第6回基礎問題小委員会 議事録

平成14年2月15日開催

委員

それでは、時間になりましたので、第6回基礎問題小委員会を開催いたしたいと思います。

きょうは、財務副大臣の尾辻さんがお見えでございます。よろしくお願いします。それから、後ほど吉田財務大臣政務官も御出席いただけるとのことでございます。

きょうは、議題といたしましては、田近さんに、レーガン税制についてお話をいただくのですが、それと併せて、事務局のほうから、税の空洞化並びに諸外国の事情を御説明いただくという形にいたしまして、幅広くいろいろな形で税の議論を進めていきたいと思います。

議論に入る前に、国民との対話集会、いわゆる地方公聴会というものを考えております。だんだん具体化してまいりましたので、その点につきまして御紹介しておきます。またお願いしなければならない方々もいらっしゃいますので。

お手元に資料がいっていると思いますが、3月に2回。第1回目が18日に千葉市、第2回目が25日に鹿児島市と決まりました。現在、日程調整しておりますが、4月もできたら4カ所ぐらい。北から南、まだ決まっておりませんが、そこで開催いたしたいと思います。

これは、税の議論を本格化する前に、いわば白紙の状態で国民の方々と対話を重ねたいという趣旨でございます。目下、意見の発表者等々、あるいは傍聴人の方々を一般にどう募集しようか等々、議論を詰めているところであります。やり方は、私以外に3名程度の委員の方に御参加いただきまして、また、経済財政諮問会議の方にも声をかけて、1~2名に来ていただこうと。こちらが5~6名という形で、フロアからも自由に御議論いただき、対話集会の実を上げたいと考えております。

それでは、具体的な審議に入りたいと思います。

最初に、現状を把握する必要もあると思いますので、「財政及び税制の現状」という形で、事務局から御説明いただこうと思っております。

それでは、お願いします。

事務局

恐縮でございますが、お手元にあります資料は、「基礎小6-1 税の空洞化」という題の縦長の紙、それから、「基礎小6-2」という横長の少し厚い紙でございます。この厚いほうの「説明資料」でございますが、これは、いままで御説明いたしました資料を、予算の数字等を踏まえてリニューしたものが中心でございます。議論の初めに当たりまして、復習を兼ねまして、簡潔に御紹介いたしたいと思います。

それから、「税の空洞化」という資料は、この説明資料の中にありますものから、いま、税の機能とか役割が損なわれている現象を、やや正確さを欠くのは承知の上で、訴求力のある表現としてまとめたものでございます。これも適宜参照しながら、御説明させていただきたいと思います。

まず、財政のほうの現状でございます。めくっていただきまして、1ページ目、これもいつも使っている表で恐縮でございますが、我々、「ワニの図」と称しております。口を開いたような形で、余談でございますが、FTのほうにも「ゲーピング・アリゲーターの図」ということで紹介されたものでございます。

これのポイントでございます。一つ目、14年度予算におきます一般会計の税収ですが、46兆8,000億円でございます。さかのぼりますと、昭和62年度、このときが46兆8,000億円でございますので、ここと同レベルまで落ちているということでございます。この間、名目GDPは4割近く増えておりますが、税収としては同じ。昭和62年度は、実は、税収で歳出の8割以上を賄えていたわけでございますが、これが、現在は57.6%。下に書いてございます数字ですが、6割賄えていないという状況でございます。

1枚おめくりいただきまして、こういった状況によりまして、公債残高が累増を見ている。14年度末の見込みが414兆円ということで、ちょうど昭和60年度から3倍強に残高が膨らむということでございますが、実は、右のほうの黒い棒グラフ、これが利払費の数字でございます。平成14年度の予算ベースでございますが、9兆6,000億円が利払費でございます。60年度を見ていただきますと、9兆7,000億円で、ほぼ同じという数字でございまして、借金の残高は3倍になっても利払費は抑えられている。これは、申すまでもございませんが、低金利と、国債管理政策を四苦八苦しながら何とか回しているということの成果でございます。

次に、地方の話がございますので、6ページ目までいっていただきまして、国際的に見ました財政の状況でございます。これは、毎年毎年のフローの赤字、黒字の数字でございます。G7諸国のうち、ほかの6カ国--足元ちょっと経済状況が悪化する見込みでございますけれども--いずれも、財政収支を改善させているのに対しまして、日本は逐次悪化の一途をたどっておりまして、ようやくこのところ下げ止まったのかなという数字になっています。先進7カ国の中では飛び抜けて悪い。

それを残高ベースで見たものが、7ページ目でございます。これも見ていただきますと、1990年代の初めから日本はどんどん債務累積いたしまして、2002年の見込みでございますが、GDPの140%を超えるところ。イタリア、カナダが100%近いところにございますが、見ていただくとわかりますように、これはいずれも改善しているということでございます。

ちなみに例のEUの統合に参加します条件が、フローのほうの財政赤字が3%、ストックのほうで原則GDPの60%以内ということで、こちらのストックのほうは少し基準が甘いものですから、イタリアもクリアしているわけでございます。いずれにしましても、日本はEUに入れる状態ではないというのが、財政の状況でございます。

8ページ目、「近年の税制改革等の流れ」、それから9ページ目、これは、ちょっと長くなりますので御説明を割愛させていただきますが、ポイントは、平成11年から6兆6,000億円の恒久的な減税が続いているということでございます。

これをややポンチ絵的に示したものが、次のページ、10ページ目でございます。見ていただきますとわかりますように、ここ4カ年にわたりまして--その前の特別減税まで含めますと、5カ年にわたりまして、6兆円を超える減税、経済対策を毎年毎年打ってきているという状況にございます。

その下に実線で書いてございます部分が、税収の推移でございます。実は、平成12年度、13年度と、郵貯の集中満期で源泉利子の分が上ぶれている。この要素を除いてみたのが点線の部分でございますが、はっきりいたしておりますように、平成10年度、11年度のところで一段、段差がついた形で凹んでいるというのがいまの税制の状況でございます。

その次は、「国民負担率の推移」ということで、これも平成の最初に比べるとずいぶん減っているということ。

それから、12ページ目でございます。これは、いままでは歴史でございましたけれども、国際的に横切りにして見た数字でございます。それぞれの税の性質ごとに分けてございますが、下のほうから、租税負担、それに白抜きの部分、社会保障負担が乗りまして、これが国民負担になっているわけでございますが、その上に灰色の部分、財政赤字が乗っております。これを合わせた総体としての棒の高さ、我々は「潜在的な国民負担率」と呼んでおりますが、これが歳出の規模にほぼ匹敵するということでございます。

こうやって並べてみますと、アメリカは低福祉・低負担の国、ヨーロッパ諸国は一般に高福祉・高負担の国ということでございまして、歳出面から見ますと、たしかに日本は中福祉と言っていいのか、その中間にはまっているということでございます。これは、申すまでもございません、上に8.6%の財政赤字が乗っかっているということでございまして、国民負担で見ますと、ヨーロッパ諸国からは圧倒的に低い水準になるのは言うまでもございませんが、アメリカと比べても決して高い水準にはない。さらに、社会保障負担の部分がございますので、これを除いた租税負担の部分で見ますと、逆転いたしまして、アメリカの26.1%に対して22.9%。ほかの国と比べても圧倒的に低いという状況でございます。

中を見ていただきますと、個人所得課税が6.8%ということで、これも、直接税中心のアメリカは言うに及ばず、間接税中心と言われておりますフランスと比べても低い。それから、消費課税も、ヨーロッパ諸国に比べますと、低い水準にとどまっているのが特徴かと思われます。

G5以外の国とも比べてみたものが、13ページ目でございます。

14ページが、OECD30カ国の中で比べたものでございますが、この中でも、メキシコを除きまして日本が最下位という水準にあるわけでございます。

もう1枚めくっていただきまして、これは国税だけの比較で恐縮ですが、日本は、いま問題になっておりますアルゼンチンよりも租税負担率は低い状況にあるわけでございます。

16ページ目でございます。ここからは、税の空洞化の議論で出てまいります話でございますが、所得税をお支払いいただいている方が働いていらっしゃる方の4分の3程度ということで、4分の1の方はお納めいただいていないということでございます。ここにつきましては、先だっての小委員会の席でも「非納税者の中身について」という御質問がございましたので、若干詳しく御説明させていただきますと、実は非納税者の数は引き算で推計しておりまして、中身がなかなかわかりにくい。と申しますのは、労働力人口のところの就業者数、これは、労働力調査から持ってまいりまして、他方、5番目の棒でございますけれども、こちらの納税者数を、私どもの手元にあります国税庁の統計等から推計いたしまして、その差の部分、これが、働いていらっしゃる方の中でお納めいただいていないということで、大体4分の1の方が非納税者であろうということを推計しているわけでございます。

というわけで、なかなか中身がわかりにくいのですが、18ページまで飛んでいただきまして、これも国税庁の統計でございますけれども、「民間給与の実態」という調査がございます。ここに、非納税者、お納めいただいていない方の収入階層別の数字がございました。見ていただきますとわかりますように、100万円、200万円が中心でございます。ここで全体の3分の2程度。300万円まで延ばすと、8割弱の方がこの収入階層にはまってくるということでございますが、一方、右のほうを見ていただきますと、900万円から1,000万円の階層、686人でございますが、この方たちは、私どもが把握している限りでも税金は納めていただいていないということでございます。

もう1枚めくっていただきまして、やや不正確かもしれませんが、そのイメージということで、それぞれの方がどういう控除を受けているかというのが、マクロ的に統計としてとれておりますので、これを機械的に割算いたしました。見ていただきますと、例えば配偶者控除のところは平均配偶者数0.7人とあります。配偶者は分けられませんので、本当は控除が分けられるはずはないのですが、単純平均の機械計算をしたものがこの数字でございます。

