただ、そのためには条件がございまして、例えばいまの在職老齢年金のように、賃金との直接の調整になりますと、これは高齢者の雇用に対して非常に阻害的な要因になります。つまり、せっかく高齢者が働いても、給与所得を得るとそれだけ年金が調整されてしまうのでは、これはむしろ高齢者雇用に対しては非常に悪影響を及ぼしますので、できればこういう所得税を使って給付水準を調整する場合には、給与所得だけではなくて、資産所得や事業所得にも全体として取り込んでくる必要があるし、そのためには、おそらく納税者番号制度のような仕組みも考えざるを得ないのではないかと思います。あるいはそれをもとにして、さらに税率のフラット化を考えるとすれば、むしろそういう課税ベースの拡大の仕方を考えたらいかがかというのが私の今日の説明でございました。

以上でございます。

委員

それでは、質疑応答はまとめて後ほどということで、事務局から年金課税につきまして、御説明いただきましょう。

事務局

お手許の資料、2種類ございまして、『公的年金等控除などについて(メモ)』という1枚簡単な項目のメモをお手許に届けてございます。もう一方、「基礎小12-2」という『資料(年金課税)』というものでございます。

この1枚紙のほうでございますが、資料を御説明する前に、これで項目を見ていただきますと、高齢者に関する諸控除ということで、人的控除のほうで老年者控除なり扶養控除の議論がございまして、これは前回、前々回見ていただきました。(4)に公的年金等控除を掲げてございます。

それから、大きな2のほうにまいりまして、公的年金等に関する税制ということで、いまお話がございましたように、拠出時は本人負担は社会保険料控除がございます。あるいは企業の負担のほうは全額損金算入になりまして、その時点での給与課税はないという仕組み。給付時につきましては、老齢年金について公的年金等控除がある。あるいは遺族年金は非課税だというような状況でございます。

このほか、運用時におきまして特別法人税がございますが、11年以降停止されておるという状況にございます。

そういった中で、公的年金等控除につきまして、これは62年9月に創設されたものですが、それまで給与所得扱いでありましたものを雑所得に変更するとともに、公的年金等控除という形で控除制度をつくってございます。その仕組み、あるいは水準、あるいは給与所得控除と重複して適用されるような形になりましたので、その状態といったようなものを資料で見ていただきたいと思っております。

あと、これは公的年金の関係でございますが、私的年金、あるいは退職一時金とも関係するということで、それは3に一応メンションしておきました。

それでは、基礎小の資料の12-2でございます。お時間の関係がありますので、ちょっと駆け出しながらさせていただきます。

まず、1ページでございますが、これは税務統計のほうから、年金の支払いと課税のベースを見たものでございます。私どもの統計資料から見まして、32.7兆円という公的年金等の支払金額がございます。一方、源泉徴収で税額が2,200億円ほどございまして、この税率が10%なものですから、割り戻しますと、2.2兆円ほどが源泉徴収の対象となるという意味で、この網掛けで2.2でございます。したがって、30兆円ほどはいろいろな控除で課税対象から落ちているという状態でございます。

もっとも、2,200億円源泉徴収はございますが、これは確定申告で還付されまして、戻るべきものは戻りますので、そういう意味では2,200億円税収というわけでもございません。いずれにしても、源泉徴収レベルでこれだけの課税ベースが落ちておるという状況でございます。

これを税収のほうの関係で推計いたしますと2ページになります。公的年金等控除で減収という意味で見ますと、1兆円規模であろうと。あとは老年者控除で0.1兆円、以下扶養控除0.2兆円といったような見込みでございます。

3ページは、同じものを住民税のほうで試算されたものでございます。

4ページは、前回見ていただきました高齢社会対策大綱というものでございます。

5ページにまいりまして、公的年金に係る課税の仕組みを簡単にご覧いただきますと、一番左のほうを縦に見ていただきますと、拠出時は掛金は社会保険料控除で所得控除になりまして、給付のほうは、年金収入が入りますと、まずそこから公的年金等控除を引きまして、さらに老年者控除を引いて、それから基礎控除その他を引いて、最終的に所得が残って税額計算されるというようなことになってございます。

参考にございますのは、課税最低限が年金とそれ以外の方と比べましたところで、年金の課税最低限が高いというような参考の資料でございます。

6ページは、拠出の段階のもので、社会保険料控除でございます。前回、控除のほうでも見ていただきましたが、社会保険料控除の大きさにつきまして、真ん中にございますように、右下のほう、1人当たりの控除金額が大きくなっておりますし、あるいは給与全体に占める社会保険料控除のウエイトというものも、年々増加しておるという状況にございます。

7ページは、これもやはり拠出の段階でどの程度のものかというものを推計したものでございます。拠出の段階で、左側のほう、雇用主掛金分とございますが、社会保険の雇用主負担のところは、支払われた段階で給与の損金算入になりますので、それを法人税の課税ベースがその分落ちたというふうに推定いたしまして計算いたしますと、ここにございますように、公的年金で1兆6,000億円、企業年金で0.8兆円というような規模の課税ベース、あるいは税収に換算できる規模の雇用主掛金分があるというような状態でございます。

右のほう、本人の負担ですが、本人は社会保険料の控除になりますので、公的年金で1.6兆円控除になるというものでございます。もちろん、入り口、出口、拠出時、給付時の課税関係がございますので、これが丸々税収減ということかどうかわかりませんが、掛金の大きさという意味では、これだけの税収に関係してまいります。

8ページは、同じものを住民税のほうで推計したものでございます。

9ページ以降、給付の段階に入りまして、公的年金等控除の問題でございます。公的年金等控除、対象は2番にありますように、いわゆる企業年金も含みました公的年金等でございます。3番にありますように、定額控除と定率控除の組み合わせになっておりまして、定額控除あるいは最低保障額は、65歳を境にいたしまして、65歳超の方のほうが金額が大きいというような控除の形になってございます。

これを絵にいたしましたのが10ページでございます。左のほうから最低保障額がありまして、年金の金額が増えるに従いまして控除額が増えるというような形になってございます。2本線がございますのは、65歳以上のほうが定額あるいは最低保障額が大きいものですから、上に出てございます。65歳未満の公的年金等控除とほぼ重なるような形で給与所得控除がございます。したがいまして、給与所得控除、65歳未満の公的年金等控除、概ね同じような形になってございます。

11ページは、いまの公的年金等控除が入りました前後の制度を比較したものでございます。62年の税制改革の前は、年金は給与所得として課税されておりまして、老齢者年金特別控除というものと給与所得控除という形で所得計算がなされてございました。62年9月の改正で、63年以降は制度が変わりまして、全体として雑所得課税としてなっております。その中で公的年金等控除と老年者控除という形になってございます。これは公的年金に対する負担の調整の問題と、老年者に対する配慮という2つの事柄を整除するということで、公的年金等控除と老年者控除というふうに2つに分けて整理をされたということになってございます。

このような考え方につきまして、年金受給者がかなり増大していく現在、あるいは今後につきまして、この負担調整という考え方がどうなのか。あるいは、老年者配慮というものについて、老年者控除の扱い、あるいは公的年金等控除の中で、65歳前後で金額が変わっているというようなことをどう考えるかという点があるように感じております。

それから、12ページは、いくつか計数でございます。62年の改正の前後でどのように課税の状態が変わったかというものでございます。若干見づらいですので、結論だけ申し上げますと、ほぼ同じでございますが、所得控除、人的控除も上がっているということもございまして、62年に比べまして現行のほうが課税が軽減されてございます。

13ページは、少し視点を変えまして、年金と給与収入を同額もらっているというケースの税負担の比較でございます。一番上の欄で見ていただきますと、年金を200万円か、給与を200万円か、どちらかのケースだといたしますと、右のほうで独身の場合、給与所得者のほうは課税が発生いたしますが、年金受給者のほうは課税がないということで、単純に年金収入と給与収入、同額で比較いたしますと、年金収入のほうが課税が軽いという形になってございます。

それから、14ページは、また別の角度でございますが、先ほど申し上げましたように、年金と給与とを物事の考え方を分けました関係で、年金収入のある方で給与収入もある方につきましては、それぞれに公的年金等控除と給与所得控除が効くことになりまして、一番上の柱のように、単純なイメージでございますけれども、年金収入のほうには公的年金等控除があり、給与収入のほうには給与所得控除がありということで、両方の最低保障額が使えるというような形で、控除がダブルに効いているというような関係になってございます。

これを数字で見ましたのが15ページでございます。年金収入を200万円と仮定いたしまして、それが給与収入をさらに200万、300万、400万、500万というふうにもらうケースで課税を計算したものでございますけれども、いろいろなケースがございますが、いずれにしても、抜本前と比べまして、現行制度は控除が両方に効きますので、負担が軽減されているという状況にございます。

