第5回基礎問題小委員会 議事録
平成14年2月1日開催
〇委員
それでは、時間になりましたので、基礎問題小委員会、第5回目になりますが、開催いたしたいと思います。
きょうは、財務省の谷口副大臣と吉田大臣政務官、それから総務省の若松副大臣と滝大臣政務官がご出席いただいております。よろしく。
それでは、前回申し上げましたように、新たに5人の方に加わっていただくことになりましたので、きょうそのうち3人お見えでございますので、ちょっとご紹介させていただきます。
特別委員の神田さん、それから専門委員の神野さん、それから専門委員の田近さん。きょうは中里さん、特別委員でございますが、ご欠席。
それから東大の宮島洋さんに再度お願いしておりますが、ちょっときょうはご所用でお見えになりませんが、目下、専門委員にご就任いただくべく手続中でございます。
いずれにいたしましても5人の方に新しく加わっていただきまして、総勢27人になります。そこで本格的な議論をこれからやっていきたいと考えております。小でなぜ27人いるかと。本当だね(笑)。私もそういう感じは持っておりますが、最近、小の定義も変わってきたかもしれません。
そこで、前回、17日だったと思いますが、小泉首相にもお出ましいただきまして、今後の抜本税制改革に取り組んでもらいたいというご説明を受けたわけでございますが、これから本格的にやりたいと思います。
そこで、最初にスケジュールを少しご紹介したいのですが、「税制調査会の今後の審議の進め方」、基礎小5-1という一枚紙があるかと思いますが、ちょっとこれに即しましてざあっと今後の日程をご説明させていただきます。
現在、1月~3月の段階でございまして、月2回程度で、それを踏まえて総会1回程度やるという形で基本的な論点を整理していきたいと思っております。それから4月~6月にかけましても同じような時間と頻度でやりたいと思ってますが、次第に具体的な制度に話を持っていきたいと、あるべき税制の構築に向けまして次第に議論を詰めていきたいと考えております。おそらく5月の末か6月にはしかるべき「基本的な方針」というのをまとめ、これを世に出したいという考えを持っております。
そこで、最後に再度申し上げたいと思いますが、3月、4月等々、やはり白紙の状態で国民の皆さんからいろいろご意見を聞いたほうがいいという形で、俗に言われます地方公聴会、あるいは国民との対話集会と申しますか、そういうものを具体化しようと今企画中でございます。6月段階で「基本的な方針」が決まったら、それはある程度具体的なものは織り込めるかと思いますので、それを受けてさらに6月、7月、まあ8月までできるかどうかわかりませんが、地方公聴会というのをできるだけ積み重ねまして、国民各層の意見を吸い上げて秋の、我々、言うなれば来年の9月に中期答申を出さなければいけないのですが、その間の、1年前になりますが、中期答申の中間段階の報告というようなものを作成するのに役立てたいと考えております。
そこで、できましたら10月から11月にかけまして、あるべき税制の構築ということが一応まとまってきますと、その中から平成15年度税制改正の幾つかの論点も浮かび上がってこようと思いますので、「あるべき税制の構築と15年度税制改正に向けての考え方」をとりあえず秋、いつごろになるかわかりませんが、10月、11月ぐらいにはまとめてみたいと考えております。これが大体の段取りでございます。
そういうわけで、オープンにして国民的な論議を巻き起こしつつ、これから議論を詰めていきたいと。これはある意味では前会長がまとめられたときの、「国民の参加と選択」というサブタイトルがついておりますような我々の中期答申、それを踏まえての話というふうにご理解いただけたらと思います。
なお、経済財政諮問会議との役割分担等につきましては、後ほどまた別な時間をとってご説明したいと思いますし、また事務局のほうからも、これについて何かあったらご説明いただこうかと思っております。
きょうは2つ3つ重要な論点がございます。最初は、21世紀の経済社会像を念頭に置きましてどんな税制改革、あるいはどういう基本的理念で税制改革をやるかということにつきまして、ちょっと私、出しゃばったわけでございますが、私のほうからちょっと問題を提起させていただきまして、ご議論いただきたいと思います。
その後に、すでにご案内にございますように、奥野委員にも「日本経済と税制の役割」をご説明いただきますし、あるいは内閣府のほうから、「改革と展望」と言われる最近のマクロの動向について、あるいは経済社会の構造的変化、二枚紙にまとまっておりますが、そういうものにつきまして事務局からご説明いただくという段取りでやっていきたいと考えております。
そこで最初、恐縮でありますが、私のほうから問題の提起を行わせていただきます。「資料」と書いた基礎小5-2というものをちょっとお開きいただきたいと思います。2つほど目的がありまして、1つは、税制改革をするに当たっての基本的な枠組みなり基本的な視点をどう確立するか。それからもう一つは、政府税制調査会がいろいろ問題にされているわりには過去の経緯等々につきまして皆様に必ずしも情報が十分に行き渡ってないのではないかと思いますので、ちょっと調べたものがあったものですから、それをベースにいたしまして、税制調査会の果たした役割ということをかいつまんでご説明させていただきます。15分ぐらいで終わりたいと思います。
1枚めくっていただけますか。これは第一の論点でありまして、「税制とIncentivesの関係」とちょっとポンチ絵をつくりました。そこで何が問題になっているかといいますと、今しばしば税制による経済の活性化が重要であると。これはマスコミでもしばしば出てきておりますし、言うなれば財政・金融がもう手段を出尽くしたような感じになった中で、税制が日本経済の活性化にまだ役に立つではないかというような視点から、何か政策減税等々をして活性化したいと、こういう意見が強いわけですよね。これはマスコミの一部にもございますし、特に政治家の一部にもございますし、あるいは経済財政諮問会議の委員の方の何人かはこういう形でおっしゃっておられるわけであります。
いずれにいたしましても、はっきりいって政策誘導型の税制改革というのはあくまでまだやるのか、それとも、これから申し上げるような公平・中立といったようなものを軸にしてニュートラルな税制をつくっていくのかというあたりの共通認識を税調として、特にこの基礎問題小委員会の中で持たないと、今後の基本的な税制の議論が甚だ拡散してしまうと思いますので、ちょっとこれにつきまして問題を提起させていただきます。
そこで、やはり経済社会の基本的な仕組みと税制は関係しますから、20世紀に我々が経験した経済社会のシステムと21世紀の経済社会のシステムとおのずと変わってくるであろうというふうな理解から、ここに20世紀型、21世紀型と2つ、まず書いた囲みがあるわけであります。
終戦後、本格的にシャウプ勧告が出て、それから高度成長が始まって、最初はごくごく小さな国から努力して、1980年代後半には世界の中の日本にまで、言うなれば高度成長を遂げたわけですよね。そのときのやり方は、ちょっと書いておきましたが、官主導、政府介入による大量生産・消費型社会というものを現に国全体としておそらく引っ張ってきたのだと思います。そこで護送船団というやり方があらゆる業界に敷衍しておりましたし、集団的な力によって日本の経済を引っ張り上げた。そのときにはおそらく官主導、政府介入型で、規制、特に事前的な規制というものである一定方向に政策を誘導した。
こういうときはおそらく税制もおのずからある政策目標があって、そのために租税特別措置、あるいは非課税の措置を幾つかつくったり、あるいはさまざまな所得控除、こういうものをフルに活用したという時期もあったわけですね。資本蓄積とか、あるいは輸出増進であるとか、あるいは福祉等々に、言うなれば税制を使えるところは極力使うという話で、1950年代以降半世紀の間、税制というのは政策誘導型に使われたという面があったと思います。今後もそういうスタイルで果たしていったほうがいいのかどうか、これが議論の分かれ目だと思います。
そこで、経済社会のシステムが、今さまざま言われてますように、官主導、政府介入型ではなくて、おそらく民主導による市場原理を重視した、そういったような個別ニーズ対応型の社会になっていくだろう。だから、ある方向に集団的に動くというよりは、個々の経済主体の個性を重んじたような形の、まさにそういう経済主体が自由に動けるような社会、こういうのがおそらく21世紀型になるであろうと。そうなりますと、事前規制よりは、規制緩和による、そして事後チェック型の社会に多分なるだろう。多分というか、現になりつつありますね。いろいろな方向で。
そういう形のことを考えますと、おそらく個別の経済主体の行動を妨げない税制がいいだろうと。民主導ということはあくまで民が主体的に動けるという意味において、おそらく中立型の税制。その背後には簡素もあっていいだろうし、やはり公平感があったほうがいいだろうと。おそらくこういう仕組みに税制の基軸を持っていくべきだろうと思います。
ただ、これはあくまで2つの極端なケースで出しましたから、何も21世紀型というのが、すべて左側の枠のようなことで行われ、それががらっと21世紀型に変わるというのではなくて、20世紀型でもすでに公平・中立・簡素というのは税調は絶えず言ってきたわけですね。しかし、政策的誘導というものについてやはりかなり歩み寄った形で租税特別措置等々つくってきたわけであります。
ですから、ここで申し上げたいのは、2つの軸足があって、基軸があって、どっちにより重点を置くかという趣旨において、20世紀型から21世紀型にシフトするということがおそらく税制と経済活性化等々の意味合いにおいて重要になるのではないかと思われます。
したがって、今、経済活性化のために相変わらず、土地税制がどうだとか、証券税制がどうだとか等々、まだ税制によっていろいろ活性化ということをやりたいという議論も残っておりますが、それは20世紀型をとればいけいけどんどん的に別に抵抗なく受け入れられるでしょうが、21世紀型になりますと、仮にやるにしましても、基軸はここに置いて、例外的に、あるいは短期的にそういうものを認めるという意味において、おそらく是認される幅というのは決まってくるのだろうと思います。
言うなれば経済の活性化といったときに、個々具体的な税制のある部分部分を使ってやるか、それとも全体にニュートラルな税にして民間を妨げない形で活性化するか。これはおそらく哲学論争としてはすごく重要であろうと思いますので、後ほど皆様からいろいろご意見を伺いたいと考えております。
仮に21世紀型をとったときに、経済の活性化のためにすべて租特とか等々認めるなということはおそらく言い切れないと思いますが、政策誘導型で出るときにはそれなりのしっかりした根拠がなければいかん。例えばその出たときに十分な経済効果が期待できる、あるいは出た後のひずみ、あるいは非中立的な税制の言うなればループホール、抜け穴、あるいは税制の簡素にそれほど大きくかけ離れたものにならないか等々の検証が多分必要だと思いますね。そういう意味で、基本的に税制と活力の関係において、こういう軸足の置 き方をどっちにするかということで幾つか我々は共通の認識を持っておく必要があろうということですね。
ここの税調の議論でも、税制というのは補助金の裏側で補助金的に使って誘導するのもいいだろうというご意見も幾つか出ておりますから、その辺につきましても再度議論を固める必要があろうかと思います。
次のペーパーは私の書いた、今みたいな話を文章にしたもので、これは後でお読みください。
それから第二の論点に移らせていただきます。これは、税制調査会というのがこれまでどういう役割をしてきたかという点におきまして、必ずしも情報が十分にいってなかったと思われますので、まず最初に、3枚目にポンチ絵がありますので、ちょっとこれを見ていただけますか。
