基礎問題小委員会(第20回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成14年10月11日(金)16:38 ~17:19

石会長

今日は20回目の基礎問題小委員会でありまして、重要な問題の骨格が大分定まりました。そこで、今日は頭をクリアにして聞いてください。私がうまく説明できるかどうかもチェックしてもらわなきゃいけませんが、大きな問題が4つございました。順次ご説明を申し上げます。

最初は、7日の経済財政諮問会議、今日は何か議事録が出ているようでありますが、その概要の説明と、それから、今晩の経済財政諮問会議で出す「塩川メモ」、塩川大臣の意見をまとめたもの、今晩の経済財政諮問会議の正式な資料でありますから、まだ今日の資料には入っておりません。つまり、来年度税制改革の骨格を一応整理したメモ、これにつきまして説明を受けた後、議論をいただきました。これに対しては、おおむねというか、われわれの税調として「塩川メモ」、基本的に賛成であるということそれを一応確認を取りました。

それからもう一つ、奥野さんと宮島さんが出した1枚紙のメモがございます。お手元にあるかと思いますが、これは、おふたりが今後税制改革でどういう形で進めなければいけないかということをまとめていただいたものでありまして、幾つか書かれてございます。マクロ的な定量分析が必要である等々書いてございますが、一番の問題はやはり多年度税収中立で、一括の法律で処理しないと困ると。困る大きな理由は、今、持続が難しくなってきた財政ですね、これに対してしっかりしたスタンスで国民に説明するということがないと、かえって国民の不信を招き、言うなれば、税制改革そのもの全体がダメになるという発想でございまして、多年度税収中立で、言うなれば、減税財源をどう処理するかというところを逃げていてはいけないだろうと、こういうご趣旨でございまして、これも税調としてはいつも言っております基本的なスタンスでございます。

それから、今日、幾つか資料をお手元に配付してございますが、最初のテーマが法人税でございまして、「基礎小20-1」、研究開発、設備投資関係、これに説明がございます。ポイントは、2ページ目にちょっと出ておりますが、これは各省からの要望を受けまして、どういうことを今後折り込まなきゃいけないかという粗々のスキームが出ております。

例えば、研究開発税制につきましては、総額の一定割合の税額控除をしてくれという希望ですね。それから、産学連携、今非常に流行りでございますが、これも改めて創設するならば、例えば試験研究費を10%税額控除するなら、こちらは15%にしてくれといった、より有利になるような、そういうことが必要ではないかというご要望もあったし、それからまあ、中小企業の技術基盤強化のところも同じように、既に今のところあるんですよね。(中小企業については)総額で10%という税額控除を決めておりますから、改たに総額の一定割合の税額控除制度を創設して税額控除10%になると、やっぱり(中小企業については)15%にしてくれという要望があると、こういうような話。それから、設備投資関係に関しましてはITですね、これの創設をというのが経産省からございますし、それから、産業活性化、産業活力再生化等につきまして、また新しい税制の余地があるとこういう幾つかの問題が出ておりまして、大体基本的にはこの方向で仕組んでいこうというふうに考えております。

そこで、概略は「基礎小20-2」で大体、主要な論点を項目だけ並べておりますが、ここに書かれてあるように、また元の「基礎小20-1」に戻りますが、アメリカ型の総額でやるという方式、それから、インセンティブを与える仕組みというのは、答申の中でも要するに研究開発について重点的にやっているところについては、何らかの形で税額控除に直して10%ではなくて、12%にしようといったような、そういう点も入れてもいいじゃないかと。それから、研究機関との連携をどうするかと、いろいろございますが、そういう形でこれから具体的にスキームとして組んでいこうということであります。

この資料は、現在ある研究開発がどういう格好で使われているか。あるいは7ページに、アメリカが総額にした時にちょっと増えたという……ちょっとじゃないな、結構増えたんだな、平成8年からか、総額にして増えたとか、そういう資料が入っております。後半のほうは、幾つかある設備投資の具体的な調査についての説明であります。

