地方法人課税小委員会報告

平成11年7月
税制調査会

目次

  • まえがき
  • はじめに
  • 一 地方法人課税に係る改革の必要性
    • 1.地方法人課税の課題
    • 2.これまでの経緯
    • 3.地方法人課税小委員会の位置づけ
    • 4.諸外国の状況
  • 二 外形標準課税の意義
    • 1.地方分権を支える安定的な地方税源の確保
    • 2.応益課税としての税の性格の明確化
    • 3.税負担の公平性の確保
    • 4.経済構造改革の促進
  • 三 望ましい外形基準のあり方
    • 1.基本的な考え方
      • (1) 事業活動規模との関係、普遍性、中立性
      • (2) 簡素な仕組み、納税事務負担
    • 2.外形基準の四つの類型
      • (1) 事業活動によって生み出された価値
      • (2) 給与総額
      • (3) 物的基準と人的基準の組合せ
      • (4) 資本等の金額
    • 3.その他
      • (1) 外形標準課税の対象とすべき範囲(個人及び収入金額課税法人の取扱い)
      • (2) 税率
      • (3) 欠損金の繰越控除制度
      • (4) 地方団体の課税の自主性
  • 四 改革に伴う諸課題
    • 1.外形標準課税の導入に際しての課題
      • (1) 外形標準課税の導入に伴う税負担の変動
      • (2) 納税事務負担
      • (3) 既存の地方税との関係
    • 2.税負担等への配慮に関する課題
      • (1) 中小法人の取扱い
      • (2) 創業期の法人の取扱い
      • (3) 雇用への配慮
      • (4) 経過的な措置
  • 五 結び

まえがき

税制調査会は、法人事業税への外形標準課税の導入の課題を中心に、地方の法人課税のあり方について専門的・理論的な検討を行うため、平成10年4月17日に地方法人課税小委員会の設置を決定した。

地方法人課税小委員会は、平成10年5月19日の初会合以来、17回にわたる会合を開催して審議を重ね、平成11年7月9日の第35回総会に「地方法人課税小委員会報告」を提出し、総会はこれを公表することについて了承した。

本書は、これを印刷に付したものである。

はじめに

  1. 地方分権を推進し、地方団体の自己決定権と自己責任の下で、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図ることが重要な課題となっている。このため、地方の多様な行政サービスを支える安定的な地方税体系の構築が求められている。また、より多くの利益をあげることを目指した事業活動を促し、企業経営の効率化や収益性の向上を図り、経済構造改革を促進することも重要な課題となっている。
    このような背景の中、当小委員会は、都道府県の最大の税目である法人事業税への外形標準課税の導入の課題を中心に、地方の法人課税のあり方について専門的・理論的な検討を行うことを目的として、平成10年4月に設置された。
  2. 当小委員会は、平成10年5月の初会合以来、17回にわたる審議を行った。審議に際しては、地方団体・経済界等からの意見聴取や委員からのレポートのほか、海外調査を実施し、平成10年8月23日~9月4日にアメリカにおいて、同年9月5日~13日にフランス・ドイツ・オーストリアにおいて、地方法人課税の状況等について調査を行った。
  3. この報告は、当小委員会の審議結果をとりまとめたものである。
    本報告では、一において、地方法人課税に係る改革の必要性を、また、二において、外形標準課税の意義を整理した。そのうえで、三において、外形標準課税を導入する場合に望ましいと考えられる外形基準や課税の仕組みのあり方について、さらに、四において、改革に伴う諸課題について、小委員会としての考え方をとりまとめた。

なお、地方法人課税小委員会の審議に参加した委員、専門委員は、次のとおりである。

会長 加藤 寛
会長代理 松本 作衛
小委員長 石 弘光
小委員長代理 水野 忠恒
委員 島田 晴雄
津田 正
本間 正明
専門委員 井上 裕之
神野 直彦
関 哲夫
田近 栄治
中里 実
林 宜嗣
矢澤 富太郎

一 地方法人課税に係る改革の必要性

1.地方法人課税の課題

[1] 地方団体の自主性、自立性を高め、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図るために、地方分権を推進することが重要な課題となっている
地方分権の推進に伴って、地方団体の自己決定権と自己責任を拡充し、受益と負担の対応関係をより明確化するという観点から、地方税の充実確保を図ることが求められている。また、納税者が身近な政府である地方団体の行政に関心を持ち、よく理解し、参加することによって地方自治を進展させていくことが重要である。

地方団体は、福祉、教育、環境保全、産業・都市基盤整備、警察や消防・防災など、幅広い行政サービスを供給している。地域における住民の日常生活や産業活動を支える地方団体の行政サービスは安定的に供給される必要があり、その財源の根幹をなす地方税は、できる限り、安定的で税収の変動が少ないものであることが求められる。

しかし、現行の都道府県の税制は、法人所得に対する課税が大きなウエイトを占めているため、経済情勢の影響を受けやすく、特にバブル経済崩壊以降は、極めて不安定な状況が続いている。

