基礎問題小委員会(第17回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成14年8月30日(金)16:29 ~17:05

石会長

時刻がちょっとずれましたが、今日の17回目の基礎問題小委員会の議事につきまして、内容をご報告します。

今日は、やはり一番大きな議題として我々としてもご説明しておかなければいけないのが相続・贈与の一元化の問題、それから消費
税の免税点、配偶者特別控除等の話、それに大澤会長、つまり男女共同参画会議の方から申し入れの意見書がございましたので、そのご紹介をいたしたいと思います。

それでは、基礎小17-1を説明資料として使いまして、相続税・贈与税の関係を少し詳しくご説明をしたいと思います。というのも、今回の税制改革の1つの目玉になるというふうに私ども考えておりますので、皆さんにも関心を持っていただきたいと思います。

初めの方は、この前の資料の説明でございますから問題ございません。

そこで、10ページを開いてください。ここに4項目並んでおります。これが基本的な問題でございます。

相続税・贈与税の一体化の問題は、この間の小泉首相の指示にも若干絡んでおります。それから、元来、生前贈与の意義を経済的にどう認めるかという議論も絡めておりますが、それとは別に、現在ある贈与税は相続税の補完税とは言いつつ、関係が希薄になっている点を直し、一体化して議論すべきであると。言うなれば、日本型の累積課税といったようなことを我々は構想いたしております。

まず、ここに書いてございますように、最初のマルの2行目、「現在の執行体制の下で可能な相続税・贈与税の一体化措置を導入す
る。これをするためには、以下のように具体的な案を検討したい」と。4つ項目が並んでおります。そこで、最初の1というのが重要
でございまして、この中に幾つかキーワードがございます。「生前贈与を受けた者については、選択により」ということでありますから、今ある 110万円のルートも残しておきます。今度、新しい一体化の制度を入れますから、そこは選択になります。そういう意味です。それから、兄弟で、兄貴がこっちを選び、弟がこっちを選ぶということも「選択」の中に入っています。相続時に、それまでの贈与財産と相続財産とを合算して計算した相続税額から既に払った贈与税相当額を税額控除すると、こういうことですね。

そこで、ポンチ絵が出ておりますが、11ページを見てください。

これが一番イメージとしてはわかり易いと思います。つまり、贈与Aがございまして、納付税額aがあります。それから、贈与Bがあって、納付税額bがあります。ドイツ・フランス型ですと、このBの方からAに既に納めた納付金額を税額控除しますが、これは日本の場合にはこういう手間をかける必要はないだろうという理由において、AとBは別々に贈与税としてそのまま置いておきます。贈与者が死亡したときに、A、B、C--Cは相続でございますが、それを全部一体化して、A、B、Cにかかわる相続税額を全部計算した後で、このa、bを引くという形で累積をこの段階でやるということであります。したがって、前のページにお戻りいただきますと、相続時にこの計算をするという、相続時というところが1つのポイントであります。相続時に生前に贈与したものを全部相続財産と一括して計算して、そして言うなれば生涯にわたって整理すると、こういうことですね。そういう意味で、ドイツ・フランス型とは違った意味で、相続の段階で過去の贈与も一体化する意味において累積課税だと我々は考えておりますから、贈与と相続の一体化はここで完成させたいと思っています。

2番目、「本制度の適用を受けた生前贈与については、贈与を受けたときに支払う贈与税を軽減する」。先ほど申し上げた、110万
円を上積みしたところに贈与税の税率がかかってきますが、これはある意味で第三者にも贈与できますし、相続と関係ないという意味
において高目の税率になっておりますが、それよりは下げると、こういうことですね。軽減するということです。

それから、3番目、これが非常に今日の小委員会の審議でも議論を呼びましたが、「適用に当たっては、贈与者は65歳以上」--こ
こで1つ決めました。それから、受け取る方は、「子である推定相続人であることなど、一定の要件を設ける」と。子供でありまして、孫ではない。それから、配偶者でもないという意味において、相続財産を生前贈与させるという1つの、ある限定をつけたということであります。ねらいは、生前贈与の円滑化に資するという意味では、同世代ではその目的に外れますし、それから孫になりますと一挙に飛び過ぎまして、次の世代ということではなくなりますし、ということで「子」という形で限定して、推定相続人にしたわけであります。