このケースは、年間収入が300~400万円のケースの方、この方の給与の平均が350万円弱、給与所得控除が120万円強。これから所得控除といたしまして、配偶者10人のうち7人の方が控除対象配偶者がいらっしゃるということで、3人の方は独身、あるいは共稼ぎの方だと思われますが、この控除。それから扶養のほうは、そこにございますように、平均扶養親族1.6人と、平均特定扶養親族0.3人ということで、大体2人、お子さんがいらっしゃるのだろうなということ。それから、扶養していらっしゃる老人の方、これは数からしますと、ほとんど同居のケースのようですけれども、10人に3人の方がはまっている。それから、10人に1人が障害者の方を扶養していらっしゃるということでございまして、これ等々を加算いたしますと、所得控除の合計が247万2,000円という機械計算になります。したがって、給与所得控除と所得控除を引き去りますと、課税所得はなくなるというのが実態でございます。

その次のページは、先ほども申し上げました、一番高い収入階層の方の状況を同じような機械計算をしてみたものでございます。給与収入の平均が935万円、これに対しまして給与所得が213万円。所得のほうを見ますと、配偶者が1.0人ということで、皆さん控除対象配偶者をお持ちの方。扶養のほうも、扶養控除、特定扶養控除を合わせますと、2.8人と、大体3人ぐらい。お子さんというか、扶養している方がわりあい多い。あと、障害者が0.5人でございますので、2人に1人は障害者の方を抱えているということかと思いますが、これで計算いたしまして、所得控除の合計が459万円弱。課税所得から税負担を計算しますと、26万3,000円になるわけでございますが、住宅取得控除がございますので、これで大体消えてしまうということでございます。

ただ、これは、源泉徴収の世界だけでとらえられている分でございますので、確定申告して医療費の還付等を受けて、そこで税金がなくなっている方については、統計上もとらえようがないというのが実情でございます。

21ページ目でございますが、これも宿題をちょうだいしましたので、世帯の稼得構造の変化ということで調べてみたものでございます。そこに、「夫婦とも就業している世帯数(B)」と「夫婦とも雇用者の世帯数(C)」というのが書いてございます。夫婦のいる世帯の中で夫婦とも就業している世帯数は、下から2欄目でございますが、一たん微増して微減しているというか、比較的安定的に推移しているようでございます。これは、一般の実感とやや違うのでございますが、C/Aという、夫婦とも雇用者、我々がイメージしています共働きの方の数字は、中期的に増える傾向にあるということでございまして、夫婦とも就業している世帯は、個人商店、あるいは農業をやっていらっしゃる方、こういったところが入っているのではないか。そのために、安定的にそれが振りかわる形になっているのではないかと思われるところでございます。

以下、22ページ、23ページの資料は最前御説明させていただきましたので、省略いたしまして、25ページでございます。「課税最低限の国際比較」の表で、これも何度か使わせていただいておりますが、夫婦子2人で通常比べているところでいきますと、日本は課税最低限が高いということでございます。ただし、課税最低限というのは控除の集まりでございますので、家族構成が違ってくると、それぞれ違った課税最低限があるということを示したものでございます。

それから、26ページ、27ページ、これも最前から御説明しておりますが、あらゆる給与階層で比べて、日本は国際的に見て所得課税負担が低いということでございます。

28ページ目は、実効税率のグラフでございます。ここでも特徴的なのは、日本の場合、ちょうど500万円から1,500万円ぐらいの階層と言っていいのでしょうか、ここの収入階層のところがまっ平らになっているというのが、国際的に見た実効税率カーブとの違いと言ってよろしいかと思います。

29ページ目ですが、「土地譲渡所得の課税状況」でございます。10兆円を超える譲渡益があるわけでございますが、課税ベースを特別控除等の形で狭めておりまして、実際課税所得となっている部分は3兆6,000億円と縮んだものになっている、実効税負担の割合も6.1%にとどまっているということでございます。

それから30ページは、これも、最前から言っております欠損法人が約7割、上位のほうに法人税額の負担は集中しているという話でございます。

2枚めくっていただきまして、32ページも、累損が非常にたまった状況にありまして、経済がよくなっても法人税収はそう簡単に増える構造にないという御説明でございます。

33ページ以下のところでございますが、相続税の負担の問題でございます。「税の空洞化」の資料に書いてございますけれども、バブル期以降の減税や特例の拡充で相続税負担は大幅に緩和しているということと、相続税を実際に御負担いただいているのは、亡くなった方の100人のうち5人という数字になっているということです。

最後の35ページ、36ページでございますが、消費税につきましては、付加価値税を採用している国の中では税率が最低水準であることと、全事業者のうち6割強の方が免税事業者になっていることの説明資料でございます。

恐縮ですが、駆け足で以上でございます。

事務局

いまと同じ説明資料で御説明いたしまして、地方税関係を若干補足させていただきます。

3ページ、財政の関係で、地方税収の全体の推移を掲げさせております。ここしばらくは30兆円、35兆円前後で推移してきております。

4ページは、地方財政の財源不足の状況を上のほうに掲げさせていただいておりますが、特に平成6年以降、毎年、相当巨額の財源不足が出まして、これを地方財政対策で埋めてきているということであります。下のほうの実質的な公債依存度につきましても、やはり6年以降非常に高くなりまして、14年度では16.5%という形になっております。

5ページですが、借入金残高も、そういう状況下で近年非常に増えておりまして、平成14年度は195兆円。平成3年と比べますと、2.8倍で、125兆円の増になっております。

次に、だいぶ飛びますが、17ページをお願いいたします。先ほど、所得税で勤労者の4人に1人がお支払いいただいていないということがありましたが、同じような計算を個人住民税の所得割にしたのがこれでございます。若干結果が違いますが、当然ながら課税最低限の違いもございまして、一番下にありますように、個人住民税の所得割の場合には、4人に1人ではなくて、5人に1人程度が納税義務者でないということでございます。

31ページに飛んでいただきまして、同じような空洞化の関係で、法人の関係でございます。法人事業税について見てみますと、利益法人の数が31.6%。法人税と違いますのは、国内所得に限っているということで、利益法人の割合も若干違っておりますが、いずれにしても7割近くが欠損法人という中で、税負担は、65%ぐらいが資本金1億円以上の会社に集中している点は法人税と同様の傾向になっております。

簡単ですが、以上でございます。よろしくお願いします。

委員

ありがとうございました。

それでは、いまから3時ごろまで時間をゆっくりとって、いま御説明いただきました財政・税制の現状を踏まえて、これからどんな形で税制改革論議をしていったらいいか、大きな視点から御議論いただきたいと思います。

同時に、いまマスコミ報道などでは、デフレ対策として税制を使ってはどうかという話もあり、我々としては、税制改革は構造改革の一環としてきておりますが、そういう短期的な話はどう取り扱ったらいいか、きょういただきました資料等々をながめながら、少し先行きを見通しながら御議論いただけたらと思います。どうぞ、どなたからでも結構でございますから。

委員

質問ですけれども、いま説明していただいた資料の中で、25ページ、課税最低限の国際比較が出ております。夫婦子2人、夫婦のみ、夫婦子1人、独身、いずれも日本が非常に高いですね。アメリカよりも高いということですけれども、専門家の一部には、これは購買力平価で見るべきではないかという意見があります。購買力平価で見ると、日本の課税最低限は決して高くない、アメリカよりも下だ、こういう意見があるわけです。これはどういうふうに見ておられますか。

それと、税の空洞化がこのように激しくなったのは、これまでの総需要拡大政策が大きな原因になっていると思いますけれども、もう一つ、国際化の要因もあるのではないかと思います。最近よく聞く話ですけれども、高額所得者が日本から逃げ出す傾向が現に出てきている。ソフト産業の開発担当者などは、もう日本に居住する必要は全くないと言うわけですね。

もう一つ例を挙げますと、印紙税もアメリカは無税になっていて、何も日本で払う必要はないと。ですから、ハワイにいっぱい契約書を持って行って、ハワイで契約書を作成する。そうすると完全に日本の印紙税は免れる、こういうことも現に起きているという話を聞きます。

こういった税の空洞化における国際化の要因をどの程度把握されているか、説明いただければと思います。

事務局

まず、購買力平価のほうからお答えさせていただきます。確かにおっしゃるような御意見があるのは私どもも知っております。そもそも購買力平価なるものが、いろいろ取り方があるものですから、だいぶ幅がある。ただ、総じて言えば、おっしゃるようにいまの為替水準よりは安いところにあるということでございます。これは、もう架空の数字になってしまいますので、正しい、正しくないということよりも、むしろそれも踏まえて御議論いただくということではないかと思っております。

それから、国際化の話は、私もあまり見識がないので恐縮でございますけれども、国際化の問題について、できればお時間をとっていただいて御議論いただければというように思っております。

事務局

ちょっと補足させていただきます。購買力平価の話とは別に、12ページをお開きいただきますと、アメリカの国民所得との比較で言う国民負担率で、例えば、日本の所得税は国民所得比6.8%しかない、アメリカは13.4%あるということは、国民所得に対するウエートが倍を占めている事実があることは事実だと思います。そこの点は、購買力であるか否かは別としても、国民所得で見たウエートは、それだけ所得課税としてアメリカは払っているということが一つ示しているのではないかと思う次第です。

委員

購買力平価云々は違う物差しを当てて議論しようということですから、ちょっと難しい議論にはなりますよね。国際比較をするときに必ず出てくる問題でありますので、どうするかも含めて御議論いただこうと思います。

委員、いまの後段の話で、高額者が逃げているとか何とかという話、あなた、詳しい情報を持っているでしょう。

委員

その前に課税最低限についてですけれども、給与所得控除が入っているわけですが、国際比較のところで、アメリカとか、実額の費用をとっているところの給与所得者の費用については、この課税最低限を計算する際にどのように扱っているのでしょうか。

事務局

アメリカの場合、実額控除ではございますけれども、概算控除という制度もございます。7,850ドル、かなりの方はこちらを使われているということですので、この概算控除の数字を使って計算しております。

委員

わかりました。前にあるところで、給与所得控除を課税最低限の計算に入れるのは間違いではないかということをおっしゃる方がいて、必ずしもそうではないのではないかと思って確認させていただいただけです。

高額所得者が逃れているというのは……。

委員

国際課税というと、ボーダーレスで動いているモノとか、カネとか、ヒトの動きで、税を逃れるためにいろいろなことをやっていて、いま、「高額所得者が逃げているのではないか」という話があったから、あなたなら情報があるのではないかと思って聞いただけです。

委員

個別的には幾らでもありますけれども、さしさわり……。

委員

そういう意味ではなくて、ヨーロッパでは、よくスウェーデンが逃げているとか何か言ってたよね。そういうふうにマクロ的に議論しなければならないほど、わが国の税制にも影響が出てきているのかなというのが僕の個人的疑問ですが、それほどまだ多くはないのでしょう?

