基礎問題小委員会(第15回)後の石会長記者会見の模様
平成14年5月21日(火)
〇石会長
今日15回目になりますが、基礎問題小委員会が終わりましたのでご報告いたします。今日は個別の税まで触れましたので、これをベースにいたしまして24日の総会に再度税調としての態度を固めたいと思っています。そういう意味で、今日はこれまで残っておりました「国と地方の関係」、それから「エネルギー関係諸税」、「酒・たばこ」、「租特」等々全部で3時間かけまして議論をしてまいりました。当然のこと、いくつか議論はあったのですが、今日は最初の国と地方に関しましては、地方分権改革推進委員会の神野さんと吉田さんにご説明いただきました。お手元に15-1と15-2と資料が出ておりますように、お二人の立場から地方分権の課題をご説明いただきました。これはお読みいただければいいと思いますが、それを受けての議論でございますが、基本的に、税調としては様々な条件が揃うまでに、その前に国から地方に税源移譲するのは問題が多いという意味のご発言が圧倒的でございまして、その意味は、例えば市町村合併であるとか歳出の見直しであるとか、そういうことがなくては、恐らく、税源を移譲しても効果は上がらないだろうということですね。そういう意味で、当然方向としては条件さえ満ちればという前提でございますが、若干、現時点においては難しかろうということが1つ。第2は、国庫支出金を、国と地方の税源の財源に先ずしようという声が強いのに対して、税調としては、やはり地方交付税ではないかと考えているわけですね。これは、ずーっと前からの議論ではございますが、言うなれば、今の過度の財源調整が市町村合併の促進の妨げになっているというのもございますし、高すぎるナショナル・ミニマムの水準の問題もあるし、根っこはそこであると、吉田さんの言葉を使えば、市町村の中で9割は交付団体だということは、まさにそこが問題であって、試験をして9割が落第だということはそもそも試験問題が悪いという意味において、今の地方交付税制度が悪いのではないかという議論がありますように、地方交付税について大きな問題があるという認識を持ちました。細かい点では、インセンティブという、つまり税源を移譲して、行政サービスを地方自治体に移譲すると、恐らく地方行政サービスの効率化に資してインセンティブになるのではないかということもありましたし、留保財源の問題もインセンティブに絡めて議論できるのではないかという議論、それから歳出見直しといったときには、本格的に警察とか教員とかそういうところに具体的に切り込まないと歳出のカットはできないので、その辺も議論しなければいけないだろうし、今後、国も地方も今は借金だらけであって貧乏人同士が言うなれば財源の取り合いをしてもしょうがない。将来的に何らかの形で国も地方も税を引き上げるならば、やはり受益と負担がリンクした形、つまり地方でいえば社会保障、対人サービス、典型的なものは介護ですね、これはまさに地方の仕事ですから、地方に税源を与えて対人サービスに努めさせるという意味で、社会保障というものが大幅に地方に税源共々、税源共々というか増税等々をする時期があれば、仕事の見直しと共に一緒に移ればいいではないかと。仮に国であれば、福祉目的税的な意味で交付税ということを考えたらいいのではないかというご発言が主流でございました。そういう意味で地方分権の大きな流れに沿って、様々な機構改革をしなければならないということについては、大賛成でありますが、法定外税につきましてもかなり議論いたしましたけれども、今ある法定外租税あるいは目的税につきましては、かなり問題有りとつまり他府県から来る人にかけるとか、企業だけ狙い撃ちだということについて問題があるという意識を我々は持っておりました。これが国と地方の関係であります。
エネルギー関係諸税につきましては、環境税絡みの話もあって、かなり問題があるという認識をしております。ただ、政府税調は一貫して道路特定財源の一般財源化ということは長年の主張でございまして、これを更に促進すべきであるという議論が、まさに我々の言うなれば多数、全員の意見になりますが、問題はそれを環境税ということに組み替えるという議論、これも当然にしていこうということでありますが、認識として環境税を議論する環境はまだ満ちてないのではないかと、例えば、京都議定書の話もありますけれども、ロシアとか北米が参加しない中で、京都議定書等々に対して参加することの不公平感ですね、これは非常に大きいものがでてこようかと。それが恐らく環境税の創設等々にも議論として跳ね返るのではないかという気もされるということがございます。
