基礎問題小委員会(第22回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成14年10月22日(火)15:37~15:58
〇石会長
それでは、今日は22回目になりますか、基礎問題小委員会が終わりましたので、ご報告させていただきます。
今日は、実質的な審議の最後でございます。そこで、前回に引き続きまして、残った主要な論点を全部議論いたしまして、29日に総会が開かれますので、そこに報告をして、最後のまとめに入っていきたいと考えております。
議論に入る前に、経済財政諮問会議の例の税制改革の全体像、それから総理のこの間の所信表明、こういうことで、ちょっとご説明をいただきました。これは前段でございます。
そこで、最初に、相続税・贈与税の本体の方の議論をいたしました。資料が2つ入っていると思いますが、これは従来出ている資料でありますから、ことさらもうご説明することはないと思いますが、例の最高税率を引き下げよう、課税最低限を下げようと、そういう話を今日どういう形で議論するか、再度データを整理してもらったわけであります。基本的には、従来どおりの方針で、最高税率70%、我々のイメージとしては50%ぐらいになるか、課税最低限をどうしようか--課税最低限の場合には5,000万円+ 1,000万円×法定相続人ですが、1,000万円というのが生前贈与の話とくっついてくるならば、下げるとすれば基礎控除の 5,000万円かなという話などをいたしま
した。
それから、実は、100人で5人という相続税のウエイトについて、これはどのぐらい広げるんだと。腰溜め的に言って10%なのか、それ以上なのかという議論をする中で、アメリカは確か100人で2人なんですけど、データを聞いてみますと、ドイツが12.5%、フランスが25.8%といいますから、アメリカを例外といたしますと、日本の5%というのはそれほど高いわけではないし、十分課税ベース、対象を広げるという余地はあるのかなと。それから、例の死亡保険金とか死亡退職金、そろそろ役割も終わったという意味において見直してもいいんじゃないかという議論も大分出ました。役割が終わったという意味は、社会保障制度が完備していないときには確かにそういうこ
とはあり得たんでしょうけど、今時代も変わったんじゃないかということであります。
それから、話題として、文化財の方ですね。これよく家元の人とか美術品を持っている人とかそういう人に対して相続税が厳しくて、散逸しちゃって、海外に重要な文化財が流れ出る、どうしたらいいかという議論もあり、まだ本格的な議論はいたしておりませんが、この辺は委員の中からも時々出る議論であり、イギリスの場合だと、例えば1代飛ばしというような形で親から子供に移るときに、その子供が公開財にするわけですね。公共財ではなくて、公共財でもいいんだけど、公開財という形で大英博物館みたいなところに展示して、その間は相続税を取らないと。1代飛ばして、その次の段階で本当にそれを再度所有権を持って引き取るならそこで相続税を発生させるけどということをやっているらしいんで、日本でもそういうことができないかという議論も総会でもありましたので、いずれこういう文化財と相続税の関係というのも議論いたしたいと考えております。
それから、小規模宅地の8割免除、適用の上限は200m2ぐらいだったかな、400m2だっけ、どのくらいだっけ--8割というのは高過ぎるという形で、これを引き下げてはという議論も行われました。
そういうわけで、それぞれに関しましては、「広く・薄く」という形でやっていくのがいいという大きな流れは大体支持されていますが、ただ少数の意見と断られておりますが、最高税率について、やっぱり社会的な公平確保の点から税率を下げることについては慎重にやったらいいんじゃないかと、そういう議論もございます。
そういう意味で、相続・贈与の本体の方は、しかるべき方向で、つまり税率を少し緩和する方向で、贈与税も少し絡んでくると思いますが、課税最低限をもう1回見直すという従来のトーンにつきましては変更ございません。
