第10回基礎問題小委員会 議事録
平成14年4月12日開催
〇委員
基礎問題小委員会、10回目になりますが、開催いたしたいと思います。今日は出席率がいいです。ただ、まだ席上に来ていない方がいらっしゃいますけれども、追々お見えになると思います。
本日は、財務省の尾辻副大臣がお見えになっています。よろしくお願いします。吉田財務大臣政務官が遅れられ、それから、塩川大臣も2時半ころにお見えになる、あるいは、谷口副大臣も3時ごろにお見えになるということでございますので、機会を見つけて御発言をいただけたらと思っています。
それでは、すでに議事の御案内を差し上げていると思いますが、きょうも3時間ほど予定しておりますので、途中は休憩を入れたいと考えております。
きょうのメインの一つは、経済産業省の産業構造審議会から吉川さんに来ていただきまして、後ほどプレゼンテーションをいただくことになっています。
その前に、二、三、御報告をし、本論に入りたいと思いますが、その御報告の最初は、月曜日にやりました、帯広での「税についての対話集会」でございます。これは、すでに二回やりました千葉とか鹿児島と同じようなことでやりましたが、会場が若干狭かったものですから、200人というような大きな集会ではなくて、127人お見えいただきました。今回は、たしか93%が男性であって、女性がきわめて少なかった。それで、若干年齢は若返りましたけれども、やはり40代、50代の方が大半だったということでありまして、平日のその時間にやりますと、どうしてもしようがないなという感じは抱きました。
神野さんに司会をしていただきまして、あと、水野忠恒さんと佐野さん、つまり我々4人行きまして、向こうで十分な議論をしてきたつもりでございます。
新聞での報道が、もう三回目ということもあって、やや報道が少なかったということもあるのですが、最大の理由は、うまくいき過ぎて新聞ダネになることがなかったということです。議論もきわめてスムーズに建設的なやりとりであり、かつ、非常に質が高かったと思います。そういう形でやって、あとの記者レクで「うまくいった」と言うと、記者諸君は書くことがないから……。書いてくれたらしいけれども、削られたとか言ってましたから、そういう意味で、少ないほどいい結果が出たと、これからお考えください。
どんな議論があったか、二、三、御紹介しましょう。端的な問題としては、我々は、増税は避けられないと考えている、さはさりながら、その前にやることがあるではないか、それは徹底した歳出削減だ、ということです。あるいは、将来の社会保障の合理化、これをしっかりしてくれないと将来の増税はできないとか、あるいは、国と地方の税源配分もしっかりやってくれと、こういう要望がございました。
それから、新聞にも一部御紹介ございましたが、源泉徴収の納め方によるサラリーマンの納税者意識の希薄化、これは避けなければいけないので、申告制度、あるいは、年末調整をなくして確定申告をすることは考えられないかとか。それから、お2人、意見発表者で女性がいたのですが、配偶者控除についてはお2人ともかなり否定的でありました。主婦ではございましたけれども、働く女性の社会進出を妨げるという声が多かった。それから、消費税の中小特例を見直してもいいではないかとか、ATMに税金をかけるのはどうだとかいう新しい御提案もございまして、皆さん、かなりいろいろなことをお考えだなと考えております。それから、相続税を強化するほうの意見と、生前贈与を拡大すべきだという御意見がございまして、それなりに議論は活性化したと思います。
例のトータライザーを使ってアンケートに答えてもらうやり方も、千葉市と鹿児島市とほぼ同じでございまして、税は広く薄く負担したらいいではないかというのは非常に多いし、それから、個別の事情ではなくて、複雑になり過ぎる税はよくない。つまり、税は不公平をなくす方向で改革してほしいと。それから、割れたのは、例の、福祉サービスを現在の水準に維持させるためには負担増はしようがないというのと、いや、困るから公共サービスを下げてくれというのと、拮抗したようなことでございまして、税負担あるいは社会保障負担についての抵抗はかなり大きいと思います。あと財政赤字の解決について、歳出削減と増税の組み合わせが必要だというのは半分を超えておりましたので、この辺は大体の意見のコンセンサスかなと思っております。
津以下、まだ三回ございますので、どういう結果になるか、もう少し見極めたいと考えております。
それでは、最近出ました「デフレ対策」につきまして、事務局のほうから簡単に御説明ください。
〇事務局
お手元に、「『デフレ対策』についての緊急提言」という3枚ほどの紙があるかと思いますが、これをご覧いただけますでしょうか。4月2日でございますが、与党3党の政策責任者会議で取りまとめられたものでございます。同日、官邸の福田官房副長官のところへ申し入れがあったというものでございます。
見ていただきますと、中身のほうでございますが、大きく分けまして四つのパートに分かれております。
Iが「財政政策」、「II.経済活性化に資する税制改正」ということでございます。これは、また戻りまして詳しく御説明したいと思います。2ページ目でございますが、第IIIパートといたしまして、「財政投融資の積極活用などによる需要創出策」、3ページ目、「IV.規制改革の促進」ということでございます。
1ページ目に戻っていただきまして、「経済活性化に資する税制改正」ということでございます。そこにございますように、「構造改革を促進し、また、経済活性化に資する税制改正について、できるものは年度内にも改正・執行を図るよう早急に検討を進めるべきである」ということでございまして、1枚めくっていただきまして、具体的な検討項目といたしまして五つ挙げられております。投資促進減税、相続税・贈与税の改正、住宅投資促進に係る税制、土地流動化・有効利用促進ということで、基本的にバブル以前に戻すということ、五番目が、交際費課税ということでございます。
以上、簡単でございますが、御紹介させていただきました。
〇委員
それでは、法人課税の概略を、事務局から御説明いただいて、そのころ大臣がお見えになるかもしれませんので、それを待って、吉川さんに御説明いただくということでございます。
では、お願いします。
〇事務局
それでは、「基礎小10-4 資料(法人税関係)」という資料をお開きいただきたいと思います。法人税の現状について御説明申し上げます。
目次をご覧いただくと、後半のほうでは、経済活性化に絡む幾つかの資料をご覧いただきたいと思いますが、目次を2枚おめくりいただいて、1ページをお願いいたします。法人税収の推移でございますけれども、一番右、14年度予算で11兆2,000億円という税収になっておりますが、さかのぼって見ていただきますと、ピークのころには20兆円弱といった税収でございます。折れ線グラフが一般会計税収に占める法人税収の割合ですが、平成の初めのころまでは3割から4割のウエートを占めておりましたが、最近は、税収の減に伴いまして2割程度のウエートまで下がってきております。最近の企業収益の悪化、あるいは後ほど見ていただきますが、税率の大幅な引下げがこの下降の原因であろうかと考えております。
次のページをご覧いただいて、いつもご覧いただく資料でございますけれども、平成11年で欠損法人が69.9%、約7割ということでございます。黒字法人が3割でございますが、このうち右のほうから、黒い部分、資本金1億円以上のいわゆる大法人が全体の0.7%でありますけれども、下に見ていただきますように、このグループによって7割近い税収を確保させていただいているのが現在の法人税収の構造でございます。
3ページをご覧いただくと、赤字法人の割合を中小と大に分けてつけてございます。上の三角のグラフが中小法人の赤字法人割合、下が大法人でございます。直近で、中小法人が70.2%、大法人が49%でございました。好況期にも、中小法人は5割程度の赤字法人割合がある意味で構造的にあるということでございます。
4ページは、いつもご覧いただく資料でございまして、最近、欠損が増えているということで、詳細は省略させていただきます。
5ページでございますが、法人企業の付加価値の内訳です。左のほうは資本金1億円未満の中小企業、右のほうが資本金1億円以上の大法人ということで、上のほうから網かけで、役員給与、従業員給与、こういった社外流出が中小企業は非常に大きくなっております。「法人成り」といった議論が昔からございますけれども、こういった役員給与、従業員給与等、損金性のある社外流出で、中小企業の場合には構造的に赤字になっている要素があるのかなというふうにも考えております。
6ページをご覧いただきますと、これも、いつもご覧いただく表ではございますが、最近、法人税につきましては、企業間・産業間の中立性の確保、あるいは経済活性化という観点から、できるだけ課税ベースを広くとりながら、税率を下げるという努力をしてきておりまして、30%まで下がってきているということでございます。
1ページお飛ばしいただいて、8ページでございます。主要国の法人の基本税率の推移を1980年代からとってございますが、各国とも税率を引き下げる流れにございまして、日本は、ピークの43.3%から30%まで下がってきております。諸外国とも大体同じでございまして、特にドイツが、56%から、最近25%まで下げております。先進国並みには日本の法人税率の水準は下がってきている、ということであろうかと思っております。
9ページは、地方税まで含めたところの実効税率の国際比較ということで、ご覧いただきたいと存じます。
10ページに移っていただきまして、国民負担率の内訳の国際比較ということで、いつもご覧いただく表でございますが、全体的な租税負担率、日本は22.9%ということで、諸外国に比して低うございます。その中で、法人所得課税、縦線の部分ですが、日本は5%で、G5の中ではまだ高いほうにございますが、個人所得課税や消費課税については日本は低いということで、先ほど申し上げた先進国並みの税率をさらに引き下げるというときには、税負担全体、あるいは税体系全体の御議論をいただいた上で検討していただく必要があるのかなと思っております。
11ページからは、少し長期的な資料をつけさせていただいております。先般、この会合で私どもの谷口副大臣から、シャウプ勧告の法人擬制説がいまも通用するのかどうか、あるいは、商法・企業会計と法人税というのはどういう関係に立つのか、そういった御議論もお願いしたいというプレゼンテーションがございました。それに沿って資料を幾つか用意させていただきました。
シャウプ勧告がございました昭和25年からの法人税率の変化のところどころに、大きな改正を入れさせていただいております。昭和25年のシャウプ勧告は、御承知のように、法人税は所得税の前取りであるという考え方で、いわゆる二重課税を調整する仕組みといたしまして、配当税額控除、受取配当益金不算入という仕組みとともに、留保分につきましても、未分配留保所得に対する利子付加税というのを法人段階でかけて、個人段階では、有価証券のキャピタルゲイン課税をするという仕組みがございました。これが、昭和20年代の後半に、留保金の部分の課税が見直されまして、キャピタルゲインについても昭和28年に非課税にされるということで、シャウプ勧告の変容が進んで、昭和29年からは、同族会社について現在のような留保金課税を行うということになっております。
その後、法人税について、擬制説か実在説かといった観点もさることながら、経済の動きに合わせて自己資本の充実等の政策課題に対応するということで、法人税が伸びている中でいろいろな見直しが行われておりまして、特に、昭和36年に配当軽課税率というのが創設されました。昭和40年に法人税法の全文改正がございまして、こういう体制でずっと来たのですが、昭和63年、消費税の議論がありましたときに、法人税率について税率を下げる方向に方向が転換しております。そういう中で配当軽課税率の廃止があり、受取配当益金不算入については不算入割合の引下げが行われたということでございます。
平成10年からは、課税ベースを拡大するといったことで、引当金の廃止等の見直しがあって、ここで、いわゆる企業会計と税について、別々の観点から制度を構築していこうといった感じになってきております。最近は、御承知のように、金融商品の時価評価の導入とか、企業組織再編税制の整備、連結納税の導入といった、法人税の中のインフラの整備を進めさせていただいておりまして、今後、連結納税が本格的に定着いたしますと、先ほどの税収、回復するのはなかなか難しいのかなというふうに思っております。
12ページが、負担調整に関する仕組みでございますが、説明は省略させていただきます。
14ページは、いま申し上げた商法・企業会計・税法との関係、あるいは、最近の商法・企業会計の動きに合わせた税法の見直しについて、整理させていただいておりますが、これも詳細は省略させていただきます。
16ページをご覧いただきますと、先ほど、中小企業の法人成りというお話をさせていただきました。シャウプ勧告が、法人を個人の集合と見て、個人企業との間で税負担の公平を維持するといったいわゆる法人擬制説的な発想をしていた、こういった認識は、所有と経営があまり分離していない実態にある小規模法人については、依然として当てはまるのかなという考え方も持っております。こういう観点からアメリカやドイツを見ますと、小規模法人については法人課税を行っていない例もございます。今後の法人税を検討する場合には、引き続き、小規模法人に対する課税問題というのは一つの課題としてあるのではないかというふうに、私ども、認識をいたしております。
17ページ、18ページは、中期答申での問題指摘を書かせていただいておりますが、新しいテーマとして、投資や企業活動のビークルとしてさまざまな事業体が登場してきております。18ページでアンダーラインを引かせていただいたところ、外国で設立されるパートナーシップや、リミテッド・ライアビリティー・カンパニーといった新しい事業体について、法人税の世界でどう取り組むかということも、今後の検討課題の一つであろうかと認識いたしてございます。
以上が、法人税の本体の話でございますが、19ページ以降は、経済活性化の関係で、設備投資減税や試験研究関係の資料をつけてございます。
19ページは、主な設備投資減税の推移ということで、14年度は2,900億円ほどの減収額になっておりますが、見ていただきますように、おおむね中小企業が中心でございます。それに、省エネ、公害、障害者対策、地域の振興といった面で、現在、設備投資減税を租特という形でやらせていただいております。
20ページ、21ページが、同じような制度が外国でどうなっているかという表でございます。ざっと見ていただきますと、アメリカで、バリアフリー、公害防止、イギリスで、中小企業、試験研究、ドイツでも、中小企業、商船・漁船、フランスでも、公害、省エネ、電気自動車といったような、特定の政策目的でこういった投資減税が行われていることが見て取れようかと思います。
22ページをご覧いただきますと、最近の設備投資の動向を示してございます。デフレ状況下で企業の業績が低迷しておりますので、現在、企業は設備投資を減価償却費の範囲内に抑えているという姿が見えます。平成3年は、減価償却費の37.1兆円に対して64.2兆円と2倍近い投資をしておりましたが、現在は、減価償却費の8~9割の水準に設備投資が低迷しているということでございます。
23ページ、稼働率で見ましても、現在、8割台で低迷しているということでございます。
24ページは、経済産業省の研究会の資料をつけさせていただいております。法人部門、最近は全体で資金余剰でございますが、見ていただきますように、キャッシュフローが増えましても設備投資は下がっております。有利子負債の圧縮に回っているということで、企業の最近の活動で、キャッシュフローはなかなか設備投資に回らずに、バランスシートの調整で活用されているというのが現状であろうかと思います。
25ページ、26ページは、レーガン政権下の法人税制改革についての資料がつけてございます。前に説明がございましたので省略いたしますが、25ページの下に、注をつけてございます。いわゆる「ヤング・レポート」というのが、1981年の改革と86年の改革の間の85年に出ておりまして、そこで法人税につきまして、中立的な課税ベースの拡大による税制の歪みをなくす改革が必要だ、という提言がヤング・レポートの中でもなされておったということでございます。
