基礎問題小委員会(第24回)後の石会長記者会見及び非営利法人課税WG(第6回)後水野座長記者会見の模様

日時:平成15年3月14日(金)16:28~16:57

石会長

それでは、今日は24回目になりますが、基礎問題小委員会開催いたしましたので、その状況を説明いたしたいと思います。

大きなテーマは、基礎問題小委員会に関しては2つございました。1つは、社会保障審議会の清家先生、慶応大学の清家先生をお呼びいたしまして、このお手元にある資料、「生涯現役社会のための税制」という形で、特に高齢化社会対就業構造等々含めてどうなるかという点、30分ほどお話しいただきまして、その後、大変活発な議論がございました。内容は後ほどご紹介いたします。

それから、2つ目はですね、この6月に中期答申をまとめるわけですが、少子高齢化と税制というのは非常に大きなテーマになると思います。そこで、過去にですね、税調としてどんな議論をしたかということを事務局にまとめてもらいまして、これが税制調査会の主な課題になったという、次の冊子になっているかと思います。

3番目、この基礎問題小委員会の説明が終わってから、この例の非営利法人課税のワーキンググループの状況、その後の状況につきまして、水野座長からご説明いただくことにいたします。

清家先生のお話は、いろいろな著書から既にうかがえることでありますが、キャッチフレーズは生涯現役社会というものをどうやって構築するかということに尽きております。生涯現役社会というのはですね、今の日本にございます年功序列とか終身雇用とかですね、そういうものを取っ払ってですね、働く能力があり、働く気力のある人はどんどん働いてもらって、言うなれば、年金の方も、給付側ではなくて拠出側に回ってもらうといったような色彩まで入っているわけであります。その背後にはですね、今の年金制度が拠出制度で、積み立てから拠出になって、これだけ大きな人口の構成上の問題が起こったときに、まさに今の積立方式でない賦課方式ではもたないだろうと。そうなると、その対象になる就業構造等々を変えなきゃいけないだろうと、こういう発想でありまして、非常に説得力のあるお話であったと思います。

ここにレジュメが出ておりますから、さっと見ていただけれはわかると思いますし、また後ろに幾つか表が出ておりますから、かなり専門にわたった議論でございましたが、そういうところを見ていただけたらと思っております。

かいつまんで申しますと、どこの国も高齢化が進んでいる。特に、ヨーロッパと日本は進んでいるわけでありますが、日本の大きなアドバンテージは、非常に就業意欲が強いということなんですね。ほかの国に比べて。まあ、これはテーブル1に出ておりますが、圧倒的に高齢者の、60~64歳までの方々の就業の意欲が強い。特に、フランスあたりと比べると、圧倒的に強いわけですね。そういうのを生かせばですね、単に年金生活者になっちゃって、そのままずるずると社会に参画しないという格好ではない方がいいだろうというのがご持論でございます。そういうわけで、いろんな雇用慣行、あるいはそれとの絡みで、言うならば年金、それから退職金の問題等々もすべからく絡んでくるという議論になってくるわけであります。

幾つか重要な論点をいただきましたが、それに対して我々も直接清家先生に質問いたしまして、議論いたしました。生涯現役であるというときにはですね、かなり社会的に越えなきゃならない壁があるわけですね。それで、フロアからの1つの質問としては、政策面においてですね、どういう点が一番大きな壁かねということで議論が出たときに、賃金制度そのもののですね、今あるやり方ではもたないだろうと。つまり、今はですね、一家の主である男性1人が、言うなれば奥さん入れて子供2人の扶養家族3人、合計で言うと4人支えるための賃金を会社で払っておると。これからはですね、生涯現役になったら、どんどん賃金のコストが高まって、会社がもたない。そういう意味では、恐らく奥さんの方も働くだろうし、18歳になったら子供も独立するだろうしといったような形のですね、言うなれば社会になっていかないとだめだと。しかしこれは、日本の慣行が根強い中で、なかなか難しかろうと。それが1つの壁だと。

