第9回基礎問題小委員会 議事録

平成14年4月2日開催

委員

お忙しいところをお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。第9回目になります。

きょうは、副大臣の尾辻先生にお見えいただいております。適宜御発言を、機会がありましたら、よろしくお願いします。

きょうは盛りだくさんの内容でございまして、すでに御案内いたしましたような項目に従ってやる予定ですが、まず、3時間やりたいということで、途中休憩もはさみますので、あらかじめご予定ください。

最初に取り上げますのは、所得税でございます。きょうはその第一回目、最初に村上委員から、議論のきっかけ、問題提起をしていただきます。そして、事務局からいろいろ資料も提供していただきまして、後半は、男女共同参画会議のほうから、東大の大澤先生に来ていただきまして、ライフスタイルの多様化、男女共同参画等々、税制との関係もお話しいただく予定にしております。

議論に入る前に、総務省で人事の異動がございましたので、瀧野さんから御紹介いただけますか。

事務局

このたび、総務省のほうで人事異動がございましたので、御紹介させていただきます。

3月31日付で、田中公之前固定資産税課の資産評価室長が退職いたしまして、4月1日付で、兵谷芳康前消防庁防災課広域応援対策官が新室長になりましたので、御紹介いたします。前任者に引き続きよろしくお願いいたします。

事務局

兵谷でございます。よろしくお願いします。

委員

それではもう一つ、議論に入る前に、私が、3月29日、経済財政諮問会議に出ましたので、その報告を簡単にさせていただきます。

お手元に、「税制改革の検討課題」という形で、民間4議員のメモが出ております。議論はこれを中心に進められたということであります。最初に奥田さんからこれに従って詳細な説明があって、そのあと、本間さんから、口頭で、もっと細かい内容に沿った議論があったということです。

一部、新聞にも出ておりますし、興味をお持ちの方がいらっしゃると思いますが、一番の問題は、「公平・中立・簡素」という我々が使っております三つのスローガンに対して、「中立」を「活力」に変えようと。その数日前に、竹中さんや本間さんが出たどこかのシンポジウムでこれを言われたらしくて、それを改めて諮問会議の場で議論しましょうと。

したがって、中立ということに関しましてずいぶん議論いたしましたが、いま御紹介いたしました「論点整理」の2枚目の下に書いてございます。「新たな税制の理念」のところでどういうことを言っているかといいますと、「『公平・中立・簡素』の租税の3原則は、環境変化に対応し、上に述べた新たな経済社会の姿を実現させるため、以下のように正確に再定義し、「公正、活力、簡素」と理解する」--何を正確に再定義したかよくわかりませんが、下から二つ目のポツに「中立」と書いてあって、「人々や企業の選択を歪めず、経済社会の『活力』を最大限発揮させる」。

つまりここで言っていることは、わが税調がしょっちゅう言っている、民間の経済主体に歪みを与えない、これが中立である。その結果として、いうなれば社会に活力を与える。だから、ごく短期的な視点から政策減税等々をやるということではないよ、ということは経済財政諮問会議も言っているわけです。それだったら、なぜ「中立」という言葉でまずいのか、なぜ「活力」にしなければいけないんだというあたりで、さまざま議論があり、意見も分かれていて、同床異夢の感じがございました。

議事録がそのうち出回ると思いますけれども、首相ははっきり「中立」でいいと言ってるんですよ。つまり、「活力」なんて置きかえるとまた説明が必要ではないか、なぜ「公平・中立・簡素」でいけないのか、ということを言っておりましたし、それについて追従する大臣も何人かいましたし、私自身もそれに沿って説明しました。

「活力」という言葉を与えることによって社会に対して明るいムードを与える、という狙いがあるのかどうか知りませんが、結果的に「活力」という言葉が残ったものですから、翌日の新聞では、「活性化税制」とか、「税制を活力に使う」とか、そういう見出しが躍った。中身は具体的には何もなかったと思います。

私も、そのあと記者諸君に廊下で会って議論したときには、この点を強く言って、我々税調が使うような意味で活力を定義しているのだと言いましたが、やはり危惧したとおり、「活力」という言葉を使うと、いまみたいな話に受け取られがちになってしまったということですね。

もう一つ重要なことは、先行減税はやらないということは途中の議論でまとめたんですよね。したがって、「短期的な視点から需要創出のために減税を先行させるという考えはないですね」ということも、議事録をお目通ししていただければはっきり書いてあります。そういうことで了解を取って、私もあとで記者諸君にそれをしつこく言ったのですが、そういう話はどうも消し飛んでしまったということのようで、何ら記事にはなりませんでした。

そういう意味で、公平・中立・簡素をめぐり、短期的な視点から、あるいは中長期的な視点からどうするかという議論をだいぶいたしましたが、結果は報道されるような形で部分的に採用されたと。ただ、私もはっきり申し上げましたが、検討課題の中身、ここに書いてございます「基本的認識」等々に関しましては、我々がこれまでやろうとしていた方向でございますし、具体的な税制改革の中身に則しましては我々とそれほど違いがあるわけではございません。

そういう意味で、中身を検討すれば、当然のこと同じ土俵で議論できると思いますが、問題はその手順ですよね、あるいはスピードですよね、あるいは時期ですよね。この点で、諮問会議は少人数で、かなり効率的にできるグループで、一種の個人商店的な色彩がありますし、我々はどちらかというと非効率的な大企業みたいなところですから、議論がなかなかうまくまとまらない面があるという違いがあります。その辺は、どういうふうな形で6月までに持っていけるかというあたりが、一つ、気にはなっておりますが、これは事務当局が非常にご苦労いただいている点かと思います。

その点については、マスコミが政府税調と諮問会議の対立をとかく際立たせて、衝突が起こっているがごときとらえ方で記事を書く--同じ土俵で相撲を取らせて、どっちが勝った負けたということをやるから、土俵を違えてもらって、片や基本設計で、片や詳細設計みたいな格好でやってもらえば、そういう取り上げられ方は少ないのではないかということも言ったのですが、首相は相変わらず、「競争してやればいいんだ。あとはいい結果が出てきたほうをとればいいですよ。」という発想でありますから、諮問会議とのこの関係はしばらく続くかもしれませんが、我々としては静々粛々とやるしかないし、かつ、これから具体論に入りますから、具体的な中身でこれから世にアピールするべきものをつくる、しっかりしたものをつくるということにならざるを得ないと思います。

委員の皆さんも、いろいろな形で取材があれば、積極的にやっていることを御披露いただいて一向構わないと思いますし、ぜひやっていただきたいと思っています。諮問会議のほうはいっぱいスポークスマンがおりますが、どうも税調のほうはあまり積極的に表でやっていただく方がいないということになりますと、情報の提供量が違ってきますから、そういう意味においては、こちらのやっている中身の紹介がどうも遅れをとっているという印象もないことはありません。今後、もっといろいろな形で議論が発展すると思いますので、折にふれて、呼ばれれば私が出て行ってこちらの立場を議論したいと思いますし、いずれ、こちちの立場も諮問会議で伝える時期も来ようかと思います。それに備えてこれから議論を詰めていきたいと考えております。

これが概略、私がこの間出た結果でございます。短時間に走りながら少しまとめてというような感じでやりますから、あの場では本格的な議論はできていないなという印象は、正直言って持っておりますが、それはそれでいろいろな問題の中の一環でございますから、仕方がないかと思っています。

それでは、私に対する御疑問があればあとの質問でお受けするとして、本論に入っていきたいと思います。所得税から取り上げたいということで、きょうはずいぶんいろいろな資料を用意していただいております。とても所得税をきょうだけで終えるわけにいきませんので、いろいろな組み合わせがありますが、あと3回ぐらい所得税のことを考えたい。税率のこと、課税ベースのこと、所得控除のこと等々、いっぱい問題がございます。そういう意味で、加藤寛先生のころまとめました「中期答申」にほぼ盛り込んであるのですが、それを再整理しつつ、我々の中で、具体的に今後どうしようかという議論をこれからしなければいけないと考えております。次第に、土地とか金融とかそういうものに絡める所得税のこともやりたいと思います。きょうは、一番大きな、本体の所得税の構造的な部分にくっついております課税ベース、税率等々から議論を起こしていきたいと思います。

最初に村上さんから、10分ほど、御関心の点の問題提起をいただきまして、その後、国税、地方税の所得税、住民税関係の御説明を事務局からいただきまして、自由な形で御議論いただく。そこで一段落しましてから、大澤先生をお招きして、男女共同参画の視点からいろいろ問題提起をいただくということを考えております。

それでは村上さん、よろくお願いします。

委員

それでは、若干お時間をいただいて、事実関係については事務局に確認していますので、そうズレているとは思っておりませんが、私の考えを御説明させていただきます。

まず、所得税の「あるべき姿」というのが税制調査会に課せられた課題ですけれども、それを考える場合に、一つの盲点というか、いわゆるボリュームについての視点がやや希薄だったのではないかという感じは持っています。御承知の14年度予算81兆円、租税による収入が47兆円、国債が30兆円、あと税外収入等で埋めているということですけれども、その中で所得税は約16兆円。これで財源調達機能としての所得税の役割を果たしているのかどうか、そういうボリュームという観点から見直してみる必要があるのではないかというふうに考えました。

一つの論点は、平成11年にやりました恒久減税をもとへ戻す、そこから出発したらどうか。2枚紙の最初にありますように、平成元年の所得税は約21.4兆円、それといまの16兆円との間に約6兆円のギャップがあるわけです。それだけ減っているということですから、役割として、6兆円を埋めることを考えるのが至当ではないかというふうに考えたわけです。そうしますと、恒久減税2兆6,000億円ということになっておりますから、それを差し引くと、3~4兆円の調達をどういうふうにすればいいかという話になるわけです。具体的なことは別途議論されるだろうと思いますが、ボリュームの点と出発点の点を指摘しておきたいと思います。

次は、「税率構造」と書いてありますが、これについては、国際的に見ても、限界税率、実効税率ともに日本は低いことがはっきりしております。それから、高額所得者だけではなくて、中低所得層についても負担水準が低いということです。その辺のことはあとで事務当局から説明があるかと思いますが、私、当局と話をしているうちにわかったことがあります。

それは、一つは、税率のブラケットの幅が日本は非常に広いという点です。日本の場合、最初が夫婦子2人で384万円ですけれども、その次の段階に行くのに447万円の幅がある。次の段階というのは10%から上の20%ですが、そこで831万円、そこへ行くまでに447万円の差がある。ところが、アメリカの場合はその差は70万円、イギリスの場合は33万円、わりあい幅が広いと見られているフランスでも211万円。ここは、一つ注目すべき事柄ではないかなと。

もう一つは、最低税率の10%適用が納税者の約8割を占めている。これは、イギリスの場合ですと1割。1割で、もう次の段階に上がってしまう、そこが違うところだということです。最高税率に対して所得水準がどのくらいかというのを見ても、よその国に比べますと、日本の場合はわりあい高いところに設定してあるということで、かなり高額所得者も優遇されていることが見てとれると思います。財源調達機能を発揮するためには、中間段階に上がっていく、その立ち上がりを早くしていくのが一つの手かなという感じを持ちました。

次は、所得再分配機能について述べます。所得再分配機能というのは非常に微妙な議論ですけれども、社会の安定、治安の維持に非常に大きな影響がある、あるいは経済社会の活力維持に相当影響を及ぼしていると考えるべきだと思います。

この間、検事総長の話を立ち話で聞いたのですが、刑務所に入っている日本人の犯罪者の数は7万人、それに対してアメリカは250万人と。日本は、警察力、施設が非常に限られているということがあるかもしれませんが、人口はアメリカの約半分ですから、それから見ますと、日本の治安は世界の諸国と比べればまだいいほうなのではないかと思われます。それがいまの税制のせいかどうかわかりませんが、治安の維持とか社会の安定という立場からすれば、所得格差というのはどのくらいまでが許容限度なのかということになると思いますので、その辺を議論する必要があるのではないか。

高度成長期には所得の分布がどんどん平準化されて、1億円の収入があります、何とかのオーナーです、というようなことをみんな言っていたわけですが、こういう低成長時代になると、平準化の動向は鎮静化しているということです。しかし、いまの一般企業の生き方などを見ますと、自由競争とか自己責任のほうへ向いています。サラリーマンの給与でも成果主義のようなものが取り入られようとしていますから、所得格差はかなり拡大していく可能性がある。

もう一つの視点は、将来、消費税の問題が出てくると思うのですが、消費税は上げます、高額所得者の税率は下げます、というようなことを言って通るかどうか。この辺は一つの問題だと思いますので、そういう意味で所得再分配機能をある程度重視しなければいけないのではないかと思いました。

それから、課税最低限を下げる議論があるわけですが、その場合、どうしてもいまの納税者の負担が増える形になりますけれども、高額所得者の税率を下げるのかどうかというのが一つの大きな論点だと思います。そういうやり方をするのか、それとも国民全体が負担を分かち合うという考え方をとるのか、その辺が一つの大きな論点だと思いますし、私は後者だと思っていますけれども、政府税調としてそういう論点を整理する必要があるだろうと考えます。

次は、諸控除についてです。これは長くなりますから、簡単にしますけれども、まず押さえておかなければいけないのは、ここでよく言われておりますように、就業者の約4分の1が所得税を納めていないという現状に対して、国民が「広く薄く」という考え方で所得税を負担するということでないと、なかなかうまくいかないのではないかなという感じを持っています。

