基礎問題小委員会(第16回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成14年8月27日(火)16:10~16:40
〇石会長
それでは、第16回になりますが、基礎問題小委員会が今終わりましたので、概略ご説明いたします。
1カ月ぶりぐらいだったんですが、皆さんと会うのもそのぐらいだと思いますが、非常に活発な議論が行われまして、ちょっと議題を一部削除せざるを得なくて、次回まわしというのもございました。
そこで、まず、諮問会議等々の報告と、それからお手元の資料の中に「税についての対話集会のまとめ(未定稿)」の資料があると思いますが、まだ沖縄が残っておりますけれども、一応4カ所終わりましたので、それの集計が出ております。後ほど御覧いただけたらと思いますが、どういう参加者の内訳であったかとか、あるいは会場アンケートの結果、これは逐次、総括のところで「支持する」、「支持しない」は会場で記者レクのときにご説明しましたが、それ以外の個別の項目につきましても、大体同じような結果が各会場で出ているということはぜひ御覧いただきたいと思います。
この説明をした後で、一応参加した方等々のご意見を伺いましたし、それから、谷口副大臣も(春から)2カ所ご参加いただいていますので、ちょっと感想などをお聞きしました。私自身の総括は、初めは最後の総括の「支持する」、そして「どちらかと言えば支持する」ということが僕は2、3割あればいいかなと考えていたんですが、これが7割ぐらいに上がってきたということの意味ですね。あれはどうしてこういうことなのか等々、いろいろ議論を今日皆に持ちかけ、議論もいたしましたが、結局、私が対話集会で受けた印象は、すべからく減税、減税という、そういうことでは国民の方々も、納税者の方々も、将来を考えたときにそうはならんだろうと。応分の負担をしたい、あるいは支払った税金がちゃんと使われれば、それなりの負担は覚悟するというところの議論がこういう意見に集約されたというふうに理解いたしております。したがって、我々これからやるべきことは、納得づくである程度の負担増に応えていただける、そういう環境を作らざるを得ない。これはまだ長いこれからの恐らく、俗に言われる戦いなのかもしれませんが、それが対話集会を踏まえた私の個人的な結論であります。
もとより、会場に集まられた方は、非常に税に対する関心が高いし、あるいは知識もあるし、ほかの方に比べてですね。したがって、層として限定されているかもしれませんが、しかしそれだけの意識の高い方々の意見として、我々は今後これらの意見を踏まえて議論をしたい。9月3日には、後ほど申し上げますが、俗に言われる塩川大臣の透けて見える、そういう論点メモなどを作るときにも、この対話集会の結果・成果を踏まえて、議論をしたいと考えております。
2,000件ぐらいのサンプルになりますから、そこそこの意見の集約には十分意義がある、統計的にも意義がある、そういうサンプル数ではないかと考えております。
これが対話集会のご報告でございます。
それから、今日、個別の議論としてやりましたことは、結果的に「小泉5項目」という5項目について、対話集会でも意見を聴取しましたし、議論もしましたし、これから9月3日あたりに出す予定の論点整理も、一応この俗に言われます5項目について議論を整理しておりますので、今日はそのうちの3つ、つまり研究開発減税・投資減税が1つ目、それから外形課税が2つ目、それから消費税の免税点制度等々についての議論、この3つを今日やり、次回に配偶者特別控除、特定扶養控除、もう1つ、相続税・贈与税の一元化の問題、こう段取りをつけておりましたが、非常に議論が活発で、消費税の方は、次回まわしにいたしました。久しぶりに集まると皆さんえらい張り切っちゃって、どんどん議論が出ると。こういうことですね。
そこで、最初に試験研究費の方でございますが、お手元に幾つか資料が付されておりますが、法人税関係のところの基礎小16-1、これは後ほど御覧いただきたいと思いますが、試験研究費の現状、それから国際比較等々が載っております。そこで、これについて、我々研究開発減税と設備投資減税、これを1つ大きな項目としてこれから具体的に推していこうというときの本格的な議論を今日始めたといえばそういうことかもしれません。
