第8回基礎問題小委員会 議事録

平成14年3月19日開催

委員

それでは、時間になりましたので、第8回基礎問題小委員会、開会の運びにいたしたいと思います。

きょうは、財務省の谷口副大臣がお見えでございます。それから吉田大臣政務官も30分ほど遅れてお見えとのことでございます。谷口さん、どうぞ途中でご発言を期待しております。

きょうは、メインは水野忠恒さんと中里さんのプレゼンテーションがございます。その前に、私のほうから経済財政諮問会議に出席したときの模様、それから昨日、第1回目の税についての対話集会が行われましたので、それについてのご報告と、2つ、まず簡単にご報告してから本論に入りたいと考えております。

かねがね、政府税調と経済財政諮問会議、この間の言うなればブリッジをかける必要があるということで、機会あれば、私、参加したいと申しておりましたところ、3月8日に、税制改革を議論するから、税調の雰囲気を教えてくれと、あるいは何が問題なのかを説明してくれということで参加してまいりました。トータルで1時間ぐらいの時間の中に、私と、それから地方分権改革推進会議の西室さんがいて、税制改革と地方分権の話があり、急に話題が増えたところがありまして、10分ぐらいしか時間をいただけませんでした。

そこで私が申し上げたのは、税調の一般的なスケジュールの話のほかに2つ大きな論点があって、1つは、税の議論をするときには、中長期的から見た構造改革との関連、もう一つは、短期面から見たデフレ対策としての税制があるだろうと。しかし、あくまで我々は第一の中長期的な視点で、日本の経済構造が変わった中で税制がどう対応するかという視点が重要であろうという形で、我々、ここでやっておりますようなことをご紹介し、税の空洞化みたいな議論もいたしました。

さはさりながら、第2のデフレ対策と税についてどう考えるかということも当然議論にもなっておりましたし、我々としてはどう考えるかということで、基本的にいえば、慎重に対応しなければいけないと。つまり、過去10年間ぐらいの相次ぐ減税の効果がどうあったか、あるいは、今デフレ対策として言われている需要喚起型の税制の仕組み、何を具体的に使えばいいかわからんだろうと。それから、減税財源は赤字国債になれば、当然のこと、国債価格にはね返り長期金利にはね返るというマクロ的な意味でのデフレ効果を誘発しやすいから、そういう点からいえば、慎重にやはり行動しなければいけないだろうと。

ただ、最後に申し上げたのは、活力ということを一生懸命、諮問会議がおっしゃってますから、その活力を税制と結びつけてどうするかというときには、おそらく、課税ベースを広げて税率を下げれば、課税ベースを広げることによって公平・中立・簡素ができるし、活力のほうは税率を下げることでできるだろうと。こっちでやるべきで、相続税などはまだそういう余地があるのではないかとかちょっと申し上げたら、そこがえらく針小棒大に報道されたようであります。

そこで、そういうことで自由にいろいろ議論いたしましたが、その後議事録が出まして、それをベースにしていろいろ報道がなされておりますが、千葉での対話集会のときもそうでありますが、マスコミの報道というのはやはりコンフリクトがあるように書きますから、当然のこと、諮問会議と政府税調は対立してないと記事にならないような気がしますね。記事からすると。

ただ、私が出席した感じにおきましては、やはり諮問会議の先生方全部、一応構造改革の視点から税をとらえなければいけないということはある程度コンセンサスがあるのですよね。さはさりながら、今の景気情勢から見て、税制で何とかしたいと。デフレ対策を打った後で、第二段、第三段で、税制で何かしないといけないだろうという問題意識が片やあるわけですね。

私も、今そういう条件、つまり、今非常に効く有効な短期的な政策があれば、それは議論してもいいではないかという手前、そういうことに対してはなから拒否しているわけでなくて、検討したいと言っているわけですね。だから、右と左の極限状態の議論をしているわけでなくて、新聞の報道によれば、諮問会議はあくまで短期を重視し税調は中長期だという、そういう議論ではなくて、かなり同心円上に同じ意見があって、そこで私は議論をともに共有し得たという形で帰ってまいりました。

これが経済財政諮問会議の模様でございまして、あと西室さんのほうから地方分権の話も出ましたが、まだ本格的議論にいってないということで、状況の説明だけに終わられたようであります。

それからもう一点、手短に、昨日の第1回目の税についての対話集会の模様をお話しいたしますが、なんか豪華なところでやったのですよね。ホテルニューオータニ幕張。税の議論をするには少し豪華過ぎるかと思いましたが、260人ほど応募があって、それを240人ほどに縮めて、最終的にお見えになったのが201人だったと。そこで、例のトータライザーという、ボタンを押してあっという間に集計できるような新兵器を入れましたから、出席者の構成もわかったのですが、男性が84%、女性が16%というわけで、見渡す限り、やはり男の方が多かったですね。それで一番多い年齢層が、60歳代が29%、50歳代が26%でありますから、これで55%になっておりますから、半分以上は50歳、60歳代の男性であったということで、10代はゼロで、若い女性はあまり見かけられなかったという状況でありまして、やはりこの時間帯にやるとああいうことかなとは思います。

正直な感想、私、十数年前にやったときから公聴会に出ておりますが、随分と言っては失礼ですけれども、レベルアップしましたよね。フロアーからいろいろ議論をいただきましたし、質問もしていただきましたし、その内容に即して我々も応答いたしましたが、そう言っては悪いけれども、トンチンカンな問いはあまりなく、そこそこ良いやりとりができたのではないかと考えております。

お手元に第1回の対話集会の概要というのがございまして、1枚目はどういう議論があったかというのを見ていただければよろしいですが、2枚目に、トータライザーというものを使って、我々が質問いたしたものの集計が出ております。

申しおくれましたが、大宅さんにすべて仕切っていただきまして、うまく進行していただきました。PART1、PART2もそれなりの成果を上げつつアンケートが出たと思いますが、設問の仕方についてまだ一工夫ありそうなこともありますので、次回以降、少し考えてみたいと思います。

特にマスコミの記者レクのときに、PART1の(3)の「あなたは税金についてどのような要望がありますか?」「とにかく安くしてほしい」というのはどぎつ過ぎるのではないかと。そう言われてみればそうですね。「もっと減税してほしい」ぐらいの程度が話としてはいいのかもしれません。しかし、ここでも、「不公平をなくしてほしい」というのが43%でありますし、それから上の、税金が重いと感じるのは「確定申告をするとき」とか、下のほうも、PART2の(2)[2]「幅広く誰もが負担するほうが良い」が84%ということがございました。

それから、一番新聞記者に書き立てられたのはPART2の(1)でございまして、この設問も、両極端を書いておりますので、「現在の水準を維持させるべきであり……負担が増えてもやむを得ない」が38%で、「負担が増えては困るので……サービスの水準が下がってもやむを得ない」が46%であると。この中間はおそらく[3]で書くべきだったかもしれません。サービスを下げて税負担を上げるというような組み合わせもあるのではないかというのを書くともっと増えたのではないかと思います。これはもう一工夫あるかと思います。

そこで、4人の方からご説明いただきまして、この方々は極めて正統派的ご意見をいただきました。時計店の店主の方、それから料亭を経営されている木更津のおかみさんの会という方、それから若い女性で、ケーブルテレビ足立の方、それから税理士の方、それぞれの立場から貴重なご意見をいただきました。その要約が、今申し上げたトータライザーの結果の上の紙に出ておりますので、この辺をご覧いただけたらと思います。

その後私のほうから、30分ほど使いまして税制の現状と課題をご説明しましたが、税制の現状と課題を説明すれば、当然のこと、今、税の負担が低いということと、赤字がどうしても大きくなっているよという説明をしますよね。それを聞けばすぐさま、新聞記者が書くように、これは増税の予告であるという取り方をされますよね。それから消費税の国際比較をすれば、日本の5%という図を出して、他の国の20%近い図を出してということになると、何も言わなくても、これは将来、消費税の上げを期待しているのではないかというとらえ方をしますよね。そういう形で、財政赤字の問題点を説明すればするほど、どうしても将来何かしたがっているなという取られ方をされましたが、これはごく素直に議論した結果でありますので、それほど、新聞ほど過度に、増税集会になったり、増税を主張したわけではなくて、我々、増税という言葉をたしか1回も使わなかったはずであります。

ただ、最初の質問者が、歳出カットをしないで、やにわにこういう増税的なものを予知するのはけしからんという話が出て、これは増税集会ではないかと発言したものですから、拍手がまた起きてしまって、そこでそれに対して、僕は会場の雰囲気としてそういうこともあったのを認めることは当然であります。

ただ、税調としては、歳出カットのほうまで細かく発言できないこととか、税収カットだけでどこまでできるかというのを説明いたしましたが、今後、その点はおそらくどこへ行っても同じような声にならざるを得ないし、これに対して我々はどう対応するかということは今後考える必要があると思いますが、ただ、愚直に現状を説明して問いかけをするということをやっていく中で、増税ととらえる方があってもしようがないと思うし、あるいはもう一段、いろんなことを考えて、自分たちでものを考えたいという人が出てきてもいいし、その辺はこれからのやり方だと思います。

そこで、最後にもう一つ、会場で、今回の対話集会が有益だったかどうかのアンケートもいたしました。その結果がお手元に回っているかと思います。有効回答が201人中124人で、まあまあの結果だと思いますが、「有意義であった」という方が41人で、「まあ有意義であった」という方が70人でありますから、124人中111人の方、9割近くが一応認めてくれているわけですね。「あまり有意義でなかった」が7人で、「有意義でなかった」が2人ですから、9人ぐらいの人が、若干へそ曲がりに何か言われたかもしれません。しかし、この種のこととしては、我々の試みはそこそこ受けとめていただけたのではないかと考えております。

今後、あと5回残っておりますが、そのやりとりの中でいろんな形でいろんな問題が出てくるかなと思ってますが、逐次ここでまたご報告して、皆さんからもいろいろ聞かせていただきたいと思います。

私の印象では、我々が一方的にしゃべりまくるよりは、十分に時間をとってフロアーからご意見を聞いてやりとりをするということに大きな意義があると考えております。これも司会してくださる方の力量に大分依存していて、大宅さんのいろいろな仕掛けが効いたと。時々、つぶやいたのが何やら新聞記者に揚げ足をとられたところもありますけれども、あれはあれで非常によかったのではないかと、このように考えてます。

これについてまたご質問があれば後からお答えいたします。そういう意味で、若干ご報告をさせていただきました。また来週以降、日本各地に飛び回っていただくということで、ご参加をお願いしている委員の方には恐縮でございますが、よろしくご援助いただきたいと思います。

それでは、きょうの本題に入りましょう。その前に、議論がさめない前に数分時間をとりますが、今の私の報告につきまして、ご質問なりご提案ございますか。

委員

委員、どんなご感想か一言。

委員

新聞記者というのは随分いろいろなことを書くものだなと。全然ムードが違うのですよね。荒れた何とやらと書いてあります。全然荒れてませんよね。というか、逆にいって、あんなのをみんな、はいそうですかと言ってしまうのがおかしいので、みんな個人がいろいろな意見を言ってくれるのがいいので、みんな、ごもっともなんて言うのだったら不気味ですよね(笑)。でしょう? 私が自嘲的に洗脳されちゃったのよとつぶやいたと書いたところがあったのですが、自嘲ではないですよ。「何でみんなすぐだまくらかされちゃうわけ」というのが私の感想で、みんな甘いよなというのが実は私の感想です。