世界の税制改革のやり方を見ますと2つ型があるのですね。これは上のルートが欧米型であって、下が日本型なのです。どういうことかといいますと、上は例えばアメリカを連想していただくといいと思いますが、アメリカでレーガンのときに税制改革をやろうと言ったときにどうしたかといいますと、必ずここに専門家グループからなるタスク・フォースをつくって、たしか7~8人、あのときはスタンフォードのマックロアーだと思いますが、チームを組んで、1年から2~3年、専門家によってたたき台的な言うなればリポートをつくらせて、財務省案というのが有名なタックス・リポートに出ましたが、そのタックス・リポートを公表した後に、アメリカの場合でありますと議会に出す。 そこで国民的な議論の場で徹底的に議論する。パブリックヒアリングもやって、公聴会もやって、言うなれば国会審議に当たる議会でそれをもんでという形ですから、議会の間ですごく修正される。したがって、タックス・リポートの原型がかなり崩れるということがありますが、ただ、専門家集団が税制改革の案をつくるというのは大体欧米型だと思いますね。これはイギリスにしろ、スウェーデンにしろ、ドイツにしろ、大体こういう形でやってきて、とりあえずある案をタックス・リポートに出す。
それに比べて、私は日本型と呼んでいるのですが、審議会方式というのを使うわけですね。したがって、その場合には、税調の場合には内閣総理大臣の諮問機関でありますから、総理大臣から諮問が出る。そういう諮問を国民各層の代表という形で税調なら税調で受けとめて、それで、我々3年ごとに中期答申を出しますが、そういう形で答申を出して、そして国会の審議に委ねてということですね。
後ほど申し上げますが、政府税調が単独で、言うなれば税制審議に関して独占的な地位が与えられたときには、この審議会で決まったことがほぼ無修正で国会を通過いたしますから、この審議会での答申づくりのときは非常に重要だったわけですね。その後、党税調というのがございますように、ここでいろいろ党の勢力が絡んで国会審議に反映させて、実施がどの程度かクエッションマークでありますが、こういうルートで議論する。そういう意味で、これはどっちがいいとか悪いとか言っているのではなくて、経験的にこういう2つの型があったということをちょっとご説明したいわけです。
そこで、税調がこういうものにコミットしましたのは、次の表を見ていただけますか。1.は、日本型が審議会で政府税調で国民各層の代表であり、欧米はタスク・フォース型で専門家グループ。日本でやったシャウプ勧告、シャウプ税制使節団は典型的なタスク・フォースですね。要するにアメリカから7人ほど専門家が来て、それでつくったものを当時のGHQというすごい権限があるところがバックに立ってでき上がったというスタイルですよね。あのとき国会等々もそれほど大きく抵抗できなかったわけです。言うなればタスク・フォース型というのはごく専門の、10人以下ぐらいの専門家グループが専門的な視点からタックス・リポートをつくって、それを世に出して、そこで議論する。日本型というのはどちらかというとこの審議会のベースで中身を詰めていく。こういう違いだと思ってください。
そこで、「政府税調前史」と書いてございますが、実は下を見ていただくとおわかりのように、1962年に恒久化された政府税調ができたのですが、それ以前、40年代、50年代にも幾つか、ここに書いてあるような税制調査懇談会とか税制審議会等々ございます。閣議決定で内閣につくったり、大蔵省につくったり、委員の数がどうだというふうにここにちょっと整理しておきましたが、こういうふうにアドホックにつくっていったものが、1959年に、やはりしっかりした恒久的なものにしたいという形で、政府税制調査会ができ上がったわけであります。
1959年につくったのですが、そのときはまだ3年の時限立法だったのですね。それが60年に恒久化したという形で我々の政府税制調査会はでき上がったと。ここをちょっと押さえていただきたい。先ほど申し上げた審議会方式のコアな審議会になったということですね。
そこで、あと私の勝手な評価なのですが、おそらく1960年代、70年代というのは、党税調がまだ本格的に活動しておりませんでしたから、政府税調が取り仕切って、そこでまとめた案というのを国会に持っていって、ほとんどそこで決まったという時期がありました。
その後、言うなれば自民党税調のほうが専門家集団化して、特に政治的ないろいろな要因も含めてそこでジャッジメントをするという形があり、当初、私は、1980年代の前半は政府税調、党税調、若干対立したときもあったかと思いますが、その後次第に協調の関係になってきたと、このように思います。
とりわけ基礎的なプランニングは政府税調がやって、最後に税率あたりを、言うならばダルマに目玉を入れるようなときは党税調がやるというような仕切りがだんだんできてきたように思います。たしか1979年の大平さんのときの一般消費税5%の5は政府税調が言ったと思いますが、売上税のとき、それから1989年の消費税が成立したときは、たしか自民党税調がそこで3%と決めたはずでありますし、1992年の地価税のときも、最後の税率は自民党税調が入れたはずであります。
そのとき、たしか塩川大臣が党の委員長だと思いますが、そういう形で、基礎的なというか、大きな流れは我々のほうで整理して、非常に政治的に責任を持ってもらわなければいけない点につきましては自民党税調がやると、こういう仕切りになってきたのが1990年代以降だと思います。そういう意味では暗黙のうちの役割分担というのが党と政府税調の間ではできてきたかなと思います。これについて、またご質問ありましたらご説明したいと思います。
予定した時間をちょっとオーバーしておりますが、最後に一枚紙だけ、これからどんな論点で議論していきたいかということをちょっとかいつまんでご説明させてください。
消費税とか所得税とか法人税とか資産課税とか、個々の税を挙げて、それベースで議論するということも多分あり得るのですね。しかし、そうなりますと、個々のパーツパーツの具体的な方向というか、改革のアイデアをまず出すというやり方よりは、我々が考えておりますことは、あるべき税制でありますから、やはり個々の税に入る前にもうちょっと基本的な税の役割等々の議論があってしかるべきと考え、このような項目を立ててみました。
これは詳しく申し上げませんが、例えば税の空洞化等々の話では、すでにマスコミで随分報道されておりますが、すべての税についてどうも本来集めるべき税が制度的に保障されなくなっている。空洞化が起こっているとか、受益者負担の関係から見て、このギャップをどうするかというときに、負担を上げるのか、あるいは受益を下げるのか、そんな問題。
それから21世紀型でもご説明しましたが、あと構造変化への対応。後ほど事務局からご説明いただきますが、さまざまな変化が少なくも我々の税制を取り巻く環境については起こっているわけですね。基本的にいうと、我々の今ある税制は1950年のシャウプ税制ができたそのベースでできてますから、特に男女共同参画なんかない時代の所得税と今の所得税というのは大きく違ってくるはずですよね。それをさっと書いておきました。
それから地方分権。これもおそらく地方税のあり方を議論するときには大きな問題でありますので、こういう形のものを少なくも2~3月ぐらいにかけて、あるいは4月まで及ぶかもしれませんが、まず、俗にインフラ的なところをしっかり固めて、それから個別の具体的な議論に入るのが筋ではないかと考えております。これも後でご意見を賜ればと考えております。
それでは、今私がご説明いたしましたことにつきまして少し議論の時間を設けたいと思いますので、20分、30分少し時間をとりますので、どうぞご質問なりご意見を賜りたいと思います。いかがでしょうか。特に最初の1ページ目の図あたりについて、おそらくご反対の意見の方もおられようと思いますので、いろいろお出しいただけたらと思います。
〇委員
反対というようなことではないのですけれども、私のやっている伝統的な財政学は少数派になっておりますので、少数派になっているドイツの正統派の財政学の立場から言うと、公平・中立・簡素というのは大体アングロサクソン系の租税原則なのですね。
伝統的にドイツの財政学では、まず最初に財政施策上の原則、その後に経済政策、これが多分中立性に当たると思いますし、その次に公正の原則があって、これが公平に入ってきていて、それで税務行政上の原則というのが簡素に当たってくるだろうと思いますが。ドイツのほうでは一貫して現在でも、ノイマルクの財政原則を見ても、まず最初に来るのが経済・財政政策上の原則、つまり、必要な税収を確保するという考え方ですね。
必要な税収を確保するというような原則はアングロサクソン系の租税原則には出てこないのですけれども、私は、今のように大きく状況が変わって抜本的に税制を見直さなければならないというときには、物事のきちっとした原点を詰めて考えていかないとだめだと思います。タイタニック号が沈もうとしているときに、甲板のデッキをよくする税制ということを考えてもあまり意味がないので、全体を全部立て直すということは原点をやっていかなくてはいけないと思うのですね。
そうすると、先生いつもおっしゃっているのですが、税制調査会の場合にはどうしても歳出のほうにあまり口を出すというわけではない、それは前提とせざるを得ないという苦しいところがありまして、私の考え方では、そういう意味では本来、財政政策上の原則があるというのは、財政学のほうでは出をまず決めておいて、出を図って入を制するというのが財政の原則で、民間の経済原則と違うのだということを言っておりますので、最初にどんな公共サービスが必要かというのを決めて、内容が決まってくると、その公共サービスに応じてどういう負担が公平なのか、中立なのかと、こう来るのだろうと思いますが、少なくとも最初に必要な公共サービスを充足していくということが大原則だろうと思うのです。
それを抜かした上でやっておりますので、私、今正確な数字を持っておりませんけれども、租税負担率でいうと、租税負担率というのは本当は歳出との関係で議論する話だけれども、国際比較で議論するというのも変な話ですが、アメリカは28ぐらいいっている。租税だけでとりますと。それで今日本は24ぐらいだと思うのですね。しかも、租税負担率が小さいだけだったらいいですが、その小さい政府がものすごく国際的に突出した大きな借金を抱えている。
国家観といいますか、どういう国家ビジョンを描くのかということについてはいろいろな議論があるかもしれませんが、それにあわせて税制を考えるときに、抜本的にもう一度見直そうということであれば、税収の原則をまず考えておく必要があるだろうと思います。
〇委員
それは、5ページの主要な論点の最初に「租税の役割」と書いてあるのは、まさに委員が言わんとすることを言いたいし、「受益と負担のあり方」というのは、まさに今言った、低負担なのに突出した規模の大きい政府になってしまっているというあたりのこと、これはこれから本格的に議論していただきたいので、また積極的に問題を開示していただきたいと思います。
どうぞほかに。
〇委員
1枚目の紙で20世紀型と21世紀型ということですけれども、21世紀は公平・中立・簡素と。ただ、もう少しこのごろ税というか、日本経済の中で税を考えていて、この経済成長をどうするかというか、本当に、本来ならば今ぐらいはリアルで2%ぐらい成長して、税収が回復しているだろうなという感じで僕も考えていたのですけれども、それも実現しなかった。今こういうミーティングも必要になってきたというのは、日本の経済をどう活性化するか。その中でいきなり何か効くというわけではないのですけれども、経済を活性化する環境をどう整えるか。その中で税が何ができるか。