そこで、どういう議論が出たかということですが、結果的に試験研究費というのは、増額が出たところで改めて税額控除するという感じになっておりますので、このままでいいかどうかですね。これは資料の9ページに出ておりますが、税額控除制度というものは直近5年間の上位3期分の平均値を超えたところで税額控除を行うということになっているが、そういう制度をこれからどう位置づけて、どう改革していこうかと。これについて、やっぱり範囲とか、それから言うなれば、外国ではR&Dといっていますが、その税額控除を受けるための適格性ですね。これは各国の比較がまた13ページに出ておりますが、適格試験研究費なんていう概念もありますように、適格性をどうするかとか、中身の問題も少し詰めなきゃいけないという議論が今日はかなり出ました。それが第1点であります。
それから、第2点としては、増額でやるというより、アメリカが既に始めておりますが、根っこからやるといったような、そういう置きかえが今後必要かなという議論ですね。それから試験研究費の分野を限定するのがいいか、それとも限定的にしないで、広くマーケットに任せてもいいか。あるいは、根っこからといっても、全体に、例えば15%--そんなにいきませんね、根っこからだと。何%か掛けるというのがいいのか、あるいはある基準を作っておいて、その基準を超えたところとの差をどうするかとか、一種の増額になりますけれども、過去ではなくてね、ある政策目標を入れた意味での基準というものを作れると思いますから、それとの絡みにおいて、それを超えた分といったような、いろんな仕組みがあるだろうという形で、これから具体的にその点を議論したいと思います。
今月いっぱいで各省庁からいろんな要望が出てくる、この試験研究費等々の書いてある資料も出てくるわけでありますから、その議論を踏まえたいと思っております。
それから、出来ればの話でありますが、これは政策減税の一種でありますから、その効果を見極めるような分析がどうしても必要になるんではないかという印象を持っております。
これで大半の時間を使いました。
それから、外形課税、これも今日もう1つのビックイシューでございまして、基礎小16-3という資料がございます。これはかつて総務省案、旧自治省案、これが出たときにも使った資料を再整理していただきましたが、今のところ、総務省案、これは5ページでございますが、これに従ってやっていこうという説明があり、これについていろいろ議論がございました。何分にも、戦後まさに50年ぐらい、シャウプ勧告以降、実はこの外形みたいなものを考えて議論しているわけでありまして、委員の中にも、あるいは事務方にも「今度がラストチャンスではないか」という声もあり、政治的にも環境が熟してきた。ちょっと景気の問題はございますが、ここで本格的に導入するべきであるという議論が前提でございます。そこで、2つほど、論点のご説明をしておきますと、1つは、これはもう1つの議論と相反することなんですが、総務省案というのはかなり後退していると、腰砕けていると。例えば、7年後に初めて全部2分の1ずつにするとか、1,000万円未満の赤字零細法人には4万8,000円でいいとか、妥協し過ぎているんじゃないかというので、もうちょっと入れるなら本格的にやった方がいいんじゃないかという意見が片やあると同時に、今度はもう1つ反対の極で、それは赤字法人課税というものに対してのアレルギー、あるいは新たに7割の法人に何らかしらの負担が行くことに対する社会的インパクト、経済的インパクト、これは大きい。そういう意味で、出来れば中小企業は最初は外してもなんていう意見もないことはなかったんですが、そういう2つの議論の間でソフトランディングを図るか、それとも本格的に、言うなれば、筋を通すかという議論があったということです。
それが、2つの議論の紹介です。
それから、日商のデータについていろいろ意見があるけれども、それもちゃんと報告してくれと。これは、言い忘れましたが、法人の実効税率について内閣府が出しました、企業の財務諸表を使ってやるサンプルの法人の実効税負担についても同じような意見が出ました。