27ページが、増加試験研究費の税額控除制度、ちょっとややこしゅうございますが、日本の制度をつけてございます。簡単に申し上げますと、過去5年のうち、上から3期の試験研究費よりも増えた分の15%を税額控除するという仕組みでございます。一方、中小企業については、試験研究費の総額の10%を税額控除するという仕組みになっております。
28ページが、この研究開発関係の税制の国際比較をつけてございますので、ご覧いただければと思います。
29ページが、試験研究費の最近の推移。ほぼ11兆円ぐらいで推移しているのが現状でございます。
30ページは、先日の諮問会議で、大臣のほうから、研究開発と税制について問題意識を出させていただいた紙でございます。「経済活性化」のためには、こういった研究開発の分野を含め、一番下のマルに書いてございますように、競争力強化とか、産業構造改革についての明確で具体的な国家戦略が前提にあって、その上で総合的な施策の中で税制を考えていきたいというのが、大臣からのメッセージとして出させていただいております。
31ページ、32ページは、いつも見ていただいております、既存の租税特別措置、長きにわたるものがまだたくさん残っているといったようなデータでございますので、ご覧いただければと思います。
33ページ以降、最近、アジアとの比較で日本の法人税について御議論がございますので、その関係の資料を若干つけさせていただいております。33ページは、法人税率のアジアを含めた比較でございます。中国33%、韓国27%等、2割台後半から3割のところにアジアの法人税率はございます。
34ページ、35ページが、アジア諸国の租税負担の状況でございます。G7諸国との比較以上に、アジアの場合は国情が違いますので、比較するのがなかなか難しゅうございますが、白抜きで出てございますように、まだ発展途上国ということで消費課税中心の税体系になっております。おそらく経済発展や税務執行体制が整備されますと、今後、場合によっては所得課税のウエートが高まるといったこともあるのかなと思います。それから、香港やシンガポールは都市国家であるといった点も、念頭に置いて比較する必要があろうかと思っております。
36ページ以降は、アジア諸国における労働コストの比較、あるいは37ページから、主要都市のいろいろなコストの比較をJETROの資料でさせていただいております。税負担のみならず、こういった労働コストとか、アジア諸国における企業や会計の法制、あるいは治安とか政情といったことも、当然、企業の立地には影響するだろうということで、ご覧いただければありがたいと思います。
39ページからは、若干毛色が違いますが、公益法人制度につきましても、税調で、収益事業の範囲とか軽減税率について御議論いただいておりまして、最近、NPOや中間法人等、新しい形態も出ておりますので、全体について引き続き御検討いただきたいということで、簡単な資料をつけさせていただいております。
非常に資料が分厚うございまして、ざっとした説明で恐縮でございますが、「10-4」の説明を以上にいたしまして、もう一つ、「10-5」という2枚紙がございますので、ご覧いただきたいと思います。先般の経済財政諮問会議で、平沼経済産業大臣から、独自の実効税率というのが提示されました。政府税調でこれまでお使いいただいておった実効税率とどこが違うのかということが、若干議論になりましたので、簡単に頭の整理だけさせていただこうと思って、2枚つくってございます。
政府税調の実効税率は、御承知のように、国・地方の法人課税の税率を組み合わせた総合的な税率水準ということで、日本は、法人税、事業税、住民税の税率を組み合わせまして、40.87%ということになっております。アメリカも同じように、カリフォルニア州をとりますと、40.75%でございます。アメリカの場合、50州すべて税率が違いまして、ニューヨークなどは、そこにございますように、ニューヨーク州に加えてニューヨーク市でも取っているということで、カリフォルニア州にかえてニューヨーク州を使いますと、アメリカの実効税率は45.95%になります。それから、マイクロソフトなどが立地をしておりますワシントン州は、州税が非課税でございまして、ワシントン州をカリフォルニア州のかわりに使うと、国税だけになりますので、アメリカの実効税率は35%、こういう関係になるわけでございます。
産業大臣が使われた実効税率は、そこにございますように、日米それぞれ10社の企業の連結財務諸表上の、分母に税引前当期純利益、分子に法人税等を持ってきまして、この10社の平均をしたものということで、日本企業は47.1%、アメリカ企業は33.6%、この間に14%程度の格差があって、日本の法人課税は重いというお話でございました。
これについては、次のページで幾つか留意点を整理させていただいております。経済産業省が用いられたこの「実効税率」をご覧いただく場合には、個別企業の特定事業年度の実際の活動結果を反映した事後的な「税負担水準」でございますので、[1]、[2]と書いてございますが、企業会計上の「利益」と税務会計上の「所得」に相違がございます。企業の投資や財務行動等によりまして、各事業年度のこの実効税率は大幅にフラクチュエートするという点、それから、税率が低い外国や州での活動が大きくなりますと、結果としての実効税率は低くなるといった点に、留意していただく必要があろうかと思います。
さらに、連結納税制度の影響もございます。アメリカは連結納税制度を導入しておりますので、分母の利益も分子の税額も圧縮されておりますが、日本はまだ導入されておりませんので、分母の利益は圧縮されておりますが、分子の税額は圧縮されていないという点で、日本企業のこの実効税率はアメリカよりも高くなる可能性があるという点に御留意いただいて、見ていただく必要があろうかなというふうに思っております。
大変長うございましたが、以上でございます。
〇委員
大変よいタイミングで、いま、塩川大臣がお見えになりました。よろしくお願いします。
その前に谷口副大臣もお見えになっております。それから、尾辻副大臣と吉田政務官もお出になっていらっしゃいますので、適宜、何かございましたら御発言ください。
それでは、地方税のほうを簡単に御説明ください。
〇事務局
それでは、「基礎小10-6 地方法人課税・外形標準課税説明資料」とございますが、お開きいただきたいと思います。
まず、1ページでございます。法人事業税収の推移、法人税と大体同じような動きをしておりまして、平成の初めには6兆円以上あった税収が、14年度には4兆円を切っているという状況でございます。
2ページ目、これも法人税と大体同じでございまして、例えば資本金100億円以上のわずか0.03%の会社が、約3分の1を納めていただいているということでございます。
3ページ目、欠損法人割合の推移でございます。上が全法人、下が、資本金が1億円を超える法人でございますが、いずれも、最近ずっと欠損法人割合が高まってきておりまして、全体では7割、大法人でも5割の欠損法人があるということでございます。
4ページは、法人住民税の法人税割の税率の推移ということで書かせていただいております。現在、17.3%ということになっております。
5ページが、法人事業税の税率の推移ということで、昭和25年にできまして、最初は12%、これがずっと続いておったわけでございますが、それが平成10年に11%、平成11年に9.6
%となっております。
6ページでございます。法人所得課税の実効税率。先ほども財務省から御説明がありましたとおりでございまして、実効税率、現在は国・地方合わせまして40.87%でございます。例えばアメリカの場合、先ほどもございましたとおり、ニューヨーク市ですと45.95%、カリフォルニア州ですと40.75%という状況でございます。
7ページでございます。外形標準課税の検討の経緯ということでございます。昭和24年にシャウプ勧告がございまして、付加価値税ができたわけでございますが、実施されないまま廃止。先刻御案内のとおりでございます。平成11年に当税制調査会におきまして、地方法人課税小委員会の報告を受けまして、その後、事業税の外形標準課税を検討させていただいてきております。そして、一番下でございますが、14年の「構造改革と経済財政の中期展望」におきまして、11ページ、下線がございますとおり、「法人事業税の外形標準課税については、平成15年度税制改正を目途にその導入を図る」というふうにしていただいたところでございます。
13ページ以降、外形標準課税の大体の仕組みを書かせていただいております。
14ページをお開きいただきたいと思います。先刻御案内のとおり、現在すべて所得にかかっているそれを、所得の部分を半分にしまして、最終的には、一番右のところでございますが、半分は所得、残り半分を付加価値割と資本割ということで、「資本割」という概念を入れさせていただいたところでございます。
最後でございますが、16ページをお開きいただきたいと思います。先般、3月26日、東京都の銀行税訴訟の判決がございましたので、その概略を御報告させていただきます。
原告は、当時、18行でございました。3をご覧いただきたいと思いますが、「請求の趣旨」ということで、(1)東京都のこの銀行条例が無効であることの確認。(2)でございますが、平成13年4月1日開始事業年度に係る事業税、これはまだ申告納付されていない部分でございますが、これについて「更生・決定処分をしないこと」、それから、「租税債務が無いことの確認」ということでございました。
三点目でございますが、すでに納付している分でございます。(3)平成12年4月1日開始事業年度に係る事業税につきましては、所得を基準とした税額を超える部分を返してくれ、それに還付加算金をつけてくれということ。
そして(4)が、それぞれ18行が損害を被ったということで、損害賠償請求でございます。
これに対します判決は、4にございますとおり、(1)と(2)は、行政処分性が認められないので却下するということ。(3)につきましては、原告の要求をほぼ全面的に認めております。(4)の損害賠償につきましても、損害の程度の認定が要求と若干変わっておりますが、損害賠償及びそれに対する利子の支払いを命じたところでございます。
以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。いまの御説明に質問もあろうかと思いますが、吉川さんの御報告を受けまして、まとめて一括審議、法人税関係をやりたいと思います。
吉川さん、お待たせしました。よろしくお願いします。
〇委員
本日はこの税制調査会、こうした発表の場を与えていただきまして、私、大変光栄に存じております。
お手元の資料の中に、「我が国産業の現状と今後の政策の方向」というA4・1枚紙、それから、A3の非常に大きい横長の2枚紙、それから、A4の横綴、資料3という番号が小さく振ってあると思いますが、「我が国産業の現状と今後の政策の方向」という少し分厚い資料、三つ用意してあるかと思います。それに沿いまして、20分ほどお時間をいただいておりますので、お話をさせていただきたいと思います。
先日来、塩川大臣から、法人税の問題を議論するためには、日本全体としての産業のあり方、あるいは競争力について基本的な論点をきちんと整理して、基本方針を明らかにしてから各論的な議論をするべきではないか、そのようなお話があったというふうに、私、認識しております。本日は、そうしたことを踏まえまして、私、経済産業省の産業構造審議会・新成長政策部会の部会長をさせていただいておりますので、そうした立場で基本的な考え方を述べさせていただく。また、皆様方が税の審議をされる上で若干の御参考になるのではないかということで、基本的なデータを紹介させていただく。そうしたことを踏まえた上で、私どもの部会でも議論されている税についてのこともつけ加える、大体そういうことでお話しさせていただきたいと思います。
まず第一は、少し資料を離れまして、基本的な考え方、そもそも論のところから話をさせていただけたらと思います。ここ10年くらい日本経済は調子が悪いということは、皆様方、共通の認識だろうと思います。具体的な数字で言いますと、高度成長期は、日本経済は1955年から70年くらいまで、実質ベースで平均10%の成長をしておりました。その後、オイルショックをはさんで、安定成長期と呼ばれますが、75年から90年くらいまで、平均の成長率は4%であります。
それに対して、バブルが弾けたあと、90年代に入りましてから直近まで、平均の成長率は1%か1%弱。10・4・1という形でなっているわけであります。この1%の成長というのは、日本経済の過去の経験から見ても、非常に悪い。また、日本よりも成熟した他の先進国と比べても非常に低いわけであります。日本と中国、シンガポールを比べるのはミスリーディングでありますが、日本の先輩格に当たるアメリカ、あるいはEU諸国でも3%くらいの成長をしているわけです。したがって国際的に見ても、日本の過去に照らしても、非常にパフォーマンスが悪いという事実があるわけです。
そこで、俗に景気対策ということも言われるわけですが、いろいろな政策が試みられたわけですけれども、持続的な経済成長を生み出すことには、この10年、失敗したというのが基本的な認識です。一体なぜだろうか、また、持続的な研究成長、他の先進国がなし遂げているような2~3%の成長をするには一体どういうことが必要なのか、どういう問題があるのか、ここら辺が私どもの基本的な関心事項であります。
そこで、考え方でありますが、きわめて重要な論点としてまず三つのことを挙げさせていただきたいと思います。経済成長というのは、そもそも中身が変わって成長していくものだ、新陳代謝がポイントなのだ、これが一番目であります。
二番目は、グローバル化。日本経済を考える場合でも、日本だけで考えていたのでは足りない。グローバル化の中でこれを考えなければいけないということです。
そして三番目でありますが、いろいろなことを考えていって、経済成長とか、経済の活力の大もとは一体何だろうかといいますと、昨年、閣議決定された政府の基本方針、いわゆる「骨太の方針」でも掲げているわけでありますが、最後のところは「人間」といいますか、しかも、人間の中の頭といいますか、知識の「知」です。これは必ずしも受験勉強的な意味での知ということではなくて、個性、料理、スポーツ、芸術、そういうことをすべて含んだ広い意味での「知」が、経済の活力、あるいは経済成長の源泉である。言いかえれば、経済学ではしばしば「人的資本」という言葉も使われますが、そうしたものが経済の一番ベースになるものだと。
大体そういう認識を持っているわけですが、いまの三点はいわば大もとでありますから、大変重要なことで、もう一言だけつけ加えますと、経済の成長はどのようにして引き起こされていくかというと、先ほども申し上げましたが、中身が変わっていく。ですから、農業だけであれば、必ずどこかで天井を迎えて経済成長は落ちていく。そこに工業が出てきた。同じ工業でも、繊維産業だけであればどこかで天井を迎える。しかしながら、そこに鉄が出てくる。やがて化学、電機が出てくる、自動車が出てくる、あるいはパソコンが出てくるという形で経済は成長していく。エネルギー源を見ても、石炭であったのが石油に代わっていくというのが経済成長の源泉である。
あるいは、A3の横長の大きな紙、これは、産業構造審議会の我々の部会で昨年12月に出ました報告書のスケルトンでありますが、1枚目の左下に、「イノベーションと需要の好循環」という言葉が使ってあります。要するに、中身が変わっていくというのは我々の生活の好みが変わっていくということだと思いますが、そうした志向、需要が変わっていく、これにテクノロジーが的確に応えていくのが成長の源泉である。
これをもう少し現実の日本で言いますと、日本経済の将来というのは、課題として、高齢化、少子化、あるいは自然環境の問題。これは日本だけではありませんが、日本経済にとっても大変緊急の課題であります。逆に言えば、そうしたところに潜在的な需要がある。
一方では、IT、ナノ、バイオといったテクノロジーが出てきている。これをいかに有効に組み合わせていくか、出会わせていくか。いわばそこの出会い、"ハッピー・マリッジ"が起これば経済は成長していく、それに失敗すれば経済は停滞する。こういうような考え方をしております。