それから、「など」の中にはまだ幾つかございますから、「推定相続人であることなど」、今度は受け取る方の側の子供の方の年齢
をどうするかという問題も多分あろうと思いますし、それから養子の問題もあろうと思いますし、それを何人にするかということがあると思いますが、これはまだまだこれからの議論であろうと思います。

養子は、一応「子である推定相続人」の中に入る、ただ何人入るかわかりません、そこはまだ決めておりませんが、その辺の問題は
一応考えております。

それから、4番目はつけ足しでなお書きでございますが、「租税回避防止については適切な配慮をする」と、こういうことであります。  それから、前に戻りますが、合算して相続税・贈与税を一体化するときは、一応贈与時の時価でもって相続の段階の合算をするとい
うふうに我々は考えております。

これを出しまして、一応基本的にはこの4項目につきまして今日ご承認をいただきまして、この方向で事務局に制度設計を詰めても
らうということにいたしました。というのは、何もないとこれから作業ができません。そういう意味で、日本型の累積課税といえど、基本的な骨格は決めておく必要があろうと思いまして、一応これを今日示し、ご承認いただいたわけです。

いろいろな議論がございましたが、重要な点だけご紹介しておきますと、やはり65歳というところで切っていいかどうかということについてはかなり議論を呼びました。特に、経済学者の方からは、様々な形でインフレ、あるいはデフレ、それから金利の問題もあるだろうという形で、タックスベースが動くわけですよね。そういう意味では、65歳にならないと生前贈与できないというのは問題ではないかと。それならば、いっそ、ドイツ・フランス型のように10年という形で区切ってはどうかと、こういう議論があったわけであります。これにつきましては、何人かサポートもいましたし。そういう意味で、これから65歳でやる、あるいは10年でやる、その辺をちゃんと整理するということはこれからやりますが、ただ、この種の話はどこかである取り決めをしなきゃいけないという意味で、基本的に65歳で一応こういう制度を仕組むことについてはいいんではないかという意見は多数であったと思います。

それから、例えば今の設定でも、配偶者は本当に駄目なのかとか、それから議論がまだ必ずしも熟していないからもうちょっとやっ
てはという議論もございましたが、これを第一歩としてこれから議論しようということであります。

それから、住宅特例の 110万円を5倍にした 550万円の問題もございますが、これも将来の制度設計にもかかわってきますが、これ
との関係もどうするかもこれからの議論であろうと考えております。

そういうわけで、一応相続税・贈与税の一体化についての4項目導入は、大部分の人が認めておられたということであります。

詳しい内容につきましてまたございましたら、ご説明をいたします。

それから、消費税の方、これはもう既にお手元の資料でご覧いただいた数字が並んでいると思いますが、新しい資料は、例の免税点
以下の業者を1,000万円、2,000万円以下に区分したらどうなるかという議論、あるいは簡易課税制度というものがどのぐらい額に応じて、つまり1億円超--今、2億円以下になっていますが、その辺の数字が基礎小16-5の8ページとかあるいは4ページあたりに出ているという意味において、新しい情報の整理があったということです。

これにつきましては、基本方針どおり、一応益税解消ということも含めて、免税点を下げる。下げるやり方として、法人の方はもういいではないかと。法人については免税業者を作らないで、免税業者は個人に限定すべきだという声もございました。いずれにいたしましても、3,000万円を見直すときに個人・法人の区別というのは一応議論になってこようかと思っています。

それ以外に、各国の比較が新しく出ておりますから、ご覧いただけたらと思います。

益税といっても、このデフレ下で本当に益税があるのかということについてのご議論を出された方もおりました。

それから、新しい資料としては、例の配偶者特別控除、それから特定扶養控除--特定扶養控除の方は、残念ながら今日は時間がありませんで、あまり議論になりませんでしたが、基礎小17-3という資料をご覧いただけますか。ここの9ページ、あるいは13ページあたりに、配偶者特別控除を受けている層が何人いるかという数字が新しく出ております。例えば、9ページで申し上げると、この配偶者控除の上に乗っている2階部分の配偶者特別控除の適用者がどうだとか、それから配偶者特別控除にぶら下がっているところはどうだというのは、この14ページ、13ページの図を見ていただければおわかりいただけようかと思います。