それから、もう1つの壁はですね、やっぱり年齢主義、エイジズムといいますか、年齢主義ですね。これをなかなか日本社会は乗り越えられないのではないかと。アメリカは年齢差別禁止という形をモードにいたしておりますから、定年制はございませんが、要するに、年齢とともに地位も上がり、あるいは給与水準も上がるといったような社会の仕組み自体をですね、そう簡単には能力主義一本では絞り切れないだろうと。この2つの壁であるという点について、お話しいただき、そうかなという感じを受けました。

さはさりながら、フロアの方からですね、定年をなくして高齢者の方に従来どおり働いてもらうという社会はですね、若者にとっては機会を奪われるという意味で非常に問題じゃないかという問題提起もあり、その辺幾つか討議があり、非常に今日は充実した議論になったと思います。

それから、年金制度そのものについてもですね、それは積立方式に移行した方がはるかに、今言ったような就業構造自体の大きな変革を実施しないでいいじゃないかという議論もございましたし、そうは言ってもですね、その辺の積立方式を一気に、ご存じのように二重の負担がある世代に出ていますから、これは難しいかろうというような議論も片やあったということであります。

そういうわけで、この生涯現役社会についての認識が随分深まりましたけれども、これを現実に移し変えていくまでには、随分労働の慣行とかですね、退職金制度そのものの問題とか税制もあって、いろいろ問題があるという認識を深めました。

それから、後段の、過去の税調のさまざまな議論を総整理した中で、今後我々どういう格好で議論していくかということですね。やはり長期の青写真というものをちゃんと立てないと、社会的な安心は得られにくいだろうという点、この強調もございましたし、それから、今当然のことながらですね、税制問題としては、所得税の問題、消費税の問題が絡んでいると。それから、政治的にはですね、消費税というものは大分先になると。政治的にはですよ。

たしか平成19年以降、つまり2007年度以降じゃないかというような議論もあって、我々としては、その問題については、一挙にそっちに持っていけないということになるとですね、2段階論法で、第1段階としては、例の所得税の課税の縮減という意味において、さまざまな控除がございますね。福祉関係の控除。公的年金等控除もありますし、老年者控除もありますし、それから幾つかある勤労学生控除を含め、そういうところをですね、やはりきちんと所得税の体系を見直すという形でやっていくしかないだろうと。

第2段階としてですね、経済界で将来的には15%消費税率であるとか19%とか出ておりますが、それとは与しないにしても、将来的に、要は、福祉目的税といったものの是非を本格的に議論するといったことをしなければいけないんじゃないかという議論をやってきました。それから、高齢化と少子化というのはやっぱり分けて議論しなきゃいけないんじゃないかと。つまり、高齢化、あるいは少子化があるわけでありますが、ただ政策面、あるいは税制面での対応ということになりますと、高齢化の対応と少子化の対応はもとから違ってまいりますね。そういった意味で、ひとつ分けて議論するのが筋ではなかろうかという議論も大分今日いたしました。

そこで、最後に、今後の予定の方なんですが、4月に入りましてから、少しピッチを上げたいと考えております。当面、最初にやることは、来週の火曜日の3月18日、総会を開いて、2月4日と今日やりました基礎問題小委員会の論点を整理してですね、総会で一応ご審議をいただき、オーケーのサインをいただきたいと思っております。

それから、4月に入りましてから、基礎問題小委員会、例えば4月1日と4月8日を考えておりまして、スピードを上げつつですね、この高齢化の問題、それから所得税そのもののあり方をですね、高齢化とひっくるめて議論しなきゃいけないこともあると思いますので、委員の中からその専門家をピックアップして専門のお話を聞こうと。

それから、追々しなきゃいけないと思っているものとして、環境税の問題がありますので、税そのものに入るよりは、地球温暖化という視点や切り口でこれから議論も進めていきたい。それから、金融小委員会、これもかねてより開かなければと思っておりました。証券税制、金融税制の問題、それから納税者番号の問題、幾つかございますので、4月に入りましてから、この金融小を立ち上げていきたいと考えております。

