第217回国会で成立した内閣府所管法律の概要
2025年7月29日

令和7年(2025年)の第217回通常国会で成立した内閣府所管の法律について、以下のとおり概要とポイントを紹介します。
【法律の一覧】
- 災害対策基本法等の一部を改正する法律
- 株式会社地域経済活性化支援機構法の一部を改正する法律
- 地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律
- 棚田地域振興法の一部を改正する法律
- 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(第15次地方分権一括法)
- 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)
- 海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律
- 日本学術会議法
- 独立行政法人男女共同参画機構法
- 独立行政法人男女共同参画機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
- 手話に関する施策の推進に関する法律
- 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の一部改正(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律による改正)
- 沖縄振興特別措置法の一部改正(港湾法等の一部を改正する法律による改正)
1. 災害対策基本法等の一部を改正する法律 【政策統括官(防災担当)】
①概要
令和6年能登半島地震の教訓等を踏まえ、国による支援体制の強化、福祉的支援等の充実、広域避難の円滑化、ボランティア団体との連携、防災DX・備蓄の推進、インフラ復旧・復興の迅速化等について措置を講ずることで、災害対策の強化を図るものです。
②ポイント
- 災害対応の司令塔として、内閣府に「防災監」を設置
- 災害対策基本法及び災害救助法に「福祉サービスの提供」を新たに位置付け
- 「被災者援護協力団体」の登録制度の創設
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2. 株式会社地域経済活性化支援機構法の一部を改正する法律 【地域経済活性化支援機構担当室】
①概要
令和6年能登半島地震の教訓等を踏まえ、地域経済活性化支援機構(REVIC)による被災事業者支援についての措置を講じ、災害対策の強化を図るものです。
②ポイント
- REVICの目的の明確化
「大規模な災害を受けた地域の経済の再建」を目的の1つとして明記。 - 支援基準の強化
主務大臣は、被災地域の事業者に対する支援の実施に必要な事項を定める。 - 業務の期限の延長
15年間延長(能登地域を復興まで切れ目なく支援)。 - 解散時の残余財産の取扱い
災害支援に積極貢献できるよう、まずは政府出資が損失を吸収(残余財産は民間→政府の順に分配)。
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3. 地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律 【政策統括官(防災担当)】
①概要
本法は、地震防災対策強化地域において、公立小・中学校の耐震化等、地震防災対策上必要な施設の整備に対し、国の補助率のかさ上げを行うことなどで、地方公共団体による取組を後押しし、地震防災対策をより確かなものとすることを目的に制定されたものです。令和7年(2025年)3月31日に本法の期限が切れることから、その期限を延長することとしています。
②ポイント
- 法の期限を5年間(令和12年(2030年)3月31日まで)延長
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4. 棚田地域振興法の一部を改正する法律 【地方創生推進事務局】
①概要
貴重な国民的財産である棚田を保全し、棚田地域の有する多面的機能の維持増進を図ることを目的として、令和元年に議員立法により成立した棚田地域振興法(令和7年(2025年)3月31日までの時限立法)について、棚田地域の振興を引き続き図るため、(1)法の期限を延長するとともに、(2)移住、定住及び二地域居住の一層の促進等、現状の棚田地域の課題に合わせた改正を行うものです。
②ポイント
- 法の期限を5年間(令和12年(2030年)3月31日まで)延長
- 農地法等による処分の迅速化に係る規定の追加
- 指定棚田地域の振興に資する事業に関する情報提供の努力義務の追加
- 農業の振興等や移住、定住及び二地域居住の促進等の各種配慮規定の追加
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5. 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(第15次地方分権一括法) 【地方分権改革推進室】
①概要
地方分権改革に関する地方公共団体等からの提案を受けて、政府は令和6年12月に「令和6年の地方からの提案等に関する対応方針」を閣議決定しました。本法は、これを踏まえて、国の法令による地方公共団体に対する義務付けの見直し等を行うため、6事項8法律を改正するものです。
②ポイント
- 住民基本台帳ネットワークシステムを利用できる事務の大幅な拡大
(「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」及び「住民基本台帳法」の改正) - 地方公共団体のシステム標準化等のための基金の設置年限を5年間延長
(「地方公共団体情報システム機構法」の改正) 等
③関連リンク
6. 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法) 【科学技術・イノベーション推進事務局】
①概要
AI関連技術の研究開発と活用の推進に関する施策を総合的かつ計画的に進め、生活の利便性向上と経済の健全な発展に寄与することを目的とする法律です。
②ポイント