そこで、これとの絡みにおいては、今日は、男女共同参画会議の影響調査専門調査会会長の大澤眞理先生から意見の申し入れがございました。私、直接会って受け取ってまいりました。お手元の一番最後の資料に入っていると思いますが、よろしゅうございますか。

これは、大澤さんにこの前政府税調に来ていただきまして、配偶者特別控除、そして配偶者控除についてご意見をいただいた。その後、基本方針を受けて、正式に意見書として申し入れが来たということであります。これは、我々も議論しております、配偶者特別控除、配偶者控除、これをさらに一段と突っ込んだ形で、両方とも見直してほしいということであります。これは、幾つかここに書いてござ
いますように、やはり特定のライフスタイルというのを前提にした制度というのでは問題解決されないから、就業構造に対しての歪み
とか、それから言うなれば女性の社会進出等々については、やはり非中立的になっては困ると。配偶者特別控除だけではなくて、配偶
者控除そのものを見直してほしいということであります。ただ、これは、基本的な方向を出しただけで、これをどのくらいのタイムスパンでやるか、あるいはこの激変緩和をどうするかは政府税調にお任せしたいと、こういう申し入れでございました。「家族控除」という名称を使うのも、まあ、扶養される配偶者というスタイル、イメージがついて回っているので、これも適切ではないと、こういうことでありました。私、これまでいろいろな税制に対する要望書を受け取りましたが、100%減税要望でありましたが、今回はその逆の方向の、言うなれば課税ベースを拡大してもいいよという、一部ではございますが、そういうご意見が出たのは初めてでありまして、そういう意味では、私にとっても1つの新鮮な経験でありました。

これに対してもいろいろ今日議論がございましたが、基本的に我々としても配偶者特別控除はとりあえず最初に見直し、それから配
偶者控除そのものについても、今後どうするかということを議論しようということで、一応今日の議論は整理がついたというふうに考えています。

これが今日の内容でございます。そういう意味で、相続・贈与のところについては幾つか議論もございましたが、ほかの議題につきましては、ほぼ基本方針どおり我々の意見が今日は再確認されたということだと思います。

あとは、来週3日、総会を開きまして、俗に言われます、塩川大臣の言葉では、透けて見えるメモを出せと。これは、「小泉5項目」に関し、かつ来年度税制改革に関し、何かちょっと方向がわかるように出してくれというので、そういうことを対話集会を通じた意見も踏まえて現在文書を作成しつつ、総会に出し、承認をいただいて、3日に報告をしたいと。その修文等々につきましては、一応作成した文書について今日議論をいたしましたが、まだこれからかなり直る点もありますので、一応今日まだご報告の段階ではありません。

それから、3日にそういう形で我々のある方向が透けて見えるような格好、透けて見えないという不満が多分出てくると思いますが、あまり今の段階でその辺がはっきりし過ぎると他の審議機関との関係もありますから、ほどほどがいいと思いますが、それを出した後で、9月後半から、その内容に則してもうちょっと制度設計を深めていきたいと思います。とりわけ、相続・贈与のところは、もっともっと詰めなきゃいけない、あるいはあらゆるケースを想定して穴がないようにしなければいけないという大きな仕事であります。担当者に聞くと、連結納税に匹敵するような作業量が必要ではないかということでありまして、これから大きな仕事になっていくと思っています。そういうことも踏まえて、どこまでまとまるかわかりませんが、11月の中頃を目処に、一応我々の基本方針をベースにして、それから「小泉5項目」が出てきて、あるべき税の姿の10年、15年眺めた先の抜本改革、それのスタートとして、来年度からやるべき項目につきまして、一応整理したものを11月中頃に出したいと、このように考えています。

以上であります。

記者

相続・贈与の、先ほどの新たな一体化措置の導入の件なんですが、基本的なところを何点か聞かせていただきたいんですが。まず1点目は、この新しい制度の適用を受ける場合の生前贈与については、これは控除というのは、要するに旧方式だと110万円…。