16ページは、年金課税を全体に通観したものでございます。

17ページは、諸外国の公的年金の課税でございます。日本は本人負担分につきまして、拠出段階、給付段階とも御説明いたしましたような控除がございますが、拠出段階には控除がないもの、あるいは給付段階の控除も限定されているものと、諸外国いろいろなケースがございます。

18ページは、企業年金につきまして同じような資料をつくってみたものでございます。

19ページ、あるいは20ページ以降は、年金制度の概要あるいは社会保障給付費の状況でございますが、議論の御参考ということで、私の説明のほうは省略させていただきます。

事務局

地方税のほう、1、2点だけ補足をさせていただきます。

同じ資料で3ページですが、これはそれぞれの控除についての減収見込みでございます。見てのとおりでございますが、低所得の部分が対象になることもありまして、平均税率、それから課税ベースの違いがありますので、所得税においての影響との関係が項目ごとに一様ではございません。

それから、13ページに飛んでいただきまして、13ページのところは、課税最低限の表が下の段にございまして、そこでは個人住民税につきましては、それぞれについて課税最低限の下の段に括弧書きの数字がございます。これは65歳以上になりますと、老年者ということで、地方税につきましては、別途非課税限度額がございますので、そちらの額のほうが多い場合は、その非課税限度額のほうが効いてくるという関係にございます。

追加して以上でございます。

委員

ありがとうございました。

それでは、少し時間を取りまして、事務局の資料説明と、委員、あるいはまた塩川大臣の三原則のほうでもけっこうでございますから、御質疑賜りたいと思います。

委員はお時間もありますので、なるべく質問のある人は早めに出してください。

委員

委員のレクチャーは大変興味深く伺いました。あとのほうにちょっと言われた、1つのポイントだと思うのですが、給与所得と公的年金所得との税制における合算の問題を指摘されましたけど、私も全く賛成でありまして、それぞれに控除があるというのは、ちょっとおかしいのではないか。年金所得と給与所得を合わせて、年金控除はあってもいいのですが、どちらか片一方多いほうしか選択できないというようにしたらどうかという意見です。

もう1つ、在職者老齢年金との関係もおっしゃいました。これは税制とは少し、年金の世界の話になってしまうかもしれないわけですが、私は在職者老齢年金と厚生年金との月37万円という1つの壁、これが現在69歳までと。69歳にとどめておく必要はないのであって、70歳以降エンドレス、つまり収入のある方は、70歳以上であろうと、その年金の給付は自ずとカットしてもいいのではないか。そのくらいのことは受け入れてもらってもいいのではないかと思っております。

ただ、税制と年金との関係になりますと、いまちょうど、そろそろ年金の次の財政再計算が始まる。おそらくこの在職老齢年金の問題、いわゆる適用年齢の延長、あるいは委員もおっしゃった給与所得だけでいいのか、事業所得、不動産所得等も合算して、年収が一定以上あれば、その分は年金を削っていくというようなことが当然議論されると思います。したがって、言ってみれば、はみ出したり余裕のある分を年金のカットに使うか、税収ということで税金のほうに持ってくるかというような関係にもなりますので、検討も中長期ということではなくて、もうすぐ年金のほうの検討も始まりますので、税制面からの検討というのを並行してやったほうがいいのではないかと思います。

それから、もう1つ、この資料でもありましたように、公的年金の源泉徴収というのはいまのままでいいのかどうか。つまり、いま178万円以下ですと、源泉徴収の対象外ということ。その結果、90数%は源泉徴収免除ということになっております。これがそのままでいいのか。公的年金等控除はそのまま置いておいたとしても、源泉徴収の対象というのはもう少し広げてもいいのではないか。つまり、178万円までは源泉徴収でおしまい。あとはどんな所得があっても、年金は非課税という状態のままというのはどうか。もう少し下げて10%取って、控除がはみ出した分は確定申告で還付してもらうというふうにしたらどうかということ。

それから、もう1つは、この資料にはないのですが、遺族年金の問題というのは何も検討しなくていいのかどうかということをかねがね疑問に思っております。ここで議論されるのは、特に厚生年金の老齢年金、基礎年金あたりの話でありますが、遺族年金というのは最初から非課税ということで、法律で最初から税制の圏外に置かれている。ただし、例えば40歳の女性が遺族年金をもらう。別に職を持っていて給与所得があるという状態で、遺族年金は最初から無税、非課税ということでそのままでいいのかどうか。そこら辺も少し議論してもいいかなと思います。

もう1つは、公的年金等控除と国民健康保険料との関係も少し考える価値があるのか。つまり、国民健康保険料の計算上において、公的年金等控除というのが引かれる。公的年金等控除を圧縮すると、何もしなければ自動的に国民健康保険料が上がってしまう。ここら辺が調整しないままでいいのかどうか。少し頭の片隅に入れておいてもいいのかなと思います。

委員

ずいぶん専門的な御質問がありましたけれども、委員、何かありますか。よろしいですか。では、御意見は伺っておきましょう。

委員

委員の研究、数量的な比較をされるということで、非常に興味深く伺いました。これはお答えいただけるかどうかとはまた別の問題で、意見ですが、委員は費用の回収、いわゆる社会保障給付に税金をかけると、その分は費用の回収になるとおっしゃられましたが、回収された費用が今度はどこへ回るかということで、我が国のように社会保障政策と租税政策というのが別々の行政組織にあって、それぞれが独自に判断しているところですと、これは社会保険料控除などを認めませんと、社会保障政策に対して、税金がそれにブレーキをかける。こういう意味が出てきますけれども、さて、北欧の4国といったものは、行政組織の中で社会保障の担当と租税政策を担当する部局がどういう関係にあるのかなと、1つ背景として興味を持ったところなのですけれども、これは感想ということで。

それから、もう1つのこれも感想ですけれども、先生はタックス・エクスペンディチャーということを使われて、いわゆる社会保険料控除といったようなものも一種の特別の優遇措置であると。さて、デンマークやスウェーデンのように二元的所得税が大手を振って歩いている、これは最適課税論から当然なのだと言われている世界で、このような支出というものはタックス・エクスペンディチャーになるのだろうかと思って数字を見ましたら、ゼロなんですね。ですから、ここは全然控除などは認めていないということで、そこははっきり出てきませんけれども、ちょっと委員の研究とは違いますが、一体デンマーク、スウェーデンでは、年金等のための社会保障給付というのは、2つに分けた場合、どっちの所得に属するのでしょうか。

委員

後者のほうは、正直言って、私もきちんとデンマーク、スウェーデンの税制を必ずしも承知していないこともありまして、いまちょっとお答えは持ち越させていただきます。

前者のほうで申しますと、私は、例えば北欧諸国などは、財政全体でとにかく費用を回収すればいいということでありまして、あまりその点は気にしていないですね。ところが、アメリカは1983年に、従来の全く賦課方式だった老齢年金、OSDIですか、これにやや積立要素をつけ加えたいということがあって、それで、直接的な費用回収でこれを信託基金にもう一度繰り戻して、その積立金を積んでいくというより直接的な方法をとったと。私はどちらかというと、いまの日本の年金制度や税制の問題を見ると、アメリカ的な発想のほうが合うのではないか、より直接的な費用回収にして、それを特別会計に戻して、積立金を積んで、そして、そのかわり将来の保険料率の上昇を抑えていくというような発想をとったほうがいいのではないかと思っています。

ただ、基礎年金はどうするかというのは、これは話がやや別で、基礎年金のところは、実は先ほど言いましたように、年金改正法の附則で言われているところの部分というのは、これは今日の話とはやや別の話だと思っていただきたい。むしろここのところは、いろいろな税制、消費税とかいろいろな議論で議論されているところでありますので、そことはやや区別しているというふうにお考えいただきたいと思います。

委員

2つの点につきましてお伺いをと思います。

1つは、これは日本のマクロ的な社会保障負担といいますか、そういったものが国際比較をして低い。その低い原因は、先ほどの1つの理由として、育児、介護などなど福祉サービスが家族依存である。いわば民間で私的になされている点があるというわけでございますけれども、一方、我が国ではそういった面に配慮をするものとして、例えば老人扶養控除とか同居老親加算などがある。そういったものは、むしろ税金を納めているか、納めていないか。納めている人にしか効果がないので、むしろこれは社会保障給付のほうに移行したほうが合理的ではないか。また、それが人的控除の合理化、税制の簡素化になるという議論が一方ある。しかし、そのほうがマクロ的には高くつくことになるとすると、いまのほうがむしろ合理的というか、経済的ということになるのかどうか。その点が1つ。

もう1つは、相続税、贈与税で逆世代間扶養になるのはいかがかということでございますが、相続税の課税件数割合といいますのは、大体死亡者の5%ぐらいだと。そういう次元から見ると、真正面からそこがぶつかるような現象だと考えなくてもいいのではないか。しかし、やはり5%の、特に高額資産家の話ですから、そこはあえてそれを推奨するというのは問題だというふうに考えるべきか。この2点につきまして伺いたいと思います。