そうすると、具体的に言うと、具体的な問題としてはやはり高齢化と経済のグローバライゼーションというのが背中にあって、その中で税を含めた日本経済をどう活性化していくか。もう少し今問題が先鋭化しているというのか、戦略化しているような気がして私はしようがないのですけれども。
それで具体的に何を言っているかというと、そこは委員のことと触れるのですけれども、やはり年金の問題をどうするか。つまり、社会保険料を全額所得から控除して、公的年金等控除でさらに控除していくような仕組みがあり得るのか。それからあと地方税にしても、国とどう分け合うのかというような形で、公平・中立・簡素というのは、その点は僕は特に中立性が重要だと思うのですけれども、今日本でそこはやはり経済活性化との兼ね合いで問題が出てくるだろうなという気がします。
〇委員
その活性化の定義なのですが、それを租特であるとか、非課税をどんどん増やすとか、従来のちまちましたことしかなくなってきたのだけれども、さらにまだ政策誘導型でやったほうがいいというご意見ですか。つまり、ここで言っているのは、両方ばっさり切ってしまったから、あまりにも極端な議論になってしまっているから議論しにくいと思うけれども、民主導ということは、おっしゃっている活力とか経済成長のために何ができるかということをもっと具体的にご議論いただいたほうがいいのですけどね。租税特別措置みたいのをまだ使えということなのかな。
〇委員
租税特別措置自身の定義が何が本則で何が租税特別措置かというのは難しいから、基本的には課税ベースを広げて限界税率を下げるというのがあるでしょうけれども。やはり高齢化の中で、あるいは社会保障が非常に大きくなっていく中で、税がそれに対してどう、ほうっておけば浸食されるだけですから、それとか、グローバライゼーションの中で資本所得課税をどうこれから考えていくかというのは大分今までの議論とは変わってくるだろうと思います。
〇委員
もうちょっと時間とりたいですが、どうでしょうか。
〇委員
この税制の役割ですけれども、この20世紀型のところに掲げられております租特とか、非課税とか、ほかの所得控除とか、これはいわばレント・シーキングだと思うのですね。このレント・シーキングによってやはり政府が肥大化してしまっている。そのためにやはり税の空洞化が起きているし、財政赤字が深刻化している。それがもう限界に達したということなのでしょうね。ですから、それは当然軸足は個別の経済主体の行動を妨げない税制に移らざるを得ないととらえざるを得ないわけです。この場合、税制だけではなくて、税の執行面もやはり含むと思うのですね。タックスリスクという問題はやはりあるわけで、企業が経済活動をやる場合、一体どこに、後になって税金かけると言われてくるケースもいっぱいあるのですね。そういうタックスリスクも取り除いていかないといけないと思うわけです。
それと、5枚目のほうに触れてらっしゃいますけれども、国際化の視点が非常に重要であると思います。国際化の視点でいや応なく、税制もそれに適応されざるを得なくなっている。例えば国際資本移動ですね。非常に大量に迅速に動いている、そういう問題。ですから、資本所得には低い税率にしないともう逃げられてしまうということですね。そういう著しい変化が起きている。それにやはり対応するということを考えていく必要があるのではないかと思います。
〇委員
委員、いかがですか。一番この辺に違和感をお持ちなのは委員ではないかと思うけれども。
〇委員
一番最初のこのIncentivesの会長のおつくりになったのは、大分お急ぎで、こんな程度かなとかなり簡素化してやっているという印象で、ここら辺が議論の一番重要なポイントになると思いますね。前回も申し上げたのですが、個々の税金についての議論に入っていってしまうと、本当に森の中に入ってしまって、どこを見てるのだと、何のために歩いているのだというところになりかねない。
ただ、基本的な認識というか、理念というか、要するになぜこういう議論をするのかというその基本的な点になりますと、大変難しいと思います。実は私個人もある部分では、この市場原理主義といいますか、民主導というか、基本的には、理想的にはこうあるべきだと思うのですが。しかし、これで突っ走った場合、世の中はどうなるのかと。民主導ということで、官といいますか、政府という分野の役割なり機能なりというものを縮小した場合、あるいは撤退してしまった場合、世の中は果たして民主導ということでうまく機能してくれるのかどうか。過去何年かこの議論があったけれども、最後はやはり官が出ていかざるを得ないというのが現実にあるわけで、民のマインドも、自分たちでやるというところまではなかなか切りかわってない。そういうところからすると、税制というものの下の段の政策目的といいますか、ここら辺もすっきりと整理できるのかどうか、非常に悩ましい。
つまり、税制の基本的な、あるいは理想的な純粋な議論、理論というのは、これは現にあると思うわけですが、しかし、それを理論だけで突っ走ってしまった場合、果たしていい世の中というか、安定した世の中になるのかどうか。やはり税制としても、理論として純粋理論からは少しずれているけれども、そこは現実と妥協せざるを得ないのではないかというようなところがずうっと終始悩み、これは皆さん同じだと思います。
一言言わせていただくとすると、やはり公平・中立・簡素というものを基本にしながら、そこを踏み外さないのを原則としながら妥協していくと。これが現実の税制だったのではないか。そこのやり方をすっきり変えられるのかどうかというあたりがこれからの議論の一番のポイントになってくる。各論に入った場合はますますそこら辺のギャップが顕在化してくるという気がいたします。
一言だけ言わせていただくと、私は専門の学者ではありません。そういう立場からでもあるわけですが、やはり現実というものを留意せざるを得ない。一番最初の専門家のタスク・フォースですか、欧米型、日本型、会長が分類されてましたけれども、どうも上のようにすっきりはいかないのではないかという気がいたします。つまり、原則は原則として、理論は理論としていかに現実との配合をやっていくか。つまり、大胆にしてやはり細心ということになるのかなあというのが今のところの印象です。
〇委員
おそらく皆さんが持っている共通の悩みを整理してくれたのだと思いますが、これから、例えば住宅ローン1つにしても、マル老は1つ整理がつくようになりますが、ああいうものについてどのぐらい出るかというときに、おそらく基軸をどっちに持っているかということだろうと思いますよね。おっしゃるとおり、民主導で全面的に走り出したときどうなるかという心配はみんな持っているわけですから、それを現実とどう妥協するかというあたりの兼ね合いだろうと思いますが、これからまたいろいろ具体的にご議論いただきたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。
〇委員
先ほどの先生のお話にもありましたように、租税の役割、これは十分な歳入を上げるということが何といっても第一の要請ではないかと思うのですけれども、最近のこの10年間のいろいろな関係から、あまりにも受益と負担、歳入と歳出が離れてしまっている。これを回復するというのが本来であれば最大の仕事ではないかと思うわけでございます。
そういった意味においては、まずはいろいろな活性化とか云々のためにさらに減税をするという、そこらは最小限度下げる必要がある。また、7兆円の恒久的減税をやってもあまり効かないということからすると、活性化なりで今までのような意味でのいろいろな措置を講ずるということはどうも効果が疑問に思われるわけでございます。
しかし、さりとてここで税の本来の役割に返って歳入の確保ということを正面から持ち出しましたときには、おそらく税制改革についての世の中の支持が得られるかどうかという心配がありますし、また財政全体の構造改革が行われようとしているときに、歳出のほうの緩みを生ずるのではないか。こういうふうにも思います。
それからもう一つ、私はある意味では楽観的でして、いよいよ国債が暴落するとかそうなった場合には、当然、消費税の税率のアップなり何なりが持ち出されるでしょうし、それはまたかなり可能な話ではないかと思います。そういう環境に来ているかといえばそうではない。しかし、必要かつ緊急の要請があるときにはおそらくできるだろうと思いますから、ここはそう今すぐ心配しなくてもいい。
そういった意味からしますと、ここは大きくは税収規模――諮問会議のほうでも、政府の規模は変えない。それからすぐ財政構造改革をするともおっしゃっておられない。必要なときにはするのだという表現がございます。そういう意味におきましては、税制改革を考えるこの時点においては、大筋としては現在の歳入規模を変えないで、その全体の構造が現在のいろんな経済情勢、社会情勢の変化に十分対応しているのかどうか、そこらを確認し、少しでもそうした社会経済の変化に即応したようなものにするような税制がどうあるべきか、そういう視点でいいのではないかと思うわけでございますので、この5ページにありますようないろんな経済社会の構造変化への対応といった点を中心に、大きくはあまり今の規模を変えないという範囲で、そういう意味では租税の役割、若干外れてしまうのですけれども、しかし、現時点ではそれでいいのではないか。この5ページの整理されているものに即応していくというあたりが適切ではないかという気がいたします。
〇委員
ありがとうございました。
では、どうぞ。
〇委員
簡単に先生にちょっとお伺いしたいのですが、官主導から民主導へと、そう世の中が変わっていく場合に、この3ページですけれども、税制改革における2つの形、これに何かやはりプロセスですね、多少変化が生じるのかどうか、あるいは変化を加えるかどうか、そういった点いかがでしょうか。
具体的な例を申し上げますと、欧米型というのは、まずタックス・リポートができまして、それから財務省なら財務省が法案をつくって、連邦議会に出したところで公聴会などが入って、そこでもう条文そのものについて、各界、いろいろな業界から、当然弁護士がいろいろアドバイスを与えて、この条文のどうのこうのはよくないとか、そういったレベルで議論していくわけなのです。それが一種の民間における租税の会計士なり弁護士の役割ということですけれども、これはだんだん私の話になってまいりますが、やはり民主導というふうになっていった場合には、租税の法律家なり会計士、会計士は十分いらっしゃるのですが、法律家、これをやはり何かの形で増加してもらわないと、民主導になったときに、税金の問題について民のほうが追いついていかないという問題が出てしまうわけですね。
ですから、先ほどのお話が出たと思うのですが、さて、何か経済活動やってみたら、あっと驚いたら税金がかかってしまったと。これはやはり民主導のためにはどうしても民のほうにアドバイスを与えるような法律家が出てこないと困るわけですね。会計士でもよろしいですが、そういうことで、官主導から民主導へというときに、この税制改革におけるプロセスの中にもやはりそれなりに民に対してアドバイスをするようなグループといいますか、階層がここに入ってもらいたいなという希望がありますが。
〇委員
ご意見として承りますが、おっしゃる税調の審議の中身、あるいは答申の中身、これも従来と違ったような色彩が民主導という形で出てくるかもしれんというご指摘でしょう。多分ね。
〇委員
具体的には社会全体の問題で、個別の改革とか改正案の話にはとどまらないのですけれども、まだまだなかなか日本ではそこの認識が薄いということですね。
そうでしょうね。
最初のご質問に答えるならば、民主導、官主導はこの2つの型とは関係なく進んでいるわけですから、これをどういうふうに変えていくかというのはこれからの議論だと思います。