石会長

1回限り何千万だという縛りもつける考えは、今のところありません。現時点においては、何回やっても、どのぐらいやってもというふうに考えています。

それから、すみません、説明し忘れましたが、今ある相続税の基礎控除5,000万円、それから相続人1人 1,000万円ずつ、 8,000万円だとか、 9,000万円だとか言っていますが、それと生前贈与の額は一応切り離して考えています。その中でやるというんではなくてね。いいですか。あれとは関係ない。

記者

そうすると、この一体化をするときに、相続税を最終的にかけることになるんですけど、そのときの相続税の税率とか控除については、また違ったものになるんですか。

石会長

ええ。それは、最高税率を下げろとかね、それから課税最低限を見直してはということもまた検討の材料でありますから、相続税本体として議論するつもりでいます。その方向性、方向は若干出ていますけれども、まだ具体的な税率設定等々は時期尚早という形です。

記者

それから、フランスとかドイツとはちょっと違うというものの、これ累積…。

石会長

最後の段階でね。

記者

最後の段階ですけど、今までよくその議論の中で言われていたのは、生前贈与の段階で、その贈与の状況をちゃんと把握しておかなくちゃいけないということを言われておりましたけれども、そこら辺の措置といいますか、そこはどういうふうにお考えですか。

石会長

幾つかケースを考えなきゃいけませんが、相続があると想定して贈与を始めたけど、相続の段階になった途端に破産したり何か借金があってですね、相続財産がなくなっているケースがありますね。それは1回計算し直して、払う必要がない場合には還付します。そういうことを考えています。それぐらいでいいかな。まだいろいろありますよね。相続人が途中で死んじゃったとかね、そのときはどうするかとか、いろいろあるんです、それは。

記者

その直前なんですけれども、その徴税側の把握の方法というのは。

石会長

それで、実は、納番でもあれば、納番を入れてという考えもないことはなかったんですが、納番は、今ある住基番号にしても、基礎年金番号にしても、それを急に納番にするわけにいきませんから、これは今後は一切切り離して考えています。そうなりますと、65歳を超えた人がですね、何年生きるかわかりませんけれども、20年なり、30年なりの間に、税務署とやっぱり相対でコンタクトをとると、問題は特に税務署の方の努力だと思いますけどね。それで、生前贈与の額をチェックしてもらい、それで相続の段階でこれをはっきり死亡通知が税務署で把握できますから、それを逆上ったデータだけはちゃんとフォローしておくということについて、税務当局に確認をしましたが、それだけは大いに努力してやると、できるだろうということでありますので、今の執行体制からいって、そう無理ではないというふうに考えています。

相続税・贈与税のところ少し込み入っていますから、何か質問があればご質問ください。担当の企画官も来ていますから。

記者

相続・贈与のところですけれども、相続時に精算しますと。それはわかったんですけれども、おっしゃったように、相続税の基礎控除の話とは全く別の話で…。

石会長

別の話です。

記者

要するに、そこを生前贈与に使って、そこで累積されることはしませんと。

石会長

しません。

記者

となると、ある程度軽減措置は入るのでしょうけれども…。

石会長

はい。入ります。

記者

これは要するに、贈与税の課税をちゃんとするという話であって、円滑化になるんですか。要するに、総理指示では、相続税の最高税率引き下げと控除の見直し、生前贈与の円滑化だったと思うんですけれども、これ、贈与税の課税をちゃんとやりますよという話であって、円滑化という感じがしないんですけれども。

石会長

いや、大いになると思いますよ。ましてや、 1,000万円とか2,000万円とかという額を決めないでね、今のところわかりませんが、青天井にするかどうかも議論をまだしていませんけどね、かなりの額を生前に贈与しておいて、つまり相続の段階を前どり、先倒しにして贈与することは可能ですよ。僕個人的には、承継税制、それで死亡時にどかっと来るのが、このとおり生前に分けるということが可能でしょう。これは僕はかなり効いてくると思いますよ。まさに110万円のレベルでの少し高い相続税率ではなくて安く済みますからね。これまだどれぐらい軽減するかわからないけど、それは恐らく聖域になるでしょうね。それから、額の方も含めてね。