二番目のグローバル化でありますが、日本経済、言うまでもなく孤立国ではありません。我々が、現在の生活レベル、あるいは企業のあり方、社会のあり方を、ずっと保っていたい、桃源郷のように保っていたいといっても、現在の世界経済の中ではそれは維持できない。次々にほかの国が出てくるわけでありますから、黙っていれば、地滑り的にいまのレベルは落ちていかざるを得ない、これがグローバル化のポイントであると思います。我々日本を取り巻く環境が常に変化していることをきちっと押さえなければいけない、これが二番目の問題であります。
三番目の、「知」がすべてのもとにあるということは、言うまでもないことでありまして、教育から始まって、大学の活性化、あるいは、大学で生まれた技術をちゃんと商品化するためのTLOを整備する。要するにインフラ整備。政府にとっても、特許紛争が起きたときにそれをどうするかという司法の問題、こうしたこともあると思います。知的財産権をどのように守るか、こうしたすべてのことが、広い意味でのインフラづくりという点で日本はまだ大変問題がある。こういう考え方をしているわけであります。
以上、三点が大きな考え方というわけでありますが、もう少し具体的に、日本の産業がどういう環境に置かれているか、どういう問題を抱えているか。産業といいましても、製造業、非製造業、両方ございます。税にかかわる法人税ということであれば、必ずしも製造業ということではなくて、製造業、非製造業、どちらでも法人ということになるわけです。また、日本の付加価値ということで言いますと、現在も製造業の割合は、付加価値ベースですと、せいぜい3割。7割ぐらいは非製造業ですが、しかしながら、話がわかりやすいというところがございますので、お手元の横長の「我が国産業の現状と今後の政策の方向」というところで、いかに日本経済が厳しい環境にあるかということを知っていただくために、資料を用意しております。したがって、初めのほうはイメージとして製造業のお話が主となりますが、こういうことはもちろん非製造業にも当てはまる一つの例だというふうに考えていただくのがいいかと思います。
右下にページが打ってあるかと思いますが、2ページを開いていただくと、製造業の海外生産比率というのが急速に高まっております。これは、先ほどお話ししたグローバル化にかかわるところですが、わが国の製造業の海外生産比率は、ほんの10年前、まだ5.7%でありました。しかしながら、足元ではこれが14.5%と、ほぼ15%のところまで高まってきています。いわゆる「空洞化」の問題であります。
3ページですが、その結果として、当然、逆輸入の傾向も高まってまいりました。とりわけアジアからの逆輸入が重要であります。
4ページは、アジアの中でもとりわけ大きな存在が中国であります。そこに円グラフが書いてあります。左側は1988年でありますが、約10年前では繊維製品が主であるわけです。中国からは、比較的安い繊維製品あるいは雑貨のようなものが日本に入ってきていたわけですが、しかし、右側の円グラフを見ていただきますと、現在では、日本のお家芸と言われていた機械製品の比率が急速に高まっております。
皆様方、お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、ここ2日ほどの新聞にも、日本の大手の電機産業がそのベースを中国に移しつつあるという記事が大きく報道されておりました。ちょっと先走りますが、日本が生きていくためには、中国にできないものをそれに先んじてやっていく、研究開発のようなものは日本でやっていく、こういうシナリオを描いていた、あるいは描いているわけでありますが、しかしながら、研究開発も含めて、根こそぎ中国にシフトしつつあるような姿も最近生じつつある、こういうことであります。
その次、5ページですが、いまお話ししているようなことが雇用面でも大きな影響を与えている。日本の失業率は、12月が5.5%というピークで、いまは5.3%ですが、しかしながら、非常に厳しい。5ページの図などを見ていただくと、日本国内の本社、これは四半期ベースですので、グッと増えてきているところは過去2、3年ですが、ここ2、3年、海外では雇っているけれども、国内では非常に減らしている。
ちなみに日本の失業率のここ1、2年の上昇というのは、内訳を調べてみますと、大手の製造業からのリストラ、失職が大宗を占めているわけです。イメージですと、中小企業というイメージもあるのですが、実数ですと、製造業大企業からの失職者が非常に多いということです。いま見ていただいたグラフでも、海外では増やしているけれども、国内ではどんどん切っている、こういう姿が浮かび上がってまいります。
6ページですが、そもそも空洞化していくといっても、一体どういう問題があるのか。ここでよく指摘されるのが、高コスト構造であります。6ページ、右側を見ていただくと、人件費が高いのは当然ですが、産業用の電力料金とか、下側は、左が港湾、右が空港使用料ですが、こうしたところで物流コストが日本はべらぼうに高い、そういうことがございます。
7ページは、そういう中で中国、あるいは諸外国でも、各地が魅力を高めるために、法人税の優遇などをしながら「特区」というようなことをやっている、こういうことが書いてございます。
そこでということで、政策の基本方針ですが、やはり日本は頑張らなくてはいかん。そういうことであるわけですが、時間の制約もございますので、12ページ、13ページに飛ばさせていただきます。「問題の所在と政府の役割」。そこで、政府は何をやるかということですが、基本的には、経済の主役は民間の企業ということで、民間の企業に頑張ってもらうということですが、政府はその環境を整備する必要がある、これは当然のことであります。先ほどの物流コストの問題もありました。
それから、一番初めのところで、私、ちらっと触れましたが、例えば研究開発をする、特許を取る。しかしながら、その紛争ということになると、その処理が非常に遅い、特許庁の人の数が足りない。あるいは、地方大学ですばらしい発明がされたと。しかし、それが特許に結びつかないわけです。素人が考えると、特許というのは、何か特許を申請する書類でも書けばいいのかと思うわけですが、それでは意味がないので、すぐほかの会社に出し抜かれてしまう。
いまは国際競争の時代、グローバルな時代ですから、外国の企業の技術動向も知らなければいけない。日本だけで特許を取ってもしようがない、外国の特許も取らなければ意味がない。こういうことから容易に想像されるように、そうしたことができる弁理士さんが東京以外にはあまりいないと言われているわけです。こうしたところも政府がいろいろ手当をする必要があるだろう、こういうことであります。「選択と集中」ということがキーワードになります。
13ページにまいります。一番初めに申し上げましたとおり、最後に勝負のカギを握るのは「知」ですから、[1]に書いてありますが、産学官の連携などによるイノベーションのシステムを抜本的に改革しなければいけない。あるいは[4]のところですが、教育システムについても考えなければいけない。[5]は、皆様方に関係があると思いますが、競争力を徹底的に高めるために、税制改革のようなものも考えていただく必要があるということです。
この点で一言つけ加えますと、私は、税制は経済の活力に影響を与えると思いますが、るる述べてきたことからもわかるとおり、基本的な発想は、中身が変わって経済が成長していくわけですから、その新陳代謝を止めるようなことはやめる、というのは当然のことだろうと思います。
それから、伸びるところを伸ばしていく。これは、経済学の言葉で言う「外部性」のようなことを念頭に置くわけですが、研究開発投資などは外部性を持つわけです。例えば、鉄の鋼板がよくなると、それで自動車産業がよくなるというようなこともありますし、また、技術開発というのは、やっている会社、やっている研究者を超えて、次の世代に外部性を持つ。
皆様方御承知のニュートンという物理学者は、物理学を打ち立てたわけですが、「自分は巨人の肩にのってちょこっと仕事をさせてもらった、何千年来の人間の知識の上にのってその先を少し開拓したのが自分だ」と、そういう言葉を残しているわけですが、一般に「知識」というのは、現在の世代だけではなくて、次の世代にも外部性を及ぼしていくということがあるわけです。
そうしたところを税で応援する。では、新陳代謝が遅れていくところ、いわゆる弱者になるところ、そうしたところはどういうふうに手当するのか。私はこの点に関しては、個人で手当をするのが正しいだろうというふうに考えております。言いかえれば、仮に石炭という産業が、石油が出てきて消えていくときに、石炭産業を残すことをいつまでもやるというのは必ずしも正しくない。しかし、不幸にして石炭産業に勤めていた人が一時的に大変なハードシップを経験するというのであれば、財政はどういう手段なのかそれは別途考えるとして、それを一時的に応援するというのは、公正な社会として正しいと思いますが、産業という切り口で見たときに、消えるべき産業を、いかなる手段にしてもそれを温存することは基本的に正しくないというふうに考えます。
13ページ、一番下に、アジアの成長ということが書いてあります。グローバル化の中で、御承知のとおりアジアというのは大変な成長セクターであります。これは、脅威であるとともに日本にとってはチャンスであろうと。昨日ですか、小泉総理が中国に行かれて、中国は必ずしも脅威ではなくて、日本は中国とのパートナーシップのもとで互いに共存して成長していく、ということを言われたと理解しております。中国は、脅威がゼロと言ったらちょっとあれだと思いますが、しかし、脅威とだけ取るのは正しくないというのは、私もそのとおりだと思います。日本にとって、大変な成長の一つのプラス材料でもあるということだと思います。
16ページから、少し各論的なことになります。いま申し上げてきたことの中で一つ具体的なものとして、民間の研究開発投資の問題がございます。これを税で応援する制度はありますが、皆様方よく御存じのとおり、右肩上がりでR&Dの投資が増えていないと、なかなか税の上でのメリットが得られない、そういうシステムになっているわけです。その結果、この時代、右肩上がりでR&Dを増やしている会社はそんなにはないということで、16ページ、右下のグラフを見ていただくと、こうした税の控除を利用しているその額が減ってきているというわけであります。
そういうこともあって、17ページ、日米彼我でかなり差がついたということであります。
18ページには、日米のこの点に関する税制の比較がございます。もともと日本で生まれた税制を、アメリカはそれを改良しながらクリントン時代にそれを使った。18ページの右下に書いてありますが、アメリカの場合は、R&Dの増え方ということで、必ずしも増分に対する税控除ということだけではなくて、もう一つの考え方として、対売上高でのこの点の応援もやっているということであります。
19ページ、これはまた少し違った切り口です。研究開発というのは一つあるわけですが、しかし、実際の商品に結びつかなければいけません。企業が研究開発をしますが、試作一号機--とイメージ的に言っておりますが--をつくって、それが商品化につながっていくわけですが、現在の研究開発の税に関するルールのもとでは、ちょうどこの試作一号機に当たる部分が漏れてしまっている、そういう問題があるわけです。
19ページの右の図では、基礎的な研究開発、その次に試作一号機的なこと、あるいは実験工場とか、そうしたものをつくって、その後、市場投入、実際の商品化と行くわけですが、その途中のところで息切れをする。「死の谷」とアメリカでは呼ぶようですが、そうしたところがある。こうしたところも応援する必要があるのではないか。これは、やや各論的な細かい話でありますが、研究開発投資を応援するというスピリットであれば、それをもう少しきめ細かく、いま申し上げたようなところまで考える必要があるのではないかということです。
研究開発投資が滞る中、日本の設備はどんどん古くなっていくということで、21ページ、日本のビンテージが書いてあります。要するに日本の設備がどんどん年をとってきてしまっているということであります。
23ページからは、各産業について書いてありますが、すでにいただいている時間を超過しておりますので、最後のところにいきたいと思います。
以上、私が申し上げてきたことは、研究開発に関して、いろいろな側面からこれを応援するということは正当化されるのではないか、ということを申し上げたつもりであります。もう一つは、「産業の再編」という切り口もあるだろうというのが、私の最後の話であります。
経済が成長していくためには新陳代謝が必要である。要するに馬車が電車にかわる、石炭が石油にかわる、一つの企業の中でも、昔つくっていたものはつくらないで、企業の名前は変わらなくても中身は変わっている、こういう新陳代謝で経済は成長していくわけであります。こうした中で、企業の組織も改編されていくわけであります。
しかしながら、いわゆるリストラでありますが、このリストラがどうもうまくいかないところがいまの日本の問題の一つであるわけです。一番最後の33ページ、こうしたリストラを法制面からも応援することができないだろうか。例えば設備廃棄、あるいは退出に対する支援。ちなみに製造業のイメージで書いてありますが、ここに書いてあることは、非製造業--例えば流通、あるいは建設という、現在、不良債権の関係で大変問題になっている非製造業にも全く同じように成り立つわけであります。
とりあえずここに書いてあることは、設備廃棄等退出に対する支援。これもA、Bという二つの会社の話です。それから、一つの企業の組織再編・事業再構築の推進、それから、買収を通じた産業再編。こうしたときに、しばしば、税がブロックになることもあるわけですが、そこのところをきめ細かく、むしろそれを応援してやるような税制を考えられないだろうか。こうしたことを、ぜひとも皆様方に御検討いただけたらと思います。
総じて、税というのはやはり経済に大きな影響を与えると思います。初めに大きなプリンシプルのようなものを述べさせていただいたわけですが、とりあえず法人を取り巻く環境としては、例えば研究開発にかかわる論点、ここをどう応援するか。私は「応援する価値あり」ということでお話しさせていただいたつもりです。また、リストラに関しても、皆様方によく御検討いただいて、それをブロックするのではなくて、応援するような税制というものをお考えいただければ、大変幸いだというふうに思っております。
いただいた時間を少し超過しましたが、どうもありがとうございました。
〇委員
それでは、せっかく御説明いただきましたし、吉川さんにお尋ねしたいという方もいらっしゃると思いますから、20~30分、時間をとります。吉川さんの御報告の前に、事務局から二つ資料が出ております。それも含めて、法人税関係のいろいろな問題を税調としてどう取り扱うか、どう議論するかということを、これからしばらくやっていきたいと思います。
どうぞ、どなたからでも結構です。
〇委員
研究開発に対する税制の影響を非常に強調なさったわけですけれども、私の理解しているところですと、アメリカは、1986年改正で「ユニフォーム・キャピタライゼーション・ルール」というのを入れて、研究開発にかかった人件費及び一定の借入金利子について、即時損金算入ではなくて、繰延資産のように繰延べ扱いで、日本よりもはるかに不利。日本は、研究開発にかかった人件費でも、特許権なり著作権が後にできたとしても、そのつど落としていって、先にマイナス、後からプラスというキャッシュフロー的税制になっている。R&Dに対するタックスクレジットの問題は、もちろんアメリカではあると思います。その分は優遇されていると思いますけれども、ユニフォーム・キャピタイライゼーション・ルールを入れたら、どちらかというとアメリカのほうが不利ではないかという気がします。テクニカルなことで恐縮ですが、一般的な印象として日本のほうが……。「もっとやれ」というならもちろんいいのですけれども。
〇委員
「もっとやれ」、ということです。
〇委員
でも、アメリカはどうしてそういうルールのもとで伸びたんですかね。
〇委員
投資が伸びるというのは、税だけですべてが解決する問題ではないということは明らかです。税というのは、パーシャルな議論をしているわけですから、我々としては、先ほどから御説明したとおり、現在の日本経済の状況は非常に厳しい、また、日本経済の将来はR&Dのようなところにある、こういう考えを持っているわけですから、パーシャルな一つの政策としてそこのところを応援すると。外部性のようなものがあれば正当化できるわけですから、アメリカは、例えばこういうところがこうだ、こういうところがこうだ、だからやめましょう、というようなことでおっしゃったのではないと思いますが、もしそうだとしたら、そういう考えをとらずに、むしろもう少し前向きに御検討いただけたらというふうに思います。