委員

もっとたち悪いよ(笑)。

委員

もっとたち悪い。ちょっと説明されたら、すぐわかったふりしちゃうというのはよくないと私は思うのですけどね。

委員

どうぞ。

委員

「不公平をなくしてほしい」43%と。この「不公平」というのはどういう不公平なのか。

委員

ということは一切言ってません。感覚的な問題です。

あと、ご出席された委員の方で何か追加的にご感想を少しお述べいただくことがあればどうぞ。

委員

私も4月にこの公聴会に行くことになっているのですけれども、個人的な考えを言いますと、1つは、歳出に対する不信というのが相当出る、これは当たり前だと思うのですね。しかも、昨今の状況からいくと、一般の国民の感覚は、税金が高いか安いか、公平なのか不公平なのかという以前に、こんなふうな使われ方をしているという、そういった不満、問題意識、そういうのは当たり前だと思うのです。

それはこの税調の範疇からちょっと外れるとか、公聴会の目的ではないとかいうことではなくて、積極的に吸収する。会長のこのメモで、税制の役割ということで幾つか挙げられているわけですが、財源の確保、所得再分配、経済安定化。もう一つ追加すれば、私は、歳出への監視機能というのは税制にあると思いますね。そういう一般国民の感情というのはもっと積極的に取り上げていったほうがいいのではないかと思います。

委員

それから、やはりモラルの問題ですよ、つつかれるのは。徴税当局のモラルがいろいろ出ますよね。だから、そこの2つが税制論議する大前提だけれども、我々としては謙虚に受けとめなければいかんということです。

どうぞ。

委員

消費税を入れたときの極めて緊張した、極めて敵対的なこういうのに比べれば、今度のは幼稚園か小学校ぐらいの話ですよ、こんな話は。新聞の報道はどこかで誇大に書くのも決まり切っているので、それはほうっておいて、結局、腹決めて、だれにも媚びない。それから変なこと言われてもたじろがない。しかし同時に押しつけもやらない。ということは、選択、あなた方にあるんだよということですから。前回、我々、こんなレポートをまとめた「参加と選択」というのはそういう趣旨ですからね。それは媚びることもないし、たじろぐことも全くないのですよ。堂々と意見開陳すればいいのですよ。情報を共有してもらうことがベースであって、情報を共有しないで勝手な世論ができるから困るのでね。だから、会長、堂々とやってください。私もついていきますよ。

委員

これはある程度目的達したと思いますよ。

どうぞ。

委員

前回も申し上げました。やはり歳出というものについてまず見直しの目を向けていっているんだよという、少なくとも大きな方向としてはそれが必要ではないかということを改めて感ずるわけでございますが、それにしても、この数年間でやってきたいろいろな財政政策の中で、1つ、恒久的減税というのがあるわけですね。これは例えば個人でいえば、20%の減税をして、最高25万円までは引いておりますと。そこらも含めた財政赤字と、あるいは法人税が34.5から32。これも恒久的減税で、形式的にいえばこれは暫定措置なのですね。だから、歳出もさることながら、歳入の面でもそういうふうにいろいろサービスをしておりますと。それはむしろ、もう余計なことをしてくれるなというふうな国民の皆さんの感じであれば非常に結構なことだと思うのですが、そこらも理解されて、赤字になっておる、こういう負担率になっておるということもよくわかっていただければ、また一つの方向もあるのかなという感じもいたします。

委員

そのわかっていただけるというところが最大のポイントね。要するに財政赤字の弊害とか、財政赤字で大変だと言えば言うほど脅かされると思っているのです。一般の方はね。それから日本の税負担、決して高くないよということを国際比較で言えば言うほど、将来上げるのではないかと、こういう発想なのですよね。だからこれは、委員が言われたように、愚直でもいいから、繰り返し我々の立場は説明しつつ、皆さんどうしますかという議論を吹っかけるほかないと思いますね。今後どういう格好になるかわかりませんが、千葉は一番最初のケースで、スタンダードなケースとなったのではないかと思いますが、鹿児島へ行くとどうなるかわかりませんし、北海道へ行くとどうなるかわかりませんけれども、またご報告はしたいと思います。

よろしゅうございますか。ちょっとほかの議題もございます。何かあったら、またお手をお挙げください。

では次に、きょうの本論、ITと税制ということで、水野さんからご説明をいただきましょう。その後、国税庁からお見えいただいてますし、それから事務局からも追加的な補足説明をいただきます。

では、水野さん、20分ほどでお願いいたします。

委員

それでは、IT関係の税制ということでお話しさせていただきます。20分ということですので、厳守したいと思います。

初めに資料ですが、下のほうになっておりますが、基礎小8-1が私のレジュメでございます。それから参考として、「参考資料」ですが、基礎小8-2、この2つをご用意いただきたいと思います。時間の関係で、レジュメを見ていただくだけにとどめるところもございますが、とにかく頑張ります。

「ITと税制」という名前をつけましたが、主たるものは電子申告、それから電子商取引というものが出ておりますが、国税庁のほうで電子申告をすでに試行もしていただいて、それから電子商取引、これは特にEU関係の消費課税の問題、政治的な駆け引きがありますので、この辺、非常にまたいろいろ問題ございます。きょうは、従来の納税者番号制度というものをインフォメーション・テクノロジーの発展と関係づけて議論すると、そういうようなことを考えております。

Iの「はじめに」ですが、「情報化社会の進展による認識の変化」。これも言葉足らずで申しわけございません。これはいわゆる情報化社会が進展したことによって、納税者番号そのものに対する認識が変わってきていると、こういうことについて若干敷衍したいと思います。言うまでもなく、IT産業が今日非常に発達してきております。政府におきましても、これはミレニアム・プロジェクトでしたが、小渕政権のときに、電子政府を実現するということで、電子申告にお金がついたりいたしました。

そういうようなことがありまして、こういった情報化の社会が進んでいく中で納税者番号というものはどう位置づけたらいいのか、あるいはどのような点を再検討するのであろうかということをちょっと検討して、論点を指摘させていただいております。

IIの「納税者番号制度の検討経緯」。これは、今でも毎年、年度末の答申におきましても納税者番号が取り上げられておりますけれども。この書きぶりですが、ここに例を挙げておりますが、従来は当然、利子、配当、むしろ利子と株式譲渡益ですが、大幅に非課税の取り扱いを受けていたということがございまして、それとの関連で適正・公平な課税を実現するために納税者番号の重要性というものは議論されてきたわけです。

これが昭和63年、ここにちょっと線を引いておりますが、「国民になじみがなく、技術的にも複雑」であると、当時はこういう認識がなされていたようですね。

それから平成4年ですが、すでにこの時点では、抜本的税制改革で、利子、それからキャピタルゲインの課税がなされるようになったわけですけれども、納税者番号、適正・公平な課税を目的とすると。なおかつ、そこでは煩わしさや費用を国民のほうで受忍していただかなければいけないと。こういうような書きぶりであったわけですが、2ページにまいりまして、平成7年度の答申に出ておりますが、これは7年度の税制調査会の審議の中で出たのですが、ここだけちょっと参考資料を見ていただきたいのですが、3つの類型というものが示されております。

ちょっと奥のほう、22ページを見ていただきますと、1つは「課税の一層の適正化に向けて、税務行政の機械化・効率化に利用する場合」、いわゆる利子、株だけではないと、全体として納税者番号を利用したらどうなるかということで、かなり詳細なところで本人確認が行われる仕組みになると。

それから、3つのケースということですので、(ロ)は総合課税に利用する、それから(ハ)は資産課税、相続税というものにも利用するという、いわゆる納税者番号をどこまで使うかということですが、これが出たときに、非常にショッキングな図であったということなのか、私の記憶しているのは、委員が、大蔵省はもう納税者番号をあきらめたのではないかと言われたように記憶しておりますが、もし間違っていれば後でご訂正いただきたいと思いますが、非常にここで、いわゆる納税者番号の適用の範囲というものをどういうふうにするのかということで検討がなされていたと思います。

これは平成12年7月の「中期答申」ですけれども、同じことですが、納税者番号がいわゆる情報化社会の進展とともに状況が変化してきているということでございます。論点を挙げておりますけれども、1つには、番号といいますか、いわゆるカード。カード社会が非常に日常化しているということですね。それから番号付与に対する認識の変化。ここはちょっとクエスチョンマークをつけていただきたいと思いますが、こう書いてしまいましたが、そこはどうだろうかというところはいずれにしても議論する論点であると。それから行政による全国一連の番号の整備が進んでいる。ご存じのように、基礎年金番号と住民票コードの問題ですね。こういったような、具体的に番号が出てきているということでございます。

その後の平成13年、これは同じようなことですので省略させていただきますが、いずれにいたしましても、情報化社会、IT社会という中で、納税者番号、従来の審議に加えて新たな論点について当然検討する必要性があるし、また新たなアプローチの仕方があるであろうかということでございます。

そこでIIIですが、この私のご報告の中心になりますが、「情報化社会における納税者番号制度の再検討の必要性と検討項目」。「再検討の必要性」というのは、あるともないとも言っておりません。そういう必要性があるかどうかを検討するわけです。そのときの検討項目としてこんなものがあるかなというので、随時これからお話しさせていただきます。

まず1つに持ってきましたのが、税制、それからいわゆる租税の処分、その他の手続関係で納税者番号というものがどこまで使われるであろうかと。先ほどの図にあらわれましたように、金融、証券、かつてはそこに焦点がありましたが、適正・公平な課税をさらに進めることになりますと、給与、それから年金といったもの、さらには不動産の場合にも適用されるということがあります。これは大きな論点ではないかということで大きな〇をつけておきました。

それから3ページにお進みいただきますと、「有害な税の競争」ですね。これは国際課税の領域ですけれども、各国それぞれが税率、その他源泉課税の税率など、あるいは個別的な取り扱いなどで外国の企業に負担を軽減するということで、特にヨーロッパ社会ですが、税金を下げることで誘致の、海外の統括本部であれば、うちの国に来てくださいといったような形。それから投資所得であれば、源泉徴収の税率を下げてこれを呼び込む、そういったようなことでありますが、そういう有害な税の競争というものが起きている状況で、我が国では、比例税率20%の利子並み課税という形で一応の到達点に達したのかなと認識する方もありますし、そういう意味では、納税者番号制度に依存する度合いが低くなっているかと。しかも、仮に番号をくっつけたりしますと、足の速い所得はすぐ逃げてしまうと、こういうような見方が1つございます。

その次ですが、平成12年の中期答申を含めて従来の報告書、今日に至るまで、なおも総合課税のための重要な手段として納税者番号を位置づけてきているということは言えるのではないか。

さらに、「逆に」となっておりますが、いわゆる納税者番号を所得の流れを追求する担保と考える。先ほど3つのケースというものを紹介させていただきましたが、そういう形で、お金の流れを徹底的に追求するということ。そのための手段だと考えますと、どんどん、給与所得を初めとして、さらには資産課税にまで納税者番号といったものは発展していく可能性があるわけです。