委員

前者は御指摘のとおりでございまして、私が申し上げたことは、多分、手当を租税のほうに振り替えたほうが安上がりになるのだろうと思います。その点が実はこの資料でも、アメリカというのは、全体で見るとそれほど大きな違いはないにしても、やはりかなりヨーロッパなどでは、社会的な給付なり何なりで出しているものを税制のほうに持っていっているという面が強いということであります。

その点で申しますと、そういう観点からはそのとおりでございますが、同時に先ほどお話にありましたように、例えば、こういう減税タイプのものなり、租税支出に振り替える部分というのは、どうしても課税所得をある程度持っている人に限定されてしまうという点での今度は議論がありまして、手当に持っていったほうがいいということになると思います。

それで、もし手当に持っていくならば、今度はそれをむしろ課税の対象に本来してくるという発想をとらないと、全体として平仄がとれなくなってくるのではないかと考えております。

後者のほうにつきましては、前からこういう議論があって、私などはおそらく少数派だと思いますが、もちろん相続税、贈与税というのは、それが個別にわたろうと、税収としてそれが何らかに使われるようと、ある意味では次の世代にいわば渡されていく部分では同じだと思いますが、おそらく相続税、贈与税の減税をしていきますと、そこで恩恵を受けるというか、その影響を受けるのは非常に個別性が強い。つまり、相続すべき資産や贈与資産を持っているところと、そうでないところとの間のばらつきが非常に大きくなってしまう。ですから、その点はむしろ私などは、ずっと相続税、贈与税も少し減税のプロセスを歩んでまいりましたけれども、もうそろそろとめたほうがいい。むしろそれは税収として社会化をして、そして、社会保障財源にしろとは申しませんが、もう少しインフラ的な使い方といいますか、そういうものをしたほうがいいのではないか。

しかし、その一方で私は、もちろん非常に緊急避難的に個人消費を促進するとか何か、そういう議論があることは承知しております。しかし、相当緊急避難的な、短期的な議論ではないかというのが私の理解ですが。

委員

委員、トランスファーにタックスという考え方は、これは普通、財政学のテキストではあまり使われていないよね。各国でもあまりやっていないでしょう。そこまで踏み切るときの大きな理由づけ等は、やはりコストの回収というところですか。

委員

日本の場合には、社会保障関係で原則課税になっているのは老齢年金だけです。ほかはもうすべて所得税法でもともと非課税であるというような規定がなされている。つまり、それは逆にいえば、そういう所得が本来その人がそれしか所得がない、しかも、相当抑えてあるというのが条件でありまして、ほかの所得があるというような条件が違ってくるということではないでしょうか。

委員

担税力があるということですね。

委員

はい。

委員

事務局のお出しいただいた資料についても、力作でありますから、質問も少し寄せていただければと思いますが、いかがでしょうか。

委員

委員のほうで失礼なのですけど、デンマーク100に対して日本の60というものですね。すごく低いというのでショックを受けたのですけれども、1つ私考えますに、これは97年の数字で、おそらく2002年だと大分接近しているのではないかという気がするのですけれども、先生の目の子で、いまこの60が2002年だとどれぐらいになっているかというのが1つ。

それから、低い理由の1つとして、年金の成熟化がこの段階ではまだあまり進んでいなかったのではないかということも言えるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

委員

最初に資料の際申し上げましたが、97年の数字、5年前だと申し上げました。ですから、1つの考えられる理由は、いま御指摘のように、5年前ですので、高齢化のスピードがまだそれほど、いまはもうスウェーデンを抜いておりますけれども、そうでもなかったということとか、介護保険が実施されていないといういくつかの制度的な要因もあると思います。

ただ、私は逆に、当初日本を考えましたときに、この時点でもかなりもっと接近するのではないかという予想を持っておりました。それは、その下に書いてありますように、日本は財政赤字をかなり積んでいるものですから、見かけかもしれませんが、日本の場合には租税負担率がマクロ的に見ればかなり低いわけですね。その分がかなり実質的な意味での社会支出の代替をしているのではないかというふうに予想していたのですが、これはOECDとちょっと意見がずれたところでありまして、一体ソーシャル・ポリシーの目的とは何かという判断は、先ほど言いましたように、日本の場合にはどうも退職所得ですとか、社会保険料控除ですとか、高齢者の利子非課税ですとか、この当時ですが、そういうものを全く算入されていないということがあると思います。

ただ、もう1つ先ほど指摘しました、どちらかというと、日本の世代や個人を対象としない、公共事業ですとか地方財政対策ですとか、そういうものがかなり社会支出の代替をしている部分が高いのではないかというのが、例えば慶応の清家先生などはそういう御意見でございました。

委員

ほかにいかがでしょうか。

委員

大臣が出したこの三原則ということに触れていいですか。

委員

どうぞ。

委員

これ、どういうふうに税調のメンバーとして受け取ったらいいのかということなのですけど、まず内容からいうと、増減税一体で、しかも一本の法律でということを書いてあって、国有財産の処分だとか行革成果を財源だとかという曖昧模糊たる実現不可能な話に比べれば、かなりはっきりと限定的な議論をしているので、大臣はそういうふうにお考えだということはこれでよくわかる。

もう1つは、第3の項目で、大臣は減税のことについては、経済活性化について集中的に導入しよう、しかも効果があるものに限ってということを言っていらっしゃる。これは前からここでもおっしゃったし、私もそれは賛成なんですけど、全体としてはそんなに違和感のある感じではなくて、大臣はこう考えたということだと思うのです。

問題は、我々はこれから個別の議論を進めていくについて、これは財務省の大臣がそういうことを言ったということを頭の中に置いておけばいい話なのか、この枠の中で議論しなければいけないのかということなんです。私は、大臣もこうおっしゃっていたということを念頭に置いておけば済むのではないかと思うのですが、これはあと会長の解釈を聞きたい。

もう1点は、塩川大臣というのは、至るところで大変自由闊達な議論をされる方で、記者会見をやるたびに、あれあれというような話がずいぶん出てくるんです。先週、どこか地方で講演されたときに、これは日経新聞がキャリーしたのだけれども、これまた相続税絡みの話なんだね。何とかして相続税を軽くしようという発想が大臣の根っこにはあるわけで、だから、お金持ち、富裕層、大臣のあれだと年収2,000万円以上の高齢者の人が年金を辞退するならば、相続税をまけてもいいよという話をされているんです。これも一連の相続税軽減論につながる話だと思うのですが、今までも、無利子国債を買った人間には相続税で面倒を見るよという議論が、浮かんでは消え、消えては浮かぶということなんです。何か出るとこれが出てくる。これもまたそれに類するような発想かなとも思って。しかし、よくよく考えて見ると、いまだってかなり高所得の人についての公的年金の支給については、若干の抑制があるわけで、しかもこれからのことを考えてみれば、これは本当は委員にちょっとお伺いしたいぐらいのことなんだけれども、どう考えても、保険料を引き上げるという一方で給付水準を抑制するということをやらなければ、巨大な福祉の中の最大の項目である年金財政はもたないと思うのです。誰が考えたって。それを考えていくときに、年金を辞退すれば相続税をという、このリンクした考え方は、1つの発想だと思うけれども、どう考えてもこれは結びつかないように僕は思うんです。大臣がいないから、大臣に聞くわけにいかないけれども、まあ、それは1つの感想です。

会長に聞きたいのは、この三原則を我々はどう考えたらいいかという話です。

委員

これはあとで事務局などの御発言を聞いたほうがいいかと思いますが、実は、僕このあと記者レクをやりますね。必ずこの問題が来ますよ。記者の人は手ぐすねを引いているのだろうと思いますね。要するに、税調の議論とは直に関係ないのは事実ですよね。ただし、財務大臣というのは、我々と密接な関係があって、いつもやりとりしているわけですから、そう完全に独立して知らんよというわけにも多分いかないのでしょう。したがって、頭に入れておく程度でいいというふうに考えるか、それとも、これはあるスキームを出してもらって、我々は細かい税の議論はしているけれども、大づかみの議論というのはまだこれからですからやっていませんね。この大臣の三原則というのは、いかにも諮問会議的なテーマですよ。諮問会議でいかにもやりそうなのでお出しになったと思いますけれども、だから、1つの指針にはするけど、これに縛られて、例えば減税、増税、中身をこれから一々我々がどう探すかというのは、土台、我々がいまやっている税制の構造改革の中では難しかろうと思いますよね。

したがって、一応参考にさせていただく。そして、今後こういう話がおそらく来年度税制改革あたりで、増減税スイッチになってくることも政治的にはあろうかと思いますから、私の言い方はよくないけど、つかず離れず見ておくしかないのかなと思っていますけれども、何か事務局から御説明があれば。