こうしたことから、地方の法人課税のあり方について検討が求められており、特に、都道府県の最大の税目である法人事業税に外形標準課税を導入し、応益課税としての事業税の性格を明確にするとともに、都道府県税収の安定化を図ることが重要な課題となっている。

[2] 経済のグローバル化、ボーダレス化が進む中で、国際的な競争が激しくなるに伴い、我が国の経済構造を改革して、国際競争力を強化し、活力ある社会を築いていくことが重要な課題となっている。そのためには、企業が努力し、利益をあげる意欲を阻害しないような環境を整えることにより、経済の活性化を促すことが重要である。

法人事業税への外形標準課税の導入を図り、薄く広く税負担を分担する仕組みに改革していくことは、こうした経済構造改革にも資するものと考える。

同時に、地方団体においては、産業基盤の整備等によって産業の振興を図るための行政サービスのみでなく、地域経済の振興を目指して、地域における生活機能、環境、文化等固有の地域資源を活かしながら地域に根ざした多様な経済活動の活性化を図るための行政サービスの提供に取り組んでいくことに重点が移りつつある。その意味で、地方団体が、産業の振興のみならず、人的サービスなどの多様な行政サービスを提供し、地域の経済活動の活性化を図り、その成果(経済活動量の増加)に応じて安定的に税収が増加するという関係を築くことが望ましい。

この点からも、地域での経済活動量に応じて課税する仕組みである外形標準課税の導入が望まれる。

[3] 法人事業税への外形標準課税の導入については、現行の地方税法が制定されて以来、税収の安定化、応益課税としての税の性格の明確化、税負担の公平化等の観点から長い間検討が続けられてきているが、近年、上記のような状況を踏まえて、その検討の必要性が特に高まっている。

このような背景の中で、法人事業税への外形標準課税の導入の課題を中心として、地方の法人課税のあり方について、専門的、理論的な検討を行うために、当小委員会が設置されたところである。

2.これまでの経緯

[1] 昭和25年に法定化された付加価値税が昭和29年に施行されないまま廃止された後、税制調査会においても、事業の規模ないし活動量あるいは収益活動を通じて実現される担税力を所得以外の何らかの基準によって把握して事業税を課税すべきとの観点から、外形標準課税の検討が積み重ねられてきた。

具体的には、昭和39年12月の「今後における我が国の社会、経済の進展に即応する基本的な租税制度のあり方についての答申」や、昭和43年7月の「長期税制のあり方についての答申」、平成8年11月の税制調査会法人課税小委員会報告などにおいて、加算法による所得型付加価値を課税標準として用いることを中心として検討を行ってきた。

この間、地方団体においても、外形標準課税の導入が検討され、昭和52年には全国知事会において、地方税法第72条の19に基づき、各都道府県の条例によって、加算法による所得型付加価値を外形基準とし、既存の所得基準と併用する形で外形標準課税を実施する案が提示されている。

[2] 法人課税については、平成11年度税制改正において、将来の抜本的見直しを展望しつつ、厳しい経済情勢等にかんがみ、我が国企業が国際競争力を十分発揮できるようにするという観点から、恒久的な減税が実施され、法人課税の実効税率が46.36%から40.87%へと国際水準並みに引き下げられた。

11年度の税制改正に関する答申」において、「現下の経済情勢等に鑑み、外形標準課税の導入については見送ることとされたところです。しかしながら、外形標準課税は地方に適した税体系の一つであり、導入を急ぐべきであるとの意見が多く出されており、当調査会としては、都道府県の税収の安定化を通じて地方分権の推進に資するものであること、応益課税としての税の性格の明確化につながること、税負担の公平化に資すること等の観点から、早急にその方向性を示すべく、引き続き検討を進める必要があると考えます。」とされたところである。

3.地方法人課税小委員会の位置づけ

当小委員会は、こうした検討経緯を踏まえつつ、地方法人課税のあり方、とりわけ法人事業税への外形標準課税の導入について、具体的な外形基準のあり方や税制度の簡素化の工夫、企業経営や雇用への影響などの諸課題を含めて検討を行った。

その際、事業活動の規模を表す外形基準については、従来の税制調査会答申等で検討の中心とされてきた加算法による所得型付加価値にとどまらず、幅広い観点から広範な可能性を検討した。

小委員会での議論の過程においては、法人事業税等の検討にとどまらず、地方消費税の拡充を視野に入れて検討すべきではないかとの意見があった。これについては、当小委員会に課せられた課題に照らして、法人に負担を求める税から消費者に負担を求める税に移行するといった観点からの検討ではなく、企業課税としての地方の法人課税のあり方をどのように見直すかという基本的なスタンスに立って、専門的、理論的な検討を進めた。