それで、これにつきましていろいろご議論もございまして、内容を紹介しておきますと、一言で申しますと、消極的ではありますが、この研究開発投資、あるいは設備投資減税ですね、これは一種の、一種というか、文字通りの政策減税になりますが、これについては積極的に認めてもいいんじゃないかという論者が、言うなればマジョリティでありまして、そうでない、従来からインセンティブを与えて効果を出すというのは、どうも税制上ひずみを作るからという反対論者もいますが、この際だからという意味において、賛成だという形に転じたものを含めますと、ほとんどの方がこれについて拡充し、あるいは積極的に、本格的に活用してもいいじゃないかという意見でありました。

従来、とかく政府税調は、これは租税特別措置の範疇に入りますから、政策減税的な扱い方につきましては、渋々、あるいはもっと語弊がありますが、いやいややってきたというような形もありますが、今回、別にノーベル賞が出てきたから言うわけではありませんが、研究開発の重要性というのが認知されて、かつ、国内でも国外でも、こういう研究開発の投資に対して税制上恩恵が与えられるということならば、大いにやってもいいじゃないかというふうに切りかえるべきであるという議論ですね。したがって、具体的には総額でいいだろうし、恒久的なもの等を仕組んでもいいじゃないかという話、それから、インセンティブで総まとめ的に与えた方がいいじゃないかと、こういう話があったわけであります。

設備投資減税につきましては、同じように支持があったということであります。

それから、第3の大きなテーマが相続・贈与でありまして、「基礎小20-5」を見てください。これは、今回の税制改革の中でわれわれは一番と言っていいぐらい重きを置いているわけでありますが、大体、スキームがまとまったという意味において具体的なイメージをお持ちいただけるのではないかと思います。まず「基礎小20-5」の2ページをご覧いただけますか。1ページ目は、もうお出ししたと思いますがポンチ絵でございまして、要するに、各年、各年で生前贈与はその場で納税してもらって、最後の段階で相続と生前贈与を一体化して、過去の贈与税を控除してという格好のポンチ絵でございますが、正式には、相続時精算課税制度と。仮称でございますが、そういう言葉で今後新しい生前贈与のスキーム、それに対する相続税・贈与税の一体的な課税を考えたいと考えております。

そこで、2ページ目に大体ポイントが出ておりますから、これをご覧いただきたいと思いますが、65歳以上、贈与者にはそういう資格を作るというのはもう既にご説明しておりますが、受け取る方は、一応推定相続人という意味で子供を念頭にしておりますが、子供といえど、もらった財産についてそれなりの管理運営をする必要がありますので、年齢的には20歳以上、人数に制限はないという形のことを考えておりますし、子供が親より先に死んじゃって、孫ですね、これは代襲相続人でありますが、この場合も20歳を超えていればいいだろうと、こういう話ですね。あとは具体的な3月15日がどうだこうだというのはお読みいただければ分かろうかと思います。それから、適用の対象となる財産等につきましては制限はなくて、回数制限もないと、こういう形の問題であります。

いろいろ細かい点はこれから詰めなきゃいけませんが、大体においてこういうスキームを考えておりまして、3ページ以降は、これのもう少し込み入った話をいたしております。

そうすると、一体今ある相続税がどういうふうに変わるのかという点が5ページ、6ページに書いてございますから、ごく簡単にご説明をいたします。今ある相続税の仕組みをもう一回おさらいしていただきたいんですが、4点重要な点がございまして、日本の場合は、まず資産総額というのを決めると、これが1番目です。これからいろんな調整をいたしますが、この課税価格から基礎控除を引くわけですね。基礎控除は5,000万円プラス 1,000万円×法定相続人というわけですね。そこで、課税の遺産総額が決まって、この後は、法定相続人の持ち分において2分の1、4分の1、4分の1というような形で分けるわけです。分けた後、税率を掛けると、最初のBのところにある課税遺産総額に当たるFという税金が決まりますから、ここで今度は、Fの税額は実際にもらった自分の相続割合において按分するという方法を取っているわけですね。その後、子供、親についてはそれぞれの特性を生かした形の税額控除がある、これが今の仕組みですね。