それをやりますと、今度は、多少重なりますが、納税者番号が年金所得にも適用になってきますので、基礎年金番号とどうなるのかといったような問題もございます。

それから2ですが、これは再検討の必要性ということで、制度の意義を再認識してみるといいますか、再検討する必要性があるであろうと。適正・公平な課税のために、やはり納税者に理解していただく必要があるということは当然でございまして、ちょっと下になりますが、先日、住民票コードの関係でしたけれども、女優のだれそれさんを初めとして、いわゆる住民票コードというもの、番号化に反対であるというのがNHKのニュースに載ったりしまして、結構アレルギーがあるということですが、やはり基本に、納税者番号としては適正・公平な課税だと。そのために必要な番号である。この認識を広めるといいますか、認識を納税者に持っていただく必要があると。ただの番号化だけですと、やはりそういうアレルギーが出ますので、公平な課税ということを頭に置いていただく必要はやはりあるであろうということですね。

矢印が出ておりますが、そこに大きな〇がございます。そこで、いわゆるプライバシーの侵害、それから情報の一元的な管理に対するアレルギー、こういったような問題をどうするであろうかと。繰り返しですけれども、納税者の情報管理、これを目的とするのが納税者番号だというような一面的な、一方的な印象を持たれることはよくないことではないかということですね。

特に、横にそれますけれども、現在でも、国税庁では納税者の情報管理、あるいは事務管理という言葉を使えばよろしいのですが、「納税者管理」という言葉を使っている。これは例えば私のところで、税務大学校で研修に来た研究員の人に、番号が、名前が悪いから、「納税者管理」という言葉は「納税者事務管理」に変えろとさんざん言ったのですが、いまだに国税庁では「納税者管理」という言葉を使われております。これは非常にイメージ悪い。国民にどういう印象を持たれるのか、この辺はちょっと検討していただきたいと思っております。

それから、繰り返しですけれども、やはり納税者番号はあくまでも適正・公平な課税のために重要なものであるということは認識していただきたいということですね。

次へまいります。4ページですが、上の3「納税環境の整備と納税者番号制度」。これも再検討する場合の検討項目の一つとして、納税環境というものを考えてみる。よく納税環境の整備というのは一般的にも言われますが、納税者番号というものとの関係ではどうであろうかということですが、まず1つは行政面の整備ということで、情報申告、これをどんどん進める必要はあるであろうと。法定資料・添付資料といったもの、なかなか膨大な資料ですので、これを電子化するということは難しいわけですが、やはりここまで考えていく必要がある。

それから税務調査の問題。後でまた国税庁の方にご説明いただけると思いますけれども、我が国の税務調査というのは強制調査を認めておりませんので、例えば帳簿が電子化されていてフロッピーに入っている。そのフロッピーを税務署の職員が勝手にコンピュータに入れて画面を出してしまうと、これは絶対できないので、納税者に対する調査、それをどういうふうに対応していくか。一部すでに帳簿が電子化されておりますので検討が進んでおりますが、さらに広がった電子化の場合に、税務調査をどうするのかという問題が出ております。

3番目は書類の名寄せですが、実際には文書の形で出てきたものですと名寄せは現実にはできない。ヨーロッパではインボイスだインボイスだと言ってますけれども、単に山積みになるだけで、これは電子化しないとどうしてもマッチングはできないというのが本当であろうということですね。

ということで、納税環境を整備する。ここでは電子申告というものに頼る場面が多いのではないかということで、納税者番号制度、必ずしも電子申告と一致しませんけれども、その基礎として、電子申告の整備が有益ではないかと考えております。

それから2番目が納税者の利便性。かつては、適正・公平な課税のために、煩わしくてもやむを得ない、それを我慢してほしいという方向でしたけれども、利便性も考えてみたらどうだろう。[1]電子申告、それから[2]番号付与の問題。現実にはもう番号ができ上がっているということですけれども、それによって住民票がどこでもとれるようになるとか、あるいは本人確認が容易になるという問題はありますけれども、先ほど申し上げたように、住民票コード、非常に抵抗が強い。現実に国会で通るときにも附帯決議がなされておりますが。

それからもう一つの基礎年金番号。ここではちょっと考え方を変えまして、銀行口座を開設。いわゆる基礎年金番号というものは、かなり、入ってない方がいると使えない。むしろ、銀行口座を開設するときに番号は当然義務づけられますので、そのために国民年金に入らなければいけないかなというようなインセンティブにもなるであろうということですね。

ただ、余りの大金持ちの人は関係ありませんので、やはりこの場合には加入する必要もないし、かえってばれてしまうので入らないと。そういったような両面があるであろうということです。

法人の事業者番号、これはどうしても必要になります。

つけ加えますと、4ページの最後ですが、納税者番号制度の2回の報告書では、国税庁独自の番号はつくらないというお話だったのですが、いわゆるカード社会、それから情報化の進展ということで、その再検討はできないのかどうか。これは一つの論点として出させていただいております。

それから5ページへまいりますと、だんだん時間なくなりましたが、納税者番号を税務以外に利用にする。これはかつては連絡会議を各省で設けるということでして、いわゆる共通番号としての認識が強かった。現実に住民票コードはすでに90もの項目に使用される予定になっていると。

ただし、納税者番号には使わないようにという読み込みができるような形になっているわけですが、考えてみますと、情報の一元化というのは時期尚早ではないかと。私個人の考えですが、最近の行政の不祥事、それから政治家との癒着、これは不安を増大させるということ。納税者番号を持ち出しても、非常に今の背景がまずい。これはプライバシー以前の問題で認識しなければいけないということですね。

それから共通番号への情報集中。確かに行政の面から見ますと便利ではありますが、これだけカード社会で、1人で10枚もカードを持っているようなときに、なぜ行政の情報だけ1つに集めなければいけないかと考えてみますと、どうもその必要はないのではないか。適正・公平な課税という納税者番号に期待された基本的な目的を考えてみますと、むしろ税務以外の公共サービスを断ち切ったらどうだろう。これは私の個人の意見です。

それから民間利用の問題。これは納税者番号の報告書ではそれほど消極的ではないと。たしか住民票の、住民基本台帳の改正のほうではかなりこの点留意されておりますけれども、いわゆる民間利用をどうするのかと。ある意味で、銀行や証券会社にむしろ法律で義務づけて納税者番号を知らしめる必要が出てまいりますが、その場合に、銀行秘密、銀行に預けられた情報の秘密、証券会社に課せられる守秘義務、こういうものを考えていかなければいけないということですね。

ということで、その下の矢印、(情報の一元化)ですけれども、これはいろいろ検討する必要があるだろうということです。

5ページの最後がプライバシーですけれども、この問題、非常に大きい問題でございます。

6ページにちょっと早く進んでいただきまして、本人確認のためにこういう番号は有益であるということですが、他方で、先ほどお話ししましたように、みだりに私的に用いられるということ。これは非常に納税者の不安が募る。当然、サラ金などは要求してくるわけですね。これが納税者番号制度の基礎を、土台をガタガタにしてしまうおそれがあるということが考えられるわけです。

繰り返しですけれども、いわゆる納税者番号の告知を義務づける相手である給与所得者の雇用主なり銀行、こういった企業の守秘義務といったものも考えていかなければいけないということですね。

それはそのぐらいでございまして、従来の国家公務員法、それから個別の租税法の罰則によって担保されたプライバシーの保護はこれで十分であろうか。個人情報保護法のもとでもどのぐらい担保されるのか。

いずれにしても、プライバシーの保護、簡単に情報が漏れてしまう、これは全然お話になりませんので、ここは徹底しなければいけないと。何かほかに加えて、納税者の秘密を保護するための手段はないであろうかということですね。

時間の関係で、最後へまいります。「総括」のところですが、繰り返しお話ししてきましたが、いわゆる情報化社会、インターネットの普及に象徴されますが、納税者番号を取り巻く状況が変わってきております。にもかかわらず、所得の捕捉、把握といった面で納税者番号が適正・公平な課税に重要な役割を持っているということには変わりがない。

それから総括で述べたいと申しましたのは、いわゆる国際的な利用がどうなるのだろうかと。大体、先進諸国、非常に利用が進んできております。情報交換が強く言われておりますが、この納税者番号の普及によって各国で情報提供が進むようになりますと、これは税の競争を抑制する一つとして非常に重要になる。これは近い将来には無理な話でありますけれども、こういった国際的な側面にも留意しつつ、納税者番号というものを検討していく必要性が認められるのではないかと思っております。

以上でございます。失礼しました。

委員

ありがとうございました。

それでは、きょうわざわざ国税庁からお見えでございますが、企画課長から説明をお願いします。

事務局

国税庁の企画課長でございます。よろしくお願いいたします。以下、座ってご説明させていただきます。

お手元に基礎小8-3という資料がございます。これに沿ってご説明させていただきます。税務行政を取り巻く環境は、情報化、あるいは国際化の進展など、経済社会の構造変化により大きく変わってきております。国税庁といたしましては、税務行政が環境の変化に的確に対応し、適正・公平な課税の実現をいたしまして、国民の皆様の理解と信頼が得られるよう、IT化に即した各種の対応を行っております。

本日はまず、国税庁内部の高度情報化対応としてのKSK(国税総合管理)システムというコンピュータシステムにつきましてご説明させていただきます。それから次に、民間サイドでの高度情報化への対応ということで、民間の高度情報化、あるいはインターネットの普及、こういったものへの対応状況についてご説明を申し上げたいと思います。さらに、IT化の進展を納税者の方々の利便性向上に結びつけるということから、現在、平成15年度の運用開始を目指して、電子申告等の導入に向けた取り組みを行っております。これらについて、順次ご説明をさせていただきたいと思います。

初めに1ページでございます。国税庁内部における高度情報化対応ということで、KSK(国税総合管理)システムについてでございます。このKSK(国税総合管理)システムは全国の524の税務署をコンピュータのネットワークで結びまして、地域、あるいは税目を超えて納税者、あるいはその取引等に関する各種の情報を一元的に管理するシステムでございます。近年における経済取引の複雑化・広域化、こういった税務行政を取り巻く環境の変化に対応しつつ、税務行政の高度化・効率化を図り、適正・公平な課税の実現を目指すために導入しているものでございます。

次に2ページでございますが、「KSKシステムの導入効果」ということでございます。この図に沿ってご説明申し上げますが、初めに、[1]ということで、「OCR入力化」とございます。申告書、あるいは決算書などを税務署で直接OCR入力するということで、納税者の各種の情報をリアルタイムで当局のほうでコンピュータに入れて活用可能としております。

この情報につきましては、[2]のところにございますように、課税データベースに入力いたします。ここでそれぞれの申告等の事績のデータが課税データベースから債権管理のデータベースに連絡されて、ここで、どのぐらいの税金が残っていて、どのぐらい納めていただいたかといったような債権管理をシステム的に行っております。

[3]は「収納処理、還付処理」でありますけれども、銀行、あるいは郵便局で納付していただきました税金の納付のデータ、あるいは還付金の我々からの振込データ、こういったものを日銀や郵政事業庁との間で磁気テープによりやりとりすることによって、税務署の債権管理事務の効率化を図っておるところでございます。

それから次に、下のほうの[4]でございますが、「調査選定事務の支援」ということで、税務署の端末機の操作によりまして、納税者に関する情報の多角的分析、あるいは随時の活用が可能となっております。例えば同規模、同業種の平均的な数値と比較するということ、あるいは売上粗利益率等の抽出条件をかけることによって、調査対象者の的確な絞り込みができるというようなことでございます。