また、法人事業税の仕組みの検討に当たっては、これまでの所得基準による課税の下での税収規模が大きく変化するようなことは前提としなかったが、法人事業税の税収規模については、今後の地方財政の状況や法人の税負担のあり方等を踏まえつつ、議論していくべきものと考える。

4.諸外国の状況

諸外国においても、地方団体が所得以外の基準によって法人課税を行っている例があることから、その状況を調査し、審議の参考とした。

具体的には、アメリカのミシガン州の単一事業税、フランスの職業税、ドイツの営業税、オーストリアの賃金総額税について調査を行ったほか、委員からイタリアの州生産活動税についても、レポートがあった。

アメリカにおいては、ミシガン州の単一事業税のほか、ニューハンプシャー州の企業事業税など、州レベルで外形標準課税を実施している例があり、これら以外の州においても新たに導入を検討している州がある。

ドイツ営業税やフランス職業税については、近年、見直しが行われているが、この点については、ドイツでは、旧東独地域に営業資本税が課税されていなかったこと、フランスでは、週35時間労働制の導入に伴う企業の雇用関係コストの増加が見込まれていること等、税制が変更された背景には、税制上の議論のみならず、各国の独自の事情があることに留意する必要がある。

イタリアにおいては、地方分権の推進、経済構造改革、税制の簡素化といった目的から、1998年度に州生産活動税が創設され、新たな外形標準課税として実施されている。

いずれの例においても、地方団体の行政サービスに対する費用をサービスの受益者となる企業が分担するという点が各国に共通した考え方になっていると認められた。

一方、課税標準のあり方等については、非常に多様である。これは、各国ごとに、それぞれの社会経済や歴史などを背景として作り上げられたものであり、我が国においても、これまでの経緯や地方団体の役割などを踏まえて、我が国の実情に相応しい外形標準課税のあり方を検討することが適当である。

二 外形標準課税の意義

1.地方分権を支える安定的な地方税源の確保

[1] 法人事業税は、都道府県の最大の税目であるが、原則として法人の所得を課税標準としていることから、景気変動の影響を受けやすく、税収の変動幅が大きい。過去の推移を見ても、法人事業税収は、前年度と比べて大きく増加したり、減少したりしており、歳出総額が比較的安定的に推移しているのに対し、その変動幅の大きさは特徴的である。

法人事業税の税収を見ると、ピーク時には約6兆5千億円(平成3年度決算額)あったが、平成9年度(決算額)では約4兆8千億円、さらに、平成11年度(地方財政計画計上額)では約3兆9千億円まで減少しており、特に、大都市地域を抱える都道府県において、非常に大きな減少となっている。法人事業税の税収が都道府県税収に占める割合も、平成元年度には43%であったものが、平成9年度には32.3%に、平成11年度(地方財政計画計上額)では26.4%にまで低下している。

法人事業税収の不安定性は、課税標準が法人の所得であることに起因するが、法人事業税が都道府県の最大の税目であるため、その税収の不安定性は、都道府県の財政運営に大きく影響している。

[2] 前述のとおり、教育、福祉、環境保全、警察等の地方の行政サービスは、安定的に供給されることが必要である。地方団体がその責任を十分に果たしていくためには、自主財源の根幹をなす地方税は、できるだけ安定的で、変動の少ない税であることが望ましい。法人事業税への外形標準課税の導入は、税収の安定性を向上させるとともに、地方税としての自主性を高めることとなり、地方分権を支える地方税体系を構築するうえで重要な役割を果たすことになると考える。

2.応益課税としての税の性格の明確化

[1] 地方団体が供給する行政サービスは、法人の事業活動に様々な形で寄与している。その受益を定量的にとらえることは難しいが、企業に対する直接のサービスのみならず、福祉、教育、生活環境整備など、極めて広範に及んでいる。法人事業税は、法人が行う事業そのものに課される税であり、事業がその活動を行うに当たって地方団体の各種の行政サービスの提供を受けていることから、これに必要な経費を分担すべきであるという考え方に基づいて課税されるものである。シャウプ勧告においても、「事業及び労働者がその地方に存在するために必要となってくる都道府県施策の経費」を負担する税とされている。法人事業税の負担額が法人所得計算において損金に算入されていることも、こうした法人事業税の性格を反映したものである。

このように、法人事業税は、法人の事業活動と地方の行政サービスとの幅広い受益関係に着目して事業に対して課される税であることから、その課税標準は、法人の事業活動の規模をできるだけ適切に表すものであることが望ましい。

[2] しかしながら、現行の法人事業税は、原則として法人の所得を課税標準としているため、法人の所得という課税標準に対して国・地方双方により重複的に課税される形となっており、また、事業活動の規模との関係が適切に反映されず、本来の応益課税の性格から見て、望ましいあり方になっていない。

[3] 以上のことから、法人事業税への外形標準課税の導入は、法人の事業活動と地方の行政サービスとの受益関係に着目して事業に対して課する税としての性格の明確化を図るという観点からも、大きな意義を有する改革になるものと考える。