個人住民税については、応益課税の観点を取り入れていくということかなと思います。個別について五つぐらい例を挙げていますが、配偶者に対しては非常に優遇されているんですね。その辺をどう考えるか。配偶者控除と特別控除というのがありますが、合わせますと76万円控除。そういうものと、本人、子供にかかっている基礎控除とか扶養控除とのバランスではどうなのかなということでございます。例えば妻の所得が一定以下であった場合、妻自身に基礎控除が適用されます。夫のほうはどうかというと、夫は納税者本人ということですから配偶者控除が受けられる。つまり、基礎控除の適用を重複して受けているということが現実としてあるということです。

それから、あとで話題になるようですが、女性の社会進出、男女共同参画社会にしていこうという流れの中で、個人単位の課税の考え方をとっていくのがまともな行き方かなと思います。例えば、配偶者特別控除というものはこの辺で見直してもいいのかな、あるいは配偶者控除と扶養控除をくっつけてしまうという考え方もあるのかな、ということを感じます。

扶養控除についての一番の特徴は、シングルの増加、それに着目しなければいけないのではないかと思います。それから、大人になっている人に扶養控除を続ける必要があるのか。それからもう一つ、特定扶養控除63万円ということですが、これもやや過大かなという感じがいたします。

次の老年者控除は、65歳以上で、年間所得が1,000万円以下の場合に50万円の控除があるわけですが、これは外国の例と比較しても非常に高いことがはっきりしています。私もすぐ老人になるわけですが、その辺はほどほどでいいのではないかなという感じがいたします。特に画一的な高齢者像というか、高齢者だからというだけで制度を決めていくというのは、見直す必要があるのではないかということであります。

それから給与所得控除は、いま28%ぐらい、約3割の控除がなされているわけですが、なぜこういうことになっているか、知っているサラリーマンは意外に少ないと思います。企業の年末調整が原因かと思いますが、何がどうなっているかよくわからないというのが実態だろうと思いますし、3割はないだろう、背広とか靴とかいろいろ考えても、いくら積み上げても10%くらいかなという感じがしています。特定支出控除というのが、実額控除、そういうチャンスを与えますよということですけれども、聞いてみましたら、あまり使われていないのが実態のようです。そういうことで、給与所得控除についても少し見直す必要があるかなと。

あと退職所得控除なども、いまは、永年勤続者、つまり勤続年数が長期にわたったかどうかで優遇措置が決められているということですので、その辺は、退職金そのものについて企業が見直しにかかっている状況ですから、この際、税制の面からも見直してみたらどうかなと。

もともと新聞記者の出身で……と言うと、ほかの新聞記者の方に悪いですけれども、言わんとすることは雑駁なものでございまして、精緻な議論は、学者先生方、あるいは役所の方にしていただければと思います。口火を切るには適当な人間かなと思いましたので、発言させていただきました。

委員

ありがとうございました。非常に重要な論点をお出しいただいたと思います。特に、所得税の税率とか、控除の中身を議論しなければいけないという意味において、最初の手がかりを与えていただいたと思います。

私と村上さんで問題提起をさせていただいたところなので、諮問会議の「論点整理」などにさっと目をお通しいただくとともに、いま村上さんのお出しいただいたメモなどを参照しながら、税調と諮問会議の関係の議論でもよろしいですし、事務局から、所得税の中身についてデータをベースにした御説明をいただく前に、基本的な姿勢について幾つか議論を交わしておいたほうがいいと思いますので、少し時間をとりたいと思います。

いまの私ども2人の話に絡めまして、御質問なり御意見があれば、どうぞ。

委員

いまのお話のうち諸控除の話はまたあとですることにして、前の二つはかなり基本的な問題提起だと思うのです。私のコメントは、「あるべき姿」論のところで、まず一言申し上げたいのだけど、新年度予算で、細かい数字はよくわからないけれども、全体の税収の中で所得税は30%弱、消費税は30%強、法人税は20%ちょっと上、資産課税その他、ごった煮のやつはあるけれども、2%を割っているということなんですよ。これは基本的には財源調達機能を持っているわけだから、全体として税制は種目別にどういう役割を持ってもらうか、と。そうすると、加藤税調会長のときにつくった白書の中で使っている「基幹的な税目」という言葉があるけれども、私の勝手な分け方では、基幹的な税目というのは二つだと思っているんですよ。これ、独断だけどね。一つは個人所得税、一つは消費税、それに対して、法人税、資産、所得課税等、雑多に入ったやつ、これは準基幹税目ではないかと思うのです。

法人税はいま2割強ですけれども、日本経済の空洞化の姿、その他万般のことを考えてみると、ここの比重が上がる可能性はきわめて少ないのではないか。これ、現実論ですわ。資産課税はバブルでも起こればまた別だけど、いろんな仕組みを考えていると思うけれども、これもそんなに急激なあれはない。結局、ベースになる、本当の基幹の名に値するのは、消費税と個人所得税だと思うのです。

基幹的なものをいじくるときには、委員の議論ではないけれども、来年どうするか、再来年どうするかという話はちょっと違っていて、5年、10年先まで考えてみると、基幹税制を量的に傷をつけるというやり方は今回は本当にやるべきではない。前回もここでしゃべったことがあるけれども、過去10年間の減税と増税をセットでやった議論に、僕は全部参画したけど、今回もまた同じことを内閣のほうで言ってる人がいるらしいけれども、結局のところ減税先行で、後々これで埋めるよということはほとんどないわけです。それで税収減だけが明確に残っているわけです。名目は景気対策とかいろいろなことがあったけども、結果はそうなっているわけです。

したがって、その歴史的な愚かな行為を今回またやり返すことは、古い映画を見ているような話であまり好ましくない。「税制のベストミックス」という言葉を使うことが適切かどうか知らないけれども、基幹税制の所得税と消費税というのは、アバウトに計算してみると、いま合わせて6割ですから、どういうふうに中身を検討しようが、将来はせめてこの二つで7割ぐらい分担してもらいたい、どうせほかのところ、法人税なんかうまくいかないから。そういう割り切り方をしているんです。これ、いろんな議論があると思いますが、僕はとにかくそう思う。

それから、これとの関連で言えば、直間比率論というのは10年間使った言葉ですよ。消費税を導入して、直接税である法人税と所得税を減税するということでやってきたんですね。そういう考え方で税制をいじることは基本的に間違っている。いままではそれでよかったけれども、マイナスがずいぶん大きかった。これからは、できない。やろうとすれば、消費税を膨大に上げて、所得税その他を減税するという議論にならざるを得ないけれども、財政の現状からすれば、そんなことはできない--と、私は思うのですが、これはいままで言ったことと全く同じことです。

二番目に、委員が言っている税率構造の話で、いろいろ細かいことを言われたけれども、ここでの根本的な哲学というのは、所得再分配機能というのは所得税だけが持っている機能ではありません、ほかの歳出も全部考えてやらなければいかんけれども、所得税に限定してみれば、再分配機能というのは明らかに持っている。僕なんか、「おまえらは社会主義思想か、いつまでこんなこと担いでるんだ」と、リベラルな学者、評論家がたくさんいるけど、ずいぶん言われましたよ。僕はその議論はある程度は当たっていると思います。だからこそ、いままで税率構造その他について、社会主義的なものの考え方をだんだん払拭するような議論をやってきたことは間違いないんですよ。大きな流れでしょうね。問題は、ここから先の話ですわ。選択の余地はあまりないと思うんですね。

一つは、財源調達機能として所得税に大きなものをやってもらうんだよということを前提にしての話なんだけど、それでもなおかつ、いまの所得税が持っている程度の再分配機能は温存したほうがいいのではないか、社会主義であろうが何であろうが、どう罵倒されようとも構わないではないか、という議論がある。我々の周りで明らかに所得格差がどんどん広がっている。同期で銀行に入ろうが新聞社に入ろうが……新聞社はそうでもないか。どんどん差がつくからね。新聞社は悪平等ですよ、年次で月給もらってるからね。これからはそんなことはないわけだから。ほかの社会でも全部そうですよ。

それを考えてみれば、基本的には、村上氏が言ったみたいに、大量観察すれば、所得格差は開いていくんだなと。いや、それはそれでいいんですよ。いいけども、その現実を頭に置いてやるときに、「そうなるのだから、もっと所得再分配機能を強化すべきだ」という議論がありますよね。所得が増えれば、そこへもっていってしまえという話がある。これはいまでも隠然とありますよ、あるグループの中には。

もう一つは、いやいや、これは、この機会になおのこともっと弱めたほうがいいんだという議論も、整理すればあると思うんです。私は全くダラ幹だから、いつもそうだけど、税率構造をいじるときも、現状程度の再分配機能を頭の中に置いたほうが無難ではないか--あまり徹底しないけどね--ということを申し上げておきたいんです。

課税最低限の議論は、村上氏が言ったみたいに、まさに議論がいろいろ分かれるので、課税最低限を下げて税収増になる。その税収増で、所得者の中にはものすごくたくさんの税金を負担している人たちがたくさんいるわけだよ、それを薄めてあげるというのが一つの考え方ですね。僕は、結果的にそのことをある程度やらざるを得ないのではないかと思ってるんだ。委員みたいに割り切ってないんだけどね。冒頭申し上げたように、所得再分配機能というのをどの程度哲学的に考えるか、ということが基本じゃないかという気がします。

委員

わかりました。今後、その辺もめぐって大いに議論しましょう。

委員

質問というのではなく、意見ですが、先ほどの「公平・中立、簡素」というのは変える必要は全くないと思ってね。加藤先生のあれでも、「21世紀の展望」と書いて、またすぐ変えてしまうというのはいかにもおかしい議論だろうと思います。

その一つの根拠として挙げられるのは、消費税の問題があると思うのですが、私が『ファイナンス』なんかを読むと、公平・中立・簡素を挙げた場合、消費税というのは中立性が一番重要視される、そこに重点があるんだということを書いておられる先生がよくいるんだけど、もしこれをなくしてしまった場合、我々の代はどうか知らん、小泉内閣もいなくなってから、「公正・活力・簡素」になって、消費税を上げるときにどうやってこれを説明するのかね、そういうことまで考えた上で言ってるのかね、というのを私は非常に痛感しますね。これが第一点です。

それから、いまの委員の議論は、所得負担というのは住民税と一緒に議論しないとちょっとおかしいのではないか。所得税は所得税、住民税は住民税で議論していると、論点的に国際比較その他ができないと思うんですね。いま、住民税は3段階あるんだけど、応益か応能かという議論もあるし、私の意見としては、1段階ぐらいにして、均等割をもっと上げるという方向が一番割り切りやすいのではないかと感じておるんです。

それから、扶養の問題は、委員も書いておられるけれども、20代になったら税金を払う、払ってなくて遊んでいるのは、それだけ効用を得ているんだから自動的に扶養を外す。場合によっては、活力ある老人社会なのだから、老人もある年齢に達したら、自分が貯めなかったのが悪いんだから、これも外してしまう。これは私自身が困りますけど(笑)、そういう割り切り方をして最低限を下げたらどうかなと、そういうふうに考えております。

委員

我々としても、公平・中立・簡素の看板を税調は引き下げることは全然ないと思います。おっしゃるとおり消費税の絡みもありますし、そもそも「活力」と「中立」というのを同義にとらえて置きかえようということは、理由を新たにくっつける煩わしさもあるし、変える意味もないので、従来どおりこの看板は税調としては引き続き掲げていきたいと私は考えております。

委員

委員の問題提起について、一言二言申し上げたいわけですが、委員はジャーナリズムの大先輩で、こういうことを申し上げるのはやや気が引けるような気もするのですが、そこはあえてお許しいただくとして、申し上げますと、一つは、議論の取っかかりとして、所得税収が過去10年の間にかなり低下している、そこら辺からの問題意識ということでるるお述べいただいたと思うのですが、この出発点について一つの認識をはっきりさせておかなければいけない。

つまり、所得税収が5兆円か6兆円かの規模で減っていることはまぎれもない事実としても、この中身は何なんだということをしっかり認識する必要があるのではないか。委員のお話はどちらかというと、最初から最後まで給与所得ということにある程度傾斜したお話だったように私は受け取っているわけですが、21兆円と15兆円の関係にしても、かなりの部分が給与以外の所得の減少によってもたらされたということは、しっかり認識しておかなければいけない。それは土地の譲渡所得であったり、株の譲渡所得であったり、あるいは、結構大きいのが利子所得。これは、何兆円かの規模でこの10年間減っているという事実がある。そうしますと、給与所得に対する課税云々という要素はあるにせよ、それがすべてではないと私は思うわけであります。したがって税率構造という各論に入っていく場合、現行の給与所得課税というのがかなりおまけしちゃっている、それが所得税収の減少の主因である、というとらえ方でいいのかどうか。いささか疑問なしとはしない、というのが私の見方であります。

例えば、よその国と比較してブラケットの幅が広いという現実は確かにあるわけですが、消費税を上げるときの先行減税でかなり大幅な手直しをした、あのとき、政府あるいは政府税調が言っていたことは何だったのかということを、改めて思い起こす必要があるのではないか。あのときの大蔵大臣はさきがけの武村さんだったと思うのですが、時の大蔵大臣が何を言ったかというと、「これでほとんどのサラリーマンは生涯を通じて20%の税金でよくなりました、したがって消費税を3%から5%に上げるのは結構なことなんです」と。この問題を変えるとすれば、あのとき言っていたことをどう修正するんだというテーマが出てくるという気がいたします。