記者

あと、入れる軽減措置の兼ね合いもあるんですけれども、最後の相続時の基礎控除のところの税率を下げるかわりに基礎控除を下げるという話もありますよね。課税ベースを拡大するという話ですね。

石会長

はい、あります。

記者

そうすると、ここの生前贈与のところの軽減との兼ね合いもあるんですけれども、最終的にじゃあ相続税の基礎控除も圧縮されたとすると、生前贈与をした資産と相続した資産、全体に対する課税で考えると、重くなったりしないですか、課税は。

石会長

トータルで、一生涯で払ってもらう相続財産というのは決まっているわけでしょう。それを前に倒してやる人がいてもいいし、相続の中にまとめてやる人もいてもいいし。

記者

最後のところで差し引ける控除が小さくなる可能性があるわけですよね。今の検討段階だと。

石会長

それは、相続税本体の話として方向性はもう決めていますよ。それから、将来的にまた税制改革があるかもしれない。その今言った基礎控除も、5年後、10年後には変わる可能性もないことはないでしょう。それは当然制度変革は将来的にはあり得るんですよ。

記者

それが、何で生前贈与が得なのかがいま一つよくわからないんです。

石会長

だって、税率が安くなるでしょう。 110万円以下の人はそれはそれでいくでしょうけどね、それを超えた人は、今禁止的に高い、贈与税を払っていますね。しかし、今度は安くなる。まとめて相続財産のことを計算して、かなりの額を生前贈与に組まれるということが可能ですよ。それがなぜまた生前贈与の円滑化につながりませんか。そこを聞きたい。

記者

最後の基礎控除と税率の問題と、生前贈与のときに適用する軽減措置がわからないので何とも言えないんですけれども、その組み合わせ次第によっては、相続した財産と生前贈与した財産全体に対する課税というのが、今より高くなる可能性はないんですかということを聞いているんです。

石会長

今のは、基礎控除の話とくっつけて議論しているんだよね。

記者

だって、最後は相続時に精算するわけですよね。

石会長

精算しますよ。

記者

そのときには相続税、そのときに使う相続税の基礎控除の税率というのと、この新しい制度を選択しなかった場合の基礎控除なり税率というのは、これは別物になるんですか。同じですよね。

石会長

同じですよ。だって、相続税という本体が残っていて…。

記者

残っているわけですよね。

石会長

残っています。それが今変わるかもしれないけど、現行では5,000万円と 1人1,000万円ある。それは変わらないんですよ。それで前に贈与した財産を含めて相続税を再計算した後で精算してやるわけだから、そこが何でいけないのかな。

事務局

当初のご質問にちょっと誤解があると思うんですけれども、相続税の基礎控除が前倒しになって、先ほど、最後の精算のときには、相続税の基礎控除が減っているということではないんだと。

石会長

そうですよ。そういうことは全然関係ない。

記者

もう1回言ってください。よくわからない。

事務局

相続税の基礎控除が前倒しされて、使われちゃって、後で…。

記者

それはわかるんです。そうじゃなくて、僕が言っているのは、生前贈与して贈与税を払っていきますと。それで、最後のときで、その軽減のやつを使ったのかもしれないけれども、相続時点で贈与した資産も全部足し込んで相続財産を計算するわけでしょう。

石会長

そうですよ。

記者

そのときに、基礎控除が縮んでいて…。

石会長

縮んでいてというのは…。

記者

要するに、圧縮しているということもありますよね。今考えていらっしゃるでしょう。縮んでいたときに…。

石会長

スタートするときからもう縮めているんだよ、それは。今回の生前贈与をスタートさせる一体化と同時に、相続税本体の方も見直していますから、そこは後から急に縮めるという話じゃないよ。

記者

いやいや、そうなんですけど、だから、生前贈与した財産と相続した財産を全体の資産として考えたときに、そこに全体の資産にかかる税というのは高くなることはないんですか。