それから、税収中立ということが言われていますが、日商のデータ等々の要望というか、そこから9割ぐらいの企業が新たな負担になるというような、そういう議論もあり、税収中立の意味はどうかということで、実は総務省案の根っこにあるのは、平成元年から平成10年までの10年間の平均の税収の水準を確保するための税収中立だということであります。ところが皆さんの期待は直近の税収、これとの税収中立でありますから、恐らくそこで日商側のデータとも食い違ってくるんだと思います。10年というと、バブルがあった頃の税収も含みますから、かなりそれとの関係になると、税収中立の意味が違ってくると、こういうことになろうかと思います。
そういう意味で、一応、総務省案をベースとしつつ、かつこの所得割が半分で、残り半分を付加価値割と資本割だけど、この付加価値割と資本割のところを2対1にやっていますが、これを地方の独自の裁量に任せてもいいんではないかという意見があったり、まだちょっと議論すべきことが残っておりますので、これは本格的に導入に当たっては、再度議論をする必要があるかと思います。そういうわけで、消費税関係は今日は残念ながら時間がなく、飛ばしました。
それで、次回以降の予定でございますが、今週の金曜日、30日、再開第2回目の基礎問題小委員会をやりまして、そこで残った3つの個別のテーマをやっていきたいと思っています。今日の消費税の問題、それから配偶者特別控除などの所得控除の問題、それから相続税・贈与税の一体化の問題、これにつきましてやった後に、9月3日の総会で出します論点整理、俗に言う透けて見えるような格好の論点整理の整理がどこまで出来るかわかりませんが、一応たたき台的なものは用意して、議論に供し、それで3日に備えたいと思っています。
ただし、2日が沖縄での最後の対話集会でございますから、これを全部盛り込んだ形での対話集会の成果を生かすというのは難しかろうと思いますけれども、まあ、私の感じでは、沖縄が入ったからとはいえ、過去の10回分の対話集会の成果、あるいは第2ラウンドの4回分の対話集会の結果がそう大きく変わらないであろうというふうに考えております。
そういう意味で、たまたま小泉5項目というのが、今塩川さんのいろんな発言があったり、諮問会議でもいろんな発言があったり、必ずしも5項目にこだわらない税制改革論議がいっぱい出ていますが、我々、「小泉5項目」という言葉を使わないにしても、ああいう5項目が我々のあるべき姿論の先行すべき税制改革の具体例でありますから、あそこから手がけて、そして11月中旬ぐらいにはもうちょっと骨格がしっかりした、言うなれば、来年度税制改革にも使えるような形のものが出てくればと思っています。それ以降は、来年6月を目処に、中期答申を出しますので、中期的な最後の我々の、言うなれば卒業論文に当たる中期答申の作業に入りたいと考えています。
ちょっと長くなりましたが、以上が今日の説明であります。
〇記者
今日の研究開発、投資減税の議論なんですが、幾つか対立するような意見がそれぞれ出たと。増額にするのか、根っこからなのか、あるいは定義の問題があったそうですが、もう少し詳しく、それぞれの意見を…。
〇石会長
今日はですね、最初の定義とありますから、事務局の方も今言った研究開発投資のこれまでの例えば各省の要望等々まだこれから具体的に上がってくるので、整理はつけていないと思います。
それで、具体的には、アメリカでやっているような形の根っこ型が恐らく今後1つの考え方になってくると思いますが、そうは言っても、具体的に各国で比較いたしますと、研究開発の範囲が大分違うんですよね。例えば、人件費が入るのかどうかとか、委託したそれを入れてもいいのかどうか、企業にとってですよ。あるいは、海外に委託するものまで入れていいかどうか。そういう、言うなれば、範囲なり適格性を少し具体的に資料を出してもらって、日本なら日本に沿ったような形のものを詰めたいと思っています。今日の段階では、そこは急に出た資料請求でもありますので、問題提起に終わったというのが事実だと思いますから、いずれまた具体的な資料で議論する予定です。
〇記者
次に、諮問会議の総理の発言の資料が1枚出ていましたけれども、これにあります多年度税収中立、これについて、委員の皆さんから何か意見は出ませんでしたでしょうか。
〇石会長
出ませんでした。我々の守備範囲の方でいわゆる議論を行ったものですから、多年度で2兆-1兆、というような議論等々は今日はちょっと議題になりませんでしたが、もしかしたら30日、あるいは総会で議論があればしたいとは思いますが。ただ、我々自身が2兆-1兆等々の議論にどこまでコミットすべきか、した方がいいか、その辺もちょっと議論があるところだと思っています。