委員

いえ、統計はありませんけれども、実感としては、しかるべき方はしかるべくしていると。個人所得税のレベルでやっている方もいらっしゃいますし、それから、小さな会社を使って、その会社の税金をという形でやっていらっしゃる方もいます。それから、これはもっとさしさわりがありますが、高名な方でなさっている方もいらっしゃるという話ですし、あれだけ優秀な方がああいうビジネスにあんなにいらっしゃるということは……「あんなに」というのも何か漠然とした言い方ですが、お客さんがいるからこそ、そういう職業の方も高額な報酬をとっていらっしゃるのではないか。いい悪いは別として、そういうふうに思います。

委員

そうですか。いずれ、議論する時期が来るかもしれません。

委員

技術的なことですが、二つあります。非常にわかりやすい説明だったのですけれども、課税最低限というか、そこまでは税金がかからない所得の比較をされたわけですけれども、端的に言えば、いろいろな所得階層の所得に対して課税所得がどのくらいになるか、そういうのをお出しになれば話はもっとすっきりすると思います。というのは、19ページに、それぞれの所得階層の平均的な人を考えて税負担を考えたと。いろいろな計算もあると思うのですけれども、日本の所得税はマクロで見る限り、また我々の実感としても、かなり負担が低くなっていることは確かです。それをもう少しきちんと示そうとしたら、所得階層別で課税所得がどれくらいになっているか、それから、19ページで示されたようなことを幾つかの国で出してもらうと、ものすごくわかりやすくなると思います。

もう一つ、技術的なことで、租税負担率の議論をするときにいつもナショナルインカムなんですね。間接税を引かれている。これはこれで考え方があるのでしょうが、答えはどのくらい変わるのか知りませんけれども、GDPで出したのも持っていらしたほうがいいと思います。

委員

GDPも用意されていると思いますけれども、伝統的にここはナショナルインカムでやっているのでね。減価償却等々の問題があるからでしょう。

ほかに。

委員

空洞化の話でございますけれども、課税最低限の前に4分の1という数字が出ております。これは非常にわかりやすくて説得力があるのですけれども、では、アメリカはどうだろうか、ドイツはどうだろうか、と。外国の数字の資料「6-3」を拝見しましても、そこらは必ずしもはっきりしない。もしそれでもって、かなり差があるということで説得力があるのでしたら、大いに4分の1を使っていいと思いますが、その点、外国はどうなのだろうかというのが一つ気にかかるところでございます。

それから、給与所得者の課税最低限ですが、いまもお話がいろいろ出ておりますけれども、4人世帯でやりますと、給与所得控除というのが非常に大きくなる。もう一つは、いろいろな数字にも出ておりますけれども、配偶者特別控除を足した配偶者の部分が非常に高い。ですから、独身者についてはそう国際的にどうこうというあれでもない。問題は、給与所得控除と配偶者の扱いではないかというふうな気がします。

それから、扶養であれば特定扶養控除でございます。これは、ある時代に、消費税をやらなければいけないが、所得税はある程度目に見える減税もしておかなければいけないというときに、お金をあまり使わない方法で減税をするとすれば、扶養なり配偶者に特別控除をつくって、それを標準ケースに入れれば課税最低限がかなり大幅に上がるという点もあったような気がします。

そういう意味において、ここで基本的に見直すとすれば、課税最低限一本というよりも、給与所得控除、あるいは配偶者に対する扱い--いま、個人単位課税と言いますけれども、ある意味では世帯課税みたいなものですから、そこを徹底して個人課税で、配偶者、奥さんも、独立の納税者として一人の基礎控除だけ適用すればいいではないかと、そういう考え方もある。課税最低限が高いというその名目的な金額だけではなくて、中身で絞って議論をすると、実のあるものになっていくのかなという気がいたします。

それから、空洞化の一つとして、相続税で100人に5人であるという数字がよく言われております。これも非常に耳に入りやすいのですけれども、この参考資料集の数字で相続税を見てみますと、昭和30年代は1%か2%。ほとんど1%、100人に1人だった。これは、昭和33年でございましたか、抜本的な相続税の仕組みの改正を行って、それを受けてほとんど1%か2%で推移している。このあたりを含めて、5人というのをどういうふうに計算するか。これも国際比較として、外国は10人だ、20人だという数字があれば、5人でも使えますけれども、日本の沿革を見た場合に、5というのを大いに持ち出していくとすれば、30年代、40年代との比較で、そこをどういうふうに説明するかを考えておく必要があるのではないかと思います。

委員

どう考えたらいいのですか。1人しかいないというのと、いま、5人いるというところで考えろというけれども、何かお答えをお持ちなのでしょう。5人をあまり言わないほうがいいということを言いたいがために、そうおっしゃったのですか。

委員

はい。5人というのは、40年代、30年代は1人であったではないか、それに対してどう言っていくのかなと。

委員

だから、そこはどういうふうに見るんですか。

委員

所得税というものとひっくるめて、所得課税の補完をするものである、一体として考えるべきだということであれば、いまの税率水準は見直す必要はあるけれども、課税対象をそう絞る必要はないのではないか。マクロ的にはそんな感じがします。

委員

5人でなくて10人でもいい、という感じですか。

委員

そうでございます。しかし、所得税と補完的な関係があるとすれば、いまの税率がそれでいいのかなと。それはあるんですけれども、それが世の中にうまく入っていくのかなという心配はあります。

委員

空洞化の国際比較については事務局に宿題を出してあるのですが、想像してもすぐわかるように、大変難しいということでそう簡単に出てこない。いずれ何か出てくることを期待しましょう。

委員

相続税を納めているのは全体の5%というお話で、前に、民法の相続法関係の会合ですけれども、そこで社会学的な見地から調べたら、日本では遺言を書いている人が5%にすぎなかったという話がありまして、オヤッと思いましたところ、相続税を納めている割合にぴったり合っている。遺言というのは財産のない人は書きませんので、民法の先生が言われているように、誰もが遺書を書くというのはおかしい話。そうすると、5%というのはある程度の財産の保有者であるということで、一つの合理的な線におさまっているのかという感じが私はしたのですけれども。

ついでに贈与税のお話です。相続税のほうは事業承継で問題になりますが、さて、贈与税というのはどうなのだろうかと。よその国では、むしろ贈与税が軽かったために生前に贈与をするなりして、最終的には相続税はあまりあてにしていなかった。日本は、1億円を超えますと、2,000万円でしたでしょうか、最高税率までいってしまうのは。1億円ですね、70%までいってしまいますが、ここを緩めて、高齢化社会の中での高齢の息子と高齢の親との間の財産移転を、もうちょっと低い段階でできるようにするのか。そういった点について私はまだ判断しかねているのですけれども、相続税と併せて議論いただけたらと思っております。

委員

いま言った高齢者同士の移転ではしょうがないから、生前贈与をもう少し広げていいと、森前総理が発言されたことがあるよね。いずれ、それも議論しましょう。

委員

払っていない比率の国際比較、作業がだいぶ難しいということですが、だったら、4分の1なんて数字はあまり出さないほうがいいですよ。この資料を見ると、相変わらず従来の資料の繰り返しという感じがします。特に、所得税、課税最低限がこれだけかまびすしく言われている状況において、資料のほうももっとかっちりしたものをつくってもらいたいという要望です。

いま事務局は、アメリカと日本の比較で、アメリカは所得課税が13.4%、日本は6.8%、だから所得税は軽い、これは事実として認めざるを得ない、こういうおっしゃり方をされた。このデータを見る限りそのとおりなのですが、どういう所得税なのか。アメリカの所得税の収入というのは、どういう所得から発生する所得の比率で構成されているのかというあたりも、少し詰めて出してもらいたいという気がするわけです。

この話によると、この資料もそうなんだけれども、全部給与所得者を引き合いに出すわけです。所得税というのは給与所得が大宗なのかもしれませんが、考えようによっては、給与所得に少し所得税が偏り過ぎているのではないか、そういう一面もなきにしもあらず。あくまで想像ですが。そういった点からも所得税収の内訳にも踏み込む必要があるのではないかというふうに思います。

あと、先ほどの4分の1の議論に戻るのですが、私はこの前、もう少し国際比較をしてみてもらいたいという要望を出したのは、一つには、所得の5分位で、私、自分で日米比較を調べたことがあります。そうすると、380万円ぐらいは第1分位なんです。一番下の2割の層に入るのです。404万円ぐらいが1分位と2分位の境目。ところが、アメリカで2万1,000ドルとか2万2,000ドルというのは第2分位の真ん中ぐらい。実感から言っても、アメリカで2万ドル以上取るというと、そう貧困ではないという印象があるわけです。そこら辺からしましても、この国際比較とか4分の1の議論というのは、もう少し詰めたほうがいいのではないか。

それと、この資料に関して質問、あるいは意見みたくなってしまうわけですが、19ページに「非納税者のイメージ-機械的計算例」という試算を出されています。私の印象では、これは機械的と断っていらっしゃいますが、機械的過ぎるという感じがします。つまり、こういう世帯というのは本当に現存しているのか、ということです。給与が348万8,000円、月収に直すと30万円以下。夫婦子2人がいて、そのうち1人が特定扶養控除、高校生か大学生。しかも、配偶者特別控除がフルに生きている。そういう家庭で奥さんが働いていないのかということ。奥さんが働いていれば、配偶者特別控除はフルにはいかない。だんだん減っていくわけです。

もう少し実態に合わせた試算をする必要があるのではないか。こういう試算をすると、これがマスコミによってひとりでに流布する。そうすると、日本の所得税は高い、給与所得者は優遇されているみたいな話になる。ちょっと実態を踏まえない議論に向かってしまう懸念を感じます。要するに、資料的な整備があってこれはしょうがないということだったら、そこからまた議論の発想が変わってくるのではないかという感じがいたします。事務局の方、御苦労でしょうけれども、もう一段の御奮闘をお願いしたいと思います。