石会長

ないですよ。つまり、今回の一番のポイントは、いつやっても、いつ生前贈与しても、死んだときにまとめてやっても、同じ税額だということです、ポイントは。そこが一番のポイントですよ。それ以外に考えないですよ。そんなに時期によって税額が変わるというようなことは考えていません。最後に死んだときにいっぺんにやる税額と、3回ぐらいで贈与を分けてやっていたのを最後に精算して、同じ相続税の仕組みを使うんだから、それは同じですよ。また後で議論があれば。納得まだし兼ねますか。

じゃあ、他に。ちょっと納得し兼ねる人もいるかもしれないけど。どうですか、他の方。

記者

要するに、多分皆さんもわからないと思うんですけど、要するに、生前贈与の円滑化というのでこのお話が始まっていて、この方式は、2のところで「贈与税を軽減する」とは書いてあるんですけれども、それの具体的な中身がよくわからないから、具体的に生前贈与がこれで進むんですか、要するに、生前贈与した方が得になるんですかというのがよくわからないということだと思うんですけれども。

石会長

それは、軽減するというだけで幅を示していないと。10%軽減する、20%軽減するという額によって違うということですか。おっしゃっている意味は。軽減の程度によって得するか、得しないか考えたいということですか。今のご質問は。

記者

いやいや、そういう高級なことではなくて、ここで贈与税を軽減すると書いてあるんだけれども、どういう軽減の仕方なんですかと。

石会長

税率が変わるか、フラットでやるか、一括でやるか、それはこれから考えますけれども、今ある相続税の税率表というのは資料のどこかについていますけれども、それよりは下げるということです。それよりもっと下げるということですよ。

事務局

参考資料(基礎小17-2)の8ページです。

記者

恐らく、その税率は下がるんです。この制度を選択した場合の贈与税の税率というのは、下がるんですよね。

石会長

下がります。

記者

それとは別個、普通の贈与税の税率というのは残るんですか。

石会長

残ります。

記者

それは残るんですね。この制度を選択したときの贈与税の基礎控除はどうなんですか。

石会長

基礎控除って、どっちの基礎控除? 贈与税の基礎控除?110万円までのやつね。これが生前贈与を促進するか、促進しないか、まだやってみなければわからないという点もあるかもしれないけど、仕掛けとしてはね、贈与税率の段階で含めているし、それから額は自由に、今のところ少し大振りに回してもいいよということを考えていますから、別に基礎控除の5,000万円とか1人 1,000万円の範囲じゃなくて。ただ、最後は同じ額が取られるから、前もってやるのは馬鹿らしいと考える人もいるかもしれない。ただ、自分で贈与財産の税金を一応調整できるというメリットはあるでしょう。特に、承継税制みたいな考えとしては。

事務局

今ですと、贈与税は単一年で取って、最後の相続税とは調整されないですね、基本的に。今ご覧いただいたように、参考資料(基礎小17-2)の8ページにありますように、贈与税というのは、一般的に生前贈与による相続税の課税逃れを防ぐために、今、すごく高く設定されているわけですね。今回の一体化措置では、それを贈与時でも下げますし、それから最終的には相続税と精算するわけですから、今までのように高い贈与税で暦年単位の課税で取りきりとなり、最後の相続税とも精算しないということではなくて、そこは直ちに生前贈与をやっても、贈与税の税率が下がる上に、最後のおしりの段階では相続税と精算がなされるわけですから、それは当然その促進、円滑化に資するということだと思いますけれども。

石会長

どうぞ、他の点ございますか。

記者

ちょっと違う税目の話で、消費税と所得税の控除の話ですが、これまでの基本方針どおりの中身を確認したということ以外に、免税点の水準を下げていくとすれば、どれ位まで下げるのかという具体論の部分なり、それから配偶者控除、配偶者特別控除なりをどんなふうにしてその制度を見直して違ったものにしていくのかという具体論の部分で合意出来ているところがあれば、お聞かせください。