事務局

それではお答えさせていただきます。答えになるのかどうかよくわかりませんけど、塩川大臣が諮問会議でこのペーパーを配るというふうに御指示があったわけでございます。多分、諮問会議のほうは、先般の基本的考え方みたいな、要するに方針を3月の29日におまとめになったときもそうなのですけど、どちらかといいますと、タイムスケジュールといいますか、1つの時間軸というのが常に議論の中心にあって、減税のいろいろな御意見も具体的にいろいろ出てくる。そういう中で、大臣として諮問会議のそうした自由闊達な議論に対して、やはり財政規律を保つ責任がある財務大臣として、税制改革に関する議論の基本的枠組みを明確にするべく、御自身の見解を整理されたものだろうと思っています。

他方、私ども会長と御一緒に官邸にまいりましたときにも、総理から言われましたのは、6月に向けて、あるべき税制を予見なく予断なくきちっとした議論をしてほしいと。6月にその全体像の基本的考え方をまとめてほしいと、そういう御指示をいただいたわけで、その中にはある意味ではこうした時間軸のようなものは、6月の時点にはあまり入っていないのだろうと思います。そういう意味では、我々としては、この三原則というのは、まさに会長も言われたとおり、今後の具体的な税制改革をしていくときのむしろ考え方という意味では、大臣の御意志に添って議論をするということはあるのだと思いますが、とりあえずの政府税制調査会の6月のとりまとめという意味では、こういう時間軸というよりは、むしろあるべき税制をきちっと議論してまとめていくというところにまず重点がある、こういうことかと存じます。

委員

事務局に質問になるのかどうかわかりませんが、私はもちろんあくまで個人的な意見で、この3つのうち1、2は何となくわかるんですよ。3についてはどうなのかなと、つまり、成長分野に国の政策を集中するのだと。何となくわかるのだけど、成長分野というのは、本当にこの諮問会議が決められるのですかということ。例えば税制面で投資減税をやるとなる。成長分野に集中的にやるのだというようなことでいいのかなと。例えば、食品とか、アニメとか、ゲームとか、これはいままでの成長分野かもしれない。しかし、誰でも想像がつく成長分野というのが実はそうでもない。あまり一方的に決めて、そこに例えば税制面で傾斜していくというやり方はどうかなと。これは素朴な疑問なんですが、塩川大臣のおっしゃった3番目のところは、どういう具体的な意味合いを含んでいるのですか。

事務局

これも推測といいますか、むしろ諮問会議の議論をお聞きいただくほうが、私出ておりませんので、明確にはわかりませんが、諮問会議では3つのテーマをやっておられるわけです。1つが税制のあり方であり、もう1つが経済の活性化であり、もう1つが政策金融みたいなことをやっておられるやに聞いております。その2つ目のいわゆる経済の活性化という議論がまさにもっぱら議論される。そのときにどちらかというと、こうした民間経済の活性化に向けたときにどんな議論が出るかというと、やはり全体を何かするよりは、国の政策集中が要るのではないかという御意見で、これが載っているのかと思います。

ただ、これがストレートに税制であるかとか、あるいは予算であるかとか、そういうことをそのままというわけではないと思うのですが、国としてのいわば政策の方針というか、考え方を定めていかないと、民間経済の活性ができないのではないかと、こういう思いがあって言っておられるのかなという気がいたしますが。

委員

委員は公務があって御退室でございますので、次のテーマへ移りたいのですが、副大臣のほうから何かこの件についてございますか。よろしゅうございますか。あればどうぞ。

事務局

いま、まさに事務局のほうからございましたように、この3点目については、実は私も大臣のほうから見せていただいて、私なりの御意見も申し上げたわけでございます。

先ほど、どなたかがおっしゃったように、ほぼいままでの流れの中からそんなにかけ離れているとは思われないねというような御意見がありましたが、まさに経済財政諮問会議で、この14年度予算で重点7分野といったようなところに集中的にということであったわけでございます。しかし、一方で、このような成長分野をある種絞り込んだやりぶりということも必要なのではないかというような議論もあったわけでございまして、私もそういうような観点でやっていくということについては、異論がなかったわけでございまして、そういう観点で大臣もこのようなおまとめのしぶりになったのではないかというように考えておりますけれども。

委員

ありがとうございました。それでは、次のテーマがまだ残っておりますので、移らせていただきます。

最初は、この間積み残しました土地税制、国税につきまして、事務局からまとめて説明をいただきたいと思います。

事務局

お手許にあります資料、「基礎小12-3」『資料(その他)』というのをごらんいただけますでしょうか。

めくっていただきまして、1ページ目は抜かしまして、2ページ目から説明させていただきたいと思います。これは、去る4月2日に御説明させていただきました資料でございまして、そこにございますように、所得税収のほう、ピーク時3年度の26.7兆円あったものが、14年度予算ベースでは15兆8,000億円、半減近くまでしているということでございまして、それを要因別に分解いたしました。特に3年度のあたりはバブルの影響ということでございまして、上のほうに乗っております申告あるいは利子・株式譲渡でございますが、これはバブルということで、土地の譲渡益、あるいは株式等々の売買が盛んだったということがございまして、乗っているということでございます。ここの部分につきましては、極端に言えば、またバブルになれば戻ってくるという世界でございます。その一番下のところに、残差ではございますが、"給与所得の源泉分"、勤労性の所得に係る所得税収が出ているわけでございます。

これでございますけれども、実は5年度の12.7兆円、これがピークでございまして、現在、予算ベースあるいは決算ベースで見ましても、9兆円弱ぐらいのところまで縮んでいるということでございます。ここにつきまして、一体これは経済の影響によるものなのか、それとも裁量的な税制改正によるものなのか、その辺を分析できないかという御意見と、それにあわせて将来推計もできないかということでございました。将来推計につきましては、大変申しわけございませんが、経済の先行き等に対する見方について、確定的な数字がなかなか出しづらいので、経済成長に従って増えていくということだけで御勘弁いただきまして、次のページでございますが、過去の要因について1つの分析をしてみたものでございます。これは平成5年度、先ほど申しました源泉所得税収のピークでございますが、ここをピン止めいたしまして、1つはピークであったということと、もう1つは、上に四角でばらばらと書いてございますが、平成元年に例の抜本改正、消費税を導入いたしました抜本改正の裏側といたしまして直感比率の是正をいたしまして、それから6年度以降は、また景気に配慮する、あるいは6年の抜本改正ということでございまして、制度が動いておりますので、その前、元年から5年までは、比較的所得税の構造としては安定していたという最後の時期でございます。

実は、これをSNAで言っております雇用者報酬でございますが、これの毎年の伸びに、実は弾性値が元年から5年までの平均が大体1.5でございますので、これを使いまして試算してみましたものが点線の税収試算値というものでございます。見ていただきますとわかりますように、元年から5年まで非常にきれいに説明がつくという世界でございます。

実は5年度以降の数字でございますが、ドンドンドンと落ちているわけでございます。その要因は、その上にございますように、いくつかの制度改正があったということでございまして、これは出入りがございますので、1枚めくっていただきまして、これもピン止めいたしまして、平成5年度と12年度、これを比べてみたものでございます。

平成5年度から平成12年度まで、雇用者報酬の伸びと弾性値1.5を前提にいたしますと、本来であれば1.1兆円増加した姿になっていたはずなのですが、これが現実には8.9兆円ということでございまして、残差が4.9兆円ございます。その横に参考と書いてございますが、この間の、12年度まで改正の影響が残っている税制改正の減収額見込みでございますが、6年度の制度減税の分、これが源泉所得にかかわる分が大体1兆9,000億円ほど、それから、11年度のいまだに続いております恒久的な減税の分でございますが、これが定率減税と最高税率、それぞれ2兆3,000億円と1,000億円。それから、住宅取得促進税制、住宅ローンの関係の税制でございますが、これが増減といたしまして2,000億円ほどということで、これだけ全部足し上げていただきますと、単純ではございますが、4兆5,000億円ということで、残差の大宗の部分はやはり説明がつくということでございます。もちろん、経済の動向に従いまして、雇用者報酬が増えますと、この勤労所得のところの税収が増えるわけでございますが、出発点といたしまして、好調になったからといって5年度のベースに戻るというものではなくて、むしろ12年度のへこんだところから出発していくという姿になっているわけでございます。

