第14回基礎問題小委員会後の石会長記者会見の模様

平成14年5月14日

石会長

それでは、今日の14回目になりますが、基礎問題小委員会ご報告致します。だいぶ大詰めになってまいりまして、残るは来週の21日、これは、国と地方の関係、酒、たばこ、エネルギー課税等ありますが、その前段という形で、残ったところを整理しました。今日は3つほど大きなテーマを採り上げましたが、1つが所得税の2元的所得税論、金融課税税制ですね、これが1点、それから、相続・贈与の世界で、法的な裏付けという意味で、民法的な議論もしてまいりました。これが2つ目ですね。3つ目が土地税制に関してであります。租税特別措置はやる予定でしたが今日も時間切れでまた後段に残しました。お手元にいくつか資料がいっていると思いますのでご覧いただけたらと思います。今日は最初に委員の2人、神田、水野両委員から金融商品に関する課税、あるいは2元的所得税論に関する議論を10分ずつ頂きまして、その後、事務局の資料に則しまして議論をいたしました。そこで、注目すべきことは、北欧の2元的所得税論の実態を踏まえて、わが国でどういう議論ができるかという点に専ら関心が集まったのですが、14-3という説明資料がございます。ここに、現在、北欧でやっております2元的所得税論の実態が述べられておりまして、水野、神田両先生の議論を受け継いで、仮にこういう制度をわが国に移したらというシミュレーションというか頭の整理をしたというのが実態でございます。どういうことかと言いますと、2ページ目を見ていただきますと、一番基本的な仕組みが分かりますが、勤労所得と資本所得、時々、金融所得ということをおっしゃいますが、2元的所得税論の場合は、金融所得ではなくて、やはり資産性所得、あるいは資本所得が正しい概念でしょう。というのは、金融だけがキャピタルゲインではなくて、土地がらみのキャピタルゲインも入ってくるわけですから、資本所得という幅広い、言うなれば、資産性所得としてとらえる方が勤労性所得に対応する概念としては正しい。つまり、日本でいう10種類の所得を2つに分けるということですから、当然のこと金融所得だけでは、勤労所得に対応する概念としては狭すぎます。そういうことでございます。仮に2つに分けたとして、資本所得の方には勤労所得の最低税率と法人税率を言うなれば、これに対応させて、勤労所得の方は累進税率を適用するという典型的な北欧のスタイル、これは、ある程度理論的に整理されたものであります。そこで資本所得の概念として利子、配当、株、土地のキャピタルゲイン等、こちらは、賃金、給与、フリンジベネフィット等が入っているわけです。実際はどうなっているかというと、3ページを見ていただきますと各国の例が出ておりますが、最近、必ずしも勤労所得に対する最低税率が資本所得の方の税率に対応していないというケースもございます。スウェーデンが31対30、ノルウェーが28対28これは合ってます。フィンランドが若干ずれていますし、デンマークに至っては株式所得の方は累進税率になっております。そういう意味でフラットではないということで、ちょっと違った形になっておりますが、こういう格好のものを頭に描きつつ、わが国でどうしようかという議論のご紹介をいたしますと、いくつか議論が出たんですが、我々税調は戦後一貫して総合課税に最終的なゴールを目指して、総合課税という旗を振ってきたんですね。しかし、納番もないし、把握も非常に難しいという意味で分離課税を利子とか配当とかキャピタルゲインに認めてきたと、これをどうするのかというのが、長年の我々の議論であったわけであります。やはり、まだ、そこのところは議論が煮詰まっておりませんで、2元的所得税論に対する批判は、なぜ2つにしなければいけないのかという2元の2の意味ですね、それから実際に所得を2分割するのは難しかろうという実際的な問題、これは今10種類の所得を厳密に分けるのは、資料の6ページにございますが、これを結局2分割するわけです。11番目に金融所得とか資本所得がくるわけじゃなくて、この10個のものを仕分けするというわけですから括る前に必要経費、様々な所得控除等を通ってから括るということにならざるを得ませんので、今と実態がどう違うのか、という議論もあるわけですね。今、勤労所得は総合課税になってますが、他の資本所得関係はかなり分離課税で、そして源泉です。実態面からみてどれだけの改善の余地があるのかという議論もございました。それからIT化というのが進んだ今ですね、昔よりは総合課税というのは、容易になったのではないか、納番の問題が解決すればですが、そういう議論もございまして、まだ今日は議論をしようと、金融小委等で詳細に議論しようというところで受け止めたという形であります。いずれにいたしましても、これを本格的にやるとすると、かなり本腰を入れて議論を詰めていかなければいけない。実務面でも、理論面でもと思っております。今日はあまり議論がでなかったんですが、片方が低い税率で片方が高い税率になりますと、その垣根を飛び越えて、いうなれば勤労所得が資本所得化するという、大きな流れも言われております。日本の場合困るのは、最低税率が10%ですから勤労所得の10%に資本所得をあてるわけには多分いかないでしょう。法人税率も国税は30%ですから、資本性所得に対応する税率をどこにしようかという時に法人税率と、現在ある個人所得の最低税率の乖離が激しすぎますので、北欧みたいにすんなりした形にいかない。日本型の2元的所得税にするにしても、この辺の議論はかなり詰めなきゃいけないので、やるといっても十分な準備が必要だろうと考えております。そういう意味で今日は総合課税をあくまで目指すべきか、一里塚として2元的所得税を議論すべきかというのは議論がかなり分かれましたけれども、一体化してある方向というのはまだ時期尚早であるというまとめでよろしいのではないかと思います。