委員

委員を説得するような資料を出していただかないと、なかなか議論が進まないかもしれません。

委員

いままで出た議論に全部関連するのですけれども、ここに出されている資料によれば、第1回が千葉で、第2回が鹿児島で、あと5、6回、4月に数カ所やりますよと、対話集会が書いてありますね。いま、ここで事務当局が説明したものをベースに、会長の方針だから、最初は個別税目に入らないで、全般として国民が税についてどういう印象を持っているかということについて素直に話を聞こうというのが前段の話で、後段で、もうちょっと方向性を我々が決めたときには今度はそれを訴える。2段階のやり方で対話集会をやろうとしているわけです。それは僕は理にかなっていることだと思うんですよ。

世論調査をやってみると、長い長い税金に関係する世論調査というのがあって、あるときは地価税を導入だとか、消費税だとか、いろいろあったのですが、一般的に言って、国民の税負担感は重いということになっているんだね。しかし、我々から見れば、細かいことはいろいろあるかもしれないけれども、基本的にはそんな重いという……。実感と事実との間には、ずいぶん差があるのではないかという気がいつもしているんです。

だから、これを素直に出したらいいではないかというのが僕の一つの考えなんだけれども、同時に、国民の実感というのは自分自身の生活のあれに根ざしているものだから、個別具体的にそれぞれ特殊性をみんな持っているわけです。それを頭から、いや、おまえさんは基本的に間違っていると。おまえのは特殊ケース、全般はこうだ、だからこれをベースに次の議論をしてちょうだいねと言わなければいけないけれども、それにしても、もうちょっときめ細かい説明があったほうが……。例えば、赤字法人は7割払っていないとか、いろいろあるけれども、もうちょっと丁寧な説明をした上で、「やっぱりそうでしょう、ずいぶんギャップがありますね」ということについて説明したほうが、説得力があると思うんです。下手すると、「何かわけのわからない数字を並べて我々をだまかしているのか、実感から言ったら重いんだ」ということを一方的に言う人も結構残るんです、何をしゃべっても、この話は。

例えば、物価水準が高いか低いかといったら、戦後40年間ぐらい、物価は高いと言っているわけです。いまは全然違うけれども。物価水準のアンケートを新聞はやらないから、答えはないけれども、税金はいつやっても「重い」と出てくる。いくら説明してもそうなんですよ。これは、細かいことを別にすれば、税調の主要メンバーの認識とはものすごいギャップがあるわけだ。これを埋める努力をスタートでしなければ、秋以降、個別税制について議論する場合、足がかりがなくなってしまう。またそこへ戻ってしまうからね。

そういう意味で、細かいことはよくわからないけれども、どこから突かれても大丈夫、「やっぱりそうですか」ということで納得できるような数字を、せめて対話集会が始まるまでにはつくっておかないといけない、ちゃんとわかるように。そういうことだけお願いしておきたい。

委員

ミクロ的にケーススタディみたいなものを加えたほうがいいだろう、という御意見ですか。マクロ的につくれば低いことになるけれども、個々の人は、身近に自分のふところと勘案をして、重い、重いと言ってるわけですよ。そのギャップをなくすために、個々の家計とか、個々の所得の稼得者のケースを二つ、三つ挙げて具体的にやるとか、そういう工夫は必要だろうということですね。

委員

そうしないと、全体のそれと自分との間が離れ過ぎて、想像力が及ばない。

委員

ギャップがあるんだよね。はい、わかりました。

委員

いまの委員の御発言にも関連するのですが、地方公聴会でどういう議論の仕方をするかということです。私が出るわけではないんですけれども、いま出ている空洞化のような議論を、3月18日に、国民一般の人たちを相手に「あなた方は税についてどう思っていますか」という質問をすると、昨日の自民党の税調のような話で、要するに景気との関連でしか答えは返ってこないと思います。そうすると、いま出ているような議論は相当の落差がある。これはこれで私は必要な議論だと思うのですが、当座、景気問題にどういうふうに答えるのかという観点ですよね。

それから、「こんなに景気が悪いのだから、税金をまけてもらわないと困る」というような質問が出たときに、いや、景気に対して税の機能というのはこういうことなんですよ、と。あるいは、皆さんはいっぱい払っていると思っているけれども、そうでもないんですよというような、かみ合った議論にならないと対話にならないのではないかと思います。

私流に分けると、当面の景気対策としての税のあり方--それは企業に影響することになるかもしれませんけれども--それから、空洞化に対応した本来の税のあり方論、その二つ、一部と二部に分かれると思うのです。ところが、3月の云々ということを前提に仮にここで議論するとすれば、いま出ているようなことを言ったら、「何を言ってるんだ、この人たちは」という話だと思いますね。「税金を全部まけてくれということを言ってるんだよ」というようなことになりかねないので、その辺はどうなんですか、議論の仕方として。私は、景気問題との絡みで、政府税調の立場から、「何でもありということはありませんよ」ということを言うには、それなりのそういうかみ合った理論構成をしないといけないのではないかなと思いますが、その辺はどうですか。

委員

いま委員がおっしゃったことと、僕は同じようなことを感じていましてデフレ対策としてどうするのかということを政府税調でどういうふうに言うのか、そういうことははっきりしていたほうがいい。もちろん、僕はその答えは持っていないんですけれども、ただ、日銀が量的緩和をするとか、不良債権処理で公的資金を注入するとか、いろいろなことが言われていて、どうするんだと。いままでの経済理論ではこのデフレは解決しないというふうにいろいろなことが言われている。

ここにそうそうたる方々がいらっしゃるので、僕はちょっとお尋ねしたいこともあるのです。例えば1月3日付の日経ですが、「経済教室」という長いやつがあるでしょう。ハーバード大学の名誉教授で、アメリカの経済財政諮問委員長……。

委員

フェルドシュタイン。

委員

くだらないというかもしれないけれども、例えば消費税をゼロにして3カ月ごとに1%ずつ上げていく。そうすると、購買意欲、個人消費が伸びていくというふうなことを書いていますよね。それなりの偉い人らしいから、それくらい何か言わないと……。それを事務局にこの前ちらっと言ったら、いや、向こうは小売課税で、消費税のシステムが違うから、そんなのできないよなんて言われましたけれども、もう少し、ヘエーというふうな独創的な議論を出していかないと、皆さん、それなりにいろいろなことをお考えだろうから、「こうなったらよくなるんだ」というふうなものがあった上で……。

財務省ベースのこの資料でいけば、課税最低限も引き下げたほうがいいと思うし、租税特別措置だってあれしたほうがいいと思うし、みんなそのとおりですよ。それは全部賛成なんですけれども、それだけでは、公聴会に行って、景気どうするんだとか言われても答えられないですよ。実際に政府税調だけでやるわけではないけれども、国民の知恵とか、経済学者、エコノミスト、いろいろな人がいてもっと知恵を出して、それで、「税調はこんなことも考えたよ」というふうなことがあっていいのではないでしょうか。

委員

具体的に税でデフレ対策をする主要な手段、思いつきますか。僕はいろんな人に聞くけれども、ないですね。

委員

いまのあれはだめなの? 消費税を上げていくというのは。

委員

だめでしょう。

委員

絶対だめなんですか。

委員

だめですよ。それは執行がもたないですよ。3%から5%に消費税率を上げるときでさえ、何カ月もかけつつ徐々にいろいろやった。店先の金銭計算機、キャッシャー、あれだって何百万もかけて直してるんですよ、皆さん。これは、卸から小売まで多段階でどんどん送ってきているわけですから、半年ごとにヒョイヒョイなんて変えたら、一体いつ仕入控除して、いつ売上するかなんてことまで、まさに大混乱ですよ。そういう説明をしてあげるしかないですよ、そういう質問が出たら。

委員

そういうふうに?

委員

ええ、それしかないと僕は思う。

委員

事務局はそれは無理だと言われたけれども、そういうことで、何かほかにアイデアはないんでしょうか、と。

委員

きょう、私が記者レクすると、「税調、何考えてる」と来るに決まっていますから、皆さんの御意見を聞いて、それなりの考えを示したいと思います。ここら辺の議論は重要です。

委員

インフレ、デフレの関係、特に現在のデフレとの関係で言えば、国際的に見て、あるいは10年、20年前に比べて税負担が下がっている。3割、4割を借金でやっていてもこういう経済状態。およそ改善されていない。そういう中にあって、デフレ対策を税でというのは基本的には無理ではないか。むしろ、こういう税制、こういう財政の状況を次の世代に引き継いでいいのか、という観点にならざるを得ないのではないかという気がするわけでございます。

それから、端的にデフレ対策の税制改正として、いま、消費税のお話がありました。大臣の勅令一本で上げたり下げたりできればいいのですけれども、国会を考えると、改正は半年ぐらいはあれしなければいけない。その間に消費税がゼロに下がるなら、ひとつ買い控えで対処しようということで、かえってマイナスになる。また、だんだん上げていくときには、上がる直前に買物をして、上がったら今度は買い控えをするという、平成9年のときのような事態が断続するだけで、基本的な消費の拡大につながると言えるのかどうか。

端的に言えば、デフレ対策と税制ということであれば、むしろ所得税を増税しなければいけない。と申しますのは、高度インフレ成長時代、このときはインフレによって意図せざる増税が行われている。課税最低限が固定されると、それをどんどん超えるわけですから自動的に税負担が上がる、あるいは、高い累進税率が入ってくる。そういうものを調整するために所得税の減税が必要だということを、20年、30年来やってきたわけでございます。それを逆にとれば、デフレであれば、むしろ課税最低限をそれに合わせて調整して下げていく、累進税率も逆に上げていく、幅を短くしていくということでなくては、いままでやってきたことと論理一貫しないのではないかなという気がします。いま、世の中でそんなことを言ったら袋叩きだと思いますから、あえて言う必要はないかと思いますけれども、基本的には、デフレに対して税でどうこうということはどうも困難があるのではないかという気がします。