それを今回どうなるかというのは資料で見てください。今回の仕組みは先ほどのメモで説明いたしませんでしたが、兄弟でも長男と次男で、長男だけが生前贈与を使っていい、次男は使わないという選択を認めることになっておりますから、改めてこの6ページを見ていただいて、変わってくることはどういうことかというと、まず左のところで、長男は相続時精算課税を使いたい。次男は使わなくていいと、こういう想定で議論を始めた時、長男は贈与A、贈与Bを生前贈与として受け取るわけですね。そうすると、a、bの税を納付するわけです。そこで何が起こるかというと、今度は右側のほうに来ていただいて、ここで親が死去し、そこで相続というのが起こった時に、言うなれば、長男αのところの一部は既に生前贈与されている財産A+Bですね。そこで残った部分の長男αと、それから、次男は生前贈与を受けていなかったから、相続の段階で財産が確定するわけですが、βですね。それから配偶者γがいるという形で、前のページの一
番上の遺産総額がスタートすると。あとは、ずっと同じでありまして、違ってくるのは、α’というところにある長男の相続税額が、ここで長男のほうは既にa、bを払っていますから、ここから差し引いて、そこで残った分を改めて納付する、ここだけが違うという形になっております。

そこで、恐らくここで皆さんの関心は、いったい税率とか控除はどうなるかということだと思いますが、これは8ページ目にちらっと書いてあります。ちらっとというのは、まだ固まっていなからちらっとなんですが、これは、7ページ、8ページには、今申し上げた精算課税制度における贈与時の課税についてというんですから、要するに、前からご説明しているように、今 110万円の基礎控除プラス結構高い贈与税率という、旧制度というか、既存の制度は残して、それ以外に今回65歳、20歳といったようなそういう形での新しい制度を作るわけですね。そこで、せっかくやるからには、生前贈与を促進する意味でこの制度を使ってもらいたと思っています。そのためには、言うなれば、要するに控除ですね、どのぐらい生前贈与の額から控除を引いてくれるか。あるいは税率がどうなるかという点が重要だと思っています。ただ、まだ最終的に決めるわけにいかないと思っていますけれども、一応控除の一番上にございますが、贈与税を課税しない措置、つまり特別控除みたいな制度を作る必要があるだろうと考えています。

具体的には、今、相続の段階で 5,000万円プラス 1,000万円、1,000万円、1,000万円ですから、少なくとも、さっきの例で言うと、長男は1,000万円は自分のものとして使えるわけですよね。相続まで持ちこたえていれば。そういう意味で、1,000万円というのが一つの基準になって、それプラスアルファといったあたりの金額が具体的なイメージとして出てくるかもしれない。それから、相続税の 5,000万円というのは、言うなれば相続人全体のものですからね、長男だけのものじゃないので、今何か 3.6人という相続人の平均数があるようなんで、5,000万円を3.6で割って、1,400万円とか 1,500万円をαにするかどうか、これはまだ議論でありますがいずれにいたしましても、非課税措置の段階は作って、これは、その限度は一回で使ってもいいし、多年度に分けてもいいというのが2つ目のマルですね。そういうことを今考えております。

それから、税率は、極力簡便な方がいいと考えています。なぜかと言えば、この精算制度においては、贈与税の時には、ある意味では概算払いでありますから、そう複雑なことをしなくてもいい、いずれにしても、相続時で精算されるわけでありますから、できれば、僕なんか1段階でいいと思いますが、2段階ぐらいの税率を入れるかどうか。まだ全然その辺のアイデアはございませんが、20とか25とか30とかですね、そんなような数字を入れるということになろうかと思います。これが今日出された資料でございます。