恐縮ですが、次のページは、それぞれの所得課税にかかわる減税の概要でございます。これはそのときに御指摘があったかと思いますが、実は所得税だけで見ておりますので、平成6年の改正は直接税を下げますと同時に、消費税、地方消費税を合わせまして2%ポイント税率をアップするということで、時間差攻撃ということでございますが、平成9年度には埋まるということでございまして、恐縮でございますが、1ページ目に戻っていただきまして、これも最前からよく使っている姿でございます。そこにございますように、黒線の部分が税収の実績でございますが、平成5年、それからデコボコがございましたが、平成9年、大体54兆円というところがベースになりまして、そこに結局、いま税収全体ということで申しますと、恒久的な減税、そこにございますように、国・地方を合わせまして6兆6,000億円、国のベースでいきますと、3兆円と1兆7,000億円、大体5兆円程度、これがすとんと押し下げるという形になっているということでございまして、この部分はやはり税収のベースとしてへこんでいる部分として御認識いただければと思っております。

以上でございます。

事務局

私から6ページ以降でございます。前回の小委員会におきまして、猪瀬委員から、アメリカでボランティア活動を行った場合の活動に関する経費につきまして、寄付金の控除の関係で御質問がございまして、私、調べてから御説明するということになってございました。

まず、6ページは、そもそも寄付金の取扱いでございます。個人の場合でございます。日本でございますけれども、御案内のように、財務大臣なり主務大臣が公益性を認定いたしました特定の法人あるいは国・地方団体につきまして、真ん中の欄にございますような寄付金の控除制度がございます。

これに対しましてアメリカは、次の段でございますが、公益性のある団体、公益性の強い団体に対する寄付金につきまして、所得控除の対象になってございます。この団体の特定は、一番右にございますように、内国歳入庁がその認定を行うということでございます。その内国歳入庁で認定をいたしました法人、団体に対する寄付金につきまして、控除の対象になるというわけでございますが、その場合の控除と、先般御説明いたしましたアメリカの控除との関係につきまして、7ページをちょっとめくっていただけましょうか。7ページは火曜日の御議論のときにごらんいただいたものでございますけれども、右側の実額控除という中に慈善寄付金というのが出てまいりまして、この慈善寄付金は6ページで御説明いたしました公益団体に対する寄付のことを指してございます。したがいまして、この慈善団体に対する寄付金につきましては、この控除制度の中に入ってございます。

ただ、委員の御質問は、実際にボランティア活動自体に参加されたときの自分の時間と申しますか、労働と申しますか、そういうものが金銭に評価して控除できるかどうかというお話であったかと思いますが、その点につきましては、アメリカの取扱いでございますと、一般に慈善団体の活動支援のために直接支出した費用につきましては、控除ということかと思いますが、直接支出ということではなくて、サービス、人的役務をその慈善団体に提供するような場合については、控除することはできないという考え方でございます。

その関係でこの表をもう一度確認させていただきますと、したがいまして、ここにあります実額控除の欄にあります慈善寄付金は、直接的な支出でございます。前回、ここの表の関係で、実額あるいは概算につきまして、若干その内容について、もう少し正確にと思いましたので、もう一度この表を見ていただきましたが、実額控除、itemized deductionということで、一応、この勤務に直接必要とされる支出につきまして、項目別に控除される部分と、それ以外の個人的支出について、項目別に控除される部分、その全体につきまして、概算控除と丈比べいたしまして、概算控除のほうが多ければ、あるいは概算控除のほうが選択されれば、そちらを使うということになっているようでございます。

前回、サラリーマンの必要経費という関係で若干御説明が中途半端になりましたけれども、この勤務に直接必要とされる支出と申しますのは、8ページ、9ページにございますように、必要経費ということでございますので、例えばアメリカの場合ですと、旅費も職務上の旅費とか、あるいは衣服でも、消防士あるいは警官の制服といったものが一応対象になっております。7ページの資料の旅費とか衣服とかという言葉が抽象的でございましたけれども、あくまで職務関連ということでございます。慈善寄付金の件とあわせまして御説明させていただきました。

私のほうは以上でございます。

事務局

それでは、続きまして、私のほうから資料の10ページ以降、さらに前回積み残しとなっております土地税制、国税関係の資料、これを簡潔に御説明させていただきたいと存じます。

まず、10ページですが、これは前回、16日の基礎小委におきまして、地価の動向について御指摘がありましたので、本年3月の地価公示の際に、国土交通省がまとめたこういったものを御紹介してと思いまして、準備いたしました。

まず、Iの概況ですが、ここは全国的には下落が続いておるという中で、地域によっては横ばいや上昇も見られるという中で、3つ目の丸ですが、利便性・収益性の差や個別の地点のおかれた状況によって、地価の二極化・個別化がより進行しているというような分析がなされております。

IIの特徴にまいりまして、最初の丸はいまお話しした内容ですので、その次ですが、景気の悪化による企業活動の停滞、雇用情勢の悪化、所得の減少などが土地の需給バランスに影響を与えているというふうに分析されております。

あと、個別の具体的な事例のほうで、「1.三大都市圏」、特に「(2)商業地」については、東京都の区部都心部で、高度商業地や海外ブランド店舗の立地が進んだ地区、再開発や交通基盤整備が行われた地区では、上昇や横ばいの地点が増加したと。あるいは、区部の都心部以外でも、駅周辺で大規模な再開発が展開されている地区においては、上昇や横ばいに転じた地点が現れた。大阪や名古屋でも同様の記述がなされております。

他方、2の地方圏にまいりますと、地方都市の中心商業地では、消費が低迷する中で、郊外型量販店の進出等もあり、大規模商業施設の撤退や中小小売店舗の閉鎖により、大きく下落しているところが多い。その中で、ブロック中心都市の高度商業地では、大規模な再開発が展開されている地区等において、ほぼ横ばいやわずかな下落となった地点が現れたというような分析になっております。

このように地価の動向は、その地域の経済動向ですとか、あるいは産業構造、社会構造の大きな変化の中で生じてきておりまして、やはり税制のみで対応できるようなものではないと考えられるかと存じます。

また、地価については、これまでのように、バブル経済の崩壊に伴う調整過程という見方だけではなく、ここに現れておりますような我が国産業、社会構造の変化といった面からの検討を行うということも1つの論点かと思われます。

あと、次のページ以降は、この分析に添付されております関係データを御参考として掲げたものですので、説明は省略させていただきます。

続きまして、先日の積み残し、『土地税制(国税)関係』という資料、これは時間のほうも相当押しておりますので、ポイントのみ御説明させていただきます。

1枚おめくりいただきまして、目次をご覧いただきたいと存じます。ここではまず、ただいまの分析を含む地価の推移等、基本データをお示ししておりまして、その後、土地税制改革の考え方や土地基本法というものの資料を並べております。その後に土地の譲渡益課税制度の概要という資料を何枚か整理しておりますけれども、ここのポイントは、バブル期に課税強化されたものは、現在、すべてそれ以前に戻っているというところかと存じます。中にはバブル期以前より負担が軽減されているというものもございます。

そのあと、登録免許税についての資料を整理して並べております。概要、課税根拠、特例措置、負担調整措置についての資料となっております。登録免許税につきましては、現在、8,000億円ほどの税収となっており、厳しい財政事情の中で貴重な財源になっておること、また、平成6年度の固定資産税の評価替えに対応する形で、課税標準を減額する特例措置を講じていることなどがポイントとして挙げられるかと存じます。

そのあとに主要諸外国との比較、また、もう1つの関連の税であります印紙税の概要を掲げさせていただいております。そのあと、中期答申及び14年度の年度答申の関連部分をお示ししております。

各資料につきましては、これまでご覧いただいておるのも相当ありますので、今日は大変失礼とは存じますけれども、詳細な説明は省かせていただきたいと存じます。

私からは以上です。

委員

ありがとうございました。後ほど質問が出たら、またお答えいただきたいと思います。

残った時間で、今日は、これまで個人所得課税と資産課税をやってきました。これをまとめる方向で、ここの議論の集約的な方向で議論いただきたいと思いますので、まず素材を事務局のほうから提供してもらいたいと思いますので、よろしくお願いします。

事務局

お手許に2種類、メモとして、簡単な項目表がお手許にお届けしてございます。

まず、所得税あるいは個人住民税の関係で、『事項メモ(諸控除の見直しを中心に)』と書きました横長の2枚綴じのものがございます。これは、これまで御説明いたしました資料、あるいは検討していただきました事項につきまして、諸控除の見直しを中心に並べただけのものでございます。ご覧いただきながら、言い残された点につきまして御発言ちょうだいすればということでございます。

諸控除のことを中心にいたしまして、6番に本日の年金の話を入れておりますのと、住民税につきましては、個人住民税の均等割の点が掲げてございます。

それから、右下のほうに点線以下、資産性所得、租特、あるいは納税を支える制度という関係で、申告制度あるいは資料情報、公示制度のあり方といった点につきましては、まだ御議論をいただく時間を設定してございませんので、後日これは設定させていただくことにいたしまして、本日はこの点線の前のところまでをお願いしてできればと思っております。

