現地からの声: ―「事前の準備」と「絆」に支えられたUNMISS司令部要員派遣―

UNMISS司令部要員(施設幕僚)
3等陸佐 森口 恭丞


1. はじめに

私は、世界で最も若い国である南スーダン共和国を支援する国連南スーダンPKOミッション(UNMISS)に、第8次施設幕僚として、平成28年6月12日から1年間、南スーダン共和国の首都ジュバに派遣されています。本投稿においては、現地における私の業務を紹介するとともに、派遣期間を通じて感じた「事前の準備」と「絆」の重要性について紹介します。


【UNMISS ピースフェアにて】

【施設課の各国司令部要員】

2. UNMISS司令部要員 施設幕僚の業務

私は、UNMISSミッション支援部の施設課ミリタリー・エンジニア部門において1年間勤務し、各国工兵部隊の運用について施設課長を補佐すべく、各国工兵部隊の主要な任務(南スーダン全土に広がるUNMISSの主要な補給道路の整備等)に関わる業務の企画・調整、及び各国工兵部隊の作業進捗状況の把握やUNMISS関係部署との連絡・調整業務に従事しています。特に、UNMISSの主要な補給道路の整備は、大部分の道路網が未舗装かつ、毎年訪れる雨季によって道路状況が著しく悪化するため、非常に困難かつ重要な課題です。また、各国工兵部隊やUNMISS関係部署との調整においては、彼らの考え方や文化の違い及び英語による調整に苦労する場面もありますが、非常に良い経験となっています。


【日本隊宿営地における調整】

【バングラディシュ工兵隊の要員と】

3.「事前の準備」の重要性

そのような厳しくもやりがいのある業務の中で感じている事が「事前の準備」の重要性です。灼熱のジュバにおける勤務においては、UNMISS特有の困難な課題について他国軍人や文民職員と調整したり、宿営地外において各国工兵部隊が円滑に任務遂行できるよう現地の方々と交渉する等、日本における任務や各種業務と異なる難しさに直面する毎日ですが、これまでの自衛隊における各種教育訓練や、PKO事務局及び陸上自衛隊に実施して頂いた充実した派遣準備訓練のおかげで、厳しい環境下においても自信をもって任務を遂行することが出来ています。

特に、派遣前訓練の一環として参加させて頂いた、オーストラリア軍における「国連軍事要員課程」やモンゴル国において実施された多国間共同訓練「カーンクエスト16」では多国間共同の組織における業務の進め方について学ぶことが出来たとともに、派遣直前に実施して頂いた準備訓練においては、「現地食材を想定した調理方法」や「現地における任務を想定した、英語による調整・プレゼンテーション」等、きめ細やかな教育訓練を実施して頂いたおかげで、日本から遠く離れた地においても不安なく勤務することが出来ています。これまでの教育訓練でお世話になった全ての方々に心から感謝するとともに、改めて「備えあれば憂いなし」という事を身をもって感じています。


【UNMISS職員との調整】

【現地における食事風景】

4.「絆」に支えられた1年間

ジュバにおいて過ごした約1年間を振り返ってみると、本当に数多くの「絆」によって支えられ、助けられて、無事に任務を遂行することができていると感じています。日本から約1万km離れたジュバで勤務しているため、妻・子供・家族・友人からの電話や追送品には心癒される事が多いとともに、PKO事務局・陸上自衛隊・連絡調整要員の方々からの激励の言葉や各種支援に励まされることも数多くあります。また、久しく会う機会の無かった小学校時代の先生・友人や過去に同じ職場で勤務していた皆さんからの応援メッセージも、異国の地で長期間勤務するにあたって貴重な心の支えとなっています。

他方、司令部業務に関連するところでは、日本から派遣されている施設部隊がジュバに展開しているということもあり、要員の方々には様々な面でご配慮頂いています。また、文民職員と軍事要員が密接に連携しつつ様々な任務を達成するという国連PKOならではの環境の中で、職場を共にする諸外国出身の・UNMISS職員・現地南スーダン人職員には、仕事だけではなくプライベートでも親しくして頂き、第2の家族のような関係で日々充実した勤務ができています。

また、現在はジュバにある国連施設内で居住しているため、諸外国から派遣されている同僚と正に寝食を共にし、様々な任務や業務に対して、絆を深めながら団結して取り組むことができています。特に、私が派遣前の準備の一環として参加させて頂いた、統合幕僚学校国際平和協力センター主催の「国際平和協力中級課程」で共に学んだオーストラリア軍の2名の同期生や、先述の豪軍主催「国連軍事要員課程」で共に訓練したアフリカ各国の親友と奇跡的にUNMISSで再会することとなり、当時の教育訓練で培った強い絆のおかげで、困った時はお互いに相談したり、共に助けあいながら任務を遂行することができています。


【統合幕僚学校「国際平和協力中級課程」の同期との再会】

5.おわりに

日本から派遣されている施設部隊は、過去最長となる5年を超える派遣期間を通じ、最大規模の実績を積み重ねてきたこと等から首都ジュバにおける施設活動に一定の区切りをつけ、活動を終了することとなりましたが、UNMISS司令部において勤務する司令部要員は、引き続き派遣が継続される予定です。南スーダンでは、国民対話や地域保護部隊の展開等、今後の新たな取組に向けた準備が日々進められている中、司令部要員としては、引き続き日本代表としての強い想いをもってUNMISSの任務達成に邁進するとともに、南スーダンの平和と安定、国造りに貢献していく所存です。

また、私は今回の派遣が、国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)に次いで2回目の派遣となりますが、これまでのMINUSTAHやUNMISSにおける経験や教訓を生かし、今後も積極的にPKO活動等の国際平和協力分野において貢献していきたいと思っています。


【離任する司令部要員の見送り】

【ジュバ大学の学生とともに】