3.税負担の公平性の確保

事業活動を行っている法人は、その事業活動の規模に応じて、地方の行政サービスから一定の受益を得ているものと考えられるが、我が国の法人の状況を見ると、6割を超える法人が欠損法人となっており、法人事業税を負担していない状況にある。

欠損法人をはじめ、事業活動規模に比して所得が少ない法人は、その事業活動規模に相応しい事業税を負担しておらず、事業活動規模に比して所得が大きい法人の負担が大きくなっている。また、同一法人でも、特別損益の影響も含めて、年度間での納税額の変動が大きく、納税額が事業活動規模を反映したものとなりにくい状況にある。

地方団体の提供する行政サービスによって受益を得ている法人が、その受益に応じて、薄く広く税負担を分担する仕組みに改革していくことは、税負担の公平の観点からも重要である。

法人事業税の課税標準に事業活動規模を表す外形基準が導入されれば、各法人は、事業活動規模に応じて税を負担することとなる。このことは、応益原則による地方税の負担をより公平に分担する税制の構築につながるものと考える。

4.経済構造改革の促進

外形標準課税は、事業活動に対する応益的な課税であるとの性格を明確化させるとともに、所得に係る税負担を相対的に緩和することとなる。このため、所得に比例して税負担が増加する現行の所得基準による課税よりも、外形基準による課税の場合の方が、より多くの利益をあげることを目指した事業活動を促し、企業経営の効率化や収益性の向上に資するものと考えられる。したがって、外形標準課税の導入は、そのような効果を通じて、経済構造改革に資することが期待できる。

一方、法人事業税に外形標準課税を導入した場合には、その負担が固定的な経費となって価格に影響し、我が国企業の国際競争力の低下要因となるおそれがあるのではないかとの意見があった。

しかし、外形標準課税により税負担が薄く広く、かつ、安定的なものとなることは、企業にとって計画的な経営を行いやすくする面もあるのではないかと考えられる。

三 望ましい外形基準のあり方

法人事業税の課税標準に外形基準を導入することについては、都道府県の税収の安定化を通じて地方分権の推進に資するものであること、応益課税としての税の性格の明確化につながること、受益を得ている法人が薄く広く税を分担することを通じて税負担の公平化につながること、収益性の高い経済構造への改革を促す効果が期待できること等の意義が認められ、地方税のあり方として望ましい方向の改革であると考える。

このため、当小委員会としては、法人事業税について、法人の事業活動の規模を表す外形基準をその課税標準に導入することとした場合、どのような外形基準を用いてどのような課税の仕組みを構築することが望ましいか検討を行った。その際、課税側の立場のみならず、納税者の視点を十分踏まえた検討を行うとともに、税制の簡素化の要請などにも十分配意した。

1.基本的な考え方

法人事業税の課税標準として導入を図るべき外形基準については、累次の税制調査会の答申等において検討対象とされてきたいわゆる加算法による所得型付加価値をはじめ、諸外国で用いられている基準など様々な考え方がある。当小委員会においては、法人の事業活動規模を外形的に表す課税標準について、幅広く検討を進めた。

具体的には、資本金又は出資金、売上高、収入金額、経費(又は特定経費)、事業所家屋床面積、事業所用地面積、事業用固定資産評価額、従業者数、給与総額、付加価値(加算法)、付加価値(控除法)といった各種の基準の例の中から複数の基準を組み合わせることによる対応の可能性も含めて、以下のような観点から、望ましい外形基準のあり方について検討を進めた。

(1) 事業活動規模との関係、普遍性、中立性

望ましい外形基準のあり方としては、事業活動の規模をできるだけ適切に表すとともに、特定の地域の法人や特定の業種の法人に偏って存在する指標でなく、多様な法人に普遍的に見られる基準であることが望ましい。また、外形基準を選ぶ場合には、課税標準の安定性も重要な条件である。

さらに、企業の経済活動に対して中立的であり、かつ、事業活動の規模に対する税負担が事業の種類(業種)によって偏らないようなものであることが望ましい。

なお、複数の都道府県で事業を展開する法人の扱いについては、地方分権や応益原則の観点から考えれば、分割基準を必要とせず、事業所が立地している各都道府県ごとに課税標準を算定して納税する仕組みの方が好ましいとの考え方もあるが、当小委員会においては、選択された外形基準の内容に応じて、合理的に分割基準の必要性を考えていくという基本的な考え方に立って検討を進めた。

(2) 簡素な仕組み、納税事務負担

外形標準課税を導入するに際しては、税制として簡素でわかりやすいこと、納税者の事務負担が小さいといった点に十分配慮する必要がある。したがって、具体的な外形標準課税の仕組みについては、法人の通常の会計処理や他の税の納税のために既に行っている作業の中で把握できる課税標準とすることや、既存資料が活用できるものとすることなど、できるだけ簡素で、円滑に納税できる仕組みとすることが重要である。