それから、相続・贈与の方は俗に言われます均分相続ということもあって、民法的な裏付け、相続法というものをどう理解し、税法の世界にどうくっつけるかということが大きなテーマでございました。そこでお手元に資料があると思いますが、早稲田大学の教授の岩志教授に来て頂きまして、被相続人による財産の処分、相続人の貢献と相続法という形で20分ほどご議論いただきまして、それに則しまして議論をいたしました。相続ひとつとっても、税の世界と民法の世界というのはだいぶ違いますよね。ここにいくつか、重要な論点が書いてございますが、我々よく老後の高齢者の方を面倒見た、介護した、看取ったその人たちに相続というのを手厚くできないかと、端的に言うと息子の嫁ですね、お嫁さんにある高齢者が非常にお世話になったと、しかし、お嫁さんには相続財産権はないですね。それをどうにかできないかということで、岩志先生の1ページ目の下以降に親の扶養、相続・贈与のことも議論いただきましたが、やはり相続の世界というのはかなり2ページ目の上に書いていますように難しいので、要扶養状態の必要性というのは、財産があったら要扶養状態じゃないんですね。要するに介護等、マーケットの原理で介護してもらえる。だから本来、要扶養状態になったら財産がないということになるから、本当に世話になった人に財産はないんです。だから相続できないんですよ。そういうことも我々学びました。そういう意味で、今後、民法の方の世界とですね、どうドッキングするかということで、かなり議論いたしました。そこで相続・贈与の世界は一元化していきたい。現在は相続税の世界に3年間の贈与の世界が絡み合っているわけで、言うなれば、もっとはっきり言えば、1回ごとに贈与が終わってしまう。それが相続に跳ね返るという余地は非常に少ないわけですね。そういう意味で、今後、だいぶ前にやりましたが、一元化してやっていきたい。その時は10年間という形か生涯累積でやるのか、これはまだ議論していませんが、今日議論になったのはですね、税務行政に耐えられるのかどうかということですね。今、贈与税の申告件数は40万件、相続税の世界では被相続人の世界で5万人、相続を受ける方では13万人。今日、事務局の話では前向きに考えて、納番がなくても帳簿の保存、今、税の世界で7年、商法で10年ですか、資料さえ整えてもらえれば、10年間ぐらいのデータが合えば、今言った、一元化して贈与と相続をニュートラルにできるのではないかという議論もいたしました。これを今後詰めていきたいと思います。民法の世界の相続とはだいぶ相続税の世界は違うという印象を受けましたので、今後これを詰めていかなければいけないと考えています。それから後、相続税の世界で残っているいくつかの問題があって、相続税・贈与税メモというのがあると思いますが、下の囲みは、これまで議論が行われご説明いたしました。今日は民法・相続との関係で今ご説明した民法の専門家をお呼びしてご議論を致しました。執行面の問題、信託の問題、物納・延納の問題こういう議論をいたしました。資料に入っておりますし、時間も押しておりまして、資料の説明を受けたというので終わりました。