ただ、先ほど言われた贈与税の問題、これはひとつ検討するあれがあるのではないか。と申しますのは、贈与税はある意味では一時所得課税みたいなものですけれども、所得税の税率の刻みと比べると、格段にきつくなっている。所得税は、いま申し上げましたように、インフレとともにインフレ調整して、ばらけて広げたりしてきているのに、贈与税はほとんど手がついていない。調整をする意味だけでも、贈与税の見直し……課税最低限は110万円になって、一時所得課税よりは高くなっていますけれども、税率の刻み等々から言えば、かなりきつくなっている。ある意味では所得税の一部ですから、これは見直すという観点があってもいいのかもしれません。

委員

贈与税の税率を緩和しろという御意見ですね。

委員

端的に言えばですね。

委員

110万円に上げろというのももっぱらいまの話なんですけど、そっちはあまり……。

委員

そこは、累積の一時的な使用とか何とか、いろいろな対処の方法はあると思います。

委員

いまおっしゃったデフレ対策を、もし税金でやるとしたら、そんなものはできないと思うのですが、やるとしたら増税しかない。僕はデフレ自体、「デフレなのか」と疑問を持っているのです。あれは単なる物価統計の結果だけの問題であって、いま、デフレだとは思わないのですけれども、もしやるなら、消費税の内税化によって消費税は物価に入れる。10%の消費税にして内税にすれば、統計的にはデフレ解消はできるわけです。売れようが売れまいが値段を調べて持ってくるだけですから、そういう意味では統計的には直せる。対処としてはそれが一番いいかなとは思いますが。それはごまかしではありますけれども、デフレ対策なのか、景気対策なのか、はっきりしてもらわないと、デフレ対策なんていうのはただ統計の問題ですから、景気をよくするためには何の役にも立っていない。

では、税金で景気がよくなるものかというと、ならないのは歴然としているわけであります。10年も同じことをやってきて、税金を取らないから景気が悪くなったと僕は思っていまして、取られた税金分、所得を増やすことによって補てんする必要はないわけですから、誰も一生懸命働かない。そうすれば景気はよくならないという状況ですから、そういう意味でも、増税するのが景気対策としては最大の良策だと僕は思います。

あと、ちょっと質問したいのですが、所得控除のいろいろな控除、ものによって違うのかもしれないのですが、10万円でも100万円でもいいのですが、10万円足すと所得税が幾ら増えるかとか、そういうのはできるんですか。そう単純ではないと思いますが。

委員

それは、そう難しい計算ではないと思いますよ。

委員

幾らで幾らというのを教えてほしいんだけど。

事務局

お答えさせていただきます。例えばこの19ページの表で申し上げれば、これはたまたま平均値で、こんなのはあり得ないわけで、配偶者0.7人とかそういう機械計算をしていますが、要は配偶者控除の適用人数とその金額、それが、いま言われた10万円なら10万円上げたら幾らになるかというのは、機械計算としては全く簡単にできます。それは、我々が増減収調べをつくるときのやり方ですから、出させていただいても結構だと思います。

委員

問題を広げてしまうようで申し訳ないのですけれども、いずれにしても国民の税負担感というのは違うんですよね。この数字は間違いないし、私も現職でつくったのですけれども、これは徴税当局の数字です。徴税当局が押さえていないような経済実態があるのではないか、こういう不信感は依然として残っておるんですね。例のクロヨン問題ですけれども、これは、税を安くするときはいいですが、重くしようという議論をするときには、そこらの把握態勢をもっときっちりやりますと。納税者番号ですが、納税者番号制度をもっと具体的に進めるというスタンスを出さないと、とてももたないのではないか。給与所得控除は包括的なもので、これも下げられるのかわからないですけれども、給与所得者からすれば、ほかの所得のほうは何かうまいことやってるじゃないかという不満が非常に強いと思うんですね。

もう一つ、そういう国民の負担感という点から納税者番号を進めなければならないのと同時に、納税者番号制度というのは、電子商取引とか何か、社会のインフラになると思います。ですから、そのインフラとしての納税者番号制度をどうつくるか、それによって電子商取引の仕組みも民間は考えると思うのです。それを、電子商取引を全部展開してしまったあとに、また納税者番号制度を入れるというのは、社会的システムとしては非常に不経済、非効率な話なものですから、こういう経済状態から言っても納税者番号制度というのは、この政府税調では特に前向きに取り組むという姿勢を出しておかないと、もたないと思います。

委員

納番はいずれ本格的に議論しようと思っていますので、時期を見ているという感じです。

委員

課税最低限の問題は、給与所得控除と配偶者関連の控除だと思います。これを縮小するというときに一つ障害になるなと前から考えていたのは、少子化問題です。子供を増やさなければならないときに、配偶者をいじめるというか、配偶者に不利な政策というのは矛盾すると考えていたのですが、最近、人口統計の側から新しい知見がありまして、産んでいるのは、専業主婦ではなくてむしろ共働きだというんです。配偶者関連のところをいじっても少子化には影響しない、という説を立てられるという知見が出てきたので、この部分では意を強くしているわけです。ですから、堂々と、配偶者控除、配偶者特別控除全廃という政策に打って出られるのではないかという気がしています。

委員

貴重な情報をありがとうございました。

委員

デフレの議論があったので、私も、従来の考え方を繰り返すようなことになるのですが……。昨日発表された国際収支で、貿易収支よりも所得収支のほうが多くなってしまった。これは日本経済の大きな変化だなあという印象が改めてしたわけですが、前から言っているように、どうも海外にみんな行ってしまう。物価は安くなるけれども、その分、生産、雇用が国内で減ってしまう。物価というよりも、雇用云々の全体のことを考えると、それがデフレ現象の一つの大きな要因ではないか。

健全財政の話がよく出るわけだけれども、いまの日本は、働き手のお父さんが中国かどこかへ行ってしまって、残っているのは女、子供、年寄りで、しかし、国家である以上これの面倒を見なければいけない。それには税金が必要だ。しかし、働き手が外に行ってしまっている。これは徴税権が及ばない。簡略化して言うと、そういう現象があるのかなと。

そういうところにくると、海外に出ていっているということを、税制面、あるいは税収面で何とかならないかなというのは前から考えているのです。事務局も、なかなか難しいというのがこれまでの反応だったのですが、これは短期的なデフレ策になり得るかどうかわからないけれども、一つの問題意識として、海外生産の増加、あるいは、所得収支が貿易収支を上回るほど国際化してしまった、生産の海外移転がそこまで行われていることに対して、税制がどう対応するかというのはこの場でじっくり議論すべきテーマではないか。そのためにいろいろ資料もつくってもらいたいと思うわけです。ですから、デフレ対策と税制というのはなかなかいい手はないと思います。

委員

ないですか。

委員

もう外でつくるな、つくるなら国内でつくれ、雇うなら日本人を雇え、というふうにはっきり言えればいいんだけれども、それを言うと時代錯誤者と言われてしまうのが関の山で、なかなかありません。

委員

前段の海外の要因と税制の問題、アメリカの経験がずいぶん役に立つのではないかと思います。一とき、そういうことでいろいろな税を仕組んだことがありますから。いずれにしても、ちょっと資料を検討してもらいましょう。

委員

税金が重いか軽いかというのは、総務省が暇でよけいな調査をして聞けば、「重い」と答えるのは当たり前なんです。平和と福祉というのは誰も反対できないのですね、昔の社民党と同じで。まず、こういうステレオタイプのアンケートの聞き方はもうやめたほうがいい。具体的になぜ重たいのかということをまず聞かないと。我々も記事にするときに、日本は防衛増強に反対だとか賛成だとか何とか、そういう話と……。福祉と平和といったら誰も反対できないんですよ。これはそういう話なんですね。減税といえばみんな賛成するけれども、増税に賛成する人はいないんです。まず、そういう概念論がありまして、その辺から理解というか、総務省の統計局はそんな暇な調査はやめたほうがいいと私自身は思っています。

第二点は、先ほどから納税者のイメージがわかないと。一つヒントの話で、ちょっとくだらない話になるかもしれないですけれども、東大の野球部を出てロッテの選手になった人がいるんですね。その人はロッテを2年ぐらいでクビになって、アメリカの大学で、MBAだか会計士だか何か取って、それでフロリダのテレビ局に勤めた。2、3年勤めて帰ってきた人がいて、それで本を書いたのですが、その人がいみじくも言っていたのは、アメリカの税金は高いというので、具体的にどういう控除で引かれて、その日米比較というのを非常にわかりやすく書いています。

それを見て、アメリカはこういうのまで控除して、日本もこういう控除までしてくれると。そういう生活実感というか、それに基づいた具体例があれば、説得力があるのではないかと思います。

委員

国税に関して、代表的家族とか、代表的企業で、ミクロ的にいろいろなものを費用計算したり何かするというのはあるんですよ、我々のレベルでも。そういうことは、いずれお考えいただくこともあるかもしれません。

委員

昨年の証券税制の改正で、株式譲渡益を申告分離に一本化していく、この方向で決まった。いろいろおみやげがついたのですが、これは中期答申の問題になると思いますけれども。さて、総合課税をどう考えるのかというときに、最近、北欧の税制と比較して、二元的所得税というのが主張されます。いま御説明いただいた資料を見ますと、14ページの租税負担率、これは社会保障負担を含んでいないのですが、当然、租税負担の高いところに北欧諸国が集中している。第1位デンマーク、第2位スウェーデンと。それと、資料の35ページ、付加価値税の税率を見ると、やはり北欧諸国がダントツに消費課税に依存しているという事実がわかる。

そういった特殊性を考えると、わが国は本当に二元的所得税という形で総合課税に見切りをつけるのかどうか。その判断材料というわけでもございませんが、もしできましたら、北欧諸国について、社会保障は非常に高い負担だと思いますので、それも含めた資料を御紹介いただければと思います。この場でなくても結構ですが。

事務局

わかりました。

委員

デフレと税との関係について、所得課税について言えば、先ほど申し上げたようなことになると思います。一つ、証券・金融税制とも絡み、また資産課税とも絡むわけですけれども、現時点でキャピタルゲインに本格的に課税しようということになってきた場合には、金融資産を中心とした資産についての未実現のゲイン、ロス、こういったものも見てまいりますという方向であってもいいのではないか。