あと、諸控除についても触れられていますが、この場合、配偶者に対する控除が真っ先に挙げられているわけです。後ほど、男女共同参画ということで別途議論する機会があろうかと思いますが、さわりだけ挙げさせていただくと、「女性の社会進出に配慮」というのが、配偶者控除をめぐってはここ何年か常に出てくるというふうに私は頭の中で整理しているわけであります。では、「女性の社会進出」というのは一体どういうことなのか、ということをしっかりと議論しておかないと議論が一面的になる。

もっと具体的に言いますと、いわゆるキャリアウーマン的な女性たちを取り上げた議論なのか、あるいは、家計の足しにということでパートでひたむきに働いていらっしゃる1,000万人を超える女性たちも含めた議論なのか、そういう人たちは社会進出ではないのか。そのあたりのことを言わないと、配偶者特別控除を廃止するとか、配偶者控除をどこかとくっつけちゃうとかいう議論に簡単に突き進めない。

配偶者特別控除というのは何が発端かといえば、パートさんに対して働きやすい環境をつくるんだということで始まった制度だと私は理解しておりますが、では、そういう理解とか配慮が必要なくなったのかということになると、私は、なくなっていないと思う。むしろ、旦那さんの会社がかなり不振だということになれば女性の家計補助がますますウエートを高めてくる。そういう女性たちがどこで働くのか、いきなり正社員に採用されるなんてまずないわけであります。とりあえずはパートということで、少ない賃金、限られた労働時間で働く機会が増えている、これも一方の現実なわけであります。

そういう中で、配偶者特別控除の廃止だなんていうことを税調として軽々に言えるのかどうか。私は、こういう前提で進むとどんなふうに議論が展開していってしまうのか、危惧を感じる一人でございます。配偶者控除については、また別途、共同参画のときに申し上げたいと思います。

委員

税制調査会の先生方のお話で感じるのは、税制調査会というのは議論のルールがあって、会長から御指名いただいて、私もさきに報告いたしましたが、何も報告したからそれで決まったわけではなくて、あくまで議論の素材を提供しているわけです。ところが、経済財政諮問会議というのは、いつも不安を感じますのは、きょうの「論点整理」でも「4名の民間議員の提案である」と書いてありながらも、いかにもこれで話が決まったかのように進んで、ひどいのになると、納税者番号から二元的所得税まで決まったと書いた新聞報道がありましたけれども、議論のルールがまるではっきりしていないのではないか、あるいは、好き勝手に利用しているような場所なのかなという感じを受けました。

特に一番肝心な租税の原則ですけれども、たしか竹中大臣までも「活力」に変えたと言っておられました。どういう段階でこれが決まるのか、これが全くはっきりしなくて、一人意見を言われると、もうそれで決まったように外に話をされているような感じがいたしますが、これは会長、いかがなのでしょう。これはあくまで意見であって……。

委員

オブザーバーで参加いたしましたから。私もいろいろ言いたかったのですが、おっしゃるとおり、誰かが言って、それに強い反対がない、あるいは、最後竹中大臣が集約します、そのときに異論がなければそうなってしまうから、例えば「中立のかわりに活力にしますよ」ということを、決は採らなかったけど、前から言ってましたからね。僕の見るところ、首相も含めて、「中立のままでいいよ」という人と、「活力のほうがいいよ」という民間議員を中心とした財界の人と、半々だったんですよ。それでも結果的には、前から「活力にしましょう」という報道があったこともあってそうなって、そういう意味では、人さまの会議の仕方についてとやかく言うのも何かと思いますが、御懸念のように、ルールはないといえばルールはないでしょうなあ。そういう意味でうらやましいですな、ああいうのは(笑)。ワアワアワアッと決まっちゃうから。私もあっちに行きたいという感じがするぐらいですよ。

委員

いまの点だけなんですけれども、「(2)の税制改革の課題」で、[5]まで五つ挙がっていますね。やや問題があるかなというのは、[1]の「活力を引き出し」というところで、[2]~[5]はそんなに問題があるコメントではないと思うんです。要するにこれは、こういうふうに解釈すれば全く問題のではないか。

つまり、「課税ベースと税率構造の見直し」で国際的整合性ということは、日本の所得税の名目税率と実効税率の差をつくっているのが控除ですから、結局、控除を見直せという議論というふうに考えれば、我々がこれから進める課税ベースの拡大というのとあまり離れてはいないと考えれば……。問題は、これ以上に、もしやろうとしている場合ですね。「活力」というのが。何らかの行政介入的なもの、例えば研究開発で、これはいい、これは悪いとか、ここまで来るとちょっと問題だと思うんですけど、この書いてある範囲においては、やりようによっては何とかなるのではないかと。

委員

書いてある範囲においては、私は賛成だと言ってきましたよ。真っ当なことが書いてあって、我々と目指している方向は同じだ、比喩として、「大阪へ行く目的は同じだけど、新幹線で行くか在来線で行くかの違いがある」と、はっきり言ってきましたよ。ただ、新幹線で走られて、こっちはトボトボ東海道を歩いていくようではしょうがないからね。その点の危惧はありますけれども、おっしゃるとおり、中身に関しては、税の議論をする共通の基盤はあると思いますので、これからスピードあるいはタイミングを押さえつつやれば、共同のやり方はできると思っています。ただ、首相が「勝手にやりなさい」という話だからね、難しいんですよ。

委員

いまの話でございますが、この間、東京都の銀行税がああいう結果になった。私、あの中身についてはもちろん反対ですけれども、一つの考え方。しかし、あれを議論して、法案化して、世の中に出すまで、およそ、どういうふうな経路をたどってどういう議論をやったか、必ずしもはっきりしない。また、納税者サイドの意見も十分聞いていない。

税というのは、負担を求める、無償で財貨の提供を求めるわけですから、いろいろなルールを決めて、相当幅広く……。先ほど会長が言われた、大会社的で時間がかかるというのは、税金では当然ではないかと思います。税制調査会は、各界の代表者の方々のいろんな意見を会長に我慢して聞いていただいて、それでまとまっていくので、時間がかかるのもしょうがないかなと思う。あの銀行税を見て、全くそのように思います。いろいろな方面からいろいろな意見が出てくるのは結構なことではないかと思いますが、そこら、会長がうまく受けとめていただいて、税調としては淡々と進めていただければありがたいと思います。

委員

この辺、皆さんの御意見をくんで、あとの記者レクの場で強くアピールしておきます。

それでは、事務局から、資料について御説明ください。

事務局

それでは、お手元の所得税、住民税、個人所得税関係の資料につきまして、御説明させていただきます。

資料が大部でございますが、まず、「個人所得課税(中期答申)」という1枚紙で、番号のついてないものがございます。1から14まで項目が並んでございますが、これは、中期答申の個人所得課税の部分の中項目の見出しを書き出しただけのものでございます。先ほど会長からもお話がございましたが、今回、前半の部分、点線の上の部分につきまして、資料を御用意いたしましたので、資料説明はそちらの部分を中心にさせていただきたいと思っております。

それから、1枚紙で「資料説明概要」というものがございます。これから御説明させていただきます資料につきまして、目次のかわりでございますけれども、大きく三つございまして、マクロの税収と負担率関係のカテゴリーと、税率構造のもの、それから、課税ベース、諸控除の関係ということでございます。先ほどの委員のお話に沿った順でございますけれども、資料が大部でございます。こういうくくりで進んでまいりますので、適宜、どの辺のところを説明しているのかなということでこの資料がございます。

それでは、お手元の資料でございますが、まず、「基礎小9-2 わが国税制の現状と課題」ということで中期答申の要約版を配布させていただいております。これは、先ほど項目だけをごらんいただきましたものでございますけれども、中期答申をこちらのほうで要約させていただいたものでございます。その中で、状況の認識とか、検討課題として明示している部分がかなりございまして、私のほうで勝手にアンダーラインなどを引かせていただきました。一つひとつ御点検いただこうかと思いましたが、先ほど来、御議論に入りましたので、これは省略させていただきます。それぞれの論点につきまして、状況認識、あるいはこういう方向で検討するということに触れてございますので、これを一つひとつつぶしていっていただきたいというお願いをさせていただければと思います。

それでは、もう御議論に入りましたので、すでに出ておりましたお話も含めまして、確認のための資料を中心に計数的なことを御説明させていただきます。私どもの国税の関係ですと、お手元に「9-3」と「9-4」というのがございます。両方とも所得税の関係でございますが、「9-4」は参照でございまして、「9-3」のほうで御説明させていただきます。

「9-3」の目次を何ページかめくっていただきまして、1ページから税収の関係でございます。すでにいまお話も出ておりましたが、何ページか税収の関係をご覧いただきたいと思います。

1ページ目、折れ線がございますが、一番上は国税の一般会計の税収でございます。ピークの平成2年が60兆円、現在46.8兆円でございます。真ん中の折れ線が、このうち所得税だけを引いたものでございますが、平成元年、21.4兆円でございます。そのあと、平成2年、3年のバブルの時期に26.7兆円まで上がりまして、現在15.8兆円でございます。したがいまして、ピーク時からは10兆円以上、平成の前半から見ましても、5~6兆円の減になっているということでございます。3番目の折れ線は、参考に、住民税を掲げてございます。住民税が健闘しているのに比しまして、所得税の落ちが大きいという感じでございます。

2ページ目でございますが、この折れ線は国民所得比で負担割合をとったものでございます。一番上の折れ線は、所得税と住民税の合計でございます。真ん中の折れ線が国の所得税の部分でございます。所得税をご覧いただきますと、平成元年の6.6%から、2年、3年、7%台に上がりまして、平成14年では国民所得比で4.3%の負担率でございます。下の棒グラフは税収そのものでございます。平成2年、3年以降、実額、国民所得比とも落ちてきているという状況でございます。下のほうに減税の経緯がございますが、62、63年、あるいは平成6、7年、平成10、11年あたり、大きな減税がございましたので、そのつど国民所得比で税収が大きく減ってきているということでございます。

この減り方の内容でございますが、3ページ目にございます。3ページ目は、国の所得税収の内訳でございます。一番右に14年度の数字がございまして、15.8兆円。そのうちから、申告所得税の分、利子・配当の源泉の分、退職・事業の源泉分を引きまして、いわば残余の形で主だったものとしての給与の源泉税を一番下に掲げてございます。

それでまいりますと、平成2、3年ごろ、申告あるいは利子・配当などがたしかに多くございますが、一番下の残余部分で見ましても、平成4、5年ごろに12兆円台ございまして、減税の効果もございましょうか、6、7年のところは10.5兆円、10.2兆円と下がりまして、8、9年とまた増えますが、10、11年でまた減りまして、現在、8.なにがしという状況でございます。

ちなみに、12、13年の上から二つ目のところは、郵貯の満期の関係もございまして、利子のところが膨らんでいるという状況でございますので、11年、14年あたりが実力かなという感じでございます。したがいまして、先ほどの21.4兆円というのは平成元年でございますが、そのレベルになりましたのが平成6年、それから以降、減少していっているという関係でございます。平成2、3、4年あたりは申告あるいは利子あたりが多いということでございます。

この国民所得比の数字を国際比較したものが4ページでございます。右下のほうに網線をかけてございますのが、日本の所得税の国民所得比の数字でございます。平成元年度が6.6%、平成14年度が4.3%ということで、2.3%ポイント落ちてございます。

ちなみに諸外国を見ますと、この欄を横に見ていただきますと、10%強ございますので、4.3%と比較しますと、2倍から3倍ぐらいの負担率を諸外国は所得税で持っているという関係でございます。一番上の欄でございますけれども、平成元年、14年のあたりで5%弱下がっておりますが、もともと租税負担率そのものが低いということもございますけれども、そのうち個人所得税課税の分、あるいは国税分につきまして、諸外国と比べて低いということがございます。

5ページは、所得税収を実額にしたものでございます。為替レートの問題がございますけれども、単純計算いたしましたときの数字は、アメリカは100兆円ぐらいの所得税収がございます。もちろん経済規模が違いますので、それを換算いたしたものが後ろのいろいろな柱の表になってございますけれども、いずれにいたしましても、日本に比して諸外国はかなり高いところに所得税がございます。

6ページが、過去の減税の概要でございます。62・63年の抜本改正、消費税の創設との関係でございますが、平成6年、7年あたり、消費税の引上げの関係で先行実施をする、あるいはその後特別減税をする、10年の定額減税、11年の恒久的減税ということで、右にございますような減税規模。恒久的なものもございますし、特別なものもございますが、積み重なってきたという状況でございます。

7ページは、現在ございます恒久的減税の内容でございます。恒久的減税は、国・地方合わせて4兆円ございますが、内容は、最高税率、定率減税、特定扶養の加算部分というふうに構成されております。「注」にございますように、もともとは16歳未満の扶養控除の加算措置もございましたが、12年度改正でそれは廃止されたという状況でございます。

8ページは、62年以前の税負担と現在の税負担を比較したものでございます。例えば所得税だけで見ますと、上から3番目、給与収入700万円のところで見ますと、抜本改革前の税額ですと52万円が、現在、三つほど右に移りまして、18万円ということで、軽減率は65%、3分の1ぐらいの負担でございます。

ちなみに高額所得者のところ、5,000万円で見ますと、2,000万円強の負担であったものが、1,300万円ということで、793万円の減税額、軽減率37%という状況でございます。地方税と合わせても同じような状況かと思います。