次に[5]「納税証明書の迅速な発行」でございます。納税証明書につきましては、何年分かというような年分を入力いたしますと、このシステムにより作成することができますので、従来よりも早く発行ができるということでございますし、また、随時の情報参照が可能でございますので、納税者等からの問い合わせに対しましても迅速に対応することができるということであります。

それから[6]「税務行政のIT化の推進」ということでございますが、このシステムは、政府が現在進めております電子政府の実現の一環であります電子申告、あるいは電子納税等の税務行政のIT化を支える情報通信基盤ということでございます。具体的に申し上げますと、電子申告、あるいは電子納税、こういったことのデータをこのKSKのシステムで処理することによりまして、我々の事後の事務処理の一層の電子化、あるいは効率化を図るということでございます。

次に3ページで、「民間の情報化(機械化)に対する的確な対応」ということでございます。初めに「民間の情報化(機械化)による調査環境の変化」ということでございますが、パソコン、あるいは企業会計業務ソフト、こういったものの普及に伴いまして、こういった情報処理機器を利用している個人事業者、あるいは法人はかなり多くなっております。その結果、証ひょう書類等のペーパーレス化が進むとともに、納税者が保有する情報量も従来よりも増加してきております。また、平成10年の7月にはいわゆる電子帳簿保存法が施行されまして、企業等の情報化、あるいは機械化といったものは一層進展しております。

こうしたような状況の中にありまして、事業者等の中には売上除外のために不正なプログラムを開発する、あるいは改ざんしたデータを入力して正規のデータを削除する、さらには集計機能を悪用して、わざと計算を間違えさせるといいますか、計算違いを行うというようなさまざまな方法によりまして、いわゆるコンピュータを利用した不正な税務計算を行うというものも把握されているところでございます。こうした状況におきまして、従来型の証ひょう書類等を確認するといったような税務調査の手法では適正な調査を行うことが非常に困難になってきております。

こうした状況に対応するために、私どもといたしましては、各種の税務調査を通じて、さまざまな企業の情報の収集、あるいは蓄積を図る。それから調査手法の研究・開発に取り組む。さらには、コンピュータ等の専門的な知識の習得のために職員研修を行うというようなことに重点を置いて取り組んでおるところでございます。

このため、システム等に関する専門的な知識、あるいは調査手法を身につけた職員を各国税局・税務署に配置しておりますが、今後ともこういった職員の増員を図るとともに、収集・蓄積した情報を、これら職員だけでなく、一般の職員等にも幅広く還元いたしまして、組織全体としての調査能力の向上を図っていきたいと考えておるところでございます。

次に4ページ、「電子商取引への的確な対応」ということでございます。我々国税庁といたしましては、最近のインターネットの普及等を背景とした電子商取引の急速な進展に的確に対応していくために、電子商取引を行っている事業者等に対する税務調査、あるいは情報収集、こういったものを専門的に行う電子商取引専門調査チームというのを設けております。このチームは平成12年2月に東京国税局に最初に設置いたしまして、現在では全国の国税局で74人の職員を配置しております。

「電子商取引の特徴」でございますが、ここに3点ほど挙げております。まず、電子商取引には国境等が存在しないということから、事業者の海外への進出が促進されるなど、ネットワークを通じて取引の広域化、国際化といったものが進展しまして、調査が非常に困難になるということであります。

それから2点目としまして、店舗、あるいは資金がなくても、だれでも参加することができるということ、さらに取引の匿名性が高いということから、納税者の把握、あるいは特定が非常に困難でございます。

それから3つ目といたしまして、データの消去が容易であるということから、電子的な取引情報等を把握するのが難しい、あるいは確認が難しいというような状況がございます。

このように、電子商取引につきましては従来の商取引と非常に異なる新しい分野であるということから、私どもとしましては、従来の組織と異なりまして、組織横断的な取り組みを行っております。個人や中小法人を担当する課税部、あるいは大法人を所管する調査部といったような縦割りの組織にとらわれず、このチームでは、コンピュータ関係、あるいは海外取引につきまして専門的な知識を有する職員を集めまして、一体となって運営しております。

このチームの取り組み状況でございますが、主に電子商取引を行っている事業者等に対するいわゆる税務調査、それから、こういった者に対する調査手法の開発、さらには、これらのニュービジネス等の業態研究、こういったことに重点を置いております。

平成12年の7月から平成13年6月までの1年間に、このチームにおきまして、個人、法人、合わせて約300件の実地の税務調査を行いまして、約58億円の申告漏れ所得を把握しているという状況でございます。

次のページにポンチ絵がございますが、これまでにこのチームが調査した事例の中の典型的な事例といたしまして、法人が本業とは別にインターネット上にホームページを開きまして、個人輸入の代行業を行っておったと。この個人輸入の代行業を行っていた部分の所得については全く申告していなかったというような事例がございました。

今後とも、こういった者に対する適正な課税を図るために、このチームを核といたしまして、ここで得られた調査手法、ノウハウを積極的に全税務署の職員に広めていくということで、組織全体としての調査力を高めてまいりたいと考えております。

それから次に6ページでございますが、申告等に係る納税者利便の向上ということで、電子申告、あるいは電子納税につきましてでございます。この6ページのところでは、電子申告、あるいは電子納税のイメージをポンチ絵にしております。電子申告でございますが、書面の提出にかえまして、インターネットを通じて電子データによる申告手続を可能とする制度であります。これによりまして、納税者は自宅や事務所にいながらにしてインターネットを利用して申告ができるということでございますし、企業は会計処理と税務申告を合わせて一体的にできるということでございます。

なお、この際、従来どおり税理士を使いまして申告手続を委任することも可能でございます。

それから電子納税につきましても、インターネットバンキング等を通じまして、自宅、あるいは事務所にいながらにして税金を納付することが可能でございます。

国税庁といたしましては、平成11年6月以降、この問題について検討してまいりまして、さらに税務署での実験等を経まして、現在、平成15年度中の運用開始を目指しまして、所得税、法人税、消費税の申告、それから各種の申請届出、さらには納税、こういったものにつきまして一体としてのシステムの開発を行っておるところでございます。

この我々の検討状況につきましては、7ページの下にございますように、私どものホームページでもご紹介しておりますので、ご参考にしていただきたいと思っております。

それから次に12ページでございますが、このほか、納税環境の整備に向けた最近の取り組みということで、1つはタッチパネルということで、銀行のATMのように、画面を見ながら、その指示に従っていろいろな数字等を入力すれば申告書が簡単に作成できるというようなものを各税務署等におきまして納税者にご利用いただいております。これにつきましても、さまざまな申告書の様式に対応できるよう、順次、機能の改善・拡充を行っているところでございます。

それから次に14ページでございますが、タックスアンサーホームページということでございます。我々のところにはいろいろな税務相談の需要がたくさんございまして、これに電話等で簡単に答えるということから、タックスアンサーホームページというものを設けまして、電話で税務相談ができる、あるいはインターネットの画面上でいろいろなQ&Aを設けてさまざまな質問に答えるというようなことをやっておりますし、それから次の15ページでございますが、路線価図につきましても、従来は本でしかなかったものについて、これをインターネットに搭載いたしまして、自宅、あるいは事務所にいながらにして全国の路線価図をご覧いただくということを可能にしております。

こういったように、さまざまなIT化に対する取り組みを行っておるところでございます。

以上、簡単でございますが、ご説明いたしました。

委員

ありがとうございました。

では、事務局、お願いします。

事務局

地方税につきましては、基礎小8-4の資料に掲げさせていただきましたが、地方税についても、1ページですが、電子申告ができるようにということで、国に足並みをあわせて、15年度からできるだけ、個別の地方団体の導入になるものですから、多くの団体で導入ができるように、14年度中にモデルシステムを構築しまして提示したいということを進めておるところでございます。

簡単ですけれども、以上でございます。

委員

簡単ですなあ。ありがとうございました。

それでは、今のIT、あるいは電子申告絡みで少し議論いたしたいと思います。お三方のプレゼンテーションに対しまして、ご質問なりご意見を賜りたいと思います。

どうぞ。

委員

水野先生のいろいろなおまとめ、いろいろな点を割り切って、前に進められるような方角でまとめられているように思いますが、私はこれをもう一歩さらに踏み切って進めてみたらどうかということでございます。

それは、簡単にいえば、どうしても納税者番号制度というと適正・公平な課税の管理というところになる。そうしますと、納税者の意識としてはいろいろなインプリケーションがあって、最後は反対に回ってしまうという傾向がどうしてもあるわけでございます。ですから、それを納税者管理というか、適正・公平な納税の管理、維持ということでなくて、納税者にメリットとなるようなシステム、メリットシステムに切りかえるというか、発想を転換して進めていったらどうかと思うわけでございます。

昭和55年にグリーンカード制度というのをつくって、法律にして、もうすぐ執行するというところで、結局延期になり、2回延期になりまして、最後、6年かけて、結局廃止してしまったと。その当時も、中央六大新聞、最初は皆さん賛成してくれたけれども、最後は3対3で反対と賛成と分かれてしまって、世論の行き着く先もはっきりしなかったということでございます。

今回、税制の抜本改革ということでございます。その中で、私、1つは、例えば給与所得者、これを、給与所得控除を必要経費の実額控除といったものにぜひ変えていってはどうかと思いますが、そういった場合に、番号を持っている人というか、納税者カードを持っている人についてはいろんな形で簡単な、簡易な経費控除ができるようにするとか、あるいは、この間までやってまいりました証券税制でも、あれをさらにもう一歩進めるとすれば、例えば譲渡損、あるいはさらには評価損、こういったものでも他の所得と通算ができるようなところまで踏み込んでいく。しかし、それは納税者カードを持っている納税者に限るとか。

例えば、最近議論のある相続税と贈与税の関係。贈与税というのは相続税の前払いということで統一して管理して、1本でいいのではないか。それはかなりな時間を要する。5年になるのか、10年になるのか、20年になるのかわかりませんけれども、これも納税者管理、納税者カードを持って対応されている方についてはそういった点も弾力的にいろんな方策を考えるとか、今回の抜本的な改革の中でもそういういろいろなことが考えられる。

それを、納税者番号でなくて、納税者カード制度といったようなもので、そこへ乗せていくということで、メリットの面を提示しつつ世の中にプレゼンテーションしていけば、また世の中も違ってくるのではないか。そして、この納税者カードを持っている方については、先ほどいろいろ、IT化で、電子申告、電子納税ということもございましたが、そういった中でもいろいろなメリットが考えられないことはない。

例えば確定申告、現在3月15日までにするわけですけれども、振替納税はおそらく今は4月20日ごろになっているのではないでしょうか。引き落としは。これは何も1カ月もおくらすことはないので、カードを持っている人、3月15日、あるいは申告日にすぐ納付した、引き落としたというときには、金利分を控除するとか、いろいろなことが考えられる。

この際、税制の抜本改革時ですから、何かそういう発想での納税者カード制度といったものならば、現実的に検討の課題になってくるのかなあという気がいたします。

委員

ありがとうございました。ご体験に即したご提案だと思います。やはりカードという名前のほうがよろしいですか、番号より。グリーンカードでつぶれたのですけれども、納税者カード、大丈夫ですか。