それから、5月の連休に、中期答申をにらんでのことでございますが、海外の調査を2チームぐらい出してですね、一応1週間ぐらいの日程でございますが、税制と社会保障の問題、それから証券・金融税制の問題、それから納番も含みますけれども、そういう問題を北米と北欧、この2カ所で、委員の方はこじんまりと2人ずつぐらいで、事務局がついていくという格好で、見てきたいと考えています。これは、あくまで今までやっている議論をさらにですね、海外の実態を踏まえつつ深めたいということと、それから中期答申の1つの柱になるのではないかと、このように考えています。

それでは、今日、非営利法人課税ワーキンググループの方の報告がございましたので、水野さん、簡単にご説明ください。。

水野座長

非営利法人課税ワーキンググループ、前回のレクチャーのときに、いろいろ基本的な考え方、取りまとめのお話をいたしましたのですが、本日は、ご承知のように、前回、3月11日のワーキンググループが中止になりましたので、その経緯についてご説明することになりました。

結局、内閣官房の行政改革推進事務局の方で、法人制度について見直しを行いたいということになりまして、ワーキンググループの方の作業を少し中断していただきたいという申し入れがありましたので、その旨につきまして、基礎問題小委員会でご報告いたしました。

つけ加えますと、その小委員会の後にワーキンググループの会合を開きまして、内閣官房の行政改革推進事務局の小山室長に来ていただいて、どういう経緯でこの法人制度の見直しになったかということにつきまして、ご説明を受けました。今後としましては、行政改革推進事務局の法人制度の見直し、これが新しいといいますか、見直しができ上がった段階で、税制の検討を進めたいと思っております。

また、これは1年前、昨年の3月に閣議決定して、大綱を出すということになっておりますので、そんなに遅くならない時期に再開したいと思っております。

以上です。

記者

まず、非営利法人課税の方なんですけれども、できるだけ早い時期に再開したいということですけれども、もちろん推進事務局の方の見直しが終わらないとということなんでしょうけれども、今日何かその時期的な目処とか、何か説明ありましたでしょうか。その見直しのですね。

水野座長

そういう質問は当然出ましたんですけれども、委員の間から。ちょっと、今のところ検討というのは失礼ですが、そうすぐには結論は出ないと。1週間やそこらでは出る問題ではないということですね。

石会長

極めてお役所的な答弁があったということです。

水野座長

厳密に申しますと、可及的速やかにというお答えがあったということです。

記者

それで、NPO法人課税について、いろいろこの間議論が各方面から出ているんですけれども、水野座長としては、NPO法人課税を原則課税とすべきか、原則非課税を維持すべきと、どちらが望ましいとお考えでしょうか。

水野座長

私、この委員会の場で何度も申し上げましたけれども、原則課税、原則非課税というのは非常にミスリーディングな言葉なので、使わないということにしているわけですね。ですので、今のようなご質問をすること自体には、私はお答えできません。私がやろうとしているのは、どういう要件のもとに非課税を、あるいは優遇税制を認めるかと、そういうような検討をするのであって、原則課税、原則非課税の議論、それは空中戦に終わるから何の意味もないということです。ですから、どういうような要件のもとで検討するかということについては、ほぼこの間お話ししましたように、大体もう方向は出ていると私は思っております。

記者

NPO法人課税について、石会長はどのようにお考えでしょうか。

石会長

今回ですね、要するに土俵が崩れたと思っているわけですよ。公益法人とNPO法人と中間法人を1つにまとめて課税を原則ということを何回か言われました。そこが崩れてしまった以上ですね、恐らくは公益法人と中間法人とを括っていますけれども、これも分解の可能性もありますよね。そういう意味で、従来どおりこの3つ、おのおの、別々に課税の議論というのはできるんでありまして、その段階でNPO法人というのはまさにほかの公益法人、中間法人と違いますから、そういう意味で別途議論があり得ると思いますし、我々そもそもNPO法人については、いろんな条件を変えてですね、少し税負担を弱めようという形でこれまで議論してきていましたからね。そういう関連で言えば、我々が従来必要としていた方向の議論というのは、そのまま生きてくるんではないかと思いますがね。