第3番目の問題、土地税制でありますが、これは資料の14-8ですね、特にお目通し頂きたいのは2ページ目です。これは私が特に要望してこの資料の議論をもう1回してもらったんですが、よく不動産関係の方とか、建築業関係の方々から言うと今ある土地税制というのは、バブル期に作ったペナルティー的な重い税負担をかけるような税制が続いていると、これが地価を相変わらず引き下げる、あるいは、土地取引が活性化しないという大きな問題であって、直して欲しいと。何人かの方々ら要望を受けたので本当かどうか、調べてもらいたいということで、土地税制の推移というのを作ってもらいました。これはバブル期前、昭和57年あたり、土地税制改革が現に行われた平成3年、それから現在という形でございます。端的にいうと、地価税は創設したけど、課税停止になっているし、土地の譲渡益課税というのは、ほぼ、バブル期の前以下になってると、例えば長期の個人の譲渡益課税というのはバブル期前は4,000万円で区切って前半は20%で後半を39%まで上げたんですね、住民税入れましてね、それが今26%まで下がってます。法人に関しましては、例の短期の投機的な取引を阻止するという意味で5年超、5年以下、2年以下なんてやりまして、追加課税をやりましたが、これも課税停止しております。国税の領域ではバブル期にペナルティー的にやった重課は完全にとれてると思います。地方税の方も次の3ページ見ていただきまして、だいぶなおってるというか、そうなっています。比較が難しいので出ておりませんが、不動産取得税、固定資産税というのは固定資産評価額でやってこれがコンスタントに上がるような仕組みになっておりますから、つまり、地価公示価格の7割にしようと言ったのを着実に追っかけておりますから、これは上がってますんで、ここは重いというのはバブル期に比べてあるかもしれません。これが土地税制に関しての議論でございます。まぁ、登録免許税が重いという話がございますが、登録免許税に関しては課税標準の特例3分の1というのが入っておりますから、実効税率で見ますと、税率は5%ですが、かなり引き下げられているというのが事実であります。

というわけで今日は3つの論点を取り上げました。そして、残った問題は来週の基礎小で議論したいと思いますが、来週、ちょうど1週間後になりますが21日に基礎小で、残った、国と地方の関係、あるいは個別消費税の世界に入ります、酒、たばこ、エネルギー関係諸税等を議論したいと考えております。それを受けて今月末に総会を開き、総会でまた過去3回やりました基礎問題小委員会の論点整理メモを出して、いずれにしてもまとめる方向に入れるかと考えております。今日やりましたことは以上であります。先に見通し等につきましては、ご質問があればできる範囲でお答えしたいと思います。

