基礎問題小委員会(第18回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成14年9月27日(金)16:08 ~16:28

石会長

それでは、今日、基礎問題小委員会、18回目でございますが、終わりましたので、その内容等についてご説明をいたしたいと思います。

今日はですね、2つテーマがありました。1つはあるべき税制の構築に向けてこれから内容を詰めつつ、また来年度税制改革に向けても、小泉5項目も含めてですね、その辺の関係をどう整理するかという形で、まず前半、フリートーキングをいたしました。もう1つは後半に、証券税制も含め所得税の話について一応論点を整理したと、こういうことでございます。

お手元の資料に基礎小18-1という大きい紙があるかと思いますが、これが6月に出しました例の基本方針と、俗に言われます小泉5項目、これは来年度税制改革の項目でありますが、その関係を1つの図にまとめたわけであります。当面の課題が出てくると思いますし、それから基本的な考え方というのに個々の主要な税についての項目が並んでおります。と同時に、固定資産税以下、その他まで含めてですね、言うなれば、俗に言われます来年度税制改革の中で、小泉5項目以外でも議論すべきものが並んでおりましす。全体図を眺めていただきますと、我々の10年、15年先を見据えた基本方針の第一歩として、来年度税制改革の項目が並んでいると、こういう形ですね。当然のこと、右の方に矢印がついておりますが、今後あるべき税制・税体系の構築等、これが第二歩、第三歩とあるわけでございますから、それをこれからやっていこうという、そういう段取りで、まず最初に自由に議論をしてもらいました。

二、三、ご紹介すべき論点がございます。1つはですね、この項目には直接載っていない、その他に入るべきことなんですが、不良債権処理と税制の関係です。やはり、今、不良債権の問題がデフレ対策として非常に重要になっております。税制面においても、それに対応してどういう議論をすべきかという点につきまして、大分議論が出ました。具体的には、償却の仕方がどうだとかですね、恐らく税効果会計でかなりのことをカバーしているわけでございますが、それでいいかどうかといった論点ですね。そういう意味で、1つ出ました。

それから、2つ目はですね、やはり我々基幹税というものをこれから育てていかなければいけない。と同時に、これまでの相次ぐ減税によって、基幹税たる地位を失いつつあるような税もあると。そういう意味において、従来、所得税・法人税・消費税と3本立てにしていたわけでありますが、今後所得税と消費税、これに軸足を置いたような形の基幹税育成、これが非常に重要になるであろうと考えております。そういう意味で、所得税と消費税に対してですね、税の空洞化阻止といったような点から幾つか議論をしておりますが、ただ、税体系全体の中でですね、税負担を考えなきゃいけないので、例えば法人税だけ1つ取り上げてですね、そこで税率を下げろとか、あるいは政策減税しろとかという議論では、やはり長い目で見た税制改革の論議ができないんじゃないかということにかなり議論は集中していました。そういう意味で、これからやはり大きな体系の中で議論すべきであると。

もう1つ、あえて言うならば、来年度税制改革で小泉5項目というのを対話集会でも取り上げましたし、この間の9月の中間整理でも取り上げたということで、ちょっと議論が矮小化され過ぎたんではないかという反省もある。と同時に、将来を見据えたときに、やはり消費税率というものについて、かなりこれから本格的な議論が必要になると。そういう意味で、消費税を中心にした税体系の見直しというような議論を本格的にしなきゃいけないんじゃないかと、こういう議論も出ていたわけであります。これがフリートークの中で幾つか出てきた議論。

それから、もう1つあえて言えば、海外の企業進出も含めてですね、今あるいわゆる外税控除ですね、すなわち外国税額控除、これがみなしでやられている面も多々ある。中国ではほとんど税を払っていないけど、払っているとみなしてこちらで控除するといったような、そういう制度をいつまで続けられるかという意味で、産業の空洞化も含め、海外進出も含めてですね、外税控除なんていうのを本格的に議論しなければいけないんじゃないかという議論をいたしました。

さて、後半はですね、今度は基礎小18-2を中心にいたしまして、証券税制関係、これは皆さんもご関心があろうかと思います。これはですね、現行の制度を一とおり整理した、例えば1ページというのは既にこれまで出ている制度の概略でございますし、2ページは特定口座の説明でありますし、3ページは適用の時期であると。まあ、お読みいただければ一連の関係がここに出ております。