記者

全然話は変わるんですけれども、今の株安を受けて、与党から不良債権処理の支援政策ですね。昨年もそういう議論があったんですけれども、繰戻し還付の凍結…。

石会長

銀行のですか。

記者

はい。それについて、何か税調の…。

石会長

まだ議題に上っておりません。議題に上っていないし、審議案件にも上っておりません。そういう意味で、今のところ、何か特別な事情があって飛び込むという以外にはですね、その問題を真正面に取り上げるということは考えておりません。が、いずれまた、流動的ですから、どうなるかわからないけど。

記者

大型連休のときの調査団ですけれども、これと2つテーマがあって、税制と社会保障と、それから証券・金融税制ですね。これは、北米、北欧で区分けということなんでしょうか。

石会長

いや、今考えております国は、カナダとアメリカと、それからデンマークとスウェーデンだっけ。いずれもですね、この両方のテーマに適した国なんですよ。そういう意味で、時間の許す限りですね、方々駆け回ってですね、社会保障と税制というテーマも、それから金融・証券税制、納番絡みの話もですね、これはもう北欧と北米は対照的な点もございますが、両方、その4つの国で、できる限り専門家に会って議論を深めてきたいと、こう考えています。

記者

非営利法人課税の件なんですが、行革事務局の説明を解釈すると、行革大綱というのは14年度中を目途にまとめるということになっていますが、その見通しが立たないというのは、もう3月中に向こうの見直し案がまとまるということは考えにくいと理解してよろしいんでしょうか。4月以降になると…。

水野座長

その点についても、推進事務局の方からお答えありまして、「役人的な言葉を言えば、「目途」と書いてありますから」と、こういうご返事でしたですね。

石会長

4月でいいということですよ。と理解しましたけど。

記者

石会長に伺いますが、非営利法人課税の話ですけれども、こういう経緯によって土俵が崩れたということなんですが、これについて、ご不満というものはあるんでしょうか。

石会長

あのですね、今日委員の中から、かなり強烈な不満が出ました。というのは、1年間一生懸命やってきたわけですね、内閣府の方は。それががたがたと崩れたのはね、要するに政治的な、言うなれば役所対政党の間の関係で、情報の交換等々が十分になかったんではないかという話もあってですね、どうなっちゃっているんだということについては、あるいは私も同意見ですね。そういう意味では、我々としてはね、ボールが、そう言っては悪いんだけれども、外から投げ込まれたわけですよ。そのボールを受けとめようと思って一生懸命ワーキングで議論してきたわけですけどね、投げた方が今度は、ワイルドピッチか何か知らんけど、ボールを再度投げていたボールを持ち直してもう1回仕切り直したりするわけでしょう。我々としても、土台が狂ったという意味において、課税の議論だけならばできますよ。しかし、そうは言ったって、NPOなり、公益法人なり、ちゃんとした土台に基づいて課税の議論をしたいと思いますから、それを非営利といったような新しい概念で括られたことについてね、我々はやっぱり向こうの土台をしっかりしてもらってから再度議論したいと考えています。そういう意味では、いささか不満であるということは事実で、正直なところですね。

記者

2点あるんですけれども、その非営利法人絡みで、事務局の方からは、見直しはいつまでとかは言わないまでも、見直しの方向ですか、申し入れから言うとNPOを一旦除外するんだと思うんですが、そういう方向についての話があったのかということが1点と、それから先ほどおっしゃっていた少子化と高齢化を税制面の政策面では分けて考えるべきだというのは、もうちょっと具体的イメージで、どういうことなんでしょうか。