それから、法人税、これは今日は非営利法人課税のところと中小企業の関連のところ、これは資料に出ていますが、その辺のことが一連として出されました。公益法人については、収益事業のところが22%なんだけど、これを本体並みでいいじゃないかという議論もございます。それから、1つ意見が出たのは、同族法人の例の留保金課税、これはもう毎年毎年出ている。私が税調委員になって以来出ているんですが、そろそろその議論を本格的にして、見直しの方向、あるいは軽減・廃止の方向ということはあり得るだろうと。ただし、非上場の大企業については、そういう特例を設ける必要はないだろうという意味で、これは本格的に書き込むということが出てこようかと思います。
そんなところが法人のところでしたかね。
同時に、ここで国際課税の問題が出されまして、初めて国際課税の議論をいたしましたので、資料も大分出ていると思いますが、一番基本的な方向として、外国税額控除、それから移転価格税制、それからタックスヘイブン税制等々の議論がございました。関心を呼んだのは、例のみなしのタックススペアリング、みなしの税額控除のところでありまして、これにつきまして資料に出ておりますが、低開発国、発展途上国において、投資誘因のために税をかけない。ところが、日本の本国においては、かけなければ税額控除しないよという形で発展途上国の方の言うなれば好意がむだになるというようなこともあって、みなしで税額控除を認めて、二重課税制度の言うなれば一種の悪用なんですが、そういう特別措置というのがあるわけで、これが絶えず不公平税制であり、問題であると。しかし、今後、方向としては、ここに書いてございますように、新しく租税条約を結ぶときには、必ず時限立法で、時限つきでやっておりますから、長い目で見ればこの方向は是正されるだろうという方向がございまして、大体それにつきまして我々合意に達しております。
国際課税は初めてなものですから、いろいろな議論が出ました。つまり、今の外国税額控除で二重課税を調節する方法のほかに、国外所得免税という措置もとっている国がありまして、外国でかけたものはもう、外国で稼いだ金にはもうノータッチにするといった制度があり、それの利害得失をやっておりますが、従来の方法として、今やっている方法について大きく変えることはないだろうという意味で、議論はそれ以上進展はいたしませんでした。
あと、情報の言うなれば国際間の情報の交換等々につきましても、質問検査権であるとか、あるいは資料提出命令だとかという言葉遣いもありましたけれども、これからやはり国際間で情報をしっかり交換し合って、税務行政の質を高めるべきであるということにつきましては、我々一同そのとおりだと思っております。
最後に、個別消費税の世界と例の公示を中心とした納税環境整備の議論をいたしました。これはもちろん最後だったんですが、個別消費税の世界では、酒、たばこ、エネルギー関係諸税等、その議論をいたしまして、これについては、さまざまな議論が出ましたので一々細かくはご説明いたしませんが、特段、今の段階でご披露するとすれば、例の揮発油税の暫定税率に絡み、環境税といったようなものを将来考えなきゃいけないんじゃないかと。これにつきましては、かなりの方からご主張もございました。つまり、温暖化対策税として環境税を仕組むというのが京都議定書の実現につながる話でありまして、原発がだめになった以上、本格的に環境税をやらなきゃいけないんじゃないかという問題意識をお持ちの方が随分おられました。まあ、エネルギー特会の改定ということで経産省が今いろいろなことを考えられておりますが、ただまだ本格的にこちらに議論の要請は来ておりませんから、情報の交換ぐらいで終わったという形で、これに対して本格的な議論は今日は展開しておりません。
酒、たばこについては、従来書き込んであります。つまり、発泡酒については、酒類間の格差をなくそうという話。それから、たばこの税率引き上げについては是非を問うと、そういう段階に入りますので、これから総会にも出して議論をいたしたいと思っていますが、たばこ税引き上げにしても、それだけのしかるべき理由が必要であろうと。資料には、日本のたばこは諸外国に比べるとかなり低いという資料が出ております。そういうものを踏まえて、これから担税物質として担税力があるか等も踏まえて議論をしなければいけないと考えておりますし、発泡酒、昨年ほど税調の中ではまだ本格的な議論はしておりませんけれども、そろそろビールと同じという、同種同等という意味で、時限を切って議論してもいいんじゃないかという議論が出ました。ただ、今日は、発泡酒要望派がちょっといなかったということがありまして、バランスのとれた議論にはなっていないと思います。