9ページ、10ページは、諸外国との比較による税率構造の推移でございますが、省略させていただきます。

11ページは、村上委員からの御指摘もございましたので、試作したものでございますが、それぞれの税率の刻みをこのような形で表現しました。若干資料上の限界がございまして、相当単純に換算しております。地方税が入っておりませんし、定率減税とか、諸外国にあります税額控除の影響などが除かれておりますので、単純に見ていただけたらよろしいかと思います。

一番下に日本がございまして、御案内の384万円の課税最低限から、10、20、30、37という国税の税率が張ってございます。アメリカを見ますと、10%というのは315~389万円の間だけでございますので、15、27と上がってまいりまして、大まかに見ていただきますと、30のところで何となく日本に追いつきますが、それまではアメリカのほうが段階が先に上がっている感じでございます。ちなみにイギリスは10%から始まりますが、すぐ22%に上がりまして、40%の税率に達するのもかなり早いという構造でございます。ドイツは、383万円から1,368万円ぐらいまでが方程式で、それからフラットになるという形でございます。

12ページは、ブラケット別に納税者がどのくらいいるかということでございます。日本は推計になりますが、10%の税率のところに8割ぐらいの納税者がいるということでございます。残りの2割が、20%のところに16%、30%のところに3%、37%のところが1%未満、0.何%という形でございます。先ほど御指摘がありましたように、10%、20%のところでほとんどの方がカバーされているという税率の構造になっているようでございます。

ちなみにイギリスを見ますと、10%のところは9.7%、22%のところが8割程度と非常に多く、40%のところも1割ぐらいおられるという統計でございます。アメリカ、フランスは、納税者数ではなくて、申告書数の割合になりますので若干違うことになりますが、99年の数字で見ますと、アメリカは、15%の税率のところに7割弱、28%のところに25%ぐらい、フランスは、10.5%のところに5割弱という構造でございますので、日本の10%のブラケットの人数というのはかなり広くとられているという状況かと思います。

13ページは、御案内の実効税率の表でございます。中堅のところで日本の定率減税後の数字が低く張っておりますけれども、まさに10%、20%のブラケットが非常に広いということがこれにあらわれているということかと存じます。

14ページは、いつもご覧になっている表でございますので省略させていただいて、15ページは、納税者数と所得税額のシェアでございます。日本が700万円以下のところに80%ぐらいの納税者がいる、その方が所得税額の39%を納めているというふうに読む表でございます。1,000万円以上のところは、6.4%の納税者数で41%の所得税額でございます。日本は給与収入ベースで、アメリカは所得ベースになりますが、アメリカは5万ドルまでのところに73%の申告件数がございまして、それが税額で14.9%、白抜きのところ、申告件数は7.5%ですが、税額としては60%強をここで稼いでいるという状況にございます。

16ページは、厚生省の所得再分配の調査でございます。11年度の数字がまだございますので、若干古うございますが、税と社会保障の再分配の構造がそういうことになっております。

17ページ以降は課税ベースのほうに入りますが、18ページは、給与所得の課税ベースの推移を大きく見ていただくものでございます。私どもの予算の推計の際に見た数字でございますけれども、全体の給与総額からどのくらいの控除が落ちておって、所得がどのくらいの残るかという表でございます。一番右の14年度で見ますと、222兆円が給与総額、そこからさまざまな控除で落ちますものが白抜きの125兆円、課税所得が97兆円残るという見方をするものでございます。

先般、今井委員がこちらにお見えになりましたときに、控除を全廃すると税率は数%で済むというお話がございましたが、それはまさに、222兆円というベースに対しまして税収が10兆円とか15兆円とかいうことですと、数%で済むというお話であったかと思います。給与所控除ですと、経費の部分がございますので、「全部なくせば」ということはなかなか難しいと思いますが、収入対比の負担率というふうに見ますとそういう状況になるということでございます。

19ページは、課税最低限の表でございますが、省略させていただきます。

20ページは、世帯構成ごとの課税最低限。

21ページは、逆に、給与収入が700万円だったときに、夫婦子2人あるいは独身の場合に幾ら課税所得が残るかというのを計算したものでございます。夫婦子2人の場合ですと、扶養控除あるいは配偶者控除がございますので、課税所得が一番上の225万円残りますが、独身の場合はそういう控除がございませんので、課税所得が402万円残るという状況でございます。

22ページは、課税最低限の国際比較。

23ページは、これは国会でも議論になりましたが、課税最低限の国際比較をするときに、為替レートだけではなくて、購買力平価で比較した場合には様相が違うのではないかという議論がございまして、それで計算したものでございます。

24ページ、25ページは、人的控除の概要の計数でございます。

26ページは、人的控除の適用人員につきまして、計数的なイメージをお持ちいただくためのものでございますが、基礎控除が一番上にございます。これは、民間給与の分と申告所得税の実態と両方ございますので、右から三つ目の「民間給与の実態」の数字を縦に追っていただきますと、基礎控除が3,548万人でございます。そのうち配偶者控除が1,099万人、配偶者特別控除が994万人、扶養控除は1,218万人、その扶養控除の内訳がその下に分かれているという形で読むものでございます。

27ページは、特別な人的控除の適用人員でございます。例えば老年者控除ですと、真ん中ぐらいにございますが、民間給与の実態のほうで67万人、申告所得税のほうで184万人ございまして、単純合計しますと250万人でございます。一番下の勤労学生控除は、数字はございませんが、「注3」に約6万人という数字がございます。

28ページは、世帯構成の状況で、人的控除の組み合わせがさまざまでございますので、それを書き並べたものでございます。親と同居して、親が老人であり、あるいは特別障害者でありというようなケースですと、非常に大きな控除がございますし、本人のみですと基礎控除だけということでございますので、さまざまな組み合わせが存在してございます。

29ページ、配偶者控除ですが、これは御案内の資料でございますので、省略いたしますが、ちなみに人数だけ見ますと、配偶者特別控除のみを使われている方が53万人、なにがしかの配偶者特別控除と配偶者控除の両方を使われている方が942万人でございます。

30ページは、配偶者控除・配偶者特別控除の沿革でございます。

31ページは、パート課税問題につきまして、関係いたします、130万円の壁と申します社会保険あるいは扶養手当の関係の資料でございます。

32ページは、パートタイムの関係の資料でございます。

33ページを見ていただきますと、一番上の折れ線は世帯の収入、真ん中が夫の収入、下が妻の収入でございます。世帯の収入でガクンと落ちて壁になっているところがございますが、壁は二つございまして、一つは、夫の配偶者手当が消失したところ、二つ目が、妻が社会保険料が発生したところということでございます。その前に所得税の課税の問題がございますが、先ほどの消失控除を入れました関係で大きな壁にはなっていない、一応解決されているという形でございます。

34ページは、扶養控除でございます。扶養控除は、老人の部分と特定扶養の部分がございますので、こういうふうに出っ張った形になってございます。

35ページは、その沿革でございます。

36ページは、老年者控除につきまして、右側の「高齢社会対策大綱」というのが昨年末に閣議決定されておりまして、これは、旧来の画一的な高齢者像の見直しとか、年齢だけで高齢者を別扱いする制度・慣行は見直すという大綱になってございます。

37ページは、基礎控除、配偶者控除、扶養控除の概要でございます。配偶者に対する配慮につきまして、2分2乗、あるいは世帯単位でやっているドイツ、フランスのような形と、日本のように個人単位で配偶者控除をしているもの、アメリカのように、配偶者と言わず人的控除で見ているもの、さまざまでございます。後ほどまた御議論をちょうだいすればと思います。

38ページは、老年者関係の控除の諸外国の比較でございます。上の段は、高齢の納税者本人の控除があるかないかということでございますが、各国とも、おおむね65歳以上の方について本人の控除があるようでございます。下のほうは高齢の者を扶養している場合の控除ですが、日本は、御案内のように老人扶養控除がございますし、同居の老親の加算もございますが、アメリカは、高齢の者だけを扶養するという控除ではございませんで、一般的な人的控除でカバーするという形、イギリス、ドイツは、扶養控除が子女が対象になっておりますので、高齢の者の扶養控除はなし、フランスは、尊属の扶養控除があるという状況でございます。

39ページは、課税単位の状況。

40ページは、給与所得控除でございます。沿革だけ見ていただきますと、右の表でございますが、昭和48年の段階では、定額控除16万円の上に定率控除が乗りまして、最高限度額は76万円という制度でございました。49年の段階で最高限度額がなくなりまして、むしろ最低保障50万円というのができております。以降、何度か拡充がございまして、最低保障のほうは65万円になっております。最高限度はなしという形で推移してきているという状況でございます。

41ページは、いまの給与所得控除の計数を現在の給与収入に当てはめたケースでございますが、年収700万円の方で、真ん中にございますように、190万円の給与所得控除がございまして、比率として27%でございます。ちなみに、先ほど申し上げたようにこれは天井がございませんので、5,000万円の給与収入がある方でも、給与所得控除は増えてまいりますので、5,000万円になりますと、420万円の給与所得控除があるという状況でございます。

42ページは、給与所得控除の総額でございます。222兆円の給与収入のうち、給与所得控除を見ておりますのが62兆円、28%程度の量でございます。

43ページは、昔、よくご覧いただきました、勤労者世帯の年間収入から勤務関連を広く見た場合の調査でございます。6.7 という数字が右にございますが、1ケタぐらいのパーセンテージのところまでしか拾い切らないということでございます。

44ページは、昭和63年に入りました特定支出控除の内容でございます。

45ページは、その外国資料。

46ページは、源泉徴収制度の概要でございます。

以下、47、48ページ、源泉徴収制度の説明は省略させていただきます。

それから、その他の控除で1点だけ。51ページに社会保険料控除の適用状況がございまして、社会保険料が増えているという関係がございまして、全体の中で1人当たりの控除額が平均50万円、給与に対して9.9%のウエートまで上昇してきているという状況がございます。

52ページ以降は、退職所得の課税方式の資料でございますが、省略させていただきます。

事務局

引き続いて、個人住民税の御説明を申し上げたいと思います。資料でございますが、念のため、「基礎小9-2」中期答申の要約版の7ページをお開きいただきたいと思います。

「14.個人住民税関係」というところがございます。これは御承知のとおりかもしれませんが、個人住民税については、住民の地域社会の費用ということで「負担分任」という言葉を使っております。課税最低限に関して言えば、所得税よりも低く、また税率で言えば、より緩やかな累進構造ということであらわれておりますが、そういう意味では皆さんに広く負担を分担していただく。それは受益に対する負担になって、応益と応能の性質もあります。それは結果として、税収面での地域的な普遍性、時系列で見れば安定性ということにつながってきております。そういった性格を持っているということでございます。

金融関係を省略して、8ページに行きますと、個人住民税については、国税の所得税に似通った所得割のほかに均等割というものがございまして、負担分任の性格がはっきりあらわれた部分と言われております。これについて、負担水準についてどう考えるべきか、人口規模で税率区分があること、納税義務を持っている夫と生計を同一にする妻に関しての非課税措置があることをどう考えるか、といったことが課題として御指摘をいただいているところでございます。

資料のほうですが、「基礎小9-5 個人住民税関係」というのがございます。そちらを一旦おめくりいただいて、1ページをご覧いただきたいのですが、いまほど申し上げましたように、個人住民税は、所得割に関して申し上げれば、所得計算は所得税の関係の法令の計算の例によって行う。控除の仕組みも仕組みとしては共通しております。ただ、負担分任の性格ということがあるので、より広く負担いただくという趣旨から、一つは、控除の額がそれぞれ所得税の控除よりも小さく設定してございます。そのことによって、どのような世帯類型であってもより広い範囲で御負担をいただくことにつながっております。その結果、1ページで見ていただければ、課税最低限が325万円になっておりますが、基礎控除とか扶養控除は、所得税が38万円のところ33万円になっているという形であらわれております。

2ページは、世帯類型ごとのものでございます。省略いたしまして、3ページは、700万円のケースでございます。所得税よりも課税所得が大きくなるということがわかる資料でございます。4ページ、5ページは、具体的にそれぞれの控除の額の違いがわかるようにしてございますが、種類あるいは制度は同じですので、省略いたします。

6ページ、7ページは、人的控除の適用人員でございます。所得税のほうで同じような資料があったので省略しますが、統計上の都合がありまして、私どもの人員については納税義務者でできておりますので、所得税と単純には比べることができません。念のため。

8ページも、基本的に同じような制度でございますので、省略します。

9ページも、配偶者控除・配偶者特別控除、仕組みは同じですので、省略させていただきます。

10ページ、11ページ、12ページと、ずっと同じです。

14ページは、生・損保は額が若干異なりますが、仕組みは同じでございます。ただ、寄附金控除に関して申し上げますと、会費というような性格もございますので、政策的な配慮は極力排除するという趣旨もございまして、寄附金控除の対象は、国であるとか、特定公益増進法人とか、国税であれば対象にしてあるようなものも対象にはいたさずに、地方公共団体、共同募金会や赤十字社の都道府県の支部に限定してある。また、最低限度額が10万円ということで、大きな額になっております。これも負担分任という性格のあらわれでございます。

15ページから3枚ほど、個人住民税の特有な制度にかかわる資料をおつけいたしております。大変恐縮ですが、おさらいのような形でございます。納税義務者の範囲として、15ページにございますが、市町村なり都道府県の中に住所を有する個人というのは、均等割であれ所得割であれ、納税義務者だというふうにいたしております。それから、住所はないけれども、家屋敷、事業所を持っている人は均等割だけは納税義務者だというふうにいたしております。