石会長

自民党のまとめたペーパーって、配ってあるよね。資料に入っていますよね。したがって、3項目か何か並んでおりまして、とりあえず公益法人、これからやると。それで、NPOとはちょっと分けてやろうということがはっきり書いてあるわけですね。そういう意味で、俗に言われます財団・社団法人の公益法人についていろいろな問題が出されていますから、そこを税絡みの話としてやるという順序。それが終わると、その後にNPOが来たり、そのほかいろんなものが来るんでしょう。そういう意味では、その出発点は重要でありますけれども、その全体の像がまだ見えていないんですよね。だから、とりあえず公益法人を最初にやるというふうに我々は理解しました。

それから、高齢化と少子化はですね、所得税の世界で言うならば、まさに福祉絡み、高齢者絡みの控除が幾つかありますね。公的年金等控除もそうだし、老年者控除もそうだし、それから社会保険料控除をどうするかという議論がありますね。それから、少子化の方は、この間阿藤さんのときに大分議論したんですけれども、何といっても、少子化を食いとめるような措置が政策的にできないかという、そういう話ですね。

そこで、そうなると、児童手当の問題とか児童控除の問題とか、いろいろ税であるか、歳出面でやるか等々問題が出てきます。そういう意味で、税としてどれぐらいのことが効果的にできるかどうか、これから高齢化と違った視点で議論をしたいということです。

先ほどちょっと言い忘れましたけれども、要するに、高齢者間での所得再分配というものは出てくるんですね、これから多分。その立場でかなり格差がついてくる世界でありますから。それをやはり税率をちゃんと適用して再分配する方がいいんじゃないか、あるいは公的年金控除と所得控除、これをコンバインしたような格好で処理できるんじゃないかといった今日ご提案もありまして、これから少しその辺も理論的に詰めてですね、議論はしたいと思っています。

記者

先ほど幹事社からも質問がありました、不良債権処理支援税制のことなんですけれども、まだ議題に考えていないという理由はですね、別段税調に対して要請がないからということなのか、あるいはそういった対策はこの3月危機と言われている中で出てくるメニューとして検討しても即効性がないというか、余り効果が期待できないという、そういう理由からなんでしょうか。

石会長

両方ありますね。直接、まだ何も外から来ない。暮れあたりに1回金融庁から何かあったかもしれませんが、今回の株価の急落受けてですね、税でどうかという議論は今のところ出ておりません。ご存じのように、金融面での措置がいろいろ言われているということですね。

それから、水面下ではいろいろ、不良債権処理、あるいは銀行のさまざまな財務状況から見て、損失の繰戻しがどうであるとか等々の議論は巷に上っておりますが、本格的に検討してくれという議論は外からもないし、それから中からもそういう問題がまだ出てきておりません。

それで、3月中に、あと何回やるのかな。3月中にはですね、総会をやるだけで、今のところこういうことをやる、詰めた議論をする基礎問題小委員会は4月1日を考えておりますので、その3月危機ということについて、時間的に切迫して何かやるというところの体制はまだできていません。ただ、事態が流動的になって、いろいろ投げかければ、それに対する備えは我々もしておかなきゃいけないと思っていますけれども、問題意識としては、目下のところ、我々から打って出てこうこうというところまでは行っていないというのが正直なところだと思います。

記者

同様に、法人税、所得税というようなことを言う方もいるんですけれども、法人税、所得税の減税。これは、税調としてはともかく、会長ご自身の見解としては、どういうふうに思われるでしょうか。

石会長

今、一般会計でも、ご存じのように半分近くがもう借金で、減税もですね、法人税については1兆余来年度から入っていますからね。まあ、これ以上財源的にできるのかできないのか、国債バブルと言われている世界でさらに国債を出すような形で減税財源を用意するのかということについては、これは私は税調自体としては、議論として、それを積極的に押していくのは難しかろうと思います。それと財源の問題と、それから今のですね、株価、俗に言われる株価対策に、減税がどれだけ役に立つかということについては、我々一同、非常に懐疑的だと思いますね。株安はイラクの問題の影響の方が強いと思っていますから。減税であるとか、公共投資であるとか、従来型のもので即効性という意味合いでは何かあるのかもしれませんが、恐らく大きなものは期待できないというような意見で一致していると思います。

