基礎問題小委員会(第23回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成15年2月4日(火)16:15~16:33

石会長

それでは、23回目になりますが、基礎問題小委員会を開催いたしました。若干時間が過ぎましたが、議論してまいりましたので、その状況をお知らせいたします。

今日はですね、前回の総会で小泉さんに来ていただきまして、いろいろ今年度の税制の議論やり方等々について一応注文をいただきました。つまり、あるべき税制という枠の中で少子高齢化と税制とかですね、あるいは国と地方の関係を見てくれと、こういう話でございまして、それを受けて最初の基礎問題小委員会で、今年も今日をスタートにして議論を深めていきたいと考えています。

今日は2つ大きなテーマがございまして、1つはですね、前半でこれまで来年度税制改革に関しましていろいろあった審議を事務局から整理していただきました。後段で、国立社会保障・人口問題研究所の阿藤所長に来ていただきまして、資料にございますように、「超高齢・人口減少社会の到来とその諸問題」といったような形で、人口のですね、最近の推計を踏まえて、日本の人口動態がどうなのかというご報告を受けました。これはあくまで少子高齢化というものを考えるときにですね、人口の面を押さえておかなきゃいけないという意味で、今日聞いたわけであります。

そこで、前半の方はですね、事務局の方からいろいろ説明いただいた中で、幾つか議論すべきことはあったんですが、ただこれは事務局のご説明でありまして、それに対していろいろ、例えば経済財政の状況であるとか等々ございました。あと、アメリカの最近の金融証券税制の改定等がございました。やはり、ポイントはですね、昨年来税調でやってきた議論、これは11月に平成15年度税制改正について出しました。ところが、それ以降はですね、いろいろ国会並びに政党の方のいろんな党税調の話もあって、政府税調の議論とは必ずしもですね、密着していない問題が2つあったんですね。1つが外形標準課税、もう1つが金融証券税制でございまして、その説明を財務省と総務省の方から聞きました。それに対して、幾つか質疑があったというのが最初の問題としては一番大きかったかと思います。

例えば、質問の中で、やっぱり外形がですね、どうしても1億円以上の大法人になったという点について、どうも疑問としては、「取りやすいところから取る」といったような話に行ったではないかと。今後どうするんだというような議論ですね。それに対して、事務局の方は、とりあえずまだ法律も国会で成立しておりませんし、定着させて、それ以降のことを考えなきゃいかんといったような、そういう議論ですね。

それから、金融証券の税制ではですね、ご存じのように、かなり単純化した配当課税、あるいは株式投資信託の収益分配金の話とかですね、あるいは株の譲渡益課税が一挙にですね、簡単に、当面10%ぐらいに分離課税の措置が導入されますが、その説明を受けて、配当の控除の方、配当税額控除の方は残すわけですから、そのこととの関係において、そういう既存の税制等の比較において、今回の税制改革の税負担の増減、これを議論しなきゃいけないんではないかという議論もございましたし、それから、なぜですね、上場の株式だけに限ったかという議論もございました。それに対して、当面いろいろ、最初の第一歩として議論したという形でですね、議論を詰めたんだというご返事もございまして、いずれにいたしましても、既に行われた、決着済みの話でございますので、それに対して幾つか質問したという程度で前半の議論は終わりました。

後半はですね、お手元にあろうと思いますが、阿藤さんの方からかなり詳細な超高齢社会の到来と人口そのものが減少するという、テーマとしては非常に興味があるけど、内容としてはですね、非常にショッキングな話を聞きまして、それにつきまして、かなり詰めた議論、質問をいたしました。

あと、この図表等ですね、メモが出ておりますから、それを追っていただくとよくわかるんですが、いずれにいたしましても、日本は先進国に類を見ないほど急スピードで高齢化に入っていると。これはもう事実ですね。それから、もう人口が減少する世紀に入っていると。つまり、20世紀は人口増加の世紀であって、21世紀は人口減少の世紀なんですね。これはまさに日本の象徴的なことであります。なぜ人口が減少する。それは、ここに書いてございますように、人口…出生率が落ちている。それから、未婚、それから晩婚、晩産--晩産というのは出産が後になるという意味の言葉でございますが、そういう現象が非常に進んでおりまして、こういうことを一々取り上げますとですね、その内容が非常にわかってきて、深刻化するわけですね。これに対して、移民等々でどれだけ賄えるか等の資料もついております。たしか、これは資料編(基礎小23-6)の16ページについておりますが、まあ、いろんな過程を経て議論するにしてもですね、なかなか高齢化は移民だけでは解決できないだろうと。移民といっても、その移民の方自身が高齢化しますからね。そういう意味では、絶えずやっていてもですね、その辺の高齢化への対策というのは難しかろうという形であります。