- AI関連技術の研究開発及び活用の推進に係る基本理念と各主体の責務を規定
- 内閣にAI戦略本部を設置
- AI政策の基本的な方針などを定めるAI基本計画を策定
③関連リンク
7. 海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律 【総合海洋政策推進事務局】
①概要
我が国の排他的経済水域(EEZ)における海洋再生可能エネルギー発電設備の設置に係る制度の創設や区域指定の際に海洋環境等の保全の観点から国が調査等を行うことを可能とすることで、発電事業と海洋保全の両立を図り、再生可能エネルギーの導入拡大を促進するものです。
②ポイント
- EEZにおける海洋再生可能エネルギー発電設備の設置に係る制度の創設
- 海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域の指定の際に国が調査等を行うことを可能とする仕組み
③関連リンク
8. 日本学術会議法 【大臣官房総合政策推進室】
①概要
社会課題の複雑化・深刻化が進み、国民生活や政策立案に学術的な知見を取り入れていく必要性がこれまで以上に高まっていることを踏まえ、独立性・自律性を抜本的に高めることにより日本学術会議の機能強化を図るとともに、説明責任の担保を図るものです。
②ポイント
- 日本学術会議は、250人の会員によって運営される独立した法人となります。
- 特別な地位や権限、国による財源措置を法律に規定しました。
- 日本学術会議だけで会員・会長を選任するようにしました。
- 日本学術会議は中期的な活動計画・年度計画を作成します。
- 日本学術会議の行った自己点検評価の結果・方法について、日本学術会議評価委員会が調査審議し、意見を述べます。
- 日本学術会議の監事は国が任命します。
③関連リンク
9. 独立行政法人男女共同参画機構法 【男女共同参画局】
①概要
男女共同参画に関する施策を総合的に行う「ナショナルセンター」として独立行政法人男女共同参画機構を新設します。
また、機構に「センターオブセンターズ」としての機能を与え、地域における諸課題の解決に取り組む各地の男女共同参画センター等を強力に支援することで、女性に選ばれる地方づくりを後押しするものです。
②ポイント
- 独立行政法人国立女性教育会館を機能強化した、独立行政法人男女共同参画機構の創設
③関連リンク
10. 独立行政法人男女共同参画機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 【男女共同参画局】
①概要
独立行政法人男女共同参画機構が業務をより適切に行うことができるよう、機構が行う業務の考え方や方向性を示すため、男女共同参画社会基本法を一部改正するほか、機構法の施行に伴い、関係法律について必要な改正を行うものです。
②ポイント
- 国及び地方公共団体による基本的施策として、関係者相互間の連携及び協働の促進、人材の確保等を新設
- 男女共同参画センターを法的に位置付け
- 独立行政法人男女共同参画機構をナショナルセンターとして法的に位置付け
③関連リンク
11. 手話に関する施策の推進に関する法律 【政策統括官(共生・共助担当)】
①概要
手話が、手話を使用する者にとって日常生活や社会生活を営む上で重要な意思疎通のための手段、言語であり、文化としても長年受け継がれてきたことを踏まえ、国と地方公共団体の責務を明確にしつつ、具体的な施策の基本事項を定め、手話に関する施策を総合的に推進するための法律です。
②ポイント
- 手話は、手話を使用する者にとって、重要な意思疎通のための手段、言語であると明記
- 国の障害者基本計画や地方公共団体の障害者計画は、手話施策を推進する本法の趣旨を踏まえたものとすることを規定
- 国及び地方公共団体において、手話の学びに関する施策や、学校・職場・地域等における手話の使用環境の整備等に関する必要な施策を講ずることを規定
- 手話により豊かな文化が創造されてきたことに鑑み、手話文化の保存・継承・発展が図られるよう必要な施策を講ずることを規定
- 手話に関する国民の理解と関心の増進を図るため、9月23日を「手話の日」として規定
- 手話を使用する当事者等の意見を聞いて調査審議を行う等、手話を使用する当事者等の意見を国の施策に反映させるための措置を規定
③関連リンク
12. 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の一部改正(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律による改正) 【男女共同参画局】
①概要
女性活躍の状況は一定の進捗が見られるものの、男女間賃金差異や女性管理職比率の状況は国際的に見ると依然として改善が必要な水準であることなど、残された課題も多くあることから、女性活躍推進法における取組内容の充実を図るとともに、法の期限を10年間延長し、女性活躍の更なる推進を図るものです。
②ポイント
- 法の期限を10年間(令和18年(2036年)3月31日まで)延長
- 男女間賃金差異及び女性管理職比率の公表を常時雇用する労働者の数が101人以上の一般事業主及び特定事業主に義務付け
- 女性活躍の推進は、女性の健康上の特性に配慮して行われるべき旨の明確化
- 政府が策定する基本方針にハラスメント対策を位置付け
③関連リンク
13. 沖縄振興特別措置法の一部改正(港湾法等の一部を改正する法律による改正) 【沖縄振興局】
①概要
港湾インフラの老朽化が進み港湾管理者の技術職員不足が課題となる中で公共岸壁等の適切な機能確保を図るための制度、再生可能エネルギー主力電源化の切り札とされる洋上風力発電の導入促進の観点から洋上風力発電設備の建設や維持の拠点となる港湾の効率的な利用を図るための制度等を創設する港湾法の一部改正に伴い、沖縄振興特別措置法においても同様の制度を創設するものです。
②ポイント
- 国が港湾工事を行う場合において、港湾管理者と協議の上、工事に必要な権限を代行する仕組みを創設
- 港湾法に規定されている再生可能エネルギー発電設備等取扱埠頭を構成する行政財産の貸付けの適用、当該埠頭の一時的な利用調整のための協議会制度の創設
③関連リンク