それに対して、これも非常に関心があって、われわれ幾つか議論をいたしましたが、具体的に2~3ご紹介しておきますと、生前贈与を入れたんだから、もう一回切りで、払い切りといったような制度はできないかという某委員から、新しいというか、非常に斬新なアイデアが出されました。つまり、今、生前贈与というのは何回もやるような仕組みで、相続財産が残っているという仕組みなんですが、相続財産を丸ごと1回の生前贈与でおしまいになるような制度は仕組めないかと。それは、考えようによってはあり得る考えだし、ニーズもあるだろうということでありますが、これはある意味では全く新しい局面でありまして、そもそも今払い切りの制度は110万プラスやや高めの、シャープな累進税率を持っている贈与税がありますが、今回、110万の世界で払い切り制度みたいなものを入れるかどうかですよね。そういう意味で、これはまた新しい問題として、ただ、これは今ある基本的な発想ですね、相続の時に精算払いしてということはち
ょっと次元が違うのではないかという、そういう話をいたしました。

それから、この相続税・贈与税一体化というのは、ご存じのようにシャウプ税制の時のAccession Taxという税なんですよね。生涯累積課税と言ったかな、あの頃は。それとほぼ似たアイデアでございまして、基本的にはよかろうというふうに税調一同は考えております。ただし、民法の相続の問題と、やはり抵触しない範囲でやらなきゃいけないだろうという意味において、今回の生前贈与というのは、相続の時に精算するということにおいて、民法の問題、例えば遺留分なんていう問題は恐らくクリアできるであろうと。いずれにしても、クリアできるだろうという意味は、起こればそれは調整しなければいけないわけでありますが民法の世界ともそれほど抵触しないでいけるだろうという判断を持っております。

それから、もう1つの問題は、やっぱり65歳で遺産相続して、20年、30年生き得る場合があるわけですよ。その時、65歳プラス20年でも、20年後に相続が起こるわけだから、生前贈与した時点と相続の間が20年か30年あった時に、一体その財産の評価をどうするかと。再評価が必要ではないかという議論ですね。これはもう経済学者は常に問題提起をするわけでありますが、そういう議論が起きましたが、ただ現実的には、これは実務上は難しかろうということと、これは割り切りでいいじゃないかという議論、これで整理したいというふうに考えております。こういう問題が出されたということですね。

それから最後に、これまた皆さんご関心があろうかと思いますが、証券・金融の世界の議論であります。1月から始まります証券税制につきましては、様々な問題が出ております。これは複雑で分かりにくいから、今の個人投資家が逃げて株価の低落の原因であるとか、とてもこういう制度が使えないから、源泉分離に戻るとか、いろいろ議論があるのは承知の上でここに書いてございますように批判があるわけであります。

そこで、幾つか原理的な問題と、それから特定口座みたいな、実務的な世界の問題と分けなきゃいけないんでありますが、一応ここに資料ができておりますから、それをご覧いただけばいいと思いますが、原理的な問題は、基本的な視点は言うまでもありませんね、これは「貯蓄から投資への切り替え」等々の、こういう題目ですね。検討課題としては、これからやはり利子配当、株式譲渡益等に対する課税の一元化ということは、それは早急にやらなきゃいけないだろうという問題意識を持っておりまして、これは後ほど申し上げますが、年明けか12月中ぐらいから小委員会を作ってやりたいと。それから、配当課税、投資信託課税等々についても、それなりのスキルを持ってこれから議論を展開しようと考えています。

そこで、特定口座の見直しにつきまして、今どういう状況になっているかというのをご説明しておいたほうがいいかと思います。これは、プロジェクトチームを作りましていろいろ検討しているわけであります。そこで「基礎小20-8」という、特定口座の資料がございますね。2ページ以降見直しの概要が幾つか並んでおりますから、後ほど見ていただきたいと思いますが、一言で申しますと、このプロジェクトチームの出した回答、あるいは手直しの方向は、様々な形から出ている広範な要望を全面的に受け入れているという姿勢であります。そういう意味で、特定口座制度を投資家の立場から改善していきたいということだろうと思います。例えば、源泉徴収、これをその額を毎月国庫に納付するという仕組みであったんですが、これは年間分を一括して国庫納付する仕組みでいいじゃないかというふうに、言うなれば、1年間という括りで、特定口座を持っている証券会社が投資家の面倒を見るということにしようと。それから、特定口座に入れるに当たって、例の平成4年以前に取得した株のみなし取得価格云々の話がありましたが、これも実額で移管することを認めてもいいじゃないかただし証拠があればですね、という話になってきたと。それから、移管期間、これを1年延ばそうと。こういう点で幾つか要望があった問題を一応特定口座ということにつきましては、そこを考えてみたいということであります。