それで、私が今日の結論めいたことで申し上げると、一番関心を持ったというか、阿藤さんの説明から示唆を受けたのはですね、結局、その少子高齢化というところを少しでもとめる、あるいは少しでも元に戻すということはですね、やはり諸外国の例を見るとね、男女共同参画型の社会に成功したところが1つの鍵であると。これは、言うなれば、英語圏であり、北欧圏であり、フランス語圏ですね。言うなれば、男女同等で社会で働き、それに対して子育てができるような支援をちゃんとした国がですね、結局、出生比率等も上げてですね、この高齢化に対してはある種の手を打っていると。これが1つ。

それから、2つ目はですね、やっぱり子育てのコストというものをですね、公の機関が面倒を見るという、そういう発想がどうしても必要であって、高齢化とか少子化の対応のためには金がかかるよということを人口学者としておっしゃっておりました。財政学者としてどこまでそれをコミットできるかわかりません。結局、諸外国では、児童手当、これを15歳、あるいは18歳ぐらいまで出している国が多いんですが、そういう形でかなり金をかけてね、それに対応してきた。ところが、日本は急速に、ここ20~30年少子化、あるいは高齢化が進んでおりまして、そういう対応なくして進んできたこともあってですね、なかなか子育てコストをカバーできるというところまで話が行っていないんじゃないかと。あるいは、男女共同参画にしてもですね、企業の対応、それから例の保育所の問題等々において、まだまだ対応が遅れていると。ただ、しきりにおっしゃっていましたけれども、人口学的にのみ言えばそういうことであってですね、やはりそれはいろいろとそれ以外のことも考えなきゃいけないと。

それから、日本のですね、出生率が非常に低い要因としてですね、やっぱり日本にはですね、結構未婚が多いと。同棲はしないと。したがって、婚外子が少ないと。諸外国に比べるとね。そういう意味で、ほかの国とは違って子供ができない背景があるし、さはさりながら、いろいろな調査をすると、結構、必ずしも結婚に否定的な女性層ばかりでない、男性層ばかりでないので、うまく政策を仕向ければですね、そういうのに対応できるんじゃないかというようなお話をいただきました。

恐らく、今日お配りした資料の中で、この阿藤さんのですね、資料編の数字が一番興味があるんじゃないかと思いまして、後ほどさまざまな角度から議論が可能でありますので、ご覧いただけたらと思います。

今日はまだウォーミングアップの段階でありますので、税制そのものの突っ込んだ議論というのはいたしておりません。

そこで、今、ご存じのように、国会開会中でございまして、税制改革の法案が出ておりますので、事務局も今それに追われております。そういう意味で、月2回とも思いましたが、なかなか基礎問題のところを2回はできませんので、来月、3月14日に第2回目、今年第2回目の基礎問題小委員会を開こうと思っております。それから、できれば4月以降はほかの小委員会ですね、金融小委員会あたりを動かして、金融証券税制、これを少し詰める方向で議論を持っていきたいと思いますし、それから実は基礎問題小委員会がすぐ幾つもできない1つの要因としては、基礎問題小委員会の下に非営利法人課税ワーキンググループ、それが3月いっぱいでですね、ある種の方向を出さなきゃいけないということもありまして、そっちの方に少し力を削がなきゃいけないということもあって、ちょっと力の集中を図っていると、こういう段階であります。

そういう意味で、6月、あるいは7月になるであろうと思われる中期答申の作成に向けてですね、今日第一歩で、まだウォーミングアップの段階でありますが、これからあるべき税制の残された部分につきましてですね、詰めていきたいと考えております。

残された問題等につきましては、昨年6月に出しました議論のですね、一覧表が最初の縦長の「資料」のところについていると思います。この縦長の「資料」という中のおしまいから2枚目にA3版の折り込みがありますから、これが一覧表になっておりますので、ここで
実際に実現されそうなのが15年度税制改革の措置でありまして、それ以外のところが小泉さんの言われたあるべき税制を念頭に置いてやってくれという残された課題と。その最後の方に5つ、6つ項目が並んでおりますが、これが今後の対応という形で我々の念頭にあることでございます。

簡単に、ちょっと端折りましたが、今日は余り目立ったご紹介すべき論点、阿藤さんの議論以外にございませんので、内容はこの程度のご紹介にしておきます。

以上です。

記者

まず、今日の高齢者の議論の中で、年金の話まで踏み込んで議論はされましたでしょうか。

石会長

いや、今日はね、阿藤さんが「私は人口学者である」という限定つきでお話しになっておりまして、要するに、少子高齢化になったときに、生産年齢人口が1人の高齢者を支えるための比率がどうかとありますよね。ああいう点が主でございまして、拠出型の年金を支えているとですね、2~3倍、2.何倍といったかな、なんていう数字をお出しになりましたが、直接それに触れないようなスタイルでお話になってきましたので、年金の方まで今日は行っておりません。