そういう場合には、先ほどもお話がありました納税者番号的な管理システムを導入し、それを選択した個人につきましては、資産の増減についても、未実現のものは別としても、実現したものは、例えば預金はペイオフになってしまったとか、持っていた株がゼロになってしまった、1円で売ればマイナスが出ますけれども、ゼロになってしまうとどうしょうもないと。そういうことになるわけですけれども、資産課税を本格的な課税体系に取り上げていく、そのためには一つの勘定、特別口座を……。この間の改正では、証券についての特別口座ができるわけですけれども、その個人、家計のすべての資産について、税務署に全部番号で管理してもらえる。そういう人については、マイナスの、場合によっては未実現のものでも、資産に対してデフレでございますから、そういう傾向が多い、そういったものもプラスなら課税ですが、マイナスになればそれは控除します、というぐらいの資産課税での思い切ったシステムの見直しがあれば、デフレ対策にもなるのではないか、こんな気もします。

それからもう一つ、所得課税についての具体的なイメージと申しますか、ミクロ的なもの、これは前に申し上げたことがあるかもしれませんけれども、国税庁の給与所得調査では461万円が平均だと。この人の所得税はいま4万円ぐらいで、この人の消費税は、10万円、20万円払っているとか、酒、たばこはこれだけ払っているとか、現実の全体のその人の生活の実態に即したミクロの負担状況、さらに、可能であればそういったものの国際比較もあれば、わりあい身近にイメージを持って議論していただけるのではないかなという気がします。

委員

きょうはいっぱい注文がつきました。事務局、大変かと思いますけれども、大いに頑張ってもらいましょう。

委員

一つは、日本では非常に重税感があるというお話ですけれども、皆さん御存じのように、日本の給与所得はほとんど源泉徴収であって、確定申告をしていないわけです。他国ではほとんど確定申告をしている。それにもかかわらず国民が重税感を持っているというのは、自分の経験からものを言っているのではなくて、マスコミ出身の方がここにたくさんいらっしゃいますけれども、私の印象では、率直に申し上げてどうもマスコミがそういうのを煽っている、そういう気がするんですね。

きょうのデータにもたくさん出ていますけれども、日本では、租税負担率、国民負担率が他国に比べて非常に低いわけですから、そこのところをきちんと国民に広報することがメディアの役割ではないかと思います。場合によっては、これはすぐには難しいと思いますけれども、納番制だけではなくて、確定申告もきちんとする方向で税制改革を進めていくことが大事なのではないかというのが一点です。

二点目は、課税最低限の話がさっきから出ていますけれども、最低限の話に加えて、28ページぐらいに実効税率の国際比較というのがありますが、二つの点が問題ではないかと思います。一つは、税率構造の問題があって、特に中所得者層の税率が非常に低いということです。もう一つは、所得控除になっているということであって、特に給与の控除などは基本的には税額控除でいいはずであって、税額控除でやれば、低所得の人にとっては非常に有効な控除であるけれども、中所得、高所得の人にとってはそれほど有利ではない。しかも税収も上がるということになって、それで控除の本来の目的は達せられるはずですから、そういう方向で見直すことを少しお考えになっていただけないだろうかということです。

最後に三点目、できるだけ簡単にしますが、先ほど出たデフレの問題で、私自身は、デフレの問題というのは財政の問題としてきわめて重要であると思っています。そういう意味で、会長ほどそう簡単にフェルドシュタインというのはできないよと言うのは、ちょっと私としては気にはなるのですが、ただ、よく考えてみると難しいだろうなというのが率直な印象です。

それはどういうことかというと、まず第一に、消費税率を上げたときに二つのことが起きるわけで、一つは、買い急ぎのラッシュということで価格が上がるわけです。もう一つが、税率が上がることによってまた価格が上がるわけですね。前者のほうは、半年に一遍とかいうことで税率を上げていたら、すぐ効かなくなるだろうというのが私の印象で、2年に一遍ぐらい1%か2%上げるのだったらそれは意味があるだろうけれども、そう簡単にあんなことでうまくいくかどうかわからない。

それから、二番目のほうに関して言えば、税率を上げるという方向だけならいいですけれども、上げるとどんどん重税になって非常に難しいですから、最初は、景気のことも考えて下げるだろうと思うのですけれども、下げたときに価格が本当に下がってくれるのか。価格が下がらなければ、結局、ある種の益税が納税業者に発生するだけである。そういうことが起こる可能性が日本では非常に高いように私は思っていて、そこまできちんと考えた上でないとそう簡単には動けないのではないか。

むしろそれ以外の税金の話で、デフレ的な状況をつくり出している税金であるとか、税の歪みであるとかいうようなものが幾つかあるのではないか。そういうものを洗い出して、できるだけデフレをなくす。とりわけストックプライスの株価とか、地価とかも含めて、税によって押し下げられているのが、それが戻ってくるというような仕組みがあるのだったら、それを考えてみたらどうかというのが一つです。

さっき委員の方がおっしゃった二元的な金融税制みたいなものも一つだと思いますし、私自身が思っているのは、例えば土地に関する登録税制のような非常に土地の取引を阻害している税制、あるいは金融に関する資産の保有税制、こういうところをもう少し見直してみるのがいいのではないか。いずれにしても税制でデフレ対策としてできることはないのかどうかということを、きちんと考えることは大事だというふうに私は思います。

委員

ありがとうございました。事務局からいろいろ反論もあるのかもしれませんが、次にテーマを移さないと、田近さんにせっかく用意いただいたのが困りますから。

ただ、先ほど委員がお話しになった、国民の対話集会に行ったときに、必ずやマクロ的に見て、あるいはマクロ的と言わないでも、デフレ対策として税制をどう使うかという議論がございますから、それは具体的なところでいろいろ説明する、かつ、これはいいのか悪いのかという議論をしなければいけない。それほどすごくいい知恵が出てくるとは思いませんけれども、そういうことに関心を持っている方には適切な角度でいろいろな議論をして、納得いただくという作業をしたいと思います。いずれにいたしましても、1、2回、集会をやってみて、ここにそういう報告をして、また皆さんのお知恵も借りたいと思っています。

時間が大幅に押してしまいましたので、申し訳ありませんが、「諸外国における財政・税制の動向」は次回に回していただいて、田近さんに用意いただいた「レーガン税制」、これにつきまして20分ほど御説明いただいて、そのあと、それを軸に議論いたしたいと、少し変えさせていただきます。

委員

では、20分程度で話させていただきます。資料は「基礎小6-4 税制は人々の行動にどのような影響を与えるか-レーガン税制を考える-」、もう一つは、「基礎小6-5 参考資料」、これは事務局のほうでつくっていただいたレーガン税制の資料です。

時間がないので、早速本題に入りますけれども、なぜここで話しているのかと。まさにいまも議論が交わされましたけれども、デフレ対策、景気対策として税制にできることは何なのか。その意味でサプライサイドの経済学を一回整理したらどうかということを会長から言い渡されまして、勉強しました。また、多少個人的にもやった分野であるので、資料を読み返しながらやってきました。

すでに時間も押しているし、最後にはしょってしゃべるのもと思って、レーガン税制についてもちろん語りますけれども、結局何なんだというのが最初の「概要」というところです。少しめくっていただくと、3ページに「参考1」と、いろいろ資料があります。これだけの税制改革でしたから、アメリカでもふんだんに資料がありますけれども、ジョー・スレムロドという、いまミシガンで仕事をしている人ですけれども、どんなインサイトがあるのか。「参考2」というのが、レーガン税制自身の説明です。いろいろな資料、事務局でつくっていただいた資料も使わせていただきますけれども、いま話題になっていた、フェルドシュタインという人が書いています。レーガン税制を見て、その先に我々の問題を見ていってみようと。したがって、どこまでが筆者の説明で、どこからが僕の解釈か知りませんけれども、そんなことで考えています。

私に与えられた課題は「サプライサイドの経済学と税制」ということです。「概要」ですけれども、税が投資、貯蓄や労働に直接的な影響を与えて、減税すれば経済成長を促進して、税収が増える、そういうことは残念ながら事実によって確かめられてはいない。これは80年代のレーガン税制でも起きなかった。しかし、このことをどのように考えるかについては、二つの重要なポイントがあると思います。

第一は、思ったほどではなかったではないか、という結果の解釈です。実際の減税は単に限界税率を下げるだけではなくて、減税をすると同時に増税もしたりして、いろいろな要素が相殺し合って、減税しても思ったほど増収は出なかったという議論もあるのかもしれない。

それから、少し理屈っぽいのですけれども、減税によって例えば労働の賃金が上がる、あるいは、資本のコストが下がるということがあるわけです。そうした効果は、賃金課税の場合で言うと、賃金課税が下がった、手取りの賃金が上がる。手取りの賃金が上がったのだから、それなら余暇を減らして労働を増やそうやと。一方で、前ほど働かなくても所得が入るのだから、余暇を増やして労働を減らそうよと。直観的に考えても答えは定かではない。利子についても同じです。

したがって、効果がなかったということは、人々の意思決定に影響を与えなかったということではない、ということです。これは、突っ込んでいくともう少し重要な議論になりますけれども、表向きの効果がないということで、したがって、税制のインセンティブ効果は考えなくていいよというわけではないのだということを、第一点で言っているわけです。

第二点、現実的にはこれがより重要なんですけれども、税制の変化によって人々の行動に大きな変化が見られなかった。だから、税制は税を集めることに頑張れ、経済の活性化はその他の手段にゆだねるべきであって、さらに税の効果がないのなら、高い限界税率でもいいではないかという議論は誤りだと思います。実際の行動に影響が起きていなくても、その背後で表から見えないことが起きているかもしれない。先ほど来、出ていますけれども、所得税ならば、節税行為やフリンジベネフィットを誘発しているかもしれない。見かけは税によって労働供給に変化はなくても、背後で節税行為をしているならば、それ自身は経済全体から見てかなりの損失だろうと。

ここで、いろいろ問題があります。節税自身は悪い行為ではない、人々の合理的な行為ですけれども、そんなことをしないで本業を全うするほうがいいに決まっている。

第二点は、本当に節税行為というのを取り締まることができるのか。ある意味で所得税の"さが"というところで、これを全部しょっぴけばいいという問題でもないだろう。いずれにしてもタックスインセンティブを考えたときに、表向きに効果がないから云々という議論と同時に、見かけは何もないかもしれないけれども、背後で働いていることが重要なのだということを言いたいわけです。