〇委員
特に租税という特定の分野に限った場合にどうなるかということをぜひ。
〇委員
そうですね。ちょっと我々も検討しましょう。
では、どうぞ。
〇委員
私も改革論者なので、官がいろいろな分配を決めたことから個人が決定する世の中にしなければいけないとは思っておりますが、そこで2つ問題がある。1つは、官から民へ弾が飛んできても民がそこまで育っていないという、いわゆるまともな市場のように動かない。減税しても、お金は使わないで貯金が増えるという摩訶不思議なこの国で、民に任せるというか、市場に任せるが、市場がどうもまともでないというのが一つの心配。
それからもう一つは税制の役割で、会長は今までは「税制による特定の政策目的を誘導」と、これはかなりバイアスが入った書き方だという気がするのですけれども、私は税制というのはすごく有効な政策だと思うのですよ。問題なのは、変な足かせをいっぱいつけたり、控除したりなんかしたので。例えば住宅だったらお金持ちは控除が得られないというような、そういうのがおかしかったので、この括弧にあるところが変なのであって、税制による政策で何かを動かすということは有効だと私は思うのです。
ここで矢印があって「公平・中立・簡素」。もしここでとまってしまうと、普通の人たちは、今こんなに景気が悪くてあれしているのに、いろんな控除やなんか外すと増税になることが多いわけですよね。この景気が悪いときに何で増税なの、全然わからないわという話でとまってしまうと思うのです。もう一つ先に括弧があって、四角があって、例えば、だからすごくゼロがあって、ものすごい勢いで政策を意図的にマイナスになっていたのを中立にするときにゼロまで持ってきたのでは中立にならないですよね。もうちょっとプラスまで振って初めて中立になるので、そういう感覚というのかな。ここでとまって、あとはもうみんなあなたたちが勝手におやりという話ほど日本の人々はそう強くないし、私は税による何か有効なことをやって日本を元気にするという方法が欲しいと思います。
〇委員
おそらくそういう意見、強いですよね。まだマスコミの中でもね。だから、まだまだそれを続けるか、あるいは今言った、もう民に任せてしまうよという形で突っ放せるかというところ、先ほど委員もおっしゃったけれども、そこの問題でしょう。その問題、あると思いますよ。ただ、基本的な基軸として、いつまでもそれにおんぶしてやらなければいけないかというと、いつまでたったって育たないわけね、民は。市場も育たないわけね。
それから、あえてちょっと説明すると、誘導という言葉はちょっとお気にさわったようだけれども、実は誘導したいわけですよ。住宅にしたって、福祉にしたって、資本蓄積にしたってね。だから、その結果、税がそういうふうに使われたというのがいいかどうかですよね。それはタックス・ポリシーとしてそういうのも大いに結構だという話も当然ありますから、それはそれで1つ市民権は得ているわけですよ。ただ、今どうするかという話ですね。
ちょうどいいや。委員、その辺整理して。
〇委員
先生がおまとめになった「税制とIncentivesの関係」、これは非常にオーソドックスで、教科書的におまとめいただいたので、今までのようなご議論が出てきたのだろうと思います。私はこのまとめ方というのはスタンダードなまとめ方だと思うのですけれども、現実の問題とすり合わせてこのまとめ方を読むという場合に、幾つかクリアーにしておくべき点があるのではないかという気がいたします。
それは、まず言葉の使い方が人によって違うと。例えば公平とか中立とか簡素と言いましても、これは人によって全然違う言葉使いになりますので、そういう意味で、今までのご議論をお聞きしながらちょっと私の気づいた点をお話しさせていただきたいと思います。
例えば「中立」という言葉、あるいは委員が「必要な税収」という言葉を使われたわけですし、委員もお使いになりました。アングロサクソンは税収中立を考慮に入れないということは、これは誤解でございまして、最近の税制改革論の中では、税収を制約にしながら、そしてその中で中立、あるいは公平、あるいは簡素というものを議論していくというのが、ちょっとややこしく専門的な言葉で申しわけありませんけれども、次善的な、セカンドベスト的な意味での税制論議というのが1つございます。
ここで先生がおまとめになられたのは、市場がうまく機能していて、そして白紙の上でタックス・デザインをしたときにどうなるかというような形で、真空の上での議論が市場を通じて民主導というような形で、例えばフラット化でありますとか、いろんな形でのコンパクトで簡単な税制につながるわけですけれども。税収を一定というぐあいに制約をつけたときの中立性というのは、これはインセンティブに実はかかわってくる問題でございまして、できるだけ税率構造というものが資源配分に対して効果を計算した上で、影響が少ない、そういうものを「中立」という言葉を使われるわけで、日本の今までの例えば租税特別措置というものを考えてみましても、収益構造の悪いところに補助金プラス税金は払わないような形にして、一方で収益が上がっている法人に対しては標準税率という形で課税をするというのが、これは現実のセカンドベスト的な意味での中立という点では非常にバイアスがある。これをどういうぐあいに、歳出面における手当ても含めて中立化していくかということが問われるのが現在的な意味での中立性であります。したがって、これは労働供給においてもそういう意味のものでございますから、委員の活性化の問題と中立化という問題は私は基本的には矛盾しないコンセプトであるだろうと思います。
それからもう一つ、委員がおっしゃった問題、これはタックス・デザインで我々が念頭に置きながら議論するのか。タックス・デザインというのは、白紙の上に税を全部描くような形で議論するのか。今の初期の状況、あるいは現実を踏まえた上で、タックス・リフォームとして、利害関係者がどういう利害状況にあるかということも含めながら、段階的な形で税制を議論していく、こういうグラジュアルな手法でございますと、これは明らかにファーストベストのタックス・デザイン的な部分のところと、セカンドベスト的なタックス・リフォーム的なアプローチというのは違った形になるわけで、我々がどういう形でこれを念頭に置きながら議論するか、頭を整理していくかということは非常に重要なポイントに今後なってくるのだろうと思います。
したがって、中立・公平という公平の部分のところもまだ定義がきちんとされておりませんけれども、今後議論を詰めてまいりますときに、我々自身も頭を整理しながら、国民にこの問題について理解を求めていくという周到性がおそらく必要になってくるのではないかという気がいたします。
〇委員
ありがとうございました。ぼつぼつ時間もなくなってきて、次に移りたいのですが、まだご発言ございますか。
どうぞ。
〇委員
全面的にそう思っているわけではないのですが、経済の活性化との関係で税金というのを考えますと、減税イコール活性化というのは当たり前というふうにとらえられているように思うのですが、現実を見ますと、所得税を減らしてくるに伴って日本の経済は活性化してこなかったわけです。ですから、活性化というのは何かというと、一生懸命働かせることかもしれない(笑)。そうすると、税金を減らし過ぎたから働かない。したがって、経済は活性化しない。そういうレベルまで下がったのかもしれないなという気が非常にしてまして。
だから、増税して、すかすかで、もっと頑張らないと食えないという状況にするのが活性化の手ではないかなと(笑)。税制というのは力を持っていると思うのですが、ただ単純に減らせば人は頑張るという、単純に税金を減らせば経済は活性化するというのは誤りではないかなと思うのですよ。当然、そのレベルの話だと思うのですが、今は減税すればするほど貯金に回すわけですから、頑張って働く必要はどこにもないという状況に来たような気がするので、増税というのが日本活性化のための大きな手段ではないかなと思ってます。
〇委員
時々、委員のイズムが出てきて理解に苦しむことがありますけれども、おっしゃることはよくわかります。要するにインセンティブスは増税でも出てくるだろうというご意見だろうと思いますが、まあそうかもしれません。
いずれにしましても、この問題、きょうで終わるわけではなくて、今後さまざまな機会にご議論いただくのですが、ただ、私が申し上げたかったのは、今相変わらず活性化、活性化という形でさまざまなアイデアが出て、とりわけ証券だ、土地だ、あるいは消費税を段階的にどうしろこうしろなんていう話もございますけれども、やるにしても、この軸足をどっちに置くかによって意味が大分違うのですよ。
僕は白紙にこれを、公平・中立・簡素なんていうことを言えないというのを重々わかった上で、少なくもこういう原理原則があって、何か政策誘導型というか活力型に使うのと、はなからこういう基軸がなくて、何でもまあいいや、減税して活性化しようというのと意味が違いますので、そこの点だけちょっときょう押さえていただければと思います。いずれにいたしましても、まだ議論が生半可なところもございますから、この種の議論は今後も続けたいと考えております。ではよろしゅうございますか。次のテーマに移って。
では次は事務局から、経済社会の構造変化につきましておまとめいただいたデータがございますので、ちょっと簡単にご説明いただけますか。
〇事務局
お手元にございます基礎小5-3という資料でございます。やや小さくて見にくくて恐縮でございますが、これはあるべき税制をお考えいただくに当たりまして、一つの基礎となるデータをとりあえず審議のご参考のために事務局でまとめさせていただいたものです。その項目でございますけれども、従来ご議論になっていたところをとりあえずまとめてみたというものでございます。
資料のほう、一番左の項目というところでございますが、これが言ってみれば構造変化につきましての切り口ということで、そこにございますように、高齢化・少子化、あるいは経済の国際化、ストック化といったような項目につきましてデータをまとめております。
これは時系列でまとめておりますものですが、一番左のところは戦後税制の出発点となりましたシャウプ勧告時のデータ。それから、その次の欄に向かっての中間地点でございます昭和40年、これはご存じのように、高度経済成長の真っただ中ということでございます。それから次が63年と平成2年ということでございますが、これはちょうどシャウプ以来の抜本改革となりました、消費税を導入いたしました元年の改革でございますが、その前後をはさみましてということでございます。さらに平成2年は、ご存じのように、税収が国税ベースで60兆円を超えるというピークの年、裏返しますとバブルのピークということでございまして、ご参考までにここに掲げております。一番右の欄が現在ということでございまして、この長期的な構造変化を追っているということでございます。
きょうはちょっと時間も押しておりますので、中身につきましてはごらんいただければ大体インプリケーション等おわかりいただけると思いますので、説明はいたしませんが、このほかにもいろいろ切り口、あるいは同じ切り口でもいろいろなデータが欲しいというご要望があるかと思います。その際には、この小委員会での議論の場、あるいは直接私どものほうにお申しつけくだされば、なかなかこれだけ長期のデータを連続性を持ってとるということは困難な面もございますことはご了解いただきたいと思いますが、極力ご用意いたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
〇委員
ありがとうございました。お気づきの点があり、またデータを詳細に調べたいという方は今のお申し出を受けて要求していただければ用意してくれるものと思います。
(内閣府参事官着席)
〇委員