それから、いろんな優遇措置が入り込んでおりまして、言うなれば親切心から出ている制度が、逆に言って、煩瑣であるとか複雑であるということで不人気を呼んでいると。何か裏目に出ているわけでありますが、この辺は少し時間をかけて、もう少し簡便化できないかというのは、今後プロジェクトチームを中心に大いに議論をしてもらいたいと、このように考えております。

それから、政府税調は金融所得課税の一元化とか、二元的所得税については比較的中長期の問題という形で位置付けてきておりますが、今日の議論にもございましたが、結局、その特定口座を作ったこと云々についての反省も含めて、やはり本格的に金融所得課税の一元化をやらにゃいけないんじゃないかという点ですね、これを中長期ではなくて、短期ないし中期の課題として取り上げたいと、このように改めて考えたわけです。

それで、これに対してどんな質問が出たか、あるいは議論したかということでありますが、1つ根強くわれわれの側にあるのは、特定口座を作っても、かえってこれが悪い方向に行っているんじゃないかという反省ですね。これが非常に根強くございまして、PR不足も含め、それから本当にこれがどういうふうに役に立つのかという点ですね、その点の反省、特に諸悪の根源だという人もいましたけれども、それをどういう格好でこれから改善していくかということに全力を挙げたいと、このように考えております。

結局は、株式投資の最大の狙いは値上がり益でありますから、税で幾らいじくっても株式投資の魅力が増すわけではないというのが、かねてよりわれわれの主張でございまして、それを今日再確認する議論があったということをご紹介しておきたいと思います。

いずれにしても、いろいろな難しい問題は、やっぱり原理原則論的に金融所得課税の一元化という形で吸収していく、そういう形での対応が政府税調としては望ましいということであります。

以上4点ほど申し上げましたが、ちょっと言い漏らしましたが、いずれにいたしましても、相続税本体の方の最高税率70%は下げなきゃいけないとか、課税ベースを広げる意味で 5,000万円プラス 1,000万円、1,000万円を見直さなきゃいけないということは既に問題提起しておりますから、その議論と、恐らく先ほどの生前贈与の贈与税率、それも絡んでくるわけでありますから、私は例として25%とか30%とか言いましたけれども、これは全くの暫定的なものでありますから、本体の方の変更が決まらないと税率は決めにくいし、先ほど申し上げた 1,000万円プラスアルファという1,000万円も今の制度をベースにしていますから、これも変わってくれば当然変わってくる。その辺はまだ数字的には固め切ってないけれども、基本的な方向を今日ご紹介したというふうに取っておいてください。

次回以降の予定を申し上げて、最後終わりにしたいと思いますが、いよいよだんだん佳境に入ってきまして、それから経済財政諮問会議との関係もございます。今日、経済財政諮問会議に私も行きますけれども、先ほど申し上げた塩川大臣のメモを出し、来年度の税制改革の基本的な方向を一応ご紹介するつもりでありますが、と同時に、そろそろ研究開発投資とか設備投資減税の方向をわれわれとしては固めてきましたので、それをいずれ私なりにメモを整理して、会長談話みたいな格好で、17日、次回は木曜日なんですけど、10時から12時まで開きたいと思っていますので、そこで基礎小委のご承認をいただき、かつ18日の総会にも出して、一応その点についてはなるべく早く整理をしたいと思います。