上記のような考え方の下で検討を加えた結果、当小委員会としては、[1]事業活動によって生み出された価値に着目する考え方、[2]当該価値の概ね7割を占めている給与総額に着目する考え方、[3]物的基準と人的基準の組合せに着目する考え方、[4]資本等の金額に着目する考え方の四つの類型を基に、外形基準のあり方を検討した。

2.外形基準の四つの類型

当小委員会としては、法人事業税において導入を図ることとする場合に望ましいと考えられる外形基準として、下記の四つの類型について検討を行った。

なお、これらの類型のうち、(2)~(4)については、外形基準による課税に所も、経過的な措置として、所得基準による課税を併用することを想定している。

(1) 事業活動によって生み出された価値

[1] 法人の事業活動の規模は、その事業活動によって生み出された価値の大きさという形で把握することが可能と考えられる。

事業活動によって生み出された価値の算定については、生産要素である労働、資本財及び土地への対価として支払われたものが当該価値を構成すると考えられることから、法人の各事業年度における利潤に、給与総額、支払利子及び賃借料を加えることによって行うことができる。(この方式によって算定したものを以下「事業活動価値」(仮称)という。)

この事業活動価値は、事業活動によって生み出された価値に着目して法人に負担を求める税の課税標準として、法人の人的・物的活動量を客観的かつ公平に示すと同時に、各生産手段の選択に関して中立性が高いものとなると考えられることから、当小委員会においては、これを外形基準の類型の一つとして検討することとした。

また、事業活動価値については、外形基準を導入した場合に予想される税負担の変動についても、他の基準の場合よりも、業種区分ごとのバラツキが比較的小さくなる傾向があると考えられる。

[2] 事業活動価値の場合、その課税標準の構成要素については、次のように考えることが適当である。

  • 「利潤」は、課税側・納税側双方にとって簡便で、正確性を期すことができる数値として、税法の規定に従って当該事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額とする。
    なお、損金の額が益金の額を上回り、欠損金額が生じた場合には、当該欠損金額を当該事業年度の他の構成要素の合計額から控除することとする。
  • 「給与総額」は、生産要素としての労働に対する企業の支出としての性格を有するものについてはできるだけ課税標準に算入するという考え方もあるが、福利厚生費等の取扱いについては、簡素な仕組みとするという観点からの検討も必要であろう。
  • 課税標準の構成要素となる「支払利子」や「賃借料」については、それぞれ、借入金利子、支払割引料、社債利息等の合計額、支払地代、支払家賃、動産賃借料等の合計額とすることが考えられる。この場合において、例えば銀行等の支払利子や不動産貸付業を行う法人が支払う賃借料などの取扱いについては、その事業の特性に鑑み、課税標準に算入しないことが適当ではないかとの意見があったが、今後、具体的な仕組みを考えていくに当たり、さらに検討を深めるべき課題と考える。
  • 利潤について多額の欠損金額が発生し、給与総額、支払利子及び賃借料と通算して算定した事業活動価値がマイナスとなった場合には、当該年度の事業活動規模を表す指標として事業活動価値を用いるという考え方からすれば、翌事業年度以降に当該マイナスの額を繰り越して控除することは行わないこととすべきと考える。

[3] この仕組みの場合には、法人は、各構成要素について、データの積上げを行い、その金額を申告書に記載して申告納付する。併せて、当該記載金額の算定の基礎を示す一定の計算書(明細書)を申告書と併せて提出する。なお、複数の都道府県に事務所等を有する法人の場合には、分割基準を用いて課税標準を分割したうえで、各都道府県に納税することとなると考える。

[4] 国境税調整に関しては、法人事業税は事業活動を行う企業が負担者となる直接税であることから、輸出に対する中立性を確保する観点から輸出に対する政府の補助及び直接税の免除を禁止しているWTO協定の存在を考えれば、法人事業税において国境税調整を行うことは不適当であると考える。

[5] 事業活動価値を課税標準とする場合には、基本的には、法人事業税全体をこれによって課税する仕組みとすべきと考えるが、当面の経過的な措置として、所得基準による課税と併用することが考えられる。

[6] 事業活動価値については、消費型付加価値を課税ベースとする消費税・地方消費税が既に存在していることとの関係や、給与総額、支払利子及び賃借料に関する課税標準算定のための納税者や課税庁の事務負担の問題について、慎重な検討が必要ではないかとの意見があった。これについては、引き続き留意していくことが必要と考える。

[7] 小委員会での議論においては、売上高から仕入高を控除する方法により事業活動によって生み出された価値を算定し、これに基づいて課税する仕組みが、企業課税として考えられるのではないかとの意見があった。

これについては、売上高から仕入高を控除する方法は、結果として消費者に負担を求める消費課税とならざるを得ず、地方消費税の拡充によるべきとの考え方と同様に、企業課税の検討として適当ではないのではないかと考える。