それでは次のテーマで、「改革と展望」、これは正確には「構造改革と経済財政の中間展望」、これにつきまして、内閣府の参事官がお見えでございますので、まずご説明いただきまして、後で質問させていただくということに移りたいと思います。どうもお忙しいところをありがとうございました。では、15分ほどでご説明いただければと思います。
〇事務局
ご紹介いただきました者でございます。よろしくお願いいたします。
お配りしております資料を先にご説明しますと、中期展望の関係の資料、3つございます。それから月例経済報告、足元の景気動向でございますけれども、月例経済報告の関係で資料2つお配りしております。月例の説明はいたしませんけれども、表紙にも書いてございますように、景気は悪化を続けていると、厳しい状況が続いているという認識でございます。
それから5-6「平成14年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」でございますけれども、一言で申しますと、13年度、今年度の経済成長率は-1%程度ということで、非常に厳しい状況でございます。それから14年度につきましては、年度後半に民間需要中心の回復に向けて緩やかに動き出すことが期待されるということでございますけれども、14年度全体としての成長率は実質で0.0%程度と見ているということでございます。
それでは、資料5-4-1「『構造改革と経済財政の中期展望』の骨格」という一枚の紙がございますが、これでまず大体のアウトラインをご説明させていただきたいと思います。この「構造改革と経済財政の中期展望」でございますけれども、経済財政諮問会議で、各委員のご審議によりまして9月ごろから審議が進められまして、先日、1月18日に経済財政諮問会議で諮問・答申が行われました。そして1月25日に閣議決定したということでございます。
内容でございますけれども、この中期展望ですが、対象期間を5年といたしております。2002年度から2006年度までの5年間。そのうち、上のほうの箱にございます、最初の2年間を集中調整期間と言っておりまして、この間の最大の課題はデフレの克服であると位置づけております。
そしてこの期間におきまして、その下に3つ書いてございますけれども、「デフレ阻止と不良債権処理の促進に向けた強力かつ総合的な取り組み」。これは政府・日銀が一体となって取り組みを進めていくということ。それから2番目にございますけれども、「民間需要・雇用の拡大に向けた構造改革の推進」。構造改革は当然ディマンドサイドとサプライサイド双方にプラスの効果をもたらすと考えておりますけれども、集中調整期間におきまして、特に需要のほうに力点を置いた構造改革を進めていくという考え方でございます。そして3番目に「デフレ・スパイラルの阻止」ということで、現在も国会で二次補正が審議されておりますけれども、「緊急対応プログラム」、第二次補正を初めとして、大胆かつ柔軟な政策運営を進めていくということであります。
そういう施策に取り組みますことによりまして、右側の箱に書いてございますけれども、「景気は厳しいながらも2002年度後半には回復に向けて動き出す」。2003年度はプラスの成長を実現する。そして「集中調整期間の終盤にはデフレも克服され、物価上昇率はプラスに」なると、そういう展望を示しております。
次に、その下にまいりますけれども、2002年度から2006年度の対象期間全体を通じまして、民間需要主導の着実な成長を実現するという考え方であります。そして構造改革の効果は加速的にあらわれる。これは広範な構造改革をしていくわけですけれども、制度間の補完性ということを考えますと、ある程度広がりを持った改革が進むことによって効果が加速的にあらわれるという考え方です。
そして、その構造改革でございますけれども、7つの柱に分けて記述しております。まず1番目の柱が1)「人材大国の実現」ということであります。まず人を育てる。
そして2)と3)が、そういう人が活躍できる仕組みをつくるということですけれども、2)は再挑戦が可能な社会、そして頑張りがいのある社会システムを構築するということであります。そして3)に、生涯現役社会、男女共同参画社会を構築していく。例えば下にございますけれども、高齢化は社会の活力を失わせるものではないということで、生涯現役でいられる社会、例えば70歳まで多様な形態で働ける「活力ある高齢化社会」を実現するという考え方であります。
それから4)はこれから日本がどういう形で生きていくのかということですけれども、そのためには新たな成長のエンジンが必要であるという考え方。そして空洞化が問題になっておりますけれども、これを何らかの形で阻止していくことが必要であるということであります。
最初の・は「高齢化や環境問題は我が国にとって課題であると同時に新たな成長の契機でもある」ということで、それをむしろチャンスと考えるべきだと。高齢化社会対応システム、循環型経済社会対応システムを創造し、世界にも提供する。そういった、どちらかというとこれはドメスティックなほうの産業でございます。
それから製造業につきましては、3番目の・ですが、最近中国の脅威が指摘されるわけですけれども、「東アジア等は競争相手であると同時に有望な市場」であるということで、これら諸国と連携を深めつつともに発展するという考え方であります。
そして5)、6)、7)ですけれども、社会的ないし自然の環境、人間にとっての環境というものを書いております。
5)で「簡素で効率的な政府の実現」ということで、「民間でできることは民間で」「地方でできることは地方で」を基本にする。特に税との関係でございますけれども、この中期展望では税制につきましてはこの時点ではあまり深く掘り下げた記述は必ずしもございません。3番目の・にありますけれども、「受益と負担の関係について引き続き検討」を行うということ。それから「21世紀にふさわしい税制に向けた幅広い検討」を進めていくという記述をしております。
それから6)が「個性ある地域社会の実現」、7)が「循環型経済社会など環境問題への取り組み」。
こういう7つの柱を中心として構造改革を進めますことによりまして、右側の3つの箱ですけれども、<「人」を何より重視する社会>をつくり上げていくということが1つ。それから経済面ですけれども、真ん中の箱にございますが、<民間需要主導の着実な成長>を実現していく。具体的には2004年度以降、実質で1.5%以上、名目で2.5%以上の成長を目指すということであります。
一番下の箱に<効率的で持続可能な財政>というのがございますけれども、「政府の大きさは現在の水準を上回らない程度とすることを目指す」。これを一番上位の目標という形で位置づけております。そして、そういう財政構造改革に取り組むことによりまして、「2010年代初頭にプライマリー・バランスの黒字化が見込まれる」といたしております。
少し本文のほうで財政関係の記述を簡単にご紹介させていただきたいと思います。12ページをお開きいただきたいと思います。12ページの一番下に(効率的で持続可能な財政への転換)というパラグラフがございます。最後の行ですけれども、「財政構造改革を推進することにより、歳出の質を改善するとともに、歳出を抑制する」。そして「『改革と展望』期間中の政府の大きさは現在の水準を上回らない程度とすることを目指す。また、受益と負担の関係についても引き続き検討を行うこととする」。
そして次のパラグラフですけれども、2行目ですが、「上述の民間需要主導の着実な成長と財政構造改革の結果、国と地方を合わせたプライマリー・バランスの赤字は縮小し、そのGDP比は最終年度前後には現状の半分程度に低下すると見込まれる」。最終年度は2006年度のことであります。「さらに、『改革と展望』の対象期間の後も、その期間と同程度の財政収支改善努力が続けられ、民間需要主導の着実な経済成長が継続するとすれば、2010年代初頭にプライマリー・バランスは黒字化することとなる」と記述されております。
ここで若干補足いたしますと、「改革と展望」の期間中、この5年間につきましては、基本的には歳出の抑制を中心に考えているということであります。そしてその後の期間につきましては、今読み上げましたパラグラフですけれども、「対象期間の後も、その期間と同程度の財政収支改善努力が続けられ」と書いてありますが、財政収支改善努力の中身、すなわち、歳出サイドで努力をするのか、それとも歳入サイドで努力をするのか、これについては何も示していない、どちらとも言っていないということであります。
それから19ページをお開きいただきたいと思います。19ページの上から2番目のパラグラフですが、(国民負担のあり方)というのがございます。「簡素で効率的な政府の実現に向け歳出面の改革を推進しつつ、受益と負担の関係についても引き続き検討を行うこととする。また、将来にわたって持続可能な社会保障制度の構築や地方の自立など真に必要な行政サービスのために、今後必要となる財源をどのように確保していくのか、構造改革の進展などを踏まえつつ検討を行う」としております。
それからその次のパラグラフに(21世紀にふさわしい税制)ということで記述がございますけれども、これは基本的にこれまでの税調でのご審議ですとか諮問会議での議論、そういうものを取りまとめて簡潔に記しております。
本文のご紹介は以上にさせていただきたいと思います。
次に5-4-3、「参考資料 内閣府作成」という資料がございます。1ページ目のところに書いてありますように、この資料は閣議決定したものではございませんで、中期展望の審議を諮問会議でされる際に内閣府が参考として提出したものでございます。そして下のほうに「『経済財政モデル』による試算を基礎とした」とございますけれども、これは宮澤前財務大臣から諮問会議で、経済と財政、社会保障、そういったものが一体としてとらえられる整合的な議論をするためにそういうモデルをつくってみるようにというご指示がございました。それを受けて作成したモデルを使って行った試算でございます。
2ページをご覧いただきますと、上のほうですけれども、「試算の性格」というところで、「参考として内閣府が作成したものであり、政府としての目標という性格のものではない」ということを断わっております。そしてそのページの下のほう、(2)「具体的な前提」ということで、「投資的経費」以下、どういう前提を置いて試算したかということを記述しております。これは主に歳出面の仮定を書いてございますけれども、税につきましては、先ほどもちょっと触れさせていただきましたように、基本的に現行の税制を前提といたしまして試算を行っております。
ただし、3ページにまいりまして、[2]の「社会保障費」の<年金>のところですが、基礎年金の国庫負担割合、現行1/3でございますけれども、これを1/3のままとした場合と、それから1/2に引き上げた場合、その2つを試算しておりまして、国庫負担1/2ケースでは安定的な財源を確保する、すなわち増税を前提といたしましたと書いてございます。
ここで1/3から1/2に国庫負担を引き上げます際に必要となる財源、約2兆4,000億でございますけれども、それを増税によって確保するという想定でございまして、ここでは消費税率1%の引上げを想定したということでございます。
前提のご説明は以上にいたしまして、4ページから「基礎年金国庫負担割合1/3の場合」を書いてございます。それから9ページ以降、基礎年金国庫負担割合を1/2に引き上げた場合、2つの試算をお示ししておりますけれども、基本的にマクロのパフォーマンスですとか財政収支等にはほとんど差がございませんので、1/3のケースのアウトラインだけご覧いただきたいと思います。