それから、左下に「諸控除の見直し 1.見直しの視点(別紙)」というふうにございますが、これは次のページをおめくりいただきまして、これまで2回ほど個々の見直しにつきまして、制度につきましての御議論をいただきましたが、全体を通じて見直しの視点といいますか、物差しといいますか、そういったものも御検討をちょうだいしたほうがよろしいかと思いまして、本日の討議の素材ということで、会長の御示唆もいただきまして、一応、仮置きをさせていただきました。十分かどうかわかりませんが、一応3点並べております。

1つ目が課税ベースの拡大ということで、税負担の空洞化を是正するという観点が1つ。

それから、簡素化・集約化するという視点で、所得税でございますので、当然、個々の人の生活の事情に配慮しておりますけれども、それをどこまで配慮するのか。括弧にございますように、婚姻、育児、老齢、親との同居、疾病といった様々な事情があって、それぞれが控除に対応しているようなところがございます。それをどこまで配慮するか、簡素化・集約化が可能かというような視点があるかなという感じがいたします。

それから、3点目は、社会経済構造が変化する。そのこととの関係で、控除をどう整合的にしていくかという点があろうかと思っております。例えば、男女共同参画社会の推進ということで、前々回もゲストスピーカーもおいでいただきましたが、配偶者控除や配特の関係があろうかと。あるいは、雇用慣行の変化と給与所得控除、退職所得控除との関係とか、あるいは少子・高齢化と扶養控除、老年者控除、あるいは本日の公的年金等控除の関係とか、そういう形の切り口も考えられるかなということでございます。

もちろん、この3点とも次元も角度も異なっておりますので、いろいろ優先順位その他御議論は個別にはございましょうし、例というところもほかにもつけ加わるべきものはたくさんあると思いますので、この点の御討議をお願いできればと思います。

それから、もう1枚のほうは、『論点メモ(相続税・贈与税)』という縦長の紙がございます。これは、前回、相続税・贈与税を御討議いただきましたときにも見ていただきましたものではございますが、これは縦長でございますけれども、まず、相続税・贈与税を取り巻く環境の変化ということで、少子・高齢化で相続の時期がライフサイクルの後半にシフトしている状況とか、老後の扶養について、公的な社会保障の関係と、同居・介護の状況をどう見るかといったような、少子・高齢化という観点の環境の問題、あるいは経済のストック化、税制全体の再分配機能の弱まりというような前提を3つ掲げておきました。

それから、相続税・贈与税の税体系としての基本的な枠組みといたしましては、相続税・贈与税の課税根拠、所得税との関係の整理といった点、あるいは課税の方式、贈与税と相続税との調整の関係。

さらに、相続税・贈与税の各論に入りますと、それぞれ基礎控除、税率構造のあり方、あるいは特例措置といったような項目が挙げられようかと思っております。

それから、この点線の下のほうに、民法との関連ですとか執行の問題、あるいは前回御提議がありました信託との関係、あるいは延納・物納といった関係を掲げております。この点については、まだ論点が尽くされておりませんが、また後日の時間をいただくことにいたしまして、本日は点線の上のほうで基本的なところを御議論ちょうだいできればと思っております。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

以上、事務局から続けて残した宿題も含めて御説明いただきました。残った時間で、最後に事務局からお出しいただきました論点メモの2つあるもの、つまり、諸控除の見直しの視点というところと、それから、相続税・贈与税の論点メモあたりが、これから我々が前向きにどういう形で取り組んでいくかという切り口を示してくれているわけでありまして、ぜひこの辺を念頭に置いて御議論賜ればと思いま す。

また、土地税制も時間の関係で簡単に御説明いただきましたが、またこれはいろいろな形で今後の議論にも響きますので、この辺を含めて、残った30分ほどで有意義な討論をしたいと思います。どうぞどなたでも。

委員

短く1点だけ。考え方みたいなものですけれども、結局、財政の健全化ということを念頭にしていかなければならないと思いますし、国民もそう思っているとは思いますが、どうしてこんなに財政がひどくなったのかという問題について、やはり非常に批判もあると思います。最終的には広く薄くというふうに負担を広げていかなければならないということは、私も理解いたしますけれども、国民の中には、例えば長い間景気対策にあまり効果のない減税を行ってきたけど、この減税の恩恵を受けた人というのは、税金をそれまで払っていた人、考え方ですけれども、そういう人が受けたのであって、もともと払っていない人は、そういう恩恵はないわけですから、これを立て直すのに改めて広く薄く、今まで払っていない人、空洞化の問題ですけれども、というふうに素直に受けとめない部分も多いと思います。ですから、広く薄くということで、ある部分は当然財政の健全化のためには、当面厚くしていかなければならない。でないと、政治的になかなかうまくいかないのではないかという思いが私の意見です。

委員

ちょっと細かいところなのですが、私が個人的にいつも気になっているところです。横に書いた「『諸控除の見直し』の視点」というところで、「社会経済構造の変化との整合」というのがあって、私はいまだにこの男女共同参画社会というのはどういう意味なのかよくわからない。知らない間にささっと出てきて、こういうものだという定義がいつの間にかあるようですが、これはもうちょっと、男女共同参画社会というのは一体何を言うのだということを練ったほうがいいのではないか。特に税制とか生活に密着する制度を変えようとする場合、何か一面的な主張だけで制度が引っ張られるというのは、いかがなものかという感じがしております。

それから、ライフスタイルの多様化ということですが、雇用慣行の変化ということを挙げていらっしゃいます。給与所得控除、退職所得控除などを例示されているわけですが、要するに、年功序列とかそういったものが崩れつつあって、個々人がそれぞれの仕事の仕方、勤務の仕方をするようになったと、こういうことを言いたいのでしょうけれども、一方で、いまの状況を見ますと、リストラということが無視できない規模で広がっているわけです。何が言いたいかというと、例えば1枚目のページの5番目に退職所得控除があって、就業形態の多様化とあって、これが多様化していて、長期勤続も一般的なスタイルではなくなってきたと、こういうことでありますが、しかし、リストラとか希望退職とか、こういう人員の整理ということが行われる場合、退職金というのは非常にまた別の意味で重みを増しているという一面もあるわけでありまして、これはあくまでも一例を挙げているわけですが、あまり一面的な現象だけに重点を置いてバサッとやるというのは、いかがなものか。要するに、多面的に見ていく必要があるのではないかという考えです。

委員

いまの委員の御意見に関連するのですが、1つは、男女共同参画会議、私も実はその企画委員をしていますが、税制上これを是正しようという、私もこの間そういう発言をしたのですけれども、一番基本になるのは、男が女を扶養するという考え方はやめようではないかと、それは差別だというところから発しているわけですよね。ですから、いろいろな控除があってもいいのですが、男が女を扶養するという、これは明治以来の、多分、男が強い、女性は弱い、家の中に引っ込んでいろという社会思想、あるいは社会制度というか、そういうものがずっとつくり上げられてきて、それがいろいろな制度に浸透しているということで、これを1つ1つ取り除いていこうという考え方で出発していますので、そこは急に出てきたものではなくて、法律にきちっとなっていますし、国民が挙げてこれをやっていかなければいけないということで、これをうまく税制で控除を取っ払ってやろうかという便宜的な、そういう利用してやろうかというようなものではないわけです。もっと非常に基本的な、社会制度を変えていこうということの1つにたまたま税制が来たと。ほかにもたくさんあると思いますけど、そういう意味だと私は理解していますので、私が説明しなくてもいいのだけれども、私はそういう意味でこの間も発言していますので。

それから、別の問題ですが、前回欠席しましたので、そのときに新聞報道では、所得税課税最低限の引下げに関連して、最低税率を10%から中間の……

委員

全然議論していませんよ。勝手に書いているんです。

委員

そうなんですか。基礎小委で一致したと書いてありましたので。

委員

いや、そうかな。一面のほうでしょう。基礎小のではなくて、別途取材したという視点で書いたのではないですか。

委員

報道がありましたので、それをちょっと確認しておきたかった。

委員

ここでは一切やっていません。

委員

それから、もう1つは、いま事務局の説明でありましたが、土地税制に関して、経済界でいろいろな提言がなされたり、陳情がなされているわけですが、バブル期にいろいろな、地価税が代表的なものですが、あの手のものでつくった制度がいまだに残っているというような認識がまだ経済界にあって、先ほどの説明では、もうそういうものはなくなっているということで、そうであれば、もう少しそれをきちっと言っておく必要があるのではないかと。

それから、土地取引に関して、税制がどのぐらい邪魔しているか、制約要因になっているのかどうかというところも、きちっと政府税調としては言うべきことを言っておく必要があるのかなと思います。