酒の方でありますが、この間も申し上げましたように、酒の資料をご覧いただきますと、15-9で国際比較しているところがございますが、8ページですが、「欧米諸国の酒税制度の概要」を見ていただきますと、大体4つ5つから多いところでも7つ8つぐらいの酒の税率になっておりまして、これがひとつ国際的なスタンダード、ただ国によってですね、りんご酒が別掲されたり、あるいはワインでも発泡性ワインと普通のワイン、ぶどう酒ですね、が分けられていたりという形で色々ございますが、醸造酒、蒸留酒その他等々3つぐらいプラスアルファぐらいで簡素化していくという視点で酒を考えたらいいんじゃないかという点については前からそういう意見でございましたし、既存の制度のみ取り扱って、そこで発泡酒の問題と絡みますけれども、本体のビールとの高低を考える等々の議論というよりはもうチョット今言ったような、全体の括りということを整理するのが非常に重要ではないかという議論がやはり我々の多数の意見だろうと思います。発泡酒に関しましては恐らく、これからもまた年末にかけて議論になると思いますが、昨年も発泡酒に関しまして、我々はもう4割を超えてくるような状況になり、雑酒という形でかけてること自体、税の世界ではおかしい。従って、もう少し踏み込んだ形で例えば、何年か後に、ビール本体と一緒にするつまり差を無くすという議論を当然、時限を区切ってやるような、少し踏み込んだ形の議論が望ましいではないかというご意見が強くでておりまして、その通りであろうと思われます。
租特につきましては、あまりにも細かくなりすぎておりますし、これは統合化していくべきであるという議論ですね。これは昨年の10月に、資料にでておりますが、私が3つか5つの原則を挙げたりして、できれば見直しの視点としてこうやりたいと、もっと理想的に言えば全廃して、復活するものだけ再査定した方がいいだろうという話でございますが、その議論ですね。再度確認したということです。
投資減税、研究開発税制と色々ございますが、租特に全部入っておりますが、集中と選択という視点から、新しいことをやるなら、今言った、もともとあって余り役に立っていないというと語弊があるかもしれませんが、効果を挙げてないものについて再度、全部整理する、例えば中小企業特例の投資特例というのは2,000億円ぐらい出ておりますが、果たしてそれがどれだけ有効に使われているか等の議論ですね、これも踏まえてこの辺は処理しなければいけないだろうという議論であります。
あと残った、たばこについては余り議論はされませんでしたが、例えばさっきの15の9で14ページを見ていただくと、諸外国の紙巻たばこの動向が出ておりまして、かなり最近欧米で上げているという事態もあったりして、この議論はこれからもう少し詰めなければいけないと思っております。
今後の予定ですが、5月24日の総会でこれまで3回ありました基礎問題小委員会の内容を紹介して、総会の中で税調全体としての意見の集約を図って、そこで6月中旬を目途にしております、中間の主要論点のまとめに入りたいと思います。まとめ方については、起草委員会といった大げさなもので本格的にやることは、年度改正でもありませんし、考えておりません。できたら、基礎問題小委員会全体を使うわけでありますが、言うなれば会長、会長代理の助けになってもらうべくインフォーマルな格好で起草会合みたいな格好で、最後主要論点はまとめていきたいと考えております。通常、起草に入ると全部クローズになりますが、会合という形で行い、そのあと記者会見をするといった少しフレキシブルに取り扱いたいと考えております。
〇記者
国と地方の関係ですけれども、今日のこのあとの経済財政諮問会議で片山総務大臣から5兆5,000億円の案、地方消費税を2%上げるとか、これについてはどのようにお考えでしょうか。
〇石会長