それから、17日の午前中の基礎小委は消費税の話、外形の話、土地税制の話等々をまとめていきたいと考えております。それから、18日の午後、総会を開きまして、基礎問題小委員会4回の論点を報告して、いろいろ総会としてご審議いただくということを考えております。それから、次々回の基礎小は10月22日でありますが、この日、若者集会をやろうと思っていますので、少し時間的な変更はございます。若者集会をPRしていただいているところもございますが、またこの点もよろしくお願いいたします。

ちょっと長くなりましたが、今日はテーマが長いので、これが精一杯の短縮だな。どうぞ。ちょっとはしょって分かりにくい点がありましたら、お答えしましょう。また事務局も来ていますから、専門的な話はカバーしてもらいます。どうぞ。

記者

整理すると、研究開発と設備投資のところ、あと相続・贈与については今日の基礎小委で大体来年度改正に向けた枠組みが固まったという理解でよろしいんでしょうか。

石会長

いいと思います。数字等々はこれから入れますし、本体の改正もありますから。といいますのは、方角が固まり、みんなで基本的なスキームは承認したということですね。

記者

金融・証券のほうなんですけれども、特定口座というのは、午前中に主税局からのレクもありまして、伺っているんですが、こちらの一体化に向けての議論のほうですが、これで来年度改正に入ってきそうなものというのは、今念頭にあるんでしょうか。

石会長

金融所得課税の一体化というのは、一言で言うと一言なんだけど、これはえらい問題だと考えているんですよ。したがって、仮に1月ぐらいから金融小委員会を再開して、となると年度内にそれが結論出来るのは難しいですよね。したがって、半年とか1年もんで、2004年度の税制改革ぐらいに何か言えればと思いますが、これ実は納税者番号制度の問題も絡むんですよね。そういう意味で、これはやはり腰を落ち着けてですね。というのは、戦後日本の資本・所得課税を抜本的に変える話になりますから、慎重に議論したいと思います。例の株式投資関係の優遇措置が2005年で終わるのかな、だから、そのぐらいのところを目安にすればいいんじゃないかとは、個人的に考えています。

記者

資料で1つ、法人税のところで不良債権関係というのが出ているんですが、これについての議論はあったんでしょうか。

石会長

これは、既存の説明を受けただけなので、あまりご説明することはありません。つまり、不良債権処理について税制で新たに何か切り口があるか新しい提案があるかということがございませんでしたので、現状の説明を受けたというだけで、そのまま通過してしまいました。「基礎小20-4」というのが、法人税の中での今ある制度ですよね。直接償却、間接償却の話であるとか、貸倒引当金の話であるとか等々の話でございまして、今ある制度以上の新しい問題提起がなかったものですから、それはそれで飛ばしました。

よろしゅうございますか。(事務局に向かって金融所得課税の一体化について)来年度に向けてやるけど、最終的な結論は出ないだろうと言ったのです。ちょっと説明して。一体化って、いろいろ段階がありますよね。

事務局

一体化というのは、定義によりますけれども、損益通算があり、繰越の問題もあり、二元的所得課税の問題とか、そういうのは大きな問題でございますが、今ご質問は、(それらの問題に)向けて(いつやるのか)ということだと思います。その方向に向いた簡素化の取り組みというのは、15年度でもやらなきゃいかんかなと。

石会長

いや、(一体化に)取り組むから、最終的な結論がいつ出るかという話を聞いてるんだろう。制度改正に移せるような具体的な仕組みがその後できるかというと、これは難しかろうと言ったんだよ。

事務局

例えば、配当課税についてどうするか、それから投資信託課税をどうするか、この辺の税率の問題だと思います。

石会長

だから、15年度ではなく、16年度の税制改革にやりたいということでしょう。そのぐらいのタイムスパンですよ。だから、来年の税制改革にはとても間に合わない。ただし、その次の次ぐらいには何とかなるものがあるかもしれない。