(2) 給与総額

[1] 給与総額は、法人の人的活動量を示すのみでなく、事業活動価値の概ね7割を占めていることから、各法人の事業活動の規模を相当程度反映しているものと評価することができ、また、実務上の簡便性の面も考えれば、給与総額を外形基準として採用することも考えられる。

給与総額の定義については、課税の公平等の観点から、基本的には、給与としての性格を有するものについては、なるべく広く課税標準に算入するという考え方もあるが、福利厚生費等の取扱いについては、簡素な仕組みとするという観点からの検討も必要であろう。

[2] この仕組みの場合には、法人は、課税標準の範囲として定められた給与総額について、データの積上げを行い、その金額を申告書に記載して申告納付する。併せて、当該記載金額の算定の基礎を示す一定の計算書(明細書)を提出する。複数の都道府県に事務所等を有する法人の場合には、分割基準を用いずに各都道府県に納税する方法と、分割基準を用いる方法とが考えられる。

[3] 給与総額については、事業活動規模を人的活動量を中心にしてとらえているということもあり、給与総額のみを事業税の課税標準として採用するよりも、例えば税収総額でそれぞれ2分の1程度となるように所得基準による課税と併用することが適当と考える。

このように、給与総額による課税と所得基準による課税とを併用することとした場合には、事業活動価値による課税に近似する仕組みとして性格付けることができる。

(3) 物的基準と人的基準の組合せ

[1] 給与総額は、人的な活動量を中心として事業活動の規模を表す基準であるが、これに企業が事業活動に用いる物的基準を組み合わせて用いることにより、物的側面と人的側面の両面から事業活動の規模をより適切にとらえられるのではないかとも考えられる。

物的基準と人的基準を組み合わせる場合には、現在、特定の市で事業所税が課税されていることも参考にして、例えば、事業所家屋床面積と給与総額とを組み合わせて課税標準として用いることが考えられる。また、事業用資産(家屋及び償却資産)の価額や、各事業年度の事業活動に用いられた資産に相当するものとして、それらの資産の減価償却費を用いることも考えられる。

このように物的基準と人的基準を組み合わせれば、事業活動の規模を相当程度総合的に表すものとなり得る。

[2] 物的基準と人的基準を組み合わせる場合も、納税は申告納付の方法による。申告納付の際には、申告書と併せて、申告書記載データの算定の基礎を示す一定の計算書(明細書)を提出する。複数の都道府県に事務所等を有する法人の場合には、組み合わせる基準の内容により、分割基準を用いずに各都道府県に納税する方法と、分割基準を用いる方法とが考えられる。

なお、家屋床面積については、面積の把握・確認に係る事務負担の軽減を図り、簡素な課税の仕組みとする観点から、例えば、床面積の広さに応じて階層区分を設け、当該区分ごとに税額を定めることも考えられる。

[3] 物的基準と人的基準の組合せに着目する考え方の場合にも、例えば税収総額でそれぞれ2分の1程度となるように外形基準による課税と所得基準による課税とを併用することが適当と考える。

なお、この外形基準のうち、物的基準と人的基準の比重のあり方については、事業活動の規模をできるだけ適切に反映させるという観点から考えるべきである。

(4) 資本等の金額

[1] 資本金も、法人の規模をある程度表しており、事業活動の規模もある程度示すものであると考えられる。また、その際には、法人の規模をより適切に表すという観点から、資本積立金も含めて扱うことが適当と考えられる。このような観点から、簡素な課税の仕組みとして、資本等の金額(資本金と資本積立金の合計額)に着目した仕組みを考えることができる。

資本等の金額に着目する考え方の場合には、例えば、資本等の金額の大きさに応じて階層区分を設け、当該区分ごとに税額を定めると同時に、事務所数や従業者数を加味することによって、法人の事業活動規模をより反映した仕組みとなり得ると考えられる。例えば、資本等の金額の区分ごとに定める税額を事務所等1ヶ所当たりの税額とすること、あるいは、資本等の金額と従業員数との組合せに応じて税額の区分を設けることなどが考えられる。

[2] 資本等の金額に着目することに対しては、資本金に対する法的規制(最低資本金制度)との関係を考えると、資本金への課税は問題ではないかとの意見があった。

この点については、上記の課税の仕組みの場合、資本等の金額は、それが直接に課税の対象となる訳ではなく、当てはめるべき税額の区分を定めるための指標として用いられることに留意する必要がある。

[3] また、法人住民税の均等割について、現行税率を大幅に引き上げることにより拡充することが考えられ、これにより外形標準課税の導入と同様の効果が得られるのではないかとの意見があった。

この点については、法人住民税均等割は、地方団体の構成員として地域社会の費用を広く分担する税であり、法人事業税とは異なる性格を有していることにも留意する必要がある。

[4] 資本等の金額に基づく課税については、法人事業税全体をこの形に改革することは現実的ではなく、むしろ、所得基準による課税や他の外形基準による課税と組み合わせて用いることを基本として考えることが適当である。