委員

あのグリーンカードというのはよくない。

委員

ほかにどうでしょうか。

委員

今の、委員の逆転の発想というのは大変おもしろいと思って聞いていたのですけれども。結局のところ、長年にわたってこの議論に参加して、海外調査なんかやった立場からすると、水野先生が3ページに書かれた「制度の意義の再認識」の1)の○に書いてあるプライバシー侵害論というのは、今の委員の議論でやってもなおかつ極めて強いものだと僕は思うのです、残念ながら。結局これを克服するのは、いつも僕は思うのだけれども、ものすごい政治的なエネルギーを必要とするのですよ。そのことは委員が一番ご存じのはずなのです。何ぼその立場を変えて、徴税のためにやるのではないよと、納税者の利便のためにやるのですよと、発想を全く転換したよと言ったって、そうか、おまえら、またそういうアプローチをしてきたかと、こういう話だからね。間違いなく。そうでなくたって、最近これに関連するような法律が国会でいろいろ議論されていることになっていて、みんなこれにひっかかっているのですから。

そこで、何を私が言いたいかというと、結局これから大幅な税制改革をやるときに、この、納税者カードか番号か知らないけれども、入れなければ、それが貫徹しないという形を仕組むことは極めて危険だということですよ。方向はいいけれども、これがなければこの制度は動かないということになると、これが外れれば、その制度、動かないのですね。新しい課税方式なり何なりが。理念は結構だけれども、これがけつまずいてしまって、事態が全然進まなくなる可能性が僕は多分にあると思っている。日本社会でまだあと10年は。

だから、この理念追求でいろいろな議論を重ねることは大いに結構だし、ITの世界でこれをやるのは当たり前だと思うけれども、僕は相変わらず、ちょっと古傷をなめるかもしれないけれども、容易なことではないなと思うのです。

それで、国税庁に質問したいのだ。あなたの説明だと、いろいろ今工夫されてやっているのだけれども、課税の適正・公平ということからすれば、今おたくが苦労されていろいろつくられているでしょう。それで、納番入れるのに比べれば不十分だと思うけれども、相当程度それに近いところまでいくのではないかという気がしているのですよ。

例えば、私は世田谷に住んでいるけれども、確定申告やって十数年になるから、僕のナンバーなんかはっきりわかっているし、僕のデータなんか、全部一望してすぐわかるようになっているわけだ。もうプライバシー全くないのだ。世田谷税務署で私自身はね。そんなの当たり前だと思っているのです、私は。それを納番だと言わなくたって、今やっているわけだから。そういうことを含めて、国税庁の今のやり方で、理想としてはこういうことは入れたらいいと思うけれども、道が遠いのならば、今おたくの現実的なアプローチで相当程度解消することがあるのかないのか、それを教えてもらいたい。

事務局

現在、先ほどご説明しましたKSK(国税総合管理)システムの中では、各それぞれの納税者に整理番号というような形で、我々の事務処理のための番号は持っております。これによりまして、例えば法定資料とかいただいているものもKSKの中に入れまして、名寄せをしてということはやっております。

委員

今でも、相当程度適正・公平な課税ができるための努力はずうっと積み重ねているわけでしょう。ただ、納番に比べれば距離があると思うけれども、一足で納番にいかなければどうもならんというほどのことではないのではないかと思うけれども、どうですか。

事務局

現在のシステムでも名寄せ等はやっておりますけれども、やはりそこは名寄せの制度と申しますか、そういうところに問題があろうかと思いますし、それから、今の番号でありますと、あくまでも、我々、部内の事務処理上の番号でございますので、納税者の方に何かその番号を使っていただくとか、そういうふうなシステムにはなっておりませんので、そこら辺のところに制約はあろうかと思います。

委員

今、税務署単位で独立した番号でしょう。税務署間で共通番号というわけにいかないのですか。

事務局

これも我々の税務の事務処理の都合でつけておりますので、例えばその納税者がある税務署の管内からほかの税務署の管内に行ったときには番号が変わるというような形にはなっております。

委員

何で共通にできませんか。それは共通にはできないの? 連携して。

事務局

そこのところは、システム開発とかいろいろやれば技術的には可能なところはあろうかとは思いますけれども。

委員

まだそこまでいってないということですね。

事務局

はい。

委員

どうでしょう。

委員

政府全体として、eガバメントの問題、あるいは番号制の問題について速やかに私は連携をとりながら進めるべきだろうと思っております。これは、この間の旧自治省関連で番号の問題、住民台帳番号の問題が報道されて、いろいろアレルギーがあったということは承知をしておるわけですし、それから社会保障関連番号の問題の統一化というような問題が、失業保険と年金、医療の関係等の問題がございましたし、またここでそれが独立みたいな話で議論されるということは、政府で何を一体、eガバメント、あるいはIT化に対応しようとしているのかということが非常にわかりづらいという側面があろうかと思います。

それからもう一つ、今、委員がおっしゃったとおり、これはメリットがあるということを強調すべきだろうということが、eガバメントしていく場合には重要なのだろうと。それは国民に対して受益という面を明示化していくということにつながっていくわけで、先ほど、委員は税の中におけるメリットを強調されましたけれども、実は「骨太の方針」の中で社会保障に関して個人会計というものを提案をし、閣議決定しているという部分がございます。これは北欧のシチズンズ・アカウントという発想を日本の中で実現したらどうだということで、個人の受益の問題を年金、医療も含めてトータルに個人のレベルの中で納得をし、どういう形で負担していくかという両面を記載するということでございます。

北欧の場合には、大体自分が払ったものが自分のところに返ってくるのが8割程度と言われておりまして、それが国民が自分の負担に対して納得すると、一部の人が負担しているのではなく、自分が自分のところに返ってくるというような形で説得する手段になっておりますので、ここら辺のところは全体横断的に協力しながら進めていく必要性があるのではないか。

それから3番目は、保険の徴収も含め、あるいは国税の徴収も含め、徴収の効率性とこのIT化がどのような形でつながっていくかどうかということも、それぞれ各省庁がやるのではなく、トータルでやはりこの問題についてきちんとした連携をとっていく必要があるのではないかという気がいたします。

これは、委員ご指摘のとおり非常に難しい問題はありますけれども、ITの流れの中でこれを避けて通るということは、消費税の問題もございますし、これから仮に複数税率にすると、インボイス方式への移行ということが税の公平の観点から要求されるということになってまいりますと、この問題はいつまでも避けているわけにはいかないのではないかという感想を持っておりまして、ぜひ総合的、連携的にこの問題を政府の中で検討するということを提案いたしたいと思います。

委員

委員の手が挙がってますが、ほかにこの問題についてご発言は、委員だけですか。

では3人に限らせていただきます。あとの問題に入りたいので。どうぞ。

委員

この千葉のアンケート調査でもあるように、不公平を正してほしいという意見は非常に強いわけで、そのために、必要なら納税者番号というのはいつの日か入れたほうがいいし、また最終的には国民も多数は支持するのではないかと思いますけれども。非常に初歩的な質問なのですが、国税庁の方にお聞きしたいのですけれども、これをもし入れた場合は、例えばクロヨンと世に言われるような不公平感を非常に持っている、こういう人が多いのですが、こういう問題に対してはどこまでその納税者番号を導入すればできて、どういう部分はできないのですか。例えば売り上げをちょろまかすというのは無理だとか、その辺のできる部分できない部分、簡単でいいですから、教えていただきたい。

事務局

納税者番号を仮に導入いたしまして、どの範囲までの取引について納税者番号をつけていただくかということかと思います。現実の問題として、源泉徴収されるような利子とかそういうものであれば、納税者番号が入ったときにそのデータを我々いただくのは簡単だと思いますけれども、一般の取引総体といいますか、いわゆる金融取引以外の通常の個々の取引について、取引ごとに納税者番号をつけていただいて、その情報をとるというのは現実の問題として非常に難しいかなと思ってますので、そういったところが、どこまで納税者番号が取引の中で覆われるかというそのカバーの問題だと思いますので、一般の取引までに及ばないということであれば、そこら辺のところは、また別の方法、手段で公平な課税なりをしていかなければいかんなと考えております。

委員

別な方法というのは調査か何かですね。

事務局

それもございますし、また別の制度等、いろいろあるかと思いますけれども。

委員

あるのかな。そうですか。

では、委員、どうぞ。

委員

私は基本的に、納税者番号というシステムをもう導入する時期かなということに賛成です。とりわけ金融所得というような二元的な所得課税論というものが現実に視野の中に入ってきている状況では、その手段としてどうしてもこういうものは欠かせないということで、総論とか理念論の段階はもう過ぎつつあるのではないかと、そんなふうに思っております。

ただし、一般の国民の懸念というのはどうしてもあるわけです。いろいろな懸念があると思うのですが、私なりの懸念を1つ申し上げますと、役所、官僚の機構というのは、何かつくると、それをどうしても使いたがる、厳格に運用したがるというところがあるように感じられてならないわけで、総務省の方もいらっしゃるけれども、私の住んでいるところの市役所で印鑑証明カードというのをつくりましてね。自宅に、各世帯に送ってきたようなのですが、知らないで、私は引き出しかなんかに入れておいた。あるとき印鑑証明が必要で行ったら、そのカードがなければ印鑑証明出さないと言うわけですね。で、私の身分証明書を見せて、写真入りの日本記者クラブの会員証かなんか見せて。ところが、どうしてもそれでなければだめだと言い張るわけですね。ここにいる方々はもっと弾力的に考えるけれども、窓口の人は頑固ですよ(笑)。まあ納税者番号がそうなるとは思わないけれども、そこら辺の懸念というのを払拭することが必要かなと思います。

それからもう一つ、これは質問ですが、先ほど、委員からカードというのが出たのですが、カードか番号か、単なる名称の問題ではないような気がいたします。というのは、つまり、番号を振ればいいのか。例えばクレジットカードなりキャッシュカードなり、あるいは商品の取引カードなり、そういうものに番号を入れるようにすれば用は足りるのか、それとも、納税者番号カードという独自のカードをつくって、それでなければ通用しないというようにするのか、そこら辺はどうなのでしょうか。

それからもう一つ、先ほどからちらちら出ているけれども、希望者だけに出すと。要するに印鑑証明カードみたく、もう無差別に全家庭に配ってしまうというのではなくて、全国民に振ってしまうというのではなくて、希望者に出すという可能性というか、そういう選択肢はあるのか。

その2点、ちょっと伺いたいのですが。

委員

関連で。

委員

どうぞ。

委員

これはお上からの管理番号だよというのではなくて、カード。しかし、それは国税サイドで決めてくれればいいと思うのですけどね。申請して。それから、先ほどまさに先生のお話のとおり、税に限らず、国税庁、そして社会保障ということで統一的に考えたらどうか。事業所得者については青色申告制度というのがある。個人の事業所得以外のその人の納税について、あるいは社会保障も含めた負担なり受益についての青色申告制度だというふうな位置づけで幅広く考えたらどうかなと思います。

委員

すみません。ちょっと時間も押してますので、委員のご質問で最後にしたいと思います。どうぞ。

委員

質問ですが、ITの進展によって課税漏れになっている程度といいますか、それはどのぐらいになっているのか。つまり、どういうふうに感じていらっしゃるか。例えば思い浮かぶのは、紙で契約書がありますね。印紙税を払わなければいけないと。ところが、電子でやれば印紙税は払わないで済むということがあるかもしれませんね。それからデリバティブのような金融取引、これは非常に複雑な取引ですから、どこがもうかって、どこが損になったか、それは一概に言えないような場面があって、税務署が追い切れないというようなことが起きているのか。その辺で、ITだからといって何でもかんでも電子化しないといけないのかという議論なのですけどね。税務上非常に不都合が生じているのかどうか、その辺をちょっと、データがありましたらお聞きしたいのですけれども。