(事務局に向かって)何かありますか、今のタイムスパンの話で。

事務局

取り組めるものは取り組んでいきたいと考えています。

石会長

というような官僚的な答弁がありましたが。いや、本当に早くやりたいと思っているんですよ。いろいろ批判も高まってきましたからね。

記者

あと、日程的なものの確認ですけれども、次回の基礎小委であと3つ、消費税とかやって、総会で一応確認して、それで11月の中旬頃に来年度改正に向けたというお話があったと思うんですが、その辺のスケジュールは変わってないんでしょうか。

石会長

ええ、変わってません。

記者

今日、経済財政諮問会議に出られるんですけれども、そちらで特段、石さんのほうから特にこの点はというのは、おっしゃることがあるのかということが1つと、あと、景気との関係で、今減税規模を拡大するというようなお話がどんどん出てきているんですけど、規模の問題は政治の問題だとはおっしゃってはいるんですが、多年度税収中立との関係で税制規模を膨らますということが多年度税収中立とうまく整合性を持って、短い期間で出来るのかというようなところでお考えをお聞かせ下さい。

石会長

前段の問題は、出てきた段階で、入口か出口か、出てきた段階で捕まえてもらえば、何やらご報告できると思うけど、今日は政府税調としてまとまったメモを出すことは正式にはなくて、奥野・宮島ペーパーはご参考のために出したいと思います。で、それを紹介する傍らで、多年度税収中立法律として一元化ということを小泉さんが前からおっしゃっているので、政府税調としてもそういう議論はやりたいということを再確認するというような発言はする予定でありますが、今日は(経済財政諮問会議では)税制の時間どりが何か短いんですよ。だから、本格的に議論がそれぼど白熱するとも思えませんが、何かあそこはいろいろ何が起こるから分からない席上でありますから、それに十分心していきたいと思います。

それから、規模のことでちょっと誤解があるから直しておきたいんですが、私は、政府税調としてこの規模について直接やらなくて、政治家が政治的発言でやれと言ったら、竹中大臣は何から知らんが、経済財政諮問会議にげたを預けられたと理解しているんですが、そういう気はさらさらなくて、経済財政諮問会議は経済財政諮問会議でやっていただいて構わないけど、税調の立場は、これぞ非常に政治的な、つまり多年度税収中立というのは、これ増税も含む話ですからね、増税を含む話になると、私は政治的な決着が必要だと思うから、政治家が政治的発言と言ったのは、塩川大臣だとか、まして小泉さん自身が判断されるべきであろうという形でやっております。

恐らく、今具体的には、塩川大臣の 1.5兆と経済財政諮問会議の2.5兆が出てるのかな。それもひとえに、私は、先ほど申し上げた減税財源も含めた一元的処理でありますから、減税財源の確保の点も実は多年度中立の主要なキーでありますので、現段階で、来年度も景気動向も決まってないし、歳入歳出といったところも決まっていないしという段階で、具体的に1.5とか2.5とかいう数字は決めがたいのではないかと思います。政治家がお決めになるのは構いませんが。

ただ、小泉さんが言っている1兆円を超える規模というのは、これはある意味では共有された概念でありますから、これをどのぐらい具体化していく、あるいはどのぐらい上積みするかというような議論はあるのかもしれませんが、具体的に数字を今日決め打ちすることは多分ないし、それからまだ、今ちょっと株が落ちていまして、皆あたふたしていますけれどもこういう動向を少し冷静に見なきゃいけない時間も必要でありましょうから。それに、決めても来年度税制改革の話でありますから、今日、明日規模を決めなきゃいけないという段取りでは…マーケットに対する信頼はあるのかもしれないけど、税制改革論議としてはないんじゃないかと考えています。

記者

細かいことなんですけれども、研究開発・設備投資ですが、ちょっと確認なんですが、要するに、試験研究費の研究開発税制のところなんですけど、これは要するに、総額ベースでいこうということになったと。で、産学連携とか、そういうものはさらに税額控除の割合をもう少し重点的にやりましょうと、大体そういう方向になったと。