石会長

前段のところは、3,000万も半分にするか、3分の1にするかということは、まだ具体的な幅までは議論しておりませんが、下げる方向で行くという点は合意しています。

それから、配偶者特別控除、あるいは配偶者控除そのものについて、これを見直すならば、これはやはり時間をかけ、それから激変緩和的なものを措置して基礎控除を上げるとか、あるいは歳出面での手当の方で面倒見るのかね。そういうことを踏まえて、いっぺんに急には出来ないだろうということで、これはまさに10、15年の中でのフレームの設定になってくるとは思いますが、これは先行してやるべき項目ですから、他にもまだいろいろやらなきゃいけないことがありますから、何年かわかりませんけれども、具体的な年度をいつかの段階で議論しなければいけないかとは思っています。

記者

今、話が出たのは、免税点と、それから配偶者控除、配偶者特別控除については、制度の見直しのスタートは来年度でよろしいんですか。

石会長

はい。一応提案、これは来年の税制改正の中に配偶者特別控除と特定扶養控除が入っていますから。ただ、配偶者控除そのものについては入っていませんから、それはこれからのまた、次の段階かもしれません。大澤さんの方からは両方やれと、両方やらないと意味がないと言っていますけれども、まあ、これはいずれ、トータルの意味で議論したいと思っています。

他に何かございますか。

記者

またぞろの質問で恐縮なんですけれども、昨日の諮問会議で、民間議員の方から、これは別に政府税調のお考えというか、塩川財務大臣の試案を念頭に置いた発言だと思うんですが、要するに、塩川大臣のお考えの税制改革だと、減税は時限で、増税の方は恒久になるではないかと。それはおかしいということで、今日の諮問会議では、恒久減税をきちんとやるようなご提言をまた出されるというふうに聞いているんですが、この点については、石先生としてはどのようにお考えでしょうか。

石会長

まず、今日の基礎小の議論、あるいは前回の議論では、その問題は一切やっておりません。というのは、我々は今、制度設計でいろんな形で苦慮していますから、関心はもっぱら具体的に制度をどう作るかという議論であります。

それで、今のご質問に対するお答えは、私の個人的な議論になりますが、今日、4議員が出したという議論は聞いておりません。聞いていませんが、小泉さんがおっしゃっている、多年度税収中立で1兆円とかというのを盛り込もうという話ですね、多分。その場合に、減税財源がどうなるかという議論が1つあると思いますが、そこに例えば自然増収を見込むとか、歳出削減での何かを見込むかというのでは、私は前からの持論でありますから、かえって歳出カットをやればデフレ効果的なものが出てくるし、あまりあてにならないものを見込んでやってもしようがないと思っています。

それから、法人税の税率自体については、もう我々は初めからふたをしてありまして、私、個人的には、将来的にはあり得ると思っていますよ、法人税率の引き下げは。しかし、もう過去3年間に9%も下げてきたのに、さしたる効果もないので、これを今、他の税制との比較において--他のという意味は、所得税とか、消費税とかというのは今後上がるだろうと言っているわけですから、法人税だけ下げていいかということについては、税制改革の全体像を見たときには非常に問題であろうということで、私は税率そのものの引き下げについては、かねがね疑問を出しております。一般減税か、特別政策減税かと言っていますが、私はこの間から言っているように、今、3割の企業しか減税にならないよりは、研究開発でも、そういうものでも、分野の問題もありますけれども、赤字法人にも使わせるようなことを考え得るわけです。そっちの方がかえって一般的ではないかと考えていますから、そういった組み合わせですね。

それで、今言ったようなのは、やはり額が決まってですね、何年どうするというやつよりはね、やっぱり中身が決まってその組み合わせの方が重要じゃないですか。だから、年末にかけて私は議論すればいいんだと思っています。だって、来年度税制改革で、仮に1月に戻るとしても、まだ時間がありますから、これから年末にかけて、その辺の塩川プランなり、諮問会議の委員のペーパーについての議論になれば、もしか必要ならば税調でも議論はしたいと思っていますが、正直言って、かなり政治的な問題ですよね。つまり、景気が悪くなる、何かやっぱり必要だろうというアナウンスメント効果を見ての話でしょうから、私はまだ不確定な要素が非常に大きいので、我々が一生懸命やっている制度改正といったようなものとはちょっと分野が違うので、今のところまで時間を割いてやるというところまでは行っていないということです。

よろしゅうございますか。

(以上)