ここまでですと赤ちゃんも納税義務者になってしまうのですが、人的非課税というものを設けておりまして、「均等割と所得割がともに非課税とされる者」というのがアに書いておりますが、生活保護法の規定による生活扶助を受けている者、障害者、未成年者--この辺で子供が出てくるわけですが--老年者、寡婦、寡夫で、合計所得金額125万円以下の者ということで、こういった方は住所があっても非課税にするという仕組みがございます。

それから、均等割だけに関して非課税とする仕組みが二つございます。一つは、生活保護としての生活扶助程度の所得しかない場合、それ以下であれば、非課税にしようという趣旨で算定式を設けておりまして、世帯を構成する人数に応じて基準額が定まるようになっております。

均等割の非課税の二つ目は、均等割の納税義務を負う夫と生計を一にする妻で、同じ市町村に住所を有しているというケースでは、同じ世帯の中で二重には課税しないという趣旨で、非課税規定が設けられております。

次に、先ほどの均等割の基準は、生活保護の中でもより低所得であるところの生活扶助の基準で計算式をつくっておりましたが、所得割のほうは、生活保護基準額に見合う額がはじき出されるような算式を設けておりまして、これによって出される基準額以下になりますと、非課税にいたしております。

おめくりいただきまして、16ページでございますが、均等割に関しての資料になっております。均等割につきましては、税率が上の枠の中にございます。現在は、市町村民税と道府県民税二つあるわけですが、そのような形になりましたのは昭和29年当時でございます。現在の原型がこの年にできております。その後、税率の改正を重ねて、平成8年に、50万人以上であれば3,000円、道府県民税1,000円という形になっております。昭和29年当時であれば、個人住民税総額に占める均等割の割合は13.4%だったわけですが、平成8年であれば、1.8%、平成12年であれば、1.9%ということになっております。

それから、17ページでございます。これは、夫婦子2人で、1人は特定扶養ということにしてありますが、個人住民税所得割の課税最低限で、一番上のラインは所得税の課税最低限、一番下のラインは所得割の非課税限度額の経年の変化でございます。さかのぼって一番左の62年当時を見ていただきますと、実は62年当時の一番下のラインというのは、所得割の課税最低限ということで、真ん中のところが非課税限度額だった。一番上は所得税の課税最低限であったということで、この当時は、非課税限度額よりも課税最低限のほうが低かったということでございます。

その後、改正が重なりまして、今日は、所得割課税最低限325万円に対して、非課税限度額は277万1,000円ということで、これが生活保護基準額に見合う数字になっております。所得割の課税最低限を非課税限度額で割った割合を、一番下の欄に数字的に示しておりますが、62年当時は、9割弱、現状は117.3%。1割7分ぐらいオーバーしている、こういうような形になっております。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。時間の関係もあって、個々の所得控除の中身など、もっと知りたいところを御説明いただくことができませんでした。資料をよくご覧いただきまして、あと数回、少なくとも2回はやろうと思っていますが、所得税を議論する場がありますので、折にふれて御議論いただきたいと思います。

私の印象では、国税と地方税、個人所得税と住民税の所得割を聞きましたけれども、似たような制度になっていること自体、かねがね問題ではないかと思っておりますけれども、要するに両方が違った税であれば、何も同じような所得控除を使う必要はないのでありまして、もうちょっと所得控除を削って応益原則をやるならば、おそらく個人住民税のほうはまた違ったスタイルの税の仕組みがあるのではないか。個人的なつぶやきでありますが、かねがね思っていますので、そういう点も踏まえて御議論いただきたいと思います。

委員

先ほども議論がございましたが、ニュートラルということについて、少し慎重に考えたほうが……。慎重という意味は、いま、もし物事がニュートラルでない状態なるものをニュートラルに戻すことをするときは、少なくとも現状である制度のもとに成立している一種の均衡を崩すことになると思うんですね。受けとめ方によっては、現状が非常にニュートラルでなかったとしたら、それは相当非ニュートラルな方向で直さなければいけないということはあり得ると思うので。

委員

環境税とかね。

委員

ええ。ですからその点は、本来あるべきところに到達するプロセスの話と、目標にするところを、ちょっと分けて考えないと、ニュートラルという議論は非常に混乱する可能性があるだろうと思っています。

もう一つは、初めからずっとお話を伺っていても、日本の所得税というのは、マクロ的に見ても、平均的に見ても、特に外国と比較すれば、負担率とかそういうものはかなり低いという判断をされる。もちろん一般的な話ですけれども。しかし、それであるにもかかわらず、不公平感、重税感が強いとしたら、一体それは何なのか。公平とか、負担率の適正というものを厳密に定義することはできないけれども、重税感とか不公平感がある限りにおいては、やはり税制というのは問題があるわけで、それを直すことは税務行政も含めて重要だと思っています。

それから、これはむしろ事務局にお願いですが、しばらくぶりに出てきましたら、資料は相変わらず昔からあまり進歩していないという印象でございます。例えば税収減の話についても、オートマティックな部分、課税ベースが縮小した分と、裁量的な税制改正によって減った分が、どういうふうになっているのか。若干それに近い数字が出ておりましたけれども、そういうのは分析的にもはっきりしていただきませんと、経済成長率がある程度回復したときに、自然増収でもとに戻るという考え方もあるでしょうし、逆の裁量政策をとらなければ税収はもとに戻らないという考え方もある。判断をするためには、もう少し税収減なり増収というところの分析をもう少しきちんとしていただけないかということ、これは要望でございます。失礼しました。

委員

重税感と不公平感の具体的なところは、どこにあるとお思いですか。

委員

一つは税務行政の問題と、もう一つは、所得の間の課税の違いとか、年齢による違いとか、そういうところにあるのではないかと思っています。

委員

私もいまの御説明などを伺っていて、日本の所得税というのは世界の水準以下であることは確かだと思います。この点ははっきりさせておく必要はあるだろうと思います。それが第一です。

第二は、所得税の課税最低限ですが、これは購買力平価で見たらそんなに高くないではないか、という意見があります。ただ、きょうの御説明を伺いますと、購買力平価もいろんな数字のとり方でかなり違ってくるということで、それだけであまりはっきりしたことは言えないという感じはあります。

ただ、この課税最低限について、一体どれくらいの水準がいいのか。諸控除の組み合わせで決まるわけですが、どの辺の水準がいいのか。住民税のほうは公的扶助のことも考えているようですけれども、所得税の場合は、公的扶助との整合性を考えていないわけですね。だから、大体どういう水準がいいのか、そういう根拠がはっきりしない。これはやはり考えたほうがいいのではないかと私は思います。

それから、先ほどの事務局の説明の中で、これは金融所得控除に関係するのですが、「43ページに、「勤労者世帯の年間収入5分位階級別1世帯当たり品目別年間支出金額」というのがあります。この数字が生活実感に即しているかどうか。これは4人世帯で、有業者が1人。年間収入636万3,000円のところを見ますと、衣料品が2万7,093 円、身の回り品が1万529 円、理容・洗濯が2万450円、こういう数字が並んでいます。こういう数字で本当に賄えているのかどうか、ということですね。

これは、ここのところが問題だという意見が専門家の間にあるんですね。こういう数字を根拠にしていいのか、これはまさに貧困世帯の数字ではないか、という反論があるわけです。そこをどう考えるのか。私は、給与所得控除自体は既得権化しているから問題だとは思います。しかも、その一番恩恵を受けているのが法人した事業所得者ということですから、これまた問題である。ただ、給与所得控除を考える場合、どこまで経費であるのか、判定が非常に難しいですね。いずれにしても、サラリーマンというのはあまり政治的に関心ないから、この問題をどんどん取り上げて大いに議論を巻き起こしたほうがいいだろうというふうに思います。

委員

所得課税、最初の議論でございますが、私はむしろ歳出問題も含めて、特にこれは、経済財政諮問会議の要望というんですか、税調委員としての要望だと思うんです。これだけ社会保障というものが大きくなっていると、所得課税、税制だけの問題ではないんですね。かつて公明党が、子供対策で扶養手当を上げろと言ったけれども、所得税のほうでは、そこらは課税最低限が下なもので効かないというのが、2、3例やってわかった。むしろ歳出で考えなければいけないのではないかというような経験もありますけれども、例えば年金でも、基礎年金、配偶者に対しての支給については、社会保険料自体で配偶者のものをどうするかということと同時に、所得税の世界における年金控除とか、扶養手当とか、そこらの問題も歳出と兼ね合わせて考えなければいけないのではないか。

もちろん税制調査会で、税中心でそちらのほうも考えながらやるんですけれども、そういう歳入・歳出面、収支差額、あるいは金融面、そこらの大きな観点で、どこに重点を置くのか、どこに限界があるのか、そういう観点をまず財政諮問会議はやるべきで、個々の問題はそれぞれに任せればいいではないかという感想を持っているんです。

委員

その点は十分御関心はお持ちですよ。例えば子育てにしても、税でやる扶養手当よりは児童手当がいいではないかとか、歳出でやるのもいいではないかとか、そういうのがポツポツ出ておりますが、それが体系的な議論にならないところが問題で、いずれ、それはまたお願いしてこようかとは思っています。

委員

まず、全体を通じての感想を一言。先ほどの中立の問題ですが、所得税のシステム自体は、かなり中立的でない税制に現状ではなっているのではないかというのがまず前提です。つまり、税制が現実の社会的な動きに合っていない部分がかなりある。そこで、どこが合っていないかということをもう少し分析する必要があるかなと思うのですが、例えば3ページに「所得税収の内訳の推移」というのがあります。これは次のページとも合わせて、租税負担率27%から22.9%、個人所得税9.5 %から6.8%のこの減少分の中で、所得税を納めている雇用者の数の減少分と減税分がどのようにブレークダウンしているのか。意外と10年くらいからはそんなに下がっていないということが、逆に言うと、所得税を納めている単位が増えているのかもしれないわけで、この中身がどうなっているかということ。逆に譲渡益課税のほうがかなり減少分としては効いているわけで、所得税の空洞化が何によって生じているかということを一つ分析をしていただきたい。

では、このまま15年たったら、あるいは10年でいいのですが、どのくらいの減少が所得税の世界で生じるのか。産業構造的な要因、雇用人数の予測などを含めて、いま、本当に危機的な状態にあるかどうか。放っておくとどんどん減っていくのかどうか、あるいは、減っていかないのかどうか。これからは女性の問題も出てきますが、もし新しい納税者が増えれば下支えしていけるかどうかというのは、やはりある程度シミュレーションをして……。この表ではちょっと大ざっぱ過ぎて、何に手をつけるべきかというのがわからないというのが一つでございます。

それから、あと一つだけ。男女の問題と関係あるんですけれども、「配偶者」という言葉を使っているのは日本だけであって、配偶者というのと扶養という言葉が日本では結構混同して使われていまして、配偶者イコール扶養の対象である、というような言い方をして使われることもある。それを完全に払拭するには、アメリカのケースのように、人的控除という言い方で、名称も変えると。この辺は非常に大きく感じました。

それから、地方税の世界の個人住民税においては、まさに中立的でない。国税と同じ扶養の項目を使っている。金額も少しは是正していますけれども、地方においての給与所得の金額の格差などを考えますと、このくらいの国税との調整では十分な住民税の形になっていないというふうに思います。

委員

いろいろ難しい注文が事務局にインプリシットに伝わっているわけですから、事務局、しっかり受けとめておいてください。資料の提供等々、お願いします。

委員

先ほど途中でやまってしまったものですから、忘れてしまったところもあるのですが……。諮問委員会の「活力」というのは、言いたくてしょうがないことなのだろうと思います。あれは、税制の原則として入れる必要は全くありませんけれども、活力を何とかしたいという心のあらわれではないかと思います。

では、活力がない根本的・究極的原因は何かというのを簡単に言いますと、要するに国民の将来に対する不安だと思います。将来に対する不安がなぜあるかというと、一つだけ挙げれば、巨額の財政赤字で、「これ、いつか俺、払わされるんじゃないかな」というのが不安の根源である。そう思うと、ここのところを埋めていくと、年度で言えば、80兆円と50兆円の差をいかに縮めるかということですから、財政諮問会議の最大の役目は、出すほうを減らしていくと。出すほうを減らしていく気になったら、納めるほうも、「嫌だけど、ちっとは納めてやるよ」、こういう気になる。向こうを増やしてこっちも増やすというのはとんでもない話ですから、そこのところで近づいていくという方向しかないと思うんです。

あと、「活力」というのを考えると、税金の場合、減税が世の中を活性化すると単純に思いますけれども、これは間違いであって、レベルの問題を考えないと全く意味がない。いま、これだけ減税している状況では、増税というのが世の中に活力を与えるのではないかと僕は勝手に思っています。なぜかというと、最近、どれが原因でどれが結果なのかというのを考えると、なかなか難しいところがあって、結果が原因になっていくというのが非常に多いわけです。それで、2ページの表、1ページでもどれでもいいのですが、所得税収が減り続けたこの10年というのが、日本の「失われた十年」というどうしょうもない期間だった。このどうしょうもない期間は、しょうもない減税措置の繰り返しによってもたらされたわけで、この減税がなかったら「失われた十年」もなかったのではないか。