したがって、税率を変えたら魔法のように経済が変化するというのは間違いであろう。この意味で、「神がかり的な」ラッファーカーブというのは、サプライサイドの経済学では、本来の経済学ではないと思います。

しかし、税は、経済の重要なインフラであって、人々の行動の基盤になっている。努力して得た所得の最後の100万円から50万円取られるのは、猛烈な痛みがあるわけです。所得税の鉄則は、人々の行動にできるだけ歪みを与えない制度をつくることだ。それは、課税ベースを広げて、できるだけ税率を下げることだ。

簡単に言っていますけれども、先ほど事務局に説明していただいた資料の22ページをご覧になっていただきたいと思います。このグラフ自身もバージョンアップできるかもしれませんけれども、給与所得の人の400
万円以下、400~700万円、700~1,000万円、1,000万円以上、そういう人たちの税負担額を見ているわけです。給与所得というのは、利子所得とかそういうのではなくて、基本的には労働して得た所得です。

私はこの図を見て、700万円ぐらいの人が、努力して、あるいは人生のある局面に来たときに、そのほとんどの負担をするような仕組みはおかしいと思います。また、事業主、自営業者の問題等あるわけですけれども、それも困難ならば、最終的には消費税を上げざるを得ないと思います。

その次のページですけれども、結局課税ベースを広げる、そして税率を下げる、それでもだめならば消費税を上げる、そういう改革によって負担が増える人がいるわけです。そういう人たちに対して、適切な社会保障をもって応じるべきだ。きょう、一番言いたいことの一つは、こういう問題を考えるときに、税の中で議論したら出口はない。誰が取って、誰が損をするかというだけです。税は税、社会保障は社会保障と切り離している限り解けないと思います。こういう改革をしたときに、下のほうの人たちにどういう形で処理をするか。それは、税と社会保障が同時にやらなければもう解けない。そういうことでこそ全体的な解に意味があると思います。

以上は、レーガン時代からの問題である。そしていま、それに加えて二つの大きな経済の変化を経験していると思います。経済のグローバリゼーションと高齢化。先ほど、負担感はどこから来ているのかと。これは、お調べになると、あるいは自分たちの給与スリップを見ればわかるのですけれども、多くの人は税よりも社会保険料のほうが高いという問題があります。

その中で、税が、人々や企業の行動にどのような影響を与えるかも正面から考えなければいけないだろう。端的に言えば、グローバリゼーションの中で、資本の国際間の移動はますます自由になる、それは資本への課税を困難にする。先ほどから出ている問題です。高齢化の中で、年金・医療・介護保険からなる社会保障の負担は増大する。これは皆さんも実感されているとおりです。

ここで私が言いたいのは、年金は年金なんだ、税は税なんだと、これをやっていたら問題は解けない。公的年金というのは、老後の所得の基本的な部分なのだと。現に基礎年金の3分の1、2分の1は税で賄っているわけです。仮にそれを、税なり、社会保険でもいいのですけれども、その部分は国がやる、残りは個人がやるんだというふうなすみ分けをして、税が社会保障にかかわっていくということをしなければ問題は解決できない。

次は少しはしょりますけれども、同じことは地方についても言える。問題は私も承知しているつもりですけれども、交付税、自主財源の問題です。ここでも問題の根っこは、ある官庁は交付税を与える、あるほうはもらうほうだと。もらうほうとあげるほうが議論している限り問題は解けない、と私は思います。では、どうやって解くのか。それは短い時間で言えませんけれども、やはり地方が全体の責任を取って問題を考えるしかない。

そういうわけで、本題の税制と活性化の話になりますけれども、税の第一の使命は、正しく取ること。しかし、取るだけが仕事ではない。日本のように、成熟した、しかも停滞した経済では、税制が経済の活性化にどのような経路で影響を与えるのかというのを明らかにすべきだ。私の考えは、人々や企業のやる気をどう守っているのか、堂々と税を払って稼ぐ環境ができているのか、グローバリゼーションや増大する社会保障に対応できる税制ができているのか、地方自治体にやる気と責任を持たせる税制になっているのか、と。これをやれば、明日、2%成長が上がるとは言えないかもしれないけれども、税は長期的に日本経済の体質を変えるということで、税はやはり根幹の経済政策の一つだと。つまり税制に経済政策の一員としての使命を立派に果たさせろ、ということを言いたかったわけです。

あとは、具体的にレーガン税制で何が行われたかということを見ていきたいと思います。3ページの「参考1 1980年代の税制を考える」、非常に参考になるものでした。ここでも、税制の効果は、狭い意味の「弾力性」だけではなくて、税制が納税申告にどういう影響を与えるのか、資金の運用・移転にどういう影響を与えるのか、あるいは、ビジネスの形態にどういう影響を与えるのか。そういう意味で、税制、労働、貯蓄、投資という狭い範囲で考えずに、税のシステムを考える必要があるということだと思います。

所得税は再分配が必要だと。言うは易しで、皮肉なことだと思いますけれども、水を運ぶことだけではなく、桶から水がこぼれない工夫をすることだと。僕もそのとおりだと思います。

あとは、「参考2」で、レーガン税制で何をやろうとしたのか、あるいは、何がやれなかったのかということをごく簡単に見ていきたいと思います。お手元の資料の「基礎小6-5」をお開きになっていただきたいと思います。

80年代のアメリカの税制で起きたことを見ていきたいのですけれども、横の表を見ていただくとわかるように、「レーガン政権における税制改正について」、81年の改正、86年の改正、いわゆるレーガンIとレーガンIIの改正があったわけです。

まず、レーガンIを見ていきたいと思います。これは、かなりドラスティックですけれども、ある意味でやらなければならない、まさに経済活性化のために税制がしなければならなかったことだと思います。何が問題だったのか。それは、70年代を通じる高インフレと停滞した経済の中で、一方、政府のウェルフェアポリシーによる移転が拡大していく。税が経済成長の阻害要因になった。絵に描いたように所得税の問題が出てきたわけです。

一つは、先ほども出てきましたけれども、ブラケットクリープ、インフレによって所得税がどんどん増えていった問題、それから、資本収益率の低下の問題。その数字は追いませんけれども、名目収益率が高い、そこに高い限界税率がガバッとかかってしまう。そしてインフレが高い。つまり、名目の収益が高くて、そこに高い税率がかかって、インフレ率が高いと、実収益率はかなりひどくなるという話です。これも重要な点だったわけです。

ちなみに、デフレ下の問題というのが、我々は慣れていないのですけれども、デフレの場合、名目収益率が2%、インフレがマイナス1%、限界税率が40%とします。そうすると、2%で40%、税金が取られますから、1.2 が手取りです。しかし、物価がマイナス1ですから、実質の収益率は2.2 になる。昔は、インフレのときには、資本収益率に対して大きな課税がされて、逆に借りると得だよと。デフレのときにはそれと逆のことが起きて、むしろ借り損になってくるという問題です。これは余談です。

それから、先ほどから出ているキャピタルゲインの問題です。これは、活性化の問題でも直接関係している話です。せっかくですから少し紹介すると、仮に1965年に1万ドルで株を買った、80年に売った。その間の収益率はスタンダード&プアーズの500の平均とする。そうすると1万3,520ドルになって、3,520ドル儲かった。これはキャピタルゲインです。ところが、その間の物価でインデックスすると、その1万ドルというのは、2万6,160ドル。そうすると、たかが1万3,520ドルになっても、これは大赤字、キャピタルロスだというわけです。それなら、その株は売らない等々、いろいろあります。おそらくレーガンIが、キャピタルゲイン課税--表を見ていただくとわかるのですけれども、28から20に下げた。これでかなりのキャピタルゲインがリアライズされました。

それから、企業の課税所得の過大評価。これもシリアスな問題が起きました。省きます。そのほか、いろいろあった。

81年に何が起きたか。事務局の資料と見比べながら見ていただくと助かるのですけれども、レーガン政権における税制改革です。基本的には、ここでも、インフレによる見えざる税負担の調整をしようと。それで何をしたのか。個人所得では、所得税の税率を下げた。そしてキャピタルゲイン税率の引下げ、これについてはあとで言います。

それで具体的に何をしたかというと、81年は、インフレをもっぱら調整しようとして課税ベースをある意味で下げていったわけです。時間がないからあとは省きますけれども、ただ興味深いことは、ラッファーという人がいて、この時代に、毎年10%、3年間、所得税を減税すればそれ以上税収が上がるよと、魔法みたいなことを言ったわけですけれども、それに対してはかなりシニカルな対応になっています。

86年がレーガンIIです。6ページですけれども、レーガンIIでやったことは、税制中立と所得分配は変えない。何か解けないような、解がなくなるような縛りですけれども、税制中立と分配を変えないという前提のもとに、課税ベースの拡大と税率の引下げを図った。いわゆる公平・中立・簡素な税制を目指したというのがオフィシャルなステートメントであるわけです。そのオフィシャルなステートメントはそれとして、実際、86年に何がやられたかというのは、ご覧のとおり、所得税率を15、28%に整理した、法人税率を46から34%に下げた。そして、個人、法人それぞれに関して、課税ベースを広げるさまざまな工夫をしたというわけです。

最後に、86年の改革で何が問題として残ったのか。これが、おそらくいま我々にも問われている問題だと思います。その一つは、設備投資、研究開発投資に対する配慮は要らなかったのか。これはこのときも議論されたし、ある意味で永遠の謎です。おそらく、我々がいまやろうとしている改革の中で、これをどうやって考えるかというのがキーの一つだろうと思います。

少し考え方を整理すれば、間接金融から直接金融によっておそらく投資資金というのはファイナンスされる。その資金調達コストは借入よりも高い。また、研究投資の外部性は高い。まして空洞化が叫ばれている中で、日本国内でR&Dを開発して、そのヘッドクォーターは日本に残したいという政策的な意図があるならば、それに対する税制というのは効果があるのか、ないのか。それは議論すべきだろう。これがデフレ対策だと私は思わない。長期的な企業競争力の強化とそれによる雇用確保という形で、こういうことを考えるのか、考えないのか。それは一つ、我々に突きつけられた問題だろうと。