委員

何かあればどうぞ。

事務局

どのぐらい課税漏れがあるかというデータは、実際その調査でどのぐらい増差が出たかというデータは、先ほど電子商取引関係でも58億円とかございましたけれども、実際下に潜っていて、いわゆる課税漏れになっているのがどのぐらいかというのは把握が非常に難しいと思います。

それからIT化して課税漏れがどうかということでございますが、先ほど申し上げました電子商取引に関して言えば、特に個人、あるいは中小規模の法人でありますと、個人であれば、全く申告をしていない、いわゆる本業が別にありながらアルバイト的に何かやっているとかいうことで、その分全く申告してない、いわゆる無申告になっている。それから法人につきましても、いわゆる電子商取引の部分は、先ほどの例にもございましたように、全く申告してないというケースは調査の過程でかなりございました。

それからデリバティブ等につきましても、これも非常に難しい面はありますけれども、それなりの知識等を有した者を育成しておりますので、できる限りの努力をしながら、課税漏れのないように努めてまいりたいということでございます。

委員

今のところ、部分的にしか把握できてないのでしょうね。この種の漏れ等々の話はね。トータルではね。

では次の問題にいきたいと思いますが、委員からお話しいただきました、番号のみでいいのか、カードみたいな形態で出すのかというのは今後大きな問題でしょうから、事務当局でも関心を持ってもらって、いずれそういう問題にまた立ち戻りたいと思います。

それでは、中里さん、お待たせいたしました。国際課税における課題を簡単に20分ほどでご説明ください。

委員

わかりました。時間押してますので、もっと短めにさせていただきます。

委員

どうぞ。歓迎です。

委員

水野先生のほうから国際課税における情報収集の問題も触れていただきましたので、その関連性の話としてお聞きいただけたらと思います。

「国際課税における課題」と題する簡単なレジュメを用意させていただきました。深く入り込みますと、非常に専門的、かつ技術的な話になってまいります。ここでそういう話を細かくするのがいいとも思いませんので、概要だけお伝えしたいと思います。

まず「はじめに」というところでございますけれども、執行のうまくいかない租税制度、あるいは執行の不可能な租税制度というのは、どのような租税理論のもとにおいても正当化できないだろうということでございます。経済理論的にすばらしい租税制度というのを法律上つくることはいとも簡単にできるわけです。例えばアメリカの内国歳入法典をそのまま翻訳して日本の法律にすれば、それでよろしいわけですが、じゃそれで執行ができるかといったらそういうわけではございませんので、制度と執行というのは車の両輪の関係に立っております。

いろいろな逃れ方というのが開発されております。これを企業努力だからいいことだというふうに言うことができるかということですけれども、確かに現行法に照らし適法であれば、納税者を責めるわけにはいかないと思いますけれども、しかし、企業努力だからといって放置することもできないのではないか、発泡酒とは大分違うのではないかと思います。

まず一のところでございますが、「租税裁定取引を用いた課税逃れの蔓延」ということですが、租税裁定取引というのは、片方で課税される場合があり、片方で課税されない場合がある。市場でいいますと、片方で高値、片方で安値があるというときに、その両者をつないでさやをとるのを租税裁定取引と申すわけです。これはデリバティブ等を使うと最も安価、かつ確実にできるわけですけれども、それによる課税逃れが蔓延しているという認識を持っております。

足が速い所得という言葉を使うことが税調では何回かございましたけれども、これも印象論で恐縮ですが、日本の企業の所得よりも外資系企業の所得は、足が速いどころか、羽が生えているような気がするわけでございます。さまざまなテクニックが駆使されて課税逃れが行われていると。ただし、逃れている側の方は課税逃れとは思っておりませんで、節税と思っているわけで、これは別に倫理的に非難しようというつもりはございません。

アメリカの財務省は、1999年、クリントン政権のもとで、サマーズ財務長官のときに、このような大法人の手になる複雑な課税逃れに対しまして、「課税逃れ白書」、タックスシェルターに関するホワイトペーパーと俗称されているものを公表いたしました。これはインターネット等でとることができます。非常に詳細なものでございまして、実例を挙げて、こういう課税逃れが行われていて、それをふさぐためにはこうだとか、そういう非常に詳しい議論がなされているわけです。

日本の対応は、これは国税庁、非常に一生懸命やっておりますけれども、法律上の問題等もございまして、遅れていると。アメリカが進み過ぎているのかもしれませんが、対応は遅れていて、むしろ日本国の租税というのは、ある種の企業にとっては抜くためのかっこうのターゲットにされているという印象がございます。

二で「具体例」を幾つか申し上げさせていただきます。ただ、ここに書いてある具体例は特定の企業が行っているものでございまして、この種の企業を倫理的に非難しようとか、法的に非難しようというつもりは全くございません。ただ、中立的に、こういうことが行われていて、それは望ましくないという考え方もある、望ましいという考え方もあるかもしれませんが、そういうことを述べさせていただくだけでございます。

なお、デリバティブ等を使いましたより複雑なものにつきましては、時間をいただければ幾らでも講義する用意はございますが、ちょっと、幾ら何でもと思いますので、ここでは省略させていただきます。

最近、最も有名なもの、また国税がターゲットにしようと努力しているものが、日本において上げた利益を匿名組合員として出資しているオランダ企業に支払うという仕組みがございます。これは日本で営業活動を行う際に、その営業活動の資金調達を、オランダにつくりましたペーパーカンパニーから匿名組合員の出資という形で行った場合に、その出資の見返りとしてオランダのペーパーカンパニーに対して支払う利益は、日本において法人税も課税されなければ源泉徴収も行われない。つまり、全く非課税で、オランダのペーパーカンパニーに利益を持っていくことができるという仕組みでございます。ペーパーカンパニーの背後には、もちろんオランダ企業ではありませんで、さまざまなほかの国の企業があるということで、ものすごい額の税金がこれによって日本の国庫から逃れているということです。

なお、オランダにおいても課税は行われておりませんから、非課税の所得が生まれている。逆にいいますと、日本に投資する際にはオランダにペーパーカンパニーをつくって、匿名組合員の出資という形で日本の営業者に対して出資をすれば、非課税で利益を持って帰ることができるということが法律上可能となっているわけでございます。

それからもう一つでございますが、これは最近判決等もございましたけれども、証券のキャピタルゲインを外国で実現させる。外国で株式等の売買が行われますと、キャピタルゲインが実現します。外国で実現したキャピタルゲインが当該国で非課税とされている場合には、課税はされないにもかかわらず、帳簿価額は切り上がるわけです。帳簿価額が切り上がったものを日本に持ち込めば、含み益は存在いたしませんので、次に売るときのキャピタルゲイン課税はない。場合によっては、これはある種の操作を加えますと値下がりを起こして損失を実現することもできるというような仕組みがございます。アメリカでもこれは幅広く利用されており対応がなされているところですが、日本は必ずしも対応がなされていないわけです。

それから日本から外国の系列保険会社、大抵の場合にはバミューダかルクセンブルグにございますけれども、そういう外国の系列保険会社に再保険料を支払う。つまり、日本の損害保険会社がそういう系列の保険会社に対して再保険料を支払いますと、再保険料は費用ですから損金算入され、また、保険料の支払いについては源泉徴収がなされませんので、単に再保険料の支払いという形をとるだけで、日本における利益を圧縮させ、日本の税金は全くゼロにすることができるわけです。その系列の保険会社からさらに日本に子会社を持っている親会社に利益が流される。つまり、バミューダとかルクセンブルグの会社が単なるサンドイッチの中身のように使われていて、名義貸しのようなことが行われているという例もあるように聞いております。

それから、外資に何の恨みもございませんが、外資系の証券会社はそのほとんどが、さまざまな理由から、ケイマン法人の日本支店という形をとっているわけでございます。ケイマンに本店を置く。で、日本支店が営業活動を行うわけですが、ケイマンの本店はペーパーカンパニーですから、実体は何らないわけで、支店に実体があるという形をとっておりますけれども、これは別に税金逃れだけが目的ではないでしょうが、節税も十分に目的の一つに入っております。

日本支店から海外の本店に送金する際には、実は源泉徴収ができないわけです。この日本支店が、先ほどのオランダのペーパーカンパニーとの間で匿名組合契約を持ってますと、利益の大部分はオランダに非課税で持っていって、残った利益について多少の法人税を払い、その残りを配当で支払えば源泉徴収があるのですが、これは支店・本店取引ですから、配当ということになりません。単なる送金ですので、日本の課税、源泉徴収がないということです。これで日本の国庫に入るお金が随分圧縮されているのではないかと思っております。

それから、これは脱税の例ですが、日本で所得を上げ、確定申告前に出国してしまうという究極のテクニックもございます。確定申告前で、日本は出入国管理と税務署の手続がリンクしてないものですから、日本の納税義務を果たしてないから出国はいかんという手続はとられておりません。アメリカは、ネイ・エクセアト・レ・プブリカ、離国禁止令状という手続がございまして、これは納税義務を履行してない場合の出国を禁止することができる。次に入国するときもいろいろ問題があるということがありますが、日本は、そういう点、全く自由。自由と言うとちょっと言葉悪いですが、自由でございます。逮捕もされませんので、逃げてしまえばいいということ。

あと、じゃどうやって課税処分を行うかというと、課税処分ができるかどうか、それから督促状を送って徴収手続に入れるかどうかといいますと、いろいろ議論がございますが、国際法上非常に難しい。つまり、逃げてしまえばなかなかそこまでということです。

ほかにも、日本法人が外国にためたお金を、非課税でためたお金を日本に持ち逃げ、持ち込むテクニックとか、さまざまなものが開発されているわけです。ここで申し上げますと、インターネットでまねする人が出てきますので、申し上げません。

「対応策」ですけれども、外国法人課税制度の見直しをある程度していく必要がある。それから匿名組合等、法人でない事業体に対する課税方式を整備する。それから、先ほど水野先生がおっしゃいましたとおり、情報収集体制を整備し、諸外国との情報交換を発展させる。それからさまざまな課税ベースの侵食防止措置をとるというような、さまざまな個別的なテクニックを使って適正な納税の確保に努力しなければいけないわけです。

額が相当な額です。サマーズ長官が1999年にアメリカで述べたのは、今後10年間に数兆円、10兆円近くがアメリカの国庫から消えるだろうという予想を述べておりました。1年に1兆円近くということですね。当時のレートですから、今はもっとになるのでしょうか。円に直しますと。日本でも相当な額。経済学者の方、統計を出せとおっしゃいますが、統計はありません。だから課税逃れでございまして、それはお許しください。

納税者保護のために、他方で事前確認制度を整備する必要があるわけですが、これについては昨年、国税庁のほうである種の通達、ある種というか、事前確認の通達を出しましたけれども、そういう事前確認制度をなお一層整備することによって、納税者の権利確保は同時に図れると思います。

きょう申し上げたことは、皆さんに執行の重要さというものを認識していただくということでございます。執行の重要さを認識していただくとともに、これは極めて専門的な領域でございますから、専門家の教育というのが非常に必要になってまいります。法科大学院とか税務大学校で国際租税法の講義がぜひ行われるように、税務大学校ではやっておりますけれども、ご協力をお願いいたします。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