記者

先ほどの非営利法人課税の話になっちゃうんですけれども、確かに自民党の申し入れの中では、NPOを1回排除してという方向だと思うんですけれども、石先生としては、税の面から見てですね、やはりこういう方向で検討し直した方がいいというふうなお考えなんでしょうか。

石会長

やっぱりね、例の民法34条かな、社団・財団法人とNPOと中間法人、やっぱり僕はね、性格は全然違うと思いますよ。その成り立ちも、歴史的背景も、それから規模も。それを十把一からげに非営利という形で税を仕組むというのは、非常に私は問題だと思います。特に、NPOについてはですね、別に堀田さんがいるから支援しているわけではないんで、それなりに社会的に期待感があるわけですよね。だから、そういう意味で、ほかのいろんな問題を投げかけているような民法法人と一緒に議論するのは非常に難しかろうとかねがね思っていましたから、そういう意味では、今回、自民党がですね、最後から3つ目に書いてありますが、「NPO法人については非営利法人として最初から一括りとすることはせず、新たな非営利法人制度の動向を見据えた段階で(議論しよう)」と、こういうことを言っておりますから、このことには私は個人的にはそうかなと思っています。

あとは、公益法人と中間法人がまた一括りになって議論ができるかどうかという問題も残るかとは思いますがね。それよりまあ、いろいろ残っている法人もいっぱいあるわけですよね。宗教法人、学校法人に社会福祉法人等々ありますから、そういうもの全体的な構図が描けない中で、あるところだけピックアップしてというのは難しかろうと思いますが、NPO法人でも特に難しいかと思いますが、だから公益法人そのものについては、いろいろ問題も提起されていますから、それはそれで十分に議論を今の段階でやる価値はあると思いますね。

記者

その点なんですけれども、そうすると、そもそも論として、やはり公益法人、非営利法人課税を考える意味では、やはり宗教法人とか、学校法人とか、福祉法人をひっくるめて、そもそもの議論というものをするべきだというふうなお考えなんでしょうか。

石会長

将来的にはあり得ると思いますね。僕個人的には、生協・農協も含めてあると思いますよ、そういう議論は。だから、そういう大きな括りがあった中で、第一歩としてこういうことをやるというふうな位置づけがあれば皆さん議論しやすいと思いますけどね、今のところ、今回の非営利法人というのは3つだけ括って、あとは全然わからんよという形で始めていますから、かなり議論が混乱したんだと思いますね。

記者

少子化・高齢化の方なんですけれども、所得税、消費税の2段階論というのはこれまでもおっしゃっていたと思うんですけれども、石先生の中では、このタイムスパンというのは、1段階目、2段階目というのは、どういう意味なんでしょうか。

石会長

それは、僕が言ったんじゃなくて、とある人が言ったというのが正確だと思いますが、ただね、今申し上げているように、消費税の引き上げそのものは小泉総理も否定をされておりますし、3年間ぐらいなんておっしゃっているようなことも言っていますから、恐らくその縛りが解けるまでの間として、かねがね我々の念頭にあります所得税の改革、その中で、結果として控除の整理をしますと、税収も出てきますね。ただ、それだけで十分とは思いませんから、いずれにいたしましても、数年やった後で消費税アップというような議論は避けて通れないと思いますね。それは、恐らく、これから数年後というぐらいのタイムスパンで見ていくしかないし、その段階で税率が5が一体一挙に2ケタになるのか、中間に何か置くのかそういう議論と、それから福祉目的税的な問題の是非の問題があるかどうか。その辺の議論は、これからの詰めにかかっていると思いますが、6月の中期答申においてはですね、どこまで書き込めるか、これから皆さんと議論したいと思っています。

(以上)