そこで、基本的なスタンスなんですが、今回、こういう制度はですね、できて何か評判がよくない。複雑過ぎるとか、あまりにも優遇措置を利用するに当たって煩瑣な申告をやらなきゃいけない。特定口座などを作ったがゆえに、またそこでさまざまな面倒くさい、言うならば取得価格の見直しの規定があって評判悪いんですが、ただ、今日我々は極めてオーソドックスな議論をしたと思います。やはり所得を稼いでおり、そしてこういう事柄の性格上、申告納税というのはやむを得ない話ですよね。それを少し手助けするがために、かえって煩瑣な特定口座をつくったり、また10%であるとか、100万円であるとか、1,000万円であるというような、余りにも多様な優遇措置をつくり過ぎたがゆえに、かえって混乱させた。しかし、制度は来年1月1日からスタートするわけでありますから、これはこれで清々粛々とやらないとかえって混乱するだろう。そういう意味では、それを受けた後に何かできることがあれば、少し議論をしきなゃいけないだろうというわけで、今、この段階で、何かまた制度の変更があるんじゃないかと思って待っておられる投資家もいられるようでありますが、それは今何かやるとかえって混乱を招くだろう。それから、実際にですね、特定口座の運用等についての問題点を洗う意味でですね。今、プロジェクトチームを立ち上げております。そこでさまざまな検討を重ねておりまして、5ページに特定口座実施円滑化プロジェクトチームというのを主税局と国税庁とそれから総務省で今いろいろなヒアリングを重ねているようでございましす。そのような結果を踏まえつつ、何か新しく手を打たなければならないところがあるならば、それだけ手を打ちたいということでございます。とりあえず、ここに書いてございますように、種々の大臣談話にも書いてありますように、運用面の措置は速やかに実施するとともに、法改正が必要な事項については15年度税制改正でやるというのが基本的なスタンスであります。

それから、我々としてはですね、これは言い訳にもなるし、今から言ってもしようがないんですが、昨年、税調の預かり知らぬところで党と、言うなれば金融庁もあったかな、あるいは主税局もあったかな、そこで決められて、そのとき追認させられたというような思いもあってですね、今この制度の仕組みについてそうとやかく言ってもしようがないという諦めもあるんです。ただまあ、源泉分離にまだ執着している声もあるし、1,000万まで非課税にしよう、キャピタルゲインを、というような先祖返りみたいな話は、これは我々としては耳を傾けるべきものでもないだろう。それから事柄の性格上、面倒くさいとか何とかということからですね、この制度を批判する現行の批判よりは、やはりこれはある意味では損失の繰越も3年間認めてくれるとかですね、さまざまなある意味でリスクをとるような形で制度ができ上がっているわけであります。いずれ17年度までたてばすっきりした形にもなり得るし、そういう意味で、これは事柄の性格としてやむを得ないものであるし、積極的にプラス面もあるから、それをわかってもらう説明をすべきであるというのが基本的スタンスですね。

ただ、この種の話はですね、やっぱり利子とか配当とか他の金融所得との絡みで当然議論もしなきゃいけない。それから「貯蓄から投資」へという大きな流れ、これも税で対応しなきゃいけないという話これまたありでですね、これからなるべく早い時期に金融所得の一元化、これを議論すべき場を設けた方がいいであろうと、こういう議論が強かったし、私もそのように考えております。そういう意味で、解決の方法は、今の制度はスタートさせつつですね、必要な処理は講じなければいけないかもしれませんが、基本的には金融所得の一元化といったような大きな議論の中でこれを整理するのか一番よかろうと、こういうことであります。

それから、この資料に則して言うと、あと7ページ、8ページあたりには、そのキャピタルゲイン課税の優遇ということに関してはどうしたらいいかというような議論で、例えばですよ、この表でいうなら7ページで、株式投資に関する税制優遇措置があるからという理由はほんのわずかな割合にしかなっていない。やっぱり値上がりが期待できるとか、配当が期待できるというのが本当の株式投資の行いたい理由であります。それからこの主要な国の株の推移、最後にこれ見せてもらいましたけれども、小泉内閣が発足した2001年4月26日を100としてこう見てみると、やはりどこの国も随分落っこっているんですね、これ。何も日本だけではない。一番落っこっているのがドイツであって、ドイツはキャピタルゲイン課税をやっていない。やっていないところが一番落っこっているのはどうかといういろんな解釈もでましょう。そういう流れもここにあるという意味でですね、世界的な意味での大きな流れの中に日本も巻き込まれていると、こういう理解だろうと思います。

以上、今日は2時間たっぷり議論いたしました。

そこで、以下、今後は週1回のペースで残った税の項目につきまして逐次詰めて、11月の中頃を目指して、一応来年度税制改革の軸になるような項目をまとめてみたいと考えております。

来週は火曜日、10月1日に行います。そこで消費税、外形、土地税制等につきまして、順次検討したいと思いますし、次々回は10月11日金曜日、これを考えております。週1のペースでこれからこの基礎問題小委員会を開きつつ、2回か3回ぐらいやった後で総会をやって、一応また意見を聞いてというふうに考えております。

以上であります。ご質問があれば、どうぞ。

記者

まず、1点目なんですが、フリートーキングの中で、不良債権処理を税制の面から支えられないかという意見が出たそうですが、石会長としてのお考えとしてはですね、そこら辺はどういうお考えをお持ちなんでしょうか。

石会長

それね、まだ詰めていませんでわかりません。償却の処理をしたときに税の取り扱いがどうであるとかですね、あるいはやっぱり時価の問題がどうだとかですね、さまざまな論点はあるようであります。ただ、先ほど申し上げたように、税効果会計というので、税の問題はですね、かなり後から戻ってくるというような、そういうシステムを突っ込んでおります。ただ、これが完全であるとは思いませんが、1回ですね、時間を設けて、この辺の問題を議論したいと思います。ただ、今日の出席者の中では、この不良債権処理に関して、税もサポートするようなものがあってもいいじゃないかと。具体的な議論まで煮詰めておりませんが、そういう問題意識があったのは事実であります。私自身の方では、まだその詳細について詰め切っておりません。