最後に、公示の方が大分議論になりました。公示についても賛否両論あるんですが、恐らく私が座長をしてまとめた感じでは、公示はそれなりに役割は終わったんではないかと。外国を見ても、アメリカ、ドイツ、イギリスにはなくて、この「基礎小22-8」という資料が載っていると思いますが、ここの11ページに外国の例が出ておりますからご参照いただければいいと思いますが、公示はないけど第三者通報制度というのがあるという国が結構あるんですね。日本はありません。そういう意味で公示というのをこれまで使って納税環境整備をやってきたわけでありますが、公示に代わる何らかの方法によって、公示なしで税務行政の改善を図りたいという、そういう意見が強かったように思います。網羅的な法定資料を集めて、税務執行の段階でできるんじゃないかと。つまり、公示が悪用される、あるいは公示というものが、それがあるがゆえにかえって社会的に貢献した人が迷惑をこうむるといったような議論、多々ございまして、これについては少し見直す方向だということにはなってくると思います。谷口副大臣も今日ご出席になりまして、提案者として再度ご主張なされたわけであります。逆に言って、芸能人とかスポーツ界の人がどのぐらい税を納めているかというのを見て、それなりに情報を得るメリットもあるんではないかなんていう議論もございましたけれども、それはそれとして、紹介するだけにとどめます。
そういう意味で、冒頭ちらっと申し上げましたが、これで一応公示の方まで来ましたので、主要な税--所得税、法人税、消費税等々含めて、一応論点の整理が終わりましたので、29日の総会で、一応起草に向けた主要な論点を整理した資料等を出しまして、総会で議論を経て、そして起草の案文をまとめたいと考えております。できれば、まだ日は確定しておりませんが、11月の中旬にまとめて、公表したいと考えております。
今日は変則的な時間でありましたが、今日5時から、東洋大学で税についての若者集会がございますので、少し早目に議論を始め、早目に終わったということです。
概略以上ですね。
〇記者
数点お伺いしますが、確認ですけれども、相続・贈与のところなんですけれども、相続税の最高税率を引き下げて…。
〇石会長
課税最低限を下げる。
〇記者
この方向性としては大体そんな感じということでよろしいんですか。
〇石会長
よろしいと思います。今日はそれを、従来答申で書き込んだことを今日確認したということであります。
〇記者
あと、今日の問題とは直接関係ないんですけれども、税収中立という問題がありますよね。
〇石会長
多年度税収中立ね。
〇記者
多年度税収中立の問題があるんですけど、ちょっと党の方の議論が始まりまして、要するに、税収中立で、一体化で法案で盛り込むということは難しいんじゃないかというような意見が出ているんですが、会長として改めてですね…。
〇石会長
党税調の方々とお会いしたときに、やっぱり基本的な不信感というのは、減税はだれでも認めるけれども、一体増税はだれが政治的に責任を持つかというところですよ、政治家として一番の責任を感じられているのは。そこで、そもそも反対なんていうことをおっしゃった方がいますけれども、ただ、流れとしては多年度税収中立でそれはやっていこうということですから、恐らく政治的には増税がちらついた形の減税、つまり減税を決めるときに増税が決まってくるというようなやり方はどうも余り好かんのでしょうね。したがって、一体化して書くとそれが現実化になってきますから、ということだと思いますが、ただ、そこをあいまいにして、減税だけやっちゃって、あと減税財源の手当ても何もないというのもこれまた、今の財政危機のときに問題だと思っていますから、税調として、税調会長としては、しっかりそれは増減税一体化した処理として法案化すべきだと考えています。