7ページをお開きいただきたいと思います。この試算結果、成長率と国と地方合わせましたプライマリー・バランスの赤字がどういうふうになっていくかというのをお示ししております。実線が実質経済成長率でございます。2002年度は0%。これは先ほどの経済見通しを前提といたしております。2003年度が0.6%ぐらい。そして2004年度以降、1.5%程度の成長を達成する。また名目成長率は点線でお示ししておりますけれども、ご覧いただいたようなパスを通る。これは2003年度にちょうどクロスをいたしておりますけれども、2003年度の物価上昇率が0、2004年度以降はプラスになると予測しております。
そして棒グラフですけれども、国と地方を合わせました財政赤字、プライマリー・バランスでございますけれども、足元の4%強から、2006年度には2%強まで縮小すると。そして2010年度の数字が飛んで出ておりますけれども、ほぼ0に近づくという試算結果でございます。
最後に8ページをお開きいただきたいと思います。そういう財政構造改革を継続するという仮定をとっておりますけれども、その場合であっても、国の一般会計の財政赤字は、2003年度以降、ご覧いただきますように、30兆をオーバーしてしまう。2005年度あたりまでは増加するという図でございます。
その理由ですけれども、黒塗りの部分、これは国債費が債務残高の累増を反映いたしましてこれから徐々に増えていくということ。それから白いところですけれども、これは特会借入返済等に伴う赤字とございますけれども、地方交付税特別会計の返済、これが2004年度から始まる。また今年度一部いたしました地方交付税特別会計の借り入れを2003年度にはやめるという想定でございます。そういうところで、一般会計の財政赤字というのはある程度、財政構造改革を進めていく場合であっても増加せざるを得ないという試算でございます。
時間をオーバーしてしまいましたけれども、以上でございます。申しわけございません。
〇委員
ありがとうございました。一二、質問よろしゅうございますか。
では、せっかくでございますから、どうぞ質問をお出しいただけたらと思います。
〇委員
事務局が、先ほどの経済社会の構造変化というこの表で何か追加して調べてもらいたいものがあったらおっしゃってくださいと。せっかくのお言葉なので、1つお願いしたい件が……
〇委員
委員、内閣府のほうに質問はないですか。
〇委員
ありません。
〇委員
じゃちょっと待ってください。ご退室になられると思いますので、その後にしていただくとして、どなたか。
〇委員
この経済見通しというか目標ですかね。2002年度後半に回復に向けて動き出すという記述がありますけれども、これはいわゆる民間の経済の中に住んでいる人間からすれば、どうしてこういう見通しが出てくるのかと思うのですが、何か根拠がございましたら二三教えていただけますか。
〇委員
どうぞお願いします。私も同じ質問をしたいと思ってます。
〇事務局
政府経済見通しの資料、5-6という資料の3ページのところに若干記述をいたしております。3ページの3.「平成14年度の経済見通し」の5~6行目あたりでしょうか。年度を通した姿としては、平成13年度第二次補正予算を初め、デフレ問題への取り組みなど政策展開の効果が着実に実現する。加えましてアメリカの改善という、その2つの効果によって、厳しいながらも低迷を脱して、年度後半にプラスに転じるという見方をしておるわけであります。
〇委員
今挙げられた理由ですと、全く理解できない。アメリカ経済の改善というのは今年後半と言われていますが、それの波及効果というのは来年度以降でないと出ませんよね。来年度というか、暦年で来年以降でないと出ない。それから第二次補正予算等々の効果というのは、今まで100兆円の財政支出を行ってなおこういう状態が続いていて、まだ下っているという現状認識ですよね。そういう中で第二次補正予算の何兆円かが何ほどの効果をもたらすのか。全く、違和感というよりもっとすごい落差を感じるわけですが。これは今ここで議論してもしようがないかもしれませんが、もし強力な、いや、それはおまえら知らないことがあるんだよというのであれば教えていただきたいと思います。
〇委員
秘策があればということですな。
〇事務局
そういう秘策はないのですけれども、今の経済見通しの最後のページに「主要経済指標」という表がございます。そこに、左側のほうに支出項目がございまして、政府支出の中の公的固定資本形成という欄がございます。ここに今ご指摘の公共事業等が相当抑制されているということを反映した数字が出ておりますけれども、平成14年度といたしましては、実質ベースで見ると、二次補正の効果もございまして-1.3%ということで、非常に大きなマイナスというわけではないということが1つあろうかと思います。
それから構造改革の効果がどの程度出てくるかというのは確かに未知数の部分があるわけでございますけれども、それは先ほどの中期展望の本文の11ページに少し記述いたしております。11ページに(構造改革が効果を発揮するメカニズム)とございまして、その中で例えば[1]、[2]というのが需要サイドに効果を発揮するという趣旨でありますけれども、例えば[1]では、不良債権処理の進展ですとか、証券市場の構造改革、規制改革の進展等によって投資が拡大する。起業、創業が促進される。そういった効果を政府としては見込んでいるということを申しております。
ただ、来年度にどの程度そういう効果が現実に出てくるのか、これは注意深く見ていく必要があると考えております。
〇委員
よろしゅうございますか。
それでは、どうぞ。
〇委員
「参考資料」の5-4-3ですか。これは国債の金利はどういうことを想定してやっているのですか。マクロ経済のところに名目長期金利という項目があるのですが、これを当てはめてやっているのでしょうか。
〇事務局
ええ、ご指摘のとおりでございまして、「参考資料」の5ページに名目長期金利の数字が出てございます。足元で1.5%、来年度が1.5程度、その後徐々に上がってまいりますけれども、上がり方が比較的緩やかであるということですが、これは2つ、その背景として考えております。
1つは、現行の長期金利の水準がデフレのもとで、実質金利で見ると非常に高い状況になっている。これは名目金利がマイナスになれないという制約のもとでそういう形になっている。したがって、今後、物価上昇率が、その4行目にございますけれども、徐々に上がっていくといたしましても、物価上昇分がすべて名目金利に乗っかるという形にはならないと見ているということが1つございます。
それからもう一つは、財政面で、財政が破綻しない、プライマリー・バランスが、かなり長期にかかるわけですけれども、長期的には改善していくと、そういう財政面での健全化努力というのが想定されるということで、その2つの要因でそれほど急上昇していかないと見ております。
〇委員
それで、例えば2006年度ですね。この年に借換え債入れて年間どれぐらいの国債発行高になるかというのはやってみましたか。
〇事務局
はい。財務省ともいろいろ情報は交換させていただいてまして、国債につきましてはビンテージごとのデータを一応入れております。
〇委員
150兆ぐらいになるのですか、2006年度は。ことし100兆ですよね。
〇事務局
ちょっと手元に正確な数字がございませんけれども、相当な規模になろうかと思います。
〇委員
委員の発想は、金利がまた上がるだろうということでしょう。
〇委員
わかりません。先のことは全くわからない。
〇委員
では、委員、簡単に。
〇委員
基礎年金の国庫負担率1/2、1/3の表ですけれども、このほか選択の問題としては、1/3で増税をした場合、あるいは1/2で増税をしない場合のケースが考えられるわけですね。しかし、それは別として、そういうのを残しているということは、これは参考資料ということですからあまり気にすることはないのでしょうけれども、将来の政策の選択としては、1/3を頑張るか、それとも1/2にされるなら増税をするか、この2つの道どちらかだという判断なのでしょうか。
〇事務局
そういう判断であったのかもしれませんが、基本的に全体としてネット増税、ネット減税ということは特に想定せずに試算をしたと。歳出の抑制については一定の前提を置いたわけでございますけれども、トータルとしてネット増税、ネット減税ということは前提にしなかったということであります。
ただ、本文中にございますように、受益と負担の関係を今後とも検討していくと書いてございますので、その意味では、今後そういう点について諮問会議で何らかまだご議論があるのかもしれません。それはもちろん否定できないわけです。
それから最後に1点だけですが、この中期展望でございますけれども、毎年度改定をしていくことにいたしておりまして、この税調、それから諮問会議でも、例えば今年、税制についてご議論されるのだと思いますけれども、そういう成果を踏まえて、この中期展望自体も毎年度改定していくという予定でございます。
〇委員
今のお話に端的にあらわれていると思うのですが、ここで参考資料で示した経済のこれからの一つの姿というのでしょうかね、これは歳入を一定にして、むしろ歳出のほうを切るという選択をした場合の姿になっているわけですよね。だから、歳出、歳入のほうをそういうふうにしてピンどめするという考え方もあれば、もう一つは歳入のほうをある程度弾力的に扱っていくという考え方もあるだろうと思うのですが、歳出をここまで切るというのは非常に窮屈な財政運営にしているのではないかなという気もするのですよね。かなり難しいのではないか。公共投資もこんなに切って、小さな政府の実現というのは容易ではないのではないかという気もしますし、それでまた見直しをして、今後、財政収入のあり方を考えていくのだということになったときに、そのモデル的な絵ががらっと変わるというのもまた非常に問題があるような気もするのですけどね。
〇事務局
大変難しい問題だと思います。当然、途中過程におきましていろいろなご議論がございました。ただ、基本的にはやはり歳出の抑制というのを中心に考えるという諮問会議の全体のご議論、それから総理も基本的にそういうお考えだったと思います。
それで、先ほどの参考資料のほうはあくまでも試算ですけれども、本文中にちょっとご紹介できませんでしたが、18ページあたりに個別歳出、例えば公共事業についての考え方というようなことが記述されております。そこでは、例えば公共事業につきましては、景気対策によって増加する以前の水準を目指してその重点化を図るという記述がございまして、そういう方向性自体は政府として今後目指していくということだろうと思います。
〇委員
まだご質問があろうかと思いますが、時間も来ましたので、どうもお忙しいところをありがとうございました。
(内閣府参事官退席)
〇委員
それでは、委員が問題を出されましたが、委員のご説明がまだちょっと残っておりますので、委員もマクロな話になりますが、その後で、委員のご質問を含め、最後のディスカッションをしたいと思います。
では、すみません、委員。
〇委員
私、そんなにマクロの専門家だとは思ってないのですけれども、会長からやれというご命令がありましたので、やや素人論議になるかもしれませんが、ご説明させていただきます。
レジュメに書きましたとおり、「日本経済の現状と展望」ということで、まず第一に「日本経済の現状」ですけれども、私は今の内閣府の方からのご発言よりははるかに悲観的に物事をとらえておりまして、基本的には、まず第一にデフレの状態にあって、これがそう簡単に解消するとは思われない。他方、長期不況の状況にある。そういうことの2つのもとで財政というものをどういうふうに考えるかというのは基本的な問題ではなかろうかと思います。
デフレというのは基本的には日銀の問題ですから、税調とは直接には関係ないのですけれども、今のままでデフレからすぐ脱却して、先ほどの内閣府のご報告のように、2003年度ですか、ゼロインフレになって、2004年度以降はインフレになるとは、今の日銀の政策を見ている限りではちょっと思えないような状況だと。だから、むしろよっぽど書こうかと思ったのは、税調としても日銀に何か言えということを(笑)ここに書こうかと思ったぐらいでございます。他方、潜在成長率も低下している。