記者

では、幹事からお伺いいたします。まず最初のテーマとして二元的所得税のところですが、このテーマについては今後どのような検討をスケジュールで臨まれますか。

石会長

あの今資料でもお示しいたしましたように導入している国は北欧とオランダくらいで、そういっては何ですが小国なんですよね。それでこの国はいずれも国民負担率が7割を超えているようなそれに近いような国でありまして日本と事情が違うということと所得税のウエイトが非常に高い国なんです。資料等で見ていただきますとお分かりいただけますように入れた経緯はですねインフレ期で低貯蓄という時代に、累進税率を総合課税で広く資産性所得をいじめてましたからそれを一挙に20%とか30%下げたということで貯蓄率が上がっていると思います。そういう経緯があった国と今日本がどういう状態になっているかということを比較しなければいけないとうことが一つ。それから、日本は先程申し上げましたように法人税率とそれから個人所得税率の最低税率が北欧がやっているような意味での2元的所得税とあいませんからこれをどういうふうにかませるかということ。それから10項目ある所得分類を実際にどうやって2つに括って行くかということ。仮にやるとしてですよ。それから仕切りを作ったとしても、飛び越えてくる所得があるわけです。まあ端的に言えば勤労所得をキャピタルゲインに変えて、こっちで安くするということは現に行われてるし、それはあきらかに今度は北欧でもそういう問題がある。というわけで少し技術的に金融小でもいずれ立てて、やっぱり中長期的な課題になると思います。今度秋に出す時にもやっぱりじっくり腰を落ち着けてやらなければならない問題のうちの一つだと思っています。納番も含めて議論しなければいけませんから。そういう段取を考えています。

記者

経済財政諮問会議の中間整理のところで、この金融所得の一括課税ということでいちおう検討項目の所に入っていますけど、政府税調としては・・

会長

同じような取扱いでいいと思います。諮問会議もそう今年中とか来年にできるとは思われてないと思いますからこれは相談しながらこの辺は詰めていきたいと考えています。

記者

それと相続・贈与税のところですが、税務当局の対応としては、10年間くらいなら帳簿等で対応できるかという議論もあったようですけれどもそういう点を考えると生涯累積課税というよりはやはり一定期間という方向になるのでしょうか。

会長

10年間で区切るというのと年齢で70くらいになったらもういいんじゃないかという説とかいろいろあってですねこれを議論しなければいけませんけれども、実際的には生涯累積課税というのは、実務上かなり難しいと思いますね。一生涯ですからね。そういう意味で確か10年やってたフランスですね。そういうのが現実的かなと思います。これもやはり私は納番が必要だと思います。まあ納番がなくても帳簿保存があってそれでやれるということであればそっちからやっていくべきだろうと思ってますので。これもそう簡単ではないと思っています。今言った民法との関係もあったりですね、相続・贈与のニュートラルということもあって、どう仕組むかということですが、やはりこれは税の基本でございますし、もう戦後一貫して同じ相続税法で贈与税が来てますから、そろそろ21世紀になったんで、税の構造改革という意味ではこれやはり、2元的所得税の是非と同じような形で大きく真剣に採り上げたいと思っています。

記者

それから土地税制ですが、与党のデフレ対策案では、登免税、不動産取得税の軽減というのが一つ柱で上がっていますけれども、今日の議論ではその辺実効税率も下がってると・・

会長

今日は最後のほう時間がなかったので、実際の減税要望にどう応えるかという議論はございませんでした。ただ過去の一連の経緯を見ると、地価税も廃止したし、キャピタルゲイン課税も下げてきた。これはバブルの時かなり上乗せしたやつを全部今取っ払って、それからなおかつ地価の動向に部分的ないろんなばらつきが見えてきたようでありますが、一貫してそれだけ税負担を下げてきたにもかかわらず地価の上昇が見られないという意味で、税からのてこ入れというものの効果、これについて税調は一貫して疑問であります。特に財源の問題もあると思います。それから先程申し上げた5%という登録免許税も、実効税率のベースでいうと1%くらいなんですね。3分の1というのを入れますとね。手数料というのはだいたい2、3%で売り手と買い手取られてますから、そういうことを考えますと税以外の問題でもあるだろうと思います。しかし現にどういう要望が出てくるかということに沿ってやりたいと思いますが、我々から主体的にこれとこれを下げて地価対策になるという発想はそもそも持っておりませんので、この辺は慎重に議論が進むと思います。