3.その他

(1) 外形標準課税の対象とすべき範囲(個人及び収入金額課税法人の取扱い)

[1] 応益原則の基本的な考え方に立てば、主体の如何を問わず、全ての事業活動を外形標準課税の対象として検討することが原則であると考えられる。

個人の事業については、事業税の性格に照らして考えれば、基本的には、法人の事業と同様に扱うべきであり、事業活動規模を表す外形基準による課税を導入するのであれば、対象を法人事業税に限定することなく、個人も含めた事業税全体を改革するのが本来のあり方であると考える。

しかしながら、個人については、会計処理の面などでなお法人との間に一定の格差があると考えられることや個人事業者に申告納付を行う仕組みを導入することは、納税者の事務負担の増加となることなどから、外形標準課税は、当面、法人を対象とするのが適当ではないかと考える。

なお、個人事業税における課税対象事業のあり方等について、今後、検討すべきではないかとの意見があった。

[2] また、法人事業税においては、現在、電気供給業、ガス供給業、生命保険業及び損害保険業の4業種について、収入金額に基づく外形標準課税が行われている。

したがって、これらの業種については、基本的には現行の仕組みを維持することとするが、今後、具体的な外形標準課税の導入の状況等を踏まえて検討する必要があるのではないかと考える。

(2) 税率

外形標準課税に係る税率構造のあり方については、受益に応じた税負担という観点から、基本的に、累進税率ではなく、比例税率とするのが適当である。

また、外形標準課税の場合には、課税ベースが極めて大きな数値となるため、広い課税ベースに対して低い税率で課税が行われることになるものと考える。

(3) 欠損金の繰越控除制度

法人事業税の課税標準は、税の性格からして、各事業年度における法人の事業活動規模を表すものとして用いられるべきものである。外形標準課税の導入に当たって、外形基準に併せて所得基準が用いられる場合にあっては、その課税標準として用いられる所得については、欠損金の繰越控除制度を適用する前のものとすることが適当と考えられる。

(4) 地方団体の課税の自主性

地方分権の時代においては、行政サービスの受益と負担との関係を各地方団体において判断し、地方団体が自主的・主体的に行財政運営を行うことが必要であることから、外形標準課税を導入する場合においては、各都道府県が税率設定について、自由度を有する仕組みとすることも重要である。

また、課税標準についても、各都道府県の判断で選択し、決定する仕組みが19を用いれば、各県が独自に外形基準による課税を行うことは現在でも可能であるが、各都道府県ごとに課税標準が異なることとなると、複数の県で事業を展開している法人の納税事務負担の増大を招くのではないかとの指摘があった。

なお、中小法人や創業期の法人の取扱い、雇用や投資への配慮などについては、地方団体がその地域の実情に応じて、他の政策手段による対応も含め、自主的な判断によって、必要な措置を講じるという方式も考えられる。

四 改革に伴う諸課題

1.外形標準課税の導入に際しての課題

(1) 外形標準課税の導入に伴う税負担の変動

法人事業税の課税標準に外形基準を導入した場合には、法人はその事業活動の規模に応じた税負担を行うこととなる。この場合に生じる税負担の変動については、事業活動規模に比して所得が多い法人であるかどうか、あるいは、課税標準とされた外形基準に係る生産要素を多く用いる法人であるかどうかなどによって異なってくる。

課税の方法を変更し、薄く広く税負担を分担するという考え方に立って外形標準課税を導入すれば、基本的には一定の範囲で税負担の変動が生じるのは避けられない。また、欠損法人について新たな負担が生じるという点についても、その負担は、各法人の事業活動の規模に見合ったものにとどまるものであることに留意する必要がある。

このような外形標準課税の導入に伴う税負担の変動については、税負担能力に配慮する等の観点から、所得基準による課税と外形基準による課税とを併用すること等の方策が考えられる。

(2) 納税事務負担

外形標準課税については、ある程度の納税事務・徴税事務に関する負担が生じることとなると考えられるが、そうした事務負担をできるだけ小さくするという観点が重要である。

実際に外形標準課税の仕組みを構築する際には、課税標準のデータが財務諸表や他の税で用いられる既存資料等から把握できるかどうか、課税団体の側においても効率的な執行体制を整えることができるかどうかなどの点について留意することが必要である。

実務上の課題については、課税の公平性や中立性の確保の観点との整合性も考えながら、課税標準の内容や納税手続等を工夫することにより、簡素化を図っていくことが可能と考える。

(3) 既存の地方税との関係

法人事業税の課税標準に外形基準を導入することとした場合には、導入する外形基準の内容に応じて、法人住民税均等割や事業所税等の既存の地方税との関係で所要の調整を行う必要が生じる場合も考えられる。