今日はその問題は時間が前後して、税調には報告はございませんでした。ただその前に内閣府でやりました、7兆円の移譲等の議論はありましたね。それについては、資料も出されておりまして、それについて、国から地方に税源が流れるのはどうかということでいろんな問題が出たわけでございまして、基本的にはそういうことをやる前に、先程申し上げたような歳出見直しであれ、地方交付税の見直しであれ、様々あるじゃないかとこういう視点の主張でございますし、それから、移すべき税源として住民税と地方消費税を挙げておりますけれども、これも問題ではないかという議論もございました。そういう意味で、今日の片山総務大臣の報告をいずれまた、次の総会でご紹介いただこうと思っておりますけれども、それについては、聞く所によると地方交付税ではなくて国庫支出金であろうという話のようですが、これは問題ではないかという議論が当然出てくるかと思います。
〇記者
酒税ですが、3区分プラスアルファということですが。
〇石会長
それはまだわかりません。今は10種類ですから、少しまとめていきたいということですね。私は、理想的には3種類ぐらいがいいかと思いますが。
〇記者
起草会合ですけれども、いつ頃からどのようなスケジュールで行われるのですか。
〇石会長
総会が終わるのが、5月24日と考えておりますから、その段階で恐らく、俗に我々が言っております、項目だけ出したような形のものを、この間確か法人税・所得税を終わったときに出しました、あのぐらいの形のものを出来たらまとめて出したいと思っておりますので、それに文章をつけた形で書きたいと思っています。ですから、6月に入りますから何回で終わるかわかりませんけれども、数回やって中旬目途ぐらいに公表する段取りにしたいと思います。蔵相会議前ぐらいには終わらせたいと思っております。
〇記者
経済財政諮問会議と政府税調、財務省の基本的な考え方、スタンスのことですけれども、最近また所得税、法人税の税率構造見直しの問題ですとか、減税財源をめぐる議論とか、対立点があるように見えるのですが、今後の基本方針取りまとめに向けての議論がどのように収斂していくかということについて何か。
〇石会長
今日、「平成の税制改革」と銘打つペーパーが諮問会議に出されると、昨日の新聞で出ておりましたし、今日入手いたしました。見たところ、今言った税率引き下げなんて書いてないじゃないですか、それから、他のものも一応一通り見ましたけれども、基本的に、竹中大臣とも本間議員ともしょっちゅう議論しておりますとおり、大枠についてはあのとおりだと思いますよ。基本的な方向についてはそんなに違和感を持っておりません。そういう意味で、今後共通の土俵で議論できると思ってますし、我々だって活性化ということはよく言っているわけでありまして、中立と活性化とこの間の諮問会議ではっきり我々合意に達しておりますから、あの流れの方向で議論をやることについては、抵抗感もないし、そこで細かく詰めていくという段取りなのかと思っております。
〇記者
たばこ税についてですが、持ち越しということですが、特に議論自体も全然なかったということですが。
〇石会長
お1人からかなり長目の時間を使って、御意見・御説明がございましたが、ちょっと問題ではないかと私は思いますが、たばこはこれから恐らく酒とたばこは、対になって議論をしたいと思うし、しなければいけないかと考えております。
〇記者
かねてから会長ご自身は、たばこは上げる方向でいいのではないかと、個人の考えとしてはおっしゃっておられますが、今日の議論では。
〇石会長
議論の分かれ目は結局、たばこというものは担税物質であって、たばこ事業法第1条か何かにですね、ちゃんとその財源というか税源というかそれを育てつつ、言うなれば、健全なる税収にしましょうということがあるので、そもそも健康に害するとか、環境税的扱いについては根っこから今のたばこ税は、相容れないという議論ですよね。だから、議論するならそこから含めて、そもそも昔と違って今は随分たばこに対する健康意識も高まってきたし、WHO等のいろんな外の動きもあるし、随分環境が変わったので、いつまでも健康を害するものに税源を頼ってもいいかどうかという、大事な議論も必要だと思っていますので、それは恐らく今後、まさにたばこ産業の盛衰に関わる場として議論しなければと思っております。
〇記者
諮問会議では、所得税・法人税の税率引下げについて議論されるようですが、会長は税率引下げについてはどのようにお考えですか。
〇石会長