ただ、景気の情勢等々ございますから、減税を先行させるといえば、初年度からフルに増税項目を書き込むということはないと思いますから、増税の方は景気いかんにもよるでしょうけれども、後ろ倒しになって、前の方では増税の幅は少なくていいと、あるいはなくていいかどうかまではと今のところ言えませんけれども、そういう傾斜つきのことでやれば、それはしっかり書き込むべきではないかと思います。恐らく税調の議論もそれで一本化していると思います。
〇記者
バランスのとれた議論ではなかったとのことでありますが、発泡酒とたばこですが、次回の総会では先日のような論点整理のペーパーが恐らく会長から示されるんだと思いますが、どんなような…。
〇石会長
最後ですね、時間もなかったし、個別消費税が幾つか出てきましたから、当然個々の、大分発言をされた方いっぱいいたわけでありますが、すべてについて賛成・反対、両論がでたわけではなかったということで、例えば、たばこについて、特に我々一同が増税について否定的なことを言って、税調というのは普通そうなると、反対側の意見も必ず出てバランスをとるんですけれども、今日は時間の関係もあり、出席者の顔ぶれもあり、反対派の方の打ち消す議論がなかったという意味でバランスを欠いたと。つまり、すでに6月の段階で我々、たばこ税率の是非についてはということを書き込むに当たって、随分引き上げ派、引き下げ派があって、そういうわけでありますから、その項目は消えていない。そういう意味において、是非の議論は、これは総会も含め、起草の段階も含め、最後まで一応その議論は続ける予定でいます。今日の段階では、両方かみ合った議論としては時間的制約で出なかった、そういう意味です。
〇記者
発泡酒も同じですか。
〇石会長
発泡酒も同じですね。発泡酒は、逆に言えば、上げるのに反対だという方のバランスのとれた議論がなかったと、こういうことですね。それまた当然のこと論者がおりますので、最後は総会マターとして一応、起草の段階で、書き振りの段階で再度議論をしたいと思っています。
〇記者
6月の基本方針のときから方向が変わってくるというようなことというのはあり得るんですか。
〇石会長
それはないでしょうね。ただ、是非を検討するというときの、「是非の検討」のままでいいかどうかだよね、半年たって。それはちょっと我々としても責任がありますから、ある方向が出る形で議論をしなきゃいかんと思っていますけれどもね。
〇記者
公示のところですけれども、会長としては、これは役割を終えたんではないかというお話なんですが…。
〇石会長
という意見があったのを紹介したんです、私は。
〇記者
意見を紹介したということですか。
〇石会長
はい、そういうことです。
〇記者
じゃあ、これからその具体的手続をどうとか、そういう話ではないんですか。
〇石会長
ただね、事の発端からこれまでの議論を見ていますと、まさにシャウプさんが出てきて、公示入れて、第三者通報をなくしましたからね。いずれにしても、公示がないところは第三者通報があり、第三者通報があるところはないんですよね。それと対ということでやれば、といって公示をなくして第三者通報制度を入れるというのは日本の環境には合わないでしょうね。そういう意味で恐らく、資料に書いてございますが、公示でなくて納税環境整備をやるという方法、それは幾つかあるわけですよ。電子化も含め、納番も含め、さまざまないろいろな情報提供がありますのでね。それから、資料情報のとり方いかんありますから、その辺で少し公示なくして本来の目的を達成できる方法を探ろうというところに今意見が達したという意味です。だから、公示をなくす方向で納税環境整備のさらなる改善を考えるというぐらいがあれですかね。わかったようなわからないような話だけど、その辺でもう少し詰めてみたいと思っています。
〇記者
今回のまとめで、公示のところについて明確な方向性、いつからどうするんだという結論までいく可能性はあるんですか。
〇石会長
公示を廃止を含めて検討するぐらいまで書けるんじゃないかな。その他のいろいろな要素も入れつつね、できるかどうかね。つまり、公示に対するプラスよりマイナス面のことを非常に評価する方が多いということですよ。なってみないとわからないんだけれども、苦痛らしいですな、あれは。多額納税者になると、いろいろそれが悪用されるということは。そのようです。我々には余り関係ない話かもしれないけど。
(以上)