最大の問題はやはり財政のプライマリー・バランスということにあって、このプライマリー・バランスが非常に赤字で、4%あると。こういう状況ですから、後で私なりのまとめをしますけれども、ケインズ型政策の出番というのはかなりもう本当に限られたものでしかなくて、基本的にはこれはもう無意味だと。100兆円出したけれども、委員がおっしゃったとおり、意味がなかった。
サプライサイド政策ということに関してもやはり同じようなことが、ケインズ政策と基本的に似たようなことが言えるのではなかろうか。つまり、ある程度の効果があるとは思うけれども、あまりこれに期待して、サプライサイド政策をやれば経済が活性化してプライマリー・バランスが回復するということはちょっと考えにくいというのが私の印象でございます。
どうしてかというと、1つが金融機関の不良債権と企業部門の過剰債務という問題があって、今みたいなデフレで実質金利が高どまりしている状況だと、幾ら不良債権の整理とか過剰債務の整理をしていっても、ストックで消していける部分以上に、新しいフローで、不良債権と過剰債務がフローで出てくる。ということは言いかえると、ストックで整理した部分、またそれ以上にフローが出てくるわけですから、ネットのストックとしてはむしろ増えていくということになるので、こういう問題を基本的に解決するにはデフレを脱することが必要なのだけれども、それがどうも今の日銀の政策とかいろいろなことを考えると難しい。
それから、その背景にある経済構造としては基本的に雇用が保証されていて、雇用の流動性とか、リストラが非常に難しいとか、既得権益があって、例えばですけれども、公的金融機関みたいなところが民間のいろいろな目を摘んでいる。それから国際競争力もいろんな意味で低下していて、空洞化、高齢化、中国の問題などもある。
そういう意味では、基本的にはデフレの問題が解決して、プライマリー・バランスを解決するとともに構造改革をするという、この3つをやるしかないのではなかろうか。そのうちの1つとしてやはり税制改革というものを位置づけるという方向で考えるべきではなかろうか。そうすることによって、情報化、技術革新、IT、ナノテク、生命科学、あるいは環境と書いてありますけれども、こういうものが生きてくるのではなかろうかということです。
そういうことを考えていくと、やや哲学的というか、価値観的なところでいうと、先ほどのご発言でもありましたけれども、日本経済の将来展望ないしは税制も含めてですが、価値観としてどういうふうに考えるべきかというと、1つが、旧来型価値観というものがあって、後でお話ししますが、中小企業であるとか、専業主婦であるとか、低所得者層であるとか、あるいは高齢者とか、あるいは農民であるとか、地方であるとかが「社会的弱者」と決めつけられている、あるいは思い込まれているものがあるわけですけれども、それを社会的に強制して画一的な政策をしてきたわけですけれども、それをもう少し自己責任原則のもとでの多様な話にすべきではないか。
ここに書いてある「事前調整」から「事後チェック」というのも、先生からお話がありましたし、「効率的な政府」から「説明責任」の貫徹というのも同じことだと思いますが、基本的に言いたいことは、国主導から民間主導へいくということが大事であって、市場を中立化するということが大事だろうと。そういう意味では先生がおっしゃりたいことと基本的には同じだと思うのですね。
ただ、もう少し厳密に言うと、多分私が言いたいことはこういうことであって、国と国の間、国と民間の関係、民間と民間の関係というのは非常に大ざっぱにいうと2つの可能性があって、1つが固定的な長期関係、いわば日本型美徳と言われていた関係と、もう一つがアームス・レングス関係、要するに手の長さぐらいの距離を置いたややもっと短期の、嫌だったらやめてしまうという関係があるわけですね。
今までは長期の固定的な関係で、やってくれと言ったらどうしてもやるというようななれあい型のやり方でやってきたわけですけれども、そうではない、もう少しアームス・レングスの関係というものをとりわけ国と民間との関係においては強調しておく必要がある。民間と民間は必要であれば長期固定型でも構わないということではないかと思うのですが、そこの、国と民間の関係は違うのだということをもう少しはっきりすべきである。
国と民間の関係という意味では、そういう意味でいうと重要なのは、利益誘導型のいわば固定的な長期関係ではなくて、むしろアームス・レングスではあるけれども、国がちゃんとリーダーシップを持って、構想力を持ってきちんとこういう方向でいくのだと。そのときにアームス・レングスで民間を引っ張っていくということが重要なのではないかと思います。
そういうことをすると同時にもう一つは、「市場システム」自体にも限界があるということをきちんと理解すべきである。これも後で環境問題等に関連しますけれども、「市場の失敗」というものは市場には必ずつきまとうわけですから、それに対処するというのは国の財政を含めて国の責任ですし、国際化とかグローバル化をしたときには市場システムというのは必ずしもうまく機能できるとは限らないということに関しても注意を払うべきだと。あるいは「国際化・グローバル化」するときにはうまく市場を補完してやらないと市場がドタッと崩れてしまうことがあるということではないかと思います。
それから次は「日本財政の現状」です。これは単に数値をここに書いただけですが、国民負担率が、先ほどからも問題になっているように、これは基本的負担ですが、38.3%。潜在的負担率、これは基本的には受益ですが、これが46.9%、この差をどう埋めるかというのが非常に重要だろうと。それから財政赤字とか長期債務残高というのも、ちょっと信じられないパーセントになっている。プライマリー・バランスが4%である。
プライマリー・バランスといっても、皆さんご存じでしょうけれども、もう一度だけ念のためにだけ申し上げておくと、借入金を除いた歳入と国債費を除いた歳出の差額ですから、このプライマリー・バランスを単に黒字化しただけでは実は問題は解決しないということですね。つまり、プライマリー・バランスをバランスさせると何が起こるかというと、借入金の部分は借入金の部分で増えていく。それから歳入のほうは歳入と国債費を除いた歳出とで増えていく。
ただ、そのときに問題なのは、借入金、税収比率、あるいは借入金、GDP比率みたいなものがあって、もし名目経済成長率が、本当はそうでないのですが、大体租税収入の増加率に等しいとして、それがもし名目金利よりも高いならば、あるいはそれと等しいならば、プライマリー・バランスさえ回復すれば、国債発行額とGDP比率は一定率以下に維持可能、つまりサステイナビリティが回復するわけです。つまり、税収がGDP、いわゆる経済成長率で増えていく。そうすると、借入金は名目金利の率でしか増えないわけですから、言いかえると国債発行額とGDP比率はむしろ低下していくということになるわけですね。
ただ、今の日本は(1)の条件が全然成立していないというところに問題があるというのが1つですね。それからもう一つが、現状ではプライマリー・バランスがバランスしていない。ということは言いかえるとプライマリー・バランスは今悪化の傾向にあるわけですね。今4%ですけれども、これは今のようなデフレとか、そういう長期金利が高どまりするという状況のもとだと、むしろプライマリー・バランスは増えていく方向になるので、これをどうするか。
それからデフレのために、これは長期の実質利子率ですが、4%前後ある。そういう意味で、もし現状のデフレが続くと、おそらくプライマリー・バランスが回復しても財政の維持可能性は実現しないということになって、さっき言った内閣府の話というのはどのぐらい実現性があるかがわからないということになります。
それからもう一つは経済成長率と租税収入の増加率が等しいかというと、必ずしも等しくはなくて、ビルト・イン・スタビライザーという構造があるために、例えばデフレだと課税最低限以下の所得しかない人たちがだんだん増えてくる。そういうことのために税収が成長率以下の率でしか増えないということになってくる。それだけまたサステイナビリティが失われる可能性がある。だから、そういう意味で言うと、基本的にはプライマリー・バランスを回復しないと大変なことになりそうだということになるわけですね。
じゃどういうシナリオがそういう場合には起こるかということがここに「プライマリー・バランス赤字放置の帰結」ということで、私なりにやや短絡的にまとめてありますが、簡単に言ってしまうと、今の状況がそのまま続けば、デフレ不況によって税収は、申し上げたとおり減っていくわけですね。とりわけ名目所得が減って、ビルト・イン・スタビライザーもあって、税収が減る。他方では、公共事業等のいわゆるケインズ政策的な形で支出が増えるという部分もありますし、それに加えて不良債権とか、そういう債権債務の構造問題を解決するため支出増も多分出てくるだろう。
その結果、赤字がもっと増えて、そうすると国債を増発しなくてはいけないということになって、現実に起こりつつありますが、国債格付けが低下して、これも現実に起こりつつありますが、国債利子率が上がりつつある。そうすると当然、ストックでも増えて、利子率も増えるわけですから利払い費が増加する。その分、今度また赤字が余計増加する。そうすることによってサステイナビリティがなくなってきて、その結果、国債を市場で消化するということが事実上不可能になるという可能性がある。
そうすると、これは実は先進国では起こったことがないのですが、開発途上国ではこういうことが大体よく起こる。アルゼンチンなんか典型ですが、こういうことが起きるわけですが、その結果、国債というのは中央銀行が引き受けするしかなくなる。その結果、財政の規律が失われて、ハイパー・インフレーションが起こる。そうすると資本がどんどん海外に逃避していって、為替が暴落したりとか、経済が基本的にはもうおしまいになるというような筋書きというのが実は私の周辺の経済学者などはかなりまじめに話をし始めているという状況であります。
そういう意味でいうと、中期目標としてプライマリー・バランスを早く回復すること、できれば2010年にぎりぎりに回復するというようなことではなくて、余裕を持って回復しないと、日本経済はおそらくそのはるか前にだめになるだろうというのが私の印象でございます。
じゃそういうような話も含めて全体として税制の役割というのは、将来考えてみると何が大事かというと、まず[1]は、一番最初に先生がおっしゃったとおり、財政というのは、資源配分の是正とか所得再分配とか景気変動の平準化とかいういわゆる普通の問題よりもっと前の問題として、政府活動の財源という側面があるわけですね。政府活動の財源として今非常に不十分な額しか集まっていない。別に税で全部支出を賄う必要はないと思うのですが、国債で賄ってもいいと思いますけれども、その部分はプライマリー・バランスのここで述べたような問題があるわけですから、現状の日本ではやはり増税するといいますか、税収を増やすということをするしかない。
そのためには多分すべての国民が応分の負担をすることが大事で、何か弱者、弱者ということを言い過ぎていて、課税最低限のあたりの所得を持っている人たちが弱者だという言い方をしますけれども、本当の弱者はそうではなくて、一番下に書いてありますけれども、失業者とか、職を探すことさえあきらめてしまった非就業者というのがいるわけですね。彼らが本来の貧困弱者であって、彼らには財政的支援をすべきだけれども、それ以外の国民というのは応分な負担をすべきだろうと。