記者

結構そういった意見は、小委員会の中の委員の方から多く出たという理解でよろしいですか。

石会長

結構です。

記者

あと、証券税制のことなんですけれども、要するに、今プロジェクトチームで円滑化、特定口座の円滑化プロジェクトチームで見直し作業を進められているんですが、これも要するに法改正が必要なものについて、これは15年度改正をすることになるわけですよね。そうすると、基礎問題小委員会でもこの見直しの具体的議論というのをすることになるという理解でよろしいんですか。

石会長

時間的要素があり、かつそのプロジェクトチームがまとめた結果を、具体的にどういうふうに結びつけるかというところはまだ固まっておりませんから、いつ頃どうするということはできないと思います。ただ何分にも来年1月1日から始まるものをですね、朝令暮改的にすぐ15年度税制改革で大規模なね、大きな改革をやるのは難しかろうと思いますよね。そういう意味で、特定口座のあたりで何か議論ができるところがあるのか。あるいは、例の特別優遇措置のところあたりで、今日もちょっとちらっと議論できましたが、ある期間に「譲渡」して売ったときというときの「譲渡」を「取得」に変えてはどうかというご意見もございました。3ページに適用時期というのがあって、暫定税率100万円の特別控除等で、15年、17年の「譲渡」というけど、今日のご意見でも「取得」という形にすればもっと、もう少し、17年末に集中した何か悪影響と言われますが、そういうものを処理できるんじゃないかというような議論もあったということだけちょっとご紹介しておきます。

記者

あと、諮問会議の税制の議論との関係なんですが。

石会長

すいません、ここでご紹介しなかった。

記者

そこら辺についてですね、この間も石会長、諮問会議にお出になられましたし、あと塩川大臣が多年度税収中立の考え方のようなことをこれまで何回か発言されていますが、そこら辺の議論というのはどういうことだったんでしょうか。

石会長

今日はですね、冒頭10分ほどかけまして、9月20日に私が出席いたしました経済財政諮問会議における議論の方向、議論の状況をご紹介しました。そこで申し上げたのは、これまでの経過説明と、それから我々が今やっております「あるべき税制」の姿と15年度税制改正に関連づけて先行減税、それからあとの後年度増税という組み合わせ。特に、この後年度税制においては、しかとした項目で減税財源を補わなきゃいけない。つまり、増収の項目を探すべきで、諮問会議の民間委員が言っているような自然増収に頼るとか、歳出削減では、不確定なものを入れても、これは単なる言うなればお題目に過ぎない話で、パッケージとしては成り立たないだろうというような議論をご紹介しました。ただ、今日はですね、先行減税云々の組み合わせとか時期について議論する場ではありませんでしたので、それ以上進んだ議論はいたしませんでした。ただ、我々としてですね、この規模とか組み合わせいかんの問題は政治家が政治的に判断すべきであるということを私が諮問会議で申したということに対しましては支持するといったご意見が2つほどありました。基本的には我々みずから規模の決定等をする任にはないのかというような判断をお持ちの方もいると思います。そういう意味で、今言った先行減税等々は、いずれ来年度税制改革の時期、党税調が絡むかもしれませんが、11月、12月の段階でその正確な規模、あるいは組み合わせ、あるいは時間等々決まればですね、我々として必要ならば制度設計、それをしてみたいと考えています。そういう関係だと理解しています。

記者

確認なんですけれども、先生、10月の半ばに来年度税制の軸になるような項目をまとめると。10月半ばとおっしゃいましたか。

石会長

いや、11月。塩川さんはときどき10月とおっしゃっていますから…。

記者

あれとの関係はどうなりますか。

石会長

今の段取りではですね、11月中頃の日程を組んでおります。ただ、少し文書をつくったり、何かやるということになると、10月末ぐらいにはまとめておかなければいけないかなという気はしております。それから、そのときそのときでですね、何か例えば証券税制でまた議論が少し煮詰まってくるとか、あるいは減税規模等々について何か、例えば研究開発投資がどうだとかという議論になれば、まだわかりませんけど、会長談話みたいな形でね、11月半ばになる前にですね、少し論点を整理するという形で我々の意見をまとめるということはあり得るかもしれません。そういう意味で、11月半ばのファイナルな答申を待たずして前もって我々の意向をお伝えするという機会があれば持ちたいと思います。

記者

金融所得の一元化を議論する場が必要というふうにおっしゃいましたが、これはいつ頃、どのような形で。

石会長

我々一応11月中頃に来年度税制改革の話は整理をつけたいと思いますので、できれば12月、遅くとも1月には金融小を立ち上げてその議論をする。それから、法人税関係でまた出てくるかもしれませんから、公益法人関係みたいなのありますんでね、そういう意味では、年明けから今度は基礎問題小委員会も当然やりますが、それ以外の小委員会も立ち上げて議論はしたいと思っています。まあ、1月以降ということですかね。金融所得の一元化の本格的な議論は。

(以上)