〇記者
政府と与党の合意では、5項目以外に土地の流動化等ありましたが、これについては。
〇石会長
5項目が骨格となって論点整理したいと思っていますが、当然、「その他」という項目は作りたいと思っています。「その他」の中に何が入るかですが、それは今おっしゃった土地の問題、金融関係の問題、この2つは大きな問題だし、それからやや長期で見たときには、納番の問題もあるでしょう。それから、公益法人の問題もあるかもしれないし。それは今回、11月の段階で整理して、その後の少しやや長期の問題はまた小委員会を立ち上げるか等々して、年明けから本格的に議論したいと思っていますが。5項目以外の大きなものは土地と金融であるというふうにご理解いただいていいと思います。
〇記者
今日の研究開発・投資のところと、それから外形で、何となく方向性というか、皆さんの認識が一致したなというところはどこがあったのかというのをまず教えてください。
〇石会長
研究開発については、やっぱり現状の試験研究費増加分の基準が、今の右肩下がりの経済ではあまり機能しないんじゃないかという意味において、やや根っこ的なところから少し変えてというところが大勢であろうと思いますが。あと1つ、このバリエーションとしては、直近5年間の上位3カ年だけ平均したものを超えたというのではなくて、やるなら、政策減税なんだから、ある狙いから、アメリカなんかでやっていますけれども、ある基準・水準をつくって、それを超えたところでやると。これは一種の増分なんだよ。ただ、過去の惰性でやっているわけではないという意味において違うんですけどね、ただそういう意見もあったという形で、根っこから的な議論が多かったと思います。
それから、外形は、右に左にいろいろ議論は飛び交ったんですが、やはりこれはある意味では、戦後50年もかけてやっていた議論の総決算になる、非常に重要な時期であるという意識において、ソフトランディングというか、導入をまず前提にした形の議論でありました。やや妥協をしているという議論もあったけれども、そういうことだろうと。
ただ、先ほどご説明しなかったけど、外形についての説明が足らんと。外形課税については、対話集会ではかなり見直せという意見が多かったんだけれども、あれは消費者サイドでよくわからないままに、何となく不公平であるとか、赤字法人でも応益原則でいいじゃないかというのが出たと思うので、消費者というものの視点から外形課税をもう1回整理して、議論したらいいじゃないかと。やっぱり、直接払う側の議論だけでは、言うなれば、生産者サイドの議論ばかり見たって困るじゃないかという議論もあり、ただ、いろんな議論はあったけど、税調としては、前回の答申どおり、今いろんな制約も超えつつ、入れる方向で努力しようということに尽きていると思います。
あと、あえて言えば、4万 8,000円という、 1,000万円未満の赤字零細法人に負担をかけるけれども、それ以外の税としてどんなものがあるか。よって、どのぐらいそういった赤字法人に負担をかけていいかというあたりのもう少し精査したデータが欲しいという議論もあり、そういうことにも関心を持っています。
〇記者
あともう1点、細かいところなんですけれども、その他のところで入ってくる金融関係の税制は、主に、金融といってもいろいろ広いんですが、石先生の頭の中ではどういうイメージのものを言っていらっしゃるんでしょうか。
〇石会長
いや、それは塩川さんと僕のイメージは違うかもしれないけれども、いろんな方が言っているのは、証券税制のことが金融の中での議論としてあるんでしょうね。複雑過ぎる、もう少し簡素化出来ないかということ。私などは、どっちかというと、金融所得の一元化ということが頭にありますね。利子配当、キャピタルゲインも含めて。これが例の二元的所得税へ行くかどうかは別としてね、金融所得をもう少しすっきりした形にするのが持論的にはいいのではないかと思っていますから、証券税制も含めて、もう1回再検討してみたいと思ってます。ただ、証券税制は1月から新しく始まるんでね、朝令暮改でも困るんで、その辺、ちょっと苦慮しますね。
〇記者