委員

後段おっしゃられたことは、実は私も事務局にお願いしようと思ったのです。僕は昨日あるパーティーに出ましたら、ある不動産会社の社長がつかつかやってきて、バブル期の過酷な税をまだ引きずっているのは、土地取引にとって最大の障害であると、こういう調子で何かガーガー言ってきた人がいて、私は、もうそんなのはとうに撤去していて、バブル経済のときよりは軽くなっているというようなことを言ったけれども、納得しない人がいて、大分口論になったのですが、ぜひ数字で、例えばバブル期の前と、バブル期の頂点と、バブル期以降、3ポイントぐらいとって、例えば様々な税の税率なり自己負担なり等々あれば、一回出していただいたほうがいいと思いますよ。もっぱら土地税制が景気の足を引っ張っていて、それを景気対策でやれというような論調ですから、ここで言っているのとちょっと違いますので、そういうのは数字でもって対抗するのが一番いいと思いますので、ちょっと宿題としてお願いします。

委員

とりわけ諸控除見直しの視点というところをずいぶん丁寧に見ていただいたとは思うのですけれども、論理的に何が起こっているかというのは、これだけの文章からはよく見えないという感じがあって、とりわけ、簡素化、集約化のあたりを一番思うのですけれども、私だったら言うだろうというのはこういうことなのですが、例えば老齢の問題というのは、年金制度というものが整備されてきた。それから、疾病に関しては、健康保険の制度、介護とか、そういうものがきちんと整備されてきた。それは親との同居などでもそうだと。そういう制度上が変わってきた。それから、社会経済構造としても、婚姻とか親との同居とか育児とか、そういうものに関わるのだと思うのですけれども、やはり家庭とかそういうものではなくて、個人というものが生活の単位になってきている。したがって、課税単位というのも世帯から個人に変わりつつあるのだということをもう少し強調されて、それで、むしろ簡素化・集約化が可能かというよりは、そういう制度とか社会構造の変化を受けて、こういう形で税はそこまで面倒を見ない。むしろ健康保険とか年金とかそういうものに任せるべきだし、課税単位も個人にすべきだというような形にされたほうがいいのではないかと思います。

それに関連して、もう1つちょっと気になるのは、課税ベースの拡大というのが、税負担の空洞化の是正というだけでいいのかというのが少し気になっていて、これはやや私個人のスペスフィックな意見かもしれないのですけれども、やはり所得税というものは、単年度、暦年課税である。いわゆる包括所得で定義してしまっているというのは、少し時代に合わなくなりつつあって、ややライフサイクルを通じた、人生を通じて所得課税というものがあるのだというふうに考えるべきではなかろうか。

そうだとすると、ライフサイクルの中で単年度の所得が少ない年もあれば、大きい年もあって、それをならすためには課税ベースを広げたほうがいいと。むしろ累進というところは、1つはもちろん課税最低限でもとるのだけれども、それに加えて相続税をきちんとする。どういうことかというと、相続税についても累積課税という形で、ライフサイクルを通じて相続させていくのだという形で、そういう方向で見直すというふうにされたほうが、論旨が明快になるのではないかと思います。

委員

相続税と贈与税の問題につきまして、前に、本来であればこれは統一できればしたほうがいい、しかし、長期間累積して課税していて、最後に相続税で調整するということは、納税者番号なり、納税者カード制度ができないと無理ではないか、というようなことを申し上げたことがあると思いますけれども、農地について言えば、生前贈与した人は、ずっと納税猶予しておいて、最後に亡くなったときに相続税と統合して対処するということになっていますから、これはいま一生累積。しかし、農地を子供に譲るのは、大体5、60歳代だろうとは思います。

それから、農地についていえば、農業委員会があり、あるいは農地法の規制もありますから、そこはできるのかなと思いますけれども、制度としてはそういうものもある。したがいまして、農地が、いくつぐらいのときから贈与されているかわかりませんが、先ほどの委員のお話にもありました逆世代間扶養という、御自分がもう現役を引退される年、60歳なり65歳、このあたりを1つの境にして、例えば60歳、例えば65歳以上の人なら、累積して相続税の控除額というか、課税最低限までは累積していっていいと。年齢を60なり65で切れば、平均寿命からして、15年、20年ぐらいであれば、現行の税務行政でも対処できるかもしれない。全面的にやるというのは、またその必要もないと思いますから、そういう限定的な仕組みにすれば、現時点でも両税の統合ということはできないこともないのかなという気がいたします。

事務局

今回の税制論議は、総理もおっしゃっておるように、抜本的な税制論議をやるのだと。どうも総理は20年ぐらいの先を想定しているというような話のようですが、どの程度のスパンを想定した税制論議をやるのかということも1つポイントなのだろうと思うわけです。

御存じのとおり、特に所得税におきましては、人口構造の変化というものがあって、あと4、5年もしますと、総人口が減少するという時代に入ってくるというようなことでございますし、いま現在65歳以上の方の人口の比率が17~18%でございますけれども、これが2025年には30%近くになってくる。このような急激に高齢化する社会の中で、どの程度のスパンを持ちこたえるような税制論議を行うのかというような、1つのポイントなのだろうと思うわけで、特にその観点で議論をしていただければと思うわけでございます。

委員

やはり税金は、理屈が合えば、取り分が少なくてもしようがないというのはおかしい考え方ではないかなと思いまして、30兆円の落差というか、足りない部分をどうやって埋めていくかというのは、最終目的のように思います。

それで、この借金部分がどうしても残っているということが、イコール、将来不安の根源になっているわけでして、その将来不安がある限りは、多少の減税で経済を活性化しようなどということをやったところで、全く効果がないのは明らかだと僕は思っています。ですから、ここに挙がっているのは全部そうだと思うのですが、要するに、増収を可能にすることでできることは、全部やっていくというのが筋ではないかと思います。例えば公的年金の最低保障140万円というのが何ゆえに140万円なのかはわかりませんが、これを100万円にするとか、定率減税は当然やめるとか、その結果、生損保控除とか医療費控除もやめる。配偶者特別控除も要らない。給与所得控除というのは、これは日本社会のバッファーですから、実額ではなくて、ここのところだけは多少いい加減にしておくのがいいのではないかと思いますが、あとブラケットの幅も左のほうに寄せてしまう。そういう可能なことを全部やって、トータルで税金を増やしていくというのが目的ではないかと思います。

あと、男女共同参画の部分でも、103万と130万の壁というのは、これはこの前見せてもらった折れ線グラフで、この程度の曲がりでそんなに世の中変わるのかというのは正しいとは思うのですが、ただ、心理的なものがあるのと、雇用者のほうでこれを利用しているというのは、やはりよくないので、これを何とか工夫して小さい額にしてしまうということによって、実際に壁を設けるメリットをなくするということを考えていったらいいのではないかと思います。

委員

この諸控除の見直しのペーパーを見ながらちょっと思い出していたのですけれども、租特の話というのはどこかに消えてしまったような気がしていて、僕は毎回出席しているわけではないので、大変あれなのですけれども、租特の話はこういうときこそ同時に議論していかないと、何となく立ち消えになっているような気がして仕方がないのですけれども、僕はそのときに、1つ1つの租特の成立していった過程の実証的なものと、当時のエピソードを含めた、1つ1つの租特が決まったときのデータが欲しいということと、それから、そういう効果の測定というのをちゃんとやってきたのかどうか。もう要らないのだと思うのだけれども、僕はそれをなくすべきだと思っているのですが、こういう業界エゴだけ残していて、そして、こっちのほうの諸控除の見直しの議論をしていくというのは、国民は納得できないのではないかなと思うのですが、租特の話というのは、どこか消えてしまったんですか。どうなんですか。

委員

いえいえ、消えてはいないのですけど、これは所得控除の中で生損保控除だけ租特ですね。したがって、控除を一々当たっていきますと、自然に租特という外枠の話になりますから。ただ、御指摘のとおり、租特については絶えず念頭にありますので、課税ベースを拡大するというときには、それが陰に陽に絡んでくるのは事実でありまして、当然のこと絡ませて議論していますが、特に法人税関係のときには当然それが出てきますし、住宅ローンのときも……住宅ローン控除は租特か。ここで租特と言われているのは何と何ですか。ちょっと説明してください。

事務局

租税特別措置法に規定されているもの、あるいは本法に規定されているもの、いろいろ切り口がございますけれども、保険料控除や、住宅ローン控除も含めまして、所得税の租税特別措置ということでございます。

それで、先ほど事項メモには、右下のほうに租税特別措置等というふうに、これから別の時間を設けるというふうに私ども意識しております。諸控除のほうから入りましたので、順番がこういう順番になりましたが、委員がおっしゃるとおり、課税ベースという意味では相互に関連することでございます。

委員

この前のデータだと、ただの一覧表だったので、具体的に、もう30年も40年もたっているのがありますでしょう。住宅の問題よりも、もっと前のいろいろな細かいもの、業界的なものですね。ああいうもののデータをきちんと積み重ねたものを出してもらえればありがたいのですけど。でないと議論にならないですよね。とっくに使命を終えているものがいっぱいあるわけですから、早く整理したほうがいいと思うのですが、そのためにはデータが必要ですね。