それから「税がもたらす資源配分の歪みを最小に」というのは、これは先ほど先生がおっしゃられたある種の中立ですね。ただ、中立にすればいいというだけではなくて、ある程度活性化をするための策をとるべきかもしれません。それがサプライサイド、ある程度意味はなくはないかもしれないと申し上げた意味ですが、ただ、それよりはまず[1]のほうが先だろうと思います。
それから「市場の失敗への補完と受益者原則」。これも環境税であるとか、あるいは道路財源の一般財源化とか、そういうようなことをきちんと考えるために、市場の失敗とか受益者とか、そういうキーワード、そういうことをきちんと考えるべきではないか。
それから「グローバル化への対応」というのは、典型的には、先ほどから出ている話で言えば資本課税の問題などですけれども、こういうことに関してもきちんと考えるべきだろうと。
それから、今までの税制というのは「結果の平等」に少しこだわり過ぎていたので、「機会の均等」のほうが大事ではなかろうか。つまり、公平・中立・簡素ということで言えば、公平のところでは垂直的公平よりも「水平的公平」の確立をして、むしろ「機会の均等」を確立していくことが大事ではないか。
具体的には、先ほど申しましたけれども、いわゆる伝統的に言われてきている旧来的価値観が言ってきた「社会的弱者」ということを見直す。典型的には、マル老の話はある程度解決がつきましたけれども、高齢者というものを少し優遇し過ぎていて、資産をたくさん持っているわりには所得税を逃れているとか、中小企業というものが基本的にはかなりの部分赤字法人といいますか、地方法人税を払っていないとか、専業主婦が少し優遇され過ぎているのではないかとか、そういうさまざまな問題を、価値観であるとか将来の税制というような少し哲学的な形で議論した上で、こういうところにまで持っていったらいいのではないかというのが私の感想です。
少し雑駁な議論になりましたが。
〇委員
ありがとうございました。重要な問題提起であったと思います。
それでは、委員、お待たせしました。事務局と委員へ質問なり意見、どうぞ。
〇委員
これは事務局に対する注文ですが、「経済社会の構造変化」の表を拝見してちょっとお願いしてみようという気になったのですが。といいますのは、去年の答申に出た、所得税の非課税者割合が1/4になっているというくだりなわけであります。この1/4払ってないということが税制をめぐる論議ではかなり広がっておりまして、小泉さんも、払える人は払ってくださいと。つまり課税ベースの拡大といいますか、課税最低限の引下げといいますか、そういう議論を高めた一因だと思っているわけであります。
そのことを前提に調べてもらいたいことを申し上げるわけですが、1つは、国際比較をした場合どうなのか。アメリカとかヨーロッパの各国ではどうなのか。課税最低限の数字は国際比較がありますが、例えばアメリカでは非納税者割合はどのぐらいなのか、ヨーロッパ諸国ではどのぐらいなのか、それを調べていただきたい。
といいますのは、1/4払ってないというとけしからんというか、空洞化というか、そういう議論にすぐなってきているわけですが、実際にじゃ2割がいいのか、15%がいいのか、10%にならないとだめなのか、そこら辺の一つのめどが必要ではないか。
私は、課税最低限を幾ら下げるという議論がある一方で、何割ぐらいの人には払ってもらいたいというのも所得税見直しの一つのターゲットといいますか、基準になるのかなあという可能性も感じるわけでありますから、そこら辺の判断基準の一つである国際比較を、この問題についてもお示しいただきたいということであります。
それから第2点は、昨年の答申と一緒に添付されました資料、ここにはないのですが、たしか1/4の計算式が載っておりました。現物がないので私は記憶を頼りに申し上げるしかないけれども、あれを見て、つまり1/4払ってないという人たちはどういう人たちなのだというところがよくわからないわけであります。この「経済社会の構造変化」という表でも、例えばパートタイム労働者の比率がこの10年間でかなり上がっている。この人たちが実は雇用者でありながら払ってないのかなあという一つの推測も立ち得るわけであります。
あるいは、あそこで給与源泉納税者、それから申告納税というものを合わせて幾らだと、何千万人だという数値を出していらっしゃるわけですが、例えばあの申告納税者の中の半分ぐらいは実は給与所得者なわけでありまして、あの表ではたしか一括して申告納税者というようなくくり方をされていると思いましたけれども、少しその内訳をお示しいただきたい。
つまり、自営業者等々の納税者比率というのはかなり低いのではないか。だったらば、制度の改正もさることながら執行という面でも考えなければいかんというような問題がまた生じてくるのではないかと思います。
それからもう一つ、国際比較とも絡むわけですが、その際、課税単位の影響というのをできたらばお示しいただきたい。つまり、二分二乗というようなことであるならば、それだけで納税者数、あるいは納税者比率というのはかなり高まるというわけでありまして、そこら辺の制度の違いが統計の際にどれほどの影響を及ぼしているのか。そこら辺のことをもっと詳しく総括的にこの税調の場でお示しいただきたい。それがこれからの課税最低限の引下げ論議に至った場合、不可欠の資料になるのではないかと思います。
〇委員
次回、税の空洞化ということで事務局から資料を出していただきますので、もしかできれば今のような宿題をこなしていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
ほかにいかがでしょうか。
〇委員
ついでに経年変化も。
〇委員
宿題が大分たまりましたけれども、2週間ぐらいありますから、すみません、頑張ってください。
ほかにいかがでしょうか。
〇委員
今のに関連して。先週、官邸でやったときにも似たような表が出てましたが、その中に就業者の中で女性の占める割合というのがたしかあって、4割ぐらいというのがあったと思います。まさに男の人も女の人も同じぐらい働いていると。しかし一方、共稼ぎ世帯のほうがおそらく税負担は高くなっていると思います。
今の課税最低限というのも、課税最低限プラス平均的な所得者、この間もちょっと申し上げた平均的な所得者は1%か2%しか納めてない。それは結局課税最低限が高いという結果だろうとは思いますけれども、今のお話の1/4の分析というのは意味がかなり大きい問題だと思います。それと今申し上げた就業者の中での男女、あるいは共稼ぎなりそういう課税単位とも関連しますけれども、家庭内における就業構造、稼得構造というものがわかればいただければと思います。
〇委員
ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
〇委員
先生に伺いたいのですけれども、今のはデフレ脱却が先決であって、そのためには日銀の役割が大きいというお話だったのですが、2ページ目には、日銀が国債を引き受けるとハイパーインフレになると。じゃ日銀は何をすればいいのですか。
〇委員
いろいろな議論があるところだと思うのですけれども、私の周辺で1つわりとまじめに語られている話は、例えば株式そのものではないにしても、投資信託であるとか土地信託であるとか、そういうものの買いオペを今するということですね。非常にめちゃくちゃな状況になってから規律がなくなるような形でやるというのは多分だめだろうと。でも、今の段階で、まだそこそこ規律が残っている段階で今言ったようなやり方をするか、それからもう一つ、わりとまじめに言われているやり方はインフレ・ターゲティングという形で、きちんと市場の心理にコミットして、インフレに日銀がするのですよということをきちっとコミットする。
今それをしていないで、単に量的緩和ということをやっているわけですが、そこのところを少し違う政策をとるということをとにかく、それで本当にうまくいくかどうかわからないですが、少なくともそれをやってみる価値はあるはずで、今のままやっておいてもどうしようもないのはほとんど目に見えているというのが、少なくとも私の印象でございます。
〇委員
さて、ぼつぼつ時間もなくなってきましたけれども、よろしゅうございますか。
それでちょっと最後に、事務局、経済財政諮問会議との関係で、私のほうからご説明しようかと思ったのですけれども、一番ご苦労なさってますから、ちょっと数分で、ご説明できる範囲で結構ですから、今後どういう関係を保つか、ご説明いただけますか。
〇事務局
経済財政諮問会議との関係につきましてはいろいろと国会でも質問されておられまして、ちなみに小泉総理がお答えになりましたところを申し上げさせていただきます。1月23日に公明党の日笠税制調査会長に対する答えですが、「政府税調と経済財政諮問会議の役割分担でございますが、十分に連携をとる必要があると思います。また自由な議論を妨げるつもりはございません。ある部分については重複がなされるでしょう。それでも結構だと思います。私は、今後とも経済財政諮問会議においては、税制のみならず歳出も考えなければなりませんから、財政、経済、そういう全般的な見方から税制も議論をしたい。いずれにしても連携をとりながら、あるべき税制改革をどう進めていくか、またどのような議論が繰り広げられていくか、その点を注視しながら、最終的に15年度予算編成に生かすような方策を模索していきたい」というようなお答えをしておられます。
それ以外にもいろいろご質問になってますが、いずれにしましても、そのような役割分担をお考えになっている。むしろ先般の経済財政諮問会議では塩川大臣が、きょうも先生お越しでございますけれども、月に3回ほど諮問会議を正式にお開きになるうち1回が税制であるということで、その税制のご議論をされるときには会長に出ていただいてはどうかというお話をして、そのつなぎをしていただくということも一案としてなっているのかと思っております。
いずれにしましても、この基礎問題小委員会でご議論いただいたことを、もしそういう場がありましたら、今どういう状況だという報告をしていただくことも一つの方法なのかなと事務的には思っている次第であります。
〇委員
委員のほうから何かつけ加えることございますか。あればで結構です。
〇委員
いいえ。ただいま事務局がおっしゃったとおりで、連携を十分に保ちながらやろうと思います。
〇委員
はい、そうしたいと思います。
それでは、予定した時間にもなりましたので、あとの日程的なことをちょっとアナウンスさせていただきまして散会にいたしたいと思いますが、次回は2月15日金曜日2時からを考えております。先ほど申し上げたように、月2回基礎小、1回総会という形で2月、3月はやっていきたいと思います。
そこで次回は、先ほど申し上げたような空洞化の現状を、今宿題がいっぱいつきましたけれども、そういうことで資料をお出しいただく。それからレーガン、サッチャーの、今再度さまざまな評価が行われておりますので、そういうものをめぐって、次回、それから次々回、このあたりも少し整理してみたいと考えております。3月は3月5日と3月19日、いずれも火曜日ですが、その2時~4時を考えております。具体的な内容につきましてはその段階でまたお知らせしようかと思いますが、まだ骨格を固める議論で残っていることも幾つかございますので、そういう議論をしたいと思いますし、そのうち、先ほど申し上げたような国民との対話集会みたいなことも現に行うということになろうかと思いますし、できたらそのときに諮問会議のメンバーの方1人2人おいでいただければ、合同でというようなこともあっていいのかと思ってますので、またその点も話を向けたいと考えております。
事務局のほうからはこれでよろしいですか。――では、どうもきょうはお忙しいところをありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。