〇委員
吉川さんにお尋ねしたいんですけれども、税制改革の問題で、新陳代謝を止めるようなことはやめるべきであると。これはそのとおりだと思いますけれども、具体的に税制上、そういう面があるのかどうか。お考えになっている点があったら、御説明いただきたい。
もう一点は、グローバル化の切り口ですと、外国企業の日本に対する直接投資の問題があると思います。これは、現状では非常に入りにくいと言われているわけです。いろいろな問題があると思いますけれども、日本の経済の活性化のためには、むしろもっと入ってこさせたほうがいいのではないかという考え方があります。この点についてはどのようにお考えなのか、また、税制に関連する問題があるかどうか。お願いします。
〇委員
いま御説明した横長資料の一番最後の33ページを見ていただくと、これは概念図のようなものだと思いますが、これは、ブロックしていると言うのが正しいのかどうかあれですが、ここに書いてあるような図だと、産業、業界としてこのように設備廃棄を行うというときに、みんなお互いに顔を見てなかなか進まないというところがあるだろうと思います、A社、B社、C社とそれぞれ違う会社なわけですから。業界全体としては設備を縮小したほうがいいとすると、それをどう割り振るかという問題だと思うのです。法律上、A社、B社、C社ですから、法人としても全然違うというときに、それを業界として丸抱えにしてA、B、Cを一緒にあれしたらば、名寄せというのは変ですけれども、一つの仮想的な会社のようにしてやって、その上でそれを按分できないか、そういうアイデアだろうと思うんですね。
もともといまのが、ブロックしていると言うのはちょっと強すぎるのかもしれませんが、お互いに顔を見て、コーディネーションに失敗するというのでしょうか、業界として会社が幾つもあってコーディネーションに失敗しているときに、それをお互いに相談して、うまくいく、スムーズにいくということが考えられないかというのが一番上の図だと思います。
〇委員
税制といまのお話、絡められますか。
〇委員
どうですか……。そこら辺は先生のほうが私よりあれだと思いますけど。
〇委員
いえいえ、そういう質問だったと思いますから。
〇委員
それともう一つ、きょうの私の資料とは全く離れてしまいますが、直投のインフローが日本経済の活性化の一つのキーだということは、我々、そういう認識でおります。きょうのプレゼンテーションと全く離れてしまって恐縮ですけれども、内閣府のほうで私どももヒアリングをだいぶやって、なぜ日本への直投インフローが低いのだろうかと。対GDP比で見た場合、主要先進国と比べて、2倍から3倍になってもおかしくないぐらいの比率なんですね。逆に言いますと、2分の1ないし3分の1という現状ですが、これは何だろうといっていろいろ聞いてみると、二つほどあります。
一つは、ルールが不透明だということが挙がってまいります。実はこれは、税に関してもそういうことが出ました。皆さん御承知のとおり、法律でどこかで書いてあるではないかというほど単純ではないわけです。そういうことも含めて、とにかく日本の市場あるいは社会は不透明だと。不動産取引などのところではずいぶん大きく出ました。不透明性が一番です。
もう一つは、直投というと、日本での雇用というのも大きいわけでしょうけれども、幹部のような人は外国人が来るわけですね。お金と同時に外国人も日本に入ってくるわけですが、日本社会で暮らすためのインフラが整っていないために、なかなか住みづらい。もうちょっと細かいことまで申し上げれば、例えば外国人が日本に来る。エグゼクティブといった感じの人が仮に来たとします。そうすると、子供の教育をどうするか、病気になったときに病院をどうするか。これも皆様方御承知のとおり、いまは規制が変わったと思いますが、数年前まで日本は、グローバル化ということを言いながら、もう一方で、病院、診療所は「うちは英語で診療ができます」ということを書くことすら禁じられていたということであります。
これはもちろん規制でありますけれども、現在はその点は変わったと思います。しかし、変わったといってもここ1、2年の話だというふうに理解しております。いずれにしても、子供の教育の問題、病気になったときの病院の問題、それから住居の問題もあるかもしれません。住居は最近改善されているでしょうが、外国人が日本に来て日本で暮らすときの広い意味でのインフラ、これは、社会全体がオープン化しなければ意味がない。
英語がどれだけしゃべれるか。道を歩いているときに、道を聞いて、どれだけの日本人が片言でも英語でしゃべれるか。シンガポール、香港、東京と比べてどうかと言われると、ここにはすぐには改善できないような大きな問題があるわけです。
こうしたあたりが、直投のインフローのブロックになっているというのがヒアリング結果でありました。しかし、こうしたところを直して直投のインフローをもっと高めるのが、日本にとっても重要なことだという認識を持っております。
〇委員
事務局のほうから法人税と最近の日本の企業投資、それから、外形標準課税を中心にお話しいただいて、吉川さんから、日本全体の産業の状況をお話しいただいたのですけれども、我々、法人税の議論に行く前に、日本の企業課税に関する事実認識をシェアすべきだと私は思います。
日本の法人税が一体どういう状態にあるのかということを、3人の方のお話から話させていただきたいのですけれども、事実として日本の企業が投資が伸びない、そして空洞化が起きている。説明いただいたように、これは事実だと思います。それに関しては、別に税だけではないし、いろいろなコストが高い、あるいは、規制が大きいということもあるかもしれないのですけれども、税に焦点を合わせたときに、日本の法人税はどうなっているんだ、どういう問題を抱えているのか、ということだと思います。
恐縮ですが、「基礎小10-4」の8ページをご覧になっていただきたいと思います。それから、2枚紙の「基礎小10-5 法人課税実効税率の日米比較」。できるだけ早くしゃべりますけれども、事実は何かということを私の理解をお話ししておきます。
まず、資料の8ページをご覧になれば、世界的に法人税率は下がっている。問題は、9ページですけれども、日本の法人所得税の状態が国際的に見て一体どうなっているのか。9ページをご覧になっていただくと、日本の40.87%というのがいわゆる実効税率です。国の法人税率が30%、地方が、事業税率、住民税率を合わせると13.50%。事業税率は、所得税を計算するときに損金算入されるとか、いろいろ制度的なことを配慮すると、日本の実効的な国の法人税率が27.37%、地方が13.50%。そのようにアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス各国がなっているわけです。
アメリカについて少し具体的に議論すると、イギリスの地方課税というのは、国税しかありませんから、イギリスは日本よりも10%低い、これは事実です。問題なのはアメリカですけれども、国税35%、地方税が8.84%、これがカリフォルニアの税なんですね。地方に法人税を預けると、非常に激しく地方間でタックス・コンペティションしますから、実効的な税負担率が下がる。
したがって、計算によるんでしょうけれども、日本が国際的に比べると法人課税の率は突出して高くなる。その要因は、基本的には日本では地方税から来ている。その事実はこの委員会としてもシェアすべきことだと思います。
〇委員
短い質問ですけれども、先生のペーパーの13ページに「政策の基本的方向(総論)」というのがある。1から7まで、さっき御説明があって、我々にいま与えられている課題は税制の話で、先生がおっしゃったような意味合いで、基本的にこれを支援することは私は正当なことだと思うのです。そうわかった上で質問するのですが、例えば1では、「産学官の提携などイノベーションシステムの抜本改革」とか、幾つかあります。これ、同時並行的に進まないと、税制だけ入れてもあまり効果は上がらないのではないかという気がするんですね。
先生は全体を俯瞰されていらっしゃるので、1から7までの間で、税制はこれから補強するにしても、ほかの項目は、いま、どの程度のテンポで進みつつあるのか。特に何が遅れているのか、税制だけが突出してダメなのか、ほかにもいろいろ問題があるのか。この全体像を総合的に勘案した場合、どういうふうな感じを持っていらっしゃるのか、教えていただきたいと思います。
〇委員
これは大問題で、それに短時間でというのはちょっとあれなんですが、ただ、税だけではなくて、全体の平仄が合っていなければ意味がないではないか、そうすべきだというのは、おっしゃるとおりです。私、大学の人間ですから、私の土地勘がある教育ということで申し上げると、例えば、初等・中等教育の「ゆとり教育」なんていうのは一つの問題です。大いに議論されるべきところだと思います。それから大学では、現在、国立大学の非公務員型の独法化ということが議論されております。平成16年度ということで文部科学省がいろいろ努力されているということに、一応現在はなっております。こういう問題もあります。
ただ、そういうこととは別の問題として、日本の高等教育システムということで見ると、例えばバイオ、バイオとみんな言うわけですね。物理化学系は、日本とアメリカの学生、修士、博士、大体1対1のオーダーですが、バイオ、生命科学関係の学生は、日本はアメリカの30分の1だというヒアリングをいたしました。バイオということを日本は盛んに言うわけですし、ここが成長的な分野だということも間違いないのですが、例えばシンガポールがそこにものすごく力を入れていると。きょうの朝、NHKでもやっていて、ひょっとしたらご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、いま申し上げたように30分の1になっている。
こういうところは、国が見ていて、一国の高等教育のあり方をきちんと考えていてもらわないといけないわけです。これは一つの例ですけれども、気がついてみると、「大問題あり」ということになっているわけです。特許紛争のことは先ほど申し上げました。特許のことが紛争になるけれども、時間がかかり過ぎる。これも、東京高裁を独法化するということで改革が進んでいるようでありますけれども、まだまだ時間がかかりそうだと。
挙げ出したらきりがないわけですが、海外とのところでFTAというのがあって、シンガポールとは結ばれました。さて、ほかの国とはどうするのか。例えばメキシコとか、ああいうところとどうするか。これも、政府としてどんどん進めているとは思いますが、こうしたことも全部、乱暴な言い方ですが、必要なこと、正しいことであれば、できるだけ早くそれを実行する。どれが一番大事かなどということを言ってるよりも、方向として正しいこと、されるべきことは、できる限り早くすべてやっていくということだと思います。
〇委員
七つ眺めて全部というのは、なかなか難しいよね。
〇委員
投資減税とか、研究開発に関する税制面での支援というのは、私は基本的に賛成です。賛成なんですが、税制という視野から見た場合、幾つかの留保条件がつくという見方をしています。といいますのは、こういう施策、税制面での支援というものは、税制という分野だけとらえると、なにがしか収穫がないと踏み切りにくいという制約があるわけです。つまり、肥やしをまくみたいなもので、それを上回る収穫があるのかどうか、そこら辺の確証がないとなかなか踏み切りにくいところがあるような気がします。その点ばかりにこだわってもいかがかと思いますが、税制という面から言うと、そういう視点を完全に捨て去るわけにはいかない。
そういうところから質問いたしますが、一つは、タイミングの問題です。といいますのは、設備投資減税なり研究開発に対する税制支援、これまでもいろいろ議論されてきておりますし、その一部はすでに実施されてきたものもある。実はこの10年間、かなりの頻度で投資減税という措置が試みられてきた。しかし、結果は必ずしも、当初予想していた、あるいは期待していたようなことになっていない。投資促進という面からすると、税制面からも手を打つタイミング、ここら辺がひとつ注目していいのではないかと思うわけです。
企業のマインドが冷えきってしまっているときに、いくら政策的な措置を施しても反応は出てこない。しかし、企業がある程度マインドを持ち始めたとき、もっと言えば、やろうかやるまいか迷う、そこに何かのインパクトがあると投資に踏み切る、そういう状況のときには効果があるのではないか、一般論的に言って。というふうに思うわけですが、吉川さんのこの資料から見て、いろいろ構造的な動きはありますが、現状において、この政策のメリット、研究開発投資の支援、これにいまのこのタイミングが非常に効くんだというようなところがあったら追加して説明していただきたいと思います。
〇委員
研究開発投資の応援というのは、マクロ経済に需要面から直ちにすごく大きい影響を与えるということは、そんなに期待できないかもしれないと。それが御指摘のポイントかなというふうに伺ったのですが、しかし、ボディブローというのでしょうか、日本の産業全体がだらだら崩れていっているというところがあるわけですから、これはやはりストップしなくてはいけない。また、そうしたサプライサイドできちっと手当をしておくことが、需要面でも……。例えば、これをあれすると景気の立ち直りが少し早くなるとか何とか、そういうことは別として、やはりきちっとやるべきことの一つだと、そういう認識を持っております。
〇委員
先ほどから挙がっていますが、吉川さんの資料13ページに、今後、経産省を含めて何をやるべきかということで、一つの論点として、例えば1番目、「日本の強みである製造業をより強くし」とか、5番目に「国家の経済・産業の基盤を形成する分野の競争力を徹底的に高める」と。
率直に言うと、これはもとの通産省がやっていた産業政策であって、吉川さんのご専門である経済学の立場から言うと、よくわからない政策であって、正当化は難しい。ただ、キャッチアップの過程では結構よかったのかなと。これだけ日本が成熟化したときに、こういう政策をやることのメリットはあるのでしょうか、というのが一つの疑問のように思うんですね。それに対して技術の開発あるいは研究開発のように、先ほどから吉川さんが主張されているような施策であれば、外部効果の問題とかいろいろあって、たしかに市場の失敗があるから、それは、もう少し恒久的に考えてもいいかもしれない。
つまり、お聞きしたいことの一つは、諮問会議と税調とでちょっとした言葉上の対立があって、税調は「公平・中立・簡素」ということを目標にしましょうと。それに対して諮問会議のほうは、「中立」を「活力」に置きかえませんか、というような竹中経済相の御発言もあるわけですね。
「中立」というのは、基本的に経済活動に歪みをもたらさないという意味で、市場の失敗があるところにだけ何らかの税制なら税制を入れましょうという考え方であって、「活力」というのはそうではなくて、市場の失敗がなくても、産業政策的な立場から少しやりましょうということだと思うのですが、そういうことにまで税制が踏み込むべきだというふうに吉川さんはお考えになっていらっしゃるのか。
もう一言だけつけ加えると、さっきもちょっと問題になったことですが、最後のページで、設備廃棄等退出に対する支援ということで、事実上、設備廃棄カルテルみたいなものもやったらどうですか、ということをおっしゃっているわけですね。これは、オイルショックのときに通産省が主として重厚長大型の産業についてやったことで、その結果、何が起こる可能性があるかというと、要するに、みんな廃棄したがっているのを、政府が音頭を取ってやめさせてあげましょうというわけです。そうすると、みんな政府頼みの姿勢にしてしまう可能性がある。
それは、実は1990年代に銀行がやったことであって、銀行がおかみ頼みにやったがために不良債権をどんどん先送りした。言いかえると、こういうことをするとかえって設備処理が先送りされる可能性もある。いま、我々が考えるべきいろいろな意味での市場における日本型の歪みを廃棄する--規制緩和とかそういうことは、そういうことを目標にしていると思うんですね。吉川さんもそういうことを前半ではかなり御主張されていたのですが、そことずいぶん話が違うような感じがする。つまり哲学として、産業政策的な活力を求めるために税制を使うべきだとお考えになるのか、それとも、中立ということに絞るべきだとお考えになっているのか、そこら辺について御意見を伺いたいと思います。