委員

また租特のときに再度出していただく。何かありますか。

事務局

まだ個別の租特について十分御議論いただく余裕もなかったということもございますが、私どもなりになるべく出せるものは努力したいとは思います。ただ、逐一の租特について、その評価ということまで、率直にいって、御要請にこたえることはなかなか難しいような気がいたしますけれども、改めて検討させていただきます。

委員

この表の中でどう考えるかということですけれども、まず1点で、この議論をいろいろされていて、なぜ課税ベースを広くして改革するのだと。それは税が空洞化しているからだ、というのでどこまで国民を説得できるかというのが1つあると思います。したがって、なぜこれをやるのか。そういうことを具体的に答える中で、いろいろな性格の控除があると思います。これ全部に手をつけるのかとか、どうやって始めるのか、ある意味で改革の仕分けみたいな整理が必要だと思うのですけれども、いま租特とか、ある意味では直接的な改革なのでしょうけれども、この中で性格が違うと思うのは、配偶者控除の問題をいろいろ議論しましたけれども、ある意味で現実に主婦の労働供給というところで問題を起こしている。それが税あるいは社会保障両方なのですけれども、そこで原因があるならば、それを正そうと。そして、その中で主婦に対する扱いをどうするのだという形でこれは議論すべきだし、そういう形でできるだろうと。

それから、高齢者の問題というのは、やはり公的年金の社会保険料を払うとき、もらうとき、両方で引いている。そして、何よりも同じ所得があっても、若い人よりも負担が軽くなるとか、あるいは給与所得と両方控除ができるとか、基本的に問題がある。これは国民的にも合意ができるだろうと。したがって、配偶者控除の問題と高齢者の扱い、ここは正面から論点を出して、国民に問うべきだと思います。

あと、給与所得控除と退職所得控除も、個人的には重要だし、だけどある意味で、この際どこまでやるのか、税が悪さをしていくというか、本当に問題が起きている、本当に不平等なのだと、それを国民が納得してもらえる、あるいはある意味で納得させる努力も必要だと思うのですけれども、そういうのをある意味で焦点を当てて全力でやる。

ただ、悩ましい問題は、さっき5%という話が出ましたけど、必ず下のほうで負担が増えるわけですよね。だけど、ある意味でそこをどうするか。配偶者控除を取ったときに、主婦に対してというか、ファミリーに対してどうするのだと。それでも結果的に負担が増える人がいたときに、私の意見は、それが改革になるのだと言い切れるような線でやるべきだということを思います。

委員

いまおっしゃった点は重要で、これからいくつもいくつもある控除を全部押し並べて同じような扱い方はできませんから、おそらく切り口をちゃんと決めて、こことここが議論の優先度が高いというような議論をしなければいけないと思います。

委員

先ほどの発言に一言だけ言わせていただくと、いまどき男に養われているなんて思っている女性はいないと思いますよ。その一言だけです。

それから、先ほどの委員がおっしゃったところとも関係するのですが、基本的に所得税の見直し論議で、所得税というのは相当いい加減な税金というか、いい加減な組み立てになっているというような感じは私しない。けっこうよくできている税金だなと日ごろ思っているので、これをあまり、全くいけない、いじめるというのはどうかという感じがいたします。

それから、もう1つ、先ほどの委員の発言と若干関係するのですが、ここにはないのだけれども、所得税というのは、これ以外にかなり理論的にはいい加減なものがある。1つ挙げれば、例えば株は100万円まで無税だと。これはどうなのだと。あるいは純粋なる貯蓄である401kを公的年金の扱いにして、給付を非課税にする。これはどうなのだと。ここには書いていないようなもの、むしろそっちのほうがいい加減だなと思えるものがけっこうある。それにも少し触れておかないと、こっちのほうばかりやっていると、何か片手落ちかなという感じがする。

それから、もう1つ、どうしても所得税と相続税の話があるのだけれども、消費税を議論するのは、いつごろから、どの程度というような、何か会長なりの腹案はございますか。

委員

いずれにしても、連休明けに消費課税をやります。そこで個別のほうも入るかもしれませんが、やる機会は少なくとも1回、2回はつくりたいと思っていますから、そのときにどうぞ御発言ください。

委員

地方で公聴会というか、国民との対話集会をやったことで、何回も会長がおっしゃっているけど、増税をにおわすような、論理的にそこに至るような話は、なかなかものが言いにくい。状況がいろいろあるから。それはそのとおりだと思うんですよ。特に課税ベースの拡大論、空洞化の是正ということをやれば、誰が考えたって、これは増収策ですよね。それをかなり正直に問題提起するのは、こちらは自民党税調ではないから、政府税調だから、どういう表現を使うかはいろいろ考えてもいいと思うけれども、これはもう明らかに増収策です。

もう1つは、さっき個別の控除についていろいろな議論があったけれども、言えば必ず不利になる人が出てくるんです、こんなものは。一々御配慮をしていたら、元の木阿弥なんだ。確かに該当者は不利になるかもしれないけれども、従来のものが歪んでいたからこれを直すのだということを堂々と言わなければいけない。個別の反論はいくらでも出てくるわけだから。それは税調の腹の決め方なのだと思うのです。ただ、そうはいっても、勇ましい議論を私やっているけれども、悩ましいことはもう十数年から税調にいるからよくわかるのだけど。

それとは別にさっき男女共同参画社会論があったけれども、僕も個人的にはあまり納得しないけれども、しかし同時に、これは我が国の時代の風潮であることは歴然たるものなんだ。僕は怖い――怖いと言ったら悪いけど、この議論をやる女性をたくさん知っているんだ。こんなものの前で出てみなさいよ、えらいことだから。僕は納得しないよ。しかし、あなたが言っていることはわかるよ、時流に乗ろうかというだけの話だ。

委員

忘れたような話ですけど、道路特定財源の話、これはもうやはり入らないわけですか。

委員

環境税の話あり、間接税あたりでどこまで出せるかですけど、いまちょっとデータを集めてもらいたいと思いますが、項目としては出るかもしれませんが、道路特定財源は何せ歳出に絡む話ですから、難しいんですよ。密かに我々は、少なくとも私は、諮問会議へ行ってはこれをやってくれと言っておるのですが、向こうもテーマが多くて、なかなか小回り効いて動かないんですよ。ただ、我々として問題意識を持っているということは、何らかの形で意思表示する必要があろうと思いますし、場を設けたいと思っています。おそらく歳出面のほうの議論にもかかわりますので、また合同会議をやったときも問題提起したいと思っていますが、やはり本当は先に打ってもらうべきは諮問会議なんですよね。また呼ばれたら行ってきます。

委員

簡単に申し上げます。私、2回公聴会に出席させていただいたのですけれども、その公聴会を通じて感じたことは、やはり税負担の空洞化はおかしいと思っている国民が相当いるということです。前の津の公聴会でも半分以上がそうでしたね。所得税の最低の税率10%、納税者の8割が10%のところだというのは、やはりいかにもおかしいし、ここは是正する必要がある。ということになると、やはり何らかの控除の縮小は必要なのでありまして、大どころである給与所得控除と配偶者控除、配偶者特別控除は、手をつける必要があると思いますね。これは相当抵抗が強いですよね。そう簡単にできるものではないと思うのですが、やはりそういう問題点は指摘する必要がある。

個人所得税の最高税率の引下げなんていう意見もあるようですけど、そういうような状況ではないわけであります。そういう視点から見ると、既得権化している。いずれの控除も既得権化しているというのは、やはり問題でありまして、給与所得控除もそうですね。既得権化しているわけですね。これはやはり経費的控除にとどめるべきであります。ただ、その際、何が経費であるのか、消費支出なのか、非常に判定が難しいですね。そういう点について、ブループリントを出していくぐらいのことはすべきだろうと思います。

委員

時間になりましたので、次回の予定を御説明したいと思いますが、総会がいま26日に予定されておりますので、これまで我々がやってきました個人所得課税とか資産所得課税等々を一応整理して総会に出したいと思います。また新しい角度からの議論もあろうかと思いますので、ぜひぜひ小委員会の委員の方はおでかけください。

それから、この基礎小は、5月10日、金曜日になりますが、1時から社会保障及び消費税等について議論いたしたいと思います。高山さんに来ていただいて話を聞くことになっていたのではないかな。そういう形で、だんだん少なくなってきますが、主要なテーマを極力詰め込んで、いろいろ御議論をいただきたいと考えておりますが、と同時に、議論も整理していく過程に入らなければいけないと思いますので、両面からいろいろやっていきたいと考えております。

よろしゅうございますね。では、どうも今日はありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。