設備投資と試験研究費の税制のところなんですが、この間出ました2002年の骨太方針がありますよね、6月に諮問会議が出された--諮問会議というか、あれは政府で決定していますけれどもね。あそこで、重点4分野というふうな形で…
〇石会長
ナノとか、環境とか…。
〇記者
バイオとか、ナノとか、それから環境とかいう話なんですよね。そうすると、そういうところに限って税制を進めるということになるのか、先生のお考えではそういうことにこだわらずにもっと広くというお考えなのか、どうなんでしょうか。
〇石会長
試験研究費については、試験研究、R&Dという形において、ある程度広がりを持った試験研究開発というのが認められると思いますが、設備投資については、これは今仮に設備投資減税をしたって、果たして本当に日本経済にとってプラスになるようなものが出てくるとは限らないから、こっちは比較的限定的な、そういう意見が強いし、その意見はそうだろうと思っています。だから、試験研究費と--研究開発投資を試験研究費とすればね、それと一般的な設備投資とは、ちょっとその辺のニュアンスが違ってくるかなという感じはしています。したがって、今言った4分野等々というのは、試験研究ではなくて、設備投資か、そっちの方に話が及ぶのではないかと思います。
〇記者
試験研究費ですね。これは、基準・水準を超えたら、その分についての減税というんですか。この基準・水準というのは、先生の頭ではどのぐらいのところなんですか。
〇石会長
そういう意見が1つあったので紹介したんですが、おっしゃるとおり、基準・水準を決めるのはやはり大変ですよ。決められないから直近5年間の上位3年をやったなんていうのが過去の経緯でありますからね。それはでも過去の話だから、将来、このぐらいの水準のものが欲しいとか何とかって具体的に出ればね、僕はそういう意味で今日多数の人が言っていたようにやっぱり根っこから、そこはニュートラルにやるという議論の方が客観性を保てると思いますが、基準・水準の議論というのはアメリカにもありますので、ちょっと議論の中には加えたいと、このようには考えています。
〇記者
それと、一応これは来年度税制なんですけれども、時限立法というんですか、何年度までとかそこら辺の…。
〇石会長
そこまでまだ議論しておりませんが、よく時限立法でやるか、恒久的にやるかという議論がありますけれども。僕は個人的に、恒久と言ったってあるところに来たら税制改正をやって減らしたり、増やしたりするし、時限と言ったって、当分の間と言っていつまでもやっているのもあるし、僕はあまり意味ないと思っているんだな、皆さんは非常に関心をお持ちかもしれないけど。だから、あまり時限だあれだなんて言ったって、3年と言ったって延びる場合もあるしね、恒久と言ったってあるとき途端にやめる場合もあるんでね、それは税の世界では、税の理屈では僕はあまり区別はそう気にしていません。
〇記者
多年度税収中立という考え方で塩川大臣はおっしゃっていますけれども、これはちょっと増税した場合、そのバランスをとるのに私もちょっと質問したんですけれども、時限立法で増税を何年までで、この辺になったらこの辺で打ち切るとか、そんな器用に出来るものかなというのがありまして…。
〇石会長
全くそう思いますね。ただ、塩川大臣は、あれはおれの個人的な発言だとしきりに私の顔を見て言っていますから、我々の税調を説得しているかどうかとは思っていないのかもしれないけど。ただ、1兆ぐらいの規模のやつで、先行だ、多年度だ等々、10兆円ならまだ話はわかるけどね、1兆ぐらいの話でやっているのも、減税玉、増税玉がなくなってきたという証拠じゃないですか。そういう意味では、税制も随分使い過ぎたというべきか、いろんな施策にね。そんな印象を持ちますけどね。ただ、政治的にはかなりインパクトのある話だし、あるいは研究開発みたいに限定的にパンチの効いたところで何かある方向が決まれば、政治的には僕は意味があると思いますけれども。ただ、僕は個人的に言っていますけれども、1兆円というのは財政にとっては大変重要な資金なんですよ。ただ、GDP500兆円の経済にとっては大したことないんだよね。その辺の1兆円の重みも考えるべき時期かもしれないと思います。
〇記者
先ほどの10兆円というのは、たとえの話ですか。
〇石会長