〇委員
では、手短にお答えさせていただきます。
三つあったかと思いますが、第一番目の産業の話については、初めにお断りしたのですが、たまたまきょうのプレゼンテーションでは例として製造業の話を挙げたために、鉄鋼産業とか、化学とか、そういうイメージがどうしても強かったと思います。我々産構審の部会では、従来は、鉄鋼産業、非鉄金属、輸送機械、電機という、物理的につくり出すものによって産業がリファインされて、それについていろいろなことを行政もかかわるという形であったのを、そうした時代は終わった。むしろそれよりは、横串的に、先ほどもちらっと申し上げたように、高齢化とか、環境とか、そういうところにニーズないしウォンツがあると。そうなると、従来の産業はすべてがそこにかかわるということで、例えば自動車産業は、シルバー産業であると同時にグリーン産業でもあるだろうというような形で、従来型の産業政策をイメージしたのではないということが一つです。
二番目の、中立と活力。政府の税制調査会と諮問会議の関係については、たしかにジャーナリスティックにいろいろ言われていますが、それについては私は申し上げる立場にもない。私としては、どこでも自由に議論ができて、いいものであれば誰が言い出してもいい、悪いものは誰が言っても悪い。それが私の個人的なプリンシプルでありますけれども、それはともかくとして、中立という言葉に関してお尋ねがありました。
中立と活力というのは微妙でありますが、私が、コンサーンというかそれを持つのは、公平・中立・簡素というのが税の原則として掲げられているわけですね。この三つはいいことだ、守らなければいけない原則だということなんですね。「何が公平か」という議論がありますが、そこで何かコンセンサスができれば公平はそれなりにいい、簡素もいろんな意味でいいだろう、中立もいいことだ、こういうことになるわけですね。
民間の市場がうまくいっていて、その場合には、政府がそれを歪めないという意味で中立はいい、ということになるのですが、例えば「税収中立」という言葉もあるわけですね。税収中立ということになってくると、これは、いつでも、どこでも、正しいプリンシプルかというと、そんなことは全然ないという考えを私は持っているわけです。言葉ですから、言葉をきちっと定義して使っていれば……。そういう言葉を使うなと、そんなことを言うつもりは全然ないですよ。しかしながら、いつでも、どこでもいい、「いい」という意味での「グッド・プリンシプル」としての中立性というのは、市場が失敗していないという前提のもとで歪みを与えない、こういうことだろうと私は理解しています。
そういう原則からすると、逆に市場が失敗しているケースについては、これは釈迦に説法ですが、昔から、例えば税というものが正当化される、誰でもすぐに頷くわかりやすいものとしては、環境税のようなものがあるかもしれない、こういうことですね。先ほどの研究開発も、外部性を持つ限りではそれを税で応援するのはいいではないかと。
ですから、中立性というプリンシプルが正しい意味で使われる限りでは、別に活力と言わなくても、中立でもいいのですが、中立の本義は、経済を活性化するといいますか、邪魔をしないというか、そういうところにあるだろう、こういうことです。
三点目ですが、最後の例は、新陳代謝を促進するようなことを、皆様方で、税の面でもブロックしないで、逆に応援するようなことができるならばお考えいただけないか、ということの一つの例、あくまでもエグザンプルだということで挙げました。その上で、このエグザンプルは、カルテルではなくて、むしろ退出支援。カルテルをつくってみんな生き残れるようにという話ではなくて、新陳代謝を促進する退出支援を考えるという例で挙げたつもりです。ただし、その場合でもこれはあくまでも例であって、要は、新陳代謝を応援するような税をお考えいただけないかということであります。
〇事務局
その問題に関連して、ちょっと発言させていただきたいと思います。
いま吉川先生がお答えになった、中立と活性化という問題、これは、今度の税制改正の一番大事なところだと実は思うております。その問題は、先ほどの委員もお触れになって、それから、他の委員もちょっとお触れになったようでございますが、党のほうの税制調査会、政府税制調査会、そして経済財政諮問会議、この三つを整合性を持って結論を出してもらわないかんということを私は非常に心配しておるんです。
その一番基本的な問題は、公平・中立・簡素の中の、中立というものと活性化とをどう組み合わせていくか、この問題でございまして、いろいろな議論がございますけれども、簡単に私の考えを……。事務局の考えはまだまとまっておりません。そこまで議論しておりませんので、私自身の考えを、この前、経済財政諮問会議で申し上げたのです。それは何か。中立を主張すれば、財政の中立は当然でございますから、税制の中立ということになってしまって、これでは活力の面が失われてしまう、こうなります。ところが、活力に重点を置きますと、党のほうは必ずこれに対しまして、「それでは財政の責任はとれるのか」ということが反発に出てくることは事実でございます。
そこで私は、一つの考え方として、景気刺激策に対しては税制はやはり有効に使ってもらわないかん。そのためには場合によっては減税も必要だ。思い切った減税もやってもらわないかん。当然、私たちもそう思っております。けれども、従来の政治の流れ、そして財政の結末をずっと見てまいりますと、減税をやったあとは"尻食観音"で、ほったらかし。その結果が、財政に大きく犠牲を強いていくことになっていくことが多い。しかも、減税して景気がようなってきた。ようなって、自然増収が増えたから、それをまたほかへ使ってしまうというようなことで、その繰り返しをやってきたわけでございます。
ぜひここでひとつお願いしたいことは、減税先行、景気刺激、これも結構でございますけれども、そうならばそのように、財政の一定の期間、節度のある期間というものを決めて--私はこれは、自分勝手に決めておるんですが、2010年のプライマリーバランスを黒字化にしていく時期を、一つの財政調整期間と考えておるんですけれども、その間には減税ありき、同時に、それに対する増収の措置もこうなるよということを併記しておいてもらいたい。その増収は、自然増収によるものであるのか、増税によって行うものであるのか。これは、いろいろ問題がございましょうけれども、減税をした分に対するものの措置は、予算上、どこかでそれを埋め合わせる。といって、これを短期で処理するといってもできませんので、一定の期間を置いて、その間にバランスがとれるんだと、こういうふうなことでやっていただきたい。
ということは、結論から言いまして、税制調査会の審議の中で、税の最高の先生方が集まっておられるのでございますから、税のことだけではなくして、同時に、財政とのバランスをどうするかということをちょっと頭の中に入れて、結論を出していただくように、ぜひお願いいたしたいと思っております。
なお、昨日でございますが、経団連の政策審議会がございまして、私はそこに呼び出されまして、税のことをどう考えるかというお話がございました。私は、このことについて財政との関係ということも言いました。けれども、減税をして、それが本当に責任を持って景気の対策にいいと経団連が太鼓判を押されるなら、言ってくれ。そのようなことを我々も政府税調のほうにぜひお願いして、検討してもらうようにするから、と申しました。
そうしたら、こう言いましたね。研究開発は思い切ったことをやってくれ、日本はこれが非常に遅れておるんだ、産学共同と言ってるけれども、産学共同なんか全然進んでない、だから、全部外国の大学に産学共同をお願いしなければならんことになっておる、そこらの問題をしっかりとひとつ議論をやってくれと、これが一つのことでございました。
同時に、税ではないけれども、減税の効果がそれほど直接出ないということであるならば、公共料金との問題等も一つの意見として考えてくれたらどうだろう。例えば工業用水、あるいは高速道路。こんな高い高速道路があるか。だから、こういうような問題も考えてくれたらどうだろう、と。
いずれにしても、税が経済の活性に役立つという意見を税制調査会に大いに期待しているということでございましたので、どうぞひとつよろしくお願いいたします。
〇委員
大変大きな宿題を出されましたが……。
〇事務局
すみません、どうも勝手なことを言って。これは私見でございますが、財政と税制との関係というものはぜひ考えていただきたい。私は、減税先行は時期として必要だと思いますけど、ほったらかされたら困るということで、お願いいたしたいと思います。
〇委員
吉川さんの介添人として来たわけではないんですけれども、委員の御議論の中にもございましたとおり、いろいろの理解の仕方がちょっとずれておりますので、私のほうから補足的に説明させていただきたいと思います。
いま、塩川大臣のほうからお話も出ましたし、委員と吉川さんの議論の中にもございましたが、中立性というときに、一番狭義の中立性というのはレベニュー・ニュートラリティ(歳入中立性)と。税の中に入り繰りは認めるけれども、トータルでは税収としてはコンスタントでやる、こういう議論のフレームをつくる場合と、フィスカル・ニュートラリティ、これは財政の支出も含めて、あるいはフローストックのやり繰りも含めて、全体の中で議論をする。これは、税収よりも少し広い意味でのニュートラリティ、こういうようなものが制約の書き方としてあると思います。
もう一つ、この点では、単年度でニュートラリティを考えるのか、それともマルチイヤーで考えるのか、こういう差がございます。シングルイヤーで考える場合が多いわけですけれども、先ほどの委員がメンションされましたレーガン・マークIIの税制改革においては、期間中立的な形でレベニュー・ニュートラリティの制約を5年間でやると、こういう考え方がございました。この点については先ほど塩川大臣が、先に減税的な要素を入れながら、あとでちゃんと担保してくれと。こういう考え方は、期間におけるニュートラリティの一つの考え方であると思います。
こういう税収、あるいは財政全体のニュートラリティの問題と、資源配分との関連におけるニュートラリティの問題は、若干違った問題であるということは区別しなければならないテーマだろうと思います。委員がおっしゃった中立というのは、完全競争というように、公共財も存在しなければ、外部性も存在しないような状況の中で中立というコンセプトでは、何もやらないほうがいい、政府は存在しないほうがいい、こういう形でニュートラルは定義されるわけですけれども、実際には公共財が存在し、エクスペンシャが存在し、租税の徴収の手段である税それ自身もディストーションを起こす、こういう状況を出発点にしたときには実はニュートラリティの意味は違ってくる。
これは個人で言えば、効用とかウェルフェアを損なわない、あるいは企業で言えば、企業価値、利潤というものを達成するときに、できるだけその損失が小さくなるような形でこれを中立化していくのが、本来的な理論的な意味であるわけです。これをやろうとすると、税収中立、あるいはフィスカル・ニュートラルの中で、どのような税項目、あるいは、課税ベースと税率をどうしたらいいかという形で、問題は、中立性の意味が次善的な意味にならざるを得ない。
そういう点で言いますと、中立性というのは、例えば歳出では、農業に補助金を与え、ある特定の産業にエクスペンシャで支出の面で補助を与えているという状況と、税の取り方が、ある部分のところには中小企業軽減である、大企業は40.87 である、こいような形でやりますと、産業間の中立性が保てないような状況が起こってくる。それが、生産性の並び方から言うと歪みを起こしており、最大のアウトプット、付加価値を生み出すために税が邪魔をしている、あるいは支出が邪魔をしているということになりますから、そこを平準化していくことがここにおける中立性である、という具合に理解しなければならないのだろうと。
その意味で中立というのは、アウトプット・マキシマムゼーション、あるいは、企業価値最大化と両立するような形で課税されているかどうかということであって、活力とは本質的には矛盾しないという具合に理解しなければならない、あるいは必要条件として理解しなければならない。こういうことだろうと思います。そこはひとつ御議論を整理していただければという具合に思います。
〇委員
一点だけ。先ほど事務局から御説明のあった資料、22ページで、設備投資と減価償却。かつては減価償却のほうが半分ぐらいあったのが、いまは減価償却が設備投資を上回っているという現状。それから24ページで、どんどん資金が余剰になって、キャッシュフローは非常に豊富であると。しかし、設備投資は伸びず、結局、有利子負債の低減に充てられているということでございます。企業としてはお金がないわけではない、投資機会がないのだろうと思います。
もう一つ、30ページの資料。産業セクターからセクター外への研究投資、その部分の3分の1は海外に出ているということでございます。したがいまして、日本国内において研究投資も含めた投資機会がないとしても、東南アジアであれどこであれ、外国の投資環境がいいとすれば、企業としては積極的に外へ出ていく、そういうことが日本の産業にどういう影響を与えるのか。さらに、日本の経済活動全体として見れば、いまや、経常収支というか、貿易収支よりも所得収支のほうが大きくなっているという環境でございます。
そういった意味におきまして、日本の企業がどんどん外へ出て投資をしていくということであれば、所得収支等を中心として、日本経済もそれを受益するわけですから、そういう場合を産業の空洞化といって阻止しなければいけないのか。日本経済活動全体として、まさに吉川先生のお話にあったグローバルな観点から世界的に発展していくということであれば、そこはそう心配をする必要もないのではないか。しかし、それはやはり日本の産業構造を弱めてしまうということで、非常に心配だと考えるのか。そこはどんなふうに考えたらいいか、ということでございます。
〇事務局
吉川先生にお伺いいたしたいのですが、先ほどから13ページのことをめぐっていろいろ意見が出ております。国家として競争力を高めるための戦略的な施策体系を構築していくべきだという御意見ですが、先ほどから聞いておりますと、システマティックに対応して平仄を合わせている。例えば、税制もやる、また、体制も整えるといったようなことがあるわけですが、実は何をやるのかといったような少々焦点を絞ったことについて、先生のお話では言及されておらなかったのですが、そのあたりはどうなんでしょう。どのようにお考えなのか。
〇委員
いまのお話、全体として二つあったのでしょうか。一つは、現在の投資の状況に言及されて、企業はキャッシュフローを持っていないから投資をしないのではない、投資機会がないから投資をしていないのだ、と。おっしゃるとおりだと思います。逆にひるがえって考えますと、法人税が投資に与える影響というのは、もともと、それが企業のキャッシュフローに影響を与えるから投資に影響を与えるのだというのでは必ずしもないわけですね。そういうことが指摘できるかと思います。
もう一つ、空洞化の問題で、例えば日本の企業が中国に立地するということは、そう憂うべきことでもないだろうというようなお話だったかと思いますが、既存の財を日本ではなく中国でつくるというのは、企業がやっている以上、合理的なんですね。それを無理やりに止めることは何の意味もないと思います。
しかしながら、中国との関係などで説明したのですが、日本経済、あるいは日本が将来も発展していくためには……。既存の財の生産については海外立地はどんどん進むでしょうが、よく言われるように、次世代のものをどんどんつくっていかなければ日本経済の将来はないということなわけですね。そうしたところで研究開発というもの、あるいは一番初めにもお話ししましたが、要するに付加価値ということですから、高付加価値のところに移っていかなければいけないということです。
限られた時間で恐縮ですけれども、わかりやすく言えば、付加価値というのはレストランのようなものを考えていただければいいと思うんです。料理というのは、加熱する、調味料を加えるといっても、物理現象、化学現象として見れば何の変哲もないわけですけれども、「味」というところで全く違った値段がつくわけです。これこそが付加価値であって、それを生み出すのは広い意味での「知」だということを申し上げたわけです。これが、製造業でも非製造業でもすべてのところで成り立つということで、付加価値の低いところはどんどん海外にいくだろう、しかしながら、高付加価値のところを次々に日本は生み出していかなければいけないということで、きょう、研究開発を具体的に指摘させていただいたということです。