原因と結果が引っ繰り返っていると思われるかもしれませんが、それはわからない話でして、減税というのは人が働く気になる心を削ぐのではないかというふうに思っています。この前、アメリカの先生が来ていろいろ聞きましたけれども、あれも結局はまぐれ当たりだったという話だったわけで、そこのところは、人の心をどういうふうに動かしたかということだと思います。ですから、増税というのを受け入れる素地をつくっていくのが、諮問会議とか、政府そのものの役割ではないかと思います。

特に確定申告なんかをたまにして思うのは、「定率減税、何だあれは?」と。忘れていたのですが、親切にわざわざ向こうから引いてきてくれる。そんなことまでして何で返してよこすんだと思いますが、あれは、即刻というか、今回はもうもらってしまったからあれですけれど(笑)、できるだけ早くやめるべきである。あんな変なものの積み重ねが「失われた十年」をつくったというふうに思いますので、税調としては圧倒的に増税志向で、何でも増やせるものはすべて増やすというのがいいのではないかと思います。

委員

世の中、いまの委員みたいな方ばかりいらっしゃると税調も楽なんですけどね。なかなかそうもいかんと思いますが。

委員

委員がプレゼンテーションで述べられたことは、おおむね私は同じ意見でございますので、若干の点だけコメントさせていただければと思います。全体としての所得税の地位、いまや4.数%である。これは消費税の5%よりも低い。財政で一番重要な所得再分配機能、これを持つ唯一の税だとも言えるので、適切を地位を占めるように考えていくべきではないかと思います。

そして、その再分配に関連しての税率構造、これは先ほどの表でもございましたが、アメリカでは上の7%の人が61%納めている、日本は8%の人が41%ですから、アメリカに比べると、ある意味では再分配機能がまだ低いとも言える。これを高めることが必要だとも思いませんが、基本的には、前回の中期答申の現在程度の税率構造、これがいいのではないか。国税については、37%よりは40%ぐらいでもいいのではないかという感じがいたします。

控除について言えば、課税最低限とも関連するのですけれども、「薄く広く」というのは必ずしも所得税だけで考えることもない。消費税という一つの有力な柱もある。これは本当に薄く広く負担してもらっていますから、課税最低限を真っ正面から取り上げて引き下げるというのは、プレゼンテーションとしてはなかなか難しいかもしれないが、しかし、各種の控除を一つひとつ見ていって合理化していけば、結果として課税最低限の数字も変わってくる。あるいは、やり方によって下がってくる。結果として、これが引下げになるという姿が自然かなという感じがいたします。

その中で一番大きいのは、給与所得控除ではないか。これは、前々からいろいろ言われております。一つは、所得の性格が弱いとか、ほかの所得と比べて不公平だという点、それから、概算経費控除だという点です。これだけ就業構造が雇用者に集中してくると、ほかの所得との格差、把握、所得の性質を考える必要が本当にあるのだろうか。そういった要素を外してしまうのが無理であれば、半分ぐらいにすることも考えられると思います。

それから、概算経費控除は、ある程度のものを持っていって認めてはどうか。それによって申告も認めるということにすれば、ほかの所得との格差、不公平感もなくなるのではないか。所得の性質による配慮については、そっちの給与所得控除は頭打ちつくってもいいのではないか、しかし、経費控除のやつは5%でも10%でも、上まで認めてもいいのではないかという気がいたします。

人的控除については、先ほどお話がございましたように、配偶者だ、扶養だというのではなくて、アメリカ的なパーソナルエグゼンプション、これ一本で、一人一つと。38万でも、50万でも、60万でもいいと思いますけれども、誰でもが一つ持っているということ。ただ、未成年者の場合は、親権者がそれを代位して適用してもいいというぐらいはいいと思いますが、原則一人一つということであれば、配偶者の問題も解決できるのではないか。

配偶者特別控除というのは、これを見るたびに胸が痛いのは、昭和50~60年代、毎年、国会で、パートの人、それは世帯の所得の逆転現象を起こすということを言われて、当時、基本的な所得減税というのはあまりできない時代でしたから、せめてこういったものでもということでつき合ったというものでございます。基本的にはアメリカ的に、人的控除を世帯主が使う場合は、その所得を合算するというのが合理的で、もし合算制にしてあれば--扶養控除なり配偶者控除でそれを合算して世帯主に課税してあれば、こういう逆転現象は起こらなかった。そこが安易であったのかな、という反省が感じられるわけでございます。

いまは、先ほどの図表にもございましたように、税の面では、パートによって逆転するということはあまりありません。これはむしろ、扶養手当なり社会保険料の負担の問題ではないかと思いますけれども、そういう点のほうをむしろ改正してもらって、税制のほうはできるだけ簡素にしていったらどうか。あるいは扶養控除というのは、成年者であれば国民皆保険で、年をとれば必ず基礎年金もあるのだし、そもそも必要だろうか。ただ、いまの税制の規定が公的年金控除で全部控除してしまう。形としては合計所得金額がゼロとなってしまうから、こういう問題が起こる。その問題も含めて解決すれば、扶養手当の問題も、一人一つで、たとえお年をとろうがみんな解決できるのではないかという気がいたします。

それから住民税について言えば、前の中期答申でも言われておりますけれども、均等割を奥様には課税しないというのは、これは何とも……。むしろ女性の地位を認めていないとも言える。まず、その点ぐらいから入っていっていいのではないかという気がします。

委員

これで前半は終わりにして、後半、お招きした方のお話を聞くという段取りにしたいと思います。

5、6分、休憩したいと思いますから、一息入れてください。

〔休憩〕

委員

それでは、後半のスケジュールに入りたいと思います。

後半は、東大教授の大澤先生をお招きいたしまして、「男女共同参画社会と税制」ということで御議論いただきます。先生は、いま、男女共同参画会議影響調査専門調査会の会長をされております。時間が押して申し訳ございませんが、20~25分ぐらい御説明いただきまして、あと、質疑応答という形でお願いいたしたいと思います。

大澤会長、お忙しいところをありがとうございました。どうぞ。

委員

御紹介いただきました大澤真理と申します。お手元の資料、一つは、「『女性のライフスタイルの選択と税制・社会保障制度・雇用システム』に関する検討状況について」というものが7ページございます。もう一つ、パンフレットが配付されていると思いますけれども、これらに基づいて御説明いたします。

たまたま、きょう隣りに座っていらっしゃいます神野教授は、この影響調査専門調査会のメンバーでもいらっしゃいます。神野教授は、「男女共同参画社会基本法」とか、「影響調査とは何か」ということについて御存じでしょうけれども、ほかの委員の先生方は必ずしも御存じないかとも思いますので、まず、影響調査専門調査会とは何か、男女共同参画会議とは何か、というあたりから説明させていただきます。

パンフレットのほうをご覧いただきたいわけですけれども、まず、パンフレットの20ページ以降は、「男女共同参画社会基本法の概要」ということになっております。この法律は99年6月に公布・施行されておりますけれども、「前文」がございまして、「目的」、「基本理念」というふうに定められております。21ページの「基本理念」の中ほどを見ていただきますと、第4条としまして、「社会における制度又は慣行についての配慮」というのが定められております。

ちょっと読みますと、「男女共同参画社会の形成に当たっては、社会における制度又は慣行が、性別による固定的な役割分担等を反映して、男女の社会における活動の選択に対して中立でない影響を及ぼすことにより、男女共同参画社会の形成を阻害する要因となるおそれがあることにかんがみ、社会における制度又は慣行が男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響をできる限り中立なものとするように配慮されなければならない」。

「社会における制度や慣行」というのは、男女のライフスタイル等の選択に対して中立的でなければならない、という趣旨でございます。

次に、27ページをご覧いただきますと、「男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的施策」といたしまして、幾つかの条文が紹介されております。中でも、「15条 施策の策定等に当たっての配慮」というところをごらんいただきますと、「国及び地方公共団体は、男女共同参画社会の形成に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、男女共同参画社会の形成に配慮しなければならない」という条文がございます。

これらの条文に基づきまして、28ページ、29ページには、「男女共同参画会議」についての規定がございます。御案内のように、内閣府に設けられております、重要政策に関する四つの会議のうちの一つが男女共同参画会議でございます。その構成につきましては、パンフレットの9ページをごらんいただきますと、男女共同参画会議がございまして、そのもとに四つの専門調査会が設けられているということが紹介されております。

さらに10ページ、11ページをご覧いただきますと、昨年の6月までは、「仕事と子育ての両立支援策に関する専門調査会」も設置されておりました。この調査会は、6月に報告書を取りまとめて終了したというものでございます。

この中に、影響調査専門調査会がございます。11ページの図で見ていただきますと、このような構成になっておりまして、専門調査会は、「女性のライフスタイルの選択に大きなかかわりを持つ諸制度・慣行など、男女共同参画社会の形成に影響を及ぼす政府の施策などについて調査検討」、こういう任務を負っております。

これは、参画会議の議長でいらっしゃる官房長官が、影響調査専門調査会の初回の会合の御挨拶で指摘されておりますけれども、従来から言われてきた、税制や社会保障制度における配偶者にかかる制度などについて、鋭意検討を始めるようにという御指示もいただきまして、現在までの調査活動を続けてきております。

そこで、その検討状況について報告いたします。今度は「検討状況について」というペーパーをご覧いただきたいと思います。このペーパーは、本日5時半から開かれます男女共同参画会議に報告する予定のものでございます。まず、この専門調査会の「検討の背景」について述べております。

「高度経済成長の過程で、都市化・小家族化・雇用者化が進み、女性は専業主婦、男性は雇用労働という役割分担を行う世帯の比率が増加した。一方、職場でも、長期継続雇用が標準とされ、その対象とならない女性は補助的役割を担う場合が大半であった。こうした役割分担等を念頭に置いて、様々な制度・慣習が形成された。しかし、70年代半ば以降、雇用者世帯の専業主婦の比率は低下した。特に90年代以降には、雇用者及び自営業の共働き世帯数が雇用者の専業主婦世帯数を大きく上回るようになった」。後ろから2枚目に、「共働き世帯数の推移」というグラフを掲げてございますので、大きく上回るようになっている状況をご覧ください。

同時に、「90年代以降は、雇用慣行の変更の必要性も指摘され始めた。このため、かつての役割分担等を前提とした制度・慣行は、実態に適合しない度合いを広げている。例えば、有配偶女性では所得が年103万円を超えないよう就業時間を調整する、中高年男性では扶養責任という観点などから雇用流動化に対応しにくい、などの現象が見られる。このため、従来の制度・慣行は、女性の就業を妨げるだけでなく、男性のライフスタイルの選択肢を狭める要因となっていると指摘されている。その見直しが不可欠である」。

見直しによって、女性の就業等のライフスタイル選択に対する制度・慣行の中立性を確保することができれば、幾つかのメリットがあるというふうに考えておりまして、1番目は、多様化する各世帯のニーズへの対応が可能となる。2番目は、2人で働いて所得変動のリスク(危険)を分散することにより、男女とも多様な就業機会をより積極的に活用できる。3番目に、世帯の所得全体の増加につながる可能性がある。4番目に、女性雇用者が能力を十分発揮することは、企業にとっては経営上重要な戦略となってきている。5番目に、労働力は、一国の経済を支えるものであり、女性も男性も就業の選択の幅が増大することは、労働供給の拡大を通じ、経済全体の発展につながる。最後に、結果として、社会保障の持続可能性の増大にもつながるのではないか。

このように中立性を確保することにより、個人の選択の機会は拡大いたしますけれども、それだけでなく、家庭、企業、国の各レベルで豊かさにつながるのではないか。さらに、男女共同参画社会形成の進展につながるのではないか。

このような観点から、とりわけ女性のライフスタイルの選択への影響が大きい税制・社会保障制度・雇用システムについて検討してまいりました。

いま申し上げましたように、昨年の5月から10回程度検討を進めてまいりました。「別紙2」というのは、これまでの検討状況、スケジュールでございます。現在、中間報告書の内容について議論を進めております。

「検討項目と主な議論」ですけれども、以下御紹介いたしますのは、主な意見があったということでございます。

最初に、「基本的考え方」でございます。いろいろと細かい議論をいたしますけれども、税制・社会保障制度は、世帯配慮の縮小を含め個人単位化を進めることを基本とすべきではないか。それから雇用システムでは、待遇等の性別格差の解消、これは当然といたしまして、実情に沿わない賃金・福利制度を世帯単位から個人単位に改めるべきではないか。そして、包括的にセーフティネットを再構築する必要があり、その際、中立性の確保が重要である、といったことを基本的考え方として議論しております。

次に、各論でございます。まず税制に関しましては、わが国の税制は個人単位ではあるが、世帯に対する過大な配慮が含まれているのではないか。配偶者控除、配偶者特別控除制度は見直すべきではないか--もちろん、さまざま調整の配慮が必要ですけれども、見直すべきではないかといった議論をしております。

社会保障制度については、基礎年金の第3号被保険者制度の抜本的見直し、短時間労働者への厚生年金適用拡大、それから、厚生年金への加入を魅力と感じさせるための工夫等に関連して遺族年金の議論もしております。それから、夫婦間の年金分割についても検討すべきではないか、という議論がございます。

「雇用システムの将来的方向」につきましては、これは政府の施策ではございませんので、政府の施策が、雇用システムの将来的方向にどういうふうに関与していくかといったことを念頭に置きながら議論しているわけでございますけれども、男女間の賃金格差、子育て後の正社員としての再就職の困難さの背景に、男性に対する長期雇用慣行と、それに基づく年功賃金という日本的雇用慣行がある。ただ、これが現在急速に変化しているのではないかという議論をしております。