石会長

そういう要望があったので、それを前向きに受け止めましょうというぐらいのところまでは今出来ているのかなという気がしますけどね。

記者

中小企業のところもということですか。

石会長

はい。

記者

それから、設備投資のほうなんですけど、ITという括りでの要望は出てきていると思うんですが、例えば環境とか、それからバイオとか、あっちの分野というのはそうパッとしたのは出てきてないと思うんですが、そこら辺の設備投資の何か、税制でやろうという話はないんですか。

石会長

特定4分野、重点4分野という話があって、ただ、ハイテクとかナノとかいうのは、あまり税額的には重要になってこない性格の投資なんだね、あれはきっと。したがって、ITが一番出てきていますが、いずれにいたしましても、設備投資というのは今回ある程度重点的に配分しようと基本方針でも言っておりますから。今申し上げたのは要求ベースですから、これからわれわれ、あるいは主税局等々が具体的にどこでやろうか、あるいは塩川大臣のご意向もありましょうから、その辺は絞り込んでやるということの基本方針は変わりはないと思います。

記者

法人税の関係でもう1点なんですけれども、連結付加税がありますね。あれは今年度限りでやめようかという話とかはあるんでしょうか。

石会長

まだ、政府税調ではその話は出てこないんですよ。だから、これで11月の主要論点整理あたりの最終段階でそういう話が出てくる可能性もあるかもしれませんが、今日のところでは、例の研究開発、設備投資等々で翻弄されていまして、時間的制約もあったし、頭がそっちに回ってなかったということもありますから、そういう議論はやっていないということだけお答えして、何か議論することがあり得るかもしれません。

記者

金融所得課税の一体化については、かなり中期的な議論ということですが、来年度で、例えば配当課税の税率、35%、50%とありますが、それらを一律にするということは来年度の税制改正に……。

石会長

つまり先行減税、今年度の中に入るかどうかということですね。入れたいと思いますけど。つまり、配当課税というのは利子が変わり、キャピタルゲインのほうが変わっても、長いこと変わってないんですよね。資料にもございますけどね。そこで、言うなれば、いろんな細かいことを除くならば、20%で終わる世界と、それから配当は利子と違って利益処分で、例の配当の二重課税の調整というものはどうしても残りますから、そっちのほうに期待している人も結構いるから、今ある総合課税というのはやっぱり残すことになると思いますね、そこは。どっちを取るかは配当を受け取る人の選択になると思いますが。そういうスキームは大体練れていますから、やれるなあ、どうだい。

事務局

やれることはやらなきゃいかんと思っています。

石会長

プッシュします。僕だけ独走して、勝手にやれと言われても困るからなほかはどうですか。

記者

今日の議論には直接関係ないんですが、増税のほうの話なんですけれども、多年度税収中立ということになれば、ある程度の規模の来年度増税も必要ではないかと思います。それで、9月3日に示された中間整理の中で配偶者特別控除の見直しをはじめ何項目か挙がりましたけれども、その中でも優先すべき重要な項目というのはありますか。

石会長

あるべき税の姿というのを描き出して、所得税、消費税、それから様々細かい税も含めて、やはり課税ベースが浸食され過ぎていて、本来の税収確保の機能を失っているという視点から、所得税と消費税を基幹税化すべきだというのが大きな目標なんですよ。そういう意味で、これはいずれも家計に直接響きますから、今の景気情勢においてどこまでできるか分かりませんけれども、恐らく優先順序から言えば、配特と特定扶養控除といったことが、この間言っていた通りでありまして、それから小泉5項目が入っていましたよね、それとあと、益税のところの3,000万を幾らにするかというあたりですね、あの辺がもしか、来年度すぐやるか、少し景気回復を待ってずらしてやるか、ありますけれども、増税の項目としてはそういうところが上がってくるし、たばこ税みたいなものも浮上することはあり得べしですね。

記者

配特については、もう来年度、やはりやるべきだと。

石会長

それもひとえに、今言った景気との関係もあるし、配特といっても、一気に38万円バッサリは無理ですよ。個人的にそう思ってますね。いずれにしてもゆっくりやらざるを得ないと思っています。いろんな組み合わせを一つですね。

(以上)