それから、副大臣の御指摘については、短時間では到底申し上げられません。それでお答えとしては、例えば私ども内閣府では、活性化に関するプログラムということで、教育から始まってさまざまなことをやっております。それは、諮問会議で毎回資料は出ておりますし、国民誰にでも手に入る形で情報開示されていると思います。今年に入ってからの経済財政諮問会議の配付資料を見ていただきますと、13ページに書いてあります教育についても、イノベーションについても、国際化についても、4月3日だったと思いますが、つい先日の会議でも、グローバリゼーションと大学の活性化の話をやりました。雇用についてもやりました。そうしたところでの資料が、どういうことが議論されているか、国としていまどういうことをやっているか、ということについての一番の情報源ではないかということでお答えにさせていただきます。
〇事務局
いま私が聞いたのは、塩川大臣が最近、いろいろ発言に幅があるわけですけれども、先日、戦略的な成長産業で傾斜配分をするという御発言もあったわけです。本来、戦略的な体系を構築するということになりますと、ある程度の焦点を絞る。それに対して税制上、その他の制度体制も合わせていくといったことのほうが、むしろ満遍なくやるという対応よりも好ましいのではないか、このような観点での質問です。
〇委員
それについて一言だけお答えさせていただきますと、それについては政府としても全然考えていないわけではないわけで、御承知のとおり、昨年の「骨太の方針」ですか、重点分野--予算をそこに重点的に配分する。まさに世の中がそちらのほうに動いていくだろうというところを、重点分野として掲げたわけでありますから、そういう分野が成長分野だというふうに日本政府は考えている。私は、それは基本的に正しいのではないかなというふうに考えております。
〇委員
吉川さん、予定した時間の30分以上もお引きとめしまして。非常に議論が活性化したということで、よかったのではないかと思います。
それでは、ここで5~6分、休みたいと思います。
〔休憩〕
〇委員
それでは、再開しましょうか。皆さん、席におつきください。
後半のテーマは、相続税と贈与税という形でやります。時間が押していますので、説明を若干短めにしていただいて、あと議論したいと思います。資料が膨大なので、少なくとも30分ぐらい提供しますから、事務局から御説明いただきます。
〇事務局
お手元に、「相続税・贈与税(メモ)」という縦長の1枚紙をお届けしていると思います。これから相続税・贈与税について御説明させていただきますが、内容が多岐にわたりますので、説明の便宜上、全体の構成とか論点などについて、簡潔に整理したものが、この一枚紙でございます。これを適宜御参照いただきつつ、説明を聞いていただけたらと存じます。
実際に用います資料は、右肩に「基礎小10-7」と入った「説明資料(相続税・贈与税関係)」、これをめくりながら説明させていただきたいと存じます。
まず、この資料の1ページでございます。わが国の現行の税法におきまして、無償の財産移転という場合に、受け取った側にどのような税が課されるのかというのを整理したものでございます。例えば個人から個人への移転で、親子等親族間の場合、生前であれば贈与税、相続・遺贈であれば相続税。親族でない第三者に対するものについても、生前であれば贈与税、遺贈であれば相続税、また、個人から普通法人への移転については、移転の時期にかかわらずに、いずれも法人税という形での課税が行われております。また、法人から個人への移転では、所得税と一時所得の扱いになりますが、法人間の資産移転であれば、法人税という形になっております。
このように相続税・贈与税につきましては、所得に対する課税と近いところにありますけれども、勤労の対価などである所得と無償の資産移転である相続・贈与、あるいは、反復継続的に発生する所得と、一生に一度か二度で人の死を契機に発生する相続、こういった性格の違いから別体系で課税する方法をとっている、という整理が可能かと思います。
1枚めくっていただいて、2ページにまいりますと、さきの中期答申におきましての整理を抜粋させていただいております。下線部ですが、「相続を契機とした財産移転に対する相続課税の課税根拠については、基本的には、遺産の取得(無償の財産取得)に担税力を見出して課税するもので、所得の稼得に対して課される個人所得課税を補完するものと考えられる」という整理がなされております。
もう1枚おめくりいただきますと、金子宏先生の書籍の中の記述ですが、わが国の相続税が含まれます遺産取得税は、このあと少し詳しく説明させていただきますが、「人が相続によって取得した財産を対象として課税する制度であり、この類型の相続税は、実質的には所得税の補完税である」という整理がなされております。
4ページは、それ以外にも諸説ございますので、そういったものを参考に整理したものです。
5ページは、最近、経済学で、「遺産動機」という観点から相続税等の分析がなされておりますが、その遺産動機について参考までに整理したものでございます。
6ページは、先ほど、相続税の課税方式、遺産取得課税というのが出てまいりましたが、それに関連して御説明させていただきたいと思います。大きく二つに分類されます。アメリカ、イギリスのような遺産課税方式。相続財産、遺産についてまず税を納付し、そのあと、遺言執行人等が納税義務者となって遺産を分割するというのが一つの形式でございます。
もう一つが右側で、わが国、ドイツ、フランスのような国が採用しております。遺産取得課税方式と呼ばれておりまして、相続財産をまず遺産分割しまして、おのおのの相続人を納税義務者として、相続した価額に従って相続税を納付していただく、こういった方式になっております。
7ページにまいりまして、それらの類型ごとのいろいろな特徴が整理されております。ポイントだけ申し上げますと、一番右側の併用方式というのが、わが国が採用している方式です。基本的には遺産取得課税方式なのですが、相続税の総額を法定相続人の数と法定相続分によって算出するというところで、遺産取得課税を一部修正したような方式になっております。そうして出た総額を、各人の取得財産額に応じて配分するというやり方をとっております。これは、遺産取得課税方式の特色の[2]にありますように、遺産分割の仕方によって税負担に差が生ずるという欠点を是正する考え方から、昭和33年の改正で取り入れられたものでございます。
8ページにまいりまして、相続税の補完税と言われている贈与税ですが、これについての先の中期答申の整理がこれでございます。「個人から贈与により財産を取得した者に対しては、その取得財産の価額を課税価格として、贈与税が課される。贈与税は、相続課税の存在を前提に、生前贈与による相続課税の回避を防止するという意味で、相続課税を補完するという役割を果たしている。また、相続課税と同様、贈与という無償の財産取得に担税力を見出して課税するという位置づけもある」という整理がなされております。
9ページにまいりますと、金子先生のやはり同様の書籍の中で、中期答申と同様の整理がなされております。いずれにいたしましても、贈与税は、このような無償の財産取得について担税力を見出すという考え方を採用しつつ、やはり相続税の補完税という機能が重視されてきております。この点に関連いたしまして、将来の相続関係が生じ得る親子間、親族間の贈与、そういったものと、遺贈がなければ必ずしも相続といった関係が生じない第三者への贈与、こういった贈与の違いによって、税制上どのように取り扱うべきかという論点もあろうかと思います。
10ページにまいりまして、相続税と贈与税の調整について各国の仕組みを御紹介したいと思います。わが国は、一番左端にありますように、贈与税の課税方法は単年度で行っております。そして相続税との調整は、相続前3年以内の贈与を相続財産に合算する(取り込む)というやり方を行っており、その際に贈与税の既払い分があれば控除するというやり方をとっております。
他方、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスは、いずれも、贈与税そのものも累積課税という方式をとっております。アメリカは過去すべて、そういった関係から相続税との調整も、生涯にわたる贈与を累積して、遺産と合わせて課税するという方式。イギリスは、一定期間、7年以内の贈与を累積し、さらに相続とも合算する。ドイツ、フランスは、10年間という形で、一定期間、累積するという方式をとっております。
その方式の違いをポンチ絵的にあらわしたのが、次の11ページでございます。左側は、日本の暦年方式で、贈与額に応じて、毎年毎年、完結するというものでございます。右側が累積方式で、ちょっと簡単に御紹介しますと、1年目は、基礎控除の範囲内の贈与だったため税額が出てこないということで、黒い部分の納税額がありません。2年目はそもそも贈与なし。3年目になりますと、1年目と3年目の贈与を合わせて全体で税額を計算して納税する。この黒い部分がその対応する部分になります。4年目になりますと、過去4年間の贈与をすべて累積して、その合計額について税額を計算し、すでに3年目で納めている税額を控除して、この4年目の黒い部分、このところだけを追加的にこの年に納税していただくという仕組みになっております。
アメリカであれば、このようなことを生涯にわたり行いまして、フランス、ドイツであれば、10年間続けて行うということになります。では、11年目以降はどうなるのかということですが、11年目になりますと、1年目の贈与を外しまして、11年目の贈与を新たに取り込んで、常に10年間という期間を、統計学の「移動平均法」のように、移動する形で計算するという仕組みをとっております。
12ページにまいりまして、こういった贈与税と相続税の調整の仕方に係るメリット、デメリットでございます。アメリカのとっております一生累積課税の特色として、「基本的には、生前贈与を行っても、すべてを相続しても合計税負担額は変わらない」というメリットがございます。他方、「一生にわたる贈与を管理する必要があるため、比較的執行が困難」というデメリットも持っております。
ある意味でその対極にありますのが日本で、暦年課税ということで、「生前贈与による租税回避を防止するため、贈与税負担を相続税負担より重くする必要がある」ということで、生前贈与がしにくい側面はあろうかと思います。他方、「税務執行は容易」というメリットもございます。
この両者の中間に、ヨーロッパ諸国のように、一定期間、7年あるいは10年累積して行う方式があるということになると思います。
13ページにまいりまして、わが国の相続税・贈与税、創設からこれまでどんな道筋をたどってきたかというのを、ポイントだけ御紹介したいと思います。まず、明治38年に相続税が創設されております。このときには遺産課税方式で、アメリカ、イギリスと同様の方式をとっておりました。家督相続というのが当時ありましたので、家督相続の優遇、さらに血縁関係の親疎により別税率を適用するという、ちょっと複雑な制度をとっておりました。また、推定相続人に対しましては、一定額以上の贈与について、みなし遺産相続という形で、相続税のほうで課税していたというものでございます。
昭和22年に、民法の改正で家督相続がなくなったものですから、相続税も、これに伴いましてそういった規定を廃止し、この年に、贈与者の一生を通じて累積課税するという方式の贈与税を創設しております。その後、昭和25年、シャウプ勧告に基づく税制ですが、このときに相続税・贈与税を一本化して、遺産取得課税方式へ移行し、取得者の一生を通ずる累積課税方式を採用しております。それが昭和28年、主として執行上の問題を理由といたしまして、取得者の一生を通ずる累積課税方式を廃止しております。贈与のつど毎年課税するという贈与税にしております。
昭和33年、この年に相続税の大改正が行われているのですが、法定相続分課税方式という改正が行われ、さらに、相続開始前3年以内の贈与を相続に加算するというルール、あるいは、この年に、3年間に限って贈与税も累積課税するという制度を導入しております。昭和50年に贈与税の3年累積課税制度が廃止されて、現在とほぼ同様の制度になっておりまして、昭和63年に抜本改正ということで、基礎控除、税率構造等でこの後の改正については簡単に御紹介させていただきます。
以上が、相続税・贈与税の基本的枠組みについての説明となりますが、ここまで御説明させていただいた論点に加えまして、例えば民法の相続そのものとの関係、申告納付などについてもさまざまな議論があろうかと思います。本日取り上げなかった論点につきましては、また日を改めて御議論をいただく機会を設けようと考えておりますので、その際、またどうぞよろしくお願いしたいと存じます。
次に、「相続税・贈与税を取り巻く環境の変化」ということで、中期答申にも取り上げられております三つの視点、少子・高齢化、経済のストック化、税制全体の再分配機能の弱まり、特に前二者を中心に簡単に御紹介したいと思います。
14ページは、平均寿命の推移でございます。一見していただいておわかりのように、昭和30年代、40年代、そういった時代は、60代で亡くなられて、相続人が30代、40代という年齢構成だったと推定されます。そうしますと、受け取る相続人の側がまだ資産形成の前、というのが一般的なケースではなかったかと思います。現在では長寿の方が増えたため、70代、80代、中には90代まで御存命で、相続されるタイミングも60代といったケースが相当増えていると思います。こういった世代間の資産移転が、相続人のライフサイクルの後半にシフトしている。また、そういったケースにおいては、すでに資産形成が相当進んだ後に相続を受ける。近年、そういった特徴があらわれてきているかと存じます。
15ページにまいりまして、生産年齢人口、老年人口、年少人口の推移と将来推計を整理したものでございます。2000年に年少人口を老年人口が上回るということがあり、将来推計を見ましても、老年人口の増加、生産年齢人口の減少が手に取るようにわかるという状況になっております。
16ページにまいりまして、こういった状況を踏まえ、これは一昨年、平成12年10月に行われました、「社会保障構造の在り方について考える有識者会議報告」という中で、「主に若年の世代の負担で担われている社会保障給付が充実し、老後扶養をより社会的に支えることにより高齢者の資産の維持に寄与する一方、最終的な相続の時点では、ほとんどの場合社会的な負担を求められることがない」、「この点に着目すれば、資産の保有や相続に着目してより広く税負担を求めることは、給付と負担のバランスをとる方策の一つとなり得る」という記述がなされております。
17ページにまいりまして、こうした少子・高齢化、さらには老後扶養という視点から、資料を準備してみたのがこのページでございます。老後の扶養を公的社会保障で行うか、家族が行うか、特に、同居して老親のお世話をしている場合、そうした貢献について何らかの配慮ができないかという御指摘をいただくこともございます。そこで、ここでは「同居」という観点から切ってみた資料でございます。
これは、65歳以上の方のいる世帯数の構成比の推移でございます。この中で、右から三つ、「親と未婚の子のみの世帯」、「三世代世帯」、「その他の世帯」の一部になりますが、こういったところが老親と子供の同居というパターンになるかと思います。昭和50年には、これら三つを合わせますと、8割近くが何らかの同居という形態をとっていたのが、平成12年では5割強まで減少しているという実態になっております。
18ページにまいりまして、老後扶養、あるいは世代間資産移転との関連で、老後の資産管理、あるいは、老親のお世話を誰が行うのかというものを民間の団体が行った調査がございます。そうした中で、男性の場合には、老後の資産管理は配偶者にしてほしいという方が多く、女性の場合には、子供にしてほしいという結果が出ている。あるいは、妻が夫の親の面倒をみることについて、「同居ならみるべきだ」というのが男性では過半数という形で、女性よりも多くなる一方、「みる義務なし」というのは実は男性のほうが多い。さらに、「当然みるべき」という主張は女性のほうが多い。あるいは、法定相続人ではない子供の妻に対して、「夫の親の遺産を相続する権利を付与することについてどう思うか」ということもしておりまして、そういった方にはそういった権利を付与した方がいい、という意見が大勢を占めているという結果があらわれております。