実は、この86年というのはもう大昔の話ですよね。16年も前で、それ以降、アメリカは相変わらずいろいろな議論をしています。結局、アメリカはレーガンIIのときに付加価値税の考えをだいぶ議論しています。それに失敗した。それ以降、「アメリカ財務省による提案」と書きましたけれども、利子、配当、キャピタルゲインに対して、どうやって税をよりすっきりかけるかという議論は続いている。したがって、税制で活性化という意味では議論は86年で終わったわけではない、ということを言いたかったわけです。

以上です。

委員

ありがとうございました。田近さんは必ずしもレーガンのみに特化して御説明いただいてなく、御自分の心情も吐露されておりましたから、どうぞ、幾つか議論してください。

委員

先生の御研究で、目下、政府税調がそれを総理に直接言われていないけれども、政府全体としてはデフレ対策をまとめると。至近の株価をどうするか、そのためにどういう手段を導入するか。半分以上心理的なものだと思いますけれども、そういう議論がある。それから、最低限1年か2年ぐらい先を読んで、デフレから脱却するためにどういう政策手法がいいかという議論があって、竹中氏などはいま、一生懸命作文しているのだと思うんですね。

税制の話は、基本的に会長がよくおっしゃるけれども、税制で短期的な景気対策なんかできないぞという話がある。それはたしかにそうかもしれないけれども、目先の3月末の株価なんていうのは関係ないからね、この話は。5年、10年とは言わないけれども、1年先のことを考えてみれば、デフレ対策で税金を使うということは考えられるかもしれない。さっき相続税のことを言われた委員がいるけれども、田近先生は、先生のこの研究と理論に基づいて、パッケージでいまのような観点からデフレ対策を出せと総理に言われたら、何と何と何をお書きになりますか。

委員

ここに僕はヒントを書いたつもりですけれども、前提的に言えば、これで経済が1%、2%成長してもらいたいですけれども、明日、成長するかどうかはわからない。それを前提にして、まず何を書くのか。やはり社会保障ですね。この部分の負担が重いと感じているわけですから、これはもういいかげんに決着すべきだと思います。それがまた将来の不安をあおっているわけですから、そこで税が何をするのか。交付税についても、これも戦後50年やり続けているわけですけれども、地方に税源をどういう形であげて、そのかわり地方に結果責任をどう取らせるのか、そういうことをやる。

具体的に税で何をするのか。僕だったら、やはり突破したいですね。給与所得でこれだけの負担の格差があるということをどうやって正当化するのか。下のほうの人に僕は厳しいことを言っているんでしょうけれども、突き放しているわけではない。その人たちに対してやるべきことは何なのか。それは、それこそ事務局の手だけでは負えないでしょうから、それはもっと踏み込むべきだと思います。

それから、キャピタルゲインに関してはどうか。僕も証券税制の去年の動きを外から見ていたわけですけれども、やはりごちゃごちゃしていた。申告納税するという行き方は僕は正しいと思う。だけど、実際に申告納税フォームを書けるのか。見たんですけどね。だから、一つの方向は、資産所得に関する思い切った整理をして、株も投資信託もいろいろ合わせて、そこはかなりすっきりした形で、永久な解決かどうか知りませんけれども、一元的にかけるような形に持っていくべきだと思います。

そういうわけで、何を書けと言われれば、目は少し広く、税がメジャーなプレーヤーとして機能する環境をつくれ、と。それから、やはり所得税は正面突破したい。

委員

正面突破というのは何ですか。

委員

課税ベースを広げて最高税率を下げるということです。

委員

前段で、社会保障に決着をつけるとか、地方交付税とか何とか言っているけれども、それがなぜデフレ対策になるの? 独断で決着をつけるとか、やれっていうけど、聞くほうはわからない…。

委員

すみません。時間がないということでちょっと……。いま、なぜこれだけ停滞しているのか、消費が伸びないのか、いろいろ理由はあると思うんですね。消費税をいじくってというのは、そんなに国民は馬鹿ではない。政策を見抜きますよね。なぜ消費が起きてこないのかといえば、一つは、先行き不安。その不安を取り去ることが重要なんだろうなと。そこで、税は俺の仕事じゃないよ、それは社会保障でやってくれ。社会保障のほうは、国から国庫負担をしてくれればいいよと。それでは済まないだろうということを言いたかったわけです。

委員

だから、どうするの。もうこれ以上社会保障を取るな、整理しろということ? 年金をもうちょっと考えろということ?

委員

基本的には基礎年金を切り離すべきで、二階は民営化すべきだと。

委員

わかりました。まだお聞きになりたい方は……。

委員

レーガン税制の二つの種類、参考資料に出ております1ページのように、81年と86年で全然違う方向だと思いますが、田近先生のレポートの1ページ目の一番最後に、「課税ベースを広げて、できるだけ税率を下げることである」と。1981年のこのERTAと言われている、貯蓄、投資の所得は大幅に減税する、ある意味で支出税的な考え方に立ってこれを実行したという話ですけれども、これは先生はあまり支持されないということなのでしょうか。

委員

僕は基本的にはこの部分は、86年というか、公平・中立・簡素の部分を言っているつもりですけれども。

委員

基本的なことですけれども、当時のアメリカは供給不足で、結局、それを輸入品で賄って貿易赤字が拡大したのですけれども、現代の日本というのは供給過剰ですね。だから、経済の状態は相当違うと思うのですが、その点はいかがお考えですか。

委員

そこが最大の論点だと私も思うのですけれども、設備投資自身のタックスクレジットを与えるとか、そういう議論は成り立たないだろうなと。つまり、設備投資が起きていないところで、そして資本コストも非常に低い中で。そういう意味では具体的に言えば、戦略的なヘッドクォーターというか、R&Dの拠点が日本に残る、それはインセンティブとして与えていいのかもしれないということです。

あと、タックスクレジットがいいのか、法人税率自身を下げることがいいのか、その議論もあると思います。したがって、一律のタックスクレジットがいいという議論はおそらくサポートされないだろう、R&Dについては議論があるだろう。しかし、法人税率自身を下げるということは、日本の企業が……まあ、中里さんあたりに言わせれば、そんなことではもはや手ぬるいということになるのかもしれませんけれども、少なくともヘッドクォーターが日本に残るためには税率自身の議論もやるべきなのかなと思います。

委員

田近さんのコメントを伺っていて、いまの日本のデフレ対策としてやれることはそうないなと、かえってそういう印象を私は強めました。何もやることないですよ……いや、そりゃ考えれば何かありますよと。贈与税をどうするんだとか、住宅ローンの控除をどうするんだとか、セカンドハウスも減免の対象にしたらどうだとか、そういう細かい枝みたいな話を寄せ集めると、これはできるかもしれない。しかし、それでデフレいいのかねというと、こちらが誰よりも自信がないという結論にならざるを得ない。

レーガン税制ということを考えれば、「これだけではなかった」ということが一番重要ではないかと思います。田近さんの論文にもちょっと示されているわけだけれども、プラザ合意があって、ドルを半分にされてしまったとか、あるいは、"ロン・ヤス"の関係で貿易摩擦ということで盛んに輸入規制したとか、いろいろなものが合わさってこういう税制で、それが何年か後、効果が出たとか、出ないとかいう評価にさらされるわけなんでしょう。

したがって、付け焼き刃的にこれもやりましょう、あれもやりましょうというのは愚の骨頂でありまして、税制もやるけれども、実は大わざはこういうところにあるんだと。税制の空洞化と言われているけれども、日本経済そのものが空洞化しているので、これを何とかしないで、税制だけ一生懸命いじくっても効果は限定されているし、ある意味では副作用が出るかもしれないというあたりの認識でこれからの議論に臨むべきではないか、これは私の考えです。

委員

逆に言うと、だからこそ税制が重要なわけですよね。そこで、税が、戦略的な経済政策の一つとして何ができるのか。もっとわかりやすく言えば、基礎年金というのを税でやってしまう。ある意味で決定的な変化ですよね。社会保険庁がなくなる。国税庁で税を取れるわけです。

委員

ほぼ予定の時間は来たのですが、よろしゅうございますか。

委員

財政と金融というのは、経済学部の講義を聞いたときにどちらも面白かったのですが、逆説的な言い方になりますけれども、いまは、財政再建を図って、それでもって金融制度の安定化を図ることが結果的には一番のデフレ対策になるのではないでしょうか。金融のことも考えないと、という気がしますけれども。

委員

わかりやすく、もう少し短絡的に言うと、30兆円、あるいはプライマリーバランスを守って、長期金利がはね上がらないようにすることだというのも一つですよね、おっしゃりたいことは。

委員

ああ、そういうことですか。

委員

だから、基本的にここでそんなことを言っているのではなくて、この段階で税をネットで取っていってもいいのではないかというニュアンスですよね。

委員

わかりました。何か含みのある発言がいろいろあって頭が混乱しかかっています(笑)。ただ、お互いに大変勉強になったのではないかと思います。この種の議論は、これからまたどんどん続けなければいけません。きょうだけで終わりというわけではございませんし、田近さんもまだ言いたいことがいっぱいあるようですから、改めて御出馬いただくとして、社会保障関係もやらなければいけないでしょうね。

あとのスケジュールを説明させていただきまして、散会にさせていただきますが、次回は3月5日の火曜日を予定いたしております。きょう、せっかく用意いただいたのに、時間の関係で飛ばしてしまいましたので、諸外国の動向をお話しいただくとともに、神野さんから「サッチャー税制」の話を聞こうと思っております。同時に、財制審の会長の今井さんから、経済界を代表して、いまの経済、いまの財政をどう考えるかというところで御提案をいただきたいと思っております。それから、きょう、納番の話もだいぶ出てきました。一部関係いたしますが、「IT化と税制」という点で、我々、さまざまな点で議論しなければいけないことがございますので、この種の議論をやってみたいと考えています。そういう背後には、デフレと税制という本来の議論もあるかもしれません。

そこで、次々回、これはすでに御案内しておりますが、3月19日火曜日、午後2時から考えておりますので、テーマ等々決まり次第、また御連絡いたしたいと考えております。

では、ちょうど時間になりましたので、終わりにいたしたいと思います。どうも長時間、ありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。