では、事務局側のほうのご説明をお願いします。

事務局

それでは、お手元の資料、基礎小8-6に沿いまして、中里委員からのご説明に補足する形で、OECDでの議論等につきましてご説明をしたいと思っております。

1ページでございますが、まず、国際課税、どういう場合に生じるかということでございますが、大きく分けて2つの局面がございまして、外国から日本に投資する、その場合に外国企業が日本の事業から得た収益についてどう課税をしていくかという問題がございます。もう一つは、逆に国内の企業が外国に進出をして、そこで事業活動を行った場合に、そういうような企業の所得をどうやって日本で課税していくかと。この2つの局面が国際課税の中で生じているわけでございます。

次に2ページでございますが、OECDでは、きょう何度かご説明がございましたが、「有害な税の競争」というプロジェクトを96年から行っております。国際化、情報化に伴いまして、足の速い経済活動、これを誘致するような有害な税の引下げ競争が全世界的に起こっているわけでございまして、これが他国の課税ベースを侵食する結果、むしろ可動性の低い、勤労所得でございますとか、消費でございますとか、こういうものに対する相対的な重課につながる、ひいては税体系の公平性、中立性を損なうという問題意識で、この「有害な税の競争」のプロジェクトが始められているわけでございます。

ちなみに、現在はフランス、アメリカ、アイルランド、日本の4カ国がこの幹事国ということで、この「有害な税の競争」のプロジェクトを進めているところでございます。

現在どういうことが行われているかと申しますと、3ページに表を書いておりますが、大きく分けて、加盟国の有害税制をなくす、それからタックス・ヘイブンの有害税制をなくす、それからタックス・ヘイブン以外の非加盟国の有害税制をなくすという3つの大きな柱がございますが、現在、加盟国の有害税制については、2003年の4月までに有害税制をなくす方向で作業が進められております。

タックス・ヘイブンにつきましては、4ページでございますが、現在、タックス・ヘイブンとの間で実効的な情報交換等、有害税制をなくすための交渉というものが行われておりまして、現在までのところ、24カ国のタックス・ヘイブンが有害税制をなくすということで約束しておりまして、今朝になりまして、カリブ海のバハマという国がさらに有害税制をなくすという約束をいたしておりまして、現時点では25カ国が約束をしております。

まだ約束していない国が10カ国強残っておりまして、今鋭意OECDで交渉しておりますが、もしそういうような有害な税制をなくさないということであれば、非協力的なタックス・ヘイブンという形でリストにして公表したいと考えているところでございます。

5ページでございますが、我が国からの対外直接投資の投資先を投資額の多い順に並べた表でございます。ここでおわかりになるように、例えば上から7番目、ケイマン諸島、あるいは下のほう、バミューダ、バハマ、こういうようなタックス・ヘイブンに対する直接投資もかなりな額に上っているという状況でございます。

すみません。ちょっと時間が押しておりますので簡単にご説明しますが、6ページでございます。こういうようなタックス・ヘイブンにつきましては、先ほど中里委員からもいろいろな租税回避の例がご説明ございましたが、典型的な例としましては、日本の居住者がタックス・ヘイブンに口座を開きまして、さまざまな投資活動をする。それに対して我が国の課税がうまくされないケースがあるのではないかということで、こういうような国際的な課税逃れにつきましては、国際的な情報交換が必要になってくると思われます。

7ページでございますが、税当局間で情報交換をするということでございますが、現行法では、それぞれの所得税法、法人税法等に調査権限規定がございまして、課税情報を交換できるわけでございますが、我が国の法制上、我が国の課税上必要でないような情報は調査権限がないとなっておりまして、そうしますと、下のほうの、課税上必要がないような情報については外国との間で情報交換ができない、したがって外国からも情報がもらえないという状況になっておりまして、今後このような税当局間の情報交換を充実させるような施策を検討すべきではないかと、特にタックス・ヘイブンとの間で情報交換するというようなことも今後検討すべきではないかと考えております。

8ページでございますが、12年の中期答申の中でも、こういうような資料情報制度については、国際化の進展に伴い充実していくべきだというご答申をいただいているところでございます。

もう一点、9ページでございますが、冒頭申し上げました、上のほうでございますが、外国企業が我が国に進出する場合に、どういうふうに外国企業に対して課税していくかという問題でございます。OECDでの議論では、この支店形態、子会社形態という2つの形態を比較しますと、支店で進出している場合にも、子会社で進出した場合とのバランスを考えて、外国法人の子会社と同じように、課税上取り扱っていくべきではないかという検討が進められているところでございます。

10ページはグローバル・トレーディング。これは国際的にいろいろな拠点に支店とか現地法人を持っている金融機関等が取引、24時間にわたってブックを回しまして金融活動をしているという場合でございまして、こういう場合にどういうふうに我が国で課税をしていくかという問題につきましても、OECD等で現在検討が行われているところでございます。

11ページは外国法人数。これは支店で進出している数でございますけれども、近年、量的にこういうような外国法人数が増加しているということでございます。

また、12ページは、こういうさまざまな事業体、量的に増えているだけではなくて、質的にも、支店、現地法人という形だけではなくて、パートナーシップというような法人格のない形で活動を行っている例も増えているということでございます。

最後になりますが、13ページは「外国法人の支店等に対する課税」「外国の多様な事業体の法人課税上の取扱い」につきまして、ご答申をいただいているところでございます。

また14ページには、そのほかの「外国税額控除制度」「移転価格税制」「過少資本税制」「タックス・ヘイブン税制」「租税回避への対応」、こういうような制度につきまして適時適切に見直しをすべきだというご答申をいただいているところでございます。

簡単でございますが、ご説明いたしました。

委員

ありがとうございました。

まだ20分ほど時間を残しておりますので、今お二人から出されました問題点等につきまして、ぜひご質問なりご意見をいただきたいと思います。

委員

事務局にちょっと質問なのですが、この国際課税関係資料、この資料になるとすぐOECDの租税委員会の話が中心になって紹介されるわけですが、WTOの問題というのが1つあると思うのですね。つまり、輸出補助金、あるいは輸入代替補助金に対する規制といいますか。これはWTOの規約に入っている話で、一方で現実問題として、これは輸出補助金的税制ではないかと見られる事例もかなり中国を中心に見られる。このWTOの輸出補助金、あるいは輸出補助金的税制の是正、これはどこがやっているのですか。

委員

事務局でもしかお答えいただけるなら……。だめでしたら、また後で。

事務局

WTO関係、必ずしも詳しくはございませんが、WTOの中で輸出を補助するような財政的な支援はだめだと、禁止をされております。したがいまして、それは補助金の場合もございますし、輸出を援助するような税制上の措置はWTOで認められていないと承知しておりまして、そういうような問題につきましては、WTOという機関そのもので議論が行われていると承知しております。

委員

いやいや、だから、日本の行政機構ではどこがどのような形で参加しているのかという質問です。

事務局

直接的には、我が国の場合などはもはや輸出促進税制的なものは排除しておりますし、そういう意味では、我が国自体の問題というよりは、多分、委員のご質問も、他国の話だと思います。それはむしろ関税局がいわゆる関税交渉の一環としてやっていくということに多分なるのだと思います。

委員

よろしいですか。

委員

だから、関税交渉の一環というのではなくて、輸出補助金的税制というのをWTOで、それこそOECDの何とか委員会、WTO租税委員会でも何でもいい、そういう組織をつくって、ひとつ総ざらいしてみようという動きがないのかどうか。ないとすれば、これは財務省が関税局を持っているわけだから、主税局もあるわけですから、もっと積極的に動くべきではないかというのが私の意見です。

まだその機運がないということですね。まあいずれということでしょうね。

では、委員、どうぞ。

委員

中里先生のペーパーの具体例の課税逃れですけれども、外国では課税封じというのは、こういう事例にはなされているのですか。

委員

外国にもよりますけれども、なされていると承知しております。あまり一般的に答えるのも何ですが、穴はどの国にもありますけれども、日本ほど大胆に穴のあいている国は、これは言い方ですが、問題があるかもしれないと思います。

委員

グローバル化の進展で、この国際課税関係、これからもいろいろな問題が出てくると思いますが、例えばアメリカの税制改革の影響ですね。今のブッシュ政権は相続税を2010年までに段階的に廃止するということですね。そうしますと、何が何でも財産を相続税から守りたいという人たちがアメリカにどんどん移り住む。移り住むかどうかわかりませんけれども、アメリカが相続税のタックス・ヘイブンになる可能性があるのではないかという見方があるわけですね。それと贈与税とか遺産税なんかは、アメリカの場合は夫と妻の間では一切かからないという問題もありますね。こういうのは日本にやはり影響してくる可能性があるのかどうかですね。アメリカがそういった相続税関係のタックス・ヘイブンになる可能性があるのかどうか、この点は、先生、どうご覧になってますか。

委員

前にある銀行が大々的に売っていた課税逃れ商品、銀行の方は課税逃れ商品だと思ってませんから、これは名誉のために、全く適法な行為ですけれども、アメリカに子供を送って、日本の父親なりが取得したアメリカ国債をその子供に贈与するということによって、日本の贈与税は非居住者が取得する国外財産ということで日本の課税権が及びませんから、日本の相続税かからないと。それからアメリカの贈与税もアメリカ国債についてはかからないということがございまして、これは大変に、一時期大はやりにはやったものです。

ただ、これは日本で法律を改正いたしまして、子供を外国に送っても5年間はだめですよと。だから5年を過ぎれば大丈夫だということで、相続税がなくならなくても、生きているうちに贈与、5年間生きる根性さえあれば、アメリカ国債の形にして贈与すれば自由ですね。

それから、すでにオーストラリアは相続税ございませんので、それは別に違法ではありませんから、日本で手段を講じなければそういうことは自由にやっていいという感覚で、またそれをアドバイスする方々も出てくるし、その方々を倫理的ないし法的に批判することはなかなか難しい。ただ政策としてそれが望ましいかどうかはまさに税調で議論するようなことだと思います。

委員

今アメリカが出たからってばたばたしないでも、カナダやオーストラリアやほうぼうそういう状態ですから、まあ慌てるなということでしょうなあ。委員からいうと。

委員

とっくにやっている(笑)。

委員

これも困るねえ。

どうぞほかに。

委員

法人税額、ここのところずっと傾向的に減ってますよねえ。あれは景気悪いからかなあと思っていたら、これのせいなのですか(笑)。

委員

どうですか、何かありますか。あるいは事務局のほうから。

委員

私は専門家ではありませんけれども、前に『エコノミスト』の記事が出ておりまして、ここ何十年かの先進国の法人税収の落ち込みは、税率下げてきたことが大きいのでしょうけれども、なぜ税率を下げざるを得なかったか。課税逃れもある種の要因になっているということは、情緒的な説明ですけれども、統計はございませんけれども、あると思います。規模が大胆。1社当たり100億円、200億円、当たり前の世界ですから、それはあると思います。

委員

いかがですか。

委員

この辺になると経済学者はあまり発言力がないのですけれども、ないというのは、要するにそれぞれの事象の重要性というのはものすごい大きいと思うのですよね。1件当たり100億円とか、あるかもしれない。だから、それがふさぐべきものなのかふさぐべきものでないのか、どこまでふさげるのか。それは全部ふさげっこないのでしょうけれども、メジャーなループホールでふさがなければ、ここに幾つか、例えば支店の扱いをどうするかとか、だから、それはふさぐべきものというのはもう少し我々の情報として与えてもらいたいし。次に言いたいのは、だからそれが日本の、この場合、企業課税にどういうインプリケーションを持つのか、そこがいつもわからないのですよね。