今日はその辺も詰めて議論しようと思いますけれども、これから高齢化社会が到来するし、これだけの財政の借金を抱えているわけで、やはり広く薄く負担してもらわなければいけない、皆で痛みを分かち合う、これは中長期的に見れば誰も否定できない問題だと思いますよね。問題は薄くといった時に、税率を下げるのかという議論に即きますけれども、所得税の世界においては、小渕内閣以降の、小渕内閣のときにとったいわゆる50%の最高税率を下げてしまって37%であるような、10%のところの第一所得区分に、8割の給与所得者が入ってしまうという大きな税率緩和をしましたから、私は、個人的には税率の調整はついているのだと思います。ただ、諮問会議が広く薄くの薄くを、今後どういう形でやられるのか、これはちょっと見てみなければいけないかと思いますが、課税最低限を引き下げて上のほうを中心に税率を下げる、上しか下げようがないと思いますが、そのときに私はこれで言うなれば、高額所得者優遇で課税最低限引き下げの大衆課税であるということの議論に耐えかねるかどうかということは税調としても議論しなければいけないと思っています。金持ち優遇税制のレッテルが貼られては今後、いろんなことについて難しいと思いますから。ただ、法人税の世界は、国税と地方税を併せての議論がございますから、これは外形標準課税の問題もこれありでね、その辺は色々議論の余地があろうかと思ってます。
〇記者
エネルギー関係諸税の中で、道路財源の一般財源化を更に促進して欲しいと言うことですが、暫定の税率の問題については。
〇石会長
今日は暫定税率まで発言される方はいませんけれど暗黙の前提として、恐らく、一般財源化するとすぐ減税しろと言うことになりがちだけれども、そういう声にめげずに、暫定税率のものも例えば環境税に振り替えてもらうということについては、国民の税負担に変化がないわけですから、これはこれで充分に我々としては、政治的に難しかろうが、推進すべき立場であるということを言っても問題はない、要するに、我々の委員会の意見を変な風に紹介していないと思いますから、それはそれで一般財源化して暫定税率に直す時にはそれに振り替えると、政治的には難しかろうが、我々はそれを主張するということになろうと思います。
〇記者
税率を引き下げずに課税最低限を引き下げるのは増税につながるのでは。
〇石会長
ここで数回説明しておりますけれども、1つ考え得るのは他の基礎控除を含めて控除のほうを少し膨らませて計上するということと、それから本当に必要な方については歳出面で面倒を見るべきだと思っております。そこで非常に重税感があってまさに皆で痛みを分かち合おうといっても痛みに耐えかねる人もいるわけで、それは当然のこと私は歳出面で手当てすべきものだと思っております。ただ問題はこの間も説明しましたように大きな所得控除を丸ごと、一挙に削ってしまうのは不可能だと思いますから、それは縮減の方向ですよ。自ずから程度問題というのはこれからの色んな議論の中でやるべきであろうと思っていますが、おっしゃる通り、10%の最低税率を5%に下げるということは、私共はやろうとは考えておりませんから、下のほうの者を税率で面倒見るということは私は不可能だと思っております。そういう意味において、他の所得控除等への振り替えプラス歳出面というのが、穏当なスタイルではないかと、それとの兼ね合いにおいて、大物の所得控除を全部一挙にやるなんてことは土台無理ですから、それは徐々にやっていくしかないだろうと考えてます。小泉さんの内閣の方針は、歳出カットを思い切ってやるということと同時に選択と集中で、必要なところ、つまり税を使うよりは歳出を使った方が特定の分野、特定の者、特定の色んなものについては効率的なんですよ、そういう発想を持っております。
〇記者
酒税なんですが、簡素化の方向でやると大衆増税の方向にならざるを得ないという気がするのですが。
〇石会長
それは判らない。色々組み合わせがありえますから。例えば発泡酒を上げるときに本体のビールをどうするかという議論も残るでしょう。この間、ウィスキーと焼酎は一体化しましたけどね。大衆課税になるかどうか全体を見渡してみなきゃわかりませんけれど、とにかく括ってみて入りと出をちょっと見てという形になると思いますがね、そこは。あまりにも今、例えば、発泡酒というやつはビールですよ、雑酒を飲んでいるわけではないでしょう。そういう世界で現行の制度が非常に問題ありと思ってますので、そこを整理したいと思っています。結果として規模がどうなるか、その時に考えたいと思います。
(以上)