また、正社員がパートタイマー等の非正規雇用に置き換えられている動向についても、議論をしております。

ワークシェアリングにつきましては、これは、中長期的に、個人の生き方・働き方など社会全体のあり方にかかわる課題であり、それを進めるための環境整備が必要ではないかと議論をしております。

それから、企業による家族手当等ですけれども、個人単位化及び処遇の公平と相容れないので、見直されるべきではないかと議論をしています。

なお、これについては、アンケート調査を上場企業に対して行いまして、その結果、企業による家族手当制度は、配偶者の年収による支給制限を持つ場合が多く、6~7割がそうでございますが、その配偶者の年収の限度としては103万円をとるものが圧倒的に多いことが判明しております。

最後に、パートタイマー等を念頭に置きながら、雇用形態や処遇全体の見直しが必要ではないかといった議論をしております。

いただいた時間よりもやや早めではございますが、以上でございます。

委員

本来の専門調査会に出す前に御議論を御紹介をいただきまして、ありがとうございました。我々も、この辺の問題、非常に関心がございます。そういう意味で、これからいろいろお尋ねしたい点があると思いますので、どうぞ、どなたからでも結構でございます。

委員

質問ではなくて、先ほど来御議論がございました所得税にかかわるところについて、補足説明をさせていただきたいと思います。

一つは、ともすると現在の所得税は、個人単位ではなくて世帯単位だという議論が非常に多いわけですね。配偶者控除とか、扶養控除などがあるために世帯単位だということが言われておりまして、所得税の世帯単位を個人単位化しろというようなことを言う人がかなりいるわけですが、そこら辺の混乱は整理いたしました。というのは、あくまでも日本の所得税は個人単位であって、夫婦の所得などを合算して、分割するにしろ、分割しないにしろ、やっているわけではありませんので、個人単位であるというふうにちゃんと区別しました。

さりとて、個人単位だけれども、世帯や家族に対する配慮が非常に大きいというのが、この委員会の認識だというふうに御理解いただければと思います。間違っていたら事務局で訂正していただきたいと思いますが、私の理解では、ギリシャなどと同じように個人単位だけれども、世帯への配慮が非常に大きい税制をとっている。それが、単に103万円の壁とか何とかと言われている問題だけではなくて、所得課税の公平性を歪めているのではないかということです。課税の公平性が貫かれていないがゆえに、逆に、女性が仕事をする上で非常に不利な税制になっているのではないかという問題意識に立っています。ただ、これは若干個人的な見解が入ってまいりますので、御容赦いただきたいと思います。

そして私どもの理解では、所得税というのが応益原則にかなう税制であるためには、累進性、差別性、最低生活費免税というこの三つの要素が必要だというのは、シハブ以来の定説だと思いますが、最低生活費を免除するというのは、基礎控除になっているというふうに理解できるだろうと思いますし、それは、本人分といいますか、本人の最低生活費が基礎控除に当たっているというふうに考えられると思います。

アメリカの税額控除などを考慮すると、若干例外はあるかもしれませんが、私が知る限り、本人の最低生活費よりも扶養家族の最低生活費のほうが上回っている国は、ないのではないか。日本の場合は、本人以外はみんな上回っていると考えていいと思うんです。つまり、配偶者の場合には、基礎控除の38万円プラス特別配偶者控除38万円で、76万円いくわけですし、それから、もしも私が16歳年上の女性と結婚していれば、48万円に老齢者の配偶者は拡大いたしますので、有利になるわけですね。

それかどうかわかりませんが、最近では、高額所得をあげていらっしゃるスポーツ選手とか何とかという方々は、なるべく年上の配偶者を選択しようと……(笑)。そこが効いているかどうか、ちょっとわかりません。そういう傾向が非常に強く見られることは事実だろうと思います。

子供についても、16歳からは特定配偶者で、これもまた本人分よりも増えている。そうなってくるとこれは明らかに、課税の公平性ではなくて、例えば、女性は家庭の中で子育てなり何なりしてほしいというような政策的な「配慮」がそこにあるのではないか、というふうに言われても致し方ないのではないかというのが私どもの考え方です。

いまのところ中間報告ですので、結論は漠としておりますけれども、配偶者控除や特別配偶者控除については制度的な変更を見直すべきだ。ただし、それについては、そのままにしておきますと増税になってしまいますので、増税をするかどうかというのは男女共同参画会議の任務ではないので、これは別途、制度的な変更で負担に影響を与えないように考慮はするけれども、これについては結論が出ておりません。私は手当で行ったほうがいいのではないかと思いますけれども、公平性という観点からもそうではないかと。

特に103万円の壁だけではなくて、個人単位であるとすれば、同じ所得の共稼ぎ夫婦と片稼ぎの夫婦があった場合、通常の考え方で言うと、「オルドマン・テンプルの原則」から言っても、共稼ぎではなくて、片稼ぎのほうが分業の利益が働くので、同じ所得であった場合には担税力が高いと考えるのが普通だと思いますが、特別配偶者控除があるために、本来、1人の所得でもって同じ所得をあげていれば、高い累進税率が適用されるはずですのに、2人で稼いでいれば、低い税率で個人単位でやるはずなんですね。特別配偶者控除があるために、低額所得層のところで逆転現象が起きてしまうわけです。それは、103万円の壁とは別の問題も起きておりますので、課税の公平性という点からいっても問題はあるのではないかという定義で書かれている、ということだけちょっと補足させていただきます。

委員

ありがとうございました。それでは、いまのお2人の御説明をベースにして。

委員

この中間報告をまとめるに当たって、その103万円とか、あるいは、働いていない女性たちの意見を聞きましたか。その際はどういう意見でしたか。

委員

中間報告を取りまとめましたら、これを公表して、広く、国民の皆さん、各界・各層から御意見をいただく手順になっておりますので、現在までのところ、委員以外の方から御意見を伺う機会はございません。

ただし、この専門調査会には、公募によりまして、専業主婦でいらっしゃる方におひとり、委員として入っていただいています。この方が専業主婦代表とは言えないにせよ、全く専業主婦の意見を聞かないで議論を進めているということはございません。

委員

その専業主婦の方はどういう御意見でしたか。

委員

彼女は、個人単位化は当然ではないかという御意見を持っております。税制に限らず社会保障制度等について、ほかの委員よりももう少しラディカルと言っていいような御意見をお持ちとお見受けしております。

委員

私の意見ですが、その方はあまり税制を知らないのではないかと思いますな。先ほどの説明、補足説明も含めて出ている議論、つまり、こういうふうに割り切れてサッと出せる調査会なり審議会はうらやましいなと思いますね。税制調査会は、どうしても負担というものを強制的に強いる立場に立たされているから、いろいろな意見があり、いろいろな利害得失というか、プラス・マイナス比較考量しながら議論しなければいけない立場に置かれている。石会長はじめ、非常に悩ましいそういう組織なわけですが、一言で申しますと、きわめてクリアカット過ぎるなあという感じであります。この会議の御意見は御意見として拝聴いたしますが、私は、全くそのとおりだというふうに同調するには、少し戸惑いを感じているわけであります。

一つだけ伺いたいのですが、これは、会議で議論をしたかどうかということとは別に、世帯とか家族とかいうものを、この参画会議はどのようにとらえているのか。もちろん、女性が社会進出するというのは大いに結構なことでありますし、世界的な潮流ということは私もわかるわけですが、一方で、先進国共通の悩みというか、問題意識として出ているのは、家族というものをどう見るんだということが一方にあるわけです。これについて、会議での御議論、御意見はどんなふうに出ていらしたか、ちょっと伺います。

委員

私は、男女共同参画会議--本会議というふうにときどき呼んでおりますけれども、本会議のメンバーではございませんので、本会議でどのような議論がされているかということをそれほど詳しく知っているわけではございません。ただ、専門調査会のほうでどのような議論をしているかということについては御紹介できます。

その中には、社会保障制度や税制について、国によってタイプ分けができるというような議論もしておりまして、日本の社会保障制度、税制等をひっくるめて見ますと、家族配慮というものの非常に薄い制度になっている。つまり、マーケットでお金を稼いでくる、それから家族で支え合う、それに対して、国の制度がほとんど支援をしていないタイプに属するという分析もございまして、そういう分析も紹介し合いながら、議論をしているわけでございます。

そして、これを例えば出生率のようなものと関連させて見ますと、家族配慮の薄い国では出生率も低くなっているというようなことが見えます。したがいまして、国の施策において、家族配慮--これは、税制で世帯への過大な配慮があることとは別の、家族の形成をどのようにサポートし、エンカレッジするかという意味での家族配慮でございますけれども、日本の現状は、これが薄いために、家族形成というのが妨げられているのではないかといった議論をしております。

委員

二つ、矛盾しませんか。個人世帯に税制上やっていることと、いま、別な視点から、どうも配慮が足らんとおっしゃってましたよね。我々聞いていて、ちょっとわかりにくいんですけどね。

委員

これは外国人の分析でございますので、家族配慮といったときに取り上げられているのは、例えば、保育サービスがどのくらい年少の子供の人口に対して充実しているかとか、あるいは、児童手当制度がどのくらい充実しているかとか、そういうことでございます。

委員

税制とは別な意味での、社会全体のサポートですね。はい、わかりました。

委員

この問題について私はもう発言は控えますが、1カ所だけ指摘させていただきたいところがございます。1ページ目、「有配偶女性では所得が年103万円を超えないよう就業時間を調整する」と。これは、税制に関するような記述ですが、この場合、所得という言葉は税制では的確ではない。これは「収入」と言うのが税制の本来の言葉でありまして、こういうある種公文書で収入と所得を取り違えたような記述は、お控えになったほうがよろしいのではないかと思います。

委員

どうも大変ありがとうございます。

委員

いただきました資料の6ページにグラフに書かれておりまして、主にサラリーマンと自営業主の共働き世帯がトータルで1,100万世帯で、専業主婦の方がいらっしゃるところが900万と。この理解だというふうに考えた場合、この1,100万と900万の方々に対して、どのような違った税制といいますか、どういうことを考えていくと……。共稼ぎであれば、パートタイマーで、税金でいえば103万円、社会保険でいえば130万円という一つの枠があって、それが取れると、例えばこの方々にとって税金を納める可能性がもっと拡大するとか、あるいは、この900万の方々が税制上何か変更があると、共稼ぎのほうに行くのか。この辺の見通し、ちょっと難しいと思うんですけれども、ただ、グラフ上は動かない数字になっているみたいで、94年以降、ややフラットみたいな数字になっていまして、この感じでいくとすると、女性の中でも働いている方が多くて、働かない方が少数という感じになっていくかなと。その見通し。

それからもう一つは、いま、配偶者控除といっても、稼ぎ手、つまり納税者のほうから引いて、そのお金を家族全体で分かち合うみたいな形になっているんですけれども、女性が働いたら、その分を自分の基礎控除として使う、そういう控除の仕方であれば、いまと金額が一緒でも、納税者の立場から見てよりわかりやすい税制になるのかどうか。あるいは、将来、納税者番号が導入された場合に、トータルで見て家族の手元に残るお金は同じでも、納税者番号、あるいは納税者意識という面から言って、そのほうが公平なのではないかと私は考えているんです。つまり、配偶者控除をやめていわゆる人的控除の形に変える。しかし、その場合に、税収面のさまざまな調整をする、つまり、税率の変更等々を含めてトータルでより中立的な設計をしなければいけないと思うんです。そういう変更をしてはどうかということですけれども、御意見をお伺いしたいと思います。

委員

先ほどの委員からも御指摘がありましたけれども、ここはまだ決めつけている議論ではございませんし、途中経過です。それから、細かな点で、これはどうするか。どうするか?と言われた場合には、全く個人的な意見しか申し上げることしかできないということを、まずお断りしておいたほうがいいかと思います。

私は、もう基礎控除だけにしてしまって、配偶者控除、扶養控除にかかわらず全部やめてしまえ、ただし条件がある、という考えです。手当主義でいこうという考え方で、これは全く個人的な意見でして、委員会としてそこの結論を出しているかというと、そんなことはない。まだそこまでいっているわけではなくて、かつ、中間報告の取りまとめはここに書かれてある文言でようやく合意を得た範囲内だ、ということでよろしいでしょうか。

委員

はい、わかりました。

委員

今日のペーパーは、簡潔に本会議に対して報告をするということでございますので、クリアカットには見えますけれども、あくまでもこのような意見が専門調査会の中で出ているということにとどまります。中間報告を取りまとめるのと同時に、ただいま、総務省に対してデータの提供を依頼しております。全国消費実態調査等のデータを用いてシミュレーションをする、それによって、いわゆる103万円の壁や130万円の壁で、実際に就業の調整とか収入の調整が行われているのか、いないのかといったことを調査する、こういう手順になっておりますので、この計量的な分析を踏まえて、9月、あるいは10月の初めには本報告という手順でございます。現状ではクリアカットとはとても言えない状況にございます。

委員

質問ですが、専業主婦というものの位置づけは、いてもいいけれども、いなくなってもいい、という位置づけなのか、いること自体邪魔くさいという位置づけなのか、その辺はどういうふうに考えているのですか。

委員

専門調査会としてコンセンサスと言えるのは、ライフスタイルは個人が自由に選択する問題である、しかし、それに対して制度がある意味では歪んでいる。つまり重力が斜めに働いているために選択が歪められることがあってはならないので、中立的な制度にしよう、と。その結果として、専業主婦が増えるのか、減るのか。そういったことは個人の選択の結果ですから、自由に行われるであろうというふうに考えているわけです。