記者

先ほどお聞きした中で固定資産税は若干検討する余地があると言うふうに・・・・

石会長

これはですね、さっきの図で見てですね、固定資産税だけバブル前、バブルの頂点、現在というような3つに時期を区分して、税率の変遷を追っかけるというのはそもそも無理なんですね。あれはご存知のようにある時期に地価公示の7割水準を目指して課税標準上げましょうということをやって追っかけてるわけですから、ある意味ではあのとき7割に一挙に上げちゃって、その後年々の地価に合わせてやっていけば今見たいな批判はなかったかもしれません。おそらくあの時7割に上げてればひっくり返っちゃったでしょうね。世の中は。今後、今年かな、来年ですか3年ごとの見直しは、来年ですね。その時にどういう形で固定資産税の仕組みを従来の延長でやるのか、少しそこを変えるのかこれは御議論いただくことになろうかと思います。ちょっとまだスタンスが決まっていないんじゃないのかと思います。

記者

では、各社お願いします。

記者

相続・贈与なんですけれども、これ以前もお伺いしたかもしれませんけれども、かなり難しく時間がかかるというご認識ですが、それまでの間に経過措置だとか言う形でですね、優遇措置というのは、考えてはいらっしゃらないのでしょうか。

会長

これもこれからの議論だと思います。何度も申し上げてるように税制の長期的な視点から見れば、あるべき姿論からやるとしてですね、具体的な仕組みがまだできないという中で先取り的に例えば贈与税の110万円、これを何倍にするだとか、1000万円単位に引き上げるかという議論は、ちょっと税の仕組みとして、現在難しいと思いますが、その議論が大幅に出てきたときには、その効果も含めて、生前贈与して1400兆円ある個人金融資産が仮に若者に移ったとして、これがどれだけ貯蓄に回るかというあたりも疑問だし、その点について議論は拒むものではありませんが、慎重に議論したいと思う。今言った相続税と贈与税の一元化というものができない段階で、まったく関係ないんですよね、今の相続税と贈与税は。したがって生前贈与と言ったって全く関係ない世界で起こる話でありますから、おそらく相続税の世界が、課税最低限の額にもよるでしょうけど、壊滅的な打撃を受けるということになると、資産の再分配効果等と我が国の税制のあり方として、どう考えるかという議論とも絡んできますから、それは議論はしますけれども、今後どういう形で問題提起されるかというのを見てから、それはやはり規模の問題でしょう。それから効果の問題でしょう。それは議論したいと思っています。あれですか、与党税調ですか、言っているのは、与党税調ですかね。何か出てくる可能性はあるかもしれませんね。

記者

2元的な課税論なんですが、できないというか難しい側面はご説明いただいたんですが、やるべきだという方でどういうメリットなり時代に合わせるという意味でやるべきだというふうに。

石会長

私はやるべき論者なんですけど、総合課税は難しかろうという現実的な判断がみなさん、2元的所得論者の中にあります。何が一番問題かというと、キャピタルゲイン、利子、配当含めて、資本性所得と言うのは例えば、累進税率の最高税率にもよりますけれど、税引き収益率、これが例えば最高税率が50%になると半分になるんです。だから、どこの国も分離課税かなんかで逃げるという余地を作るわけですよね。かたや、資産性所得は不労所得であるというイメージがあってこれを優遇するのは金持ち優遇課税であると、これは各国、全部批判されているわけです。現実的に総合課税やりますと、キャピタルフライトが確実に起きますね。そういう意味でキャピタルフライトを阻止しながらもある一定の課税を資本所得にしたいといったときには、2つに分ける。ということは僕は1つの方法として現実的な妥協策としてあると思います。それを総合課税への一里塚と見るか、それをファイナルなゴールとみるか、これ議論が分かれます。出来れば、総合課税ということに夢をもっていろいろ納番もつくり、IT化も進んできたらやるということもあるので、一挙にできなければ、途中の段階でもいいのではないかという議論も当然成り立ちますので、一歩づつやっていこうと。特に、日本の場合には利子もキャピタルゲインも金融所得とは言いつつばらばらにやられています。今日神田先生の話でも、ばらばらで恣意的でパッチワークであるというご説明もたびたび受けて、やはりそうなると、金融所得というカテゴリーで括るのがいいだろう。私はそれを資本所得と言い換えてますから、それは僕はメリットだと思います。それでできれば、金融所得の中でのいろんな通算的なこともできる範囲でやるのはやってもいいし、そういう世界をイメージするのは悪くない。メリット論だと思います。ただ、今現実的に源泉分離でかなりいろんなことをやってますから、日本は。そのメリット、一番いいメリットはあれでしょう、10%に入る人も20%の利子、負担しているんですよ。利子課税というのはある意味では非常に重い。ある意味では。それをどうするかという議論かたやあるでしょうし、いろんな総合的な議論をしなければならないと思います。