19ページにまいりまして、経済のストック化というものでございます。ここにもありますように、平成10年末で約2,500兆円という形で、この30年間で家計資産残高は4.5倍に拡大しております。さらには、フローの雇用者所得の伸びとストックの伸率も、いまではストックの伸びの方が大きいということになっております。また、金融資産の増加が著しく、現在、家計資産の半分近くが金融資産になっているという特徴もございます。
20ページは、それらの分布を年齢別に見たもので、一番下、平成12年で見ますと、高齢者の方が相当多額の貯蓄の割合を持っているということでございます。
このほか、ここには掲げておりませんが、さきの中期答申においては、税制全体の再分配機能が弱まった方向に働いてきたということで、そうした中で、相続税の持つ富の再分配機能をどのように位置づけていくのか、という指摘がなされております。
ちょっと急ぎますが、21ページ以降、相続税・贈与税の具体的な制度の仕組みになっております。抜本改正をはさんで、それ以降の改正が、このような形で行われてきたというのを簡単に整理したものでございます。一番上にありますように、税率構造については、14段階あったものが今は9段階。最高税率も、5億円超に対して75%という税率だったものが、今では20億円超で70%というところまで下がってきたということ。基礎控除につきましても、配偶者と子供3人のケースですと、3,600万円だった課税最低限が、いまは9,000万円まで上がってきたというようなことをお示ししたものでございます。
先の中期答申におきましては、こういった基礎控除の拡大等、バブル期の地価の高騰への対応という形で行われてきておりますので、一時の地価水準の高さなどに配慮した現在の課税最低限の水準は、見直していく余地があるのではないかという指摘があり、税率については、最高税率は引き下げる方向で考えていくことが適当、税率構造を見直す場合には、課税ベースとの見直しを併せて検討することが適当、というような指摘をいただいております。
22ページは、同様の構造を贈与税について示したものでございます。
23ページですが、相続税の負担の水準につきまして、過去にさかのぼって見たものでございます。下に枠で囲っておりますのが現在ですが、亡くなった方100人に対して5人、件数ベースでいくと5%の方々が、今納税をしていただいております。これをちょっと上に見ていきますと、昭和30年には4.4人、33年に、先ほど御説明した大改正がありまして、このときに実に0.8%まで落ちております。そのあと大きな改正を行いつつ、いまは5%という水準になっております。
一番右側の数字、現在12.7%という数字がございますが、これは、課税された方の平均的な負担率の数字になっております。この12.7%というのは、昭和30年代から見ますと、経済の成長とかストック化という状況の中で、いろいろな動きがありますが、昭和33年の大改正以降、いま、比較的低めの水準にいるということが言えるかと思います。
24ページは、相続税を階級別に整理したものでございます。3億円までの範囲に8割の方が入っているという状況でございます。
25ページは、課税された方々の相続財産種類別の内訳で、土地が、63%を超えるという形で多いものですから、近年、地価の動きに対応する形でさまざまな改正を行ってきたという要因がここにもございます。
26ページにまいりまして、負担水準を国際的に比較したものでございます。ドイツは、相続税は州税ですが、ここでこういう形で整理しております。国民所得との比率で見ますと、日本で0.4%。以下、0.3%、0.3%、0.2%、0.7%という負担の水準になっております。
先ほどの5%、12.7%をほかの国と比べてみたのが、27ページの資料でございます。課税件数でいきますと、5.2%の日本に対して、アメリカ、イギリスが2%台、ドイツがちょっと高うございまして12%、フランス25%というような数字。負担割合は、12.7%に対して、アメリカ、イギリスとも10%台という状況になっております。
28ページは、実効税率を、配偶者プラス子供3人で計算したものをグラフにしたもので、これはいつも見ていただいているものでございます。
29ページは、贈与税の課税状況の推移でございます。現在の贈与税、年間40万件をちょっと超えるぐらいの申告がなされておりまして、1件当たりの贈与金額が300万円をちょっと切る程度、1件当たりの税額が23万円ということで、実際の負担は8%という状況になっております。
30ページは、その贈与税の階級別の整理でございます。
31ページ以降、特例措置。1枚紙のほうにも書いておりますが、死亡保険金・死亡退職金、事業承継関連、住宅資金の贈与に係るもの、特例措置が幾つかございますが、それらの基本的なデータを並べたものでございまして、時間の関係で説明は省略させていただきます。さきの中期答申では、こういった特例措置、そのあり方について不断の見直しを行えというような御指摘をいただいております。
非常に雑駁で、はしょった説明で恐縮でございますが、私からは以上でございます。
〇委員
それでは、いま御説明いただきました相続税・贈与税、新しい情報も幾つか盛り込まれた資料が出されましたので、質問、あるいは御意見を賜りたいと思います。
〇委員
前半戦のやつでいいですか。
〇委員
どうぞ。
〇委員
委員が御指摘になった、国・地方間の法人関係税の比率ですけれども、これは国と地方との事務配分を反映している点があるので。日本は、御承知のとおり、一般歳出ベースでは、国が3・地方7です。連邦国家であるドイツよりむしろ地方のウエートが高いぐらいの数字です。ですから、そこらをお考えいただけなければならないものだということです。
もう一つ、吉川先生が御提案になった中で事業再構築税制ということです。私、かねがね思っているのは、いま一番緊急性を要するのは不良債権の処理だと思います。これが、税制上、阻害しているのかどうか。どうも聞くところによると、不良債権の処理は、破産に至れば損金算入できるけれども、残ってしまうと単純には損金算入させない。寄附金扱いとかそういうような仕組みになって、銀行などがなかなかやりにくい。株にかえるとか、いろいろな手法を使ってやっておるようですけれども、一番緊急性のある不良債権処理の税制上のブロック要因があるかどうか、一度検討してみなければいけないのではないか、こういうふうに思います。
それから、研究開発、結構なんですが、通産省的な発想の……。特定業種、特定技術についての研究開発どうのこうのという差別をされますと、まさしく私どもが心配しております、税制における中立性、市場における自由競争のむしろ阻害要因になりますので、その点は十分お考えになって具体的な処理を決めるべきだ、こういうふうに思います。
〇委員
そうすると、制限しないで幅広くやれということですか、投資減税は。
〇委員
どの業種がいいとか、あれが悪いというのは、あまり言うべきではないと思います。
〇委員
わかりました。
〇委員
相続・贈与の問題について、一言意見を申し上げたいと思いますけれども、大変勉強になりました。私は、特に住宅に関して、生前の贈与をしやすくするような税制改革がきわめて重要ではないとか思います。
といいますのは、さっき人口動態変化でも御説明いただきましたけれども、ひと昔前の贈与・相続税、住宅に関する物の考え方と今日とでは、背景条件が全然変わっているというふうに思います。ひと昔前は、わびしい家を持っていて、だんだん大きな家へ移っていって、最後に相続をする。事実上、95%の人は払わないで済んでいるわけですね。それが持ち家政策の時代でした。
ところが、さっき御説明もありましたように、当時は、いい資産がなくて、40代ぐらいのところで相続を受けて、資産形成になった。家の活用になったわけですけれども、今日は、大半の方が60代ぐらいで相続を受けるものですから、もう家を持っているし、もらった家は活用しにくいしということになって、実は日本は、家の、いわゆるライフサイクルの中でのノックダウン・レートというのがものすごく高いんですね。3割以上の家はまず取り壊してしまいます。
そういうことで、資産の有効な活用という観点から見ましても、日本の住宅市場というのはきわめて異常な姿なんです。基本的には中古の流通市場がない。アメリカと比べると12分の1の回転率しかないんですね。しかも、G7の国で比べると、家の寿命が半分以下でございます。これは、物理的な問題ではなくて、制度上の問題なんですね。使えない家を最後に壊してしまう、そういう仕掛けになっているものですから、非常に問題がある。
特に、今日の経済の活性化という観点から考えても、贈与税を何らかの形で大幅に免除をする、そして、相続税の控除額の見直しも併せてやってもいいのではないかと思います。つまり、資産の移転のタイミングで、いま、贈与をやると大変高い税金がかかります。例えば4,000万円の家を贈与すれば、1,400万円ぐらい税金がかかってしまいますけれども、これを相続すればゼロでございます。そういうアンバランスがある。これまでの高度成長の過程では、みんなに家を持たせたいと、そういう社会的なニーズのもとでは一定の役割を果たしたと思いますけれども、いまは完全に20年ぐらいズレているということで、これから大いに検討していただきたいのは、生前贈与のしやすい仕掛けでございます。
実は世間に誤解があって、これは金持ち優遇だという説があります。もちろん金持ち優遇的な面もありますけれども、実際は、95%の相続税を払わない大衆、この人たちの資産の有効活用にものすごく役立つんですね。なぜかというと、子供が高校に入る、部屋が欲しい、いままで小さいアパートで我慢をしていた、親はもう60、70になって、本当は施設に入ったほうがいい、迷惑かけたくない。こういうような家族が非常に多いわけです。そのときに生前贈与ができると……。いまの税制だったら1,000何百万もかかりますから、とてもできないですね。ですから、しがみついて、80、90まで生きていて、使えなくなって、相続をすると、相続税はただになって、さっきの御説明にもありましたけれども、これ、私的な資産になっているわけですよね。社会的にはもう使われない。そういう仕掛けになります。もらったってしようがないという面もあるんです。
そういうことでなくて、そういう人たちが生前贈与することによって、本当にそういう家が必要だという世代の人たちが、供与を受ける。その人たちは、相続になるときはどっちみち払わないんですからね。税収の面から見ても、生前贈与したときに、リフォームしたりいろいろなことをしますから、みみっちい話ですけれども、生前贈与したほうが税収は上がるのではないかと思います。どっちみち95%の人は、相続まで持っていれば絶対払わない人たちですから、生前贈与で活用したほうが、むしろ経済活動の刺激になって増収になるというふうに思います。
〇委員
生前贈与、どのぐらいをお考えですか。自民党が3,000万円とか5,000万円なんてえらい数字が出ているけれども、どのくらいの程度ですか。
〇委員
私はその程度がいいと思います。
〇委員
3,000万円。
〇委員
ええ、3,000万円というのはいい線だと思います。
〇委員
そうすると、金持ち優遇的というお話をされましたけれども、まだ国民が100%住宅を持っているわけではないですから、やはり資産家ですよ。ある意味の中から上ぐらいの金持ちかどうか知らんけど、資産移転に伴って、3,000万円、5,000万円、贈与税を払うというのは、これほど日本の税制をそっちにつけなければいけないという、不公平税制なり金持ち税制という声に対しては、いまの御説明で十分ですか。
〇委員
いま、「資産家ですよ」とおっしゃられましたけれども、私はそうではないと思います。3,000万円、5,000万円とサッとおっしゃったわけですね。3,000万円と5,000万円では相当意味が違うんですね。すごく違います。だから、そこは私はこだわってはいませんが、大いに検討すべきですけれども、いまの相続税--例えば4,000万円の家を贈与すると1,400万円ぐらいかかると。4,000万円ぐらいの家というのは資産家とは言えないですね。中層階級ですね。非常に多い世代です。
〇委員
貸家で一生を過ごす人、まだいっぱいいるのよ。借家でやってる人。
〇委員
そうですよ。
〇委員
それは関係ないじゃないですか、贈与のときに。
〇委員
それは、社会の資産の流動化ということですよ。ですから、まず、先生のおっしゃる資産分布の中での公平といいますか、その論点は一つ明らかにあると思います。もう一つは、日本の住宅市場は非常に流通性が低いという問題があります。これをどう活用するかということ。
もう一つは、いま先生は賃貸とおっしゃいましたけれども、日本の住宅市場はこれまでのところ賃貸住宅がものすごく貧弱なんですよ。それは、分譲だと、業者のほうが最初にたくさんの資金を得て、あとは建て逃げができるからなんですけれども、賃貸は非常に乏しい。賃貸市場というのはもっともっと豊かにならなければならないんですね。ですから、マンションとか、大きな建物ばかりではなくて、個別の住宅がどんどん……。
〇委員
それは贈与税の世界の話じゃないでしょう。
〇委員
譲りますでしょう、そういうことによって流動性が高まりますよ。
〇委員
譲りますといっても、別に自分の資産じゃないから贈与できないでしょう。
〇委員
いやいや、自分の資産を……。
〇委員
だって、賃貸しているから自分の資産じゃないでしょう。
〇委員
こういうことですよ。つまり、年老いた親が40代の子供に家を贈与しますでしょう。
〇委員
今日は"委員間論争"をやってもしようがないから。僕は、おそらく委員がいたら質問するであろう、というようなことを質問したんだ。
〇委員
大いに結構です。しかし、それはテイクノートしていただきたいと思うんです。
〇事務局
委員がおっしゃっているのは、お年寄りの方が家を持っていて、その家を次の世代に贈与するという話と、それから、会長がおっしゃっていた5,000万円とか4,000万円という話は、持ち家の取得資金の贈与と。家そのものの贈与と資金の贈与。これ、違ってくると思うんです。そこは、区別して議論させていただいたほうがよろしいかと思います。
と申しますのは、90歳の時点で相続が起こると、当然、家は持っているわけです、本来は。そういった意味で、例えば60ぐらいのときに、持ち家資金を贈与して、また新たな家をつくってしまって、60の人が80か90になって死んだとき、もう一つ家が出てくる。それはある意味では資源の浪費ですから、先生がおっしゃるように、まさに賃貸住宅を活用していくというのは非常に重要なことだと思っております。いま、日本の場合、良質な賃貸住宅はあまりありませんので、それを活用していくことと併せて、住宅政策全般として、ここで御議論いただければ幸いだと思っております。
〇委員
一つだけ。法人のところでの問題が若干あると思います。現在の30%、これは最高のときであって、43.3%の7割程度ですから、欧米と比べても、これでいいではないか。それから、平成11年にやったときは、課税ベースを全く放置して下げてしまったものですから、その点も考えなければいけない。また、全体として水準をどう考えるかというのであれば、法人税だけではなくて、消費税なり所得税と合わせて考えるべきではないかと思います。
試験研究費等々、国家戦略との関連ですけれども、国家戦略を取り出すこと自身が中立性との関連で一体どうなのだろうか。これはやはり市場に任せる。国内に投資しようが、海外に投資しようが、いいのではなかろうかという感じがいたします。
一つ、きょうの資料で大変興味深く思いましたのは、5ページ、赤字法人が多いということですけれども、資本金1億円未満のところではたしかに赤字なんですけれども……。
〇委員
法人税やられてるの? いま、相続税と贈与税の世界なんですけど。
〇委員