しかしながら、歴史的な経過を見てみますと、この6ページのグラフは実数でございますが、すべての結婚しているカップルに対して、サラリーマンと専業主婦のカップルがどのくらいの比率を占めるかというのを見てまいりますと、これは高度成長の過程で増え、最もピークに達したのは70年代の末でございますけれども、約37~38%でございました。その後、減少に転じまして、90年代ともなりますと、3割を切る。現在では、週15時間程度のパートタイマー就労のケースを含めても、27%程度である。4人に1人のライフスタイルになっているというようなことで、この傾向は今後も進んでいくのではないか。「進んでいくのではないか」という意味は、男性の賃金が、年齢と賃金に応じた賃金プロファイルとして見て、山が低くなっておりますので、減少傾向が続くのではないかと見込まれるわけでございます。

委員

これ、変な質問かもしれませんけれども、この男女の理念もさっき読ませていただいたし、お話も大体わかったのですが、少子・高齢化と言うでしょう。高齢化は、ここにも高齢者が目の前にたくさんいるから、よくわかるんだけれども、少子のほうについて、この提案は矛盾するのか、しないのか、この点はどう考えたらいいのですか。

委員

諸外国を見ますと、20代から30代にかけての女性の就業率が高い国ほど出生率が高くなっております。

それからもう一点、国連開発計画(UNDP)がつくっております「ジェンダー開発指数」、これは、人間開発指数に対して、男女の格差でもって割り引いたインデックスでございますけれども、ジェンダー開発指数が高い国ほど出生率も高い。

もう一つ、これは日本経済研究センターのおつくりになった論文の中にございますけれども、男女の賃金格差の小さい国ほど出生率も高い。このようなエビデンスがございますので、日本の現状というのはかなり異例な状況ではございますが、制度的なインペリメンツというのでしょうか、構造障壁を取り除けば、諸外国のような傾向になっていくのではないかと考えております。

委員

間違えていたら、ただしてもらいたいのですけれども、税の問題と社会保障の問題が何か混雑していると思います。税に関しては、主婦が労働供給するに当たって、税制、社会保障が阻害要因になっているかどうか、これが我々の問題なわけですね。主婦の所得の103万円とか、130万円が壁になっているではないかという議論があるわけです。それに対して、財務省というか、税のほうでは、「税は悪さはしていない」と。

ちょっと時間をいただけば、税については、38万円の基礎控除と65万円の給与所得控除、それを足して103万円。103万円になったところで専業主婦ではなくなりますから、そこで以前は、配偶者控除がボカッと落ちた。それを徐々に徐々に落としていこうというのが配偶者特別控除で、それをしたので、いま、税は主婦の労働供給に悪さはしていないのだ、というのが見解だと思います。それはそれで正しいと思います。夫のほうの所得の制限はありますけれども。

そのスタンスでいけば、主婦の労働供給に影響があるのは、会社のほうの配偶者手当、あるいは、年金が130万円からかかるという問題だと思います。その問題を扱うには、会社のほうの配偶者手当をどうするのかというのはありますけれども、公的な議論では、130万円から社会保険料がかかる、その仕組みを抜本から変えなければいけないと。その考え方はいろいろあると思うのですけれども、おっしゃった厚生年金加入という選択肢の魅力を高めるべきかどうか。厚生年金の2階部分を究極的にはやめてしまえば、一番簡単なわけですから。

いずれにしても、我々は税制調査会でこの問題をどう考えるかということですけれども、まず、税自身が労働供給に悪さはしていない。問題は、社会保険料に関して抜本的な改革をしなければいけない。手当に関しては会社がやるしかないわけですから。そうすると次の問題は、税として配偶者控除は何もしなくていいのか。これは、労働供給とは違う問題として考えざるを得ない。

それに関しては、いま、いろいろ意見が分かれているわけですけれども、そこで個人的な見解を言えば、働かないことに対するインセンティブを与える必要はないわけで、むしろ働いて、そのためにかかる子供の育児費用とかをサポートすればいい。そこは考え方に差がありますけれども、問題としては、税は労働供給に直接的なマイナスの効果はないけれども、やはり社会保険料が最大の問題だと思います。

委員

いまのお話で、103万円を境にしてなだらかにする、それを邪魔する障害は除かれていますけれども、専業世帯と共稼ぎ世帯では、専業世帯では人的控除が三つ適用されているわけですね。そこは、専業世帯のほうが、税制上も極端に差別をしていると言ってもいいのではないかと思います。片一方は三つの人的控除があり、片一方は本人の二つ分ですからね。そこは、税制上、差別があると見て、共同参画だから、そこは一つずつにしてもいいと割り切るかどうか、なんですけどね。

委員

だいぶ専門的な話になっていますけれども。

委員

先ほど御説明申し上げましたように、結局、個人単位課税でありながら、オルドマン・テンプルの公正の原則を歪めてしまっている。それを正当化することはおそらくできない。そうだとすれば、男女共同参画という観点から言えば、一つの阻害要因になっているという非難を受けても仕方がないのではないかということが、我々の意見であります。

世帯や何かについてはいろいろ考え方があるかと思いますが、私は個人的には、資産所得に関して、世帯合算といいますか、夫婦合算をやめてしまったことのほうがむしろ問題ではないかというふうに思っておりますので、この問題に関して言うと、単に103万円の問題だけではないというふうに考えたほうがいいと思います。

委員

このレポートを拝見してちょっと気になるのは、先ほどから議論になっていますが、103万円であると。男女共同参画会議で、女性のライフスタイルの選択といいながら、なぜ女性をパートタイムという仕事にだけ位置づけるのか。この103万円にこだわるということは、御自身で仕事をしているというよりも、ある程度付随的な労働としてしか位置づけていないことになると思いますけれども、真っ先に「検討の背景」として103万円を持ってくるのは、女の人をパートタイマーとしてしか位置づけないということを前提として、議論が全部出発しているんですね。これは私には理解できないのですけれども、タイトルと非常に違った分析ですが、これはどういうことなのですか。

委員

これは、あくまでも問題として世の中で指摘されていることの例示でございます。それから、先ほど、103万円ではなくて130万円のほうが問題は大きいのではないかという御指摘もございました。たしかに逆転現象が解消されてはいるんですけれども、それが世の中でどれだけ知られているかというと、やはり103万円を超えると損になると思っている人はかなりのパーセンテージにのぼります。その結果として就業調整をどのレベルでしているかということを、アンケート調査等で確かめますと、圧倒的に100万円の壁、あるいは103万円の壁、ここのところでの就業調整が高く出てまいります。さらに実際的にどうかということに関しては、そのデータをシミュレーションもして確かめよう、というような手順で行っております。

それから、これは短いペーパーで、しかも、「検討の背景」というところに例示したわけでございますが、現在、取りまとめ中である中間報告では、20代の前半くらいで最初に労働市場に参入して以降、フルタイムの時期、出産、育児、退職というようなライフスタイルが見られますから、そういったライフステージに応じて、社会の制度や慣行がどういう影響を与えているのかという分析になっておりますので、決して女性は主としてパート労働であるという前提で分析を行っているわけではございません。

委員

いまの議論、面白いと思ったんですけれども、議論は逆ではないのか。制度があるから多くの女性がパートタイムになっている、それが問題なので、制度は別に悪くなくて、女性が自主的にパートタイムをやろうと、何時間働こうと、それは問題ない。我々が議論しているのは、主婦が労働供給をするときに、何か制度が悪さをしているのではないかと。実際、悪さをしていることはかなりはっきりしているわけです。そこは、因果の関係を整理しないといけないと私は思います。

それから、問題は、主婦が労働供給するときに何か阻害要因があるのか。103万円、あるいは130万円より労働供給をしたときに、阻害要因があるのか。それは、基本的には限界的な議論をしているわけです。配偶者控除がある以上、ファミリーの所得は結果的に増えるわけですから、そういう意味では議論が少しこんがらがっていると思うのは、専業主婦が限界的に労働を供給するという意味では、税制は問題はない。ただ、所得という意味では、控除がある以上、もらう人は得なわけですから、それは差がある。したがって、配偶者控除、特別控除が必要かどうかというのは、きょう議論されたように、いろんなファミリーがあって、そこでどうあるべきかという議論だと思います。ただ、限界的な話と平均的な話が混乱している。

委員

皆さんの意見を聞いていて、私もかなり同調するわけです。人さまのおつくりになった文書に注文をつけるつもりは全くございませんが、せっかくお持ちいただいたので、幾つかの意見を言わせていただくと、103万円云々の議論よりも、その他に書いてある、社会保障とか、雇用システムとか、女性をパートとして安く使う、それが慣例化してしまっている、当たり前になっている、雇用条件、賃金、その他の条件もきわめて格差が大きい、これが一番の問題ではないか。したがって、自分にはボーナスもない、退職金もない、何にもない。だったら、103万円を越したらもうそこら辺でやめてしまおうや、ということに流れとしてはなっているのではないか。むしろ根っこは雇用慣行にあるのではないか。したがって、そこら辺をもっと先に重点的に強調すべきである。しかるに、この文章では真っ先に103万円が出てくるのは、問題点の指摘として果たして本質を突いているのか、あるいは、人々に与える印象としてこれが適切かどうか。差し出がましいようでございますが、一言、指摘させていただきます。

それともう一つ、先ほどから配偶者特別控除の問題が出ていますが、私は私なりに、ある考えがございます。要するに、家計の補助として、奥さんが働かないと人並みの生活ができないという世帯には配慮が必要。しかし、1,000万円という旦那さんの所得制限は、これでいいのかどうか。私は、500万円ぐらいまでに旦那さんの所得制限を下げる道があるのかなという感じがします。その根拠は、あくまでも税収というのは、働いて収入があれば応分に負担してもらいましょう。女性の社会進出云々とかいうよりも、そちらのほうの議論が税制では重点になるのかなということでございます。

委員

問題の根源は、雇用システム、雇用慣行にあるのではないかという御指摘は、全くそのとおりだと思います。ただ、この専門調査会の任務というのは、政府の施策が、男女のライフスタイルの選択に対して及ぼす影響を中立にするようにという、基本法の条文にのっとって仕事をしておりますので、真っ先に103万円が出てきたというのは、あくまで一般によく知られている数字であることと、それから、大臣の方々にも理解していただきやすいのではないか、という観点から挙げてございます。

委員

この103万円と130万円というのは、あたかも働くほうのパートの女の人がそれでやめてしまうという観点だけで見ている感じがするのですが、そうではなくて、使っているほうの親父がパートの給料を抑えるために、この103万円、130万円を使っているのが実態ではないかと思います。そういう意味では、103万円も130万円も税金と関わりのある数字ですから、税制が、日本の人件費を抑えているということを考える必要があるのではないかなと思います。

委員

これも、調査をしていただけるだけのことはあるんでしょうね。

委員

御指摘、どうもありがとうございます。

委員

雇用者がそのような意識を持つというのが問題ではなくて、男性が、この制度があること、社会保険がある、税制の控除があるということを、会社の中とかそういうところで……。さまざまな形でまだ情報が流布しているわけです。男性の意識の中で、「これを使ったほうが得だ」と。雇用者だけではないと思うんですね。まだ一般にそういうふうに思っていらっしゃるという、その問題もちゃんと認識していただかないと問題だと思います。

無限の広がりがあるような問題を受けまして、我々、これから大いに活性化して議論します。

何かぶしつけな、お節介な意見があって、気を害されたかもしれませんが、税調はいつもこんな調子でやっていますので、あまり気になさらないで。いつもより活性化したのかなあと思っています。

委員

いいえ、率直な御指摘をいただきまして、大変ありがとうございました。

委員

そう言っていただきますと、座長としても少し気が楽になります。きょうは、お忙しいところをありがとうございました。

それでは、今後の日程がほぼかたまりまして、いま、税調の日程表をお配りしますので、ごらんください。次回は、4月12日(金曜日)午後2時から開催いたしまして、所得税、ワンラウンド終わりましたので、資産課税、法人税というふうに順に動いていきたいと思いますし、いずれ所得税はもう1~2回やる予定でございます。

そこで、日程をごらんいただけますか。だいぶ混み合ってきまして申し訳ございませんが、対話集会とか、基礎小とか、総会を入れますと、週に少なくとも1回、ひどいときは3回あるという事態も4月はございます。連休明けには基礎小をやり、かつ、総会をやりという形の組み合わせで5月を乗り越えて、6月、主要な論点をまとめたいという時期に、17日以降に書いてございますが、また改めて基礎小等々、そういうこともあろうかと思います。原則的にすべて火・金、火・金で行く予定でございますので、お忙しいとは思いますが、ぜひテイクノートをしていただきたいと思います。

それから、4月15日に津で行います対話集会には、国会の情勢等が許せば塩川大臣も御出席していただけるということでございます。対話集会にも大臣からみずから乗り出していただくということで、大いに歓迎いたしたい、このように思います。

それから、4月12日のあと、混んでるんですよ。16日と19日もやろうという話になっています。所得税を中心的にこなしたいということもありまして、そのあと、資産、法人、間接税と、主要な項目は順次取り組まなければいけないという形で、混み合ってきました。基本的に2時からでございますし、かつ、きょうも3時間やりましたけれども、3時間という日も来ようかと思います。高齢者にはいささか響きますが、頑張りましょう。

日程等々で、特に何か御質問ございますか。事務局のほうもよろしいですね。

では、きょうは長時間、ありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。