記者

最終的な取りまとめの時期ですが、塩川大臣はサミット前にという希望があるようですけど、6月中旬ぐらいが目途になるんでしょうか。

石会長

今の我々のスケジュールで、我々の努力次第ですけど、6月の中旬ぐらいを目途にしたいと思っています。今度は、ある基本的な方向を主要な税目について整理すると、なぜ今税制改革かというそもそも論を前文につけたような格好でね。もっとカチッとしたのは秋になると思いますから、今まで、だいぶ詰めてきましたし、主要論点メモは皆さんにお渡ししてますので、ああいう領域なら中旬にはまとまるかなと思ってます。

記者

また相続・贈与に戻って恐縮なんですが、今日、事務当局の方から10年であれば納番がなくてもいけるんじゃないかというお話があったそうなんですが、ということはこれについては、割と、まぁ来年とはいいませんが、近いうちに実現できる可能性があるということなんでしょうか。

石会長

私も確認したんですけど、数ですね、40万件とか、13万件とか、5万件とかいう数字を見て、帳簿保存と並べてやればできないことはないだろうと言う意味で、前向きに検討すると言う意味で検討しておるということですから。ただ、執行情勢から言ってですね、いつとは限定できないと思います。何せ、他の所得税、法人税に比べ数が少ないですから、可能性はあるんじゃないんですか、と思いますけどね。

記者

すると、相続・贈与をニュートラルにして仕組む場合には、当然、贈与の方の税率が下がってきてということなんでしょうか。

石会長

一体化ですよ、イメージはね。今日、民法の先生にも聞いたけど、相続と贈与というのは、ある意味では一体化した概念で、要するに死んだ時に遺贈するわけですね。民法上は贈与というのは相続・遺贈の前払いであるという概念から言えば、税法の世界でも仕組めるわけですよ。ただ、今、切っちゃってますからね、過去3年分しか入らないわけですよ、贈与税の支払った部分が調整されるのは3年ですか、これを10年にするとか、15年にするということは理論的にあり得て、その期間であればいつやろうがニュートラルな贈与・相続というのは可能だと思います。その方がすっきりすると思います。それは、ある意味では2元的所得税等よりはピッチを上げて議論し、法律で仕組むというのはできるかもしれない。

記者

やる場合には課税ベースの方は広がっていくイメージになるんでしょうか。

石会長

課税ベースというのは今あるやつですか。

記者

今の基礎控除を縮小するとか。

石会長

あるいは、税率をどうするかとかいうことですか。それは一体でやらなくてはダメでしょうね。それから、おっしゃるのはあれですか、土地だとか動産、証券とか課税物件の話ですか。

それは、今の5,000万と1000万づつはどうかという議論ですね。それにも響くし、相続税の最高税率の70%も非常に高いと我々は思ってますし、その辺で、課税ベースを広げて、税率を下げるというのを議論の中に入れてね、できればと思います。

(以上)