一つだけ。この5ページで、赤字でありながら付加価値の20%が役員給与にいっている。役員給与というのはおそらく同族役員だろうと思うのです。そういう人に給料を払う。しかも、給与所得控除が適用になるんですね。経費は全部引いている。それから、給与所得控除というのは一つは所得性質が弱い。いつクビになるかわからんというのだけど、同族の役員なんですね。だから、およそ給与所得控除というものを適用する根拠はない。ということからすると、同族法人は、同族役員給与については損金算入を認めないとか、給与所得控除を認めないとか、何か措置があっていいのではないか。これが赤字法人対策にもなるのではないかと思います。
それから、資産税について言えば、先ほど、相続税というのは社会還元的な発想もあるということでした。そういうこともあるかもしれませんけれども、やはり50%以上を国が取るというのはいかがか。最高税率は50%ぐらいまででいいかもしれない。しかし、課税ベースは、例えば小規模宅地であれ、農地であれ、いろいろな問題がある。これは、もし最高税率をさわるとすれば、課税ベースを考えていいのではないか。
贈与税については、最高税率とともに、その刻みのブラケットの幅が非常に狭くなっている。これは、所得税であれ、相続税であれ、それぞれ補完税だと言われるなら、これは、最高税率の問題とともに刻みを広げていっていいのではないか。そのときに、いまの話の住宅資金、あるいは住宅そのもののそれとも関連して、控除をどう考えるのか。ある程度広げようとすれば累積を考えなくてはいけないが、現在の国税の執行がもつのかどうか。納番制度でもできれば、これを徹底して終身まで広げられる。そうした場合には相続税とも統一できる。そのくらい控除も広げられるかもしれない。しかし、いまはそこまで多くを望めるのかどうか、心配でございます。
〇委員
先ほどの相続税・贈与税の御説明の中で、レジュメに書かれていますけれども、いわゆる財産移転のタイミングであると。そうしますと、問題は、相続税と贈与税があって、その間にどのくらいの金額は非課税にするか。現在は110万円ですけれども、それを思い切って3,000万円にするとか。具体的なケースを考えますと、親としたら、子供に早く財産を移転する、そうすれば社会的にも資産の有効な運用ができるであろうということですが、下手をしますと、子供ならまだいいですけれども、相続人が甥であったりすると、財産をもらった途端に態度が豹変して、問題が社会化してしまう。
これはちょっと極端な例ですが、ここで考えておられるのが、相続と贈与という二分なんですね。何が抜けているかというと、信託という問題があります。日本で信託というと、きわめて異例で、集団信託しか考えられておりませんが、実際よく見ますと、日本の制度には後継ぎ遺贈というのをやっている例が多いのです。これは何かというと、当然、財産家だと思いますが、遺書を書きまして、自分が死んだら妻に財産を贈与する、妻が亡くなったら甥に、と。いきなり甥にやりますと大変なことになりますから、そういう書き方をする。ある意味で、妻に使わせて、甥にはアパートの経営なりをさせたいと。資産の運用のときにいろんなバラエティーが出てくるわけですね。
ずいぶん考えて、難しいかなと思っていたんですけれども、日本でも後継ぎ遺贈という仕組みがあるのだったら、思い切って信託というものをもうちょっと緩めたらどうだろうと。いまの信託というのは、信託銀行に譲渡しますと、その段階でもう贈与税がかかってしまうか、実際には動かないわけです。そこで70%までかけられてしまうケースになりますから。といって、それをしないで金額だけで何千万まで非課税だと、これをやるのも少し乱暴な形ですので、そこで信託的な活用というものを考えられないだろうか。
具体的には何かといいますと、いま、みなし贈与財産になっている信託的な譲渡も、これをある程度緩和していく。具体的にはそういうことなのです。くどいようですが、後継ぎ遺贈というようなことで、無理して、民法で認められるかどうかもわからないような仕組みを使うくらいだったら、もう少しすっきりして、日本でも個人的な信託というのを考える。財産の運用を、妻には毎月の生活費が出るようなアパートの賃料を与えてください、アパートの土地は息子にやってくださいと、そういう形で信託は使えますから、これは真剣に考えたほうがよろしいのではないか。金額だけ3,000万円くれてやるとか、そういう乱暴な議論よりは、財産を運用するという面に立ちますと、私は、こういう古くからありますけれども、動いていない制度を使ったらどうだろうか、こう思っております。
〇委員
それを一回、もう少し詳しく御説明いただけませんか。皆さん、関心を持っているのではないかと思うけれども、急に信託と言われても、「何じゃ?」という話が多いので、いずれ機会を改めてスピーカーとして依頼しますから、お願いします。
〇委員
前半のほう、ちょっといいですか。1分間。先ほど、大臣に申し上げようと思ったら、どこかへ行ってしまって言えなかったのですが、先行減税とあとの財源の手当の問題です。ちょっと気になっているのは、道路財源の話がどこからも出てこないんですよ。これは、15年度改正で、新しい長期計画、5カ年計画のあれと合わせて財源問題をやろうということになっているわけですが、もうこの問題を持ち出していい時期ではないかと思います。投資減税ということでそこに財源を割くなら、道路から、つまり公共事業部門からその分の財源を充てるという幅広な視点があってもいいのではないか。そういうことを、諮問会議もあまり言っていない。したがって、会長、これをテイクノートしておいてください。
それで、相続税の問題ですが、前々から議論になっている生前贈与の問題は、今度の6月の非常に大きいポイントだと思います。結論から言うと、生前贈与というものはもうそろそろ認める、あるいは、相続税と贈与税の一体に踏み出すべきだというふうに思っています。
先ほどの委員が、それをやると態度を豹変される親族がいるので、社会構成上、どうかということをおっしゃいました。たしかにそういう面もあるでしょうけれども、死んだ後に、嫌いなやつが、法定相続人だというだけで金をもらってしまうこともあるので、そこは、あいこではないかと私は思います。財産の処理というものは、ある程度財産の保有権者の意思に委ねる、目の黒いうちに自分の財産の処分・委託というものを、税制上も支援し、認めていく時代かなと。とりわけ、お父さんが80幾つで、息子さんは60というようなことが一般化している状況では、生前贈与にもう踏み込む時期ではないか。
一つ申し上げたいのは、こういうことは世の中の関心を呼ぶものでありまして、具体案としてどうなんだ、と。例えば相続税と贈与税、アメリカみたいに完全に一体化してしまうのか、少し差を設けるのか。あるいは、7年、10年という問題がありますが、何年にするのか。いざ生前贈与を認めるよとなると、大変世の中の関心を呼ぶ。
もっと細かいことを言うと、延納はどうなってしまうんですか、相続税の場合は、現金以外の納付も認められている、贈与税の場合は現金のみ、こういうのはどうなってしまうんですかとか、あるいは、連帯納税義務みたいなものはどうなってしまうんですかとか、際限なく「どういうふうになるんですか」という関心が広がっていくということであります。早めに方針を決めて、世の中の関心、あるいは疑問にお答えしていく、そういう態勢をとったほうがいいというふうに私は思います。
〇委員
一体化して生前贈与ということですね。
〇委員
私はそれがいいと思います。
〇委員
そうしないと、まずいでしょうね。
〇委員
はい。
〇委員
いまの関連ですけれども、私も、相続税と贈与税を合算して調整するというのはいい方法だと思うんですけれども、問題は立証責任だと思います。現行のままでいいのかどうか。いまのところは、国税当局が立証する責任があるわけですね。これは個人にしないと難しいのではないかという気もしますけれども、その問題を検討する必要があるのではないかと思います。
もう一つだけ。簡単に言いますと、国の法人税率は先進国並みですけれども、地方税のところ、これはどうしても問題にならざるを得ない。きょうはこれ以上時間がありませんから、とにかく「問題あり」ということを言っておきたいと思います。
〇委員
私、赤貧洗うがごとき家で育って、親から一銭も援助を受けないで小さいマンションを買ったわけです。ですから、住宅の贈与というのは昔から腹が立ってしようがないんですよ。反対です。全く不愉快になるだけです、これは。私と同じような身分の者って結構いると思いますので、マクロがどうあろうと、相当反発は強いと思います。
生前贈与の話ですが、私も、執行の難しさは十分わかりますけれども、相続税と贈与税を一体化するというのが一番すっきりしているのではないかと思います。以上です。
〇委員
委員ほど貧しくはないのですが、僕も結論的には、生前贈与をさせるという税制は反対です。なぜかというと、60以上のところに金融資産の半分以上がたまってしまったというのは、いろいろなものが重なって--退職金が最後のほうに出ることから、年功序列の給与から、金融税制のマル優とか何とか、いままでやってきたことのたまりがこうなったわけで、変なところにためてきた間違った過去の政策を、何ら反省することなく、変なところにたまったから、「おまえら税金まけてやるから、若いやつに譲れ」と、そういう考え方自体、何か品がなくて、そういうことは人に言ってはいけないことではないかなという気がします。
現に死んだあとの財産の相続でも、結構兄弟喧嘩をして、そのあと一生口をきかないというのは身の回りにもいるわけですし、ましてや生きているうちに、一人っ子ならいいけど、分けるというのは、相当ひどい社会をつくってしまうような気がしますので、それなら、小さい家でも貧しい家に住んで、自分の稼ぎの中で生きていたほうがいい。また逆に、せっかく別の世帯に住んでいるのに、家をやるから一緒に住まないかとか言われたら、たまったもんじゃないということもたくさんありますので、単に目先の景気をよくするためにそれをやるという考えだったら、全く反対です。
〇委員
きょうは、臨場感あふれた御意見がいっぱい出ましたね。
〇委員
相続税の話ぐらい、実態とイメージが乖離した税制は世の中にないと思うんですね。かつては、大体三代相続すればゼロになるという迷信があったけれども、そんなこと絶対ないんだね。バブルの最高期に、ずいぶんひどい相続税を払った人がたくさんいるわけです。それを急速に直した。ところが、いまになってみると、直し過ぎたかもしれないと。これは委員の説だけれども、そうかもしれない。
どちらにしても、いま、相続税というのはイメージがものすごく悪いんですよ。最高税率は、なぜ70みたいなやつをいままで置いておくのか、こんな前時代的なやつ。意味ないだろう、こんなものは。どうせ5~6人しか対象にならないんだから。こんなものは取っ払ったほうがいい。イメージをいくらかでも改善するために。
方式の変更の話は、どうやら聞いていると、経団連の会長もそういう発想で我々の前でしゃべったことがあるけれども、御時世としてはこの方式を変えるのが一番いいのかなというふうに思いますね。
〇委員
相続税と贈与税の組み合わせ論というのが、かなり大手を振って出てきたわけですけれども、これは、かなり難しい問題をたくさん含んでいると思います。資産移転の側面と、金融資産の移転という、どちらかというと消費の移転ということにかかわるわけですが、何を目的にこの組み合わせ論をやっているのかというポイントが、わかりにくいということ。資産とか住宅政策の問題だったら、税制でどこまでやるべきかということについてはきちっと議論しなければいけない。
消費の移転論というのは、私はどちらかというと賛成の面がありまして、これだけ高齢化になってしまいますと、金融資産がたまってしまう。これを何らかの形で動かせないかというのは、ある程度賛成しますけれども、税制でやるという場合は、限定的な扱い方が望ましいのですが、私が質問したい点は、日本の税制は、生前贈与における租税回避を防止するために贈与税を高くしている。この部分が果たして正当化できるのか。これが歪んでいるのか、歪んでいないのか--もし歪んでいるのであれば、これはやはり直さないといけない。このポイントは、いま、手をつける異常に大きな議論だろうと思うんです。
その場合に、アメリカ、フランス、ドイツなどは、相続税のときの控除額とか、そういうものと生前贈与を合わせるときに、比較的フラットになるように何らか調整……フラットというのかな。相続税のときはドカンと資産が動くので、かなり控除額を高くしないと、たくさん税金がかかってしまう。日本の場合は三つに分けたりとか、いろんな形で計算方式を変えているので、相続税の場合の、実際に移転する金額と、実効税率といいますか、名目税率の差が、日本の場合にはかなり違って出てくる可能性があるのではないか。諸外国の場合には、それが同じように出てくるのかどうか。相続税の場合と贈与の場合が、うまく並んで出てくるのかどうかというのが知りたいところなんです、もし組み合わせた場合。
日本では、贈与税のときは控除はほとんど効かないわけですから、ドンッとかかる。相続の場合ですと、いろいろな意味で1,000万円まではかからないとか、いろいろなものがかかってくるわけですから、そこがうまくつながっていくのかどうかということについて、お調べいただきたいということが一つあります。
〇委員
事務局のほうから、贈与税というのを高くしてペナルティ的な意味合いを持たせるとか、何かいまの説明に御返事はありますか。
〇事務局
贈与税につきまして、先ほど御説明いたしましたように、日本の場合は執行の簡明性ということを重視いたしまして、50年以来、単年度課税にしているわけです。そうしますと、毎年毎年、少額贈与することによって、相続税を回避できるとなってしまいますので、おのずから贈与税につきましては、基礎控除とか、先ほどの税率表の刻みの仕方とか、相続税に比べましてきついものにせざるを得ないという面がございます。
ということは、逆に、1回だけ贈与したいという方がいらっしゃった場合に、相続まで持っていれば、先ほどの話にありましたように、全然かからないという場合も当然あるわけでございますから、そういった意味で、世代間の財産移転に対しまして、やや中立性を欠いているではないかという面は否定できないと思っております。
〇委員
単年度で贈与税を計算して、贈与税の非課税を3,000万円とかにするというのは、実質的に贈与税を廃止するのと近いですし、そのことは相続税を廃止するのにも近くなるので、そこまでお考えでおっしゃるならよろしいですけれども、そうでなければ、あまり望ましくない。
累積していくと、手続き的に税務署が情報が取れるかという問題があるのですが、実はもう一つ、徴収上の問題がございます。例えば5,000万円非課税にして、子供にあげたと。親が亡くなったときに、例えば子供が2人いて、1億円分の相続財産があるということで、贈与税とトータルに計算し直すわけですが、もらった子供が財産を使い果たしていたら、取れないんですよ。抵当権でも設定しておかなければ、いくら累積的にやっても意味がなくなってしまうわけです。あとで一緒にやっても。
徴収できない税制というのは、いくら考えても意味ないんですよ。そこまで考えておっしゃるのだったら、それはそれでいいのですけれども、水野先生が信託とおっしゃったのは、そういうことをなくす可能性があるということだと思うんですね。累積すればいいということではないと思います。その分、税務署長にいくらかディポジットしていただくとか、あとで相続税と調整するとか、そういう制度でも考えないと、無理だと思います。オーストラリアみたいに、相続税を廃止しろというのならよろしいんですけど。以上です。
〇委員
きょうはちょっと頭がいっぱいになったから、これで終わり。この議論はまだまだ続けなければいけないし、本格的に一体化してやろうというならば、本腰入れて議論して、委員が言われるように少し前広に打ち出して、世の中の議論を喚起したいということもありますから、それはそれで考えましょう。
次回以降の予定です。お忙しいところをすみませんが、来週は16日と19日、火・金両方を考えております。ただし、2時間にいたします。16日が、個人所得税を諸控除を中心として御議論いただくこと、プラス土地税制をやりたい。19日は、年金課税を中心に御議論いただきたいと思います。いずれも重要なトピックスでありますので、万障お繰り合わせの上、ぜひ御参加いただきたい、このように思っております。
若干時間を越えましたが、どうも長時間、ありがとうございました。これにて、終わりにしましょう。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期してしますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。