記者

それと、前半の簡単なスケジュールを教えていただいたんですが、総会も含めたスケジュールを…。

石会長

総会はですね、基礎小委を二度ほどやって、その間1回やって、その基礎小委でこなしたものを総会に上げていろいろご議論いただくというパターンをとっておりますので、3月14日に2回目、今年2回目の基礎小を開きますが、その後にですね、日程を調整して総会をやりたいと、このように考えています。

記者

あと、中期答申以降の予定なんですが、メンバー等も…。

石会長

ええ。あの、9月にですね、ちょうど3年終わります。3年間の我々の任期が終わります。そのこともあって、税調のメンバーがかなり交代しなければいけない。今は何かだんだん厳しくなって、70歳以上と10年以上はやっちゃいけないということもございますので、人数的にはかなり大幅の変更があるかもしれませんが、それはですね、中期答申を終えて、ある程度の方向が出た後でですね、できれば夏に塩川大臣がやるというように、また対話集会をやりたいと思っていますが、そういうことを踏まえつつ、夏に、税調というものの次なるステップを考え、それから秋以降のですね、議論をそこからまた10月以降始めるという段取りになると思います。

記者

今質問に出ました、年金にかかわった社会保障制度見直しの議論なんですが、経済財政諮問会議の方も、年間スケジュールを見ると、その議論については春、あるいは6~7月以降にしていこうということになっているんですが、前の総会のときの会見で石さんも、税のところだけじゃなくてですね、いろんなことも含めて税調として考えていきたいというお考えを示されていますが、その後のスケジュール感というんですかね、中期答申に向けてより具体的に詰めていくのか、やはり諮問会議とスケジュールをある程度合わせていくのか、どういうお考えでしょうか。

石会長

諮問会議から、別に今何の相談もないし、その質問もないので、我々独自に進めていくつもりですが、今日、こういった人口動態のヒアリングもしたし、大体、ある土地勘がついた段階でですね、恐らく来月、次回あたりからですね、話題がいっぱい広がっているのでだんだん絞っていく過程で、一気に絞らないで、幾つか上げてそこから絞っていく中で、恐らく年金税制の問題も出てくると思います。

そこで、中期答申、6月にまとめるわけですが、ある意味、昨年の6月に基本方針を出しましてね、ある土地勘というか方向が出ております。本格的な議論は、その中期答申ではですね、頭出しをするというか、方向を示唆するぐらいしか、まだ時間がございませんからね、出せないとは思っていますが、社会保障と税制、あるいは少子・高齢化と税制というのは、我々にとって一番大きなテーマとして位置づけておりますので、それはどういう格好でやるか--諮問会議、あるいは社保審、あるいは財政審等々とのつながりもある問題でもありますので、やり方自体についてはですね、これから少し事務局を通す、あるいは私が個人的に諮問会議と話す等々で考えていきたいと思っていますで、今のところ、いついつまでにどういうことをやるというテーマ、あるいはそういう方向性についてはまだ未定であります。問題意識としては非常に持っているということだけ、申し上げたいと思います。

記者

今日の阿藤さんの説明を踏まえて、先生さっきおっしゃったように、男女共同参画なり、高齢化、人口減少に合わせた税制ということなんですけれども、先生が考えるにですね、例えば高齢者に対する税制のあり方、もしくはさらに配偶者特別控除とかなくすわけですけれども、さらに男女共同参画ということを踏まえた税制のあり方として、所得税もしくは消費税も含めた税体系というどういうふうな論点が予想されるでしょうか。

石会長

それは非常に難しくて、まだどなたも税調のメンバーは頭にConcreteな、具体的なアイデアはないと思いますが、しかし、どう考えても、所得税を基幹税たる地位にもう1回戻してね、消費税というものに頼るという、その2つの柱にならざるを得ないと思っているんですよね。この少子高齢化の社会において。それで、恐らく、配偶者特別控除の見直しからスタートした、課税ベースを広げつつ所得控除を見直すというこのスタイルはですね、まだ第一段階が終わっただけでありますから、第二弾、第三弾というのは時間をかけてですね、じっくり問題提起をすると。そのときの第二弾としてですね、今言った少子高齢化の社会というものとの、そのいわゆる控除見直しですね。具体的には公的年金等とか老年者控除みたいなものが入ってこざるを得ないでしょう。それから、男女共同参画というのはこれで終わっているわけではなくて、それ以外にもいろんな意味で控除の問題もあるでしょうし、それからまあ、我々どこまで最終面で口出せるかわからないけどね、手当の問題等々まで行くのかどうか。それを踏まえつつ、そこは議論していきたい。つまり、社会保障全体の中で議論していきたいと思っています。

そういう意味で、もう少し具体的なテーマをいつ、どういう形で取り上げるかというのは、3月の基礎小委のテーマの選び方、それから6月までのテーマの選び方によってかなりはっきりしてきますが、今のところまだ始まったばかりで、その辺の将来展望のテーマはまだ詰めておりませんので、そういう方向感覚があるということだけ申し上げておきます。

(以上)