だから、日本の法人税率が他国より、ある国の法人税率が高ければ、それはそういうターゲットになるのかとか、あるいはこのぐらいの法人税率というのは、それが問題になっているのではなくて、もっとグローバルなスキームがある中では、もう法人税自身はとれないのだよと、そういう議論をしているのか。だから、ふさぐべきもので真剣に考えないと、人々の税に対する不信感がぬぐえない、そういう問題は何なのか。それから、こういう問題が日本の企業課税自身にもたらす意味というのか、政策的に、それを伺いたいのです。

委員

なんか難しい問題ですけれども、お答えいただくことありますか。

委員

実態を把握するために日本の国税庁に対して与えられている情報収集のための権限が、先進諸国と比べると、例えばアメリカ、それからドイツ、フランス等と比べると非常に弱い。スイスより多少武器はありますが、非常に弱いということで、まず情報の把握のための武器を国税庁が必要十分には与えられていないという……

委員

具体的にどんな点ですか。

質問検査権の行使というのが法的に非常に縛られておりまして、それはそれで意味はあるのですけれども、例えばアメリカだったら、出かけていって情報をとるのではなくて、持ってこさせるわけですね。翻訳して持ってこいとか、外国にあるものも全部持ってこいと。裁判所に出かけていって、それに従わないと1日5万ドルの裁判所侮辱罪で罰をその場で科すことができるというような、これはマークリッチケースというのがあるのですけれども、強烈な武器を与えられているわけですね。

それから執行上の、そういう租税回避が行われている場合にどこまで否認できるかということに関して、これもなかなか立法がそう簡単には追いつくものではありませんけれども、発展途上であるというところがございます。それから何よりも国境がございますから、やろうと思ってできないこともいっぱいあるということだと思います。インプリケーションは経済の先生にお考えいただきたいですね。

委員

いつもこの話の問題は、だから、一方で我々、企業課税をどうしようかとか、まさに抜本改革にかかわる議論をしているわけですよね。そのときに重要なインプットは、日本の法人税率自身を見直すきっかけになるような重要性を持つのかどうかということなのですけどね。

委員

あえて私が議論に絡むと、委員のお話を聞くと、具体例がわんわんあって、非常に重要であって、日本の法人税制も含め、なんか底が抜けてるよという印象を持っている。しかし、我々、企業課税、国際課税を一生懸命、ああせいこうせいと理論的に詰めているわけね。経済学者は。ところが、委員の話を聞くと空しくなるのだよ(笑)。そういう一生懸命の制度をつくっても。これだけあいてるよと言われて、これは空しいよと言ったって、エンドレスにあるよと言われてしまうとね。

したがって、委員には、じゃ主要なところ、メジャーなポイントを指摘してもらって、その穴ふさぎなり、経済学者がやろうとしていることについて、足かせにならないような何かないかねということですよ。法律学者の責任だと言っているわけよ。その辺はちゃんとウェイトをつけて、こことこことここだけやってくれと。

委員

この間、日本で法律事務所をやっている外国の事務所ですが、に伺ったところ、大体こういうふうに列挙されて挙がったものは、もうすでにその段階ではアメリカでは立法的手立てはとられていると。ですから、次はまた新しいものが考え出されて、それで立法的な手立てができるまでに何カ月なり何年かかりますから、その間新しい商品を売って歩くということですね。

一番基本的に使われるのは、アメリカの場合には、残念ながら組織再編成の規定。あれがどんどん複雑になっていくのですね。簡単に言いますと、普通に配当すると税金かかるのを、キャピタルゲインにとりかえると、昔は非常に税率が下がったと。そういうようなことで、それを使いまして課税のあれをやるわけですが、財務省のほうがどんどん法案をそれに対して出していきますので、税制は複雑になるけれども、一応その場ではしのいでいるということですね。

それから執行の段階では、立証責任が納税者にあります。ですから、国の歳入庁のほうはかなり思い切った更正処分ができると。さらにそれは裁判所にいきますが、裁判所には租税裁判所というのがあって、租税裁判所の場合には、あと地方裁判所でもいいのですが、租税裁判所に申し立てた場合には、税金、その場で払わないで済むのですね。決着がついた段階で払えばいいと。これがすごくメリットがありまして、なおかつ、租税裁判所ですから、相当な専門家がそろっている。ここは日本の地方裁判所と違うところで、日本ですと、訴訟にいって、お互いに危なくてどっちに転ぶかわからないというところがあるわけですね。

ですから、その制度を支えるものとしての執行の体制と、さらに司法の体制、これができてますから、ある意味で、こういう事例がどんどん出てくるのはしようがないけれども、あってふさぐことは行われているということですが、日本の場合も、委員が言われるのは、結局そういった体制を整えていく必要もあるのではないかと、こういうことです。

委員

事務局、お手が挙がっていたけれども、その辺で何かありますか。

事務局

国税庁、帰ってしまったようですので、国税庁の経験も踏まえてちょっとお話をしますと、多分3つぐらい動きがあるのだと思います。

1つは、やはり国際協調といいますか、税率なども、長年日本もやってきたように、アメリカやその他とあまり違わない税制というのを目指すという意味での協調、これが1つ。それから、同じく協調という意味では、情報収集、整備、あるいは執行も含めた協調体制。

実は世界の国税庁で協議をしてもっぱら議論されるのは、どこかが課税していてどっちにとられているかというのはしようがないのですが、どっちも課税できていないというのは世界の国税当局としては放置できないよと。要するに、経済活動のあるところからそれぞれ公平に払ってもらうというのが原則だからという意味で、アメリカも今、先生が言われたように、両国から落ちているようなものをいかにして協調によって執行で整備していくかと、こういういわば流れがあります。

そういう意味では、アメリカから強く日本に求められているのは、例えば日本の調査権限というのは日本に課税権のある企業にしか、自分の課税に関係なければいわば調査できないわけですが、アメリカから依頼を受けたら、アメリカの依頼を受けて日本の国税当局が調査できるようにしてもらえないのか、あるいは、というような資料を出せないのかと、こういう話は当然出てくるわけでございます。

それから第3点目が、そういう意味から言いますと、法人税というのは、先生が言われますとおり、かなりの、これを専門にする、あえて個別名を言ってはよくないですけれども、世界にそれをもっぱら専門とする集団があって、それを商品として売っている。それが法的に整備されるとまた別の商品へ移る。イタチごっこの部分が必ずあるので、法的にも我々もできるだけ国税庁と協議しながら法的整備を整えるのですが、どうしてもその穴を数年でも稼ぐという意味でやるところが出てくるので、やはり法人税自体は相当難しい税になってきているというのが実態の一つとしてはあるのかなと。

特に、今、先生の言われた企業分割とかそういうのを使いますと、これまた極めて複雑な税制ではありますけれども、いろいろなことも可能だとなっておりまして、そういう点ではかなり、国際的な企業の課税というのは、法人税収をどの国もお払いいただくのがだんだん難しくなっていくと。それを国際協調の中でどうやって世界相整えて適正に払ってもらうかで七転八倒しているというのが今の姿かなと、そんな感じがしますが。

委員

ありがとうございました。

ぼつぼつ時間になりましたので、特になければ終わりにしたいと思いますが、よろしゅうございますか。

国際課税、これからいよいよ重要になると思います。それで、イタチごっこみたいなところもございますが、やはり制度をしっかりつくって、それを処理するというとが重要だと思います。

次回は4月2日火曜日、午後2時からを考えております。所得課税に入る予定でございまして、これからだんだん個別の税に入っていきたいと考えております。論点が多いので……
谷口大臣。

事務局

すみません。ちょっと発言をさせていただきたいと思います。財務副大臣を拝命いたしております谷口と申します。毎回、大変真摯な議論をいただきましてありがとうございます。

冒頭いろいろ申し上げようと思っておりましたが、私自身の問題点を何点か申し上げたいと思います。

1つは法人税のあり方の問題でございまして、ご存じのとおり、この商法の考え方は債権者保護の立場に立っております。証券取引法は投資家の立場に立った法律でございまして、商法と企業会計、税制、幾たびか調整をしてきたわけでございますけれども、根本的によって立つところが違うと。そういう状況の中で、一体我が国の法人はどのようなものなのかという議論が必要なのではないかと、このように思っておるわけでございます。

と申しますのは、具体的に申し上げますと、アメリカにおいて、企業を一つの商品として売ると、M&Aでやるといったようなやり方がいいのかどうか。例えばドイツ法の商法の考え方でいきますと、経営者があり、従業員があり、債権者がありと、こういう利害関係者を含めた形での企業のあり方、このようなあり方によってその考え方が変わるだろうと思うわけでございます。

もう一つは、現行の税法体系が、法人税の体系が法人擬制説の立場に立っておるわけでございます。こうなりますと、例えば、私、平成6年の税制改正大綱をつくりましたが、その折に赤字法人課税の議論をいたしまして、現実に、例えば均等割を課すといったようなことは擬制説の立場ではできないわけでございます。このような擬制説の立場が今後も残っていいのかどうかというような観点もあるのだろうと思います。

もう一つは、公示制度について私はお話をさせていただきたいと思いますが、所得番付と言われるものでございますが、総理も「努力が報われる社会」とおっしゃっておるわけでございまして、現行の公示制度は、昭和24年のシャウプ勧告の結果、翌年の25年に第三者通報制度とともに成り立っておるわけでございまして、多額の納税をした人にペナルティを科すといったようなやり方が果たしてこれでいいのかどうか。このようなことも含めて、この公示制度のあり方についても検討をお願いできればと考えておるわけでございます。

あと何点かあるわけでございますが、特に気のついたところはそのような観点でございまして、私の問題点をお話しさせていただいたということでございます。

委員

大変重要なご指摘をいただきました。いずれ個別の税になったときに、この種の問題、必ず出てまいります。そういう公示制度、昭和25年以来、検討をあまりしてないと思いますので、いずれまた議論になろうかと思います。

よろしゅうございますか、ほかに。

委員

今お話しがございました公示制度、25年から29年に第三者通報、終わりましたけれども、所得を公示するというので、すぐ、あの人はこれだけもうけている、寄附よこせとか、そういう話になる。いろいろ議論をしまして、昭和59年度の改正で、今の総理が、これは全額でいこうというふうな議論を持ち出されて、税額ならまあいいだろうということで一応は安定している。それから、この数十年間に一応は見直しが行われたということですが、なお税額公示になっても問題があるとすればどんなところだろうか。検討はしなければいけないと思いますが。

委員

ありがとうございました。

それでは、次回4月2日は2時からということと、個別の税に入るということと、それから個別の税の議論を始める前に、やはり我々が税制の基盤に置いています経済社会の姿、これは大分変化をしてきておりますので、その辺の議論も幅広く行いたいと考えております。

したがって、次回の3月26日の総会には大きな問題も少し、基礎問題小委員会に先駆けて問題提起をさせていただこうかと考えておりますので、その辺あらかじめご了承いただきたいと思います。事務局のほうもよろしいですね。

それでは、きょうはこれで終わりにいたしたいと思います。どうも長時間ありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。