その際、各課税団体の所要の税収の確保のために必要がある場合には、都道府県と市町村との間の税源配分を調整するなどの措置についても併せて検討すべきであろう。

2.税負担等への配慮に関する課題

(1) 中小法人の取扱い

中小法人は、一般的に、収益性が低く、担税力も弱いケースが多いと考えられることから、外形標準課税の導入に当たっては、中小法人についての特別な配慮が必要ではないかとの指摘がある。

この点については、外形基準による課税は、本来、事業活動規模に応じた課税を行うものであるため、事業活動規模が小さい法人の場合は、それに見合った税負担にとどまるものである点を基本として考えるべきである。

なお、これに関しては、税制の中立性を確保する観点からも、中小法人であることを理由とした特別な取扱いは適当でなく、各法人が事業活動規模に応じて公平に税を負担する仕組みを整えることが求められているのではないかとの意見があった。

しかしながら、規模が小さな法人については、課税の中立性・公平性の確保の観点や、応益原則に基づいた薄く広い税負担の実現という観点を踏まえつつ、その担税力に配慮することが適当と考えられることから、外形標準課税の導入の際には、中小法人に対する一定の配慮を行うことが必要ではないかと考える。

また、所得基準による課税と外形基準による課税とを併用することによって欠損法人をはじめとする収益性の低い法人の税負担の増加を緩和することとすれば、それは、中小法人の税負担に配慮する措置にもなるのではないかと考えられる。

(2) 創業期の法人の取扱い

創業期の法人は、創業から初期投資を回収するまでの期間は利益を上げにくい場合があると考えられることから、外形標準課税がその発展の支障となる可能性があるのではないかとの指摘がある。

しかしながら、創業期の法人は、多くの場合、中小法人に該当するものと考えられることから、中小法人の税負担に配慮する措置が講じられれば、基本的には、当該措置によって対応することが可能ではないかと考える。

なお、創業期の法人の取扱いについては、さらに政策的な配慮から、創業後の一定期間の法人に限ってその経営の実態に配慮した特例措置を講じる必要があるのではないかとの意見があった。

(3) 雇用への配慮

外形標準課税を導入する場合に給与総額を用いることが考えられるが、その場合、雇用に関するコストアップを招き、雇用や給与水準に影響を及ぼすのではないかという懸念が示されている。

この点については、所得基準による課税の場合は、経営努力によって増加した所得にも課税されることを踏まえれば、外形標準課税の方が、結果的に経営の効率化や経済全体の活性化につながる面があると考えられ、必ずしも雇用に影響を及ぼすおそれがあるとはいえないのではないかとの意見があった。

雇用への影響については留意することが必要であり、外形標準課税の導入に当たっては、具体的な外形基準として何を選択するかといった点や、課税標準の中に占める給与に関する基準の取扱い、経過的な措置の定め方等において、適切な対応をする必要があると考える。

(4) 経過的な措置

外形標準課税の導入については、各外形基準の内容に応じて、所得基準による課税と併用することを想定して検討したが、さらに、実際に導入するに当たっては、税負担の激変の緩和を図る等の観点から、適切に経過的な措置を講じていくことも必要であろう。

五 結び

[1] 当小委員会では、法人事業税の外形標準課税の課題を中心に、地方法人課税の今後のあり方について、専門的・理論的見地から幅広く検討を行った。その結果、法人事業税の課税標準に法人の事業活動規模を表す外形基準を導入することが適当であるとの考え方を示すとともに、併せて、その場合の望ましい外形基準のあり方及び関連する諸課題についても、小委員会としての考え方を取りまとめた。

[2] 法人事業税の外形標準課税については、税収の安定化を通じて地方分権の推進に資すること、応益課税としての税の性格の明確化や税負担の公平性の向上が図られること、経済構造改革を進める効果が期待できること等の重要な意義を有する改革であり、また、現下の都道府県の財政構造が極めて不安定なものとなっていること等を踏まえれば、できるだけ早期にその導入を図ることが望ましいと考える。

なお、その具体的な実施の時期については、景気の状況等を踏まえたうえで、判断する必要があると考える。

[3] 今後は、具体的な導入に向けて、各種の課題についてより一層検討を深めることが必要であるが、その際には、納税側・課税側の双方において、できるだけ事務的負担の増加を招かないような仕組みとすることが必要である。また、地方団体の行財政運営の一層の効率化を進めるとともに、地方行政の透明性の向上、情報公開の推進、参加の拡大等の課題に地方団体が積極的に取り組み、納税者の理解と協力を得るように努力していくことも重要である。

また、外形標準課税の適切な執行に向けて、地方団体においては、税務執行体制の整備に努める必要がある。

[4] 今後、当小委員会が示した考え方を踏まえつつ、外形標準課税の意義や必要性、具体的な課税の仕組みなど、地方分権の時代に相応しい法人事業税の改革のあり方について、都道府県や納税者である法人、経済界等をはじめとして、各界各層で幅広く活発な議論が行われ、国民的な合意の形成が図られることを期待する。