10兆円議論するんなら、大いにやりましょうと。先行減税も、多年度減税もいろいろ。僕はそれはアイロニーから言っているので、そんな今時、皆さんだって思わないでしょう。昔、村山さんのとき以降、10兆円ぐらい減税していますよ、平成4年、8年等々。そういう良き時代は過ぎたなという意味で言っているので、これをもう1回やろうなんていうことは皆さんも思わないし、僕も思っていませんよ。お話の1つの例です。
〇記者
その1兆円というのは、ネットでのお話なんですか。それとも、単純に…。
〇石会長
1兆でも、2兆でも大したことないじゃないですか。ネットで2兆-1兆、1兆-2兆なんて議論していますけどね。だって皆さん、具体的に何で1兆円確保する? 増税をね。2兆円減税何でやるか? 本当に2兆円減税してみると大変だよ、今。定率減税このままで置いておいて所得税減税もないでしょう。それから、消費税に手つけるという勇猛果敢な議論もあるけれども、これは多数じゃないね。あと法人税だけだよね。
そこでいろいろもめているんだけど、あれも1兆、あるいは超える何兆という議論でありますから、そういう意味ではあれですね、なかなか財政出動の一環としての減税というのも玉がなくなってきたというのは僕が繰り返して言っていることですよ。これは余談であります。
〇記者
法人税の税率下げの話というのは、今日は全然出なかったんでしょうか。
〇石会長
今日はね、5項目の中の研究開発投資の議論に限定しましたから今、世の中で言われている税率下げか研究開発かという二者選択の議論は意図してやらなかったのか、あるいは忘れていたのか知りませんが、今日は一切税率の引き下げの議論は出ませんでした。ただし、例の法人税の実効税率の国際比較があって、例の日本が40%の議論のときに、1人の人が、相変わらず日本は地方税が重いと、地方の法人関係が重いという議論に対して、アメリカのケースはカリフォルニアのケースであって、ニューヨークの場合はもっと高くなるよなんていう議論があったりね。そのとき税率を下げる、下げないの議論が間接的にあったというだけで、今、来年度税制改正で諮問会議が言っているような、3%下げろ、5%下げろという議論と研究開発投資どっちがいいかという議論は起きませんでしたが。我々の前提は、研究開発投資、外形、これが法人税関係の施策であるという意味において、今日は直接に引下げの是非の議論はしませんでした。ということは、あまり委員の方の中には引下げの方の議論について考えがそっちに行っていないのかもしれない。しかし、議論すれば出てくるかもしれませんけどね。
〇記者
もう1点は、研究開発の投資のところなんですが、これを実際にやるとすると租税特別措置の1項目ということになると思うんですが…。
〇石会長
今、 350億円ぐらいのやつですね。だから、それをトータルで発展的に拡大していくのか。それから、中小企業の設備投資減税みたいなのがあって、それとの絡みでどうなるか。それから、私は何といっても、租税特別措置を大幅に統廃合する形の中で、広い意味での研究開発投資・設備投資の減税をやらないと意味がないと思っていますから、それはまた別の議論として大きいんですよね。
〇記者
お尋ねしたかったのは、統廃合でなくしていく方向の租特がきちんとあるという前提のもとで、あるべき税制と整合性をとるという考え方でいいのかどうかというところをお尋ねしたかったんですが。
〇石会長
それはね、租特を見てみますとね、幾つか項目があって、私なんぞはこんなの十把一絡げで全廃だなんて勇ましく言うけどさ、事務当局にすると、そんなに勇ましいことをやると大変らしいね。例えば、租特の項目としてですね、18ページを見てください。そこに20項目ぐらい並んでいるでしょう。基礎小16-1の20ページに企業関係の設備投資減税の租特の減収額2,920億円、これが並んでいますよ。それで、大半がこの中小企業投資促進税制で、他は10億円だ、20億円だ、ちまちましたのがいっぱいあるじゃないですか。私なんかは100億円以下はもう全部全廃でなんていう勇ましいことを言うけどね、この10億円とか20億円が非常に命綱で頑張っているところもあると、そうは言えないという議論があったりね。これから議論しますけど、なかなかメスを振うのは難しいかもしれません。ただ、こういう細かいものを整理していて、研究開発投資みたいな大きなくくりでやるのが僕は筋と思っていますから、そうでないと、一般的な意味での減税にはならないと思います。
(以上)